特許異議申立
2022-701171
黒色感光性樹脂組成物及びそれから調製される黒色カラムスペーサ
- 審判番号
- 2022-701171
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-533178
- 登録番号
- 7079198
- 請求日
- 2022年11月25日
- 審決日
- 2024年01月09日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人センダ国際特許事務所
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 清水 康司
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.113-YAA(G03F) / P1651.121-YAA(G03F) / P1651.537-YAA(G03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7079198号発明「黒色感光性樹脂組成物及びそれから調製される黒色カラムスペーサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7079198号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕について訂正することを認める。
特許第7079198号の請求項1ないし6、8に係る特許を維持する。
特許第7079198号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7079198号(請求項の数8。以下「本件特許」という。)に係る出願(以下、「本件特許出願」という。)は、2016年(平成28年)11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年1月18日、韓国、2016年11月18日、韓国)を国際出願日とする出願であって、令和4年5月24日にその特許権の設定登録がされ、同年6月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年11月25日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)より本件特許の請求項1ないし8に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされ、令和5年4月10日付けで取消理由が通知され、同年7月7日に訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求及び訂正を、それぞれ「本件訂正請求」及び「本件訂正」という。)及び意見書が提出された。
なお、申立人に対して、同年9月15日付けで、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は意見書を提出しなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、一群の請求項〔1ないし8〕に対してされたものであるところ、本件訂正は、次の訂正事項からなる(下線は訂正箇所を表す。)。なお、式1からみて、請求項1ないし3の記載中の「L1」は誤記であって、正しくは「L1」と認められるから、当該誤記を正して、各訂正事項を認定した。
(1)訂正事項1
請求項1に「(F)黒色着色剤と、を含み、
前記エポキシ化合物(C)が、」とあるのを、「(F)黒色着色剤と、を含み、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化1】
[図:0001409082000001.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化2】
[図:0001409082000002.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され、
前記エポキシ化合物(C)が、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4ないし6及び8も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項2に「カルド(cardo)骨格構造を有する、黒色感光性樹脂組成物。」とあるのを、「カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化3】
[図:0001409082000003.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化4】
[図:0001409082000004.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され、
前記エポキシ化合物(C)が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである、黒色感光性樹脂組成物。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項4ないし6及び8も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
請求項3に「カルド(cardo)骨格構造を有する、黒色感光性樹脂組成物。」とあるのを、「カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化5】
[図:0001409082000005.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化6】
[図:0001409082000006.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され、
前記エポキシ化合物(C)が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである、黒色感光性樹脂組成物。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4ないし6及び8も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1~6のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。」に訂正する。
2 訂正要件について
(1)訂正目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明、並びに当該請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項4ないし6及び8に係る発明の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」が、どのような構造を有するのかについて、特定されていなかったものを、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物に限定する訂正事項であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明、並びに当該請求項2の記載を引用する形式で記載された請求項4ないし6及び8に係る発明の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」が、どのような構造を有するのかについて、カルド骨格構造を有すること以外には特定されていなかったものを、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物に限定するとともに、訂正前の請求項2に係る発明、並びに当該請求項2の記載を引用する形式で記載された請求項4ないし6及び8に係る発明の「エポキシ化合物(C)」が、どのような構造を有するのかについて、特定されていなかったものを、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーに限定する訂正事項であるから、同ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明、並びに当該請求項3の記載を引用する形式で記載された請求項4、6及び8に係る発明の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」が、どのような構造を有するのかについて、カルド骨格構造を有すること以外には特定されていなかったものを、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物に限定するとともに、訂正前の請求項3に係る発明、並びに当該請求項3の記載を引用する形式で記載された請求項4、6及び8に係る発明の「エポキシ化合物(C)」が、どのような構造を有するのかについて、特定されていなかったものを、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーに限定する訂正事項であるから、同ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項4及び5は、特許請求の範囲から、請求項7及び請求項8のうち請求項7の記載を引用する部分を削除する訂正事項であるから、同ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加の有無
「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」が、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物であることは、本件訂正前の請求項7、及び本件訂正前の明細書の【0039】ないし【0044】等に記載された事項であり、「エポキシ化合物(C)」が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであることは、本件訂正前の請求項1、及び本件訂正前の明細書の【0065】等の記載された事項であるから、訂正事項1ないし3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、訂正事項4及び5は、特許請求の範囲から、請求項7及び当該請求項7の記載を引用する請求項8を削除する訂正事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項1ないし5は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項1ないし3は、訂正前の請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項4ないし6、8に係る発明、訂正前の請求項2に係る発明及び請求項2の記載を引用する形式で記載された請求項4ないし6、8に係る発明、訂正前の請求項3に係る発明及び請求項3の記載を引用する形式で記載された請求項4、6、8に係る発明に、それぞれ、限定を付す訂正事項であるから、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
また、訂正事項4及び5は、特許請求の範囲から、請求項7及び請求項8のうち請求項7の記載を引用する部分を削除する訂正事項であるから、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項1ないし5は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
3 小括
以上のとおりであって、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許の請求項1ないし6、8に係る発明
前記第2 3で述べたとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし6、8に係る発明(請求項7は削除された。以下、それぞれを「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」、「本件訂正発明8」といい、本件訂正発明1ないし6、8を総称して「本件訂正発明」ということがある。)は、本件訂正後の請求項1ないし6、8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、前記第2 1でも述べたとおり、請求項1ないし3の記載中の「L1」は誤記であって、正しくは「L1」と認められるから、本件訂正発明1ないし6、8は、当該誤記を正した次のものと認められる。
【請求項1】
黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化1】
[図:0001409082000007.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化2】
[図:0001409082000008.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され、
前記エポキシ化合物(C)が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである、黒色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記アクリルコポリマー(A)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、
前記アクリルコポリマー(A):前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)の重量比は、40~80:60~20であり、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化3】
[図:0001409082000009.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化4】
[図:0001409082000010.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され、
前記エポキシ化合物(C)が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである、黒色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記黒色着色剤(F)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)に基づいて10~60重量%の量で含まれ、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化5】
[図:0001409082000011.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化6】
[図:0001409082000012.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され、
