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特許異議申立

2021-701197

温度センサ

審判番号
2021-701197
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-232960
登録番号
6895186
請求日
2021年12月16日
審決日
2022年02月25日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社大泉製作所
  • 【権利者代理人】小野 尚純
  • 【権利者代理人】奥貫 佐知子
  • 【権利者代理人】鹿角 剛二
  • 【異議申立人】青木 ゆい
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 濱野 隆
  • 審判官 清水 靖記
分類
P1651.121-Y (G01K) / P1651.537-Y (G01K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6895186号発明「温度センサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6895186号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6895186号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、令和元年12月24日に出願されたものであり、令和3年6月9日にその特許権の設定の登録がされ、同月30日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は2である。 これに対して、令和3年12月16日に特許異議申立人青木ゆい(以下「申立人」という。)は、証拠として甲1号証及び甲2号証を提出し、本件特許の請求項1、2について特許異議の申立てをした。 第2 本件発明 本件特許に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 サーミスタと、先端が該サーミスタに接続された一対の引き出し線と、該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールするガラスと、先端が該一対の引き出し線の各々の後端に接続された一対のリード線と、該ガラス、該一対の引き出し線の該先端部以外の部分及び該一対のリード線の先端部を被覆する合成樹脂製被覆層とを含む温度センサにおいて、 該一対の引き出し線の各々の該先端部以外の部分には、熱硬化性合成樹脂製チューブが被嵌されており、 該一対の引き出し線の一方の該後端と該一対のリード線の一方の該先端との接続部は、該一対の引き出し線の他方の該後端と該一対のリード線の他方の該先端との接続部よりも長手方向前方に位置し、該被覆層は小外径前部、該前部に続く後方に向かって外径が漸次増大する第一の増径部、該第一の増径部に続く中外径中間部、該中間部に続く後方に向かって外径が漸次増大する第二の増径部、及び該第二の増径部に続く大外径後部を有し、該一対の引き出し線の該一方の該後端と該一対のリード線の該一方の該先端との該接続部は、該第一の増径部の後端部と該中間部の前端部とに跨って位置し、該一対の引き出し線の該他方の該後端と該一対のリード線の該他方の該先端との該接続部は、該第二の増径部の後端部と該後部の前端部とに跨って位置し、 該被覆層は加熱溶融された内層と加熱収縮された外層とを有し、該ガラスの周表面は該外層の内面に直接的に接触せしめられている、 ことを特徴とする温度センサ。 【請求項2】 該被覆層は加熱溶融された内層と加熱収縮された外層とを有し、該外層の加熱収縮により該内層は該被覆層の後端及び前端から外部に流出するが、該前端においては該内層の流出部が取り除かれているが該後端においては該内層の流出部が残留されている、請求項1記載の温度センサ。」 第3 申立理由について 1 申立理由の概要 申立人は、次の(1)及び(2)に示す申立理由1、2を主張している。 (1) 申立理由1(進歩性欠如) 本件発明1、2は、甲1号証及び甲2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。 (2) 申立理由2(サポート要件違反) 請求項1に係る特許は、次のア及びイに示すとおり、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し取り消すべきものである。 ア 申立理由2-1 請求項1において、「外径が漸次増大する第一の増径部」、「外径が漸次増大する第二の増径部」と規定されているが、発明の詳細な説明に開示された実施形態において、第一の増径部28における下半分は増径することがなく、第二の増径部32における上半分は増径することがないはずである(以下の模擬図を参照。)。 他方、図1には、第一の増径部28及び第二の増径部32は、周方向の全ての領域において外径が増大したものが示されており、図1に基づく請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 「 [図:0001384281000001.jpg] 」 イ 申立理由2-2 請求項1において、「該一対の引き出し線の該一方の該後端と該一対のリード線の該一方の該先端との該接続部は、該第一の増径部の後端部と該中間部の前端部とに跨って位置し」と規定されているが、図1において、接続部16aは、その前端部が中外径中間部30の前端部と一致しており、その全てが中外径中間部30の範囲に存在しており、接続部16aは、第一の増径部28の後端部と中間部30の前端部とに跨っていない。 したがって、図1に基づく請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 2 申立人が提出した証拠 申立人は、以下の文書を証拠方法として提出した。 (以下、各甲号証を甲号証の番号に従い「甲1文献」及び「甲2文献」という。) 甲1号証:韓国特許10-1004404号公報 甲2号証:国際公開2019/087755号 第4 引用文献、引用発明等 1 甲1文献 (1) 甲1文献の記載事項 甲1文献には以下の記載がある。日本語訳は当審において作成したものである(下線は当審において付した。以下同様。)。 