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特許異議申立

2022-701003

水中油型日焼け止め化粧料及びその製造方法

審判番号
2022-701003
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-226552
登録番号
7052317
請求日
2022年10月11日
審決日
2023年07月03日
公報発行日
2023年10月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】堺化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人タス・マイスター
  • 【権利者代理人】八木 敏安
  • 【異議申立人】宮崎 喜美子
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7052317号発明「水中油型日焼け止め化粧料及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7052317号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第7052317号の特許の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7052317号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年11月27日を出願日とする特願2017-226552号として特許出願され、令和4年4月4日に特許権の設定登録がされ、令和4年4月12日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~3に係る発明の特許に対し、令和4年10月11日に宮崎喜美子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和5年 1月10日付け 取消理由通知 同年 3月 8日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 4月17日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 5月19日 意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和5年3月8日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第7052317号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~4からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載部分を、訂正後の請求項1の「HLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~3も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項3の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載部分を、訂正後の請求項3の「HLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の明細書の段落0009の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載部分を、訂正後の「HLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の明細書の段落0011の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載部分を、訂正後の「HLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)」との記載に訂正する。 2.本件訂正による訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件特許明細書の段落0031の「ポリエーテル変性シリコーン(c)のHLBとしては、6-12であることが望ましい。」との記載に基づいて、訂正前の請求項1に記載された「ポリエーテル変性シリコーン(c)」を「HLBが6~12である」ものに限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件特許明細書の段落0031の記載に基づいて、訂正前の請求項3に記載された「ポリエーテル変性シリコーン(c)」を「HLBが6~12である」ものに限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」のみを目的として訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3及び4について 訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、本件特許明細書の段落0031の「ポリエーテル変性シリコーン(c)のHLBとしては、6-12であることが望ましい。」との記載に訂正の根拠があるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項3及び4は、明細書の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲に記載された用語の定義や発明特定事項の技術的範囲を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~3について、その請求項2~3は直接又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1~2による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 また、訂正事項3及び4による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~3であって、訂正事項1及び2と関係する請求項〔1~3〕の一群の請求項が請求の対象とされている。 