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特許異議申立

2025-700265

エンコーダ

審判番号
2025-700265
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-204786
登録番号
7544231
請求日
2025年03月03日
審決日
2026年01月28日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】富士電機株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ITOH
  • 【権利者代理人】伊東 忠重
  • 【異議申立人】杉村 隆司
審判長/審判官
  • 審判長 小島 寛史
  • 審判官 柳 重幸
  • 審判官 濱野 隆
分類
P1651.537-Z (G01D) / P1651.121-Z (G01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7544231号発明「エンコーダ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7544231号の請求項1~11に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許第7544231号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和4年12月23日に出願した特願2022-207340号の一部を令和5年12月4日に新たな特許出願としたものであり、令和6年8月26日に特許権の設定の登録がされ、同年9月3日に特許掲載公報が発行された。 2(1) その請求項1~11に係る特許について、令和7年3月3日に特許異議申立人 杉村 隆司より特許異議の申立てがされた。 (2) 当審において、同年7月31日付けで、本件特許の請求項1~11に係る特許に対して取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」、「本件発明2」などという。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~11の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 回転位置の測定対象に取り付けられる磁石と、 バルクハウゼン特性を利用して、前記磁石の磁気エネルギーを電気パルスに変換する発電素子と、 前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサと、 前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と、 前記推定部が推定した前記回転カウント及び前記回転位置を保存する不揮発性の記憶部と、 を有し、 前記推定部は、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第1象限であると推定し、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第2象限であると推定し、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第3象限であると推定し、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第4象限であると推定する、 エンコーダ。 【請求項2】 前記回転位置は、90度の分解能を有する、 請求項1に記載のエンコーダ。 【請求項3】 前記推定部は、前記発電素子が発電したときに、前記回転カウント及び前記回転位置を推定する、 請求項1に記載のエンコーダ。 【請求項4】 前記推定部は、前記発電素子が発電したときに、前回前記発電素子が発電したときの前記回転位置を前回回転位置として前記記憶部から読み出し、前記前回回転位置と、前記発電素子の発電極性と前記磁気センサの磁化極性とに基づいて、前記回転位置を推定する、請求項3に記載のエンコーダ。 【請求項5】 前記推定部は、前記発電素子が発電したときに、前回前記発電素子が発電したときの前記回転位置を前回回転位置として前記記憶部から読み出し、前記前回回転位置と、前記発電素子の発電極性と前記磁気センサの磁化極性とに基づいて、前記回転カウントを更新する、 請求項4に記載のエンコーダ。 【請求項6】 前記推定部は、前記発電素子が発電不良を起こして、前記回転カウントに誤差が生じた場合、前記回転カウントを補正する、 請求項4に記載のエンコーダ。 【請求項7】 前記推定部は、補正テーブルに基づいて、前記回転カウントを補正する、 請求項6に記載のエンコーダ。 【請求項8】 角度位置センサを更に備える、 請求項3に記載のエンコーダ。 【請求項9】 前記推定部は、前記角度位置センサに電源が供給されたときに、最後に推定した前記回転位置と、前記角度位置センサが検出した回転位置と、に基づいて、前記回転位置を推定する、 請求項8に記載のエンコーダ。 【請求項10】 前記推定部は、前記角度位置センサに電源が供給されたときに、最後に推定した前記回転位置と、前記角度位置センサが検出した回転位置と、に基づいて、前記回転カウントを補正する、 請求項9に記載のエンコーダ。 【請求項11】 前記推定部は、補正テーブルに基づいて、前記回転カウントを補正する、 請求項9に記載のエンコーダ。」 第3 当審において通知した取消理由の概要 当審において、令和7年7月31日付けで通知した取消理由1~3の概要は、次のとおりである。 取消理由1(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由2(明確性要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由3(進歩性欠如) 本件特許の請求項1~11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 記 <引用文献等一覧> 引用文献1:David T. Robinson, Dr. Steffen Klupsch,“Magnetic Energy-Harvesting Absolute Multiturn Encoders”, 13th MR-Symposium, Wetzlar, 2015.発表論文(主たる引用文献) 引用文献2:13th MR-Symposium 2015 program,[online],2015,Sensitec GmbH,[令和7年7月22日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230127171517/https://www.xmr-symposium.com/fileadmin/user_upload/pdf/13_mr_symposium_2015_programm.pdf> なお、引用文献1、2は、当審の職権調査により発見した文献である。 また、引用文献2は、引用文献1の公知日を示すものである。 第4 当審の判断 1 サポート要件違反について (1) 請求項1~11 ア 請求項1には、「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部」と記載されており、当該記載によれば、本件発明1は「発電極性」と「磁化極性」と「前回推定した回転位置」を全て用いて「回転位置」を推定するものと解される。 イ しかしながら、願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明には、段落【0064】~【0074】等において「発電極性」と「センサ極性(磁化極性)」から「回転位置」を判断する構成は記載されているが、更に「前回推定した回転位置」を用いて「回転位置」を推定する構成については記載も示唆もされておらず、また、当該構成は本件特許の出願時の技術常識とも認められない。 ウ そうすると、本件特許の出願時の技術常識を踏まえても、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 エ また、請求項4には、前記アで指摘した事項と同旨の記載が含まれているところ、本件発明4も、同様の理由で、発明の詳細な説明に記載したものではない。 オ したがって、本件発明1、4、及び請求項1、4の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~11に係る発明である本件発明2、3、5~11は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (2) 請求項6、7 ア(ア) 請求項6には、「前記推定部は、前記発電素子が発電不良を起こして、前記回転カウントに誤差が生じた場合、前記回転カウントを補正する」(下線は当審による。以下同様である。)と記載されている。 (イ) ここで、一般的に「補正」とは、「誤りを正すこと」を意味する用語であるから、当該記載は、「推定部は、発電素子が発電不良を起こして、回転カウントに誤差が生じた場合、算出された回転カウントを正しい回転カウントに正す」ことを特定しているものと解される。 イ しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落【0091】~【0099】等において「発電素子12gが発電をしたとき検出した位置(今回発電の位置)と、その直近に発電素子12gが発電したときに検出した位置(前回発電の位置:前回回転位置)との関係について、まとめた」「表2」を作成し、「表2に示す遷移表(更新テーブル)に従ってカウント値を更新することで、発電による回転カウント値において誤差が発生することを抑制できる」こと、すなわち、回転カウントに誤差が生じることを抑制する構成は記載されているものの、算出された回転カウントを正しい回転カウントに正す工程に関する構成は記載されておらず、また、当該構成は本件特許の出願時の技術常識とも認められない。 ウ そうすると、本件特許の出願時の技術常識を踏まえても、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 エ したがって、本件発明6、及び請求項6の記載を引用する請求項7に係る発明である本件発明7は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (3) 請求項9~11 ア 請求項9には、「前記推定部は、前記角度位置センサに電源が供給されたときに、最後に推定した前記回転位置と、前記角度位置センサが検出した回転位置と、に基づいて、前記回転位置を推定する」と記載されている。 イ しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落【0118】に「なお、図14、図15において、内側の丸印は発電素子12gが発電をしたとき検出した位置(MTの位置情報)、外側の丸印は位置検出部112sが検出した位置(STの位置情報)を示す。内側の矢印付き線は、発電素子12gが発電したときの磁石11mのN極の動きを示す。外側の矢印付き線は、位置検出部112sが検出したときの磁石11mのN極の動きを示す。一番外側の両矢印付き線は、MTの位置情報を補正する範囲を示す。すなわち、MTの位置情報は、STの位置情報に変更する。言い換えると、MTの位置情報は、STの位置情報が正しいとしてSTの位置情報に変更する」と記載されているように、前記回転位置を、角度位置センサが検出した回転位置に変更する構成は記載されているが、「最後に推定した前記回転位置」を併せ用いて回転位置を推定する構成は記載も示唆もされておらず、また、当該構成は本件特許の出願時の技術常識とも認められない。 ウ そうすると、本件特許の出願時の技術常識を踏まえても、本件発明9は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 エ したがって、本件発明9、及び請求項9の記載を引用する請求項10、11に係る発明である本件発明10、11は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 2 明確性要件違反について 請求項1~11 (1) 請求項1には、「前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサと、前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と」を備える構成が記載されている。 (2) ここで、前記「磁気センサの磁化極性」との記載を自然に解釈すると、前記「磁気センサ」自体が磁化極性を有しているものと解されるが、当該解釈は磁気センサ一般の技術常識に合致するものではないし、また当該記載以前に「磁石の磁化極性」との記載があることを踏まえると、前記記載の特定する構成が不明確である。また、請求項4、5の記載に関しても同様である。 (3) したがって、本件発明1、4、5及び請求項1、4の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、6~11に係る発明である本件発明2、3、6~11は不明確である。 