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特許異議申立

2022-700793

粒子径制御によるプレガバリンの化学的安定性の改善方法

審判番号
2022-700793
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-561105
登録番号
7008084
請求日
2022年08月10日
審決日
2022年11月08日
公報発行日
2022年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大原薬品工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
  • 【異議申立人】真角 侑子
審判長/審判官
  • 審判長 原田 隆興
  • 審判官 藤原 浩子
  • 審判官 鳥居 敬司
分類
P1651.161-Y (A61K) / P1651.534-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7008084号発明「粒子径制御によるプレガバリンの化学的安定性の改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7008084号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7008084号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願(特願2019-561105号)は、平成30年12月18日(優先権主張 平成29年12月19日 平成30年7月26日)を国際出願日とする出願であって、令和4年1月12日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月10日に特許掲載公報が発行された。 その後、請求項1~11に係る特許について、令和4年8月10日に特許異議申立人 真角侑子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~11に係る発明は、それぞれ、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」などといい、まとめて「本件各発明」ということがある。)。 「【請求項1】 レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)が3.0~45.0μm、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が9.0~220.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が30.0~550.0μmである粒子径分布を有することを特徴とするプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を用いる、固形製剤の製造方法であって、 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物であって、当該造粒物の全重量に対して70.0重量%以上のプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含有するものを製造する工程を含む製造方法。 【請求項2】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩が、レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)が5.0~35.0μm、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が15.0~150.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が50.0~400.0μmである粒子径分布を有する、請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 請求項1に記載の粒子径分布を有するプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を乾式造粒する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項4】 請求項1に記載の粒子径分布を有するプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を低融点油脂と共に溶融造粒する工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項5】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物であって、当該造粒物の全重量に対して90.0~99.0重量%のプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含有するものを製造する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項6】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物、賦形剤及び滑沢剤を共に混合して得られた混合物を打錠する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項7】 レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)が3.0~45.0μm、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が9.0~220.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が30.0~550.0μmである粒子径分布を有することを特徴とするプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を配合してなり、 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物を含有し、当該造粒物の全重量に対するプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の含有量が70.0重量%以上である固形製剤。 【請求項8】 レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が15.0~220.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が50.0~550.0μmである粒子径分布を有することを特徴とするプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩と低融点油脂とを含む造粒物を配合してなる請求項7に記載の固形製剤。 【請求項9】 低融点油脂が脂肪酸エステルである請求項8に記載の固形製剤。 【請求項10】 造粒物中の、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の配合量に対する低融点油脂の配合量(低融点油脂の配合量/プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の配合量)が0.010~0.18である請求項8又は9に記載の固形製剤。 【請求項11】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩が、レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)が5.0~35.0μm、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が15.0~150.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が50.0~400.0μmである粒子径分布を有する、請求項7~10のいずれか一項に記載の固形製剤。」 以下においては、特許請求の範囲又は本件明細書の記載を摘記する場合を除き、レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)、体積基準測定における累積90%粒子径(d90)を、それぞれ、単に「d10」、「d50」、「d90」と表記し、また、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を、まとめて「プレガバリン」と表記する。 