したがって、訂正事項3~4による本件訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~4による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び/又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下「本1発明」~「本3発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 水相に SiR1(OR2)3 (1) (式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。 R2は、メチル基又はエチル基を表す) で表される化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、多価アルコール(b)及びHLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)を含有し、 油相にp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルを含有する ことを特徴とする水中油型日焼け止め化粧料。 【請求項2】 表面処理された酸化亜鉛粒子(a)は、水中油型日焼け止め化粧料の全量に対して、7~25重量%の割合で含まれるものである請求項1記載の水中油型日焼け止め化粧料。 【請求項3】 SiR1(OR2)3 (式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。 R2は、メチル基又はエチル基を表す) で表される化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、多価アルコール(b)及びHLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)を含有する水分散体を調製する工程(1)、及び、 前記工程(1)で得られた水分散体を油性成分と混合し、水中油型分散体を得る工程(2) からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の水中油型日焼け止め化粧料の製造方法。」 第4 取消理由通知の概要 令和5年1月10日付の取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1~3からなるものである。 〔理由1〕本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 参考例A:国際公開第2011/055771号 よって、本件特許の請求項1~2に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由2〕本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:特開2016-222589号公報 甲第2号証:国際公開第2016/002752号 参考例A:国際公開第2011/055771号 参考例B:国際公開第2011/055761号 参考例C:特開2013-49641号公報 よって、本件特許の請求項1~2に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由3〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 不備1:本件特許の請求項1及び3に発明特定事項として記載された「ポリエーテル変性シリコーン(c)」のHLB値の範囲が特定されていない点 よって、本件特許の請求項1~3に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.取消理由通知で示した取消理由について (1)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について ア 甲第1~2号証及び参考例A~C、並びにその記載事項 甲第1号証には、次の記載がある。 摘記1a:請求項1 「【請求項1】亜鉛、チタン、ケイ素、アルミ、鉄、セリウムから選ばれる少なくとも一種以上の金属酸化物を、 疎水化処理剤およびHLBが8以上のポリエーテル変性シリコーンで被覆処理したことを特徴とする表面処理粉体。」 摘記1b:段落0023~0024及び0026 「【0023】…本発明に係る表面処理粉体に用いられる疎水化処理剤は、主に基材となる金属酸化物の水への溶出を低減するための機能を果たすものである。そしてこのような疎水化処理剤としては、シリコーンオイル、脂肪酸、アルキルシランから選ばれる一種以上の化合物を用いることが好ましい。 なお、シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのいわゆるストレートシリコーンオイルや、トリメチルシロキシケイ酸、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンなどのいわゆる分岐型シリコーンオイルなどが挙げられる。脂肪酸としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などが挙げられる。アルキルシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどのアルコキシシランやヘキサメチルジシラザンなどのシラザンなどが挙げられる。 そしてこれらの中でも基材の水への溶出をより効果的に防止でき、水への分散性をより良好なものとすることができる点からジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ステアリン酸、イソステアリン酸、オクチルトリエトキシシランを用いることが好ましく、さらにその中でもオクチルトリエトキシシランを用いることが好ましい。… 【0024】…本発明に用いられるポリエーテル変性シリコーンは、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が8以上(具体的には、HLB値が8~20)である必要がある。このようなHLB値が8以上のものを用いることによって、疎水性に改質している金属酸化物の表面を修飾するとともに水への分散性を付与することができるのである。そして、このようなポリエーテル変性シリコーンとしては、…、PEG-9ジメチコン(信越化学工業製:KF-6013)…などが挙げられる。… 【0026】…本発明に係る表面処理粉体を用いれば保湿剤や増粘剤を含有した場合であっても、基材である粉体の水への溶出が低減されることから、従前のように溶出する基材に起因する保湿剤や増粘剤の機能低下を防止することができ、基材である金属酸化物の物性(紫外線遮蔽能、無機材料であること(有機系化合物ではないこと)による耐劣化(安定)性など)を発現させながら、使用性と経時安定性を向上させることができるのである。」 