特許異議申立
2022-700987
ポリフェノール含有飲料およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-700987
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-070541
- 登録番号
- 7053348
- 請求日
- 2022年10月06日
- 審決日
- 2024年01月29日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キリンホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
- 【権利者代理人】横田 修孝
- 【権利者代理人】榎 保孝
- 【権利者代理人】大森 未知子
- 【異議申立人】本間 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第5項、特許法第113条第4号、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7053348号発明「ポリフェノール含有飲料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7053348号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5、7、8〕、6、9について訂正することを認める。
特許第7053348号の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許を維持する。
特許第7053348号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7053348号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、
平成30年 4月 2日(優先権主張 平成29年6月29日)に出願され、
令和 4年 4月 4日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、
令和 4年 4月12日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年10月 6日:本間裕美(以下、「特許異議申立人」という。)による全ての請求項に係る特許に対して特許異議の申立て
令和 5年 3月 6日付け:取消理由通知書
令和 5年 4月28日:特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 5年 5月26日付け:訂正請求があった旨の通知
令和 5年 6月28日:特許異議申立人による意見書の提出
令和 5年 9月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 5年10月27日:特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 5年11月27日付け:訂正請求があった旨の通知
令和 5年12月25日:特許異議申立人による意見書の提出
なお、令和 5年 4月28日にされた訂正請求に係る訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和 5年 10月27日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「ポリフェノール含有飲料」と記載されているのを、
「ポリフェノール含有茶飲料」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5、7及び8についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、ペクチンを含まない」と記載されているのを、
「前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5、7及び8についても、同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「請求項1に記載の飲料」と記載されているのを、
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる、ポリフェノール含有飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料」に訂正する。
併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5、7及び8についても、同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料」と記載されているのを、
「請求項2~5のいずれか一項に記載の飲料」に訂正する。
請求項7を引用する請求項8についても、同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料」と記載されているのを、
「請求項1~5および7のいずれか一項に記載の飲料」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に、
「ポリフェノール含有飲料」と記載されているのを、
「ポリフェノール含有茶飲料」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、ペクチンを配合しない」と記載されているのを、
「前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有させ、かつ、ペクチンを配合しない」に訂正する。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項1~8のうち、請求項2ないし8は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし8に対応する訂正後の請求項1ないし5、7及び8は、特許法第120条の5第5項に規定する一群の請求項である。
なお、訂正後の請求項1ないし5、7及び8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがある。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1ないし2に係る請求項1の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1におけるポリフェノール含有飲料をポリフェノール含有「茶」飲料に特定するものであり、訂正事項2に係る請求項1の訂正は、有機酸および/またはその塩の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書【0012】及び特許請求の範囲【請求項7】からみて、訂正事項2に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書【0029】及び特許請求の範囲【請求項6】からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1ないし2に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(2)訂正事項3に係る請求項2の訂正について
訂正事項3に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正を含み、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、訂正事項3に係る請求項2の訂正のうち、「有機酸および/またはその塩」の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に特定する訂正は、上記(2)の訂正事項2と同旨により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項3に係る請求項2の訂正のうち、「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」とする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る請求項2の訂正は、本件特許明細書【0029】及び特許請求の範囲【請求項6】からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項3に係る請求項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項2を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様である。
(3)訂正事項4に係る請求項6の訂正について
訂正事項4に係る請求項6の訂正は、請求項6の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4に係る請求項6の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4に係る請求項6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項5ないし6に係る請求項7ないし8の訂正について
訂正事項5ないし6に係る請求項7ないし8の訂正は、請求項7ないし9の引用請求項からそれぞれ請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5ないし6に係る請求項7ないし8の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項5ないし6に係る請求項7ないし8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項7を直接引用する請求項9についても同様である。
(5)訂正事項7ないし8に係る請求項9の訂正について
訂正事項7に係る請求項9の訂正は、請求項9のポリフェノール含有飲料をポリフェノール含有「茶」飲料に特定し、訂正事項8に係る請求項9の訂正は、有機酸および/またはその塩の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7に係る請求項9の訂正は、上記(1)の訂正事項1と同旨により、本件特許明細書【0012】及び特許請求の範囲【請求項7】からみて、訂正事項8に係る請求項9の訂正は、上記(1)の訂正事項2と同旨により、本件特許明細書【0029】及び特許請求の範囲【請求項6】からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項7ないし8に係る請求項9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項1ないし10について特許異議申立てがされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5、7、8〕、6、9について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」のようにいい、まとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる、ポリフェノール含有茶飲料であって、pHが5.0~7.0であり、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料。
【請求項2】
水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された、水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる、ポリフェノール含有飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料。
【請求項3】
水溶性コラーゲンが、コラーゲンペプチドまたはゼラチンである、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
ポリフェノールを10~60mg/100mL含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
水溶性コラーゲンを0.05質量%以上含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
茶飲料である、請求項2~5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
容器詰め飲料である、請求項1~5および7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項9】
