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特許異議申立

2022-700650

熱伝達抑制シート及び組電池

審判番号
2022-700650
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-181463
登録番号
7000626
請求日
2022年07月14日
審決日
2024年01月15日
公報発行日
2024年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】イビデン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
  • 【異議申立人】古谷 多賀志
  • 【異議申立人代理人】神谷 惠理子
審判長/審判官
  • 審判長 猪瀬 隆広
  • 審判官 衣鳩 文彦
  • 審判官 土居 仁士
分類
P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.536-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第2条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7000626号発明「熱伝達抑制シート及び組電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7000626号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。 特許第7000626号の請求項1~4、6、9及び14~16に係る特許を維持する。 同請求項5、7~8及び10~13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯及び証拠方法 1 手続の経緯 特許第7000626号の請求項1~16に係る特許についての出願は、令和2年7月10日を出願日とする特願2020-119429号の一部を新たな特許出願として令和3年11月5日に出願したものであって、令和3年12月27日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 7月14日 :特許異議申立人 古谷 多賀志(以下「申立 人」という。)による請求項1~16に係る 特許に対する特許異議の申立て 10月31日付け:取消理由通知書 12月28日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 令和5年 3月 3日 :申立人による意見書の提出 3月29日付け:取消理由通知書(決定の予告) 5月17日 :特許権者との面接 6月 2日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 7月12日付け:取消理由通知書(決定の予告) 9月19日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 なお、特許法120条の5第7項の規定により、令和4年12月28日、及び令和5年6月2日にされた訂正の請求は、取下げられたものとみなされる。 また、令和5年6月2日の訂正の請求に係る訂正については、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したことにより、特許法120条の5第5項ただし書に規定された「特別の事情があるとき」に該当するといえることから、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 そして、令和5年9月19日の訂正の請求に係る訂正は、令和5年6月2日の訂正の請求に係る訂正特許請求の範囲をさらに減縮するものであるから、同様の判断により、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 以下、令和5年7月12日付け取消理由通知書(決定の予告)を「決定の予告2」といい、令和5年9月19日の訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。 2 証拠方法 (1)申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2019/187313号 甲第2号証:国際公開第2018/211906号 甲第3号証:国際公開第2020/023357号及び訳文として特表2021-531631号公報 甲第4号証:特開2016-71376号公報 甲第5号証:機能性粘土素材の最新動向、普及版、p.16、p.20-27 甲第6号証:特許第7000626号の図2 甲第7号証:シラスバルーン(マールライトR)(webページ)、http://www.marunakahakudo.co.jp/balloon/index.html(なお、上付きの「R」は、丸囲みの「R」を表記したものである。) 甲第8号証:高機能添加剤カタログ、p.9 甲第9号証の1:新・繊維総合辞典、初版、p.149‐150、p.227 甲第9号証の2:「人造鉱物繊維の概要」ニチアス技術時報 No.382 2018年3号、p.12-17 甲第9号証の3:やさしい産業用繊維の基礎知識、初版、p.143 甲第10号証の1:化学大辞典 6、縮刷版第24刷、p.696-697 甲第10号証の2:粉体工学ハンドブック、初版、p.663 甲第10号証の3:高純度シリカの製造と応用、普及版、p.265 甲第10号証の4:「ゲル法シリカの特徴と応用」東ソー研究・技術報告、Vol45(2001)、p.65-69 甲第10号証の5:「ナノマテリアル情報提供シート」、非晶質コロイダルシリカ、日産化学株式会社(webページ)、https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/files/nanomaterial/SiO3_2018.pdf 甲第10号証の6:日本アエロジル株式会社 製品案内、第10版 甲第10号証の7:Silica Aerogel Composites、p.18、p.44、p.99及び部分訳 甲第11号証の1:粉体工学用語辞典、第2版、p.375-377 甲第11号証の2:粉体工学ハンドブック、初版、p.7-8、p.26-27、p.31-33、p.39、p.70 甲第11号証の3:ナノ粒子のはなし、初版、p.90 甲第11号証の4:きちんと知りたい粒子分散液の作り方・使い方、初版、p.7-8、p.12-13 甲第12号証:米国公開第2020/0141300号及び部分訳 (以下、「甲第1号証」~「甲第12号証」を、「甲1」~「甲12」ということがある。) (2)特許権者が令和4年12月28日に提出した意見書に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 乙第1号証:「エアロゾル研究 繊維状粒子の環境測定(Measurements of Airborne Fibrous Particles)」、Vol.6、No.1(1991)、p.17-24 乙第2号証:特開平11-35381号公報 乙第3号証:「粘土科学」、第9巻 第1・2号、p.10-18、1969 乙第4号証:「粘土科学」、第32巻 第3号 p.184-189、1992 乙第5号証:「繊維と工業」、Vol.52 No.3、p.119-123、1996 (3)申立人が令和5年3月3日に提出した意見書に添付した参考資料は、以下のとおりである。 参考資料1:「繊維状粒子の環境測定」エアロゾル研究、Vol.6、No.1、p.17-24 参考資料2:特開平11-35381号公報 参考資料3:「セピオライトの外形態」、粘土科学、第32巻 第3号 p.184-189 参考資料4:国際公開第2020/129274号 参考資料5:「韓国慶尚北道尚州産セピオライトについて」粘土科学、第9巻 第1・2号、p.10-18 なお、参考資料1、参考資料2、参考資料3、参考資料5は、それぞれ、乙第1号証、乙第2号証、乙第4号証、乙第3号証と同じである。 (4)更に、特許権者は、令和5年9月19日に提出した訂正請求書において、前記乙第1号証を証拠方法として添付している。 第2 訂正の適否についての判断 1 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、熱伝達抑制シート。」と記載されているのを、「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む、熱伝達抑制シート。」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、15及び16も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」と記載されているのを、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下である、」に訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、15及び16も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及び鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」と記載されているのを、「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」に訂正する(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4、15及び16も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。」と記載されているのを、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、前記無機粒子が、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる、熱伝達抑制シート。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に「前記酸化物粒子が、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種からなる、請求項6~8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。」と記載されているのを、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる、熱伝達抑制シート。」に訂正する(請求項9を直接的に引用する請求項14も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14の「請求項9~13のいずれか1項」を「請求項9」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項15の「請求項1~14のいずれか1項」を「請求項1~4のいずれか1項」に訂正する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項16の「請求項1~15のいずれか1項」を「請求項1~4のいずれか1項」に訂正する。 (16)一群の請求項について 訂正前の請求項1~16について、請求項2~16は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、「第2の無機繊維」について、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなること、その平均繊維径と第1の無機繊維の平均繊維径との関係、及びその形状が樹枝状又は縮れ状であることのみが特定されている。 これに対して、訂正後の請求項1は、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「第2の無機繊維」をより具体的に特定し、更に限定するものである。 また、訂正前の請求項1に係る発明は、「無機粒子」について、何ら特定されていない。 これに対して、訂正後の請求項1は、「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における無機粒子をより具体的に特定し、更に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項1は「第2の無機繊維」及び「無機粒子」をより具体的に特定し、更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内の訂正であること (ア)訂正事項1のうち「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」について 訂正前の請求項2には、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」との記載がなされており、また、明細書の段落【0055】には、「このような効果を発現するために、第2の無機繊維31の平均繊維径は1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。・・・(略)・・・第2の無機繊維31の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。」との記載がなされている。 (イ)訂正事項1のうち「前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」について 明細書の段落【0055】には、「更に、第2の無機繊維31は、長くなりすぎると成形性や保形性が低下するため、繊維長を0.1mm以下とすることが好ましい。」と記載され、第2の無機繊維の繊維長の下限については、明細書等には記載されていない。 しかしながら、本件発明の「第2の無機繊維」は、「繊維」として特定されることから、その「長」さが「径」よりも大きいこと、すなわち、「繊維長」が「繊維径」よりも大きいことは、技術常識上明らかであり、「第2の無機繊維」の「繊維長」がその「平均繊維径」より大きいことは、自明な事項である。 また、訂正事項1は、第2の無機繊維について、その平均繊維径を「1nm以上1μm未満」と訂正することを含むものである。 そして、平均繊維径が1nm以上1μm未満である第2の無機繊維について、繊維長が1μm以上であれば、1nm以上1μm未満の平均繊維径の範囲において繊維長は必ず大きくなるから、「繊維長が1μm以上であ」ることを特定することは、繊維であることから導き出される前記自明な事項を追加するものである。 したがって、「前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」は、平均繊維径が1nm以上1μm未満である第2の無機繊維についての明細書等の記載から自明に導き出される事項であり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)訂正事項1のうち「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む、」について 訂正前の請求項6には、「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなる、」との記載がなされており、また、訂正前の請求項11には、「前記無機粒子がナノ粒子を含む、」との記載がなされている。 (エ)よって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2における「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下であり、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満である、」との記載を、前記訂正事項1のとおり、訂正後の請求項1において「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」の発明特定事項により更に限定したことに伴い、訂正後の請求項2において、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下である、」と訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、前記訂正事項1のとおり、訂正後の請求項1において、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」の発明特定事項により更に限定したことに伴い、請求項2の記載を整合させるために行うものであり、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、前記訂正事項1のとおり、訂正後の請求項1において、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、」の発明特定事項により更に限定したことに伴い、請求項2の記載を整合させるために行うものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3における「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及び鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」との記載において、「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」は、いずれも「鉱物繊維」に分類されることから、同様に列挙される「鉱物系繊維」との関係が不明瞭であった記載を、「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、」に訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、前記アのとおり、不明瞭であった記載を明瞭な記載とするものであり、訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 「鉱物系繊維」は、「鉱物繊維」に分類される繊維を総称する表現と把握することができる。 そして、「鉱物系繊維」は、天然鉱物繊維及び人造鉱物繊維に大きく分類され、訂正前の請求項3における「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」は、いずれも「鉱物系繊維」のうちの「人造鉱物繊維」に分類されるものであって、「鉱物系繊維」には、これらの繊維以外の繊維が広く知られていることは技術常識といえる。 そうすると、訂正事項3は、「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」と「鉱物系繊維」との関係において、「鉱物系繊維」に含まれる「シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維」を、重複しないようにする訂正であるから、明細書等の記載から自明に導き出される事項であり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (4)訂正事項4、6、7及び9~12 ア 訂正の目的について 訂正事項4、6、7及び9~12は、それぞれ、訂正前の請求項5、7、8及び10~13を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項4、6、7及び9~12は請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記アで示したとおり、訂正事項4、6、7及び9~12は請求項を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項6に記載された発明が、訂正前の請求項1~5のいずれか1項に記載された発明を択一的に含むものであったものを、訂正前の請求項1に記載された発明を含むもののみに限定するとともに、請求項間の引用関係を解消し独立形式請求項へ改めるための訂正(以下「訂正事項5の1」という。)を含み、 本件発明の無機粒子と第2の無機粒子とを明確に区別するために、訂正前の請求項6において、無機粒子が「線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く」ことを規定したものであって、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含されると解される一部の事項のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示するとともに、無機粒子と第2の無機繊維が明確に区別することができないものとなっているものを明瞭にするための訂正(以下「訂正事項5の2」という。)を含み、 訂正前の請求項6に択一的に記載されていた「酸化物粒子」及び「無機水和物粒子」を削除することで、無機粒子について選択肢を限定する訂正(以下「訂正事項5の3」という。)を含み、 更に、第2の無機繊維について、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」との記載により、第2の無機繊維をより具体的に特定し、更に限定する訂正(以下「訂正事項5の4」という。)を含むものである。 したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、訂正前の請求項6に記載された発明において、訂正前の請求項1に記載された発明を含むもののみに限定する(前記訂正事項5の1)とともに、「無機粒子」が、線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除くことを規定し(前記訂正事項5の2)、訂正前の請求項6に択一的に記載されていた「酸化物粒子」及び「無機水和物粒子」を削除し(前記訂正事項5の3)、「第2の無機繊維」をより具体的に特定する(前記訂正事項5の4)ものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること (ア)訂正事項5のうち、前記訂正事項5の1は、訂正前の請求項1に記載された発明を含むもののみに限定するものであるから、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 (イ)訂正事項5のうち、前記訂正事項5の2は、第1の無機繊維として特定されている「線状又は針状」の繊維状粒子、第2の無機繊維として特定されている「樹枝状又は縮れ状」の繊維状粒子を除く旨の規定をしたものであって、訂正前の請求項6の無機粒子が本来包含していた「線状、針状、樹枝状又は縮れ状の繊維状粒子」を除くものであり、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)訂正事項5のうち、前記訂正事項5の3は、訂正前の請求項6に択一的に記載されていた「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子」から、「酸化物粒子」及び「無機水和物粒子」を削除するものであるから、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 (エ)訂正事項5のうち、前記訂正事項5の4は、前記(1)ウ(ア)、(イ)のとおりであり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (オ)また、(ア)~(エ)を総合することで訂正事項5全体を見ても、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (カ)したがって、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (6)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正前の請求項9に記載された発明が、訂正前の請求項6~8のいずれか1項に記載された発明を択一的に含み、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5のいずれか1項に記載された発明を択一的に含むものであったものを、訂正後の請求項9に記載された発明が、訂正前の請求項6に記載された発明を含み、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明を含むもののみに限定するとともに、請求項間の引用関係を解消し独立形式請求項へ改めるための訂正(以下「訂正事項8の1」という。)を含み、 本件発明の無機粒子と第2の無機粒子とを明確に区別するために、訂正前の請求項9において、無機粒子が「線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く」ことを規定したものであって、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含されると解される一部の事項のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示するとともに、無機粒子と第2の無機繊維が明確に区別することができないものとなっているものを明瞭にするための訂正(以下「訂正事項8の2」という。)を含み、 訂正前の請求項6に択一的に記載されていた「無機水和物粒子」を削除することで、無機粒子について選択肢を限定するとともに、訂正前の請求項9に択一的に記載されていた「シリカ」及び「アルミナ」を削除することで、酸化物粒子について選択肢を限定する訂正(以下「訂正事項8の3」という。)を含み、 更に、第2の無機繊維について、「前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、」との記載により、第2の無機繊維をより具体的に特定し、更に限定する訂正(以下「訂正事項8の4」という。)を含むものである。 したがって、訂正事項8は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、訂正前の請求項9に記載された発明において、訂正前の請求項6に記載された発明を含み、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明を含むもののみに限定する(前記訂正事項8の1)とともに、「無機粒子」が、線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除くことを規定し(前記訂正事項8の2)、訂正前の請求項6に択一的に記載されていた「無機水和物粒子」を削除するとともに、訂正前の請求項9に択一的に記載されていた「シリカ」及び「アルミナ」を削除し(前記訂正事項8の3)、「第2の無機繊維」をより具体的に特定する(前記訂正事項8の4)ものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること (ア)訂正事項8のうち、前記訂正事項8の1は、訂正前の請求項6に記載された発明を含み、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明を含むもののみに限定するものであるから、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 (イ)訂正事項8のうち、前記訂正事項8の2は、第1の無機繊維として特定されている「線状又は針状」の繊維状粒子、第2の無機繊維として特定されている「樹枝状又は縮れ状」の繊維状粒子を除く旨の規定をしたものであって、訂正前の請求項9の無機粒子が本来包含していた「線状、針状、樹枝状又は縮れ状の繊維状粒子」を除くものであり、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)訂正事項8のうち、前記訂正事項8の3は、訂正前の請求項6に択一的に記載されていた「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子」から、「無機水和物粒子」を削除するとともに、訂正前の請求項9に択一的に記載されていた「シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナ」から、「シリカ」及び「アルミナ」を削除するものであるから、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 (エ)訂正事項8のうち、前記訂正事項8の4は、前記(1)ウ(ア)、(イ)のとおりであり、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (オ)また、(ア)~(エ)を総合することで訂正事項8全体を見ても、明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (カ)したがって、訂正事項8は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (7)訂正事項13 ア 訂正の目的について 訂正事項13は、訂正前の請求項14における「請求項9~13のいずれか1項」との記載を、訂正事項9~12のとおり訂正前の請求項10~13を削除したことに伴い、訂正後の請求項14において「請求項9」と訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項13は、訂正事項9~12のとおり訂正前の請求項10~13を削除したことに伴い、請求項14の記載を整合させるために行うものであり、訂正前の請求項14に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項13は、訂正事項9~12のとおり訂正前の請求項10~13を削除したことに伴い、請求項14の記載を整合させるために行うものであり、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (8)訂正事項14 ア 訂正の目的について 訂正事項14は、訂正前の請求項15における「請求項1~14のいずれか1項」との記載を、訂正後の請求項15において「請求項1~4のいずれか1項」と訂正するものであり、引用する請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項14は、引用する請求項を削除するものであり、訂正前の請求項15に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項14は、引用する請求項を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (9)訂正事項15 ア 訂正の目的について 訂正事項15は、訂正前の請求項16における「請求項1~15のいずれか1項」との記載を、訂正後の請求項16において「請求項1~4のいずれか1項」と訂正するものであり、引用する請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項15は、引用する請求項を削除するものであり、訂正前の請求項16に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項15は、引用する請求項を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (10)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項1~16についてされているので、訂正事項1~15に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1~15に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2の3のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~4、6、9及び14~16に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6、9及び14~16に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、訂正後の請求項1~4、6、9及び14~16に係る発明を、それぞれ「本件発明1~4、6、9及び14~16」といい、まとめて「本件発明」ということがある。) 