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特許異議申立

2022-700465

揚げ衣用バッター液及びその製造方法並びに揚げ物の製造方法

審判番号
2022-700465
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-157605
登録番号
6979302
請求日
2022年05月30日
審決日
2022年10月20日
公報発行日
2022年11月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】昭和産業株式会社
  • 【権利者代理人】渡邊 薫
  • 【異議申立人】中嶋 美奈子
審判長/審判官
  • 審判長 平塚 政宏
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
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特許第6979302号発明「揚げ衣用バッター液及びその製造方法並びに揚げ物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6979302号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6979302号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、 平成29年 8月17日に出願され、 令和 3年11月17日にその特許権の設定登録がされ、 令和 3年12月 8日に特許掲載公報が発行された。 その後、当該特許に対し、 令和 4年 5月30日に特許異議申立人中嶋美奈子が、全ての請求項に係る特許に対して特許異議の申し立てを行った。 第2 本件発明 特許第6979302号の請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 液体状の食用油脂、親油型の乳化剤、穀粉、加工デンプン及び水を含有し、 前記親油型の乳化剤が、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であり、 前記液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%であり、 前記親油型の乳化剤の含有量が前記液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下であり、 17℃における粘度が1500~11000mPa・sである、揚げ衣用バッター液。 【請求項2】 前記親油型の乳化剤がさらにレシチンを含む、請求項1に記載の揚げ衣用バッター液。 【請求項3】 前記加工デンプンがアセチル化デンプン及び/又はエーテル化デンプンを含む、請求項1又は2に記載の揚げ衣用バッター液。 【請求項4】 から揚げ類用又は、天ぷら類用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の揚げ衣用バッター液。 【請求項5】 液体状の食用油脂、親油型の乳化剤、穀粉、加工デンプン及び水を含有し、前記親油型の乳化剤が、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であり、 前記液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%であり、 前記親油型の乳化剤の含有量が前記液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下であり、 17℃における粘度が1500~11000mPa・sである、揚げ衣用バッター液の製造方法であり、 下記(A)~(C)のいずれかの工程を含む、揚げ衣用バッター液の製造方法: (A)前記液体状の食用油脂と前記親油型の乳化剤とを含む混合物、前記穀粉及び前記加工デンプンを含む粉体原料、並びに前記水を混合する工程、 (B)前記穀粉及び前記加工デンプンを含む粉体原料と前記親油型の乳化剤とを含む混合物、前記液体状の食用油脂、並びに前記水を混合する工程、 (C)前記液体状の食用油脂と前記親油型の乳化剤とを含む混合物、前記穀粉及び前記加工デンプンを含む粉体原料と前記親油型の乳化剤とを含む混合物、並びに前記水を混合する工程。 【請求項6】 請求項1~4のいずれか一項に記載の揚げ衣用バッター液を具材に付着させ、油ちょうする工程を含む、揚げ物の製造方法。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人中嶋美奈子は、本件特許に対する異議理由として、下記1~3を主張し、証拠方法として下記4の甲第1~6号証を提出した。 1.進歩性(甲第1号証) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 2.進歩性(甲第2号証) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 3.サポート要件 本件特許の請求項1~6の記載は、下記(1)~(3)の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~6に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。 (1)穀粉、加工デンプン及び水の量について 請求項1~6には油脂及び乳化剤の量ならびに粘度については特定されているが、穀粉、加工デンプン及び水の量についての特定がないため、発明が解決しようとする課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとなっている。 (2)親油型の乳化剤の含有量について 請求項1~6は親油型の乳化剤の含有量を、液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超と規定していることにより、発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものとなっている。 (3)親油型の乳化剤音合計含有量について 請求項2に係る特許は、親油型の乳化剤の合計含有量が本件特許明細書に記載された範囲を超える場合を含んでいる。 4.証拠方法 以下の証拠が提出された。 主たる証拠として 甲第1号証 米国特許出願公開第2017/0202233号明細書 (以下「文献1」という。) 甲第2号証 特開2011-244720号公報 (以下「文献2」という。) 従たる証拠として 甲第3号証 特開2002-291434号公報 (以下「文献3」という。) 甲第4号証 特開平4-131057号公報 (以下「文献4」という。) 甲第5号証 特開平9-206016号公報 (以下「文献5」という。) 甲第6号証 Ingredion 加工でん粉、イングレディオン社のウェブページ(URL:https://www.ingredion.com/apac/ja-jp/ingredients/ingredient-types/starches/modified-starch.html、アクセス日2022年5月24日) (以下「文献6」という。) 第4 当審の判断 1. 進歩性(甲第1号証) (1)文献1、文献6の記載事項 ア.文献1には以下の記載がある。 ()内に訳を記載する。 (ア)1 . A shelf-stable cooking aid for coating and frying a food product, the cooking aid comprising: 25-40 wt % oil 35-65 wt % water; 10-25 wt % flour and/or starch; an emulsifier; and the oil and water are in the form of an emulsion.(Claim1) (1.食品のコーティングと油ちょうのための常温保存可能な調理補助品であって、該調理補助品は、25~40重量%の油、35~65重量%の水、10~25重量%の粉及び/又は澱粉、乳化剤を含有し、かつ該油及び水が乳化物の形態である、調理補助品。) (イ)5. The cooking aid according to claim 1 , wherein the flour is selected from the group consisting of rice flour, wheat flour, corn flour, and combinations thereof.(Claim 5) (5.前記粉が米粉、小麦粉、コーンフラワー、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の調理補助品。) (ウ)8 . The cooking aid according to claim 1 , wherein the emulsifier is selected from the group consisting of lecithin, polyglycerol-polyricinoleate (PGPR), monoglyceride and mono-diglyceride, and combinations thereof.(Claim 8) (8.前記乳化剤がレシチン、ポリグリセロール-ポリリシノレエート(PGPR)、モノグリセリド、モノージグリセリド、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の調理補助品。) (エ)9 . Method for making a shelf-stable cooking aid comprising the steps of: a) dissolving an emulsifier in oil and mixing with water to form an emulsion; b) mixing flour and/or starch with water; c) admixing oil and emulsifier to the mixture of step b) to form a blend; d) pasteurizing the blend from step c) at a temperature of at least 65℃; e) mixing the emulsion from step a) with the pasteurized blend from step d) and filling the resulting cooking aid into packaging containers; wherein the total amount of water from the different method steps adds up to 35-65 wt % of the cooking aid; and wherein the total amount of oil from the different method steps adds up to 25-40 wt % of the cooking aid.(Claim 9) (9.常温保存可能な調理補助品の製造方法であって、a)乳化剤を油に溶解させ、次いで水と混合して乳化物を形成する工程; b)粉及び/又は澱粉を水と混合する工程; c)油と乳化剤を工程b)の混合物に混合し、ブレンド物を形成する工程; d)工程c)のブレンド物を少なくとも65℃の温度で殺菌する工程; e)工程a)の乳化物を工程d)の殺菌したブレンド物に混合し、得られた調理補助品を包装容器に充填する工程;を含み、ここで、各種方法工程からの水の総量は、該調理補助品の35~65重量%に添加され;各種方法工程からの油の総量は、該調理補助品の25~40重量%に添加される、方法。) (オ)〔0031〕Hence, a preferred embodiment pertains to the cooking aid of the present invention comprising flour, wherein the flour is preferably selected from the group