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特許異議申立

2022-700964

フッ素ゴム組成物及びそれを用いて形成されたゴム成形品

審判番号
2022-700964
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-210155
登録番号
7048713
請求日
2022年09月30日
審決日
2023年01月19日
公報発行日
2023年02月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱電線工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
  • 【異議申立人】岡本 正義
審判長/審判官
  • 審判長 杉江 渉
  • 審判官 井上 政志
  • 審判官 海老原 えい子
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7048713号発明「フッ素ゴム組成物及びそれを用いて形成されたゴム成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7048713号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続きの経緯 本件特許第7048713号にかかる出願(請求項の数9。以下「本件特許」という。)は、令和2年12月18日に出願され、令和4年3月28日に特許権の設定登録がされ、同年4月5日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和4年9月30日に、本件特許1~9に係る特許に対して、特許異議申立人岡本正義(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証 国際公開第2006/068099号 甲第2号証 特開2003-183493号公報 甲第3号証 特開2004-168881号公報 甲第4号証 特開2005-248149号公報 甲第5号証 特開2000-7835号公報 甲第6号証 特開2018-202627号公報 甲第7号証 信越化学工業株式会社のインターネットページ「液状射出成形(LIM)用SIFEL3000シリーズ」 (URL:https://www.sifel.jp/products/sifel3000.html) 以下、甲第1号証~7号証を、それぞれ「甲1」~「甲7」という。 第2 本件発明 特許第7048713号の請求項1~9の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」といい、これらをまとめて「本件発明」という。また、願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 水素含有フッ素ゴムを主成分として含むベースゴムのA成分と、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物のB成分と、かさ密度が0.4g/cm3以下の粉体フィラーのC成分とを含有し、且つ前記B成分の一部又は全部が分子内にアルケニル基を含むフッ素ゴム組成物であって、 前記B成分の密度をdB及び前記B成分の前記A成分100質量部に対する含有量をpB、並びに前記C成分のかさ密度をdC及び前記C成分の前記A成分100質量部に対する含有量をpCとするとき、(pC/dC)/(pB/dB)≧4であるフッ素ゴム組成物。 【請求項2】 請求項1に記載されたフッ素ゴム組成物において、 前記B成分における分子内にアルケニル基を含むものの割合が20質量%以上であるフッ素ゴム組成物。 【請求項3】 請求項1又は2に記載されたフッ素ゴム組成物において、 架橋剤を更に含有するフッ素ゴム組成物。 【請求項4】 請求項3に記載されたフッ素ゴム組成物において、 前記架橋剤が有機過酸化物であるフッ素ゴム組成物。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載されたフッ素ゴム組成物において、 架橋助剤を更に含有するフッ素ゴム組成物。 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載されたフッ素ゴム組成物が架橋して形成されたゴム成形品。 【請求項7】 請求項6に記載されたゴム成形品において、 成形品表面の方が成形品内部よりもCF結合濃度が高いゴム成形品。 【請求項8】 請求項6又は7に記載されたゴム成形品において、 前記ゴム成形品がシール材であるゴム成形品。 【請求項9】 請求項8に記載されたゴム成形品において、 前記シール材が半導体製造装置用であるゴム成形品。」 第3 申立人の主張する申立理由 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1及び甲3の記載に基づいて、本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、これらの発明に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許は、下記の理由により、特許法36条6項1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消すべきものである。 記 請求項1~9では、フッ素ゴム組成物中の粉体フィラーC成分の含有量は規定されていないが、C成分の含有量が、水素含有フッ素ゴム100質量部に対し、10質量部を超えた場合であっても、本件明細書の実施例と同様に本件発明の課題を解決できるとはいえないから、請求項1~9は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。 3 申立理由3(明確性) 本件特許は、下記の理由により、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消すべきものである。 記 (1)請求項1~9は、B成分がパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物のみからなるのか、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物以外の成分を含むのか明確でないため、明確でない。 (2)請求項1~9における、A成分とはどのような成分なのか、特に、水素含有フッ素ゴムをどの程度含む成分であるのか明確ではなく、A成分がどのような成分なのかによってフッ素ゴム組成物やゴム成形品の物性が変化すると考えられるため、明確でない。 第4 甲号証の記載 申立人が提出した甲1~7には、以下の記載がある。 1 甲1 (1) 「請求の範囲 [1](a)架橋性フッ素ゴムと、 該架橋性フッ素ゴム100重量部に対して、 (b)2価パーフロロポリエーテル構造または2価パーフロロアルキレン構造を有し、末端あるいは側鎖に少なくとも有機珪素化合物(c)中のヒドロシリル基と付加反応可能なアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素系化合物(架橋性フッ素ゴム(a)を除く)と、 (c)分子中に2個以上のヒドロシリル基を有し少なくとも前記反応性フッ素系化合物 (b)中のアルケニル基と付加反応可能な反応性有機珪素化合物とを合計[(b)+(c)]で1~10重量部の量で含有し、さらに、 (d)加硫剤(d-1)と、必要により共架橋剤(d-2)とを含むゴム組成物。 ・・・ [5]請求項1~4の何れかに記載のゴム組成物を一次加硫成形後、150℃~300℃の温度で、常圧~減圧下に二次加硫してなるプラズマ処理装置用シール材。」 (2) 「[0001] 本発明は、反応性を有する硬化前のゴム組成物、及びプラズマ処理装置用シール材に関し、さらに詳しくは、特に半導体製造プロセスなどで、高温下で長時間継続的に使用しても相手部材とのベタツキ・固着が発生し難く、パーティクル発生の問題がなく低コストで製造可能であるプラズマ処理装置用シール材を得ることができ、反応性を有する硬化前の未加硫ゴム組成物、及び該組成物を加硫成形してなるプラズマ処理装置用シール材等に関する。 背景技術 [0002] 従来より半導体製造分野などでは、耐プラズマ性に優れたエラストマ一材料として、パーフロロエラストマ一(FFKM)が使用されていた。 しかしながら、パーフロロエラストマ一は非常に高価である。そのため、パーフロロェラストマー(FFKM)に代えて、より安価なフッ素ゴム(FKM)が使用されることが多い。 [0003] ところが、近年半導体の微細化傾向が強まり、半導体製造工程において、半導体用部材の微細化加工に際し、気相中でプラズマによりエッチング処理するドライエツチング方式が主流となっている。 このドライプロセスにおいて、半導体製造装置に組み込まれているフッ素ゴム(FKM)製シール部材の使用環境は厳しくなりつつあり、フッ素ゴム製シール部材までも、プラズマエッチングされて劣化し、シール性能の低下を引起したり、あるいは、フッ素ゴム製シール部材中に配合されている充填材が露出・脱落し、パーティクルの発生などが起こり、メンテナンス回数の増加につながり、半導体製造工程に悪影響を及ぼす可能性がある。 [0004] またフッ素ゴム(FKM)成形品を、耐プラズマ性などが求められる半導体製造分野などで継続使用すると、フッ素ゴム成形品の表面にベタツキ(粘着)が発生し、相手部材と粘着してしまうことがある。この現象は、特に半導体製造プロセスで用いられるような高温下で起こりやすい。そのため、例えば、各種半導体製造プロセスで使用される各種処理装置の出入口に設置されるゲート弁などの開閉部のシール材としてフッ素ゴムシール材を使用した場合には、ゲート弁の迅速な開閉に支障をきたし、ゲート弁の開閉の遅延、脱落などのトラブルが発生するという問題もある。 [0005] これに対して、従来は、フッ素ゴム(FKM)に、耐プラズマ性を有する高価なパーフロロエラストマ一(FFKM)やフロロシリコーンゴムをブレンドして、得られる成形体に耐プラズマ性を付与することが試みられた。 しかしながら、得られた成形体では、フッ素ゴムと、パーフロロエラストマー(FFKM)またはフロロシリコーンゴムとがブレンドされセグメント状態となっており、成形体表面のフッ素ゴム部分が優先的にラジカル分解してしまうためか、耐プラズマ性はあまり向上しないという問題点があった。 ・・・ [0010] ・・・ このため、フッ素ゴムよりも低コストで容易に製造でき、フッ素ゴム(FKM)よりも優れた耐プラズマ性などを有する、優れたシール材が求められている。」 (3) 「[0011] 本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、半導体製造プロセス等で高温下に長時間継続的に使用しても相手部材とのベタツキ・固着が発生し難くパーティクル発生の問題が生じないプラズマ処理装置用シール材が低コストで得られるような、加硫可能で反応性を有する硬化前のゴム組成物、及び該組成物を加硫成形してなるプラズマ処理装置用シール材を提供することを目的としている。」 (4) 「[0020] 以下、この未加硫ゴム組成物に含まれる各成分について初めに説明する。 <架橋性フッ素ゴム(a)> 架橋性フッ素ゴム(a)としては、本発明の目的に照らして各種半導体ドライプロセスで使用されるプラズマ(プラズマエッチング処理)に対する耐性を示すシール材が得られるようなゴム材が望ましく、ベースゴム材料(a)としては一般的に耐プラズマ性に優れた公知のフッ素ゴムが使用される。 [0021] 本発明では、上記架橋性フッ素ゴム(a)としては、 (イ)フッ化ビニリデン系の架橋性フッ素ゴム(FKM)単独で用いてもよく、また (ロ)上記架橋性FKMに加えて、架橋性パーフルオロフッ素ゴム(FFKM)を含んでいてもよい。 ・・・ [0022] このような架橋性フッ素ゴム(a)のうちで、上記架橋性のFKMとしては、商品名「バイトン」(デュポン社製)、「ダイエルG902、912」(ダイキン工業社製)、「ミラフロン」(旭化成社製)、「フローレル」(3M社製)、「テクノフロン」(ソルベイソレクシス社製)などの商品名で上市されているものを何れも使用可能である。 本発明においては、ベースゴム(a)として、より安価なFKMが単独で、またはFKMを主成分とし、FFKMなどを少量で配合したものが主に使用される。耐プラズマ性の観点からは、架橋性のFFKMを用いると最も優れたシール材を与えるがコスト高となる。これに対して本発明では、より安価で汎用性のあるFKMをベースに、その耐プラズマ性、粘着性を改善し、低コストで半導体シール材としての使用に十分に耐えうるシール用ゴム材料が得られている。 [0023] ・・・ <反応性フッ素系化合物(b)> 反応性フッ素系化合物(b)としては、2価パーフロロポリエーテル構造または2価パーフロロアルキレン構造を有し、末端あるいは側鎖に少なくとも有機珪素化合物(c)中のヒドロシリル基(≡Si-H)と付加反応可能なアルケニル基を2個以上有するものが用いられる。この2価パーフロロポリエーテル構造または2価パーフロロアルキレン構造は、硬化反応に寄与する。 ・・・ [0029] ・・・ <反応性有機珪素化合物(c)> 反応性有機珪素化合物(c)としては、分子中に2個以上のヒドロシリル基(≡Si-H)を有し、少なくとも前記反応性フッ素系化合物(b)中のアルケニル基と付加反応可能のものが用いられる。」 (5) 「[0047] ・・・ <充填材> 本発明では、充填材は可能な限り使用しないのが望ましいが、本発明の目的・効果を逸脱しない範囲で必要に応じて(例えば・物性の改善などを目的として)、有機、無機系の各種充填材を配合することもできる。 [0048] 無機充填材としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。」 (6) 「[0054] ・・・ 本発明では、成分(b)、(c)を含むものとして、この「SIFEL8070A/B」(信越化学社製)およびLIM成形用の「SIFEL3701A/B」などを挙げることができ、これらの流動性のある液状を呈する材料を用いることが必要である。成分(b)、(c)を液状の形で、上記ゴム成分(a)にブレンドしたゴム組成物を調製し、これを加硫成形によりゴム弾性体(シール材)に成形する。 [0055] 正確な理由は判らないが、これらを、流動性のよい液状物(オイル状物)の状態でフッ素ゴムに配合することで、(a)フッ素ゴムと優れたブレンド状態が実現されることにより、耐プラズマ性、非粘着性に特に優れたシール材が得られるものと推察している。 より具体的にいえば、通常のフッ素ゴム同士のブレンドでは両成分の分散が完全にはなされることはなく、ある種の相構造(海島構造)の形態をとることが多く、それゆえ、ゴム高分子中のプラズマに弱い部分から選択的に劣化が進むと考えられている。 [0056] これに対して、本発明に使用する液状を示す成分(b)(c)とフッ素ゴム(a)とのブレンドでは混?中によく行き渡りやすいため、成分(b)中の耐プラズマ性を示すパーフルオロポリエーテルまたはパーフルオロアルキレン部分により、フッ素ゴムの弱い領域がよく保護されている構造を形成しているためではないかと発明者は推察している。 なお、前記特許文献2に記載の発明も「SIFEL」(信越化学社製)製品を使用している点で本発明と共通するが、同文献中で使用されている「SIFEL」製品は金型成形用の材料(固形状のコンパウンドタイプ)である「SIFEL5701」とLIM成形用の材料である「SIFEL3701」であり、いずれもゴム弾性体成形用の材料として市販されているものであり、そのまま単独で用いてシール材を得ている点で本発明とは大きく相違するものである。 [0057] 特に、本発明で「(b)+(c)」用の成分として使用する「SIFEL8070A/B」は、本来、ゲル形成用の材料であり、(成分(a)等を配合せず、)この「SIFEL8070A/B」を単独で用いて本来の方法で成形してもゲル体にしかならない材料であるが、これを、本発明では、用いられる成分(a)、(d)等を含むゴム配合物に配合して加硫成形し、ゴム弾性体のシール材に成形した点において特徴的である。 [0058] ところで、半導体分野では、パーティクルの発生が半導体製造に悪影響を与えることが知られている。耐プラズマ性に加え、プラズマ劣化を受けたとしてもパーティクルの発生が少ないシール材が求められている。プラズマ劣化によるシール材からのパーティクル発生を低減するために、シール材からのパーティクル発生源と考えられている充填材を含まないシール材とするには、「SIFEL POTTING GEL(SIFEL8070A/B)」が最も望ましい。LIM成形用の材料(SIFEL3701A/B)の場合には、予め充填材が配合されているのに対し、SIFEL8070A/Bはゲル形成用材料であるため充填材が入っていないため、このような要求に応えることができる。また、充填材がはいっていないことからより流動性を有するので、ブレンドの分散性の観点からもより好ましい。」 (7) 「[0060] ・・・ [実施例] ・・・ [0062] ・・・ [実施例1] 架橋性フッ素ゴムとして「ダイエルG912」{パーオキサイド加硫可能な3元系含フッ素共重合体=ビニリデンフルオライド(CF2=CH2)/へキサフルオロプロピレン(CF3-CF=CF2)/テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、フッ素含量71質量%、ムニー粘度ML1+10(100℃)76、ダイキン工業(株)製。}に、 2価パーフロロポリエーテル構造または2価パーフロロアルキレン構造を有し、末端あるいは側鎖にヒドロシリル基と付加反応可能なアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素系化合物(b)、及び、分子中に2個以上のヒドロシリル基を有しアルケニル基と付加反応可能な反応性有機珪素化合物(c)、及び、(b)と(c)との付加反応用の白金族化合物触媒を含み、(b)と(c)との反応によりゲル化可能な成分である「SIFEL8070A/B」{信越化学工業(株)製}および、 架橋剤{「パーへキサ25B」、日本油脂社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)へキサン}、並びに共架橋剤{「TAIC」、日本化成社製、トリアリルイソシアヌレート}を添加(配合)し、 オープンロールを用いて60℃の温度で1.0時間混練し、ゴムコンパウンドを得た。 [0063] このゴムコンパウンドを金型に充填し、圧力50kgf/cm2をかけて、165℃の温度で15分間加熱し、架橋成形を行った(一次加硫成形)。 次いで、上記金型から一次加硫された成形体を取り出し、真空オーブン(真空度:30Pa)での減圧下に、200℃で12時間加熱した(二次加硫)。 得られた成形体について、表1に示す常態物性、圧縮永久歪(%)、固着試験(N)、耐プラズマ性(重量減少率(%)、条件3時間遮蔽)を上記試験条件下で測定した。 ・・・ [0064] その結果を表1に示す。 [実施例2~5] 実施例1において、配合組成等を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。 ・・・ [0069][表1] [図:0001394026000001.jpg] 」 2 甲2 (1) 「【請求項1】 反応可能基を少なくとも1個有し、主鎖がパーフルオロポリエーテル構造のパーフルオロポリエーテルポリマーと、これを架橋する架橋剤と、平均粒径が0.001~10μmであるシリカ充填材とを含む硬化性組成物の硬化物からなることを特徴とする航空機用ゴム部品。 【請求項2】 硬化性組成物が、 (A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物 (B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物 (C)ヒドロシリル化反応触媒 (D)シリカ充填材 を含有する硬化性フルオロポリエーテルゴム組成物である請求項1記載の航空機用ゴム部品。」 (2) 【0012】上記硬化性組成物としては、公知のものを使用し得るが、特に、 (A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物 (B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物 (C)ヒドロシリル化反応触媒 (D)シリカ充填材 を含有することを特徴とする硬化性フルオロポリエーテルゴム組成物であることが好ましい。」 (3) 「【0075】[実施例1]パーフルオロポリエーテル構造を有する液状フッ素ゴムSIFEL3701(信越化学製)のA剤62g及びB剤60gを混合し、減圧脱泡した。脱泡した材料を170×130×2mmの型枠に注入し、50トンプレス成形機を用い、150℃、80kgf/cm2、10分間の条件で圧縮成形し、170×130×2mmのシート状テストピースを成形した。このテストピースを200℃/4時間ポストキュアーし、試験用サンプルを作製した。 ・・・ 【0077】 ・・・ なお、上記実施例の液状フッ素ゴムSIFEL3701,4750,4755はいずれも(A)~(D)成分を含むものである。」 