「【請求項1】 無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、 前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 かつ、 前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、 前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、 前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む、熱伝達抑制シート。 【請求項2】 前記第1の無機繊維の平均繊維径が1μm以上20μm以下である、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。 【請求項3】 前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維は、同一の種類の繊維又は互いに異なる種類の繊維であり、 前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シート。 【請求項4】 前記第1の無機繊維がガラス繊維であり、 前記第2の無機繊維が鉱物系繊維である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、 前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 かつ、 前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、 前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、 前記無機粒子が、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる、熱伝達抑制シート。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、 前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに、 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、 かつ、 前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、 前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であり、 前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、 前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる、熱伝達抑制シート。 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 前記酸化物粒子がチタニアを含む、請求項9に記載の熱伝達抑制シート。 【請求項15】 熱伝達抑制シート全質量に対して、 前記無機粒子の含有量が30質量%以上94質量%以下、 前記第1の無機繊維の含有量が3質量%以上30質量%以下、及び 前記第2の無機繊維の含有量が3質量%以上30質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。 【請求項16】 複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池において、 請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートを、前記電池セル間に介在させた、組電池。」 第4 決定の予告2の概要 当審にて令和5年7月12日付けで特許権者に通知した決定の予告2における取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由5(進歩性) 本件訂正前(当審注;令和5年6月2日にされた訂正の請求後)の請求項6、9、14~16に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前(当審注;令和5年6月2日にされた訂正の請求後)の請求項6、9、14~16に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 第5 決定の予告2についての当審の判断 1 甲第3号証 (1)甲3には、次の事項が記載されている。なお、当審訳として甲3の訳文として提出された特表2021-531631号公報の対応する記載を、段落番号と併せて採用した。また、下線は強調のため、当審にて付与したものである。 「 The present invention is directed to a flame resistant electrical insulating material for use in electric vehicles. In particular, the exemplary electrical insulating material can be formed as flame resistant inorganic paper(s) or board(s) capable of passing UL 94-VO, 5VA flame resistance tests. In addition, some exemplary flame resistant inorganic paper or board materials can withstand direct exposure to a 2054°C (3730°F) flame for at least 10 minutes without puncturing. Such inorganic paper or boards are thus useful as a protective device, such as a thermal or flame barrier for electric vehicle battery applications. Background Growth of battery electric vehicles powered by lithium ion battery packs has created a need for containing the potential dangers associated with thermal runaway reactions in the lithium ion batteries. Currently, electric vehicles manufacturers have diverse requirements and approaches for the use of battery insulation materials. One conventional approach employs mica board as a flame resistant barrier in some electric vehicle battery applications where the requirement is to withstand a high temperature torch for up to ten minutes without puncturing or breaking.」(1頁5行~19行) (当審訳: 【0001】 本発明は、電気自動車に使用するための耐炎性電気絶縁材料に関する。詳細には、例示的な電気絶縁材料は、UL94-V0、5VA耐炎試験に合格する能力を有する耐炎性無機系紙又は板として形成され得る。加えて、いくつかの例示的な耐炎性無機系紙又は板材料は、2054℃(3730°F)の火炎への直接曝露に、穴開きを生じることなく、少なくとも10分間耐えることができる。それゆえ、このような無機系紙又は板は、電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である。 【背景技術】 【0002】 リチウムイオン電池パックによって給電される電池式電気自動車の成長は、リチウムイオン電池内の熱暴走反応に関連付けられる潜在的危険を阻止する必要性を生じさせた。現在、電気自動車製造業者は、電池絶縁材料の使用のための種々の要求及びアプローチを有する。要求が、高温トーチに、穴開きも破れも生じることなく最大10分間耐えることである、いくつかの電気自動車電池用途において、1つの従来のアプローチはマイカ板を耐炎性バリアとして採用する。) 「 Exemplary electrical insulating materials in the form of flame resistant, inorganic paper(s) or board(s) of the present invention are able to withstand harsh, high temperature flammability tests while also providing low thermal conductivity for thermal insulation and low density for reduced weight. Formulations can be tailored to meet differing customer requirements or enhance functionality. In a first embodiment, a flame resistant electrical insulating material comprises glass fibers, a particulate filler mixture, and an inorganic binder, wherein the electrical insulating material has a UL-94 flammability rating of V-0, 5VA and a thermal conductivity of less than 0.15 W/m-K. The particulate filler mixture comprises at least two particulate filler materials selected from the list of glass bubbles, kaolin clay, talc, mica, calcium carbonate, and alumina trihydrate.」(2頁9行~19行) (当審訳: 【0007】 本発明の耐炎性無機系紙又は板の形態の例示的な電気絶縁材料は、厳しい高温燃焼性試験に耐えることができ、その一方で、断熱のための低い熱伝導率及び重量低減のための低い密度をももたらす。配合は、異なる顧客要求を満たすか、又は機能性を向上させるように調整することができる。 【0008】 第1の実施形態では、耐炎性電気絶縁材料は、ガラス繊維と、微粒子充填剤混合物と、無機結合剤とを含み、電気絶縁材料は、V-0、5VAのUL-94燃焼性等級、及び0.15W/m-K未満の熱伝導率を有する。微粒子充填剤混合物は、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のリストから選択される少なくとも2種の微粒子充填剤材料を含む。) 「 The exemplary inorganic paper comprises a combination of glass fibers and microglass fibers. These fibers interlock together to form the structural support of the inorganic fillers. The glass fiber content of the paper will be from about 3 wt.% to 25 wt.%, with the ratio of glass staple fibers to micro glass fibers being 5: 1 to 1 :3. The diameter of the glass fibers can affect the processing of the paper, as well as the final performance of the resulting inorganic papers or boards. Exemplary glass staple fibers diameters are 12 microns or less, although small amounts of larger diameter fibers may be incorporated. Smaller diameter glass fibers have a greater surface area than an equivalent amount of larger diameter fibers enabling entrapment of an increase amount of particulate filler materials. The microglass fibers used in the present invention typically have a diameter of less than 5 microns. The working diameter range for the glass fibers and glass microfibers is from about 0.1 micron to about 12 microns.」(4頁19行~30行) (当審訳: 【0020】 例示的な無機系紙はガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせを含む。これらの繊維は共に相互に絡み、無機充填剤の構造支持体を形成する。 【0021】 紙のガラス繊維含有率は約3重量%~25重量%になり、ガラス短繊維とマイクロガラス繊維との比は5:1~1:3になる。 【0022】 ガラス繊維の直径は、紙の処理、及び得られた無機系紙若しくは板の最終性能に影響を及ぼし得る。例示的なガラス短繊維の直径は12μm以下であるが、少量のより大きい直径の繊維が組み込まれてもよい。より小さい直径のガラス繊維は、同等量のより大きい直径の繊維よりも大きい表面積を有し、量の微粒子充填剤材料の捕捉量の増大を可能にする。本発明において用いられるマイクロガラス繊維は、典型的には5μm未満の直径を有する。ガラス繊維及びガラスマイクロファイバのための実用直径範囲は約0.1μm~約12μmである。) 「 In at least one embodiment of the present invention, the nonwoven paper also comprises one or more inorganic particulate fillers. Exemplary inorganic particulate fillers are generally non-endothermic. Suitable inorganic particulate fillers include, but are not limited to, glass bubbles, kaolin clay, talc, mica, calcium carbonate, wollastonite, montmorillonite, smectite, bentonite, illite, chlorite, sepiolite, attapulgite, halloysite, vermiculite, laponite, rectorite, perlite, and combinations thereof, preferably a particulate filler mixture comprises at least two of glass bubbles, kaolin clay, talc, mica, calcium carbonate, and alumina trihydrate. Suitable types of kaolin clay include, but are not limited to, water-washed kaolin clay; delaminated kaolin clay; calcined kaolin clay; and surface-treated kaolin clay. In a preferred embodiment, inorganic particulate filler comprises glass bubbles, kaolin clay, mica and mixtures thereof. Optionally, an endothermic filler, such as alumina trihydrate, can be added. The particulate inorganic filler content of the paper will be from about 65 wt.