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特許異議申立

2022-700902

実装構造体の製造方法およびこれに用いられるシート

審判番号
2022-700902
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-545689
登録番号
7038726
請求日
2022年09月14日
審決日
2023年05月01日
公報発行日
2023年08月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ナガセケムテックス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人河崎特許事務所
  • 【異議申立人】家田 亘久
審判長/審判官
  • 審判長 恩田 春香
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.537-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7038726号発明「実装構造体の製造方法およびこれに用いられるシート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7038726号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、〔6~9〕について訂正することを認める。 特許第7038726号の請求項1、4~6、8、9に係る特許を維持する。 特許第7038726号の請求項3、7に係る特許についての異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7038726号の請求項1、3~9に係る特許についての出願は、平成30年9月28日(パリ条約による優先権主張 平成29年9月29日 日本国)に国際出願され、令和4年3月10日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月18日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1、3~9に係る特許について、令和4年9月14日に特許異議申立人家田亘久(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年11月24日付けで取消理由を通知した。 特許権者は、その指定期間内である令和5年1月26日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行い、当審は訂正請求があった旨を令和5年2月15日付けで申立人に通知したが、指定期間内に申立人から意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「【請求項1】 第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を準備する工程と、 熱硬化性のシートを準備する工程と、 前記シートを、前記第2回路部材に対向するように前記実装部材に配置する配置工程と、 前記シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに 前記シートを加熱することにより前記第2回路部材を封止し、前記シートを硬化させる封止工程と、を具備し、 前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、 さらに、複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材であり、 前記シートは、一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向する第1層と、前記第1層に隣接する第2層と、を備え、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記封止工程では、前記空間を維持しながら、複数の前記第2回路部材が封止される、実装構造体の製造方法。」と記載されているのを、 「【請求項1】 第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を準備する工程と、 熱硬化性のシートを準備する工程と、 前記シートを、前記第2回路部材に対向するように前記実装部材に配置する配置工程と、 前記シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに 前記シートを加熱することにより前記第2回路部材を封止し、前記シートを硬化させる封止工程とを具備し、 前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、 さらに、複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材であり、 前記シートは、一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向する第1層と、前記第1層に隣接する第2層と、を備え、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記第1樹脂組成物は、前記温度tにおいて、 損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、 前記封止工程では、前記空間を維持しながら、複数の前記第2回路部材が封止される、実装構造体の製造方法。」(下線は訂正箇所。以下同じ。)に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項4、5も同様に訂正する) 。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、「・・・・請求項3に記載の実装構造体の製造方法。」