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特許異議申立

2022-701143

シリカ粒子分散体及び表面処理シリカ粒子

審判番号
2022-701143
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-200855
登録番号
7070646
請求日
2022年11月18日
審決日
2023年08月17日
公報発行日
2023年09月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】堺化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【異議申立人】田中 都子
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 松井 裕典
分類
P1651.113-Y (C01B) / P1651.121-Y (C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7070646号発明「シリカ粒子分散体及び表面処理シリカ粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7070646号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7070646号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成28年4月28日を出願日とする特願2016-91165号(以下、「原出願」という。)の一部を、令和2年12月3日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月18日に、請求項1~8に係る特許について、特許異議申立人 田中 都子(以下、「申立人」という。)により、甲第1~3号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、令和5年2月14日付で当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月12日に特許権者より意見書が提出され、同年同月25日付で当審より申立人に対して審尋が通知され、同年6月26日に申立人より甲第4号証~甲第7号証を添付して回答書(以下、「回答書」という。)が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され、疎水化度が15~35%であり、150~210℃での気化水分量が600ppm以下である ことを特徴とする表面処理シリカ粒子。 【請求項2】 シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され、疎水化度が15~35%であり、平均SEM径が0.07~0.20μmである ことを特徴とする表面処理シリカ粒子。 【請求項3】 前記表面処理シリカ粒子は、CV値が0.15以下である ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理シリカ粒子。 【請求項4】 前記表面処理シリカ粒子は、比表面積が20~60m2/gである ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子。 【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子を製造する方法であって、 該製造方法は、 シリカ粒子と表面処理剤とを混合する工程(I)と、 該工程(I)で得た混合物を120~250℃に加熱する工程(II)とを含み、 該表面処理剤は、フェニルアルコキシシランを含む ことを特徴とする表面処理シリカ粒子の製造方法。 【請求項6】 請求項1~4のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子と、樹脂成分とを含む ことを特徴とするシリカ含有樹脂組成物。 【請求項7】 フィルム状封止材料用樹脂組成物である ことを特徴とする請求項6に記載のシリカ含有樹脂組成物。 【請求項8】 請求項1~4のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子と、樹脂成分とを含む ことを特徴とする封止材。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について 本件発明1~3、5及び6は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1~3、5及び6に係る特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。 本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特開2014-74905号公報 甲第2号証:特開2014-10158号公報 甲第3号証:特開2008-19157号公報 甲第4号証:特開2004-315300号公報 甲第5号証:特表2006-507210号公報 甲第6号証:国際公開第2010/001875号 甲第7号証:国際公開第2014/188934号 なお、甲第4号証~甲第7号証は回答書に添付されたものである。 第4 取消理由の概要 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について 本件発明1~3、5及び6は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明4、7及び8は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断 事案に鑑み、前記第3の特許異議の申立て理由及び前記第4の取消理由についてまとめて判断する。 1 甲各号証の記載事項等 (1) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には以下の(ア)~(エ)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記(i)または(ii): (i)重合性単量体およびシリカ粒子を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に加えて該重合性単量体組成物の粒子を形成し、該粒子中に含有される該重合性単量体を重合させてトナー粒子を製造する工程; (ii)結着樹脂およびシリカ粒子ならびに該結着樹脂を溶解しうる有機溶媒を混合し、該シリカ粒子を分散させ、該有機溶媒に該結着樹脂を溶解させた樹脂溶解液を、水系媒体中に加えて樹脂溶解液の粒子を形成し、該粒子中に含有される該有機溶媒を除去してトナー粒子を製造する工程; を含む製造方法によって製造されたトナー粒子を含有するトナーであって、 該シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)が、50nm以上800nm以下であり、 該シリカ粒子を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率が、0.60%以下であり、 該シリカ粒子の疎水化度が、5%以上40%未満である ことを特徴とするトナー。」 (イ) 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、水系媒体中でトナー粒子を製造する際、シリカ粒子をトナー粒子に内添し、トナー粒子の表層にシリカ粒子を露出させるには、シリカ粒子の親水性を高める必要があるため、シリカ粒子への疎水化処理を抑制する必要がある。 【0008】 シリカ粒子への疎水化処理を抑制すると、シリカ粒子の吸湿性は高まる傾向にあるため、特に高温高湿環境下でのトナーの帯電性の低下が生じやすくなり、帯電不良によるカブリなどが生じやすくなるといった課題がある。 【0009】 以上のように、水系媒体中でトナー粒子を製造する際、シリカ粒子をトナー粒子に内添し、トナー粒子の表層にシリカ粒子を固定化する方法は、シリカ粒子のトナー粒子からの脱離を抑制する手法としては効果的である。 【0010】 しかしながら、高温高湿環境下であっても、トナーの帯電性の低下を抑制したうえで、長期にわたる画像出力を行った場合であっても、トナーの高い転写性を維持し、カブリなどの画像品質の低下を抑制するには、まだ改善の余地があった。 