水溶性コラーゲンが配合されたポリフェノール含有茶飲料の製造方法において、有機酸および/またはその塩を添加する工程を含んでなる、水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減されたポリフェノール含有茶飲料の製造方法であって、該飲料のpHを5.0~7.0に調整し、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有させ、かつ、ペクチンを配合しない、製造方法。
【請求項10】
水溶性コラーゲンが配合されたポリフェノール含有飲料の製造方法において、有機酸および/またはその塩を添加する工程を含んでなる、水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿を低減する方法であって、該飲料のpHを5.0~7.0に調整し、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、ペクチンを配合しない、方法。
第4 特許異議申立書に記載した申立理由の概要
特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨(下記1ないし10)と証拠方法(下記11)は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許発明1ないし3、5、7ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第15号証に基づく新規性)
本件特許発明1ないし5、7ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第15号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第15号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第15号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第20号証に基づく新規性)
本件特許発明1ないし5、7ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第20号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第20号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第20号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由7(甲第10号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 申立理由8(明確性)
本件特許発明1ないし10についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許の請求項1ないし10における「有機酸」の定義が不明瞭である。
9 申立理由9(サポート要件)
本件特許発明1ないし10についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・有機酸量、ポリフェノール量、コラーゲン量、が全て規定されておらず、且つ、コラーゲン量/ポリフェノール量の比率、(コラーゲン+ポリフェノール量)/有機酸の比率の存在しない本件特許発明1ないし10は、濁り及び沈殿を低減するという本件発明の課題を解決しない範囲を包含する。
・本件特許明細書において具体的に効果を確認しているポリフェノール含有飲料は紅茶飲料のみであり、あらゆるポリフェノール含有飲料にまで拡張ないし一般化することはできない。ポリフェノール含有飲料の種類が特定されていない本件特許発明1ないし10は、濁り及び沈殿を低減するという本件発明の効果を確認できない態様を含んでいる。
10 申立理由10(実施可能要件)
本件特許発明1ないし10についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・コラーゲン含有量及びポリフェノール含有量が極めて少ない飲料では、ポリフェノールとコラーゲンが反応することによる濁りや沈殿が生じないから、このような飲料において、どのような種類の有機酸を選択し、どのような比率で配合すれば、ポリフェノールとコラーゲンが反応することによる濁りや沈殿を低減し得るのか、本件特許発明の詳細な説明及び出願時の技術常識を考慮しても当業者は理解することができない。
11 証拠方法
甲第1号証:特開2002-255846号公報
甲第2号証:特開2006-169224号公報
甲第3号証:特開2008-44887号公報
甲第4号証:特開2008-74746号公報
甲第5号証:国際公開第2010/38842号
甲第6号証:日本補完代替医療学会誌、2004 年 1 巻 1 号 p. 95-101、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/1/1/1_1_95/_article/-char/ja及びhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/1/1/1_1_95/_pdf/-char/ja、2022年10月5日検索
甲第7号証:KR101611954B1及びその対応日本公報である特表2018-519337号公報
甲第8号証:特開2016-155788号公報
甲第9号証:国際公開第2015/168962号及びその対応日本公報である特表2017-520616号公報
甲第10号証:特開2014-82993号公報
甲第11号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)、炭水化物成分表編 別表、有機酸野菜類 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365531.htm及びhttps://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/24/1365503_42-0206r.pdf、2022年10月5日検索
甲第12号証:平成9・10年度県立新潟女子短期大学共同研究事業実績報告書、研究課題:「雪と食とのかかわりあい」、https://unii.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=891&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1、2022年8月27日検索
甲第13号証:特開2002-275084号公報
甲第14号証:園芸新知識、2000年、12月、p27~30、https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/20001227.pdf、2022年8月27日検索
甲第15号証:特開2011-136945号公報
甲第16号証:特開平4-36148号公報
甲第17号証:特開2016-106606号公報
甲第18号証:特開2009-14700号公報
甲第19号証:茶業研究報告93、P26~33、2002.https://www.jstage.jst.go.jp/browse/cha/2002/93/_contents/-char/ja 及びhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/2002/93/2002_93_26/_pdf、2022年8月27日検索
甲第20号証:特開2008-79565号公報
甲第21号証:特開2014-128244号公報
甲第22号証:特開2015-122968号公報
甲第23号証:特開2003-210111号公報
甲第24号証:特開2008-11834号公報
甲第25号証:特開平10-337158号公報
参考資料1:特開2001-158726号公報
参考資料2:Marketing and industry、International Conference on O-cha (tea) Culture and Science Organizing Committee of 2001 International Conference on O-cha (tea) Culture and Science、2001、p95-96
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参考資料3:青森中央短期大学研究紀要、29、p1-9、2016年3月、
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https://www.marine-bio.co.jp/citric-acid/articlel3/#:~:text=%E3%81%99%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%81%84%E6%9E%9C%E7%89%A9%E3%82%92%E4%BB%A3,%E5%90%AB%E3%81%BE%e3%82%8C%e3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82% (2023年12月20日検索)
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参考資料19:日本食品工業学会誌、12巻、7号、1965年、p.267-273、https://www.jst.go.jp/browse/nskkk1962/12/7/_contents/-char/ja (2023年12月20日検索)
なお、証拠の表記については、特許異議申立書及び意見書における記載におおむね従った。
また、参考資料1ないし6は、令和 5年 6月28日に提出された意見書に添付されたものであり、参考資料7ないし19は、令和 5年12月25日に提出された意見書に添付されたものである。
以下、甲第1~25号証、参考資料1ないし19を、順に「甲1」、「参1」のようにいう。
第5 令和 5年 9月 1日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和 5年 9月 1日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要は次のとおりである。
取消理由9(甲第20号証に基づく新規性)
本件特許発明1ないし3、5、7及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第20号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由10(甲第20号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし3、5、7ないし9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第20号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 令和 5年 9月 1日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)についての判断
当審は以下に述べるように、令和 5年 9月 1日付けで特許権者に通知した取消理由9及び10のいずれによっても本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 証拠の記載事項等
(1)甲20に記載された発明
甲20の【0079】、【0080】【表6-1】からみて、甲20には次の発明(以下、「甲20発明」、「甲20発明a」という。)が記載されていると認められる。
<甲20発明>
「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)100mlに対して0.2gのタラ由来コラーゲンを含み、pHが6.57の飲料。」
<甲20発明a>
「甲20発明の製造方法。」
(2)甲18に記載された事項
甲18には緑茶の品質予測方法について次の事項が記載されている。なお、下線は説明のため当審にて付したものである。
「【請求項1】
緑茶の品質予測方法であって、
緑茶を前処理して分析サンプルを得る工程;
該分析サンプルを機器分析に供して分析結果を得る工程;
該分析結果を数値データに変換して多変量解析する工程;および
得られた解析結果から、品質を予測する工程;
を含む、方法。」
「【請求項7】
前記分析結果の中で、アラビノース、グルタミン、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、イノシトール、シキミ酸、リン酸、フルクトース、テアニン、リンゴ酸、カフェイン、キナ酸、グルコース、マンノース、リボース、およびスクロースのデータが解析される、請求項6に記載の方法。」