3 進歩性欠如について (1) 本件発明1の分説 検討の便宜のために、本件発明1の構成を分説すると、次のとおりである。 <本件発明1の分説> (構成A) 回転位置の測定対象に取り付けられる磁石と、 (構成B) バルクハウゼン特性を利用して、前記磁石の磁気エネルギーを電気パルスに変換する発電素子と、 (構成C) 前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサと、 (構成D) 前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と、 (構成E) 前記推定部が推定した前記回転カウント及び前記回転位置を保存する不揮発性の記憶部と、 を有し、 (構成F) 前記推定部は、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第1象限であると推定し、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第2象限であると推定し、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第3象限であると推定し、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第4象限であると推定する、 (構成X) エンコーダ。 (2) 引用文献1に記載された事項等及び引用発明の認定 ア 引用文献1の公知日 (ア) David T. Robinson, Dr. Steffen Klupsch,“Magnetic Energy-Harvesting Absolute Multiturn Encoders”, 13th MR-Symposium, Wetzlar, 2015.発表論文(以下「引用文献1」という。)の公知日について、13th MR-Symposium 2015 program,[online],2015,Sensitec GmbH,[令和7年7月22日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230127171517/https://www.xmr-symposium.com/fileadmin/user_upload/pdf/13_mr_symposium_2015_programm.pdf>(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 a 2頁左端欄 「 [図:0001434148000001.jpg] 」 (摘記事項aの抜粋) 「13th SYMPOSIUM Magnetoresistive Sensors and Magnetic Systems Who should attend The Symposium is addressed to technical experts and managers in the automotive, industrial automation, medical technology, materials testing and consumer sectors as well as other industries, who are involved in the design, fabrication, testing, qualification and research of MR technology and magnetic systems and who wish to enhance their knowledge. PROGRAMME 3rd March 2015 Time Name Institution Title (後略)」 (摘記事項aの抜粋の日本語訳) 第13回シンポジウム 磁気抵抗センサ及び磁気システム 誰が参加すべきか。 シンポジウムは、MR技術及び磁気システムの設計、製作、試験、認定並びに研究に関与し、それらの知識を強化することを望む、自動車、産業オートメーション、医療技術、材料試験及び消費者部門並びに他の産業における技術専門家及び管理者に向けられている。 プログラム 2015年3月3日 時間 氏名 機関 題名 b 2頁右端欄 「 [図:0001434148000002.jpg] 」 (摘記事項bの抜粋) 「4th March 2015 Time Name Institution Title 13.30-14.00 B. Sc.David T.Robinson Admotec Precision LLC, Lebanon, NH Magnetic energy-harvesting absolute multiturn encoders (後略)」 (摘記事項bの抜粋の日本語訳) 2015年3月4日 時間/氏名/機関/題名 13:30~14:00/理学士デイビッドT.ロビンソン/アドモテック・プレシジョン・LLC、レバノン、ニューハンプシャー州/磁気エネルギーハーベスティング型アブソリュート多回転エンコーダー (イ) また、後記イに示す引用文献1に記載された事項と同様の内容は、2015年(平成27年)5月5日にYouTube(https://www.youtube.com/watch?v=bhm2Gmn955o)にも「iC-PMX - Energy-Harvesting Multiturn Encoder Chip (Complete Presentation)」のタイトルで動画として掲載されており(以下に示す画像は、その一部を例示したものであり、再生時間12分08秒の時点における動画を静止画としてキャプチャしたものである。)、動画の表示欄の下には、「Dave T. Robinson from Admotec Precision LLC presents iC-Haus's magnetic energy-harvesting multiturn absolute encoder chip iC-PMX.」という説明文も付されている。 [図:0001434148000003.jpg] (ウ) 引用文献1に記載された事項及び上記YouTube動画において開示された事項は、いずれも「iC-PMX」という製品に関するものであるところ、当該製品については、iC Haus社のウェブサイトにおいて、同社から2015年の第一四半期に発売される旨の記事が掲載されている(上記記事における「iC-PMX Energy Harvesting Multiturn Counter/Encoder (launch Q1/2015)」という記載を参照)。 上記記事の内容は、次のURLから閲覧でき、米国の第三者機関であるInternet Archiveが運営するWayback Machineにより2015年4月3日に記録、提供されたことが確認できる。 http://web.archive.org/web/20150403125846/http://www.ichaus.de:80/product/iC-PMX [図:0001434148000004.jpg] (エ) 前記(ア)を踏まえると、引用文献1は、シンポジウムにおける発表日である2015年(平成27年)3月4日に発行されたものと推認される。また、前記(イ)及び(ウ)を踏まえると、少なくとも、引用文献1に記載された事項のうち「iC-PMX」という製品に関する技術事項については、本件特許の出願前に公知の技術事項であるといえる。 イ 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、次の記載がある。下線は審判合議体が付したもので、後記エにおいて引用発明の認定に直接用いる記載を示す。日本語訳は審判合議体が作成したものである。 (ア) 120頁のAbstract部分 「Abstract: Energy harvesting techniques using Wiegand wire sensors provide zero-power turns counting for multiturn absolute encoders without batteries or gears. While simple, this magnetic technology has many subtle issues that must be addressed to provide high reliability in all applications. This paper discusses the issues and solutions required for robust zero-power turns counting using Wiegand wire sensors.」 (摘記事項(ア)の日本語訳) 要約:ウィーガントワイヤセンサを用いたエネルギーハーベスティング技術は、バッテリー又はギアのない多回転アブソリュートエンコーダに対して0電力での回転数カウントを提供する。単純であるが、この磁気技術は、全ての用途において高い信頼性を提供するために対処されなければならない多くの微細な問題を有する。この論文は、ウィーガントワイヤセンサを使用した堅牢性が高い0電力での回転数カウントに必要とされる問題と解決策を論じている。 (イ) 120頁下から8行~121頁4行 「1. Introduction The problem with multiturn absolute encoders is that there is fundamentally no physical difference between one turn and any other turn. Thus, some type of memory is always required to remember and update the turn count in the absence of power. This memory can be mechanical-usually in the form of gears-or electrical. Electrical memory must typically be maintained using a battery to power the counting circuitry when external power is not available. Both gears and batteries have long been used in multiturn absolute encoders to provide turn counting and memory in the absence of power. However, both of these solutions add complexity to the end product and provide limited reliability and robustness due to wear in the case of gears or finite life in the case of a battery. These issues may be eliminated by the use of a Wiegand wire sensor to provide a completely solid-state self-powered multiturn absolute encoder.」 (摘記事項(イ)の日本語訳) 1.序論 多回転アブソリュートエンコーダの問題は、ある回転と他の回転との間に物理的な差が根本的にないことである。したがって、ある種のメモリは、電源がない場合に回転数を記憶し更新することが常に要求される。このメモリは、機械的(通常はギアの形態)又は電気的であり得る。外部電源が利用できない場合には、カウント回路に電力を供給するバッテリーを使用して電気的メモリを維持しなければならない。 電源がない状態で回転数のカウントと記憶を行うために、多回転アブソリュートエンコーダにおいて、ギア及び電池の両方が長い間使用されてきた。 しかしながら、これらの解決策は、ともに最終製品に複雑さを加え、ギアの場合には摩耗、電池の場合には有限寿命に起因して、限られた信頼性及び堅牢性を提供する。これらの問題は、完全な固体素子の自己動力式多回転アブソリュートエンコーダを提供するために、ウィーガントワイヤセンサを使用することによって解消することができる。 (ウ) 120頁の図1 「 [図:0001434148000005.jpg] 」 (摘記事項(ウ)の日本語訳) 図1:ギア付き[1]及びバッテリーバックアップ式[2]多回転アブソリュートエンコーダ (エ) 121頁の図2 「 [図:0001434148000006.jpg] 」 (摘記事項(エ)の日本語訳) 図2:ウィーガントワイヤセンサを用いたエネルギーハーベスティング型の多回転アブソリュートエンコーダ (オ) 121頁下から8行~122頁3行 「2. Wiegand Wire Sensors Wiegand wire-sensors are named after John R. Wiegand who invented them in the 1970s and was granted a patent in 1974[3]. A Wiegand wire is a Vicalloy(vanadium cobalt iron alloy) wire treated so that it forms a magnetically hard outer shell around a magnetically soft inner core. External fields easily magnetize the outer shell, which also resists demagnetization when the external field is reduced. The magnetically soft core, on the other hand, does not become magnetized until after the outer shell is completely magnetized. At this point, the core switches magnetic polarity. A Wiegand wire sensor adds a coil around the Wiegand wire so that the switch in magnetic polarity generates a voltage pulse in the coil. The Wiegand pulse provides both the position of the magnet and the energy required to power the FRAM and pulse counting circuitry. The strength of the Wiegand pulse is consistent regardless of the rate of change of the external magnetic field, making it well-suited for turns counting down to zero speed.」 (摘記事項(オ)の日本語訳) 2.ウィーガントワイヤセンサ ウィーガントワイヤセンサは、1970年代にこれを発明したジョンRウィーガントにちなんで命名されており、1974年に特許が付与された[3]。ウィーガントワイヤは、軟磁性の内側コアの周りに硬磁性の外側シェルを形成するように処理されたビカロイ(バナジウムコバルト鉄合金)ワイヤである。外部磁場は外側シェルを容易に磁化し、これはまた、外部磁場が低減するときに減磁に抵抗する。他方、軟磁性コアは、外側シェルが完全に磁化されるまで磁化されない。この時点で、コアは磁気極性を切り替える。ウィーガントワイヤセンサは、磁気極性の切り替えがコイル内に電圧パルスを生成するように、ウィーガントワイヤの周りにコイルを追加する。 ウィーガントパルスは、磁石の位置と、FRAM及びパルス計数回路への電力供給に必要なエネルギーの両方を提供する。ウィーガントパルスの強度は、外部磁場の変化率に関わらず一定であり、速度ゼロまでの回転数カウントに適している。 (カ) 121頁の図3 「 [図:0001434148000007.jpg] 」 (摘記事項(カ)の日本語訳) 図3:ウィーガントワイヤの働き[4] (キ) 122頁4行~122頁下から1行 「3. Turns Counting Using a Wiegand Wire Sensor 3.1 Wiegand Wire Sensor Operation With a dipole magnet placed directly over the Wiegand wire sensor as shown in Figure 2, two Wiegand pulses - one positive, one negative - are produced per revolution at an interval of approximately 180°. Specifically, when rotating clockwise, Wiegand pulses are produced at J and L; when rotating counterclockwise, Wiegand pulses are produced at K and M. The Wiegand wire sensor exhibits hysteresis (α) such that the pulse points are displaced from their ideal positions of 0° and 180° depending on the direction of rotation of the magnet. When considering both clockwise and counterclockwise rotation of the magnet, there are two positive Wiegand pulses (J and K) and two negative Wiegand pulses (L and M) per revolution. To distinguish between these and thus determine rotation direction, it is necessary to measure the polarity of the magnetic field when a Wiegand pulse occurs. This is accomplished using two Hall sensors (H4 and H5) on the 0°-180° axis, as shown in Figure 4. The difference in the Hall voltage between H4 and H5 is a measure of the magnetic field strength and varies as the cosine of the magnet angle. Knowing the magnetic polarity (MP) and the Wiegand pulse polarity (PP) when the pulse occurs allows for identification of each of the four pulses and the direction of rotation [5], as shown in Table 1.」 (摘記事項(キ)の日本語訳) 3.ウィーガントワイヤセンサを使用した回転数のカウント 3.1 ウィーガントワイヤセンサの動作 図2に示されるようなウィーガントワイヤセンサの真上に配置されたダイポール磁石を用いて、約180度の間隔で一回転当たり二つのウィーガントパルス(一つは正、一つは負)が生成される。 具体的には、時計回りに回転する場合、ウィーガントパルスはJ及びLで生成され、反時計回りに回転する場合、ウィーガントパルスはK及びMで生成される。ウィーガントワイヤセンサは、磁石の回転方向に応じて、パルスポイントが0度及び180度の理想位置から変位するようなヒステリシス(α)を示す。 磁石の時計回り及び反時計回りの両方の回転を考慮すると、一回転当たり二つの正のウィーガントパルス(J及びK)及び二つの負のウィーガントパルス(L及びM)が存在する。これらを区別して回転方向を決定するためには、ウィーガントパルスが発生するときの磁界の極性を測定する必要がある。これは、図4に示されるように、0度~180度軸上の二つのホールセンサ(H4及びH5)を使用して達成される。H4とH5との間のホール電圧の差は磁界強度の尺度であり、磁石角度の余弦として変化する。 パルスが発生するときの磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)を知ることは、表1に示されるように、四つのパルスの各々及び回転方向の識別を可能にする[5]。 (ク) 122頁の図4 「 [図:0001434148000008.jpg] 」 (摘記事項(ク)の日本語訳) 図4:ウィーガントパルスの位置 (ケ) 122頁の表1 「 [図:0001434148000009.jpg] 」 (摘記事項(ケ)の日本語訳) 表1:回転方向の決定 (コ) 123頁1行~10行 「3.2 FRAM and Turns Counter Ferroelectric Random Access Memory is a nonvolatile memory technology featuring short power-up time, fast memory access, and ultra-low power consumption. Thus it is perfectly suited for use in energy harvesting absolute encoders. The FRAM also contains the counter used for turns counting. In addition to the current multiturn count, the counter also stores the pulse polarity (PP) and rotation direction (DIR) for the last Wiegand pulse. When a new Wiegand pulse occurs, the new PP and DIR values are compared to the old values and the counter is incremented or decremented as shown in Table 2. Under normal operation, the multi turn count is incremented and decremented at points J and M; the Wiegand pulses at K and L are recorded in the FRAM, but do not result in a count change.」 (摘記事項(コ)の日本語訳) 3.2 FRAM及びターンカウンタ 強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM)は、短いパワーアップ時間、速いメモリアクセス、及び超低電力消費を特徴とする不揮発性メモリ技術である。したがって、エネルギーハーベスティング型アブソリュートエンコーダでの使用に完全に適している。 FRAMはまた、回転数カウントに使用されるカウンタを含む。現在の多回転カウントに加えて、カウンタは、最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)も記憶する。新しいウィーガントパルスが発生すると、新しいPP値及びDIR値が過去の値と比較され、表2に示すようにカウンタがインクリメント又はデクリメントされる。 通常の動作の下では、多回転カウントはJ及びMにおいてインクリメント及びデクリメントされ、K及びLにおけるウィーガントパルスはFRAMに記録されるが、カウント変化は生じない。 (サ) 123頁の表2 「 [図:0001434148000010.jpg] 」 (摘記事項(サ)の日本語訳) 表2:多回転カウンタの動作 (シ) 123頁11行~19行 「3.3 Runt Pulses If the rotation direction reverses immediately after a Wiegand pulse, the Wiegand wire shell does not have a chance to switch polarity (see Figure 3). In this case, no pulse or a pulse too small to be recognized -a runt pulse- is produced at the next pulse point. In these cases, the counter does not count at J and M, but “catches up” at L or K as shown in Table 2. For example, if the magnet is rotating clockwise past point J and then immediately reverses direction, a runt pulse (or no pulse at all) is produced at point M. With continued counterclockwise rotation, the next pulse will be at point K and thus the multiturn count is incremented there. Figure 5 shows the complete turns counting logic.」 (摘記事項(シ)の日本語訳) 3.3 ラントパルス ウィーガントパルスの直後に回転方向が反転する場合、ウィーガントワイヤシェルは極性を切り替える機会を有さない(図3参照)。この場合、次のパルス点ではパルスが生成されないか、又は認識されるには小さすぎるパルス(ラントパルス)が生成される。これらの場合、カウンタはJ及びMでカウントしないが、表2に示すようにL又はKでキャッチアップする。 例えば、磁石が点Jを過ぎて時計回りに回転し、次に直ちに方向を反転する場合、点Mにおいてラントパルスが生成される(又はパルスが全く生成されない)。 反時計回りの回転を続けると、次のパルスは点Kにあり、したがって、多回転カウントはそこでインクリメントされる。図5は、完全な回転数カウントの原理を示す。 (ス) 123頁の図5 「 [図:0001434148000011.jpg] 」 (摘記事項(ス)の日本語訳) 図5:回転数カウントの原理 (セ) 124頁1行~125頁5行 「4. Power-up and Single-Turn Synchronization At power-up, the accumulated turns count must be synchronized with the single-turn position (angle within one turn) to form the complete multiturn absolute position. The single-turn position must be supplied by an absolute angle sensor such as a Hall effect sensor array. 4.1 Current Ramp Because of the existence of runt pulses, it is possible for the power-up multiturn count to be off by ±1 turn at power-up if the power-up position is near the next Wiegand pulse point but the Wiegand pulse has not occurred. In this case, it is possible to induce the pulse by injecting current into the Wiegand sensor coil. Inducing a Wiegand pulse in this way allows correcting the multiturn count for any power-up angle. Because current can be injected in either direction through the coil (to induce either a positive or negative Wiegand pulse), it is important to have a rough idea of the power-up position so that the correct current polarity can be used. For this reason, it is convenient to divide the magnet rotation into octants. Figure 6 shows the power-up octants labeled in lower-case Roman numerals. The current ramp is used when the power-up angle is in octants i, iv, v, or viii and =180° from the last Wiegand pulse point, as shown in Table 3. 4.2 Multiturn Position Correction After the current ramp is over, the multiturn count may need to be corrected, in some cases, inducing a Wiegand pulse using a current ramp causes the necessary multiturn count correction in the FRAM. In other cases, the multiturn count must be corrected externally, as shown in Table 4. Even when a current ramp is not used, the multiturn count must still be corrected per Table 4.」 (摘記事項(セ)の日本語訳) 4.電源投入及び一回転同期化 電源投入時には、完全な多回転アブソリュート位置を構成するために、累積された回転数を一回転位置(一回転内の角度)と同期させなければならない。一回転位置は、ホール効果センサアレイのような絶対角度センサによって供給されなければならない。 4.1 電流ランプ ラントパルスが存在するため、電源投入位置が次のウィーガントパルス点に近いがウィーガントパルスが発生していない場合には、電源投入時に電源投入時多回転カウントが±1回転ずれる可能性がある。この場合、ウィーガントセンサコイルに電流を注入することによってパルスを誘導することができる。このようにウィーガントパルスを誘導することにより、任意のパワーアップ角度に対して多回転カウントを補正することができる。 電流は、(正又は負のウィーガントパルスを誘導するために)コイルを通していずれかの方向に注入できるので、正しい電流の極性を使用できるように、電源投入位置の大まかな把握が重要である。このため、磁石の回転を八分円に分割することが便利である。 図6は、小文字のローマ数字でラベル付けされた電源投入時の八分円を示す。表3に示すように、電流ランプは、電源投入時角度が八分円i、iv、v又はviiiにあり、最後のウィーガントパルス点から180度の位置にあるときに使用される。 4.2 多回転位置補正 電流ランプが終了した後、多回転カウントは補正される必要があり得る。場合によっては、電流ランプを使用してウィーガントパルスを誘導することは、FRAMにおいて必要な多回転カウント補正を引き起こす。他の場合には、表4に示すように、多回転カウントを外部から補正しなければならない。電流ランプが使用されない場合であっても、多回転カウントは、表4に従って補正されなければならない。 (ソ) 124頁の図6 「 [図:0001434148000012.jpg] 」 (摘記事項(ソ)の日本語訳) 図6:電源投入時の八分円 (タ) 124頁の表3 「 [図:0001434148000013.jpg] 」 (摘記事項(タ)の日本語訳) 表3:電流ランプの使用 (チ) 125頁の表4 「 [図:0001434148000014.jpg] 」 (摘記事項(チ)の日本語訳) 表4:電源投入時の多回転位置補正 (ツ) 125頁下から7行~125頁下から1行 「5. iC-PMX The iC-PMX is an ASIC that includes all the necessary hardware for implementing a complete magnetic energy-harvesting multiturn absolute magnetic encoder using a Wiegand wire sensor and FRAM as described above. It also includes four low-noise Hall sensors for measuring single-turn position (angle). An external microcontroller (MCU) is required to read and process the single-turn Hall signals and calculate the complete multi-turn position at power-up. A block diagram of the iC-PMX along with the required external components is shown in Figure 7.」 (摘記事項(ツ)の日本語訳) 5.iC-PMX iC-PMXは、上述のようにウィーガントワイヤセンサ及びFRAMを使用して完全な磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュート磁気エンコーダを実装するために必要なすべてのハードウェアを含むASICである。また、一回転位置(角度)を測定するための四つの低ノイズホールセンサを含む。外部マイクロコントローラ(MCU)は、一回転ホール信号を読み出して処理し、電源投入時に完全な多回転位置を計算する必要がある。必要な外部構成要素と共にiC-PMXのブロック図を図7に示す。 (テ) 125頁の図7 「 [図:0001434148000015.jpg] 」 (摘記事項(テ)の日本語訳) iC-PMXブロック図 (ト) 126頁9行~126頁17行 「5.3 Phase Sequence Hall Switch The phase sequence Hall switch (H4/H5) detects the polarity of the magnetic field when a Wiegand pulse occurs for determination of rotation direction (see section 3.1 Wiegand Wire Sensor Operation). 5.4 Digital Control (Self Sustaining) The self-sustaining digital control logic is powered by the harvested Wiegand pulse energy when external power (VDD) is not available, and by VDD when it is available. When a Wiegand pulse occurs, the phase sequence Hall switch is read, MP determined, DIR calculated, and the PP and DIR bits are written to the FRAM for counting. This process occurs regardless of whether VDD is present or not (i.e. In both the powered and unpowered states).」 (摘記事項(ト)の日本語訳) 5.3 位相シーケンスホールスイッチ 位相シーケンスホールスイッチ(H4/H5)は、回転方向の決定のためにウィーガントパルスが発生するときに磁界の極性を検出する(3.1ウィーガントワイヤセンサの動作を参照)。 5.4 デジタル制御(自己持続) 自己持続型デジタル制御回路は、外部電源(VDD)が利用可能でない場合には収集されたウィーガントパルスエネルギーによって電力供給され、外部電源(VDD)が利用可能である場合にはVDDによって電力供給される。ウィーガントパルスが発生すると、位相シーケンスホールスイッチが読み取られ、MPが決定され、DIRが計算され、PP及びDIRビットがカウントのためにFRAMに書き込まれる。このプロセスは、VDDが存在するか否かに関わらず(すなわち、給電状態及び非給電状態の両方において)発生する。 (ナ) 127頁5行~127頁15行 「5.6 Single-turn Hall Sensors The iC-PMX contains four low-noise Hall sensors (HO - H3) equally spaced on a 3.25 mm diameter circle. These are read by the MCU and used to determine the power-up octant and the magnet angle (8) within a single turn for synchronization. 5.7 Digital Control (VDD Powered) When external power (VDD) is available, the external MCU can communicate with the iC-PMX. At power-up, the external MCU reads the accumulated multiturn position from the iC-PMX and determines whether a current ramp is needed. It also calculates the single-turn angle (8) from the single-turn Hall sensors in the iC-PMX or from an external absolute single-turn module. With this information, the external MCU determines whether the multiturn position is correct as read or needs to be adjusted due to runt pulses immediately prior to power-up (see 4.2 Multiturn Position Correction).」 (摘記事項(ナ)の日本語訳) 5.6 一回転ホールセンサ iC-PMXは、直径3.25mmの円上に等間隔で配置された四つの低ノイズホールセンサ(H0―H3)を含む。これらは、MCUによって読み取られ、同期化のために一回転内の電源投入時の八分円及び磁石角度(8)を決定するために使用される。 5.7 デジタル制御(VDD給電) 外部電源(VDD)が利用可能である場合、外部MCUはiC-PMXと通信することができる。電源投入時に、外部MCUは、iC-PMXから累積された多回転位置を読み出し、電流ランプが必要とされるかどうかを決定する。それはまた、iC-PMX内の一回転ホールセンサから、又は外部アブソリュート一回転モジュールから一回転角度(8)を計算する。この情報を用いて、外部MCUは、多回転位置が、読み取られたように正確であるか、又は電源投入直前のラントパルスに起因して調整される必要があるかを決定する(4.2多回転位置補正を参照)。 (ニ) 127頁下から7行~127頁下から1行 「6. Conclusion A complete magnetic energy-harvesting multiturn absolute encoder can be implemented using the iC-PMX along with a Wiegand wire sensor, FRAM, microcontroller (MCU), and a handful of passive components (see Figure 2). Careful programming of the MCU is required to guarantee proper multiturn position and single-turn synchronization at power-up due to the possibility of runt pulses. Use of a Wiegand wire sensor rather than gears or a battery provides a completely non-contact, infinite life solution for multiturn absolute position encoders.」 (摘記事項(ニ)の日本語訳) 6.結論 完全な磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュートエンコーダは、ウィーガントワイヤセンサ、FRAM、マイクロコントローラ(MCU)、及び少数の受動構成要素と共にiC-PMXを使用して実装することができる(図2参照)。MCUの注意深いプログラミングが、ラントパルスの可能性に起因して、電源投入時に適切な多回転位置及び一回転同期を保証するために必要とされる。ギア又はバッテリーではなくウィーガントワイヤセンサを使用することにより、多回転アブソリュート位置エンコーダのための完全に非接触の無限寿命の解決策が提供される。 ウ 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定 (ア) 認定事項A a 前記イの摘記事項(ウ)の図1から、「ギア付き及びバッテリーバックアップ式多回転アブソリュートエンコーダ」において、「Permanent Magnet」(永久磁石)が「Motor Axis」(モータ軸)に取り付けられていることが読み取れる。 b また、例えば前記イの摘記事項(キ)において「図2に示されるようなウィーガントワイヤセンサの真上に配置されたダイポール磁石を用いて、約180度の間隔で一回転当たり二つのウィーガントパルス(一つは正、一つは負)が生成される」ことが記載されているように、前記イの摘記事項(エ)の図2に示される「多回転アブソリュートエンコーダ」が、前記イの摘記事項(ウ)の図1に示される「ギア付き及びバッテリーバックアップ式多回転アブソリュートエンコーダ」と同様に、ダイポール磁石が回転することを前提としていることは明らかである。 c さらに、ダイポール磁石が回転するためには回転部材の存在が前提とされることを踏まえると、図2に示される「多回転アブソリュートエンコーダ」においても、ダイポール磁石が回転部材に取り付けられているといえる。 d したがって、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項A」という。)。 「ダイポール磁石が回転部材に取り付けられていること。」 (イ) 認定事項B 前記イの摘記事項(キ)の記載、摘記事項(ク)の図4及び摘記事項(ケ)の表1から、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項B」という。)。 「磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)の組と、パルスの生成位置(J、K、L、M)、磁石の回転方向(DIR)は対応関係にあり、 MPが+(1)であり、PPが+(1)であるとき、パルスの生成位置はJ(270度~0度)であり、DIRは1(時計回り)であり、 MPが+(1)であり、PPが-(0)であるとき、パルスの生成位置はM(0度~90度)であり、DIRは0(反時計回り)であり、 MPが-(0)であり、PPが+(1)であるとき、パルスの生成位置はK(180度~270度)であり、DIRは0(反時計回り)であり、 MPが-(0)であり、PPが-(0)であるとき、パルスの生成位置はL(90度~180度)であり、DIRは1(時計回り)であること。」 (再掲)122頁の図4 [図:0001434148000016.jpg] (再掲)122頁の表1 [図:0001434148000017.jpg] (ウ) 認定事項C 前記イの摘記事項(コ)、(シ)の記載、摘記事項(ク)、(ス)の図4、図5及び摘記事項(サ)の表2(「CCW to CW after M(Runt)」の行及び「CW to CCW after J(Runt)」の行を参照)から、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項C」という。)。 「Mの後に反時計回りから時計回りとなる場合、すなわち、前回パルスにおいて、パルスの生成位置がM(0度~90度)、PPが0(-)、DIRが0(反時計回り)であり、今回パルスにおいて、パルスの生成位置がL(90度~180度)、PPが0(-)、DIRが1(時計回り)である場合に、カウントを1デクリメントし、 Jの後に時計回りから反時計回りとなる場合、すなわち、前回パルスにおいて、パルスの生成位置がJ(270度~0度)、PPが1(+)、DIRが1(時計回り)であり、今回パルスにおいて、パルスの生成位置がK(180度~270度)、PPが1(+)、DIRが0(反時計回り)である場合に、カウントを1インクリメントすること。」 (再掲)123頁の表2 [図:0001434148000018.jpg] (エ) 認定事項D 前記イの摘記事項(セ)、摘記事項(ソ)の図6及び摘記事項(チ)の表4の記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項D」という。)。 「前回パルスについて、パルスの生成位置がJ(270度~0度)、PPが1、DIRが1であり、電源投入時の八分円について、i~iv(0度~180度)である場合、カウントを1インクリメントし、 前回パルスについて、パルスの生成位置がM(0度~90度)、PPが0、DIRが0であり、電源投入時の八分円について、v~viii(180度~0度)である場合、カウントを1デクリメントすること。」 (再掲)125頁の表4 [図:0001434148000019.jpg] (再掲)124頁の図6 [図:0001434148000020.jpg] エ 引用発明の認定 前記ウにおいて認定した事項及び前記イに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。 <引用発明> 「ウィーガントワイヤセンサ、FRAM、マイクロコントローラ(MCU)、及び少数の受動構成要素と共にiC-PMXを使用して実装される完全な磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュートエンコーダであって、(摘記 事項(ニ)) ダイポール磁石が回転部材に取り付けられており、(認定事項A) ウィーガントワイヤは、軟磁性の内側コアの周りに硬磁性の外側シェルを形成するように処理されたワイヤであり、外部磁場は外側シェルを容易に磁化し、軟磁性コアは、外側シェルが完全に磁化されるまで磁化されず、(摘記事項(オ)) ウィーガントワイヤセンサは、磁気極性の切り替えがコイル内に電圧パルスを生成するように、ウィーガントワイヤの周りにコイルを追加し、(摘記事項(オ)) ウィーガントパルスは、磁石の位置と、FRAM及びパルス計数回路への電力供給に必要なエネルギーの両方を提供し、(摘記事項(オ)) ウィーガントワイヤセンサの真上に配置されたダイポール磁石を用いて、約180度の間隔で一回転当たり二つのウィーガントパルス(一つは正、一つは負)が生成され、時計回りに回転する場合、ウィーガントパルスはJ及びLで生成され、反時計回りに回転する場合、ウィーガントパルスはK及びMで生成され、(摘記事項(キ)) ウィーガントワイヤセンサは、磁石の回転方向に応じて、パルスポイントが0度及び180度の理想位置から変位するようなヒステリシス(α)を示し、(摘記事項(キ)) 磁石の時計回り及び反時計回りの両方の回転を考慮すると、一回転当たり二つの正のウィーガントパルス(J及びK)及び二つの負のウィーガントパルス(L及びM)が存在し、これらを区別して回転方向を決定するためには、ウィーガントパルスが発生するときの磁界の極性を測定する必要があり、これは0度~180度軸上の二つのホールセンサ(H4及びH5)を使用して達成され、(摘記事項(キ)) H4とH5との間のホール電圧の差は磁界強度の尺度であり、磁石角度の余弦として変化し、(摘記事項(キ)) 位相シーケンスホールスイッチ(H4/H5)は、回転方向の決定のためにウィーガントパルスが発生するときに磁界の極性を検出し、(摘記事項(ト)) パルスが発生するときの磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)を知ることは、四つのパルスの各々及び回転方向の識別を可能にし、(摘記事項(キ)) 磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)の組と、パルスの生成位置(J、K、L、M)、磁石の回転方向(DIR)は対応関係にあり、 MPが+(1)であり、PPが+(1)であるとき、パルスの生成位置はJ(270度~0度)であり、DIRは1(時計回り)であり、 MPが+(1)であり、PPが-(0)であるとき、パルスの生成位置はM(0度~90度)であり、DIRは0(反時計回り)であり、 MPが-(0)であり、PPが+(1)であるとき、パルスの生成位置はK(180度~270度)であり、DIRは0(反時計回り)であり、 MPが-(0)であり、PPが-(0)であるとき、パルスの生成位置はL(90度~180度)であり、DIRは1(時計回り)であり、(認定事項B) 自己持続型デジタル制御回路は、外部電源(VDD)が利用可能でない場合には収集されたウィーガントパルスエネルギーによって電力供給され、外部電源(VDD)が利用可能である場合にはVDDによって電力供給され、ウィーガントパルスが発生すると、位相シーケンスホールスイッチが読み取られ、MPが決定され、DIRが計算され、PP及びDIRビットがカウントのためにFRAMに書き込まれ、このプロセスは、VDDが存在するか否かに関わらず(すなわち、給電状態及び非給電状態の両方において)発生し、(摘記事項(ト)) FRAMは、回転数カウントに使用されるカウンタを含み、現在の多回転カウントに加えて、カウンタは、最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)も記憶し、新しいウィーガントパルスが発生すると、新しいPP値及びDIR値が過去の値と比較され、カウンタがインクリメント又はデクリメントされ、(摘記事項(コ)) 通常の動作の下では、多回転カウントはJ及びMにおいてインクリメント及びデクリメントされ、K及びLにおけるウィーガントパルスはFRAMに記録されるが、カウント変化は生じず、(摘記事項(コ)) 