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特許異議申立

2022-700945

熱伝達抑制シートの製造方法及び組電池の製造方法

審判番号
2022-700945
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-201935
登録番号
7044939
請求日
2022年09月28日
審決日
2024年01月15日
公報発行日
2024年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】イビデン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
  • 【異議申立人】古谷 多賀志
  • 【異議申立人代理人】神谷 惠理子
審判長/審判官
  • 審判長 猪瀬 隆広
  • 審判官 衣鳩 文彦
  • 審判官 土居 仁士
分類
P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.536-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第2条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7044939号発明「熱伝達抑制シートの製造方法及び組電池の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7044939号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 特許第7044939号の請求項1~8及び19に係る特許を維持する。 同請求項9~18に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯及び証拠方法 1 手続の経緯 特許第7044939号の請求項1~19に係る特許についての出願は、令和2年7月10日を出願日とする特願2020-119429号の一部を新たな特許出願として令和3年12月13日に出願したものであって、令和4年3月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月30日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 9月28日 :特許異議申立人 古谷 多賀志(以下「申立 人」という。)による請求項1~19に係る 特許に対する特許異議の申立て 令和5年 1月30日付け:取消理由通知書 4月 4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 5月26日 :申立人による意見書の提出 8月 2日付け:取消理由通知書(決定の予告) 10月 6日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 なお、特許法120条の5第7項の規定により、令和5年4月4日にされた訂正の請求は、取下げられたものとみなされる。 また、令和5年10月6日の訂正の請求に係る訂正については、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したことにより、特許法120条の5第5項ただし書に規定された「特別の事情があるとき」に該当するといえることから、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 2 証拠方法 (1)申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2020/023357号及び訳文として特表2021-531631号公報 甲第2号証:特開2013-234410号公報 甲第3号証:国際公開第2019/187313号 甲第4号証:「耐熱・断熱製品の湿式脱水成形技術(前編)~分散と凝集の基礎~」ニチアス技術時報 No.395 2021年4号、p.14-17 甲第5号証:特開2010-106381号公報 甲第6号証の1:きもの用語大全、「捲縮ステープルとは」(webページ) http://www.so-bien.com/kimono/%E7%94%A8%E8%AA%9E/%E6%8D%B2%E7%B8%AE%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AB.html#more 甲第6号証の2:繊維の種類と加工が一番わかる、初版 第3刷、p.48-49 甲第6号証の3:「押込み加工」繊維学会誌 54巻5号、p.160-165 甲第7号証:機能性粘土素材の最新動向、普及版、p.16、p.20-24 甲第8号証:シラスバルーン(マールライトR)(webページ)、http://www.marunakahakudo.co.jp/balloon/index.html(なお、上付きの「R」は、丸囲みの「R」を表記したものである。) 甲第9号証:高機能添加剤カタログ、p.9 甲第10号証の1:新・繊維総合辞典、初版、p.149‐150、p.227 甲第10号証の2:「人造鉱物繊維の概要」ニチアス技術時報 No.382 2018年3号、p.12-17 甲第10号証の3:やさしい産業用繊維の基礎知識、初版、p.143、p.210 甲第10号証の4:使用原材料 技術開発 無機繊維(webページ)、https://www.awapaper.co.jp/technology/material/ 甲第11号証の1:粉体工学ハンドブック、初版、p.663 甲第11号証の2:高純度シリカの製造と応用、普及版、p.265 甲第11号証の3:「ナノマテリアル情報提供シート」、非晶質コロイダルシリカ、日産化学株式会社(webページ)、https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/files/nanomaterial/SiO3_2018.pdf 甲第11号証の4:日本アエロジル株式会社の製品案内カタログ、第10版 甲第11号証の5:Silica Aerogel Composites、p.18、p.44、p.99及び部分訳 甲第12号証の1:粉体工学用語辞典、第2版、p.375-377 甲第12号証の2:粉体工学ハンドブック、初版、p.7-8、p.31-33、p.39、p.70 甲第12号証の3:ナノ粒子のはなし、初版、p.90 甲第12号証の4:きちんと知りたい粒子分散液の作り方・使い方、初版、p.7-8、p.12-13 以下、「甲第1号証」~「甲第12号証の4」を、「甲1」~「甲12の4」ということがある。 なお、甲第12号証の2について、申立書の「6 証拠方法」には、「甲第12号証の2:粉体工学ハンドブック、初版、p.7‐8、p.26‐27、p.31‐33、p.39、p.70、写し」と記載(65頁)されているが、粉体工学ハンドブック、初版の26~27頁は、申立書には添付されておらず、また、「4 申立ての理由」中の「イ.引用証拠の説明」の「(シ-2)」(42~43頁)、及び証拠説明書においても記載がなされていないことから、粉体工学ハンドブック、初版の26~27頁に記載される事項は証拠として採用していない。 (2)特許権者が令和5年4月4日に提出した意見書に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 乙第1号証:「エアロゾル研究 繊維状粒子の環境測定(Measurements of Airborne Fibrous Particles)」、Vol.6、No.1(1991)、p.17-24 乙第2号証:特開2012-7247号公報 乙第3号証:「耐熱・断熱製品の湿式脱水成形技術(後編)~分散凝集技術の製品への応用~」ニチアス技術時報 2022 No.1 乙第4号証:「無機粉体高含有紙の製造方法」、紙パ技協誌 第43巻第1号、1989年1月 乙第5号証:「キャビテーション噴流を用いた微粒子炭酸カルシウムとパルプの複合体の開発」、紙パ技協誌 第73巻第11号、2019年11月 乙第6号証:特開2010-156065号公報 乙第7号証:特開平11-35381号公報 乙第8号証:「粘土科学」、第9巻 第1・2号、p.10-18、1969 乙第9号証:「粘土科学」、第32巻 第3号 p.184-189、1992 乙第10号証:「繊維と工業」、Vol.52 No.3、p.119-123、1996 (3)申立人が令和5年5月26日に提出した意見書に添付した参考資料は、以下のとおりである。 参考資料1の1:セラミックス辞典、第2版、p.202、p.571 参考資料1の2:英和 プラスチック工業辞典、5版第2刷、p.83 参考資料2の1:化学大辞典 2、縮刷版第24刷、p.841 参考資料2の2:セラミックス辞典、第2版、p.163-164 参考資料3:特開2013-71848号公報 参考資料4:「繊維状粒子の環境測定」エアロゾル研究 Vol.6 No.1、p.17-24 参考資料5:特開平11-35381号公報 参考資料6:「セピオライトの外形態」、粘土科学 第32巻第3号、p.184-189 参考資料7:国際公開第2020/129274号 参考資料8:使用原材料 技術開発 無機繊維(webページ) https://www.awapaper.co.jp/technology/material/ なお、前記甲号証、乙号証、及び参考資料の表記は、概ね、申立書、特許権者が令和5年4月4日に提出した意見書、及び申立人が令和5年5月26日に提出した意見書における、証拠方法の表記に従った。 また、参考資料4、参考資料5、参考資料6は、それぞれ、乙第1号証、乙第7号証、乙第9号証と同じである。 (4)更に、特許権者は、令和5年10月6日に提出した訂正請求書において、前記乙第1号証を証拠方法として添付している。 以下、令和5年8月2日付け取消理由通知書(決定の予告)を「決定の予告」といい、令和5年10月6日の訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。また、「意見書」は、令和5年5月26日に申立人が提出した意見書をいう。 第2 訂正の適否についての判断 1 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む材料を、乾式成形法又は湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの製造方法であって、」と記載されているのを、「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む材料を、乾式成形法により型成形して製造し、又は無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの製造方法であって、」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、5~8及び19も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、」と記載されているのを、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、5~8及び19も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に「前記材料が、更に、有機繊維及び有機バインダのうち少なくとも一方を含む、」と記載されているのを、「前記材料が、更に、有機繊維を含む、」に訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項5~8及び19も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、」と記載されているのを、「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、」に訂正する(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4~8及び19も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3に「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、」と記載されているのを、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、」に訂正する(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4~8及び19も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4に「前記混合液が、更に、有機繊維及び有機バインダのうち少なくとも一方を含む、」と記載されているのを、「前記混合液が、更に、有機繊維を含む、」に訂正する(請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5~8及び19も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5に「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」と記載されているのを、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下である、」に訂正する(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6~8及び19も同様に訂正する)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項6に「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及び鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」と記載されているのを、「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」に訂正する(請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項7、8及び19も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項18を削除する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項19の「請求項1~18のいずれか1項」を「請求項1~8のいずれか1項」に訂正する。 (20)一群の請求項について 訂正前の請求項1、2及び5~19について、請求項2及び5~19は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、請求項2及び5~19は訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1、2及び5~19は一群の請求項である。 また、訂正前の請求項3~19について、請求項4~19は請求項3を直接的又は間接的に引用するものであって、請求項4~19は訂正事項4及び5によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項3~19は一群の請求項である。 そして、共通する請求項5~19を有するこれらの「一群の請求項」は組み合わされて、1つの「一群の請求項」となるから、訂正前の請求項1~19が一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの製造方法における材料として、無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維のみが特定されている。 これに対して、訂正後の請求項1は、「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を、湿式成形法により型成形して製造する・・・」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの材料として、更に「結合材」を含むことを限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アで示したとおり、訂正事項1は、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの材料として、更に「結合材」を含むことを限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書段落【0069】には、「湿式成形法では、無機粒子20、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31、並びに必要に応じて結合材である有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。」との記載がなされている。 よって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 <申立人の主張> 訂正事項1は、取下げられたものとみなされた令和5年4月4日にされた訂正の請求での訂正事項1と同一の訂正内容であるところ、当該訂正内容に対して申立人は意見書において、訂正事項1について、「結合材の1種である「有機バインダ」のみが記載された明細書に基づき、有機バインダの他に無機バインダも包含する用語「結合材」を追加する訂正事項1は、出願当初明細書の記載事項の範囲内において行われる訂正ではないし、実質上特許請求の範囲を拡張するもの」であり、さらに「有機バインダとは共通するものがあるが、異なる概念も有する「凝集剤」を包含し得る用語である「結合材」を追加する訂正事項1は、出願当初明細書の記載事項の範囲内において行われる訂正ではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するもの」であるから、訂正事項1は不適法である旨、主張する。(意見書10~11頁) しかしながら、前記のとおり、明細書段落【0069】には、「湿式成形法では、無機粒子20、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31、並びに必要に応じて結合材である有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。」との記載がなされており、明細書等には、「結合材である有機バインダ」を材料とすること、すなわち、「結合材」を材料とすることが記載されている。 また、明細書等には、湿式成形法を用いる場合の有機バインダとして、「カチオン化デンプンやアクリル樹脂」を選択することができる旨記載(段落【0069】)されている。 ここで、カチオン化デンプンやアクリル樹脂は、いわゆる凝集剤としても使用されることは文献を挙げるまでもなく周知であるから、明細書等には、「凝集剤」を包含し得る用語である「結合材」が記載されているといえる。 したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、申立人の上記主張は、採用できない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、「第2の無機繊維」について、その平均繊維径と第1の無機繊維の平均繊維径との関係、及びその形状が樹枝状又は縮れ状であることのみが特定されている。 これに対して、訂正後の請求項1は、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における第2の無機繊維をより具体的に特定し、更に限定するものである。 また、訂正前の請求項1に係る発明は、「無機粒子」について何ら特定されていない。 