consisting of rice flour, wheat flour, corn flour, or a combination thereof. (〔0031〕ゆえに、好ましい実施形態は、粉を含有する本発明の調理補助品に関し、該粉は、好ましくは米粉、小麦粉、コーンフラワー、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。) (カ)〔0032〕In another embodiment, the cooking aid of the present invention comprises starch, wherein the starch is selected from the group consisting of un-modified (i.e. natural) corn, rice, potato and/or tapioca starch. In another embodiment, the starch is selected from physical and/or chemical modified potato, corn or tapioca starch. (〔0032〕別の実施形態において、本発明の調理補助品は澱粉を含有し、該澱粉は未加工(すなわち天然の)コーン、米、馬鈴薯及び/又はタピオカ澱粉からなる群より選択される。別の実施形態において、該澱粉は、物理的及び/又は化学的に加工された馬鈴薯、コーン、又はタピオカ澱粉から選択される。) (キ)〔0035〕Flour and/or starches are responsible for providing a crispy coat to food products and contribute to the viscosity of the resulting paste. Preferably, the cooking aid of the present invention has a viscosity from 20 to 300 Pa・s at a shear rate of 1 s-1 at 25℃, measured by using a Rheometer. More preferably, the cooking aid has a viscosity from ca. 30 to 300 Pa・s at a shear rate of 1 s-1at 25℃. Cooking aids with higher viscosities, i.e. a viscosity above ca. 300 Pa・s form dough-like textures, are not preferred for the cooking aid of the present invention. Cooking aids with lower viscosities than ca. 20 Pa・s are not preferred for the present invention as they are too liquid and not enough pasty anymore. (〔0035〕粉及び/又は澱粉は食品にクリスピーなコーティングを与えることに関与し、また得られたペーストの粘度に寄与する。好ましくは、本発明の調理補助品は、レオメーターで測定した25℃で1s-1のせん断率が20~300Pa・sの粘度を有する。より好ましくは、該調理補助品は、25℃で1s-1のせん断率が30~300Pa・sの粘度を有する。より高粘度、つまり約300Pa・sを超える粘度の調理補助品は、生地の様なテクスチャを形成し、本発明の調理補助品にとって好ましくない。約20Pa・sより低粘度の調理補助品は、液状になりすぎてもはや十分なペースト状ではないため本発明の調理補助品にとって好ましくない。) (ク)〔0036〕Preferably, the cooking aid of the present invention comprises an emulsifier, wherein the emulsifier is selected from the group consisting of lecithin, polyglycerol-polyricinoleate (PGPR), monoglyceride and mono-diglyceride, or combinations thereof. (〔0036〕好ましくは、本発明の調理補助品は乳化剤を含有し、該乳化剤は、レシチン、ポリグリセロール-ポリリシノレエート(PGPR)、モノグリセリド、モノージグリセリド、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。) (ケ)〔0037〕Preferably, the emulsifier is present in the cooking aid in an amount of 0.5-3.0 wt %, more preferably in an amount of 1-2 wt %. (〔0037〕好ましくは、前記乳化剤は、前記調理補助品中に、0.5~3.0重量%、より好ましくは1~2重量%の量で存在する。) (コ)Example 2: Preparation of a Cooking Aid 〔0059〕150 g of lecithin (Topcithin(R)NGM from Cargill) was dissolved in 3500 g of rice bran oil and mixed using Silverson mixer at 3500 rpm for 5 min. 700 g of rice flour, 200 g of modified starch (Col-flo(R)67 from Ingredion), 1000 g of modified starch (NationalTMDC from Ingredion), 410 g of a seasoning mix, 70 g of lactic acid (88% concentration), 10 g of potassium sorbate and 3960 g of water were then mixed into the oil mixture. The mixture was then pasteurized in the Guisti Tank and held at 92℃ for 10 min, stirring at speed 5. The pH of the cooking aid was 3.88. It was then filled into glass jars. (例2:調理補助品の調整 〔0059〕150gのレシチン(Cargill製Topcithin(R)NGM)を3500gの米ぬか油に溶解させ、シルバーソンミキサーを用いて3500rpmで5分間混合した。