と記載されているのを、「・・請求項1に記載の実装構造体の製造方法。」に訂正する(請求項4を直接的に引用する請求項5も同様に訂正する)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、「・・・・請求項1、3または4に記載の実装構造体の製造方法。」と記載されているのを、「・・請求項1または4に記載の実装構造体の製造方法。」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に、「【請求項6】 第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を封止するために用いられるシートであって、 一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向させる第1層と、前記第1層に隣接する第2層とを備えており、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、 複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材である、シート。」と記載されているのを、 「【請求項6】 第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を封止するために用いられるシートであって、 一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向させる第1層と、前記第1層に隣接する第2層とを備えており、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記第1樹脂組成物は、前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、 前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、 複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材である、シート。」に訂正する(請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する) 。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に、「・・・・請求項7に記載のシート。」と記載されているのを、「・・請求項6に記載のシート。」に訂正する(請求項8を直接的に引用する請求項9も同様に訂正する) 。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に、「・・・・請求項6~8のいずれか一項に記載のシート。」と記載されているのを、「・・請求項6または8記載のシート。」に訂正する。 (9) 一群の請求項 訂正前の請求項1、3~5について、請求項3~5はそれぞれ同一カテゴリーで表現された請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、3~5に対応する訂正後の請求項1、3~5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、訂正前の請求項6~9について、請求項7~9はそれぞれ同一カテゴリーで表現された請求項6を引用しているものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項6~9に対応する訂正後の請求項6~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (10) 独立特許要件 本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1、3~9が特許異議申立の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1、3~9に係る訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項3に記載された「前記第1樹脂組成物および前記第2樹脂組成物の少なくとも一方は、前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たす、」との事項のうちの、択一的に記載された「前記第1樹脂組成物は、前記温度tにおいて、 損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、」との事項を、訂正前の請求項1に直列的に付加するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1により訂正された請求項1に係る発明は、訂正前の請求項3に係る発明に含まれるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1、2に伴い、実質的に特許請求の範囲の減縮を目的する訂正といえる。 また、訂正事項3により訂正された請求項4に係る発明は、訂正前の請求項4に係る発明に含まれるから、訂正事項3は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、「多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減」に該当するから、特許請求の範囲の減縮を目的するものである。 