前記エポキシ化合物(C)が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである、黒色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記黒色着色剤(F)が、前記着色剤の総重量(固形分に基づく)を基準に90重量%以上の黒色無機着色剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記黒色着色剤(F)が、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)に基づいて10~60重量%の量で含まれる、請求項1又は2に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記黒色着色剤(F)が、前記着色剤の総重量(固形分に基づく)を基準に0~10重量%の黒色有機着色剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記黒色感光性樹脂組成物は、前記黒色感光性樹脂組成物が1μmの厚さを有するフィルムに硬化されるとき、0.5~2.5の光学密度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
第4 取消理由通知に記載された取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし8に係る特許に対して、令和5年4月10日付けで通知された取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(新規性):
本件特許の請求項2、3、5、8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3又は甲4に記載された発明であるから、請求項2、3、5、8に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項3、8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5又は甲6に記載された発明であるから、請求項3、8に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性):
本件特許の請求項2、3、5、8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3又は甲4に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、3、5、8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項3、8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5又は甲6に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(サポート要件):
本件明細書の発明の詳細な説明の記載や、技術常識からは、「(B)エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」にカルド骨格構造を有する物質を、「(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物」にエポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーを、それぞれ使用したもの以外においても、発明の課題を解決できると当業者が認識することができないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由4(明確性要件):
「(B)エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」という発明特定事項中の「それから誘導される」という記載では、エポキシ樹脂のどの部位に対して、どのような化学変換や構造変換などを施した化合物を指すのかも特定されていないため、当該発明特定事項における技術範囲が明確でないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由1及び2で引用した引用例及び参考資料は、次のとおりである。
甲3 韓国公開特許第10-2016-0002242号公報(主引用例)
甲4 韓国公開特許第10-2014-0141339号公報(主引用例)
甲5 特開2014-137466号公報(主引用例)
甲6 韓国公開特許第10-2014-0147062号公報(主引用例)
甲9 国際公開第2013/129403号(参考資料)
2 引用例
(1)甲3
ア 甲3の記載
甲3は、本件特許の最先の優先日より前の2016年1月7日に公開された韓国の公開公報であるところ、当該甲3には、次の記載がある(原文は省略し、日本語訳のみ記載した。)。
(ア) 「技術分野
[0001]本基材はブラックコラムスペーサの製造方法、前記製造方法によって製造されたブラックコラムスペーサ及び前記ブラックコラムスペーサを含むカラーフィルターに関する。
背景技術
[0002]感光性樹脂組成物はカラーフィルター、液晶表示材料、有機発光素子、ディスプレイパネル材料などの表示素子の製造に必須な材料である。 例えば、カラー液晶ディスプレイなどのカラーフィルターには表示コントラストや発色効果を高めるため、レッド(red)、グリーン(green)、ブルー(blue)などの着色層の間の境界部分にブラックマトリクスが必要で、このブラックマトリクスは主に感光性樹脂組成物に形成されることである。
[0003]最近には前記ブラックマトリクス材料を、液晶層を間に置いて存在する二つのTFTとC/F基板の間を支持するコラムスペーサで使用しようとする努力が成り立っているが、前記コラムスペーサをブラックコラムスペーサという。
[0004]前記ブラックコラムスペーサの機能を具現するためには圧縮変位、弾性回復率、破壊強度などの基本機能が要求されることはもちろん、マスク(mask)を利用した露光量調節でブラックコラムスペーサパターンの段差を具現しなければならない。また、ブラックコラムスペでは最上層に存在して液晶汚染問題が発生することができるから、信頼性及び耐溶剤性(溶剤に対する耐化学性)も共に具現しなければならない。
発明の詳細な説明
発明が解決しようとする課題
[0005]一具現例は現象マージン、公正性及び耐溶剤性が優れたブラックコラムスペーサの製造方法を提供するためのことである。
・・・(中略)・・・
課題解決手段
[0008]一具現例は基板を準備する段階; 前記基板上に第1組成物を塗布する段階; 前記塗布された第1組成物を真空乾燥して第1有機膜を形成する段階; 前記第1有機膜上に第2組成物を塗布する段階; 前記塗布された第2組成物を加熱して第2有機膜を形成する段階; 及び前記第1有機膜及び第2有機膜を露光、現象及び硬化する段階を含むブラックコラムスペーサ製造方法を提供する。
・・・(中略)・・・
[0011]前記第1組成物はバインダー樹脂、反応性不飽和化合物、光重合開始剤、顔料及び溶媒を含むことができる。
・・・(中略)・・・
[0014]前記顔料は黒色顔料を含むことができ、前記黒色顔料は有機ブラック顔料及び/または無機ブラック顔料であることができる。 前記黒色顔料はアニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、リグニンブラック、ラクタム系有機ブラック、RGBブラック、カーボンブラックまたはこれらの組合せを含むことができる。
[0015]前記バインダー樹脂はカルド系バインダー樹脂、アクリル系バインダー樹脂またはこれらの組合せを含むことができる。
・・・(中略)・・・
発明の効果
[0024]一具現例による製造方法によると現象マージン、公正性及び耐溶剤性が優れたブラックコラムスペーサを提供することができ、さらに優れた公正性によって費用節減効果も大きい。」
(イ) 「[0150]一方、前記第1組成物はマロン酸; 3-アミノ-1、2-プロパンジオール; シラン系カップリング剤; レベリング剤; フッ素系界面活性剤; ラジカル重合開始剤; またはこれらの組合せの添加剤をさらに含むことができる。
[0151]前記シラン系カップリング剤は基板との密着性などを改善するためにビニル基、カルボキシル基、メタクリルオキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有することができる。
[0152]前記シラン系カップリング剤の例では、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルツリーアセトキシ室とは、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ室とはなどをあげることができるし、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。」
(ウ) 「[0178](実施例)
[0179](第1組成物及び第2組成物製造)
[0180]製造例1ないし製造例3
[0181]下記言及された構成成分を利用して下記表1ないし表3に示した組成で各製造例1ないし製造例3による有機膜組成物を製造する。
[0182]具体的に、溶媒に光重合開始剤を溶かした後30分以上常温で十分に撹拌した後、ここにバインダー樹脂と反応性不飽和化合物を順次に添加して約1時間の間常温で撹拌する。続いて、得られた前記撹拌液にその他添加剤を入れて約10分間撹拌した後、顔料を投入して2時間以上常温で撹拌する(製造例2の場合、顔料を投入しない)。続いて前記生成物を3回濾過して不純物を除去することで、有機膜組成物を製造する。
[0183]製造例1: 第1有機膜の製造
[0184] 表1
(単位:g)
[図:0001409082000013.jpg]
[0185](前記表1で、ラクタム系有機ブラックは下記化学式Aに表示される。
[0186][化学式A]
[0187]
・・・(中略)・・・
[0211]評価1: 光学密度(Optical Density;OD)評価
[0212]製造例1ないし製造例3で製造された有機膜組成物を10cm*10cmのIZO基板の上にスピンコーティング機(Mikasa社、Opticoat MS-A150)を使用してそれぞれ1.5μm厚さにコーティングした後、熱板(hot-plate)を利用して80℃で150秒間ソフト-ベーキング(soft-bakingまたはpre-baking)と、露光機(Ushio社、HB-50110AA)とフォトマスクを使用して50mJに露光した。続いて現像機(SVS社、SSP-200)を使用して0.2重量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液で150秒間現像して、オーブンで230℃で30分間ハード-ベーキング(Hard-bakingまたはpost-baking)を進行して、パターニングされた試片を得ることができた。 前記試片の光学密度を測定して、下記表4に示した。
[0213] 表4
[図:0001409082000014.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
甲3の[0184]の表1から、製造例1の組成物において、組成物(固形分に基づく)中でのアクリル系バインダー樹脂及びカルド系バインダー樹脂の含有比率が、いずれも22.5質量%(≒[4.82/(4.82+4.82+2.566+0.464+6.397+1.438+0.941)]×100)であることが把握されるから、前記ア(ア)ないし(ウ)で摘記した甲3の記載から、甲3には、製造例1の組成物として、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「成分として以下の物質を以下の含量で含む組成物であって、
アクリル系バインダー樹脂の含有比率は22.5質量%であり、カルド系バインダー樹脂の含有比率は22.5質量%であり、アクリル系バインダーとカルド系バインダーとの質量比は50:50である、
組成物。
成分 含量(単位:g)
バインダー樹脂
カルド系バインダー樹脂(V259ME、新日本製鉄社) 4.82
アクリル系バインダー樹脂(BX-04、日本触媒社) 4.82
反応性不飽和化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本触媒社)2.566
光重合開始剤
OXE01(BASF社) 0.464
溶媒
PGMEA 63.211
EDM 15.343
顔料
ラクタム系有機ブラック(BASF社)を有するミルベース(Mikun社PWC18%) 6.397
Carbon blackを有するMill base(Tokushiki社PWC25%) 1.438
添加剤
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S-510、Chisso社) 0.941」
(2)甲4
ア 甲4の記載
甲4は、本件特許の最先の優先日より前の2014年12月10日に公開された韓国の公開公報であるところ、当該甲4には、次の記載がある(原文は省略し、日本語訳のみ記載した。)。
(ア) 「技術分野
[0001]本基材は感光性樹脂組成物、これを利用して製造されたブラックスペーサ、及び前記ブラックスペースを含むカラーフィルターに関する。
背景技術
[0002]感光性樹脂組成物はカラーフィルター、液晶表示材料、有機発光素子(EL)、ディスプレイパネル材料などの表示素子の製造に必須な材料である。例えば、カラー液晶ディスプレイなどのカラーフィルターには表示コントラストや発色効果を高めるため、レッド(red)、グリーン(green)、ブルー(blue)などの着色層の間の境界部分に遮光層が必要で、この遮光層は主に感光性樹脂組成物に形成されることである。
[0003]最近にはこのような遮光層材料を、液晶層を間に置いて存在する二つのTFTとC/F基板の間を支持するブラックスペーサ(またはブラックフォトスペーサ)で使用しようとする努力も成り立っている。特にこの場合、ブラックスペーサの機能を具現するためには圧縮変位、弾性回復率、破壊強度など基本機能が要求されることはもちろん、ハーフトーンマスク(half tone mask)を利用した露光量調節でブラックスペーサパターンの段差を具現しなければならないだけでなくブラックスペーサの上層膜であるポリイミドの溶媒及び再加工(rework)のための溶液に対する耐化学性が要求される。
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004]本発明の一具現例は耐熱性、耐化学性、及び信頼性が優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
・・・(中略)・・・
課題解決手段
[0007]本発明の一具現例では、基板上に一定厚さをコーティングして硬化した場合、特定範囲の光学密度(Optical Depth:O.D.)及び透過率を示す感光性樹脂組成物を提供する。
[0008]具体的に、前記組成物は、(A)有機ブラック顔料または混合して黒色を示す有機混合顔料を含む着色剤; (B) バインダー樹脂; (C) 光重合性単量体; (D) 光重合開始剤 (E) 無機フィラー; 及び(F)溶媒を含む黒色感光性樹脂組成物として、前記組成物は基板上に4μmの厚さにコーティングして硬化した後得られるO.D. 仮2.0以上で、950nm波長領域での透過率が12%以上の感光性樹脂組成物を提供する。
・・・(中略)・・・
発明の効果
[0024]前記感光性樹脂組成物を使用する場合、耐熱性、耐化学性、及び信頼性が優れて膜段差の形成性及び保存性が優れたブラックスペーサを具現することができる。」
(イ) 「[0138](G) その他添加剤
