特許異議申立
2022-701067
フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-701067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-135928
- 登録番号
- 7062618
- 請求日
- 2022年10月28日
- 審決日
- 2023年07月12日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本酢ビ・ポバール株式会社
- 【権利者代理人】岩谷 龍
- 【権利者代理人】勝又 政徳
- 【異議申立人】三菱ケミカル 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人栄光事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 原田 隆興
- 審判官 岩下 直人
- 分類
- P1652.113-YAA(A61K) / P1652.121-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7062618号発明「フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7062618号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5~9〕について訂正することを認める。
特許第7062618号の請求項2~5、7~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7062618号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願(特願2019-135928号)は、2015(平成27)年9月30日(優先権主張:2014年11月5日、2015年4月9日、ともに日本国)を国際出願日とする出願(特願2016-557493号)の一部を、令和1年7月24日に新たな特許出願としたものであって、令和4年4月22日に設定の登録(請求項の数:9)がなされ、同年5月6日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年10月28日に、本件請求項2~5、7~9に係る特許に対し、特許異議申立人 三菱ケミカル株式会社(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、当審は令和5年2月1日付けで取消理由を通知し、特許権者は同年4月10日に訂正請求書、意見書を提出し、申立人は同年6月6日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年4月10日に提出された訂正請求書による訂正を本件訂正という。
本件訂正は、一群の請求項〔5~9〕についてするものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。
<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項5に
「 ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。」
と記載されているのを、
「 ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物(ただし、下記(1)~(3)の組成物である場合を除く。
(1)硝酸チアミンと、コンドロイチン硝酸ナトリウムと、アスパラギン酸又はアスパラギン酸カリウムマグネシウムと、グルコサミン又は塩酸グルコサミンとを含む製剤をコーティングするための組成物
(2)イブプロフェン含有製剤粒子をコーティングするための組成物
(3)アセトアミノフェン粒子をコーティングするための組成物)。」
に訂正する。(当審注:下線は訂正箇所)
そして、請求項5を引用する請求項6~9は、訂正事項1によって訂正される請求項5に連動して訂正される。
2 訂正の適否について
<訂正事項1>
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項5に係る「経口固形製剤用フィルムコーティング組成物」の発明から「(1)の製剤、(2)の製剤粒子、(3)の粒子をコーティングするための組成物である場合を除く」もので、組成物の範囲を限定するものであるので、特許請求の範囲を減縮するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(1)の理由から明らかなように、訂正事項1は、発明を特定する事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、いわゆる「除くクレーム」であることからみて、訂正事項1は、新たな技術的事項を導入するものでないから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
3 独立特許要件について
この特許異議の申立てにおいては、請求項2~5、7~9について特許異議の申立てがされ、請求項6について特許異議の申立てがされていないところ、訂正事項1は請求項5~9に係るものであるから、本件訂正後における請求項5、7~9に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されないが、本件訂正後における請求項6に記載されている事項により特定される発明については、独立特許要件は課される。
本件訂正後における請求項6に係る発明は、下記第6のとおり、令和5年2月1日付けで通知された取消理由及び特許異議申立ての理由によっては取り消すことのできない訂正後の請求項4又は5に係る発明の発明特定事項を全て有するものであるから、訂正後の請求項4又は5に係る発明と同様に上記取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては特許を受けることができないものであるとはいえないし、他に訂正後の請求項6に係る発明が特許を受けることができないものであるという理由も発見しない。
よって、訂正後の請求項6に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
4 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5~9〕について訂正することを認める。
第3 本件各発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件請求項1~9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載の事項によって特定される以下のとおりのものであり、「本件発明1~9」、まとめて、本件各発明ともいう。
「【請求項1】
JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(A)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
【請求項2】
JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(B)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とし、経口固形製剤が、下記式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(B):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.76~0.87質量%である。
【化1】
[図:0001402765000001.jpg]
[式中、R1およびR2の一方は水素であって、他方は、水難溶性塩の形態である分岐しているまたは分岐していないC1-C5-アルキルである。]
【請求項3】
ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.76~0.80質量%である、請求項2記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物(ただし、下記(1)~(3)の組成物である場合を除く。
(1)硝酸チアミンと、コンドロイチン硝酸ナトリウムと、アスパラギン酸又はアスパラギン酸カリウムマグネシウムと、グルコサミン又は塩酸グルコサミンとを含む製剤をコーティングするための組成物
(2)イブプロフェン含有製剤粒子をコーティングするための組成物
(3)アセトアミノフェン粒子をコーティングするための組成物)。
【請求項6】
経口固形製剤が、下記式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない、請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【化2】
[図:0001402765000002.jpg]
[式中、R1およびR2の一方は水素であって、他方は、水難溶性塩の形態である分岐しているまたは分岐していないC1-C5-アルキルである。]
【請求項7】
経口固形製剤が、錠剤である請求項1~6のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項8】
薬物を含有する錠剤に対して、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
【請求項9】
薬物を含有する錠剤に、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。」
第4 取消理由の概要
申立人が提出した甲第1号証等を「甲1」等のように表記する。
(新規性)本件発明2~5、7~9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1~3に記載された発明であるから、本件発明2~5、7~9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲1:特開2007-197410号公報
甲2:国際公開第2014/017507号
甲3:特開2004-26675号公報
甲4:特願2019-135928号に対する令和2年12月25日付け提出の刊行物等提出書で提出された令和2年12月23日付け実験成績証明書
甲5:「GOHSENOLTM 日本合成化学のPVOH『ゴーセノールTM』」カタログ、日本合成化学工業株式会社、2014年4月1日作成
第5 引用文献の記載事項、引用発明、及び、実験成績証明書の記載事項
1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(下線は当審による。以下同様。)
甲1には、以下の事項及び発明が記載されている。
(1)技術分野
「【0001】
本発明は、ビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、アミノ糖類から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有するフィルムコーティング錠に関する。」
(2)背景技術
「【0002】
ビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、またはアミノ糖類を配合する錠剤は、服用時に不快臭や不快味があり、特に保存後の臭い、味が悪く、これらの改善が必要である。また、これらは経時による変色(褐変)も課題となっていた。
【0003】
特開2003-300833(特許文献1)には、素錠中に塩酸フルスルチアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、およびビタミンB12類を含有し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したフィルム層でコーティングされたことを特徴とするフィルムコーティング錠が提案されているが、不快臭や不快味の抑制にある程度の効果を奏するものの、経時による錠剤の変色(褐変)に対しての効果は、未だ十分とは言えない。」
(3)発明が解決しようとする課題
「【0004】
本発明の目的は、ビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、アミノ糖類から選ばれる化合物が有する不快な臭いおよび味を低減でき、かつ経時での変色が抑制された錠剤を提供することにある。」
(4)課題を解決するための手段
「【0005】
本発明者らは前記目的を達成するために検討した結果、ビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、アミノ糖類から選ばれる化合物を配合する錠剤に、ポリビニルアルコールを基剤とするフィルム組成物をコーティングすることによって、不快臭と不快味を低減でき、かつ経時での変色が抑制された錠剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。」
(5)発明の効果
「【0006】
前記本発明の構成とすることによって、不快な臭いおよび味が低減され、かつ経時での変色が抑制された、ビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、アミノ糖類から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する錠剤を得ることができる。」
(6)フィルムコーティング
「【0014】
本発明におけるフィルムコーティング錠は、前記素錠の表面に、ポリビニルアルコールを主基剤とするフィルムコーティングを施す。これにより、高湿度下においてもビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、アミノ糖類が有する不快な臭いおよび味を効果的に低減し、かつ経時による変色を抑制することができる。
【0015】
本発明のフィルムコーティングで使用するポリビニルアルコールは、通常、医薬品のフィルムコーティングに使用されるいずれのものも用いられるが、部分けん化物が好ましく、例えばけん化度70~95モル%、特に80~90モル%、更に85~90モル%であるものが好ましく用いられる。また、重合度は100~3000、特に300~1000のものとすると好適である。前記範囲のポリビニルアルコールを使用すれば、ビタミンB1類、グルコサミノグリカン類、アミノ糖類の不快な臭いおよび味、経時での変色の特に優れた抑制効果が得られるのみならず、更に素錠への接着性や造膜性が良好である。」
「【0021】
前記フィルムコーティング成分は、適切な溶媒中に溶解または分散させ、フィルムコーティング用液を調整する。好ましい溶媒は、水である。好ましくは、ポリビニルアルコール濃度が8~20質量%濃度となる水溶液とすることが好ましい。
【0022】
素錠のフィルムコーティングは、ポリビニルアルコールを基剤として含有するフィルムコーティング液を素錠に噴霧し、乾燥することにより得ることができる。該素錠は所望によりポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース等でアンダーコーティングされていてもよい。フィルムコーティング液の噴霧は市販のフィルムコーティング機を用いるなどの公知の方法により行うことができる。」
(7)実施例
「【0025】
(実施例1)
硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンとD-マンニトールを混合した混合粉に、精製水に溶解したヒドロキシプロピルセルロース(濃度4質量%)を噴霧し、フローコーター(FLO-5型、フロイント産業(株)製)を用いて流動層造粒し、75℃で乾燥した。(重量平均粒子径100~300μm)
乾燥した造粒粉に、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロースおよびステアリン酸マグネシウムを混合し、均一になるまで攪拌する。混合物を、ロータリー型打錠機にて打錠し、円形錠剤(直径9mm、重量400mg、硬度6kg(デジタル硬度計で計測))を得た。以下に、錠剤の処方を示す。