訂正事項4により訂正された請求項5に係る発明は、訂正前の請求項3又は4を引用する請求項5に係る発明に含まれるから、訂正事項4は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (5) 訂正事項5について 上記訂正事項1と同様に、訂正事項5は、訂正前の請求項6に、訂正前の請求項7に記載された事項のうち「前記第1樹脂組成物は、前記温度tにおいて、 損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、」との事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5により訂正された請求項6に係る発明は、訂正前の請求項7に係る発明に含まれるから、訂正事項5は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (6) 訂正事項6について 訂正事項6は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (7) 訂正事項7について 訂正事項7は、訂正事項5、6に伴い、実質的に特許請求の範囲の減縮を目的する訂正といえる。 また、訂正事項7により訂正された請求項8に係る発明は、訂正前の請求項8に係る発明に含まれるから、訂正事項7は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (8) 訂正事項8について 訂正事項8は、「多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減」に該当するから、特許請求の範囲の減縮を目的するものである。 また、訂正事項8により訂正された請求項9に係る発明は、訂正前の請求項7又は請求項8を引用する請求項9に係る発明に含まれるから、訂正事項8は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (9)小括 以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、〔6~9〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、3~9に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載のとおり。) 「【請求項1】 第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を準備する工程と、 熱硬化性のシートを準備する工程と、 前記シートを、前記第2回路部材に対向するように前記実装部材に配置する配置工程と、 前記シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに、前記シートを加熱することにより前記第2回路部材を封止し、前記シートを硬化させる封止工程と、を具備し、 前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、 さらに、複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材であり、 前記シートは、一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向する 第1層と、前記第1層に隣接する第2層と、を備え、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記第1樹脂組成物は、 前記温度tにおいて、 損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、 前記封止工程では、前記空間を維持しながら、複数の前記第2回路部材が封止される、実装構造体の製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記第1樹脂組成物および前記第2樹脂組成物がともに、前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、 前記第1樹脂組成物により構成された厚み100μmの層の前記温度tにおける伸び率は、10000%以上であり、 前記第1層の厚みは、50μm以下である、請求項1に記載の実装構造体の製造方法。 【請求項5】 前記基準部材からの前記第1の隣接部材の高さΔH1と、前記基準部材からの前記第2の隣接部材の高さΔH2とは、異なっている、請求項1または4に記載の実装構造体の製造方法。 【請求項6】 第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を封止するために用いられるシートであって、 一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向させる第1層と、前記第1層に隣接する第2層とを備えており、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記第1樹脂組成物は、前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、 前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、 複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材である、シート。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記第1樹脂組成物および前記第2樹脂組成物がともに、前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、前記温度tにおける貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、 前記第1樹脂組成物により構成された厚み100μmの層の前記温度tにおける伸び率は、1000%以上であり、 前記第1層の厚みは、50μm以下である、請求項6に記載のシート。 【請求項9】 前記第2層の全体が前記第1層に隣接する、請求項6または8に記載のシート。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和4年11月24日付けで通知した取消理由は、訂正前の請求項1、5、6、9に係る発明は下記(1)の点で、及び、訂正前の請求項3、4、7、8に係る発明は下記(2)の点で、本件特許の発明の詳細な説明(以下「本件発明の詳細な説明」という。)