【0011】 本発明の目的は、長期にわたる画像出力を行った場合であっても、高い転写性を維持することが可能であり、また、高温高湿環境下であっても高い、帯電性を維持し、帯電不良によるカブリが生じにくいトナーを提供することにある。 ・・・ 【0018】 まず、本発明に用いられるシリカ粒子について説明する。 【0019】 本発明において、トナーに用いられるシリカ粒子の中でも、トナー粒子に内添される上記特定のシリカ粒子を「シリカ粒子A」とも称する。 【0020】 本発明に用いられるシリカ粒子Aは、上記のとおり、体積平均粒径(Dv)が50nm以上800nm以下という比較的大粒径のシリカ粒子である。 ・・・ 【0021】 本発明に用いられるシリカ粒子Aは、体積粒度分布における変動係数が、23%以下であることが好ましい。体積粒度分布における変動係数は、後述のように測定され、その値が小さいほど、シリカ粒子の粒度分布がシャープである(シリカ粒子の粒径が揃っている。)ことを意味する。 ・・・ 【0022】 本発明に用いられるシリカ粒子Aは、上記のとおり、シリカ粒子Aを105℃から200℃に加熱した際の質量減少率(以下単に「質量減少率」ともいう。)が0.60%以下であるシリカ粒子である。質量減少率とは、熱質量測定装置(TGA)を用い、常圧(1気圧)でシリカ粒子を50℃から500℃に加熱した際、105℃から200℃におけるシリカ粒子の質量減少量の百分率を意味する。シリカ粒子を加熱すると、シリカ粒子のシラノール基は、130℃前後で脱水縮合し、それによってシリカ粒子の質量が減少する。一方、シラノール基以外のシリカ粒子に付着している水分やその他の揮発性物質は、常圧(1気圧)において105℃程度でほぼ揮発してしまう。また、シリカ粒子の表面処理剤として一般的に用いられるHMDSやシリコーンオイルは、常圧(1気圧)において200℃程度ではほぼ揮発せず、200℃よりも高い温度(250℃程度)で揮発し始める。 【0023】 以上のことから、本発明者らは、シリカ粒子の105℃から200℃における質量減少率を測定することで、シリカ粒子が有するシラノール基量を定量することができると考えている。 【0024】 シリカ粒子のシラノール基は水分吸着サイトであるため、シリカ粒子のシラノール基量は、シリカ粒子の吸湿性を大きく左右する。そのため、シリカ粒子のシラノール基量は、トナーの帯電性、流動性および転写性に大きく影響する。本発明に係るシリカ粒子Aの代わりに質量減少率が0.60%より大きいシリカ粒子を用いた場合、シリカ粒子のシラノール基量が多いため、特に高湿環境下では、シリカ粒子に水分が多量に吸着してしまい、トナーの帯電性および流動性が低下しやすい。流動性が低下する結果、トナーの転写性も低下しやすい。シリカ粒子の質量減少率は、特には、0.10%以下であることが好ましく、0.02%以下であることがよりさらに好ましい。 【0025】 本発明に用いられるシリカ粒子Aは、上記のとおり、疎水化度が5%以上40%未満であるシリカ粒子である。本発明のトナーに含有されるトナー粒子を製造する工程において、シリカ粒子の疎水化度は、トナー粒子中のシリカ粒子の存在状態を規定する重要な物性である。・・・シリカ粒子Aの疎水化度は、特には、6%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。一方、36%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。 【0026】 シリカ粒子を疎水化処理する方法としては、種々の方法を用いることが可能である。シリカ粒子の疎水化処理方法としては、例えば、シリカ粒子に疎水化処理剤を乾式で処理する方法や、シリカ粒子に疎水化処理剤を湿式で処理する方法が挙げられる。 【0027】 それらの中でも、乾式による疎水化処理方法が、シリカ粒子の凝集を抑制しつつ、トナーに優れた流動性を付与することができる点で好ましい。乾式による疎水化処理方法としては、例えば、シリカ粒子を撹拌しながら、疎水化処理剤を噴霧して処理する方法や、疎水化処理剤の蒸気を流動床上のシリカ粒子や撹拌下のシリカ粒子へ導入する方法が挙げられる。 【0028】 シリカ粒子の疎水化処理剤としては、例えば、 メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類や、 テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類や、 ・・・ 上記脂肪酸と、亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩 などが挙げられる。これらの疎水化処理剤のうち、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイル(特にはストレートシリコーンオイル)は、シリカ粒子に対する疎水化処理を実施しやすい点で好ましい。疎水化処理剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。2種類以上の疎水化処理剤を用いる場合、2種類以上の疎水化処理剤を混合してシリカ粒子の表面処理に用いてもよいし、2種類以上の疎水化処理剤を順次段階的に用いてシリカ粒子を表面処理してもよい。」 (ウ) 「【0031】 <シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数の測定> 本発明において、シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数の測定は、シスメック社製の測定装置(商品名:ゼータサイザーNano-ZS)を用いて行った。具体的には、シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数は、以下のようにして求められる。 【0032】 まず、上記測定装置を用いてシリカ粒子の体積粒度分布を測定することで、体積粒度分布の標準偏差(上記測定装置では“width”と表示される。)と体積平均粒径(Dv)を求めることができる。そして、下式により、体積粒度分布における変動係数を求めることができる。下式に示すように、体積粒度分布における変動係数とは、体積粒度分布の標準偏差の、体積平均粒径に対する比率(%)を意味する。 体積粒度分布における変動係数(%)=(体積粒度分布の標準偏差/体積平均粒径(Dv))×100 ・・・ 【0036】 <シリカ粒子の質量減少率の測定方法> 本発明において、シリカ粒子の質量減少率は、TA Instrument社製の測定装置(商品名:Hi-Res TGA 2950 Thermogravimetric Analyzer)を用いて、以下のようにして測定した。 【0037】 上記測定装置用のパンにサンプルとしてのシリカ粒子を0.03g添加し、測定装置にセッティングした。その際、シリカ粒子の嵩高さを考慮して、サンプル量を調整した。そして、常圧(1気圧)において50℃で平衡状態にしてから10分間保持し、シリカ粒子の質量(M50)を測定した。その後、窒素ガスを供給し、常圧(1気圧)において20℃/分で500℃まで昇温し、質量変化を測定した。そして、下式のように、50℃で10分間保持した後のシリカ粒子の質量(M50)に対する、105℃から200℃におけるシリカ粒子の質量減少量(ΔM)の百分率を質量減少率とした。質量減少率(%)=(ΔM/M50)×100 【0038】 <シリカ粒子の疎水化度の測定方法> 本発明において、シリカ粒子の疎水化度は、以下のようにして測定した。 【0039】 直径5cmおよび厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に、フッ素樹脂コーティングされた長さ25mmおよび最大胴径8mmの紡錘型回転子を入れた。上記円筒型ガラス容器中にイオン交換水50mLを入れた後、シリカ粒子0.2gを添加し、レスカ社製の粉体濡れ性試験機(商品名:WET-100P)にセットした。マグネティックスターラーを用いて、200rpmの速度で撹拌しながら、上記粉体濡れ性試験機を通して、メタノールを0.8mL/分の速度で液中に添加した。液面上にシリカ粒子が認められなくなった点を終点とした。そして、終点でのメタノールと水との混合物中におけるメタノールの体積百分率(=(メタノールの体積/混合物の体積)×100)により表される値をシリカ粒子の疎水化度とした。」 (エ) 「【実施例】 【0103】 <シリカ粒子1の製造例> 撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた3Lのガラス製反応器に、メタノール589.6g、水42.0g、28質量%アンモニア水47.1gを加えて混合した。得られた溶液を35℃となるように調整し、撹拌しながら、テトラメトキシシラン1100.0g(7.23mol)および5.4質量%アンモニア水395.2gを同時に添加し始めた。テトラメトキシシランは6時間かけて、アンモニア水は5時間かけて、それぞれを滴下した。滴下が終了した後、さらに0.5時間撹拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状ゾルゲルシリカ微粒子のメタノール-水分散液を得た。次いで、ガラス製の反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、上記分散液を80℃、減圧下で十分乾燥させた。得られたシリカ粒子を、恒温槽にて400℃にて10分間加熱した。 【0104】 上記工程を複数回実施し、得られたシリカ粒子に対して、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕処理を行った。 【0105】 その後、表面処理工程として、まず、シリカ粒子500gを内容積1000mLのポリテトラフルオロエチレン内筒式ステンレスオートクレーブに仕込んだ。次いで、オートクレーブ内を窒素ガスで置換した。その後、オートクレーブ付属の撹拌羽を400rpmで回転させながら、3.5gのHMDS(ヘキサメチルジシラザン(表面処理剤))および1.0gの水を、二流体ノズルにて霧状にしてシリカ粒子に均一になるように吹き付けた。30分間撹拌した後、オートクレーブを密閉し、200℃で2時間加熱した。続いて、加熱したまま系中を減圧して脱アンモニア処理を行い、シリカ粒子1を得た。シリカ粒子1の各物性を表1に示す。 【0106】 <シリカ粒子2~5の製造例> シリカ粒子1の製造例において、最初に使用するメタノールの量を、589.6gから、それぞれ、707.5g、453.0g、380.4g、224.0gに変更した。この変更によって、シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数を調整した。また、上記炭素量がシリカ粒子1と同じ量になるように、HMDSによる表面処理をする際、HMDSおよび水の量を調整し、シリカ粒子2~5を得た。シリカ粒子2~5の各物性を表1に示す。 【0107】 <シリカ粒子6~8の製造例> シリカ粒子1の製造例において、テトラメトキシシランの滴下時間を、6時間から、それぞれ、5時間、3時間、3時間に変更し、5.4質量%アンモニア水の滴下時間を、5時間から、それぞれ、4時間、3時間、2.5時間に変更した。この変更によって、シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数を調整した。また、上記炭素量がシリカ粒子1と同じ量になるように、HMDSによる表面処理をする際、HMDSおよび水の量を調整し、シリカ粒子6~8を得た。シリカ粒子6~8の各物性を表1に示す。 【0108】 <シリカ粒子9および10の製造例> シリカ粒子1の製造例において、恒温槽にて400℃にて加熱する際の時間を、10分間から、それぞれ、8分間、3.2分間に変更した。この変更によって、上記質量減少率を調整し、シリカ粒子を得た。また、上記炭素量がシリカ粒子1と同じ量になるように、HMDSによる表面処理をする際、HMDSおよび水の量を調整し、シリカ粒子9および10を得た。シリカ粒子9および10の各物性を表1に示す。 【0109】 <シリカ粒子11の製造例> シリカ粒子10の製造例において、HMDSにて表面処理する際の加熱温度を、固定化率がそれぞれ88%になるよう調整し、シリカ粒子11を得た。シリカ粒子11の各物性を表1に示す。 【0110】 <シリカ粒子12の製造例> シリカ粒子1の製造例において、HMDSおよび水の量を、3.5gおよび1.0gから、それぞれ、2.5gおよび1.0gに変更し、シリカ粒子12を得た。シリカ粒子12の各物性を表1に示す。 【0111】 <シリカ粒子13の製造例> シリカ粒子1の製造例において、表面処理工程で、3.5gのHMDSおよび1.0gの水を用いる代わりに、4.0gのポリジメチルシロキサン(PDMS)(商品名:KF96-10cs、信越化学社製)を9.0gのヘキサンで希釈したものを用いた。その後、撹拌を継続した状態で、200℃で2時間加熱し、シリカ粒子13を得た。得られたシリカ粒子13の各物性を表1に示す。 【0112】 <シリカ粒子14の製造例> シリカ粒子13の製造例において、PDMSおよびヘキサンの量を、4.0gおよび9.0gから、それぞれ、7.0gおよび16.0gに変更し、シリカ粒子14を得た。得られたシリカ粒子14の各物性を表1に示す。 【0113】 <シリカ粒子15の製造例> 燃焼法により体積平均粒径(Dv):92nmのシリカ粒子(ヒュームドシリカ)を作製し、これを風力分級することで、体積平均粒径(Dv):85nm、体積粒度分布における変動係数:21%のシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子1と同様にしてHMDSで表面処理し、シリカ粒子15を得た。シリカ粒子15の各物性を表1に示す。 【0114】 <シリカ粒子16の製造例> 特開昭60-255602号公報記載の方法に準じ、金属ケイ素を原料として爆燃法により体積平均粒径(Dv):150nmのシリカ粒子を作製した。体積粒度分布における変動係数は30%であった。これを、風力分級し、体積平均粒径(Dv):120nm、体積粒度分布における変動係数:21%のシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子1と同様にHMDSにて表面処理し、シリカ粒子16を得た。シリカ粒子16の各物性を表1に示す。 【0115】 <シリカ粒子17の製造例> 燃焼法により体積平均粒径(Dv):50nmのシリカ粒子(ヒュームドシリカ)を作製し、これを風力分級することで、体積平均粒径(Dv):40nm、体積粒度分布における変動係数:18%のシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子1と同様にしてHMDSで表面処理し、シリカ粒子17を得た。シリカ粒子17の各物性を表1に示す。 【0116】 <シリカ粒子18の製造例> 反応容器中にアルゴンと酸素の体積比が3:1の混合ガスを導入し、反応容器中の大気と置換させた。この反応容器中に酸素ガスを40(m3/時)および水素ガスを20(m3/時)で供給し、着火装置を用いて酸素-水素からなる燃焼炎を形成した。次いで、この燃焼炎中に圧力1177kPa(12kg/cm2)の水素キャリアガスで原料の金属ケイ素粉末を投入し、粉塵雲を形成した。このときの粉塵濃度は20g/m3とした。粉塵雲を燃焼炎により着火し、粉塵爆発による酸化反応を生じさせた後、反応容器内を温度3℃/分の速度で冷却し、シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子を風力分級し、微粉および粗粉を除去することにより、シリカ粒子を得た。これをシリカ粒子1と同様にしてHMDSで表面処理し、シリカ粒子18を得た。シリカ粒子18の各物性を表1に示す。 【0117】 <シリカ粒子19の製造例> シリカ粒子1の製造例において、恒温槽にて400℃にて加熱する際の時間を、10分間から1.4分間に変更した。この変更によって、上記質量減少率を調整し、シリカ粒子を得た。また、上記炭素量がシリカ粒子1と同じ量になるように、HMDSによる表面処理をする際、HMDSおよび水の量を調整し、シリカ粒子19を得た。シリカ粒子19の各物性を表1に示す。 【0118】 <シリカ粒子20の製造例> シリカ粒子1の製造例において、HMDSによる表面処理を行わず、それ以外はシリカ粒子1の製造例と同様にして、シリカ粒子20を得た。シリカ粒子20の各物性を表1に示す。 【0119】 <シリカ粒子21の製造例> シリカ粒子1の製造例において、HMDSおよび水の量を、3.5gおよび1.0gから、それぞれ、10.0gおよび1.5gに変更し、シリカ粒子21を得た。シリカ粒子21の各物性を表1に示す。 