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特許異議申立

2022-700918

電動機、送風機および空気調和装置

審判番号
2022-700918
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-526785
登録番号
7038819
請求日
2022年09月20日
審決日
2023年09月27日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱電機株式会社
  • 【権利者代理人】山形 洋一
  • 【権利者代理人】佐藤 賢改
  • 【権利者代理人】篠原 昌彦
  • 【権利者代理人】前田 実
  • 【異議申立人】金田 綾香
審判長/審判官
  • 審判長 村上 聡
  • 審判官 柿崎 拓
  • 審判官 関口 哲生
分類
P1651.537-YAA(H02K) / P1651.1 -YAA(H02K) / P1651.121-YAA(H02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第1項第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7038819号発明「電動機、送風機および空気調和装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7038819号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。 特許第7038819号の請求項1、2、4ないし13に係る特許を維持する。 特許第7038819号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7038819号の請求項1~13に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)6月27日を国際出願日とする出願であって、令和4年3月10日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 4年 9月20日 : 特許異議申立人金田綾香(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 4年11月28日付け: 取消理由通知 令和 5年 1月27日 : 特許権者三菱電機株式会社(以下「特許権者」という。)による意見書及び訂正請求書の提出 令和 5年 2月13日付け: 通知書(訂正請求があった旨の通知) 令和 5年 3月17日 : 特許異議申立人による意見書の提出 令和 5年 4月19日付け: 取消理由通知(決定の予告) 令和 5年 6月16日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和5年1月27日にされた訂正の請求(以下、この訂正請求による訂正を「先の訂正」という。)は、その後、令和5年6月16日に訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年6月16日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるというものである。 本件訂正請求で請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、回転軸を中心として回転可能なロータ」と記載されているのを、「磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータ」に訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向するティースを有するステータコアと、前記ティースに巻き付けられるコイルとを有するステータ」と記載されているのを、「前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータ」に訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上の厚さを有し」と記載されているのを、「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上、4mm以下の厚さを有し」に訂正する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」と記載されているのを、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」に訂正する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、回転軸を中心として回転可能なロータ」と記載されているのを、「磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータ」に訂正する。 (6)訂正事項6 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向するティースを有するステータコアと、前記ティースに巻き付けられるコイルとを有するステータ」と記載されているのを、「前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータ」に訂正する。 (7)訂正事項7 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に3mm以上の厚さを有し」と記載されているのを、「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に3mm以上、4mm以下の厚さを有し」に訂正する。 (8)訂正事項8 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」と記載されているのを、「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」に訂正する。 (9)訂正事項9 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (10)訂正事項10 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3までの何れか1項に記載の電動機。」と記載されているのを、「請求項1または2に記載の電動機。」に訂正する。 (11)訂正事項11 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から6までの何れか1項に記載の電動機。」と記載されているのを、「請求項1、2、4から6までの何れか1項に記載の電動機。」に訂正する。 (12)訂正事項12 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から7までの何れか1項に記載の電動機。」と記載されているのを、「請求項1、2、4から7までの何れか1項に記載の電動機。」に訂正する。 (13)訂正事項13 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から9までの何れか1項に記載の電動機。」と記載されているのを、「請求項1、2、4から9までの何れか1項に記載の電動機。」に訂正する。 (14)訂正事項14 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から10までの何れか1項に記載の電動機。」と記載されているのを、「請求項1、2、4から10までの何れか1項に記載の電動機。」に訂正する。 (15)訂正事項15 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に「請求項1から11までの何れか1項に記載の電動機。」と記載されているのを、「請求項1、2、4から11までの何れか1項に記載の電動機。」に訂正する。 (16)訂正事項16 本件訂正前の明細書の【0006】に「磁石挿入孔を有するロータコアと、磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、回転軸を中心として回転可能なロータ」と記載されているのを、「磁石挿入孔を有するロータコアと、磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータ」に訂正する。 (17)訂正事項17 本件訂正前の明細書の【0006】に「ロータを囲むように設けられたステータであって、ロータに対向するティースを有するステータコアと、ティースに巻き付けられるコイルとを有するステータ」と記載されているのを、「ロータを囲むように設けられたステータであって、ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータ」に訂正する。 (18)訂正事項18 本件訂正前の明細書の【0006】に「永久磁石は、ステータに対向する方向に2.1mm以上の厚さを有し」と記載されているのを、「永久磁石は、ステータに対向する方向に2.1mm以上、4mm以下の厚さを有し」に訂正する。 (19)訂正事項19 本件訂正前の明細書の【0006】に「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」と記載されているのを、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」に訂正する。 (20)訂正事項20 本件訂正前の明細書の【0007】に「磁石挿入孔を有するロータコアと、磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、回転軸を中心として回転可能なロータ」と記載されているのを、「磁石挿入孔を有するロータコアと、磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータ」に訂正する。 (21)訂正事項21 本件訂正前の明細書の【0007】に「ロータを囲むように設けられたステータであって、ロータに対向するティースを有するステータコアと、ティースに巻き付けられるコイルとを有するステータ」と記載されているのを、「ロータを囲むように設けられたステータであって、ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータ」に訂正する。 (22)訂正事項22 本件訂正前の明細書の【0007】に「永久磁石は、ステータに対向する方向に3mm以上の厚さを有し、当該厚さの方向に着磁されている。永久磁石の厚さは3mm以上である。」