【0026】
[錠剤処方](なお、「部」は「質量部」を示す。以下、同じ)
硝酸チアミン 0.83部
コンドロイチン硫酸ナトリウム 22.22部
L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物 5.56部
塩酸グルコサミン 27.78部
D-マンニトール 13.89部
ヒドロキシプロピルセルロース 4.17部
クロスカルメロースナトリウム 2.78部
結晶セルロース 22.5 部
ステアリン酸マグネシウム 0.28部
合計 100 部
【0027】
上記の素錠3600gにコーティング剤106.5gを精製水426gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーターDRC-500、(株)パウレック)にて、素錠重量に対して4%(w/w)コーティングし、70℃にて乾燥し、フィルムコーティング錠を得た。以下に、コーティング剤の処方を示す。
【0028】
[コーティング剤処方](なお、「部」は「重量部」を示す.以下、同じ)
ポリビニルアルコール(*) 50.4部
マクロゴール6000 17.0部
タルク 17.0部
酸化チタン 12.0部
合計 100 部
(*)ポリビニルアルコール:ゴーセノールEG-05、日本合成工業(株)」
「【0032】
実施例1~3の錠剤を用いて、製造直後の製剤と、それをガラス瓶に温度40℃で2ヶ月密栓保存したものの、変色、防臭性および味を評価した。以下に、その評価方法および判定基準を示す。
【0033】
[評価方法]
<変色>
フィルムコーティング製剤もしくは素錠を割り、その製剤内部における褐変具合を確認した。
<臭い>
パネラー5人による官能評価を行なった。
【0034】
<味>
パネラー5人による官能評価を行なった。フィルムコーティング製剤もしくは素錠を口中に15秒間含み、その味を評価した。
[判定基準]
×:褐変あり、臭いあり、不快味あり
△:やや(褐変あり、臭いあり、不快味あり)
○:ほとんど(褐変なし、臭いなし、不快味なし)
◎:褐変なし、臭いなし、不快味なし
【0035】
【表1】
[図:0001402765000003.jpg]
【0036】
ビタミンB1類、コンドロイチン硫酸ナトリウム、およびアミノ酸類またはアミノ糖類を配合する錠剤をポリビニルアルコールを配合したフィルム層で、素錠重量に対して、4~7質量%のフィルム層でコーティングすると、驚くべきことに、ビタミンB1類およびコンドロイチン硫酸ナトリウムが有する不快な臭いおよび味を効果的に抑制し、かつ変色も抑制された。また、同様に素錠重量に対して、5~7質量%のフィルム層でコーティングすると、40℃2ヶ月で保存した後も、不快な臭いおよび味は抑制しており、かつ変色も抑制された。」
「【0038】
本発明の他の素錠の処方例を表2に、コーティングフィルム組成を表3に示す。
【0039】
【表2】
[図:0001402765000004.jpg]
【0040】
処方1~4に、実施例1と同じフィルムコーティング液を用い、実施例1と同様に、ポリビニルアルコール4質量%、5質量%、7質量%となるよう、コーティングを行なった。なお、ポリビニルアルコールは、ゴーセノール、GL-05(食品グレード)、日本合成工業(株)を使用した。
臭い、味、変色について評価を行なった結果、実施例1、2、3と同様、良好な効果が得られた。
【0041】
【表3】
[図:0001402765000005.jpg]
【0042】
実施例1の素錠に、処方1~6のフィルムコーティング(素錠に対して4質量%、5質量%、7質量%)を行なったところ、何れも実施例1~3と同様、本発明の効果は良好であった。ポリビニルアルコールは、ゴーセノールGL-05、日本合成工業(株)を使用した。」
(8)上記(1)~(7)の記載、特に実施例1及び表3及び段落【0042】の記載からみて、甲1には、それぞれ、以下の甲1発明1-1~1-3及び甲1発明2-1~2-3が記載されていると認められる。
「錠剤処方;硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンを含有する素錠をフィルムコーティングするための、
コーティング剤処方;ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)を含有するコーティング剤。」(甲1発明1-1)
「錠剤処方;硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンを含有する素錠に対して、
コーティング剤処方;ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)を含有するコーティング剤で被覆されたフィルムコーティング製剤。」(甲1発明1-2)
「錠剤処方;硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンを含有する素錠に、
コーティング剤処方;ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)を含有するコーティング剤をコーティングし、素錠表面に当該コーティング剤を被覆させる工程を含むフィルムコーティング製剤の製造方法。」(甲1発明1-3)
「錠剤処方;硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンを含有する素錠をフィルムコーティングするための、
コーティング剤処方;ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)GL-05、日本合成工業株式会社製)を含有するコーティング剤。」(甲1発明2-1)
「錠剤処方;硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンを含有する素錠に対して、
コーティング剤処方;ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)GL-05、日本合成工業株式会社製)を含有するコーティング剤で被覆されたフィルムコーティング製剤。」(甲1発明2-2)
「錠剤処方;硝酸チアミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、塩酸グルコサミンを含有する素錠に、
コーティング剤処方;ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)GL-05、日本合成工業株式会社製)を含有するコーティング剤をコーティングし、素錠表面に当該コーティング剤を被覆させる工程を含むフィルムコーティング製剤の製造方法。」(甲1発明2-3)
2 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
甲2には、以下の事項及び発明が記載されている。
(1)技術分野
「[0001] 本発明は、固形製剤の分野に関し、詳しくは、有効成分としてイブプロフェン及びエテンザミドを含有する固形製剤に関する。」
(2)背景技術
「[0002] 頭痛薬や総合感冒薬の有効成分として汎用されているイブプロフェンは融点75~77℃の低融点薬物であるが、同じく頭痛薬や総合感冒薬の有効成分として知られるエテンザミドと混在すると融点降下を引き起こすことが知られていた(非特許文献1参照)。有効成分の中でも含有量が多いイブプロフェンの融点降下は、粉体のハンドリングを著しく困難にし、付着や凝集を引き起こす他、製品化後に変色等の問題を招来することがあった。
[0003] そのため、有効成分としてイブプロフェンとエテンザミドを配合した固形製剤では、これらを異なる顆粒等に配合し、二重錠や多層錠として提供すれば、イブプロフェンとエテンザミドが同一の製剤中に配合されていても、直接の接触を回避してイブプロフェンの融点降下を防止することが可能であった(非特許文献2参照)。
[0004] しかしながら、イブプロフェンとエテンザミドを配合した散剤、顆粒剤等を提供する場合には、単にこれらの成分を異なる顆粒等に配合しただけでは充分に接触を回避できず、イブプロフェンの融点降下を充分に抑制することができなかった。