% to 87 wt.%. In the exemplary papers of the present invention comprise a mixture of particulate inorganic fillers. For example, the exemplary papers and boards comprise between about 20 wt.% to 45 wt.% of kaolin clay, from about 25 wt.% to 45 wt.% mica, and from about 5 wt.% to 15 wt.% glass bubbles based on the total weight of the exemplary paper. In an alternative embodiment, the exemplary papers and boards comprise between about 55 wt.% to 80 wt.% of kaolin clay and from about 5 wt.% to 15 wt.% glass bubbles based on the total weight of the exemplary paper. The exemplary inorganic paper further comprises 5 wt.% - 20 wt.%, preferably 5 wt.% - 15 wt.% inorganic binder. The inorganic binder can be selected from sodium silicate, lithium silicate, potassium silicate or a combination thereof. Additional processing aids such as defoamers, surfactants, forming aids, pH-adjusting materials, paper strengthening agents, and etc. known to those skilled in the art can also be incorporated. The above electrical insulating materials can be used in a protective device or system, such as a thermal/flame barrier. For example, one or more sheets of an exemplary electrical insulating material can be incorporated into or wrapped around a flammable energy storage device, such as lithium ion battery cells, modules, or packs, such as may be found in hybrid or electric vehicles or other electric transportation applications or locations. For example, Fig. 1 shows an implementation of the exemplary insulation materials described herein. In Fig. 1, a battery module 100 includes an assembly of battery cells 102. One or more thermal barrier/flame resistant sheets or boards 110, formed from the exemplary materials described herein, can be disposed between individual battery cells or groups of cells at one or more locations throughout the battery module.」(5頁7行~6頁7行) (当審訳: 【0025】 本発明の少なくとも1つの実施形態では、不織紙はまた、1種以上の無機微粒子充填剤を含む。例示的な無機微粒子充填剤は、概して、非吸熱性である。好適な無機微粒子充填剤としては、限定するものではないが、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、微粒子充填剤混合物は、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む。好適なカオリン粘土の種類としては、湿式カオリン粘土、デラミカオリン粘土、焼成カオリン粘土、及び表面処理カオリン粘土が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、無機微粒子充填剤は、グラスバブル、カオリン粘土、マイカ、及びこれらの混合物を含む。任意選択的に、アルミナ三水和物などの、吸熱性充填剤を添加することができる。 【0026】 紙の微粒子無機充填剤含有率は約65重量%~87重量%になる。本発明の例示的な紙では、微粒子無機充填剤の混合物を含める。例えば、例示的な紙及び板は、例示的な紙の総重量に基づいて、約20重量%~45重量%のカオリン粘土、約25重量%~45重量%のマイカ、及び約5重量%~15重量%のグラスバブルを含む。代替的な実施形態では、例示的な紙及び板は、例示的な紙の総重量に基づいて、約55重量%~80重量%のカオリン粘土、及び約5重量%~15重量%のグラスバブルを含む。 【0027】 例示的な無機系紙は、5重量%~20重量%、好ましくは、5重量%~15重量%の無機結合剤を更に含む。無機結合剤は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、又はこれらの組み合わせから選択され得る。 【0028】 当業者に知られた、消泡剤、界面活性剤、成形助剤、pH調整材、紙力増強剤等などの追加の加工助剤を組み込むこともできる。 【0029】 上述の電気絶縁材料は、熱/火炎バリアなどの、保護デバイス又はシステム内で用いることができる。例えば、例示的な電気絶縁材料の1枚以上のシートを、ハイブリッド若しくは電気自動車又は他の電気輸送用途物若しくは場所において見出され得るものなどの、リチウムイオン電池セル、リチウムイオン電池モジュール、若しくはリチウムイオン電池パックなどの、可燃性のエネルギー貯蔵デバイス内に組み込むか、又はその周りに巻き付けることができる。 【0030】 例えば、図1は、本明細書において説明される例示的な絶縁材料の一実装形態を示す。図1では、電池モジュール100が電池セル102のアセンブリを含む。本明細書において説明される例示的な材料から形成された、1枚以上の熱バリア/耐炎性シート又は板110を、電池モジュール全体にわたって1つ以上の場所において個々の電池セル又はセルのグループの間に配置することができる。) (2)甲3発明 以上より、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考に付した段落番号は、当審訳において採用した段落番号である。 「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせを含み、(【0020】) 紙のガラス繊維含有率は約3重量%~25重量%になり、ガラス短繊維とマイクロガラス繊維との比は5:1~1:3になり、(【0021】) 例示的なガラス短繊維の直径は12μm以下であり、マイクロガラス繊維は、典型的には5μm未満の直径を有し、ガラス繊維及びガラスマイクロファイバのための実用直径範囲は約0.1μm~約12μmであり、(【0022】) 無機微粒子充填剤として、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含み、(【0025】) 紙の微粒子無機充填剤含有率は約65重量%~87重量%になり、例示的な紙の総重量に基づいて、約20重量%~45重量%のカオリン粘土、約25重量%~45重量%のマイカ、及び約5重量%~15重量%のグラスバブルを含むものである、(【0026】) 電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である無機系紙(【0001】)」 2 本件発明と甲3発明との対比・判断 (1)本件発明6について ア 対比・判断 本件発明6と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「ガラス繊維及びマイクロガラス繊維の組み合わせ」は、無機繊維の組み合わせであり、「ガラス繊維」は、本件発明6の「第1の無機繊維」に対応させることできる。 甲3発明の「無機微粒子充填剤」は、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ことから、少なくとも2つの無機素材からなるものである。 そして、本件発明6の「無機粒子」及び「第2の無機繊維」は、いずれも「無機素材」であるから、本件発明6と甲3発明とは、「第1の無機素材」及び「第2の無機素材」を含む点で共通する。 甲3発明の「電気自動車電池用途の熱又は火炎バリアなどの、保護デバイスとして有用である無機系紙」は、本件発明6の「熱伝達抑制シート」に対応する。 そうすると、本件発明6と甲3発明とは、 「第1の無機素材と、第1の無機繊維と、第2の無機素材とを含む、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機素材」について、本件発明6は、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)」であり、「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」のに対して、甲3発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ものから選択される無機素材である点 相違点2:「第2の無機素材」について、本件発明6は、「第2の無機繊維」であり、「前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からな」り、「樹枝状又は縮れ状であって」、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」るのに対して、甲3発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ものから選択される無機素材である点 相違点3:「第1の無機繊維」について、本件発明6は、「非晶質の繊維であり」、「線状又は針状であり」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いのに対して、甲3発明は、ガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1について 甲3発明には、無機微粒子充填剤が、「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ことについて、特定されていない。 また、甲3には、無機微粒子充填剤として、「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲3発明において、無機微粒子充填剤が「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そして、本件発明6は、無機粒子が、「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ことにより、熱伝達抑制効果の向上(本件明細書【0034】~【0035】)という有利な効果を奏するものである。 そうすると、甲3発明において、無機粒子が、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなるものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲3発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 イ 本件発明6についてのまとめ 本件発明6は、前記アで判断したように、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明9について ア 対比・判断 本件発明9と甲3発明とを対比する。 本件発明9と甲3発明との対比は、前記(1)アでの、本件発明6と甲3発明との対比と同様に行うことができる。 そうすると、本件発明9と甲3発明とは、 「第1の無機素材と、第1の無機繊維と、第2の無機素材とを含む、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機素材」について、本件発明9は、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)」であり、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」のに対して、甲3発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ものから選択される無機素材である点 相違点2:「第2の無機素材」について、本件発明9は、「第2の無機繊維」であり、「前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からな」り、「樹枝状又は縮れ状であって」、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」るのに対して、甲3発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ものから選択される無機素材である点 相違点3:「第1の無機繊維」について、本件発明9は、「非晶質の繊維であり」、「線状又は針状であり」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いのに対して、甲3発明は、ガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1について 甲3発明には、無機微粒子充填剤が、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ことについて、特定されていない。 また、甲3には、無機微粒子充填剤として、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲3発明において、無機微粒子充填剤が「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そして、本件発明9は、無機粒子が、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ことにより、熱伝達抑制効果の観点(本件明細書【0034】~【0035】)、及び異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる(本件明細書【0038】)という、有利な効果が奏されるものである。 