3 甲3 (1) 「【請求項1】 (A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物 100重量部 (B)表面をジメチルジクロロシランで疎水化処理された、比表面積が50~300m2/gで、かつ、嵩密度が30~80g/lであるシリカ系充填剤 10~50重量部 (C)分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物 (A)成分を硬化させる有効量 (D)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量 を含有してなることを特徴とする硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。 【請求項2】(A)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物が、下記一般式(1) 【化1】 [図:0001394026000002.jpg] [式中、Xは独立に-CH2-、-CH2O-又は-Y-NR-CO-(但し、Yは-CH2-又は下記構造式でで示されるo,m又はp位のジメチルフェニルシリレン基で表される基、 【化2】 [図:0001394026000003.jpg] Rは水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)であり、pは独立に0又は1、Lは2~6の整数、m及びnはそれぞれ0~200の整数である。] で表される化合物である請求項1記載の硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。 ・・・ 【請求項4】 LIM成形用である請求項1,2又は3記載の組成物。 ・・・ 【請求項6】 自動車用、化学プラント用、インクジェットプリンタ用、半導体製造ライン用、分析・理化学機器用、医療機器用、航空機用又は燃料電池用である請求項5記載のゴム製品。」 (2) 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、撥水性、撥油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性に優れ、かつ金属等への固着防止性に優れたOリング、ダイヤフラム、バルブ材料等に好適に利用される硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物に関するものである。【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 従来、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、そのパーフルオロアルキルエーテル構造の有する特性から種々の用途に用いられている。この場合、シリコーンゴム等の補強のために使用されるヒュームドシリカと呼ばれている乾式法シリカ、沈降性シリカと呼ばれている湿式法シリカ等のシリカ系充填剤を硬化性フルオロポリエーテル系ゴムに配合することにより、得られた硬化物の機械的特性を飛躍的に向上させ得ることがわかっている。これにより耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、撥水性、撥油性、耐候性等の性質がバランスよく優れたフルオロポリエーテル系ゴム組成物を得ることができ、ほとんどの用途においては、これで十分な性能を有している。 【0003】 しかし、このようなフルオロポリエーテル系ゴム組成物は、ほとんどの用途では性能的に十分であるものの、各種金属に圧着されて使用されるバルブ機構の構成部品としてシール部材及びダイヤフラムの成型用途では固着防止性に優れたものが要求されており、このため固着防止性の改善が課題となっている。例えば、バルブ機構の構成部品としてのシール性を向上させるシール部材及びダイヤフラムに硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物が使用されているが、通常ゴム材料は接触している金属等の部品と固着する性質を有し、種々の不具合を生じる。このため従来ゴム材料の固着性を低下させるため、マイカ、2硫化モリブデン等による表面処理を行っている。しかし、上記処理においては、基材のゴム材料との密着性が不十分でありまた接触部材への移行による汚染の可能性等の問題があった。 【0004】 本発明は上記事情に鑑みなされたもので、固着防止性に優れた硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を提供することを目的とする。 ・・・ 【0007】 ・・・ (A)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物 (A)成分の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有するもので、組成物のベースポリマーとして使用される。」 (3) 「【0021】 さらには、シリカ系充填剤の嵩密度が30~80g/lであることが好ましい。シリカ系充填剤の嵩密度が30g/l以下では、組成物の粘度が増大するために配合が困難となり好ましくなく、80g/l以上では十分な固着防止効果が付与されないので好ましくない。 【0022】 このシリカ系充填剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して10~40重量部であり、より好ましくは15~30重量部である。10重量部未満では少なすぎて機械的強度及び固着性防止性の向上が認められず、また40重量部より多くすると粘度の上昇が大きく、配合が難しい。」 (4) 「【0048】 【実施例】 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は重量部を示し、粘度は25℃の値である。 【0049】 [実施例1] 下記式(2)で示されるポリマー(粘度4.4Pa・s、平均分子量16,500、ビニル基量0.012モル/100g)100部に、シリカ系充填剤をジメチルジクロロシランで表面処理した処理シリカ(比表面積240m2/g、嵩密度48g/l)を25部の配合比でプラネタリーミキサーにて配合を行った後、1時間混練りを行った。混練り後170℃で2時間混合熱処理し、それぞれベースの製造をおこなった。 【0050】 【化21】 [図:0001394026000004.jpg] (但し、Rf1は、 【化22】 [図:0001394026000005.jpg] を示し、Meはメチル基である。) 【0051】 さらにこのベース125重量部に対して塩化白金酸を下記式(3)で示される化合物で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5重量%)0.2部、エチニルシクロヘキサノールの50%トルエン溶液を0.4部と下記式(4)で示されるSiH基を含有する有機ケイ素化合物3.35部を加え、均一に混合し、硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得た。 【0052】 【化23】 [図:0001394026000006.jpg] 」 4 甲4 (1) 「【0005】 即ち、特開平8-199070号公報(特許文献1)では、(A)下記一般式(1)で示される含フッ素アミド化合物、 【化1】 [図:0001394026000007.jpg] [但し、式中R1は置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は水素原子又は置換又は非置換の一価炭化水素基、Qは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で示される基であり、 【化2】 [図:0001394026000008.jpg] (但し、式中R3は結合途中に酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の1種又は2種以上を介在させてもよい置換又は非置換の二価炭化水素基を示す。) 【化3】 [図:0001394026000009.jpg] (但し、式中R4及びR5はそれぞれ置換又は非置換の二価炭化水素基を示す。)Rfは二価のパーフルオロアルキレン基又は二価のパーフルオロポリエーテル基であり、aは0以上の整数である。] 【0006】 (B)一分子中に1個以上の一価のパーフルオロオキシアルキル基、一価のパーフルオロアルキル基、二価のパーフルオロオキシアルキレン基又は二価のパーフルオロアルキレン基を有し、かつ2個以上のヒドロシリル基を有する含フッ素オルガノ水素シロキサン、 (C)触媒量の白金族化合物を含有する組成物であって、上記(B)成分の量は該組成物中の脂肪族不飽和基1モルに対し、ヒドロシリル基(Si-H基)が0.5~5モルとなる量であることを特徴とする硬化性組成物が開示されている。」 (2) 「【0024】 本発明の(a)成分のパーフルオロポリエーテル系含フッ素ゴム成形品は、前記した特許第2990646号公報(特開平8-199070号公報)、特開2000-007835号公報、特開2001-106893号公報、特開2003-201401号公報等により詳しく記載されている、架橋サイトがSi-CH=CH2であるパーフロロポリエーテル系含フッ素ゴム組成物を硬化成形したものであり、商品名SIFELシリーズ(信越化学工業(株)製)として一般的に入手可能なものである。」 5 甲5 (1) 「【0077】 【実施例】 ・・・ 【0078】 【化15】 [図:0001394026000010.jpg] 【0079】 【化16】 [図:0001394026000011.jpg] ・・・ 【0084】 【表1】 [図:0001394026000012.jpg] 」 6 甲6 (1) 「【請求項1】 成形原料を押出成形して押出成形品を得る工程を備え、 前記成形原料が、第一の液状材料と、第二の液状材料を動的架橋して得られる動的架橋物との混合物であり、 前記第一の液状材料及び前記第二の液状材料が、それぞれ、 1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有し、且つ、パーフルオロポリエーテル構造及びアミド構造を有する含フッ素アミド化合物と、 1分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有し、且つ、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルカンジイル基からなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素基を有する含フッ素ヒドロシランと、 ヒドロシリル化反応触媒と を含有する、押出成形品の製造方法。」 (2) 「【0053】 含フッ素アミド化合物の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。 