特許異議申立
2022-700917
インク組成物
- 審判番号
- 2022-700917
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-017086外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7038268
- 請求日
- 2022年09月16日
- 審決日
- 2023年07月12日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社DNPファインケミカル
- 【権利者代理人】正林 真之
- 【権利者代理人】林 一好
- 【異議申立人】金山 愼一
- 分類
- P1651.113-Y (C09D) / P1651.121-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第151条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7038268号発明「インク組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7038268号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7038268号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和3年10月29日(優先権主張 令和2年10月30日及び同年11月12日)に出願された特願2021-177792号(以下、「原出願」という。)の一部を、令和4年2月7日に新たな特許出願としたものであって、同年3月9日に特許権の設定登録がなされ(請求項の数4)、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~4に係る特許に対し、同年9月16日に特許異議申立人である 金山 愼一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和5年1月17日付け(発送日:同年同月19日)で取消理由通知が通知され、同年3月16日に意見書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(以下、項番にしたがって「本件特許発明1」などといい、まとめて、「本件特許発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
インクジェット法によって吐出されるインク組成物であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有し、
以下の試験方法により測定された前記インク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である
インク組成物。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。
【請求項2】
前記光輝性顔料は、疎水性化合物により被覆されている
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有し、
以下の試験方法により測定された前記インク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である
記録方法。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。
【請求項4】
インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有し、
以下の試験方法により測定された前記インク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である
印刷物の製造方法。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
当審が令和5年1月17日付けで通知した取消理由は、下記1のとおりである。また、特許異議申立人は、下記2の証拠方法を提出した。なお、下記1の取消理由1は、主たる引用刊行物等として、下記2の甲2又は甲5を引用するものであり、取消理由2は、主たる引用刊行物等として、下記2の甲2、甲4又は甲5を引用するものである。
1 取消理由
<取消理由1>
本件特許発明1~4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
<取消理由2>
本件特許発明1~4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 特許異議申立人が提出した証拠方法
特許異議申立人が提示した証拠は、次のとおりである。なお、甲第1号証を甲1などという。
甲1:特許第7038268号公報(本件特許公報)
甲2:特開2019-172871号公報
甲3:金山 愼一作成、「報告書1(特開2019-172871号公報の実施例9のインク組成物の水素発生量)」、2022年9月8日
甲4:特開2014-141587号公報
甲5:特開2015-67767号公報
甲6:金山 愼一作成、「報告書2(特開2015-67767号公報の実施例2のインク組成物の水素発生量)」、2022年9月8日
甲7:特開2017-43722号公報
甲8:特開2011-140609号公報
甲9:特開2013-64053号公報
甲10:特開2002-121423号公報
甲11の1:橋詰良樹、「アルミニウム顔料の最近の開発動向」、色材協会誌、2010年4月15日発行、第83巻第4号、第164~170頁
甲11の2:国立研究開発法人科学技術振興機構、アルミニウム顔料の最近の開発動向の書誌情報を示すウェブページの出力物
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai/83/4/83_4_164/_article/-char/ja)
甲12:特開昭53-45331号公報
甲13:特開2006-199920号公報
甲14:特開2003-41150号公報
甲15:「疎水性ポリマー」と題するウェブサイトの記事(令和4年(2022年)9月4日(プリントアウト日))
(https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/products/materials-science/biomedical-materials/hydrophobic-polymers)
甲16:「エステルの性質と反応」と題するウェブサイトの記事(令和4年(2022年)9月4日(プリントアウト日))
(https://sci-pursuit.com/chem/organic/ester.html)
3 甲号証の記載
各甲号証には、以下の記載がある。なお、甲1、甲8~11、甲15及び甲16は、本件発明1の新規性、進歩性を否定するものではないことが明らかであるので、摘記を省略した。
(1)甲2の記載
ア「【請求項1】
少なくとも、(A)鱗片状金属顔料、(B)重合性化合物および(C)ノニオン系分散剤を含む活性エネルギー線硬化型インク組成物。」
イ「【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インク組成物に関し、特には、長期保存後のインクを用いた場合でも優れた金属調を有する印刷物を印刷可能で、かつ貯蔵安定性にも優れるインク組成物に関する。」
ウ「【0007】
本発明の目的は、長期保存後のインクを用いた場合でも優れた金属調を有する印刷物が印刷可能で、プリントヘッドの耐腐食性にも優れ、かつ貯蔵安定性に優れた活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することにある。」
エ「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた金属調を有する貯蔵安定性にも優れるインク組成物により汎用性のある印刷をすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物(以下、単にインク組成物ともいう)を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、少なくとも、(A)鱗片状金属顔料、(B)重合性化合物および(C)ノニオン系分散剤を含むことを特徴とする。
【0011】
<(A)鱗片状金属顔料>
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に用いる鱗片状金属顔料は、箔のような薄く平らな形状をした金属顔料であり、例えば、蒸着を利用した製法により得られる。鱗片状金属顔料としては、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金等の金属顔料が挙げられ、アルミニウムが好ましい。平均粒径、アスペクト比は適宜選択して使用することができ、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。」
オ「【0020】
≪活性エネルギー線硬化≫
本発明における活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、電子線等通常の活性エネルギー線を使用することができ、特に紫外線であることが好ましい。活性エネルギー線源としては、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマレーザ、色素レーザ、LEDランプ等の紫外線源、並びに電子線加速装置等が使用できる。活性エネルギー線の照射エネルギー量(積算光量)は、200~2,000mJ/cm2であることが好ましい。
【0021】
<(B)重合性化合物>
本発明のインク組成物に用いる重合性化合物は、紫外線、可視光線、電子線等の活性エネルギー線の照射によりラジカル重合、カチオン重合を起こすモノマーであれば、特に制限なく使用することができる。これら重合性化合物は、単官能モノマー、多官能モノマー、環状エーテル化合物、オキセタン化合物等を使用することができ、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。」
カ「【0047】
≪重量平均分子量が12,000以下であり、かつ酸価が5~100である樹脂(P)≫
本発明のインク組成物は、重量平均分子量が12,000以下であり、かつ酸価が5~100である樹脂(P)を含有することを好ましい特徴とする。
樹脂(P)は、酸価が5~100の範囲のカルボキシル基等の酸基を有し、該酸基が鱗片状金属顔料の表面と反応し、鱗片状金属顔料の表面を樹脂(P)で覆うことができる。このため、上記樹脂(P)の酸価が5~100であれば、インク中でのゲル化を効果的に抑制することができる。」
キ「【0060】
本発明のインク組成物は、種々のインクジェットプリンタで使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式又はピエゾ方式によりインク組成物を吐出させるインクジェットプリンタを挙げることができる。また、大型インクジェットプリンタ、具体例としては工業ラインで生産される物品への印刷を目的としたインクジェットプリンタも好適に使用できる。
【0061】
本発明の被印刷物は、特に限定されるものではないが、工業ラインで用いられる基材が好適に挙げられる。また、被印刷物の形状としては、例えば、板状及びフィルム状等がある。更に、被印刷物の材質としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック、ステンレス、アルミニウム等の金属、木材及びガラス等が挙げられる。」
ク「【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
<インク組成物>
≪鱗片状金属顔料分散液の調製≫
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化度37%)を酢酸エチルに溶解した3.0質量%下引き液を均一に塗布し、PETフィルム上に下引き層を形成した。
次いで、真空蒸着により、上記下引き層上に平均膜厚21nmのアルミニウム蒸着層を形成し積層体を得た。
上記積層体を、酢酸エチル中、超音波分散機を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、鱗片状金属顔料分散液を作製した。
【0065】
得られた鱗片状金属顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去しD50=0.6μm、平均厚み=21nmの鱗片状金属顔料分散液1(以下、分散液1ということもある)を得た。
インク組成物の調製においては、鱗片状金属顔料分散液1を使用し、途中エバポレーターにより溶剤を留去、あるいは溶剤を添加することで、所定の非反応性溶剤濃度に調整した。
この方法と同様にして、表1に記載の鱗片状金属顔料分散液2を作製した。単位は質量%である。
【0066】
【表1】
[図:0001400473000001.jpg]
【0067】
≪樹脂(P)の合成≫
温度計、攪拌器、窒素導入管及びパーシャルコンデンサー付き流出管を搭載したフラスコに、イソフタル酸320質量部、無水マレイン酸5質量部、ネオペンチルグリコール200質量部を入れ、所定の酸価になるまで240℃で脱水縮合反応させた。その後、パーシャルコンデンサーを分水器付き還流冷却管に取り替え、キシレンを加えてさらに脱水縮合反応させた。目的の酸価と重量平均分子量となったことを確認した後、エバポレーターでキシレンを除去することで、ポリエステル樹脂(P)を得た。
【0068】
≪インク組成物の調製≫
鱗片状金属顔料分散液、重合性化合物、光重合開始剤は下記のものを使用して、インク組成物1として100質量%となるように調製した。
1)鱗片状金属顔料分散液:アルミニウム固形分として 1質量%
2)重合性化合物:
a.トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製) 31.4質量%
b.エチルカルビトールアクリレート(共栄社化学社製) 30質量%
c.アミノアクリレート:EBECRYL7100(ダイセルオルネクス社製) 8.0質量%
d.トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学社製) 14.8質量%
3)分散剤:
a.SOLSPERSE27000(ルーブリゾール社製、ノニオン系、重量平均分子量=821)
b.SOLSPERSE54000(ルーブリゾール社製、ノニオン系、重量平均分子量=3,046)
c.DISPERBYK-192(ビックケミー社製、ノニオン系、重量平均分子量=1,487)
d.DISPERBYK-168(ビックケミー社製、アミン価=11、重量平均分子量=3,496)
e.BYK-9076(ビックケミー社製、酸価=38、アミン価=44、重量平均分子量=3,914)
f.DISPERBYK-2013(ビックケミー社製、酸価=8、アミン価=18、重量平均分子量=3,448)
4)樹脂(P):酸価11 重量平均分子量6,000
5)光重合開始剤:
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Lambson社製) 8.0質量%
6)重合禁止剤:ヒドロキノンモノメチルエーテル(東京化成工業社製)0.2質量%
7)非反応性溶剤:酢酸エチル 3.5質量%
この方法と同様にして、表2に記載のインク組成物2~8を調製した。単位は質量%である。なお実施例では、鱗片状金属顔料分散液以外の組成を共通とする集団を、同じインク組成物Noとした。
【0069】
【表2】
[図:0001400473000002.jpg]
【0070】
<印刷方法>
インクジェットプリンタ(プリントヘッドノズル径30μm,ヘッド内フィルター#2300メッシュ)とUV-LED(照射強度500mW/cm2、積算光量500mJ/cm2)を使用し、プリントヘッドを40℃に加温して、基材温度は室温23℃で印刷を行った。なお、基材は市販のポリカーボネート板を使用した。
【0071】
<評価>
下記の評価を行い、結果を表3~4に示す。
≪貯蔵安定性≫
上記インク組成物を50℃で28日間静置保管し、保管前後のインク組成物の粘度を測定して、粘度変化率を求め、下記の基準に従い貯蔵安定性を評価した。なお、インク組成物の粘度は、レオメーター(Antonpaar社製MCR301)を用いて40℃、ずり速度100s-1にて測定した。
◎:粘度変化率が0~4.9%
○:粘度変化率が5.0%~9.9%
△:粘度変化率が10.0%~19.9%
×:粘度変化率が20.0%以上
≪金属調≫
上記貯蔵安定性試験前のインク組成物、及び上記貯蔵安定性試験後のインク組成物をそれぞれ用いて印刷して得られた印刷物をBYKガードナー社製多角度測色計BYK-macを用いて-15°~110°の明度指数(L値)を測定し、下記の式より算出したFI値から下記評価基準に従って金属調をそれぞれ評価した。
(式)