に記載したものではないというものである。 (1) 課題解決手段 訂正前の請求項1、5、6、9に係る発明は、「シート4Pは、内部空間Sに入り込まない程度の弾性と、離間距離の大小にかかわらず第2回路部材2間に入り込んで、伸展できる程度の粘性と、を有する。」(段落0013、0014)との、本件発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないから、本件発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。 (2) 拡張・一般化 本件発明の詳細な説明には、「第2回路部材間の離間距離D1が0.4mm、D2が0.1mm、金バンプの高さ20μm(段落0089)の実装部材について、段落0092~0097に実施例2(シートX2)、段落0098~0101に実施例3(シートX3)」が記載されているが、訂正前の請求項3、4、7、8に記載されたパラメータの数値範囲内であれば、課題を解決できると当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が認識できる程度に具体例又は説明が記載されているとはいえないから、出願時の技術常識に照らしても、訂正前の請求項3、4、7、8に係る発明の範囲まで、本件発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 2 当審の判断 (1) 課題解決手段 訂正事項1、及び訂正事項5により、「前記第1樹脂組成物は、 前記温度tにおいて、 損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、」との事項が、それぞれ訂正前の請求項1、及び請求項6に直列的に付加された。 そして、「損失正接tanδは、温度tにおける各層の貯蔵せん断弾性率G’と損失せん断弾性率(G”)との比:G”/G’である」(本件発明の詳細な説明段落0020)ことを踏まえると、訂正後の請求項1、6に係る発明の「シート」の第2回路部材に対応する第1層についての弾性と粘性は特定できる。 そうすると、訂正後の請求項1、6に係る発明には、本件発明の詳細な説明に記載された、「シート4Pは、内部空間Sに入り込まない程度の弾性と、離間距離の大小にかかわらず第2回路部材2間に入り込んで、伸展できる程度の粘性と、を有する。」(段落0013、0014)との、発明の課題を解決するための手段が反映されたことになるから、訂正後の請求項1、6に係る発明、及び訂正後の請求項1、6を引用する請求項4、5、8、9に係る発明は、上記1(1)の課題解決手段についての取消理由を有さない。 (2) 拡張・一般化 本件発明の詳細な説明の段落0003には「近年の電子機器の小型化に伴い、回路基板の小型化が求められており、回路基板に搭載される複数の回路部材(中空部材を含む)間の距離は小さくなっている。」との記載があり、このような事情を踏まえれば、本件発明の詳細な説明に開示された技術思想は、「第2回路部材間の離間距離D1が0.4mm、D2が0.1mm、金バンプの高さ20μm(段落0089)の実装部材について」行った実施例2(シートX2)、実施例3(シートX3)のみに限定されるべきとはいえない。 そして、「第2回路部材の内部空間Sに入り込むとすれば第1層が先に入り込み、離間距離の大小にかかわらず第2回路部材間に先に入り込むのも第1層であるから、第1層を構成する第1樹脂組成物の損失正接tanδと貯蔵せん断弾性率の範囲は、相対的にみて、封止性に大きな影響を与え」(令和5年1月26日提出の意見書6ページ5~9行)、本件発明の詳細な説明に、「(第1層) 第1層41Pは、一方の最外に配置され、封止工程において第2回路部材2に対向する。 温度tにおいて、第1層41Pを構成する第1樹脂組成物(以下、第1樹脂と称す)の損失正接tanδ1は、0.1以上、0.8以下であり、かつ、貯蔵せん断弾性率G1’は1×104Pa以上、1×107Pa以下である。」(段落0046)との記載があり、更に、当該数値範囲に含まれる実施例2(シートX2)、及び実施例3(シートX3)によって課題が解決されることが本件発明の詳細な説明に開示されていることを踏まえれば、当業者は、「前記第1樹脂組成物は、 前記温度tにおいて、 損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、」との事項により特定される訂正後の請求項1、6に係る発明が、発明の課題を解決できると認識し得る。 したがって、訂正後の請求項1、6に係る発明、及び訂正後の請求項1、6を引用する請求項4、5、8、9に係る発明は、上記1(2)の拡張・一般化についての取消理由を有さない。 第5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について 1 申立理由1(進歩性欠如) 申立人により申し立てられた、訂正前の請求項1、3~9に係る発明についての、下記甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如の申立理由について検討する。 甲第1号証:特開2017-108183号公報 甲第2号証:特開2015-221499号公報 甲第3号証:特開2011-210759号公報 (1) 甲第1号証の記載 甲第1号証には次の記載がある。(下線は引用箇所を示すために当審において付加した。) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 バンプにより基板と接続するチップを有する電子部品であって、室温において4W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂シートでチップを、該チップと基板との間を中空に保って、封止してなる中空構造電子部品。 