【0054】 【化7】 [図:0001394026000013.jpg] 【0055】 上記式中、RA1、RA2及びRA3はそれぞれ独立に下記式(1-A-2)で表される基を示す。 【0056】 【化8】 [図:0001394026000014.jpg] 【0057】 式(1-A-2)中、p及びqはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。p+qは、例えば20以上であってよく、好ましくは40以上、より好ましくは70以上である。また、p+qは、例えば300以下であってよく、好ましくは200以下、より好ましくは150以下である。」 (3) 「【0111】 (使用材料の説明) 液状材料として、SIFEL3505(信越化学工業株式会社製)を使用した。SIFEL3505のA材とB材とを混合することによって、含フッ素アミド化合物、含フッ素ヒドロシラン及びヒドロシリル化反応触媒を含有する液状材料が調製される。なお、調製される液状材料の粘度は、300Pa・sであった。なお、実施例において、23℃における粘度は、JIS K 7117に準拠して、ブルックフィールド形回転粘度計により測定される見かけ粘度の値を示す。」 7 甲7 「 [図:0001394026000015.jpg] [図:0001394026000016.jpg] 」(1/6~2/6頁) 第5 当審の判断その1(申立理由1(進歩性)について) 1 甲1に記載された発明 甲1には、第4の1で摘記した事項が記載されているところ、摘記(7)の実施例4によれば、以下の発明が記載されていると認められる。 「「ダイエルG912」(ビニリデンフルオライド(CF2=CH2)/へキサフルオロプロピレン(CF3-CF=CF2)/テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)のパーオキサイド加硫可能な3元系含フッ素共重合体)100重量部に、「SIFEL3701A/B」を11重量部、過酸化物架橋剤(「パーへキサ25B」、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)へキサン)を1重量部、共架橋剤(「TAIC」、トリアリルイソシアヌレート)を4重量部添加して混練したゴムコンパウンド。」 (以下、「甲1発明」という。 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「ダイエルG912」は架橋性フッ素ゴムであるところ、これは、ビニリデンフルオライド(CF2=CH2)/へキサフルオロプロピレン(CF3-CF=CF2)/テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)の3元系含フッ素共重合体であるから(甲1摘記(4)[0022]、(7)[0062])、水素を含有する。 よって、甲1発明の「ダイエル912」は、本件発明1の「水素含有フッ素ゴム」に相当する。 そして、甲1発明のゴムコンパウンドは、「ダイエルG912」を100重量部、「SIFEL3701A/B」を11重量部、過酸化物架橋剤を1重量部、共架橋剤を4重量部含むところ、「SIFEL3701A/B」は流動性のある液状を呈する材料である(甲1摘記(6)[0054])からゴム成分ではなく、「架橋剤」及び「共架橋剤」もゴムではない。 すなわち、甲1発明のゴムコンパウンドは、ゴム成分として「ダイエルG912」のみを含むから、「ダイエルG912」は甲1発明のゴムコンパウンドにおけるベースゴムであるといえるし、当該ベースゴムは「ダイエルG912」のみを含むから、甲1発明のゴムコンパウンドのベースゴムは「ダイエルG912」を主成分とするといえる。 イ(ア)甲1発明のゴムコンパウンドに配合される「SIFEL3701A/B」は、「(b)2価パーフロロポリエーテル構造または2価パーフロロアルキレン構造を有し、末端あるいは側鎖に少なくとも有機珪素化合物(c)のヒドロシリル基と付加反応可能なアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素化合物」と「(c)分子中に2個以上のヒドロシリル基を有し少なくとも前記反応性フッ素化合物(b)中のアルケニル基と付加反応可能な反応性有機珪素化合物」を含むLIM成形用の材料であり、あらかじめ充填材が配合されているものである(甲1摘記(1)、(6)[0054]、[0058]、(7)表1)。 (イ)「SIFEL3701A/B」について、甲2は、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、(B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化反応触媒及び(D)シリカ充填材を含有する硬化性フルオロポリエーテルゴム組成物の硬化物からなることを特徴とする航空機用ゴム部品を開示するところ(甲2摘記(1))、甲2には、当該硬化性フルオロポリエーテルゴム組成物として、パーフルオロポリエーテル構造を有する液状フッ素ゴム「SIFEL3701」のA剤及びB剤が記載されている(甲2摘記(3)【0075】)。 これらの記載から、「SIFEL3701」のA剤及びB剤、すなわち「SIFEL3701A/B」は、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、(B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化反応触媒、(D)シリカ充填材を含むものと理解される。 (ウ)上記(ア)及び(イ)に照らせば、甲1発明の「SIFEL3701A/B」は、(i)2価パーフロロポリエーテル構造とアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素化合物、(ii)分子中に2個以上のヒドロシリル基を有する反応性有機珪素化合物、(iii)ヒドロシリル化反応触媒、(iv)シリカ充填材を含むものと理解されるところ、上記(i)2価パーフロロポリエーテル構造とアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素化合物は、本件発明1の「パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物」であって、「分子内にアルケニル基を含む」「B成分」に相当し、上記(iv)シリカ充填材は、本件発明1の「フィラー」に相当する。 ウ 上記アのとおり、甲1発明のゴムコンパウンドは、架橋性フッ素ゴムであるダイエルG912を主成分とするベースゴムを含むから、甲1発明のゴムコンパウンドは、「フッ素ゴム組成物」であるといえる。 エ 上記ア~ウに照らすと、本件発明1と甲1発明とは、 「水素含有フッ素ゴムを主成分として含むベースゴムのA成分と、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物のB成分と、フィラーとを含有し、B成分の一部又は全部が分子内にアルケニル基を含むフッ素ゴム組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> フィラーに関し、本件発明1では、「かさ密度が0.4g/cm3以下の粉体フィラー」であるのに対して、甲1発明では、「SIFEL3701A/B」はシリカ充填材を含むが、これのかさ密度は不明であり、粉体であるかも不明である点。 <相違点2> 本件発明1では、「B成分の密度をdB及びB成分のA成分100質量部に対する含有量をpB、並びにC成分のかさ密度をdC及びC成分のA成分100質量部に対する含有量をpCとするとき、(pC/dC)/(pB/dB)≧4」であるのに対して、甲1発明ではそうであるか不明である点。 (2)判断 ア 相違点1について (ア)甲1発明において、「SIFEL3701A/B」は成分(b)、(c)及び充填材を含み(甲1摘記(6)[0054]、(7)表1)、ここで、成分(b)及び成分(c)は「(b)2価パーフロロポリエーテル構造または2価パーフロロアルキレン構造を有し、末端あるいは側鎖に少なくとも有機珪素化合物(c)中のヒドロシリル基と付加反応可能なアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素系化合物」と、「(c)分子中に2個以上のヒドロシリル基を有し少なくとも前記反応性フッ素系化合物(b)中のアルケニル基と付加反応可能な反応性有機珪素化合物」であるところ(甲1摘記(1))、甲1のいずれの箇所にも、「SIFEL3701A/B」に含まれる充填材のかさ密度についての記載や示唆はない。 この点に関して、甲1には、充填材は可能な限り使用しないのが望ましいが、例えば物性の改善などを目的として各種充填材を配合することができること、及び、LIM成形用の「SIFEL3701A/B」は予め充填剤が配合されているのに対し、「SIFEL8070A/B」はゲル形成用材料であるため充填材が入っていないため、パーティクル発生低減の要求に応えることができ、ブレンドの分散性の観点からもより好ましいことが記載されている(甲1摘記(5)、(6)[0058])。 そうすると、甲1には、「SIFEL3701A/B」は、単に、上記(b)成分、(c)成分及び充填材を含有するものとして記載されているにとどまり、それに含まれる充填材のかさ密度について記載や示唆はなく、むしろ充填材が含まれていないことがより好ましいことすら記載されているのだから、甲1発明において、「SIFEL3701A/B」に含まれる充填材のかさ密度を調整し、0.4g/cm3以下とすることの動機付けがあったとはいえない。 したがって、相違点1に係る事項は、甲1発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。 (イ)甲3摘記(1)、(2)【0007】、(3)【0021】及び(4)には、(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物を100重量部と、(B)表面をジメチルジクロロシランで疎水化処理された、比表面積が50~300m2/gで、かつ、嵩密度が30~80g/lであるシリカ系充填剤を10~50重量部と、(C)分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物を(A)成分を硬化させる有効量と、(D)ヒドロシリル化反応触媒を触媒量含有する、(A)成分をベースポリマーとする硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物に関し、シリカ系充填剤の嵩密度が30g/l以下では、組成物の粘度が増大するために配合が困難となり、80g/l以上では十分な固着防止効果が付与されないことが記載されている。 