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特許異議申立

2022-701167

窒化ケイ素焼結基板

審判番号
2022-701167
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-187108
登録番号
7075612
請求日
2022年11月25日
審決日
2023年10月17日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社プロテリアル
  • 【権利者代理人】高石 橘馬
  • 【権利者代理人】高石 健二
  • 【異議申立人】青木 眞理
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.121-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B) / P1651.851-YAA(C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6号、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7075612号発明「窒化ケイ素焼結基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7075612号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第7075612号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7075612号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2017年(平成29年)9月26日を出願日とする特願2017-184908号の一部を令和3年11月17日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月18日に特許の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許の請求項1~5に係る特許に対し、特許異議申立人(以下、「申立人」という。)である青木眞理により、同年11月25日に特許異議の申立てがされた。 以降の手続の経緯は、次のとおりである。 令和5年 2月 1日付け:取消理由通知 同年 4月 6日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者) なお、令和5年4月6日の訂正の請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたところ、申立人から、意見等の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 令和5年4月6日に特許権者より請求された訂正は適法になされたものと判断する。 以下、その理由につき詳述する。 1 訂正の内容 令和5年4月6日に提出された訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その内容は、次の訂正事項1~3からなる(下線は訂正箇所。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「1辺が120mmの正方形よりも大きい形状の主面を有し」と記載されているのを、「1辺120mmの正方形よりも大きく、1辺250mmの正方形以下の大きさの形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板であって」に訂正する。 (請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~5についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「前記窒化ケイ素焼結基板の主面のうち周囲1cmを除いた四角形内に直径3cmの9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を3行3列に配置したとき(ただし、中央の円C22は、対角に位置する2つの頂点をそれぞれ結ぶ2つの対角線の交点に円C22の中心が一致するように配置し、他の8つの円C11~C13、C21、C23、C31~C33は、前記主面の頂点近傍でかつ2つの辺に接するように円C11、C13、C31、C33を配置し、これらの円の中間に位置し、かつ、対応する辺に接するように円C12、C21、C23、C32を配置する。)、円C22の切片の密度及びボイド率が中央部の密度dc及びボイド率vcに相当し、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の密度及びボイド率が端部の密度de及びボイド率veに相当し、」との記載を追加し、 「前記主面における中央部の密度dcと端部の密度deの比dc/deが0.98以上かつ1.0以下であり、前記主面における中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、 端部のボイド率veが1.00%以下であり、前記中央部のボイド率vcと前記端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上1.06以下であり、」との記載を「C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の全ての密度及びボイド率において、前記中央部の密度dcと前記端部の密度deの比dc/deが0.98以上かつ1.0以下であり、前記中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、前記端部のボイド率veが1.00%以下であり、前記中央部のボイド率vcと前記端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上1.06以下であり、」に訂正する。 (請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~5についても同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「前記端部の密度deが3.160g/cm3以上である」と記載されているのを、「C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の全ての密度において前記端部の密度deが3.160g/cm3以上である」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、窒化ケイ素焼結基板について、1辺250mmの正方形以下の大きさの形状の主面を有するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、そして、上記限定は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、上記1辺250mmの正方形以下の大きさの形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板については、願書に添付した明細書(下線は当審で付与した。以下同様。)の【0109】に「参考例の窒化ケイ素焼結基板の1辺は最大で220mm(8.7インチ)であるが、一辺が250mmの(9.8インチ)正方形形状を有する窒化ケイ素焼結基板を作製」と記載されているから、訂正事項1は、これにより新たな技術的事項が導入されるものとはいえない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、令和5年2月1日付けの取消理由通知の理由2(明確性要件違反)の、「「中央部」及び「端部」の範囲の取り方によって、中央部の密度dc、端部の密度de、中央部のボイド率vc、端部のボイド率veの値は異なり、一義的に定まらず、本件発明1は不明確である。」などの指摘を踏まえて行なったものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、上記訂正事項2によって、窒化ケイ素焼結基板に関する、中央部の密度dc、端部の密度de、中央部のボイド率vc、端部のボイド率ve、さらには、主面の大きさが明確に特定されるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、窒化ケイ素焼結基板の中央部、端部の密度及びボイド率を「窒化ケイ素焼結体の主面のうち周囲1cm幅を除いた四角形内に直径3cmの9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を3行3列に配置したとき(ただし、中央の円C22は、対角に位置する2つの頂点をそれぞれ結ぶ2つの対角線の交点に円C22の中心が一致するように配置し、他の8つの円C11~C13、C21、C23、C31~C33は、前記主面の頂点近傍でかつ2つの辺に接するように円C11、C13、C31、C33を配置し、これらの円の中間に位置し、かつ、対応する辺に接するように円C12、C21、C23、C32を配置する。)」とすることは、願書に添付した明細書の【0033】に「窒化ケイ素焼結体101’の中央部及び端部の密度及びボイド率は以下のようにして求める。図2(b)に示すように、窒化ケイ素焼結体101’(一辺がL1、他の一辺がL2)において、絶縁基板として使用しない部分(1cm幅)を除いた四角形110’を仮定し、四角形110’内に直径3cmの9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を3行3列に配置する。ここで、中央の円C22は、正方形の中心、つまり、対角に位置する2つの頂点をそれぞれ結ぶ2つの対角線の交点に円C22の中心が一致するように配置し、他の8つの円C11~C13、C21、C23、C31~C33は、正方形110’の頂点近傍でかつ2つの辺に接する直径3cmの円C11、C13、C31、C33を配置する。また、これらの円の中間に位置し、かつ、対応する辺に接するように、円C12、C21、C23、C32を配置する。」と記載されており、そして、「円C22の切片の密度及びボイド率が中央部の密度dc及びボイド率vcに相当し、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の密度及びボイド率が端部の密度de及びボイド率veに相当し、C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の全ての密度及びボイド率」については、願書に添付した明細書の【0034】の「窒化ケイ素焼結体101’の密度及びボイド率は、上記のように配置した9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を窒化ケイ素焼結体101’からレーザ加工によって切り出して測定する。