「【0016】
さらに好適な実施態様では、上記分析結果の中で、アラビノース、グルタミン、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、イノシトール、シキミ酸、リン酸、フルクトース、テアニン、リンゴ酸、カフェイン、キナ酸、グルコース、マンノース、リボース、およびスクロースのデータが解析される。」
「【0038】
例えば、緑茶から代謝物を抽出してGC/MSで分析した場合、得られる分析結果は、種々の代謝物の保持時間、マススペクトル、イオン強度などがある。この場合、特に、アラビノース、グルタミン、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、イノシトール、シキミ酸、リン酸、フルクトース、テアニン、リンゴ酸、カフェイン、キナ酸、グルコース、マンノース、リボース、およびスクロースのデータは、緑茶の品質予測(等級分類)に重要な役割を果たす。本発明により、高いランキングの緑茶サンプル中には、代謝物として、アミノ酸、キナ酸、リン酸、リボース、およびアラビノースの量が比較的多く、低いランキングの緑茶サンプル中には、フルクトース、グルコース、マンノースなどの糖が主代謝物として存在する傾向があることが、明らかになっている。」
(3)甲19に記載された事項
甲19にはチャ葉中のリンゴ酸とクエン酸について次の事項が記載されている。
「
[図:0001410181000001.jpg]
[図:0001410181000002.jpg]
」
(4)甲21に記載された事項
甲21には茶飲料中の総ポリフェノール含有量について次の記載がある。
「【0016】
本発明の茶飲料中の総ポリフェノール含有量は特に限定されないが、10~150mg/100mL、好ましくは10~80mg/100mL、より好ましくは20~70mg/100mL、最も好ましくは25~65mg/100mLの範囲に調整することが茶の風味の観点から望ましい。具体的には、緑茶の場合には、20~150mg/100mL、好ましくは20~80mg/100mL、より好ましくは45~65mg/100mLの範囲に調整することが緑茶の風味の観点から望ましい。また、烏龍茶の場合には、10~140mg/100mL、好ましくは10~60mg/100mL、より好ましくは25~45mg/100mLの範囲に調整することが烏龍茶の風味の観点から望ましい。また、紅茶の場合には、15~145mg/100mL、好ましくは15~75mg/100mL、より好ましくは35~55mg/100mLの範囲に調整することが紅茶の風味の観点から望ましい。総ポリフェノール含有量は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、252頁に記載の公定法(酒石酸鉄試薬法)に従って測定することができる。」
(5)甲22に記載された事項
甲22には容器詰め緑茶飲料における総ポリフェノール量について次の記載がある。
「【0058】
試験例2:茶飲料中の総ポリフェノール量と甘味改善効果との関係
(1)緑茶抽出液の調製
緑茶葉100gに、85℃に加熱したイオン交換水3000gを加えて6分間抽出した。その後、抽出した抽出液から茶葉を取り除き、氷水にて10℃以下に冷却し、緑茶抽出液Cを得た。
緑茶抽出液Cに、L-アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを加え、UHT殺菌した後、PETボトルに充填した。該容器詰め茶飲料を、試験に供する原料Cとした。
(2)試験に供する茶飲料の調製
上記の調製した原料Cに、下記表4の通り、原料D(ポリフェノン70A(三井農林社製))、原料E(カフェイン抽出物(白鳥製薬社製))、原料F(エタノール(一級)(和光純薬工業社製))を加えて混合し、上記試験例1と同様に甘味について、訓練されたパネリスト6名によって評価した。評価結果を表4に示した。また、原料C、D、E、およびFに含まれる総ポリフェノール量、カフェイン含有量、エタノール含有量は、下記表3の通りであった。
【0059】
[図:0001410181000003.jpg]
」
(6)参2に記載された事項
参2には、「緑茶中のフェノール性化合物とタンニン量測定の相関について」次の事項が記載されている。
[図:0001410181000004.jpg]
(7)参3に記載された事項
参3には、「食品学実験における取り組み -緑茶飲料の化学成分定量実験と官能評価の関連づけ-」として次の事項が記載されている。
[図:0001410181000005.jpg]
2 検討
(1)本件特許発明1についての対比・判断
本件特許発明1と甲20発明とを対比する。
甲20発明における「タラ由来コラーゲン」は、本件特許発明1における「水溶性コラーゲン」に相当する。
甲20発明の「pHが6.57」は、本件特許発明1における「pHが5.0~7.0」を満たす。
また、甲20発明の「飲料」は、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
甲20発明の「飲料」は「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)」を含むから、本件特許発明1における「茶飲料」に相当する。
さらに、甲20発明の「飲料」は、「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)」を含有しており、当該「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)」は甲20【0054】によるとポリフェノ
ールを含んでいる。また、上記1(4)及び(5)の甲21、甲22にも、茶飲料には茶由来のポリフェノールが含まれることが記載されている。
したがって、甲20発明の「飲料」は、ポリフェノールを含み、本件特許発明1の「ポリフェノール含有」「飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲20発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなるポリフェノール含有茶飲料であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点20-1>
本件特許発明1は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み、「有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲20発明はそのような特定がない点。
相違点20-1について検討する。
上記1(2)及び(3)の甲18及び甲19の記載から、緑茶にはリンゴ酸、クエン酸が含まれることが理解される。
そうすると、甲20発明は緑茶由来の「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)」を含むから、リンゴ酸、クエン酸を含む。
しかしながら、甲18及び甲19の記載を参酌しても、甲20発明の「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)」の「有機酸および/またはその塩」の含有量は不明である。また、甲20には、「有機酸および/またはその塩」の含有量について何ら記載がない。
したがって、甲20発明における「有機酸および/またはその塩」の含有量は不明であり、相違点20-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲20発明ではない。
甲20発明における「有機酸および/またはその塩」の含有量について、特許異議申立人は令和 5年12月25日提出の意見書(第9頁~第10頁)にて、「甲19の表3の抽出条件Aの場合、「リンゴ酸+クエン酸:674mg/L=0.0674w/v%」となるように、茶として玉露を用いた場合、茶抽出液の有機酸含量は本件特許発明1の要件の範囲を満たす。」「このことは、参考資料9からも明らかである。」「甲20の【0016】において茶の例示に「玉露」が記載されているように、甲20発明a、甲20発明の茶抽出物として汎用の茶である玉露を用いることは甲20に記載された発明である。」と主張している。
しかしながら、甲20発明の「液体緑茶飲料(商品名:おーいお茶、伊藤園株式会社製)」のお茶の種類や抽出条件等は何ら明らかでなく、甲19及び参考資料9を参酌しても、甲20発明の「有機酸および/またはその塩」の含有量は依然として不明である。
そして、甲20及び他の全ての証拠をみても、甲20発明において、相違点20-1に係る「有機酸および/またはその塩」の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に調整する動機となる記載はない。
すなわち、甲20【0080】【表-1】の飲料調整例を参酌すると、甲20では、飲料中のアルギニン添加量を増大させてpHを7.80以上とすることにより濁り・沈殿の有無を「なし」としていることから、甲20発明において、濁りや沈殿の低減のために、相違点20-1に係る「有機酸および/またはその塩」の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に調整する動機はない。
これに対し、本件特許発明1は「有機酸および/またはその塩」の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」の範囲とすることにより、水溶性コラーゲンが配合されたポリフェノール含有飲料の水溶性コラーゲンに起因する濁りや沈殿を抑制できるという顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲20発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2についての対比・検討
本件特許発明2と甲20発明とを対比すると、上記(1)で検討したと同様の対応関係を有する。
また、甲20発明は、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」で除外されるものに該当しない。
そうすると、本件特許発明2と甲20発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる、ポリフェノール飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点20-2>
本件特許発明2は「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」との特定を有するのに対して、甲20発明はそのような特定がない点。
<相違点20-3>
本件特許発明2は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み、「有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲20発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点20-3について検討する。
相違点20-3は上記(1)相違点20-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲20発明ではなく、また、甲20発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明3、5、7及び8についての対比・判断
本件特許発明3、5、7及び8は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1又は請求項2に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3、5、7及び8は、甲20発明ではなく、また、甲20発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明9についての対比・判断
本件特許発明9と甲20発明aとを対比すると、上記(1)と同様の対応関係を有し、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲20発明aではなく、また、甲20発明aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由は、
・申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3及び4(甲15に基づく新規性・進歩性)
・申立理由5及び6(甲20に基づく新規性・進歩性)のうち、請求項4、請求項10について