さらに具体的には、実施例1として、上記(A)成分である式(2)で示されるポリマーを100重量部と、上記(B)成分である、嵩密度48g/lのシリカ系充填剤をジメチルジクロロシランで表面処理した処理シリカ25重量部とを混練り後、混合熱処理してベースの製造を行い、ベースに対して、触媒のトルエン溶液0.2重量部とエチニルシクロヘキサノールのトルエン溶液0.4重量部と、上記(C)成分である式(4)で示される化合物3.35重量部を加え、均一に混合し、硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得たことが記載されている(甲3摘記(4))。 上記甲3の記載から、上記(A)成分をベースポリマーとし、(B)成分を(A)成分100重量部に対して10~50重量部含む硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物においては、シリカ系充填剤の嵩密度が30g/l以下では、組成物の粘度が増大するために配合が困難となり、80g/l以上では十分な固着防止効果が付与されないこと、具体的に、嵩密度48g/lのシリカ系充填剤を使用できることは理解できる。 しかしながら、上記(1)アのとおり、甲1発明のゴムコンパウンドは、ビニリデンフルオライド/へキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレンの3元系含フッ素共重合体である「ダイエルG912」をベースポリマーとしており、「SIFEL3701A/B」が配合されるといっても、これは流動性のある液状を呈する材料であって(甲1摘記(6)[0054])ゴム成分ではないから、甲1発明のゴムコンパウンドは硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物ではなく、上記甲3の記載に基づいて、硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物におけるシリカ嵩密度に関し理解できる事項が、硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物ではない甲1発明のゴムコンパウンドにもそのまま当てはまるとする合理的な根拠はない。 そうすると、甲1発明の組成物が含有する「SIFEL3701A/B」がシリカ充填材を含むものであったとしても、当該シリカ充填材のかさ密度を、甲3で好ましいとされたシリカ系充填剤の嵩密度の範囲にすることが動機づけられたとはいえない。 よって、甲1発明に甲3の記載を合わせ考えても、上記相違点1に係る事項を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)甲2、甲4~7には、ゴム組成物における充填剤のかさ密度については何ら記載がないから、甲1発明にこれらの記載を合わせ考えても、上記相違点1に係る事項を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 イ 相違点2について 上記アのとおり、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~7の記載に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではないが、以下、念のため、相違点2について検討する。 本件明細書によれば、(pC/dC)/(pB/dB)≧4なる式は、C成分の体積がB成分の体積の4倍以上であることを意味する(【0026】)。 これに対して、甲1発明のゴムコンパウンドが含有する「SIFEL3701A/B」は、上記(1)イ(ウ)のとおり、(i)2価パーフロロポリエーテル構造とアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素化合物と(iv)シリカ充填材を含むものの、甲1には、これらの体積比については何ら記載がなく、ましてや、当該(iv)成分の体積を、当該(i)成分の体積の4倍以上とすることについてなど、記載も示唆もされていないから、甲1発明において、相違点2に係る事項を採用することは当業者にとって容易に想到し得た事項ではない。 さらに、甲2~7のいずれをみても、ゴム組成物における、(i)2価パーフロロポリエーテル構造とアルケニル基を2個以上有する反応性フッ素化合物と(iv)シリカ充填材との体積比についての記載などないから、甲1発明に甲2~7のいずれの記載を合わせ考えても、相違点2に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概略以下のとおり主張する。 a 相手部材との固着が発生し難いことを一つの課題とする甲1発明のゴムコンパウンドにおいて、LIM成形用であるSIFEL3701A/Bの代わりに、相手部材との固着防止のために、同様の成分を含み、同じLIM成形用である甲3の実施例1に記載された組成物(甲3組成物)を用いることは、当業者にとって容易である。 そして、甲1発明のゴムコンパウンドにおいて、SIFEL3701A/Bの代わりに甲3組成物を用いたもの(甲1-3A組成物)は、かさ密度が0.4g/cm3以下の粉体フィラーのC成分を含むことになる(申立書30頁7~31頁最終行)。 b 甲1発明のゴムコンパウンドのSIFEL3701A/Bに含まれるシリカ充填材のかさ密度は不明であるが、甲3には、シリカ系充填剤の嵩密度が30~80g/lが好ましいこと、30g/l以下では組成物の粘度が増大するために配合が困難となり好ましくなく、80g/l以上では、十分な固着防止効果が付与されないので好ましくないことが記載されているから、甲1発明のゴムコンパウンドにおいて、十分な固着防止効果を奏すること等を目的として、シリカ充填剤として嵩密度が30~80g/lのシリカ系充填剤を用いることは容易であり、甲1発明のゴムコンパウンドにおいて、SIFEL3701A/Bの充填剤として、嵩密度が30~80g/lのものを用いたもの(甲1-3B組成物)は、かさ密度が0.4g/cm3以下の粉体フィラーのC成分を含む(申立書32頁6~25行) c 甲3組成物における、パーフルオロポリエーテル、SiH基を含有する有機珪素化合物及びヒドロシリル化反応触媒を含む組成物は、甲4~6の記載からみて、「SIEFELシリーズ」と同様の組成物であるといえるところ、甲7によれば、「SIFEL3505A/B」の密度は1.86g/cm3であるため、甲3組成物における、パーフルオロポリエーテル、SiH基を含有する有機珪素化合物及びヒドロシリル化反応触媒を含む組成物の密度も、1.86g/cm3程度であると考えられ、これを踏まえると、甲1-3A組成物は(pC/dC)/(pB/dB)≧4」を満たす(申立書33頁4行~19行)。 d 甲7によれば、甲1組成物の「SIFEL3701A/B」に含まれる、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物の密度は、1.86~1.98g/cm3程度であると考えられるところ、甲3には、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物100質量部に対して、シリカ充填剤の配合量は10~40質量部であることが記載されているから、甲1-3B組成物において、シリカ充填剤の配合量をこのようにすることは当業者にとって容易であり、このとき、(pC/dC)/(pB/dB)≧4」となる(申立書35頁20行~37頁4行) と主張する。 (イ)申立人の主張についての検討 a 主張aについて 確かに、甲1摘記(2)及び(3)、甲3摘記(2)及び(3)によれば、甲1及び甲3は、いずれも相手部材との固着を回避すべき問題点として記載しているし、甲1摘記(6)及び甲3摘記(1)によれば、甲1発明のゴムコンパウンドにおける「SIFEL3701A/B」も、甲3組成物も、LIM成形用であると記載されている。 しかしながら、甲1発明のゴムコンパウンドの「SIFEL3701A/B」は、上記(1)アのとおり流動性のある液状を呈する材料であるのに対して、甲3組成物は、式(2)で示される粘度4.4Pa・sのポリマー100重量部と、処理シリカ25重量部を配合し、混練り、熱処理して製造したベース125重量部に対して、触媒のトルエン溶液0.2重量部、式(4)で示されるSiH基を有する有機ケイ素化合物3.35重量部を加えて混合して得られた硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物であり(甲3摘記(4))、流動性のある液状を呈する材料であると解することはできない。 加えて、甲1は、「SIFEL3701A/B」を、成分(b)、(c)を含むものとして記載した上で、成分(b)、(c)を流動性のよい液状物(オイル状物)の状態でフッ素ゴムに配合することで、優れたブレンド状態が実現されることにより、耐プラズマ性、非粘着性に特に優れたシール材が得られるものと推察されると記載する(甲1摘記(6)[0054]、[0055])。 そうすると、甲1発明のゴムコンパウンドにおいて、流動性のある液状を呈する「SIFEL3701A/B」に代えて、流動性のある液状を呈する材料であると解することのできない甲3組成物を使用することは何ら動機づけられないし、上記甲1の、成分(b)、(c)を流動性のよい液状物(オイル状物)の状態でフッ素ゴムに配合することで、優れたブレンド状態が実現されることにより、耐プラズマ性、非粘着性に特に優れたシール材が得られるものと推察されるとの記載に照らせば、むしろ、阻害要因があるともいえる。 そして、このことは、甲1及び甲3が、いずれも相手部材との固着を回避すべき問題点として記載し、甲1発明のゴムコンパウンドに含有される「SIFEL3701A/B」と甲3組成物がいずれもLIM成形用であることに何ら左右されない。 よって、上記主張aは、採用できない。 b 主張bについて 確かに、甲3には、シリカ系充填剤の嵩密度が30~80g/lが好ましいこと、30g/l以下では組成物の粘度が増大するために配合が困難となり好ましくなく、80g/l以上では、十分な固着防止効果が付与されないので好ましくないことが記載されているものの、そのような嵩密度についての記載が、甲1発明のゴムコンパウドにそのまま当てまめるとする合理的な根拠がないことは、上記ア(イ)のとおりである。 よって、主張bは、採用できない。 c 主張c及びdについて 主張cは、甲1発明の組成物において、SIFEL3505A/Bに代えて甲3組成物を用いることは容易であるという前提にたち、主張dは、甲1発明の組成物において、「SIFEL3701A/B」におけるシリカ充填材の嵩密度を、甲3の記載に基づいて30~80g/lとすることが容易であるという前提にたつが、これらの前提が誤っていることは上記a及びbのとおりである。 