[0139]前記感光性樹脂組成物は塗布の時染みやまだらを防止して、レベリング特性のために、また迷ち上による残渣の生成を防止するために、マロン酸; 3-アミノ-1、2-プロパンジオール; ビニル基または(メタ)アクリルオキシ基を含むシラン系カップリング剤; レベリング剤; フッ素系界面活性剤; ラジカル重合開始剤などのその他添加剤をさらに含むことができる。
[0140]前記シラン系カップリング剤の例では、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルツリーアセトキシ室とは、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ室とはなどをあげることができるし、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。」
(ウ) 「[0156]以下、本発明の望ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の望ましい一実施例のみ、本発明が下記実施例によって限定されることではない。
[0157]
[0158](感光性樹脂組成物製造)
[0159]感光性樹脂組成物製造に使われる成分の仕様は次のとおりである。
[0160](A) 光重合開始剤
[0161]BASF社のOXE01を使用した。
[0162](B) バインダー樹脂
[0163](B-1) カルド系樹脂として、京仁洋行社のKBR101を使用した。
[0164](B-2) アクリル系樹脂として、日本触媒社のBX-04を使用した。
[0165](C) 光重合性化合物
[0166]ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用した。
[0167](D) 着色剤
[0168](D-1) Basf社OBP(ラクタム系有機ブラック)製品を含むミルベース(mill base)(Mikuni社)を使用した。
[0169](D-2) カーボンブラックを含むミルベース(Tokushiki社)を使用した。
[0170](E) 無機フィラー
[0171]Evonik社のヒュームドシリカを使用した。
[0172](F) 溶媒
[0173](F-1) プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を使用した。
[0174](F-2) エチレングリコールジメチルエーテル(EDM)を使用した。
[0175](G) 添加剤
[0176]シランカップリング剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Chisso社のS-510)を使用した。
[0177]
[0178]実施例1と比較例1ないし3: 感光性樹脂組成物の製造
[0179]下記表1の組成で各成分を混合して感光性樹脂組成物を製造した。具体的に、溶媒に光重合開始剤を溶解させた後約30分間常温で十分に撹拌した。ここにバインダー樹脂と光重合性化合物を添加して1時間の間撹拌した。ここに添加剤を投入して、着色剤を添加して約2時間の間撹拌した。前記溶液に対して3回にわたった濾過を行って不純物を除去して、感光性樹脂組成物を製造した。
[0180] 表1
[図:0001409082000015.jpg]
[0181]
[0182]評価1: 光学密度(Optical Depth)及び透過率測定評価
[0183]実施例1と比較例1ないし3の感光性樹脂組成物をガラス基板上にスピンコーティング方式で5μm以下の厚さに塗布した後、90℃で1分間1次加熱(プリベーク)して溶媒を除去することで塗膜を形成した。以後、マーキュリー(mercury)光源を利用して300ないし450nmの活性線を120mJ/cm2の露光量で調査した。以後形成されたパターンを220℃で20分間2次加熱(ポストベーク)して、均等な厚さ(4μm)のブラックスペーサフィルムを形成した後、950nm領域での透過率及びO.D. (Optical Depth)を測定した。
[0184]O.D.増えた分光光度計でブラックスペーサフィルムを透過した光の照度を測定する方式で測定して、950nmでの透過率はUV/Vis spectroscopyで該当の波長での透過度を測定する。
[0185] 表2
[図:0001409082000016.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
甲4の[0180]の表1から、実施例1の組成物において、バインダー樹脂(B-1)及びバインダー樹脂(B-2)の固形分に基づく含有比率が、いずれも20.7質量%(≒[4.82/(0.464+4.82+4.82+2.566+6.397+1.438+1.84+0.941)]×100)であることが把握されるから、前記ア(ア)ないし(ウ)で摘記した甲4の記載から、甲4には、実施例1の組成物として、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「成分として以下の物質を以下の含量で含む組成物であって、
(B-2)アクリル系樹脂の含有比率は20.7%であり、(B-1)カルド系樹脂の含有比率は20.7質量%であって、(B-2)アクリル系樹脂と(B-1)カルド系樹脂との質量比は50.0:50.0である、
組成物。
成分 (wt%)
(A)光重合開始剤 OXE01(BASF社) 0.464
(B)バインダー樹脂
(B-1)カルド系樹脂 KBR101(京仁洋行社) 4.82
(B-2)アクリル系樹脂 BX-04(日本触媒社) 4.82
(C)光重合性化合物 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
2.566
(D)着色剤
(D-1) Basf社OBP(ラクタム系有機ブラック)製品を含むミルベース(mill base)(Mikuni社) 6.397
(D-2) カーボンブラックを含むミルベース(Tokushiki社) 1.438
(E)無機フィラー ヒュームドシリカ(Evonik社) 1.840
(F)溶媒
(F-1) プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 61.371
(F-2) エチレングリコールジメチルエーテル(EDM) 15.343
(G)添加剤 γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Chisso社のS-510) 0.941」
(3)甲5
ア 甲5の記載
甲5は、本件特許の最先の優先日より前の平成26年7月28日に公開された公開公報であるところ、当該甲5には、次の記載がある。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性着色組成物、着色硬化膜及び表示素子に関わり、より詳しくは、透過型あるいは反射型のカラー液晶表示素子、固体撮像素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等に用いられる着色硬化膜の形成に用いられる感放射線性着色組成物、当該着色組成物を用いて形成された着色硬化膜、並びに当該着色硬化膜を具備する表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
着色感放射線性組成物を用いてカラーフィルタを製造するに当たっては、基板上に、顔料分散型の着色感放射線性組成物を塗布して乾燥したのち、乾燥塗膜を所望のパターン形状に放射線を照射(以下、「露光」という。)し、現像することにより、各色の画素を得る方法(例えば、特許文献1~2参照。)が知られている。また、カーボンブラックを分散させた光重合性組成物を利用してブラックマトリックスを形成する方法(例えば、特許文献3参照。)も知られている。さらに、顔料分散型の着色樹脂組成物を用いてインクジェット方式により各色の画素を得る方法(例えば、特許文献4参照。)も知られている。
【0003】
表示素子に対しては、近年さらなる大画面化、高輝度化、薄型化等が求められている。このため、表示素子を構成する画素やブラックマトリックス等を形成するために用いられる着色樹脂組成物に対しても、工程時間の短縮及びコスト削減の観点も勘案して、高感度化、高輝度化、高解像度化等が求められる。
また、カラーフィルタの製造においては、一般に200℃を超える高温工程を経ることから、カラーフィルタには高い耐熱性が求められる。このように、着色樹脂組成物には複数の特性を高い水準で両立することが要求される。
【0004】
このような中、感放射線性樹脂組成物の高感度化に対する対応として、オキシムエステル系光重合開始剤の使用が検討されている(例えば、特許文献5~7参照)。しかしながら、かかる光重合開始剤によっても、感度、輝度、解像度、耐熱性等の複数の特性を高い水準で両立することは困難であった。また、このような従来の光重合開始剤を用いて硬化膜を形成すると硬化膜がやや黄変することがあるため、表示素子によっては適用が困難な場合がある。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、感度、輝度、解像度、耐熱性等の複数の特性を高い水準で両立できる着色硬化膜の形成に好適な着色組成物を提供することにある。さらに、本発明の課題は、当該着色組成物を用いて形成された着色硬化膜を具備する表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の構造を有する光重合開始剤を用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、(A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)重合性化合物及び(D)光重合開始剤を含有する感放射線性着色組成物であって、前記(D)光重合開始剤が、下記式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種(以下、「特定化合物」とも称する。)を含有するものである、感放射線性着色組成物(以下、単に「着色組成物」とも称する。)を提供するものである。
【0009】
【化1】
[図:0001409082000017.jpg]
【0010】
〔式(1)において、
R1及びR2は、相互に独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基を示すか、又はR1とR2とが互いに結合してフルオレン基を示し、
R3及びR4は、相互に独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、または炭素数4~20の複素環基を示し、
Xは、直接結合またはカルボニル基を示す。〕
【0011】
【化2】
[図:0001409082000018.jpg]
【0012】
〔式(2)において、
R1、R2、R3及びR4は、式(1)におけるR1、R2、R3及びR4と同義であり、
R5は、-R6、-OR6、-SR6、-COR6、-CONR6R6、-NR6COR6、-OCOR6、-COOR6、-SCOR6、-OCSR6、-COSR6、-CSOR6、-CN、ハロゲン、水酸基を示し、
R6は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、または炭素数4~20の複素環基を示し、
Xは、直接結合またはカルボニル基を示し、
aは0~4の整数を示す。〕
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0014】
本発明の着色組成物を用いれば、感度、輝度、解像度、耐熱性等の複数の特性を高い水準で両立する着色硬化膜を形成することができる。
しがたって、本発明の着色組成物は、カラー液晶表示素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等の表示素子、CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子の作製に極めて好適に使用することができる。」
(イ) 「【0055】
なお、上記フルオレン骨格を有するエポキシ化合物として、下記式(3)で表されるエポキシ化合物を用いることもできる。
【0056】
【化3】
[図:0001409082000019.jpg]
・・・(中略)・・・
【0075】
式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物としては、例えば、下記式(D-1)~(D-12)で表される化合物等が挙げられる。
【0076】
【化4】
[図:0001409082000020.jpg]
・・・(中略)・・・
【0097】
-添加剤-
本発明の着色組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。
添加剤としては、例えば、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリ(フロオロアルキルアクリレート)類等の高分子化合物;フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の界面活性剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2、2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2、6-ジ-t-ブチルフェノール等の酸化防止剤;2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;マロン酸、アジピン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、3-アミノ-1、2-プロパンジオール、2-アミノ-1、3-プロパンジオール、4-アミノ-1、2-ブタンジオール等の残渣改善剤;こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の現像性改善剤等を挙げることができる。」
(ウ) 「【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0126】
<バインダー樹脂の合成>
合成例1
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80質量部を仕込んで窒素置換した。80℃に加熱して、同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部、メタクリル酸20質量部、スチレン10質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート28質量部、N-フェニルマレイミド12質量部、こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)15質量部の混合溶液、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量部及び2、2'-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)6質量部の混合溶液を2時間かけて各々滴下し、この温度を保持して1時間重合した。その後、反応溶液の温度を90℃に昇温させ、さらに1時間重合することにより、バインダー樹脂溶液(B-1)(固形分濃度=40質量%)を得た。得られたバインダー樹脂は、Mw=10500、Mn=5900、Mw/Mn=1.78であった。
・・・(中略)・・・
【0130】
合成例5