・申立理由7(甲10に基づく進歩性)
・申立理由8(明確性)
・申立理由9(サポート要件)
・申立理由10(実施可能要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)証拠の記載事項等
ア 甲1に記載された発明
甲1の【0059】実施例1:飲料からみて、甲1には次の発明(以下、「甲1発明A」、「甲1発明a」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明A>
「豚皮由来のコラーゲン加水分解物(平均分子量2500)20.0%、果糖10.0%、エゾウゴキエキス1.0%、トチュウエキス1.0%、メチルパラベン0.2%、硝酸チアミン0.005%、リン酸リボフラビンナトリウム0.005%、塩酸ピリドキシン0.005%、香料 適量、クエン酸 適量、水 残部を配合し、全量100.0%とした、pH6.5の飲料。」
<甲1発明a>
「甲1発明Aの製造方法。」
また、甲1の【0062】実施例3:飲料からみて、甲1には次の発明(以下「甲1発明B」、「甲1発明b」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明B>
「ブドウ糖果糖液糖10.0%、鮫由来のコラーゲンの加水分解物(平均分子量2000)3.0%、ニンジンエキス末1.0%、アミノエチルスルホン酸1.0%、サンザシエキス0.5%、ローヤルゼリー0.5%、無水カフェイン0.5%、塩酸ピリドキシン0.01%、リン酸ピリドキシン0.01%、水 残部を配合し、全量100.0%としたpH5.3の飲料。」
<甲1発明b>
「甲1発明Bの製造方法。」
イ 甲2ないし甲6に記載された事項(エゾウコギについて)
(ア)甲2に記載された事項
甲2の【0024】~【0026】にはエゾウコギ茎(国産)6kgを沸騰水100Lで加熱抽出し、連続型減圧濃縮器を使用して5Lに濃縮し、濃縮液を遠心分離、フィルターろ過により残渣除去したエゾウコギエキスの成分分析においてクロロゲン酸が638~1093μg/mL定量されたことが記載されている。
[図:0001410181000006.jpg]
(イ)甲3に記載された事項
甲3の【0019】~【0022】には乾燥エゾウコギ原木(茎主体)を針状に切断し、25gに対して溶媒250gを加え、80~100℃にて溶媒抽出を行った後、室温まで冷却後、濾紙にてろ過した抽出液を液体クロマトグラフ法により分析した結果、通常水による抽出において、クロロゲン酸が876~1190μg/mL定量されたことが記載されている。
[図:0001410181000007.jpg]
(ウ)甲4に記載された事項
甲4の【0014】、【0016】<実施例2>~【0019】、【0029】<実施例4>~【0030】、【図2】(A)には、未加工のエゾウコギ抽出液のHPLCチャートにクロロゲン酸のピークJ及びカフェ酸のピークKが存在することが開示されている。
[図:0001410181000008.jpg]
(エ)甲5に記載された事項
甲5の[0129]には次の事項が記載されている(なお、下線は説明のために当審にて付したものである。)。
「また、カフェ酸、クロロゲン酸およびジカフェオイルキナ酸は、コーヒー豆、ヨモギ、カンショ茎葉、シュンギク、コゴミ、ウド、フキ、シドケ、エゾウコギ、チョウセンアザミ、エキナセアなどの天然材料から抽出して得ることも出来る。」
(オ)甲6に記載された事項
甲6の第96頁左欄には次の事項が記載されている(なお、下線は説明のため当審にて付したものである。)。
「EUE(黒龍江省広元薬業有限責任公司,中国)は,エゾウコギ根を粉砕後,6倍量の水を添加し,90~100℃で2~3時間の抽出を2回行い,減圧下で濃縮した後,エタノールを添加し,生じた沈殿物を除去し,スプレードライヤーで乾燥粉末としたものである.成分としてイソフラキシジン,エレウテロサイドB,エレウテロサイドE,クロロゲン酸を含む.」
ウ 甲7ないし甲9に記載された事項(杜仲について)
(ア)甲7に記載された事項
甲7の【0032】には杜仲皮について次の事項が記載されている。甲7は外国文であるため日本語訳を記す(なお、下線は説明のため当審にて付したものである。)。
「上記杜仲皮は有機酸、クロロゲン酸、ビタミンC、アルカロイド、ゴム質、等々多くの成分が含有されており」
(イ)甲8に記載された事項
甲8の【0035】~【0036】には杜仲に関して次の事項が記載されている(なお、下線は説明のため当審にて付したものである。)。
「【0035】
クロロゲン酸を含有する天然物として、例えば杜仲、オオバコ等の植物が挙げられる。前述と同様に、植物は、栽培により生産されたものであっても天然より採取されたものであってもよく、使用する植物の部位は、クロロゲン酸を含む部位であれば制限されず、全草、花、果実、葉、枝、樹皮、根茎、種子のいずれも使用でき、杜仲の場合は、好ましくは葉が例示される。天然物からクロロゲン酸を得る方法は従来公知であり、本発明の経口組成物は、クロロゲン酸を精製した状態で含んでいてもよく、粗精製の状態で含んでいてもよい。」
「【0036】
粗精製物の例としては、前述と同様に加工処理物が挙げられ、好ましくは杜仲葉の溶媒抽出物、溶媒抽出物の分画物が例示される。これらを得る手順も前述と同様に説明され、また、抽出条件もクロロゲン酸を抽出できる限り、前記手順を参考にして適宜設定すればよい。また、前述と同様に、クロロゲン酸を含有する抽出物も、得られた抽出物そのままの状態であってもよく、更に濃縮してもよく、得られた抽出物や濃縮物を更に乾燥処理してもよい。また必要に応じて、乾燥処理後に粉砕して粉末物としてもよく、また、必要に応じて更に分画物や精製物としてもよい。」
(ウ)甲9に記載された事項
甲9の第1頁第12行~第15行には、杜仲葉に関して次の事項が記載されている。甲9は外国文であるため日本語訳を記す(なお、下線は説明のため当審にて付したものである。)。
「近年の研究では、杜仲葉のクロロゲン酸含有量が豊富で、1%~5%に達することがわかっている。中国では杜仲が広範囲に植林されており、毎年数百万トンの杜仲葉を生産することができる。これはクロロゲン酸の抽出に十分な原料のベースとなっている。」
エ 甲11、甲12、甲14に記載された事項(ニンジンについて)
(ア)甲11に記載された事項
甲11にはニンジン中のリンゴ酸分析値について次のとおりに記載されている。
[図:0001410181000009.jpg]
(イ)甲12に記載された事項
甲12にはニンジン中のクエン酸含量について次のとおり記載されている。
[図:0001410181000010.jpg]
(ウ)甲14に記載された事項
甲14の第30頁左欄にはニンジン中のポリフェノール含量について次のとおり記載されている。
[図:0001410181000011.jpg]
オ 甲13に記載された事項(山査子について)
甲13の【0008】及び【0017】には山査子について次の事項が記載されている(なお、下線は説明のため当審にて付したものである。)。
「【0008】
【発明の実施の形態】本願第1の発明は、山査子の果肉又はその抽出物を有効成分として含有する抗エンドトキシン剤に係る。山査子は、中国原産のバラ科の低木で、野山査(Crataegus cuneata)あるいは山査(Crataegus pinnatifida)と呼ばれ、その果実は、クエン酸、ミネラル、カロチンなどを多く含み、肉体疲労時の栄養補給や日常の健康維持、消化不良・慢性下痢などの改善、健胃整調などに用いられている。また、血中コレステロールの正常化、過酸化脂質の増加抑制などの効能も知られている。中国では一般に「紅果」と呼ばれ、干菓子や羊羹あるいはジュースなどに用いられている。」
「【0017】実施例1 山査子乾燥果実含有試料の調製
山査子の果実を圧搾法でジュースをしぼった残りの部分の乾燥果実から種子を取り除き、さらに70℃の送風乾燥機内で1昼夜乾燥した後、粉砕脱脂糠を加えて、総ポリフェノール量が理論上10%になるように調整して試料を作製した。試料のHPLC法による総ポリフェノールの分析値は10.8%であった。」
(2)検討
ア 本件特許発明1についての対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲1発明Aとの対比・判断
本件特許発明1と甲1発明Aとを対比する。
甲1発明Aの「豚皮由来のコラーゲン加水分解物(平均分子量2500)」、「クエン酸」は、本件特許発明1における「水溶性コラーゲン」、「有機酸および/またはその塩」であって「前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」に相当する。
甲1発明Aの「飲料」は、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
甲1発明Aの「pH6.5」は、本件特許発明1の「pHが5.0~7.0」を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明Aの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる飲料であって、pHが5.0~7.0であり、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点1A-1>
本件特許発明1は「ポリフェノール含有」飲料であるとの特定を有するのに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点。
<相違点1A-2>
本件特許発明1は「茶」飲料であるのに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点
<相違点1A-3>
本件特許発明1は「有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1A-2について検討する。
甲1発明は「トチュウエキス」の他、「エゾウコギエキス」も含み、「滋養強壮、疲労回復の目的で1日あたり30ml程度飲用」される飲料である。
ここで、本件特許発明1の「茶」飲料について、本件特許明細書の発明の詳細な説明【0014】「茶抽出液の調製に用いられる原料は、特に限定されないが、穀物など(麦、米など)やマメ科植物(ルイボスなど)の他、ツバキ科の常緑樹である茶樹カメリア・シネンシス(Camelliasinensis var.)に属する茶葉を用いることができる。」と記載されている。
これについて、甲1発明の「トチュウエキス」、「エゾウコギエキス」は、「穀物など(麦、米など)やマメ科植物(ルイボスなど)の他、ツバキ科の常緑樹である茶樹カメリア・シネンシス(Camelliasinensis var.)に属する茶葉を用いる」ものの何れにも該当しない。
よって、甲1発明は「茶」飲料ではない。
したがって、相違点1A-2は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1発明Aではない。
甲1において、甲1発明Aの飲料を茶飲料とする動機となる記載はない。
また、他の全ての証拠をみても、甲1発明Aの飲料を「茶」飲料とする動機となる記載はない。
これに対し、特許異議申立人は令和 5年12月25日提出の意見書(第8頁第15行)において、「甲1には【0044】に茶飲料とすることが記載されている。」と主張している。
しかしながら、甲1【0044】の記載は、具体的に調整された甲1発明Aの飲料を「茶」飲料に変更することを示唆するものではない。
したがって、甲1発明Aにおいて、相違点1A-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明1と甲1発明Bとの対比・判断
本件特許発明1と甲1発明Bとを対比する。
甲1発明Bの「鮫由来のコラーゲンの加水分解物(平均分子量2000)」は、本件特許発明1における「水溶性コラーゲン」に相当する。
甲1発明Bの「飲料」は、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
甲1発明Bの「pH5.3」は、本件特許発明1の「pHが5.0~7.0」を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明Bの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる飲料であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点1B-1>
本件特許発明1は「ポリフェノール含有」飲料との特定を有するのに対し、甲1発明Bはそのような特定がない点。
<相違点1B-2>
本件特許発明1は「茶」飲料であるのに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。
<相違点1B-3>