【0120】 【表1】 [図:0001401676000001.jpg] 」 イ 前記ア(ア)の記載によれば、甲第1号証には「トナー」が記載されており、当該「トナー」に含まれる「シリカ粒子」に注目すると、前記「シリカ粒子」は、該「シリカ粒子」の体積平均粒径(Dv)が50nm以上800nm以下であり、該「シリカ粒子」を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率が0.60%以下であり、該「シリカ粒子」の疎水化度が5%以上40%未満であるものである。 また、前記ア(イ)(段落【0021】、【0024】~【0026】、【0028】)の記載によれば、前記「シリカ粒子」は、体積粒度分布における変動係数が23%以下であることが好ましいものであり、質量減少率が0.02%以下であることがよりさらに好ましいものであり、「シリカ粒子」の疎水化度は、特には、10%以上であることがより好ましい一方、35%以下であることがより好ましいものであり、前記「シリカ粒子」は、疎水化処理剤で疎水化処理したものであり、前記疎水化処理剤としては、シリカ粒子に対する疎水化処理を実施しやすい点で好ましいものとして、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類が挙げられるものである。 更に、前記ア(ウ)(段落【0036】~【0037】)の記載によれば、前記「シリカ粒子」を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率は、TA Instrument社製の測定装置(商品名:Hi-Res TGA 2950 Thermogravimetric Analyzer)を用いて、前記測定装置用のパンにサンプルとしての「シリカ粒子」を0.03g添加し、測定装置にセッティングし、その際、「シリカ粒子」の嵩高さを考慮して、サンプル量を調整し、そして、常圧(1気圧)において50℃で平衡状態にしてから10分間保持し、「シリカ粒子」の質量(M50)を測定した後、窒素ガスを供給し、常圧(1気圧)において20℃/分で500℃まで昇温し、質量変化を測定し、そして、下式のように、50℃で10分間保持した後の「シリカ粒子」の質量(M50)に対する、105℃から200℃における「シリカ粒子」の質量減少量(ΔM)の百分率を質量減少率としたものである。 質量減少率(%)=(ΔM/M50)×100 また、前記ア(ウ)(段落【0038】~【0039】)の記載によれば、前記「シリカ粒子」の疎水化度は、直径5cmおよび厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に、フッ素樹脂コーティングされた長さ25mmおよび最大胴径8mmの紡錘型回転子を入れ、前記円筒型ガラス容器中にイオン交換水50mLを入れた後、「シリカ粒子」0.2gを添加し、レスカ社製の粉体濡れ性試験機(商品名:WET-100P)にセットし、マグネティックスターラーを用いて、200rpmの速度で撹拌しながら、前記粉体濡れ性試験機を通して、メタノールを0.8mL/分の速度で液中に添加し、液面上に「シリカ粒子」が認められなくなった点を終点として、終点でのメタノールと水との混合物中におけるメタノールの体積百分率(=(メタノールの体積/混合物の体積)×100)により表される値を「シリカ粒子」の疎水化度としたものである。 ウ 前記イによれば、甲第1号証には、 「シリカ粒子であって、 該シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)が、50nm以上800nm以下であり、該シリカ粒子を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率が、0.60%以下であり、該シリカ粒子の疎水化度が、5%以上40%未満であり、 前記シリカ粒子は、体積粒度分布における変動係数が23%以下であることが好ましいものであり、 前記シリカ粒子の質量減少率は、0.02%以下であることがよりさらに好ましいものであり、 前記シリカ粒子の疎水化度は、特には、10%以上であることがより好ましい一方、35%以下であることがより好ましいものであり、 前記シリカ粒子は、疎水化処理剤で疎水化処理したものであり、前記疎水化処理剤としては、シリカ粒子に対する疎水化処理を実施しやすい点で好ましいものとして、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類が挙げられるものであり、 前記シリカ粒子を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率は、TA Instrument社製の測定装置(商品名:Hi-Res TGA 2950 Thermogravimetric Analyzer)を用いて、前記測定装置用のパンにサンプルとしてのシリカ粒子を0.03g添加し、測定装置にセッティングし、その際、シリカ粒子の嵩高さを考慮して、サンプル量を調整し、そして、常圧(1気圧)において50℃で平衡状態にしてから10分間保持し、シリカ粒子の質量(M50)を測定した後、窒素ガスを供給し、常圧(1気圧)において20℃/分で500℃まで昇温し、質量変化を測定し、そして、下式のように、50℃で10分間保持した後のシリカ粒子の質量(M50)に対する、105℃から200℃におけるシリカ粒子の質量減少量(ΔM)の百分率を質量減少率としたものであり、 質量減少率(%)=(ΔM/M50)×100 前記シリカ粒子の疎水化度は、直径5cmおよび厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に、フッ素樹脂コーティングされた長さ25mmおよび最大胴径8mmの紡錘型回転子を入れ、前記円筒型ガラス容器中にイオン交換水50mLを入れた後、シリカ粒子0.2gを添加し、レスカ社製の粉体濡れ性試験機(商品名:WET-100P)にセットし、マグネティックスターラーを用いて、200rpmの速度で撹拌しながら、前記粉体濡れ性試験機を通して、メタノールを0.8mL/分の速度で液中に添加し、液面上にシリカ粒子が認められなくなった点を終点として、終点でのメタノールと水との混合物中におけるメタノールの体積百分率(=(メタノールの体積/混合物の体積)×100)により表される値をシリカ粒子の疎水化度としたものである、シリカ粒子。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下のア~ウの記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 表面被覆率50%以上300%以下でフェニルトリメトキシシランにより表面被覆された無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。」 イ 「【0018】 電子写真感光体への添加剤として被覆化した無機粒子を用いる場合には無機粒子表面が完全覆われていること、あるいは少なくとも無機粒子が疎水性を示す程度に被覆化されていることが重要で、さらに分散工程における衝撃で被覆膜がはがれることを考慮すると2重から3重に覆われていることが好ましい。 この状態は 疎水化度では適切にその範囲を規定することができない ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0021】 本発明は、電子写真感光体の最表面層に疎水性を有する無機微粒子を添加することにより長期間の繰り返し使用に対しても、画像流れなどの異常画像を発生せず、機械的および電気的に優れた耐久性を有する電子写真感光体、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。」 ウ 「【0113】 各実施例に用いる無機微粒子の製造 製造例1 無機微粒子S-1の製造 10wt%含水エタノール溶液100重量部に、無機微粒子としてシリカ微粒子(SO-E1、アドマテックス社製:粒径300nm)10重量部を添加し、φ3mmのZrO2ビーズ200重量部を添加してボールミルにて3時間攪拌し、スラリーを作った。次に、シランカップリング剤としてフェニルトリメトキシシラン(MBM103、信越シリコーン社製:分子量198.29)1重量部を添加し、10分間、常温で攪拌、濾過し、表面処理されたフィラーを取り出した、得られた粉をシャーレに展開し、120℃30分乾燥した。さらに、得られた粉をIPA中に攪拌し、濾過後に上記と同条件で乾燥して被覆率100%の無機粒子S-1 20gを得た。 【0114】 製造例2 無機微粒子S-2の製造 製造例1においてフェニルトリメトキシシラン0.5重量部を添加した以外は、製造例1と同様にして実施し、被覆率50%の無機粒子S-2 22gを得た。 