FI=2.69×(L*15°-L*110°)1.11/(L*45°)0.86
L*45°:メタリック塗膜の表面に垂直な垂直方向に対して45°傾けた第1方向から光線Cを照射し、垂直方向(法線方向)で受光して求めた明度指数
L*15°:第1方向に対して垂直方向に15°起こした第2方向(法線方向に対して-30°)で受光して求めた明度指数
L*110°:第1方向に対して110°傾けた第3方向(法線方向に対して65°)で受光して求めた明度指数
◎:FI値が12.0以上
○:FI値が10.0%~11.9%
△:FI値が8.0%~9.9%
×:FI値が8.0%未満
≪プリントヘッドの耐腐食性≫
プリントヘッドに使用されるSUS303、SUS304、SUS316のペレットをインク組成物中に浸漬し、50℃で28日後間放置した後のペレットの腐食・変質状態を確認し、下記の基準で評価した。
○:異常なし
×:腐食確認
【0072】
【表3】
[図:0001400473000003.jpg]
【表4】
[図:0001400473000004.jpg]
【0073】
上記結果の通り、本発明のインク組成物においては、貯蔵安定性試験前のインクを用いた印刷物の金属調は元より、長期保存を再現した貯蔵安定性試験後のインクを用いた印刷物の金属調の表現においても優れ、かつプリントヘッドの耐腐食性においても優れていることが解る。」
(2)甲3の記載
ア「
[図:0001400473000005.jpg]
」
イ「第1 はじめに
特開2019-172871号公報の実施例9に記載されたインク組成物の「水素発生量がインク組成物100g当たりに1ml以下」であることを確認するために、同実施例に係るインク組成物を調製し、その水素発生量を測定する試験の結果を入手しましたので、報告いたします。」(第1頁第7~10行)
ウ「第3 試験手順
1 インク組成物の調製
特開2019-172871号公報の段落0069の表2に記載された成分、配合量のインクジェット用組成物を調製した。
【インク組成物の調製】
鱗片状アルミニウム顔料分散液1(鱗片状アルミニウム顔料:10質量%、酢酸エチル:90質量%)10gにトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製)9gを添加し、混合した。その後、液中の酢酸エチルを3.5gになるように留去し、鱗片状アルミニウム顔料分散液A(鱗片状アルミニウム顔料:7.4質量%、酢酸エチル:26質量%、トリエチレングリコールジアクリレート:66.6質量%)を13.5g調製した。
次に、トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製)22.4g、エチルカルビトールアクリレート(共栄社化学社製)30.0g、EBECRYL7100(ダイセルオルネクス社製アミノアクリレート)8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学社製)14.4g、DISPERBYK-192(ビックケミー社製)0.5g、ポリエステル樹脂(酸価11 重量平均分子量6,000)3.0g、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Shuang-Bang Industrial Corp製)8.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル(精工業化学社製)0.2gを混合し、十分に攪拌した。この混合液に鱗片状アルミニウム顔料分散液Aを13.5g加え、十分に攪拌して特開2019-172871号公報実施例9に記載のインク組成物を得た。
2 インク組成物の水素発生量測定
得られたインク用組成物に対して、以下の装置、方法で組成物の水素発生量を測定した。
(1)水素発生量の測定
インク組成物について水素発生量を測定した。アルミラミネート5層構造材料からなる、ガス捕集用のサンプルバッグに、インク組成物25g、乾燥空気200mlを入れて密封し、60℃で24時間保管した。そして、水素用検知管を装着したガス採取器により、上記サンプルバッグから、50mlの気体を採取し、検知管の表示からインク100g当たりの水素発生量を測定した。
(2)含水時水素発生量の測定
インク組成物について含水時水素発生量を測定した。アルミラミネート5層構造材料からなる、ガス捕集用のサンプルバッグに、インク組成物25g、水(イオン交換水)10g、乾燥空気200mlを入れて密封し、60℃で24時間保管した。そして、水素用検知管を装着したガス採取器により、上記サンプルバッグから、50mlの気体を採取し、検知管の表示からインク組成物100g当たりの水素発生量を測定した。
水素発生量は、北川式ガス採取器AP-I(光明理化学工業社製)、北川式ガス検知管(水素U型)(光明理化学工業社製)を用い、下記の条件で測定した。尚、特許第7038248号、特許第7038268号等の請求項に記載の要件では「サンプルバッグから、20mlの気体を採取し」と記載されているが、北川式ガス採取器AP-Iの仕様上、試料採取量50mlにてインク100g当たりの水素発生量を測定した。
ガス捕集用サンプルパック:アルミニウムバックAAK-1(GL Sciences社製)
試料:50ml(サンプルパック中気体)
温度:25℃
本実験で使用した原料および機器はいずれも一般に使用される標準的なものである。」(第1頁第13行~第2頁第24行)
エ「第4 測定結果
水素発生量 ・・・未検出(0.24ml未満)
含水時水素発生量 ・・・6.4ml以上」(第2頁第25~27行)
オ「第5 まとめ
特開2019-172871号の実施例9に記載されているインク組成物の水素発生量は、インク組成物100g当たり0.24ml未満であり、「インク組成物100g当たりの水素発生量が1ml以下」であることが確認された。」(第2頁第28~31行)
(3)甲4の記載
ア「【請求項1】
インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用組成物であって、
重合性化合物と、リン酸化合物で表面処理された顔料と、を含み、
前記リン酸化合物の含有量が、0.02質量%以下であることを特徴とする紫外線硬化型インクジェット用組成物。
【請求項2】
前記顔料は、アルミニウム金属粒子を前記リン酸化合物で表面処理した後、前記表面処理に供されなかった前記リン酸化合物を除去する処理を施したものである請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェット用組成物。
【請求項3】
前記リン酸化合物は、下記式(1)で表される化学構造を有する請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェット用組成物。
PORn(OH)3-n (1)
(式(1)中、Rは、CH3(CH2)m-、CH3(CH2)m(CH2O)l-、CH3(CH2)m(CH2CH2O)l-、または、CH3(CH2)mO-であり、nは1以上3以下の整数であり、mは2以上17以下の整数であり、lは1以上12以下の整数である。)
【請求項4】
前記リン酸化合物は、下記式(2)で表される化学構造を有する請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェット用組成物。
PORn(OH)3-n (2)
(式(2)中、Rは、CF3(CF2)m-、CF3(CF2)m(CH2)l-、CF3(CF2)m(CH2O)l-、CF3(CF2)m(CH2CH2O)l-、CF3(CF2)mO-、または、CF3(CF2)m(CH2)lO-であり、nは1以上3以下の整数であり、mは5以上17以下の整数であり、lは1以上12以下の整数である。)
【請求項5】
前記アルミニウム顔料は、鱗片状をなすものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用組成物。
・・・
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用組成物を記録媒体上に付与し、その後、紫外線を照射することにより製造されたことを特徴とする記録物。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、保存安定性、金属粉末の分散安定性に優れ、光沢感に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることのできる紫外線硬化型インクジェット用組成物を提供すること、また、前記紫外線硬化型インクジェット用組成物を用いて形成された光沢感に優れたパターンを有する記録物を提供することにある。」
ウ「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<<紫外線硬化型インクジェット用組成物>>
まず、本発明の紫外線硬化型インクジェット用組成物について説明する。
本発明の紫外線硬化型インクジェット用組成物は、インクジェット方式により吐出されるものであり、紫外線の照射により重合する重合性化合物を含むものである。」
エ「【0028】
<アルミニウム顔料>
上述したように、本発明の紫外線硬化型インクジェット用組成物は、リン酸化合物で表面処理されたアルミニウム顔料を含むものである。
アルミニウム顔料は、アルミニウム金属粒子を後述するリン酸化合物で表面処理した後、当該表面処理に供されなかったリン酸化合物を除去する処理を施したものであるのが好ましい。これにより、最終的な紫外線硬化型インクジェット用組成物中におけるリン酸化合物の含有量を好適なものとすることができる。その結果、紫外線硬化型インクジェット用組成物の経時的な色の変化や増粘をより確実に抑制することができ、保存安定性および吐出安定性をより優れたものとすることができる。
表面処理に供されなかったリン酸化合物を除去する処理方法としては、例えば、粗大アルミニウム、ゼオライト、活性炭、イオン交換樹脂等を用いて吸着除去する方法、遠心分離により固液分離して除去する方法等が挙げられる。
【0029】
[母粒子(アルミニウム金属粒子)]
まず、アルミニウム顔料を構成する母粒子(リン酸化合物による表面処理を受けるアルミニウム金属粒子)について説明する。
アルミニウム顔料を構成する母粒子は、少なくとも、表面付近を含む領域がアルミニウムで構成されたものであればよく、例えば、全体がアルミニウムで構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成された基部と、当該基部を被覆するアルミニウムで構成された被膜とを有するものであってもよい。
【0030】
アルミニウム(Al)は、本来、各種金属材料の中でも特に優れた光沢感を呈するものであるが、紫外線硬化型インクジェット用組成物に、アルミニウムで構成された粉末を適用しようとした場合に、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性は特に低いものとなり、ゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下等の問題が特に顕著に発生することを本発明者は見出していた。これに対し、本発明では、アルミニウム顔料を用いた場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、紫外線硬化型インクジェット用組成物を構成するアルミニウム顔料がリン酸化合物で表面処理されたものであることにより、上記問題を解決することができる。」
オ「【0033】
[リン酸化合物]
上述した母粒子は、リン酸化合物で表面処理されている。このようにリン酸化合物で処理することにより、母粒子だけでは生じてしまう保存安定性の低下やゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下を抑制することができる。しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用組成物中にリン酸化合物が多量に存在すると、紫外線硬化型インクジェット用組成物の経時的な色の変化や増粘が生じてしまうが、本発明を適用することにより、そのような問題を解決することができる。
リン酸化合物としては、特に限定されないが、リン酸アルキルエステル、フッ素系リン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性および吐出安定性をより優れたものとすることができる。」
カ「【0048】
<重合性化合物>
重合性化合物は、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である。このような成分を含むことにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物を用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。
重合性化合物は、液状をなすものであり、紫外線硬化型インクジェット用組成物において、アルミニウム顔料を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、紫外線硬化型インクジェット用組成物を用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、紫外線硬化型インクジェット用組成物は、メディア対応性に優れたものとなる。」
キ「【0078】
<<記録物>>
次に、本発明の記録物について説明する。
本発明の記録物は、上述したような紫外線硬化型インクジェット用組成物を記録媒体上に付与し、その後、紫外線を照射することにより製造されたものである。このような記録物は、光沢感、耐擦性に優れたパターン(印刷部)を有するものである。」
ク「【実施例】
【0083】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)の製造
(実施例1)
まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(表面粗さRaが0.02μm以下)を用意した。
次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。
次に、シリコーンオイルを塗布した面側に、蒸着法により、Alで構成された膜を形成した。
次に、Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)を、ジエチレングリコールジエチルエーテルで構成された液体中に入れ、超音波振動を付与した。これにより、鱗片状のAl製の粒子(母粒子となるべき粒子)の分散体(分散液)が得られた。この分散体中におけるAl製の粒子の含有量は、3.7質量%であった。
【0084】
次に、上記のようにして得られたAl製の粒子分散液をフッ素系リン酸エステルとしてのC12H25(O)P(OH)(OCH2CH3)が1.0質量%となるように投入し、45℃で120分間攪拌することにより、フッ素系リン酸エステルによる表面処理を行い、金属粉末分散液を得た。
反応終了後、遠心分離機(6000rpm×30分)にて、表面処理が施されたAl製の粒子(アルミニウム顔料)を遠心沈降させ、上澄み部分を廃棄し乾燥することにより、アルミニウム顔料の粉末を得た。このようにして得られたアルミニウム顔料の平均粒径は0.8μm、平均厚さは、50nmであった。
【0085】
次に、アルミニウム顔料に、分散剤としてのDISPERBYK-182(ビックケミー社製)、γ-ブチロラクトンアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのLHP-96(楠本化成社製)および、LF-1984(楠本化成社製)、下記式(6)で表される化学構造を有する物質Aを加え、さらに、超音波振動を付与することによりアルミニウム顔料を再分散させ、アルミニウム顔料の含有量が3.7質量%のインクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)を得た。
【0086】
なお、得られた紫外線硬化型インクジェット用組成物中におけるリン酸化合物の含有量は、0.02質量%以下であった。リン酸化合物の含有量は、LC-MSを用いて以下の方法で測定した。
インクジェット用組成物を0.1μmのメンブレンフィルタにてろ過することにより、フッ素系リン酸エステルにより表面処理されたアルミニウム顔料を除去したろ過液を得た。次に、アルミニウム顔料が除去されたインクジェット用組成物のろ過液をメタノールまたはアセトニトリルで希釈し、再度0.45μmで不溶物をろ過し、サンプルを調整した。これらサンプルをLC-MSにて測定し、フッ素系リン酸エステルの定量を行った。
【0087】
【化3】
[図:0001400473000006.jpg]
【0088】
(実施例2~16)
アルミニウム顔料の構成(母粒子の組成および表面処理に用いるリン酸化合物の種類)を表1、表2に示すようにするとともに、インクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)の調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表1、表2に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)を製造した。」