本件特許発明1は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み「前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1B―2について検討する。
相違点1B-2は上記(ア)相違点1A-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明1は甲1発明Bではなく、また、甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2についての対比・判断
(ア) 本件特許発明2と甲1発明Aとの対比・判断
本件特許発明2と甲1発明Aとを対比すると、上記ア(ア)で検討したと同様の対応関係を有する。
また、甲1発明Aは、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」で除外されるものに該当しない。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明Aとの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点1A-4>
本件特許発明2は「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」との特定を有するのに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点。
<相違点1A-5>
本件特許発明2は「ポリフェノール含有」飲料であるのに対して、甲1発明Aにはそのような特定がない点。
<相違点1A-6>
本件特許発明2は、「有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲1発明Aにはそのような特定がない点。
相違点1A-4について検討する。
甲1には、甲1発明Aにおいて、「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」かどうか何ら記載がない。
「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿」について、特許異議申立人は令和 5年12月25日提出の意見書(第8頁第1~2行)にて「参考資料8では請求項1及び課題等からわかる通り、ポリフェノール含有飲料において沈殿防止を図るpHとしてpH5.0~7.0とすることが必須であることが記載されており、【0016】に好適なクエン酸使用量として0.1~1g/Lであることが記載されている。」と説明しており、すなわち、pH5.0~7.0のポリフェノール含有飲料であれば沈殿防止されているのではないか、という趣旨の意見が記載されている。
しかしながら、甲1発明Aは、水溶性コラーゲンとして豚皮由来のコラーゲン加水分解物(平均分子量2500)を20.0%含有するものである。
当該「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減され」ているかどうかは、本件特許明細書の発明の詳細な説明【0033】によると、有機酸を添加したときに、添加前に比べて濁度低減率が30%以上であることを意味するが、水溶性コラーゲンとして豚皮由来のコラーゲン加水分解物(平均分子量2500)を20.0%含有させた甲1発明の飲料は、pHが6.5であったとしても、濁度低減率が30%以上である蓋然性が高い、とまではいえない。
よって、相違点1A-4は実質的な相違点であり、本件特許発明2は甲1発明Aではない。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明Aにおいて、相違点1A-4に係る「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減され」るように調整する動機となる記載はない。
したがって、甲1発明Aにおいて、相違点1A-4に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明2と甲1発明Bとの対比・判断
本件特許発明2と甲1発明Bとを対比すると、上記ア(イ)で検討したと同様の対応関係を有する。
また、甲1発明Bは、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」で除外されるものに該当しない。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明Bとの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点1B-4>
本件特許発明2は「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」との特定を有するのに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。
<相違点1B-5>
本件特許発明2は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含んでな」り、「有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。
<相違点1B-6>
本件特許発明2はポリフェノール含有飲料であるのに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1B-5について検討する。
上記(1)エから、ニンジンにはリンゴ酸及びクエン酸が含有されていることが理解され、上記(1)オから、サンザシ(山査子)の果実にはクエン酸が含有されていることが理解されるから、甲1発明Bの飲料には、「ニンジンエキス末」及び「サンザシエキス」由来のリンゴ酸及びクエン酸が含有されることが理解される。
しかしながら、甲1発明Bの飲料における「ニンジンエキス末」及び「サンザシエキス」に由来するリンゴ酸及びクエン酸の合計含有量は不明である。
したがって、相違点1B-5は実質的な相違点であり、本件特許発明2は甲1発明Bではない。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明Bにおいて、相違点1B-5に係る「有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するように調整する動機となる記載はない。
したがって、甲1発明Bにおいて、相違点1B-5に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3ないし5及び7ないし8についての対比・判断
本件特許発明3ないし5及び7ないし8は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1又は請求項2に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3、5、7及び8は、甲1発明A又は甲1発明Bではなく、また、本件特許発明3ないし5及び7ないし8は、甲1発明A又は甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明9についての対比・判断
本件特許発明9と甲1発明a又は甲1発明bとを対比すると、上記アと同様の対応関係を有し、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲1発明a又は甲1発明bではなく、また、甲1発明a又は甲1発明bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明10についての対比・判断
甲1には、水溶性コラーゲンに起因する濁りや沈殿についての問題認識はなく、その低減を図る点も何ら記載されておらず、示唆もない。
したがって、甲1からは「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿を低減する方法」に対応する発明は認定することができない。
よって、本件特許発明10は甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由1及び2についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、5及び7ないし10は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。
したがって、申立理由1及び2によって本件特許を取り消すことはできない。
2 申立理由3及び4(甲15に基づく新規性・進歩性)について
(1)証拠の記載事項等
ア 甲15に記載された発明
甲15の【0031】[実施例8]からみて、甲15には次の発明(以下、「甲15発明A」、「甲15発明a」という。)が記載されていると認められる。
<甲15発明A>
「コラーゲンペプチド5.0重量部、コーヒーエキス5.0重量部、砂糖4.0重量部、香料0.5重量部、ビタミンC0.5重量部、重曹を用いpH6.5に調整した後、精製水で100容量部としたコーヒー飲料。」
<甲15発明a>
「甲15発明Aの製造方法。」
甲15の【0032】[実施例9]からみて、甲15には次の発明(以下、「甲15発明B」、「甲15発明b」という。)が記載されていると認められる。
<甲15発明B>
「コラーゲンペプチド5.0重量部、緑茶抽出液10.0重量部、香料0.5重量部、ビタミンC0.5重量部、重曹を用いpHを6.5に調整した後、精製水で100容量部とした緑茶飲料。」
<甲15発明b>
「甲15発明Bの製造方法。」
イ 甲16ないし甲17に記載された事項(コーヒーについて)
(ア)甲16に記載された事項
甲16の第2頁左上欄第9~17行にはコーヒーについて次のとおりの記載がある。
「一般に、コーヒーの味を構成する一成分である酸味は、クロロゲン酸を主体としており、それに不揮発性の酸(リンゴ酸、クエン酸等)、揮発性の酸(ギ酸、酢酸等)、及びその他の酸によって生じ、それらの割合はほぼ73:18:7:2である。クロロゲン酸,リンゴ酸,クエン酸は、まろやかで豊かなコクを持った独特の芳醇な酸味を呈するが、ギ酸,酢酸は刺激的な酸味を与えることが知られている。」
(イ)甲17に記載された事項
甲17にはコーヒー抽出液について次の事項が記載されている(なお、下線は説明のため当審にて付したものである。)。
「【請求項1】
コーヒー抽出液を含み、
超純水を添加してBrix値を1.0に調整した前記コーヒー抽出液は、ピルビン酸、キナ酸、コハク酸、乳酸およびピログルタミン酸の含有量の合計C1に対するリン酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸および酢酸の含有量の合計C2の比C2/C1が1.0以上であるコーヒー含有飲料。」
「【0055】
(コーヒー抽出液の成分分析1)
各実施例および各比較例について、得られたコーヒー抽出液のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、キナ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、およびピログルタミン酸の含有量を次のようにして分析した。まず、コーヒー抽出液に対し超純水を添加してBrix値を1.0に調整した後、0.45μmディスポーザブルシリンジフィルタ(Mixed Cellulose Ester)でろ過することによりサンプルを得た。次いで、当該サンプル100ml中におけるリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、キナ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、およびピログルタミン酸それぞれの含有量(mg/100ml)を、HPLC(Prominence((株)島津製作所)、検出器:電気伝導度、ポストカラム)を用いて以下の条件により測定した。
カラム:Shim-pack SCR-102H(8mm×300mm、7μm)((株)島津製作所)
ガードカラム:Shim-pack SCR-102H(6mm×50mm、7μm)((株)島津製作所)
カラムオーブン温度:50℃
移動相:p-トルエンスルホン酸水溶液(5mmol/L)
検出液:p-トルエンスルホン酸(5mmol/L)およびEDTA(100μmol/L)を含むBis-Tris水溶液(20mmol/L)
ポンプ流量(移動相):0.8ml/min
ポンプ流量(検出液):0.8ml/min
注入量:10μl
ポラリティ:+
セル温度:自動設定
得られた測定値から、ピルビン酸、キナ酸、コハク酸、乳酸およびピログルタミン酸の含有量の合計C1と、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸および酢酸の含有量の合計C2と、C1に対するC2の比(C2/C1)を算出した。結果を表2に示す。
【0056】
