特許異議申立
2022-701175
薄型温度センサ
- 審判番号
- 2022-701175
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-516704外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7076045
- 請求日
- 2022年11月28日
- 審決日
- 2023年02月09日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社メイコー
- 【権利者代理人】弁理士法人相原国際知財事務所
- 【異議申立人】杉村 隆司
- 分類
- P1651.121-Y (G01K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7076045号発明「薄型温度センサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7076045号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7076045号の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和2年12月15日を国際出願日とする日本語特許出願であって、令和4年5月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年5月26日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和4年11月28日に特許異議申立人杉村隆司(以下「特許異議申立人」という。)は、請求項1~3に対して特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7076045号の請求項1~3の特許に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~3は、次のとおり記載されている。
「【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面上に形成される白金薄膜からなり、パターン領域、及び前記パターン領域から延在する略矩形状の一対のパッド領域を含む電極層と、
前記パッド領域の範囲内の表面に金属めっきで形成される一対の電極端子と、
前記パターン領域、及び前記パッド領域の角部を覆い、前記電極端子と重ならないガラス保護膜と、を備える薄型温度センサ。
【請求項2】
前記ガラス保護膜は、前記パッド領域の端部のうち互いに対向する二辺を覆う、請求項1に記載の薄型温度センサ。
【請求項3】
前記ガラス保護膜は、前記パッド領域の端部の全周を覆う、請求項1又は2に記載の薄型温度センサ。」
第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、特許異議申立ての理由として、次の申立理由1及び申立理由2を挙げている。
1 申立理由1(甲1号証及び周知技術に基づく進歩性欠如)
本件発明1~3は、国際公開第2020/057850号(甲1号証)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(甲1号証及び甲2号証に基づく進歩性欠如)
本件発明1~3は、甲1号証及び特開平9-17608号公報(甲2号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第4 各甲号証の記載及び甲1発明等の認定
1 甲1号証
(1) 甲1号証の記載事項
甲1号証には以下の記載がある。日本語訳は甲1号証の日本語ファミリー文献である特表2021-535607号公報の該当記載をそのまま採用して、原文の次に摘記した。なお、下線は当審において付した。以下同様である。
ア 1頁8行~4頁20行
「
[図:0001395270000001.jpg]
[図:0001395270000002.jpg]
[図:0001395270000003.jpg]
[図:0001395270000004.jpg]
」
<日本語訳>
「【0001】
説明
本発明は、プリント基板に表面実装するための抵抗部品に関する。さらに本発明は、少なくとも1つの抵抗部品が配置されたプリント基板に関する。
【0002】
パワー半導体モジュールでは、抵抗部品などの電子部品が表面実装によりプリント基板に配置される。このために、ワイヤ端子を持たない抵抗部品は、はんだ付け可能な接触面を用いてプリント基板に直接はんだ付けされることが多い。
【0003】
また、パワーエレクトロニクス用の温度センサや抵抗器などの焼結可能な抵抗部品は、表面実装によりプリント基板に配置することもできる。このために、通常は、焼結のための所定の、通常はメタライズされた平坦な下面を有する円筒状の素子が、焼結層、例えば銀を含む焼結ペーストによってプリント基板の表面に導電接続される。接触は、メタライズされた下面と、この下面と向かい合う抵抗部品の上面に配置された少なくとも1つのコンタクトパッドとによって行うことができる。より高い電気的負荷を実現するためには、抵抗部品の上面に配置され、メタライズされた下面に関して電気的に絶縁された状態で保持された2つのコンタクトパッドによって接触を行うこともできる。コンタクトパッドの上面の接触は、通常は、ワイヤボンディング、はんだ付けまたは焼結によって行われる。独国特許出願公開第102010050315号明細書には例えば、電気素子の上面で接触させるためのコンタクトパッドと、例えばプリント基板上に延在する導体路などの電位保持面で焼結するための、向かい合う電気的に絶縁されたメタライゼーションとを有する電気素子が記載されている。
【0004】
しかしながら、抵抗部品の寸法が小さいため、従来技術から知られている表面実装用抵抗部品の接触面は、スペースが非常に限られた構成となっていることが多い。そのため、コンタクトパッドの信頼性の高い電気的接触を実現することは困難である。
【0005】