と記載されているのを、「永久磁石は、ステータに対向する方向に3mm以上、4mm以下の厚さを有し、当該厚さの方向に着磁されている。」に訂正する。 (23)訂正事項23 本件訂正前の明細書の【0007】に「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」と記載されているのを、「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「ロータ」について、「磁極数が10極であ」るという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)の段落【0025】には、「そのため、ロータ2の磁極数は、10極である。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に記載された「ステータ」の「ティース」について、「12個」であるという限定を付加するとともに、「ステータ」の「前記ティースに巻き付けられるコイル」について、「集中巻きで」巻き付けられるという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、特許明細書の段落【0013】には、「ティース51の数は、ここでは12であるが、12に限定されるものではない。」と記載され、段落【0018】には、「コイル55は、ティース51毎に巻き付けられている(集中巻)。」と記載されているから、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項1に記載された「永久磁石」の「厚さ」について、「4mm以下」という限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件訂正前の請求項3には、「前記永久磁石の前記厚さは、4mm以下である」と記載され、特許明細書の段落【0058】には、「そのため、永久磁石25を十分に着磁するためには、永久磁石25の厚さT1は、4mm以下であること望ましい。」と記載されているから、訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項1に記載された「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」について、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」と訂正し、「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)」のとり得る範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件訂正前の請求項1には、「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)」を「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」で示される範囲とすることが記載されており、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」で示される値とすることも開示されているといえるから、訂正事項4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、本件訂正前の請求項2に記載された「ロータ」について、「磁極数が10極であ」るという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、特許明細書の段落【0025】には、「そのため、ロータ2の磁極数は、10極である。」と記載されているから、訂正事項5は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項5は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、本件訂正前の請求項2に記載された「ステータ」の「ティース」について、「12個」であるという限定を付加するとともに、「ステータ」の「前記ティースに巻き付けられるコイル」について、「集中巻きで」巻き付けられるという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、特許明細書の段落【0013】には、「ティース51の数は、ここでは12であるが、12に限定されるものではない。」と記載され、段落【0018】には、「コイル55は、ティース51毎に巻き付けられている(集中巻)。」と記載されているから、訂正事項6は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、本件訂正前の請求項2に記載された「永久磁石」の「厚さ」について、「4mm以下」という限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件訂正前の請求項3には、「前記永久磁石の前記厚さは、4mm以下である」と記載され、特許明細書の段落【0058】には、「そのため、永久磁石25を十分に着磁するためには、永久磁石25の厚さT1は、4mm以下であること望ましい。」と記載されているから、訂正事項7は特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項7は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、本件訂正前の請求項2に記載された「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」について、「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」と訂正し、「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)」のとり得る範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件訂正前の請求項2には、「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)」を「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」で示される範囲とすることが記載されており、「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」で示される値とすることも開示されているといえるから、訂正事項8は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項8は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項9が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (10)訂正事項10~15について 訂正事項10~15は、訂正事項9による請求項3の削除に伴い、本件訂正前の請求項4、7、8、10~12において、引用する請求項から請求項3を除外し、引用する請求項を削減するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項10~15が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (11)訂正事項16~23について 訂正事項16~23は、訂正事項1~8により請求項1及び請求項2が訂正されたことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げられる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項16~23は、訂正事項1~8について示した理由と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 3 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~13について、請求項3~13はそれぞれ請求項1及び請求項2を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~訂正事項4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるとともに、訂正事項5~8によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~13は、一群の請求項1~13を構成している。 そして、本件訂正請求は、訂正事項1~15により、本件訂正前の請求項1~13の記載を訂正しようとするものであり、一群の請求項1~13に対して請求されているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、明細書に係る訂正事項16~23は、一群の請求項1~13について請求されたものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 4 まとめ 前記のとおり、訂正事項1~23は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13に係る特許に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~13に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」~「本件特許発明13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件特許発明1] 磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上、4mm以下の厚さを有し、前記厚さの方向に着磁され、 前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)と、前記ティースにおける前記コイルの巻き数Ntと、前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)と、前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)とが、 Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410 を満足する 電動機。 [本件特許発明2] 磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に3mm以上、4mm以下の厚さを有し、前記厚さの方向に着磁され、 前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)と、前記ティースにおける前記コイルの巻き数Ntと、前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)と、前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)とが、 Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350 を満足する 電動機。 [本件特許発明3] (削除) [本件特許発明4] 前記ロータは、前記回転軸を中心とする周方向における前記磁石挿入孔の中心に極中心を有し、前記周方向における前記磁石挿入孔の外側に極間を有し、 前記ロータの外周は、前記極中心を通って延在する第1の外周部と、前記極間を通って延在する第2の外周部とを有し、 前記第1の外周部から前記ステータまでの距離は、前記第2の外周部から前記ステータまでの距離よりも近い 請求項1または2に記載の電動機。 [本件特許発明5] 前記第2の外周部上の第1の点と前記回転軸とを結ぶ直線上に、前記永久磁石の前記周方向の端部が位置している 請求項4に記載の電動機。 [本件特許発明6] 前記第2の外周部上の第1の点と前記回転軸とを結ぶ直線上に、前記永久磁石の前記周方向の一端部の前記回転軸を中心とする径方向の外側の角部が位置している 請求項4または5に記載の電動機。 [本件特許発明7] 前記ロータは、前記回転軸を中心とする周方向における前記磁石挿入孔の少なくとも一方の側に、前記磁石挿入孔につながる空隙を有し、 前記永久磁石の前記周方向の一端部の前記回転軸を中心とする径方向の外側の角部が、前記空隙の内部に位置し、前記ロータコアには接していない 請求項1、2、4から6までの何れか1項に記載の電動機。 [本件特許発明8] 前記永久磁石によって第1の磁極が構成され、 前記ロータコアの一部によって第2の磁極が構成される 請求項1、2、4から7までの何れか1項に記載の電動機。 [本件特許発明9] 回転シャフトと、 前記回転シャフトと前記ロータコアとの間に設けられ、非磁性材料で形成された支持部と を備えた請求項8に記載の電動機。 [本件特許発明10] Ip×Nt/AGの値が、750A/mm以上である 請求項1、2、4から9までの何れか1項に記載の電動機。 [本件特許発明11] 前記コイルに電流を供給するインバータと、前記インバータを制御する制御装置とを有し、 前記制御装置は、前記インバータの電流値が前記過電流閾値を超えると、前記インバータを停止する 請求項1、2、4から10までの何れか1項に記載の電動機。 [本件特許発明12] 請求項1、2、4から11までの何れか1項に記載の電動機と、 前記電動機によって回転する羽根部と を備えた送風機。 [本件特許発明13] 室外機と、室内機と、前記室外機と前記室内機とを連結する冷媒配管とを備え、 前記室外機および前記室内機の少なくとも一方は、請求項12に記載の送風機を有する 空気調和装置。 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 先の訂正後の請求項1、2、4~13に係る特許に対して、当審が令和5年4月19日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (サポート要件)請求項1、2、4~13に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1項第4号に該当し、取り消されるべきものである。 発明の詳細な説明に課題を解決するための手段として記載されている、Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410が成立する場合に、厚さT1が2.1mm以上の永久磁石25の減磁を抑制できること、あるいはHct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350が成立する場合に、厚さT1が3mm以上の永久磁石25の減磁を抑制できることは、永久磁石25に対するコイル55の配置が特定の配置である場合、つまり発明の詳細な説明の段落【0013】、【0018】、【0025】、【0079】、【0083】等に、実施の形態1、実施の形態2として記載されているように、コイル55が12個のティース51に集中巻され、ロータ2の磁極数が10極である場合に成り立つものといえる。 しかしながら、請求項1及び請求項2の記載は、「コイル」について、「ティースに巻き付けられる」と特定されているのみであり、コイルが集中巻以外の態様でティースに巻き付けられることを含む記載となっており、また、ステータのティースの数や、ロータの磁極数について何ら特定されていないから、コイルが12個のティースに巻かれ、ロータの磁極数が10極のもの、以外の態様も含むものとなっている。すると、永久磁石の保磁力を「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」あるいは「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」としても、永久磁石の減磁を必ずしも抑制できるとはいえないから、請求項1及び請求項2の記載は、前記課題を解決できない発明を含めて、特許を請求するものとなっている。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。請求項1及び請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様である。 2 当審の判断 前記1に記載した取消理由(サポート要件)は、先の訂正後の請求項1及び請求項2の記載は、「コイル」について、「ティースに巻き付けられる」と特定されているのみであり、コイルが集中巻以外の態様でティースに巻き付けられることを含む記載となっており、また、ステータのティースの数や、ロータの磁極数について何ら特定されていないから、コイルが12個のティースに巻かれ、ロータの磁極数が10極のもの、以外の態様も含むものとなっているため、この請求項1及び請求項2の記載は、発明の詳細な説明に記載された課題のうち、特に永久磁石の減磁を抑制するという課題を解決できない発明を含めて、特許を請求するものになっているということである。これに対し、本件訂正後の請求項1及び請求項2には、それぞれ「磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が10極であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する12個のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータ」と記載されているため、コイルが集中巻でティースに巻き付けられこと、コイルが12個のティースに巻かれ、ロータの磁極数が10極であることが特定されることとなった。 したがって、請求項1及び請求項2の記載は、永久磁石の減磁を抑制するという課題を解決するための手段が反映されたものであり、本件特許発明1及び本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第29条第1項柱書(発明該当性)について (1)特許異議申立人は、特許異議申立書の4(3)において、本件訂正前の請求項1に記載された「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上の厚さを有し」ていること、請求項2に記載された「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に3mm以上の厚さを有し」ていることに関し、永久磁石材料のコストと加工費との関係、すなわち経済状況等によって変化し得る要因により、永久磁石の厚さの好適値は異なることになるため、永久磁石を「2.1mm以上の厚さ」あるいは「3mm以上の厚さ」とすることは、普遍的原理に基づくものではなく、自然法則を利用しているということはできない旨を主張している。 しかしながら、特許明細書の段落【0004】の「一般に、永久磁石の厚さが厚いほど減磁は生じにくくなるが、永久磁石材料の使用量が増加するため、製造コストが増加する。一方、永久磁石の厚さを薄くし過ぎると、永久磁石材料の使用量は減少するが、加工費の増加により、永久磁石の単位重量当たりの価格が上昇し、結果的に製造コストが増加する。」という記載や、段落【0058】の「そのため、永久磁石25を十分に着磁するためには、永久磁石25の厚さT1は、4mm以下であることが望ましい。」という記載によると、永久磁石の厚さは、永久磁石材料の使用量や永久磁石の加工費に係る製造コストのみならず、永久磁石の厚さが厚いほど減磁が生じにくくなることや、永久磁石を十分に着磁するためには永久磁石の厚さを特定の厚さ以下にすることが望ましいことといった自然法則も考慮の上、設定されるものである。 さらに、本件訂正後の請求項1及び請求項2の記載は、永久磁石の厚さが「2.1mm以上、4mm以下」、あるいは「3mm以上、4mm以下」であるという前提の下、この永久磁石の厚さに加え、「前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)」、「前記ティースにおける前記コイルの巻き数Nt」及び「前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)」が、永久磁石の減磁に与える影響を考慮の上、「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)」を定めるものであり、全体として自然法則を利用していることは明らかである。 したがって、請求項1及び請求項2の記載は、自然法則を利用したものであり、請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13の記載についても同様であるから、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4~本件特許発明13は、特許法第29条第1項柱書の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 (2)特許異議申立人は、特許異議申立書の4(4)において、本件訂正前の請求項1に記載された「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式を満足すること、請求項2に記載された「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式を満足することに関し、図7における永久磁石の厚さが2.1mmである場合の曲線、あるいは3mmである場合の曲線に基づき導出された上記数式に着目することの合理性は、経済状況等の要因の影響を受けるものであり、上記数式は、普遍的原理に基づくものではなく、自然法則を利用しているということはできない旨を主張している。 