強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM)は、不揮発性メモリ技術であり、(摘記事項(コ)) ウィーガントパルスの直後に回転方向が反転する場合、ウィーガントワイヤシェルは極性を切り替える機会を有さず、この場合、次のパルス点ではパルスが生成されないか、又は認識されるには小さすぎるパルス(ラントパルス)が生成され、これらの場合、カウンタはJ及びMでカウントしないが、L又はKでキャッチアップし、(摘記事項(シ)) Mの後に反時計回りから時計回りとなる場合、すなわち、前回パルスにおいて、パルスの生成位置がM(0度~90度)、PPが0(-)、DIRが0(反時計回り)であり、今回パルスにおいて、パルスの生成位置がL(90度~180度)、PPが0(-)、DIRが1(時計回り)である場合に、カウントを1デクリメントし、 Jの後に時計回りから反時計回りとなる場合、すなわち、前回パルスにおいて、パルスの生成位置がJ(270度~0度)、PPが1(+)、DIRが1(時計回り)であり、今回パルスにおいて、パルスの生成位置がK(180度~270度)、PPが1(+)、DIRが0(反時計回り)である場合に、カウントを1インクリメントし、(認定事項C) 電源投入時には、完全な多回転アブソリュート位置を構成するために、累積された回転数を一回転位置(一回転内の角度)と同期させなければならず、一回転位置は、ホール効果センサアレイのような絶対角度センサによって供給されなければならず、(摘記事項(セ)) iC-PMXは、ウィーガントワイヤセンサ及びFRAMを使用して完全な磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュート磁気エンコーダを実装するために必要なすべてのハードウェアを含むASICであり、(摘記事項(ツ)) iC-PMXは、直径3.25mmの円上に等間隔で配置された四つの低ノイズホールセンサ(H0―H3)を含み、これらは、MCUによって読み取られ、 同期化のために一回転内の電源投入時の八分円及び磁石角度を決定するために使用され、(摘記事項(ナ)) 外部電源(VDD)が利用可能である場合、外部MCUはiC-PMXと通信することができ、電源投入時に、外部MCUは、iC-PMXから累積された多回転位置を読み出し、電流ランプが必要とされるかどうかを決定し、また、iC-PMX内の一回転ホールセンサから、又は外部アブソリュート一回転モジュールから一回転角度を計算し、この情報を用いて、外部MCUは、多回転位置が、読み取られたように正確であるか、又は電源投入直前のラントパルスに起因して調整される必要があるかを決定し、(摘記事項(ナ)) ラントパルスが存在するため、電源投入位置が次のウィーガントパルス点に近いがウィーガントパルスが発生していない場合には、電源投入時に電源投入時多回転カウントが±1回転ずれる可能性があり、ウィーガントセンサコイルに電流を注入することによってパルスを誘導することができ、このようにウィーガントパルスを誘導することにより、任意の電源投入時角度に対して多回転カウントを補正することができ、(摘記事項(セ)) 電流ランプが使用されない場合であっても、多回転カウントは、補正されなければならず、(摘記事項(セ)) 前回パルスについて、パルスの生成位置がJ(270度~0度)、PPが1、DIRが1であり、電源投入時の八分円について、i~iv(0度~180度)である場合、カウントを1インクリメントし、 前回パルスについて、パルスの生成位置がM(0度~90度)、PPが0、DIRが0であり、電源投入時の八分円について、v~viii(180度~0度)である場合、カウントを1デクリメントする、(認定事項D) 磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュートエンコーダ。」 (3) 本件発明1について ア 本件発明1の読み替え (ア) サポート要件違反を踏まえた読み替え 前記1において述べたとおり、本件特許はサポート要件を満たしていないところ、本件特許明細書等の記載(段落【0064】~【0074】等)に照らして、本件特許の請求項1に記載された構成Dを以下に示すとおりサポート要件に適合するように読み替えて進歩性の判断を行うこととした(下線部は読み替えによる変更箇所を示す。)。 a 読み替え前 「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と、」 b 読み替え後 「前記発電素子の発電極性と、前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置を推定し、前記発電極性と、前記磁化極性と、前回推定した回転位置と、に基づいて、前記測定対象の回転カウントを推定する推定部と、」 (イ) 明確性要件違反を踏まえた読み替え 前記2において述べたとおり、本件特許は明確性要件を満たしていないところ、本件特許の請求項1に記載された構成Dを以下に示すとおり明確性要件に適合するように読み替えて進歩性の判断を行うこととした(下線部は読み替えによる変更箇所を示す。)。 a 読み替え前 「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と、」 b 読み替え後 「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と、」 (ウ) 小括 前記(ア)、(イ)を踏まえて、本件特許の請求項1に記載された構成Dを以下のように読み替えて、本件発明1について進歩性の判断を行う(下線部は読み替えによる変更箇所を示す。)。また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11に係る発明である本件発明2~11についても同様である。 a 読み替え前 「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサの磁化極性と、前回推定した回転位置に基づいて、前記測定対象の回転カウント及び回転位置を推定する推定部と、」 b 読み替え後 「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置を推定し、前記発電極性と、前記磁化極性と、前回推定した回転位置と、に基づいて、前記測定対象の回転カウントを推定する推定部と、」 イ 対比 本件発明1と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(エンコーダ) a 構成Xは、「エンコーダ」の発明であることを特定するものである。 b 引用発明においては、「外部電源(VDD)が利用可能でない場合」においても「ウィーガントパルスエネルギーによって電力供給され」ることによって「回転数カウント」を行い、「電源投入時」に「絶対角度センサによって供給され[る]」「一回転位置(一回転内の角度)」を「累積された回転数」と「同期させ[る]」ことにより「完全な多回転アブソリュート位置を構成」している。 c ここで、引用発明においては、「ダイポール磁石が回転部材に取り付けられて[いる]」ところ、「累積された回転数」、「一回転位置(一回転内の角度)」が、「回転部材」の回転数、回転位置をそれぞれ意味していることは明らかである。 d そうすると、引用発明の「磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュートエンコーダ」は、測定対象である「回転部材」の回転数、回転位置を測定していることから、本件発明1の「エンコーダ」に相当する。 e したがって、本件発明1と引用発明は、構成Xの観点について、「エンコーダ」の発明である点で一致する。 (イ) 構成Aの観点(磁石について) a 構成Aは、「回転位置の測定対象に取り付けられる磁石」を備えることである。 b 前記(ア)b~dの検討を踏まえると、引用発明の「回転部材に取り付けられ[る]」「ダイポール磁石」は、本件発明1の「回転位置の測定対象に取り付けられる磁石」に相当するといえる。 c したがって、本件発明1と引用発明は、次の点において一致する。 「回転位置の測定対象に取り付けられる磁石」を備える点。 (ウ) 構成Bの観点(発電素子について) a 構成Bは、「バルクハウゼン特性を利用して、前記磁石の磁気エネルギーを電気パルスに変換する発電素子」を備えることである。 b 引用発明において、「ウィーガントワイヤセンサは、磁気極性の切り替えがコイル内に電圧パルスを生成するように、ウィーガントワイヤの周りにコイルを追加し」たものであり、「ウィーガントワイヤは、軟磁性の内側コアの周りに硬磁性の外側シェルを形成するように処理されたワイヤであ」る。 c また、引用発明においては、「ウィーガントワイヤセンサの真上に配置されたダイポール磁石を用いて、約180度の間隔で一回転当たり二つのウィーガントパルス(一つは正、一つは負)が生成され」る。 d 前記b、cに加えて、一般にウィーガントワイヤセンサが、バルクハウゼン特性を利用したものであることを踏まえると、引用発明の「ウィーガントワイヤセンサ」は、本件発明1の「バルクハウゼン特性を利用して、前記磁石の磁気エネルギーを電気パルスに変換する発電素子」に相当する。 e したがって、本件発明1と引用発明は、次の点において一致する。 「バルクハウゼン特性を利用して、前記磁石の磁気エネルギーを電気パルスに変換する発電素子」を備える点。 (エ) 構成Cの観点(磁気センサについて) a 構成Cは、「前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサ」を備えることである。 b 引用発明においては、「磁石の時計回り及び反時計回りの両方の回転を考慮すると、一回転当たり二つの正のウィーガントパルス(J及びK)及び二つの負のウィーガントパルス(L及びM)が存在し、これらを区別して回転方向を決定するためには、ウィーガントパルスが発生するときの磁界の極性を測定する必要があ[る]」ところ、「0度~180度軸上の二つのホールセンサ(H4及びH5)」によって、「回転方向の決定のためにウィーガントパルスが発生するときに磁界の極性を検出し」ている。 c そして、引用発明においては、上記「ウィーガントパルスが発生するときの磁界の極性」である「MP」として、「+(1)」、「-(0)」のいずれかが検出されるところ、これらは「ダイポール磁石」の回転角度に応じて変化する値であることから、引用発明の「パルスが発生するときの磁気極性(MP)」は、本件発明1の「磁石の磁化極性」に相当する。 d また、前記b、cを踏まえると、引用発明の「ホールセンサ(H4及びH5)」は、「ウィーガントパルスが発生するときの磁界の極性」である「磁気極性(MP)」を「検出」していることから、本件発明1の「前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサ」に相当する。 e したがって、本件発明1と引用発明は、次の点において一致する。 「前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサ」を備える点。 (オ) 構成Dの観点(推定部について) a 前記アにおいて示した読み替え後の構成Dは、「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置を推定し、前記発電極性と、前記磁化極性と、前回推定した回転位置と、に基づいて、前記測定対象の回転カウントを推定する推定部」を備えることである。 b 「発電極性」の観点 前記(ウ)dにおいて検討したとおり、引用発明の「ウィーガントワイヤセンサ」は、本件発明1の「発電素子」に相当することから、引用発明の「ウィーガントパルス極性(PP)」は、本件発明1の「前記発電素子の発電極性」に相当する。 c 「磁化極性」の観点 前記(エ)c、dの検討を踏まえると、引用発明の「ホールセンサ(H4及びH5)」により「検出」される「パルスが発生するときの磁気極性(MP)」は、本件発明1の「前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性」に相当する。 d 「回転位置」の「推定」の観点 (a) 引用発明においては、「パルスが発生するときの磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)を知ること」により「四つのパルスの各々」の「識別」が「可能」になり、「磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)の組」と、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」は、「対応関係」にあるから、「四つのパルスの各々」を「識別」することは、「パルスの生成位置」がJ、K、L、Mのいずれであるかを特定することを意味する。 そうすると、引用発明においては、「ウィーガントパルス極性(PP)」及び「磁気極性(MP)」に基づいて、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能であるといえる。 (b) ここで、「パルスの生成位置」がJ、K、L、Mであることは、回転位置が、それぞれ、270度~0度、180度~270度、90度~180度、0度~90度であることを意味するから、前記(ア)及び(イ)の検討も踏まえると、引用発明の「パルスの生成位置(J、K、L、M)」は、本件発明1の「測定対象の回転位置」に相当する。 (c) 一方、本件発明1は、「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置を推定[する]」ものであるところ、当該「推定」は、発電素子の発電極性と、磁気センサにより測定された磁石の磁化極性と、に基づいて、回転位置が識別可能であることを前提としていることは明らかである。 (d) したがって、前記b及びcを踏まえると、引用発明において、「ウィーガントパルス極性(PP)」及び「磁気極性(MP)」に基づいて、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能であることは、本件発明1と、「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置」を識別可能である点で共通する。 e 「回転カウント」の「推定」の観点 (a) 「測定対象の回転カウント」の「推定」について i 引用発明においては、「FRAMは、回転数カウントに使用されるカウンタを含み、現在の多回転カウントに加えて、カウンタは、最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)も記憶し、新しいウィーガントパルスが発生すると、新しいPP値及びDIR値が過去の値と比較され、カウンタがインクリメント又はデクリメントされ」る。 ii ここで、「現在の多回転カウント」に対して「カウンタがインクリメント又はデクリメントされ[る]」ことにより算出される値が、「回転部材に取り付けられ[る]」「ダイポール磁石」(前記(ア)b~d、(イ)bを参照)の「回転数カウント」を意味することは明らかである。 iii また、引用発明において「新しいPP値及びDIR値」を「過去の値」と「比較」し、「カウンタ」を「インクリメント又はデクリメント」する際には、当該「比較」により最後の状態から最新の状態への変化に伴う「回転数カウント」を推定したうえで、その推定に適合するように「インクリメント又はデクリメント」することを前提としていることから、引用発明における「インクリメント又はデクリメント」には、「回転数カウント」の推定が含まれているといえる。 iv そうすると、引用発明において「回転部材に取り付けられ[る]」「ダイポール磁石」の「回転数カウント」を「インクリメント又はデクリメント」することは、本件発明1において「測定対象の回転カウントを推定する」ことに相当する。 (b) 「発電極性」と「磁化極性」と「前回推定した回転位置」とに基づく「推定」について i 「発電極性」に基づく「推定」 前記(a)iにおいて述べたとおり、引用発明においては、「新しいPP値及びDIR値」と「過去の値」との「比較」により「回転数カウント」を推定したうえで「インクリメント又はデクリメント」しているから、「ウィーガントパルス極性(PP)」の観点に着目すると、少なくとも「ウィーガントパルスのパルス極性(PP)」に基づいて「回転数カウント」を推定しているといえる。 ii 「磁化極性」に基づく「推定」 同様に、「回転方向(DIR)」の観点に着目すると、引用発明においては、少なくとも「回転方向(DIR)」に基づいて「回転数カウント」を推定しているといえる。 ここで、引用発明においては、「回転方向の識別」が「パルスが発生するときの磁気極性(MP)及びウィーガントパルス極性(PP)を知ること」により「可能」になることを踏まえると、「回転方向(DIR)」に基づく「回転数カウント」の推定は、少なくとも「磁気極性(MP)」に基づいて推定した「回転方向(DIR)」に基づいて、「回転数カウント」を推定することを意味するから、要するに、引用発明においては、少なくとも「磁気極性(MP)」に基づいて「回転数カウント」を推定しているといえる。 iii 「回転位置」に基づく「推定」 引用発明においては、「通常の動作の下では、多回転カウントはJ及びMにおいてインクリメント及びデクリメントされ、K及びLにおけるウィーガントパルスはFRAMに記録されるが、カウント変化は生じ[ない]」としており、「パ ルスの生成位置」がJ、K、L、Mのいずれであるかにより、インクリメント、デクリメント、カウント変化なしとしている。 そうすると、引用発明においては、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」に基づいて「回転数カウント」を推定しているといえるものの、当該「パルスの生成位置(J、K、L、M)」は、「前回推定」されたものであるとはいえない。 iv (b)の検討のまとめ 前記i~iiiをまとめると、引用発明においては、「ウィーガントパルスのパルス極性(PP)」と、「磁気極性(MP)」と、「パルスの生成位置」と、に基づいて、「回転数カウント」を推定しているといえるところ、このことは、本件発明1と、少なくとも「前記発電極性と、前記磁化極性」と「に基づいて、前記測定対象の回転カウントを推定する」点で共通する。 f 構成Dの「推定」の主体について (a) 引用発明においては、「iC-PMXは、ウィーガントワイヤセンサ及びFRAMを使用して完全な磁気エネルギーハーベスティング型多回転アブソリュート磁気エンコーダを実装するために必要なすべてのハードウェアを含むASIC」である。 (b) そして、引用発明は「iC-PMX」の他に「FRAM」を備えるが、「強誘電体ランダムアクセスメモリ」である「FRAM」は一般にデータの計算機能を持たない。 (c) また、引用発明は「外部MCU」を備えるが、「外部MCU」は、「外部電源(VDD)が利用可能である場合」、「iC-PMXと通信することができ」るものであることから、「外部MCU」は「外部電源(VDD)が利用可能である」ことを前提として動作しているといえる。 (d) ここで、前記(ア)bにおいて検討したとおり、引用発明においては、「外部電源(VDD)が利用可能でない場合」においても「ウィーガントパルスエネルギーによって電力供給され」ることによって「回転数カウント」を行うものであることから、「外部MCU」が「回転数カウント」を行っていると解するのは適当ではない。 (e) 以上を考慮すると、引用発明においては「iC-PMX」が「回転数カウント」の「インクリメント又はデクリメント」を行っていると解釈するのが自然であり、引用発明の「iC-PMX」が、本件発明1の「推定部」に相当する。 g (オ)の検討のまとめ 以上のb~fの検討結果を踏まえると、本件発明1と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次のとおりである。 (a) 構成Dの観点における一致点 「前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置を識別可能なものとし、少なくとも、前記発電極性と、前記磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転カウントを推定する推定部」を備える点。 (b) 構成Dの観点における相違点 本件発明1においては、 「推定部」が、「発電極性」と「磁化極性」とに基づいて「回転位置」を「推定」し、「前記発電極性と、前記磁化極性と、前回推定した前記回転位置」とに基づいて「回転カウントを推定する」のに対して、 引用発明においては、 「ウィーガントパルス極性(PP)」及び「磁気極性(MP)」に基づいて「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能なものとし、「iC-PMX」(推定部)が、「ウィーガントパルスのパルス極性(PP)」と「磁気極性(MP)」と「パルスの生成位置(J、K、L、M)」とに基づいて「回転数カウント」を推定しているが、「iC-PMX」が、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を推定し、前回推定した「パルスの生成位置(J、K、L、M)」に基づいて「回転数カウント」を推定する点は特定されていない点。 (カ) 構成Eの観点(記憶部について) a 構成Eは、「前記推定部が推定した前記回転カウント及び前記回転位置を保存する不揮発性の記憶部」を備えることである。 b 引用発明においては、「FRAMは、回転数カウントに使用されるカウンタを含み、現在の多回転カウントに加えて、カウンタは、最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)も記憶し」ている。 c ここで、引用発明において、「回転部材に取り付けられ[る]」「ダイポール磁石」が繰り返し回転する場合を想定すれば、「FRAM」に記録される「現在の多回転カウント」が、最後に「iC-PMX」が推定した回転カウントを意味することは明らかである。 d また、引用発明においては、「通常の動作の下では、多回転カウントはJ及びMにおいてインクリメント及びデクリメントされ、K及びLにおけるウィーガントパルスはFRAMに記録されるが、カウント変化は生じ[ない]」としており、「パルスの生成位置」がJ、K、L、Mのいずれであるかを認識可能であることを前提としてカウント操作を行っているから、「FRAM」に記録される「最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)」が「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能な情報であることは明らかである。 e そして、「強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM)は、不揮発性メモリ技術であ[る]」ことから、引用発明の「FRAM」は、本件発明1の「不揮発性の記憶部」に相当する。 f 以上の検討結果を踏まえると、本件発明1と引用発明の構成Eの観点における一致点及び相違点は、次のとおりである。 (a) 構成Eの観点における一致点 「前記推定部が推定した前記回転カウント及び前記回転位置を識別可能な情報を保存する不揮発性の記憶部」を備える点。 (b) 構成Eの観点における相違点 本件発明1においては、 「不揮発性の記憶部」が、「前記推定部が推定した」「前記回転位置」を保存するのに対して、 引用発明においては、 「FRAM」(不揮発性の記憶部)が、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能な情報である「最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)」を保存しているが、「iC-PMX」(推定部)が推定した「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を「FRAM」に保存する点は特定されていない点。 (キ) 構成Fの観点(回転位置の推定について) a 構成Fは、「前記推定部は、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第1象限であると推定し、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第2象限であると推定し、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第3象限であると推定し、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第4象限であると推定[する]」ことである。 b 前記(オ)dにおいて検討したとおり、引用発明の「パルスの生成位置(J、K、L、M)」は、本件発明1の「回転位置」に相当するところ、より詳細には以下の(a)~(d)に示す相当関係が成り立つ。なお、構成Fは、要するに、二通りの発電極性と二通りの磁化極性の組み合わせとして、合計四通りの組み合わせが想定され、それらを四つの象限に対応させることにより、回転位置の推定を行うことを規定したものであると解するのが相当であり、組み合わせとして四通りが形成されるのであれば極性自体の符号をどのように規定するかは定義の問題にすぎず、本件発明1と引用発明の対比において、符号自体が反対になっていたとしても、そのことは相違点にはならないとして相当関係を論じている。 (a) 引用発明において、「PPが-(0)」、「MPが+(1)」であるとき「パルスの生成位置」が「M(0度~90度)」であることは、本件発明1において、「前記発電極性が+であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第1象限である」ことに相当する。 (b) 引用発明において、「PPが-(0)」、「MPが-(0)」であるとき」「パルスの生成位置」が「L(90度~180度)」であることは、本件発明1において、「前記発電極性が+であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第2象限である」ことに相当する。 (c) 引用発明において、「PPが+(1)」、「MPが-(0)」であるとき」「パルスの生成位置」が「K(180度~270度)」であることは、本件発明1において、「前記発電極性が-であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第3象限である」ことに相当する。 (d) 引用発明において、「PPが+(1)」、「MPが+(1)」であるとき」「パルスの生成位置」が「J(270度~0度)」であることは、本件発明1において、「前記発電極性が-であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第4象限である」ことに相当する。 c したがって、本件発明1と引用発明の構成Fの観点における一致点及び相違点は、次のとおりである。 (a) 構成Fの観点における一致点 「前記発電極性が+であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第1象限であると識別可能であり、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第2象限であると識別可能であり、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第3象限であると識別可能であり、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第4象限であると識別可能である」点。 (b) 構成Fの観点における相違点 本件発明1においては、 「推定部」が「回転位置」を「推定」するのに対して、 引用発明においては、 「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能であるが、「iC-PMX」(推定部)が「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を推定する点については特定されていない点。 ウ 一致点及び相違点の認定 前記イの対比分析の検討結果をまとめると、本件発明1と引用発明は、次の(ア)の一致点において一致し、後記(イ)の相違点において相違する。 (ア) 一致点 「回転位置の測定対象に取り付けられる磁石と、 バルクハウゼン特性を利用して、前記磁石の磁気エネルギーを電気パルスに変換する発電素子と、 前記磁石の磁化極性を測定する磁気センサと、 前記発電素子の発電極性と、前記磁気センサにより測定された前記磁石の磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転位置を識別可能なものとし、少なくとも、前記発電極性と、前記磁化極性と、に基づいて、前記測定対象の回転カウントを推定する推定部と、 前記推定部が推定した前記回転カウント及び前記回転位置を識別可能な情報を保存する不揮発性の記憶部と、 を有し、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第1象限であると識別可能であり、 前記発電極性が+であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第2象限であると識別可能であり、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がSである場合、前記回転位置が第3象限であると識別可能であり、 前記発電極性が-であって、前記磁化極性がNである場合、前記回転位置が第4象限であると識別可能である、エンコーダ」である点。 (イ) 相違点 本件発明1においては、 「推定部」が、「発電極性」と「磁化極性」とに基づいて「回転位置」を「推定」し、「前記発電極性と、前記磁化極性と、前回推定した前記回転位置」とに基づいて「回転カウントを推定[し]」、 「不揮発性の記憶部」が、「前記推定部が推定した」「前記回転位置」を保存するのに対して、 引用発明においては、 「ウィーガントパルス極性(PP)」及び「磁気極性(MP)」に基づいて「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能なものとし、「iC-PMX」(推定部)が、「ウィーガントパルスのパルス極性(PP)」と「磁気極性(MP)」と「パルスの生成位置(J、K、L、M)」とに基づいて「回転数カウント」を推定しているが、「iC-PMX」が、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を推定し、前回推定した「パルスの生成位置(J、K、L、M)」に基づいて「回転数カウント」を推定する点は特定されておらず、 「FRAM」(不揮発性の記憶部)が、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能な情報である「最後のウィーガントパルスのパルス極性(PP)及び回転方向(DIR)」を保存しているが、「iC-PMX」(推定部)が推定した「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を「FRAM」に保存する点は特定されていない点。 エ 相違点についての判断 引用発明においては、「新しいウィーガントパルスが発生すると」、「iC-PMX」(推定部)が「新しいPP値及びDIR値」を「過去の値」と「比較」し、「回転数カウント」を推定したうえで「インクリメント又はデクリメント」している(前記イ(オ)e(a)i、iii、fを参照)。 ここで、引用発明においては、「通常の動作の下では、多回転カウントはJ及びMにおいてインクリメント及びデクリメントされ、K及びLにおけるウィーガントパルスはFRAMに記録されるが、カウント変化は生じ[ない]」としており、「パルスの生成位置」がJ、K、L、Mのいずれであるかにより、インクリメント、デクリメント、カウント変化なしとしている(前記イ(オ)e(b)iiiを参照)。 また、当該「カウンタ」の「インクリメント又はデクリメント」に関して、摘記事項(サ)の表2には、PP値、DIR値だけでなく、これらの組に対応するパルスの生成位置(J、K、L、M)も記載されている。 以上を踏まえれば、引用発明においては、PP値、DIR値を利用しつつも、結局のところ、「パルスの生成位置(J、K、L、M)」に基づいて「回転数カウント」を推定していることが理解できる。 さらに、引用発明においては、「ウィーガントパルス極性(PP)」及び「磁気極性(MP)」に基づいて「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を識別可能なものとしている。 そうすると、引用発明において、「iC-PMX」が「新しいPP値及びDIR値」を「過去の値」と「比較」し、「回転数カウント」を推定する構成に代えて、新しい「ウィーガントウィーガントパルス極性(PP)」及び「磁気極性(MP)」に基づいて、識別可能なものとされていた「パルスの生成位置(J、K、L、M)」を推定し(「回転位置を推定」することに相当。)、これを過去の「パルスの生成位置(J、K、L、M)」と比較することにより(「前回推定した前記回転位置」に基づくことに相当。)、「回転数カウント」を推定する構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。 また、当該構成とした場合において、「FRAM」に「iC-PMX」が推定した「パルスの生成位置(J、M、K、L)」を保存させることは当業者にとって自明の事項である。 したがって、引用発明において、前記相違点に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 オ 総合評価 前記エにおいて検討したとおり、前記相違点に係る本件発明1の構成は、格別のものではなく、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本件発明1の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件発明2について ア 引用発明においては、「パルスの生成位置」が「J(270度~0度)」、「M(0度~90度)」、「K(180度~270度)」、「L(90度~180度)」であり、各々90度の領域で分割されている。 イ したがって、本件発明2は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件発明3~5について ア 引用発明においては、「ウィーガントワイヤセンサの真上に配置されたダイポール磁石を用いて、約180度の間隔で一回転当たり二つのウィーガントパルス(一つは正、一つは負)が生成され、時計回りに回転する場合、ウィーガントパルスはJ及びLで生成され、反時計回りに回転する場合、ウィーガントパルスはK及びMで生成され」るところ、「新しいウィーガントパルスが発生すると、新しいPP値及びDIR値が過去の値と比較され、カウンタがインクリメント又はデクリメントされ」るものである。 イ そして、前記(3)エにおいて検討した事項を踏まえると、引用発明において「新しいウィーガントパルスが発生すると」、「カウンタ」を「インクリメント又はデクリメント[する]」ことから、本件発明3、4において「発電素子が発電したときに」「回転カウント」及び「回転位置」を「推定」すること、並びに、本件発明5において「発電素子が発電したときに」「回転カウントを更新する」ことが導出される。 ウ したがって、本件発明3~5は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。なお、本件発明4、5については、本件発明1の読み替えに倣って、同様に読み替えた後で進歩性の判断を行うこととした(前記(3)アを参照)。 (6) 本件発明6について ア 引用発明においては、「ラントパルス」を考慮して「カウント」の「インクリメント」又は「デクリメント」を行っており、このことは、本件発明6において「前記発電素子が発電不良を起こして、前記回転カウントに誤差が生じた場合、前記回転カウントを補正する」ことに相当する。 イ したがって、本件発明6は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7) 本件発明7について ア 補正処理を行う場合に、補正テーブルを用いることは例示するまでもなく周知の技術であるところ、かかる周知技術を踏まえて、引用発明において、本件発明7に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 イ したがって、本件発明7は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8) 本件発明8~10について ア 引用発明においては、「電源投入時に、外部MCU」が「外部アブソリュート一回転モジュールから一回転角度を計算」しているところ、引用発明の「外部アブソリュート一回転モジュール」及び「外部MCU」は、本件発明8の「角度位置センサ」に相当する。 イ また、引用発明においては、「前回パルスについて、パルスの生成位置がJ(270度~0度)、PPが1、DIRが1であり、電源投入時の八分円について、i~iv(0度~180度)である場合、カウントを1インクリメントし」、「前回パルスについて、パルスの生成位置がM(0度~90度)、PPが0、DIRが0であり、電源投入時の八分円について、v~viii(180度~0度)である場合、カウントを1デクリメントする」補正処理が行われており、引用発明における当該補正処理は、本件発明10において「回転カウントを補正する」ことに相当する。 ウ そして、当該補正処理が「任意の電源投入時角度」に対する「多回転カウント」の「補正」であることを踏まえると、引用発明においては、当該補正処理の前に、「電源投入時」に「計算」した「一回転角度」に基づいて、「電源投入時の八分円」が「i~iv(0度~180度)」、「v~viii(180度~0度)」のいずれに該当するのかを推定する処理が行われているといえ、引用発明における当該処理は、本件発明9において「回転位置を推定する」ことに相当する。 エ したがって、本件発明8~10は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9) 本件発明11について ア 補正処理を行う場合に、補正テーブルを用いることは例示するまでもなく周知技術であるところ、かかる周知技術を踏まえて、引用発明を本件発明11に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 イ したがって、本件発明11は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当するから、取り消されるべきものである。 また、請求項1~11に係る特許は、同法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当するから、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700265

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