特許異議申立
2022-700686
たこ焼類粉又はお好み焼類粉、及びたこ焼類又はお好み焼類
- 審判番号
- 2022-700686
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-114459
- 登録番号
- 7011406
- 請求日
- 2022年07月20日
- 審決日
- 2022年12月12日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】昭和産業株式会社
- 【権利者代理人】渡邊 薫
- 【異議申立人】中嶋 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7011406号発明「たこ焼類粉又はお好み焼類粉、及びたこ焼類又はお好み焼類」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7011406号の請求項に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7011406号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成29年6月9日の出願であって、令和4年1月18日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、同年7月20日に特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
損傷澱粉量が15~45%である米粉であって、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部の配合量となるように配合するためのたこ焼類用又はお好み焼類用の米粉。
【請求項2】
前記米粉のα化度が、10~30%である請求項1記載のたこ焼類用又はお好み焼類用の米粉。
【請求項3】
前記米粉の粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)が、30~100μmである請求項1又は2記載のたこ焼類用又はお好み焼類用の米粉。
【請求項4】
損傷澱粉量が15~45%である米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部であるたこ焼類粉又はお好み焼類粉。
【請求項5】
前記米粉のα化度が、10~30%である請求項4記載のたこ焼類粉又はお好み焼類粉。
【請求項6】
前記米粉の粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)が、30~100μmである請求項4又は5に記載のたこ焼類粉又はお好み焼類粉。
【請求項7】
前記米粉の含有量が、1~45質量%である請求項4~6の何れか1項記載のたこ焼類粉又はお好み焼類粉。
【請求項8】
損傷澱粉量が15~45%である米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部であるたこ焼類又はお好み焼類。
【請求項9】
前記米粉のα化度が、10~30%である請求項8記載のたこ焼類又はお好み焼類。
【請求項10】
前記米粉の粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)が、30~100μmである請求項8又は9記載のたこ焼類又はお好み焼類。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年7月20日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第4号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・請求項7に係る特許は、それが引用する請求項4に記載された発明の範囲を超える範囲を包含するものであり、明確でない。
4 申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1、4、8に規定される小麦粉に対する米粉の配合量の全範囲で、例えば小麦粉100質量部に対して1質量部や52質量部の量で用いた場合に、本件特許発明の課題を解決するたこ焼き類又はお好み焼き類を提供できることは、発明の詳細な説明の記載からは確認できない。
5 証拠方法
・甲第1号証:特開2010-104244号公報
・甲第2号証:特開2013-233143号公報
・甲第3号証:国際公開第2014/021181号
・甲第4号証:特開2002-125578号公報
・甲第5号証:米粉に係る調査 事業実績報告書 米粉製品の分析、NPO法人国内産米粉促進ネットワーク(CAP.N)、2017年3月
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむねしたがった。以下、「甲1」等という。
第4 当審の判断
1 主な証拠の記載事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1にはおおむね次の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は、作業性よく、食感の良い和風スナックを製造できる和風スナック用ミックス粉及び和風スナックに関する。」
・「【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の和風スナック用ミックス粉は、たこ焼き、お好み焼き、及びもんじゃ焼きから選ばれた1種である和風スナックに用いられるミックス粉であって、米粒又は米粉に、圧縮力、衝撃力、摩擦力及び剪断力から選ばれる少なくとも1種を加えることによって製造され、膨潤度が4.5以上で、アミログラフ糊化最高粘度が500BU以下とされた改質米粉を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の和風スナック用ミックス粉は、特に山芋などを使用しなくても、水などの液体と、卵やその他具材を加えて調製した生地を焼成することで、例えば、たこ焼きの場合においては、焼き表面はカリカリ感があり、内部はトロミがあって、クリーミーで口溶けが良いものが得られる。また、お好み焼きにおいては、ふっくらとしてボリュームがあり、歯切れがよく、軽い食感を有するものが得られる。また、もんじゃ焼きにおいては、適度なトロミがあり、口溶けの良いものが得られる。