しかしながら、前記(1)に示したように、永久磁石の厚さは、永久磁石材料の使用量や永久磁石の加工費に係る製造コストのみならず、永久磁石の厚さが厚いほど減磁が生じにくくなることや、永久磁石を十分に着磁するためには永久磁石の厚さを特定の厚さ以下にすることが望ましいことといった自然法則も考慮の上、設定されるものである。 さらに、本件訂正後の請求項1に記載された「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」という数式、あるいは請求項2に記載された「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」という数式は、永久磁石の厚さが「2.1mm以上、4mm以下」、あるいは「3mm以上、4mm以下」であるという前提の下、この永久磁石の厚さに加え、「前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)」、「前記ティースにおける前記コイルの巻き数Nt」及び「前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)」が、永久磁石の減磁に与える影響を考慮の上、「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)」を定めるものであり、全体として自然法則を利用していることは明らかである。 したがって、請求項1及び請求項2の記載は、自然法則を利用したものであり、請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13の記載についても同様であるから、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4~本件特許発明13は、特許法第29条第1項柱書の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (1)特許異議申立人は、特許異議申立書の5において、本件訂正前の請求項1に記載された「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上の厚さを有し」ていること、及び「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式を満足すること、あるいは請求項2に記載された「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に3mm以上の厚さを有し」ていること、及び「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式を満足することは、図6のグラフに依拠しており、加工費と永久磁石材料のコストとが特定の関係にある場合においてのみ成り立つものであり、永久磁石材料を加工するときに採用する加工法の種類や加工形状、永久磁石材料の種類等によっても変化し得るものであるから、上記種々の条件が特定されていない本件訂正前の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明の範囲まで一般化して、該請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明の目的、すなわち製造コストを低減しながら永久磁石の減磁を抑制することが達成できるとはいえない旨を主張している。 しかしながら、特許明細書には、段落【0005】に「製造コストを低減しながら、永久磁石の減磁を抑制する」という発明が解決しようとする課題が記載され、段落【0047】、【0050】、【0057】等の記載によると、該課題を解決する手段として、「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」が成立する場合に、厚さT1が2.1mm以上、4mm以下の永久磁石の減磁を抑制できること、あるいは「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」が成立する場合に、厚さT1が3mm以上、4mm以下の永久磁石の減磁を抑制できることが記載されている。そして、永久磁石の厚さT1が2.1mm以上、4mm以下の場合に「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」とし、あるいは永久磁石の厚さT1が3mm以上、4mm以下の場合に「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」として、永久磁石の保磁力を下限値とすれば、永久磁石の保磁力が過度に大きなものになることがなく、製造コストを低減できることは明らかである。 そして、本件訂正後の請求項1及び請求項2には、「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上、4mm以下の厚さを有し」、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式を満足すること、あるいは「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に3mm以上、4mm以下の厚さを有し」、「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式を満足することが特定されているから、前記した課題を解決する手段が反映されているといえる。 したがって、請求項1及び請求項2の記載は、「製造コストを低減しながら、永久磁石の減磁を抑制する」という課題を解決するための手段が反映されたものであり、本件特許発明1及び本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 (2)特許異議申立人は、特許異議申立書の5において、本件訂正前の請求項1及び請求項2に記載された「Hct」は、永久磁石の減磁を抑制できる保磁力の下限値を示すものであるところ、当該下限値よりも大きな保磁力を有する永久磁石を採用することについては、減磁の抑制効果は認識されるものの、保磁力の増加のために永久磁石材料の使用量増加や高価な永久磁石材料の利用等が必要となるから、製造コストの低減という効果を認識することはできない旨を主張している。 しかしながら、本件訂正後の請求項1及び請求項2には、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式を満足すること、あるいは「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式を満足することが記載されているから、永久磁石の保磁力(電動機の使用温度範囲の最高温度での保磁力)が、前記下限値である「Hct」であることが特定され、減磁を抑制するという課題のみならず、製造コストを低減するという課題についても、その課題解決手段が反映されたものとなっている。 したがって、請求項1及び請求項2の記載は、「製造コストを低減しながら、永久磁石の減磁を抑制する」という課題を解決するための手段が反映されたものであり、本件特許発明1及び本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 3 特許法第36条第6項第2号(明確性)について (1)特許異議申立人は、特許異議申立書の6において、本件訂正前の請求項1に記載された「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式、請求項2に記載された「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式は、電動機の構造に依存することが想定されるところ、どのような構造に基づくものであるのか規定されておらず、そのゆえ上記各数式の意味が不明である旨を主張している。 しかしながら、本件訂正後の請求項1には、「Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式、請求項2には、「Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式が記載されているところ、これらの数式で使用される各パラメータについて、請求項1及び請求項2の記載において、Hctが「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力」であること、Ipが「前記コイルに流れる電流の過電流閾値」であること、Ntが「前記ティースにおける前記コイルの巻き数」であること、AGが「前記ロータと前記ステータとの最小間隔」であることが特定されているから、前記数式の意味は明確である。また、本件訂正後の請求項1及び請求項2には、ロータの磁極数が10極であること、コイルが12個のティースに集中巻で巻き付けられること、永久磁石の厚さが2.1mm以上、4mm以下、あるいは3mm以上、4mm以下であることが特定されており、前記数式の前提となる電動機の構造についても特定されている。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は明確であり、請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 (2)特許異議申立人は、特許異議申立書の6において、本件訂正前の請求項1に記載された「Hct≧0.4×(Ip×Nt/AG)+410」の数式、請求項2に記載された「Hct≧0.32×(Ip×Nt/AG)+350」の数式は、永久磁石の温度に依存することが想定されるところ、どのような温度に基づくものであるのか規定されておらず、そのゆえ上記各数式の意味が不明である旨を主張している。 しかしながら、本件訂正後の請求項1及び請求項2には、Hctが「前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力」であることが特定されているから、前記数式において、どのような温度での永久磁石の保磁力を特定しているのかは明らかであり、前記数式の意味は明確である。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は明確であり、請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 (3)特許異議申立人は、特許異議申立書の6において、本件訂正前の請求項1に記載された「Nt」に関し、巻線方法について規定されておらず、「Nt」の意味が不明である旨を主張している。 