ケ「【0091】
アルミニウム顔料の構成(母粒子の組成および表面処理に用いるリン酸化合物の種類)を表1~3に示すようにするとともに、インクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)の調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表1、表2に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)を製造した。
【0092】
前記各実施例および各比較例について、インクジェット用組成物の組成を、表1、表2にまとめて示した。なお、表中、C12H25(O)P(OH)(OCH2CH3)を「S1」、(C14H29)3(O)Pを「S2」、(C16H33)2(O)P(OH)を「S3」、C18H37(O)P(OH)(OCH2CH3)を「S4」、(C18H37)2(O)P(C16H33)を「S5」、C14H29(O)P(OH)(OCH2CH2CH2CH3)を「S6」、CF3(CF2)5(CH2)2O-PO(OH)2を「F1」、CF3(CF2)5(CH2)2-PO(OH)2を「F2」、CF3(CF2)5(CH2)2-PO(OH)2を「F3」、CF3(CF2)3(CH2O)10-PO(OH)2を「F4」、CF3(CF2)11O-PO(OH)2を「F5」、CF3(CF2)7-PO(OH)2を「F6」、(CF3(CF2)5(CH2)2O)2-PO(OH)を「F7」、(CF3(CF2)(CH2O))3-POを「F8」、DISPERBYK-182(ビックケミー社製、アミン価:13mgKOH/g)を「D2」、DISPERBYK-2155(ビックケミー社製、アミン価:48mgKOH/g)を「D5」、γ-ブチロラクトンアクリレートを「BLA」、テトラヒドロフルフリルアクリレートを「THFA」、N-ビニルカプロラクタムを「VC」、N-ビニルピロリドンを「VP」、アクリロイルモルホリンを「AMO」、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートを「DCPTeOEA」、1-アダマンチルアクリレートを「AA」、ペンタメチルピペリジルアクリレートを「PMPA」、テトラメチルピペリジルアクリレートを「TMPA」、2-メチル-2-アダマンチルアクリレートを「MAA」、2-エチル-2-アダマンチルアクリレートを「EAA」、メバロン酸ラクトンアクリレートを「MLA」、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを「DMTCDDA」、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレートを「DMDCPTA」、ジシクロペンテニルアクリレートを「DCPTeA」、ジシクロペンタニルアクリレートを「DCPTaA」、イソボルニルアクリレートを「IBA」、シクロヘキシルアクリレートを「CHA」、および、γ-ブチロラクトンメタクリレートを「BLM」、テトラヒドロフルフリルメタクリレートを「THFM」、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを「DCPTeOEM」、アダマンチルメタクリレートを「AM」、ペンタメチルピペリジルメタクリレートを「PMPM」、テトラメチルピペリジルメタクリレートを「TMPM」、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレートを「MAM」、2-エチル-2-アダマンチルメタクリレートを「EAM」、メバロン酸ラクトンメタクリレートを「MLM」、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレートを「DMTCDDM」、ジメチロールジシクロペンタンジメタリレートを「DMDCPTM」、ジシクロペンテニルメタクリレートを「DCPTeM」、ジシクロペンタニルメタクリレートを「DCPTaM」、イソボルニルメタクリレートを「IBM」、シクロヘキシルメタクリレートを「CHM」、ジアクリル化イソシアヌレートを「DAI」、トリアクリル化イソシアヌレートを「TAI」、フェノキシエチルアクリレートを「PEA」、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを「VEEA」、ジプロピレングリコールジアクリレートを「DPDA」、トリプロピレングリコールジアクリレートを「TPDA」、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピルアクリレートを「HPPA」、および、4-ヒドロキシブチルアクリレートを「HBA」、上記式(6)で表される化合物(物質A)を「A1」、下記式(7)で表される化合物(物質A)を「A2」、下記式(8)で表される化合物(物質A)を「A3」、下記式(9)で表される物質Aを「A4」、Irgacure 819(チバ・ジャパン社製)を「ic819」、Speedcure TPO(ACETO社製)を「scTPO」、Speedcure DETX(Lambson社製)を「scDETX」、UV-3500(ビックケミー社製)を「UV3500」、ヒドロキノンモノメチルエーテルを「MEHQ」、LHP-96(楠本化成社製)を「LHP」、LF-1984(楠本化成社製)を「LF」で示した。また、表中、実施例9について、母粒子の構成材料の組成は、各元素の含有量を重量比で示した。また、各インクジェット用組成物中に含まれるそれぞれ任意の10個の金属粒子について観察を行い、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)を求め、これらの平均値を、表1、表2にあわせて示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のインクジェット用組成物(紫外線硬化型インクジェット用組成物)の20℃における粘度は、いずれも、3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。なお、D2、D5は、いずれも、塩基性で重合体構造を有するもの(塩基性高分子分散剤)である。
【0093】
【化4】
[図:0001400473000007.jpg]
【0094】
【化5】
[図:0001400473000008.jpg]
【0095】
【化6】
[図:0001400473000009.jpg]
【0096】
【表1】
[図:0001400473000010.jpg]
【0097】
【表2】
[図:0001400473000011.jpg]
【0098】
【表3】
[図:0001400473000012.jpg]
【0099】
[2]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および各比較例のインクジェット用組成物を用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
まず、チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および比較例のインクジェット用組成物を40℃の環境下に、10日間放置した後、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、55%RHの環境下で、各インクジェット用組成物について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、2000000発(2000000滴)の液滴の連続吐出を行った。その後、液滴吐出装置の運転を停止し、液滴吐出装置の流路に各インクジェット用組成物が充填された状態で、25℃、55%RHの環境下に、240時間放置した。
【0100】
その後、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、25℃、55%RHの環境下で、4000000発(4000000滴)の液滴の連続吐出を行った。上記150時間放置した後の、液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された4000000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
【0101】
A:ズレ量dの平均値が0.17μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.17μm以上0.24μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.24μm以上0.27μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.27μm以上0.31μm未満。
E:ズレ量dの平均値が0.31μm以上。
【0102】
[3]インクジェット用組成物の周波数特性
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のインクジェット用組成物を40℃の環境下に、10日間放置した後、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、55%RHの環境下で、各インクジェット用組成物について、液滴吐出ヘッドの全ノズルから、ピエゾ素子の振動数(周波数)を変化させつつ、液滴吐出を行った。各周波数での液滴吐出時間は10分間とした。10分間の吐出後時点で未吐出のノズル数が全ノズル数の1%未満の周波数までを実使用可能な最高周波数として、実使用可能な周波数範囲を以下の4段階の基準に従い、評価した。この値が大きいほど周波数特性に優れていると言える。
A:12kHz以上。
B:7kHz以上12kHz未満。
C:3kHz以上7kHz未満。
D:3kHz未満。
【0103】
[4]インクジェット用組成物の保存安定性評価(長期安定性評価)
前記各実施例および各比較例のインクジェット用組成物について、40℃の環境下に、10日間放置した後、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のインクジェット用組成物の20℃における粘度を測定し、製造直後からの粘度の上昇率を求め、以下の基準に従い、評価した。
【0104】
A:粘度の上昇率が10%未満。
B:粘度の上昇率が10%以上15%未満。
C:粘度の上昇率が15%以上20%未満。
D:粘度の上昇率が20%以上25%未満。
E:粘度の上昇率が25%以上、または、異物の発生が認められる。
【0105】
[5]分散性
前記各実施例および各比較例のインクジェット用組成物について、40℃の環境下に、30日間放置した後、ろ過精度3μmのカプセルフィルタ(ヤマシンフィルタ社製)にて1L通液した際の通液前後の濃度を測定し、分散不足による粗大粒子をフィルタろ過することによるロスを濃度の減少率で求め、以下の基準に従い、評価した。
A:インク濃度減少率が5%未満。
B:インク濃度減少率が5%以上10%未満。
C:インク濃度減少率が10%以上20%未満。
D:インク濃度減少率が20%以上40%未満。
【0106】
[6]硬化性
前記各実施例および各比較例のインクジェット用組成物について、エプソン製インクジェットプリンター;PM800Cへ導入し、記録媒体として三菱樹脂(株)製、ダイアホイル G440E(厚さ38μm)を用いて、インク量wet 9g/m2にて、ベタ印刷を行い、印刷後、ただちにLED-UVランプ;フォセオン社製RX firefly(ギャップ6mm ピーク波長365nm 1000mW/cm2)を用いて紫外線の照射を行い、インクジェット用組成物が硬化したか否かを確認し、以下の5段階の基準に従い、評価した。硬化したか否かは、綿棒にて表面をこすって、未硬化のインク組成物が付着しないか否かで判断した。なお、下記A~Eの照射量に該当するかどうかは、ランプを何秒照射したかによって算出できる。
【0107】
A:100mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
B:100mJ/cm2以上200mJ/cm2未満の紫外線照射量
にて硬化した。
C:200mJ/cm2以上500mJ/cm2未満の紫外線照射量
にて硬化した。
D:500mJ/cm2以上1000mJ/cm2未満の紫外線照射
量にて硬化した。
E:1000mJ/cm2以上の紫外線照射量にて硬化する。もしく
はまったく硬化しない。
【0108】
[7]記録物の製造
各実施例および各比較例のインクジェット用組成物を用いて、それぞれ、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、40℃の環境下に、10日間放置した後のインクジェット用組成物をインクジェット装置に投入した。
【0109】
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、所定のパターンで、インクジェット用組成物を吐出した。
その後、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線を、照射強度180mW/cm2を15秒間照射し、基材上のインクジェット用組成物を硬化させ、記録物としてのインテリアパネルを得た。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のインクジェット用組成物を用いて、それぞれ、10個のインテリアパネル(記録物)を製造した。
【0110】
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート(三菱樹脂社製 ダイアホイル G440E 38μm厚)を用いて成形したもの、低密度ポリエチレン(三井化学東セロ社製 T.U.X(L-LDPE) HC-E #80)を用いて成形したもの、2軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製 OP U-1 #60)を用いて成形したもの、硬質塩化ビニル(アクリサンデー社製 サンデーシート(透明)0.5mm厚)を用いて成形したものを用いた以外は、上記と同様にして、各実施例および各比較例のインクジェット用組成物を用いて、それぞれ、10個ずつのインテリアパネル(記録物)を製造した。
【0111】
[8]記録物の評価
上記のようにして得られた各記録物について、以下のような評価を行った。
[8.1]記録物の外観評価1
前記各実施例および各比較例で製造した各記録物を目視により観察し、以下の7段階の基準に従い、評価した。
【0112】
A:高級感に溢れる光沢感を有し、極めて優れた外観を有している。
B:高級感に溢れる光沢感を有し、非常に優れた外観を有している。
C:高級感のある光沢感を有し、優れた外観を有している。
D:高級感のある光沢感を有し、良好な外観を有している。
E:光沢感に劣り、外観がやや不良。
F:光沢感に劣り、外観が不良。
G:光沢感に劣り、外観が極めて不良。
【0113】
[8.2]記録物の外観評価2
前記各実施例および各比較例で製造した各記録物を、製造直後のインクで作成した記録物を基準として、目視により観察し、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:基準記録物と比較して色の変化なし。
B:基準記録物と比較して若干黄変しているが、問題ない範囲。
C:基準記録物と比較して黄変している。
【0114】
[8.3]光沢度
前記各実施例および各比較例で製造した各記録物のパターン形成部について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が400以上。
B:光沢度が300以上400未満。
C:光沢度が200以上300未満。
D:光沢度が200未満。
【0115】
[8.4]耐擦性
前記各実施例および各比較例に係る記録物について、記録物の製造から48時間経過した時点で、サウザーランドラブテスターを用い、JIS K5701に準じ、相紙としてポリエチレンテレフタレート製のフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルG440E)を用いた耐擦性試験を行い、上記[8.2]で述べたのと同様の方法により、耐擦性試験後の記録物についても光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
【0116】
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上20%未満。
C:光沢度の低下率が20%以上30%未満。
D:光沢度の低下率が30%以上40%未満。
E:光沢度の低下率が40%以上、または、金属粒子が脱落して記録媒
体の表面が露出したもの。
【0117】