・・・
[0007] そこで、常套手段としてはイブプロフェンとエテンザミドを異なる顆粒等に配合した後、少なくともその何れかをフィルムコーティングすることが考えられるが(特許文献1及び2参照)、フィルム基剤として最もポピュラーなヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を主基剤とするフィルム層でイブプロフェン含有顆粒を被覆し、エテンザミド含有顆粒と混合したところ、イブプロフェンの融点降下を充分に抑制することはできなかった(後述の比較例1参照)。」
(3)発明の課題
「[0008] 本発明の課題は、有効成分であるイブプロフェンとエテンザミドを別々の顆粒等に配合し、イブプロフェン含有顆粒等を被覆するにあたって、その融点降下を抑制するのに最も有効なフィルム基剤を選定し、保存安定性や服用性に優れた散剤、顆粒剤等のイブプロフェン及びエテンザミド含有固形製剤を提供することである。」
(4)課題を解決する手段
「[0009] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フィルム基剤としてポリビニルアルコール(以下、適宜に「PVA」と略記する。)若しくはポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(以下、適宜に「PVAコポリマー」と略記する。)を採択した場合にのみエテンザミド含有顆粒との混在によるイブプロフェンの融点降下を効果的に抑制しうることを見出した。
[0010] かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
(1)イブプロフェンとエテンザミドが異なる製剤粒子中に配合され、イブプロフェンを含有する製剤粒子がポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含有するフィルム層で被覆されていることを特徴とするイブプロフェン及びエテンザミド含有固形製剤。
(2)フィルム層中のポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の含有量が、イブプロフェンの1質量部に対して0.04~0.4質量部である前記(1)に記載のイブプロフェン及びエテンザミド含有固形製剤。
(3)固形製剤が散剤、顆粒剤、微粒剤又はカプセル剤である前記(1)又は(2)に記載のイブプロフェン及びエテンザミド含有固形製剤。」
(5)発明の効果
「[0011] 本発明により、有効成分としてイブプロフェンとエテンザミドを配合した散剤、顆粒剤等の固形製剤を提供することが可能となった。また、イブプロフェン含有顆粒等をPVA又はPVAコポリマーで被覆することによりイブプロフェンの昇華や苦味も抑制され、保存安定性及び服用性に優れた固形製剤として提供することが可能となった。」
(6)フィルム層
「[0024] 本発明では、イブプロフェン含有製剤粒子はPVA又はPVAコポリマーを含有するフィルム層で被覆される必要があるが、エテンザミド含有製剤粒子の方は必ずしも被覆されている必要はない。これは、低融点のイブプロフェンを含有する製剤粒子の方を被覆した方が融点降下の抑制効果が大きいからである。また、イブプロフェンは含有(配合)量も多い上、昇華し易く、特有の刺激のある苦味を有するため、昇華防止や苦味のマスキングという点からも、イブプロフェン含有製剤粒子の方を被覆するメリットが大きいからである。
[0025] 「ポリビニルアルコール(PVA)」とは、ポリ酢酸ビニルをけん化して得た重合物で、白色若しくは微黄白色の粉末である。ここで本発明において使用するPVAは、その種類が特に制限されるものではないが、付着力と溶解性を考慮すれば部分けん化物を使用することが好ましく、好ましいけん化度は85~90モル%品である。
[0026] 本発明のPVAの好適な市販品の例としては、ゴーセノール(登録商標)EG-05P(日本合成化学社製、けん化度:86.5~89.0mol%、粘度:4.8~5.8mPa・s(20℃における4%水溶液についてのヘプラー粘度計による測定値))が挙げられる。
[0027] 「ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(PVAコポリマー)」とは、部分けん化ポリビニルアルコールにアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合した高分子であり,白色~帯黄白色の塊又は粉末である。
[0028] 本発明にかかる「PVAコポリマー」における好適な平均重合度は、450~550である。本発明にかかる「PVAコポリマー」の好適な重量平均分子量は、約40,000である。」
(7)実施例
「[0042] 製造例1 イブプロフェン含有製剤粒子の調製
イブプロフェン27,000g、リボフラビン240g、軽質無水ケイ酸3,000g、結晶セルロース12,000g、アメ粉21,000gを秤量、混合した粉体を、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)5,400gを精製水54,600gに溶解した溶液を結合液として、転動流動層造粒機(マルチプレックス(商品名):パウレック社製)を用いて造粒し、平均粒子径222μmのイブプロフェン含有製剤粒子を製造した。」
「[0045] (実施例1)
製造例1で得られた製剤粒子570gをドラフトチューブ付き流動層造粒乾燥機(GPCG(商品名):パウレック社製)に仕込み、ヒプロメロース36g、PVA(ゴーセノールEG-05P(商品名):日本合成化学社製)36g、パラフィン9.6g、カルナウバロウ9.6g、ショ糖脂肪酸エステル2.4g、ポリソルベート-80 2.4g及び酸化チタン24gを精製水720gに溶解・分散させたコーティング液を用いてスプレー法によりフィルム層で被覆された製剤粒子630g(被覆量:対製剤粒子10%)を製造した。得られたフィルム層で被覆された製剤粒子0.42gに製造例2で得られた製剤粒子0.397g、製造例3で得られた製剤粒子0.399g,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.012g,甘味料及び香料を加え混合した粉体を包材に充填し、目的とするイブプロフェン及びエテンザミド含有固形製剤を得た。」
(8)上記(1)~(7)の記載、特に実施例1の記載からみて、甲2には甲2発明1~3が記載されていると認められる。
「イブプロフェン含有製剤粒子をフィルム層で被覆するための、ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05P、日本合成化学社製)を含有するコーティング液。」(甲2発明1)
「イブプロフェン含有製剤粒子に対して、ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05P、日本合成化学社製)を含有するコーティング液で被覆されている製剤粒子。」(甲2発明2)
「イブプロフェン含有製剤粒子に、ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05P、日本合成化学社製)を含有するコーティング液をスプレーし、粒子表面に当該コーティング液を被覆させる工程を含む製剤粒子の製造方法。」(甲2発明3)
3 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
甲3には、以下の事項及び発明が記載されている。
(1)発明が属する技術分野
「【0001】
本発明は、口中で咀嚼し崩壊させて服用するための医薬製剤(咀嚼錠)に関する。」
(2)従来技術
「【0002】
