特許異議申立
2022-701131
金属基板およびこれを用いた蒸着用マスク
- 審判番号
- 2022-701131
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-555536
- 登録番号
- 7075214
- 請求日
- 2022年11月17日
- 審決日
- 2023年02月28日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】小野 誠
- 【権利者代理人】金山 賢教
- 【権利者代理人】重森 一輝
- 【権利者代理人】安藤 健司
- 【権利者代理人】市川 英彦
- 【権利者代理人】櫻田 芳恵
- 【権利者代理人】川嵜 洋祐
- 【権利者代理人】五味渕 琢也
- 【権利者代理人】飯野 陽一
- 【権利者代理人】市川 祐輔
- 【権利者代理人】森山 正浩
- 【権利者代理人】岩瀬 吉和
- 【異議申立人】山田 芳男
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 審判官 原 和秀
- 分類
- P1651.537-Y (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7075214号発明「金属基板およびこれを用いた蒸着用マスク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7075214号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7075214号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)8月25日(優先権主張 外国庁受理 2015年4月24日 韓国(KR) 2015年4月30日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和4年5月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月17日に、請求項1~2に係る特許について、特許異議申立人山田 芳男(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~2に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明2」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
厚さを有する金属基板;
前記金属基板は前記厚さ方向に対して直交し、互いに対向する第1面および第2面を具備し、
前記金属基板の任意の地点に30mm*180mm(横*縦)で採取したサンプル基板の、両側末端で内側に10mmを残してその内部に対して前記厚さの2/3~1/2厚さにエッチングしたエッチング領域を具現し、
エッチングを遂行した前記サンプル基板を水平対象面に据置した場合、
前記サンプル基板のねじれ指数(Hr)が次の関係を充足し、ねじれ指数(Hr)が0.2umないし10umである蒸着用マスク用金属基板。
[数1]
HR={(H1-Ha)2+(H2-Ha)2+(H3-Ha)2+(H4-Ha)2}1/2
[数2]
Ha=(H1+H2+H3+H4)/4
(Haは前記サンプル基板4個の隅が水平対象面から離隔される距離(H1、H2、H3、H4)の平均隔離距離と定義され、H1、H2、H3、H4の少なくとも一つは異なる値を有する。)
【請求項2】
前記金属基板の任意の地点に対して30mm*180mm(横*縦)で採取してエッチングを加えなかった単位基板を水平対象面に据置し、
前記単位基板(T1)の4個の隅地点に対して得られる前記[数1]および[数2]によるねじれ指数(Hr(T1))が、前記金属基板のエッチングを遂行したサンプル基板(T2)のねじれ指数(Hr(T2))以下である、請求項1に記載の蒸着用マスク用金属基板。
[数3]
Hr(T1)≦Hr(T2)」
第3 特許異議申立理由の概要
1 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1)本件発明1における「ねじれ指数(Hr)」が「[数1]」式、「[数2]」式に記載されていないから、本件発明1は明確でなく、本件発明2について検討しても事情は同じであるから、特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書5ページ6行~19行)。
(2)「金属基板」が規則正しく波打つ「金属基板」である場合、同じ「金属基板」であっても、サンプル基板が切断される部位によって「ねじれ指数(Hr)」は変化し得るから、「ねじれ指数(Hr)」が「金属基板」のねじれの程度を適切に表現するものとはいえない。