700gの米粉、200gの加工澱粉(Ingredion社製Col-flo(R)67)、1000gの加工澱粉(Ingredion社製NationalTMDC)、410gのシーズニングミックス、70gの乳酸(88%濃度)、10gのソルビン酸カリウム、及び3960gの水を、次いで該油混合物と混合した。次いで混合物を、Guisti Tank中にて速度5で攪拌しつつ、殺菌し、92℃で10分間保持した。該調理保持品のpHは3.88であった。次いでこれをガラス製のジャーに充填した。) (サ)〔0060〕The composition of the cooking aid is as follows:Water 39.6% Rice Bran Oil 35.0% NationalTMDC 10.0% Rice Flour 7.0% Col-flo(R)67 2.0% Topcithin(R)NGM 1.5% Lactic acid (88%) 0.7% Mixture of herbs 4.1% Potassium Sorbate 0.1% (〔0060〕該調理補助品の組成は以下のとおりである。水 39.6%、米ぬか油 35.0%、NationalTMDC 10.0%、米粉 7.0%、Col-flo(R)67 2.0%、Topcithin(R)NGM 1.5%、乳酸(88%) 0.7%、ハーブ混合物 4.1%、ソルビン酸カリウム 0.1%) (シ)Example 4: Sensorial Evaluation of Cooking Aid, in Comparison to Deep-Frying and Pan-Frying 〔0066〕The cooking aid as per example 2 was evaluated for its functionality during cooking and for the end/cooked product characteristics in comparison to pan-frying and deep-frying (see Tables 2 & 3 for results). 7 internal panellists were used to rate the products. (例4:調理補助品の官能評価、ディープフライ及び揚げ焼きとの比較 〔0066〕例2の調理補助品を、調理中の機能性及び最終調理品の性質について、揚げ焼き及びディープフライと比較して評価した(結果は表2及び3を参照。)。7人の内部パネリストが製品の評価に用いられた。) (ス)〔0069〕In terms of product functionality during cooking, the cooking aid provided a more superior cooking experience compared to pan and deep-frying. The results showed that the cooking aid had less oil splattering, was less smoky, had less oil smell than pan-frying and deep-frying. Furthermore, it had less residues stuck on the pan than deep-frying ( FIG. 1 ). (〔0069〕調理中の製品の機能性に関して、前記調理補助品は、揚げ焼き及びディープフライと比べてより高評価の調理経験をもたらした。この結果は、該調理補助品が、揚げ焼き及びディープフライと比べて、より油跳ねが少なく、煙が出にくく、油臭が少ないことを示した。さらに、ディープフライと比べてフライパン中への残りかすが少なかった(図1)。) (セ)〔0070〕In terms of end product attributes, the cooking aid gave cooked chicken a more fried taste and a more crispy coating than pan-frying, and was superior in providing a juicy and flavourful chicken compared to pan-frying and deep-frying ( FIG. 2 ). (〔0070〕最終製品の性質に関して、前記調理補助品は、揚げ焼きと比べて、調理した鶏肉に対してより強い揚げた風味とよりクリスピーな衣を与え、かつ、揚げ焼き及びディープフライと比べてジューシーで香りのよい鶏肉をもたらす点で高評価であった(図2)。) イ.文献6には、Ingredion社のCol-flo(R)67がアセチル化アジピン酸架橋澱粉であることを示す記載がある(「アセチル化アジピン酸架橋でん粉(E1422)」の項を参照。)。 ウ.したがって、文献1には、 「食品のコーティングと油ちょうのための常温保存可能な調理補助品であって、該調理補助品は、25~40重量%の油、35~65重量%の水、10~25重量%の粉及び/又は澱粉、乳化剤を含有し、かつ該油及び水が乳化物の形態である、調理補助品であって、 該油が米ぬか油であって35.0重量%含有され、 該粉が米粉、小麦粉、コーンフラワー等の穀粉であり、 該澱粉がNationalTMDC とCol-flo(R)67の加工澱粉であり、 該乳化剤がレシチンであって1.5重量%含有され、 乳化剤が前記調理補助品中に、0.5~3.0重量%含有される 調理補助品」(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 (2)検討 ア.