500mL三口フラスコへプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200g、前記式(3)で表されるビスフェノールフルオレンエポキシ化合物235g(エポキシ当量235g/eq)、テトラメチルアンモニウムクロリド110mg、2、6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール100mg及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25mL/minの流量にてエアーを吹き込みながら110℃にて加熱溶解させた。酸価を1時間ごとに0.1mol/LのKOH溶液にて滴定を行い、酸価が1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌し、目的とするビスフェノールフルオレンエポキシアクリレートを得た。
このビスフルオレンエポキシアクリレート307gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400g、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g、臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、100℃にて4時間、加熱撹拌した。その後、テトラヒドロ無水フタル酸38gを加え、末端封止のため100℃にて4時間加熱撹拌することにより、バインダー樹脂溶液(B-5)(固形分濃度=40%)を得た。尚、酸無水物の消失は、IRスペクトルを用いて確認した。得られたバインダー樹脂はMw=8000、Mn=3500、Mw/Mn=2.28であった。
・・・(中略)・・・
【0131】
<顔料分散液の調製>
調製例1・・・(中略)・・・
【0135】
調製例5
ペリレンブラック12.0質量部、分散剤としてSOLSPERSE76500(ルーブリゾール株式会社製)12.3質量部、(固形分濃度=50質量%)、バインダー樹脂溶液(B-1)溶液を7.5質量部、溶媒としてメトキシブチルアセテート65.8質量部及び酢酸ブチル2.4質量部を用いて、ビーズミルにより混合・分散して黒色の顔料分散液(Bk-2)を調製した。
・・・(中略)・・・
【0147】
表1において、各成分は以下の通りである。
・・・(中略)・・・
C-2 :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(日本化薬株式会社製、商品名KAYARAD DPHA)
D-1 :前記式(D-3)で表される化合物
・・・(中略)・・・
D-8 :2、2'-ビス(2-クロロフェニル)-4、4'、5、5'-テトラフェニル-1、2'-ビイミダゾール(保土ヶ谷化学製)
D-9 :2-メルカプトベンゾチアゾール(和光純薬工業株式会社製)
E-1 :メガファックF-554(DIC株式会社製)の5質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液
・・・(中略)・・・
E-3 :3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製)
F-1 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
F-2 :3-メトキシブチルアセテート
・・・(中略)・・・
【0158】
実施例24
実施例1において、各成分の種類及び量を表7に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、黒色の着色組成物(S-31)を調製した。
【0159】
(4)ブラックスペーサーの形成
無アルカリガラス基板上にスピンナーを用いて、上記で調製した黒色の着色組成物(S-31)を塗布した後、100℃のホットプレート上で3分間プレベークして、膜厚3.5μmの被膜を形成した(塗布法)。
次いで、得られた被膜に、図1に示したType1のスペクトル分布を有する高圧水銀ランプ(Type1の光源)を用い、露光量を変量として、20μm角の残しパターンのフォトマスクを介して露光した。その後、水酸化カリウム0.05質量%水溶液を用いて25℃で現像した後、純水で1分間洗浄し、さらに230℃のオーブン中で30分間加熱(ポストベーク)することにより、ブラックスペーサーを形成した。
【0160】
(5)OD値の測定
上記(4)で形成したブラックスペーサーを用いて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用い透過スペクトルから下記式にてOD値を算出した。結果を表8に示す。
OD=-Log10Y
但し、Yは全光透過率を示す
・・・(中略)・・・
【0167】
実施例25~29及び比較例8~9
実施例24において、各成分の種類及び量を表7に示すように変更した以外は実施例24と同様にして、黒色の着色組成物(S-32)~(S-38)を調製した。次いで、黒色の着色組成物(S-31)に代えて黒色の着色組成物(S-32)~(S-38)を用いた以外は実施例24と同様にして、評価を行った。結果を表8~9に示す。なお、黒色の着色組成物(S-31)~(S-38)において、オキシム結合の含有量が等モルとなるように各着色組成物を調製した。
【0168】
【表7】
[図:0001409082000021.jpg]
【0169】
表7において、各成分の略号は、表1と同じである。
【0170】
【表8】
[図:0001409082000022.jpg]
」
イ 甲5に記載された発明
甲5の【0126】、【0130】、【0135】、【0168】の【表7】等の記載から、実施例28で用いている着色組成物S-35において、顔料分散液Bk-2中の、ペリレンブラックの質量は967×12.0/(12.0+12.3+7.5+65.8+2.4)=116.04g、分散剤の質量は967×(12.3×50/100)/(12.0+12.3+7.5+65.8+2.4)=59.4705g、バインダー樹脂(B-1)の質量は967×(7.5×40/100)/(12.0+12.3+7.5+65.8+2.4)=29.01gと算出され、着色組成物S-35中の全固形分に占める、ペリレンブラックの含有比率は31.4質量%(≒[116.04/((116.04+59.4705+29.01)+(180×40/100)+50+(30+5+5)+(5×5/100+2.5))]×100)と算出されるから、前記ア(ア)ないし(ウ)で摘記した甲5の記載に照らせば、甲5には、実施例28で用いている着色組成物S-35に係る発明として、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記【成分】からなる着色組成物S-35であって、
組成物中の全固形分に占める、ペリレンブラックの含有比率が31.4質量%である、
着色組成物S-35。
【成分】
顔料分散液
下記【顔料分散液Bk-2】 967質量部
樹脂溶液
下記【バインダー樹脂溶液B-5】 180質量部
重合性化合物
C-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(日本化薬株式会社製、商品名KAYARADDPHA) 50質量部
光重合開始剤
D-1:下記式(D-3)で表される化合物 30質量部
D-8:2、2'-ビス(2-クロロフェニル)-4、4'、5、5'-テトラフェニル-1、2'-ビイミダゾール(保土ヶ谷化学製) 5質量部
D-9:2-メルカプトベンゾチアゾール(和光純薬工業株式会社製) 5質量部
添加剤
E-1:メガファックF-554(DIC株式会社製)の5質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液 5質量部
E-3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製) 2.5質量部
溶媒
F-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
182質量部
F-2:3-メトキシブチルアセテート 493質量部
【顔料分散液Bk-2】
ペリレンブラック12.0質量部、分散剤としてSOLSPERSE76500(ルーブリゾール株式会社製)12.3質量部、(固形分濃度=50質量%)、下記【樹脂溶液(B-1)】溶液を7.5質量部、溶媒としてメトキシブチルアセテート65.8質量部及び酢酸ブチル2.4質量部を用いて、ビーズミルにより混合・分散することにより、調整される黒色の顔料分散液。
【バインダー樹脂溶液(B-5)】
500mL三口フラスコへプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200g、下記【式(3)】で表されるビスフェノールフルオレンエポキシ化合物235g(エポキシ当量235g/eq)、テトラメチルアンモニウムクロリド110mg、2、6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール100mg及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25mL/minの流量にてエアーを吹き込みながら110℃にて加熱溶解させ、酸価を1時間ごとに0.1mol/LのKOH溶液にて滴定を行い、酸価が1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌することにより、ビスフェノールフルオレンエポキシアクリレートを得、このビスフルオレンエポキシアクリレート307gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400g、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g、臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、100℃にて4時間、加熱撹拌し、その後、テトラヒドロ無水フタル酸38gを加え、末端封止のため100℃にて4時間加熱撹拌することにより、得られるバインダー樹脂溶液(固形分濃度=40%、得られたバインダー樹脂はMw=8000、Mn=3500、Mw/Mn=2.28)。
【バインダー樹脂溶液(B-1)】
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80質量部を仕込んで窒素置換し、80℃に加熱して、同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部、メタクリル酸20質量部、スチレン10質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート28質量部、N-フェニルマレイミド12質量部、こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)15質量部の混合溶液、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量部及び2、2'-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)6質量部の混合溶液を2時間かけて各々滴下し、この温度を保持して1時間重合し、その後、反応溶液の温度を90℃に昇温させ、さらに1時間重合することにより、得られるバインダー樹脂溶液(固形分濃度=40質量%、得られたバインダー樹脂はMw=10500、Mn=5900、Mw/Mn=1.78)。
【式(D-3)】
[図:0001409082000023.jpg]
【式(3)】
[図:0001409082000024.jpg]
」
(4)甲6
ア 甲6の記載
甲6は、本件特許の最先の優先日より前の2014年12月29日に公開された韓国の公開公報であるところ、当該甲6には、次の記載がある(原文は省略し、日本語訳のみ記載した。)。
(ア) 「技術分野
・・・(中略)・・・
[0002]本明細書は感光性樹脂組成物、これを利用して製造されたカラーフィルター、これを利用して製造されたスペーサ及びこれを利用して製造された液晶ディスプレイ装置に関する。
背景技術
[0003]遮光性感光性樹脂組成物はカラーフィルター、液晶表示材料、有機発光素子(EL)、ディスプレイパネル材料などの表示素子の製造に必須な材料である。例えば、カラー液晶ディスプレイなどのカラーフィルターには表示コントラストや発色効果を高めるため、レッド(red)、グリーン(green)、ブルー(blue)などの着色層間の境界部分に遮光層が必要で、この遮光層は主に黒色感光性樹脂組成物に形成されることである。
[0004]最近には遮光層材料を液晶層を間に置いて存在する二つの基板(薄膜トランジスタとカラーフィルター)の間を支持するコラムスペーサ(またはフォトスペーサ)で使用しようとする努力も成り立っている。特にこの場合、コラムスペーサには高い絶縁性が要求される。
[0005]また、有機化合物に比べて電気抵抗が小さな無機界化合物を使用している遮光層材料の絶縁性は十分ではなくて、顔料分散型感光性樹脂組成物に対する顔料の割合が相対的に増加するため、感度及び現象マージンが著しく悪くなって遮光層及びコラムスペーサパターン形状が満足なことを得ることができない問題点がある。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0007]本明細書は感光性樹脂組成物、これを利用して製造されたカラーフィルター、これを利用して製造されたスペーサ及びこれを利用して製造された液晶ディスプレイ装置を提供しようとする。
課題解決手段
[0008]本明細書は、
[0009]a)アルカリ可溶性バインダー樹脂、b)エポキシ基を有する樹脂、c)エチレン性不飽和二重結合を有する多官能性モノマー及びd)光重合開始剤を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
・・・(中略)・・・
発明の効果
[0013]本明細書による感光性樹脂組成物は遮光層を製造することにおいて、優れた光学密度を示す。また、スペーサを製造することにおいて、低い誘電率を示して、同時に高い圧縮変位及び回復率を示して、パターン形状が良好に示して、ポストベーク段階でポストベーク時間による段差形成差を減少させる。また、本明細書による感光性樹脂組成物は遮光層及びスペーサを製造するのに利用されることができて、液晶ディスプレイ全体の工程を縮めることができ、材料を一つで統合することで材料費節減にも助けになることができる。」
(イ) 「[0164]実施例1
[0165]有機遮光性顔料分散液(トクシキサで製造された商品名BK-4731:16重量%の着色剤含有)1165重量部に対して、アルカリ可溶性カルド系バインダー{アクリル酸が付加したビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート/1、3-シクロヘキシルジイソシアネート(モル比65/35、重量平均分子量5000、酸価80KOHmg/g)}25重量部;アルカリ可溶性アクリル系バインダー{ベンジルメタアクリレート/N-フェニルマレイミド/スチレン/メタアクリル酸(モル比60/10/12/18、重量平均分子量15000、酸価80KOHmg/g)}67重量部;エポキシ基を有する樹脂でニホンカヤク株式会社で製造された商品名EOCN1020 3重量部、エチレン性不飽和二重結合を有する多官能性モノマーでジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)384重量部、光重合開始剤でエタノン-1-(9-エチル)-6-(2-メチルベンゾイル-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)45重量部;密着促進剤で3-メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン6重量部;レベリング剤でBYK化学社で製造された商品名BYK331 1重量部;溶媒でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート429重量部、3-メトキシブチルアセテート1533重量部及びジエチレングリコールメチルブチルエーテル184重量部を混合した。