このため、本件発明1の発明特定事項には技術的な不備があるので、本件発明1は明確でなく、本件発明2について検討しても事情は同じであるから、特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書5ページ20行~7ページ最終行)。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
「金属基板」が大きく波打つ「金属基板」であっても、サンプル基板が切断される部位によって「ねじれ指数(Hr)」は小さくなり得るので、本件発明1は、大きく波打つ「金属基板」、すなわち本件発明の課題を解決しない「金属基板」を含むものであり、本件発明2について検討しても事情は同じであるから、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(特許異議申立書8ページ1行~9ページ2行)。
第4 特許異議申立理由に対する当審の判断
1 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について
(1)明確性要件の判断手法
請求項に係る発明が明確性要件に適合するか否かは、当該請求項の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきであるから、以下、この観点に立って検討する。
(2)明確性要件について
ア 本件特許明細書には、以下の(ア)~(ウ)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(ア)「【0094】
図17および図18は本発明の実施例による金属基板の特徴を説明するための概念図である。
【0095】
図17および図18を参照すると、本発明の実施例による金属基板は厚さを有するベース金属板をエッチング加工して蒸着用マスクを製作する厚さの金属基板を具現することができるようにし、特に金属基板が局部個所または、全体的にねじれ現象を最小化できる金属基板を具現することができるようにする。
【0096】
このために、本発明の第1実施例による金属基板は、図17に図示されたことのように、全体的に一定の厚さを有するベース金属板に対して、サンプル基板を抽出して、このサンプル基板(200)に対してエッチングが加えられるエッチング領域(210)と未エッチング領域(220)で具現され得る。(以下においては、ベース金属板に対してエッチングのために採取した基板を‘サンプル基板’と、ベース基板で採取した基板のうちエッチングを加えなかった基板を‘単位基板’と定義する。)
【0097】
この場合、前記ベース金属板は前記厚さ方向に対して直交し、互いに対向する第1面および第2面を具備する。このようなベース金属板に対して、前記ベース金属板の任意の地点に30mm*180mm(横*縦)で採取したサンプル基板(200)の、両側末端で内側に10mmを残して(220部分)その内部に対して前記厚さの2/3~1/2厚さにエッチングしたエッチング領域(210)を具現し、以後、前記サンプル基板を水平対象面に据置する場合、エッチングが行われたサンプル基板のねじれ指数(Hr)が次の関係を充足する。
{数1}
HR={(H1-Ha)2+(H2-Ha)2+(H3-Ha)2+(H4-Ha)2}1/2
{数2}
Ha=(H1+H2+H3+H4)/4
(Haはエッチングされたサンプル基板の4個の隅が水平対象面から離隔される距離(H1、H2、H3、H4)の平均隔離距離と定義する。)
【0098】
具体的に図1および図17および図18を参照して本発明の実施例による金属基板の特性を説明すると次のとおりである。
【0099】
一般に、図1のように、本発明の実施例による金属基板を用いて製作される蒸着用マスクは、OLEDの有機層の形成を具現するマクス構造物であって、蒸着物質を提供する蒸着ソース(S;Suorce)グラスのような基材(G)上に蒸着ターゲット(T)を具現することができるようにする。この場合、前記蒸着用マスク(M;100)は多数の単位ホールを具備する構造で具現される。一般に、OLED蒸着時における蒸着均一度の向上のためには、蒸着用マスクが均一な状態で蒸着工程の間維持されなければならない。
【0100】
しかし、基本的に蒸着用マスクを製作するために金属板をエッチングした場合、厚さが非常に薄くなり、ここに多数の蒸着ホールを具現するようになれば、製作される蒸着用マスクは簡単にねじれるようになって、図1のような配置構造で蒸着の均一度を確保できなくなる。
【0101】