本件発明1と引用発明1とを対比すると、 引用発明1における「米ぬか油」は、本件発明1における「液体状の食用油脂」に相当する。 また、引用発明1における「食品のコーティングと油ちょうのための」「調理補助品」は、本件発明1における「揚げ衣用バッター液」に、 引用発明1における「乳化剤」としての「レシチン」は、本件発明1における「親油型の乳化剤」に相当する。 引用発明1における「米ぬか油」と「レシチン」はそれぞれ調理補助品中に35.0重量%、1.5重量%で配合されているところ、「重量%」と「質量%」に技術的な差異はないから、「米ぬか油」が「35.0重量%」含有されることは、本件発明1における「液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%」の範囲内であり、 引用発明1における「米ぬか油」と「レシチン」はそれぞれ調理補助品中に35.0重量%、1.5重量%含有で配合されているから、レシチンの米ぬか油100質量部に対する含有割合は約4.28質量部であり、本件発明1における「親油型の乳化剤の含有量が前記液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下」の範囲内である。 イ.そうすると、両発明は、 「液体状の食用油脂、親油型の乳化剤、穀粉、加工デンプン及び水を含有し 液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%であり、 親油型の乳化剤の含有量が前記液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下である揚げ衣用バッター液」 の点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点1-1)親油型の乳化剤が、本件発明1においては「グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種」であるのに対し、引用発明1においてはレシチンである点。 (相違点1-2)揚げ衣用バッター液の粘度が、本件発明1においては「17℃における粘度が1500~11000mPa・sである」のに対し、引用発明1においては、粘度の特定がない点。 ウ.上記相違点1-1、相違点1-2について検討する。 (ア)相違点1-1について、文献1の摘示(ウ)には、当該揚げ衣用バッター液における乳化剤として、レシチンの他、ポリグリセロール-ポリリシノレエート(PGPR)、モノグリセリド、モノージグリセリド、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され得る旨開示はあるが、引用発明1の揚げ衣用バッター液の配合組成は、文献1の摘示(ス)及び文献1の摘示(セ)にて開示されるように、当該揚げ油用バッター液での調理例で、より油跳ねが少なく、煙が出にくく、油臭が少なく、フライパン中への残りかすが少なく、強い揚げ風味とクリスピーな衣を与え、ジューシーで香りもよいとの良好な結果を得られているものである。よって、当該引用発明1の配合組成から、乳化剤としてのレシチンを他のポリグリセロール-ポリリシノレエート(PGPR)、モノグリセリド、モノージグリセリド等へ変更を試みようとするきっかけないし契機となる事情が存在しない。 (イ)相違点1-2について、文献1の摘示(キ)には、レオメーターで測定した25℃で1s-1のせん断率が30~300Pa・sの粘度が好ましい旨言及されているが、ここで、本件発明1の粘度と文献1に記載の粘度とは測定温度及び剪断速度が異なっており、粘度の温度依存性及び剪断速度依存性から当該両組成物の粘度は計算により相互に換算することはできない。また、文献1の当該摘示(キ)においては、高粘度では揚げ衣用バッター液が生地様となり低粘度では液状になり過ぎる点指摘されている。これに対して、本件発明1は、本願明細書〔0027〕、同〔0058〕において、17℃における粘度を1500~11000mPa・sの数値範囲内とすることにより、衣付きの観点のみならず、冷解凍後の揚げ衣に好ましい硬さを付与するとの観点、硬さに加えて食感を向上させるとの観点からの効果検証がなされており、当該17℃における粘度1500~11000mPa・sの数値範囲にて効果の顕著性を有している。 エ.したがって、本件発明1は、文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ.また、本件発明2~6は、本件発明1に対して更に技術的事項を追加したものであるから、引用発明1と対比すると、少なくとも上記イ.と同様の点で相違する。そして、相違点については上記ウ.で検討したとおりである。よって、本件発明2~6は、上記文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)進歩性(甲第1号証)についてのまとめ 以上のとおり、進歩性(甲第1号証)を根拠として本件特許を取り消すことはできない。 2.進歩性(甲第2号証) (1)文献2の記載事項 ア.文献2には以下の記載がある。 (ア)【0017】 本発明の油ちょう食品用バッターは、上記澱粉、大豆タンパク、及び油脂に加えて、さらに、水、上記以外の粉体類、並びに、増粘剤、乳化剤、着色剤、保存料等の食品添加物を配合することができる。 (イ)【0028】 [実施例1] 食感の経時変化に対する、植物タンパクの種類及び量の影響について、コロッケを製造して検討した。 表1に示す配合量の油脂と、水とを、ミキサーを用いて1分間混捏した。その後、表1に示す粉体類を添加し、ミキサーを用いてさら2分間混捏し、油ちょう食品用バッター(以下、単に「バッター」ということがある。)を製造した。製造されたバッターの、表1中に示す温度における粘度を、円盤型スピンドル粘度計(BLOOKFIELD社製、DV-I+)を用いて、20rpmの回転スピードにおいて測定した結果を、表1に併記する。 