よって、主張c及びdは前提において誤りがあり、採用できない。 3 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものである。そして、上記2のとおり、本件発明1が、甲1発明及び甲2~7の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件発明2~9も、甲1発明及び甲2~7の記載に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 小括 よって、申立理由1は、理由がない。 第6 当審の判断その2(申立理由2(サポート要件)について) 1 判断基準 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 2 本件発明について (1)本件明細書の記載 ア 本件明細書には,以下の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 半導体製造装置用のシール材として、フッ素ゴム組成物で形成されたものが広く用いられている。特許文献1には、その耐プラズマ性を高めることを目的として、シール材を形成するフッ素ゴム組成物に、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物を含有させることが開示されている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところが、シール材を形成するフッ素ゴム組成物にパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物を含有させた場合、それがシール材からブリードアウトするという問題がある。 【0005】 本発明の課題は、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物がブリードアウトするのを抑制することである。 ・・・ 【0017】 B成分の密度dBは、後述するように実施形態に係るフッ素ゴム組成物を用いて形成されるゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制する観点から、好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは1.8g/cm3以上であり、同様の観点から、好ましくは2.5g/cm3以下、より好ましくは2.0g/cm3以下である。B成分が複数種の化合物を含む場合、B成分の密度dBは、それぞれの密度と含有分率との積の総和である。分子内にアルケニル基を含むB成分の密度dBは、JIS Z8837:2018に規定されるガスピクノメータ法により測定されるものである。分子内にアルケニル基を含まないB成分の密度dBは、JIS K0061:2001に規定される振動式密度計法により温度20℃で測定されるものである。 【0018】 B成分のA成分100質量部に対する含有量pBは、ゴム成形品の高い耐プラズマ性を得る観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制する観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。B成分が複数種の化合物を含む場合、B成分の含有量pBは、それぞれの含有量の総和である。 【0019】 B成分における分子内にアルケニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物の市販材料としては、例えば、信越化学工業社製のSIFELが挙げられ、特にSIFEL3000シリーズが好ましい。分子内にアルケニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物は、一液型材料であることが好ましい。 【0020】 B成分における分子内にアルケニル基を含まないパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物の市販材料としては、例えば、SOLVAY社製のフォンブリンY潤滑剤やケマーズ社のクライトックスのGPLオイル等が挙げられる。 【0021】 C成分は、A成分に分散したかさ密度dCが0.4g/cm3以下の粉体フィラーである。C成分の粉体フィラーとしては、例えば、シリカ、樹脂粉体、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。C成分は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、シリカ及び/又は樹脂粉体を含むことがより好ましい。シリカは、乾式シリカであっても、湿式シリカであっても、どちらでもよい。シリカは、表面未処理の親水性シリカであっても、ジメチルジクロロシラン等で表面修飾処理された疎水性シリカであっても、どちらでもよい。樹脂粉体としては、例えば、フェノール樹脂粉体、フッ素樹脂粉体、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂粉体等が挙げられる。 【0022】 C成分の粉体フィラーのかさ密度dCは、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制する観点から、好ましくは0.01g/cm3以上、より好ましくは0.03g/cm3以上であり、同様の観点から、好ましくは0.35g/cm3以下、より好ましくは0.20g/cm3以下である。C成分が複数種の粉体フィラーを含む場合、C成分のかさ密度dCは、それぞれのかさ密度と含有分率との積の総和である。C成分のかさ密度dCは、JIS R1628-1997に規定されるタップかさ密度の測定方法に準じて測定されるものである。 【0023】 C成分のA成分100質量部に対する含有量pCは、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制する観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、ゴム成形品から粉体フィラーが析出するのを抑制する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。C成分が複数種の粉体フィラーを含む場合、C成分の含有量pCは、それぞれの含有量の総和である。 【0024】 C成分の含有量pCは、ゴム成形品から粉体フィラーが析出するのを抑制する観点から、B成分の含有量pBよりも多いことが好ましい。C成分の含有量pCのB成分の含有量pBに対する比(pC/pB)は、同様の観点から、好ましくは0.1以上30以下、より好ましくは1.0以上20以下である。 【0025】 C成分の市販材料としては、シリカでは、例えばエボニック社製のアエロジルシリーズやカープレックスシリーズ等が挙げられる。フェノール樹脂粉体では、例えばエア・ウォーター・ベルパール社製のベルパールシリーズ等が挙げられる。フッ素樹脂粉体では、例えばアルケマ社製のカイナーシリーズ等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂粉体では、例えばダイセル・エボニック社製のVESTAKEEPシリーズ等が挙げられる。 【0026】 実施形態に係るフッ素ゴム組成物では、(pC/dC)/(pB/dB)≧4である。これは、C成分の体積がB成分の体積の4倍以上あることを意味する。ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制する観点からは、好ましくは(pC/dC)/(pB/dB)≧10、より好ましくは(pC/dC)/(pB/dB)≧50である。 ・・・ 【0033】 実施形態に係るフッ素ゴム組成物が架橋して形成されるゴム成形品では、B成分のパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物が用いられているので、優れた耐プラズマ性を保持させることができ、具体的にはプラズマが照射されても質量減少を少なくすることができる。それとともに、B成分がブリードアウトするのを抑制することができる。これは、C成分の粉体フィラーが用いられており、且つそのC成分の体積がB成分の体積よりも非常に大きいので、B成分がC成分に担持されてA成分内に保持されるためであると推測される。しかも、C成分の粉体フィラーのかさ密度が0.4g/cm3以下と小さいことにより、プラズマが照射されても、C成分の粉体フィラーのパーティクルが析出するのを抑制することができる。 【0034】 また、実施形態に係るフッ素ゴム組成物が架橋して形成されるゴム成形品では、その成形加工時において、フッ素ゴム組成物がC成分の粉体フィラーを含有するので、その粘度が高められており、そのためB成分のパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物の流動が容易となり、その結果、B成分が表層に偏析することとなって、成形品表面の方が成形品内部よりもCF結合濃度が高くなる。これにより、成形品表面では、プラズマによる攻撃を受けて劣化の起点となるCH結合が少なくなり、それによって耐プラズマ性を高めることができる。定量的には、X線光電子分光法により、X線を照射したときに計測されるC1sピークにおけるCH結合に由来する282~288eVのピーク面積をACH及びCF結合に由来する288~296eVのピーク面積をACFとするとき、(成形品表面にX線を照射したときのACF/ACH)/(成形品断面にX線を照射したときのACF/ACH)≧2であることが好ましい。この比は、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制する観点から、好ましくは2.5以上である。 ・・・ 【0038】 ・・・ 【実施例】 【0039】 (シール材) 以下の実施例1乃至13及び比較例1乃至7のシール材を作製した。それぞれの構成は表1及び2にも示す。なお、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物の密度は、分子内にアルケニル基を含む場合には、JIS Z8837:2018に規定されるガスピクノメータ法により測定し、分子内にアルケニル基を含まない場合には、JIS K0061:2001に規定される振動式密度計法により温度20℃で測定した。粉体フィラーのかさ密度は、JIS R1628-1997に規定されるタップかさ密度の測定方法に準じて測定した。 