【0012】
このように、口当たりが良く、食感の良い和風スナックを作業性よく製造できる。また、この和風スナック用ミックス粉を用いて得られる和風スナックは、保水力が高く、製造後から時間がたっても食感が硬くなりにくく、製造直後に近い食感が維持される。更には、冷蔵保存や冷凍保存した後、加熱調理してもパサ付きがなく食感が良好であるので、出来たての食感を再現できる。」
・「【0020】
(改質米粉)
上記改質米粉は、米粒又は米粉に、圧縮力、衝撃力、摩擦力及び剪断力から選ばれる少なくとも1種を加え、澱粉を部分的に損傷させて得られた米粉であって、例えば、清酒醸造用の酒米の製造時に産出される米粉や、白糠等が好ましく挙げられる。」
・「【0024】
たこ焼きに用いられる和風スナック用ミックス粉の場合、上記改質米粉は、和風スナック用ミックス粉中に1~80質量%含有することが好ましく、1~50質量%含有することがより好ましく、1~30質量%含有することが特に好ましい。含有量が1質量%未満であると、クリーミーで口溶けの良い食感が得られにくく、80質量%を超えると作業性が悪くなり、更には保形性が悪くなることがある。
【0025】
また、お好み焼きに用いられる和風スナック用ミックス粉の場合、上記改質米粉は、和風スナック用ミックス粉中に1~80質量%含有することが好ましく、1~50質量%含有することがより好ましく、1~30質量%含有することが特に好ましい。含有量が1質量%未満であると、ボリューム感がほとんど向上せず、また、食感の改善効果も乏しく、80質量%を超えると、得られるお好み焼きが割れやすくなり、作業性が悪くなる。」
・「【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の各試験例において、改質米粉としては、白糠(膨潤度=6.8,アミログラフ最高粘度=120BU、α化度=76.7%)を用いた。また、米粉としては、粳米粉末品(膨潤度=3.6,アミログラフ最高粘度=990BU,α化度=35.9%)を用いた。α化米粉としては、粳米粉末品を完全にα化したもの(膨潤度=8.9,アミログラフ最高粘度:測定不能,α化度=99%以上)を用いた。
【0042】
[試験例1] (たこ焼き)
下記表1に示す配合量(単位:質量%)を混合して実施例1-1、比較例1-1~1-4のミックス粉を調製した。
【0043】
【表1】
[図:0001393114000001.jpg]
【0044】
上記ミックス粉100gと、全卵25gと、水360~380gとを混練し、均一化して生地を調製した。そして、200℃に熱したたこ焼き焼成機に生地を流し入れ、具材(たこ、ネギ、揚げ玉)を入れて焼成し、1分間焼成したら反転させる操作を10分間行って焼成した。
得られたたこ焼きについて、焼成10分経過後、2時間経過後、冷凍・レンジアップ後の食感(クリーミー感、口溶け感)を、10人のパネラーにより評価し、この結果の平均値を表2に示す。なお、クリーミー感は、5:非常にトロミがある、4:トロミがある、3:ややトロミがある、2:ほとんどトロミがない、1:トロミがない、とした。また、口溶け感は、5:非常に口溶けが良い、4:口溶けが良い、3:やや口溶けが良い、2:やや口溶けが悪い、1:口溶けが悪い、とした。
【0045】
【表2】
[図:0001393114000002.jpg]
【0046】
上記結果より、改質米粉を含むミックス粉を使用して製造した実施例1-2のたこ焼きは、クリーミーでトロミがあり口溶けが良く、非常に食感の良いものであった。また、経時変化に強く、食感が劣化しにくいものであった。更には、冷凍・レンジアップ後であっても、製造直後の美味しさを有していた。
また、焼成後のたこ焼きの断面を比較したところ、実施例1-2のたこ焼きは、生地の内部に均一に水気があり、光沢が見られた。
一方、比較例1-5,1-6のたこ焼きは、全体的に乾いていた。また、比較例1-7のたこ焼きは、たこの周りには水があるが、生地の部分は光沢がなく乾いていた。また、比較例1-8のたこ焼きは、生地の部分が糊状で粘った感じがしていて艶がなかった。
このように、焼成後のたこ焼きの断面を比較した結果、実施例のたこ焼きは保水力が高かった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、実施例1-1として記載されているミックス粉について整理すると、以下の発明が記載されていると認める。
「小麦粉87.5質量%、改質米粉10.0質量%の配合量となるよう混合して、たこ焼き用のミックス粉を調整するための、改質米粉としての白糠(膨潤度=6.8,アミログラフ最高粘度=120BU、α化度=76.7%)。」(以下、「甲1米粉発明」という。)
「小麦粉87.5質量%、改質米粉としての白糠(膨潤度=6.8,アミログラフ最高粘度=120BU、α化度=76.7%)10.0質量%の配合量となるよう混合して調整した、たこ焼き用のミックス粉。」(以下、「甲1ミックス粉発明」という。)
「甲1ミックス粉発明を用いて得られるたこ焼き。」(以下、「甲1たこ焼き発明」という。)
(2)甲2に記載された事項
甲2にはおおむね次の事項が記載されている。
・「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々研究を重ねてきた。その結果、澱粉損傷度が10%以上である米粉を用いて、特に澱粉損傷度が10%以上で且つ米粉の粒度の累積分布による中位径(D50)[以下、単に「中位径(D50)」ということがある]が40μm以上である米粉を用いて洋菓子用米粉組成物を調製し、当該洋菓子用米粉組成物を用いてホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、クッキー、ドーナツ、スコーンなどの洋菓子類を製造すると、流動性のある生地を用いるホットケーキ、パンケーキ、マフィン、バターケーキ、マドレーヌなどの菓子類では生地が適度な粘度を有し、鉄板、フライパン、ホットプレート、ケーキ型などに生地を流し込む際の作業性や取り扱い性に優れ、特にホットケーキを作る際には鉄板やフライパン上で生地を所望の形状および厚さに流し込むことができること、また固形状の生地を用いるクッキーやドーナツ、スコーンなどの菓子類ではベタツキのない生地を形成できることを見出した。