しかしながら、本件訂正後の請求項1及び請求項2には、Ntが「前記ティースにおける前記コイルの巻き数」であること、コイルがティースに集中巻で巻き付けられることが特定されているから、Ntがどのように巻き付けられたコイルの巻き数を意味するのかは明確である。 したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は明確であり、請求項1又は請求項2を引用する請求項4~請求項13に係る本件特許発明4~本件特許発明13についても同様であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。 よって、特許異議申立人の前記主張は、採用することができない。 4 特許第29条第2項(進歩性)について (1)引用文献の記載及び引用発明 ア 甲第1号証 (ア)甲第1号証の記載 特許異議申立人が提出した甲第1号証である特開2014-39354号公報(以下「甲1」という。)には以下の事項が記載されている。 a「【0009】 以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。 なお、以下で説明する各実施の形態では、固定子と、固定子の内側に回転可能に支持されている回転子を備えている回転子内転型の電動機について説明する。また、スロット数が24で、3相4極の固定子巻線が分布巻き方式で各スロットに挿入されている固定子と、極数が4(極対数Pが2)となるように永久磁石が配置されている回転子を有する電動機について説明する。勿論、本発明は、これ以外の種々の構成の回転子と固定子を備える電動機として構成することができる。 また、本明細書では、「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の回転中心を通る回転中心線の方向を示す。また、「周方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向(回転中心線の方向)に直角な断面でみて、回転子の回転中心を中心とする円周方向を示す。また、「径方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向(回転中心線の方向)に直角な断面でみて、回転子の回転中心を通る方向を示す。」 b「【0011】 本実施の形態の電動機100は、固定子120と回転子150により構成されている。 固定子120は、固定子コア130と、固定子巻線140を有している。 固定子コア130は、薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層し、オートクランプ(カシメピン)等で一体化することによって構成されている。固定子コア130は、ヨーク131、複数のティース132、複数のスロット135を有している。 ヨーク131は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている。本実施の形態では、ヨーク131は、環状(略環状を含む)に形成されている。 ティース132は、軸方向に直角な断面でみて、ヨーク131から径方向に沿って延びている。ティース132は、図5に示されているように、ヨーク131から径方向内側に延びているティース基部133と、ティース基部133の先端側に設けられ、周方向に沿って延びているティース先端部134を有している。ティース先端部134には、回転子150と対向する箇所にティース先端面132aが形成されている。本実施の形態では、ティース先端面132aは、軸方向に直角な断面でみて、回転子150の回転中心Oを中心とする円弧形状に形成されている。そして、回転子150は、ティース先端面132aによって形成される回転子収容空間内に、回転子150の外周面150aとティース先端面132aとの間に空隙(ギャップ)gを有するように回転可能に支持される。 スロット135は、ヨーク131と周方向に隣接する2つのティース132とによって形成される。スロット135は、隣接する2つのティース132のティース先端部134の間にスロット開口部を有している。 固定子巻線140は、各スロット135に分布巻き方式で挿入されている。本実施の形態では、固定子巻線140は、周方向に隣接する3つのティース132によって1つの磁極が形成されるように各スロット135に挿入されている。」 c「【0012】 回転子150は、回転子コア160と永久磁石を有している。 回転子コア160は、薄板状の電磁鋼板を軸方向に積層し、オートクランプ(カシメピン)等で一体化することによって構成されている。回転子コア160には、回転軸180が挿入される回転軸挿入孔168が形成されている。回転軸180は、圧入方法や焼きバメ方法等によって回転軸挿入孔168に挿入される。 また、回転子コア160は、周方向に沿って交互に配置されている主磁極部A~Dと補助磁極部AB~DAを有している。主磁極部A~Dには、永久磁石が挿入される磁石挿入孔が形成されている。 本実施の形態では、回転子コア160は、円筒形状に形成されている。すなわち、軸方向に直角な断面でみて、回転子150(回転子コア160)の外周面150aは、回転中心Oを中心とする円形形状を有している。そして、回転子150の外周面150aは、主磁極部A~Dに対応する第1の曲線部分と補助磁極部AB~DAに対応する第2の曲線部分により構成されている。第1の曲線部分は、軸方向に直角な断面でみて、回転子150の回転中心Oと主磁極部A~Dの周方向中心点を結ぶ線(「d軸」と呼ばれている)と交差している。また、第2の曲線部分は、軸方向に直角な断面でみて、回転子150の回転中心Oと補助磁極部AB~DAの周方向中心点とを結ぶ線(「q軸」と呼ばれている)と交差している。 【0013】 主磁極部A~Dは同じ構成であり、また、補助磁極部AB~DAも同じ構成であるため、以下では、図2を参照して、主磁極部Aについて説明する。 主磁極部Aには、第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162が形成されている。すなわち、主磁極部Aに設けられる磁石挿入孔は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162により構成されている。 本実施の形態では、第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162は、軸方向に直角な断面でみて、d軸に直交(「略直交」を含む)する方向に沿って直線状に延びている。また、第2の磁石挿入孔162は、第1の磁石挿入孔161より回転子150の回転方向R側に配置されている。また、第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162は、d軸を挟んで周方向両側に配置されている。」 d「【0015】 第1の磁石挿入孔161に第1の永久磁石171が挿入され、第2の磁石挿入孔162に第2の永久磁石172が挿入されている。すなわち、主磁極部Aに設けられる永久磁石は、軸方向に直角な断面でみて、周方向に沿って延びている第1の永久磁石171と第2の永久磁石172により構成されている。 本実施の形態では、第1の永久磁石171と第2の永久磁石172は、第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162と同様に、軸方向に直角な断面でみて、d軸に直交(「略直交」を含む)する方向に沿って直線状に延びている。また、第2の永久磁石172は、第1の永久磁石171より回転子150の回転方向R側に配置されている。第1の永久磁石171および第2の永久磁石172は、隙間嵌め等によって第1の磁石挿入孔161および第2の磁石挿入孔162に挿入される。 永久磁石(第1の永久磁石171と第2の永久磁石172)は、周方向に隣接する主磁極部A~Dの極性が逆極性となるように配置される。図2では、主磁極部Aの永久磁石は外周側がN極となるように着磁されており、主磁極部Aに隣接する主磁極部BおよびDの永久磁石は外周側がS極となるように着磁されている。」 e「【0023】 ここで、スリットが設けられていない電動機(比較例の電動機)とスリットが設けられている電動機(本実施の形態の電動機)を同じ進角で進角制御した場合について説明する。 なお、比較例の電動機として、スリット166が設けられてなく、厚さT1が2mmの第1の永久磁石171と厚さT2が2mmの第2の永久磁石172を有する回転子を備える電動機を用いた。また、本実施の形態の電動機として、スリット166が設けられ、厚さT1が2mmの第1の永久磁石171と厚さT2が1mmの第2の永久磁石172を有する回転子を備える電動機を用いた。 両者を同じ進角で進角制御した結果、両者とも、第1の永久磁石171および第2の永久磁石172の減磁を抑制することができた。 この場合、本実施の形態の電動機における永久磁石の使用量は、比較例の電動機における永久磁石の使用量の75%である。 したがって、本実施の形態の電動機100を用いることにより、永久磁石の減磁を抑制しながら、永久磁石の使用量を低減することができる。」 f 図1及び図2には、次の事項が図示されている。 【図1】 [図:0001404762000001.jpg] 【図2】 [図:0001404762000002.jpg] g 前記aによると、固定子のスロット数は24であることや、前記fの図1の図示内容を踏まえると、ティース132の数も24個であることは明らかである。 (イ)甲1発明 前記(ア)a~gによれば、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「主磁極部A~Dに第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162が形成されている回転子コア160と、前記第1の磁石挿入孔161及び前記第2の磁石挿入孔162にそれぞれ挿入された第1の永久磁石171及び第2の永久磁石172とを有し、極数が4であり、前記回転子コア160に形成された回転軸挿入孔168に回転軸180が挿入され、回転可能に支持される回転子150と、 ティース先端面132aによって形成される回転子収容空間内に、前記回転子150が回転可能に支持される固定子120であって、前記回転子150と対向する箇所に前記ティース先端面132aが形成されているティース先端部134を有する24個のティース132を有する固定子コア130と、周方向に隣接する3つの前記ティース132によって1つの磁極が形成されるように各スロット135に分布巻き方式で挿入される固定子巻線140とを有する固定子120と により構成されている電動機100であって、 前記第1の永久磁石171は、2mmの厚さT1を有し、前記第2の永久磁石172は、1mmの厚さT2を有し、外周側がN極又はS極となるように着磁されている 電動機100。」 