中央部の密度及びボイド率とは、円C22の切片の密度であり、端部の密度及びボイド率とは、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片を測定した値のうち、最も小さい値である」と記載されているから、訂正事項2は、これらにより新たな技術的事項が導入されるものとはいえない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項5において、訂正事項2に整合させて「前記端部の密度」を明確にするものであるから、上記(2)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、新たな技術的事項を導入するものではない。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項2~5は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~5は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1~3はその一群の請求項1~5においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載 上記第2のとおり本件訂正請求は適法になされたものであると認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである)。 「【請求項1】 1辺120mmの正方形よりも大きく、1辺250mmの正方形以下の大きさの形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板であって、 前記窒化ケイ素焼結基板の主面のうち周囲1cm幅を除いた四角形内に直径3cmの9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を3行3列に配置したとき(ただし、中央の円C22は、対角に位置する2つの頂点をそれぞれ結ぶ2つの対角線の交点に円C22の中心が一致するように配置し、他の8つの円C11~C13、C21、C23、C31~C33は、前記主面の頂点近傍でかつ2つの辺に接するように円C11、C13、C31、C33を配置し、これらの円の中間に位置し、かつ、対応する辺に接するように円C12、C21、C23、C32を配置する。)、円C22の切片の密度及びボイド率が中央部の密度dc及びボイド率vcに相当し、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の密度及びボイド率が端部の密度de及びボイド率veに相当し、 C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の全ての密度及びボイド率において、前記中央部の密度dcと前記端部の密度deの比dc/deが0.98以上かつ1.0以下であり、前記中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、前記端部のボイド率veが1.00%以下であり、前記中央部のボイド率vcと前記端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上1.06以下であり、 0.15mm以上2.0mm以下の厚さを有し、 10.0以上の絶縁破壊耐圧のワイブル係数を有し、 酸化物換算で0.7質量%以上10質量%以下のMg化合物と、酸化物換算で1質量%以上10質量%以下の少なくとも1種の希土類元素の化合物と、を含む焼結助剤を用いて製造した、 窒化ケイ素焼結基板。 【請求項2】 8.0kV以上の絶縁破壊耐圧を有する、 請求項1に記載の窒化ケイ素焼結基板。 【請求項3】 前記中央部において、炭素含有量が0.2質量%以下である、 請求項1又は2に記載の窒化ケイ素焼結基板。 【請求項4】 曲げ強度が600MPa以上であり、 破壊靭性が5.0MPa・m0.5以上である、 請求項1~3のいずれかに記載の窒化ケイ素焼結基板。 【請求項5】 前記中央部の密度dcが3.120g/cm3以上であり、C11~C13、C21、C31~C33の切片の全ての密度において前記端部の密度deが3.160g/cm3以上である、 請求項1~4のいずれかに記載の窒化ケイ素焼結基板。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和5年2月1日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(サポート要件違反) 本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6号第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 要すれば、本件の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0020】に、「主面101aが大きくなるほど、窒化ケイ素焼結基板101の製造時におけるグリーンシートの端部と中央部との収縮量の差が大きくなるため、耐圧及び絶縁信頼性に端部と中央部とでばらつきが大きくなる」と記載されているところ、本件訂正前の請求項1~5に係る発明において1辺の上限が特定されておらず、1辺が250mmの正方形よりも大きい形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板については、本件発明の課題を解決できる範囲のものであると認識できない。 (2)取消理由2(明確性) 本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6号第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 要すれば、本件訂正前の請求項1~5に係る発明は「1辺が120mmの正方形よりも大きい形状の主面を有する」ことが特定されるのみで、形状が特定されていない窒化ケイ素焼結基板において「中央部」「端部」がどの程度、中央、端であるのか特定されず、中央部、端部の密度及びボイド率が一義的に定まらないため不明確である。 また、本件明細書の記載を勘案すると、「端部の密度及びボイド率とは、円C1~C6の切片を測定した値のうち、最も小さい値をいう」「端部の密度及びボイド率とは、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片を測定した値のうち、最も小さい値である」等と記載されている。しかし、密度が大きければボイド率は小さく、密度が小さければボイド率は大きくなり、両者は相反関係にあるから、両者の「最も小さい値」は、技術的意義が不明である。 また、訂正前の請求項1~5に係る発明では焼結基板の形状が特定されておらず、円形である場合と四角形である場合で、測定対象の円の面積が異なっている。そうすると、焼結基板の形状によって密度及びボイド率の値が一義的に決まらないため、訂正前の請求項1~5に係る発明は明確ではない。 2 当審の判断 (1)取消理由1(サポート要件)について 本件発明1では、窒化ケイ素焼結基板が、「1辺250mmの正方形以下の大きさ」であることが特定されており、本件発明の課題を解決できる範囲のものであると認識できる範囲のものとなっている。本件発明2~5についても同様である。 したがって、上記取消理由1は理由がない。 (1)取消理由2(明確性)について 本件発明1は、1辺「120mmの正方形よりも大きく、1辺250mmの正方形以下の大きさの形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板」であることが特定されており、「前記窒化ケイ素焼結基板の主面のうち周囲1cm幅を除いた四角形内に直径3cmの9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を3行3列に配置したとき(ただし、中央の円C22は、対角に位置する2つの頂点をそれぞれ結ぶ2つの対角線の交点に円C22の中心が一致するように配置し、他の8つの円C11~C13、C21、C23、C31~C33は、前記主面の頂点近傍でかつ2つの辺に接するように円C11、C13、C31、C33を配置し、これらの円の中間に位置し、かつ、対応する辺に接するように円C12、C21、C23、C32を配置する。)、円C22の切片の密度及びボイド率が中央部の密度dc及びボイド率vcに相当し、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の密度及びボイド率が端部の密度de及びボイド率veに相当」することが特定されている。そうすると、窒化ケイ素焼結基板の形状、及び、中央、端部の円の位置及び直径は明確であり、中央部、端部の密度及びボイド率は一義的に定まる。 また、「C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の全ての密度及びボイド率において」、dc/deが0.98以上かつ1.0以下、ve/vcが0.50以上1.06以下を満たすことが特定されたため、その技術意義は明確である。 よって、本件発明1は明確であり、本件発明2~5についても同様である。 したがって、上記取消理由2は理由がない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立理由(以下、「申立理由」という)は、概略、以下のとおりである。 1 申立理由 (1)申立理由1(明確性) 訂正前の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6号第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 要すれば、訂正前の請求項1において「dc/deが0.98以上かつ1.0以下」、「ve/vc」が0.50以上1.06以下」とされているが、dc/de=1.0、ve/vc1.0である場合を含むのか不明である。 また、「酸化物換算で0.7質量%以上10質量%以下のMg化合物と、酸化物換算で1質量%以上10質量%以下の少なくとも1種の希土類元素の化合物と、を含む焼結助剤を用いて製造した」との特定は、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームになっており、訂正前の請求項1に係る発明は明確ではない。 訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~5についても同様である。 (2)申立理由2(進歩性) 訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、その特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 証拠一覧 甲第1号証:特開2003-192445号公報 甲第2号証:特開2014-73937号公報 甲第3号証:国際公開第2015/060274号 甲第4号証:特開2002-201075号公報 甲第5号証:特開2014-58445号公報 以下、「甲第○号証」を「甲○」という。 