[0166]その次、前記混合物を5時間の間撹拌して遮光性スペーサ感光性樹脂組成物を製造した。
[0167]前記と一緒に製造した感光性樹脂組成物溶液を硝子にスリットコッターを利用して150mm/secにコーティングした後、65Paまで減圧乾燥(VCD)を進行した後約100℃で2分間電熱処理して約3.0μm厚さの塗膜を形成した。
[0168]その次、室温で冷却した後、ホトマスクを利用して高圧水銀ランプ下で40mJ/cm2のエネルギーで露光させた。前記露光された基板を25℃の温度で0.045%のKOH水溶液からスプレー方式で現像した後、純粋に洗浄して乾燥させて230℃のコンベクションオーブンで20分間ポストベーク(post-bake)した。
[0169]前記と一緒に取得したフィルムは各工程による表面欠点が全くないきれいな塗膜で得られたし、膜厚さが3.0μmでパターンの脱落がなかったし、優れた円形のスペーサパターンを見せたし、ポストベークを追加で進行時にも段差が安定的に具現される特性を見せた。」
イ 甲6に記載された発明
甲6の[0165]の記載から、実施例1に係る遮光性スペーサ感光性樹脂組成物中のの全固形分に占める、有機遮光性顔料の含有比率は26.0質量%(≒[(1165×16/100)/((1165×16/100)+25+67+3+384+45+6+1)]×100)と算出されるから、前記ア(ア)及び(イ)で摘記した甲6の記載に照らせば、甲6には、実施例1に係る遮光性スペーサ感光性樹脂組成物に係る発明として、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機遮光性顔料分散液(トクシキサで製造された商品名BK-4731:16重量%の着色剤含有)1165重量部に対して、アルカリ可溶性カルド系バインダー{アクリル酸が付加したビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート/1、3-シクロヘキシルジイソシアネート(モル比65/35、重量平均分子量5000、酸価80KOHmg/g)}25重量部;アルカリ可溶性アクリル系バインダー{ベンジルメタアクリレート/N-フェニルマレイミド/スチレン/メタアクリル酸(モル比60/10/12/18、重量平均分子量15000、酸価80KOHmg/g)}67重量部;エポキシ基を有する樹脂でニホンカヤク株式会社で製造された商品名EOCN1020 3重量部、エチレン性不飽和二重結合を有する多官能性モノマーでジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)384重量部、光重合開始剤でエタノン-1-(9-エチル)-6-(2-メチルベンゾイル-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)45重量部;密着促進剤で3-メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン6重量部;レベリング剤でBYK化学社で製造された商品名BYK331 1重量部;溶媒でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート429重量部、3-メトキシブチルアセテート1533重量部及びジエチレングリコールメチルブチルエーテル184重量部を混合し、当該混合物を5時間の間撹拌することにより、製造される遮光性スペーサ感光性樹脂組成物であって、
組成物中の全固形分に占める、有機遮光性顔料の含有比率は26.0質量%である、
遮光性スペーサ感光性樹脂組成物。」
3 合議体の判断
(1)甲3を主引用例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 本件訂正発明2について
(ア)対比
甲3発明の「アクリル系バインダー樹脂(BX-04、日本触媒社)」、「カルド系バインダー樹脂(V259ME、新日本製鉄社)」、「γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S-510、Chisso社)」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本触媒社)」、「OXE01(BASF社)」及び「『ラクタム系有機ブラック(BASF社)』及び『Carbon black』」は、本件訂正発明2の「(A) アクリルコポリマー」、「(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」、「(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物」、「(D) 光重合性化合物」、「(E) 光開始剤」及び「(F) 黒色着色剤」にそれぞれ相当する。
また、甲3発明において、「アクリル系バインダー樹脂(BX-04、日本触媒社)」及び「カルド系バインダー樹脂(V259ME、新日本製鉄社)」は、いずれも、組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に31.9質量%含まれており、両者の質量比は50:50であるから、甲3発明は、本件訂正発明2の「前記アクリルコポリマー(A)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、
前記アクリルコポリマー(A):前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)の重量比は、40~80:60~20であ」るとの発明特定事項に相当する構成を有している。
また、甲3発明の「カルド系バインダー樹脂(V259ME、新日本製鉄社)」は、その名称から明らかなように、カルド(cardo)骨格構造を有している。
したがって、本件訂正発明2と甲3発明は、
「黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記アクリルコポリマー(A)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、
前記アクリルコポリマー(A):前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)の重量比は、40~80:60~20であり、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有する、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1-1:
本件訂正発明2の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」は、以下の式1
【化3】
[図:0001409082000025.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化4】
[図:0001409082000026.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表される「カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂」又はそれから誘導される化合物であるのに対して、
甲3発明の「カルド系バインダー樹脂(V259ME、新日本製鉄社)」が、どのような構造のエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物であるのかが、定かでない点。
相違点1-2:
本件訂正発明2の「(A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物(C)」は、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであるのに対して、
甲3発明の「γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S-510、Chisso社)」は、そのようなホモポリマー又はコポリマーでない点。
(イ)新規性について
少なくとも、相違点1-2は実質的な相違点であるところ、実質的な相違点が存在する以上、本件訂正発明2が、甲3発明であるということはできない。
(ウ)進歩性について
事案に鑑み、相違点1-2の容易想到性について判断する。
甲3の[0152]の記載から、甲3発明において、「γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S-510、Chisso社)」は、シラン系カップリング剤として用いられていることが理解されるところ、[0151]には、シラン系カップリング剤について、基板との密着性などを改善するためにビニル基やエポキシ基などの反応性置換基を有することができることが記載されているが、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物を、シラン系カップリング剤として用いることは、記載されていない。
また、甲3の[0152]には、シラン系カップリング剤の複数の具体例が例示されているものの、当該具体例中には、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物は、存在しない。
さらに、申立人が提出した他の証拠(甲1、2、4ないし9)をみても、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物を、シラン系カップリング剤として用いることは、記載されていない。
そうすると、甲3発明において、相違点1-2に係る本件訂正発明2の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)小括
前記(イ)及び(ウ)のとおり、本件訂正発明2は、甲3発明でなく、かつ、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、甲3を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
イ 本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲3発明を対比すると、甲3発明における組成物(固形分に基づく)中でのラクタム系有機ブラック(BASF社)とCarbon blackの合計含有比率が、36.5質量%(≒[(6.397+1.438)/(4.82+4.82+2.566+0.464+6.397+1.438+0.941)]×100)であるから、両者は、前記ア(ア)で認定した相違点1-1及び相違点1-2で相違し、その余の点で一致する。
したがって、前記ア(イ)及び(ウ)で述べたのと同様の理由で、本件訂正発明3は、甲3発明でなく、かつ、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、甲3を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
ウ 本件訂正発明5、8について
本件訂正後の請求項5は、請求項1及び2のいずれかの記載を引用する形式で記載されており、本件訂正後の請求項8は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されていて、本件訂正発明5は、本件訂正発明1又は2の全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当し、本件訂正発明8は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、本件訂正後の請求項1に係る特許については、甲3を主引用例とする取消理由1及び2は通知されておらず(なお、本件訂正発明1と甲3発明は、相違点1-1及び相違点1-2で相違するから、本件訂正発明2と同様の理由によって、本件訂正発明1は、甲3発明でなく、かつ、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。)、本件訂正後の請求項2及び3に係る特許については、前記ア及びイで述べたとおり、甲3を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできないから、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する本件訂正後の請求項5及び8に係る特許についても、甲3を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできない。
エ 甲3を主引用例とする取消理由1及び2のまとめ
前記ア(エ)、イ、ウのとおりであって、甲3を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項2、3、5、8に係る特許を取り消すことはできない。
(2)甲4を主引用例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 本件訂正発明2について
(ア)対比
甲4発明の「(B-2)アクリル系樹脂 BX-04(日本触媒社)」、「(B-1)カルド系樹脂 KBR101(京仁洋行社)」、「(G)添加剤 γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Chisso社のS-510)」、「(C)光重合性化合物 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」、「(A)光重合開始剤 OXE01(BASF社)」及び「『Basf社OBP(ラクタム系有機ブラック)製品』及び『カーボンブラック』」は、本件訂正発明2の「(A) アクリルコポリマー」、「(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」、「(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物」、「(D) 光重合性化合物」、「(E) 光開始剤」及び「(F) 黒色着色剤」にそれぞれ相当する。
また、甲4発明において、「(B-2)アクリル系樹脂 BX-04(日本触媒社)」及び「(B-1)カルド系樹脂 KBR101(京仁洋行社)」は、いずれも、組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に20.7質量%含まれており、両者の質量比は50:50であるから、甲4発明は、本件訂正発明2の「前記アクリルコポリマー(A)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、
前記アクリルコポリマー(A):前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)の重量比は、40~80:60~20であ」るとの発明特定事項に相当する構成を有している。