よって、本発明の実施例においては、金属板や金属板エッチング時に発生するねじれを最小化できるようにする金属基板を提供できるようにする。本発明の金属基板の製造工程は、ベース金属板を30mmX180mmでサンプル基板を採取する。
【0102】
以後、前記サンプル基板に対して180mm長軸の両側10mm残して1/2~2/3エッチングする。以後、エッチングが行われたサンプル基板を水平度が確保された平面、例えば定盤のような対象の上に前記サンプル基板を配置する場合、定盤の水平対象面の基準面で前記サンプル基板の四つの隅が離隔される高さであるH1、H2、H3、H4を測定する。
【0103】
この場合、前記サンプル基板の四つの隅が離隔される高さであるH1、H2、H3、H4が‘0’以上の場合、この状態をサンプル基板が‘ねじれた(twist)’と定義して、このようなねじれの程度を前述した式1のような指数化したものをねじれ指数(Hr)と定義する。
・・・
【0106】
特に、本発明の実施例においては、このような前記サンプル基板のねじれ指数が10以下で具現され得る。例えば、ベース基板の厚さが20μmである場合、サンプル基板を抽出してエッチングを遂行し、エッチングを遂行したサンプル基板の4個の隅の部分が水平面に対して10μm以下を具現するようになる。
【0107】
すなわち、エッチングが加えられた前記サンプル基板のねじれ指数が10以下で具現され得、望ましくは0.2~7、または、0.5~5の範囲で具現され得る。このようなサンプル基板のねじれ指数を10以下で具現すると、最終蒸着用マスクの製造時ねじれ現象を防止することができ、OLED蒸着時に左右偏差が減って蒸着均一度を高めることができるようになる。
【0108】
本発明の実施例によるサンプル基板のねじれ指数を10以下で具現するためには、母材の状態で金属基板を具現する過程で冷却工程と圧延工程を遂行することを通じて形成できるようにする。・・・
【0109】
図18は前述した本発明の実施例によるベース金属板(200)でサンプル基板を採取してエッチングした場合のねじれ指数を説明するための図面であって、図示されたように、前記サンプル基板は水平対象面(ST)に対して4個の隅部位が落ちるようになり、このような隔離距離(H1~H4)は少なくとも一つは他の長さを有するようになる。すなわち、サンプル基板の短軸方向で隣接するH1とH2、または、H3とH4が互いに異なり得る。
【0110】
前述した本発明の実施例による金属基板の場合、前記金属基板のエッチング領域の第1面と第2面を貫通し、相互間に連通する第1面穴および第2面穴を有する単位ホールを多数含む蒸着用マスクで具現され得る。特に、このように具現される蒸着用マスクはマスクのねじれが顕著に減少して蒸着の信頼性を具現することができるようになる。」(当審注:段落【0107】の「ねじれ指数が10以下」、「望ましくは0.2~7、または、0.5~5の範囲で具現され得る。」、「このようなサンプル基板のねじれ指数を10以下で具現すると、」は、「ねじれ指数が10μm以下」、「望ましくは0.2μm~7μm、または、0.5μm~5μmの範囲で具現され得る。」、「このようなサンプル基板のねじれ指数を10μm以下で具現すると、」の誤記と認められる。)
(イ)「【図17】
[図:0001395263000001.jpg]
」
(ウ)「【図18】
[図:0001395263000002.jpg]
」
イ 前記ア(ア)の段落【0099】~【0101】によれば、蒸着用マスクは多数の単位ホールを具備する構造で具現されるものであり、一般に、OLED蒸着時における蒸着均一度の向上のためには、蒸着用マスクが均一な状態で蒸着工程の間維持されなければならないが、基本的に蒸着用マスクを製作するために金属板をエッチングした場合、厚さが非常に薄くなり、ここに多数の蒸着ホールを具現するようになれば、製作される蒸着用マスクは簡単にねじれるようになって、蒸着の均一度を確保できなくなることから、本件発明は、金属板や金属板エッチング時に発生するねじれを最小化できるようにする金属基板を提供するものである。
そこで、前記ア(ア)の段落【0097】によれば、本件発明においては、厚さ方向に対して直交し、互いに対向する第1面及び第2面を具備するベース金属板に対して、前記ベース金属板の任意の地点に30mm*180mm(横*縦)で採取したサンプル基板の、両側末端で内側に10mmを残してその内部に対して前記厚さの2/3~1/2厚さにエッチングしたエッチング領域を具現し、前記サンプル基板を水平対象面に据置する場合、エッチングが行われたサンプル基板の「ねじれ指数(Hr)」が次の関係を充足するものである。
{数1}
HR={(H1-Ha)2+(H2-Ha)2+(H3-Ha)2+(H4-Ha)2}1/2
{数2}
Ha=(H1+H2+H3+H4)/4