これらの結果を表3に示す。なお、表2中、ポリカーボネート製の基材を用いて製造された記録物を「M1」、ポリエチレンテレフタレート製の基材を用いて製造された記録物を「M2」、低密度ポリエチレン製の基材を用いて製造された記録物を「M3」、2軸延伸ポリプロピレン製の基材を用いて製造された記録物を「M4」、硬質塩化ビニル製の基材を用いて製造された記録物を「M5」で示した。
【0118】
【表4】
[図:0001400473000013.jpg]
【0119】
表4から明らかなように、本発明の紫外線硬化型インクジェット用組成物は、液滴の吐出安定性、保存安定性、分散性および硬化性に優れていた。また、本発明の記録物は、優れた光沢感、外観を有しており、パターン形成部の耐擦性にも優れていた。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。」
(4)甲5の記載
ア「【請求項1】
重量平均分子量12,000以下のポリエステル樹脂(a)と、蒸着アルミニウム顔料を有機溶剤のみに分散させてなるメタリック顔料分散体(b)と、ポリ塩化ビニル基材に対して浸透性がある有機溶剤(c)とを少なくとも含むことを特徴とするポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物。」
イ「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物に関し、特には、インクジェット印刷時におけるノズル詰まりを防止することができ、耐擦過性が良好で且つ鏡面光沢に優れる印刷物を形成可能なポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物に関するものである。なお、ポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物とは、メタリック顔料を含むインク組成物のうち、ポリ塩化ビニル基材へのインクジェットプリンタを用いた印刷に使用することが可能なインク組成物である。」
ウ「【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、インクジェット印刷時におけるノズル詰まりを防止することができ、耐擦過性が良好で且つ鏡面光沢に優れる印刷物を形成可能なポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物を提供することにある。」
エ「【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の重量平均分子量を有するポリエステル樹脂と特定の蒸着アルミニウム顔料分散体とを組み合わせることで、インクジェット印刷時におけるノズル詰まりを防止することができ、耐擦過性が良好で且つ鏡面光沢に優れる印刷物を形成可能なポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物を提供することができる。」
オ「【0017】
また、上記ポリエステル樹脂(a)は、酸価が5~50であることが好ましい。上記ポリエステル樹脂(a)の酸価が5~50の範囲内にあれば、ポリエステル樹脂(a)中の酸基が蒸着アルミニウム顔料表面と反応し、蒸着アルミニウム顔料をより固定化することで耐擦過性を更に向上でき、また、蒸着アルミニウム顔料との濡れもより良好になる。上記ポリエステル樹脂(a)の酸価が50を超えると、耐候性等の膜物性が低下する場合がある。
【0018】
上記ポリエステル樹脂(a)は、単量体である多価カルボン酸とポリアルコールとを通常の方法により脱水重縮合させることにより得られる共重合体であり、単量体の種類や使用量を調整することにより、所望の重量平均分子量が得られる。」
カ「【0022】
本発明のメタリックインク組成物に用いるメタリック顔料分散体(b)は、蒸着アルミニウム顔料を有機溶剤のみに分散させてなり、蒸着アルミニウム顔料が有機溶剤中に分布している不均質系である。上記メタリック顔料分散体(a)の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、有機溶剤中に、蒸着アルミニウム顔料を加え、攪拌下で混合する手法が挙げられる。なお、上記メタリック顔料分散体(b)は、市販品を好適に使用することができる。また、上記メタリック顔料分散体(b)中において、蒸着アルミニウム顔料の含有量は、5~20質量%であることが好ましい。
・・・
【0025】
上記メタリック顔料分散体(b)を構成する蒸着アルミニウム顔料は、箔のような薄く平らな形状をしたアルミニウム顔料であり、蒸着を利用した製法により、通常のアルミニウム顔料よりもアルミニウム顔料粒子表面が非常に滑らかになるため、光の乱反射を減少し、高光輝性が得られる。なお、通常のアルミニウム顔料は、ボールミル等により、アルミニウム塊を薄く延ばして製造され、蒸着アルミニウム顔料より顔料粒子の厚みがあり、また、粒子表面が粗い形状である。
【0026】
上記メタリック顔料分散体(b)を構成する媒質には、有機溶剤のみが使用されるが、その理由として、分散剤の使用を回避できたり、最終的なメタリックインク組成物中における分散剤が過剰量になることを抑制できたりすることが挙げられる。上記メタリック顔料分散体(b)に用いる有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、該有機溶剤の蒸着アルミニウム顔料への濡れを良好にし、該顔料の分散を安定に保つ観点から、グリコールエーテル等が好ましく、例えば、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。なお、これら有機溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。」
キ「【0028】
本発明のメタリックインク組成物に用いる有機溶剤(c)は、メタリック顔料分散体(b)を構成する有機溶剤以外に使用される有機溶剤である。なお、有機溶剤(c)とメタリック顔料分散体(b)を構成する有機溶剤は、同一でも異なっていてもよい。また、上記有機溶剤(c)は、ポリ塩化ビニル基材に対する浸透性を持つため、ポリ塩化ビニル基材上でのメタリックインク組成物の乾燥性に優れ、また、ポリ塩化ビニル基材上での滲みを制御することが可能となる。上記有機溶剤(c)は、ポリ塩化ビニル基材に対する浸透性を持つ限り特に限定されるものではないが、メタリック顔料分散体の調製に用いた有機溶剤に対して相溶性のあるものが好ましく、例えばグリコールエーテル等が好ましく、その具体例としては、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。なお、これら有機溶剤(c)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のメタリックインク組成物中において、有機溶剤(c)の含有量は、75~95質量%であることが好ましい。」
ク「【0035】
本発明のメタリックインク組成物は、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式又はインクオンデマンド方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタを挙げることができる。また、本発明のメタリックインク組成物は、特に大型インクジェットプリンタ(例えばラージフォーマットインクジェットプリンタ)、具体例としてはサインディスプレイ等の屋外用物品に印刷することを目的としたインクジェットプリンタによる印刷に好適に適用できる。
【0036】
本発明のメタリックインク組成物は、上述のように、ポリ塩化ビニル基材へのインクジェットプリンタを用いた印刷に使用することが可能なメタリックインク組成物であるが、ここで、ポリ塩化ビニル基材は、特に限定されず、基材の用途に応じて、様々な形状の基材を選択することができる。ポリ塩化ビニル基材の用途としては、例えば、サインディスプレイ等の屋外用物品が挙げられる。」
ケ「【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
下記に示す配合処方に従って、実施例1~4及び比較例1~5のインク組成物を調製した。詳細には、有機溶剤と、必要に応じて選択された添加剤とを攪拌してインク溶媒を得、そこにポリエステル樹脂を加え、その後、メタリック顔料分散体を加えて、常温(23℃)にて60分間攪拌して、インク組成物を調製した。なお、実施例2では、インク組成物を調製後、温度を60℃まで上げ、60℃に維持しながら更に60分以上間攪拌した。なお、ポリエステル樹脂の合成については、温度計、攪拌器、N2導入管及びパーシャルコンデンサー付き流出管を搭載したフラスコに、イソフタル酸320質量部、無水マレイン酸5質量部、ネオペンチルグリコール200質量部を入れ、所定の酸価になるまで240℃で脱水縮合反応させることにより、目的の分子量を有するポリエステル樹脂が得られる。また、メタリック顔料分散体は、配合処方に記載のフィルターを用いた市販品の自然ろ過により得られたものである。
・・・
【0040】
<実施例2>
・メタリック顔料分散体(蒸着アルミニウム顔料:10.0質量%,有機溶剤の種類:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル,フィルター:「綾畳織#2300メッシュ」):12.5質量部
・ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(有機溶剤(c)):59.40質量部
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル(有機溶剤(c)):20.00質量部
・DISPERBYK-111(ビックケミー社製分散剤,酸基を含む共重合物):0.60質量部
・ポリエステル樹脂(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000):7.50質量部」
コ「【0048】
次に、ラージフォーマットインクジェットプリンタ(ヘッドノズル径30μm,ヘッド内フィルター#2300メッシュ)によってポリ塩化ビニル基材(リンテック株式会社製PVC100MP)上に、上記インク組成物を印刷し、得られた記録物の鏡面光沢、耐擦過性及び耐候性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。なお、比較例5は、ノズルの詰まりが起こり、印刷を行うことができなかった。
【0049】
<鏡面光沢>
BYKガードナー社製マイクロ-トリグロス光沢計を用い、20°、60°及び85°の光沢度を測定した。
【0050】
<耐擦過性>
荷重250g重、幅5cm及び10往復の条件下で、記録物上に印刷された印刷物を綿棒で擦り、該印刷物を目視にて確認し、下記評価基準に従って耐擦過性を評価した。
◎ 印刷物に変化が無い
○ 印刷物の光沢に僅かな変化がある
△ 印刷物の光沢に変化があり、素地(ポリ塩化ビニル基材)が僅かに露出している
× 印刷物が綿棒で削れ、素地(ポリ塩化ビニル基材)が露出している
【0051】
<耐候性>
促進耐候試験機スーパーUVテスター(岩崎電気社製アイスーパーUVテスターWタイプSUV-W23)を用いて、下記試験条件下で耐候性試験を行った。試験後の印刷物を目視にて確認し、下記評価基準に従って耐候性を評価した。
1)条件
光源 : 水冷式メタルハライドランプ
照度 : 100mW/cm2
波長 : 295~450nm
温度 : 60℃(照射)、30℃(結露)
湿度 : 50%(照射)、90%(結露)
サイクル : 照射6時間、結露2時間
シャワー : 結露前後30秒
試験時間 : 50時間
2)評価基準
◎ 印刷物に変化が無い
○ 印刷物の光沢に僅かな変化がある
△ 印刷物の光沢と色に僅かな変化がある
× 印刷物の光沢と色に著しい変化がある
【0052】
【表1】
[図:0001400473000014.jpg]
【0053】
表1から、実施例1~4のインク組成物は、ポリエステル樹脂(a)とメタリック顔料分散体(b)の組み合わせにより、金属光沢に優れ、耐擦過性を有する印刷物を形成できることが分かる。また、実施例3のインク組成物は、紫外線吸収剤を含み、実施例4のインク組成物は、重量平均分子量1,500のフェニル基含有ケトン系樹脂を含むため、耐候性が向上していることが分かる。一方、比較例1のインク組成物は、ポリエステル樹脂を使用しておらず、耐擦過性が悪い。比較例2及び3のインク組成物は、ポリエステル樹脂の重量平均分子量が12,000を超えており、光沢度の低下が確認できる。比較例4のインク組成物は、ポリエステル樹脂(a)ではなく、重量平均分子量が10,000塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を含むため、耐擦過性が十分に確保できない上、光沢度の低下が確認できる。」
(5)甲6の記載
ア「
[図:0001400473000015.jpg]
」
イ「第1 はじめに
特開2015-67767号公報の実施例2に記載されたインク組成物の「水素発生量がインク組成物100g当たりに1ml以下」であることを確認するために、同実施例に係るインク組成物を調製し、その水素発生量を測定する試験の結果を入手しましたので、報告いたします。」(第1頁第7~10行)
ウ「第3 試験手順
1 インク組成物の調製
特開2015-67767号公報の段落0040に記載された成分、配合量のインク組成物を調製した。
【インク組成物の調製】
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル59.4g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル20.0g、DISPERBYK-111(ビックケミー社製)0.60g、ポリエステル樹脂(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000)7.5gを混合し、溶解した。この混合液にメタリック顔料分散体(蒸着アルミニウム顔料10.0質量%、有機溶剤の種類:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)12.5gを加え、23℃にて60分間攪拌した。その後、60℃で60分間攪拌して特開2015-67767号公報の実施例2に記載されたインク組成物を得た。
2 インク組成物の水素発生量測定
得られたインク用組成物に対して、以下の装置、方法で組成物の水素発生量を測定した。
(1)水素発生量の測定
インク組成物について水素発生量を測定した。アルミラミネート5層構造材料からなる、ガス捕集用のサンプルバッグに、インク組成物25g、乾燥空気200mlを入れて密封し、60℃で24時間保管した。そして、水素用検知管を装着したガス採取器により、上記サンプルバッグから、50mlの気体を採取し、検知管の表示からインク100g当たりの水素発生量を測定した。
(2)含水時水素発生量の測定
インク組成物について含水時水素発生量を測定した。アルミラミネート5層構造材料からなる、ガス捕集用のサンプルバッグに、インク組成物25g、水(イオン交換水)10g、乾燥空気200mlを入れて密封し、60℃で24時間保管した。そして、水素用検知管を装着したガス採取器により、上記サンプルバッグから、50mlの気体を採取し、検知管の表示からインク組成物100g当たりの水素発生量を測定した。
水素発生量は、北川式ガス採取器AP-I(光明理化学工業社製)、北川式ガス検知管(水素U型)(光明理化学工業社製)を用い、下記の条件で測定した。尚、特許第7038268号等の請求項に記載の要件では「サンプルバッグから、20mlの気体を採取し」と記載されているが、北川式ガス採取器AP-Iの仕様上、試料採取量50mlにてインク100g当たりの水素発生量を測定した。
ガス捕集用サンプルパック:アルミニウムバックAAK-1(GL Sciences社製)
試料:50ml(サンプルパック中気体)
温度:25℃
本実験で使用した原料および機器はいずれも一般に使用される標準的なものである。」(第1頁第13行~第2頁第19行)
エ「第4 測定結果
水素発生量 ・・・0.4ml
含水時水素発生量 ・・・6.4ml以上」(第2頁第20~22行)
オ「第5 まとめ
特開2015-67767号の実施例2に記載されているインク組成物の水素発生量は、インク組成物100g当たり0.4mlであり、「インク組成物100g当たりの水素発生量が1ml以下」であることが確認された。」(第2頁第23~26行)
(6)甲7の記載
ア「【請求項1】
表面処理された金属粉末を含み、
溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物。
【請求項2】
前記表面処理された金属粉末は、金属粉末の表面の一部が露出しているアルミニウム又はアルミニウム合金を含む、請求項1に記載の非水系インクジェット組成物。
【請求項3】
前記表面処理された金属粉末は、含フッ素リン酸エステル、シラノール変性シリコーン、含フッ素シラン化合物、及びアルキルリン酸エルテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の表面処理剤で表面処理されている、請求項1又は2に記載の非水系インクジェット組成物。