そうすると、甲3発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなるものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲3発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 イ 本件発明9についてのまとめ 本件発明9は、前記アで判断したように、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明14について 本件発明14は、本件発明9の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(2)アで対比した、相違点1を含むものであり、前記(2)と同様に、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明15~16について 本件発明15~16は、いずれも請求項1~4を引用するものであるから、まず、本件発明1~4と甲3発明とを対比する。 (4-1)本件発明1について ア 対比・判断 本件発明1と甲3発明とを対比する。 本件発明1と甲3発明との対比は、前記(1)アでの、本件発明6と甲3発明との対比と同様に行うことができる。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「第1の無機素材と、第1の無機繊維と、第2の無機素材とを含む、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機素材」について、本件発明1は、「無機粒子」であり、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」のに対して、甲3発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ものから選択される無機素材である点 相違点2:「第2の無機素材」について、本件発明1は、「第2の無機繊維」であり、「前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からな」り、「樹枝状又は縮れ状であって」、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」るのに対して、甲3発明は、「無機微粒子充填剤」として含む、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、バーミキュライト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、及びアルミナ三水和物のうちの少なくとも2種を含む」ものから選択される無機素材である点 相違点3:「第1の無機繊維」について、本件発明1は、「非晶質の繊維であり」、「線状又は針状であり」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いのに対して、甲3発明は、ガラス繊維であって、当該事項を特定していない点 相違点についての判断 相違点1について 甲3発明には、無機微粒子充填剤が、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことについて、特定されていない。 また、甲3には、無機微粒子充填剤として、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲3発明において、無機微粒子充填剤が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そして、本件発明1は、無機粒子が「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり」、かつ「ナノ粒子を含む」ことにより、熱伝達抑制効果の観点(本件明細書【0034】~【0035】)、及び通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる(本件明細書【0041】)という、有利な効果が奏されるものである。 そうすると、甲3発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 イ 本件発明1についてのまとめ 本件発明1は、前記アで判断したように、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4-2)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(4-1)アで対比した、相違点1を含むものであり、前記(4-1)と同様に、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4-3)本件発明15~16について 本件発明15~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(4-1)と同様に、本件発明15~16は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 小括 前記2(1)~(4)のとおり、本件発明6、9、14~16は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、決定の予告2に記載した取消理由により、本件請求項6、9、14~16に係る特許を取り消すことはできない。 第6 決定の予告2で採用しなかった特許異議申立理由について 1 決定の予告2で採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(明確性要件) 本件訂正前の請求項1~16に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し取り消すべきものである。 具体的には、以下のとおりである。なお、申立書における「第2無機繊維」(例えば、申立書47頁2行目等)は、本件明細書及び本件発明の「第2の無機繊維」に対応するものであることは明らかであるから、申立書における「第2無機繊維」との用語は、「第2の無機繊維」を意味するものとして、判断する。 ア 請求項1の無機粒子と第2の無機繊維の関係が不明確である。(申立書47~48頁) 粒子の形状はさまざまであり、樹枝状、繊維状の粒子もあるから、第2の無機繊維は、別の見地では、繊維状、樹枝状の粒子である。 そして、第2の無機繊維が繊維状粒子であると仮定した場合、無機粒子のサイズと重複するものが多く、また、無機粒子と第2の無機繊維は、その組成において共通するから、第2の無機繊維は、無機粒子と区別できない。 よって、請求項1及びこれを引用する請求項2~16に係る特許発明は明確でない。 イ 請求項3、4の「鉱物系繊維」がいかなる繊維を意味するのか不明である。(申立書48~49頁) 請求項3で列挙されている繊維は、いずれもが「鉱物繊維」であり、同列の「鉱物系繊維」との関係が明確でない。 また、「系」という用語により、「鉱物系繊維」の射程範囲が不明確である。 よって、請求項3、4及びこれらを引用する請求項に係る特許発明は不明確である。 ウ 請求項5の「平均二次粒子径」が不明確である。(申立書49頁) 二次粒子径について、どのような状態の粒子の粒子径であるのか、また、シートにおける二次粒子をとのように特定して、どのように測定するのか明細書に説明がなく不明確である。 さらに、第2の無機繊維が絡み合った場合も二次粒子に該当するから、第2の無機繊維は、無機粒子と区別ができない。 よって、請求項5は不明確であり、これを引用する請求項6~16に係る特許発明も不明確である。 エ 請求項10の「ナノ粒子」は、以下の点で明確でない。(申立書49~51頁) (i)請求項8の酸化物粒子との関係 請求項10で特定する「ナノ粒子」は、請求項8で特定するナノサイズの酸化物と同一物を特定していると解する場合、請求項8で特定する酸化物の一次粒子を、破砕によりナノスケールとすることにより、請求項10で特定する「ナノ粒子」に該当することになるが、単なる破砕により密度(かさ密度ではない)が低くなる(変動する)というのは技術常識からは考えにくい。 (ii)作用効果について 本件特許明細書における酸化物粒子の説明とナノ粒子の説明を照らし合わせると、異なる作用の説明がある。 材質、形状、その他の特徴が不明なナノ粒子の実態は不明であり、同一物質、同一サイズであり得る酸化物粒子との関係が不明である。 よって、用語「ナノ粒子」の意義が不明であるから、請求項10は明確でない。 オ 請求項12の「シリカナノ粒子」が明確でない。(申立書51~53頁) シリカに関する周知技術(事実)に照らすと、「シリカナノ粒子」がいかなるシリカ粒子を意味するのか、具体例が示されておらず、不明確である。 よって、請求項12に記載の「シリカナノ粒子」が明確でないので、請求項12に係る発明は、不明確である。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~16に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し取り消すべきものである。 具体的には、以下のとおりである。 ア 課題1(粉落ち)について(申立書53~55頁) 請求項1及びこれを引用する請求項2~16は、バインダーを一切含有しない熱伝達抑制シートを含んでいる。 しかしながら、バインダーを含んでいない場合、如何にして課題(当審注:「熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること」本件明細書【0006】、【0007】、申立書10頁)が解決されるのか、発明の詳細な説明には具体的な記載がない。 イ 第2の無機繊維の樹枝状又は縮れ状について(申立書55頁) 請求項1において、第2の無機繊維が「樹枝状又は縮れ状」であることが特定されている。 しかしながら、第2の無機繊維に、どのようにして、「樹枝状又は縮れ状」を付与するかといった説明は、明細書には一切なく、繊維径1μm未満の繊維に対して、樹枝状又は縮れ状を付与できるといった技術常識は見当たらない。 よって、「樹枝状又は縮れ状」を達成できる方法が発明の詳細な説明には記載されていない。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件訂正前の請求項1~16に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し取り消すべきものである。 具体的には、以下のとおりである。(申立書55~56頁) 本件特許出願時において、バインダーを使用することなく、多量の無機粒子を安定的に保持(課題1を解決)できるといった技術常識は存在せず、さらに、第2の無機繊維について、如何にして樹枝状、縮れ状を有する第2の無機繊維を入手、作成したのか、明らかでないから、シート全量に対して、30~94質量%という高含有量の無機粒子を安定的に保持した熱伝達抑制シートを作成することは困難である。 よって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (4)申立理由4(新規性、進歩性) ア 本件訂正前の請求項1、3、4、6、7、9、10及びこれらを引用する請求項16に係る特許発明は、甲1発明と同一であって、特許法29条1項3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 イ 本件訂正前の請求項1、2、3、4、6、7、9、10及びこれらを引用する請求項16に係る特許発明は、甲1発明及び周知技術・技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 ウ 本件訂正前の請求項1、3、4、6、7、9~13及びこれらを引用する請求項16に係る特許発明は、甲2発明、技術常識及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 エ 本件訂正前の請求項8、9、11~14に係る特許発明は、甲3発明及び甲1、甲12、技術常識、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 なお、進歩性に関する本件訂正前の「請求項1~4、6~10、15及びこれらを引用する請求項16に係る特許発明は、甲3発明及び甲1、技術常識、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。」(申立書63~67頁、70頁)との申立理由は、前記第5の2(4-1)及び(4-2)において、本件発明1~4について、「甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。」と判断していることから、当該申立理由は、理由がない。 2 決定の予告2で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断 (1)申立理由1(明確性要件) 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 ア 前記1(1)アについて (ア)本件発明1~4、15、16について 本件発明1は、「無機粒子」が「ナノ粒子を含む」ことが特定されている。また、「第2の無機繊維」は、「平均繊維径が1nm以上1μm未満」、かつ、「繊維長が1μm以上」であることが特定されている。 「ナノ粒子」は、粒子径がナノスケールの粒子として把握されるものであるから、本件発明1は、ナノスケールの無機粒子を含むものであり、繊維長が1μm以上である第2の無機繊維とは、そのサイズが明確に異なるものである。 そうすると、第2の無機繊維と無機粒子とは、明確に区別することができ、仮に第2の無機繊維が繊維状粒子であるとしても、両者は明確に区別することができるものである。 請求項1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~4、15、16においても、同様である。 (イ)本件発明6について 本件発明6は、「無機粒子」について、「線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く」ことが特定されている。 そうすると、本件発明6は、「線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く」「無機粒子」を含むものであり、本件発明6は、仮に「第2の無機繊維」が繊維状粒子であるとしても、繊維状粒子を除いた無機粒子を含むことから、第2の無機繊維と無機粒子とは、明確に区別できるものである。 (ウ)本件発明9、14について 本件発明9は、本件発明6と同様に、「無機粒子」について、「線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く」ことが特定されている。 そうすると、本件発明9は、「線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く」「無機粒子」を含むものであり、本件発明9は、仮に「第2の無機繊維」が繊維状粒子であるとしても、第2の無機繊維と無機粒子とは、明確に区別できるものである。 請求項9を引用する本件発明14においても、同様である。 (エ)小括 以上のとおり、本件発明において、「第2の無機繊維」と「無機粒子」とは明確に区別することができるから、第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。 よって、前記1(1)アの主張は採用できない。 イ 前記1(1)イについて 本件発明3は、「前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のそれぞれが、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、ガラス繊維及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維から選択される少なくとも1種からなる」ことを特定するものであり、列挙される繊維との重複は解消したことから、明確な記載である。 また、「鉱物系繊維」は、「鉱物繊維」に分類される繊維を総称する表現と把握することができ、その射程範囲は、「鉱物繊維」に分類される繊維として明確に把握することができる。 よって、本件発明3、及び請求項3を直接的又は間接的に引用する本件発明4、15、16は明確であり、前記1(1)イの主張は採用できない。 ウ 前記1(1)ウについて 本件訂正により、請求項5は削除されている。また、本件発明において、「無機粒子の平均二次粒子径」を特定する発明は存在しない。 よって、前記1(1)ウの主張は採用できない。 エ 前記1(1)エについて 申立人は、ナノ粒子について、訂正前の請求項8で特定するナノサイズの酸化物と同一物を特定していると解することを前提に、訂正前の請求項8の酸化物粒子との関係が明確でないことを主張するが、本件訂正により、訂正前の請求項8、10及び11は削除されている。 