「[0024] [図:0001384281000002.jpg] 」 (日本語訳) 図面によると、図1に図示されたように本発明の望ましい実施例による温度センサ構造(S)は、温度によって抵抗値が変わるサーミスタ素子(11)とサーミスタ素子に接続されたリード端子(12)を含むセンサ本体(1)と、前記リード端子の末端部にその先端部が連結される電線(2)と、前記センサ本体と電線の先端部を覆うように挿入されて熱によって収縮密着される収縮チューブ(3)及び前記収縮チューブ内部に挿入されて熱によって溶融されながら前記センサ本体と電線の短絡を防止することと合わせて収縮チューブ内の気密性を維持するシーラント部材(4)を含むことである。 「[0026] [図:0001384281000003.jpg] 」 (日本語訳) 図2で現われるように、サーミスタ素子(11)は一対のリード端子と電極付着してヘッド部位に熱伝導がはやい導電性シリコン層(13)を形成して応答性能を向上させることができる。 「[0027] [図:0001384281000004.jpg] 」 (日本語訳) リード端子(12)は一定部分がポリイミドフィルムのような耐熱性絶縁チューブ(12a)で囲まれた状態で絶縁処理されて、前記リード端子の末端部と電線の先端部はスプライス(splice band:14)などを利用してはんだ結合されている。 「[0028] [図:0001384281000005.jpg] 」 (日本語訳) また本発明の特徴的な構成要素として、前記センサ本体(1)とここに結合される電線(2)の先端部を外部衝撃から保護して異物の流入を防止及び付着の便宜性を考慮して収縮チューブ(3)で前記センサ本体と電線先端部外側を覆うように挿入設置してその内部に安定的に収容されるようにする。 「[0029] [図:0001384281000006.jpg] 」 (日本語訳) 前記収縮チューブ(heat shrink tube)はポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)のようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱収縮して使用することが望ましいがこれに限定されるものではなく耐熱性及び熱水軸性があることなら他の材質を使用することもできる。 「[0030] [図:0001384281000007.jpg] 」 (日本語訳) 合わせて前記収縮チューブ(3)の内側には一定温度で溶融するチューブ形状のシーラント部材(4)が挿入されるが、前記シーラント部材は前記センサ本体(1)と電線(2)先端部を外部湿気から保護するようにその外側に挿入設置されて、シーラント部材の外径は前記収縮チューブの内径に比べて小さく形成されられる。 「[0031] [図:0001384281000008.jpg] 」 (日本語訳) このようなシーラント部材(4)は高温の溶融物としてフッ化エチレンプロピレン(FEP:Fluorinated Ethylene Propylene)のようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱溶融して使用することが望ましいがこれに限定されるものではなく、前記収縮チューブに比べて融点が低い材質を使用することが良い。 「[0032] [図:0001384281000009.jpg] 」 (日本語訳) これによって図3に図示されたように、前記センサ本体(1)と電線(2)先端部外側で前記収縮チューブ(3)とシーラント部材(4)が二重のチューブ構造を成しながら挿入設置されて、このような状態で高温に加熱後放置(自然乾燥)すると前記収縮チューブ(3)はスリムした形状に熱収縮されることと合わせてその内部に挿入されたシーラント部材(4)は溶融されながら収縮チューブの内部を満たすことによってセンサ本体と電線が流動されないように固定させることと共に防水性を有するようになる。 「図1 [図:0001384281000010.jpg] 」 「図2 [図:0001384281000011.jpg] 」 「図3 [図:0001384281000012.jpg] 」 (2) 甲1発明の認定 ア 上記(1)において摘記した図1から、「一対のリード端子(12)の一方の末端部と一対の電線(2)の一方の先端部との連結部は、一対のリード端子(12)の他方の末端部と一対の電線(2)の他方の先端部との連結部よりも長手方向前方に位置していること」が開示されていると認められる。 イ 上記(1)において摘記した図1から、「熱収縮したスリム形状の収縮チューブ(3)は、長手方向前方から後方に沿って外径が次第に大きくなっている部分を有しており、長手方向最後部付近では、外径が最大となっている部分を有すること」が開示されていると認められる。 ウ 上記ア及びイにおいて認定した事項を踏まえつつ、上記(1)において摘記した事項を総合すると、甲1文献には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「温度によって抵抗値が変わるサーミスタ素子(11)とサーミスタ素子(11)に接続されたリード端子(12)を含むセンサ本体(1)と、 前記リード端子(12)の末端部にその先端部が連結される電線(2)と、 前記センサ本体(1)と電線(2)の先端部を覆うように挿入されて熱によって収縮密着される収縮チューブ(3)と、 前記収縮チューブ(3)内部に挿入されて熱によって溶融されながら前記センサ本体(1)と電線(2)の短絡を防止することと合わせて収縮チューブ内の気密性を維持するシーラント部材(4)と、を含む温度センサ構造(S)において、([0024]) サーミスタ素子(11)は一対のリード端子(12)と電極付着し、ヘッド部位に熱伝導がはやい導電性シリコン層(13)が形成され、 ([0026]) リード端子(12)は一定部分がポリイミドフィルムのような耐熱性絶縁チューブ(12a)で囲まれた状態で絶縁処理されて、前記リード端子(12)の末端部と電線(2)の先端部は、はんだ結合されており、 ([0027]) 前記収縮チューブ(3)で前記センサ本体(1)と電線(2)の先端部外側を覆うように挿入設置してその内部に安定的に収容されるようにし、 ([0028]) 前記収縮チューブ(3)は、ポリテトラフルオロエチレンのようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱収縮して使用することが望ましく、 ([0029]) 前記収縮チューブ(3)の内側には、一定温度で溶融するチューブ形状のシーラント部材(4)が挿入され、前記シーラント部材(4)は、前記センサ本体(1)と電線(2)先端部を外部湿気から保護するようにその外側に挿入設置されて、シーラント部材(4)の外径は前記収縮チューブ(3)の内径に比べて小さく形成されており、([0030]) 前記シーラント部材(4)は、高温の溶融物としてフッ化エチレンプロピレンのようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱溶融して使用することが望ましく、([0031]) 前記センサ本体(1)と電線(2)先端部外側で前記収縮チューブ(3)とシーラント部材(4)が二重のチューブ構造を成しながら挿入設置されて、このような状態で高温に加熱後放置(自然乾燥)すると、前記収縮チューブ(3)はスリムした形状に熱収縮され、その内部に挿入されたシーラント部材(4)は、溶融されながら収縮チューブの内部を満たすことによって、センサ本体(1)と電線(2)が流動されないように固定するものであり、([0032]) 一対のリード端子(12)の一方の末端部と一対の電線(2)の一方の先端部との連結部は、一対のリード端子(12)の他方の末端部と一対の電線(2)の他方の先端部との連結部よりも長手方向前方に位置しており、 (認定事項ア) 熱収縮したスリム形状の収縮チューブ(3)は、長手方向前方から後方に沿って外径が次第に大きくなっている部分を有しており、長手方向最後部付近では、外径が最大となっている部分を有する、(認定事項イ) 温度センサ構造(S)。」 2 甲2文献 (1) 甲2文献の記載事項 甲2文献には以下の記載がある。 「[0017] 以下、本発明の第1の実施形態に係る温度センサについて図1乃至図5を参照して説明する。図1乃至図3は温度センサを示し、図4及び図5は温度センサを被測温物に配置した状態を示している。なお、各図において、同一又は相当部分には、同一符号を付し重複する説明を省略する。また、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。 図1乃至図3に示すように、温度センサ1は、サーミスタ素子2と、引出し線3と、リード線4と、被覆層5とを備えている。 [0018] サーミスタ素子2は、サーミスタ焼結体の感温焼結であり、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、イットリウム(Y)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)等の遷移金属元素の中から選ばれる2種あるいはそれ以上の元素から構成され、結晶構造を有する複合金属酸化物を主成分として含む酸化物のサーミスタ材料で構成される。また、特性向上等のために副成分が含有されていてもよい。主成分、副成分の組成及び含有量は、所望の特性に応じて適宜決定することができる。 [0019] また、サーミスタ素子2は、ガラス等の封止材によって被覆されている。これにより、高温の環境下で温度センサ1が使用される場合にもサーミスタ素子2を効果的に保護することができる。 [0020] 引出し線3は、導電性を有し、サーミスタ素子2の表面に形成された金、銀、銅及び白金等の電極に溶着又ははんだ付け等によって電気的に接続されてガラス等の封止材から導出されている。この引出し線3は、単一の導線から構成され、その材料には、ジュメットや42アロイが好適に用いられる。引出し線3の材料としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミ(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)又はこれらの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。 [0021] この引出し線3は、リード線4に電気的に接続されている。リード線4は、絶縁被覆41された撚り線からなる電線であり、各芯線42が引出し線3に半田付け、溶接や圧着等で電気的に接続される。したがって、引出し線3とリード線4との接続によって接続部位が形成される。なお、リード線の形態は、単線、角線、撚り線等の任意のものが適用可能である。 なお、サーミスタ素子2の形態は、チップサーミスタ及び薄膜サーミスタにリード線4を電気的に接合したものでもよい。 [0022] 被覆層5は、サーミスタ素子2、引出し線3及び引出し線3とリード線4との接続部位を覆って、これらを周囲環境から保護するものである。被覆層5は樹脂材料、例えば、フッ素樹脂から形成されていて内層6及び外層7から構成されている。 [0023] 具体的には、内層6は、フッ素樹脂のFEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共同合体したフッ素樹脂)から形成されており、FEPが溶解して凝固した状態でサーミスタ素子2等が被覆されている。 [0024] 後述の温度センサ1の製造方法で説明するように、内層6は、一対のシート状の樹脂材料(第1の内層材61、第2の内層材62)を加熱して溶解して凝固させたものであり、もともとは一対(2枚)のシート状の樹脂材料が溶解して一体となって単層化したものである。内層6の厚さ寸法は1mm~1.25mm程度である。 [0025] 外層7は、一対のシート状の樹脂材料、例えば、フッ素樹脂のPTFE(四フッ化エチレン)から形成されており、第1の外層材71及び第2の外層材72を有している。第1の外層材71及び第2の外層材72は、略長方形状で表面が平坦状に形成されており、長さ寸法が約22mm、幅寸法が約6.6mm、厚さ寸法が約0.25mmである。 [0026] したがって、内層6の厚さ寸法が1mm~1.25mm程度であるのに対し、外層7の厚さ寸法は0.25mm×2(枚)=0.5mmであり、外層7の厚さ寸法より内層6の厚さ寸法の方が大きくなっている。 [0027] 以上のような構成において、内層6に被覆されたサーミスタ素子2、引出し線3及び引出し線3とリード線4との接続部位は、さらに外層7に被覆されている。なお、リード線4は、図示を省略する温度計測回路に接続するため、被覆層5の一端側から露出して導出されるようになっている。したがって、前記サーミスタ素子2の抵抗値の変化に基づいて温度計測回路によって被測温物の温度を検知することができる。 [0028] 具体的には、サーミスタ素子2等は、内層6に被覆されるとともに、一対の外層7の間に挟まれて被覆されている。この場合、被覆層5は、後述するようにプレス工程と加熱工程を経て形成されるため、図3に代表して示すように、外層7(第1の外層材71及び第2の外層材72)の内面側には若干の凹み7aが形成される。つまり、サーミスタ素子2の厚さ寸法の範囲内において、その厚さ寸法を吸収するように、サーミスタ素子2に対応して外層7の内面側にサーミスタ素子2が食い込み変形して凹み7aが形成される。 このため、温度センサ1の厚さ寸法が薄型化され、外層7の表面は平坦状が維持されるようになる。 [0029] なお、外層7の内面側に食い込んだサーミスタ素子2の部位、正確にはガラス等の封止材の部位は、内層6に完全には被覆されないで、主として外層7に被覆されることとなる。 [0030]また、温度センサ1は可撓性を有していて曲面状に曲げることが可能となっている。因みに、温度センサ1の厚さ寸法は、約1.5mmに形成することができる。 [0031] 次に、図4及び図5を参照して温度センサ1の製造方法の一例について説明する。一対のシート状の内層材及び一対のシート状の外層材の間にサーミスタ素子2を挟んでプレス工程と加熱工程とを経て、サーミスタ素子2を内層材及び外層材によって被覆して温度センサ1を作製する。 [0032] 図4に示すように、引出し線3及びリード線4が接続されたサーミスタ素子2と、一対の内層材としてシート状の第1の内層材61及び第2の内層材62と、一対の外層材としてシート状の第1の外層材71及び第2の外層材72とを用意する。 [0033] 一対の内層材と一対の外層材とは、それぞれ略同形状であり、長方形状で表面が平坦状をなしている。各内層材(第1の内層材61、第2の内層材62)の厚さ寸法は0.5mmであり、各外層材(第1の外層材71、第2の外層材72)の厚さ寸法は既述のように0.25mmである。なお、内層材及び外層材は、熱可塑性の樹脂であり、内層材はフッ素樹脂のFEPから形成されており、外層材はフッ素樹脂のPTFEから形成されている。 [0034] 内層材のFEPの融点は275℃であり、外層材のPTFEの融点は327℃である。したがって、外層材の方が内層材より融点が高いものとなっている。また、内層材及び外層材ともに耐熱性が良好で200℃以上の温度に耐えることができ、特に、PTFEは-100℃~+260℃の広い温度範囲にわたって長時間の使用に耐えることができる。 [0035] 図5に示すように、金型を用いたプレス加工によるプレス工程と加熱工程とを経て温度センサ1が作製される。まず、図5(a)に示すように、金型の表面が平坦な下型10上に第1の外層材71を配置し、その上に第1の内層材61を重ねて配置し、さらにその上にサーミスタ素子2を配置する。次いで、図5(b)に示すように、サーミスタ素子2の上に第2の内層材62、第2の外層材72を配置する。したがって、サーミスタ素子2は、内層材及び外層材に挟まれるように配置される。この配置工程に続いて、図5(c)及び(d)に示すように、表面が平坦な下型10上に配置された内層材、外層材及びサーミスタ素子2を金型の表面が平坦な上型11によってプレスし加工する(プレス工程)。 [0036] また、このプレス工程とともに被覆層5である内層材及び外層材を加熱する(加熱工程)。この加熱工程の加熱温度は、内層材のFEPの融点以上の温度に設定して温度センサ1が作製される。 [0037] なお、加熱工程は、プレス工程の前に行ってもよいし、プレス工程と同時に行ってもよく、工程の順序が格別限定されるものではない。加熱工程がプレス工程の前に行われる場合には、内層材が溶解している間にプレス工程が行われる。 [0038] 以上のようなプレスと加熱による製造工程によって作製された温度センサ1は、厚さ寸法が薄いシート状であり、外層7の表面が平坦状に形成される。詳しくは、第1の内層材61及び第1の外層材71と、第2の内層材62及び第2の外層材72との間にサーミスタ素子2がサンドイッチ状態で挟まれ、内層材(第1の内層材61、第2の内層材62)が溶解し一体となって単層化してサーミスタ素子2が内層材及び外層材によって被覆される。 [0039] この場合、サーミスタ素子2は、シート状の内層材及び外層材の間に挟まれるようになるので、第1の内層材61及び第1の外層材71と第2の内層材62及び第2の外層材72との間の周囲は、部材がなく開放される状態となる(例えば、図5(c)参照)。したがって、本実施形態によれば、従来の内層用チューブと外層用チューブとの二重のチューブで形成される温度センサに比し、厚さ寸法を薄くすることが可能となる。 [0040] また、プレス工程と加熱工程とを経て作製される温度センサ1は、そのプレス圧力と加熱温度が適宜調整される。したがって、圧力と熱により、第1の外層材71及び第2の外層材72の内面側には、既述のようにサーミスタ素子2に対応して変形する凹み7aが形成される。この凹み7aはサーミスタ素子2が第1の外層材71及び第2の外層材72の内面側に食い込み厚さ寸法を吸収するための逃げ部であり、これにより、温度センサ1の厚さ寸法が薄型化されるにもかかわらず、外層7の表面を平坦状とすることができる。 [0041] このような温度センサ1によれば、耐久性を有し、薄型化でき、外層7の表面が平坦状で、かつ広い面積を確保することが可能となり、被測温物との接触面積を広く確保して測定精度を向上することができる。」 「 [図:0001384281000013.jpg] 」 「 [図:0001384281000014.jpg] 」 「 [図:0001384281000015.jpg] 」 「 [図:0001384281000016.jpg] 」 「 [図:0001384281000017.jpg] 」 (2) 甲2技術事項の認定 上記(1)において摘記した記載事項を総合すると、甲2文献には次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲2技術事項] 「サーミスタ素子2と、引出し線3と、リード線4と、被覆層5を備えている温度センサ1において、([0017]) サーミスタ素子2は、ガラス等の封止材によって被覆され、 ([0019]) 引出し線3は、導電性を有し、サーミスタ素子2の表面に形成された金、銀、銅及び白金等の電極に溶着又ははんだ付け等によって電気的に接続されてガラス等の封止材から導出され、([0020]) 