第3 申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書において、以下の申立理由1~3を主張し、甲第1号証~甲第10号証(以下「甲1」~「甲10」という。)を提出した。 (1)申立理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~11の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、請求項1~11に係る発明について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(甲1を先願とする拡大先願) 請求項1~11に係る発明は、本件特許に係る特許出願の日前の他の特許出願であって、本件特許に係る特許出願後に、出願公開がされた甲1に係る特許出願(特願2018-208566号)の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る発明の発明者が上記の他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る特許出願の時において、その出願人が上記の他の特許出願の出願人と同一でもないから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 <甲号証一覧> 甲1:特開2019-85411号公報(特願2018-208566号) 甲1の2:甲1の当初出願書類 甲2:特許第7008084号公報(本件特許) 甲2の2:甲2の平成29年12月19日付けの基礎出願書類 甲2の3:甲2の平成30年7月26日付けの基礎出願書類 甲3:株式会社堀場製作所のスライド「JASIS 2013 新技術説明会」、2013年、<https://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Scientific/Exhibitions/2013/JASIS2013/NewTechnologyDocument/JASIS2013_PSA_Basis.pdf> 甲4:国際公開第2017/064192号 甲5:中国特許出願公開第103494796号明細書 甲6:International Journal of Pharmaceutics,2010,Vol.383,p.70-80 甲7:吉村壽次編集代表,「化学辞典 第2版」,森北出版株式会社,2009年12月16日,p.782の「造粒」の項 甲8:日本粉体工業技術協会編,「造粒ハンドブック」,株式会社オーム社,平成3年3月10日,「1章 総論」の「1・1 まえがき」 甲9:小波盛佳ら監修,「粉体・ナノ粒子の創製と製造・処理技術」,株式会社テクノシステム,2014年11月13日,目次のp.1及び本文p.3 甲10:Pharmaceutical Manufacturing Handbook:Production and Processes,First published:28 August 2007,p.896-905,<https://onlinelibrary.wiley.com/doi/book/10.1002/9780470259818> 甲11:粉体工学会編,「粉体工学用語辞典 第2版」,日刊工業新聞社,2000年3月30日,p.363の「溶融造粒」の項 甲12:薬科学大辞典編集委員会編,「廣川 薬科学大辞典〔第4版〕-常用版-」,株式会社廣川書店,平成19年4月25日,p.974の「造粒」の項 第4 当審の判断 1 本件明細書の記載事項 本件明細書には、以下の記載がある。 (1)【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、プレガバリンの化学的な安定性が改善された固形製剤を製造するための技術的手段を提供することを目的とするものである。 (2)【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、プレガバリンの粒子径分布等(粒子径分布又は体積平均径)を所定の範囲に制御した場合には、プレガバリンの化学的な安定性等が予想外に顕著に優れていることを見出した。本発明者はその知見に基づいて更に鋭意検討を重ね、下記の本発明を完成するに至った。 (3)【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、プレガバリンの化学的な安定性等がより改善された固形製剤及び其の製造方法を提供することができる。 (4)【発明を実施するための形態】 【0011】 本発明の一実施形態に係る固形製剤は、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する。以下に、該固形製剤及び其の製造方法について詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。尚、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。 【0012】 <固形製剤の形態> 本実施形態に係る固形製剤の剤形は、医療現場に提供される上で、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤等であることが好ましく、錠剤がより好ましく、素錠(フィルムコーティング層や糖衣層等で覆われていない、打錠等により成形したままの錠剤を指す。以下同じ。)が更に好ましい。 … 【0015】 <原薬> 本実施形態に係る固形製剤は、プレガバリンの化学的な安定性等の観点から、粒子径分布等を所定の範囲に制御したプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を原薬として使用することを特徴とする。 【0016】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)は、3.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましく、6.0μm以上が更に好ましく、7.0μm以上が特に好ましい。また、錠剤の製造上等の実用的な面からは、50.0μm以下が好ましく、45.0μm以下がより好ましく、35.0μm以下が更に好ましく、25.0μm以下が特に好ましい。 【0017】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)は、9.0μm以上であり、15.0μm以上が好ましく、20.0μm以上がより好ましく、30.0μm以上が更に好ましく、40.0μm以上が特に好ましい。また、錠剤の製造上等の実用的な面からは、250.0μm以下が好ましく、220.0μm以下がより好ましく、150.0μm以下が更に好ましく、100.0μm以下が特に好ましい。 【0018】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の、体積基準測定における累積90%粒子径(d90)は、30.0μm以上であり、50.0μm以上が好ましく、80.0μm以上がより好ましく、110.0μm以上が更に好ましく、140.0μm以上が特に好ましい。また、錠剤の製造上等の実用的な面からは、600.0μm以下が好ましく、550.0μm以下がより好ましく、400.0μm以下が更に好ましく、300.0μm以下が特に好ましい。 【0019】 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の体積平均径は、13.0μm以上が好ましく、22.0μm以上がより好ましく、45.0μm以上が更に好ましく、57.0μm以上が特に好ましい。また、錠剤の製造上等の実用的な面からは、400.0μm以下が好ましく、350.0μm以下がより好ましく、290.0μm以下が更に好ましく、200.0μm以下が特に好ましい。 【0020】 本実施形態において使用されるプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩は、粒子径分布又は体積平均径が下記比較例1のものより大きいことが好ましく、上記の粒子径分布又は体積平均径を有することがより好ましく、上記の粒子径分布及び体積平均径を共に有することが更に好ましい。尚、本実施形態において、上記粒子径分布及び体積平均径は、レーザー回析・散乱法によって測定することが可能であり、其の詳細な測定条件は、下記実施例に記載される乾式測定のものに従うことが可能である。 【0021】 本実施形態に係る固形製剤は、原薬としてプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含有するものであり、他の原薬を含まない単剤であることが好ましい。 … 【0027】 <賦形剤> 賦形剤として、具体的には、乳糖水和物、結晶セルロース、無水乳糖、D-マンニトール、イソマルト、エリスリトール、デンプン(トウモロコシデンプン等)、シクロデキストリン等から選ばれ、好ましくはD-マンニトール及び/又はデンプンである。