摘記1c:段落0032、0054~0055及び0079~0080 「【0032】(実施例2) 出発原料として疎水化処理剤で被覆した酸化亜鉛(テイカ製:MZX-304OTS)を用い、係る被覆酸化亜鉛にPEG-11メチルエーテルジメチコンを同被覆酸化亜鉛に対して10wt%混合し、ヘンシェルミキサーを用いて加熱混合した。 最後に、得られた粉体をジェットオーマイザーで粉砕することにより、実施例2の表面処理粉体を作製した。… 【0054】(実施例20) 実施例2の表面処理粉体を用い、表3の配合割合にて各原料を配合することによって、実施例20の水分散性化粧料用組成物を作製した。 【0055】【表3】 [図:0001402759000001.jpg] … 【0079】(実施例24) 実施例20の水分散性化粧料用組成物を用い、表8の配合割合にて各原料を配合することによって、実施例24のO/W型化粧料(ジェル製剤)を作製した。具体的には、まずA相とB相を加熱し、次にB相にA相を混合し、最後にC相を混合することで実施例22のO/W型化粧料(O/W型日焼け止めジェル)を作製した。 【0080】【表8】 [図:0001402759000002.jpg] 」 甲第2号証には、次の記載がある。 摘記2a:請求項1 「[請求項1](A)0.1~5質量%のHLB(Si)が5~14のポリエーテル変性シリコーン、 (B)親水性増粘剤の1種又は2種以上、 (C)ポリオール及び/又はエチルアルコール、 (D)金属石鹸以外で疎水化処理された金属酸化物、疎水性の有機粉末、シリコーン粉末から選ばれる1種又は2種以上の疎水性粉末を含有し、 (D)疎水性粉末が水相に分散していることを特徴とする水性化粧料。」 摘記2b:段落0035、0037、0041及び0044 「[0035]本発明における金属酸化物粉末の疎水化処理として特に好ましいのは、シリコーン処理又は脂肪酸デキストリン処理である。シリコーン処理としては、…オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン…による処理が挙げられる。… [0037]本発明で使用する(D1)疎水化処理金属酸化物は市販されているものでもよく、例えば、…MZX-304OTS…(テイカ株式会社製)等を挙げることができる。… [0041]本発明の水性化粧料における(D)疎水性粉末の配合量は、化粧料全量に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であり、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下である。具体的な配合量範囲としては、0.5~35質量%、好ましくは3~25質量%、より好ましくは5~20質量%である。配合量が0.5質量%未満であると粉末を含有させたことによる効果が十分に発揮されず、30質量%を超えて配合すると、きしみ感、よれ、べたつき等、使用性に問題を生じる傾向がある。… [0044]本発明の水性化粧料は、(D)疎水性粉末を水相に安定に分散させることができるため、水性化粧料本来のみずみずしさを保持したまま、(D)疎水性粉末の有する優れたなめらかさ、耐水性、化粧持ちを付与することができる。また、(D)疎水性粉末として、しわ隠し効果や肌荒れ改善効果を有するものを配合した場合には、肌質改善効果も期待できる。また、(D)疎水性粉末として疎水性微粒子酸化チタンや疎水性微粒子酸化亜鉛などの紫外線防御能を持つ粉体(紫外線散乱剤)を用いた場合には、使用性の高い日焼け止め化粧料が得られる。水中油型乳化物の形態の水性化粧料において、疎水性粉末として紫外線散乱剤を配合し、油相に紫外線吸収剤を配合すると、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤とが協働して作用して紫外線防御効果が相乗的に向上する。ただし、みずみずしい使用感を維持するために、紫外線吸収剤を含む油相成分配合量は20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下とするのが好ましい。本発明の水性化粧料は、水相中に紫外線散乱剤が均一に分散されているので、油溶性の紫外線散乱剤の配合量が少量でも十分な紫外線防御能が得られる。」 摘記2c:段落0045及び0053~0055 「[0045]以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。… [0053](実施例14及び比較例5) 下記表4に掲げる水相部、油相部をそれぞれ70℃に加熱して完全溶解した。油相部を水相部に加えて、乳化機で乳化し冷却した。この時、比較例5では乳化前に粉末部を水相に混合したが、実施例14では冷却後の水中油型乳化組成物に攪拌混合した粉末部を混合した。… [0054][表4] [図:0001402759000003.jpg] [0055] 実施例14に示すように、シリコーン処理した金属酸化物やシリコーン粉末を水相に分散させた本発明に係る化粧下地は、水中油型乳化組成物のみずみずしさを保持しながら、疎水性粉末特有のなめらかさ、のびの軽さ、化粧もちに優れることを示した。一方、比較例5に示すように、疎水性粉末に代えて親水性粉末を配合した場合には、なめらかさ、のびの軽さ、化粧もちが不十分であることが確認された。」 参考例Aには、次の記載がある。 摘記A1:請求項1、3、6及び8 「[請求項1](A)平均粒子径0.1~1μm、平均粒子厚さ0.01~0.2μm及び平均板状比3以上である酸化亜鉛粉末を、炭素数1~20のアルキル基若しくはフルオロアルキル基を有し、無機酸化物と反応性を有するシラン化合物又はシラザン化合物により表面処理した粉末を含有することを特徴とする乳化化粧料。… [請求項3]前記シラン化合物又はシラザン化合物が、オクチルトリエトキシシラン及びオクチルトリメトキシシランから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の乳化化粧料。… [請求項6]さらに、(C)ポリエーテル変性シリコーンを含有する請求項1~5のいずれか1項記載の乳化化粧料。… [請求項8]さらに、(D)有機系紫外線吸収剤を含有する請求項1~7のいずれか1項記載の乳化化粧料。」 摘記A2:段落0012及び0051 「[0012]本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、平均粒子径0.1~1μm、平均粒子厚さ0.01~0.2μm及び平均板状比3以上である酸化亜鉛粉末を、炭素数1~20のアルキル基若しくはフルオロアルキル基を有し、無機酸化物と反応性を有するシラン化合物又はシラザン化合物により表面処理した粉末を乳化化粧料に用いることにより、高い透明性と紫外線防御効果を有しつつ、経時安定性、使用感に優れることを見いだした。