これに対して、訂正後の請求項1は、「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における無機粒子をより具体的に特定し、更に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アで示したとおり、訂正事項2は「第2の無機繊維」及び「無機粒子」をより具体的に特定し、更に限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること (ア)訂正事項2のうち「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」について 訂正前の請求項5には、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」との記載がなされており、また、明細書の段落【0055】には、「このような効果を発現するために、第2の無機繊維31の平均繊維径は1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。・・・(略)・・・第2の無機繊維31の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。」との記載がなされている。 (イ)訂正事項2のうち「前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」について 明細書の段落【0055】には、「更に、第2の無機繊維31は、長くなりすぎると成形性や保形性が低下するため、繊維長を0.1mm以下とすることが好ましい。」と記載され、第2の無機繊維の繊維長の下限については、明細書等には記載されていない。 しかしながら、本件発明の「第2の無機繊維」は、「繊維」として特定されることから、その「長」さが「径」よりも大きいこと、すなわち、「繊維長」が「繊維径」よりも大きいことは、技術常識上明らかであり、「第2の無機繊維」の「繊維長」がその「平均繊維径」より大きいことは、自明な事項である。 また、訂正事項2は、第2の無機繊維について、その平均繊維径を「1nm以上1μm未満」と訂正することを含むものである。 そして、平均繊維径が1nm以上1μm未満である第2の無機繊維について、繊維長が1μm以上であれば、1nm以上1μm未満の平均繊維径の範囲において繊維長は必ず大きくなるから、「繊維長が1μm以上である」ことを特定することは、繊維であることから導き出される前記自明な事項を追加するものである。 したがって、「前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」は、平均繊維径が1nm以上1μm未満である第2の無機繊維についての明細書等の記載から自明に導き出される事項であり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)訂正事項2のうち「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む、」について 訂正前の請求項9には、「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなる、」との記載がなされており、また、訂正前の請求項14には、「前記無機粒子がナノ粒子を含む、」との記載がなされている。 (エ)以上より、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項2に択一的に記載されていた「有機バインダ」を削除するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、訂正前の請求項2に択一的に記載されていた「有機バインダ」を削除するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、訂正前の請求項2に択一的に記載されていた「有機バインダ」を削除するものであるから、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 よって、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項3に係る発明は、熱伝達抑制シートの製造方法における材料として、少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含むことのみが特定されている。 これに対して、訂正後の請求項3は、「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、」との記載により、訂正後の請求項3に係る発明における熱伝達抑制シートの材料として、更に「結合材」を含むことを限定するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アで示したとおり、訂正事項4は、熱伝達抑制シートの材料として、更に「結合材」を含むことを限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書段落【0069】には、「湿式成形法では、無機粒子20、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31、並びに必要に応じて結合材である有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。」との記載がなされている。 よって、訂正事項4は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 <申立人の主張> 訂正事項4は、取下げられたものとみなされた令和5年4月4日にされた訂正の請求での訂正事項4と同一の訂正内容であるところ、当該訂正内容に対して申立人は意見書において、訂正事項4は、訂正事項1と同様の理由により不適法である旨、主張する(意見書11頁)が、上記(1)と同様であり、申立人の当該主張は、採用できない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項3に係る発明は、「第2の無機繊維」について、その平均繊維径と第1の無機繊維の平均繊維径との関係、及びその形状が樹枝状又は縮れ状であることのみが特定されている。 これに対して、訂正後の請求項3は、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」との記載により、訂正後の請求項3に係る発明における第2の無機繊維をより具体的に特定し、更に限定するものである。 また、訂正前の請求項3に係る発明は、「無機粒子」について何ら特定されていない。 これに対して、訂正後の請求項3は、「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、」との記載により、訂正後の請求項3に係る発明における無機粒子をより具体的に特定し、更に限定するものである。 したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アで示したとおり、訂正事項5は「第2の無機繊維」及び「無機粒子」をより具体的に特定し、更に限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること (ア)訂正事項5のうち「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」について 訂正前の請求項5には、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」との記載がなされており、また、明細書の段落【0055】には、「このような効果を発現するために、第2の無機繊維31の平均繊維径は1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。・・・(略)・・・第2の無機繊維31の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。」との記載がなされている。 (イ)訂正事項5のうち「前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」について 明細書の段落【0055】には、「更に、第2の無機繊維31は、長くなりすぎると成形性や保形性が低下するため、繊維長を0.1mm以下とすることが好ましい。」と記載され、第2の無機繊維の繊維長の下限については、明細書等には記載されていない。 しかしながら、本件発明の「第2の無機繊維」は、「繊維」として特定されることから、その「長」さが「径」よりも大きいこと、すなわち、「繊維長」が「繊維径」よりも大きいことは、技術常識上明らかであり、「第2の無機繊維」の「繊維長」がその「平均繊維径」より大きいことは、自明な事項である。 また、訂正事項5は、第2の無機繊維について、その平均繊維径を「1nm以上1μm未満」と訂正することを含むものである。 そして、平均繊維径が1nm以上1μm未満である第2の無機繊維について、繊維長が1μm以上であれば、1nm以上1μm未満の平均繊維径の範囲において繊維長は必ず大きくなるから、「繊維長が1μm以上である」ことを特定することは、繊維であることから導き出される前記自明な事項を追加するものである。 したがって、「前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」は、平均繊維径が1nm以上1μm未満である第2の無機繊維についての明細書等の記載から自明に導き出される事項であり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)訂正事項5のうち「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む、」について 訂正前の請求項9には、「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなる、」との記載がなされており、また、訂正前の請求項14には、「前記無機粒子がナノ粒子を含む、」との記載がなされている。 (エ)以上より、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項4に択一的に記載されていた「有機バインダ」を削除するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、訂正前の請求項4に択一的に記載されていた「有機バインダ」を削除するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、訂正前の請求項4に択一的に記載されていた「有機バインダ」を削除するものであるから、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 よって、訂正事項6は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項5における「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」との記載を、上記訂正事項2及び5のとおり、訂正後の請求項1及び3において、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」の発明特定事項により更に限定したことに伴い、訂正後の請求項5において、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下である、」と訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、訂正事項2及び5のとおり、訂正後の請求項1及び3において、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」の発明特定事項により更に限定したことに伴い、請求項5の記載を整合させるために行うものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7は、訂正事項2及び5のとおり、訂正後の請求項1及び3において、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」の発明特定事項により更に限定したことに伴い、請求項5の記載を整合させるために行うものであり、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 よって、訂正事項7は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正前の請求項6における「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及び鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」との記載において、「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」は、いずれも「鉱物繊維」に分類されることから、同様に列挙される「鉱物系繊維」との関係が不明瞭であった記載を、「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」に訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、上記アのとおり、不明瞭であった記載を明瞭な記載とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 「鉱物系繊維」は、「鉱物繊維」に分類される繊維を総称する表現と把握することができる。 そして、「鉱物系繊維」は、天然鉱物繊維及び人造鉱物繊維に大きく分類され、訂正前の請求項6における「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」は、いずれも「鉱物系繊維」のうちの「人造鉱物繊維」に分類されるものであって、「鉱物系繊維」には、これらの繊維以外の繊維が広く知られていることは技術常識といえる。 そうすると、訂正事項8は、「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」と「鉱物系繊維」との関係において、「鉱物系繊維」に含まれる「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」を、重複しないようにする訂正であるから、明細書等の記載から自明に導き出される事項であり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項8は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (9)訂正事項9~18 ア 訂正の目的について 訂正事項9~18は、それぞれ、訂正前の請求項9~18を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項9~18は請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記アで示したとおり、訂正事項9~18は請求項を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (10)訂正事項19 ア 訂正の目的について 訂正事項19は、訂正前の請求項19における「請求項1~18のいずれか1項」との記載を、訂正後の請求項19において「請求項1~8のいずれか1項」と訂正するものであり、引用する請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項19は、引用する請求項を削除するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項19は、引用する請求項を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (11)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項1~19についてされているので、訂正事項1~19に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1~19に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2の3のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~8及び19に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8及び19に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、訂正後の請求項1~8及び19に係る発明を、それぞれ「本件発明1~8及び19」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む材料を、乾式成形法により型成形して製造し、又は無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの製造方法であって、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 かつ、 前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であり、 前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、 前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項2】 前記材料が、更に、有機繊維を含む、請求項1に記載の熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項3】 少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、 前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程と、 前記湿潤シートを加熱及び加圧する工程と、 を有する、熱伝達抑制シートの製造方法であって、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 かつ、 前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であり、 前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、 前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項4】 前記混合液が、更に、有機繊維を含む、請求項3に記載の熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項5】 前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項6】 前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維は、同一の種類の繊維又は互いに異なる種類の繊維であり、 前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項7】 前記第1の無機繊維がガラス繊維であり、 前記第2の無機繊維が鉱物系繊維である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項8】 前記無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上200μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 (削除) 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 (削除) 【請求項19】 複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池の製造方法において、 請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法により得られる熱伝達抑制シートを、前記電池セル間に介在させる、組電池の製造方法。」 