【0040】 <実施例1> ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体からなる水素含有フッ素ゴム(ダイエルG912 ダイキン工業社製)をA成分とし、このA成分100質量部に対して、B成分の一液型の液状材料である分子内にビニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物1(SIFEL3000シリーズ X-71-359 信越化学工業社製、密度dB:1.85g/cm3)1質量部(pB)、C成分の粉体フィラーである表面未処理の親水性の乾式シリカ1(アエロジル200 エボニック社製、かさ密度dC:0.05g/cm3)10質量部(pC)、架橋剤の有機過酸化物である2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B 日本油脂社製)1.5質量部、及び架橋助剤のトリアリルイソシアヌレート(タイク 日本化成社製)4質量部を配合してオープンロールで混練することによりフッ素ゴム組成物を調製した。そして、このフッ素ゴム組成物を用いて架橋させることによりシール材(AS-214 Oリング)を作製した。フッ素ゴム組成物の架橋は、160℃で10分間のプレス成形により一次架橋と、200℃に温度設定したギアオーブン中に4時間保持する二次架橋とにより行った。得られたシール材を実施例1とした。 【0041】 <実施例2> C成分の粉体フィラーとして、ジメチルジクロロシランで表面処理された疎水性の乾式シリカ2(アエロジルR972 エボニック社製、かさ密度dC:0.05g/cm3)を、A成分100質量部に対して0.2質量部(pC)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例2とした。 【0042】 <実施例3> C成分の粉体フィラーとして、実施例2で用いた乾式シリカ2を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例3とした。 【0043】 <実施例4> C成分の粉体フィラーとして、湿式シリカ(カープレックス#80 エボニック社製、かさ密度dC:0.15g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例4とした。 【0044】 <実施例5> B成分として、液体材料である分子内にアルケニル基を含まないパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物1(フォンブリンY潤滑剤 SOLVAY社製、密度:1.91g/cm3)を、A成分100質量部に対して1質量部を更に配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例3と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例5とした。なお、B成分の密度dBは1.88g/cm3である。 【0045】 <実施例6> B成分の一液型の液状材料である分子内にビニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物1を、A成分100質量部に対して5質量部配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例3と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例6とした。 【0046】 <実施例7> B成分として、分子内にアルケニル基を含まないパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物2(クライトックス GPLオイル107 ケマーズ社製、密度:1.90g/cm3)を、A成分100質量部に対して1質量部を更に配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例3と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例7とした。なお、B成分の密度dBは1.88g/cm3である。 【0047】 <実施例8> B成分の液体材料である分子内にアルケニル基を含まないパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物1を、A成分100質量部に対して5質量部配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例5と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例8とした。なお、B成分の密度dBは1.90g/cm3である。 【0048】 <実施例9> B成分の一液型の液状材料である分子内にビニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物2(dB:1.90g/cm3)と、C成分のシリカ(dC:0.05g/cm3)とが、B成分:C成分=89:11の質量比で混合された混合材料(SIFEL3000シリーズ X-71-369-N 信越化学工業社製)を、A成分100質量部に対して1質量部配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例9とした。 【0049】 <実施例10> C成分の粉体フィラーとして、フェノール樹脂粉体1(ベルパールR100 エア・ウォーター・ベルパール社製、かさ密度dC:0.35g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例10とした。 【0050】 <実施例11> C成分の粉体フィラーとして、フェノール樹脂粉体2(ベルパールR200 エア・ウォーター・ベルパール社製、かさ密度dC:0.38g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例11とした。 【0051】 <実施例12> C成分の粉体フィラーとして、フッ素樹脂(PVDF)粉体(カイナーMG15 アルケマ社製、かさ密度dC:0.32g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例12とした。 【0052】 <実施例13> C成分の粉体フィラーとして、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂粉体(VESTAKEEP 2000UFP10 ダイセル・エボニック社製、かさ密度dC:0.25g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を実施例13とした。 【0053】 <比較例1> B成分及びC成分を配合しないフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例1とした。 【0054】 <比較例2> C成分を配合しないフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例2とした。 【0055】 <比較例3> B成分のうちの一液型の液状材料である分子内にビニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物1を配合しないフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例5と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例3とした。 【0056】 <比較例4> C成分の代わりに、粉体フィラーとして、フェノール樹脂粉体3(ベルパールR800 エア・ウォーター・ベルパール社製、かさ密度dC:0.60g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例4とした。 【0057】 <比較例5> C成分の代わりに、粉体フィラーとして、フッ素樹脂(PTFE)粉体(ルブロンL-5 ダイキン工業社製、かさ密度dC:0.61g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例5とした。 【0058】 <比較例6> C成分の代わりに、粉体フィラーとして、MTカーボンブラック(Thermax N990 Cancarb社製、かさ密度dC:0.66g/cm3)を配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例1と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例6とした。 【0059】 <比較例7> B成分として、実施例5で用いた液体材料である分子内にアルケニル基を含まないパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物1を、A成分100質量部に対して1質量部を更に配合してフッ素ゴム組成物を調製したことを除いて、実施例2と同様にしてシール材を作製した。得られたシール材を比較例7とした。なお、B成分の密度dBは1.88g/cm3である。 【0060】 【表1】 [図:0001394026000017.jpg] 【0061】 【表2】 [図:0001394026000018.jpg] 【0062】 (試験方法) <耐プラズマ性> 実施例1乃至13及び比較例1乃至7のそれぞれについて、小型プラズマエッチング装置(神港精機社製)に入れ、30分間、O2プラズマを照射して暴露し、その前後の質量減少率を求めた。この質量減少率が0.7%未満の場合を評価A、及び0.7%以上の場合を評価Bとした。また、O2プラズマ暴露後のシール材の表面について、目視によりパーティクルの析出の有無を確認した。なお、O2プラズマの照射では、1500Wの高周波電源を用いた。反応ガスには、O2及びCF4を用い、それらの流量比を50:1とした。圧力は100Paとした。 【0063】 <B成分のブリードアウトの有無> 実施例1乃至13及び比較例2乃至7のそれぞれについて、黒色のアクリル板に押し付け、B成分によるシール材の転写痕の認められない場合を評価A、及びB成分によるシール材の転写痕が認められた場合を評価Bとした。 ・・・ 【0069】 (試験結果) 試験結果を表1及び2に示す。表1及び2によれば、実施例1乃至13では、質量減少率が少ないという優れた耐プラズマ性及びB成分のブリードアウトの抑制が両立されているのに対し、比較例1乃至7では、それらのうちの一方が劣ることが分かる。」 (2)本件発明のサポート要件についての検討 ア 本件明細書の【0005】によれば、本件発明の課題は、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物がブリードアウトするのを抑制することである。 