これらの賦形剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 … 【0033】 <滑沢剤> 滑沢剤として、具体的には、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク等を挙げる事ができ、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。これらの滑沢剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 … 【0035】 <低融点油脂> 本実施形態において使用される低融点油脂は、融点が20~90℃のものが好ましく、30~85℃のものがより好ましく、40~80℃のものが更に好ましく、45~69℃のものが特に好ましい。低融点油脂は高融点油脂と比べて有効成分と均一に配合可能なものであり、その結果、有効成分であるプレガバリンの分解等が抑制されたより安定な固形製剤を得ることができる。低融点油脂の具体例としては、例えば、高級脂肪酸(炭素数が例えば10~40、好ましくは12~26)及び其の塩、高級アルコール(炭素数が例えば10~40、好ましくは12~26)、炭化水素類(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、脂肪酸エステル、硬化油(硬化ヒマシ油、硬化大豆油、硬化ナタネ油、硬化綿実油等)、アルキレンオキサイドの重合体(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等が挙げられ、脂肪酸エステルが好ましく、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。これらの低融点油脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0036】 本明細書において「多価アルコールの脂肪酸エステル」とは、多価アルコールの有する水酸基の一部又は全部が脂肪酸(好ましくは炭素数が12~26の脂肪酸)でエステル化された化合物を意味する。…「多価アルコールの脂肪酸エステル」の具体例としては、例えば、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、グリセリン脂肪酸エステルが好ましく、モノ脂肪酸(C12-26)グリセリルがより好ましく、モノステアリン酸グリセリンが特に好ましい。これらの多価アルコールの脂肪酸エステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 … 【0038】 <造粒物> 本実施形態に係る固形製剤は、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物を含有するものであることが好ましい。当該造粒物は、固形製剤(好ましくは素錠)の全重量に対して、好ましくは10.0~90.0重量%、より好ましくは20.0~80.0重量%、更に好ましくは30.0~70.0重量%、特に好ましくは40.0~60.0重量%の範囲で当該固形製剤中に含有される。 【0039】 また、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物は、当該造粒物の全重量に対して、好ましくは70.0~99.0重量%、より好ましくは75.0~98.0重量%、更に好ましくは80.0~97.0重量%、更に好ましくは85.0~96.0重量%、特に好ましくは90.0~95.0重量%のプレガバリンを含有するように得られる。 【0040】 <造粒方法> 本実施形態に係る固形製剤の製造においては、上記の粒子径分布等を有するプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を用いて造粒がなされることが好ましい。本実施形態における造粒方法として乾式造粒法(破砕造粒法、溶融造粒法等)又は湿式造粒法(流動層造粒法、攪拌造粒法、押出し造粒法等)が挙げられる。なかでも乾式造粒法が好適に用いられ、溶融造粒法がより好ましい。 【0041】 前記の造粒方法によって、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩(更に任意で添加剤)と低融点物質とを均一に配合し、造粒物(好ましくは乾式造粒物、より好ましくは溶融造粒物)を形成することが好ましい態様として挙げられる。粒子径分布等を前記の範囲に制御したプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩と低融点油脂とを含む造粒物を形成することにより、プレガバリンの化学的安定性がより改善された固形製剤(好ましくは錠剤)を製造することができる(実施例1及び実施例3~5参照)。 【0042】 乾式造粒法は、湿式造粒法とは異なり、水やアルコール等の溶液を加えずに造粒することを特徴とするものである。溶融造粒法は、撹拌造粒機や流動層造粒機等に薬物(プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩)及び低融点油脂を投入(併せて他の添加剤を投入してもよい。)し、これを混合しながら加温することによって低融点油脂を溶解させ、最後に冷却することで造粒物を形成するものである。溶融造粒時には、低融点油脂の融点以上の温度(通常40~100℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃、更に好ましくは70~80℃)まで加温される。 … 【0044】 造粒物中の、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の配合量に対する低融点油脂の配合量(低融点油脂の配合量/プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の配合量)は、0.010以上が好ましく、0.020以上がより好ましく、0.030以上が更に好ましく、0.040以上が特に好ましい。また、造粒物中の、プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の配合量に対する低融点油脂の配合量(低融点油脂の配合量/プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の配合量)は、0.40以下が好ましく、0.20以下がより好ましく、0.18以下が更に好ましく、0.15以上が更に好ましく、0.12以下が特に好ましい。 【0045】 <錠剤の製造方法> 本実施形態に係る錠剤は、一般的な製造方法によって作成することが可能であり、例えば以下の製造方法によって作成することが可能である。 【0046】 まず、原薬及び低融点油脂等を攪拌しながら加温することで溶融造粒を行い、造粒物を製造する。そして、得られた造粒物を整粒した後に、賦形剤及び滑沢剤等と混合して打錠機によって圧縮成形して錠剤(素錠)とする。素錠を打錠して製造する際の打圧は、好ましくは600~1400kgfの範囲内の任意の数値から選ばれる。更に所望によって、得られた素錠にフィルムコーティング層を施してもよい。 【0047】 また、包装用シートとアルミ箔等で錠剤を挟んで覆い、加熱シールすることで、本実施形態に係る錠剤を含むPTPシート製品を得ることができる。前記包装用シートに使用される具体的な素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。尚、湿度に対する本発明の錠剤の安定性を改善するために、乾燥機能を有した素材を用いてPTPシート製品を製造したり、PTPシート製品をアルミピロー包装したり、乾燥剤を錠剤と共に瓶に封入する等の周知の方法を使用することが可能である。 (5)【実施例】 【0048】 以下に実施例等により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。以下の実施例、比較例に記載のプレガバリンの粒子径はレーザー回析・散乱法によって測定した。測定は乾式測定にて、試料屈折率:1.60の条件で行った、 【0049】 (実施例1) 粒子径分布:d10=8.0μm/d50=44.8μm/d90=153μm;体積平均径:63.6μmであるプレガバリンからなる粉末。 【0050】 (実施例2) 粒子径分布:d10=43.2μm/d50=212μm/d90=534μm;体積平均径:259μmであるプレガバリンからなる粉末。 【0051】 (比較例1) 粒子径分布:d10=2.4μm/d50=7.5μm/d90=25.2μm;体積平均径:11.1μmであるプレガバリンからなる粉末。 