咀嚼して固形製剤を噛み砕き服用する咀嚼型医薬製剤は、服用に際し水を要せず、また一定の大きさを有する錠剤を飲みこむ場合の不快な嚥下感がないという利点を有し、また噛み砕いて服用するため通常の錠剤よりも薬物の放出が早く、解熱鎮痛剤や胃腸薬、鼻炎用薬、抗アレルギー薬など即効性を期待される医薬品において近年注目される剤型である。しかし、咀嚼錠は崩壊した製剤が一定時間口内に留まり通常の錠剤服用よりも味覚を強く刺激するため、薬物の酸味や苦味などの不快味を抑制することが大きな課題となる。従来、医薬内服製剤の薬物による不快味を抑制する手法として、甘味料や香料で味をマスキングする方法、製剤を糖衣したりフィルムコーティングする方法などが知られている。甘味料や香料によるマスキングは有効な不快味の抑制手段ではあるが、マスキング可能な香料は限定されるため自由な香味を付与することは困難である。さらに咀嚼型製剤においては、多量のマスキング剤を要するため香味が強くなり、服用感は必ずしも良好ではない。 製剤を糖衣やフィルムでコーティングする方法は、単に水で飲みこむ通常の服用では有効であるが、咀嚼錠などの咀嚼型製剤においては口中で製剤が崩壊し薬物が露出するため、不快味を抑制できない。
咀嚼錠の不快味を抑制する技術として、特開平6?219939にはセルロースアセテートなどとポリビニルピロリドンで圧縮被覆加工された回転造粒物を咀嚼錠に使用する方法が開示されている。特開2002?87952号公報には薬物粒子に腸溶性ポリマーと不溶性膜形成性ポリマーを有する被覆を施す方法が開示されている。特開平11?349473号には苦味を有する薬物核粒子に低融点物質と低分子量水溶性物質からなる被覆剤で被覆する方法が開示されている。特開2000?273037号公報には、苦味を有する薬物と水不溶性化合物を被覆剤溶液で練合した薬物粒子を使用し錠剤とする方法が開示されている。上記技術はある程度の不快味抑制効果を有するが、各被覆粒子を使用して打錠時に被覆物が破損したり咀嚼の際に若干の剥離があり、抑制効果は必ずしも十分ではない。
特開平2?53721号公報には、不溶性高分子で被覆された被覆顆粒に更に水溶性高分子または酸可溶性高分子でコートされた顆粒を含む、被覆顆粒の皮膜の破壊を防止した錠剤が開示されている。この錠剤は薬物の放出性をコントロールする目的で薬物核粒子に被覆を施す技術であり、徐放性を期待する錠剤には有効であるが、速効性を期待する咀嚼錠においては必ずしも有効ではない。したがって、速効性に優れしかも薬物の不快味を抑制した咀嚼型医薬製剤が望まれていた。」
(3)発明が解決しようとする課題
「【0003】
本発明は、速効性に優れ、しかも薬物の苦味や酸味が抑制され服用性に優れた咀嚼型医薬製剤を提供する。」
(4)課題を解決するための手段
「【0004】
本発明者らは、検討の結果、苦味や酸味などの不快な味を有する薬物粒子に、エチルセルロースなどの水不溶性高分子化合物及び水溶性化合物を含有する皮膜と特定の粘度物性を有する水溶性高分子化合物の皮膜の多層被覆を施すことによって、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち本発明は
<1>(1)内層として水不溶性高分子化合物及び水溶性化合物を含有する皮膜(2)外層として20℃における5%(W/V%)水溶液の粘度が
ニュートン液体においては絶対粘度が50mPa・s以下、
非ニュートン液体においては動粘度が30mm2/s以下
である水溶性高分子化合物を含有する皮膜
で被覆された薬物粒子であることを特徴とする、咀嚼型医薬製剤用粒子
を提供する。さらに本発明は、
【0006】
<2>外層皮膜量が、核粒子内層被覆粒子質量の5?15%量であることを特徴とする、請求項1に記載の咀嚼型医薬製剤用粒子。
<3><1>または<2>の咀嚼型医薬製剤用粒子を使用することを特徴とする、咀嚼型医薬製剤
<4>薬物粒子粉体に、
(1)内層として水不溶性高分子化合物及び水溶性化合物
(2)外層として20℃における5%(W/V%)水溶液の粘度が
ニュートン液体においては絶対粘度が50mPa・s以下、
非ニュートン液体においては動粘度が30mm2/s以下
である水溶性高分子化合物の多層被覆を施すことを特徴とする、咀嚼型医薬製剤の薬物の苦味または酸味抑制方法。を提供する。以下に、本発明を詳細に説明する。」
(5)外層被覆剤
「【0014】
外層被覆剤は、20℃における5%(W/V%)水溶液の粘度が
(1)ニュートン液体においては絶対粘度が50mPa・s以下、好ましくは30mPa・s以下、
(2)非ニュートン液体においては動粘度が30mm2/s以下
である水溶性高分子化合物を含有する。前記水溶性高分子化合物は、水溶性で比較的粘着性が低いものが好ましい。具体的には、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、プルラン等の水溶性高分子化合物の中で、比較的分子量が低い高分子あるいは置換度が低いセルロース、ケン化度が高いポリビニルアルコールなどがあげられる。
【0015】
たとえば、メチルセルロースの場合は信越化学工業(株)製メトローズSM?15、SM?4などがあげられる。また、ポリビニルアルコールの場合は日本合成化学工業(株)製ゴーセノールNL?05、AL?06、GL?05、EG?05、GL?03、KL?03などがあげられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合は、信越化学工業(株)製TC?5 MW、Eなどがあげられる。」
(6)発明の効果
「【0021】
本発明によれば、水不溶性高分子と水溶性物質を含む皮膜で溶出速度を低下させずに薬物を被覆(内層)し、さらに特定の物性を有する水溶性高分子化合物を含有する皮膜で薄く被覆(外層)することにより、打錠による衝撃によっても不快味抑制効果が得られる咀嚼錠を得ることができる。」
(7)実施例
「【0022】
本発明を、実施例により説明する。
<咀嚼錠用粒子の製造>
平均粒径300μmのアセトアミノフェン粒子500gに、表1に示すA1?A5の内層被覆剤含有液を、転動流動コーティング装置を用いて噴霧した。十分乾いてから、表2に示すB1?B3の外層被覆剤含有液を、転動流動コーティング装置を用いて噴霧し乾燥させ、表3に示す本発明の咀嚼型製剤用粒子を得た。なお、表3中のコーティング率は、水を除く被覆剤成分量(AI)としてのコーティング量を示す。
<咀嚼錠の製造>
表3の各咀嚼型製剤用アセトアミノフェン粒子(500μmの篩通過分:平均粒径300μm)800g、乳糖400g、結晶セルロース200g、コーンスターチ100g、ステアリン酸マグネシウム65g(計1565g)を混合し、混合粉体を打錠機に導入して打錠圧800kgで打錠した。得られた錠剤(391.25g/錠)の錠剤強度はいずれも2?5kgfの範囲で、咀嚼可能な錠剤であった。これらの咀嚼錠に対し、アセトアミノフェンの苦味抑制について評価し、表3に示した。
【0023】<苦味の評価>
評点(口中で噛み砕いて30秒後)
4:非常に苦い
3:苦い
2:少し苦い
1:僅かに苦い
0:苦くない
【0024】
【表1】
[図:0001402765000006.jpg]
【0025】
【表2】
[図:0001402765000007.jpg]
【0026】
【表3】
[図:0001402765000008.jpg]
【0027】
なお、実施例1?5のアセトアミノフェンの30分後の薬物の溶出性について、日本薬局方・溶出試験法・第2法(パドル法:500mL、50rpm)に基づき、吸光度計を用いて測定した。実施例1?5の咀嚼錠の溶出率は、各々92.3%、90.3%、87.4%、91.3%、95.8%で、良好な値を得た。」
(8)上記(1)~(7)の記載、特に実施例3の記載からみて、甲3には以下の甲3発明1~3が記載されていると認められる。
「アセトアミノフェン粒子に内層被覆剤をコーティングした粒子にコーティングするための、
ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成化学工業株式会社製)を含有する外層被覆剤含有液。」(甲3発明1)
「アセトアミノフェン粒子に内層被覆剤をコーティングした粒子に対して、
ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成化学工業株式会社製)を含有する外層被覆剤含有液で被覆されている咀嚼型製剤用アセトアミノフェン粒子。」(甲3発明2)
「アセトアミノフェン粒子に内層被覆剤をコーティングした粒子に、
ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成化学工業株式会社製)を含有する外層被覆剤含有液を塗布し、粒子表面に当該外層被覆剤含有液を被覆させる工程を含む咀嚼型製剤用アセトアミノフェン粒子の製造方法。」(甲3発明3)
4 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
(1)「l.実験の目的
特開2007-197410号公報(刊行物1:当審注;甲1)に記載されている「ゴーセノールEG-05」、「ゴーセノールGL-05」、国際公開第2014/017507号(刊行物2:当審注;甲2)に記載されている「ゴーセノールEG-05P」、特開2004-26675号公報(刊行物3:当審注;甲3)に記載されている「ゴーセノールGL-05」、「ゴーセノールEG-05」、「ゴーセノールGL-03」、及び特表2011-516455号公報(刊行物4)に記載されている「Mowio1 4-88」について、特願2019-135928号(特開2019-178173号公報)の請求項2に記載の要件(B)を満たすことを確認することを目的とした。
特願2019-135928号の請求項2の要件(B)は以下の通りである。
「ポリビエルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、携拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質撞%以上である。」」(1頁5~18行)
(2)「5.実験内容
実験方法
ゴーセノールEG-05、GL-05、EG-05P及びGL-03、・・・について、各5.0質量%水溶疲100.0gに対して、1-プロパノールを230.014と加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置した。
上澄み液を沈殿物を含まないようにスポイトでサンプリングを行い、採取した液の乾燥講後の重量変化から上澄み液の濃度を測定した。なおサンプル溶液の乾燥条件は105℃、3時間であった。
また、一部のサンプルについては、同様の測定を、株式会社住化分析センターに依頼した。
測定サンプル
・EG-05
Lot. 73902T (ケン化度87.3モル%、4質量%水溶液粘度5.3mPa・s)
Lot. 4YFO8 (ケン化度87.8モル%、4質量%水溶液粘度5.4mPa・s)
Lot. 4YF04 (ケン化度88.0モル%、4質量%水溶液粘度5.4mPa・s)
・GL-05
Lot. 49315 (ケン化度87.6モル%、4質量%水溶液粘度5.3mPa・s)
Lot. lZ331 (ケン化度87.3モル%、4質量%水溶液粘度5.4mPa・s)
Lot. 2X321 (ケン化度87.7モル%、4質量%水溶液粘度5.4mPa・s)
・EG-05P
Lot. 72N69 (ケン化度87.6モル%、4質量%水溶液粘度5.5mPa・s)
Lot. 99N601 (ケン化度87.3モル%、4質量%水溶液粘度5.5mPa・s)
Lot. 4ZN65 (ケン化度87.4モル%、4質量%水溶液粘度5.5mPa・s)
Lot. 52N66 (ケン化度87.8モル%、4質量%水溶液粘度5.5mPa・s)
・・・
なお、上記のケン化度は平均ケン化度である。」(5頁1~34行)
(3)「測定結果
各溶液の上澄み液の濃度は下記表1~表5の通りであった。
表1:[ゴーセノールEG-05]
[図:0001402765000009.jpg]
表2:[ゴーセノールGL-05]
[図:0001402765000010.jpg]
表3:[ゴーセノールEG-05P]
[図:0001402765000011.jpg]
※(株)住化分析センターにて測定
・・・
表1~表5の結果から、ポリビニルアルコールのゴーセノールGL-05、EG-05、EG-05P・・・は、特願2019-135928号の請求項2における要件(B)を満たすことがわかった。」(3頁1行~4頁末行)
5 甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
(1)「多彩にひろがる用途分野へ、
そこにも日本合成化学の『ゴーセノールTM』」(05頁1、2行)
(2)「医薬品・化粧品
錠剤のヨーティング剤や造粒バインダー、貼付剤(パップ剤)などの医薬賦形剤、化粧品の皮膜形成剤や増粘剤、乳化剤として使用されています。医薬品用や化粧品用には、高純度タイプの『ゴーセノールTMEGシリーズ』を推奨しています。」(06頁2つ目のかこみ)
(3)「
[図:0001402765000012.jpg]
」(08頁)
(4)「
[図:0001402765000013.jpg]
」(09頁)
6 特許権者が提出した実験成績証明書の記載事項
特許権者が提出した乙第1号証「実験成績証明書」(以下「乙1」という。)には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001402765000014.jpg]
[図:0001402765000015.jpg]
」
7 ゴーセノール類の要件(B)に関する実験成績証明書
ゴーセノール類の要件(B)に関し、特許権者及び申立人の実験成績証明書の実験結果(乙1~4、甲4)をまとめたものは以下のとおりである。(特許権者が令和5年4月10日提出の意見書4、5頁)
「
[図:0001402765000016.jpg]
」
第6 当審の判断
1 取消理由(新規性)について
(1)甲1発明1-1~1-3、甲1発明2-1~2-3との対比
ア 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1発明1-1を対比する。
甲1発明1-1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)」は、本件発明2の「ポリビニルアルコール系重合体」に相当する。
甲1発明1-1の「素錠」は、不快臭と不快味を低減することを課題とするものであるから(第3の1(1)~(6))、本件発明2の「経口固形製剤」に相当する。
甲1発明1-1の「コーティング剤」は、本件発明2の「フィルムコーティング組成物」に相当する。
甲1発明1-1は、本件発明2の式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない。
そうすると、ポリビニルアルコール系重合体について、
<相違点1>
本件発明2が「JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%である」ことが規定されているのに対して、甲1発明1-1にはそのような規定がない点、
<相違点2>
「要件(B):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.76~0.87質量%である」ことが規定されているのに対して、甲1発明1-1にはそのような規定がない点
で一応相違する。
a 相違点1について検討する。
甲1発明1-1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)」のケン化度は、甲4によれば87.3モル%(Lot.73902T)、87.8モル%(Lot.4YF08)、88.0モル%(Lot.4YF04)(第3の4(2))、甲5によれば86.5~89.0モル%(第3の5(4))、乙1によれば88.0モル%(64901)(第3の6)とされているから、この点は相違点ではない。(当審注:モル%の後ろの(…)内はロット番号を示す。以下同様。)
b 相違点2について検討する。
甲1発明1-1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)」はロット番号が不明である。
そして、同じ製品であるゴーセノールEG-05について、要件(B)の上澄み液の濃度は、甲4によれば、0.78%(Lot.73902T)、0.77%(Lot.4YF08)、0.75%(Lot.4YF04)(第3の4(3)表1)、乙1によれば0.70%(64901)(第3の6)となっており、ロット番号ごとに要件(B)の値が異なっており、同じ製品であるゴーセノールEG-05であれば、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」の範囲内となるわけではないから、必然的に要件(B)を満たすということはできない。