第4 決定の予告の概要 当審にて令和5年8月2日付けで特許権者に通知した決定の予告における取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1(明確性) 本件訂正前(当審注;令和5年4月4日にされた訂正の請求後)の請求項1~19に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)繊維は繊維状の粒子といえるものであり、また、本件発明の無機粒子と第2の無機繊維とは、粒子径及び材質においても共通することから、明確に区別することができない。 したがって、請求項1及び3の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。 請求項1、3を引用する請求項2、4~19についても、同様である。 2 取消理由3(進歩性) (1)本件訂正前(当審注;令和5年4月4日にされた訂正の請求後)の請求項1、3、5~13、15~17及び19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前(当審注;令和5年4月4日にされた訂正の請求後)の請求項1、3、5~13、15~17及び19に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件訂正前(当審注;令和5年4月4日にされた訂正の請求後)の請求項1~13、15~16及び19に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前(当審注;令和5年4月4日にされた訂正の請求後)の請求項1~13、15~16及び19に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 第5 決定の予告についての当審の判断 1 取消理由1(明確性) 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 本件発明1~8、19について 本件発明1は、「無機粒子」が「ナノ粒子を含む」ことが特定されている。また、「第2の無機繊維」は、「平均繊維径が1nm以上1μm未満」、かつ、「繊維長が1μm以上」であることが特定されている。 また、本件発明3においても、「無機粒子」が「ナノ粒子を含む」ことが特定され、「第2の無機繊維」は、「平均繊維径が1nm以上1μm未満」、かつ、「繊維長が1μm以上」であることが特定されている。 「ナノ粒子」は、粒子径がナノスケールの粒子として把握されるものであるから、本件発明1及び3は、ナノスケールの無機粒子を含むものであり、繊維長が1μm以上である第2の無機繊維とは、そのサイズが明確に異なるものである。 そうすると、第2の無機繊維と無機粒子とは、明確に区別することができ、仮に第2の無機繊維が繊維状粒子であるとしても、両者は明確に区別することができるものである。 請求項1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、5~8及び19、請求項3を直接的又は間接的に引用する本件発明4~8及び19においても、同様である。 したがって、本件発明において、「第2の無機繊維」と「無機粒子」とは明確に区別することができるから、第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。 2 取消理由3(進歩性) (1)甲第1号証を主とする進歩性について ア 甲1には次の事項が記載されている。なお、当審訳として甲1の訳文として提出された特表2021-531631号公報の対応する記載を、段落番号と併せて採用した。また、下線は強調のため、当審にて付与したものである。 「 The present invention is directed to a flame resistant electrical insulating material for use in electric vehicles. In particular, the exemplary electrical insulating material can be formed as flame resistant inorganic paper(s) or board(s) capable of passing UL 94-VO, 5VA flame resistance tests. In addition, some exemplary flame resistant inorganic paper or board materials can withstand direct exposure to a 2054°C (3730°F) flame for at least 10 minutes without puncturing. Such inorganic paper or boards are thus useful as a protective device, such as a thermal or flame barrier for electric vehicle battery applications. Background Growth of battery electric vehicles powered by lithium ion battery packs has created a need for containing the potential dangers associated with thermal runaway reactions in the lithium ion batteries. Currently, electric vehicles manufacturers have diverse requirements and approaches for the use of battery insulation materials. One conventional approach employs mica board as a flame resistant barrier in some electric vehicle battery applications where the requirement is to withstand a high temperature torch for up to ten minutes without puncturing or breaking.」(1頁5行~19行) (当審訳: 【0001】 本発明は、電気自動車に使用するための耐炎性電気絶縁材料に関する。詳細には、例示的な電気絶縁材料は、UL94-V0、5VA耐炎試験に合格する能力を有する耐炎性無機系紙又は板として形成され得る。加えて、いくつかの例示的な耐炎性無機系紙又は板材料は、2054℃(3730°F)の火炎への直接曝露に、穴開きを生じることなく、少なくとも10分間耐えることができる。それゆえ、このような無機系紙又は板は、電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である。 【背景技術】 【0002】 リチウムイオン電池パックによって給電される電池式電気自動車の成長は、リチウムイオン電池内の熱暴走反応に関連付けられる潜在的危険を阻止する必要性を生じさせた。現在、電気自動車製造業者は、電池絶縁材料の使用のための種々の要求及びアプローチを有する。要求が、高温トーチに、穴開きも破れも生じることなく最大10分間耐えることである、いくつかの電気自動車電池用途において、1つの従来のアプローチはマイカ板を耐炎性バリアとして採用する。) 「 Exemplary electrical insulating materials in the form of flame resistant, inorganic paper(s) or board(s) of the present invention are able to withstand harsh, high temperature flammability tests while also providing low thermal conductivity for thermal insulation and low density for reduced weight. Formulations can be tailored to meet differing customer requirements or enhance functionality. In a first embodiment, a flame resistant electrical insulating material comprises glass fibers, a particulate filler mixture, and an inorganic binder, wherein the electrical insulating material has a UL-94 flammability rating of V-0, 5VA and a thermal conductivity of less than 0.15 W/m-K. The particulate filler mixture comprises at least two particulate filler materials selected from the list of glass bubbles, kaolin clay, talc, mica, calcium carbonate, and alumina trihydrate.」(2頁9行~19行) (当審訳: 【0007】 本発明の耐炎性無機系紙又は板の形態の例示的な電気絶縁材料は、厳しい高温燃焼性試験に耐えることができ、その一方で、断熱のための低い熱伝導率及び重量低減のための低い密度をももたらす。配合は、異なる顧客要求を満たすか、又は機能性を向上させるように調整することができる。 【0008】 第1の実施形態では、耐炎性電気絶縁材料は、ガラス繊維と、微粒子充填剤混合物と、無機結合剤とを含み、電気絶縁材料は、V-0、5VAのUL-94燃焼性等級、及び0.15W/m-K未満の熱伝導率を有する。微粒子充填剤混合物は、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のリストから選択される少なくとも2種の微粒子充填剤材料を含む。) 「 The exemplary inorganic paper comprises a combination of glass fibers and microglass fibers. These fibers interlock together to form the structural support of the inorganic fillers. The glass fiber content of the paper will be from about 3 wt.% to 25 wt.%, with the ratio of glass staple fibers to micro glass fibers being 5: 1 to 1 :3. The diameter of the glass fibers can affect the processing of the paper, as well as the final performance of the resulting inorganic papers or boards. Exemplary glass staple fibers diameters are 12 microns or less, although small amounts of larger diameter fibers may be incorporated. Smaller diameter glass fibers have a greater surface area than an equivalent amount of larger diameter fibers enabling entrapment of an increase amount of particulate filler materials. The microglass fibers used in the present invention typically have a diameter of less than 5 microns. The working diameter range for the glass fibers and glass microfibers is from about 0.1 micron to about 12 microns.」(4頁19行~30行) (当審訳: 【0020】 例示的な無機系紙はガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせを含む。これらの繊維は共に相互に絡み、無機充填剤の構造支持体を形成する。 【0021】 紙のガラス繊維含有率は約3重量%~25重量%になり、ガラス短繊維とマイクロガラス繊維との比は5:1~1:3になる。 【0022】 ガラス繊維の直径は、紙の処理、及び得られた無機系紙若しくは板の最終性能に影響を及ぼし得る。例示的なガラス短繊維の直径は12μm以下であるが、少量のより大きい直径の繊維が組み込まれてもよい。より小さい直径のガラス繊維は、同等量のより大きい直径の繊維よりも大きい表面積を有し、量の微粒子充填剤材料の捕捉量の増大を可能にする。本発明において用いられるマイクロガラス繊維は、典型的には5μm未満の直径を有する。ガラス繊維及びガラスマイクロファイバのための実用直径範囲は約0.1μm~約12μmである。) 「 In at least one embodiment of the present invention, the nonwoven paper also comprises one or more inorganic particulate fillers. Exemplary inorganic particulate fillers are generally non-endothermic. Suitable inorganic particulate fillers include, but are not limited to, glass bubbles, kaolin clay, talc, mica, calcium carbonate, wollastonite, montmorillonite, smectite, bentonite, illite, chlorite, sepiolite, attapulgite, halloysite, vermiculite, laponite, rectorite, perlite, and combinations thereof, preferably a particulate filler mixture comprises at least two of glass bubbles, kaolin clay, talc, mica, calcium carbonate, and alumina trihydrate. Suitable types of kaolin clay include, but are not limited to, water-washed kaolin clay; delaminated kaolin clay; calcined kaolin clay; and surface-treated kaolin clay. In a preferred embodiment, inorganic particulate filler comprises glass bubbles, kaolin clay, mica and mixtures thereof. Optionally, an endothermic filler, such as alumina trihydrate, can be added. The particulate inorganic filler content of the paper will be from about 65 wt.% to 87 wt.%. In the exemplary papers of the present invention comprise a mixture of particulate inorganic fillers. For example, the exemplary papers and boards comprise between about 20 wt.% to 45 wt.% of kaolin clay, from about 25 wt.% to 45 wt.% mica, and from about 5 wt.% to 15 wt.% glass bubbles based on the total weight of the exemplary paper. In an alternative embodiment, the exemplary papers and boards comprise between about 55 wt.% to 80 wt.% of kaolin clay and from about 5 wt.% to 15 wt.% glass bubbles based on the total weight of the exemplary paper. The exemplary inorganic paper further comprises 5 wt.% - 20 wt.%, preferably 5 wt.% - 15 wt.% inorganic binder. The inorganic binder can be selected from sodium silicate, lithium silicate, potassium silicate or a combination thereof. Additional processing aids such as defoamers, surfactants, forming aids, pH-adjusting materials, paper strengthening agents, and etc. known to those skilled in the art can also be incorporated. The above electrical insulating materials can be used in a protective device or system, such as a thermal/flame barrier. For example, one or more sheets of an exemplary electrical insulating material can be incorporated into or wrapped around a flammable energy storage device, such as lithium ion battery cells, modules, or packs, such as may be found in hybrid or electric vehicles or other electric transportation applications or locations. For example, Fig. 1 shows an implementation of the exemplary insulation materials described herein. In Fig. 1, a battery module 100 includes an assembly of battery cells 102. One or more thermal barrier/flame resistant sheets or boards 110, formed from the exemplary materials described herein, can be disposed between individual battery cells or groups of cells at one or more locations throughout the battery module.」