したがって、本発明の課題は、プリント基板に表面実装するための改良された抵抗部品を提供することである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の主題による抵抗部品により解決される。
【0007】
これに関して、本発明によるプリント基板に表面実装するための抵抗部品は、
第1の面と、向かい合う第2の面とを備えたセラミック基板であって、第2の面上に、焼結可能なメタライゼーションが少なくとも部分的に配置されているセラミック基板と、
金属層を備えた抵抗素子であって、金属層は、少なくとも部分的にセラミック基板の第1の面上に配置されており、かつ金属層は、第1の端子および第2の端子を備えている、抵抗素子と、
少なくとも部分的に抵抗素子およびセラミック基板上に配置された絶縁層であって、第1の端子上の第1の領域および第2の端子上の第2の領域は、絶縁層によって覆われていないままである、絶縁層と、
第1の領域を介して第1の端子と電気的に接触する第1のコンタクトパッドと、
第2の領域を介して第2の端子と電気的に接触する第2のコンタクトパッドと
を備えており、第1のコンタクトパッドは、絶縁層の第1の表面領域を少なくとも部分的に覆い、第2のコンタクトパッドは、絶縁層の第2の表面領域を少なくとも部分的に覆い、第1のコンタクトパッドと第2のコンタクトパッドとは、絶縁層上に互いに空間的に離隔して配置されている。
【0008】
セラミック基板は、例えば、Al2O3、AlSiC、AlN、B4C、BN、PBN、MgO、SiC、SiSiC、SSiC、Si3N4、YSZ、またはPZTの群からの1つ以上の材料を含むことができ、セラミック基板上に複数の抵抗部品を設置するために面状に提供されてよい。抵抗部品を設置した後、セラミック基板をパターニングして、個々の抵抗部品を得ることができる。このセラミック基板の電気絶縁性により、セラミック基板の第1の面上にコンタクトパッドを配置することができ、これは、セラミック基板のメタライズされた第2の面と電気的に絶縁された状態で保持される。
【0009】
焼結可能なメタライゼーションは、例えば、NiAu、NiPdAu、AgPd、AuPd、Au、AgまたはCuの群からの1つ以上の材料を有しており、セラミック基板の第2の面上に部分的に配置されていてもよいし、全面的に配置されていてもよい。
【0010】
本発明による抵抗素子は、第1の端子および第2の端子を備えた金属層を含むか、またはそうした金属層を用いて製造される。金属層は、少なくとも部分的にセラミック基板の第1の面上に配置されている。金属層は、導体路であって、その端部間が平面状、蛇行状または螺旋状に延在しており、かつ所定の温度で所定の抵抗値および温度係数を有する導体路として構成されていてよい。
【0011】
絶縁層とは、金属層の領域上、および金属層によって覆われていないセラミック基板の第1の面の領域上に配置された電気絶縁層、例えばガラスセラミックであると理解されてよい。第1の端子上の第1の領域および第2の端子上の第2の領域は、絶縁層によって覆われていないままである。例えば、絶縁層は、第1の端子の上方の第1の領域および第2の端子の上方の第2の領域を除いて、セラミック基板の第1の面を完全に覆っていてよい。覆われていない第1の領域および第2の領域は、それぞれの端子の電気的接触を可能にする開口部として構成されていてよく、この電気的接触は、例えば、絶縁層の開口部を通って延在し、かつセラミック基板の第1の面とは反対側の絶縁層の面上での端子の接触を可能にする導電体の一部を介して可能となる。端子の電気的接触は、直接、コンタクトパッドの材料により製造することもできる。「開口部」という用語は、凹部、または絶縁層の下にあるセラミック基板の第1の面の、絶縁層によって覆われていない領域と理解されてもよい。
【0012】
コンタクトパッドは、それぞれ絶縁層の表面領域を覆っている。「コンタクトパッド」とは、絶縁層の表面上に実質的に平面的に配置され、かつ金属層の端子に間接的または直接的に接続された導電性材料の薄い層であると理解されてよい。
【0013】
「絶縁層上に空間的に離隔して配置されている」とは、第1のコンタクトパッドおよび第2のコンタクトパッドが互いに接触しないように絶縁層上に配置されることと理解されてよい。
【0014】
本発明により、その構成ゆえ、少なくとも部分的に絶縁層上に、例えばボールボンディングやウェッジボンディングにより太い線材と接触するための十分に大きな表面積を提供するコンタクトパッドを用いることで、プリント基板に表面実装するための抵抗部品を初めて提供することが可能となった。
【0015】
一例では、第1の表面領域および第2の表面領域は、合計で、セラミック基板の第1の面上の絶縁層の総表面積の少なくとも70%を占める。
【0016】
有利には、本発明による抵抗部品においては、絶縁層のほぼ全表面領域が利用可能であり、これもセラミック基板の第2の面上に延在していてよい。このように、コンタクトパッドの表面積を、従来技術で知られている抵抗部品と比較して著しく増大させることができる。」
イ 5頁28行~6頁13行
「
[図:0001395270000005.jpg]
[図:0001395270000006.jpg]
」
<日本語訳>
「【0027】
別の例では、セラミック基板は、10mmの最大長さ、5mmの最大幅、および3mmの最大高さを有する。
【0028】
さらに別の例では、絶縁層は、ガラスまたはガラスセラミック材料を含む。
・・・(中略)・・・
【0032】
別の例では、金属層は、パターニング、PT100またはPT1000の抵抗素子、特にトリミング部分を有するPt薄膜または厚膜抵抗素子を含み、かつ温度測定できるように適合されており、金属層のパターニングは、第1の端子と第2の端子との間で蛇行状に延在している。」
ウ 7頁31行~9頁14行
「
[図:0001395270000007.jpg]
[図:0001395270000008.jpg]
[図:0001395270000009.jpg]
」
<日本語訳>
「【0039】