… [0051]本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンのうち、水中油型乳化化粧料として好ましいものはHLBが8~18の範囲にあるポリエーテル変性シリコーンである。」 摘記A3:段落0066、0077、0081~0082及び0084 「[0066]製造例2(アルキルシラン表面処理薄片状酸化亜鉛粉末の製造) 薄片状酸化亜鉛粉末93質量部とオクチルトリエトキシシラン7質量部と、トルエンからなるスラリーを作成し、ビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製ダイノミル)を用いて粉砕・解砕を行った。次いで、トルエンを減圧下に加熱留去した後、送風気流型乾燥機を用いて150℃にて4時間加熱処理し、オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末を得た。… [0077](3)経時安定性 各試料を60℃の恒温槽に1ヶ月間保管し、1ヶ月後の状態を観察し、以下の判定基準を用いて判定した。 〔保存安定性判定基準〕 A:変化なし B:やや粘度変化が見られる C:明らかな粘度変化が見られる D:分離している… [0081]実施例9~10、比較例10~11 下記表3に記載した配合組成の水中油型乳化化粧料を下記の製法にて調製した。… [0082][表3]…実施例10…1(A)アルキルシラン処理薄片状酸化亜鉛(製造例2)…3(D)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル…経時安定性…A… [0084]…本発明の構成を取ることで、経時安定性を維持しつつ、良好な使用感が得られた。」 摘記A4:段落0098 「[0098]処方例2(日焼け止め水中油型乳化化粧下地) (A)成分 (質量%) 1.アルキルシラン処理薄片状酸化亜鉛(製造例2) 10.0 (B)成分 2.シリコーン処理酸化亜鉛(製造例5) 10.0 (D)成分 3.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0 (D)成分 4.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 5.0 5.ミリスチン酸オクチルドデシル 2.0 6.ステアリン酸ソルビタン 0.3 (C)成分 7.ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1.0 (シリコーンKF-6017、信越化学工業) 8.ジメチコン(6cs) 3.0 9.デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0 10.スクワラン 3.0 11.ポリメチルシルセスキオキサン 5.0 (平均一次粒径4.5μm) 12.エタノール 10.0 13.ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na (ポイズ310、花王社製) 0.5 14.エデト酸二ナトリウム 0.02 15.グリセリン 5.0 16.1,3-ブチレングリコール 5.0 17.アセロラエキス 1.0 (商品名:アセロラ抽出物BG25(丸善製薬社製) 18.プルーンエキス 0.5 (商品名:プルーン抽出液WC(丸善製薬社製)) (E)成分 19.ヒアルロン酸 0.5 20.香料 0.1 21.フェノキシエタノール 0.3 22.精製水 残 部」 参考例Bには、次の記載がある。 摘記B1:段落0003~0004及び0086 「[0003]従来から紫外線を防御するため、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等の紫外線吸収剤や酸化チタンや酸化亜鉛等の無機粉体が用いられている。これらのうち、酸化亜鉛は、UV-B領域(290nm~320nm)だけでなく、UV-A領域における遮蔽力が比較的高いことから、近年、化粧料において多用されている。 [0004]しかし、水中油型乳化化粧料に酸化亜鉛を用いた場合、酸化亜鉛は水系での分散性が悪く、化粧料に配合しにくいという問題があった。また、分散安定性を高めるために、水溶性高分子と併用しても、酸化亜鉛から溶出した亜鉛イオンにより、水溶性高分子が凝集し、化粧料の経時安定性や使用感を著しく低下させるという問題があった。… [0086]処方例2(日焼け止め水中油型乳化化粧料) 下記に示す成分及び常法に従い、水中油型日焼け止め化粧料を調整した。該水中油型日焼け止め乳液は、UV-Aカット効果、使用性、経時安定性、並び耐水性において優れたものであった。 (成分) (質量%) アルキルシラン処理薄片状酸化亜鉛(製造例2) 10.0… パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 4.0」 参考例Cには、次の記載がある。 摘記C1:段落0003 「【0003】ところで、有機系紫外線吸収剤は、水に不溶であることから、その紫外線吸収効果を発揮させるためには特定の溶媒に溶かす必要があり、化粧品の処方の自由度を低下させるという問題点があった。 また、無機系紫外線遮蔽剤は、中でも、特にサンスクリーンに添加されて効果を発揮する酸化亜鉛は、両性酸化物であることから水に微量溶解する性質がある。そこで、この溶出した亜鉛イオンによる作用で体臭成分を吸収するデオドラント剤または収斂剤として利用されることもある一方、同時に溶出した亜鉛イオンが化粧品の他の成分である油剤、香料、色料、有機紫外線吸収剤、水溶性高分子等と反応して、粘度を変化させたり、異臭を発生させたり、あるいは変色、着色、ゲル化等を誘起する虞がある。そのために、化粧料中の水の含有率を高めることができず、したがって、化粧料としての処方の自由度を低下させるという問題点があった。」 イ 甲号証及び参考例に記載された発明 (ア)参A発明 摘記A3の「製造例2…薄片状酸化亜鉛粉末93質量部とオクチルトリエトキシシラン7質量部と、トルエンからなるスラリーを作成し、…オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末を得た。」との記載、及び 摘記A4の「処方例2(日焼け止め水中油型乳化化粧下地)…(質量%)…アルキルシラン処理薄片状酸化亜鉛(製造例2)10.0…パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル5.0…ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体1.0(シリコーンKF-6017、信越化学工業)…グリセリン5.0…1,3-ブチレングリコール5.0」との記載からみて、参考例Aには、処方例2として、 『オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末10.0質量%、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル5.0質量%、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(シリコーンKF-6017、信越化学工業)1.0質量%、グリセリン5.0質量%、及び1,3-ブチレングリコール5.0質量%を含む日焼け止め水中油型乳化化粧下地。』