イ 甲第2号証 (ア)甲第2号証の記載 特許異議申立人が提出した甲第2号証であるShanelle Nicole Foster,“Operation of interior permanent magnet synchronous machines with fractional slot concentrated windings under both healthy and faulty conditions”,2013年,第1,2,44~46ページ(以下「甲2」という。)には以下の事項が記載されている。 a「 [図:0001404762000003.jpg] 」(第1ページ第8行~第13行)[当審訳:航空宇宙産業や自動車産業では、乗客の安全が非常に重要視されている。これらの産業では、機械の故障が人命を危険にさらすことになる。このため、永久磁石同期機には高い信頼性とロバスト性が要求される。航空宇宙産業や自動車産業で使用される機械には、故障の可能性が低いだけでなく、運転を継続すること、あるいは、故障を回避することが要求される。また、故障しても安全に運転が継続できること、あるいは故障しないことが求められる。技術は電動機の信頼性を進歩させているしかしながら、電動機の故障は未だ起きている。] b「 [図:0001404762000004.jpg] [図:0001404762000005.jpg] 」(第1ページ第15行~第2ページ第5行)[当審訳:ステータ巻線の故障は、最も多い故障の一つである。電動機の故障の約35%は、ステータ関連である。ステータ関連の故障の70%は、シミュレーションの故障が原因である。ステータ巻線が故障する確率を低くし、巻線が絶縁不良になっても運転を継続できるようにすることで、ステータ巻線が故障する確率を低くすることができる。ステータ巻線が故障する確率を低くし、巻線が絶縁不良になっても運転を継続できるようにするためには、フォールトトレラント(耐障害性)マシン設計によって達成できる。[3]によれば,単相のターン間短絡は、相間短絡よりも深刻である。このため、著者らは、2層フラクショナルスロット集中巻永久磁石同期機設計は、単層と同等の信頼性があると結論付けている。本研究では、2層および単層のフラクショナルスロット集中巻きの内部永久磁石同期機の信頼性を比較した。] c「 [図:0001404762000006.jpg] 」(第44ページ下から3行~下から1行)[当審訳:図4.2に装置の概要を、表4.2に装置の設計パラメータを示す。製作した試作機のステータとロータをそれぞれ図4.3aと図4.3bに示す。] d 第45ページのFiguer4.2には、次の事項が図示されている。 [図:0001404762000007.jpg] e 前記a~cの記載、前記dのFiguer4.2の図示内容、及び電動機の技術分野における技術常識を踏まえると、ロータは、磁石挿入孔を有するロータ積層体と、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が4極であり、シャフトを中心として回転可能であること、ステータは、ロータを囲むように設けられ、ロータに対向する6個のティースを有するステータ積層体と、前記ティースに集中巻で巻き付けられるステータ巻線とを有すること、永久磁石は、ステータに対向する方向の厚さを有し、厚さ方向に着磁されていることは明らかである。 (イ)甲2発明 前記(ア)a~eによれば、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「磁石挿入孔を有するロータ積層体と、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が4極であり、シャフトを中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する6個のティースを有するステータ積層体と、前記ティースに集中巻で巻き付けられるステータ巻線とを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向の厚さを有し、前記厚さ方向に着磁されている 電動機。」 ウ 甲第3号証 特許異議申立人が提出した甲第3号証である国際公開第2017/158680号(以下「甲3」という。)には以下の事項が記載されている。 (ア)「[0040]永久磁石12は、正常組の3相巻線への供給電流を増加上限電流値まで増加させた条件に基づいて設定(設計)されている。具体的には、永久磁石12の保磁力は、モータ51の最大使用温度において、正常組の3相巻線への供給電流を増加上限電流値まで増加させた場合に、減磁率が予め定められた許容減磁率以下になるように設定(設計)されている。また、永久磁石12の動作点パーミアンスは、モータ51の最大使用温度において、正常組の3相巻線への供給電流を増加上限電流値まで増加させた場合に、減磁率が予め定められた許容減磁率以下になるように設定(設計)されている。永久磁石12の保磁力は、永久磁石12の材質、コーティング等を変化させることにより、高めることができる。永久磁石12の動作点パーミアンスは、図5に示した、永久磁石12の周方向幅W、永久磁石12の厚みt、エアギャップLを変化させることにより、所望の値に設定することができる。」 エ 甲第4号証 特許異議申立人が提出した甲第4号証である特開2004-173415号公報(以下「甲4」という。)には以下の事項が記載されている。 (ア)「【0002】 【従来の技術】 従来から、永久磁石の熱減磁について研究がなされている(例えば、非特許文献1参照)。ここでは、熱減磁を評価するためのパラメータを提案し、このパラメータの大小が熱減磁に大きく影響するということが述べられている。しかしながら、例えば発電機やモータを始めとする回転電機に永久磁石を適用した場合に、磁石の寸法、鉄心の寸法をどのように設定すれば、熱減磁の発生を小さく抑えることができるか検討されていない。特に、長期間の運転を要求される風力発電機などでは、永久磁石の初期減磁と経時変化がどの程度なのか予め把握しておく必要があるが、従来の技術では、例えば10年、20年経過したときの減磁量を推定することができない」 (イ)「【0011】 ここで、Hgは空隙での磁界[A/m]、gは空隙長[m]、Hmは磁石内での磁界[A/m]、hは磁石の厚み[m]である。また、Nは巻線用スロットに納められている巻線の各スロットにおける巻数でありIu,IvはそれぞれU相巻線、V相巻線に流れる電流である。」 (ウ)「【0017】 一方、磁石の固有保磁力をH[A/m]とすれば、減磁評価用パラメータΔは次式(4)のように定義される。 【0018】 【数11】 [図:0001404762000008.jpg] 」 (エ)「【0026】 ただし、Iは電流の振幅、ωは各周波数、tは時間である。式(7)は次式(8)と書けるので、電機子電流による起磁力の最大値はNIであるといえる。 【0027】 【数15】 [図:0001404762000009.jpg] 【0028】 式(6)、(8)を式(4)に代入すると、近似的に式(9)と表すことができる。これで、減磁評価用パラメータと永久磁石型回転電機のパラメータとの関連付けができる。 【0029】 【数16】 [図:0001404762000010.jpg] 」 (オ)「【0042】 さらに、稀に回転電機において何らかの原因で短絡が生じる場合がある。このときは運転状態よりも大きな電流が流れる。例えば、三相突発短絡時には回転電機によって異なるが、一般には定格電流の数倍の電流が流れる。磁気回路の設計が不適切であると、この大電流により永久磁石が減磁してしまうことがある。一旦、減磁してしまうと永久磁石を取り出して、再着磁する必要があるので、復旧するのにコストや時間が掛かる。したがって、短絡時の大電流でも減磁しない構成にするのがよい。このため、式(12)の左辺のIに三相突発短絡時の電流の最大値を代入しても式(12)の関係が成り立つときには、何らかの原因で短絡が生じた場合においても、永久磁石の減磁をごく僅かに抑えることができるという効果がある。」 (カ)「【0063】 実施の形態4. 永久磁石1の保磁力は、温度によって大きく変化する、例えば図8に示すような特性を示す。温度が高いほど保磁力は低下する。常温(例えば20℃)において、これまで述べた条件を満たす構成としても、回転電機が運転状態にあり、回転子の渦電流損等による発熱で100℃程度まで上昇することがある。したがって、これまで述べた条件は、永久磁石1が100℃における、残留磁束密度Bと保磁力Hに対して成立することが望ましい。」 (2)甲1発明を主引用発明とした場合 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲1発明の対比 以下、本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「第1の磁石挿入孔161」及び「第2の磁石挿入孔162」は、ともに本件特許発明1の「磁石挿入孔」に相当し、甲1発明の「回転子コア160」は、本件特許発明1の「ロータコア」に相当する。すると、甲1発明の「主磁極部A~Dに第1の磁石挿入孔161と第2の磁石挿入孔162が形成されている回転子コア160」は、本件特許発明1の「磁石挿入孔を有するロータコア」に相当する。 甲1発明の「第1の永久磁石171」及び「第2の永久磁石172」は、ともに本件特許発明1の「永久磁石」に相当する。すると、甲1発明の「前記第1の磁石挿入孔161及び前記第2の磁石挿入孔162にそれぞれ挿入された第1の永久磁石171及び第2の永久磁石172」は、本件特許発明1の「前記磁石挿入孔に配置された永久磁石」に相当する。 甲1発明の「極数」、「回転軸180」及び「回転子150」は、それぞれ本件特許発明1の「磁極数」、「回転軸」及び「ロータ」に相当する。すると、甲1発明の「極数が4であり」という事項と、本件特許発明1の「磁極数が10極であり」という事項とは、磁極数が所定の数である点において共通する。また、甲1発明の「前記回転子コア160に形成された回転軸挿入孔168に回転軸180が挿入され、回転可能に支持される回転子150」は、回転軸180を中心に回転可能に支持されていることは明らかであるから、本件特許発明1の「回転軸を中心に回転可能なロータ」に相当する。 b 甲1発明の「固定子120」は、本件特許発明1の「ステータ」に相当し、甲1発明の「ティース先端面132aによって形成される回転子収容空間内に、前記回転子150が回転可能に支持される固定子120」は、前記(1)ア(ア)fの図1の図示内容も踏まえると、回転子150を囲んでいるといえるから、本件特許発明1の「前記ロータを囲むように設けられたステータ」に相当する。 甲1発明の「ティース132」及び「固定子コア130」は、それぞれ本件特許発明1の「ディース」及び「ステータコア」に相当する。