そして、本件発明1において「無機粒子がナノ粒子を含む」ことが特定されていることから、本件発明1で特定される「ナノ粒子」が明確であるか否かを検討する。 まず、「ナノ粒子」との用語について検討すると、「ナノ粒子」は、粒子径がナノスケールである粒子を示すものとして一般的な用語であり、明確に理解することができるものである。 そして、本件発明1の記載について検討すると、本件発明1は「前記無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む」と特定するものであるから、その記載に不明確な点は認められない。 また、本件発明1は、ナノ粒子の材質を特定するものではないが、仮にナノ粒子が酸化物粒子であるとしても、酸化物粒子を破砕によりナノスケールとしたものと解する余地はない。 したがって、「ナノ粒子」を特定する本件発明1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~4、15、16は、明確であり、前記1(1)エの主張は採用できない。 オ 前記1(1)オについて 本件訂正により、請求項12は削除されている。また、本件発明において、「シリカナノ粒子」を特定する発明は存在しない。 よって、前記1(1)オの主張は採用できない。 カ 申立理由1(明確性要件)のまとめ 以上のとおり、本件発明は明確であり、申立理由1(明確性要件)は理由がない。 (2)申立理由2(サポート要件) 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 ア 前記1(2)アについて 本件明細書には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、熱伝達抑制シート、及び該熱伝達抑制シートを電池セル間に介在させた組電池に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 このような熱伝達抑制シートにおいては、熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)、及び電池セルが熱暴走して高温になった場合においても、形状を保持して電池セル間に存在し続けることが求められる。特許文献1に記載の熱伝達抑制シートでは、鉱物系粉体及びや難燃剤を保持するために、マトリックス樹脂を使用しているが、このようなマトリックス樹脂は、高温になった際に溶融してしまう。したがって、特許文献1に記載の熱伝達抑制シートでは、電池セルの熱暴走時に形状を保持できなくなるおそれがある。 【0007】 そこで本発明は、熱伝達抑制効果を有する粉体等の脱落を抑制することができるとともに、高温時の形状保持性に優れる熱伝達抑制シート、及びこの熱伝達抑制シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することを目的とする。」 「【発明の効果】 【0027】 本発明の熱伝達抑制シートは、熱伝達抑制効果に優れる無機粒子及び無機繊維を含むため、熱伝達抑制効果に優れる。 また、本発明の熱伝達抑制シートにおいては、細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っているため、無機粒子が良好に保持される。 【0028】 さらに、第1の無機繊維及び第2の無機繊維は、マトリックス樹脂とは異なり、電池セルの熱暴走時の温度において溶融しないので、本発明の熱伝達抑制シートは、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。 さらにまた、熱伝達抑制シートは電池セルの熱暴走に伴う膨張により押圧力を受けたり、電池セルの発火に伴う風圧を受けたりする場合があるが、本発明の熱伝達抑制シートにおいては、第2の無機繊維と絡み合った太径の第1の無機繊維により、これらの外力に抗することができる。 【0029】 本発明の組電池においては、上記の熱伝達抑制シートが電池セル間に介在されている。したがって、本発明の組電池は電池セルの熱暴走の被害を最小限に抑制することができる。」 上記記載より、「熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)」(【0007】)との課題は、「細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っている」(【0027】)ことにより解決していると理解することができる。 そして、本件発明においては、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状」であることを特定するものであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、サポート要件に適合する。 申立人は、「バインダーを含んでいない場合、如何にして課題が解決されるのか記載すべきところ、発明の詳細な説明には具体的な記載がない。」旨主張するが、上記のとおり、発明の詳細な説明には「細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っている」ことにより、粉落ちを抑制していることが記載(【0027】)されるものであり、当該主張は採用できない。 イ 前記1(2)イについて 前記アのとおり、「熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)」(【0007】)との課題は、「細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っている」(【0027】)ことにより解決していると理解することができる。 そして、本件発明においては、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状」であることを特定するものであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであり、サポート要件に適合する。 申立人は、「「樹枝状又は縮れ状」を達成できる方法が発明の詳細な説明には記載されていない。」旨主張するが、上記のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるから、当該主張は採用できない。 ウ 申立理由2(サポート要件)のまとめ 以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるから、申立理由2(サポート要件)は理由がない。 (3)申立理由3(実施可能要件) 明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。 そして、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 本件発明の熱伝達抑制シートは、前記するとおり、細径かつ樹枝状又は縮れ状の第2の無機繊維が、無機粒子及び太径の第1の無機繊維と絡み合っていることにより、熱伝達抑制効果を有する粉体を良好に保持するものである。 そして、本件明細書【0060】、【0064】、【0067】、【0069】には、バインダは「必要に応じて」配合することが記載されるものであり、本件発明においても、バインダを使用することを排除するものではない。 そうすると、本件発明の熱伝達抑制シートを生産するにあたって、バインダの配合は、必要に応じて選択されるものであり、当該選択に過度の試行錯誤を要するものとはいえない。 また、樹枝状、縮れ状を有する第2の無機繊維を入手、作成したのか、明らかでない、旨主張するが、乙第2号証(請求項8、【0064】、図4)、乙第3号証(11頁左欄18~21行、12頁第3図a、b)、乙第4号証(187頁左欄下から3行~右欄1行)の記載より、縮れ状であり、繊維径1μm未満である繊維状粒子として、セピオライトは、本件特許出願時周知であり、入手することができたと認められる。そして、繊維状粒子は、「繊維」の形状であるから、繊維ということができる。 そうすると、本件発明の「第2の無機繊維」を、当業者は入手することができるものといえる。 申立人は、バインダーを使用することなく、シート全量に対して30~94%の高含有量の無機粒子を安定的に保持したシートを作成することは困難である旨主張するが、本件発明は、バインダーを使用することを排除するものでなく、本件明細書には、必要に応じてバインダーを用いることが記載されているから、過度な試行錯誤を要するものではない。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、申立理由3(実施可能要件)は理由がない。 (4)申立理由4(新規性、進歩性) ア 甲1を主とする新規性、進歩性について(前記第6の1(4)ア及びイ) (ア)甲1には、次の事項が記載されている(下線は強調のために当審にて付与)。 「[0002] 大出力が要求される電源装置は、多数の電池を直列や並列に接続している。たとえば、モータで走行する電気自動車、あるいはモータとエンジンの両方で走行するハイブリッド自動車等の自動車、自然エネルギーで充電される蓄電装置、停電のバックアップ電源に使用される電源装置等は、複数の電池セルを積層して電池ブロックとしている。電池ブロックは、電池セルを絶縁して積層している。直列に接続される電池セルに電位差が発生するからである。電池セルを絶縁するために、電池セルを絶縁フィルムで被覆し、さらに電池セルの間に絶縁セパレータを配置している。(特許文献1参照)」 「[0005] 本発明は、従来のこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的の一つは、簡単な構造で電池セルの熱暴走の連鎖を効果的に阻止できる技術を提供することにある。」 「[0013] 断熱シート2は、無機繊維の隙間に無機粒子を充填してなる無機繊維シート2Xとしてもよい。以上の電源装置は、無機繊維の隙間に充填している無機粒子によって圧縮強度が向上するので、電池セルが熱暴走して膨張する状態においても優れた断熱特性を維持して熱暴走の誘発を防止できる特徴がある。それは、無機繊維の隙間に充填している無機粒子が繊維の隙間を確保して、微細な空気が押し潰されるのを防止するからである。この特性は熱暴走の誘発に特に大切である。それは、熱暴走した電池セルが膨張して断熱シートを強く加圧するので、この状態で押し潰されると空隙の空気量が減少して断熱特性が低下するからである。 [0014] 無機粒子は、無機中空粒子又は無機発泡粒子としてもよい。以上の電源装置は、無機繊維の隙間に充填している無機中空粒子や無機発泡粒子によって圧縮強度が向上するので、熱暴走して膨張した電池セルに加圧されて断熱特性が低下するのを防止できることに加えて、さらに無機粒子が中空あるいは発泡状態にあるので、さらに無機粒子自体が含有する空気によって断熱特性が向上して、熱暴走の誘発をさらに有効に防止できる特徴がある。」 「[0019] 本発明の実施の形態に係る電源装置を図1~図3に示す。これらの図において、図1は電源装置の斜視図、図2は図1の電源装置の分解斜視図、図3は電池セルと断熱シートの積層構造を示す分解斜視図をそれぞれ示している。この電源装置100は、主としてハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両の走行モータに電力を供給して、車両を走行させる電源に使用される。ただ、本発明の電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車以外の電動車両に使用でき、また電動車両以外の大出力が要求される用途、例えば蓄電装置用の電源としても使用できる。 [0020] 図1~図3に示す電源装置100は、角形である複数の電池セル1と、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体9を積層状態に固定している固定部材6と、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱してなる断熱シート2とを備えている。図に示す電源装置100は、隣接する電池セル1を断熱シート2を介して積層して電池積層体9とし、この電池積層体9を固定部材6で締結して電池ブロック10としている。電源装置100は、図示しないが、電池ブロック10を冷却プレートの上に載せて、各電池セル1を冷却プレートで強制冷却することができる。」 「[0028](断熱シート2) 断熱シート2は、図2及び図3に示すように、電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱する。断熱シート2は、無機繊維を立体的に方向性なく集合して、無機繊維の間には微細な空隙を設けている無機繊維シート2Xである。無機繊維は、無機物からなる繊維であって断熱特性に優れた繊維が使用される。無機繊維は、たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム等が単一であるいは複数の繊維を混合して使用される。ケイ酸マグネシウム(セピオライト)は、成分をタルクと同じケイ酸マグネシウムとするが、タルクとは分子構造が異なってミクロの微細な孔があって優れた断熱特性を示し、また、表面には、叩解されたパルプのように無数の微細な繊維があるので、バインダーを使用することなく湿式抄紙してシート状にできるので、無機繊維として適している。また、ロックウールは、主成分が二酸化ケイ素と酸化カルシウムで優れた断熱性と断熱特性を示す不燃材で、しかも安価に多量生産しているので原料コストを低減できる。」 「[0030] 無機繊維シート2Xに添加される無機粒子には、シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用できるが、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適している。無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現する。この断熱シート2は、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する。シラスバルーンは、シリカ(SiO2)を主成分とするシラスを1000℃で急速加熱して発泡させて製造されることから、極めて優れた耐熱性があり、さらに、気泡を抱いた微細な粒子であって、熱伝導率を約0.06~0.08W/mkとする優れた断熱特性を示す。このことから、シラスバルーンを含有する断熱シート2も、含有するシラスバルーンの優れた耐熱性によって、電池セル1が高温に加熱される状態にあっても優れた断熱特性を維持し、さらに、熱暴走して高温に発熱する電池セル1の熱エネルギーを効果的に遮断して、隣接する電池セル1の熱暴走の誘発を効果的に阻止する。断熱シート2は、無機繊維を立体的に集合している多孔質基材の隙間に多孔質シリカ粒子を充填して製作される。無機繊維シート2Xは、無機中空粒子等を添加して断熱特性を改善できるが、多すぎると強度が低下するので、添加量は、たとえば30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは約10重量%以下とする。」 「実施例1 [0059] 以上の電源装置に使用する断熱シート2は、以下のようにして製作される。 80重量%のケイ酸マグネシウム(セピオライト)に、10重量%のガラス繊維と、10重量%のナイロン繊維を懸濁し、分散して抄紙用スラリーとし、これを湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥した後熱プレスして厚さを0.7mm、重量を5gとする無機繊維シート2Xを製造し、得られた無機繊維シート2Xの両面に、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを接着して断熱シート2を製作する。」 甲1には、無機繊維シート2Xについて、実施例1として、80重量%のケイ酸マグネシウム(セピオライト)に、10重量%のガラス繊維と、10重量%のナイロン繊維を懸濁して、製造することが記載([0059])されている。そして、無機繊維シート2Xの無機繊維は、「無機繊維は、たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム等が単一であるいは複数の繊維を混合して使用される。」