【0115】 製造例3 無機微粒子S-3の製造 製造例1においてフェニルトリメトキシシラン3重量部を添加した以外は、製造例1と同様にして実施し、被覆率300%の無機粒子S-3 25gを得た。 【0116】 製造例4 無機微粒子S-4の製造 シリカ微粒子としてSO-E1の代わりに比表面積は3.6m2/gを有するSO-E3(アドマテックス社製 粒径1000nm)10重量部を用い、フェニルトリメトキシシラン(MBM103 信越シリコーン社製)0.2重量部添加した以外は、製造例1と同様にして実施し、被覆率100%の無機微粒子S-4 22gを得た。」 (3) 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下のア及びイの記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、半導体封止材、液晶シール材、積層基板絶縁材等に使用する樹脂組成物の充填材或いは電子写真用トナーの外添剤として好適に使用できる新規な乾式シリカ微粒子に関する。」 イ 「【0083】 また、本発明の乾式シリカ微粒子は、前述した半導体封止用、液晶シール用あるいは積層基板の絶縁層形成用の樹脂組成物としての用途やトナー用外添剤としての用途に限定されるものでなく、単独で或いは他の粒子と組み合わせて、その他の用途に使用することも可能である。例えば、石英るつぼ、光ファイバー等の石英ガラス部材、CMP等の研磨材、光反応性接着剤等の接着剤、化粧品、精密樹脂成形品充填材、歯科材用充填材、LED用シール剤、ICのテープオートメイティッドボンディング用キャリアテープフィルム、ICのリードフレーム固定用テープ、インクジェット紙コート層、電子写真用感光体保護層、電子写真用感光体クリーニング材、各種の樹脂フィルム、塗料艶消し剤等の塗料添加剤、アンチブロッキング剤、ハードコート剤、反射用成型体の原材料等の用途にも好適に使用することができる。」 (4) 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下のア及びイの記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、電気、電子、光産業分野の部品材料として有用な、超高純度であり且つ粒子径の揃った10nm未満のサイズのシリカ微粒子及びこれが分散したシリカコロイドに関するものである。これらのシリカコロイドや粒子は、必要な溶媒置換等の操作を施したうえで高分子とのナノコンポジット材料として利用したり、ゲル化の操作等を施した上で低誘電率絶縁材料の原料として利用したりすることができる。また、近年ナノサイズの光透過性を応用し、化粧品、特に皮膚色、髪色を生かして紫外線を防いだり、痛んだ髪のつやを回復、保持する使用法も検討されており、そのような用途にも好適である。 ・・・ 【0004】 ナノテクノロジーの代表的な分野として半導体技術がある。LSIの集積度の向上とともに構造が微細化され、デザインルールが0.25μm以下になると導体間隔が狭くなり静電誘導によるインピーダンスが増大し、応答速度が遅れるという問題がある。この問題を回避するために導体間にある絶縁層の誘電率を下げる工夫が必要である。従来用いられてきたシリカの比誘電率4.1を下げる工夫の一つに絶縁層を形成する箇所に塗布法でシリカコロイド粒子を敷き詰め、シリカコロイド粒子間の空隙を利用してポーラスなシリカ構造となし比誘電率を低下させる工夫、あるいは予めシリカコロイド粒子を他の粒子と混合して、熱処理や化学処理等により他の粒子を除去することによりポーラスなシリカ構造となし比誘電率を低下させるという工夫が考案される。この目的のためには、粒子径が10nm未満で2次凝集のない、且つ超高純度のシリカコロイド粒子が必要である。 ・・・ 【0009】 一方、▲3▼の方法では、シリコンアルコキシド及び水は蒸留による精製が可能であるため、高純度化が容易であり、アンモニアも蒸発除去が可能なので、極めて高純度のナノ粒子製造技術を提供することができ、しかも、水性溶媒を有機溶媒で置換する方法は可能であり、コロイド粒子を凝集させることなく、希望の溶媒に置換することが可能であれば、前記の様なナノテクノロジーの分野で非常に有用な技術となり得るという期待が大きい。そこで、新技術のシーズとしてのポテンシャルが高く、種々の検討がなされてきた。しかし、種々生成条件を検討しても、30nm以下のサイズの所謂ナノ粒子の領域になると目的外の微粒子が生成したり、複数の粒子が凝集して大きな粒子となり、ついには、溶液が粘調になってゲル化を引き起こすという問題も生じ、安定して凝集のないシリカナノ粒子の合成は、極めて困難であった。当然、シングルナノ粒子については更に難しく、成功に至っていない。」 イ 「【0067】 実施例13 実施例2と同様にして得られたナノシリカコロイド溶液に、アンモニア水を添加してpHが11になる様に調整し、保存中のコロイド粒子間の凝集を防止した。前記コロイド溶液250部にトリフェニルメトキシシラン0.1部とトルエン250部とを加え、振盪器を用いて30分間懸濁状態となし、分液ロートを用いてアルコール-水相を分離除去した。この様にして得られたトルエン相は無色透明であり、その一部を蒸発皿で乾固させたところ、約4%に相当する白色の粉が残留しており、シリカコロイド粒子がアルコール-水相からトルエン相に相間移動していることを確認できた。残留するアルコール、アンモニア、水分は確認できなかった。この様にして得られたトルエン溶媒分散コロイダルシリカを静置して経時変化を調べたが、4月間経過時点でも溶液の濁りや粒子径に変化は見られなかった。なお、コロイド溶液とトルエンとをカップリング剤を加えることなく直接混合すると次第にゲル化した。」 (5) 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、以下のア~ウの記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 官能化コロイダルシリカを含んでなる組成物であって、該コロイダルシリカが1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤で官能化した後、1種以上の封鎖剤で官能化したものである、組成物。 【請求項2】 前記オルガノアルコキシシランがフェニルトリメトキシシランを含む、請求項1記載の組成物。」 イ 「【0002】 電子素子の小型化・高性能化の要望に伴って、電子産業では小さなダイ面積で優れた性能を示すとともに、入出力(I/O)の高密度化が可能な改良集積回路パッケージが求められている。フリップチップ技術はかかる要件を満足する。フリップチップ構造の弱点は、シリコンダイと基板の熱膨張係数(CTE)の不均衡のため温度サイクリング時にはんだバンプが大きな機械的応力を受け、電子素子の機械的又は電気的故障を引き起こすことである。現在、シリコンチップと基板の間の隙間を充填するためキャピラリーアンダーフィルが用いられており、はんだバンプの疲労寿命が改善される。残念なことに、多くの封止剤化合物は、充填材含有率が高く、封止剤の粘度が高いため、チップと基板の間の微細な隙間(50~100μm)を充填することができない。」 ウ 「【0043】 実施例1:官能化コロイダルシリカ予備分散物の調製 以下の一般手順を用いて、表1に示す試薬を表1の比率で含む官能化コロイダルシリカ予備分散物を調製した。例えば、水性コロイダルシリカ(465g、34%シリカ、Nalco 1034a)とイソプロパノール(800g)とフェニルトリメトキシシラン(56.5g)の混合物を60~70℃で2時間加熱撹拌して透明懸濁液を得た。」 (6) 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、以下のア~エの記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)シリカ微粒子と、 (b)2以上のエチレン性不飽和基を有し且つ環構造を有しない(メタ)アクリレートと、 (c)エチレン性不飽和基を有し且つ脂環式構造を有する(メタ)アクリレートと、 (d)重合開始剤とを含み、 前記シリカ微粒子(a)が、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(e)及び下記一般式(2)で表されるシラン化合物(f)で表面処理されていることを特徴とする硬化性組成物: 【化1】 [図:0001401676000002.jpg] (式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表し、qは1~6の整数であり、rは0~2の整数である。); 【化2】 [図:0001401676000003.jpg] (式(2)中、R4は炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基を表し、R5は水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表し、sは0~6の整数であり、tは0~2の整数である。)