【請求項2】 樹脂シートは、硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を配合してなるか、硬化性樹脂に光ラジカル重合物を配合してなるか、又は、硬化性樹脂に光ラジカル重合性化合物及び光ラジカル発生剤を配合してなる、ゲル状硬化性樹脂シートである請求項1記載の中空構造電子部品。 ・・・(中略)・・・ 【請求項8】 積層された複数枚の前記樹脂シートで封止してなる請求項1~7のいずれか記載の中空構造電子部品。 ・・・(中略)・・・ 【請求項10】 積層された複数枚の前記樹脂シートのうち、チップに接する樹脂シートの熱伝導率が他の前記樹脂シートの熱伝導率より高い請求項9記載の中空構造電子部品。 ・・・(中略)・・・ 【請求項14】 樹脂シートは、チップの側面と基板とを被覆するようにして中空封止部を形成するとともに、チップ上面の少なくとも一部が前記樹脂シートから露出するように、設けられてなり、さらに露出したチップ上面及び樹脂シートとチップとの接合界面を被覆するように、5W/m・K以上の熱伝導率を有する熱伝導層が形成されてなる請求項1~13記載の中空構造電子部品。 ・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、バンプにより基板と接続するチップを有する電子部品であって、放熱量の多いチップにも適用可能で、チップ下への樹脂侵入がなく、しかもチップ上の樹脂の平坦性をも両立できる高熱伝導性樹脂シートで封止してなる中空構造電子部品を提供することを目的とする。 ・・・(中略)・・・ 【0011】 上記熱伝導性樹脂シートとしては、例えば、硬化性樹脂シート、例えば熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を配合してなるゲル状硬化性樹脂シートが好ましい。上記熱伝導性樹脂シートとしては、また、熱硬化性樹脂と光ラジカル重合性化合物及び光ラジカル発生剤との混合物を用いてなるゲル状硬化性樹脂シートも好ましい。この場合、熱伝導性樹脂シートの熱硬化を行う前に、光照射し、光ラジカル重合性化合物の光ラジカル重合を行う。またゲル状硬化性樹脂シートとしては、予め光ラジカル重合させた光ラジカル重合物と熱硬化性樹脂との混合物も好ましく用いることができる。ゲル状硬化性樹脂シートは、軟化点(粘度が下がって外圧力により変形する温度)~硬化温度の範囲においてゲル状のものであり、具体的には、本明細書では、硬化温度、例えば40℃以上における動的粘弾性測定において、tanδが1以下であるものである。tanδが1以下であると、硬化加熱時に粘弾性固体の状態を示すため、チップ下への樹脂侵入を抑制でき、精度よく中空封止をすることができる。一方、tanδが1より大きい場合は、加熱時に流動するため粘弾性固体の状態を保つことができない。tanδが1以下であるようにするためには、通常、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を、後述するような手法で配合すればよい。 ・・・(中略)・・・ 【0040】 このようにして得られるゲル状硬化性樹脂シートは、通常、厚さが50~1000μmであって、厚さが250μm程度あるSAWチップ等の保護層をヒートシール法で形成するのに適するものであり、また、低ガラス転移温度、低線膨張率であるため、硬化物を低応力化(低ソリ化)することができるものであり、さらに、原料を高純度化したものである場合には、さらに不純物イオンが少なく、チップ表面の汚染を防ぐことができるものであり、さらに、ゲル状硬化性樹脂シートの弾性率(25℃)が103~109Pa、さらには104~108Paで、硬化時の溶融粘度が10~105Pa・s、さらには103~104Pa・sであるため、ヒートプレスすることにより、封止層形成前のデバイスにSAW電極面と配線パターンが形成された面とがバンプの高さのぶん隔てられた部分が中空封止部を形成するように封止層を形成することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0047】 本発明の実施形態を具体的に例示して説明すると、基板にチップをフリップチップ接合したMAP状基板において、図1の(1)に示すように、チップ上面及び側面と基板とを連続的に熱伝導性樹脂シートで覆うことで、中空構造を保つように封止することができる。尚、チップ上面及び側面の全部が熱伝導性樹脂シートで覆われている必要はなく、その一部が露出していても良い。例えば、図2の(2)に示すように、複数のチップを中空封止する場合は、チップの側面の一部が熱伝導性樹脂シートで覆われていない構造をとることもできる(チップの配置によっては、上面のみが熱伝導性樹脂シートで覆われ、側面全部が露出する構造を有することもある。)。また、図2の(3)に示すように、熱伝導性樹脂シートがチップ側面と基板を覆って中空構造を形成して封止し、チップ上面が露出している構造をとることもできる。これは例えば、図1の(1)の態様で中空封止を行った後、表面を研磨し、チップの上面を露出させることで作成できる。また例えば、ヒートプレスにより、チップの厚さ+バンプの高さの封止膜を形成し、チップ上面と封止膜上面が平坦に連続するような構造とすることでも達成できる。また図2の(3)の態様において、露出したチップ上面、熱伝導性樹脂シート表面及びこれらの接合界面を覆うように、後述の熱伝導層を形成することができる。 【0048】 本発明の中空構造電子部品においては、一枚の上記熱伝導性樹脂シートで封止してもよく、積層された複数枚の上記熱伝導性樹脂シートを用いて封止してもよい。複数枚の樹脂シートは、予め積層したものを用いて封止してもよく、又は一枚づつ順次封止して積層してもよい。また積層構造は、図2の(4)の態様のように連続的に積層構造が形成されていてもよいし、図2の(5)の態様のように断続的に積層構造が形成されていても良い。 【0049】 積層された複数枚の樹脂シートは、熱伝導率が互いに異なる少なくとも2枚の上記樹脂シートを含むものであることが好ましい。