また、本発明者らは、澱粉損傷度が10%以上である上記した米粉、特に澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉を用いて調製した洋菓子用米粉組成物を使用して前記したような洋菓子類を製造すると、膨張が十分に行なわれて厚さおよび体積が大きくて良好な外観を有し、モチモチ感があって、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、しかも経時的な品質低下が小さくて耐老化性に優れる、高品質の洋菓子類を良好な作業性で簡単に製造できることを見出した。」
・「【0016】
本発明で用いる米粉は、「澱粉損傷度が10%以上である」という要件を少なくとも満たしていることが必要である。
米粉の澱粉損傷度が10%以上であることにより、当該米粉を含有する本発明の洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造したときに、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有する洋菓子類を得ることができる。
モチモチ感、しっとり感および滑らかさにより優れる洋菓子を得るためには、米粉の澱粉損傷度は、11%以上であることが好ましく、13%以上であることがより好ましいく、15%以上であることが更に好ましい。
米粉の澱粉損傷度が低すぎると、洋菓子類の製造に用いたときに加水が少なくなり、しかも得られる洋菓子類は、パサついて、しっとり感のない、不良な食感となる。
一方、米粉の澱粉損傷度は大きすぎて困ることはないが、現在の製粉技術では、洋菓子類の製造に適する澱粉損傷度が大きくて且つ中位径(D50)の大きな米粉の製造が容易ではないので、米粉の製造上の観点から、米粉の澱粉損傷度の上限値は25%(25%以下)であることが好ましく、20%(20%以下)であることがより好ましい。」
(3)甲3に記載された事項
甲3にはおおむね次の事項が記載されている。
・「[請求項5] 損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を、小麦粉100質量部に対し0.1~15質量部含有するパン類用ミックス粉。
[請求項6] 損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を配合するパン類。」
・「[0011] 本開示のパン類の硬化抑制剤に有効成分として用いる及びパン類用ミックス粉に含有させる、損傷でん粉含有量の高い米粉(以下、「損傷でん粉高含有米粉」ともいう)は、損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉であるのが好適である。
また、前記損傷でん粉高含有米粉は、本開示のパン類の硬化抑制方法、本開示のパン類の製造方法及びパン類に用いることが可能である。
[0012] 本開示の米粉の損傷でん粉含有量は高い方が、硬化抑制効果に優れるので好適である。本開示の米粉の損傷でん粉含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは35質量%以上の米粉が、得られたパン類の硬化を良好に抑制するため、好適である。
また、本開示の損傷でん粉含有量が、好ましくは45質量%以下の米粉であるのが、本開示の米粉を製造する際の製造上のコストを低減できるので、好適である。また、本開示の損傷でん粉含有量が30質量%超の米粉が、パン類の硬化抑制の点で優れている。一方で、米粉を製造する際の処理工程を少なくし、米粉の製造コストを低減できる点において、損傷でん粉含有量が15質量%以上30質量%以下の米粉が望ましい。」
・「[0017] ところで、後記〔実施例〕に示すように、本発明者は、様々なパン類の硬化抑制の素材を種々検討したところ、全く意外にも、損傷でん粉含有量を高くした米粉をパン類に用いれば、一般的なパン類と比較しても、硬化が抑制されたパン類を得ることができることを見出した。そして、本開示の損傷でん粉高含有米粉を硬化抑制のための有効成分としてパン類の製造に使用すると、製造後時間が経過しても硬化が抑制され、風味が損なわれず食感も良好な優れたパン類が得られることを見出した。さらに、製造後のパン類には変形(ケービング)が見られなかった。
しかも、本発明者は、一般に穀物粉類を細かくしすぎると作業時の粉舞が強い点で問題があると言われているが、より細かくなるように粒径及び粒度分布を特定の範囲に調整した上記損傷でん粉高含有米粉を用いれば、さらに硬化抑制に優れ、風味が損なわれず食感も良好な優れたパン類が得られることも見出した。」
(4)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4にはおおむね次の事項が記載されている。
・「【0047】試験例4(大阪焼き)
表4に示す各種のお好み焼き類用生地組成物100質量部に、水125質量部及び全卵15質量部を加えてバッターを調製し、さらに具材として刻んだキャベツ120質量部、天かす10質量部、すりおろした山芋5質量部、紅しょうが5質量部を加えて、大阪焼き用生地を得た。この生地を、焼き型に入れて170℃で5分間焼成し、その上に全卵を落とし、同様にして片面を焼成した生地で挟み、さらに5分間焼成して大阪焼きを作った。なお、各例において、熱処理した穀粉としてうるち米粉、α化澱粉としてコーンスターチを使用した。