図1bに示すように、金属層5は、導電路として構成されており、該導体路は、第1の端子7aおよび第2の端子7bによって形成された端部間を蛇行状に延在し、かつ所定の温度で所定の抵抗値および温度係数を有する。示された実施形態では、第1の端子7aおよび第2の端子7bは、それぞれストリップ状の導体路部分として示されている。別の実施形態では、第1の端子および第2の端子は、単に蛇行状に配置された導体路の導体路端部によって形成されてもよい。
【0040】
図1cは、先に図1bに示した構成であって、金属層5およびセラミック基板1の第1の面上に絶縁層9を備えた構成を示す。図1cに示すように、第1の端子7a上の第1の領域8aおよび第2の端子7b上の第2の領域8bは、絶縁層9によって覆われていない。示された実施形態では、第1の領域8aと第2の領域8bとは向かい合っており、絶縁層9は、ガラスまたはガラスセラミック材料によって形成されている。
【0041】
図1dは、先に図1cに示された構成であって、第1の領域8aを介して第1の端子7aと電気的に接触する第1のコンタクトパッド11aと、第2の領域8bを介して第2の端子7bと電気的に接触する第2のコンタクトパッド11bとを備えた構成を示す。それぞれのコンタクトパッド11a,11bの材料がそれぞれの端子7a,7bと接触することで、コンタクトパッド11a,11bと端子7a,7bとの電気的接続が達成される。
【0042】
図1dに示すように、コンタクトパッド11a,11bは、抵抗素子が配置されたセラミック基板1の第1の面に対して平行に延在する、絶縁層9の表面の領域を覆っている。示された実施形態では、コンタクトパッド11a,11bはさらに、セラミック基板1の第1の面に対して垂直に延在する、絶縁層9の表面の領域も覆っている。
【0043】
図2a,図2b,図2c,図2dは、本発明の第2の実施形態による抵抗素子の構造の別の概略図を示す。
【0044】
図2aおよび図2bは、すでに先に示した図1aおよび図1bに対応する。
【0045】
図2cにおいて、絶縁層は、セラミック基板1’の第1の面上に実質的に全面的に配置されており、それぞれ開口部の形態の凹部8a’,8b’が絶縁層9’の材料中に配置されており、それにより、その下にある端子7a’,7b’の電気的接触が可能となる。
【0046】
図1cに示したのと同様に、第1の端子7a’上の第1の領域8a’および第2の端子7b’上の第2の領域8b’は、絶縁層9’によって覆われていない。示された実施形態では、第1の領域8a’と第2の領域8b’とは向かい合っており、絶縁層9’は、ガラスまたはガラスセラミック材料によって形成されている。
【0047】
端子7a’,7b’は、導電体を介して接触させることができる。この導電体は、開口部を通って延在し、コンタクトパッド11a’,11b’の材料と電気的に接触している。あるいはコンタクトパッド11a’,11b’の材料の一部が、開口部を通って延在し、端子7a’,7b’と直接電気的に接触していてもよい。
【0048】 図2dに示すように、コンタクトパッド11a’,11b’は、抵抗素子が配置されたセラミック基板1’の第1の面に対して平行に延在する、絶縁層9’の表面の領域を覆っている。」
エ 図2a~図2d
「
[図:0001395270000010.jpg]
」
(2) 甲1号証の記載から認定した事項
ア 甲1号証の7頁34行~8頁1行、8頁28行(日本語訳の【0039】、【0040】及び【0044】参照)及び図2bから、金属層5’は、セラミック基板1’上に形成され、第1の端子7a’及び第2の端子7b’を備え、当該第1の端子7a’及び第2の端子7b’の形状は略矩形状であることが読み取れる。
イ 甲1号証の8頁30行~9頁10行(日本語訳の【0045】~【0047】参照)及び図2cから、絶縁層9’は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’の角部及び第1の端子7a’及び第2の端子7b’の間の蛇行状に延在する導電路として構成された金属層5’の領域を覆うように形成されていることが読み取れる。
ウ 甲1号証の8頁30行~9頁14行(日本語訳の【0045】~【0048】参照)及び図2b~図2dから、第1のコンタクトパッド11a’及び第2のコンタクトパッド11b’は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’の範囲外にある蛇行状に延在する導電路として構成された部分も覆うように形成されていることが読み取れる。
(3) 甲1発明の認定
上記(1)において摘記した記載事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、甲1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、括弧内の段落番号は、甲1号証の日本語ファミリー文献である特表2021-535607号公報の段落番号を示す。
[甲1発明]
「プリント基板に表面実装するためのパワーエレクトロニクス用の温度センサの焼結可能な抵抗部品であって、(【0003】、【0007】)
第1の面と、向かい合う第2の面とを備えたセラミック基板1’であって、第2の面上に、焼結可能なメタライゼーションが少なくとも部分的に配置されているセラミック基板1’と、
金属層5’を備えた抵抗素子であって、金属層5’は、少なくとも部分的にセラミック基板1’の第1の面上に配置されており、かつ、金属層5’は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’を備えている、抵抗素子と、
少なくとも部分的に抵抗素子及びセラミック基板1’上に配置された絶縁層9’であって、第1の端子7a’上の第1の領域8a’及び第2の端子7b’上の第2の領域8b’は、絶縁層9’によって覆われていないままである、絶縁層9’と、
第1の領域8a’を介して第1の端子7a’と電気的に接触する第1のコンタクトパッド11a’と、
第2の領域8b’を介して第2の端子7b’と電気的に接触する第2のコンタクトパッド11b’と