。」 イ 「【0001】 本発明は、低粘度でハンドリング性に優れた硬化性組成物、及び該硬化性組成物を硬化させて得られる、透明性、耐熱性、耐環境性及び成形加工性に優れた硬化物に関する。前記硬化物は、例えば、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に利用でき、特に光学レンズ、光学素子、光導波路に好適に利用できる。」 ウ 「【0047】 シラン化合物(f)としては、例えば、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジエチルメトキシシラン、ベンジルエチルジメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジエチルエトキシシラン、ベンジルエチルジエトキシシランおよびベンジルトリエトキシシラン等が挙げられる。」 エ 「【0111】 以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。 [硬化性組成物の調製] (実施例1) セパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ(シリカ含量30質量%、平均粒子径10~20nm、商品名スノーテックIPA-ST;日産化学(株)製)100質量部を入れ、該セパラブルフラスコにγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4.5質量部とフェニルトリメトキシシラン4.5質量部を加え、攪拌混合し、さらに0.1825質量%の HCl溶液2.9質量部を加え、20℃で24hr撹拌することにより、シリカ微粒子の表面処理を行った。 ・・・ 【0116】 (実施例2) セパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ(シリカ含量30質量%、平均粒子径10~20nm、商品名スノーテックIPA-ST;日産化学(株)製)100質量部を入れ、該セパラブルフラスコにγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.4質量部とフェニルトリメトキシシラン3.6質量部を加え、攪拌混合し、さらに0.1825質量%のHCl溶液2.9質量部を加え、20℃で24hr撹拌することにより、シリカ微粒子の表面処理を行った。」 (7) 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、以下のア及びイの記載がある。 ア 「【0004】 半導体パッケージ用配線基板や半導体封止材に用いられる樹脂には、線膨張率の低減のためにシリカフィラーを充填することが行われてきた。従来、これらの用途にはミクロンサイズのシリカフィラーが使用されてきた。近年、半導体の微細化や配線基板の薄膜化に伴い、これらに使用される樹脂は、より低い線膨張率が求められており、樹脂へのシリカフィラーの充填率をより高くする検討が盛んに行われている。」 イ 「【0088】 〔実施例5〕 実施例1の(a)~(j)工程によって得られたメタノール分散シリカゾル(平均一次粒子径45nm)1000gを2リットルのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながらフェニルトリメトキシシラン4.4g添加した後、8時間60℃で加熱を行った。50℃に冷却後、ヘキサメチルジシラザン50gを添加し、更に4時間60℃で加熱することにより表面修飾されたメタノール分散シリカゾルを得た。続いて、ロータリーエバポレータにて、浴温100℃として、400~20Torrの減圧下で脱溶媒し、乾固させることによってシリカ粉末を得た。得られたシリカ粉末をメチルエチルケトンに分散させて動的光散乱法によるシリカ粒子径を測定したところ、80nmであった。得られたシリカ粉末は、動的光散乱法により測定されるシリカ粒子径/平均一次粒子径の比1.8、23℃、相対湿度50RH%の環境下で48時間放置したときのシリカ粉末の吸湿率は0.1質量%未満であった。シリカ粉末のα線の放出量は0.002カウント/cm2・hrであった。」 2 対比・判断 (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における疎水化処理剤で疎水化した「シリカ粒子」は、本件発明1における「表面処理シリカ粒子」に相当する。 すると、本件発明1と甲1発明とは、「表面処理シリカ粒子。」の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され、疎水化度が15~35%であ」るのに対して、甲1発明は、「シリカ粒子の疎水化度が、5%以上40%未満であ」り、「特には、10%以上であることがより好ましい一方、35%以下であることがより好ましいものであ」り、「シリカ粒子」が、「疎水化処理剤で疎水化処理したものであり、前記疎水化処理剤としては、シリカ粒子に対する疎水化処理を実施しやすい点で好ましいものとして、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類が挙げられる」ものである点。 ・相違点2:本件発明1は、「表面処理シリカ粒子」の「150~210℃での気化水分量が600ppm以下である」のに対して、甲1発明は、「該シリカ粒子を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率」が、「0.02%以下である」点。 なお、本件特許明細書の段落【0006】、【0021】、【0022】(下記イ(ア))の記載からみれば、本件発明1に係る「表面処理シリカ粒子」は、「フェニルアルコキシシラン」による表面処理により「疎水化度」を「15~35%」とすることで、長期間安定して分散状態を維持できるシリカ粒子分散体となるのであるから、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され」ることと「疎水化度が15~35%であ」ることとは、一体不可分な発明特定事項といえるので、本件発明1と甲1発明との間の相違点を、前記のとおりに認定する。 イ 判断 (ア) 始めに、前記アの相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0004】 ところで従来、封止材料としては液状材料が主流であり、キャピラリーフローで注入封止することで実装する手段が採られてきた。だが、液状封止材料は注入量の制御が難しく、硬化後の形状や厚さが安定しない等という課題があったため、最近ではフィルム状の封止材料が新たに開発されている。シリカ粒子を用いてフィルム状封止材料を得るには、例えばシリカ粒子を溶媒に分散させ、これを樹脂と混合してフィルム化する工程が必要になるが、本発明者が検討を進めたところ、従来のシリカ粒子は溶媒中での分散安定性が充分ではなく、樹脂との混合前に沈降し分離することを見いだした。この場合、作業効率や輸送、保管の点で課題を有する。 【0005】 本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、保管や輸送が容易で、長期間安定して分散状態を維持できるシリカ粒子分散体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、このような分散体に適した表面処理シリカ粒子及びその製造方法、並びに、表面処理シリカ粒子を用いたシリカ含有樹脂組成物及び封止材を提供することも目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は、シリカ粒子と溶媒とを含む分散体について鋭意検討を重ねるうち、シリカ粒子として、フェニルアルコキシシランにより表面処理されてなり、疎水化度が15~35%である表面処理シリカ粒子を用い、これと溶媒とを含む分散体とすれば、長期間安定して分散状態を維持でき、保管や輸送が容易になる他、分散体使用前の再撹拌工程等を簡略化又は省略できることを見いだした。