c したがって、甲1発明1-1の「ゴーセノールEG-05」の要件(B)の値が、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」を充足するとする事情はないので、本件発明2は、甲1に記載された発明ではない。
(イ)本件発明2と甲1発明2-1を対比する。
甲1発明2-1は、甲1発明1-1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)」を、「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)GL-05、日本合成工業株式会社製)」とするものであるから、上記(ア)と同様に、相違点1、2の点で相違する。
相違点1について検討すると、甲1発明2-1「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)GL-05、日本合成工業株式会社製)」のケン化度は、甲4によれば、87.6モル%(Lot.49314)、87.3モル%(Lot.1Z331)、87.7モル%(Lot.2X321)(第3の4(2))、甲5によれば86.5~89.0モル%(第3の5(3))、乙1によれば87.9%(45301)(第3の6)とされているから、この点は相違点ではない。
相違点2について検討すると、甲1発明2-1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)GL-05、日本合成工業株式会社製)」はロット番号が不明である。
そして、同じ製品であるゴーセノールGL-05について、要件(B)の上澄み液の濃度は、甲4によれば、0.77%(Lot.49315, Lot.2X321)、0.80%(Lot.1Z331)(第3の4(3)表2)、0.71%(45301)となっており、ロット番号ごとに要件(B)の値が異なっており、同じ製品であるゴーセノールGL-05であれば、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」の範囲内となるわけではないから、必然的に要件(B)を満たすということはできない。
したがって、甲1発明2-1の「ゴーセノールGL-05」の要件(B)の値が、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」を充足するとする事情はないので、本件発明2は、甲1に記載された発明ではない。
イ 本件発明3~5、7について
本件発明3~5、7は、それぞれ、本件発明2において、ポリビニルアルコール系重合体における要件(B)の上澄み液の濃度を「0.76~0.80質量%」に限定し、水溶液粘度を特定し、(1)の製剤、(2)の製剤粒子、(3)の粒子をコーティングするための組成物である場合を除き、経口固形製剤が錠剤であることを特定したものであるが、少なくとも、上記アの相違点2において判断した同じ理由により、甲1発明1-1又は甲1発明2-1の要件(B)の値が、要件(B)「0.76~0.87(0.80)質量%」を充足するとする事情はないので、甲1に記載された発明ではない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、薬物を含有する錠剤に対して、本件発明2のフィルムコーティング組成物で被覆されている経口固形製剤であるが、甲1発明1-2又は甲1発明2-2と対比すると、上記ア、イと同様の理由により、甲1に記載された発明ではない。
エ 本件発明9について
本件発明9は、薬物を含有する錠剤に、本件発明2のフィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法であるが、甲1発明1-3又は甲1発明2-3と対比すると、上記ア、イと同様の理由により、甲1に記載された発明ではない。
オ 申立人の主張について
(ア)申立人はおおむね以下のとおり主張している。
甲4及び甲5より、甲1及び甲3に開示された「ゴーセノールEG-05」、甲1に開示された「ゴーセノールGL-05」及び甲2に開示された「ゴーセノールEG-05P」は本件発明2の要件を満たすため、相違点1及び2は甲1~甲3に記載された発明との相違点にはならない。
申立人が甲4で測定したサンプルの製造月によれば、「ゴーセノールEG-05」、「ゴーセノールEG-05P」及び「ゴーセノールGL-05」のいずれも、本件特許の出願日以前に要件(B)を満たすものが存在していることが確認できる。
要件(B)の値において仮にばらつきがあったとしても、本件特許の出願日以前に要件(B)を満たすポリビニルアルコール系重合体が存在した事実に変わりはないし、少なくとも「ゴーセノールEG-05P」は要件(B)を満たさないものがあることを示す証拠はない。
(イ)上記(ア)について検討すると、上記ア(ア)b、ア(イ)のとおり、甲1発明1-1又は甲1発明2-1の「ゴーセノールEG-05」又は「ゴーセノールGL-05」はロット番号が不明であって、同じ製品である「ゴーセノールEG-05」又は「ゴーセノールGL-05」であれば、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」の範囲内となるわけではないから、必然的に要件(B)を満たすということはできず、要件(B)「0.76~0.87質量%」を充足するとする事情はないので、本件発明2は、甲1に記載された発明ではない。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
(2)甲2発明1~3との対比
ア 本件発明2について
本件発明2と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05P、日本合成化学社製)」は、本件発明2の「ポリビニルアルコール系重合体」に相当する。
甲2発明1の「イブプロフェン含有製剤粒子」は、服用性に優れたものとするものであるから(第3の2(3))、本件発明2の「経口固形製剤」に相当する。
甲2発明1の「コーティング液」は、本件発明2の「フィルムコーティング組成物」に相当する。
甲2発明1は、本件発明2の式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない。
そうすると、本件発明2と甲2発明1は、上記(1)ア(ア)と同様に、相違点1、2の点で相違する。
相違点1について検討すると、甲2発明1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05P、日本合成化学社製)」のケン化度は、甲4によれば、87.6モル%(Lot.72N69)、87.3モル%(Lot.99N601)、87.4モル%(Lot.4ZN65)、87.8モル%(Lot.52N66)(第3の4(2))、甲5によれば86.5~89.0モル%(第3の5(4))とされているから、この点は相違点ではない。
相違点2について検討すると、甲2発明1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05P、日本合成化学社製)」の要件(B)の上澄み液の濃度は、甲4によれば、0.79%(Lot.72N69)、0.81%(Lot.99N601)、0.76%(Lot.4ZN65, Lot.52N66)(第3の4(3)表3)、乙3によれば0.75%(Lot.4ZN65, Lot.52N66)、0.76%(Lot.4ZN65)、0.77%(Lot.52N66)となっており、ロット番号ごとに要件(B)の値が異なっており、同じ製品であるゴーセノールEG-05Pであれば、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」の範囲内となるわけではないから、必然的に要件(B)を満たすということはできない。