【0048】これらの大阪焼きを、○1(審注:丸付き数字1を表す。)焼成直後、○2(審注:丸付き数字2を表す。)焼成後7日間冷凍してから電子レンジで解凍した後、180℃のサラダ油で3分間油ちょうした直後の状態で、試験例1と同様にして食感を評価した。この結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
[図:0001393114000003.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
甲4には、実施例7として記載されているお好み焼き類用生地組成物について整理すると、以下の発明が記載されていると認める。
「小麦粉70質量部、熱処理した穀粉(α化度12%)であるうるち米粉15質量部を含む合計100質量部のお好み焼き類用生地組成物を調整するための、うるち米粉。」(以下、「甲4米粉発明」という。)
「小麦粉70質量部、熱処理した穀粉(α化度12%)であるうるち米粉15質量部を含む合計100質量部である、お好み焼き類用生地組成物。」(以下、「甲4生地組成物発明」という。)
「甲1生地組成物発明を用いて得られる大阪焼き。」(以下、「甲4大阪焼き発明」という。)
2 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と甲1米粉発明を対比する。
甲1米粉発明の「改質米粉としての白糠(膨潤度=6.8,アミログラフ最高粘度=120BU、α化度=76.7%)」は、本件特許発明1の「米粉」に相当する。
甲1米粉発明は、「小麦粉87.5質量%、改質米粉10.0質量%の配合量となるよう混合して」おり、小麦粉100質量部に対して、改質米粉の配合量が約11.4質量部であるから、本件特許発明1の「小麦粉100質量部に対して、1~52質量部の配合量となるように配合する」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「米粉であって、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部の配合量となるように配合するためのたこ焼類用又はお好み焼類用の米粉。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1は、米粉に関し、「損傷澱粉量が15~45%である」と特定されているのに対し、甲1米粉発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点1-1について検討する。
甲1には、「改質米粉」が「澱粉を部分的に損傷させて得られた米粉」であることは記載されているが、「損傷澱粉量」についての記載はない。
一方、甲2には、洋菓子用米粉組成物において、モチモチ感、しっとり感および滑らかさにより優れる洋菓子を得るために、米粉の澱粉損傷量が10%以上であること、及び米粉の製造上の観点から、米粉の澱粉損傷度の上限値は25%であることが好ましいことが、甲3には、パン類用ミックス粉に含有させる米粉として、損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉であるのが硬化抑制効果に優れるので好適であること、好ましくは45質量%以下の米粉であるのが、製造上のコストを低減できるので好適であることが、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲1は、作業性よく、食感の良い和風スナックを製造できる和風スナック用ミックス粉及び和風スナックを提供するために、膨潤度が4.5以上で、アミログラフ糊化最高粘度が500BU以下とされた改質米粉を含有させたものであるところ、当該改質米粉について、さらに損傷澱粉量について最適化を行う動機付けはなく、ましてや、洋菓子用である甲2に記載された事項及びパン類用である甲3に記載された事項を適用する動機付けもない。
したがって、甲1発明において、甲2及び甲3に記載された事項を適用して、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点1-1に係る発明特定事項を有することで、「内層が軟らかくかつ口溶けが良好なたこ焼類及びお好み焼類を得ることができ」る、並びに、「冷凍保存後及び/又は冷蔵保存後の再加熱時でも内層が軟らかくかつ口溶けが良好」(【0007】)である、という顕著な効果を奏するものである。
イ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1米粉発明並びに甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(1)ア及びイで検討したとおり、本件特許発明1は、甲1米粉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明2及び3は甲1米粉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比・判断
本件特許発明4と甲1ミックス粉発明を対比すると、上記(1)アと同様の相当関係が成り立つ。
また、甲1ミックス粉発明の「たこ焼き用のミックス粉」は、本件特許発明4の「たこ焼類粉又はお好み焼類粉」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部であるたこ焼類粉又はお好み焼類粉。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-2>
本件特許発明4は、米粉に関し、「損傷澱粉量が15~45%である」と特定されているのに対し、甲1ミックス粉発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点1-2について検討すると、上記(1)アの相違点1-1と同旨であるから、上記(1)アと同様に判断される。
イ まとめ
したがって、本件特許発明4は、甲1ミックス粉発明並びに甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明5ないし7について