コーヒー抽出液の成分分析1の結果から、各実施例および各比較例について、得られたサンプル中にリン酸、クエン酸、リンゴ酸、キナ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、およびピログルタミン酸が含まれることを確認した。一方で、各実施例および各比較例について、得られたサンプル100ml中におけるピルビン酸の含有量は0.01(mg/100ml)未満であったことも確認した。
【0057】
(コーヒー抽出液の成分分析2)
各実施例および各比較例について、得られたコーヒー抽出液のカフェインおよびクロロゲン酸の含有量を次のようにして分析した。まず、コーヒー抽出液に対し超純水を添加してBrix値を1.0に調整した後、限外ろ過フィルタユニット(AmiconUltra)によって1000rpm、30分の条件でろ過することによりサンプルを得た。次いで、当該サンプル100ml中におけるカフェインの含有量C4(mg/100ml)およびクロロゲン酸の含有量C3(mg/100ml)を、UHPLC(Nexera((株)島津製作所)、検出器:PDA)を用いて以下の条件により測定した。
カラム:ZORBAX EclipsePlus C18(アジレント・テクノロジー(株))
カラムオーブン温度:45℃
移動相A液:0.17%リン酸含む超純水
移動相B液:0.17%リン酸含むメタノール
ポンプ流量:1.2ml/min
注入量:3μl
セル部温調温度:40℃
得られた測定値から、クロロゲン酸の含有量C3に対するカフェインの含有量C4の比C4/C3を算出した。結果を表2に示す。
【0058】
[図:0001410181000012.jpg]
(2)検討
ア 本件特許発明1についての対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲15発明Aとの対比・判断
本件特許発明1と甲15発明Aとを対比する。
甲15発明Aの「コラーゲンペプチド」は、本件特許発明1における「水溶性コラーゲン」に相当する。
甲15発明Aの「コーヒー飲料」は、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
甲15発明Aの「pH6.5」は、本件特許発明1の「pHが5.0~7.0」を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲15発明Aの一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる飲料であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点15A-1>
本件特許発明1は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み、「前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲15発明Aはそのような特定がない点。
<相違点15A-2>
本件特許発明1は「ポリフェノール含有」飲料との特定を有するのに対し、甲15発明Aはそのような特定がない点。
<相違点15A-3>
本件特許発明1は茶飲料であるのに対し、甲15発明Aはコーヒー飲料である点。
事案に鑑み、相違点15A-3について検討する。
本件特許発明1と甲15発明Aとは少なくとも相違点15A-3の点で相違するから、本件特許発明1は甲15発明Aではない。
また、甲15及び他の全ての証拠をみても、甲15発明Aの飲料を茶飲料とする動機となる記載はない。
したがって、甲15発明Aにおいて、相違点15A-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲15発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明1と甲15発明Bとの対比・判断
本件特許発明1と甲15発明Bとを対比する。
甲15発明Bの「コラーゲンペプチド」は、本件特許発明1における「水溶性コラーゲン」に相当する。
甲15発明Bの「緑茶飲料」は、本件特許発明1の「茶飲料」に相当し、かつ、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
甲15発明Bの「pH6.5」は、本件特許発明1の「pHが5.0~7.0」を満たす。
さらに、甲15発明Bは、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」との発明特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲15発明Bの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる茶飲料であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点15B-1>
本件特許発明1は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み、「前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対し、甲15発明Bはそのような特定がない点。
<相違点15B-2>
本件特許発明1はポリフェノール含有飲料であるのに対し、甲15発明Bはそのような特定がない点。
相違点15B-1について検討する。
上記第6 1(2)及び(3)の甲18及び甲19から、緑茶にはクエン酸、リンゴ酸が含有されていることが理解され、よって、甲15発明Bの茶飲料は、「緑茶抽出液」由来のクエン酸及びリンゴ酸を含有する。
しかしながら、甲15発明Bの茶飲料における「緑茶抽出液」に由来するリンゴ酸及びクエン酸の合計含有量は不明である。
よって、相違点15B-1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲15発明Bではない。
そして、甲15及び他の全ての証拠をみても、甲15発明Bにおいて、相違点15B-1に係る「有機酸および/またはその塩」の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に調整する動機となる記載はない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲15発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2についての対比・検討
(ア)本件特許発明2と甲15発明Aとの対比・判断
本件特許発明2と甲15発明Aとを対比すると、上記ア(ア)で検討したと同様の対応関係を有する。
また、甲15発明Aは、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」との発明特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明2と甲15発明Aの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点15A-4>
本件特許発明2は「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が抑制された」との特定を有するのに対して、甲15発明Aはそのような特定がない点。
<相違点15A-5>
本件特許発明2は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲15発明Aはそのような特定がない点。
<相違点15A-6>
本件特許発明2は「ポリフェノール含有」飲料との特定を有するのに対して、甲15発明Aはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点15A-5について検討する。
上記2(1)イ(ア)及び(イ)の甲16及び甲17から、コーヒーの抽出液にはリンゴ酸、クエン酸が含有されていることが理解される。そうすると、甲15発明Aの飲料には「コーヒーエキス」に由来するリンゴ酸、クエン酸が含有されている。
しかしながら、甲16及び甲17の記載を参酌しても、甲15発明Aの「コーヒーエキス」に由来する「有機酸および/またはその塩」の含有量は不明である。また、甲15には、「有機酸および/またはその塩」の含有量について何ら記載がない。
したがって、甲15発明Aにおける「有機酸および/またはその塩」の含有量は不明であり、相違点15A-5は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明2は甲15発明Aではない。
そして、甲15及び他の全ての証拠をみても、甲15発明において、相違点15A-5に係る「有機酸および/またはその塩」の含有量を「0.01w/v%以上0.5w/v%以下」に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明2は甲15発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明2と甲15発明Bとの対比・判断
本件特許発明2と甲15発明Bとを対比すると、上記ア(イ)で検討したと同様の対応関係を有する。
また、甲15発明Bは、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」で除外されるものに該当しない。
そうすると、本件特許発明2と甲15発明Bとの一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンを含んでなる飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、pHが5.0~7.0であり、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点15B-3>
本件特許発明2は「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」との特定を有するのに対して、甲15発明Bはそのような特定がない点。
<相違点15B-4>
本件特許発明2は「フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」の「有機酸および/またはその塩を含」み、「前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」するとの特定を有するのに対して、甲15発明Bにおいてはそのような特定がない点。
<相違点15B-5>
本件特許発明2は「ポリフェノール含有」飲料との特定を有するのに対して、甲15発明Bはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点15B-4について検討する。
相違点15B-4は相違点15B-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲15発明Bではなく、甲15発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3ないし5、7及び8についての対比・判断
本件特許発明3ないし5、7及び8は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1又は請求項2に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3ないし5、7及び8は甲15発明A又は甲15発明Bではなく、甲15発明A又は甲15発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明9についての対比・判断
本件特許発明9と甲15発明a、甲15発明bとを対比すると、上記アと同様の対応関係を有し、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲15発明a又は甲15発明bではなく、また、甲15発明a又は甲15発明bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明10についての対比・判断
甲15からは「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿を低減する方法」に対応する発明は認定することができない。
よって、本件特許発明10は甲15に記載された発明ではなく、また、甲15に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由3及び4についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。
したがって、申立理由3及び4によって本件特許を取り消すことはできない。
3 申立理由5及び6(甲20に基づく新規性・進歩性)について