を備えており、第1のコンタクトパッド11a’は、絶縁層9’の第1の表面領域を少なくとも部分的に覆い、第2のコンタクトパッド11b’は、絶縁層9’の第2の表面領域を少なくとも部分的に覆い、第1のコンタクトパッド11a’と第2のコンタクトパッド11b’とは、絶縁層9’上に互いに空間的に離隔して配置されており、(【0007】)
セラミック基板1’は電気絶縁性であり、(【0008】)
金属層5’は、PT100又はPT1000の抵抗素子、特にトリミング部分を有するPt薄膜を含み、かつ、温度測定できるように適合されており、金属層5’のパターニングは、第1の端子7a’と第2の端子7b’との間で蛇行状に延在しており、(【0032】)
金属層5’は、セラミック基板1’上に形成され、第1の端子7a’及び第2の端子7b’を備え、当該第1の端子7a’及び第2の端子7b’の形状は略矩形状であり、(前記(2)アの認定事項)
絶縁層9’は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’の角部及び第1の端子7a’及び第2の端子7b’の間の蛇行状に延在する導電路として構成された金属層5’の領域を覆うように形成されており、(前記(2)イの認定事項)
絶縁層9’は、セラミック基板1’の第1の面上に実質的に全面的に配置されており、それぞれ開口部の形態の凹部8a’,8b’が絶縁層9’の材料中に配置されており、それにより、その下にある端子7a’,7b’の電気的接触が可能となっており、(【0045】)
第1の端子7a’上の第1の領域8a’および第2の端子7b’上の第2の領域8b’は、絶縁層9’によって覆われておらず、第1の領域8a’と第2の領域8b’とは向かい合っており、絶縁層9’は、ガラスまたはガラスセラミック材料によって形成されており、(【0046】)
端子7a’,7b’は、導電体を介して接触させることができ、この導電体は、開口部を通って延在し、コンタクトパッド11a’,11b’の材料と電気的に接触しているか、あるいはコンタクトパッド11a’,11b’の材料の一部が、開口部を通って延在し、端子7a’,7b’と直接電気的に接触していてもよく、(【0047】)
コンタクトパッド11a’,11b’は、抵抗素子が配置されたセラミック基板1’の第1の面に対して平行に延在する、絶縁層9’の表面の領域を覆っており、(【0048】)
第1のコンタクトパッド11a’及び第2のコンタクトパッド11b’は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’の範囲外にある蛇行状に延在する導電路として構成された部分も覆うように形成されている、(前記(2)ウの認定事項)
抵抗部品。」
2 甲2号証
(1) 甲2号証の記載事項
甲2号証には、次の記載がある。
「【0013】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1および図2に示されているような薄フィルム白金抵抗温度計10は、抵抗検出素子(センサ)14が形成されている基板12を有している。該検出素子14の他方の端部には、白金接触パッド16と18がある。線20と22は、それぞれ、パッド16と18に固着されており、薄フィルム白金抵抗温度計10を、該薄フィルム白金抵抗温度計10の抵抗を温度の値に変換する電気回路(図示されていない)に電気的に接続する働きをしている。前記接触パッド16と18の上にある開口を除く薄フィルム白金抵抗温度計10の表面の被覆は、誘電体層24と隔壁層26によって形成された保護被覆である。
【0014】本発明の好ましい実施例においては、誘電体層24は二酸化シリコンである。該誘電体層24の目的は、白金検出素子14の上に絶縁層を提供することである。誘電体層24は“良性”である。換言すれば、それは検出素子14に対して“毒性”であったり、該検出素子14を汚染する成分を含んでいない。
・・・(中略)・・・
【0018】基板12は、広い温度範囲に亙ってかつ反応性のある大気または環境下において、白金に対して実質的に不活性な非導電材料から作られている。該基板12は、検出素子14の汚染が後面または底面から生ずるのを防止する保護隔壁の役割を果たしている。また、該基板12は、それ自身、検出素子14に悪い影響を与えるいかなる汚染物質であってはならない。好ましい実施例においては、基板12は、約13ミルまたは0.013インチのオーダの厚さを持つ高純度のサファイアの基板である。
【0019】検出素子14とそれに対する接触パッド16と18とを形成する約9600~9800オングストロームの厚さをもつ白金の薄フイルム、2000~4000オングストロームの範囲好ましくは2000オングストロームのオーダの厚さをもつ二酸化シリコンの誘電体壁層、6000~12000オングストロームの範囲好ましくは約6000オングストロームのオーダの厚さをもつ二酸化チタン隔壁層26を用いた本発明が、優れた効果を発揮した。図1、2に示されているように、接触パッド16と18が覆っている領域は開いているので、ワイヤ20と22を接続することができる。しかし、パッド16と18が大気に露出しているという現実は、該パッド16と18の領域が大変大きいという理由で、薄フィルム白金抵抗温度計10に悪い影響を与えず、また薄フィルム白金抵抗温度計10の合計抵抗に無視できない影響を与えない。汚染による接触パッド16または18の抵抗の僅かな変化は、無視できる程度のものである。該汚染がもし検出素子14に達するとすれば、薄フィルム白金抵抗温度計10の特性に非常に悪い影響を与えるであろう。
【0020】検出素子14の特定の構成は、装置の特別な要請によって、変えることができる。図1、2に描かれた構成は、図解のためにのみ用いられる簡略化された構成である。なぜなら、検出素子14の特定の形状が本発明の一部ではないからである。
【0021】図3~8は本発明の薄フィルム白金抵抗温度計10を形成するための好ましい方法を図示している。図3は、検出素子14と接触パッド16と18が基板12の表面12A上に形成された後の薄フィルム白金抵抗温度計10を示している。好ましい実施例においては、検出素子14と接触パッド16および18の限定は、前記二つの継続中の特許出願に開示されているリフトオフ(liftoff) 工程によって行われる。この工程によって、白金の全ての層に亙って円柱状のグレイン構造をもつ白金の薄フイルムを作ることができる。図3は、この工程が使用された時の、前記継続している出願中に記載された最終アンニール行程の後の工程を表している。さらに、所望の抵抗を作るために検出素子14のトリミングが行われた。その結果、該検出素子14の上に、本発明の多層保護層を形成することができる。