したがって、甲2発明1の「ゴーセノールEG-05P」の要件(B)の値が、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」を充足するとする事情はないので、本件発明2は、甲2に記載された発明ではない。
イ 本件発明3~5、7について
本件発明3~5、7は、それぞれ、本件発明2において、ポリビニルアルコール系重合体における要件(B)の上澄み液の濃度を「0.76~0.80質量%」に限定し、水溶液粘度を特定し、(1)の製剤、(2)の製剤粒子、(3)の粒子をコーティングするための組成物である場合を除き、経口固形製剤が錠剤であることを特定したものであるが、少なくとも、上記アの相違点2において判断した同じ理由により、甲2発明1の要件(B)の値が、要件(B)「0.76~0.87(0.80)質量%」を充足するとする事情はないので、甲2に記載された発明ではない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、薬物を含有する錠剤に対して、本件発明2のフィルムコーティング組成物で被覆されている経口固形製剤であるが、甲2発明2と対比すると、上記ア、イと同様の理由により、甲2に記載された発明ではない。
エ 本件発明9について
本件発明9は、薬物を含有する錠剤に、本件発明2のフィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法であるが、甲2発明3と対比すると、上記ア、イと同様の理由により、甲2に記載された発明ではない。
オ 申立人の主張については、上記(1)オ(イ)と同様の理由により採用することができない。
(3)甲3発明1~3との対比
ア 本件発明2について
本件発明2と甲3発明1を対比する。
甲3発明1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成化学工業株式会社製)」は、本件発明2の「ポリビニルアルコール系重合体」に相当する。
甲3発明1の「アセトアミノフェン粒子に内層被覆剤をコーティングした粒子」は、口中で咀嚼し崩壊させて服用するためものであるから(第3の3(1))、本件発明2の「経口固形製剤」に相当する。
甲3発明1の「外層被覆剤含有液」は、本件発明2の「フィルムコーティング組成物」に相当する。
甲3発明1は、本件発明2の式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない。
そうすると、本件発明2と甲3発明1は、上記(1)ア(ア)と同様に、相違点1、2の点で相違する。
相違点1について検討すると、甲3発明1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成化学工業株式会社製)」のケン化度は、甲4によれば87.3モル%(Lot.73902T)、87.8モル%(Lot.4YF08)、88.0モル%(Lot.4YF04)(第3の4(2))、甲5によれば86.5~89.0モル%(第3の5(4))、乙1によれば88.0モル%(64901)(第3の6)とされているから、この点は相違点ではない。
相違点2について検討すると、甲3発明1の「ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)EG-05、日本合成工業株式会社製)」はロット番号が不明である。
そして、同じ製品であるゴーセノールEG-05について、要件(B)の上澄み液の濃度は、甲4によれば、0.78%(Lot.73902T)、0.77%(Lot.4YF08)、0.75%(Lot.4YF04)(第3の4(3)表1)、乙1によれば0.70%(64901)(第3の6)となっており、ロット番号ごとに要件(B)の値が異なっており、同じ製品であるゴーセノールEG-05であれば、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」の範囲内となるわけではないから、必然的に要件(B)を満たすということはできない。
したがって、甲3発明1の「ゴーセノールEG-05」の要件(B)の値が、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」を充足するとする事情はないので、本件発明2は、甲3に記載された発明ではない。
イ 本件発明3~5、7について
本件発明3~5、7は、それぞれ、本件発明2において、ポリビニルアルコール系重合体における要件(B)の上澄み液の濃度を「0.76~0.80質量%」に限定し、水溶液粘度を特定し、(1)の製剤、(2)の製剤粒子、(3)の粒子をコーティングするための組成物である場合を除き、経口固形製剤が錠剤であることを特定したものであるが、少なくとも、上記アの相違点2において判断した同じ理由により、甲3発明1の要件(B)の値が、要件(B)「0.76~0.87(0.80)質量%」を充足するとする事情はないので、甲3に記載された発明ではない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、薬物を含有する錠剤に対して、本件発明2のフィルムコーティング組成物で被覆されている経口固形製剤であるが、甲3発明2と対比すると、上記ア、イと同様の理由により、甲3に記載された発明ではない。
エ 本件発明9について
本件発明9は、薬物を含有する錠剤に、本件発明2のフィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法であるが、甲3発明3と対比すると、上記ア、イと同様の理由により、甲3に記載された発明ではない。
オ 申立人の主張については、上記(1)オ(イ)と同様の理由により採用することができない。
2 取消理由で採用しなかった申立理由(進歩性)について
取消理由で採用しなかった申立理由(進歩性)の理由は、以下のとおりである。
(進歩性)本件発明2~5、7~9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2~5、7~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1)甲1~甲3に記載された発明との対比
ア 本件発明2について
本件発明2と甲1発明1-1~1-3、2-1~2-3、甲2発明1~3、及び、甲3発明1~3(以下、まとめて「甲1~甲3に記載された発明」という。)とは、上記1のとおり、少なくとも相違点2で相違する。
上記1のとおり、甲1~甲3に記載された発明の「ゴーセノールEG-05」、「ゴーセノールGL-05」及び「ゴーセノールEG-05P」のロット番号が不明であって、同じ製品である「ゴーセノールEG-05」、「ゴーセノールGL-05」及び「ゴーセノールEG-05P」であれば、必ず本件発明2の要件(B)「0.76~0.87質量%」の範囲内となるわけではないから、必然的に要件(B)を満たすということはできない。
そして、甲1~甲5の記載、及び、技術常識をみても、要件(B)自体開示されておらず、当然、フィルムコーティング製剤における要件(B)の技術的な位置づけなども開示されていない。
したがって、甲1~甲3に記載された発明の「ゴーセノールEG-05」、「ゴーセノールGL-05」及び「ゴーセノールEG-05P」において、要件(B)をみいだした上で、その範囲を適正なものとすることは、当業者が容易に想到することではない。
したがって、本件発明2は、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3~5、7~9について
本件発明3~5、7~9と甲1~甲3に記載された発明とは、少なくとも相違点2で相違するから、上記アと同様の理由により、本件発明3~5、7~9は、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
当審で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項2~5、7~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~5、7~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701067