(5頁7行~6頁7行) (当審訳: 【0025】 本発明の少なくとも1つの実施形態では、不織紙はまた、1種以上の無機微粒子充填剤を含む。例示的な無機微粒子充填剤は、概して、非吸熱性である。好適な無機微粒子充填剤としては、限定するものではないが、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、微粒子充填剤混合物は、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む。好適なカオリン粘土の種類としては、湿式カオリン粘土、デラミカオリン粘土、焼成カオリン粘土、及び表面処理カオリン粘土が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、無機微粒子充填剤は、グラスバブル、カオリン粘土、マイカ、及びこれらの混合物を含む。任意選択的に、アルミナ三水和物などの、吸熱性充填剤を添加することができる。 【0026】 紙の微粒子無機充填剤含有率は約65重量%~87重量%になる。本発明の例示的な紙では、微粒子無機充填剤の混合物を含める。例えば、例示的な紙及び板は、例示的な紙の総重量に基づいて、約20重量%~45重量%のカオリン粘土、約25重量%~45重量%のマイカ、及び約5重量%~15重量%のグラスバブルを含む。代替的な実施形態では、例示的な紙及び板は、例示的な紙の総重量に基づいて、約55重量%~80重量%のカオリン粘土、及び約5重量%~15重量%のグラスバブルを含む。 【0027】 例示的な無機系紙は、5重量%~20重量%、好ましくは、5重量%~15重量%の無機結合剤を更に含む。無機結合剤は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、又はこれらの組み合わせから選択され得る。 【0028】 当業者に知られた、消泡剤、界面活性剤、成形助剤、pH調整材、紙力増強剤等などの追加の加工助剤を組み込むこともできる。 【0029】 上述の電気絶縁材料は、熱/火炎バリアなどの、保護デバイス又はシステム内で用いることができる。例えば、例示的な電気絶縁材料の1枚以上のシートを、ハイブリッド若しくは電気自動車又は他の電気輸送用途物若しくは場所において見出され得るものなどの、リチウムイオン電池セル、リチウムイオン電池モジュール、若しくはリチウムイオン電池パックなどの、可燃性のエネルギー貯蔵デバイス内に組み込むか、又はその周りに巻き付けることができる。 【0030】 例えば、図1は、本明細書において説明される例示的な絶縁材料の一実装形態を示す。図1では、電池モジュール100が電池セル102のアセンブリを含む。本明細書において説明される例示的な材料から形成された、1枚以上の熱バリア/耐炎性シート又は板110を、電池モジュール全体にわたって1つ以上の場所において個々の電池セル又はセルのグループの間に配置することができる。) 「Example l-P (Paper) A mixture of 4.1 wt.% EC6-6 E-glass fibers (6 mm length, 6 μm diameter), 3.1 wt.% B-06-F microglass fibers (0.65 μm diameter, 2.47 m2/g), 28.6 wt.% 200-HK phlogopite mica, 24.5 wt.% calcined kaolin clay Kamin 70C, 9.2 wt.% S15 glass bubbles, 5.1 wt.% phlogopite 20S mica, were pre-dispersed in water to form an aqueous slurry with a solids content of about 0.05-1% by weight in a Waring blender and then mixed into a larger container with 15.2 wt.% delaminated kaolin clay Hydraprint and 10.2 wt.% N-sodium silicate. Additional materials such as defoamers, surfactants, forming aids, pH-adjusting materials, known to those skilled in the art can also be incorporated. Dewatering was done through a papermaking screen and press (Williams Standard Pulp Testing Apparatus) to form a flame resistant paper material. Example l-L (Laminate) Eight layers of flame resistant paper material of Example l-P were stacked together prior to pressing and drying to obtain a higher thickness flame resistant board material. Test results are shown in Table 1.」(8頁29行~9頁10行) (当審訳: 【0051】 実施例1-P(紙) 4.1重量%のEC6-6 Eガラス繊維(長さ6mm、直径6μm)、3.1重量%のB-06-Fマイクロガラス繊維(直径0.65μm、2.47m2/g)、28.6重量%の200-HK金雲母マイカ、24.5重量%の焼成カオリン粘土Kamin 70C、9.2重量%のS15グラスバブル、5.1重量%の金雲母20Sマイカの混合物を水中に予め分散させ、約0.05~1重量%の固形分含有率を有する水性スラリーをワーリングブレンダー内で形成し、次に、15.2重量%のデラミカオリン粘土Hydraprint及び10.2重量%のN-ケイ酸ナトリウムと共により大きい容器内に混合した。当業者に知られた、消泡剤、界面活性剤、成形助剤、pH調整材などの追加の材料を組み込むこともできる。抄紙機のスクリーンパート及びプレスパート(Williams Standard Pulp Testing Apparatus)により、脱水を行い、耐炎紙材料を形成した。 【0052】 実施例1-L(積層体) 実施例1-Pの耐炎紙材料の8つの層を共に積み重ねた後、加圧及び乾燥し、より高い厚さの耐炎板材料を得た。試験結果を表1に示す。) イ 甲1発明 以上より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考に付した段落番号は、当審訳において採用した段落番号である。 「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせを含み、(【0020】) 紙のガラス繊維含有率は約3重量%~25重量%になり、ガラス短繊維とマイクロガラス繊維との比は5:1~1:3になり、(【0021】) 例示的なガラス短繊維の直径は12μm以下であり、マイクロガラス繊維は、典型的には5μm未満の直径を有し、ガラス繊維及びガラスマイクロファイバのための実用直径範囲は約0.1μm~約12μmであり、(【0022】) 無機微粒子充填剤として、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含み、(【0025】) 電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である耐炎性無機系紙として形成され得る電気絶縁材料であり、(【0001】) 実施例として、EC6-6 Eガラス繊維(長さ6mm、直径6μm)、B-06-Fマイクロガラス繊維(直径0.65μm)、200-HK金雲母マイカ、焼成カオリン粘土Kamin 70C、S15グラスバブル、金雲母20Sマイカの混合物を水中に予め分散させ、水性スラリーをワーリングブレンダー内で形成し、抄紙機のスクリーンパート及びプレスパートにより、脱水を行い、耐炎紙材料を形成する、(【0051】) 耐炎紙材料の製造方法(【0051】)」 ウ 対比・判断 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明は、「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」について、「紙のガラス繊維含有率は約3重量%~25重量%になり、ガラス短繊維とマイクロガラス繊維との比は5:1~1:3になり、例示的なガラス短繊維の直径は12μm以下であり、マイクロガラス繊維は、典型的には5μm未満の直径を有し、ガラス繊維及びガラスマイクロファイバのための実用直径範囲は約0.1μm~約12μmであ」るとしているから、「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」における「ガラス繊維」は、「ガラス短繊維」であると解される。 そして、甲1発明の「実施例」では、「Eガラス繊維」及び「マイクロガラス繊維」を混合物に含むものであるから、「Eガラス繊維」は上記「ガラス短繊維」に対応するものであり、「第1の無機繊維」と称することができる。また、「マイクロガラス繊維」は「第2の無機繊維」と称することができる。 そして、甲1発明の「実施例」では、「Eガラス繊維」の直径、すなわち繊維径は、「マイクロガラス繊維の直径、すなわち繊維径よりも大きい。 甲1発明の「実施例」では、「200-HK金雲母マイカ、焼成カオリン粘土 Kamin 70C、S15グラスバブル、金雲母20Sマイカ」を混合物に含む。これらの物質は、甲1発明において「無機微粒子充填剤」として示される物質であるから、「無機粒子」である。 甲1発明は、「水性スラリー」を形成し、抄紙機により脱水を行い、耐炎紙材料を形成するから、湿式抄紙により耐炎紙材料を製造しているといえる。よって、甲1発明と、本件発明1の「湿式成形法により型成形して製造する」こととは、「湿式により製造する」点で一致する。 甲1発明の「耐炎紙材料」は、「電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である耐炎性無機系紙として形成され得る電気絶縁材料」であるから、本件発明1の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明1と甲1発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、を含む材料を、湿式により製造する熱伝達抑制シートの製造方法であって、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きい、熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「無機粒子」について、本件発明1は、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲1発明は、無機微粒子充填剤である「200-HK金雲母マイカ、焼成カオリン粘土Kamin 70C、S15グラスバブル、金雲母20Sマイカ」である点 相違点2:「湿式により製造する」点について、本件発明1は「湿式成形法により型成形して製造する」のに対して、甲1発明は「水性スラリー」を形成し、抄紙機により脱水を行う点 相違点3:本件発明1は材料に「結合材」を含むのに対して、甲1発明では当該事項は特定されていない点 相違点4:「第1の無機繊維」について、本件発明1は「線状又は針状」であるのに対して、甲1発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点5:「第2の無機繊維」について、本件発明1は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲1発明はマイクロガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1について 甲1発明は、「無機微粒子充填剤」として、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」むことが例示されているが、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことについては、特定されていない。 また、甲1には、無機微粒子充填剤として、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲1発明において、無機微粒子充填剤が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そして、本件発明1は、無機粒子が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことにより、熱伝達抑制効果の観点(本件明細書【0034】~【0035】)、及び通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる(本件明細書【0041】)という、有利な効果が奏されるものである。 そうすると、甲1発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (イ)本件発明3について 本件発明3と甲1発明とを対比する。 甲1発明は、「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」について、「紙のガラス繊維含有率は約3重量%~25重量%になり、ガラス短繊維とマイクロガラス繊維との比は5:1~1:3になり、例示的なガラス短繊維の直径は12μm以下であり、マイクロガラス繊維は、典型的には5μm未満の直径を有し、ガラス繊維及びガラスマイクロファイバのための実用直径範囲は約0.1μm~約12μmであ」るとしているから、「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」における「ガラス繊維」は、「ガラス短繊維」であると解される。 そして、甲1発明の「実施例」では、「Eガラス繊維」及び「マイクロガラス繊維」を混合物に含むものであるから、「Eガラス繊維」は上記「ガラス短繊維」に対応するものであり、「第1の無機繊維」と称することができる。また、「マイクロガラス繊維」は「第2の無機繊維」と称することができる。 そして、甲1発明の「実施例」では、「Eガラス繊維」の直径、すなわち繊維径は、「マイクロガラス繊維の直径、すなわち繊維径よりも大きい。 甲1発明の「実施例」では、「200-HK金雲母マイカ、焼成カオリン粘土 Kamin 70C、S15グラスバブル、金雲母20Sマイカ」を混合物に含む。これらの物質は、甲1発明において「無機微粒子充填剤」として示される物質であるから、「無機粒子」である。 甲1発明の「水性スラリー」は、本件発明3の「混合液」に相当する。そして、水性スラリーは、混合物を水中に分散させたものであるから、甲1発明は、「材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程」を有するものである。 また、甲1発明の「脱水を行」うことと本件発明3の「前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程」とは、「前記混合液を脱水する工程」で一致する。 甲1発明の「耐炎紙材料」は、「電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である耐炎性無機系紙として形成され得る電気絶縁材料」であるから、本件発明3の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明3と甲1発明とは、 「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、を含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、 前記混合液を脱水する工程と、 を有する、熱伝達抑制シートの製造方法であって、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きい、熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1’:「無機粒子」について、本件発明3は、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲1発明は、無機微粒子充填剤である「200-HK金雲母マイカ、焼成カオリン粘土Kamin 70C、S15グラスバブル、金雲母20Sマイカ」である点 相違点2’:本件発明3は材料に「結合材」を含むのに対して、甲1発明では当該事項は特定されていない点 相違点3’:「第1の無機繊維」について、本件発明3は「線状又は針状」であるのに対して、甲1発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点4’:「第2の無機繊維」について、本件発明3は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲1発明はマイクロガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点5’:「前記混合液を脱水する工程」について、本件発明3は、前記混合液を脱水して「湿潤シートを作成する」工程であるのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点 相違点6’:本件発明3は「前記湿潤シートを加熱及び加圧する工程」を有するのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1’について 相違点1’は、前記(ア)の相違点1と同じであり、前記(ア)で判断したとおり、相違点1’は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)本件発明5~8及び19 本件発明5~8及び19は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項を全て含む発明である。 そうすると、本件発明5~8及び19は、前記(ア)で対比した相違点1、又は前記(イ)で対比した相違点1’を含むものであり、前記(ア)又は(イ)と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 更なる対比・判断 本件発明と甲1発明とは、前記ウとは異なる、次の対比・判断をすることができる。 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明は、耐炎紙材料の形成についての実施例として、Eガラス繊維及びマイクロガラス繊維、金雲母マイカ、焼成カオリン粘土、グラスバブル、金雲母20Sマイカの混合物を水中に分散させているから、これらの無機物質は、耐炎紙材料の製造方法における材料である。 