【請求項4】
前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
【請求項5】
前記非水系インクジェット組成物は、溶剤系組成物、又は、放射線硬化型組成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
・・・
【請求項9】
インクジェットヘッドから、請求項1~7のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物を吐出する吐出工程を有する、インクジェット方法。」
イ「【0006】
そこで、本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、金属粉末を含むインク組成物を用いた場合においても、吐出安定性及び保存安定性に優れる、インク組成物、そのインク組成物を収容する収容体、及びそのインク組成物を用いるインクジェット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、表面処理された金属粉末を含み、溶存酸素減少速度が所定範囲内にあるインクジェット組成物を用いることで、該インクジェット組成物が保存安定性及び吐出安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。」
ウ「【0011】
〔インクジェット組成物〕
本実施形態の非水系インクジェット組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、表面処理された金属粉末を含み、溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下であり、好ましくは5.0kPa/h以上18.0kPa/h以下であり、より好ましくは10.0kPa/h以上15.0kPa/h以下である。ここで、溶存酸素減少速度とは、所定の環境下において、組成物に溶存している酸素が減少する速度をいう。具体的には、溶存酸素減少速度は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0012】
溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa以下であることにより、優れた保存安定性及び吐出安定性を得ることが可能となる。この要因は次のように推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。溶存酸素減少速度が2.0kPa/h以上であることにより、組成物に含まれる表面処理された金属粉末の表面は、組成物に含まれる酸素と反応するために必要な活性を有する。すなわち、その金属粉末の表面は酸化され、それに伴い組成物に溶存している酸素は減少する。これにより、インクジェット法により組成物を連続して吐出する際に、組成物中の酸素による吐出の阻害が抑制されることに起因して、吐出安定性に優れると推察される。また、溶存酸素減少速度が20.0kPa以下であることにより、組成物に含まれる表面処理された金属粉末の表面は、組成物に含まれる水等と反応しない程度の活性を有する。例えば、従来の金属粉末は、その表面で水を還元し、組成物中に水素ガスを発生させる。しかし、本実施形態の組成物において、表面処理された金属粉末の表面は、組成物に含まれる水等との反応が抑制される。これにより、組成物の保存安定性に優れ、インクジェット法により組成物を連続して吐出する際に、組成物中の水素ガス等のガスが吐出を阻害しないことに起因して、吐出安定性に優れると推察される。
【0013】
溶存酸素減少速度が上記範囲にあるインクジェット組成物を得るためには、例えば後述する、金属粉末の表面処理に用いられる表面処理剤の種類を適宜選択することや、金属粉末の表面処理の条件である温度、処理時間等を適宜設定すればよい。
【0014】
本実施形態において「非水系」とは、有機溶剤、重合性化合物等を主要な溶媒として、水を主要な溶媒としない組成物であり、主な溶媒成分は、例えば有機溶剤等の溶剤である。また、組成物の調製において主な溶媒成分として意図的に水を添加しない組成物であることが好ましく、不純物として不可避的に水分を含んでしまう場合も包含される。組成物中の水の含有量は、保存安定性の観点から、その組成物100質量%に対して3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。その水の含有量の下限は特に限定されず、検出限界以下であってもよく、0.01質量%であってもよい。水の含有量は、公知の方法で定量することができる。
【0015】
本実施形態のインクジェット組成物は、組成物中に含まれる酸素を減少させる態様として、溶剤系組成物又は放射線硬化型組成物であることが好ましい。「溶剤系」とは、非水系の中でも、特に有機溶剤を主要な溶媒とするものをいう。また、「放射線硬化型」とは、非水系の中でも、重合性化合物を主要な溶媒とするものをいう。さらに、有機溶剤及び重合性化合物を主要な溶媒とする非水系であること、すなわち溶剤であり、かつ放射線硬化型であることも好ましい。溶剤系及び放射線硬化型も非水系と同様に、上記範囲の水の含有量であることが好ましい。」
エ「【0021】
<表面処理された金属粉末>
本実施形態の表面処理された金属粉末は、母粒子(表面処理剤による表面処理を受ける粒子)である金属粉末を表面処理剤で表面処理したものである。母粒子は、少なくとも、表面付近を含む領域が金属材料で構成されたものであればよく、例えば、全体が金属材料で構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成されたコア部と、そのコア部を被覆する金属材料で構成された被膜とを備えるものであってもよい。
【0022】
母粒子を構成する金属材料としては、被記録媒体のような媒体に付着したときに光沢性を呈し得るものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、及び銅からなる群より選ばれる1種の金属及び2種以上の合金が挙げられる。これらの中でも、光沢性及び原料コストの観点から、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。」
オ「【0036】
<表面処理剤>
本実施形態の表面処理剤は、母粒子の表面を修飾し、その表面の酸化を抑制できるものであれば特に限定されず、例えば、フッ素系、脂肪酸系、油脂系、界面活性剤系、ワックス系、カルボン酸系、リン酸系、カップリング剤、及び高分子系の表面処理剤を広く用いることができる。これらの中で、好ましくは、含フッ素リン酸エステル、シラノール変性シリコーン、含フッ素シラン化合物、及びアルキルリン酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の表面処理剤であり、より好ましくは、保存安定性の観点から、含フッ素リン酸エステル、含フッ素シラン化合物、及びアルキルリン酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくは含フッ素リン酸エステル、及び含フッ素シラン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、よりさらに好ましくは含フッ素リン酸エステルである。」
(7)甲12の記載
ア「実施例5
実施例4で製造したリーフィング安定化ペースト5部をpH9.5のアクリルエマルジョンポリトロンA55(旭化成工業製)200部に分散せしめ、アルミ粉末の化学安定性、特に水素ガス発生量を調べた結果、30分で1.5%のガス発生が認められたが以後全くガス発生がなかった。比較のために試験した市販アルミペーストは60分でほゞ100%のガス発生が認められた。以上のことから、本発明のリーフィング安定化剤および安定化方法は従来不可能視されていた既調合水性シルバーペイントおよびその他の水性化を可能せしめるものである。
従来のリーフィングタイプアルミペーストは、メラミン/アクリル系樹脂やフタル酸系樹脂のような高酸価ビヒクルおよび極性溶剤を多量に使用する場合はリーフィング性が阻害され実用性が全くなかったが、本発明のリーフィング安定化剤お安定化方法により安定化したアルミペーストは実施例で詳細述べた通り極めてすぐれたリーフィング安定性を示し、且つpH9.5の水性塗料中での水素ガス発生もほとんど認められないことから、従来のアルミペーストでは使用不可能であった既調合タイプ合成樹脂系シルバー塗料、熱硬化タイプクローム仕上げ用塗料、および水性シルバー塗料など新規な用途への適用が可能となった。」(第5頁左上欄第7行~右上欄第12行)
(8)甲13の記載
ア「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を製造方法と共に詳細に説明する。
本発明で用いられる薄片状金属基質としては、薄片状の金属および金属合金が含まれ、いわゆるメタリック顔料と称するものをいう。
本発明で用いられる薄片状金属基質の形状としては、平均粒径が2~100μ、平均厚みが0.05~5μのものが好ましく、さらに好ましくは、平均粒径が5~50μ、平均厚みが0.1~2μ、さらに特に好ましくは、平均粒径が5~30μ、平均厚みが0.1~2μのものが用いられる。
【0012】
具体的にはアルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅-亜鉛合金フレーク、鉄フレーク、ブロンズフレーク、ステンレスフレーク、アルミニウム青銅フレーク、各種アルミニウム合金フレーク、各種チタン合金フレーク、およびニッケル合金フレーク(例えば、特開2004-292758号等に記載)等が挙げられる。好ましくは、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅-亜鉛合金フレーク、ステンレスフレーク、ブロンズフレーク等が挙げられ、より好ましくは安定的に市場において光輝感を有するメタリック顔料として供給され、拡販されているアルミニウムフレーク(例えば、シルバーライン社、昭和アルミニウム社、東洋アルミニウム社、旭化成メタルズ社、エカート社等から市販されている。)、チタンフレーク、ステンレスフレーク等が挙げられ、最も好ましいのは、アルミニウムフレークである。」
イ「【0035】
・・・
本発明による高耐腐食性薄片状金属顔料は耐腐食性が良好なものであり、強アルカリ条件であるpH11のNaOH水溶液中においても水素ガスを殆ど発生しないものであった。」
ウ「【実施例】
【0062】
以下に、より詳細に実施態様を挙げるが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO2/[SiO2/Al(P)])の調製
耐腐食性処理された薄片状金属基質(公開2003-41150号公報[0061]記載の実施例4-b)によって得られた[SiO2/Al(P)]、比表面積3.01m2/g)100gを、2リッターの水に分散させ、懸濁液を得た。攪拌下、75℃まで昇温した。この懸濁液に372mlのSnCl4・5H2O(濃度50g/l)の水溶液を、32wt%の苛性ソーダの水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら滴下した。その後、母液から濾過した生成物を洗浄、および乾燥し、高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO2/[SiO2/Al(P)])を得た。錫水和酸化物の被覆量は、薄片状金属基質(Al)の単位表面積(m2)当たり、錫酸化物(SnO2)換算で0.036gに相当する量である。
【0063】
比較例1
薄片状金属顔料[SiO2/Al(P)]の調製
実施例1において、SnCl4・5H2Oによる錫水和酸化物層の形成を省略した以外は、実施例1と同様にして薄片状金属顔料[SiO2/Al(P)]を
得た。
【0064】
-アルカリ耐性テスト(発生する水素ガス量の測定)-
それぞれのサンプルの1gを、水酸化ナトリウム(NaOH)でpH11および12に調整された100gの温水中に分散させ、該分散液の温度を75℃に一定に保った。分散液により発生する水素ガス(H2)の量は、一定時間後に測定された。測定は60分間行われた。結果を図1に示す。
図1は、(SnO2/[SiO2/Al(P)])を用いたときの、発生する水素ガスを示す。本発明の高耐腐食性薄片状金属顔料(SnO2/[SiO2/Al(P)])は、pH11の溶液で水素ガスをほとんど発生しなかった。SnO2層の省略された[SiO2/Al(P)]に対しては、pH11の溶液で、より多量の水素ガスが発生した。
しかしながら、pH12の溶液では、実施例および比較例の双方で、短い時間に多量の水素ガスが発生したが、(SnO2/[SiO2/Al(P)])の方が、[SiO2/Al(P)]よりも低い水素ガス発生量を示した。(SnO2/[SiO2/Al(P)])(実施例1)の方が、SnO2層の省略された[SiO2/Al(P)]よりも高いアルカリ耐性を示すことが実証された。」
エ「【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】SnO2で被覆された耐腐食性アルミニウムフレークのアルカリ-耐性
テストの結果を示す。
【図1】
[図:0001400473000016.jpg]
」
(9)甲14の記載
ア「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物で処理された薄片状金属基質表面上に、金属水和酸化物を含有する被覆層を有する高耐腐食性薄片状金属顔料が、上記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、燐酸化合物および/またはホウ酸化合物で処理された薄片状金属基質表面上に、珪素、アルミニウム、錫、ジルコニウム、チタンからなる群から選択される1種または2種以上の金属の金属水和酸化物を1種または2種以上含有する被覆層を1層または2層以上有することを特徴とする、高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。また、本発明は、薄片状金属基質が、光輝感を有するメタリック顔料であることを特徴とする、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。さらに、本発明は、光輝感を有するメタリック顔料が、アルミニウムフレーク、チタンフレーク、金フレーク、銀フレーク、銅-亜鉛合金フレーク、ステンレスフレーク、ブロンズフレークのいずれかであることを特徴とする、前記高耐腐食性薄片状金属顔料に関する。」
イ「【0070】耐腐食性試験(水素ガス発生量測定):塩酸(HCl)で調整したpH1.8の75℃の温水100gに各試料を1g分散させ、その分散液の温度は
75℃に保持する。一定時間後、分散液からの水素ガス(H2)発生量を測定する。120分間測定した。以下に、未処理のAlフレーク(表面処理剤は洗浄除去して用いた。)、燐酸化合物単独処理(第一段階処理)したもの(Alフレーク(P))、および燐酸化合物処理した後に珪素水和酸化物被覆(第一段階処理+第二段階被覆層形成)したもの(SiO2/Alフレーク(P))の比較を図1~4に示す。同様にして燐酸化合物処理の替わりにホウ酸化合物処理(実施例5)したときの比較を図5に示す。
【0071】図1は、SS5588を用いた場合の未処理SS5588とSS5588(P)とSiO2/SS5588(P)の水素発生量の比較を示す。ここで、SS5588(P)は実施例1の1-a)で得られたもの、SiO2/SS5588(P)は実施例1の1-b)で得られたものである。本発明によるSiO2/SS5588(P)では、水素の発生量は微量であった。
【0072】図2は、550Nを用いた場合の未処理550Nと550N(P)とSiO2/550N(P)の水素発生量の比較を示す。ここで、550N(P)は実施例2の2-a)で得られたもの、SiO2/550N(P)は実施例2の2-b)で得られたものである。本発明によるSiO2/550N(P)では、水素の発生量は認められなかった。
【0073】図3は、SL800を用いた場合の未処理SL800とSL800(P)とSiO2/SL800(P)の水素発生量の比較を示す。ここで、SL800(P)は実施例3の3-a)で得られたもの、SiO2/SL800(P)は実施例3の3-b)で得られたものである。本発明によるSiO2/SL800(P)では、水素の発生量はほとんど認められなかった。
【0074】図4は、5422NSを用いた場合の未処理5422NSと5422NS(P)とSiO2/5422NS(P)とSiO2/5422NSとの水素発生量の比較を示す。ここで、5422NS(P)は実施例4の4-a)で得られたもの、SiO2/5422NS(P)は実施例4の4-b)で得られたもの、SiO2/5422NSは比較例1で得られたもの(第二段階被覆層「珪素水和酸化物被覆層」のみ有するもので第一段処理「燐酸化合物による処理」されていないもの)である。本発明によるSiO2/5422NS(P)では、水素の発生量はほとんど認められなかった。燐酸化合物による処理(第一段階処理)のみを有する5422NS(P)では、短時間で大量の水素の発生が認められ、SiO2/5422NSでも経時により多くの水素の発生が観られた。