例えば、熱伝導率が互いに異なる2枚のシート、又は2種類の熱伝導率を持つ3枚若しくはそれ以上のシート、3種類の熱伝導率を持つ3枚のシート、又は3種類の熱伝導率を持つ4枚若しくはそれ以上のシート、であってよい。熱伝導率を高くするために熱伝導性フィラーの配合量を多くするとチップ上の平坦性が確保しづらくなるので、熱伝導性フィラーの配合量の少ないシートを封止膜の表面に用いることで、チップ上の平坦性を確保し、しかもチップに接するシートの高熱伝導率を確保することができる。この場合は例えば、積層された複数枚の上記樹脂シートのうち、チップに接する樹脂シートの熱伝導率が積層された他の上記樹脂シートの熱伝導率より高いもの、例えば、少なくとも5W/m・Kの熱伝導率を有するものであるようにすることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0056】 実施例1、実施例2、比較例1 以下の配合(重量部)により各成分を2軸混合機により混合して、それぞれ硬化性樹脂シート用組成物1~3を得た。サーモビューアの温度測定精度向上のためカーボンブラックにより黒色化を行った。尚、硬化性樹脂シート用組成物について動的粘弾性測定を行ったところ、tanδ(40℃)は、実施例1は0.80、実施例2は0.79、比較例1は0.64であった。 ・・・(中略)・・・ 【0060】 テストチップ(発熱測定用TEGチップ)をセラミック基板にフリップチップ接合し(バンプ+チップの厚みは450μm)、これに、各硬化性樹脂シート用組成物をロールコータにより厚さ500μmに塗布しシート化した樹脂シートを、0.1MPa、120℃、5分の条件でヒートプレスし、550μmの厚み(基板から封止膜上面までの厚み)の封止層を有する中空構造電子部品を得た。得られた電子部品について、その表面温度を測定した。測定方法は以下のとおり。 発熱測定用TEGチップにチップ発熱が基準電子部品表面において約80℃になるように通電を行い、これを基準として、実施例の電子部品温度を表面からサーモビューアを用いて測定した。基準に対する温度差を結果を表1に示した。 【0061】 また、各硬化性樹脂シート用組成物をロールコータにより厚さ500μmにシート化した樹脂シートの熱伝導率を室温(25℃)で測定した。測定方法は以下のとおり。結果を表1に示した。測定方法 シートを積層して150℃で10分プレスした後、150℃で3時間後硬化し、研磨することで10mm角1mm厚の試験片を作成した。測定装置はNETZSCH製 LFA447 Nano Flash(登録商標)を用いた。(ランプ電圧270V、パルス幅0.18ms) 【0062】 【表1】 [図:0001400471000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001400471000002.jpg] 」 (2) 引用発明 ア 請求項1、段落0047の記載、及び図2(2)によると甲第1号証には「バンプにより基板と接続する複数のチップを有する電子部品について、チップを、該チップと基板との間を中空に保って、封止する、室温において4W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂シート」に係る発明が記載されているといえる。 イ 上記ア、及び上記(1)の記載によると、甲第1号証には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「バンプにより基板と接続する複数のチップを有する電子部品について、チップを、該チップと基板との間を中空に保って、封止する、室温において4W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂シート(上記ア)であって、 樹脂シートは、軟化点(粘度が下がって外圧力により変形する温度)~硬化温度の範囲においてゲル状のものであり、硬化温度、例えば40℃以上における動的粘弾性測定において、tanδが1以下であるものである、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を配合してなるゲル状硬化性樹脂シートが好ましく(請求項2、段落0011)、 積層された複数枚の前記樹脂シートのうち、チップに接する樹脂シートの熱伝導率が他の前記樹脂シートの熱伝導率より高く(請求項8、10)、 硬化性樹脂シート用組成物について動的粘弾性であるtanδ(40℃)は、実施例1が0.80、実施例2が0.79であり(段落0056)、 各硬化性樹脂シート用組成物をシート化した樹脂シートの室温(25℃)で測定した伝導率は、実施例1が4W/mK、実施例2が広がり方向8W/mK、厚み方向4W/mKである(段落0061、表1) 樹脂シート。」 (3) 対比 訂正後の請求項6に係る発明(以下「本件発明」という。)と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「基板」、「バンプにより基板と接続する複数のチップ」、「バンプにより基板と接続する複数のチップを有する電子部品」は、それぞれ本件発明の「第1回路部材」、「前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材」、「第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材」に相当する。 したがって、「バンプにより基板と接続する複数のチップを有する電子部品について、チップを、該チップと基板との間を中空に保って、封止する、室温において4W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂シート」である引用発明は、「第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を封止するために用いられるシート」といえる点で本件発明と共通する。 