特許異議申立
2022-701144
低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末
- 審判番号
- 2022-701144
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-203055
- 登録番号
- 7071654
- 請求日
- 2022年11月18日
- 審決日
- 2023年02月27日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】松田 晴行
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 分類
- P1651.121-Y (C08F)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7071654号発明「低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7071654号の請求項に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7071654号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成29年 8月 4日(優先権主張 平成28年 8月 4日)の特許出願(特願2017-151655)の一部を平成30年10月 3日に新たな特許出願(特願2018-188632)とし、さらにその一部を令和 1年11月 8日に新たな特許出願としたものであって、令和 4年 5月11日にその特許権の設定の登録がされ、同年 同月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 4年11月18日に、特許異議申立人 松田 晴行(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1ないし2に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末であって、
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、
1×102~7×105Pa・sの380℃における溶融粘度、1.0~50μmの平均粒子径、及び、分子鎖末端に主鎖炭素数106個あたり30個以上のカルボキシル基を有しており、
パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25ppb未満であり、
比表面積が7.0~20m2/gである
ことを特徴とする粉末(但し、水、アルコール、パラフィン、不飽和炭化水素、炭化水素油、無水マレイン酸、およびアセトンよりなる群から選択される湿潤剤がポリテトラフルオロエチレンに化学的に結合した湿潤化ポリテトラフルオロエチレン製品を除く。)。
【請求項2】
低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末であって、
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、
1×102~7×105Pa・sの380℃における溶融粘度、1.0~50μmの平均粒子径、及び、分子鎖末端に主鎖炭素数106個あたり30個以上のカルボキシル基を有しており、
パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25ppb未満であり、
比表面積が0.5~5.6m2/gである
ことを特徴とする粉末(但し、水、アルコール、パラフィン、不飽和炭化水素、炭化水素油、無水マレイン酸、およびアセトンよりなる群から選択される湿潤剤がポリテトラフルオロエチレンに化学的に結合した湿潤化ポリテトラフルオロエチレン製品を除く。)。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、本件特許に対する異議理由として下記1を主張し、証拠方法として下記2の甲第1ないし13号証を提示した。
1 異議理由(甲第1号証による進歩性)
本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
2 証拠方法
甲第1号証 特公昭52-38870号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証 特開2009-1745号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証 特開平10-147617号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証 日本弗素樹脂工業会編、「ふっ素樹脂ハンドブック」、2004年12月発行、第120頁(以下「甲4」という。)
甲第5号証 特開2012-77764号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証 三井・デュポンフロロケミカル株式会社、「テフロン(R)(当審注:○にRを表す。以下同じ。)実用ハンドブック」、2001年7月増刊、第152頁(以下「甲6」という。)
甲第7号証 スリーエムジャパン株式会社、「PTFE Micropowder」、2014年(以下「甲7」という。)
甲第8号証 住友スリーエム株式会社、「ホスタフロン(R) TFマイクロパウダー」、2014年以前(以下「甲8」という。)
甲第9号証 SOLVAY SOLEXIS SpA、「ALGOFLON(R) and POLYMIST(R)」、2008年(以下「甲8」という。)
甲第10号証 旭硝子フロロポリマーズ株式会社、「Aflon(R) PTFE」、2000年(以下「甲10」という。)
甲第11号証 Plastics Design Library、「Fluoroplastics」、Vol.1、2000年、p.197-198(以下「甲11」という。)
甲第12号証 3Mジャパングループ ホームページ 企業情報沿革 2022年9月9日(出力日)(以下「甲12」という。)
甲第13号証 特願2019-203055の令和 3年 7月12日付け意見書(以下「甲13」という。)
第4 当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1の特許請求の範囲、第1欄第30~35行及び第4欄実施例5の記載(特に、実施例5の記載)よりみて、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「市販のポリテトラフルオロエチレン高重合体に室温、空気中で30メガラドのガンマー線を照射して重合度を減少させたものを微粉砕機で粉砕したものを、300℃5時間加熱後390℃1時間加熱して得た、粉末。」(以下「甲1発明」という。)
2 請求項1に係る発明について
(1)請求項1に係る発明と、甲1発明とを対比すると、両者は、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末。」である点。
(相違点)
低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末が、請求項1に係る発明では、次のaないしeの各物性が特定されているのに対し、甲1発明では、aないしeの各物性が不明である点。
a 1×102~7×105Pa・sの380℃における溶融密度
b 1.0~50μmの平均粒子径
c 分子鎖末端に主鎖炭素数106個あたり30個以上のカルボキシル基
d パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25ppb未満
e 比表面積が7.0~20m2/g
(2)上記相違点について検討すると、甲1には、上記aないしeの各物性は、記載も示唆もされていない。
また、甲2ないし甲13によれば、上記aないしeのうち一部の物性を備えた低分子量ポリテトラフルオロエチレンが記載されていることが一応は窺えるが、甲1発明の低分子量ポリテトラフルオロエチレンが、上記aないしeの各物性を備えているかどうかは、依然として不明である。
よって、請求項1に係る発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)ア 申立人は、概要、甲1の製造法と本件特許に係る粉末の製造方法とは、同一の方法であるから、同一の低分子量ポリテトラフルオロエチレンが得られている蓋然性が高く、上記aないしeのうち、aは低分子量ポリテトラフルオロエチレンであれば当然に有している性質であり、c及びdは「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に放射線を照射したものを粉砕して、200~400℃で加熱」して得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレンが当然に有している性質であり、また、b及びdは広く市販されている通常の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の性状を特定したに過ぎないものである旨を主張する。
イ しかしながら、各甲号証の記載を検討しても、上記aないしeの各物性は、記載も示唆もされておらず、甲1発明の低分子量ポリテトラフルオロエチレンが、上記aないしeの各物性を備えているかどうかは、依然として不明であることは、上記(2)で検討したとおりである。よって、申立人の上記主張は採用できない。
3 請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、比表面積が0.5~5.6m2/gである点を除き、請求項1に係る発明の発明特定事項と差異がなく、少なくとも上記2(1)の相違点において、甲1発明と相違する。
そして、相違点についての判断は上記2(2)のとおりである。
よって、同様の理由により、請求項2に係る発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
4 異議理由(甲1による進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、請求項1ないし2に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、この理由によって本件特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに、本件特許の請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
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