【0022】白金層を形成する好ましい方法は継続中の出願中に明らかにされているけれど、薄フィルム白金抵抗温度計を作製する他の工程もまた本発明に適用できる。白金検出素子14と接触パッド16および18の形状が完成した後、図4に示されているように、誘電体層24が積層される。前述したように、該誘電体層24を作る好ましい方法はTEOS源からの化学蒸着法である。誘電体層24は基板12の露出した表面12Aを覆い、検出要素14と接触パッド16および18をも覆う。二酸化シリコンの積層工程はまた基板12の底面12B上に二酸化シリコン層を形成する。
【0023】次に、図6に示されているように、接触パッド16および18上の窓または開口30は、標準的なホトリソグラフィック工程によって、誘電体層24の中に形成される。ホトレジスト層(図示されていない)は二酸化シリコン誘電体層24の上に積層され、接触パッド16と18の上に開口30を限定するために露光される。二酸化シリコンはそれからホトレジストによって限定された開口を作製するために、エッチングされる。同じエッチング工程において、基板12の底面12B上に形成されていた二酸化シリコン層28は除去される。
【0024】次に、正のホトレジストが接触パッド16と18の上にリフトオフ層として使用される。ホトレジストは最初に装置の表面上に積層され、パッド16と18のうえを覆っているホトレジストリフトオフ層のみを残すために露光される。このようにして得られたリフトオフ層32は図7に示されている。
【0025】図8において、チタン層34は誘電体層24とリフトオフ層32の上に積層される。リフトオフ層32の厚さのために、リフトオフ層32の上に置かれたチタン層34の部分34’はチタン層34の残りと全然接続されないか、あるいは大変薄く多孔のフイルムによってのみ接続される。次に、ホトレジスト層32は溶解され、その結果接触パッド16と18を覆っているチタン層の部分34’がリフトオフされた。その結果が図8に示されている。
【0026】最後に、チタン層32は純粋の酸素雰囲気中で、800°Cの温度に加熱することによって、酸化される。このようにして得られた隔壁層26が二酸化チタンであり、該隔壁層26はチタン層34の約2倍の厚さをもっている。図9はチタン層を酸化して隔壁層26を形成した後の装置を示している。
【0027】その工程の最後のステップは、個々の薄フィルム白金抵抗温度計10に切断し、ワイヤリード20および22を接着することである。この切断は半導体産業で使用されている通常のチップ切断技術を用いてなされる。また、前記接着は通常のワイヤ溶接技術を用いてなされる。この結果得られた装置は図1、2に示されている。」
「【図1】
[図:0001395270000011.jpg]
」
「【図2】
[図:0001395270000012.jpg]
」
(2) 甲2技術事項の認定
上記(1)において摘記した記載事項を総合すると、甲2号証には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲2技術事項]
「 薄フィルム白金抵抗温度計10であって、
抵抗検出素子(センサ)14が形成されている基板12を有し、
該検出素子14の他方の端部には、白金接触パッド16と18があり、
線20と22は、それぞれ、パッド16と18に固着されており、
薄フィルム白金抵抗温度計10を、該薄フィルム白金抵抗温度計10の抵抗を温度の値に変換する電気回路に電気的に接続し、
前記接触パッド16と18の上にある開口を除く薄フィルム白金抵抗温度計10の表面の被覆は、誘電体層24と隔壁層26によって形成された保護被覆であり、(【0013】
誘電体層24は二酸化シリコンであり、(【0014】)
基板12は、広い温度範囲に亙ってかつ反応性のある大気または環境下において、白金に対して実質的に不活性な非導電材料から作られている、(【0018】)
薄フィルム白金抵抗温度計10。」
第5 当審の判断
1 申立理由1について
(1) 本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「抵抗部品」は、「プリント基板に表面実装するためのパワーエレクトロニクス用の温度センサの焼結可能な抵抗部品であって」、「金属層5’は、PT100又はPT1000の抵抗素子、特にトリミング部分を有するPt薄膜を含み、かつ、温度測定できるように適合されて[いる]」から、甲1発明は「薄型温度センサ」の発明であるといえる。
したがって、「薄型温度センサ」の発明である本件発明1と上記の「抵抗部品」の発明である甲1発明は、「薄型温度センサ」の発明である点で一致する。
イ 甲1発明の「電気絶縁性である」「セラミック基板1’」は、本件発明1の「絶縁基板」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「絶縁基板」を備える点で一致する。
ウ(ア) 甲1発明の「金属層5’」は、本件発明1の「電極層」に相当する。
(イ) 甲1発明の「金属層5’」は、「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」を備えており、当該「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」は、本件発明1の「一対のパッド領域」に相当する。そして、当該「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」は、「略矩形状である」から、甲1発明の「金属層5’」は、本件発明1の「略矩形状の一対のパッド領域」に相当する構成を有すると認められる。