【0052】 (実施例3) 粒子径分布:d10=8.0μm、d50=44.8μm、d90=153μm;体積平均径:63.6μmであるプレガバリン250.0g、及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン(株)製のリケマールS-100P、融点:63~68℃)12.5gの粉末を撹拌造粒機(VG01型/(株)パウレック製)に投入し、温度70℃になるまで加温してモノステアリン酸グリセリンを融解させ、当該温度を維持しながら5分間攪拌(ブレード回転数:290回転/分、クロススクリュー回転数:3500回転/分)させ、その後温度40℃になるまで冷却し、溶融造粒物を得た。得られた溶融造粒物は24メッシュの篩で整粒した。 【0053】 得られた整粒物23.6g、PEARLITOL(登録商標)Flash(ロケットジャパン(株)製)32.8gをポリエチレン製の袋にて混合した後、更にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業(株)製)0.6gを加えて混合して混合物を得た。この混合物をロータリー式打錠機(Vera5/(株)菊水製作所製)を用いて打圧1000kgfで打錠し、1錠質量が約190mg、直径8.0mm、厚さ3.5mmの錠剤(素錠、円形・角丸平錠)を得た。 *PEARLITOL(登録商標)Flashは、D-マンニトールとトウモロコシデンプンから成る添加剤である。 【0054】 (実施例4) 「モノステアリン酸グリセリン12.5g」を「モノステアリン酸グリセリン20.0g」に、「得られた整粒物23.6g」を「得られた整粒物24.3g」に、「1錠質量が約190mg」を「1錠質量が約192mg」に代替したこと以外は実施例3と同様にして錠剤を得た。 【0055】 (実施例5) 「モノステアリン酸グリセリン12.5g」を「モノステアリン酸グリセリン25.0g」に、「得られた整粒物23.6g」を「得られた整粒物24.8g」に、「1錠質量が約190mg」を「1錠質量が約194mg」に代替したこと以外は実施例3と同様にして錠剤を得た。 【0056】 実施例3~5で得られる錠剤の処方を下記の表1に一覧して示す(数値単位はmg)。表1中の数値は小数点以下を四捨五入した。 【0057】 【表1】 [図:0001392094000001.jpg] 【0058】 (試験例1:異なる粒子径をもつプレガバリンに係る安定性試験) 実施例1、2及び比較例1の各プレガバリン粉末の、製造直後及び温度50℃相対湿度75%の開放条件下で17日間保存した後の、プレガバリン由来の類縁体(ラクタム体)の生成量{プレガバリン及び総類縁体の全体量に対する割合(%)}を、高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって測定した。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後の総類縁体の増加量(%)(差分)を求めた結果(小数点第4位以下は四捨五入した。)を下記の表2に示す。 【0059】 【表2】 [図:0001392094000002.jpg] 【0060】 (試験例2:錠剤化されたプレガバリンに係る安定性試験) 実施例3~5の各錠剤の、製造直後及び温度50℃相対湿度75%の開放条件下で7日間保存した後の、プレガバリン由来の類縁体(ラクタム体)の生成量{プレガバリン及び総類縁体の全体量に対する割合(%)}を、高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって測定した。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後の総類縁体の増加量(%)(差分)を求めた結果(小数点第4位以下は四捨五入した。)を下記の表3に示す。 【0061】 【表3】 [図:0001392094000003.jpg] 【0062】 表2より、粒子径(特にd50及びd90又は体積平均径)が相対的により小さい比較例1のプレガバリン粉末よりも、当該粒子径が相対的により大きい実施例1、2のプレガバリン粉末の方が、過酷条件下で保存後のプレガバリン由来の類縁体の生成量が顕著に低減されることが明らかになった。よって本発明においては、比較例1のものよりも大きい粒子径を有するプレガバリンを用いることが特に望まれることが新たに示唆された。 【0063】 また表3より、当該粒子径が相対的に大きいプレガバリンを用いて錠剤を製造した場合においても、過酷条件下で保存後のプレガバリン由来の類縁体の生成量は十分に低いことが確かめられた。よって本発明の、粒子径分布等を所定の範囲に制御したプレガバリン又は其れを用いる製剤の製造方法は、プレガバリンの化学的安定性が顕著に改善するものであることが新たに示唆された。 2 申立理由1(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件各発明の課題について 本件明細書【0007】の記載によれば、本件各発明の課題は、「プレガバリンの化学的な安定性が改善された固形製剤を製造するための技術的手段を提供すること」であると認められる。 (3)本件発明1について ア 本件発明1は、「d10が3.0~45.0μm、d50が9.0~220.0μm、d90が30.0~550.0μm」である粒子径分布を有することを特徴とするプレガバリンを用いる、固形製剤の製造方法であって、造粒物の全重量に対して70.0重量%以上のプレガバリンを含有する造粒物を製造する工程を含む、製造方法の発明である。 イ 本件明細書には、課題を解決するための手段の欄に、プレガバリンの粒子径分布等(粒子径分布又は体積平均径)を所定の範囲に制御した場合には、プレガバリンの化学的な安定性等が予想外に顕著に優れることを見いだしたことが記載され(【0008】)、実施例1(d10:8.0μm、d50:44.8μm、d90:153μm、体積平均径63.6μm)、実施例2(d10:43.2μm、d50:212μm、d90:534μm、体積平均径259μm)、比較例1(d10:2.4μm、d50:7.5μm、d90:25.2μm、体積平均径11.1μm)の、それぞれの粒子径分布及び体積平均径のプレガバリン粉末について、製造直後及び温度50℃相対湿度75%の開放条件下で17日間保存した後の、プレガバリン由来の類縁体(ラクタム体)の生成量を測定したところ、粒子径(特にd50及びd90又は体積平均径)が相対的により小さく、本件発明1の粒子径分布を満たさない比較例1のプレガバリン粉末よりも、当該粒子径が相対的に大きく、本件発明1の粒子径分布(d10:3.0~45.0μm、d50:9.0~220.0μm、d90が30.0~550.0μm)を満たす実施例1と実施例2のプレガバリン粉末の方が、プレガバリン由来の類縁体の生成量が顕著に低減されることが明らかになったことが記載されている(【0049】~【0051】、【0058】、【0059】、【0062】)。 また、実施例1のプレガバリン粉末を含む造粒物を用いて製造した錠剤(実施例3~5)は、温度50℃相対湿度75%の開放条件下で7日間保存した後のプレガバリン由来の類縁体の生成量は十分に低いことが確かめられたことが記載されている(【0052】~【0057】、【0060】、【0061】、【0063】)。実施例3~5の錠剤に使用した造粒物におけるプレガバリン粉末の含有量は、計算するとそれぞれ95.2%(250g÷(250g+12.5g))、92.6%(250g÷(250g+20g))、90.9%(250g÷(250g+25g))となり、本件発明1の「造粒物の全重量に対して70.0重量%以上のプレガバリン」との発明特定事項を満たすものである。 ウ 上記イの本件明細書の記載によれば、本件発明1の粒子径分布を満たすプレガバリン粉末を、造粒物の全重量に対して70.0重量%以上で含む造粒物を用いて、固形製剤を製造すると、本件発明1の粒子径分布を満たさず、粒子径がより小さなプレガバリン粉末を用いる場合よりも、化学的な安定性が改善された固形製剤を製造することができ、上記発明の課題を解決できることを、当業者は理解することができる。 エ したがって、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (4)本件発明2~6について ア 本件発明2~6は、本件発明1を更に特定するものであるところ、本件発明2は、粒子径分布を、d10を5.0~35.0μm、d50を15.0~150.0μm、d90を50.0~400.0μmと特定し、本件発明3は、プレガバリンを乾式造粒する工程を含むことを特定し、本件発明4は、プレガバリンを低融点油脂と共に溶融造粒する工程を含むことを特定し、本件発明5は、造粒物におけるプレガバリンの含有量を90.0~99.0重量%に特定し、本件発明6は、造粒物、賦形剤及び滑沢剤を共に混合して得られた混合物を打錠する工程を含むことを特定するものである。 