(Haはエッチングされたサンプル基板の4個の隅が水平対象面から離隔される距離(H1、H2、H3、H4)の平均隔離距離と定義する。)
そして、前記ア(ア)の段落【0102】~【0107】、【0110】、同(イ)及び同(ウ)の記載(ただし段落【0107】に記載のねじれ指数の単位は「μm」の誤記であることを勘案した。)によれば、前記サンプル基板に対して180mm長軸の両側10mm残して1/2~2/3エッチングし、エッチングが行われたサンプル基板を水平度が確保された平面、例えば定盤のような対象の上に前記サンプル基板を配置する場合、定盤の水平対象面の基準面で前記サンプル基板の四つの隅が離隔される高さであるH1、H2、H3、H4を測定し、前記サンプル基板の四つの隅が離隔される高さであるH1、H2、H3、H4が‘0’以上の場合、この状態をサンプル基板が‘ねじれた(twist)’と定義して、このようなねじれの程度を前述した式1のような指数化したものを「ねじれ指数(Hr)」と定義したとき、エッチングが加えられた前記サンプル基板のねじれ指数を10μm以下、望ましくは0.2μm~7μm、または、0.5μm~5μmの範囲で具現すると、最終蒸着用マスクの製造時ねじれ現象を防止することができ、OLED蒸着時に左右偏差が減って蒸着均一度を高めることができるようになり、蒸着の信頼性を具現することができるようになるものである。
ウ 前記イによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、ベース金属板の任意の地点で採取し、エッチングが行われたサンプル基板のねじれの程度を指数化したものである、前記{数1}及び{数2}で定義された「ねじれ指数(Hr)」を、10μm以下、望ましくは0.2μm~7μm、または、0.5μm~5μmの範囲で具現すると、最終蒸着用マスクの製造時ねじれ現象を防止することができ、OLED蒸着時に左右偏差が減って蒸着均一度を高めることができるようになり、蒸着の信頼性を具現することができるようになることを理解することができるから、前記「ねじれ指数(Hr)」の技術的意義が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するというべきである。
(3)申立人の主張について
ア まず、前記第3の1(1)の申立人の主張について検討すると、前記(2)ア(ア)(段落【0097】、【0103】)の記載によれば,本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件特許請求の範囲の請求項1の「[数1]」中の「HR」が「ねじれ指数(Hr)」を意味していることを理解することができるから、本件発明1は明確であり、本件発明2について検討しても事情は同じであるので、前記第3の1(1)の主張は採用できない。
イ 次に、前記第3の1(2)の申立人の主張について検討すると、本件発明1は、「金属基板の任意の地点」「で採取したサンプル基板」を「エッチング」して、「エッチング領域を具現」した後に測定された「ねじれ指数(Hr)が0.2umないし10umである」ものであり、このことと前記(2)ウによれば、本件発明1は、「サンプル基板」を採取した地点に関わらず、「金属基板の任意の地点」「で採取したサンプル基板」を「エッチング」した後に測定した「ねじれ指数(Hr)」を「0.2umないし10um」とすることで、最終蒸着用マスクの製造時ねじれ現象を防止することができ、OLED蒸着時に左右偏差が減って蒸着均一度を高めることができるようになり、蒸着の信頼性を具現することができるようになるものである。
すると、仮に、同じ「金属基板」において、「サンプル基板」が切断される部位によって測定される「ねじれ指数(Hr)」が変化し得るとしても、「サンプル基板」を「金属基板の任意の地点」「で採取」する本件発明1は、「サンプル基板」が切断される部位の違いに関わらず、これを更にエッチングした後に測定した「ねじれ指数(Hr)」を「0.2umないし10um」とすることで、最終蒸着用マスクの製造時ねじれ現象を防止することができ、OLED蒸着時に左右偏差が減って蒸着均一度を高めることができるようになり、蒸着の信頼性を具現することができるようになるのであるから、前記「ねじれ指数(Hr)」が「金属基板」のエッチング時に発生するねじれの程度を適切に表現するものといえることに変わりはないので、本件発明1の発明特定事項に技術的な不備があるとはいえない。
したがって、前記第3の1(2)の主張も採用できない。
(4)小括
よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するというべきであるから、前記第3の1の特許異議申立理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。