また、みじん切りにしたタマネギと、牛挽肉を炒め、蒸した後に皮を剥いてミンチしたジャガイモと、調味料とを混捏し、室温まで冷却後、45~47gずつ取り分けて成型し、コロッケ中種とした。 得られた中種の表面に、1~2gの一次パン粉を付着後、上記にて得られたバッターを14g付着させ、さらに14~15gの二次パン粉を付着させ、再度成型を行って、油ちょう用加工食品とした。 【0029】 プレフライ品として、得られた油ちょう用加工食品を、直後にパーム油(日清デリカエースSO、日清オイリオグループ社製)を用いて180℃で2分30秒間油ちょうし、油切りした後に、急速凍結庫にて凍結し、-18℃で冷凍保存した。30日冷凍保存した後、6個ずつ皿に載せてラップをせずに、電子レンジを用いて1000Wで1分30秒間加熱調理を行った。調理後、ホットウォーマーを用いて60℃にて保存を開始した。 また、ディープフライ品として、得られた油ちょう用加工食品を、急速凍結庫にて凍結し、-18℃で冷凍保存した。30日冷凍保存した後、パーム油を用いて170℃で4分間油ちょうし、油切りした後にホットウォーマーを用いて60℃にて保存を開始した。 保存開始時点から2時間おきに、6時間経過後まで、コロッケの質量を測定した。また、4時間経過後及び6時間経過後(ディープフライ品は6時間経過後のみ)に、官能試験を行った。プレフライコロッケの結果を表2に、ディープフライコロッケの結果を表3に示す。 なお、本実施例1中、本願発明に係る実施例は、表中の1-4~1-9であり、1-1~1-3は比較例である。 【0030】 【表1】 [図:0001390588000001.jpg] 上記文献2表1中の実験例1-2、1-3、1-4及び1-8におけるサラダ油の量は、15.6~17.8質量%と計算される。 イ.したがって、文献2には 「加工澱粉1、加工澱粉2、小麦粉及び/又は大豆粉、サラダ油、及び水を含有する油ちょう食品用バッターであって、サラダ油の含有量が15.6~17.8質量%であり、測定温度16.7℃~17.9℃にて円盤形スピンドル粘度計(BLOOKFIELD社製、DV-I+)、円盤スピード20rpmで測定した粘度が1530~4740cPである食品用バッター」(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 (2)検討 ア.本件発明1と引用発明2を対比すると、 引用発明2における「サラダ油」、「小麦粉及び/又は大豆粉」は、それぞれ、本件発明1における「液体状の食用油脂」、「穀粉」に相当する。 引用発明2において「サラダ油の含有量が15.6~17.8質量%」であることは、本件発明1における「液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%」の範囲内である。 イ.そうすると、両発明は、 「液体状の食用油脂、穀粉、加工デンプン、及び水を含有し、 液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%である揚げ衣用バッター液」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2-1)本件発明1においては親油型の乳化剤を液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下含有させるのに対して、引用発明2においては乳化剤の特定がない点。 (相違点2-2) 本件発明1においては17℃における粘度が1500~11000mPa・sであるのに対して、引用発明2においては測定温度16.7℃~17.9℃にて円盤形スピンドル粘度計(BLOOKFIELD社製、DV-I+)、円盤スピード20rpmで測定した粘度が1530~4740cPである点。 ウ.上記相違点2-1、相違点2-2について検討する。 (ア)相違点2-1について、文献2の摘示(ア)には、乳化剤を、増粘剤、着色剤、保存料等の食品添加物の一種として加えてもよい旨記載されているが、乳化剤の親水性・親油性の別や具体的な乳化剤種、液状の食用油脂に対する含有比に関し何ら手がかりとなる記載はない。これに対して、本件発明1は本願明細書〔0016〕~〔0019〕及び同〔0044〕~〔0062〕に開示されているように、特定の親油型の乳化剤を所定量配合することにより、冷解凍後の揚げ衣をより軟らかくなりにくくし、油ちょう時の衣の散りを抑えて好ましい形状の揚げ衣が得られるという特有の効果を奏するものであり、当該効果は文献2に記載された発明から予測される範囲を超えるものである。 (イ)相違点2-2について、本件発明1の粘度と文献2に記載の粘度とは剪断速度が異なっており(本件発明1の測定時剪断速度は12rpm、文献2は20rpm)、粘度の剪断速度依存性から計算により剪断速度の異なる粘度を換算することはできない。そして、本件発明1においては、本願明細書〔0027〕、同〔0058〕で開示されるとおり、17℃における粘度を1500~11000mPa・sの数値範囲内とすることにより、冷解凍後の揚げ衣に好ましい硬さを付与し、硬さに加えて食感を向上させ、衣付きの良好な揚げ物を得るという顕著な効果を有するものであると認められる。 エ.したがって、本件発明1は、文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 オ.本件発明2~6は、本件発明1に対して更に技術的事項を追加したものであるから、引用発明2と対比すると、少なくとも上記イ.と同様の点で相違する。そして、相違点については上記ウ.で検討したとおりである。よって、本件発明2~6は、上記文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)進歩性(甲第2号証)についてのまとめ 以上のとおり、進歩性(甲第2号証)を根拠として本件特許を取り消すことはできない。 3.サポート要件 (1)本件発明が解決しようとする課題 ア.本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。 (ア)【発明が解決しようとする課題】 【0005】しかしながら、従来技術では冷解凍後における衣の軟化を防止するという課題に対しては十分な効果が得られていないため、更なる改良が求められている。 そこで、本発明は、揚げ物の衣が冷解凍によって軟らかくなりにくい揚げ衣用バッター液を提供することを主目的とする。 (イ)【課題を解決するための手段】 【0006】 すなわち、本発明は、液体状の食用油脂、親油型の乳化剤、穀粉、加工デンプン及び水を含有し、前記液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%である、揚げ衣用バッター液を提供する。 また、本発明は、液体状の食用油脂の含有量が15~35質量%である揚げ衣用バッター液の製造方法であり、 下記(A)~(C)のいずれかの工程を含む、揚げ衣用バッター液の製造方法を提供する。 (A)前記液体状の食用油脂と親油型の乳化剤とを含む混合物、穀粉及び加工デンプンを含む粉体原料、並びに水を混合する工程、 (B)穀粉及び加工デンプンを含む粉体原料と親油型の乳化剤とを含む混合物、前記液体状の食用油脂、並びに水を混合する工程、 (C)前記液体状の食用油脂と親油型の乳化剤とを含む混合物、穀粉及び加工デンプンを含む粉体原料と親油型の乳化剤とを含む混合物、並びに水を混合する工程。 また、本発明は、上記揚げ衣用バッター液を具材に付着させ、油ちょうする工程を含む、揚げ物の製造方法を提供する。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、揚げ物の衣が冷解凍によって軟らかくなりにくい揚げ衣用バッター液を提供することができる。 (ウ)【0045】 実施例1~8の揚げ衣は、冷解凍後でも軟らかくならず好ましい硬さを有していた。また、実施例1~8の結果から、親油型の乳化剤は粉体原料と液体状の食用油脂のどちらか一方に混合してもよく両方に混合してもよいが、液体状の食用油脂に混合することが好ましく、粉体原料及び液体状の食用油脂の両方に混合することがより好ましいことが確認された。 【0046】 液体状の食用油脂及び乳化剤を含有しない比較例1、乳化剤を含有しない比較例2、乳化剤として親水型(HLB15.0)の乳化剤のみを含有する比較例3は、いずれも揚げ衣が軟らかかった。これらの結果から、液体状の食用油脂及び親油型(HLB9以下)の乳化剤を含む揚げ衣用バッター液が好ましいことが確認された。 (エ)【0049】 液体状の食用油脂100質量部に対する親油型の乳化剤の含有量が5質量部である実施例18は、許容範囲であるが油ちょう時の衣の散りが認められた。このことから、より良好な形状の揚げ衣を得るためには親油型の乳化剤の含有量は液体状の食用油脂100質量部に対して5質量部以下が好ましいことが確認された。 (オ)【0053】 加工デンプンを含有する実施例19~24の揚げ衣は好ましい硬さであった一方で、未加工のでん粉を含有する比較例6、7の揚げ衣は軟らかかったことから、加工デンプンを含有することにより揚げ衣に硬さを付与できることが確認された。 【0054】 実施例19~24の結果から、加工デンプンの中でも、アセチル化デンプン(酢酸デンプン)、エーテル化デンプン(ヒドロキシプロピル化デンプン又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン)を用いることで、硬さ、食感、形状の全てが優れた揚げ衣が得られることが確認された。 【0055】 比較例8~10は液体状の食用油脂及び親油型の乳化剤を含有しないバッター液である。アセチル化デンプンを含有する比較例8は、酸化デンプンを含有する比較例9及びリン酸架橋デンプンを含有する比較例10よりも揚げ衣が軟らかく食感が劣っていた。この比較例の結果から、揚げ衣に硬さを付与し食感を向上させるためには、加工デンプンの中でも酢酸デンプン又はリン酸架橋デンプンを用いることが好適であると推測された。しかしながら実施例19~24の結果から、意外にも、酸化デンプン及びリン酸架橋デンプンよりもアセチル化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの方が揚げ衣の硬さと食感を向上させる効果が高いことが確認された。 (カ)【表4】 【0059】 バッター液の粘度が1500~11000mPa・sの範囲である揚げ衣は、好ましい硬さを有していた。粘度が1500~9000mPa・sの範囲である揚げ衣は、硬さだけなく食感も良好であった。粘度が2000~5500mPa・sの範囲である揚げ衣は、硬さ、食感、衣付きの全てが良好であった。 (キ)【0062】 バッター液中の液体状の食用油脂の含有量が15質量%未満の比較例11は揚げ衣がやや軟らかく、35質量%超の比較例12は油感が非常に強かったことから、液体状の食用油脂の含有量は15~35質量%が好ましいことが確認された。 【0063】 実施例34~44の結果から、水の含有量を粉体原料100質量部に対して70~140質量部とすることで揚げ衣に好ましい硬さを付与できることが確認された。水の含有量が80質量部である実施例40は、水の含有量が70質量部である実施例39よりも食感が良好であった。このことから、揚げ衣のサクみ及び口溶けを向上させる観点からは、水の含有量は80質量部以上がより好ましいことが示唆された。水の含有量が130質量部である実施例41及び43は、水の含有量が140質量部である実施例42よりも揚げ衣を硬くする効果が高く、揚げ衣の油感がより良好であった。このことから、水の含有量は130質量部以下がより好ましいことが示唆された。 (ク)【0071】 ナゲット、から揚げ、天ぷらのいずれの揚げ物においても、冷解凍後の揚げ衣が軟らかくならず、好ましい硬さを有していた。さらに、食感、形状、衣付き、油感を評価したところ、すべての評価項目で良好な結果が得られた。この結果から、本発明のバッター液を用いることで解凍方法によらず良好な品質の揚げ物が得られることが確認された。なお、天ぷらの場合、特にスチームコンベクションオーブン(コンビネーションモード)で加熱して解凍する方法が好適であった。 イ.以上の記載事項から、本件発明が解決しようとする課題は、揚げ物の衣が冷解凍によって軟らかくなりにくい揚げ衣用バッター液を提供することであると認められる(以下「本件課題」という。)