【0075】図5は、5422NSを用いた場合の未処理5422NSと5422NS(B)とSiO2/5422NS(B)とSiO2/5422NSとの水素発生量の比較を示す。ここで、5422NS(B)は実施例5の5-a)で得られたもの、SiO2/5422NS(B)は実施例5の5-b)で得られたもの、SiO2/5422NSは比較例1で得られたもの(第二段処理層「珪素水和酸化物被覆層」のみ有するもので第一段処理層「ホウ酸化合物による処理」を有さないもの)である。本発明によるSiO2/5422NS(B)では、水素の発生量はほとんど認められなかった。ホウ酸化合物による処理(第一段階処理
)のみを有する5422NS(B)では、短時間で大量の水素の発生が認められ
、SiO2/5422NSでも経時により多くの水素の発生が観られた。」
ウ「【図面の簡単な説明】
【図1】 SS5588を用いた場合の未処理SS5588とSS5588(P)とSiO2/SS5588(P)の水素発生量の比較を示す。
【図2】 550Nを用いた場合の未処理550Nと550N(P)とSiO2/550N(P)の水素発生量の比較を示す。
【図3】 SL800を用いた場合の未処理SL800とSL800(P)とSiO2/SL800(P)の水素発生量の比較を示す。
【図4】 5422NSを用いた場合の未処理5422NSと5422NS(P)とSiO2/5422NS(P)とSiO2/5422NSとの水素発生量の比較を示す。
【図5】 5422NSを用いた場合の未処理5422NSと5422NS(B)とSiO2/5422NS(B)とSiO2/5422NSとの水素発生量の比較を示す。
【図1】
[図:0001400473000017.jpg]
【図2】
[図:0001400473000018.jpg]
【図3】
[図:0001400473000019.jpg]
【図4】
[図:0001400473000020.jpg]
【図5】
[図:0001400473000021.jpg]
」
4 甲2を主引例とした取消理由について
(1)甲2発明の認定
ア 甲2には、(A)鱗片状金属顔料と(B)重合性化合物および(C)ノニオン系分散剤を含む活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、長期保存後でも優れた金属調を有する印刷物が印刷可能で、プリントヘッドの耐腐食性に優れ、かつ貯蔵安定性に優れた、インクジェットプリンタで使用できる活性エネルギー線硬化型インク組成物が記載されている(前記2(1)の摘記ア~エ、キ、特に請求項1、段落【0001】、【0007】、【0009】~【0010】、【0060】参照)。
イ 甲2の段落【0072】の【表3】には、実施例No.9として、分散液No.1(表1に記載の酢酸エチルを分散媒とした鱗片状金属アルミニウム顔料の分散液1)を使用したインク組成物No.5(表2に記載のインク組成物No.5)の評価結果が示されている(前記2(1)の摘記ク、特に段落【0064】~【0069】、【0072】、表1~3参照)。そして、インク組成物No.5の組成は、表2に開示されており、(A)鱗片状金属顔料である鱗片状金属アルミニウム顔料が1.0質量%、(B)重合性化合物であるa.トリエチレングリコールジアクリレート、b.エチルカルビトールアクリレート、c.アミノアクリレート(EBECRYL7100)、d.トリメチロールプロパントリアクリレートがそれぞれ31.4質量%、30.0質量%、8.0質量%、14.4質量%、(C)ノニオン系分散剤であるc.DISPERBYK-192(ビックケミー社製、ノニオン系、重量平均分子量=1,487)が0.50質量%、光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが8.0質量%、ポリエステル樹脂(P)(酸価11、重量平均分子量6,000)が3.0質量%、重合禁止剤であるヒドロキノンモノメチルエーテルが0.2質量%、非反応性溶剤である酢酸エチルが3.5質量%である(前記2(1)の摘記ク、特に段落【0067】~【0069】、表2参照)。
ウ 甲2の表2に記載のインク組成物No.5を調製する際に使用される前記イのポリエステル樹脂(P)(酸価11、重量平均分子量6,000)は、イソフタル酸320質量部、無水マレイン酸5質量部、ネオペンチルグリコール200質量部を脱水縮合重合して得られるポリエステル樹脂(P)である(前記2(1)の摘記ク、特に段落【0067】参照)。そして、甲2には、樹脂(P)は、酸価が5~100の範囲のカルボキシル基等の酸基を有し、該酸基が鱗片状金属顔料の表面と反応し、鱗片状金属顔料の表面をポリエステル樹脂(P)で覆うことができる旨が記載されている(前記2(1)の摘記カ(段落【0047】)参照)。そのため、甲2の表2に記載のインク組成物No.5に含まれる鱗片状金属アルミニウム顔料の表面は、ポリエステル樹脂(P)(酸価11、重量平均分子量6,000)により被覆されていると解される。
エ 甲2の実施例では、各インク組成物を使用し、基材である市販のポリカーボネート板にインクジェットプリンタにて印刷を行っている(前記2(1)の摘記ク、特に段落【0070】参照)。そして、段落【0072】の表3を参照すれば、実施例No.9では、貯蔵安定性、金属調(貯蔵安定性試験前及び後)、ヘッドの耐腐食性がいずれも○と優れていることから、実施例9で調製されるインク組成物は、長期保存後でも優れた金属調を有する印刷物が印刷可能で、プリントヘッドの耐腐食性に優れ、かつ貯蔵安定性に優れたものといえる(前記2(1)の摘記ク、特に段落【0071】~【0073】、表3参照)。
オ そうすると、甲2の実施例9で調製されるインク組成物を中心に、甲2から次の各発明(以下「甲2発明A」、「甲2発明B」という)が認定できる。
<甲2発明A>
「インクジェットプリンタで使用される活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、
該インク組成物の組成は、
(A)鱗片状金属顔料である鱗片状金属アルミニウム顔料が1.0質量%、
(B)重合性化合物であるa.トリエチレングリコールジアクリレート、b.エチルカルビトールアクリレート、c.アミノアクリレート(EBECRYL7100)、d.トリメチロールプロパントリアクリレートがそれぞれ31.4質量%、30.0質量%、8.0質量%、14.4質量%、
(C)ノニオン系分散剤であるc.DISPERBYK-192(ビックケミー社製、ノニオン系、重量平均分子量=1,487)が0.50質量%、
光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが8.0質量%、
イソフタル酸、無水マレイン酸、ネオペンチルグリコールの脱水縮合重合で得られたポリエステル樹脂(P)(酸価11、重量平均分子量6,000)が3.0質量%、
重合禁止剤であるヒドロキノンモノメチルエーテルが0.2質量%、
非反応性溶剤である酢酸エチルが3.5質量%であり、
前記鱗片状金属アルミニウム顔料の表面は、前記ポリエステル樹脂(P)(酸価11、重量平均分子量6,000)により被覆されており、
長期保存後でも優れた金属調を有する印刷物が印刷可能で、プリントヘッドの耐腐食性に優れ、かつ貯蔵安定性に優れた、
インク組成物。」
<甲2発明B>
「甲2発明Aのインク組成物を使用し、基材である市販のポリカーボネート板にインクジェットプリンタにて印刷を行う方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 甲2発明Aと本件特許発明1の対比
(ア)甲2発明Aのインク組成物は、「インクジェットプリンタで使用される」ものであるから、本件特許発明1の「インクジェット法によって吐出される」を充足する。
(イ)甲2発明Aのインク組成物は、その組成からみて水を含有しないので、本件特許発明1の「前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり」を充足する。
(ウ)甲2発明Aのインク組成物に含まれる「鱗片状金属アルミニウム顔料」は、本件特許発明1の「光輝性顔料」かつ「金属含有光輝性顔料」に相当し、「アルミニウムを含有」するものである。
イ 一致点及び相違点
そうすると、甲2発明Aと本件特許発明1は、
「インクジェット法によって吐出されるインク組成物であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
インク組成物。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
インク組成物について、本件特許発明1では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲2発明Aでは、当該水素の発生量が不明である点。
ウ 相違点1の検討
(ア)新規性について
a 甲2には、相違点1に係る水素の発生量については記載も示唆もない。
b 次に、甲3の報告書1について検討すると下記(a)~(e)のとおりである。
(a) 甲3の作成者等(形式的証拠力)について検討する。
甲3の報告書1には、作成日とともに、氏名欄に申立人の氏名が記載され、押印がなされている(前記2(2)ア参照)。したがって、甲3は、申立人が2022年9月8日に作成したものであるから、特許法第151条で準用する民事訴訟法第228条第4項の規定により、真正に成立した文書と推定する。
(b) 次に、甲3の記載内容(実質的証拠力)について検討する。
甲3の「第1 はじめに」の項には、「特開2019-172871号公報の実施例9・・・に係るインク組成物を調製し、その水素発生量を測定する試験の結果を入手しましたので、報告します」(下線は、当審が付した。)と記載されているから、当該「インク組成物を調製し、」「試験」を実施した者は、申立人とは異なる者であると考えることが自然であり、申立人は、実際に試験をした者から当該試験の内容及び結果の報告を受け、それに基いて、甲3の「報告書1」を作成したのだと解される。
(c) しかし、甲3には、実際に再現実験を行った日時及び場所のみならず、実験者名すら記載されていないから、当該試験結果は、実際に実験をした者によって作成された、実験の証明すべき事項、実験内容、及び実験結果が明確に確認できる程度に必要な事項が記載された文書に該当しない。
(d) 上記に加え、「甲3に記載されている試験」は、下記の点で、甲2の実施例9を再現したものであるとはいえない。
まず、一般に、再現実験であるといえるためには、再現実験で用いる原料や、使用する装置や、行った操作や、その条件や、得られた結果(特性や物性の測定値等)などと、再現をしようとしている実験で実際に採用されたそれらとを一致させる必要があるが、甲2の実施例9は、鱗片状金属顔料のD50粒子径が0.6μm、平均厚み21nmであり、真空蒸着を含む工程で製造されたものである(甲2の段落【0072】の【表3】、及び、段落【0065】の【表1】参照。)のに対し、甲3の試験に用いた鱗片状アルミニウム顔料は、そのD50粒子径、平均厚み、及び、製造工程がいずれも不明である。
また、得られたインク組成物の特性や物性についても、一致させる必要があるところ、甲2の実施例9は、貯蔵安定性の評価が「○」(レオメーターでずり速度100s-1にて測定した粘度変化率が5.0%~9.9%。甲2の段落【0071】、【0072】)であるのに対し、甲3には、貯蔵安定性の評価(粘度変化率)等が記載されていないので、不明である。
そうすると、甲3に記載されている試験の内容は、甲2の実施例9と一致しているとはいえないから、甲3に記載されている試験は、甲2の実施例9を再現したものであるとはいえない。
(e) してみると、甲3は、実質的証拠力を備えた文書ではないから、甲3に記載された事項に基いて、甲2発明のインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下であるとすることはできない。
c したがって、相違点1は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
甲7には、表面処理されたアルミニウム等の鱗片状金属粉末を含み、溶存酸素減少速度が所定範囲内にあるインクジェット組成物であって、保存安定性及び吐出安定性に優れるインクジェット組成物が記載されており(前記2(6)の摘記ア~イ、特に請求項1~2、4、段落【0006】~【0007】参照)、従来の金属粉末は、その表面で水を還元し、組成物中に水素ガスを発生させるところ、表面処理された金属粉末の表面は、組成物に含まれる水等との反応が抑制され、これにより、組成物の保存安定性に優れ、インクジェット法により組成物を連続して吐出する際に、組成物中の水素ガス等のガスが吐出を阻害しないことに起因して、吐出安定性に優れる旨が記載されている(前記2(6)の摘記ウ、特に段落【0012】参照)。
そうすると、インクジェット組成物に含まれる金属粉末として表面処理されたものを使用し、金属粉末と組成物に含まれる水との反応及び該反応に伴う水素ガスの発生を抑制することが、インクジェット組成物の保存安定性及び吐出安定性の点で有利であることは、公知の事項であるが、甲7には、溶存酸素減少速度を所定範囲内とすることが記載されているだけであって、溶存酸素減少速度を所定範囲内とすることに代えて水素ガスの発生量を特定することを動機づけるような記載や示唆はない。
また、甲12では、アルミ粉末の化学安定性として水素ガス発生量を調べ、水素ガス発生量が少ないものを化学安定性に優れたものとして評価している(前記2(7)の摘記ア参照)。同様に、甲13及び甲14では、各種表面被覆処理されたアルミニウムフレークの耐腐食性評価として水素ガス発生量を測定し、水素ガス発生量が少ないものを耐腐食性に優れたものとして評価している(前記2(8)の摘記ウ~エ、前記2(9)の摘記イ~ウ参照)。
そうすると、アルミニウム粉末の化学安定性や耐腐食性の指標として、反応に伴い発生する水素ガス量を測定すること、そしてその量が少ない方が化学安定性や耐腐食性に優れることは、周知の事項であるが、甲12~14のいずれにも、本件特許発明1に係る水素ガス発生量の測定方法については記載も示唆もないから、当業者は、せいぜい、甲12~14のいずれかに記載の方法を採用するように動機付けられる程度であって、あえて、甲12~14のいずれにも記載のない新たな方法を採用しようとする動機付けはないし、仮に、そのような着想をしたとしても、甲12~14のいずれにも、記載も示唆もない本件特許発明1に係る水素ガスの発生量の測定方法を想到し得ないと認められる。
したがって、当業者といえども、甲2発明Aにおいて、相違点1に係る構成(所定の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量を「1ml以下」とすること)を備えるものとすることを、甲7、甲12~甲14の記載に基いて容易になし得たとはいえない。
また、本件特許発明1は、本件特許発明1で規定される所定の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量を「1ml以下」とすることによって、インク組成物の保存安定性に優れることに加え、印刷物の保存性にも優れるものであるが(本件特許明細書の段落【0152】の【表1】、段落【0175】等を参照。)、このような効果が奏されることを、印刷物の保存性について記載も示唆もない甲2、7、12~14に基いて当業者が予測できるとは認められない。
エ 本件特許発明1についてのまとめ
本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2発明A及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに、限定した発明に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲2発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明2と甲2発明Aは、少なくとも相違点1で相違している。
また、相違点1について検討すると、上記(2)ウ(ア)のとおり、相違点1は、実質的な相違点であるから、さらに検討するまでもなく、本件特許発明2も、甲2に記載された発明であるとはいえない。
また、上記(2)ウ(イ)のとおり、相違点1に係る構成(所定の測定方法による水素の発生量が1ml以下であること)を備えるものとすることを、甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易になし得たとはいえないのであるから、さらに検討するまでもなく、本件特許発明2も、本件特許発明1と同様の理由により、甲2発明A及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明3について