([0028])とあり、前記実施例1の、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)及びガラス繊維は、[0028]で列挙される無機繊維であるから、甲1には、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)及びガラス繊維を、無機繊維として無機繊維シート2Xに用いることが開示されているといえる。 (イ)甲1発明 以上より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「電池セル1の積層面11Aに挟まれて隣接する電池セル1を断熱してなる断熱シート2の無機繊維シート2Xであって、([0020]、[0013]) 無機繊維シート2Xは、無機繊維の隙間に無機粒子を充填してなり、([0013]) 無機繊維は、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)及びガラス繊維を混合して使用され、([0028]) 無機繊維シート2Xに添加される無機粒子には、シリカやアルミナなどの無機質材の粒子などを使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子や、無機発泡を粒状に破砕した微粒子が適しており、無機中空粒子にシラスバルーンなどの多孔質シリカ粒子を使用して無機中空粒子を無機繊維の隙間に充填してなる断熱シート2は、とくに優れた断熱特性を実現し、粒径を数μm~数百μmとするシラスバルーンを多孔質シリカ粒子に使用する、([0030]) 無機繊維シート2X」 (ウ)対比・判断 (ウ-1)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「無機粒子」は、本件発明1の「無機粒子」に対応する。 甲1発明において、無機繊維は、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)及びガラス繊維の2つの無機繊維を使用するものであり、甲1発明の「ケイ酸マグネシウム(セピオライト)」、「ガラス繊維」をそれぞれ、「第2の無機繊維」、「第1の無機繊維」と称することは任意である。 甲1発明の「無機繊維シート2X」は、断熱シート2を構成するから、本件発明1の「熱伝達抑制シート」に対応する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明1は、「前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」ることを特定しているのに対して、甲1発明は、このことについて特定されていない点 相違点2:「無機粒子」について、本件発明1は、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲1発明は、「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子を使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子」である点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 甲1発明には、無機粒子が「ナノ粒子を含む」ことについて、特定されていない。 また、甲1には、無機粒子が「ナノ粒子を含む」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲1発明において、無機粒子が「ナノ粒子を含む」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そうすると、甲1発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含むものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-2)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(ウ-1)で対比した、相違点2を含むものであり、前記(ウ-1)と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ-3)本件発明6について 本件発明6と甲1発明とを対比する。 本件発明6と甲1発明との対比は、前記(ウ-1)での、本件発明1と甲1発明との対比と同様に行うことができる。 そうすると、本件発明6と甲1発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明6は、「前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」ることを特定しているのに対して、甲1発明は、このことについて特定されていない点 相違点2:「無機粒子」について、本件発明6は、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)」であり、「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」のに対して、甲1発明は、「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子を使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子」である点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 甲1発明には、無機粒子が「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ことについて、特定されていない。 また、甲1には、無機粒子として「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲1発明において、無機粒子が「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そうすると、甲1発明において、無機粒子が、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなるものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-4)本件発明9について 本件発明9と甲1発明とを対比する。 本件発明9と甲1発明との対比は、前記(ウ-1)での、本件発明1と甲1発明との対比と同様に行うことができる。 そうすると、本件発明9と甲1発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含む、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明9は、「前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるとともに」、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であって、前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」ることを特定しているのに対して、甲1発明は、このことについて特定されていない点 相違点2:「無機粒子」について、本件発明9は、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)」であり、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」のに対して、甲1発明は、「シリカやアルミナなどの無機質材の粒子を使用でき、好ましくはシラスバルーンなどの無機中空粒子」である点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 甲1発明には、無機粒子が「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ことについて、特定されていない。 また、甲1には、無機粒子として「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ことを示唆する記載はされておらず、提出されたその他の証拠を見ても、甲1発明において、無機粒子が、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」ように構成する動機付けは、見当たらない。 そうすると、甲1発明において、無機粒子が、酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなるものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-5)本件発明16について 本件発明16は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(ウ-1)で対比した、相違点2を含むものであり、前記(ウ-1)と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ)小括 以上のとおり、本件発明1、3、4、6、9及び16と甲1発明とは相違点を有するものであり、また、本件発明1~4、6、9及び16は、甲1に基いて当業者が容易になし得たものとはいえないから、申立理由4ア及びイの申立理由は、理由がない。 イ 甲2を主とする進歩性について(前記第6の1(4)ウ) (ア)甲2には、次の事項が記載されている(下線は強調のために当審にて付与)。 「[0010] よって、本願課題は、面内での熱の輸送方向に異方性を持たせた断熱材とそれを用いた断熱構造体を提供することである。 [0011] 上記課題を解決するため、繊維と、エアロゲルとを含むシートであり、上記繊維は、上記シートの内で一定の方向に配列された断熱材を用いる。」 「[0013] 第1電池セルと、第2電池セルと、上記第1電池セルと上記第2電池セルとの間に配置された上記断熱材と、上記第1電池セルと上記第2電池セルと上記断熱材とに接する冷却プレートと、を含む電池の断熱構造体を用いる。」 「[0016] (実施の形態1) 図1Aに、実施の形態1の熱対策部材である断熱材14の平面図を示す。図1Bに、断熱材14の断面図を示す。なお、図1A、図1Bでは、内部の第1繊維13の位置、形状が分かるように、表示している。 [0017] 本実施の形態1の断熱材14は、断熱性を発揮するエアロゲル12と、エアロゲル12と比較して熱を伝える性質を持つ第1繊維13とから構成される。第1繊維13は、エアロゲル12に内包される形で存在している。」 「[0023] このエアロゲル12は、おおよそ85Vol%から95Vol%の空気を含んだ発泡体であり、発泡体の穴のサイズが空気(窒素)の平均自由工程の68nmよりも小さい。このため、エアロゲル12は、低い熱伝導率を保持する。 [0024] エアロゲル12は、モノリス状(バルク体)、ブロック状、シート状、粉末状、ファイバー状、顆粒状のものであってもよい。できるだけエアロゲル12が高充填され緻密に構成されている方が、熱伝導率の観点からは好ましい。 [0025] エアロゲル12は様々な原料をベースに合成され、カーボン、セルロース、シリカなどがその代表例としてあげられるが、耐熱性、電気絶縁性の観点から、本実施の形態では、シリカをベース材料として選定した。 [0026] シリカエアロゲルは、平均細孔が10~67nm、細孔容積3.5~8cc/g、500~900m2/gの比表面積を有する。空気の平均自由行程68nmよりも小さな細孔を有する。」 「[0029] 一般的なシリカエアロゲルの特徴のひとつに透明性が挙げられるが、輻射率を制御する、あるいは静電気を抑制するために、熱伝導率への影響が無視できる範囲で、カーボンの微粒子を添加するなどしてもかまわない。 [0030] シリカエアロゲルを製造する際の出発原料として、水ガラス(珪酸ソーダ水溶液)を用い、調製は水ガラスの珪酸濃度、またゲル化時に使用する酸の種類と濃度、ゲル化条件(温度、時間、pH)を調整することで制御できる。また疎水化条件としてシリル化剤の量、溶媒の量、温度、時間を調整することで制御できる。乾燥条件は、乾燥温度、時間などを調整することで制御できる。 [0031] このシリカエアロゲルの原料の水ガラスにおいては、シリカ濃度がゾル総重量に対して4~20重量%になるように調製すればよい。コストの観点からはシリカ濃度が薄い方が好ましく、強度の観点からはシリカ濃度が高い方が好ましい。 [0032] 珪酸濃度が、4重量%以下であると、珪酸濃度が薄いため湿潤ゲル骨格の強度が不十分になる。また、珪酸濃度が20%を越えると、ゾル溶液のゲル化時間が急激に早くなり制御できなくなる場合がある。 [0033] 常圧乾燥で作製したものがよいが、超臨界乾燥で作製したものでもよい。 [0034] 出発原料としてはTEOSやMTMSといったアルコキシシラン系の材料を用いてもよい。適切な濃度、触媒を用いて、適切な薬液処理を施せば、水ガラスを出発原料として作製したシリカエアロゲルと類似した熱伝導率、強度、透明性を得ることができる。」 「[0039] (第1繊維13) 実施の形態の第1繊維13としては、グラスウールやガラスペーパー、ロックウール、ポリエステル等の樹脂繊維、セルロースナノファイバーなどのセルロース繊維、パルプ繊維、カーボン繊維、銅、アルミ、銀等の金属繊維およびこれらの複数を含有した複合繊維などであればよい。第1繊維13は、使用時の耐熱温度や難燃性等をふまえて選定される。 [0040] エアロゲル12が、ゾルの状態の際に、第1繊維14へ複合化させる場合には、グラスウールやセルロースファイバーなどのゾルと親和性の高い繊維がよい。エアロゲル12と第1繊維13との濡れ性が良く、第1繊維13とエアロゲル12を複合化させ易い。 [0041] また、複合化させにくい材料の場合は、濡れ性を改質するために、界面活性剤や濡れ剤、粘度調整剤を添加することも好ましい。 [0042] 第1繊維13の形状に関しては、1mmから51mmくらいのカットされた短繊維を用いる。第1繊維13の径としては1μmから50μmまでのものを単一あるいは複数のもの混ぜて用いる。 [0043] また、断熱材14の強度が必要なため、第1繊維13の絡み合いを持たせることが好ましい。したがって第1繊維13にクリンプ加工を施す方が好ましい。クリンプ加工は、繊維を網目状に編む加工である。繊維に波状の屈曲を施し、繊維の縦線横線をはさめ合わせて、繊維の塊にする加工である。繊維を編まず、絡ませるだけでもよい。クリンプ加工が困難な場合は、補強剤の目的で比較的低い温度で融着可能な溶融低融点繊維を混ぜておくことをしてもよい。」 「[0074] <養生工程> 断熱材14にゾル調整液を含浸した後、乾燥時にかかる毛管力に耐えうるだけの強度にする為に、ゾル中のシリカコロイドの重縮合、および、二次粒子の成長を促す必要がある。含浸の断熱材14中のゾルがゲル化した後、シート中の水が揮発しない70~95℃で、好ましくは80~95℃、より好ましくは90~95℃で加熱養生する。これは、シリカ粒子の重縮合と二次粒子の成長を促進させるためである。」 「[0089] (実施の形態2) 図3に実施の形態2の断熱材14の斜視図を示す。エアロゲル12を透明として図示している。記載しない事項は、実施の形態1と同様である。 [0090] 本実施の形態2の断熱材14は、断熱性を発揮するエアロゲル12と比較して熱を伝える性質を持つ第2繊維15とから構成される。 [0091] 実施の形態1と異なり、第2繊維15は、繊維同士の絡み合いのレベルが異なる。つまり、図3と図1と比較するとわかるが、図3では第2繊維15同士が触れていず、絡みあっていない。 [0092] ここで、繊維が絡まっている状態では、空の空間で、繊維の1方を持ち上げると、もう1方が持ち上がる状態をいう。具体的には、第2繊維15は、直線状である。 [0093] 第2繊維15は、例えばセラミックファイバーのような引張強度は高いが脆い性質をもつようなものが代表とされるものを用いる。第2繊維15が柔軟でなく、第2繊維15同士の絡み合いはない。よって強度が必要な場合は、必要に応じて第2繊維15表面に樹脂系のバインダーを設けて補強できる。」 「[0101] (第2繊維15) 実施の形態の第2繊維15としてはガラス繊維、アルミナ繊維、金属繊維、カーボン繊維およびこれらの複数を含有した複合繊維などであればよく、使用時の耐熱温度や難燃性等をふまえて選定できる。」 