また、甲4発明の「(B-1)カルド系樹脂 KBR101(京仁洋行社)」は、その名称から明らかなように、カルド(cardo)骨格構造を有している。
したがって、本件訂正発明2と甲4発明は、
「黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記アクリルコポリマー(A)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)を基準に10~40重量%の量で含まれ、
前記アクリルコポリマー(A):前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)の重量比は、40~80:60~20であり、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、
前記エポキシ化合物(C)が、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点2-1:
本件訂正発明2の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」は、以下の式1
【化3】
[図:0001409082000027.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化4】
[図:0001409082000028.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表される「カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂」又はそれから誘導される化合物であるのに対して、
甲4発明の「(B-1)カルド系樹脂 KBR101(京仁洋行社)」が、どのような構造のエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物であるのかが、定かでない点。
相違点2-2:
本件訂正発明2の「(A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物(C)」は、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであるのに対して、
甲4発明の「(G)添加剤 γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Chisso社のS-510)」は、エポキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位を有するといえるものの、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するとはいえない点。
(イ)新規性について
少なくとも、相違点2-2は実質的な相違点であるところ、実質的な相違点が存在する以上、本件訂正発明2が、甲4発明であるということはできない。
(ウ)進歩性について
事案に鑑み、相違点2-2の容易想到性について判断する。
甲4の[0140]の記載から、甲4発明において、「(G)添加剤 γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Chisso社のS-510)」は、シラン系カップリング剤として用いられていることが理解されるところ、当該[0140]には、シラン系カップリング剤の複数の具体例が例示されているものの、当該具体例中には、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物は、存在しない。
さらに、申立人が提出した他の証拠(甲1ないし3、5ないし9)をみても、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物を、シラン系カップリング剤として用いることは、記載されていない。
そうすると、甲4発明において、相違点2-2に係る本件訂正発明2の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)小括
前記(イ)及び(ウ)のとおり、本件訂正発明2は、甲4発明でなく、かつ、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、甲4を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
イ 本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲4発明を対比すると、
甲4発明における組成物(固形分に基づく)中での「Basf社OBP(ラクタム系有機ブラック)製品」と「カーボンブラック」の合計含有比率が、33.6質量%(≒[(6.397+1.438)/(0.464+4.82+4.82+2.566+6.397+1.438+1.84+0.941)]×100)であるから、両者は、前記ア(ア)で認定した相違点2-1及び相違点2-2で相違し、その余の点で一致する。
したがって、前記ア(イ)及び(ウ)で述べたのと同様の理由で、本件訂正発明3は、甲4発明でなく、かつ、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、甲4を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
ウ 本件訂正発明5、8について
本件訂正後の請求項5は、請求項1及び2のいずれかの記載を引用する形式で記載されており、本件訂正後の請求項8は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されていて、本件訂正発明5は、本件訂正発明1又は2の全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当し、本件訂正発明8は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、本件訂正後の請求項1に係る特許については、甲4を主引用例とする取消理由1及び2は通知されておらず(なお、本件訂正発明1と甲4発明は、相違点2-1及び相違点2-2で相違するから、本件訂正発明2と同様の理由によって、本件訂正発明1は、甲4発明でなく、かつ、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。)、本件訂正後の請求項2及び3に係る特許については、前記ア及びイで述べたとおり、甲4を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできないから、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する本件訂正後の請求項5及び8に係る特許についても、甲4を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできない。
エ 甲4を主引用例とする取消理由1及び2のまとめ
前記ア(エ)、イ、ウのとおりであって、甲4を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項2、3、5、8に係る特許を取り消すことはできない。
(3)甲5を主引用例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 本件訂正発明3について
(ア)対比
甲5発明の「添加剤 E-3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製)」、「重合性化合物 C-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(日本化薬株式会社製、商品名KAYARADDPHA)」、「光重合開始剤 『D-1:式(D-3)で表される化合物』、『D-8:2、2'-ビス(2-クロロフェニル)-4、4'、5、5'-テトラフェニル-1、2'-ビイミダゾール(保土ヶ谷化学製)』、『D-9:2-メルカプトベンゾチアゾール(和光純薬工業株式会社製)』」及び「ペリレンブラック」は、本件訂正発明3の「(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物」、「(D) 光重合性化合物」、「(E) 光開始剤」及び「(F) 黒色着色剤」にそれぞれ相当する。
また、甲5発明の「バインダー樹脂溶液(B-1)」中のバインダー樹脂(以下「バインダー樹脂(B-1)」という。)は、メタクリル酸、スチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、N-フェニルマレイミド、こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)を重合したものであるから、本件訂正発明3の「アクリルコポリマー」に相当する。
また、甲5発明の「バインダー樹脂溶液(B-5)」中のバインダー樹脂以下「バインダー樹脂(B-5)」という。)は、【式(3)】で表されるビスフェノールフルオレンエポキシ化合物にアクリル酸を反応させて得られるビスフェノールフルオレンエポキシアクリレートに対して、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を反応させ、テトラヒドロ無水フタル酸により末端を封止して得られる樹脂であるところ、【式(3)】で表されるビスフェノールフルオレンエポキシ化合物は、本件訂正発明3の式(1)において、Xとして左端のものを選択し、L1としてC1アルキレンを選択し、R1ないしR4としてHを選択し、nとして0を選択したものであるから、本件訂正発明3の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」であって、「カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化5】
[図:0001409082000029.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化6】
[図:0001409082000030.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され」るものに相当する。
そして、甲5発明における組成物(固形分に基づく)中での「ペリレンブラック」の含有比率は、31.4質量%(≒[(967×12.0÷(12.0+12.3+7.5+65.8+2.4))/((967×(12.0+12.3×0.5+7.5×0.4)÷(12.0+12.3+7.5+65.8+2.4))+180×0.4+50+30+5+5+5×0.05+2.5)]×100)であるから、甲5発明は、本件訂正発明3の「前記黒色着色剤(F)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)に基づいて10~60重量%の量で含まれ」るとの発明特定事項に相当する構成を具備している。
したがって、本件訂正発明3と甲5発明は、
「黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記黒色着色剤(F)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)に基づいて10~60重量%の量で含まれ、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
【化5】
[図:0001409082000031.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化6】
[図:0001409082000032.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表される、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点3-1:
本件訂正発明3の「(A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物(C)」は、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであるのに対して、
甲5発明の「添加剤 E-3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製)」は、エポキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位を有するといえるものの、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するとはいえない点。
(イ)新規性について
相違点3-1は実質的な相違点であるところ、実質的な相違点が存在する以上、本件訂正発明3が、甲5発明であるということはできない。
(ウ)進歩性について
甲5の【0097】の記載から、甲5発明において、「添加剤 E-3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製)」は、密着促進剤として用いられていることが理解されるところ、当該【0097】には、密着促進剤の複数の具体例が例示されているものの、当該具体例中には、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物は、存在しない。
さらに、申立人が提出した他の証拠(甲1ないし4、6ないし9)をみても、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物を、密着促進剤として用いることは、記載されていない。
したがって、甲5発明において、相違点3-1に係る本件訂正発明3の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。
したがって、本件訂正発明3は、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)小括
前記(イ)及び(ウ)のとおり、本件訂正発明3は、甲5発明でなく、かつ、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、甲5を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
イ 本件訂正発明8について
本件訂正後の請求項8は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されていて、本件訂正発明8は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、本件訂正後の請求項1及び2に係る特許については、甲5を主引用例とする取消理由1及び2は通知されておらず(なお、本件訂正発明1及び2と甲5発明は、少なくとも相違点3-1で相違するから、本件訂正発明3と同様の理由によって、本件訂正発明1及び2は、甲5発明でなく、かつ、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。)、本件訂正後の請求項3に係る特許については、前記アで述べたとおり、甲5を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできないから、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する本件訂正後の請求項8に係る特許についても、甲5を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできない。