(1)検討
ア 本件特許発明4についての対比・判断
本件特許発明4は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1又は請求項2に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
そうすると、上記第6 2(1)及び(2)において記したと同様に、本件特許発明4は、甲20発明ではなく、また、甲20発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明10についての対比・判断
甲20からは「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿を低減する方法」に対応する発明は認定することができない。
よって、本件特許発明10は甲20に記載された発明ではなく、また、甲20に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)申立理由5及び6についてのまとめ
第6 2(1)ないし(4)と上記3(1)をまとめると、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。
4 申立理由7(甲10に基づく新規性・進歩性)について
(1)証拠の記載事項等
ア 甲10に記載された発明
甲10の【0035】(実施例1)、【0043】(実施例2、3)、【0046】(実施例5)、【0047】(実施例6)、【0051】【表1】からみて、甲10には次の発明(以下、「甲10発明」、「甲10発明a」という。)が記載されていると認められる。
<甲10発明>
「ガレート型カテキン(商品名:サンフェノンEGCg、太陽化学株式会社製)を0.03~0.5重量%、ゼラチン又はコラーゲンペプチドからなるコラーゲンを0.5~2重量%、クエン酸を0.1~0.2重量%含有する容器詰めされた機能性飲料。」
<甲10発明a>
「甲10発明の製造方法。」
また、甲10の【0040】(比較例5)からみて、甲10には次の発明(以下、「甲10比較例発明」、「甲10比較例発明a」という。)が記載されていると認められる。
<甲10比較例発明>
「ゼラチン1.0g、EGCg0.18g、DHA0.04g、クエン酸0.2g、甘味料0.05g、グレープ香料0.1gと水を加えて総重量100gに調整し、85℃で30分加熱後、ガラス瓶に詰めた、容器詰め飲料。」
<甲10比較例発明a>
「甲10比較例発明の製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1についての対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲10発明との対比・判断
本件特許発明1と甲10発明とを対比する。
甲10発明における「ゼラチン又はコラーゲンペプチド」、「クエン酸」、「ガレート型カテキン」は、それぞれ、本件特許発明1の「水溶性コラーゲン」、「有機酸および/またはその塩」であり「有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群より選択される1種または2種以上」、「ポリフェノール」に相当する。
また、甲10発明における「クエン酸を0.1~0.2重量%含有する」構成は、本件特許発明1における「前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」する構成に相当する。
さらに、甲10発明の「機能性飲料」は、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲10発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩を含んでなる、ポリフェノール含有飲料であって、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点10-1>
本件特許発明1は、「pHが5.0~7.0」であるとの特定を有しているのに対して、甲10発明においてはそのような特定がない点。
<相違点10-2>
本件特許発明1は「茶」飲料であるのに対して、甲10発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点10-2について検討する。
特許異議申立人は令和 5年 6月28日提出の意見書(第6頁下から2行~第7頁第9行)において「本件明細書【0021】に挙げられた・・・(中略)・・・サンフェノンはいずれも茶成分が精製された製品であり、これらの製品には、ガレート型カテキンを高配合する製品も存在する。例えばサンフェノンEGCG-OPには、EGCGが94%以上含まれている(参考資料4)。・・・(中略)・・・そうすると、甲10発明のようにEGCGを溶解した飲料は本件特許発明の茶飲料に相当するため、本件特許発明1の茶飲料との区別はつかない。」と主張している。
甲10発明においては、ポリフェノールとして、「ガレート型カテキン(商品名:サンフェノンEGCg、太陽化学株式会社製)」を使用している。
特許異議申立人の提出した参考文献4によると、この製品は「緑茶カテキンの中でも特に活性が高いEGCgを独自の製法により純度化。サプリメント・飲料をはじめ各種食品に添加可能。【規格】EGCg 94%以上」であることが記載されている。すなわち、これは純度94%のガレート型カテキンEGCgである。
本件特許発明1の「茶」飲料は、本件特許明細書の発明の詳細な説明【0013】によると、「本発明の茶飲料は、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮液または希釈液から調製することができる。例えば、茶葉と水(0~100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を水(0~100℃)に混合または溶解させることにより、本発明に用いられる茶抽出液を得ることができる。また、上記の茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーとを混合したものを茶抽出液として本発明の茶飲料に用いてもよい。」の記載から、通常の茶抽出液から調整され、茶葉に含有される多様な成分が含まれる飲料を基本としたものと理解できる。
そうすると、緑茶カテキン類のうち、単一のガレート型カテキンEGCg(純度94%)のみを含有する甲10発明の飲料は、「茶」飲料であるとはいえない。
よって、相違点10-2は実質的な相違点である。
そして、甲10及び他の全ての証拠をみても、甲10発明の飲料を「茶」飲料とする動機となる記載はない。
すなわち、甲10にはガレート型カテキンを有効成分として含有させてなるものであり、甲10発明を「茶」飲料とすることについては何ら動機となる記載はない。
したがって、甲10発明において、相違点10-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明1と甲10比較例発明との対比・判断
本件特許発明1と甲10比較例発明とを対比する。
甲10比較例発明における「ゼラチン」、「クエン酸」は、本件特許発明1における「水溶性コラーゲン」、「有機酸および/またはその塩」であって、「前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上」に相当する。そして、甲10比較例発明における「クエン酸0.2g」「と水を加えて総重量100gに調整」した構成は、本件特許発明1における「前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有」する構成に相当する。
また、甲10比較例発明における「EGCg」は本件特許発明1における「ポリフェノール」に相当する。
さらに、甲10比較例発明の「飲料」は、その成分からみてペクチンを含まないといえるから、本件特許発明1の「ペクチンを含まない、飲料」を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲10比較例発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる、ポリフェノール含有飲料であって、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点10-3>
本件特許発明1は「茶」飲料との特定を有するのに対して、甲10比較例発明はそのような特定がない点。
<相違点10-4>
本件特許発明1は「pHが5.0~7.0」との特定を有するのに対して、甲10比較例発明はそのような特定がない点。
相違点10-3について検討する。
甲10比較例発明が「EGCg」を含有しているとしても、これが「茶」飲料ではないことは上記(ア)において検討したとおりであり、相違点10-3は実質的な相違点である。
そして、甲10比較例発明は、甲10【0040】に「得られた飲料は、静置するとDHAの油滴が上層に分離し、さらに凝集沈殿が生じてしまった。」と記載されているとおり、好ましくない飲料の例であり、当業者をしてもそのように好ましくない飲料の例に基づいて、これを相違点10-3に係る「茶」飲料にしようと試みることは、容易に想起し得ない。さらに、甲10及び他の全ての証拠をみても、甲10比較例発明において、相違点10-3に係る発明特定事項を満たすものとする動機となる記載はない。
また、相違点10-3は上記(ア)において検討した相違点10-2と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明1は甲10比較例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2についての対比・判断
(ア)本件特許発明2と甲10発明との対比・判断
本件特許発明2と甲10発明とを対比すると、上記ア(ア)で検討したと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明2と甲10発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩を含んでなる、ポリフェノール含有飲料であって、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点10-5>
本件特許発明2は、「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」との特定を有するのに対し、甲10発明はそのような特定がない点。
<相違点10-6>
本件特許発明2は、「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」との特定を有するのに対し、甲10発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点10-6について検討する。
甲10発明は、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を必須成分として含む飲料であるから、甲10発明において、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除いて、相違点10-6に係る発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
また、他の証拠に基づいて、甲10発明において、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除くとし、相違点10-6に係る発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明2と甲10比較例発明との対比・判断
本件特許発明2と甲10比較例発明とを対比すると、上記ア(イ)で検討したと同様の対応関係を有する。
また、甲10比較例発明は、ガレート型カテキン、大豆多糖類を含む飲料ではないから、本件特許発明2の「(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)」で除外されるものに該当しない。
そうすると、本件特許発明2と甲10比較例発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩とを含んでなる、ポリフェノール含有飲料(但し、ガレート型カテキン、コラーゲンおよび大豆多糖類を含む飲料を除く。)であって、前記有機酸が、フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上であり、前記有機酸および/またはその塩を0.01w/v%以上0.5w/v%以下含有し、かつ、ペクチンを含まない、飲料。」
<相違点10-7>
本件特許発明2は、「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」との特定を有するのに対して、甲10比較例発明はそのような特定がない点。