についての発明(以下「参A発明」という。)が記載されているといえる。 (イ)甲2発明 摘記2bの「本発明の水性化粧料における(D)疎水性粉末の配合量は、…30質量%を超えて配合すると、きしみ感、よれ、べたつき等、使用性に問題を生じる傾向がある。…(D)疎水性粉末として疎水性微粒子酸化チタンや疎水性微粒子酸化亜鉛などの紫外線防御能を持つ粉体(紫外線散乱剤)を用いた場合には、使用性の高い日焼け止め化粧料が得られる。」との記載、及び 摘記2cの「実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。…下記表4に掲げる水相部、油相部をそれぞれ70℃に加熱して完全溶解した。油相部を水相部に加えて、乳化機で乳化し冷却した。…実施例14では冷却後の水中油型乳化組成物に攪拌混合した粉末部を混合した。…表4…水相部…イオン交換水 残量…グリセリン 6…ベントナイト 0.5…キサンタンガム 0.2…緩衝剤 適量…水酸化カリウム 適量…防腐剤 適量…油相部…ステアリン酸グリセリル 2…ステアリン酸 0.5…ベヘニン酸 0.3…イソステアリン酸 0.5…2-エチルヘキサン酸セチル 5…メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5…粉末部…エチルアルコール 5…ジプロピレングリコール 8…PEG-12ジメチコン(HLB(Si)=7.7)*3…1…オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン 3…ジメチコン・ハイドロゲンジメチコン処理シリカ被覆酸化亜鉛 5…(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー 2…*3)商品名:SH3773M」との記載からみて、甲第2号証には、実施例14として、 『油相部(ステアリン酸グリセリル2質量%、ステアリン酸0.5質量%、ベヘニン酸0.3質量%、イソステアリン酸0.5質量%、2-エチルヘキサン酸セチル5質量%、及びメトキシケイ皮酸エチルヘキシル5質量%)を水相部(イオン交換水 残量、グリセリン6質量%、ベントナイト0.5質量%、キサンタンガム0.2質量%、緩衝剤 適量、水酸化カリウム 適量、及び防腐剤 適量)に加えて、乳化機で乳化し冷却し、粉末部(エチルアルコール5質量%、ジプロピレングリコール8質量%、PEG-12ジメチコン(HLB(Si)=7.7)1質量%、オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン3質量%、ジメチコン・ハイドロゲンジメチコン処理シリカ被覆酸化亜鉛5質量%、及び(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー2質量%)を混合した、きしみ感、よれ、べたつき等、使用性に問題を生じない、水中油型乳化物の形態の日焼け止め化粧料。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 (ウ)甲1発明 甲第1号証の段落0079(摘記1c)の「実施例24」の記載からみて、甲第1号証には、 『B相(ブチレングリコール、精製水などを含む)に、A相(酸化チタン分散体、イソドデカンなどを含む)を混合し、最後にC相〔オクチルトリエトキシシラン及びPEG-11メチルエーテルジメチコン(KF-6018)で被覆した酸化亜鉛(実施例2の表面処理粉体)を含む実施例20の水分散性化粧料用組成物〕を混合してなるO/W型日焼け止めジェル。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 参考例Aを主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本1発明と参A発明とを対比する。 参A発明の「オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末」は、オクチルトリエトキシシラン(OTS)が、本1発明の式(1)において、R1が炭素数8の炭化水素基を表し、R2がエチル基を表す化合物に対応することから、本1発明の「SiR1(OR2)3 (1)(式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。R2は、メチル基又はエチル基を表す)で表される化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)」に相当する。 参A発明の「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は、本1発明の「p-メトキシ桂皮酸エチルヘキシル」に相当する。 参A発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(シリコーンKF-6017、信越化学工業)」は、本1発明の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」に相当する。 参A発明の「グリセリン」及び「1,3-ブチレングリコール」は、本1発明の「多価アルコール(b)」に相当する。 参A発明の「日焼け止め水中油型乳化化粧下地」は、本1発明の「水中油型日焼け止め化粧料」に相当する。 してみると、本1発明と参A発明は、両者とも『SiR1(OR2)3 (1)(式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。R2は、メチル基又はエチル基を表す)で表される化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、多価アルコール(b)及びポリエーテル変性シリコーン(c)を含有し、p-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルを含有する水中油型日焼け止め化粧料。』という点において一致し、次の(α)及び(β)の点において相違する。 (α)本1発明においては、p-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルが「油相」に含有され、成分(a)~(c)が「水相」に含有されるのに対して、参A発明においては、各成分が「油相」と「水相」の何れに含有されるのか不明である点 (β)本1発明の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」は「HLBが6~12である」のに対して、参A発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(シリコーンKF-6017、信越化学工業)」のHLBが不明である点 (イ)判断 a.相違点(α)について 参A発明は、成分(a)としての「オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末」と、成分(c)としての「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(シリコーンKF-6017、信越化学工業)」を混合し、これに精製水を添加して、 [図:0001402759000004.jpg] という形態の水中油型分散体となるものであるから、成分(a)の撥水化処理酸化亜鉛粉体は、成分(c)のシリコンオイルKF-6017などの油性成分によって囲まれた油滴(油相)として分散し、酸化亜鉛粉体は水相と直接接することがないため、亜鉛イオンの溶出という問題が生じにくいという技術思想にあるものといえる〔令和5年3月8日付け意見書の(4-2)の項(第6~7頁)参照〕。 してみると、参A発明は、撥水化処理酸化亜鉛粉体である「オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末」が、シリコンオイルである「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(シリコーンKF-6017、信越化学工業)」を含む油滴(油相)に含有され、水中油型分散物を構成する「水相」と「油相」のうちの「水相」に含有されていないという点において、本1発明の成分(a)及び(c)が「水相」に含有されるという構成を満たしていないので、上記(α)の相違点は実質的な相違点である。 そして、参A発明の「オクチルトリエトキシシラン処理薄片状酸化亜鉛粉末」を、油滴(油相)に含有する(油性成分で包囲する)ことなく、直接的に「水相」に含有させる動機付けは、甲第1~2号証及び参考例A~Cの記載に見当たらない。 また、参A発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(シリコーンKF-6017、信越化学工業)」というシリコーンオイルは、水中油型分散のための油滴(油相)を形成するための油性成分であるから、それ自体が「油相」となるものであって、当該シリコーンオイルを「水相」に含有させる動機付けは、甲第1~2号証及び参考例A~Cの記載に見当たらない。 したがって、上記(α)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 b.相違点(β)について 例えば、特開2015-174902号公報(参考例D)の段落0042の「ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、…「KF-6017」(HLB:4.5)」との記載にあるように、参A発明の「シリコーンKF-6017」は、HLBが4.5のシリコーンオイルであるから、上記(β)の相違点は実質的な相違点である。 そして、参考例Aの段落0051(摘記A2)には「本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンのうち、水中油型乳化化粧料として好ましいものはHLBが8~18の範囲にあるポリエーテル変性シリコーンである。」との記載はあるものの、参A発明のシリコーンオイルのHLBを、本1発明の「6~12」の範囲にする動機付けは、甲第1~2号証及び参考例A~Cの記載をみても見当たらない。 したがって、上記(β)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 c.まとめ 以上総括するに、本1発明と参A発明は、上記(α)及び(β)の実質的な相違点を有するから、本1発明が、参考例Aに記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。 また、本1発明は、酸化亜鉛粒子(a)を「水中油型」の化粧料を構成する水相と油相のうちの「水相」に含有されることを特徴とするものであって、上記(α)の相違点に係る構成を具備した場合の酸化亜鉛が水と直接接触すると亜鉛イオンが溶出するという問題を改善できるという、本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、甲第1~2号証及び参考例A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 エ 甲第2号証を主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本1発明と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「粉末部(…ジメチコン・ハイドロゲンジメチコン処理シリカ被覆酸化亜鉛5質量%…)」は、本1発明の「化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)」に相当する。 甲2発明の「油相部(…メトキシケイ皮酸エチルヘキシル5質量%)」は、本1発明の「油相にp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルを含有する」に相当する。 甲2発明の「水相部(…グリセリン6質量%…)」は、本1発明の本1発明の「水相」に含有される「多価アルコール(b)」に相当する。 甲2発明の「粉末部(…PEG-12ジメチコン(HLB(Si)=7.7)1質量%…)」は、HLBが8であるから、本1発明の「HLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)」に相当する。 甲2発明の「水中油型乳化物の形態の日焼け止め化粧料」は、本1発明の「水中油型日焼け止め化粧料」に相当する。 してみると、本1発明と甲2発明は、両者とも『表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、及びポリエーテル変性シリコーン(c)を含有し、水相に多価アルコール(b)を含有し、油相にp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルを含有する、水中油型日焼け止め化粧料。』という点において一致し、次の(γ)及び(δ)の点において相違する。 (γ)表面処理に用いる化合物が、本1発明においては「SiR1(OR2)3 (1)(式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。R2は、メチル基又はエチル基を表す)で表される化合物」であるのに対して、甲2発明においては「ジメチコン・ハイドロゲンジメチコン処理シリカ」である点 (δ)表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、及びポリエーテル変性シリコーン(c)が、本1発明においては「水相」に含有されるのに対して、甲2発明においては「粉末部」に含有される点 (イ)判断 a.相違点(γ)について 甲第2号証の段落0035(摘記2b)には「金属酸化物粉末の疎水化処理として特に好ましいのは、…オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン…による処理が挙げられる。」との記載があるものの、甲2発明の「オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン」との記載にあるように、甲2発明では、オクチルトリエトキシシラン(本1発明の式中、R1が炭素数8の炭化水素基で、R2がエチル基のもの)を用いた金属酸化物の疎水化処理において、金属酸化物として、酸化亜鉛ではなく、酸化チタンを採用しており、甲第2号証には、酸化亜鉛をOTS(オクチルトリエトキシシラン)で疎水化処理した具体例の記載がない。 また、参考例Cの段落0003(摘記C1)には、亜鉛イオンの溶出を抑制していない無機系紫外線遮蔽剤が、化粧品の他成分である「有機紫外線吸収剤」等と反応して「異臭を発生」させるという問題を生じることが記載され、甲第1号証の段落0023及び0024(摘記1b)には、表面処理粉体に用いる疎水化処理剤は、基材の水への溶出をより効果的に防止できる点から、特にオクチルトリエトキシシランを用いることが好ましく、これにより溶出する基材(酸化亜鉛)に起因する化粧料用組成物の配合成分の機能低下を防止できることが記載されているが、本1発明の式(1)のシランで表面処理された酸化亜鉛粒子を水相に含有させ、有機紫外線吸収剤を油相に含有させた場合に「異臭の発生」を抑制できることについて、甲第1~2号証及び参考例A~Cには明示的な記載が見当たらない。 したがって、上記(γ)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 b.特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和5年5月19日付けの意見書の第5頁において『特許権者が主張する、酸化亜鉛粒子とp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルとを併用した場合に生じる悪臭の発生という問題を改善する動機付けが甲第2号証と甲第1号証になくとも、甲第2号証に記載の発明において、甲第2号証に記載されている通り、「金属酸化物粉末の疎水化処理として特に好ましい「オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン」による「シリコーン処理」がされている、甲第1号証に記載の「疎水化処理剤で被覆した酸化亜鉛(テイカ製MZX-304OTS)」を用いて訂正後の本件特許の請求項1に記載の発明の構成及び効果に至ることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。』と主張する。 しかしながら、甲第1~2号証の記載を精査しても、悪臭の発生を改善するという効果については、示唆を含めて記載がないので、甲第1~2号証によっては、本1発明の効果に至ることが容易であるとはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 c.まとめ 以上総括するに、本1発明は、上記(γ)の相違点に係る構成を具備することで、本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(δ)の相違点について検討するまでもなく、甲第1~2号証及び参考例A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 オ 甲第1号証を主引用例とした場合の検討 (ア)対比 本1発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「B相(ブチレングリコール、精製水などを含む)」は、ブチレングリコールが多価アルコールに該当することが明らかであるから、本1発明の「水相に…多価アルコール(b)…を含有し、」に相当する。 甲1発明の「オクチルトリエトキシシラン…で被覆した酸化亜鉛」は、本1発明の「SiR1(OR2)3 (1)(式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。R2は、メチル基又はエチル基を表す)で表される化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)」に相当する。 甲1発明の「PEG-11メチルエーテルジメチコン(KF-6018)」は、本1発明の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」に相当する。 甲1発明の「O/W型日焼け止めジェル」は、本1発明の「水中油型日焼け止め化粧料」に相当する。 してみると、本1発明と参A発明は、両者とも『SiR1(OR2)3 (1)(式中、R1は、炭素数6~12の炭化水素基を表す。R2は、メチル基又はエチル基を表す)で表される化合物で表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、及びポリエーテル変性シリコーン(c)を含有し、水相に多価アルコール(b)を含有する水中油型日焼け止め化粧料。』という点において一致し、次の(ε)~(η)の点において相違する。 (ε)本1発明は、油相に「p-メトキシ桂皮酸エチルヘキシル」を含有するのに対して、甲1発明は、油相に「p-メトキシ桂皮酸エチルヘキシル」を含有するものではない点 (ζ)表面処理された酸化亜鉛粒子(a)、及びポリエーテル変性シリコーン(c)が、本1発明においては「水相」に含有されるのに対して、甲1発明においては「C相」に含有される点 (η)本1発明の「ポリエーテル変性シリコーン(c)」は「HLBが6~12である」のに対して、甲1発明の「PEG-11メチルエーテルジメチコン(KF-6018)」のHLBが不明である点 (イ)判断 a.相違点(ε)について 本1発明は、酸化亜鉛粒子とp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルとを併用した場合に生じる「悪臭の発生」という問題を改善する方法を提供するものである〔令和5年3月8日付け意見書の(4-4)の項(第9~10頁)参照〕。 