(ウ) 甲1発明の「金属層5’のパターニング」は、「第1の端子7a’と第2の端子7b’との間で蛇行状に延在している」ところ、当該蛇行状に延在している部分は、本件発明1の「パターン領域」に相当する。そして、「第1の端子7a’」と「第2の端子7b’」は、蛇行状に延在している部分から「延在している」と認められる。
(エ) 甲1発明において「金属層5’はPt薄膜を含み」、「金属層5’は、セラミック基板1’の第1の面上に配置される」から、前記イ及び(ア)を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「白金薄膜」からなる「電極層」が「絶縁基板の表面上に形成される」点で一致する。
(オ) 前記(ア)~(エ)の検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の点で一致する。
「前記絶縁基板の表面上に形成される白金薄膜からなり、パターン領域、及び前記パターン領域から延在する略矩形状の一対のパッド領域を含む電極層」を備える点。
エ 甲1発明の「第1のコンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」は、本件発明1の「一対の電極端子」に相当する。
そして、甲1発明においては、「第1のコンタクトパッド11a’及び第2のコンタクトパッド11b’は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’の範囲外にある蛇行状に延在する導電路として構成された部分も覆うように形成されている」から、「第1のコンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」は、「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」の上面に配置されていると認められる。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記パッド領域の上面に配置される一対の電極端子」を備える点で共通する。
オ 甲1発明の「絶縁層9’」は、ガラス材料によって形成されているから、本件発明1の「ガラス保護膜」に相当する。
また、甲1発明の「絶縁層9’」は、第1の端子7a’及び第2の端子7b’の角部及び第1の端子7a’及び第2の端子7b’の間の蛇行状に延在する導電路として構成された金属層5’の領域を覆うように形成されている。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記パターン領域、及び前記パッド領域の角部を覆うガラス保護膜」を備える点で共通する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
ア 一致点
「絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面上に形成される白金薄膜からなり、パターン領域、及び前記パターン領域から延在する略矩形状の一対のパッド領域を含む電極層と、
前記パッド領域の上面に配置される一対の電極端子と、
前記パターン領域、及び前記パッド領域の角部を覆うガラス保護膜と、を備える薄型温度センサ」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
本件発明1においては、
「一対の電極端子」(甲1発明の「コンタクトパッド11a’」及び「コンタクトパッド11b’」が相当する。)が、「パッド領域」(甲1発明の「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」が相当する。)の範囲内の表面に形成され、
「ガラス保護膜」(甲1発明の「絶縁層9’」が相当する)が、「電極端子」と重ならない、
のに対し、
甲1発明においては、
「第1のコンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」が、「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」の範囲外にある蛇行状に延在する導電路として構成された部分(本件発明1の「パターン領域」に相当する。)も覆うように形成され、
「絶縁層9’」の表面の領域を「第1のコンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」が覆っており、両者が重なって形成されている点。
(イ) 相違点2
「電極端子」が、
本件発明1においては、金属めっきで形成されているのに対して、
甲1発明においては、「コンタクトパッド11a’」及び「コンタクトパッド11b’」は、どのような材料で形成されているのか不明である点。
(3) 相違点1についての当審の判断
上記相違点1について検討する。
ア(ア) 甲1発明においては、「第1のコンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」が「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」の範囲外にある蛇行状に延在する導電路として構成された部分を覆うように形成され、さらに、「絶縁層9’」を覆い、当該「絶縁層9’」と重なって形成されている。
(イ) 甲1号証の【0015】、【0016】によれば、コンタクトパッド11a’,11b’が絶縁層9’を覆っている第1表面領域及び第2の表面領域が、合計で絶縁層9’の総表面積の70%以上を占めることで、従来技術と比較して、コンタクトパッドの表面積を著しく増加させるという有利な構成を得ている。そして、このような構成を採用することにより、【0004】、【0005】を参照すると、従来の抵抗部品の接触面として限られたスペースしか得られなかった構成を改善し、コンタクトパッドの信頼性の高い電位的接触を実現していると認められる。
(ウ)a 前記(イ)の甲1号証の記載を参酌すると、甲1発明の「コンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」が「絶縁層9’」を覆う表面積を所定量以上確保する構成は必須の構成であって、これらが重ならないように形成する構成を採用して相違点1に係る構成を導き出すことに阻害要因があると認められる。