引出し線3は、リード線4に電気的に接続されており、リード線4は、絶縁被覆41された撚り線からなる電線であり、各芯線42が引出し線3に半田付け、溶接や圧着等で電気的に接続され、引出し線3とリード線4との接続によって接続部位が形成されており、([0021]) 被覆層5は、サーミスタ素子2、引出し線3及び引出し線3とリード線4との接続部位を覆って、これらを周囲環境から保護するものであり、被覆層5は樹脂材料、例えば、フッ素樹脂から形成されていて内層6及び外層7から構成されており、([0022]) 内層6は、フッ素樹脂のFEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共同合体したフッ素樹脂)から形成されており、FEPが溶解して凝固した状態でサーミスタ素子2等が被覆されており、 ([0023]) 内層6は、一対のシート状の樹脂材料(第1の内層材61、第2の内層材62)を加熱して溶解して凝固させたものであり、もともとは一対(2枚)のシート状の樹脂材料が溶解して一体となって単層化したものであり、 ([0024]) 外層7は、一対のシート状の樹脂材料、例えば、フッ素樹脂のPTFE(四フッ化エチレン)から形成されており、第1の外層材71及び第2の外層材72を有しており、([0025]) サーミスタ素子2等は、内層6に被覆されるとともに、一対の外層7の間に挟まれて被覆されており、被覆層5は、プレス工程と加熱工程を経て形成され、第1の外層材71及び第2の外層材72の内面側には若干の凹み7aが形成され、温度センサ1の厚さ寸法が薄型化され、外層7の表面は平坦状が維持されるようになり、([0028]) 外層7の内面側に食い込んだサーミスタ素子2の部位、正確にはガラス等の封止材の部位は、内層6に完全には被覆されないで、主として外層7に被覆されることとなり、([0029]) 金型を用いたプレス加工によるプレス工程と加熱工程とを経て温度センサ1を作製するには、まず、金型の表面が平坦な下型10上に第1の外層材71を配置し、その上に第1の内層材61を重ねて配置し、さらにその上にサーミスタ素子2を配置し、次いで、サーミスタ素子2の上に第2の内層材62、第2の外層材72を配置し、([0035]) この配置工程に続いて、表面が平坦な下型10上に配置された内層材、外層材及びサーミスタ素子2を、金型の表面が平坦な上型11によってプレス加工し、([0035]) このプレス工程とともに被覆層5である内層材及び外層材を加熱し(加熱工程)、この加熱工程の加熱温度は、内層材のFEPの融点以上の温度に設定され、([0036]) 第1の内層材61及び第1の外層材71と、第2の内層材62及び第2の外層材72との間にサーミスタ素子2がサンドイッチ状態で挟まれ、内層材(第1の内層材61、第2の内層材62)が溶解し一体となって単層化してサーミスタ素子2が内層材及び外層材によって被覆される、 ([0038]) 温度センサ1([0017])。」 第5 当審の判断 1 申立理由1について (1) 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明の「サーミスタ素子(11)」は、本件発明1の「サーミスタ」に相当し、甲1発明の「サーミスタ素子(11)に接続された」「一対のリード端子(12)」は、本件発明1の「先端が該サーミスタに接続された一対の引き出し線」に相当する。 イ 甲1発明においては、「サーミスタ素子(11)は一対のリード端子(12)と電極付着し、ヘッド部位に熱伝導がはやい導電性シリコン層(13)が形成され」ており、この「ヘッド部位」は、本件発明1の「該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部」に相当する。 そして、甲1発明の「ヘッド部位」は「導電性シリコン層(13)」により封止されているといえる。 そうすると、本件発明1の「該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールするガラス」と、甲1発明の「ヘッド部位」を封止する「導電性シリコン層(13)」は、「該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材」である点で共通する。 ウ 甲1発明の「リード端子(12)の末端部」は、本件発明1の「引き出し線」の「後端」に相当するから、甲1発明の「一対のリード端子(12)」の「末端部にその先端部が連結される電線(2)」は、本件発明1の「先端が該一対の引き出し線の各々の後端に接続された一対のリード線」に相当する。 エ(ア) 甲1発明の「前記センサ本体(1)と電線(2)の先端部を覆うように挿入されて熱によって収縮密着される収縮チューブ(3)」は、本件発明1の「被覆層」の「加熱収縮された外層」に相当する。 (イ) 甲1発明の「前記収縮チューブ(3)内部に挿入されて熱によって溶融されながら前記センサ本体(1)と電線(2)の短絡を防止することと合わせて収縮チューブ内の気密性を維持するシーラント部材(4)」は、本件発明1の「被覆層」の「加熱溶融された内層」に相当する。 (ウ) 甲1発明の「収縮チューブ(3)」は、「ポリテトラフルオロエチレンのようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱収縮」したものであり、「シーラント部材(4)」は、「高温の溶融物としてフッ化エチレンプロピレンのようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱溶融」したものであるから、「収縮チューブ(3)」と「シーラント部材(4)」は、いずれも合成樹脂製であるといえる。 (エ) センサ本体(1)がサーミスタ素子(11)とサーミスタ素子(11)に接続されたリード端子(12)を含むものであることと、前記イの検討結果及び上記(ア)~(ウ)の検討結果を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材、該一対の引き出し線の該先端部以外の部分及び該一対のリード線の先端部を被覆する合成樹脂製被覆層」を含み、「該被覆層は加熱溶融された内層と加熱収縮された外層とを有」する点で共通する。 