ここで、Eガラス繊維及びマイクロガラス繊維は、甲1発明の「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」であり、「ガラス繊維」は、本件発明1の「第1の無機繊維」に対応させることができる。 また、当該「金雲母マイカ、焼成カオリン粘土、グラスバブル、金雲母20Sマイカ」は、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」む「無機微粒子充填剤」から選択された無機素材であるから、本件発明1と甲1発明とは、「第1の無機素材」及び「第2の無機素材」を材料として含む点で共通する。 甲1発明は、「水性スラリー」を形成し、抄紙機により脱水を行い、耐炎紙材料を形成するから、湿式抄紙により耐炎紙材料を製造しているといえる。よって、甲1発明と本件発明1の「湿式成形法により型成形して製造する」こととは、「湿式により製造する」点で一致する。 甲1発明の「耐炎紙材料」は、「電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である耐炎性無機系紙として形成され得る電気絶縁材料」であるから、本件発明1の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明1と甲1発明とは、 「第1の無機素材と、第1の無機繊維と、第2の無機素材と、を含む材料を、湿式により製造する熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「湿式により製造する」点について、本件発明1は「湿式成形法により型成形して製造する」のに対して、甲1発明は「水性スラリー」を形成し、抄紙機により脱水を行う点 相違点2:本件発明1は材料に「結合材」を含むのに対して、甲1発明では当該事項は特定されていない点 相違点3:「第1の無機素材」について、本件発明1は、「無機粒子」であり、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲1発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」むものから選択される無機素材である点 相違点4:「第2の無機素材」について、本件発明1は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲1発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」むものから選択される無機素材である点 相違点5:「第1の無機繊維」について、本件発明1は「線状又は針状であり」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いのに対して、甲1発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲1発明は、「無機微粒子充填剤」として、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」むことが例示されているが、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことについては、特定されていない。 また、甲1には、無機微粒子充填剤として、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲1発明において、無機微粒子充填剤が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そして、本件発明1は、無機粒子が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことにより、熱伝達抑制効果の観点(本件明細書【0034】~【0035】)、及び通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる(本件明細書【0041】)という、有利な効果が奏されるものである。 そうすると、甲1発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (イ)本件発明3について 本件発明3と甲1発明とを対比する。 甲1発明は、耐炎紙材料の形成についての実施例として、Eガラス繊維及びマイクロガラス繊維、金雲母マイカ、焼成カオリン粘土、グラスバブル、金雲母20Sマイカの混合物を水中に分散させているから、これらの無機物質は、耐炎紙材料の製造方法における材料である。 ここで、Eガラス繊維及びマイクロガラス繊維は、甲1発明の「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」であり、「ガラス繊維」は、本件発明3の「第1の無機繊維」に対応させることができる。 また、「金雲母マイカ、焼成カオリン粘土、グラスバブル、金雲母20Sマイカ」は、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」む「無機微粒子充填剤」から選択された無機素材であるから、本件発明3と甲1発明とは、「第1の無機素材」及び「第2の無機素材」を材料として含む点で共通する。 甲1発明の「水性スラリー」は、本件発明3の「混合液」に相当する。そして、水性スラリーは、混合物を水中に分散させたものであるから、甲1発明は、「材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程」を有するものである。 また、甲1発明の「脱水を行」うことと本件発明3の「前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程」とは、「前記混合液を脱水する工程」で一致する。 甲1発明の「耐炎紙材料」は、「電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である耐炎性無機系紙として形成され得る電気絶縁材料」であるから、本件発明3の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明3と甲1発明とは、 「少なくとも第1の無機素材と、第1の無機繊維と、第2の無機素材と、を含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、 前記混合液を脱水する工程と、 を有する、熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1’:本件発明3は材料に「結合材」を含むのに対して、甲1発明では当該事項は特定されていない点 相違点2’:「前記混合液を脱水する工程」について、本件発明3は、前記混合液を脱水して「湿潤シートを作成する」工程であるのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点 相違点3’:本件発明3は「前記湿潤シートを加熱及び加圧する工程」を有するのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点 相違点4’:「第1の無機素材」について、本件発明3は、「無機粒子」であり、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲1発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」むものから選択される無機素材である点 相違点5’:「第2の無機素材」について、本件発明3は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲1発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含」むものから選択される無機素材である点 相違点6’:「第1の無機繊維」について、本件発明3は「線状又は針状であり」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いのに対して、甲1発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4’について検討する。 相違点4’は、前記(ア)の相違点3と同じであり、前記(ア)で判断したとおり、相違点4’は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)本件発明5~8及び19 本件発明5~8及び19は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項を全て含む発明である。 そうすると、本件発明5~8及び19は、前記(ア)で対比した相違点3、又は前記(イ)で対比した相違点4’を含むものであり、前記(ア)又は(イ)と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ まとめ 以上のとおり、本件発明1、3、5~8及び19は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)甲第3号証を主とする進歩性について ア 甲3には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のため、当審にて付与したものである。 「[0002] 大出力が要求される電源装置は、多数の電池を直列や並列に接続している。たとえば、モータで走行する電気自動車、あるいはモータとエンジンの両方で走行するハイブリッド自動車等の自動車、自然エネルギーで充電される蓄電装置、停電のバックアップ電源に使用される電源装置等は、複数の電池セルを積層して電池ブロックとしている。電池ブロックは、電池セルを絶縁して積層している。直列に接続される電池セルに電位差が発生するからである。電池セルを絶縁するために、電池セルを絶縁フィルムで被覆し、さらに電池セルの間に絶縁セパレータを配置している。(特許文献1参照)」 「[0005] 本発明は、従来のこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的の一つは、簡単な構造で電池セルの熱暴走の連鎖を効果的に阻止できる技術を提供することにある。」 「[0013] 断熱シート2は、無機繊維の隙間に無機粒子を充填してなる無機繊維シート2Xとしてもよい。以上の電源装置は、無機繊維の隙間に充填している無機粒子によって圧縮強度が向上するので、電池セルが熱暴走して膨張する状態においても優れた断熱特性を維持して熱暴走の誘発を防止できる特徴がある。それは、無機繊維の隙間に充填している無機粒子が繊維の隙間を確保して、微細な空気が押し潰されるのを防止するからである。この特性は熱暴走の誘発に特に大切である。それは、熱暴走した電池セルが膨張して断熱シートを強く加圧するので、この状態で押し潰されると空隙の空気量が減少して断熱特性が低下するからである。 [0014] 無機粒子は、無機中空粒子又は無機発泡粒子としてもよい。以上の電源装置は、無機繊維の隙間に充填している無機中空粒子や無機発泡粒子によって圧縮強度が向上するので、熱暴走して膨張した電池セルに加圧されて断熱特性が低下するのを防止できることに加えて、さらに無機粒子が中空あるいは発泡状態にあるので、さらに無機粒子自体が含有する空気によって断熱特性が向上して、熱暴走の誘発をさらに有効に防止できる特徴がある。」 「[0019] 本発明の実施の形態に係る電源装置を図1~図3に示す。これらの図において、図1は電源装置の斜視図、図2は図1の電源装置の分解斜視図、図3は電池セルと断熱シートの積層構造を示す分解斜視図をそれぞれ示している。この電源装置100は、主としてハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両の走行モータに電力を供給して、車両を走行させる電源に使用される。ただ、本発明の電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車以外の電動車両に使用でき、また電動車両以外の大出力が要求される用途、例えば蓄電装置用の電源としても使用できる。 [0020] 図1~図3に示す電源装置100は、角形である複数の電池セル1と、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体9を積層状態に固定している固定部材6と、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱してなる断熱シート2とを備えている。図に示す電源装置100は、隣接する電池セル1を断熱シート2を介して積層して電池積層体9とし、この電池積層体9を固定部材6で締結して電池ブロック10としている。電源装置100は、図示しないが、電池ブロック10を冷却プレートの上に載せて、各電池セル1を冷却プレートで強制冷却することができる。」 「[0028](断熱シート2) 断熱シート2は、図2及び図3に示すように、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱する。断熱シート2は、無機繊維を立体的に方向性なく集合して、無機繊維の間には微細な空隙を設けている無機繊維シート2Xである。無機繊維は、無機物からなる繊維であって断熱特性に優れた繊維が使用される。無機繊維は、たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム等が単一であるいは複数の繊維を混合して使用される。ケイ酸マグネシウム(セピオライト)は、成分をタルクと同じケイ酸マグネシウムとするが、タルクとは分子構造が異なってミクロの微細な孔があって優れた断熱特性を示し、また、表面には、叩解されたパルプのように無数の微細な繊維があるので、バインダーを使用することなく湿式抄紙してシート状にできるので、無機繊維として適している。また、ロックウールは、主成分が二酸化ケイ素と酸化カルシウムで優れた断熱性と断熱特性を示す不燃材で、しかも安価に多量生産しているので原料コストを低減できる。 [0029] 断熱シート2は、湿式抄紙法で、無機繊維を立体的に方向性なく集合してシート状の無機繊維シート2Xとする。断熱シート2は、好ましくは、無機繊維に熱可塑性樹脂や無機粒子等を添加して製造される。無機繊維シート2Xに添加される熱可塑性樹脂は、耐熱温度を200℃以上とするプラスチックが使用できるが、耐熱温度の高いアラミド樹脂が適しており、その他のほとんどの熱可塑性樹脂も使用できる。熱暴走した電池セルは400℃以上の高温に発熱するので、無機繊維シート2Xに添加されたほとんどの熱可塑性樹脂を融解し、融解熱で断熱シート2を強制冷却する。無機繊維シート2Xに添加された熱可塑性樹脂は、熱暴走して異常な高温に発熱した電池セル1で溶融され、溶融熱で強制冷却して断熱シート2の断熱特性を向上するので、添加量を多くして溶融熱による冷却効果を高くできるが、添加量が多くなると無機繊維シート2Xの空隙率が低下して空気による断熱特性が低下するので、熱可塑性樹脂の添加量は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは約10重量%とする。 [0030] 無機繊維シート2Xに添加される無機粒子には、シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用できるが、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適している。無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現する。この断熱シート2は、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する。シラスバルーンは、シリカ(SiO2)を主成分とするシラスを1000℃で急速加熱して発泡させて製造されることから、極めて優れた耐熱性があり、さらに、気泡を抱いた微細な粒子であって、熱伝導率を約0.06~0.08W/mkとする優れた断熱特性を示す。このことから、シラスバルーンを含有する断熱シート2も、含有するシラスバルーンの優れた耐熱性によって、電池セル1が高温に加熱される状態にあっても優れた断熱特性を維持し、さらに、熱暴走して高温に発熱する電池セル1の熱エネルギーを効果的に遮断して、隣接する電池セル1の熱暴走の誘発を効果的に阻止する。断熱シート2は、無機繊維を立体的に集合している多孔質基材の隙間に多孔質シリカ粒子を充填して製作される。無機繊維シート2Xは、無機中空粒子等を添加して断熱特性を改善できるが、多すぎると強度が低下するので、添加量は、たとえば30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは約10重量%以下とする。 [0031] 熱可塑性樹脂や無機粒子は、湿式抄紙法で無機繊維シート2Xを製造する工程で抄紙スラリーに添加される。熱可塑性樹脂は抄紙用スラリーに繊維の状態で添加される。繊維の状態で抄紙用スラリーに添加され熱可塑性樹脂は、湿式抄紙されてシート状に加工された後、加熱・加圧されて溶融して無機繊維を交点で結合することができる。 [0032] 無機繊維シート2Xは、湿式抄紙法で製造されて無機繊維を立体的に方向性なく集合し、繊維の隙間に無機粒子等の添加物を充填してシート状に加工される。抄紙用スラリーは、無機繊維と添加物などを液中に均一に分散し、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の濃度を0.01~0.5質量%に調整する。無機繊維に添加物を懸濁している抄紙用スラリーは、湿式抄紙されてシート状に加工した後、乾燥し、その後、熱プレスして所定の厚さとして無機繊維シート2Xとする。 [0033] 湿式抄紙した後、熱プレスしてシート状に製造された無機繊維シート2Xは、好ましくは表面に保護シート4を積層して使用される。保護シート4は熱可塑性樹脂からなるプラスチックシート、あるいは織布や不織布が使用されるが、好ましくはプラスチックシートが使用される。保護シート4は、接着剤を介して無機繊維シート2Xの表面に接着される。ただし、熱可塑性樹脂を添加して湿式抄紙して製造された無機繊維シート2Xは、表面に熱可塑性樹脂製のプラスチックシートや織布あるいは不織布を積層し、両面から加熱・加圧して保護シート4を無機繊維シート2Xに熱溶着することもできる。」 「実施例1 [0059] 以上の電源装置に使用する断熱シート2は、以下のようにして製作される。 80重量%のケイ酸マグネシウム(セピオライト)に、10重量%のガラス繊維と、10重量%のナイロン繊維を懸濁し、分散して抄紙用スラリーとし、これを湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥した後熱プレスして厚さを0.7mm、重量を5gとする無機繊維シート2Xを製造し、得られた無機繊維シート2Xの両面に、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを接着して断熱シート2を製作する。 [0060] 以上の断熱シート2を電池セル1の積層面11Aの外形に裁断し、隣接する電池セル1の積層面11Aに挟んで電池ブロック10とする電源装置を試作し、ひとつの電池セル1を強制的に熱暴走させて、隣の電池セル1が熱暴走するかどうかを試験すると、以上の断熱シート2を積層面11Aに挟んだ電池ブロック10は、熱暴走した隣の電池セルの熱暴走が阻止された。」 イ 甲3記載事項 甲3には、無機繊維シート2Xについて、実施例1として、80重量%のケイ酸マグネシウム(セピオライト)に、10重量%のガラス繊維と、10重量%のナイロン繊維を懸濁して、製造することが記載([0059])されている。そして、無機繊維シート2Xの無機繊維は、「無機繊維は、たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム等が単一であるいは複数の繊維を混合して使用される。」