本件特許発明5ないし7は、請求項4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(3)ア及びイで検討したとおり、本件特許発明4は、甲1ミックス粉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明4の特定事項を全て含む発明である本件特許発明5ないし7は、甲1ミックス粉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件特許発明8について
ア 対比・判断
本件特許発明8と甲1たこ焼き発明を対比すると、上記(1)アと同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部であるたこ焼類又はお好み焼類。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-3>
本件特許発明8は、米粉に関し、「損傷澱粉量が15~45%である」と特定されているのに対し、甲1たこ焼き発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点1-3について検討すると、上記(1)アの相違点1-1と同旨であるから、上記(1)アと同様に判断される。
イ まとめ
したがって、本件特許発明8は、甲1たこ焼き発明並びに甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、請求項8を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(5)ア及びイで検討したとおり、本件特許発明8は、甲1たこ焼き発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明8の特定事項を全て含む発明である本件特許発明9及び10は甲1たこ焼き発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(7)申立理由1についてのむずび
したがって、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2(甲第4号証に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と甲4米粉発明を対比する。
甲4米粉発明の「熱処理した穀粉(α化度12%)であるうるち米粉」は、本件特許発明1の「米粉」に相当する。
甲4米粉発明は、「小麦粉70質量部、熱処理した穀粉(α化度12%)であるうるち米粉15質量部を含む合計100質量部」であり、小麦粉100質量部に対して、うるち米粉の配合量が約21.4質量部であるから、本件特許発明1の「小麦粉100質量部に対して、1~52質量部の配合量となるように配合する」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「米粉であって、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部の配合量となるように配合するためのたこ焼類用又はお好み焼類用の米粉。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1は、米粉に関し、「損傷澱粉量が15~45%である」と特定されているのに対し、甲4米粉発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点4-1について検討すると、上記2(1)アの相違点1-1と同旨であるから、上記2(1)アと同様に判断される。
イ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲4米粉発明に並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(1)アで検討したとおり、本件特許発明1は、甲4米粉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の特定事項を全て含む発明である本件特許発明2及び3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比・判断
本件特許発明4と甲4生地組成物発明を対比すると、上記(1)アと同様の相当関係が成り立つ。
また、甲4生地組成物発明の「お好み焼き類用生地組成物」は、本件特許発明4の「たこ焼類粉又はお好み焼類粉」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部であるたこ焼類粉又はお好み焼類粉。」
<相違点4-2>
本件特許発明4は、米粉に関し、「損傷澱粉量が15~45%である」と特定されているのに対し、甲4生地組成物発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点4-2について検討すると、上記(1)アと同旨であるから、上記(1)アと同様に判断される。
イ まとめ
したがって、本件特許発明4は、甲4生地組成物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明5ないし7について
本件特許発明5ないし7は、請求項4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明4の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(3)ア及びイで検討したとおり、本件特許発明4は、甲4生地組成物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明4の特定事項を全て含む発明である本件特許発明5ないし7は、甲4生地組成物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件特許発明8について
ア 対比・判断
本件特許発明8と甲4大阪焼き発明を対比すると、上記(1)アと同様の相当関係が成り立つ。