ウ 甲5を主引用例とする取消理由1及び2のまとめ
前記ア(エ)、イ、ウのとおりであって、甲5を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項3、8に係る特許を取り消すことはできない。
(4)甲6を主引用例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 本件訂正発明3について
(ア)対比
甲6発明の「アルカリ可溶性カルド系バインダー{アクリル酸が付加したビスフェノールプルオレンエポキシアクリレート/1、3-シクロヘキシルジイソシアネート(モル比65/35、重量平均分子量5000、酸価80KOHmg/g)}」、「アルカリ可溶性カルド系バインダー{アクリル酸が付加したビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート/1、3-シクロヘキシルジイソシアネート(モル比65/35、重量平均分子量5000、酸価80KOHmg/g)}」、「エポキシ基を有する樹脂でニホンカヤク株式会社で製造された商品名EOCN1020」、「エチレン性不飽和二重結合を有する多官能性モノマーでジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)」、「光重合開始剤でエタノン-1-(9-エチル)-6-(2-メチルベンゾイル-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)」及び「『有機遮光性顔料分散液(トクシキサで製造された商品名BK-4731:16重量%の着色剤含有)』中の有機遮光性顔料」は、本件訂正発明3の「(A) アクリルコポリマー」、「(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」、「(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物」、「(D) 光重合性化合物」、「(E) 光開始剤」及び「(F) 黒色着色剤」にそれぞれ相当する。
また、甲6発明における遮光性スペーサ感光性樹脂組成物(固形分に基づく)中での「有機遮光性顔料」の含有比率は、26.0質量%(≒[(1165×0.16)/(1165×0.16+25+67+3+384+45+6+1)]×100)であるから、甲6発明は、本件訂正発明3の「前記黒色着色剤(F)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)に基づいて10~60重量%の量で含まれ」るとの発明特定事項に相当する構成を具備している。
また、甲6発明の「アルカリ可溶性カルド系バインダー{アクリル酸が付加したビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート/1、3-シクロヘキシルジイソシアネート(モル比65/35、重量平均分子量5000、酸価80KOHmg/g)}」は、その名称から明らかなように、カルド(cardo)骨格構造を有している。
したがって、本件訂正発明3と甲6発明は、
「黒色感光性樹脂組成物であって、
(A) アクリルコポリマーと、
(B) エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物と、
(C) (A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物と、
(D) 光重合性化合物と、
(E) 光開始剤と、
(F) 黒色着色剤と、を含み、
前記黒色着色剤(F)は、前記黒色感光性樹脂組成物の総重量(固形分に基づく)に基づいて10~60重量%の量で含まれ、
前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有する、黒色感光性樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点4-1:
本件訂正発明3の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」は、以下の式1
【化5】
[図:0001409082000033.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化6】
[図:0001409082000034.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表される「カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂」又はそれから誘導される化合物であるのに対して、
甲3発明の「アルカリ可溶性カルド系バインダー{アクリル酸が付加したビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート/1、3-シクロヘキシルジイソシアネート(モル比65/35、重量平均分子量5000、酸価80KOHmg/g)}」が式1によって表されるエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物であるのか否かが、定かでない点。
相違点4-2:
本件訂正発明3の「(A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物(C)」は、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであるのに対して、
甲6発明の「エポキシ基を有する樹脂でニホンカヤク株式会社で製造された商品名EOCN1020」は、エポキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位を有するといえるものの、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するとはいえない点。
(イ)新規性について
少なくとも、相違点4-2は実質的な相違点であるところ、実質的な相違点が存在する以上、本件訂正発明3が、甲6発明であるということはできない。
(ウ)進歩性について
事案に鑑み、相違点4-2の容易想到性について判断する。
甲6には、エポキシ基を有する樹脂として、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物を用いることは、記載も示唆もされていない。
また、申立人が提出した他の証拠(甲1ないし5、7ないし9)をみても、甲6発明の遮光性スペーサ感光性樹脂組成物に含有させるエポキシ基を有する樹脂として、「エポキシ基を有する樹脂でニホンカヤク株式会社で製造された商品名EOCN1020」に代えて、エポキシ基とビニル基(不飽和二重結合)の双方を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマー又はコポリマーであるエポキシ化合物を用いることに、動機付けが存在するとは認められない。
したがって、甲6発明において、相違点4-2に係る本件訂正発明3の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点4-1について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)小括
前記(イ)及び(ウ)のとおり、本件訂正発明3は、甲6発明でなく、かつ、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、甲6を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
イ 本件訂正発明8について
本件訂正後の請求項8は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されていて、本件訂正発明8は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、本件訂正後の請求項1及び2に係る特許については、甲6を主引用例とする取消理由1及び2は通知されておらず(なお、本件訂正発明1及び2と甲6発明は、少なくとも相違点4-1及び相違点4-2で相違するから、本件訂正発明3と同様の理由によって、本件訂正発明1及び2は、甲6発明でなく、かつ、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。)、本件訂正後の請求項3に係る特許については、前記アで述べたとおり、甲6を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできないから、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全ての発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する本件訂正後の請求項8に係る特許についても、甲6を主引用例とする取消理由1及び2によって、これを取り消すことはできない。
エ 甲6を主引用例とする取消理由1及び2のまとめ
前記ア(エ)、イ、ウのとおりであって、甲6を主引用例とする取消理由1及び2によって、本件訂正後の請求項3、8に係る特許を取り消すことはできない。
(5)取消理由3(サポート要件)について
本件明細書の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0007】等の記載から、本件訂正発明が解決しようとする課題は、良好な接着性、表面粗さ、及び高い遮光特性( 光学密度) を満たす硬化フィルム、特に良好な段差特性を有する黒色カラムスペーサを生成することができる、黒色感光性樹脂組成物を提供することにあると理解される。
そして、発明の詳細な説明の【0116】ないし【0134】に記載された実施例1ないし7及び比較例1ないし3の各成分と、各実施例及び比較例の評価結果が示された【0141】の表2とから、当業者は、成分として、アクリルコポリマー(A)と、式1によって表される、カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)と、(A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物(C)であって、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであるエポキシ化合物(C)と、光重合性化合物(D)と、光開始剤(E)と、黒色着色剤(F)とを含有する黒色感光性樹脂組成物は、段差特性、接着性、表面粗さ、光学密度に優れていること、すなわち、前述した発明の課題を解決できると認識できるものといえる。
そして、本件訂正発明は、いずれも、成分として、アクリルコポリマー(A)と、式1によって表される、カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)と、(A)及び(B)とは異なるエポキシ化合物(C)であって、エポキシ基及び不飽和二重結合を有するモノマーから誘導される構造単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであるエポキシ化合物(C)と、光重合性化合物(D)と、光開始剤(E)と、黒色着色剤(F)とを含有することを、発明特定事項として具備している。
そうすると、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められるから、サポート要件に適合する。
したがって、取消理由3によって、本件訂正後の請求項1ないし6、8に係る特許を取り消すことはできない。
(6)取消理由4(明確性要件)について
本件訂正によって、本件訂正発明1ないし6、8が、「(B)エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物」という発明特定事項については、「前記エポキシ樹脂またはそれから誘導される前記化合物(B)は、カルド(cardo)骨格構造を有し、前記カルド骨格構造を有する前記エポキシ樹脂は、以下の式1
[図:0001409082000035.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
[図:0001409082000036.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表され」という発明特定事項を具備するものとなったことで、前記発明特定事項がいかなる化合物を指すのか、その範囲が明確となった。
したがって、取消理由4によって、本件訂正後の請求項1ないし6、8に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、次のとおりである。
申立理由1(甲1を主引用例とする新規性、進歩性):
本件特許の請求項1、3、5、7、8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、請求項1、3、5、7、8に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由2(甲2を主引用例とする新規性、進歩性):
本件特許の請求項1、5、8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であるから、請求項1、5、8に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由3(甲3を主引用例とする進歩性):
本件特許の請求項4、6に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由4(甲4を主引用例とする進歩性):
本件特許の請求項4、6に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由5(甲5を主引用例とする進歩性):
本件特許の請求項2、4ないし6に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4ないし6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由6(甲6を主引用例とする進歩性):
本件特許の請求項2、4ないし6に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4ないし6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
申立理由7(明確性要件):
本件特許発明6及び8は、「前記黒色着色剤(F)が、前記着色剤の総重量(固形分に基づく)を基準に0~10重量%の黒色有機着色剤を含む、」という発明特定事項を有するが、当該発明特定事項が、黒色有機着色剤を含まないもの(黒色有機着色剤が0重量%の場合)を包含するのか否かが明確でないから、本件特許の請求項6及び8に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
申立理由1及び2で申立人が引用している引用例は、次のとおりである。(なお、申立理由3ないし6で申立人が引用している引用例は、取消理由1及び2で引用された引用例と同一である。)
甲1 特開2014-146029号公報
甲2 国際公開第2015/046178号(申立人は、甲2として再公表公報を提出しているが、当該再公表公報の発行日は、本件特許の国際出願日より後の平成29年3月9日であるから、国際公開(本件特許の最先の優先日前の平成27年4月2日に発行された。)が提出されたものとして取り扱う。)