イ チップに接する樹脂シートを含む、複数枚の樹脂シートが積層され、樹脂シートは、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を配合してなるゲル状硬化性樹脂シートが好ましい引用発明は、「一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向させる第1層と、前記第1層に隣接する第2層とを備えており、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、」といえる点で本件発明と一致する。 ウ 「バンプにより基板と接続する複数のチップを有する電子部品について、チップを、該チップと基板との間を中空に保って、封止する」引用発明は、「複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材である」といえる点で本件発明と一致する。 エ 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件発明と引用発明とは次の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 「第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備える実装部材を封止するために用いられるシートであって、 一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向させる第1層と、前記第1層に隣接する第2層とを備えており、 前記第1層は、熱硬化性樹脂を含む第1樹脂組成物により構成され、 前記第2層は、熱硬化性樹脂を含む第2樹脂組成物により構成され、 複数の前記第2回路部材の少なくとも一つは、前記第1回路部材との間に形成される空間を備える中空部材である、シート。」 (イ) 相違点1 本件発明が、シートが備える「一方の最外に配置され、前記第2回路部材に対向させる第1層と、前記第1層に隣接する第2層」をそれぞれ構成する「第1樹脂組成物」及び「第2樹脂組成物」について、「前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける損失正接tanδは、前記第2樹脂組成物の前記温度tにおける損失正接tanδよりも小さく、 前記第1樹脂組成物は、前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下、および、貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たし、」(以下「相違点1に係る本件発明の構成」という。)と特定するのに対し、引用発明は、本件発明のシートの第1層に対応する、チップに接する樹脂シートの熱伝導率が他の前記樹脂シートの熱伝導率より高い実施例2の硬化性樹脂シート用組成物の硬化温度におけるtanδ(40℃)が0.79であるのに対し、実施例1の硬化性樹脂シート用組成物のtanδ(40℃)が0.80である点。 (ウ) 相違点2 本件発明が「前記第2回路部材は、基準部材と、前記基準部材にそれぞれ隣接する第1の隣接部材および第2の隣接部材と、を備え、 前記基準部材と前記第1の隣接部材との間の離間距離D1と、前記基準部材と前記第2の隣接部材との間の離間距離D2とは、異なっており、」と特定されるのに対し、引用発明においてこのような特定が無い点。 (4) 相違点の検討 その温度依存性により、樹脂組成物の「封止されるときの温度t」におけるtanδは、「硬化温度」におけるtanδとは異なり、また、樹脂組成物の組成によって、tanδの温度依存性自体も異なる。 そして、引用発明の、積層された複数枚の樹脂シートのうち、チップに接し、熱伝導率がより高い方の実施例2の硬化性樹脂シート用組成物のtanδ(40℃)が0.79であるのに対し、実施例1の硬化性樹脂シート用組成物のtanδ(40℃)が0.80であるとしても、「前記第1樹脂組成物の前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおける」「損失正接tanδ」及び「貯蔵せん断弾性率」の値を、相違点1に係る本件発明の構成の範囲とすることについて、甲第1号証及び他の証拠に何ら示唆されていない。 そうすると、相違点2を検討するまでもなく、本件発明は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、訂正後の請求項1に係る発明についても同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、訂正後の請求項1、6、及び訂正後の請求項1、6を引用する請求項4、5、8、9に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、申立理由1は理由が無い。 (5) 申立人の主張について 申立人は、訂正事項1、及び訂正事項5により、請求項1、6に直列的に付加される、訂正前の請求項3、7に係る構成について、特許異議申立書27ページ15行~28ページ3行、30ページ1~3行で、甲第1号証に記載された発明との一致点である旨の主張をするが、上記のとおり、当該構成は相違点1に係る本件発明の構成の一部であって、相違点であり、また、容易想到ではない。 申立人は、「なお、甲1発明では、40℃におけるtanδの値が開示されているが、一般的に、tanδは、測定温度によって測定値(絶対値)が変わることはあっても、大小関係が変わることはない。」(特許異議申立書27ページ3~5行)とも主張する。 しかしながら、上記のとおり、熱硬化性樹脂の組成によって、その温度依存性自体も異なるから、申立人の主張は採用できない。 2 申立理由2(実施可能要件違反、特許異議申立書31ページ1行~32ページ22行) 申立人は下記(1)及び(2)の点について、本件発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張する。 (1) 損失正接tanδについて 「当業者であっても、本件特許明細書をもとに、本件特許発明1で規定するtanδを得ることは困難である。・・・また、本件特許発明3、7の要件「N 前記第1樹脂組成物および前記第2樹脂組成物の少なくとも一方は、前記温度tにおいて、損失正接tanδが0.1以上、0.8以下である」、及び本件特許発明4、8の要件「P 前記第1樹脂組成物および前記第2樹脂組成物がともに前記温度tにおいて、損失正接tanδが、0.1以上、0.8以下である」ことについても同様である。」(特許異議申立書31ページ24行~32ページ4行) (2) 貯蔵せん断弾性率について 「当業者であっても、本件特許明細書をもとに、本件特許発明3、4、7、8で規定する貯蔵せん断弾性率を得ることは困難である。」(特許異議申立書32ページ16~18行) (3) 当審の判断 本件発明の詳細な説明には、「流動制御樹脂の粘弾性(つまり、損失正接tanδ)は、例えば、その原料によって調整することができる。例えば、シート化剤である熱可塑性樹脂の量や種類を変更することにより、損失正接tanδを変化させることができる。」(段落0040)と記載されている。 そして、本件発明の詳細な説明の段落0092~0093、及び段落0098~0100には、それぞれ実施例2、及び実施例3における熱可塑性樹脂の量と種類についての記載があり、実施例2、及び実施例3において得られる第1樹脂組成物、及び第2樹脂組成物は、いずれも相違点1に係る本件発明の構成で規定する損失正接tanδ、及び貯蔵せん断弾性率を充足する。 そうすると、本件発明の詳細な説明の記載が、当業者が相違点1に係る本件発明の構成について、実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。 したがって、申立理由2は理由がない。 3 申立理由3(サポート要件違反、特許異議申立書32ページ23行~34ページ9行) 申立人は下記(1)及び(2)の点について、請求項1、3~9に係る発明は、本件発明の詳細な説明に記載の範囲を超えるものであると主張する。 (1) 損失正接tanδについて 「本件特許明細書の発明の詳細な説明には、第1及び第2樹脂組成物として、「エボキシ樹脂、フェノールノボラック、アクリル樹脂、溶融球状シリカ、イミダゾール」の5成分系を含有するものしか記載されておらず、本件特許発明1における第1及び第2樹脂組成物をサポートしているとはいえない。」(異議申立書33ページ12~16行) (2) 貯蔵せん断弾性率について 「本件特許発明3、7の要件「O 貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たす」、及び本件特許発明4、8の要件「Q 貯蔵せん断弾性率が、1×104Pa以上、1×107Pa以下を満たす」ことについて、本件特許発明1においては、第1層と第2層の組成について熱硬化性樹脂を含むことを規定している点を除いて何らの限定もされていない。 また、本件特許明細書の段落[0040]の記載からフェノキシ樹脂が貯蔵せん断弾性率の低下の一因を担うことは理解できるものの、上記(i)で説明した通り、実施例として「エボキシ樹脂、フェノールノボラック、アクリル樹脂、溶融球状シリカ、イミダゾール」の5つの成分の配合量を変更したものしか開示されておらず、またフェノキシ樹脂を含むことの適/不適が不明であるため、熱硬化性樹脂を含むことのみを特定した本件特許発明1の範囲の全体まで、明細書にサポートされているとはいえない。」(異議申立書33ページ20行~34ページ4行) (3) 当審の判断 本件発明の詳細な説明の段落0092~0097、及び段落0098~0101には、得られる第1樹脂組成物、及び第2樹脂組成物が、いずれも相違点1に係る本件発明の構成で規定する損失正接tanδ、及び貯蔵せん断弾性率を充足する実施例2、及び実施例3が記載されている。 また、本件発明の詳細な説明に開示された技術思想が、実施例2(シートX2)、実施例3(シートX3)のみに限定されるべきではなく、当業者は、訂正後の請求項1、4、5、6、8、9に係る発明が、発明の課題を解決できると認識し得ることは上記「第4の2(2)」のとおりである。 したがって、申立理由3は理由がない。 4 小括 以上のとおり、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)の進歩性欠如、特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)の実施可能要件、及び特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)のサポート要件についての特許異議申立人の主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4~6、8、9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、4~6、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件請求項3、7に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、本件請求項3、7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700902

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    共通の審決分類: 121・H01L、536・H01L、537・H01L
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    共通の審決分類: 121・H01L、536・H01L、537・H01L
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