なお、主たる証拠は甲1であり、甲2は特定の厚みの基板を作成すること、甲3は絶縁耐力のばらつき、甲4は残留炭素量と破壊靭性、甲5は3点曲げ強度のワイブル係数について記載されたものである。 2 各証拠について (1)甲1について ア 甲1には以下が記載ある(下線は当審で付した。以下、同様。)。 (ア)「【0014】本発明は上記のような課題要請に対処するためになされたものであり、窒化けい素焼結体が本来備える高強度特性に加えて、特に基板を構成する焼結体中に実質的に気孔(ポア)が形成されず、また表面粗さが小さいために、加工時に脱粒が生じにくく、さらにこの薄い窒化けい素基板を用いて各種パワーモジュールや回路基板を構成した場合でもリーク電流量を効果的に抑制することができ、さらに基板表面に薄膜を形成した場合においても薄膜の膨れや剥離を防止でき、電子機器に使用した場合においても、その絶縁性、耐久性および動作の信頼性を大幅に向上させることが可能な窒化けい素基板、その製造方法およびそれを用いた薄膜付き窒化けい素基板を提供することを目的とする。 【0015】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するため、従来の窒化けい素セラミックス基板を使用したモジュールにおいてリーク電流が発生する要因を究明し、以下のような知見を得た。」 (イ)「【0100】実施例1~7 実施例1~7として酸素量1.1質量%、不純物陽イオン元素としてAl,Li,Na,K,Fe,Ba,Mn,Bを合計で0.10質量%含有し、α相型窒化けい素97%を含む平均粒径0.55μmのSi3N4(窒化けい素)原料粉末に対して、焼結助剤として平均粒径0.9μmのY2O3(酸化イットリウム)粉末と、平均粒径0.5μmのEr2O3(酸化エルビウム)粉末と、平均粒径1.0μmのTiO2(酸化チタン)粉末と、平均粒径0.5μmのMgO(酸化マグネシウム)粉末とを表1に示す基板組成となるように添加し、エチルアルコール中で粉砕媒体として窒化けい素製ボールを用いて96時間湿式混合したのち乾燥して原料混合体を調製した。 【0101】次に得られた原料粉末混合体に有機バインダを所定量添加し調合造粒粉としたのち、130MPaの成形圧力でプレス成形し、成形体を多数製作した。次に得られた成形体を450℃の空気気流中において4時間脱脂したのち、表1に示す焼結条件により焼結した後に、1500℃まで温度降下するまでの冷却速度をそれぞれ表1に示す値に設定して焼結体を冷却した。さらに、表1に示すHIP条件により焼結体に熱間静水圧プレス処理を実施することにより、各基板をさらに緻密化せしめた。さらに、各基板に対して、表面加工を実施することにより、表1に示す、厚さおよび表面粗さとなるように調整し、それぞれ実施例1~7に係る窒化けい素基板を調製した。なお、各基板のサイズは縦50mm×横40mmに統一した。」 ・・・・ 【0103】こうして得られた実施例1~7および比較例1に係る各窒化けい素基板について、表面粗さ、粒界相の最大径、気孔率、気孔の有無およびリーク電流値を測定して表1に示す結果を得た。 【0104】なお、表面粗さ(Ra)は、JIS B0601の規格に準拠して測定した。また、粒界相の最大径は以下の方法で測定した。すなわち、窒化けい素基板表面の拡大写真を撮影し、50μm×50μmの単位面積領域内において、最も長い対角線を有する粒界相を測定対象としてその対角線長さを求める。この測定操作を、少なくとも3箇所の単位面積領域において実施し、その最長対角線長さを粒界相の最大径とした。 【0105】また、気孔率はアルキメデス法により測定した。また、気孔の有無は、基板組織の拡大顕微鏡写真の任意の200μm×200μmの単位面積領域内において、気孔の有無を確認し、任意の単位面積を3個所以上測定しても気孔が確認できない場合を気孔「無し」と表示した。 ・・・ 【0107】 【表1】 [図:0001405800000001.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 上記表1の実施例3には、基板組成がSi3N4が87質量%、Y2O3が4質量%、Er2O3が6質量%、TiO2が1質量%、MgOが2質量%、基板厚さが0.3mm、気孔率が<0.01vol%である窒化けい素焼結板が記載されており、この実施例3に着目すると、甲1には以下の発明が記載されているといえる。 「サイズが縦50mm×横40mmの窒化けい素焼結基板であって、 気孔率は<0.01vol%であり、 0.3mmの厚さを有し、 Si3N4が87質量%、Y2O3が4質量%、Er2O3が6質量%、TiO2が1質量%、MgOが2質量%からなる窒化けい素焼結基板。」(以下、「甲1発明」という。) (2)甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0034】 (実施例1~11) 前述の窒化珪素焼結体の製造方法および評価方法にしたがって表1、表2に示す出発原料、混合、成形および焼成条件により窒化珪素焼結体を作製し、空孔の面積を画像解析により計測した。各ロットの出発原料の原料粉の総量は、それぞれ10kgとした。スラリーの混練ロット数を2以上とし、成形速度600(mm/min.)以下とし、成形体の乾燥速度を0.8(wt%/min.)以下とすることでHIP処理を含まない製造プロセスにより、表3に示す焼結体を得ることができた。空孔割合0.1~4%であっても十分な絶縁破壊の強さを有する厚さ0.15~0.25mmの窒化珪素基板を得ることができた。」 (3)甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 [請求項1]窒化珪素結晶粒子と粒界相とを具備する熱伝導率が50W/m・K以上の窒化珪素基板において、窒化珪素基板の断面組織は、窒化珪素基板の厚さT1に対し厚さ方向の粒界相の合計長さT2の比(T2/T1)が0.01~0.30であり、基板の表裏に電極を接触して4端子法で測定したときの絶縁耐力の平均値からのばらつきが20%以下であることを特徴とする窒化珪素基板。 [請求項2]絶縁耐力のばらつきが15%以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化珪素基板。 [請求項3]絶縁耐力の平均値が15kv/mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の窒化珪素基板。」 イ 「[表8] [図:0001405800000002.jpg] 」 (4)甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 粒界相中の最大気孔径が0.3μm以下の窒化けい素焼結体から成り、温度25℃,湿度70%の条件下で上記窒化けい素焼結体の表裏間に1.5Kv~100Hzの交流電圧を印加したときの電流リーク値が1000nA以下であり、熱伝導率が50W/m・k以上、3点曲げ強度が500MPa以上であることを特徴とする窒化けい素セラミックス基板。 【請求項2】 破壊靭性値が6.5MPa・m1/2以上であることを特徴とする請求項1記載の窒化けい素セラミックス基板。 ・・・ 【請求項5】 窒化けい素セラミックス基板の厚さが1.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化けい素セラミックス基板。 ・・・ 【請求項7】 前記窒化けい素セラミックス基板は、MgをMgOに換算して0.3~3.0質量%含有することを特徴とする請求項1記載の窒化けい素セラミックス基板。」 イ 「【0079】しかしながら、成形体に特別な処理を施さない限り、完全に炭素成分を排除することは困難であり、さらに残留炭素は焼結時に窒化けい素や焼結助剤などの添加物と化合して安定な炭化物を形成してしまうことからも完全に排除することは困難である。しかしながら、焼結後のセラミックス基板における残留炭素量が500ppm以下となるように十分に脱脂処理することにより、前記リーク電流の発生を効果的に防止することができる。」 (5)甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【0030】 次に、成形工程として、上記混合した原料スラリーを脱泡・増粘した後、これを公知のドクターブレード法等により所定厚さの板にシート成形する。このときのシート成形体の板厚は、用途に応じて適宜決定できるが、例えば0.2~1.0mm程度とすることができる。また、シート成形体寸法については収縮量を考慮し、かつシート成形体を載せるBNセッターおよび焼成容器の寸法および容量も考慮して適宜選定する。本発明では、シート成形体寸法は170mm×140mmとした。」 3 当審の判断 (1)申立理由1について 本件発明1において、「dc/deが0.98以上かつ1.0以下」、「ve/vcが0.50以上1.06以下」とされているのであるから、dc/de=1.0、ve/vc1.0である場合を含むことは明確である。 また、「酸化物換算で0.7質量%以上10質量%以下のMg化合物と、酸化物換算で1質量%以上10質量%以下の少なくとも1種の希土類元素の化合物と、を含む焼結助剤を用いて製造した」との特定は、単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎず、その物の製造方法が記載されているとはいえず、プロダクトバイプロセスクレームには該当しない。 したがって、申立理由1には理由がない。 (2)申立理由2について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 厚さについて 甲1発明の「0.3mmの厚さを有し」は本件発明1の「0.15mm以上2.0mm以下の厚さを有し」を満たす。 b 成分組成について 甲1発明の「Y2O3が4質量%、Er2O3が6質量%」の合計は10質量%であるから、本件発明1の「酸化物換算で1質量%以上10質量%以下の少なくとも1種の希土類元素の化合物」を満たし、甲1発明の「MgOが2質量%」は本件発明1の「酸化物換算で0.7質量%以上10質量%以下のMg化合物」を満たし、そして、これらY2O3、Er2O3、MgOは焼結助剤として含有されるものである。 そうすると、甲1発明の「Si3N4が87質量%、Y2O3が4質量%、Er2O3が6質量%、TiO2が1質量%、MgOが2質量%からなる窒化けい素焼結基板」は本件発明1の「焼結助剤として、酸化物換算で0.7質量%以上10質量%以下のMg化合物と、酸化物換算で1質量%以上10質量%以下の少なくとも1種の希土類元素の化合物とを用いることを特徴とする窒化ケイ素焼結基板」に相当する。 c 基板は主面を有するものであるから、甲1発明の「窒化けい素焼結基板」は、本件発明1の「主面を有する窒化ケイ素焼結基板」に相当する。 d したがって、本件発明1と甲1発明は、 「主面を有する窒化ケイ素基板であって、 0.15mm以上2.0mm以下の厚さを有し、 酸化物換算で0.7質量%以上10質量%以下のMg化合物と、酸化物換算で1質量%以上10質量%以下の少なくとも1種の希土類元素の化合物と、を含む焼結助剤を用いて製造した、 窒化ケイ素焼結基板。