本件特許発明3は、「インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、前記インク組成物は、本件特許発明1のインク組成物である方法」に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲2発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明3と甲2発明Bの一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
記録方法。」
<相違点2>
インク組成物について、本件特許発明3では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲2発明Bでは、当該水素発生量が不明である点。
相違点2は、実質的に相違点1と同じものであるから、上記(2)ウ(ア)(イ)と同じことがいえる。
したがって、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2発明B及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明4について
本件特許発明4は、「インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、前記インク組成物は、本件特許発明1のインク組成物である方法」に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲2発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明4と甲2発明Bの一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
印刷物の製造方法。」
<相違点3>
インク組成物について、本件特許発明4では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲2発明Bでは、当該水素発生量が不明である点。
相違点3は、実質的に相違点1と同じものであるから、上記(2)ウ(ア)(イ)と同じことがいえる。
したがって、本件特許発明4も、本件特許発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2発明B及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
5 甲4を主引例とした取消理由について
(1)甲4発明の認定
ア 甲4には、インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用組成物であって、重合性化合物と、リン酸化合物で表面処理された鱗片状のアルミニウム顔料とを含み、保存安定性、金属粉末の分散安定性に優れ、光沢感に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることのできる紫外線硬化型インクジェット用組成物が記載されている(前記2(3)の摘記ア~エ、特に請求項1~2、5、段落【0005】、【0022】、【0028】参照)。
イ また、甲4には、紫外線硬化型インクジェット用組成物を記録媒体上に付与し、その後、紫外線を照射することにより、記録物を製造することが記載されている(前記2(3)の摘記ア、キ、特に請求項16、段落【0078】参照)。
ウ そして、甲4には、アルミニウム(Al)は、本来、各種金属材料の中でも特に優れた光沢感を呈するものであるが、紫外線硬化型インクジェット用組成物に、アルミニウムで構成された粉末を適用しようとした場合に、紫外線硬化型インクジェット用組成物の保存安定性は特に低いものとなり、ゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下等の問題が特に顕著に発生すること、これに対し、紫外線硬化型インクジェット用組成物を構成するアルミニウム顔料がリン酸化合物で表面処理されたものであることにより、上記問題を解決できること、母粒子(アルミニウム金属粒子)をリン酸化合物で表面処理することにより、母粒子だけでは生じてしまう保存安定性の低下やゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下を抑制できることが記載されている(前記2(3)の摘記エ~オ、特に段落【0030】、【0033】参照)。
エ さらに、甲4の実施例4では、種々の重合性化合物と、リン酸化合物S2すなわち(C14H29)3(O)Pで表面処理された鱗片状のアルミニウム顔料等を混合して、紫外線硬化型インクジェット用組成物を製造し、インクジェット装置から各種基材(記録媒体)上に、所定のパターンで、該インクジェット用組成物を吐出した後、紫外線を照射、硬化させて、記録物としてのインテリアパネルを製造した上で、吐出安定性、周波数特性、長期安定性、分散性、硬化性、記録物の外観、光沢度、耐擦性といった各種性能を測定、評価している(前記2(3)の摘記ク~ケ、特に段落【0088】、【0092】、【0096】、【0108】~【0110】、【0118】、表1、4参照)。ここで、表1に開示される各実施例のインクジェット用組成物の組成からみて、実施例4のインクジェット用組成物は水を含有しないので、非水性といえる。また、表4を参照すれば、実施例4のインクジェット用組成物について、各項目の性能評価がA又はBと良好であることから、甲4の実施例4で製造されるインクジェット用組成物は、少なくとも吐出安定性、保存安定性(長期安定性)、金属粉末の分散安定性に優れ、光沢感に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることができるといえる。
オ そうすると、甲4の実施例4で製造されるインクジェット用組成物を中心に、甲4から次の各発明(以下「甲4発明A」、「甲4発明B」という)が認定できる。
<甲4発明A>
「インクジェット方式により吐出される非水性インクジェット用組成物であって、
重合性化合物と、リン酸化合物(C14H29)3(O)Pで表面処理された鱗片状のアルミニウム顔料とを含み、
吐出安定性、保存安定性(長期安定性)、金属粉末の分散安定性に優れ、光沢感に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることができる、
非水性インクジェット用組成物。」
<甲4発明B>
「甲4発明Aの非水性インクジェット用組成物をインクジェット装置から記録媒体上に吐出し、記録物を製造する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 甲4発明Aと本件特許発明1の対比
(ア)甲4発明Aの「インクジェット方式により吐出される非水性インクジェット用組成物」は、本件特許発明1の「インクジェット法によって吐出されるインク組成物」に相当し、「前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり」を充足する。
(イ)甲4発明Aの「インクジェット用組成物」に含まれる「リン酸化合物(C14H29)3(O)Pで表面処理された鱗片状のアルミニウム顔料」は、本件特許発明1の「光輝性顔料」かつ「金属含有光輝性顔料」に相当し、「アルミニウムを含有」するものである。
イ 一致点及び相違点
そうすると、甲4発明Aと本件特許発明1は、
「インクジェット法によって吐出されるインク組成物であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
インク組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
インク組成物について、本件特許発明1では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲4発明Aでは、当該水素発生量が不明である点。
ウ 相違点4の検討
相違点4は、実質的に相違点1と同じものであるから、上記4(2)ウ(イ)と同じことがいえる。
したがって、相違点4に係る構成(所定の測定方法による水素の発生量が1ml以下であること)を備えるものとすることを、甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易になし得たとはいえない。
エ 本件特許発明1についてのまとめ
本件特許発明1は、甲4発明A及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに、限定した発明に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲4発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明2と甲4発明Aは、少なくとも相違点4で相違している。
また、相違点4について検討すると、上記(2)ウのとおり、相違点4に係る構成(所定の測定方法による水素の発生量が1ml以下であること)を備えるものとすることを、甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易になし得たとはいえないのであるから、さらに検討するまでもなく、本件特許発明2も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4発明A及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明3について
本件特許発明3は、「インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、前記インク組成物は、本件特許発明1のインク組成物である方法」に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲4発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明3と甲4発明Bの一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
記録方法。」
<相違点5>
インク組成物について、本件特許発明3では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲4発明Bでは、当該水素発生量が不明である点。
相違点5は、実質的に相違点4と同じものであるから、上記(2)ウと同じことがいえる。
したがって、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4発明B及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明4について
本件特許発明4は、「インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、前記インク組成物は、本件特許発明1のインク組成物である方法」に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲4発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明4と甲4発明Bの一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
印刷物の製造方法。」
<相違点6>
インク組成物について、本件特許発明4では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲4発明Bでは、当該水素発生量が不明である点。
相違点6は、実質的に相違点4と同じものであるから、上記(2)ウと同じことがいえる。
したがって、本件特許発明4も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 甲5を主引例とした取消理由について
(1)甲5発明の認定
ア 甲5には、重量平均分子量12,000以下のポリエステル樹脂(a)と、蒸着アルミニウム顔料を有機溶剤のみに分散させてなるメタリック顔料分散体(b)と、ポリ塩化ビニル基材に対して浸透性がある有機溶剤(c)とを少なくとも含む、ポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物であって、インクジェット印刷時におけるノズル詰まりを防止することができ、耐擦過性が良好で且つ鏡面光沢に優れる印刷物を形成可能なインク組成物が記載されている(前記2(4)の摘記ア~エ参照)。
イ 甲5の実施例2では、メタリック顔料分散体(蒸着アルミニウム顔料:10.0質量%,有機溶剤の種類:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)12.5質量部と、有機溶剤(c)であるジエチレングリコールエチルメチルエーテル59.40質量部及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル20.00質量部と、DISPERBYK-111(ビックケミー社製分散剤,酸基を含む共重合物)0.60質量部と、ポリエステル樹脂(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000)7.50質量部とを配合して、インク組成物を調製している(前記2(4)の摘記ケ、特に段落【0038】、【0040】参照)。
ウ 甲5の実施例2でインク組成物を調製する際に使用されるポリエステル樹脂(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000)は、イソフタル酸320質量部、無水マレイン酸5質量部、ネオペンチルグリコール200質量部を脱水縮合重合して得られるポリエステル樹脂である(前記2(4)の摘記ケ、特に段落【0038】参照)。そして、甲5には、ポリエステル樹脂(a)は、酸価が5~50であることが好ましく、ポリエステル樹脂(a)の酸価が5~50の範囲内にあれば、ポリエステル樹脂(a)中の酸基が蒸着アルミニウム顔料表面と反応し、蒸着アルミニウム顔料をより固定化することで耐擦過性を更に向上でき、また、蒸着アルミニウム顔料との濡れもより良好になる旨が記載されている(前記2(4)の摘記オ、特に段落【0017】参照)。そのため、甲5の実施例2で調製されるインク組成物に含まれる蒸着アルミニウム顔料の表面には、酸基を介してポリエステル樹脂(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000)が固定化、被覆されていると解される。
エ 甲5の実施例では、インクジェットプリンタによってポリ塩化ビニル基材上にインク組成物を印刷し、得られた記録物の鏡面光沢、耐擦過性及び耐候性を評価している(前記2(4)の摘記コ、特に段落【0048】参照)。そして、実施例2では、ノズルの詰まりが起こることなく、光沢度が20°で400、60°で393、85°で117と比較的高く、耐擦過性が◎と優れていることから(前記2(4)の摘記コ、特に段落【0048】、表1参照)、実施例2で調製されるインク組成物は、インクジェット印刷時におけるノズル詰まりを防止することができ、耐擦過性が良好で且つ鏡面光沢に優れる印刷物を形成可能なインク組成物といえる。
オ そうすると、甲5の実施例2で調製されるインク組成物を中心に、甲5から次の各発明(以下「甲5発明A」、「甲5発明B」という)が認定できる。
<甲5発明A>
「ポリ塩化ビニル基材用インクジェット印刷用メタリックインク組成物であって、
蒸着アルミニウム顔料を有機溶剤のみに分散させてなるメタリック顔料分散体(b)(蒸着アルミニウム顔料:10.0質量%,有機溶剤の種類:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)12.5質量部と、
ポリ塩化ビニル基材に対して浸透性がある有機溶剤(c)である、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル59.40質量部及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル20.00質量部と、
DISPERBYK-111(ビックケミー社製分散剤,酸基を含む共重合物)0.60質量部と、
イソフタル酸、無水マレイン酸、ネオペンチルグリコールの脱水縮合重合で得られたポリエステル樹脂(a)(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000)7.50質量部とを配合して調製され、
前記蒸着アルミニウム顔料の表面には、酸基を介して前記ポリエステル樹脂(a)(酸価11,ポリスチレン換算重量平均分子量6,000)が固定化、被覆されており、
インクジェット印刷時におけるノズル詰まりを防止することができ、耐擦過性が良好で且つ鏡面光沢に優れる印刷物を形成可能な、
インク組成物。」
<甲5発明B>
「インクジェットプリンタによって、ポリ塩化ビニル基材上に甲5発明Aのインク組成物を印刷する方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 甲5発明Aと本件特許発明1の対比