イ 本件明細書の実施例1のプレガバリンの粒子径分布は、本件発明2の粒子径分布を満たすものである。 また、実施例3~5の錠剤の製造方法における造粒物のプレガバリン粉末の含有量(95.2%、92.6%、90.9%)は、本件発明5の造粒物におけるプレガバリンの含有量を満たすものである。 さらに、実施例3~5の錠剤の製造方法(【0052】~【0057】)は、プレガバリンを、低融点油脂であるモノステアリン酸グリセリン(【0035】~【0036】)と共に、乾式造粒に含まれる溶融造粒をする工程(【0040】)を含み、更に賦形剤であるD-マンニトール/トウモロコシデンプン(【0027】)と滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム(【0033】)と共に混合して得られた混合物を打錠して製造する工程を含むものであり、本件発明3、4、6の工程を含むものである。 ウ したがって、本件発明2~6も、上記(3)に説示した本件発明1についての判断と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (5)本件発明7~11について ア 本件発明7は、固形製剤に係る発明であり、その組成は、本件発明1に係る製造方法において特定されたものと同じである。 本件発明8~11は、本件発明7を更に特定するものであるところ、本件発明8は、d50とd90の数値範囲を更に特定したプレガバリンと低融点油脂とを含む造粒物を配合することを特定し、本件発明9は、低融点油脂を脂肪酸エステルに特定し、本件発明10は、造粒物中のプレガバリンに対する低融点油脂の配合量が0.010~0.18であることを特定し、本件発明11は、本件発明2と同じd10、d50及びd90の数値範囲に特定するものである。 イ 本件明細書の実施例3~5における造粒物中のプレガバリンに対する低融点油脂であるモノステアリン酸グリセリンの配合量は、計算すると0.05~0.10(12.5g/250g~25.0g/250g)であるから、実施例3~5において製造された錠剤は、本件発明10の造粒物中のプレガバリンに対する低融点油脂の配合量を満たし、更に、本件発明7~9、11における各発明特定事項を満たすものである。 ウ したがって、本件発明7~11も、上記(3)及び(4)に説示した本件発明1~6についての判断と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (6)申立人の主張について ア 申立人は、本件明細書の実施例1、2(及び比較例1)は、単に粒子径が相対的に大きい粒子の方が、粒子径が相対的に小さい粒子よりも安定性が高いという、本件出願日当時の技術常識(甲9)を示すものにすぎないところ、伊藤園トマトジュース事件判決に判示されているように、d10やd90など本件各発明に規定されるパラメータの技術的意味を示す場合には、実施例・比較例においてその効果に影響を与える平均粒子径をそろえた上で、d10ないしd90の値のみを変えてその作用効果について比較する必要があるが、そのようなデータは本件明細書に存在せず、d10やd90の違いのみでその効果に差異が生ずるかどうかは不明というほかなく、発明の詳細な説明は、d10、d50、d90の数値範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が、特許出願時において、具体例の開示がなくとも当業者が理解できる程度に記載されているとも、技術常識を参酌して、当該数値範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載されているとも認められない旨を主張する(特許異議申立書17~28頁)。 しかしながら、仮に、申立人が主張するように、実施例1、2の方が、比較例1よりもプレガバリンの類縁体の生成量が少ないことが、本件出願日当時の技術常識(甲9)にすぎないとしても、上記(2)~(5)に説示したように、本件各発明のd10、d50、d90の数値範囲のプレガバリンを用いて固形製剤を製造すれば、本件各発明の課題を解決できることを、当業者が認識できるのであるから、平均粒子径(体積平均径)をそろえた上で、d10、d50、d90の値のみを変えた固形製剤の作用効果について比較することが必要であるとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 イ 申立人は、造粒物中の薬剤の割合が少ないとその安定性が悪くなることは周知であり(甲10)、プレガバリンは固形医薬組成物中の助剤や空気中の水分と接触することにより、類縁体を生成することが技術常識であったところ(甲1)、本件発明1に規定する造粒物の全量に対するプレガバリンの割合の数値範囲のうち、その下限値に近い70.0重量%以上90.4重量%未満の範囲に関しては、実施例3~5(表1から90.4~94.9重量%と計算される。)の効果が当てはまるとは認識できない旨を主張する(特許異議申立書28~31頁)。 また、本件特許の優先基礎出願に係る明細書(甲2の2、甲2の3)には、「70重量%以上」という数値範囲はどこにも記載されていないことからも、表1及び表3の実験データは、「造粒物の全重量に対して70.0重量%以上」という数値範囲を認識したものではないことは明らかである旨を主張する(特許異議申立書32頁)。 さらに、94.9重量%を上回る領域についても、その割合が94.9重量%の実施例3は、92.6重量%の実施例4と比較して安定性が悪くなっていること、及び、油脂などの成分の割合が少なすぎることにより造粒物がうまく形成されずかえって安定性を害することが合理的に懸念されることから、90.4~94.9重量%のプレガバリンの含有量の範囲について、上記発明の課題が解決できたとしても、そのことが94.9重量%を上回る範囲にまで当てはまるとは認識できない旨を主張する(特許異議申立書33頁)。 しかしながら、本件明細書には、造粒物の全重量に対するプレガバリンの含有量については、「好ましくは70.0~99.0重量%、…のプレガバリンを含有するように得られる。」(【0039】)と記載されているものの、どのような観点で好ましいかは記載されておらず、上記発明の課題であるプレガバリンの安定性と関連するものであることは記載されていない。 また、造粒物の全重量におけるプレガバリンの含有量が、実施例3(95.2重量%)、実施例4(92.6重量%)、実施例5(90.9重量%)と少なくなっても、保存前後の総類縁体の増加量(表3)は、それぞれ、0.048%、0.038%、0.048%であり、プレガバリンの含有量(又は油脂などの成分の含有量)とプレガバリンの安定性との間に相関関係があることは見て取れない。 そうすると、申立人の提示する技術常識(甲10)を考慮しても、プレガバリンの含有量が実施例3~5よりも少ない範囲(70重量%以上90.9重量%未満)で上記発明の課題が解決できないとはいえないし、また、実施例3(95.2重量%)の方が実施例5(90.9重量%)よりもプレガバリンの安定性が悪いことを根拠として、プレガバリンの含有量が実施例3~5よりも多い範囲(95.2重量%を超える範囲)で上記発明の課題が解決できないとはいえない。 さらに、造粒物におけるプレガバリン以外の油脂などの成分の割合が4.8重量%(100重量%-95.2重量%)を下回ると、うまく造粒物が形成できなくなるためプレガバリンの安定性が大きく損なわれることが、技術常識に照らして自明であるとはいえないから、この点で、プレガバリンの含有量が実施例3~5よりも多い範囲(95.2重量%を超える範囲)で上記発明の課題が解決できないともいえない。 ここで、本件特許の優先基礎出願に係る明細書(甲2の2、甲2の3)に、「70重量%以上」という数値範囲が記載されていないことは、上記の判断を左右しない。 したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。 なお、当審の判断においては、造粒物の全重量におけるプレガバリンの含有量として、申立人が使用した表1から計算した数値ではなく、【0052】~【0055】に記載された実施例3~5から計算した数値を用いた。 (7)小括 以上によれば、本件発明1~11は、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立理由1によって、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。 (2)本件発明1について 本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の粒子径分布を有するプレガバリンを用いて、プレガバリンと低融点樹脂とを含む造粒物を溶融造粒することにより形成し、当該造粒物を、賦形剤及び滑沢剤と共に打錠して、固形製剤である錠剤を製造することについて、具体的に記載されており(【0011】~【0047】)、実施例1~5において、実際に錠剤を製造した条件について詳細に記載されている(【0048】~【0063】)。 