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 窒化ケイ素焼結基板が、本件発明1では、「1辺120mmの正方形よりも大きく、1辺250mmの正方形以下の大きさの形状」であって、 「窒化ケイ素焼結基板の主面のうち周囲1cm幅を除いた四角形内に直径3cmの9つの円C11~C13、C21~C23、C31~C33を3行3列に配置したとき(ただし、中央の円C22は、対角に位置する2つの頂点をそれぞれ結ぶ2つの対角線の交点に円C22の中心が一致するように配置し、他の8つの円C11~C13、C21、C23、C31~C33は、前記主面の頂点近傍でかつ2つの辺に接するように円C11、C13、C31、C33を配置し、これらの円の中間に位置し、かつ、対応する辺に接するように円C12、C21、C23、C32を配置する。)、円C22の切片の密度及びボイド率が中央部の密度dc及びボイド率vcに相当し、円C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の密度及びボイド率が端部の密度de及びボイド率veに相当し、 C11~C13、C21、C23、C31~C33の切片の全ての密度及びボイド率において、前記中央部の密度dcと前記端部の密度deの比dc/deが0.98以上かつ1.0以下であり、前記中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、前記端部のボイド率veが1.00%以下であり、前記中央部のボイド率vcと前記端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上1.06以下」 であるのに対し、甲1発明では、「サイズが縦50mm×横40mm」であって、「気孔率は<0.01vol%」である点。 (相違点2) 窒化ケイ素焼結基板が、本件発明1では、「10.0以上の絶縁破壊耐圧のワイブル係数を有」するのに対し、甲1発明では、絶縁破壊耐圧のワイブル係数が不明である点。 イ 相違点の検討 (a)相違点1について検討する。 第5の2(1)ア(ウ)に摘記したとおり、甲1には、「気孔率」を「アルキメデス法により測定した」と記載の記載はあるが、密度を測定した旨の記載はないし、気孔率についても、具体的に窒化ケイ素基板のどの部分についてどのようにして測定したか等、詳細な記載はないため、9つの直径3cmの円を配置し、それらの円の密度やボイド率を測定する本件発明1とは測定位置や測定する物性も異なるものである。 また、本件発明1は「窒化ケイ素焼結基板のサイズを大きくすると、基板の中央付近と端部とで種々の物性に差が生じ、基板面内での物性の均一性が低下する」(【0015】)という課題があったところ、「1辺120mmの正方形よりも大きく、1辺250mmの正方形以下大きさの形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板」という、サイズの大きな窒化ケイ素焼結基板においても、「dc/deが0.98以上かつ1.0以下であり、前記中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、前記端部のボイド率veが1.00%以下であり、前記中央部のボイド率vcと前記端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上1.06以下」(以下、下線部を「特徴事項」いう。)という、基板面内での物性の均一性を達成したものであるのに対し、甲1発明では、サイズが縦50mm×横40mmの窒化ケイ素焼結板を作成しており、その基板のサイズが異なっている。 そうすると、相違点1は実質的な相違点である。 (b)次に、相違点1の容易性について検討する。 焼結基板が小さい場合に基板面内のボイド率がほぼ均一であっても、焼結基板が大きくなるに従って基板面内のボイド率が不均一になることは技術常識である。そうすると、上記特徴事項における「1辺120mmの正方形よりも大きく、1辺250mmの正方形以下大きさの形状の主面を有する窒化ケイ素焼結基板」と「dc/deが0.98以上かつ1.0以下であり、前記中央部のボイド率vcが1.80%以下であり、前記端部のボイド率veが1.00%以下であり、前記中央部のボイド率vcと前記端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上1.06以下」を分けて検討することはできず、あくまでも一つの技術的事項として検討する必要がある。 甲2には、第5の2(2)の記載事項によれば、「10kg」の原料粉末を使用し、「厚さ0.15~0.25mmの窒化珪素素基板を得ることができた」ことが記載されているが、甲2には10kgの原料から、厚さ0.15~0.25の基板を何枚作製するは記載されていないし、作製にあたり原料を全部使い切ったかも記載されていないから、得られる窒化珪素基板の大きさがわかるとはいえない。さらに、サイズを大きくしたときの物性の均一性についての記載はないことから、上記特徴事項は記載されていない。したがって、甲1発明に甲2に記載された事項を組み合わせたとしても、本件発明1の窒化ケイ素焼結基板は得られない。 また、甲3~5にも、上記特徴事項は記載されていない。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~5は、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701167

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