。 (2)検討 以下の(2-1)~(2-3)について順次検討する。 (2-1)穀粉、加工デンプン及び水の量について (2-2)親油型の乳化剤の含有量について (2-3)親油型の乳化剤の合計含有量について (2-1)穀粉、加工デンプン及び水の量について 本件特許明細書の摘示(カ)においては、揚げ物の衣が冷解凍によって軟らかくならない揚げ物用バッター液を提供するために、穀粉、加工デンプン、液状の食用油脂、水の量を調整して、所定の粘度範囲とした実験例が複数例にて開示されており、揚げ物用バッター液において、ある特定の(穀粉、加工デンプン、水の)含有量の範囲でなければ本件課題を解決できないという事情は特段存在しない。 本件発明は「揚げ物用バッター液」であることから、穀粉及び加工デンプンの量は揚げ物に適した妥当な含有量範囲を採るものであり、また、水の量については、穀粉、加工デンプン、液状の食用油脂の種別と配合比率と最終粘度から概ね決定されるものといえる。よって、これら穀粉、加工デンプン、水の量の規定がなければ、本件課題を解決し得ないとは認められない。 (2-2)親油型の乳化剤の含有量について 本件特許明細書の摘示(エ)において親油型の乳化剤の液状の食用油脂100質量部に対する添加割合について検討されており、当該摘示(エ)によれば、液状の食用油脂100質量部に対する油型の乳化剤の添加割合として、実際に検討された下限値は0.17質量部である。 上記(2-1)と同様に、本件発明においては、揚げ物衣の硬さを維持するのに適切な添加量で親油型の乳化剤が添加されればよいものといえる。また、本件特許明細書において0.17質量部未満の範囲で本件課題を解決することが実験例を以て確認されていないとはいえ、0.17質量部を下回る範囲で直ちに所定の効果を奏さないと判断される具体的な根拠は示されておらず、そのような事情はない。 異議申立人は、当該0.17質量%の検討例を以て、0超~0.169質量部の範囲では本件課題を解決し得ない旨主張するが、本件特許明細書の摘示(ウ)にて、親油型の乳化剤を添加しなかった揚げ物衣用バッター液では揚げ物の衣が柔らかくなってしまった旨記載されているとおり、親油型の乳化剤の配合目的は揚げ物の衣の硬さを出すためであり、本件課題を解決するにあたり親油型の乳化剤が配合されていること、すなわち、0超であることが特定されていれば十分であるといえる。 (2-3)親油型の乳化剤の合計含有量について ア.本件特許明細書には、親油型の乳化剤について以下の記載がある。 (説明のため下線は当審にて付したものである。) 【0016】 (2)親油型の乳化剤 「親油型の乳化剤」とは、食用油脂に溶解させることができる乳化剤を意味する。親油型の乳化剤は、好ましくはHLBが9以下の乳化剤である。冷解凍後の揚げ衣をより軟らかくなりにくくするため、親油型の乳化剤のHLBは好ましくは7以下である。 【0017】 親油型の乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステルのうち、食用油脂に溶解させることができるものが挙げられる。親油型の乳化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0018】 上記親油型の乳化剤は、揚げ衣に硬さを付与する観点からは、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。硬さに加えてサクみがあり口溶けのよい食感を付与する観点からはレシチンを含むことがより好ましい。 【0019】 揚げ衣用バッター液における親油型の乳化剤の含有量は、液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下が好ましく、0質量部超4質量部以下がより好ましく、0質量部超3質量部以下がさらに好ましい。5質量部以下とすることで、油ちょう時の衣の散りが抑えられてより好ましい形状の揚げ衣が得られる。 イ.本件請求項1においては、親油型の乳化剤は、「グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種」であり、当該親油型の乳化剤の含有量は「液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部以下」であると規定されているから、親油型の乳化剤が選択肢のいずれか1種で液体状の食用油脂100質量部に対し0質量部超5質量部含有されるものを範囲とする。 ウ.これに対し、本件請求項2においては、親油型の乳化剤は、「グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種」と、さらにレシチンを含む、と規定されているから、親油型の乳化剤が選択肢のいずれか1種及びレシチンであって、選択肢のいずれか1種とレシチンの合計量が、液体状の食用油脂100質量部に対して0質量部超5質量部含有されるものを範囲とする。 エ.一方、下線を付した本件特許明細書の上記摘示ア.から、レシチンは親油型の乳化剤としてグリセリンモノ脂肪酸エステル等、選択肢群から選択される乳化剤に追加して使用されることが理解され、レシチンを含んだ親油型の乳化剤の合計の添加量が液体状の食用油脂100質量部に対し最大で5質量部以下との趣旨が理解される。 また、本件特許明細書にて開示される実施例には、レシチンを含んだ乳化剤の全体合計での液体状の食用油脂100質量部に対する乳化剤の含有量(質量部)が実測数値として記載されているところ、その値は5質量部以下であることが理解できる。 オ.そうすると、請求項1及び請求項2に係る発明は、いずれも、本件特許明細書の発明の詳細な説明において開示された範囲を超える内容を含むものではないといえる。 (3)サポート要件についてのまとめ 以上のとおり、サポート要件違反を根拠として本件特許を取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700465

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