(2)サポート要件について
ア 本件特許明細書には、更に、以下の記載がある。
「【0001】
本発明の実施例は、有機発光素子などの蒸着工程に適用可能な金属基板およびこれを用いたマスク構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光素子から成る有機ELカラーディスプレーなどの製造工程においては、有機材料から成る有機層が真空蒸着によって形成され、このとき、有機層のパターンに合わせて材料を透過させるための複数の透過穴が設けられた蒸着用マスクが使用されている。一般に、蒸着用マスクを構成する透過穴の場合、金属薄膜にフォトレジスト膜を使用してパターン露光した後エッチングを行うフォトエッチング法や、ガラス円板に所望のパターンで電気めっきを実施した後剥離する電気鋳造法によって形成することができる。
【0003】
従来の蒸着マスクは通常メタルマスク(Metal Mask)として具現され、これは蒸着のための透過穴(Open Area)だけを正確に具現することに集中している。しかしこのような方式では蒸着の効率と蒸着が行われない領域(Dead Space)を減らす部分では大きな効用を示すことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、前述した問題を解決するために案出されたものであって、特に隣接する蒸着用単位ホームの間の均一度を調節して蒸着後OLEDパネルなどのむら防止およびモアレ(Morie)を防止できる構造の蒸着用マスクを提供できるようにする。
・・・
【0006】
特に蒸着用マスクとして製造するために金属基板をエッチングする場合、発生するねじれ現象を最小化できる金属基板を提供できるようにする。さらに、このような金属基板を基に多数の蒸着用単位ホールを具備する蒸着用マスクを具現することができるようにする。また、蒸着用マスクの単位ホールのラフネスを制御して蒸着効率を上げられるようにする。」
イ 前記アの記載によれば、本件発明は、有機発光素子などの蒸着工程に適用可能な金属基板およびこれを用いたマスク構造に関するものであって、従来の蒸着マスクは通常メタルマスク(Metal Mask)として具現され、これは蒸着のための透過穴(Open Area)だけを正確に具現することに集中していたが、このような方式では蒸着の効率と蒸着が行われない領域(Dead Space)を減らす部分では大きな効用を示すことができない、という課題(以下、「本件課題」という。)を有するものである。
ウ そして、前記1(2)ウに記載したのと同様の理由により、当業者は、「ねじれ指数(Hr)」を10μm以下、望ましくは0.2μm~7μm、または、0.5μm~5μmの範囲で具現することで、本件課題を解決できることを理解することができるのであって、前記「ねじれ指数(Hr)」を10μm以下、望ましくは0.2μm~7μm、または、0.5μm~5μmの範囲で具現することは、本件発明1の、「ねじれ指数(Hr)が0.2umないし10umである」、との発明特定事項にほかならない。
エ 前記ウによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1が発明の詳細な説明に記載された発明で、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるのであって、本件発明2について検討しても事情は同じである。
そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するというべきである。
(3)申立人の主張について
前記(2)ア(段落【0003】)によれば、本件発明は、蒸着のための透過穴(Open Area)を正確に具現した蒸着マスクを前提としたものといえるから、蒸着のための透過穴(Open Area)を正確に具現できないほどに大きく波打つ金属板はそもそも想定されないものである。
すると、前記(2)ウに記載したのと同様の理由により、本件発明1が発明の詳細な説明に記載された発明で、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることに変わりはないから、本件発明1が、本件課題を解決しない金属板を含むものとはいえないのであり、本件発明2について検討しても事情は同じであるので、前記第3の2の主張も採用できない。
(4)小括
したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するというべきであるから、前記第3の2の特許異議申立理由も理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701131