すると、甲1発明の「前記回転子150と対向する箇所に前記ティース先端面132aが形成されているティース先端部134を有する24個のティース132を有する固定子コア130」と、本件特許発明1の「前記ロータに対向する12個のティースを有するステータコア」とは、ロータに対向する所定の数のティースを有するステータコアである点において共通する。 甲1発明の「固定子巻線140」は、本件特許発明1の「コイル」に相当する。そして、甲1発明の「周方向に隣接する3つの前記ティース132によって1つの磁極が形成されるように各スロット135に分布巻き方式で挿入される固定子巻線140」は、ティース12に巻き付けられることが明らかであるから、本件特許発明1の「前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイル」と、ティースに巻き付けられるコイルである点において共通する。 c 甲1発明の「電動機100」及び「により構成されている電動機100」は、それぞれ本件特許発明1の「電動機」及び「を備えた電動機」に相当する。 d 甲1発明の「前記第1の永久磁石171は、2mmの厚さT1を有し、前記第2の永久磁石172は、1mmの厚さT2を有し、外周側がN極又はS極となるように着磁されている」という事項は、前記(1)ア(ア)fの図1及び図2の図示内容も踏まえると、厚さT1及び厚さT2が、固定子120に対向する方向の寸法であり、この厚さT1及び厚さT2の方向に着磁されているといえるから、本件特許発明1の「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上、4mm以下の厚さを有し、前記厚さの方向に着磁され」るという事項とは、永久磁石は、ステータに対向する方向に所定の厚さを有し、厚さの方向に着磁される点において共通する。 e そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の[一致点1-1]で一致し、[相違点1-1-1]及び「相違点1-1-2」で相違する。 [一致点1-1] 磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が所定の数であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する所定の数のティースを有するステータコアと、前記ティースに巻き付けられるコイルとを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に所定の厚さを有し、前記厚さの方向に着磁される、 電動機。 [相違点1-1-1] ロータの磁極数、ティースの数、コイルの巻き付けられ方、永久磁石の厚さについて、本件特許発明1は、それぞれ「10極」、「12個」、「集中巻」、「2.1mm以上、4mm以下」であるのに対し、甲1発明は、それぞれ「4」、「24個」、「分布巻き方式」、「前記第1の永久磁石171は、2mmの厚さT1を有し、前記第2の永久磁石172は、1mmの厚さT2を有」するものである点。 [相違点1-1-2] 本件特許発明1は、「前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)と、前記ティースにおける前記コイルの巻き数Ntと、前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)と、前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)とが、Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410を満足する」のに対し、甲1発明は、第1の永久磁石171及び第2の永久磁石172の保磁力Hctが明らかでない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点1-1-2から検討する。 a 電動機の技術分野において、永久磁石の減磁を抑制するという課題を解決するために、例えば、甲3の段落[0040](前記(1)ウ(ア)参照。)、甲4の段落【0042】、【0063】(前記(1)エ(オ)、(カ)参照。)、特開2015-62338号公報(令和4年11月28日付け取消理由通知で引用した引用文献4。以下「引用文献4」という。)の段落【0031】、【0032】に記載されているように、永久磁石の保磁力を、電動機が使用温度範囲の最高温度で使用され、最大負荷である時(最大電流が流れる時)であっても減磁が生じないように設定することは、本件特許の出願前から周知の事項である。同様に、例えば、甲3の段落[0040](前記(1)ウ(ア)参照。)、甲4の段落【0002】、【0011】、【0017】、【0018】、【0026】~【0029】、(前記(1)エ(ア)~(エ)参照。)、引用文献4の段落【0036】、特許第5646119号公報(令和4年11月28日付け取消理由通知で引用した引用文献6。以下「引用文献6」という。)の段落【0015】-【0023】に記載されているように、永久磁石の厚さ、巻線起磁力(アンペアターン)、ロータとステータとの間隔等のパラメータが、永久磁石の減磁に影響を及ぼすことも、本件特許の出願前から周知の事項である。 b しかしながら、永久磁石の減磁を抑制するとともに、製造コストを低減すべく、永久磁石の保磁力が過度に大きなものとならないように、該永久磁石の保磁力(電動機の使用温度範囲の最高温度での永久磁石の保磁力)Hct(kA/m)を、Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410という近似式を満足したものにすることは、甲1、甲3、甲4、引用文献4、引用文献6のいずれの文献にも記載も示唆もされていない。 そして、この点は、甲2の他、令和4年11月28日付け取消理由通知で引用した引用文献2である特開2017-28862号公報(以下「引用文献2」という。)、同じく引用文献7である特開2017-55504号公報(以下「引用文献7」という。)、同じく引用文献8である特開2013-162557号公報(以下「引用文献8」という。)、同じく引用文献9である国際公開第2018/011979号(以下「引用文献9」という。)にも記載も示唆もされていない。 c そうすると、甲1発明において、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲2に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項を、当業者が考慮しても、本件特許発明1の相違点1-1-2に係る発明特定事項とすることは、容易に想到し得るものではない。 (ウ)まとめ したがって、相違点1-1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲2に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2について (ア)本件特許発明2と甲1発明の対比 本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、前記ア(ア)に示した、本件特許発明1と甲1発明との対比と、同様に対比をとることができる。 そうすると、本件特許発明2と甲1発明とは、以下の[一致点1-2]で一致し、[相違点1-2-1]及び「相違点1-2-2」で相違する。 [一致点1-2] 磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が所定の数であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する所定の数のティースを有するステータコアと、前記ティースに巻き付けられるコイルとを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に所定の厚さを有し、前記厚さの方向に着磁される、 電動機。 [相違点1-2-1] ロータの磁極数、ティースの数、コイルの巻き付けられ方、永久磁石の厚さについて、本件特許発明2は、それぞれ「10極」、「12個」、「集中巻」、「3mm以上、4mm以下」であるのに対し、甲1発明は、それぞれ「4」、「24個」、「分布巻き方式」、「前記第1の永久磁石171は、2mmの厚さT1を有し、前記第2の永久磁石172は、1mmの厚さT2を有」するものである点。 [相違点1-2-2] 本件特許発明2は、「前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)と、前記ティースにおける前記コイルの巻き数Ntと、前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)と、前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)とが、Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350を満足する」のに対し、甲1発明は、第1の永久磁石171及び第2の永久磁石172の保磁力Hctが明らかでない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点1-2-2から検討する。 a 前記ア(イ)aに示したように、電動機の技術分野において、永久磁石の減磁を抑制するという課題を解決するために、永久磁石の保磁力を、電動機が使用温度範囲の最高温度で使用され、最大負荷である時(最大電流が流れる時)であっても減磁が生じないように設定することは、本件特許の出願前から周知の事項である。同様に、永久磁石の厚さ、巻線起磁力(アンペアターン)、ロータとステータとの間隔等のパラメータが、永久磁石の減磁に影響を及ぼすことも、本件特許の出願前から周知の事項である。 b しかしながら、永久磁石の減磁を抑制するとともに、製造コストを低減すべく、永久磁石の保磁力が過度に大きなものとならないように、該永久磁石の保磁力(電動機の使用温度範囲の最高温度での永久磁石の保磁力)Hct(kA/m)を、Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350という近似式を満足したものにすることは、甲1、甲3、甲4、引用文献4、引用文献6の他、甲2、引用文献2、引用文献7~引用文献9のいずれにも記載も示唆もされていない。 c そうすると、甲1発明において、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲2に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項を、当業者が考慮しても、本件特許発明2の相違点1-2-2に係る発明特定事項とすることは、容易に想到し得るものではない。 (ウ)まとめ したがって、相違点1-2-1について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲2に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明4~本件特許発明13について 本件特許発明4~本件特許発明13は、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明1の前記相違点1-1-2に係る発明特定事項又は本件特許発明2の前記相違点1-2-2に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記ア又はイに示した理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲2発明を主引用発明とした場合 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲2発明の対比 以下、本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 a 甲2発明の「ロータ積層体」、「シャフト」、「ステータ積層体」及び「ステータ巻線」は、それぞれ本件特許発明1の「ロータコア」、「回転軸」、「ステータコア」及び「コイル」に相当する。 b 甲2発明の「磁極数が4極であ」るという事項と、本件特許発明1の「磁極数が10極であ」るという事項とは、磁極数が所定の数である点において共通し、甲2発明の「6個のティース」と、本件特許発明1の「12個のティース」とは、所定の数のティースである点において共通し、甲2発明の「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向の厚さを有」するという事項と、本件特許発明1の「前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に2.1mm以上、4mm以下の厚さを有」するという事項とは、永久磁石は、ステータに対向する方向に厚さを有する点において共通する。 c そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の[一致点2-1]で一致し、[相違点2-1-1]及び「相違点2-1-2」で相違する。 [一致点2-1] 磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が所定の数であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する所定の数のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に厚さを有し、前記厚さの方向に着磁される、 電動機。 [相違点2-1-1] ロータの磁極数、ティースの数、永久磁石の厚さについて、本件特許発明1は、ロータの磁極数が「10極」、ティースの数が「12個」、永久磁石の厚さが「2.1mm以上、4mm以下」であるのに対し、甲2発明は、ロータの磁極数が「4極」、ティースの数が「6個」、永久磁石の厚さが明らかでない点。 [相違点2-1-2] 本件特許発明1は、「前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)と、前記ティースにおける前記コイルの巻き数Ntと、前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)と、前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)とが、Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410を満足する」のに対し、甲2発明は、永久磁石の保磁力Hctが明らかでない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点2-1-2から検討する。 a 前記(2)ア(イ)aに示したように、電動機の技術分野において、永久磁石の減磁を抑制するという課題を解決するために、永久磁石の保磁力を、電動機が使用温度範囲の最高温度で使用され、最大負荷である時(最大電流が流れる時)であっても減磁が生じないように設定することは、本件特許の出願前から周知の事項である。同様に、永久磁石の厚さ、巻線起磁力(アンペアターン)、ロータとステータとの間隔等のパラメータが、永久磁石の減磁に影響を及ぼすことも、本件特許の出願前から周知の事項である。 b しかしながら、永久磁石の減磁を抑制するとともに、製造コストを低減すべく、永久磁石の保磁力が過度に大きなものとならないように、該永久磁石の保磁力(電動機の使用温度範囲の最高温度での永久磁石の保磁力)Hct(kA/m)を、Hct=0.4×(Ip×Nt/AG)+410という近似式を満足したものにすることは、甲2、甲3、甲4、引用文献4、引用文献6の他、甲1、引用文献2、引用文献7~引用文献9のいずれにも記載も示唆もされていない。 c そうすると、甲2発明において、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲1に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項を、当業者が考慮しても、本件特許発明1の相違点2-1-2に係る発明特定事項とすることは、容易に想到し得るものではない。 (ウ)まとめ したがって、相違点2-1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲1に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2について (ア)本件特許発明2と甲2発明の対比 本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、前記ア(ア)に示した、本件特許発明1と甲2発明との対比と、同様に対比をとることができる。 そうすると、本件特許発明2と甲2発明とは、以下の[一致点2-2]で一致し、[相違点2-2-1]及び「相違点2-2-2」で相違する。 [一致点2-2] 磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔に配置された永久磁石とを有し、磁極数が所定の数であり、回転軸を中心として回転可能なロータと、 前記ロータを囲むように設けられたステータであって、前記ロータに対向する所定の数のティースを有するステータコアと、前記ティースに集中巻で巻き付けられるコイルとを有するステータと を備えた電動機であって、 前記永久磁石は、前記ステータに対向する方向に厚さを有し、前記厚さの方向に着磁される、 電動機。 [相違点2-2-1] ロータの磁極数、ティースの数、永久磁石の厚さについて、本件特許発明2は、ロータの磁極数が「10極」、ティースの数が「12個」、永久磁石の厚さが「3mm以上、4mm以下」であるのに対し、甲2発明は、ロータの磁極数が「4極」、ティースの数が「6個」、永久磁石の厚さが明らかでない点。 [相違点2-2-2] 本件特許発明2は、「前記ロータと前記ステータとの最小間隔AG(mm)と、前記ティースにおける前記コイルの巻き数Ntと、前記コイルに流れる電流の過電流閾値Ip(A)と、前記電動機の使用温度範囲の最高温度での前記永久磁石の保磁力Hct(kA/m)とが、Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350を満足する」のに対し、甲2発明は、永久磁石の保磁力Hctが明らかでない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点2-2-2から検討する。 a 前記(2)ア(イ)aに示したように、電動機の技術分野において、永久磁石の減磁を抑制するという課題を解決するために、永久磁石の保磁力を、電動機が使用温度範囲の最高温度で使用され、最大負荷である時(最大電流が流れる時)であっても減磁が生じないように設定することは、本件特許の出願前から周知の事項である。同様に、永久磁石の厚さ、巻線起磁力(アンペアターン)、ロータとステータとの間隔等のパラメータが、永久磁石の減磁に影響を及ぼすことも、本件特許の出願前から周知の事項である。 b しかしながら、永久磁石の減磁を抑制するとともに、製造コストを低減すべく、永久磁石の保磁力が過度に大きなものとならないように、該永久磁石の保磁力(電動機の使用温度範囲の最高温度での永久磁石の保磁力)Hct(kA/m)を、Hct=0.32×(Ip×Nt/AG)+350という近似式を満足したものにすることは、甲2、甲3、甲4、引用文献4、引用文献6の他、甲1、引用文献2、引用文献7~引用文献9のいずれにも記載も示唆もされていない。 c そうすると、甲2発明において、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲1に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項を、当業者が考慮しても、本件特許発明2の相違点2-2-2に係る発明特定事項とすることは、容易に想到し得るものではない。 (ウ)まとめ したがって、相違点2-2-1について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲2発明、甲3に記載された事項、甲4に記載された事項、甲1に記載された事項、及び引用文献2、引用文献4、引用文献6~引用文献9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件特許発明4~本件特許発明13について 本件特許発明4~本件特許発明13は、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明1の前記相違点2-1-2に係る発明特定事項又は本件特許発明2の前記相違点2-2-2に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記ア又はイに示した理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1、請求項2、請求項4~請求項13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1、請求項2、請求項4~請求項13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、前記第2に示すとおり、本件訂正により請求項3が削除され、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700918

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