([0028])とあり、上記実施例1の、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)及びガラス繊維は、[0028]で列挙される無機繊維であるから、甲3には、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)及びガラス繊維を、無機繊維として無機繊維シート2Xに用いることが開示されているといえる。 ウ 甲3発明 以上より、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、[0031]の「熱可塑性樹脂や無機粒子は、湿式抄紙法で無機繊維シート2Xを製造する工程で抄紙スラリーに添加される。」における「抄紙スラリー」は「抄紙用スラリー」と同一のものと認定した。 「電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱する断熱シート2であって、断熱シート2は、無機繊維シート2Xであり、([0028]) 断熱シート2は、湿式抄紙法で、無機繊維に熱可塑性樹脂や無機粒子を添加して製造され、([0029]) 無機繊維は、たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム等が単一であるいは複数の繊維を混合して使用されるものであり、([0028]) 無機繊維として、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)とガラス繊維を用い、(前記(2)) 無機繊維シート2Xに添加される熱可塑性樹脂は、アラミド樹脂が適しており、([0029]) 無機繊維シート2Xに添加される無機粒子は、シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適しており、無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現し、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用するものであり、([0030]) 熱可塑性樹脂や無機粒子は、湿式抄紙法で無機繊維シート2Xを製造する工程で抄紙用スラリーに添加され、熱可塑性樹脂は抄紙用スラリーに繊維の状態で添加され、([0031]) 抄紙用スラリーは、無機繊維と添加物などを液中に均一に分散し、無機繊維に添加物を懸濁している抄紙用スラリーは、湿式抄紙されてシート状に加工した後、乾燥し、その後、熱プレスして所定の厚さとして無機繊維シート2Xとする、([0032]) 無機繊維シート2Xの製造方法」 エ 対比・判断 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適しており、無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現し、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する」「無機粒子」は、無機繊維シートを製造する工程で抄紙用スラリーに添加されるから、無機繊維シートの材料であり、本件発明1の「無機粒子」に対応する。 甲3発明の「ケイ酸マグネシウム(セピオライト)」及び「ガラス繊維」は、いずれも材料に含まれる無機繊維であり、それぞれ本件発明1の「第2の無機繊維」、「第1の無機繊維」に対応させることができる。 甲3発明の「湿式抄紙法」で「製造」することと、本件発明1の「湿式成形法により型成形して製造する」こととは、「湿式により製造する」点で一致する。 甲3発明の「無機繊維シート2X」は、隣接する電池セル1を断熱する断熱シート2であるから、本件発明1の「熱伝達抑制シート」に対応する。 そうすると、本件発明1の「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む材料を、乾式成形法により型成形して製造し、又は無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの製造方法」と、甲3発明とは、「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、を含む材料を、湿式により製造する熱伝達抑制シートの製造方法」である点で一致する。 以上より、本件発明1と甲3発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、を含む材料を、湿式により製造する熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「無機粒子」について、本件発明1は、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲3発明は、「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適しており、無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現し、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する」無機粒子である点 相違点2:「湿式により製造する」点について、本件発明1は「湿式成形法により型成形して製造する」のに対して、甲3発明は「湿式抄紙法」で「製造」する点 相違点3:本件発明1は材料に「結合材」を含むのに対して、甲3発明では当該事項は特定されていない点 相違点4:「第1の無機繊維」について、本件発明1は「第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく」、「線状又は針状」であるのに対して、甲3発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点5:「第2の無機繊維」について、本件発明1は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲3発明はケイ酸マグネシウム(セピオライト)であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1について 甲3発明には、無機粒子として、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことについて、特定されていない。 また、甲3には、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲3発明において、無機微粒子充填剤が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そして、本件発明1は、無機粒子が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことにより、熱伝達抑制効果の観点(本件明細書【0034】~【0035】)、及び通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる(本件明細書【0041】)という、有利な効果が奏されるものである。 そうすると、甲3発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (イ)本件発明3について 本件発明3と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適しており、無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現し、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する」「無機粒子」は、無機繊維シートを製造する工程で抄紙用スラリーに添加されるから、無機繊維シートの材料であり、本件発明3の「無機粒子」に対応する。 甲3発明の「ケイ酸マグネシウム(セピオライト)」及び「ガラス繊維」は、いずれも材料に含まれる無機繊維であり、それぞれ本件発明3の「第2の無機繊維」、「第1の無機繊維」に対応させることができる。 甲3発明の「抄紙用スラリー」は、本件発明3の「混合液」に相当する。そして、甲3発明の抄紙用スラリーは、無機繊維と添加物などを液中に均一に分散し、懸濁しているから、甲3発明は、「材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程」を有するものである。 甲3発明において、抄紙用スラリーは「湿式抄紙されてシート状に加工」されるから、脱水していることは明らかであり、「シート状」のものは、本件発明3の「湿潤シート」に相当する。 甲3発明において、「乾燥し、その後、熱プレス」することは、本件発明3の「加熱及び加圧」することに相当する。 そうすると、本件発明3と甲3発明とは、「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、を含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程と、前記湿潤シートを加熱及び加圧する工程」を有する点で一致する。 甲3発明の「無機繊維シート2X」は、隣接する電池セル1を断熱する断熱シート2であるから、本件発明3の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明3と甲3発明とは、 「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、を含む材料を水中で混合及び撹拌して混合液を調製する工程と、 前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程と、 前記湿潤シートを加熱及び加圧する工程と、 を有する、熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1’:「無機粒子」について、本件発明3は、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲3発明は、「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適しており、無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現し、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する」無機粒子である点 相違点2’:本件発明3は材料に「結合材」を含むのに対して、甲3発明では当該事項は特定されていない点 相違点3’:「第1の無機繊維」について、本件発明3は「第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく」、「線状又は針状」であるのに対して、甲3発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点4’:「第2の無機繊維」について、本件発明3は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲3発明は「ケイ酸マグネシウム(セピオライト)」であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1’について 相違点1’は、前記(ア)の相違点1と同じであり、前記(ア)で判断したとおり、相違点1’は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲3発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)本件発明2、4~8及び19 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含む発明である。 また、本件発明5~8及び19は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項を全て含む発明である。 そうすると、本件発明2、4~8及び19は、前記(ア)で対比した相違点1、又は前記(イ)で対比した相違点1’を含むものであり、前記(ア)又は(イ)と同様に、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ まとめ 以上のとおり、本件発明1~8及び19は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 小括 よって、決定の予告に記載した取消理由1(明確性)、取消理由3(進歩性)により、請求項1~8及び19に係る特許を取り消すことはできない。 第6 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由について 1 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(明確性要件) 本件訂正前の請求項1~19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し取り消すべきものである。 概略は、以下のとおりである。なお、申立書における「第2無機繊維」(例えば、申立書44頁下から12行目等)は、本件明細書及び本件発明の「第2の無機繊維」に対応するものであることは明らかであるから、申立書における「第2無機繊維」との用語は、「第2の無機繊維」を意味するものとして、判断する。 ア 「請求項6、請求項7の「鉱物系繊維」」(申立書45頁) 「鉱物系繊維」について、発明の詳細な説明中には、定義も例示もないので、いかなる繊維を意味するのか不明である。 請求項6で列挙されている繊維はいずれもが「鉱物繊維」であり、請求項7の「ガラス繊維」と「鉱物系繊維」の関係が不明確である。 また、「系」という用語により、「鉱物系繊維」の射程範囲が不明確である。 よって、請求項6、7及びこれらを引用する請求項に係る特許発明は不明確である。 イ 「無機粒子の平均粒子径(請求項8の平均二次粒子径と請求項11、16の平均一次粒子径の関係)」(申立書46頁) 無機粒子について、一次粒子の状態、二次粒子の状態を区別して平均粒子径を特定しているにもかかわらず、無機粒子が一次粒子として存在しているのか、二次粒子として存在しているのか明確でない。平均二次粒子径を特定している「無機粒子」と、平均一次粒子径を特定している「無機粒子」が、湿式材料に供する材料中の無機粒子を指しているのか、生産物として得られる熱伝達抑制シートに存在する酸化物粒子の上位概念である「無機粒子」を指しているのか不明である。 ウ 「請求項13~15の「(シリカ)ナノ粒子」」(申立書46~47頁) ナノ粒子について、請求項15で「シリカナノ粒子」に特定しているが、シリカに関する周知技術に照らすと、請求項13の「ナノ粒子」、請求項15の「シリカナノ粒子」は、いかなる粒子を意味するのか、具体例が示されておらず、不明確である。 エ 「請求項19」(申立書47~48頁) 請求項19は、「組電池の製造方法」において、電池セル間に介在させる熱伝達抑制シートを、「請求項1~18のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法により得られる熱伝達抑制シート」と、製造方法により特定するものであり、物の特定を、製造方法を用いて特定することから、明確性要件に違反する。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~19に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し取り消すべきものである。 概略は、以下のとおりである。 ア 「請求項1~4、11、14、15、16、18:湿式成形」(申立書48~49頁) (ア)湿式成形 請求項1において、粒子と繊維とからなる材料を湿式抄造する場合、粒子を安定的に保持した(少なくとも課題1を解決できる)シートを作成するためには、いかなる種類の繊維(繊維サイズ、組み合わせなど)を使用し、いかなる条件、処理して無機粒子と混合するか、いかなる機器を用いて抄造するかということが重要であるが、具体的実施例もなく、発明の詳細な説明においても明らかにされていない。 請求項3、及び2、4においても、課題1を解決できるといったことは発明の詳細な説明から明らかでない。 よって、請求項1~4は、いずれもサポート要件を充足しない。 (イ)湿式成形に供する材料 請求項18は最終的生産物における無機粒子、繊維の含有割合を特定しているが、かかる含有割合のシートは、シートと実質的に同一割合の材料を用いることで得られるのか不明である。仮に、実質的に同一割合の材料を用いて、請求項18に特定するような割合を有するシートを得るためには、脱水工程でも実質的に粒子が漏出しない工夫が必要となる。発明の詳細な説明に記載されているメッシュを介しての脱水の場合、特にナノ粒子、ナノサイズの粒子では、いかなるメッシュを使用したのかが重要となるが、発明の詳細な説明には、一切記載されていない。 よって、請求項18で特定する各構成要素の含有率は、湿式成形に供する材料の含有率と一致しないことは明らかであるにもかかわらず、材料、湿式製造方法が、発明の詳細な説明には一切記載がないから、サポート要件を充足しない。 イ 「請求項8、11、16:一次粒子、二次粒子」(申立書49~50頁) 請求項1、2には、湿式成形に関する具体的特定がなく、請求項3、4においても、「材料を水中で混合及び撹拌」と特定しているだけであるから、湿式成形の技術常識に基づくと、調製されたスラリーは、無機粒子が二次粒子のままであると考えられる。 生産物であるシートにおいて、無機粒子が一次粒子の状態が存在するとしたら、二次粒子として存在していた無機粒子がいつ、どのようにして解砕されて一次粒子とされたのか、発明の詳細な説明には記載されていない。よって、請求項8、11、16の発明を実施することは困難であり、サポート要件を充足しない。 ウ 「請求項1、3及びこれらを引用する請求項:第2の無機繊維」(申立書50~51頁) 第2の無機繊維は、「樹枝状又は縮れ状」を有する繊維であるが、いかなる繊維であれば、「樹枝状又は縮れ状」の要件を充足するのかということについて、発明の詳細な説明には記載されていない。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件訂正前の請求項1~19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し取り消すべきものである。 概略は、以下のとおりである。 ア 「ナノ粒子と湿式成形:全請求項」(申立書51頁) 粒子と繊維の混合物スラリーを湿式成形する場合、メッシュを用いた脱水工程で如何にして粒子が漏出しないようにするのか明記されていない。特に請求項11、13~16で特定されるナノスケールの粒子やナノ粒子が単分子状態(一次粒子状態)でスラリー中に分散されていた場合、脱水工程での粒子の漏出を、いかにして防止できたのか、いかなるサイズのメッシュを用いて脱水を行ったのかといったことが一切記載されておらず、具体的実施例がないので、実施には過度の試行錯誤を要する。 イ 「湿式成形に供する材料と生産物との関係:請求項18及びこれを引用する請求項19」(申立書51~52頁) 請求項18で特定している含有率は、生産物であるシートに対する含有率であり、湿式成形に供する材料との関係で、予め粒子をどの程度の割合で含有した材料を用いるのか、あるいは湿式成形に供する材料と同程度の割合を維持した湿潤シートを得るためには、どのように脱水を行うのかについての説明は一切ない。 シート全量に対して30~94質量%という高含有量の無機粒子を安定的に保持する熱伝達抑制シートを得ることができたのかといった具体的実施例が示されていないと、当業者は実施することはできない。 ウ 「樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維:全請求項」(申立書52頁) 第2の無機繊維に、どのようにして、「樹枝状又は縮れ状」を付与するのか、あるいは樹枝状又は縮れ状を有している繊維で捲縮等の加工を施す必要がない繊維を用いたのかといった説明が、明細書には一切ない。 (4)申立理由4(新規性、進歩性) ア 本件訂正前の請求項1、3、5、6、9~13、18及びこれらを引用する請求項19に係る特許発明は、甲1発明と同一であって、特許法29条1項3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 イ 本件訂正前の請求項1~7、9~13、及びこれを引用する請求項19に係る特許発明は、甲3発明と同一であって、特許法29条1項3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 ウ 本件訂正前の請求項1~4、6、7、9~16に係る特許発明は、甲2発明及び周知技術・技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 2 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断 (1)申立理由1(明確性要件) ア 前記1(1)アについて 本件発明6は、「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる」ことを特定するものであり、列挙される繊維との重複は解消したことから、明確な記載である。 また、「鉱物系繊維」は、「鉱物繊維」に分類される繊維を総称する表現と把握することができ、その射程範囲は、「鉱物繊維」に分類される繊維として明確に把握することができる。 そして、本件発明7は、「第1の無機繊維」について、鉱物系繊維に含まれる「ガラス繊維」に特定したものであるから、「ガラス繊維」と「鉱物系繊維」の関係は明確である。 よって、本件発明6、及び請求項6を直接的又は間接的に引用する本件発明7~8、及び19は明確であり、前記1(1)アの主張は採用できない。 イ 前記1(1)イについて 甲12の4(12頁)によれば、2次粒子は、「1次粒子が複数個集まった凝集体で、分散により1次粒子まで解凝集させることのできる凝集体」であるから、無機粒子の平均二次粒子径を特定するとしても、2次粒子を構成する1次粒子があることは明らかであり、1次粒子は分散により解凝集されたものである。 そうすると、無機粒子は、平均一次粒子径によって特定するとともに平均2次粒子径によって特定することができるものであるから、無機粒子について、一次粒子の状態、二次粒子の状態を区別して平均粒子径を特定することが、無機粒子が一次粒子として存在しているのか、二次粒子として存在しているかを意味するものとは認められない。 また、本件発明において、平均二次粒子径が特定される無機粒子が材料に含まれていることは、明確である。 よって、前記1(1)イの主張は採用できない。 ウ 前記1(1)ウについて 本件訂正請求により、請求項13~15は削除されている。 そして、本件発明1及び3において「無機粒子がナノ粒子を含む」ことが特定されていることから、本件発明1及び3で特定される「ナノ粒子」が明確であるか否かを検討する。 まず、「ナノ粒子」との用語について検討すると、「ナノ粒子」は、粒子径がナノスケールである粒子を示すものとして一般的な用語であり、明確に理解することができるものである。 そして、本件発明1及3の記載について検討すると、本件発明1及び3は「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む」と特定するものであるから、その記載に不明確な点は認められない。 したがって、「ナノ粒子」を特定する本件発明1及び3、請求項1又は3を直接的又は間接的に引用する本件発明2、4~8、19は、明確であり、前記1(1)ウの主張は採用できない。 エ 前記1(1)エについて 本件発明19は、「組電池の製造方法」に係る発明であるから、請求項19は、「物の発明についての請求項」ではない。 そして、「請求項1~18のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法により得られる熱伝達抑制シート」と特定されていることから、当該「製造方法によって生産物を特定しようとする記載」について検討すると、請求項に記載された事項に基いて、生産物である「熱伝達抑制シート」の製造方法を理解することができ、「熱伝達抑制シート」の特徴を理解することができるから、本件発明19は、不明確であるとはいえない。 よって、前記1(1)エの主張は採用できない。 オ 申立理由1(明確性要件)のまとめ 以上のとおり、本件発明は明確であり、申立理由1(明確性要件)は理由がない。 (2)申立理由2(サポート要件) 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 ア 前記1(2)アについて 当該主張は、要するに、課題1を解決できると認識し得る範囲のものでないから、サポート要件を充足しない旨の主張と把握される。 そして、「課題1」は、申立書11頁より「通常使用時において、熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること」である。 本件明細書には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、熱伝達抑制シート、及び該熱伝達抑制シートを電池セル間に介在させた組電池に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 このような熱伝達抑制シートにおいては、熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)、及び電池セルが熱暴走して高温になった場合においても、形状を保持して電池セル間に存在し続けることが求められる。特許文献1に記載の熱伝達抑制シートでは、鉱物系粉体及びや難燃剤を保持するために、マトリックス樹脂を使用しているが、このようなマトリックス樹脂は、高温になった際に溶融してしまう。したがって、特許文献1に記載の熱伝達抑制シートでは、電池セルの熱暴走時に形状を保持できなくなるおそれがある。 【0007】 そこで本発明は、熱伝達抑制効果を有する粉体等の脱落を抑制することができるとともに、高温時の形状保持性に優れる熱伝達抑制シート、及びこの熱伝達抑制シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0027】 本発明の熱伝達抑制シートは、熱伝達抑制効果に優れる無機粒子及び無機繊維を含むため、熱伝達抑制効果に優れる。 また、本発明の熱伝達抑制シートにおいては、細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っているため、無機粒子が良好に保持される。 【0028】 さらに、第1の無機繊維及び第2の無機繊維は、マトリックス樹脂とは異なり、電池セルの熱暴走時の温度において溶融しないので、本発明の熱伝達抑制シートは、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。 さらにまた、熱伝達抑制シートは電池セルの熱暴走に伴う膨張により押圧力を受けたり、電池セルの発火に伴う風圧を受けたりする場合があるが、本発明の熱伝達抑制シートにおいては、第2の無機繊維と絡み合った太径の第1の無機繊維により、これらの外力に抗することができる。 【0029】 本発明の組電池においては、上記の熱伝達抑制シートが電池セル間に介在されている。したがって、本発明の組電池は電池セルの熱暴走の被害を最小限に抑制することができる。」 「【0063】 [2.熱伝達抑制シートの製造方法] 熱伝達抑制シート10は、少なくとも無機粒子20、第1の無機繊維30、第2の無機繊維31を含む材料を、乾式成形法又は湿式成形法により型成形して製造される。乾式成形法については、例えばプレス成形法(乾式プレス成形法)及び押出成形法(乾式押出成形法)を使用することができる。」 上記記載より、熱伝達抑制シートの「熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)」(【0007】)との課題は、「細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っている」(【0027】)ことにより解決していると理解することができる。 そして、本件発明においては、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状」である「第1の無機繊維」と「第2の無機繊維」を含む材料であることを特定するものであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、サポート要件に適合する。 イ 前記1(2)イについて 本件発明は、湿式成形において「無機粒子20、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31、並びに必要に応じて結合材である有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。」(【0069】)ものであり、「混合」し「撹拌」することから、材料である「無機粒子20、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31、並びに必要に応じて結合材である有機バインダ」を水中に分散させているといえる。 そして、分散により解凝集されて1次粒子の状態となることは技術常識(甲12の4)であるから、本件発明において、無機粒子は、混合液を調製する工程で、1次粒子となっていると理解することができる。 そうすると、申立人の「調製されたスラリーは、無機粒子が二次粒子のままであると考えられる。」との主張は採用できない。 よって、前記1(2)イの主張は採用できない。 ウ 前記1(2)ウについて 前記アのとおり、「熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)」(【0007】)との課題は、「細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っている」(【0027】)ことにより解決していると理解することができる。 そして、本件発明においては、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状」であることを特定するものであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、サポート要件に適合する。 申立人は、「「樹枝状又は縮れ状」の要件を充足するのかということについて、発明の詳細な説明には記載されていない。」旨主張するが、上記のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるから、当該主張は採用できない。 エ 申立理由2(サポート要件)のまとめ 以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるから、申立理由2(サポート要件)は理由がない。 (3)申立理由3(実施可能要件) 明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。 そして、本件発明1~8及び19は「製造方法」であるから、「物を生産する方法」の発明であり、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法2条3項3号)、例えば、発明の詳細な説明にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすということができる。 ア 前記1(3)アについて 本件発明1において、湿式成形法により型成形して製造する熱伝達抑制シートの材料として、「結合材」を含むことが特定されている。 また、本件発明3においても、材料として「結合材」を含むことが特定されている。 明細書には、「湿式成形法では、無機粒子20、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31、並びに必要に応じて結合材である有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。」、「有機バインダとして、カチオン化デンプンやアクリル樹脂を選択することができる。」ことが記載(段落【0069】)されている。 そして、カチオン化デンプンやアクリル樹脂は、いわゆる凝集剤としても使用されることは文献を挙げるまでもなく周知である。 そうすると、本件発明は、湿式成形をする場合に、凝集剤としても使用される結合剤を材料として含むものであるから、ナノ粒子が単分子状態でスラリー中に分散されていた場合であっても、凝集することによりメッシュを用いた脱水を行えることは、当業者が容易に理解することができる。 したがって、前記1(3)アの主張は採用できない。 イ 前記1(3)イについて 本件訂正請求により、請求項18は削除されていることから、前記1(3)イの主張は採用できない。 ウ 前記1(3)ウについて 「第2の無機繊維に、どのようにして、「樹枝状又は縮れ状」を付与するのか、あるいは樹枝状又は縮れ状を有している繊維で捲縮等の加工を施す必要がない繊維を用いたのかといった説明が、明細書には一切ない。」旨主張するが、乙第7号証(請求項8、【0064】、図4)、乙第8号証(11頁左欄18~21行、12頁第3図a、b)、乙第9号証(187頁左欄下から3行~右欄1行)の記載より、縮れ状であり、繊維径1μm未満である繊維状粒子として、セピオライトは、本件特許出願時周知であり、入手することができたと認められる。そして、繊維状粒子は、「繊維」の形状であるから、繊維ということができる。 そうすると、本件発明の「第2の無機繊維」を、当業者は入手することができるものであり、発明の詳細な説明に具体的な記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるものといえる。 エ 申立理由3(実施可能要件)のまとめ 以上のとおり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、申立理由3(実施可能要件)は理由がない。 (4)申立理由4(新規性、進歩性) ア 甲1を主とする新規性について(前記第6の1(4)ア) 甲1の記載事項は、前記第5の2(1)アのとおりであり、甲1発明は、前記第5の2(1)イのとおりである。 本件発明1と甲1発明とは、前記第5の2(1)ウ(ア)で対比したとおり相違点1~5で相違し、少なくとも相違点1は実質的な相違点である。また、本件発明1と甲1発明とは、前記第5の2(1)エ(ア)で対比したとおり相違点1~5で相違するものであり、少なくとも相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明と同一であるとはいえない。 また、本件発明3と甲1発明とは、前記第5の2(1)ウ(イ)で対比したとおり相違点1’~6’で相違するものであり、少なくとも相違点1’は実質的な相違点である。また、本件発明3と甲1発明とは、前記第5の2(1)エ(イ)で対比したとおり相違点1’~6’で相違するものであり、少なくとも相違点4’は実質的な相違点であるから、本件発明3は、甲1発明と同一であるとはいえない。 そして、請求項5、6、及びこれらを引用する請求項19に係る発明は、いずれも本件発明1または3の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、甲1発明と同一であるとはいえない。 なお、請求項9~13及び18は、本件訂正請求により削除されている。 したがって、前記申立理由4アの申立理由は、理由がない。 イ 甲3を主とする新規性について(前記第6の1(4)イ) 甲3の記載事項は、前記第5の2(2)アのとおりであり、甲3発明は、前記第5の2(2)ウのとおりである。 本件発明1と甲3発明とは、前記記第5の2(2)エ(ア)で対比したとおり相違点1~5で相違するものであり、少なくとも相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3発明と同一であるとはいえない。 また、本件発明3と甲3発明とは、前記記第5の2(1)エ(イ)で対比したとおり、相違点1’~4’で相違するものであり、少なくとも相違点1’は実質的な相違点であるから、本件発明3は、甲3発明と同一であるとはいえない。 そして、請求項2、4~7、及びこれらを引用する請求項19に係る発明は、いずれも本件発明1または3の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、甲3発明と同一であるとはいえない。 なお、請求項9~13は、本件訂正請求により削除されている。 したがって、前記申立理由4イの申立理由は、理由がない。 ウ 甲2を主とする進歩性について(前記第6の1(4)ウ) (ア)甲2には、次の事項が記載されている(下線は強調のために当審にて付与)。 「【請求項1】 繊維分として平均繊維径2~5μmの生体溶解性セラミック繊維、平均繊維径5~15μmのガラス繊維、及び有機繊維を用い、無機バインダーとして硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のカチオン性無機バインダーとセピオライトとを用いて湿式抄造することにより得られる500℃焼成後のMD方向の湿潤引張り強さが100N/m以上、500℃焼成後の保液量が100g/m2以上であることを特徴とする耐熱性無機繊維シート基材。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、生体溶解性セラミック繊維を利用した耐熱性無機繊維シート基材に関する。」 「【0015】 上記の安全性が確認された生体溶解性セラミック繊維であれば、その製造方法や化学組成に特に制限はなく、例えば、生体溶解性ロックウールを使用することも出来る。また、本発明における生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径は2~5μmであることが好ましく、2~4μmがより好ましい。平均繊維径が2μm未満では、繊維が細すぎて、抄造時に耐熱性無機繊維シート基材から該生体溶解性セラミック繊維が脱落し、物理強度が不十分となる場合があると共に、人体への安全性に劣る場合がある。一方、平均繊維径が5μmを超えると、太くなり過ぎて繊維間の間隔が大きくなり、焼成後の物理強度が劣る場合がある。生体溶解性セラミック繊維の繊維長は製法上、コントロールすることが難しいが、概ね500μm前後の繊維を好適に用いることができる。」 「【0018】 本発明におけるガラス繊維は生体溶解性セラミック繊維より、平均繊維径が太いことが重要であり、平均繊維径が太いことで無機繊維間に空隙が形成され、焼成後の吸液性が得られやすくなる。本発明におけるガラス繊維の繊維長は1~30mmが好ましく、2~15mmがより好ましく、3~10mmが更に好ましい。繊維長が1mm未満では、焼成後の物理強度が不十分となる場合がある。一方、繊維長が30mmを超えると、シート基材の地合が悪くなり、品質にバラつきが生じる場合がある。また、本発明におけるガラス繊維の平均繊維径は5~15μmであることが好ましく、5~11μmがより好ましく、5~9μmが更に好ましい。平均繊維径が5μm未満では、繊維が細すぎて十分な保液性が得られなくなる。一方、平均繊維径が15μmを超えると太くなりすぎて繊維間の間隙が大きくなり、焼成後の物理強度に劣り、さらに皮膚への刺激性がある等、作業性に支障を来たして利用し難くなる場合がある。」 【0020】 本発明における有機繊維としてはセルロース繊維からなるパルプ状物、合成樹脂短繊維を用いることができ、それぞれ単独もしくは両者を配合して用いることができる。セルロース繊維からなるパルプ状物と合成樹脂短繊維をそれぞれ配合して用いる場合の割合に特に制限はないが、合成樹脂短繊維の配合率が多いと保液性は高くなるが物理強度が低下し、またコストも上昇する。一方、合成樹脂短繊維の配合率が低いと物理強度は高くなるが保液性は低下する。