また、本件出願時には、粉砕条件を調整したり分級したりするなどして、所望の粒子径分布(d10、d50、d90など)の医薬成分を製造できることは技術常識となっていたから(必要ならば、甲4、甲5、特開2017-530149号公報参照)、本件明細書の発明の詳細な説明において、本件発明1の粒子径分布を有するプレガバリンを製造する具体的な条件について記載されていないものの、本件発明1の粒子径分布を有するプレガバリンを製造し、それを用いて固形製剤を製造することは、当業者が過度の試行錯誤を要することなくなし得るものといえる。 したがって、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1を実施することができる。 (3)本件発明2~11について 上記2(4)~(5)に説示したとおり、本件発明2~11において特定された発明特定事項についても、本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載されている。 したがって、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明2~11を実施することができる。 (4)申立人の主張について 申立人は、本件各発明について実施可能といえるために必要不可欠な、具体的にその粒径や分布幅をいかに調整するかという記載は本件明細書には見当たらず、その上、本件発明1、7等には、30.0~45.0μmの範囲においては粒子径のほぼ均一なもの(当審注:d10、d50、d90が全て同じ値のもの。例えば、d10=d50=d90=40.0μmのもの。)がその態様に含まれるところ、その粒子径をほぼ均一にすることは事実上不可能であるか少なくとも著しく困難であるから、当業者といえども、過度の試行錯誤を要することなく本件各発明を実施できないことが、むしろ技術常識から明らかといえる旨を主張する(特許異議申立書34~36頁)。 しかしながら、上記(2)に説示したように、本件出願時には、粉砕条件を調整したり分級したりするなどして、所望の粒子径分布(d10、d50、d90など)の医薬成分を製造できることは技術常識となっていたから、本件明細書に所定の粒子径分布とするための具体的手段が記載されていなくても、当業者が過度の試行錯誤を要するとはいえない。 また、申立人が主張するように、本件発明1、3~7、9、10には、30.0~45.0μmの範囲において粒子径がほぼ均一なプレガバリン(上記当審注参照)を用いる場合が含まれ得るものの、30.0~45.0μmの範囲から外れる粒径のものを分級して除くなどして、30.0~45.0μmの粒子径のプレガバリンを製造することは可能であるといえる。 さらに、本件明細書の記載によれば、そのようなプレガバリンを用いることを具体的に想定しているとはいえないから、仮に、それを製造するためには複雑な工程が必要であるとしても、このことのみをもって、本件発明1、3~7、9、10を実施することができないとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は、採用できない。 (5)小括 以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~11を過度の試行錯誤を要することなく実施できる程度に記載されているから、申立理由2によって、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3(甲1を先願とする拡大先願)について (1)申立人は、本件特許の優先基礎出願の明細書(甲2の2及び甲2の3)には、本件各発明における、d10、d50、d90の下限値は記載されているものの(甲2の2及び甲2の3の【0009】【0012】)、上限値が記載されておらず、また、造粒物の全重量に対するプレガバリンの含有量を90.0重量部(当審注:重量%の誤記と認める。)以上とすることは記載されているものの(甲2の2及び甲2の3の【0020】)、70重量%以上とすることは記載されていないため、本件各発明は、優先基礎出願の明細書に新たに追加された事項を含むことから、その特許性の判断基準日は、国際出願日である平成30年12月18日となることを前提として、申立理由3を主張している(特許異議申立書16~17頁)。 しかしながら、本件各発明が、優先権主張の利益を享受できるか否かについて検討するまでもなく、本件各発明は、以下に説示するとおり、甲1に記載された発明と同一ではない。 (2)甲1の記載事項 ア 甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審による。)。 (ア)【特許請求の範囲】 【請求項1】 高級アルコールとプレガバリンとを含む固形医薬組成物。 【請求項2】 該高級アルコールを,プレガバリンを含有する造粒物中に含む,請求項1の固形医薬組成物。 … 【請求項4】 該高級アルコールの含量がプレガバリンの含量の10~40質量%である,請求項1~3の何れかの固形医薬組成物。 … 【請求項6】 錠剤,顆粒剤,又はカプセル剤の形態である,請求項1~5の何れかの固形医薬組成物。 【請求項7】 該造粒物において該高級アルコールが造粒用の基剤又はコーティング剤として配合されているものである,請求項2~6の何れかの固形医薬組成物。 【請求項8】 プレガバリンを含有する固形医薬組成物の製造方法であって, プレガバリン及び高級アルコールを用いて造粒物を製造するステップを含んでなる,製造方法。 【請求項9】 請求項8の製造方法であって,該固形医薬組成物が錠剤の形態であり, 該造粒物を滑沢剤及び賦形剤を含む添加物と混合して打錠するステップ, を更に含んでなる,製造方法。 … 【請求項11】 該高級アルコールの量がプレガバリンの量の10~40質量%である,請求項8~10の何れかの製造方法。 (イ)【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は固形医薬組成物に関し,より詳しくはプレガバリンを含有する固形医薬組成物,特に,錠剤,カプセル剤,顆粒剤等の固形医薬組成物に関する。 (ウ)【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 上記の背景において,本発明の一目的は,プレガバリンを含有する固形医薬組成物であって,貯蔵期間中における類縁物質Aの生成を抑制できる組成物の提供にある。また,本発明の追加の一目的は,そのような組成物であって,胃内でのプレガバリンを迅速に溶出させることのできる組成物の提供にある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記課題の解決に向けた研究の結果,本発明者らは,プレガバリンに特定の高級アルコールを配合して固形医薬組成物を製造した場合に,貯蔵中における類縁物質Aの生成が抑制されること,及び当該固形医薬組成物は,水に接したときプレガバリンが速やかに溶出できるものであることを見出した。本発明はこの発見に基づいて完成させたものである。即ち,本発明は以下を提供する。 (エ)【発明の効果】 【0012】 本発明によれば,貯蔵期間中におけるプレガバリンの類縁物質であるラクタム体の生成の抑制されたプレガバリン含有固形医薬組成物を提供することができる。また,そのような固形医薬組成物であって,胃内での迅速な溶出性を備えたものも提供することができる。 (オ)【発明を実施するための形態】 【0014】 本発明において,「固形医薬組成物」の語は,薬効成分及び賦形剤等の添加剤の固形の成分から構成された医薬組成物をいい,錠剤,顆粒剤,又はカプセル剤の形態のものを包含する。また本発明において,「顆粒剤」の語は,顆粒のみから構成される薬剤に限定されず,薬効成分を含む顆粒と添加剤(滑沢剤,賦形剤等)との混合物も包含し,「カプセル剤」は,顆粒剤がカプセルに封入されたものをいう。 … 【0016】 本発明において,「高級アルコール」は,プレガバリンを含む固形医薬組成物中に配合されていればよい。その配合形態については,特に限定されないが,プレガバリン含有の造粒物中に配合されていることが好ましい。この場合,「高級アルコール」は,プレガバリン含有の造粒物を製造する工程において,造粒を行うための基剤又はプレガバリンを含む造粒物におけるコーティング剤等として用いられる。従って,それ自体プレガバリンに対し不活性であり,且つ安定なものが好ましい。そのような好ましい高級アルコールとしては,例えば炭素数16~20のものが挙げられ,特にステアリルアルコール及びセタノール又はこれらの混合物が挙げられる。これらのうち更に好ましいのはステアリルアルコールである。 【0017】 本発明における造粒物とは,当該分野で公知の方法によって造粒したものであり,その製造方法としては,乾式造粒,湿式造粒の何れでもよい。