また、甲4大阪焼き発明の「大阪焼き」が、本件特許発明8の「お好み焼類」に相当することは、技術常識上明らかである。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対して、1~52質量部であるたこ焼類又はお好み焼類。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-3>
本件特許発明8は、米粉に関し、「損傷澱粉量が15~45%である」と特定されているのに対し、甲4大阪焼き発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点4-3について検討すると、上記(2)アと同旨であるから、上記(2)アと同様に判断される。
イ まとめ
したがって、本件特許発明8は、甲4大阪焼き発明並びに甲4及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、請求項8を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(5)ア及びイで検討したとおり、本件特許発明8は、甲4大阪焼き発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明8の特定事項を全て含む発明である本件特許発明9及び10は甲4大阪焼き発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(7)申立理由2についてのむずび
したがって、申立理由2によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載自体に不明確な記載はなく、本件特許の発明の詳細な説明の記載とも整合する。
したがって、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎とすれば、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
また、本件特許発明2ないし10に関しても同様であり、本件特許発明2ないし10に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1ないし10は明確である。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 3の主張について検討する。
請求項7は請求項4を引用するものであるから、本件特許発明7は、本件特許発明4の範囲内であり、かつ「米粉の含有量が、1~45質量%である」という特定事項を有するものであることは、明確である。
したがって、特許異議申立人の上記第3 3の主張は採用できない。
(4)申立理由3についてのむすび
したがって、申立理由3によっては、本件特許の請求項7に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由4(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし10の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「内層が軟らかくかつ口溶けが良好なたこ焼類及びお好み焼類を提供すること」である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】、【0011】ないし【0014】、【0025】、【0026】、【0029】、ないし【0082】及び【0114】には、本件特許発明1ないし10に対応する記載がある。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0011】及び【0012】には、「損傷澱粉量が15~45%」であるという条件を満たすことの技術的意味が具体的に記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0035】ないし【0058】には、「損傷澱粉量が15~45%」を満たす「たこ焼類用又はお好み焼類用の米粉」は、「損傷澱粉量が15~45%」を満たさない「たこ焼類用又はお好み焼類用の米粉」よりも、内層評価、口溶け評価、外観及び食感を含めたたこ焼き全体としての総合評価において、良好であることを確認する記載もある。
そうすると、これらの記載に接した当業者は、「損傷澱粉量が15~45%」である「たこ焼類用又はお好み焼類用の米粉」との特定事項を満たせば、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1は、発明の課題を解決できると認識できる特定事項をすべて有するものであるから、当然に発明の課題を解決するものである。
また、本件特許発明2ないし10も同様に判断される。
したがって、本件特許発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし10に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 4の主張について検討する。
米粉の配合量が小麦粉100質量部に対して1質量部である試験例8及び16は、コントロールと比べて少なくとも4℃1日保存及び4℃3日保存における総合評価がいずれも良好であることが確認されている。
また、米粉の配合量が小麦粉100質量部に対して52質量部である試験例15及び20は、コントロールと比べて少なくとも4℃1日保存における総合評価が良好であることが確認されている。
よって、小麦粉100質量部に対して1質量部や52質量部の量で用いた場合においても、当業者は課題を解決できると認識できるものであり、いくつかの評価項目においてコントロールと比べて良好でないことのみでもって、上記(2)の判断に影響を与えるものではない。
したがって、特許異議申立人の上記第3 4の主張は採用できない。
(4)申立理由4についてのむすび
したがって、申立理由4によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700686