b また、前記のとおり、所定量以上の表面積を確保する観点から、甲1発明の「コンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」を、あえて「第1の端子7a’」及び「第2の端子7b’」の範囲内の表面におさまるように小さく形成することで相違点1に係る構成を導き出すことについても阻害要因があると認められる。
イ 前記ア(ウ)において説示した阻害要因の点をおくとしても、甲1発明において、相違点1に係る構成とするための動機付けは存在せず、当該構成が周知技術であるとする証拠もなく、設計事項であるとも認められないから、相違点1に係る構成を導き出すための契機を見出すことはできない。
なお、特許異議申立人の主張に沿って、甲1発明の「コンタクトパッド11a’,11b’」が「導電性材料の薄い層」(段落【0012】)であり、このような導電性材料の薄い層を金属めっきで形成することが、当業者にとって周知の技術であったとしても、そのことによって上述の議論が左右されることはない。
ウ 前記ア及びイを踏まえると、甲1発明及び周知技術から、上記相違点1に係る構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。
(4) 甲1号証及び周知技術に基づく進歩性の判断のまとめ
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではないので、本件発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(5) 本件発明2及び本件発明3について
本件発明2及び3についても、本件発明1と同様に、上記相違点1及び2に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明2及び3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(6) 特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人の主張1について
(ア) 特許異議申立人の主張1の内容
特許異議申立人は、特許異議申立書の13頁から14頁において、次の主張をしている。
甲第1号証の段落【0047】には、「コンタクトパッド11a’、11b’の材料の一部が、開口部を通って延在し、端子7a’、7b’と直接電気的に接触していてもよい。」と記載されている。また、段落【0046】には、「第1の端子7a’上の第1の領域8a’および第2の端子7b’上の第2の領域8b’は、絶縁層9’によって覆われていない。」と記載されている。つまり、甲1発明において、第1の領域8a’及び第2の領域8b’内には、コンタクトパッド11a’、11b’の材料が存在しており、この材料は、パッド領域、つまり第1及び第2の端子7a’、7b’の範囲内の表面にあるといえる。
(イ) 特許異議申立人の主張1についての検討
本件発明1の「電極端子」について、本願明細書の【0016】には、「このため、一対の電極端子4は、例えば半田や溶接によりリード線が接続され、又は薄型温度センサ1が基板に内蔵される場合にはレーザビアで接続される配線接続用端子としての機能を有する。」と記載されている。
すなわち、「電極端子」はリード線が接続され、配線接続用端子としての機能を有するものでなければならない。
ここで、特許異議申立人の主張する「第1の領域8a’および第2の領域8b’内にあるコンタクトパッド11a’、11b’の材料」の機能は、コンタクトパッド11a’、11b’と金属層5’を接続することにあり、配線接続用端子としての機能を有するものとは認められず、「電極端子」に相当するとは認められない。
したがって、甲1発明における「第1の領域8a’および第2の領域8b’内にあるコンタクトパッド11a’、11b’の材料」が本件発明1における「電極端子」に相当することを前提とする特許異議申立人の主張1は、前提において失当であるから、採用できない。
イ 特許異議申立人の主張2について
(ア) 特許異議申立人の主張2の内容
また、特許異議申立人は、特許異議申立書の14から15頁において、次の主張をしている。
甲第1号証の段落【0046】には、「第1の端子7a’上の第1の領域8a’および第2の端子7b’上の第2の領域8b’は、絶縁層9’によって覆われていない。」と記載されている。つまり、ガラス保護膜である絶縁層9’は、「第1の領域8a’および第2の領域8b’内に存在しているコンタクトパッドの材料」と重なっていないといえる。
ここで、本件特許発明の解決すべき課題は、段落【0008】に記載されているように、「抵抗膜上に形成される電極端子を厚くメッキしても絶縁基板からの抵抗膜の剥離を防止すること」である。これを鑑みると、本件特許発明において「電極端子と重ならないガラス保護膜」とは、電極端子の上にガラス保護膜が重ならないことを意味しているといえる。なぜなら、電極端子の上にガラス保護膜が重なっている場合、電極端子の内部応力によって電極端子と電極層が絶縁層から剥離したときに、ガラス保護膜も一緒に剥離してしまうからである。電極端子の下にガラス保護膜が重なっている場合、電極端子と電極層が剥離した場合でも、ガラス保護膜には何ら影響がない。
甲1発明(注:特許異議申立書における「甲1発明」であり、本審決の第4の1(3)とは異なる。以下、本段落及び2(4)アにおいて同じ。)(特に図2d)においては、絶縁層9’(ガラス保護膜)がコンタクトパッド11a’、11b’(電極端子)の上にあるのではなく、下に存在しているので、たとえコンタクトパッドの内部応力によってコンタクトパッドと金属層5’とが基板から剥離したとしても、絶縁層9’には何の影響も及ぶことがなく、絶縁層9’は金属層5’の角部を押さえ続けることになる。よって、甲1発明において、コンタクトパッドのうち第1の領域8a’および第2の領域8b’外の部分、すなわち絶縁層9’と重なっているコンタクトパッド11a’、11b’の部分は、絶縁基板からの金属層5’の剥離を防止することに対して何ら役割を果たさない部分であるといえる。したがって、コンタクトパッド11a’、11b’の広がりを、第1の領域8a’及び第2の領域8b’の内部だけに留めるか、それとも、絶縁層9’に重なる範囲まで拡大するかは、コンタクトパッドと接続する素子の大きさに合わせて適宜選択される設計事項である。