したがって、酸化亜鉛が「PEG-11メチルエーテルジメチコン(KF-6018)で被覆」された「表面処理粉体」として「O/W型日焼け止めジェル」のC相に含有されている甲1発明においては、酸化亜鉛粒子が直接的に「水相」に含有されていないという点において、本1発明の課題自体が生じておらず、当然に、これを解決するという動機付け自体が存在しないこととなる。 そして、酸化亜鉛粒子を、直接的に「水相」に含有させたものは、甲第1~2号証及び参考例A~Cに記載がなく、本1発明の式(1)のシランで表面処理された酸化亜鉛粒子を水相に含有させ、有機紫外線吸収剤を油相に含有させた場合に「異臭の発生」を抑制できることについて、甲第1~2号証及び参考例A~Cには具体的な記載が見当たらない。 したがって、上記(ε)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。 b.特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和5年5月19日付けの意見書の第4頁において『特許権者が主張する、酸化亜鉛粒子とp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルとを併用した場合に生じる悪臭の発生という問題を改善する動機付けが甲第1号証と甲第2号証になくとも、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤とが協働して作用して紫外線防御効果が相乗的に向上することを期待して、甲1発明に、甲第2号証に記載されているように紫外線吸収剤としてp-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルを油相に配合することを組み合わせて、訂正後の本件特許の請求項1に記載の発明の構成及び効果に至ることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。』と主張する。 しかしながら、甲第1~2号証の記載を精査しても、悪臭の発生を改善するという効果については、示唆を含めて記載がないので、甲第1~2号証によっては、本1発明の効果に至ることが容易であるとはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 c.まとめ 以上総括するに、本1発明は、上記(ε)の相違点に係る構成を具備することで、本件特許明細書に記載のとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(ζ)及び(η)の相違点について検討するまでもなく、甲第1~2号証及び参考例A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 カ 本2発明について 本2発明は、本1発明を引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の新規性及び進歩性が、甲第1~2号証及び参考例A~Cによって否定できない以上、その新規性及び進歩性を否定することはできない。 したがって、本2発明は、参考例Aに記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。 また、本2発明は、甲第1~2号証及び参考例A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (2)理由3(サポート要件)について 上記〔理由3〕の記載不備として指摘した点は、具体的には『本件特許の請求項1及び3に発明特定事項として記載された「ポリエーテル変性シリコーン(c)」については、そのHLB値の範囲が特定されていないところ、本件特許明細書の段落0031の記載や、甲第1号証などに記載された技術常識によれば、HLB値が「6~12」の範囲にない「ポリエーテル変性シリコーン(c)」を用いた場合に、上記『p-メトキシ桂皮酸エチルヘキシルが分解されることで発生する悪臭が抑制され、かつ、使用感に優れる水中油型日焼け止め化粧料の提供』という課題を解決できると認識できない。』というものであるところ、本件訂正により、訂正後の請求項1及び3の関連する記載が「HLBが6~12であるポリエーテル変性シリコーン(c)」に訂正されたので、当該〔理由3〕の点に理由はない。 2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由A(進歩性欠如) 特許異議申立人が主張する申立理由A(進歩性欠如)は『本件特許の請求項1~3の各項に係る発明は、本件特許出願の出願日前に頒布された特開2016-222589号公報(甲第1号証)と国際公開第WO2016/002752号(甲第2号証)に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第2号に該当し、特許を取り消されるべきものである。』というものである。 そして、申立理由Aは、本1~本2発明について、上記第4の〔理由2〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 また、本3発明は、本1~本2発明をさらに限定したものであるから、本1~本2発明の進歩性が、甲第1~2号証によって否定できない以上、その進歩性を否定することはできず、本3発明にについての申立理由Aに理由はない。 (2)申立理由B(サポート要件違反) 特許異議申立人が主張する申立理由B(サポート要件違反)は『本件特許発明1~3の発明特定事項である「ポリエーテル変性シリコーン(c)」はHLBの範囲が特定されておらず、請求項において発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許されており、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は同法第113条第4号に該当し、特許を取り消されるべきものである。』というものである。 そして、申立理由Bは、上記第4の〔理由3〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 第6 まとめ 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1~本3発明に係る特許を取り消すことはできず、他に本1~本3発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701003

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