「[0107] カット長は用途により1mm以下から数100mm まで可能である。繊維の径としては1μmから5mmまでのものを単一あるいは複数のもの混ぜて用いる。」 「[0145] (全体として) 実施の形態1と2とは組み合わせることができる。第1繊維13と第2繊維15とを1つの断熱材14に含めてもよい。 産業上の利用可能性 [0146] 以上のように、本発明によれば、電子機器の筐体内の狭いスペースにおいても十分に断熱効果を発揮し、発熱を伴う部品から筐体外面への伝熱を効果的に低減し得る複合断熱体およびそれを含む電子機器を提供することができる。」 (イ)甲2発明 前記記載より、甲2には、[0011]、[0013]より、「第1電池セルと第2電池セルとの間に配置された断熱材」であって、「繊維と、エアロゲルとを含むシート」である「断熱材」が記載されている。 そして、甲2には、「実施の形態1」と「実施の形態2」が記載され、[0145]の「実施の形態1と2とは組み合わせることができる。第1繊維13と第2繊維15とを1つの断熱材14に含めてもよい。」との記載より、甲2に記載された発明として、「実施の形態1」と「実施の形態2」とを組み合わせた、次の発明(以下「甲2発明」という。)を認定することができる。 「第1電池セルと第2電池セルとの間に配置された断熱材であって、([0013]) 断熱材は、繊維と、エアロゲルとを含むシートであり、([0011]) エアロゲル12と第1繊維13と第2繊維15とから構成され、([0017]、[0090]、[0145]) エアロゲル12はシリカをベース材料として選定したシリカエアロゲルであり、([0025]、[0026]) 第1繊維13としては、グラスウールやガラスペーパー、ロックウール、ポリエステル等の樹脂繊維、セルロースナノファイバーなどのセルロース繊維、パルプ繊維、カーボン繊維、銅、アルミ、銀等の金属繊維およびこれらの複数を含有した複合繊維などであり、([0039]) 第1繊維13の形状に関しては、1mmから51mmくらいのカットされた短繊維を用い、第1繊維13の径としては1μmから50μmまでのものを用い、([0042]) また、第1繊維13の絡み合いを持たせることが好ましく、第1繊維13にクリンプ加工を施す方が好ましく、([0043]) 第2繊維15は、直線状であり、[0092]) 第2繊維15としてはガラス繊維、アルミナ繊維、金属繊維、カーボン繊維およびこれらの複数を含有した複合繊維などであり、([0101]) カット長は用途により1mm以下から数100mmまで可能であり、繊維の径としては1μmから5mmまでのものを用いる、([0107]) 断熱材14」 (ウ)対比・判断 (ウ-1)本件発明1について 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「シリカエアロゲル」は、本件発明1の「無機粒子」に対応する。 甲2発明の「第1繊維13」は、「グラスウールやガラスペーパー、ロックウール」及び「銅、アルミ、銀等の金属繊維」などを用いることができるから、「無機繊維」を含むものである。 また、「第1繊維13」は、「クリンプ加工を施す方が好まし」いものであり、クリンプ加工を施すことにより、第1繊維13が、縮れ状となることは技術常識である。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であ」る「第2の無機繊維」を含む点で一致する。 甲2発明の「第2繊維15」は、「ガラス繊維、アルミナ繊維、金属繊維」などを用いることができるから、「無機繊維」を含むものである。 また、「第1繊維13」は、「直線状」であるから、線状であるといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「第1の無機繊維が線状又は針状であ」る「第1の無機繊維」を含む点で一致する。 甲2発明の「断熱材」は、「第1電池セルと第2電池セルとの間に配置され」る「シート」であるから、本件発明1の「熱伝達抑制シート」に対応する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明1は、「前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる」のに対して、甲2発明は、このことについて明確でない点 相違点2:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明1は、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いことを特定しているのに対して、甲2発明は、このことについて特定されていない点 相違点3:「第2の無機繊維」について、本件発明1は、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」ることを特定しているのに対して、甲2発明は、このことについて特定されていない点 相違点4:「無機粒子」について、本件発明1は、「酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなり、かつ前記無機粒子がナノ粒子を含む」のに対して、甲2発明は、「シリカエアロゲル」である点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 相違点2について 甲2発明において、「第2繊維」は「繊維の径としては1μmから5mmまでのものを用い」、「第1繊維」は「径としては1μmから50μmまでのものを用い」ることが特定され、「第2繊維」と「第1繊維」との間での繊維の径の大小関係は、何ら規定されていない。 そして、提出されたその他の証拠をみても、甲2発明において、第2繊維の平均繊維径を、第1繊維の平均繊維径よりも大きくすることを示す記載は見当たらない。 そうすると、甲2発明において、「第2繊維」の平均繊維径を、「第1繊維」の平均繊維径よりも大きくすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 申立人は、申立書(59~61頁)において、「甲2発明にかかる断熱シートは、ガラス繊維(甲2では第2繊維)の繊維径の上限を「5mm」としているのに対して、ロックウール(甲2では第1繊維)の繊維径の上限は「50μm」である。このことは、第1繊維と第2繊維の繊維径を等しくするというよりは、第2繊維の方を太くするという技術的思想に基づく」ものであること、また、「ロックウールは、クリンプ加工を施さなくても、絡みやすいように波状を有すること、柔軟であることを要件としているという技術的思想に基づくと・・・下限の繊維径を指向」するものであり、「ガラス繊維」は、「絡み合わず、線状を保持するという技術的思想から、細径にするという方向を指向して」おらず、「ロックウールより太径のガラス繊維を用いることは合理的である」旨主張する。 しかしながら、甲2には、「第1繊維13と第2繊維15とを1つの断熱材14に含めてもよい」([0145])と記載されるのみであり、第1繊維と第2繊維との間で、それぞれの繊維径の相対的な関係について何ら記載されていない。また、それぞれの繊維径は同一の大きさを下限とする範囲で特定されるものであるから、第2繊維の繊維径を第1繊維の繊維径より大きくすることが合理的であるとはいえない。 したがって、前記相違点2に係る申立人の主張は採用できない。 (ウ-2)本件発明3、4について 本件発明3、4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(ウ-1)で対比した、相違点2を含むものであり、前記(ウ-1)と同様に、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ-3)本件発明6について 本件発明6と甲2発明とを対比する。 本件発明6と甲2発明との対比は、前記(ウ-1)での、本件発明1と甲2発明との対比と同様に行うことができる。 そうすると、本件発明6と甲2発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明6は、「前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる」のに対して、甲2発明は、このことについて明確でない点 相違点2:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明6は、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いことを特定しているのに対して、甲2発明は、このことについて特定されていない点 相違点3:「第2の無機繊維」について、本件発明6は、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」ることを特定しているのに対して、甲2発明は、このことについて特定されていない点 相違点4:「無機粒子」について、本件発明6は、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)」であり、「炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなる」のに対して、甲2発明は、「シリカエアロゲル」である点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 相違点2について 相違点2は、前記(ウ-1)の相違点2と同じであり、前記(ウ-1)で判断したとおり、相違点2は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲2発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-4)本件発明9について 本件発明9と甲2発明とを対比する。 本件発明9と甲2発明との対比は、前記(ウ-1)での、本件発明1と甲2発明との対比と同様に行うことができる。 そうすると、本件発明9と甲2発明とは、 「無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、熱伝達抑制シート」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明9は、「前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる」のに対して、甲2発明は、このことについて明確でない点 相違点2:「第1の無機繊維」及び「第2の無機繊維」について、本件発明9は、「前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大き」いことを特定しているのに対して、甲2発明は、このことについて特定されていない点 相違点3:「第2の無機繊維」について、本件発明9は、「前記第2の無機繊維の平均繊維径が1nm以上1μm未満、かつ、前記第2の無機繊維の繊維長が1μm以上であ」ることを特定しているのに対して、甲2発明は、このことについて特定されていない点 相違点4:「無機粒子」について、本件発明9は、「無機粒子(線状、針状、樹枝状及び縮れ状の繊維状粒子を除く。)」であり、「酸化物粒子、炭化物粒子及び窒化物粒子から選択される少なくとも1種からなり、前記酸化物粒子が、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム及び酸化亜鉛から選択された少なくとも1種からなる」のに対して、甲2発明は、「シリカエアロゲル」である点 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 相違点2について 相違点2は、前記(ウ-1)の相違点2と同じであり、前記(ウ-1)で判断したとおり、相違点2は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲2発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ-5)本件発明16について 本件発明16は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、前記(ウ-1)で対比した、相違点2を含むものであり、前記(ウ-1)と同様に、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ)小括 以上のとおり、本件発明1、3、4、6、9及び16は、甲2に基いて当業者が容易になし得たものとはいえないから、申立理由4ウの申立理由は、理由がない。 ウ 甲3を主として、甲12を組み合わせる進歩性について(前記第6の1(4)エ) 申立人は、前記第6の1(4)エについて、申立書(67~69頁)において、「甲3と甲12とは、いずれも乗り物の電気部品に用いられる断熱シートの分野で共通し(用途一致)、ガラス繊維製の布(抄紙された紙は、広義の不織布である)に無機充填剤が含有されているという構成も共通しているので、これらを組み合わせることは容易である。」旨主張し、「請求項8、9、11-14の特許発明は、甲3発明(又は甲3に甲1及び周知技術に基づく発明)に、甲12を組み合わせると、容易に想到できる発明である。」と申立てているので、当該申立てについて判断する。 (ア)甲3発明は、前記第5の1(2)のとおりである。 そして、当該申立ては、訂正前の請求項8、9、11~14に係る発明に対する申立てであり、訂正前の請求項8、11~13は本件訂正により削除されていることから、本件発明9と甲3発明とを対比すると、本件発明9と甲3発明との一致点、及び相違点は、前記第5の2(2)アのとおりである。 (イ)甲12の記載事項 甲12には、請求項1、[0002]、[0041]、[0042]の記載より、 「無機バインダーと無機フィラー粒子と水とを含む混合物と、繊維構造体の形態で無機繊維を含む布であって、前記布には、多層バインダー構造体が形成されるように前記混合物が含浸され、無機バインダーは、好ましくは無機コロイド粒子の溶液(例えば、シリカ又はアルミナ粒子のコロイド溶液)であり、無機フィラー粒子は、代替的に又は付加的に、金属元素、金属合金、沈降シリカ、フュームドシリカ、粉砕シリカ、フュームドアルミナ、アルミナ粉末、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、ガラスバブル、シリコンカーバイド、ガラスフリット、ケイ酸カルシウム、又はこれらの任意の組み合わせである、電気システムの構成部品として使用するのに好適と考えられる断熱構造体」について記載されていると認められる。 (ウ)甲3発明と甲12を組み合わせることについての当審の判断 甲3は、耐炎性電気絶縁材料に関するもの(前記第5の1(1)の当審訳【0001】)であるから、甲3発明の無機系紙は、耐炎性電気絶縁材料として用いられるものである。 そして、甲12は、その全体をみても、電気絶縁材料に関する記載は見当たらない。 そうすると、甲3と甲12は、断熱という技術分野で共通するとしても、求められる機能が異なるものであり、甲3発明に甲12を適用することの動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲3発明に甲12の記載事項を適用することは当業者が容易であるとはいえず、甲3及び甲12の組み合わせに基づく本件発明9、14の進歩性欠如の申立理由は、採用できない。 エ 申立理由4(新規性、進歩性)のまとめ よって、申立理由4(新規性、進歩性)は理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、決定の予告2に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4、6、9及び14~16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4、6、9及び14~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件請求項5、7~8及び10~13に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項5、7~8及び10~13に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700650

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