例えば,乾式造粒の場合には,溶融造粒をはじめとして,乾式造粒機,スラッグ打錠機等,種々の装置を用いて造粒することができる。湿式造粒の場合には,流動層造粒乾燥機,攪拌造粒機,転動流動層造粒コーティング機等,種々の装置を用いて造粒することができる。 【0018】 本発明の固形医薬組成物の製造に用いるプレガバリンの粒度に厳格な制限はないが,粒度分布(重量基準)における50%粒子径(D50)が10~100μmであることが好ましく,20~60μmであることがより好ましい。 【0019】 上記の造粒物において,プレガバリンの量(100%とする)に対する高級アルコールの配合量は,質量比で,10~40%とするのが好ましく,10~30%とするのがより好ましく,10~25%とするのが更に好ましく,10~20%とするのが特に好ましい。 【0020】 本発明において,造粒工程を経て得られたプレガバリン含有の造粒物に,例えば,必要に応じ慣用の滑沢剤,賦形剤等の添加剤を適宜選択し配合して顆粒剤とし,これを所定量毎に分包することができ,若しくはカプセルに封入してカプセル剤とすることができる。この場合,高級アルコールは,プレガバリン含有の造粒物中に含まれていてもよいし,或いは,プレガバリン含有の造粒物と混合される添加剤として,顆粒剤若しくはカプセル剤中に配合されていてもよい。又は,プレガバリンと高級アルコールに錠剤製造における賦形剤,滑沢剤その他慣用の添加剤を適宜選択し配合して打錠末とし,これを打錠することにより,錠剤の形態とすることができる。この場合,打錠末中の高級アルコールは,プレガバリン自体若しくはプレガバリンを含む造粒物とともに混合されていてもよいし,プレガバリンを含む造粒物中に,造粒用基剤若しくはコーティング剤として配合されていてもよい。また,こうして得られる素錠は,慣用の方法によりフィルムコーティング等のコーティングを施してもよい。 … 【0023】 本発明において,賦形剤,滑沢剤等の添加剤の種類及び配合量に特に制限はなく,顆粒剤を得るのに適し,又は打錠して錠剤を得るのに適した範囲で,適宜選択し配合量も適宜設定することができる。 【0024】 賦形剤としては,例えば,ブドウ糖,粉糖,乳糖のような単糖類,二糖類等,D-マンニトール等の糖アルコール,トウモロコシデンプンなどのようなデンプン類,結晶セルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体,デキストラン,デキストリン,軽質無水ケイ酸等が挙げられるが,本発明が奏する効果に特段影響を及ぼさないから,これらに限定されず,公知のものから適宜選択してよい。 【0025】 滑沢剤としては,例えば,ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸カルシウム,タルク,コロイドシリカ,フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられるが,これらに限定されない。タルクやステアリン酸マグネシウムは,好ましい滑沢剤の例であるが,本発明が奏する効果に特段影響しないから,これら以外にも適宜,公知のものから選択することができる。 (カ)【実施例】 【0026】 1.油状物質の検討 プレガバリン含有の固形医薬組成物を作製するに当たり,油性物質がプレガバリンの安定性に及ぼす影響について検討した。 … 【0031】 これらの結果は,高級アルコール及びグリセリン脂肪酸エステルは,プレガバリンの分子内脱水縮合を誘発せず,また外部の水分からの遮蔽効果も十分であることを示している。これに対し,高級脂肪酸,ショ糖脂肪酸エステル及びポリエチレングリコールは,プレガバリンの分子内脱水縮合を誘発するか又は外部の水分からの遮蔽効果が不十分であると考えられる一方,それらに比べれば,硬化油は,類縁物質Aの生成を抑制していると思われる。 【0032】 2.錠剤形態におけるプレガバリンの安定性の評価 上記で類縁物質Aの生成が検出されなかった油性物質のうち高級アルコール,及び硬化油を選び,次に記載するようにそれぞれの錠剤を製造して,プレガバリンの安定性を,苛酷試験(50℃密栓)における類縁物質Aの有無及び生成量の比較により評価した。高級アルコールとしては,ステアリルアルコールを用い,硬化油としてはヒマシ油及びナタネ油を用いた。更に,それらの打錠末について,プレガバリンの溶出性の試験を行った。 (1)造粒末の製造 【0033】 (1)プレガバリン含有錠の製造 表2に示した各錠剤処方に従って,高剪断力造粒機(ハイスピードミキサーLFS-GS-2J,アーステクニカ(株))にプレガバリン及び油性物質を投入し,造粒機のジャケットに温水を循環させながら溶融造粒した後,冷却し,造粒物を分級したものにタルクを混合して造粒末を得た。なお,溶融造粒中の温水温度は,硬化ヒマシ油:85℃以上,硬化ナタネ油:70℃以上,及びステアリルアルコール:60℃以上とした。 【0034】 【表2】 [図:0001392094000004.jpg] 【0035】 上記で得られた各造粒末とD-マンニトールをポリエチレン袋中で混合した後,ステアリン酸マグネシウムを投入して更に混合することにより,打錠末を得た。打錠末を打錠機で打錠(打錠圧5~6kN)して,各錠剤を得た。 【0036】 (2)安定性試験 こうして得られた各種の錠剤につき,苛酷試験として50℃,75%RHの雰囲気下に容器に入れ密栓して貯蔵し,次の方法で錠剤中の類縁物質Aの生成率を測定することにより,安定性を評価した。 <類縁物質Aの生成率の測定方法> 各処方につき錠剤を各一定量の抽出溶媒(移動相A/メタノール=9/1)にて抽出してメンブランフィルターで濾過し,試料溶液とした。試料溶液を下記条件でHPLCに付し,試料溶液中のプレガバリン及び類縁物質Aの各ピーク面積から類縁物質の生成率(%)を算出した。 … 【0040】 (3)安定性試験の結果 結果を表4に示す。表に見られるように,高級アルコールを用いた造粒を経て製造した錠剤(実施例1~4)は,硬化油を用いた造粒を経て得られた錠剤(比較例1~2)に比して類縁物質の生成が格段に少ないこと,実施例1~3において更に優れていること,及び実施例1~2で特に顕著に優れていることが判明した。 【0041】 【表3】 [図:0001392094000005.jpg] … 【0047】 3.実施例5及び6の錠剤の製造並びにそれらの官能試験 (1)実施例5 表5に示す成分の質量割合に従って,プレガバリン,部分アルファー化デンプン,及びヒドロキシプロピルセルロースを湿式高剪断力造粒機に投入,混合し精製水を噴霧して造粒後,湿式整粒,乾燥,整粒して素顆粒を得た。次いで,流動層造粒乾燥機中で素顆粒を予熱し,これにステアリルアルコールの加温無水エタノール溶液(コーティングI液)を噴霧してコーティングし(高級アルコール層),乾燥,整粒後,流動層造粒乾燥器機に投入して予熱し,これにD-マンニトールの水溶液(コーティングII液)を噴霧してコーティングし,乾燥,整粒して,薬効成分含有顆粒を得た。 イ 上記アの記載事項によれば、甲1には、プレガバリン及び高級アルコールを用いて造粒物を製造するステップを含む、固形医薬組成物の製造方法が開示され(【請求項8】)、造粒物におけるプレガバリンの含量に対する高級アルコールの含量が10~40質量%であり(【請求項11】、【0019】)、また、プレガバリンの粒度について、粒度分布(重量基準)における50%粒子径(D50)が10~100μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましいことが記載されている(【0018】)。 また、実施例1~4において、プレガバリンとステアリルアルコールを溶融造粒した後、冷却し、造粒物を分級したものにタルクを混合して造粒末を得て、それを用いて錠剤を製造したことが記載されている(【0033】~【0035】)。 そうすると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「粒度分布(重量基準)における50%粒子径(D50)が10~100μm(より好ましくは20~60μm)であるプレガバリンと高級アルコールとを溶融造粒し、高級アルコールの含量はプレガバリンの含量の10~40質量%である造粒物を製造するステップを含んでなる、プレガバリンを含有する固形医薬組成物の製造方法。」(以下「甲1発明1」という。) 「粒度分布(重量基準)における50%粒子径(D50)が10~100μm(より好ましくは20~60μm)であるプレガバリンと高級アルコールとを溶融造粒した造粒物を含有し、当該造粒物における高級アルコールの含量はプレガバリンの含量の10~40質量%である、プレガバリンを含有する固形医薬組成物。」