(ア)甲5発明Aのインク組成物は、「インクジェット印刷用」であるから、本件特許発明1の「インクジェット法によって吐出される」を充足する。
(イ)甲5発明Aのインク組成物は、「蒸着アルミニウム顔料を有機溶剤のみに分散させてなるメタリック顔料分散体(b)」と「有機溶剤(c)」を含むものであって、その配合組成からみて水を含有しないので、本件特許発明1の「前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり」を充足する。
(ウ)甲5発明Aのインク組成物に含まれる「蒸着アルミニウム顔料」は、本件特許発明1の「光輝性顔料」かつ「金属含有光輝性顔料」に相当し、「アルミニウムを含有」するものである。
イ 一致点及び相違点
そうすると、甲5発明Aと本件特許発明1は、
「インクジェット法によって吐出されるインク組成物であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
インク組成物。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点7>
インク組成物について、本件特許発明1では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲5発明Aでは、当該水素発生量が不明である点。
ウ 相違点7の検討
(ア)新規性について
a 甲5には、相違点7に係る水素の発生量については記載も示唆もない。
b 次に、甲6の報告書2について検討すると下記(a)~(e)のとおりである。
(a) まず、甲6の作成者等(形式的証拠力)について検討する。
甲6の報告書2には、作成日とともに、氏名欄に申立人の氏名が記載され、押印がなされている(前記2(2)ア参照)。したがって、甲3は、申立人が2022年9月8日に作成したものであるから、特許法第151条で準用する民事訴訟法第228条第4項の規定により、真正に成立した文書と推定する。
(b) 次に、甲6の記載内容(実質的証拠能力)について検討する。
甲6の「第1 はじめに」の項には、「特開2015-67767号公報の実施例2・・・に係るインク組成物を調製し、その水素発生量を測定する試験の結果を入手しましたので、報告します」(下線は、当審が付した。)と記載されているから、当該「インク組成物を調製し、」「試験」を実施した者は、申立人とは異なる別の者であると考えることが自然であり、申立人は、実際に試験をした者から何らかの手段当該試験の内容及び結果の報告を受け、それに基いて、甲6の「報告書2」を作成したのだと解される。
(c) しかし、甲6には、実際に再現実験を行った日時及び場所のみならず、実験者名すら記載されていないから、当該試験結果が記載された甲6は、実際に実験をした者によって作成された、実験の証明すべき事項、実験内容、及び実験結果が明確に確認できる程度に必要な事項が記載された文書に該当しない。
(d) 上記に加え、「甲6に記載されている試験」は、下記の点で、甲5の実施例2を再現したものであるとはいえない。
まず、一般に、再現実験であるといえるためには、再現実験で用いる原料や、使用する装置や、行った操作や、その条件や、得られた結果(特性や物性の測定値等)などと、再現をしようとしている実験で実際に採用されたそれらとを一致させる必要があるが、甲5には、その実施例2で用いた「メタリック顔料分散体(蒸着アルミニウム顔料・・・フィルター:「綾畳織#2300メッシュ」)」(甲5の段落【0040】)について、「配合処方に記載のフィルターを用いた市販品の自然濾過により得られたものである」(甲5の段落【0038】)と記載されているだけであって、当該市販品のメーカー名や商品名が記載されていない(したがって、D50等の値も不明である)のに対し、甲6には、「メタリック顔料分散体(蒸着アルミニウム顔料」としか記載されていないから、甲6の「メタリック顔料分散体(蒸着アルミニウム顔料」が市販品であるのか否か、及び、フィルター:「綾畳織#2300メッシュ」による自然濾過で得られたものなのかが不明である。
また、得られたインク組成物の特性や物性についても、一致させる必要があるところ、甲5の実施例2は、光沢度(BYKガードナー社製マイクロ-トリグロス光沢計で測定)が、20°、60°、85°においてそれぞれ、400、393、117(甲5の段落【0049】、【0052】の【表1】)であるのに対し、甲6には、光沢度等が記載されていないので、不明である。
(e) してみると、甲6は、実質的証拠力を備えた文書ではないから、甲6に記載された事項に基いて、甲5発明のインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下であるとすることはできない。
c したがって、相違点7は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではない。
(イ)進歩性について
甲7には、表面処理されたアルミニウム等の鱗片状金属粉末を含み、溶存酸素減少速度が所定範囲内にあるインクジェット組成物であって、保存安定性及び吐出安定性に優れるインクジェット組成物が記載されており(前記2(6)の摘記ア~イ、特に請求項1~2、4、段落【0006】~【0007】参照)、従来の金属粉末は、その表面で水を還元し、組成物中に水素ガスを発生させるところ、表面処理された金属粉末の表面は、組成物に含まれる水等との反応が抑制され、これにより、組成物の保存安定性に優れ、インクジェット法により組成物を連続して吐出する際に、組成物中の水素ガス等のガスが吐出を阻害しないことに起因して、吐出安定性に優れる旨が記載されている(前記2(6)の摘記ウ、特に段落【0012】参照)。
そうすると、インクジェット組成物に含まれる金属粉末として表面処理されたものを使用し、金属粉末と組成物に含まれる水との反応及び該反応に伴う水素ガスの発生を抑制することが、インクジェット組成物の保存安定性及び吐出安定性の点で有利であることは、公知の事項であるが、甲7には、溶存酸素減少速度を所定範囲内とすることが記載されているだけであって、溶存酸素減少速度を所定範囲内とすることに代えて水素ガスの発生量を特定することを動機づけるような記載や示唆はない。
また、甲12では、アルミ粉末の化学安定性として水素ガス発生量を調べ、水素ガス発生量が少ないものを化学安定性に優れたものとして評価している(前記2(7)の摘記ア参照)。同様に、甲13及び甲14では、各種表面被覆処理されたアルミニウムフレークの耐腐食性評価として水素ガス発生量を測定し、水素ガス発生量が少ないものを耐腐食性に優れたものとして評価している(前記2(8)の摘記ウ~エ、前記2(9)の摘記イ~ウ参照)。
そうすると、アルミニウム粉末の化学安定性や耐腐食性の指標として、反応に伴い発生する水素ガス量を測定すること、そしてその量が少ない方が化学安定性や耐腐食性に優れることは、周知の事項であるが、甲12~14のいずれにも、本件特許発明1に係る水素ガス発生量の測定方法については記載も示唆もないから、当業者は、せいぜい、甲12~14のいずれかに記載の方法を採用するように動機付けられる程度であって、あえて、甲12~14のいずれにも記載のない新たな方法を採用しようとする動機付けはないし、仮に、そのような着想をしたとしても、甲12~14のいずれにも、記載も示唆もない本件特許発明1に係る水素ガスの発生量の測定方法を想到し得ないと認められる。
したがって、当業者といえども、甲5発明Aにおいて、相違点7に係る構成(所定の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量を「1ml以下」とすること)を備えるものとすることを、甲7、甲12~甲14の記載に基いて容易になし得たとはいえない。
また、本件特許発明1は、本件特許発明1で規定される所定の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量を「1ml以下」とすることによって、インク組成物の保存安定性に優れることに加え、印刷物の保存性にも優れるものであるが(本件特許明細書の段落【0152】の【表1】、段落【0175】等を参照。)、このような効果が奏されることを、印刷物の保存性について記載も示唆もない甲5、7、12~14に基いて当業者が予測できるとは認められない。
エ 本件特許発明1についてのまとめ
本件特許発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5発明A及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに、限定した発明に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲5発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明2と甲5発明Aは、少なくとも相違点7で相違している。
また、相違点7について検討すると、上記(2)ウ(ア)のとおり、相違点7は、実質的な相違点であるから、さらに検討するまでもなく、本件特許発明2も、甲5に記載された発明であるとはいえない。
また、上記(2)ウ(イ)のとおり、相違点7に係る構成(所定の測定方法による水素の発生量が1ml以下であること)を備えるものとすることを、甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易になし得たとはいえないのであるから、さらに検討するまでもなく、本件特許発明2も、本件特許発明1と同様の理由により、甲5発明A及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明3について
本件特許発明3は、「インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、前記インク組成物は、本件特許発明1のインク組成物である方法」に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲5発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明3と甲5発明Bの一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「インクジェット法によってインク組成物を吐出する記録方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
記録方法。」
<相違点8>
インク組成物について、本件特許発明3では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲5発明Bでは、当該水素発生量が不明である点。
相違点8は、実質的に相違点7と同じものであるから、上記(2)ウ(ア)(イ)と同じことがいえる。
したがって、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由により、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5発明B及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明4について
本件特許発明4は、「インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、前記インク組成物は、本件特許発明1のインク組成物である方法」に該当すること、及び、上記(2)ア、イ(甲5発明Aと本件特許発明1との対比、一致点、相違点)を参照すると、本件特許発明4と甲5発明Bの一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「インクジェット法によってインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記インク組成物は、非水性のインク組成物であり、
前記インク組成物は、光輝性顔料を含有し、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料は、アルミニウムを含有する、
印刷物の製造方法。」
<相違点9>
インク組成物について、本件特許発明4では、「以下の試験方法により測定されたインク組成物100g当たりの水素の発生量が1ml以下である。
試験方法:インク組成物25g、乾燥空気200mlをサンプルバッグに入れて密封し、60℃で24時間保管し、サンプルバッグから20mlの気体を採取し、JIS K 0804に従い水素用検知管を装着したガス採取器により測定する。」のに対し、甲5発明Bでは、当該水素発生量が不明である点。
相違点9は、実質的に相違点7と同じものであるから、上記(2)ウ(ア)(イ)と同じことがいえる。
したがって、本件特許発明4も、本件特許発明1と同様の理由により、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5発明B及び甲7、甲12~甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
第4 取消理由通知に記載しなかった申立理由について
当審が令和5年1月17日付けで通知した取消理由通知で採用しなかった申立理由は、下記の申立理由1である。また、申立理由1は、主たる引用刊行物等として、上記第3の2の甲4を引用するものである。
<申立理由1>
本件特許発明1~4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
1 甲4に記載された発明
甲4には、上記第3の5(1)で述べたとおりの甲4発明A、及び、甲4発明Bが記載されている。
2 本件特許発明1について
甲4発明Aと本件特許発明1を対比すると、その一致点、相違点は、上記第3の5(2)イのとおりである。
そして、甲4には、相違点4に係る水素の発生量については、記載も示唆もなく、この点は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲4に記載された発明ではない。
なお、申立人は、甲4の実施例1、2、9、10の吐出安定性、周波数特性、保存安定性、分散性、硬化性、記録物の外観・光沢度の評価がいずれも「A」であること、及び、甲2の実施例9のインク組成物100g当たりの水素発生量は未検出(0.24ml未満)である(甲3)ことから、甲4のインクジェット用組成物の水素発生量は甲2のものよりも低く、上記試験方法による水素発生量が「1ml以下である」蓋然性が高いから、相違点4は実質的な相違点ではないと主張する(異議申立書71頁1行~10行)が、前記「甲4の実施例1、2、9、10の吐出安定性、周波数特性、保存安定性、分散性、硬化性、記録物の外観・光沢度の評価がいずれも「A」であること」、及び、同「甲2の実施例9のインク組成物100g当たりの水素発生量は未検出(0.24ml未満)である(甲3)こと」から、なぜ、「甲4のインクジェット用組成物」(甲4の実施例1、2、9、10に限られない)の水素発生量は甲2のものよりも低い」という結論が導き出せるのか、その理由が具体的に説明されておらず、甲4、甲2のいずれにも「吐出安定性、周波数特性、保存安定性、分散性、硬化性、記録物の外観・光沢度の評価」と「水素発生量」との技術的関係に関する記載も示唆もないことから、採用できない。
さらに、上記第3の4(2)ウ(ア)で説示したとおり、甲3は、実質的証拠力がないものである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
3 本件特許発明2について
上記第3の5(3)に説示したとおり、本件特許発明2と甲4発明Aは、少なくとも相違点4で相違している。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件特許発明2も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明ではない。
4 本件特許発明3について
上記第3の5(4)に説示したとおり、本件特許発明3と甲4発明Bは、少なくとも相違点5で相違している。また、相違点5は、実質的に相違点4と同じものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件特許発明3も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明ではない。
5 本件特許発明4について
上記第3の5(5)に説示したとおり、本件特許発明4と甲4発明Bは、少なくとも相違点6で相違している。また、相違点6は、実質的に相違点4と同じものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件特許発明4も、本件特許発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明ではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700917