また、この分散体を与える表面処理シリカ粒子を得るには、シリカ粒子と表面処理剤とを混合後、所定温度に加熱する工程を含む製造方法を採用すれば、容易かつ簡便に表面処理シリカ粒子を製造できることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。 【0007】 すなわち本発明は、表面処理シリカ粒子と溶媒とを含むシリカ粒子分散体であって、該表面処理シリカ粒子は、フェニルアルコキシシランにより表面処理されてなり、疎水化度が15~35%であるシリカ粒子分散体である。 ・・・ 【発明の効果】 【0018】 本発明のシリカ粒子分散体は、長期間安定して分散状態を維持することができるため、保管や輸送が容易である他、使用前の再撹拌工程等を簡略化又は省略することができる。そのため、フィルム状封止材料の原料として特に有用である他、他の形状の封止材料や、フィルム材料、トナー材料、歯科材料等の各種用途にも有用である。本発明の表面処理シリカ粒子は、このような長期安定性に優れる分散体を与えることができ、これを含むシリカ含有樹脂組成物及び封止材は、半導体等の電気・電子部品等の製造を簡略化でき、しかも安定して高性能を発揮することを可能にするため、産業上多大な貢献をなすものである。 ・・・ 【0021】-表面処理シリカ粒子- 表面処理シリカ粒子とは、シリカ粒子表面の一部又は全部が処理(改質)された粒子を意味する。特に本発明では、表面処理シリカ粒子として、疎水化度が15~35%であり、かつフェニルアルコキシシランにより表面処理されてなる粒子、すなわち言い替えれば、シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換された粒子であって、疎水化度が当該範囲内にある粒子を使用する。 【0022】 通常、シリカ表面は親水性であるが、上記表面処理シリカ粒子では、フェニル基が有する立体障害や疎水性に起因して適度な疎水性が付与されており、しかもシリカ粒子表面とフェニルアルコキシシランとの結合が強固であるために経時で結合が切れることが充分に抑制されるため、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持することができる。それゆえ、シリカ粒子分散体が長期安定性に優れるものとなる。 なお、特許文献1~3の実施例では、シリカ粒子を、アミノプロピルトリエトキシシラン、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)又はメチルトリメトキシシランで表面処理している。だが、これらの表面処理剤は、フェニルアルコキシシランと異なって、フェニル基を有さないため、フェニル基に起因した立体障害や疎水性をシリカ粒子に付与することができない(例えば、後述の試験例13、14参照)。それゆえ、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持するという本発明の作用効果を発揮することができない。」 そして、前記記載からみれば、本件発明1は、保管や輸送が容易で、長期間安定して分散状態を維持できるシリカ粒子分散体及びその製造方法を提供することを目的とするものであって、シリカ粒子として、「フェニルアルコキシシラン」により表面処理されてなり、「疎水化度」が「15~35%」である「表面処理シリカ粒子」を用い、これと溶媒とを含む分散体とすれば、長期間安定して分散状態を維持でき、保管や輸送が容易になり、分散体使用前の再撹拌工程等を簡略化又は省略できることを見いだしたものである。 すなわち、本件発明1においては、表面処理剤のフェニル基が有する立体障害や疎水性に起因して適度な疎水性が付与されており、しかもシリカ粒子表面と「フェニルアルコキシシラン」との結合が強固であるために経時で結合が切れることが充分に抑制されるため、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持することができるのに対して、アミノプロピルトリエトキシシラン、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)又はメチルトリメトキシシランといった表面処理剤は、フェニルアルコキシシランと異なって、フェニル基を有さないため、フェニル基に起因した立体障害や疎水性をシリカ粒子に付与することができず、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持するという本発明の作用効果を発揮することができないものである。 してみれば、本件発明1は、シリカ粒子分散体を、長期間安定して分散状態を維持できるものとするために、特に、表面処理剤のフェニル基が有する立体障害や疎水性に注目したものといえ、係る立体障害や疎水性に起因して、「疎水化度」が「15~35%」である適度な疎水性が付与され、しかもシリカ粒子表面とフェニルアルコキシシランとの結合が強固であるために経時で結合が切れることが充分に抑制されるため、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持することができるものである。 これに対して、甲第1号証の段落【0011】(前記1(1)ア(イ))の記載によれば、甲1発明は、長期にわたる画像出力を行った場合であっても、高い転写性を維持することが可能であり、また、高温高湿環境下であっても高い、帯電性を維持し、帯電不良によるカブリが生じにくいトナーを提供することを課題とするものであって、同段落【0022】~【0024】の記載によれば、トナーに用いられる「表面処理シリカ粒子」を、質量減少率が0.60%以下、好ましくは0.02%以下であり、シラノール基量が少ない「表面処理シリカ粒子」とすることで、前記課題を解決するものといえる。 このことからすれば、甲1発明は、そもそも、溶媒中で「表面処理シリカ粒子」の分散状態を安定して維持しようとするものとはいえないし、表面処理剤のフェニル基が有する立体障害や疎水性に注目したものともいえない。 また、甲第1号証の実施例(前記1(1)ア(エ))において用いられている疎水化処理剤、すなわち表面処理剤は、ヘキサメチルジシラザン及びポリジメチルシロキサンであって、これらは、いずれも、フェニル基に起因した立体障害や疎水性を付与するものではないから、甲1発明が表面処理剤のフェニル基に起因した立体障害や疎水性に注目したものではないことは、前記実施例の記載からも裏付けられるものである。 してみれば、甲1発明において、好ましい表面処理剤として、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランといった、フェニル基を有する化合物を含むアルコキシシラン類が挙げられ、また、「シリカ粒子の疎水化度が」、「特には、10%以上であることがより好ましい一方、35%以下であることがより好ましい」ものであるとしても、甲第1号証に、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部」を「フェニルアルコキシシラン由来の基で置換」し、「疎水化度」を「15~35%」とすることで、溶媒中で「表面処理シリカ粒子」の分散状態を安定して維持することが実質的に記載されているとはいえないから、前記相違点1は実質的な相違点であるので、前記アの相違点2について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。 (イ) 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、甲1発明は、そもそも、溶媒中で「表面処理シリカ粒子」の分散状態を安定して維持しようとするものとはいえないことは、前記(ア)に記載したとおりであって、甲1発明において、溶媒中で「表面処理シリカ粒子」の分散状態を安定して維持することは想定されないから、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部」を「フェニルアルコキシシラン由来の基で置換」し、「疎水化度」を「15~35%」として、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持する動機付けは存在しない。 