<相違点10-8>
本件特許発明2は、「pHが5.0~7.0」との特定を有するのに対して、甲10比較例発明はそのような特定がない点。
相違点10-7について検討する。
先にア(イ)において検討したように、甲10比較例発明は、甲10【0040】によれば「静置するとDHAの油滴が上層に分離し、さらに凝集沈殿が生じてしまった」ものである。したがって、「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減された」ものではなく、相違点10-7は実質的な相違点である。
これに対し、特許異議申立人は令和 5年12月25日提出の意見書(第5頁第5~7行)において、「凝集沈殿が生じているものの、甲10発明aでは、クエン酸を用いていることから、凝集沈殿は低減していると解される。したがって、この点は本件特許発明2と甲10発明aとの差異ではない。」と主張している。
しかしながら、当該「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減され」ているかどうかは、本件特許明細書の発明の詳細な説明【0033】によると、有機酸を添加していない水溶性コラーゲンを含むポリフェノール含有飲料に対する、有機酸を添加した水溶性コラーゲンを含むポリフェノール含有飲料の濁度の比率(%)で定義される濁度低減率(%)が30%以上であることである。
そうすると、「静置するとDHAの油滴が上層に分離し、さらに凝集沈殿が生じてしまった」甲10比較例発明の飲料は、クエン酸0.2gが添加されていたとしても、濁度低減率が30%以上である蓋然性が高い、とまではいえない。
よって、相違点10-7は実質的な相違点である。
そして、甲10及び他の全ての証拠をみても、甲10比較例発明において、相違点10-7に係る「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿が低減され」るように調整する動機となる記載はない。
したがって、甲10比較例発明において、相違点10-7に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲10比較例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3ないし5、7及び8についての対比・判断
本件特許発明3ないし5、7及び8は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1又は請求項2に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3ないし5、7及び8は、甲10発明又は甲10比較例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明9についての対比・判断
本件特許発明9と甲10発明a、甲10比較例発明aと対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有し、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲10発明a又は甲10比較例発明aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明10についての対比・判断
甲10からは「水溶性コラーゲンに起因する濁りまたは沈殿を低減する方法」に対応する発明は認定することができない。
よって、本件特許発明10は、甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由7についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は特許法第113条第2号に該当しない。
したがって、申立理由7によって本件特許を取り消すことはできない。
5 申立理由8(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件特許の明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし5及び7ないし10に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 8の主張について検討する。
特許異議申立人は、飲料に含有される有機酸が、純粋な化合物として外添された有機酸(フィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸)と、緑茶抽出液やコーヒーエキス等に由来するクエン酸やリンゴ酸等の有機酸とでは、飲料となった後に区別することができないことを以て、本件特許発明1ないし5及び7ないし10が明確でないと主張するが、本件特許明細書【0037】に「本発明の飲料において有機酸を添加する場合、有機酸そのものを添加しても、有機酸を含む原材料(例えば、果汁)を添加してもよい。」と記載されているように、本件特許発明1ないし5及び7ないし10の飲料に含有される有機酸は、有機酸そのものを添加しても、有機酸を含む原材料を添加してもよく、飲料に含有されていればよい。
よって、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は明確であり、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由8についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当せず、申立理由8によっては取り消すことはできない。
6 申立理由9(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0005】の「本発明は、濁りや沈殿が低減された、コラーゲンが配合されたポリフェノール含有飲料とその製造方法を提供することを目的とする。」との記載によると、本件特許発明1ないし5及び7ないし10の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、コラーゲンが配合されたポリフェノール含有飲料において、濁りと沈殿を低減すること、及び、その製造法を提供することである。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0007】には、本件特許発明1ないし5及び7ないし10に対応する記載がある。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0009】ないし【0011】にはポリフェノールについて、【0012】ないし【0021】には茶飲料について、【0022】ないし【0023】には飲料中のポリフェノール濃度について、【0024】ないし【0027】にはコラーゲンについて、【0028】ないし【0029】には有機酸について、【0030】ないし【0031】には飲料のpHについて、【0032】ないし【0033】には濁りまたは沈殿について、【0036】ないし【0037】、【0039】には飲料の製造方法について、それぞれ記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0044】ないし【0068】において具体的に調製された飲料製造例及びこれら飲料の濁度低減率が記載されており、当業者は、これらの記載事項から、水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩を含んでなるポリフェノール含有飲料において、有機酸としてフィチン酸、酒石酸、クエン欄およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上である飲料、および、その製造方法により、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は、上記発明の課題を解決できると認識できる、水溶性コラーゲンと有機酸および/またはその塩を含んでなるポリフェノール含有飲料において、有機酸としてフィチン酸、酒石酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群から選択される1種または2種以上である飲料、および、その製造方法を、さらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし5及び7ないし10は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明で、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし5及び7ないし10に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の第4 9の主張について検討する。
特許異議申立人は有機酸の量が本件特許の発明の詳細な説明の【0029】の記載の範囲外、ポリフェノールの量が本件特許の発明の詳細な説明の【0027】の記載の範囲外、コラーゲンの量が本件特許の発明の詳細な説明の【0022】の記載の範囲外である場合、及び、有機酸の量・ポリフェノール含有量・コラーゲン含有量の比率が一定の数値範囲外の場合には、飲料の濁りや沈殿を低減し得ない旨主張するが、本件特許の発明の詳細な説明のこれらの記載はそれぞれの好適な範囲が記載されているものであって、この数値範囲外であると直ちに飲料の濁りまたは沈殿が低減できないというものではない。
また、特許異議申立人は、本件特許の発明の詳細な説明において具体的に効果を確認している飲料が紅茶飲料のみであることを以て、それ以外のポリフェノール飲料では発明の課題を解決できない旨主張するが、特許異議申立人の主張は理論的な説明ないしは具体的な証拠を伴ってなされているものではない。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由9についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当せず、申立理由9によっては取り消すことはできない。
7 申立理由10(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし5、7及び8は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明9は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明10は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載には、本件特許発明1ないし5及び7ないし10の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし5、7及び8を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明9を使用し、本件特許発明9により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明10を使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし5及び7ないし10に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 10の主張について検討する。
実施可能要件を充足するかどうかの判断は、上記(1)の判断基準により行うものであり、コラーゲン量及び/又はポリフェノール含有量が極めて少ない飲料を想定し、これらが飲料の濁りや沈殿を低減させることができるかどうかは、実施可能要件の充足性の判断とは関係がない。
したがって、上記第4 10の主張は採用できない。
(4)申立理由10についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は、申立理由10によって取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び第7のとおり、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許は、取消理由(決定の予告)並びに特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5及び7ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項6に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項6に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700987