オ 甲1発明の「温度センサ構造(S)」は、本件発明1の「温度センサ」に相当するから、上記ア~エの検討内容を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「サーミスタと、先端が該サーミスタに接続された一対の引き出し線と、該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材と、先端が該一対の引き出し線の各々の後端に接続された一対のリード線と、該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材、該一対の引き出し線の該先端部以外の部分及び該一対のリード線の先端部を被覆する合成樹脂製被覆層とを含む温度センサ」である点で共通する。 カ 甲1発明の「一対のリード端子(12)の一方の末端部と一対の電線(2)の一方の先端部との連結部は、一対のリード端子(12)の他方の末端部と一対の電線(2)の他方の先端部との連結部よりも長手方向前方に位置して」いることは、本件発明1の「該一対の引き出し線の一方の該後端と該一対のリード線の一方の該先端との接続部は、該一対の引き出し線の他方の該後端と該一対のリード線の他方の該先端との接続部よりも長手方向前方に位置」することに相当する。 キ 甲1発明の「熱収縮したスリム形状の収縮チューブ(3)」の「長手方向前方から後方に沿って外径が次第に大きくなっている部分」は、本件発明1の「増径部」に相当し、甲1発明の「熱収縮したスリム形状の収縮チューブ(3)」の「長手方向最後部付近」の「外径が最大となっている部分」は、本件発明1の「増径部に続く大外径後部」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「該被覆層は、増径部及び該増径部に続く大外径後部を有」する点で共通する。 ク 以上ア~キの対比結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点1~3において相違する。 [一致点] 「サーミスタと、先端が該サーミスタに接続された一対の引き出し線と、該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材と、先端が該一対の引き出し線の各々の後端に接続された一対のリード線と、該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材、該一対の引き出し線の該先端部以外の部分及び該一対のリード線の先端部を被覆する合成樹脂製被覆層とを含む温度センサにおいて、 該一対の引き出し線の一方の該後端と該一対のリード線の一方の該先端との接続部は、該一対の引き出し線の他方の該後端と該一対のリード線の他方の該先端との接続部よりも長手方向前方に位置し、 該被覆層は、増径部及び該増径部に続く大外径後部を有し、 該被覆層は加熱溶融された内層と加熱収縮された外層とを有する、 温度センサ。」 [相違点1] 「該サーミスタと該一対の引き出し線の先端部をシールする部材」について、本件発明1においては、当該部材は「ガラス」であり、「該ガラスの周表面は該外層の内面に直接的に接触せしめられている」のに対して、甲1発明においては、当該部材は「導電性シリコン層(13)」であり、その周表面が収縮チューブ(3)の内面に直接的に接触せしめられていない点。 [相違点2] 本件発明1では、「該一対の引き出し線の各々の該先端部以外の部分には、熱硬化性合成樹脂製チューブが被嵌されて」いるのに対して、甲1発明では、リード端子(12)の一定部分がポリイミドフィルムのような耐熱性絶縁チューブ(12a)で囲まれた状態で絶縁処理されている点。 [相違点3] 本件発明1では、「被覆層は小外径前部、該前部に続く後方に向かって外径が漸次増大する第一の増径部、該第一の増径部に続く中外径中間部、該中間部に続く後方に向かって外径が漸次増大する第二の増径部、及び該第二の増径部に続く大外径後部を有し、該一対の引き出し線の該一方の該後端と該一対のリード線の該一方の該先端との該接続部は、該第一の増径部の後端部と該中間部の前端部とに跨って位置し、該一対の引き出し線の該他方の該後端と該一対のリード線の該他方の該先端との該接続部は、該第二の増径部の後端部と該後部の前端部とに跨って位置し」ているのに対して、甲1発明では、「熱収縮したスリム形状の収縮チューブ(3)」の「長手方向前方から後方に沿って外径が次第に大きくなっている部分」が「第一の増径部」や「第二の増径部」のように区分されておらず、接続部の配置も、本件発明1の上記配置のようになっているとはいえない点。 (2) 判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 ア 本件発明1において、「該一対の引き出し線の各々の該先端部以外の部分には、熱硬化性合成樹脂製チューブが被嵌されて」いるのは、本件特許の明細書段落【0004】に記載されているとおり、「温度センサの温度検出部(即ちガラスでシールされているサーミスタ及び一対の引き出し線の先端部)を狭小部に挿入して所要位置に固定する際に、一対の引き出し線におけるガラスによってシールされていない部分が折り曲げられ、これに起因して引き出し線が切断されてしまう、ガラスが破断されサーミスタが露呈されてしまう、或いは一対の引き出し線が短絡してしまう、という問題が発生する虞がある。」という課題を解決するためであり、これにより、「本発明の温度センサにおいては、一対の引き出し線の所要部位に被嵌されたチューブによって一対の引き出し線の各々の先端部以外の部分、即ちガラスによってシールされていない部分の剛性が増大され、折り曲げられてしまうことが充分確実に防止される。被覆層が加熱溶融された内層と加熱収縮された外層とを有する形態、従って被覆層が加熱される場合においても、チューブは熱硬化性合成樹脂製であるので被覆層の加熱によってチューブが劣化されることはない。」という効果が得られるとしている(段落【0009】)。 イ ここで、甲1発明では、リード端子(12)の一定部分がポリイミドフィルムのような耐熱性絶縁チューブ(12a)で囲まれた状態で絶縁処理されているものの、当該チューブ(12a)は、リード端子(12)を絶縁処理するために設けられたものであり、リード端子(12)の導電性シリコン層(13)で封止されていない部分の剛性を増大するために設けられたものではないことは、リード端子(12)の一方のみにチューブ(12a)が設けられていることを見れば明らかである(甲1文献の図2を参照)。 