言い換えると、本件特許公報の図1に記載されている一対の電極端子4のうち、ガラス保護膜5の開口部5aから突出している部分を、ガラス保護膜5の上に一部重なるように拡大したものが、甲第1号証の図2dに記載されている構造であるにすぎない。
(イ) 特許異議申立人の主張2についての検討
前記ア(イ)において説示したとおり、第1の領域8a’及び第2の領域8b’内のコンタクトパッド11a’、11b’の材料を単独で「電極端子」と認定することはできない。そして、前記(3)において説示したとおり、甲1発明において、コンタクトパッド11a’、11b’を絶縁層9’と重ならない構成とすることは、当該構成を採用することに阻害要因があるなど、当業者の設計事項とはいえないものである。
したがって、特許異議申立人の主張2は採用できない。
2 甲1号証及び甲2号証に基づく進歩性欠如について
(1) 相違点1についての当審の判断
ア 本件発明1と甲1発明の対比、一致点及び相違点については、前記1(1)及び(2)のとおりである。
イ 甲2技術事項の「誘電体層24」は二酸化シリコンであり、その組成に基づいてガラス層を構成し得ることから、本件発明1の「ガラス保護膜」に相当する。
また、甲2技術事項の「基板12」は、広い温度範囲に亙ってかつ反応性のある大気または環境下において、白金に対して実質的に不活性な非導電材料から作られていることから、本件発明1の「絶縁基板」に相当する。
前記を踏まえると、次の<甲2技術事項>の欄に記載した甲2技術事項の構成は、それぞれ、対応する<本件発明1>の欄に記載した次の本件発明1の構成に相当する。
<甲2技術事項> <本件発明1>
薄フィルム白金抵抗温度計10 薄型温度センサ
基板12 絶縁基板
白金接触パッド16と18 一対のパッド領域
検出素子14 パターン領域
誘電体層24 ガラス保護膜
白金接触パッド16と18及び検出素子14 電極層
ウ(ア) 甲1発明及び甲2技術事項はいずれも薄型温度センサの技術に関するものであって、技術分野が共通しているから、当業者は、甲1発明と甲2技術事項を同時に認識し得るものである。
(イ) しかしながら、甲2技術事項は、本件発明1の「電極端子」に相当する構成を有しておらず、甲1発明に、甲2技術事項の誘電体層24(本件発明1の「ガラス保護膜」が相当する。)において開口部を設け、線20と22と直接接する構成を採用しても、本件発明1の「電極端子」の構成を導くことができず、本件発明1に係る構成を導き出すことは容易になし得るとは認められない。
(ウ) また、仮に、甲1発明においてコンタクトパッド11a’,11b’(本件発明の「一対の電極端子」が相当する。)の構成を維持したまま、甲2技術事項の誘電体層24の開口部を広く確保する構成を採用し、甲1発明において、絶縁層9’に設けられた第1の領域8a’,第2の領域8b’を大きく形成することを試みたとしても、甲1発明においては、前記1(3)において検討したとおり、甲1発明の「コンタクトパッド11a’」及び「第2のコンタクトパッド11b’」が「絶縁層9’」と重ならないように形成することに阻害要因があると認められる。
(エ) したがって、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲2技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 甲1号証及び甲2号証に基づく進歩性の判断のまとめ
したがって、前記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明及び甲2技術事項に基づいて容易に発明できたものではないから、本件発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(3) 本件発明2及び本件発明3について
本件発明2及び3についても、本件発明1と同様に、前記相違点1及び2に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲1発明及び甲2技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明2及び3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(4) 特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人の主張内容
特許異議申立人は、特許異議申立書の16頁において、次のとおり主張をしている。
甲第2号証の図1及び図2を参照すると、誘電体層24が接触パッド16、18上で開口しており、ここでは接触パッドが表面に露出している。このように、ガラス保護膜において電極端子と重ならない開口を設けることは、本件特許の出願前から当業者には広く知られていた技術的事項である。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明と、甲2発明に記載されている技術的事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
イ 特許異議申立人の主張についての検討
甲2号証には、「電極端子」に相当する部材が記載されておらず、「ガラス保護膜において電極端子と重ならない開口を設けること」が当業者に広く知られていた技術事項であるとは認められない。
また、仮に特許異議申立人の主張するとおりであったとしても、甲1発明において、「絶縁層9’」と「コンタクトパッド11a’,11b’」とが重ならないようにすることは当業者にとって容易に想到し得たことでないことは、前記1(3)において検討したとおりである。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701175