セルロース繊維からなるパルプ状物と合成樹脂短繊維の両者を合計した有機繊維の含有率は、5~30重量%であることが好ましく、5~20重量%であることがより好ましく、5~15重量%であることが更に好ましい。含有率が5重量%未満だと、湿式抄造時のシート基材の強度が不足し製造できない場合や、焼成後におけるシート基材の空隙が少なくなり保液性に劣る場合がある。30重量%を超えると、焼成後におけるシート基材の空隙が大きくなり過ぎ、焼成後の物理強度に劣る場合がある。」 「【0022】 本発明に用いられる合成樹脂短繊維を構成する樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン- 酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、これらの樹脂の誘導体等が挙げられる。このうち、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の合成樹脂短繊維を使用すると、焼成後におけるシート基材により適度な空隙を形成することができ、その結果、よりバランスの良い物理強度と保液 性をもたらすことができる。」 「【0025】 無機バインダーとしてはカチオン性無機バインダーとセピオライトとが必須成分である。カチオン性無機バインダーとしては硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上を使用することが出来る。アルミナゾルの安定化剤としては塩酸、酢酸、硝酸などが挙げられるが、何れを使用しても良い。アルミナゾルの形状は羽毛状、板状構造などが挙げられるが、何れを使用しても良い。カチオン性無機バインダーは、焼成により生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維とセピオライトとを強く接着する作用をしているものと推定され、焼成後の湿潤引張り強さを向上させる。本発明におけるカチオン性無機バインダーの含有率としては繊維重量の合計量に対して0.1~5重量%が好ましく、0.1~3重量%がより好ましく、0.1~1重量%がさらに好ましい。カチオン性無機バインダーの含有率が0.1重量%未満の場合には、焼成後の湿潤引張り強さが劣る場合がある。一方、カチオン性無機バインダーの含有率が5重量%を超えると凝集が強くなりすぎて地合不良や、吸液性が悪化する場合がある。 【0026】 本発明におけるセピオライトは、含水ケイ酸マグネシウムからなる表面に多数の活性水酸基を有する粘土性鉱物で、その形状において何ら限定されるものではなく、繊維状のほか、塊状、泥状、粉末状、いずれも用いることができる。また、母岩や間入石としてのタルク、カルサイト、ドロマイト、マグネサイト、塩基性炭酸マグネシウム、ケイ酸成分等が含まれていても良い。また、スペイン産、トルコ産、中国産など原産国による制限は特にない。」 「【0032】 本発明の耐熱性無機繊維シート基材は、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種または異種の抄紙機を組み合わせてなるコンビネーション抄紙機などを用いて抄造する方法によって製造することができる。原料スラリーには、必須成分の他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性の歩留り向上剤、濾水剤、分散剤、紙力向上剤や粘剤を適宜選択して添加することができる。原料スラリーは、0.1~5重量%程度の固形分濃度に調整される。なお、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の内添助剤を目的に応じて適宜添加することも可能である。 【0033】 この原料スラリーをさらに所定濃度に希釈して抄造する。また、無機バインダーは、その形状に応じて凝集剤を用いて凝集体を形成しても良く、生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維や有機繊維と凝集体を形成しても良い。凝集剤は、高分子凝集剤、無機系凝集剤などがあるが、無機バインダーの成分や表面電荷を考慮して適宜選択することができる。凝集剤の添加量は、無機バインダーの種類や欲する凝集体の大きさによって変えることができる。凝集体の大きさをコントロールすることによって、小さい粒状の無機バインダーでも抄造ワイヤーから抜け落ちることなく抄造が可能となる。次いで、抄造されたウェブは、余分な水分を吸引あるいはウェットプレスなどの方法で取り除いた後、乾燥させる。乾燥には、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、エアドライヤー、赤外線ドライヤー、サクションドライヤー等の乾燥装置を用いることができる。」 「【0041】 (実施例1) 生体溶解性セラミック繊維(組成:SiO2/CaO/MgO=65/30/5;平均繊維径3μm×長さ600μm、45μm以上ショット含有率10%)、ガラス繊維として6μm径×6mm長のチョップドストランドガラス繊維、有機繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(以下NBKP、400mlCSF)、10μm径×3mm長のポリビニルアルコール(以下PVA)繊維(湿熱接着性のない主体繊維)をそれぞれ80/10/5/5とする配合で水中に順次添加混合し、さらに、無機バインダーとしてポリ塩化アルミニウム(以下PAC)を繊維重量の合計量に対して0.5%添加し、セピオライト紛体(平均粒径7μm)を繊維重量の合計量に対して50%添加し、3%濃度の原料スラリーを調成した。この原料スラリーを用いてウェブを長網抄紙機で希釈抄造し、湿式ウェブをプレスロールで脱水した後、130℃で加熱乾燥処理し、実施例1の耐熱性無機シート基材を得た。」 「【0043】 (実施例3) ポリ塩化アルミニウムの替わりにカチオン性シリカゾルを用いた以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、実施例3の耐熱性無機繊維シート基材を得た。」 「【0060】 本発明の活用例としては、耐熱触媒担持材、断熱材、耐熱濾過材、耐熱絶縁材、耐熱シール材、耐熱パッキン材、耐熱緩衝材、耐熱クッション材用基材が挙げられ、特にハニカム状のガス吸着素子用基材が好適である。」 (イ)甲2発明 前記【0041】、【0043】において、耐熱性無機シート基材の製造方法が記載されていることを踏まえれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「平均繊維径2~5μmの生体溶解性セラミック繊維、平均繊維径5~15μmのガラス繊維、及び有機繊維を用い、無機バインダーとして硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のカチオン性無機バインダーとセピオライトとを用いて湿式抄造する耐熱性無機繊維シート基材であって、(【請求項1】) 活用例として、断熱材が挙げられ、(【0060】) 有機繊維としてはセルロース繊維からなるパルプ状物、合成樹脂短繊維を用いることができ、(【0020】) 合成樹脂短繊維を構成する樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が挙げられ、(【0022】) セピオライトは、含水ケイ酸マグネシウムからなる表面に多数の活性水酸基を有する粘土性鉱物で、繊維状のほか、塊状、泥状、粉末状、いずれも用いることができ、(【0026】) 生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ、ポリビニルアルコール繊維を水中に順次添加混合し、無機バインダーとしてポリ塩化アルミニウム、セピオライト紛体を添加し、原料スラリーを調成し、この原料スラリーを用いてウェブを長網抄紙機で希釈抄造し、湿式ウェブをプレスロールで脱水した後、130℃で加熱乾燥処理するものであり、(【0041】) ポリ塩化アルミニウムの替わりにカチオン性シリカゾルを用いる【0043】 耐熱性無機繊維シート基材の製造方法」 (ウ)対比・判断 (ウ-1)本件発明1について 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「ガラス繊維」及び「生体溶解性セラミック繊維」は、耐熱性無機繊維シート基材の材料であり、いずれも無機繊維であるから、それぞれ「第1の無機繊維」、「第2の無機繊維」と称することができる。 そして、甲2発明の「ガラス繊維」の平均繊維径は「5~15μm」であり、「生体溶解性セラミック繊維」の平均繊維径は「2~5μm」であるから、ガラス繊維の平均繊維径が、生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径よりも大きい。 甲2発明においては、「無機バインダーとして硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のカチオン性無機バインダーとセピオライト」は、耐熱性無機繊維シート基材の材料である無機素材であり、一般に粒子の形状をもつものであるから、本件発明1の「無機粒子」に対応する。 そして、「セピオライト」は、含水ケイ酸マグネシウムからなるから、「酸化物粒子」に含まれる。また、カチオン性無機バインダーとして用いる「カチオン性シリカゾル」は、コロイダルシリカを意味する用語であるから、「酸化物粒子」であり、「ナノ粒子」であるといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、材料として、無機粒子を含み、無機粒子が、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」点で一致する。 甲2発明は、湿式抄造において「有機繊維」を用いるものであり、「有機繊維」は「結合材」ということができる。 甲2発明は、「原料スラリーを調成し、この原料スラリーを用いてウェブを長網抄紙機で希釈抄造し、湿式ウェブをプレスロールで脱水した後、130℃で加熱乾燥処理する」湿式抄造により耐熱性無機繊維シート基材を製造するものであり、本件発明1の「湿式成形法により型成形して製造する」ことと甲2発明とは、「湿式により製造する」点で一致する。 甲2発明の「耐熱性無機繊維シート基材」は、断熱材として活用されるから、本件発明1の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明1と甲2発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を、湿式により製造する熱伝達抑制シートの製造方法であって、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「湿式により製造する」点について、本件発明1は「湿式成形法により型成形して製造する」のに対して、甲2発明は原料スラリーを調成し、湿式抄造により製造する点 相違点2:「第1の無機繊維」について、本件発明1は「線状又は針状」であるのに対して、甲2発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点3:「第2の無機繊維」について、本件発明1は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲2発明は生体溶解性セラミック繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲2発明において、「生体溶解性セラミック繊維」は、「平均繊維径2~5μm」である。 そして、甲2には、「本発明における生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径は2~5μmであることが好ましく、2~4μmがより好ましい。平均繊維径が2μm未満では、繊維が細すぎて、抄造時に耐熱性無機繊維シート基材から該生体溶解性セラミック繊維が脱落し、物理強度が不十分となる場合があると共に、人体への安全性に劣る場合がある。」(【0015】)と記載されており、甲2発明において、生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径を、「1nm以上1μm未満」とすることに、阻害要因がある。 そうすると、甲2発明において、「生体溶解性セラミック繊維」の平均繊維径を「1nm以上1μm未満」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、相違点3は、当業者が容易になし得たものではない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-2)本件発明3について 本件発明3と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「ガラス繊維」及び「生体溶解性セラミック繊維」は、耐熱性無機繊維シート基材の材料であり、いずれも無機繊維であるから、それぞれ「第1の無機繊維」、「第2の無機繊維」と称することができる。 そして、甲2発明の「ガラス繊維」の平均繊維径は「5~15μm」であり、「生体溶解性セラミック繊維」の平均繊維径は「2~5μm」であるから、ガラス繊維の平均繊維径が、生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径よりも大きい。 甲2発明においては、「無機バインダーとして硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のカチオン性無機バインダーとセピオライト」は、耐熱性無機繊維シート基材の材料である無機素材であり、一般に粒子の形状をもつものであるから、本件発明3の「無機粒子」に対応する。 そして、「セピオライト」は、含水ケイ酸マグネシウムからなるから、「酸化物粒子」に含まれる。また、カチオン性無機バインダーとして用いる「カチオン性シリカゾル」は、コロイダルシリカを意味する用語であるから、「酸化物粒子」であり、「ナノ粒子」であるといえる。 そうすると、本件発明3と甲2発明とは、材料として、無機粒子を含み、無機粒子が、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む」点で一致する。 甲2発明は、湿式抄造において「有機繊維」を用いるものであり、「有機繊維」は「結合材」ということができる。 甲2発明の「原料スラリー」は、本件発明3の「混合液」に相当する。 そして、「生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ、ポリビニルアルコール繊維を水中に順次添加混合」して「原料スラリーを調成」するから、本件発明3と甲2発明とは、「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を水中で混合して混合液を調製する工程」を有する点で一致する。 また、「プレスロールで脱水した後の」「湿式ウェブ」は、本件発明3の「湿潤シート」に相当するから、本件発明3と甲2発明とは、「前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程」を有する点で一致する。 さらに、甲2発明の湿式ウェブをプレスロールで脱水した後、「130℃で加熱乾燥処理する」ことと、本件発明3の「前記湿潤シートを加熱及び加圧する工程」とは、「前記湿潤シートを加熱する工程」で一致する。 甲2発明の「耐熱性無機繊維シート基材」は、断熱材として活用されるから、本件発明3の「熱伝達抑制シート」に対応する。 以上より、本件発明3と甲2発明とは、 「少なくとも無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維と、結合材とを含む材料を水中で混合して混合液を調製する工程と、 前記混合液を脱水して湿潤シートを作製する工程と、 前記湿潤シートを加熱する工程と、 を有する、熱伝達抑制シートの製造方法であって、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ、前記無機粒子がナノ粒子を含む、熱伝達抑制シートの製造方法」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1’:「混合液を調製する工程」において、本件発明3は、「撹拌」することが特定されているのに対して、甲2発明では、撹拌しているか特定されていない点 相違点2’:本件発明3は、湿潤シートを「加熱及び加圧する工程」を有しているのに対して、甲2発明は、「130℃で加熱乾燥処理」であり、「加圧」するか否か特定がない点 相違点3’:「第1の無機繊維」について、本件発明3は「線状又は針状」であるのに対して、甲2発明はガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点4’:「第2の無機繊維」について、本件発明3は「樹枝状又は縮れ状」であり、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上である」のに対して、甲2発明は生体溶解性セラミック繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4’について検討する。 甲2発明において、「生体溶解性セラミック繊維」は、「平均繊維径2~5μm」である。 そして、甲2には、「本発明における生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径は2~5μmであることが好ましく、2~4μmがより好ましい。平均繊維径が2μm未満では、繊維が細すぎて、抄造時に耐熱性無機繊維シート基材から該生体溶解性セラミック繊維が脱落し、物理強度が不十分となる場合があると共に、人体への安全性に劣る場合がある。」(【0015】)と記載されており、甲2発明において、生体溶解性セラミック繊維の平均繊維径を、「1nm以上1μm未満」とすることに、阻害要因がある。 そうすると、甲2発明において、「生体溶解性セラミック繊維」の平均繊維径を「1nm以上1μm未満」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、相違点4’は、当業者が容易になし得たものではない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-3)本件発明2、4、6~7について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含む発明である。 また、本件発明6~7は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項を全て含む発明である。 そうすると、本件発明2、4、6~7は、前記(ウ-1)で対比した相違点3、又は前記(ウ-2)で対比した相違点4’を含むものであり、前記(ウ-1)又は(ウ-2)と同様に、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ)まとめ 請求項9~16は、本件訂正請求により削除されている。 したがって、前記申立理由4ウの申立理由は、理由がない。 エ 申立理由4(新規性、進歩性)のまとめ よって、申立理由4(新規性、進歩性)は理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8及び19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~8及び19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件請求項9~18に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項9~18に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700945

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