ウ そうすると、甲1発明は、リード端子(12)に耐熱性絶縁チューブ(12a)が設けているとしても、上記アにおいて述べたような課題を認識したものではなく、また、そのような課題が当業者にとって自明なものであるとはいえないから、甲1発明の一対のリード端子(12)の各々の先端部以外の部分に、熱硬化性合成樹脂製チューブが被嵌されるように構成する契機を見出すことはできない。 エ この点に関し、甲2技術事項の温度センサ1の作製方法をみても、「金型の表面が平坦な下型10上に第1の外層材71を配置し、その上に第1の内層材61を重ねて配置し、さらにその上にサーミスタ素子2を配置し、次いで、サーミスタ素子2の上に第2の内層材62、第2の外層材72を配置し」とあるように、甲2技術事項においては、一対のシート状の樹脂材料(第1の内層材61、第2の内層材62)が、サーミスタ素子2の上下に重なるように配置されるものであり、ガラスでシールされているサーミスタ素子2及び一対の引出し線3の先端部を狭小部に挿入して所要位置に固定することを行っていないから、上記アにおいて述べたような課題はそもそも生じないというべきである。 オ したがって、甲1発明に甲2技術事項をいかに適用しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3) 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の全ての構成を含むから、前記(1)及び(2)において説示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明と甲2技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (4) 申立人の主張について ア 申立人は、前記相違点2に関し、特許異議申立書6頁において次のとおり主張をしている。 「[要件B1に対応する要件b1に関する記載] 甲第1号証の図1を参照すると、一対のリード端子12の各々の該先端部以外の部分には、収縮チューブ3およびシーラント部材4からなる被覆層が被嵌されている。 甲第1号証には、収縮チューブ(heat shrink tube)3はポリテトラフッ素エチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)のようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱収縮して使用されることが記載されている(段落【0029】)。甲第1号証には、シーラント部材4は高温の溶融物としてフッ化エチレンプロピレン(FEP:Fluorinated Ethylene Propylene)のようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱溶融して使用され、収縮チューブ3に比べて融点が低いことが記載されている(段落【0031】)。そして、甲第1号証には、図3に図示されたように、センサ本体1と電線2の先端部外側で収縮チューブ3とシーラント部材4が二重チューブ構造を成しながら挿入設置されて、この状態で高温に加熱後放置(自然乾燥)すると収縮チューブ3は熱収縮によって細くなることと合わせてその内部に挿入されたシーラント部材4は溶融されながら収縮チューブの内部を満たすことによってセンサ本体1と電線2が固定させることが記載されており、二重チューブ構造を有する(段落【0032】,【0037】)。」 (下線は当審において付与した。) イ 上記申立人の主張によれば、甲1発明の「収縮チューブ(3)」と「シーラント部材(4)」の「二重のチューブ構造」によりセンサ本体1と電線2が固定されることが、本件発明1の「該一対の引き出し線の各々の該先端部以外の部分には、熱硬化性合成樹脂製チューブが被嵌されており」という構成に相当するから、前記相違点2に係る構成は相違点ではなく一致点に含まれることになる。 ウ しかしながら、次の(ア)及び(イ)に示す理由により、申立人の上記主張を採用することはできない。 (ア) 甲1発明の「収縮チューブ(3)」は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱収縮して形成されたものであり、「シーラント部材(4)」は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)のようなテフロン系樹脂を一定温度で加熱溶融して形成されたものであるところ、PTFE及びFEPのいずれも熱硬化性樹脂ではないから、甲1発明の「二重のチューブ構造」が「熱硬化性合成樹脂製チューブ」に相当するとはいえない。 (イ) 本件発明1の「被嵌」について、本件特許の明細書段落【0014】には、次の記載がある。 「引き出し線6a及び6bの各々におけるガラス8によってシールされていない部分には、熱硬化性合成樹脂、好ましくはポリイミド,ポリアミド又はポリイミドアミド、から形成されているチューブ18a及び18bが被嵌されていることが重要である。引き出し線6a及び6bにおけるガラス8によってシールされていない部分の実質上全長に渡ってチューブ18a及び18bが被嵌されているのが好都合である。チューブ18a及び18bの内径は引き出し線6a及び6bの外径よりも幾分大きく、従って引き出し線6a及び6bに充分容易にチューブ18a及び18bを被嵌することができるのが好都合である。」 上記記載によれば、本件発明1の「被嵌」とは、「引き出し線」の外径よりも幾分大きい内径を有する「チューブ」により「引き出し線」が嵌められることをいうと解するのが相当であるから、甲1発明の「収縮チューブ(3)」と「シーラント部材(4)」の「二重のチューブ構造」が、一対のリード端子(12)の各々の先端部以外の部分を「被嵌」しているとの主張は、上記「被嵌」の解釈と整合しない。 (5) 小括 以上検討のとおり、請求項1、2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり取り消すべきであるという申立理由1は、理由がない。 2 申立理由2について (1) 申立理由2-1についての当審の判断 ア 申立人は、第一の増径部28の下半分は増径することがなく、第二の増径部32の上半分は増径することがないはずであると主張している(以下の模擬図を参照。)。 「 [図:0001384281000018.jpg] 」 イ この点に関し、本件特許の明細書の段落【0003】において背景技術を示すものとして引用された特許文献1(特許第5830636号公報)には、次の記載がある。 