また、甲第1号証には、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部」を「フェニルアルコキシシラン由来の基で置換」した上で、その「疎水化度」を「15~35%」とすることが記載も示唆もされるものではないし、甲第2号証~甲第3号証にも、そうすることは記載も示唆もされていないから、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らない。 そして、本件特許明細書の段落【0018】(前記(ア))の記載によれば、本件発明1により、長期間安定して分散状態を維持することができるため、保管や輸送が容易である他、使用前の再撹拌工程等を簡略化又は省略することができる、といった、甲第1号証~甲第3号証に記載された事項からは当業者が予測し得ない効果が得られるのであって、このことは、本件特許明細書の段落【0072】~【0091】に記載された実施例(摘記は省略した。)からも裏付けられるものである。 これらのことからみれば、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得ることではないから、前記アの相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について ア 前記(1)アと同様にして本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明2と甲1発明とは、「表面処理シリカ粒子。」の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1’:本件発明2は、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され、疎水化度が15~35%であ」るのに対して、甲1発明は、「シリカ粒子の疎水化度が、5%以上40%未満であ」り、「特には、10%以上であることがより好ましい一方、35%以下であることがより好ましいものであ」り、「シリカ粒子」が、「疎水化処理剤で疎水化処理したものであり、前記疎水化処理剤としては、シリカ粒子に対する疎水化処理を実施しやすい点で好ましいものとして、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類が挙げられる」ものである点。 ・相違点2’:本件発明2は、「表面処理シリカ粒子」の「平均SEM径が0.07~0.20μmである」のに対して、甲1発明は、「体積平均粒径(Dv)が、50nm以上800nm以下」である点。 イ そして、前記アの相違点1’は前記(1)アの相違点1と同じものであるから、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、前記アの相違点2’について検討するまでもなく、本件発明2が甲1発明であるとはいえないし、本件発明2は、甲1発明及び甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3~8について 本件発明3~8は、いずれも、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、前記(1)イ、(2)イに記載したのと同様の理由により、本件発明3、5及び6が甲1発明であるとはいえないし、本件発明3~8は、甲1発明及び甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立人の主張について (1) 申立人の主張の概要 ア 特許異議申立書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第1号証には、「表面処理シリカ粒子」の特に好ましい「疎水化度」が「10~35%」であること(段落【0025】(前記1(1)ア(イ)))、シリカ粒子径は50~1200nmであること(段落【0120】(同(エ)))が記載されている。 更に、甲第1号証には、「疎水化処理剤」として「フェニルアルコキシシラン」を使用することが記載されているから(段落【0028】(前記1(1)ア(イ)))、本件発明において、「フェニルアルコキシシラン」を用いて疎水化処理を行い、特に好ましい範囲である「疎水化度」が「10~35%」の「表面処理シリカ粒子」を得ることは、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、当業者が容易に想到し得ることである。 また、甲第1号証には、シリカ粒子を105℃から200℃に加熱した際の質量減少率が0.02%であることがより更に好ましいことが記載されており(段落【0024】(前記1(1)ア(イ)))、前記質量減少率は本件発明1における「気化水分量」に相当するから、本件発明1と甲1発明の「気化水分量」に差異はなく、本件発明1及び2は甲1発明である(6ページ13行~8ページ9行)。 イ 回答書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 半導体の分野においてフィラーとして採用されているシリカに対して「フェニルアルコキシシラン」にて表面処理を行うことは、本件特許の原出願の出願日当時の周知技術であり、甲第4号証~甲第7号証には、半導体素子などの電子機器について用いられる樹脂組成物中に分散されるフィラーとしてのシリカに対して「フェニルアルコキシシラン」にて表面処理する技術が開示されているから、フィラーの分散性を向上する技術として周知技術である「フェニルアルコキシシラン」により表面処理されたシリカ、との限定を行ったとしても選択発明が成立する余地はない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明である本件発明1~8は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するか、少なくとも同法同条第2項の規定に該当し特許を受けることができない発明である(1/4ページ下から5行~2/4ページ9行)。 (2) 判断 ア 始めに、前記(1)アの主張について検討すると、前記2(1)イに記載したのと同様の理由により、本件発明1及び2が、「フェニルアルコキシシラン」を用いて疎水化処理を行い、特に好ましい範囲である「疎水化度」が「10~35%」の「表面処理シリカ粒子」を得る点で、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえないし、そうすることを当業者が容易に想到し得るともいえないのであり、このことは、本件発明1と甲1発明の「気化水分量」の差異の有無に左右されないから、前記(1)アの主張は採用できない。 イ 次に、前記(1)イの主張について検討すると、前記1(4)~(7)の記載をみれば、甲第4号証~甲第7号証には、シリカ粒子の表面を「フェニルアルコキシシラン」で処理することが開示されているといえ、そうすることは本件特許の原出願の出願日当時の周知技術といえるが、甲第4号証~甲第7号証にも、「シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部」を「フェニルアルコキシシラン由来の基で置換」し、その「疎水化度」を「15~35%」とすることは記載も示唆もされていないから、前記周知技術を参酌しても、前記相違点1が実質的な相違点であること、及び、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得ることではないことに変わりはないので、本件発明1が甲1発明であるとはいえないし、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 更に、本件発明2~8について検討しても事情は同じであるので、前記(1)イの主張も採用できない。 ウ 前記ア及びイによれば、申立人の前記(1)の主張はいずれも採用できない。 4 小括 したがって、本件発明1~3、5及び6が甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1~8が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証~甲第3号証に記載された事項及び原出願の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、前記第3の特許異議の申立て理由及び前記第4の取消理由はいずれも理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701143

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