(以下「甲1発明2」という。) (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、重量と質量とは実質同じであり、プレガバリンと高級アルコールとを溶融造粒した造粒物において、高級アルコールの含量はプレガバリンの含量の10~40質量%であるから、造粒物の全重量に対するプレガバリンの含量を重量%で計算すると、71.4~90.9重量%となる(100÷(100+40)×100~100÷(100+10)×100)。 そうすると、甲1発明1における造粒物の全重量に対するプレガバリンの含有量は、本件発明1の「70.0重量%以上」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を用いる、固形製剤の製造方法であって、 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物であって、当該造粒物の全重量に対して70.0重量%以上のプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含有するものを製造する工程を含む製造方法。」 <相違点1> プレガバリンについて、本件発明1においては、「レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)が3.0~45.0μm、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が9.0~220.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が30.0~550.0μmである粒子径分布を有する」ことが特定されているのに対し、甲1発明1においては、粒度分布(重量基準)における50%粒子径(D50)が10~100μm(より好ましくは20~60μm)である」ことが特定されている点。 イ 判断 本件発明1は、粒子径が「レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定」の数値で特定されているのに対し、甲1発明1においては「重量基準」の数値で特定されている点で異なる。 一般に、レーザー回折・散乱法は、基本的に他の手法(コールターカウンター法、画像解析法、遠心沈降法など)とその測定結果に矛盾がないような条件で測定されること、及び、体積基準の累積粒子径と重量基準の累積粒子径は、実質的に同じものとして取り扱われていることから、測定方法の違いが、実質的な相違点とはいえない。 そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、d50(D50)の数値が、10~100μmの範囲で重複する点で一致する。 しかしながら、甲1発明1においては、d10(D10)、d90(D90)の数値が特定されていない。 プレガバリンの粒子径分布は、d50が特定されれば、自動的にd10、d90が特定されるというものではなく、d10、d90などの粒子径分布は、様々に調整され得るものである。 そうすると、本件発明1と甲1発明1とで、d50の数値が10~100μmの範囲で重複するからといって、d10、d90も必ず重複するとまではいえない。 そして、本件発明1は、d50だけでなく、d10、d90も含めた粒子径分布を特定することにより、当該発明の課題を解決するものであるから、d10とd90を本件発明1において特定することが、課題解決のための具体化手段における微差にすぎないとはいえない。 したがって、相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明1と同一であるとはいえない。 (4)本件発明2~6について 本件発明2~6は、本件発明1において更に発明特定事項を特定するものであるから、上記(3)に説示した本件発明1についての判断と同様に、本件発明2~6も、甲1発明1と同一であるとはいえない。 (5)本件発明7について ア 対比 上記(3)アの対比を踏まえると、本件発明7と甲1発明2との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を配合してなり、 プレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩を含む造粒物を含有し、当該造粒物の全重量に対するプレガバリン又は其の製薬学的に許容される塩の含有量が70.0重量%以上である固形製剤。」 <相違点1’> プレガバリンについて、本件発明7においては、「レーザー回折・散乱法を用いて測定される、体積基準測定における累積10%粒子径(d10)が3.0~45.0μm、体積基準測定における累積50%粒子径(d50)が9.0~220.0μm、かつ体積基準測定における累積90%粒子径(d90)が30.0~550.0μmである粒子径分布を有する」ことが特定されているのに対し、甲1発明2においては、粒度分布(重量基準)における50%粒子径(D50)が10~100μm(より好ましくは20~60μm)である」ことが特定されている点。 イ 判断 相違点1’は、相違点1と同じであるから、上記(3)イに説示したとおり、相違点1’は実質的な相違点であり、本件発明7は、甲1発明2と同一であるとはいえない。 (6)本件発明8~11について 本件発明8~11は、本件発明7において更に発明特定事項を特定するものであるから、上記(5)に説示した本件発明7についての判断と同様に、本件発明8~11も、甲1発明2と同一であるとはいえない。 (7)申立人の主張について ア 申立人は、本件明細書から読み取れるのは、粒子径が大きいほど安定性が良いという技術常識にすぎず、本件各発明のd10及びd90という分布特性を採用することに関し、何ら新たな技術的知見や顕著な作用効果を示すものではないから、粒子径の全体的な大きさ(平均粒径)に程近い本件発明1のd50に関し相違点が存在しない以上、その余の粒度分布特性は単なる設計上の微差にすぎない旨を主張する(特許異議申立書46~47頁)。 しかしながら、甲1発明1及び甲1発明2におけるプレガバリンのd10、d90が本件各発明のそれらと同じであるとはいえない以上、課題解決手段として本件明細書に記載された本件各発明のd10、d90の数値を特定することが、単なる設計上の微差にすぎないということはできない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 イ 申立人は、本件発明1に規定するd10の上限値及びd90の下限値に関し、甲1発明1のD50の数値範囲20~60μmのうち、少なくとも30~45μmの範囲においては、d10の上限値45μm、d90の下限値30μmを満たすし、甲4及び甲5によれば、プレガバリンの粒子は、D90/D50=2~3程度(D50/D10も概ね同程度と考えられる)という一定の粒度幅を有するのが常識であるから、上記30~45μmのみならず、10~100μmのほぼ全域において、d10の上限値45μm、d90の下限値30μmを満たす蓋然性が極めて高いといえるから、d10及びd90の点は実質的な相違点ではない旨を主張する(特許異議申立書47頁)。 しかしながら、甲4、5から、d90/d50の数値が一定の幅に収まるケースが多いといえるとしても、本件明細書の実施例1、2に当てはめて検討すると、d90/d50=3.4又は2.5であるのに対して、d50/d10=5.6又は4.9で、両者には明らかな差があるから、d90/d50とd50/d10を「概ね同程度」とは言い切れないし、そうすると少なくとも甲1のd10を高い蓋然性(確度)をもって特定することは困難であり、d10の数値範囲は実質的な相違点といわざるをえない。 また、甲1でもd90/d50=2~3が成り立つと仮定しても、甲1のd50から算出されるd90の下限値は20μmで、本件発明1のd90の下限値(30μm)を必ずしも満たさないから、「満たす蓋然性が極めて高い」とまではいえない。 さらに、申立人の上記主張は、プレガバリンにおいて、d50が特定されれば、必ずd10とd90も特定の範囲に収まることを前提とするものであるが、粒子径分布は様々な手段で調整可能なものである以上、甲1に記載されていないd10とd90の数値を、甲4、5の記載から「極めて高い」蓋然性をもって認定することは困難である。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (8)小括 以上によれば、本件発明1~11は、甲1に記載された発明と同一であるとはいえないから、申立理由3によって、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから特許異議申立書に記載した申立理由1~3によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、その他の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700793

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