2 申立理由1について
(1)本件訂正発明1について
ア 甲1の【0083】ないし【0090】等の記載から、甲1に、実施例1の着色感光性樹脂組成物に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていることを把握できるところ、甲1発明の「調整例2の化合物」は、カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂から誘導される化合物ではあるものの、本件訂正発明1の式1で表されるエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物でないから、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも、次の点で相違する。
相違点A:
本件訂正発明1の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」は、以下の式1
【化1】
[図:0001409082000037.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化2】
[図:0001409082000038.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表される「カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂」又はそれから誘導される化合物であるのに対して、
甲1発明の「調整例2の化合物」は、「カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂」から誘導される化合物であるものの、式1で表されるエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物ではない点。
イ 本件訂正発明1と甲1発明の間に相違点Aが存在する以上、本件訂正発明1は、甲1発明ではない。
また、甲1には、甲1発明において、[調整例2の化合物]に代えて、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物を採用できることについては、記載も示唆もないし、申立人が提出した他の証拠(甲2ないし甲9)をみても、甲1発明において、[調整例2の化合物]に代えて、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物を採用することに、動機付けは存在しない。そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件訂正発明2ないし6、8について
本件訂正発明2、3と、甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも、相違点Aと同様の点で相違するから、前述したのと同様の理由で、本件訂正発明2、3に係る発明は、甲1発明ではなく、かつ、本件訂正発明2、3は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件訂正後の請求項4ないし6、8は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明4ないし6、8は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当するから、本件訂正発明1ないし3が、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件訂正発明4ないし6、8は、甲1発明でなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから、申立理由1によって、本件訂正後の請求項1ないし6、8に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2について
(1)本件訂正発明1について
甲2の【0274】、【0275】、【0277】、【0279】ないし【0281】、【0283】、【0284】、【0286】ないし【0296】、【0299】ないし【0302】、【0306】ないし【0307】等の記載から、甲2には、実施例1の感光性着色組成物に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていることを把握できるところ、甲2発明の「アルカリ可溶性樹脂-III」は、エポキシ樹脂から誘導される化合物ではあるものの、本件訂正発明1の式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物ではないから、本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、両者は、少なくとも、次の点で相違する。
相違点B:
本件訂正発明1の「エポキシ樹脂またはそれから誘導される化合物(B)」は、以下の式1
【化1】
[図:0001409082000039.jpg]
(式1中、
Xは、各々独立して、
【化2】
[図:0001409082000040.jpg]
であり、
L1は、各々独立して、C1-10アルキレン、C3-20シクロアルキレンまたはC1-10アルキレンオキシであり、
R1~R7は、各々独立して、H、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC6-14アリールであり、
R8は、H、メチル、エチル、CH3CHCl-、CH3CHOH-、CH2=CHCH2-またはフェニルであり、
nは、0~10の整数である。)によって表される「カルド骨格構造を有するエポキシ樹脂」又はそれから誘導される化合物であるのに対して、
甲2発明の「アルカリ可溶性樹脂-III」は、エポキシ樹脂から誘導される化合物であるものの、式1で表されるエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物ではない点。
イ 本件訂正発明1と甲2発明の間に相違点Bが存在する以上、本件訂正発明1は、甲2発明ではない。
また、甲2には、甲2発明において、「アルカリ可溶性樹脂-III」に代えて、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物を採用できることについては、記載も示唆もないし、申立人が提出した他の証拠(甲1、甲3ないし甲9)をみても、甲2発明において、「アルカリ可溶性樹脂-III」に代えて、式1で表されるカルド骨格構造を有するエポキシ樹脂又はそれから誘導される化合物を採用することに、動機付けは存在しない。そうすると、本件訂正発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件訂正発明2ないし6、8について
本件訂正発明2、3と、甲2発明を対比すると、両者は、少なくとも、相違点Bと同様の点で相違するから、前述したのと同様の理由で、本件訂正発明2、3に係る発明は、甲2発明ではなく、かつ、本件訂正発明2、3は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件訂正後の請求項4ないし6、8は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明4ないし6、8は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当するから、本件訂正発明1ないし3が、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件訂正発明4ないし6、8は、甲2発明でなく、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)小括
以上のとおりであるから、申立理由2によって、本件訂正後の請求項1ないし6、8に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3について
本件訂正後の請求項4、6は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明4、6は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、前記第4 3(1)ア、イで述べたように、本件訂正発明2、3が、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明4、6のうち請求項2、3の記載を引用する形式で記載された部分については、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、両者は、少なくとも、前記第4 3(1)ア(ア)で認定した相違点1-1及び相違点1-2と同様の点で相違するところ、本件訂正発明4、6のうち請求項1の記載を引用する形式で記載された部分については、前記第4 3(1)ア(ウ)で述べたのと同様の理由によって、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、申立理由3によって、本件訂正後の請求項4、6に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由4について
本件訂正後の請求項4、6は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明4、6は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、前記第4 3(2)ア、イで述べたように、本件訂正発明2、3が、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明4、6のうち請求項2、3の記載を引用する形式で記載された部分については、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明1と甲4発明を対比すると、両者は、少なくとも、前記第4 3(2)ア(ア)で認定した相違点2-1及び相違点2-2と同様の点で相違するところ、本件訂正発明4、6のうち請求項1の記載を引用する形式で記載された部分については、前記第4 3(2)ア(ウ)で述べたのと同様の理由によって、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、申立理由4によって、本件訂正後の請求項4、6に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由5について
(1) 本件訂正発明2と甲5発明を対比すると、両者は、少なくとも、前記第4 3(3)ア(ア)で認定した相違点3-1と同様の点で相違するところ、前記第4 3(3)ア(ウ)で述べたのと同様の理由によって、本件訂正発明2は、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件訂正後の請求項4ないし6は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明4ないし6は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、前記第4 3(3)ア(ウ)及び前記(1)で述べたように、本件訂正発明2、3が、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明4ないし6のうち請求項2、3の記載を引用する形式で記載された部分については、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明1と甲5発明を対比すると、両者は、少なくとも、前記第4 3(3)ア(ア)で認定した相違点3-1と同様の点で相違するところ、本件訂正発明4ないし6のうち請求項1の記載を引用する形式で記載された部分については、前記第4 3(3)ア(ウ)で述べたのと同様の理由によって、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 以上のとおりであるから、申立理由5によって、本件訂正後の請求項2、4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 以上のとおりであるから、申立理由5によって、本件訂正後の請求項4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由6について
(1) 本件訂正発明2と甲6発明を対比すると、両者は、少なくとも、前記第4 3(4)ア(ア)で認定した相違点4-1及び相違点4-2と同様の点で相違するところ、前記第4 3(4)ア(ウ)で述べたのと同様の理由によって、本件訂正発明2は、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件訂正後の請求項4ないし6は、請求項1ないし3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明4ないし6は、本件訂正発明1ないし3のいずれかの全発明特定事項を具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そして、前記第4 3(4)ア(ウ)及び前記(1)で述べたように、本件訂正発明2、3が、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明4ないし6のうち請求項2、3の記載を引用する形式で記載された部分については、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明1と甲6発明を対比すると、両者は、少なくとも、前記第4 3(4)ア(ア)で認定した相違点4-1及び相違点4-2と同様の点で相違するところ、本件訂正発明4ないし6のうち請求項1の記載を引用する形式で記載された部分については、前記第4 3(4)ア(ウ)で述べたのと同様の理由によって、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 以上のとおりであるから、申立理由6によって、本件訂正後の請求項2、4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
8 申立理由7について
本件訂正後の請求項6に記載された「前記黒色着色剤(F)が、前記着色剤の総重量(固形分に基づく)を基準に0~10重量%の黒色有機着色剤を含む、」という発明特定事項が、黒色着色剤(F)が黒色有機着色剤を含まない場合、すなわち、黒色着色剤(F)に含まれる黒色有機着色剤が0重量%である場合を包含することは、文言上明らかであって、本件訂正後の請求項6に係る発明及び当該請求項6の記載を引用する形式で記載された請求項8に係る発明は、明確である。
したがって、申立理由7によって、本件訂正後の請求項6、8に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし6、8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1ないし6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項7に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701171