「【0050】 [温度センサ3の製造方法(フォーミング)] 次に、温度センサ3の製造方法について、図11を参照して説明する。なお、以下では、被覆層20が真直な温度センサ1をプレス加工により温度センサ3に成形(フォーミング)する例を説明する。 図11(a)は、温度センサ3を得るために行うフォーミングに用いられる金型110の概略構成を示している。 金型110は、概ね矩形のキャビティ112を有する下型111と、キャビティ112の開口面積に合う押圧面116を有する上型115と、からなり、温度センサ1を成形するのに用いた金型100と以下の点を除いて同じ構成を備える。 下型111は、キャビティ112に臨む下部成形面113が、温度センサ3の第1当接面25Aと第2当接面25Bにそれぞれ対応する第1成形面113Aと第2成形面113Bを備えている。 また、上型115の押圧面116は、温度センサ3の外側面26における第1対向面26Aと第2対向面26Bにそれぞれ対応する第1成形面116Aと第2成形面116Bを備えている。 【0051】 フォーミングは、温度センサ1を所定の温度に加熱した後に、図11(b)に示すように、下型111のキャビティ112に収容する。その後、図11(c)に示すように、上型115をキャビティ112に挿入、押圧して、真直な被覆層20を、所定の角度をなして傾く第1部20Aと第2部20Bからなる形態に成形する。成形の形態が維持できるまで押圧を所定時間継続したのちに、温度センサ3をキャビティ112から取り出す(図11(d))。 フォーミングは、被覆層20を変形できれば足りるので、温度センサ1を得るのに比べて低い温度で加熱すればよい。具体的には、前駆体チューブ22を構成するPFAが変形可能な程度に軟化する融点MP1未満の加熱温度を採用すればよい。 【0052】 以上では、温度センサ1にフォーミングを施して温度センサ3を得ているが、温度センサ1を得るための金型100に代えて金型110を用いることにより、山折り形状を有する温度センサ3を直接的に得ることもできる。」 「【0056】 以上、実施形態に係る温度センサ3を説明したが、当接面を山折り形状にする形態は、温度センサ3に限らない。図12を参照して説明する。 はじめに、温度センサ3は、稜線27を素子本体11と引き出し線12a,12bの接続部位の近傍に設けたが、本発明はこれに限定されず、図12(a)に示すように、稜線27を当該接続部位から離して設けることができる。ただし、この場合にも、稜線27は、長手方向Xにおいて、引き出し線12a,12bが設けられる領域内に配置されることが、前述した引き出し線12a,12bを介した熱の伝達の効果を得る上で好ましい。 また、温度センサ3は、外側面26が谷折り形状をなしているが、本発明はこれに限定されず、図12(b)に示すように、外側面26を平坦にすることもできる。ただし、この形態だと前端及び後端の2カ所に荷重を印加しただけでは、被覆層20を真直に変形させることは困難であるから、外側面26を平坦にする場合には、被覆層20を保持する部材の、外側面26に対応する部分を山折り形状にするといった工夫が必要である。また、外側面26を平坦にすると、外側面26を谷折り形状にするのに比べて、高さ方向Yの肉厚が厚くなり、その分だけ断面係数が大きくなるので、真直に変形させるのに必要な荷重が大きくなる。 【0057】 また、温度センサ3は、外側面25を山折り形状にし、外側面26を谷折り形状にしているが、本発明はこれに限定されず、図12(c)に示すように、外側面25に加えて、外側面26も山折り形状にすることもできる。 さらに、温度センサ3は、外側面25に一つの稜線27を設けているが、図12(d)に示すように、外側面25に2つの稜線27を設け、外側面25を第1当接面25A、第2当接面25B及び第3当接面25Cを区分することができる。」 「【図11】 [図:0001384281000019.jpg] 」 「【図12】 [図:0001384281000020.jpg] 」 ウ 上記背景技術を踏まえて、本件特許の温度センサについて検討してみると、本件特許においても、上記特許文献1に開示された被覆層のフォーミング技術を適宜用いれば、図12(c)に示されるように、第一の増径部28の上半分だけでなく下半分も増径するように成形し、第二の増径部32における下半分だけでなく上半分も増径するように成形することも可能であるといえるから、第一の増径部28の下半分は増径することがなく、第二の増径部32の上半分は増径することがないはずであるという申立人の主張は、採用することができない。 よって、申立理由2-1は理由がない。 (2) 申立理由2-2についての当審の判断 ア 申立人は、図1において、接続部16aは、その前端部が中外径中間部30の前端部と一致しており、その全てが中外径中間部30の範囲に存在しており、接続部16aは、第一の増径部28の後端部と中間部30の前端部とに跨っていないと主張している。 イ この点に関し、本件特許の明細書の段落【0012】には「一対の引き出し線6a及び6bの各々の後端には一対のリード線10a及び10bの先端が接続されている。」、「一対のリード線10a及び10bの各々の先端においては外装チューブ14a及び14bが除去されて芯材12a及び12bが露呈されており、一対の引き出し線6a及び6bの後端は露呈された芯材12a及び12bに溶接又は半田付けによって接続されている。」と記載されており、接続部16aは、溶接又は半田付けによって形成されたものであるから、図1に示した接続部16aの概形は、溶接箇所や半田付け箇所を模式的に示したものにすぎず、図1の記載のみから、接続部16aは、第一の増径部28の後端部と中間部30の前端部とに跨っていないと考えるのは適当ではない。 よって、申立理由2-2は理由がない。 (3) 小括 上記(1)及び(2)の検討結果をまとめると、請求項1に係る特許はサポート要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり取り消すべきであるという申立理由2は、理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、申立人の主張する理由及び提出した証拠により請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701197

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