イ 本件明細書の記載によれば、本件発明の組成物が架橋して形成されるゴム成形品では、B成分として、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物が用いられているので、優れた耐プラズマ性を保持させることができること(【0033】)、(pC/dC)/(pB/dB)≧4は、C成分の体積がB成分の体積の4倍以上あることを意味するところ(【0026】)、本件発明の組成物が架橋して形成されるゴム成形品は、粉体フィラーであるC成分を含有し、C成分の体積がB成分の体積の4倍以上であるので、B成分がC成分に担持されてA成分内に保持され、B成分がブリードアウトするのを抑制することができること(【0033】)、C成分の粉体フィラーのかさ密度が0.4g/cm3以下と小さいことにより、プラズマが照射されても、C成分の粉体フィラーのパーティクルが析出するのを抑制することができること(【0033】)、C成分の粉体フィラーを含有するので、フッ素ゴム組成物の成形時に、B成分の流動が容易となり、B成分が表層に偏析して、成形品表面の方が成形品内部よりもCF結合濃度が高くなるため、耐プラズマ性を高めることができること(【0034】)が理解できる。 すなわち、本件明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、B成分としてパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物を用い、C成分としてかさ密度が0.4g/cm3以下の粉体フィラーを用いることにより、耐プラズマ性に優れること、(pC/dC)/(pB/dB)≧4であることにより、成形品からB成分がブリードアウトするのを抑制することができることを理解する。 ウ 本件明細書の実施例をみると、実施例1~13の、所定のA成分、B成分及びC成分を含有し、(pC/dC)/(pB/dB)≧4であるフッ素ゴム組成物は、耐プラズマ性に優れ、B成分のブリードアウトも見られなかったが、B成分及びC成分をいずれも含まない比較例1、C成分を含まない比較例2、所定のB成分ではない(B成分がアルケニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物を含まない)比較例3、C成分が所定のものではない(C成分のかさ密度が0.4g/cm3以下ではない)比較例4~6、(pC/dC)/(pB/dB)≧4を満たさない比較例7は、耐プラズマ性及びブリードアウトの有無のいずれかまたは両方が劣ることがみてとれる。 このような結果は、上記イの理解を具体的に裏付けるものである。 エ 上記イ及びウに照らせば、本件明細書の記載に接した当業者は、本件明細書の記載に基づき、本件発明は、上記アの課題を解決するものであると理解する。 (3)申立理由2について 申立理由2は、第3の2のとおり、請求項1~9では、フッ素ゴム組成物中の粉体フィラーC成分の含有量は規定されていないが、水素含有フッ素ゴム100質量部に対し、10質量部を超えた場合であっても、本件明細書の実施例と同様に本件発明の課題を解決できるとはいえないから、請求項1~9は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているというものである。 詳述すれば申立人の主張は、本件明細書の【0023】には、C成分の含有量について、「ゴム成形品から粉体フィラーが析出するのを抑制する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下」と記載されていることに基づき、C成分の含有量が多すぎれば、C成分がゴム成形品から析出するのを当業者であれば当然に理解でき、課題が解決できるとはいえないところ、本件明細書で課題を解決できた組成物として実施例に記載されているフッ素ゴム組成物もC成分の含有量は、水素含有フッ素ゴム100質量部に対し最大でも10質量部であるから、C成分の含有量がこれを超えた場合であっても、実施例と同様に課題を解決できるとはいえないと考えられるというものである(申立書41頁11行~42頁3行)。 申立理由2について検討する。 本件明細書の記載に接した当業者は、本件明細書の記載に基づき、ゴム成形品に優れた耐プラズマ性を保持させるとともに、ゴム成形品からパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物がブリードアウトするのを抑制するという課題を解決するものと理解できることは上記(2)のとおりであり、C成分が多すぎると当該課題が全く解決できないとすべき格別の理由はない。 確かに本件明細書の申立人の指摘箇所には申立人が指摘する記載があるが、当該記載はC成分の好ましい含有量を説明したものと解されるのであって、当該記載をもって、C成分の含有量が多すぎればC成分がゴム成形品から析出するなどと直ちに理解することはできない。また、実施例において、フッ素ゴム組成物におけるC成分の含有量が、水素含有フッ素ゴム100質量部に対し最大でも10質量部であったとしても、その含有量が10質量部を超えればC成分が析出すると解すべき理由もない。 よって、申立人の主張は採用できない。 3 小括 よって、申立理由2は、理由がない。 第7 当審の判断その3(申立理由3(明確性)について) 1 判断基準 特許法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 2 当審の判断 (1)本件発明1~9の記載は第2のとおりであるが、上記1の判断基準に照らして、特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (2)申立理由3は、第3の3のとおり、 「(1)請求項1~9は、B成分がパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物のみからなるのか、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物以外の成分を含むのか明確でないため、明確でない。 (2)請求項1~9における、A成分とはどのような成分なのか、特に、水素含有フッ素ゴムをどの程度含む成分であるのか明確ではなく、A成分がどのような成分なのかによってフッ素ゴム組成物やゴム成形品の物性が変化すると考えられるため、請求項1~9の記載は明確でない。」 というものである。 申立理由3(1)及び(2)について、それぞれ検討する。 上記(1)について、請求項1において、「B成分」は「パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物のB成分」と記載されており、「B成分」は「パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物」であることは明らかであって、「B成分」が、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物以外の成分を含むなどと理解することはできないから、当該記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 ここで、申立人は、本件明細書には、B成分について、「信越化学工業社製のSIEFELが挙げられ、特にSIEFEL3000シリーズが好ましい。」と記載されているところ、SIFEL3000シリーズには、パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物以外の化合物も含む組成物があることを指摘する(申立書39頁18行~40頁4行)。 確かに、本件明細書には、「B成分における分子内にアルケニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物の市販材料としては、例えば、信越化学工業社製のSIEFELが挙げられ、特にSIEFEL3000シリーズが好ましい。」(【0019】)と記載されているが、当該記載は、B成分のうち、分子内にアルケニル基を含むパーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物を提供しうる市販材料について説明したものであり、当該記載によって、請求項1の、「パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物」であるB成分が、「パーフルオロポリエーテル骨格を有する化合物」以外の化合物を含み得るなどと理解することはできないから、当該記載によって、請求項1が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確になるとはいえない。 上記(2)について、請求項1には、「水素含有フッ素ゴムを主成分として含むベースゴムのA成分」と記載されており、当該記載から、A成分は、フッ素ゴム組成物におけるベースゴムであって、水素含有フッ素ゴムを主成分とするものであると理解することができる。 上記水素含有フッ素ゴムを主成分とすることに関して、請求項1は水素含有フッ素ゴムの含有量を特定していないが、発明の詳細な説明には、「A成分は、ベースゴムである。このベースゴムのA成分は、水素含有フッ素ゴムを主成分として含む。・・・A成分における水素含有フッ素ゴムの含有量は50質量%よりも多く・・・なお、A成分は、水素含有フッ素ゴム以外のフッ素ゴム等を含んでいてもよい」と記載されている(【0013】)。 そうすると、請求項1の「水素含有フッ素ゴムを主成分として含むベースゴムのA成分」なる記載は、「A成分」が、水素含有フッ素ゴムを50質量%よりも多く含むベースゴムであることを意味することは明らかであり、当該記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 申立人は、A成分が水素フッ素ゴムを50.1質量%含む場合と、水素含有フッ素ゴムを100質量%含む場合とでは得られる成形体が大きく異なると考えられることを指摘するが(申立書40頁20~41頁10行)、発明が明確であるか否かは上記1の判断基準によるべきであって、A成分が水素フッ素ゴムを50.1質量%含む場合と、水素含有フッ素ゴムを100質量%含む場合とでは得られる成形体が大きく異なったとしても、それにより、請求項1の記載が第三者の不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということにはならない。 3 小括 よって、申立理由3は、理由がない。 第8 まとめ したがって、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700964

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