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特許異議申立

2021-701000

小麦加工品の製造方法及び小麦加工品

審判番号
2021-701000
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-079767
登録番号
6862256
請求日
2021年10月18日
審決日
2022年07月15日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】昭和産業株式会社
  • 【権利者代理人】渡邊 薫
  • 【異議申立人】中嶋 美奈子
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 野田 定文
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.113-ZC (A23L) / P1651.121-ZC (A23L) / P1651.537-ZC (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6862256号発明「小麦加工品の製造方法及び小麦加工品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6862256号の請求項8及び9に係る特許を取り消す。 同請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6862256号は、平成29年4月13日に出願され、令和3年4月2日に特許権の設定登録がなされ、同年4月21日にその特許掲載公報が発行されたものである。 その後、請求項1~9に係る発明の特許に対して、同年10月18日に特許異議申立人 中嶋 美奈子(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。 当審は令和4年1月21日付けで特許権者へ審尋を通知し、これに対し、特許権者は同年2月9日に回答書を提出した。さらに、当審は同年3月4日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 第2 本件発明 本件請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 水分含有量を20~50質量%に調節した小麦を加熱し、 小麦加工品に含まれる糊化した澱粉の含有量を5~50質量%、水分含有量を15質量%以下に調整し、 水分含有量を調節する前の小麦の灰分が、乾物換算質量で、原料小麦に含まれる灰分100に対して70~100である、小麦加工品の製造方法。 【請求項2】 水分含有量を調節する前に、原料小麦の外皮に損傷を与える請求項1に記載の小麦加工品の製造方法。 【請求項3】 精麦により前記原料小麦の外皮に損傷を与える請求項2に記載の小麦加工品の製造方法。 【請求項4】 前記加熱が水蒸気による加熱である請求項1~3のいずれか一項に記載の小麦加工品の製造方法。 【請求項5】 前記水蒸気で5~60分間加熱する請求項4に記載の小麦加工品の製造方法。 【請求項6】 前記加熱が過熱水蒸気による加熱である請求項1~3のいずれか一項に記載の小麦加工品の製造方法。 【請求項7】 前記過熱水蒸気で1~12分間加熱する請求項6に記載の小麦加工品の製造方法。 【請求項8】 糊化した澱粉の含有量が5~50質量%、 水分含有量が15質量%以下、 灰分が、乾物換算質量で、原料小麦に含まれる灰分100に対して70~100である小麦加工品。 【請求項9】 請求項8に記載の小麦加工品を含む穀粉組成物。」 第3 取消理由の概要及びこれに対する当審の判断 1 取消理由の概要 本件発明8及び9に係る特許に対して、当審が令和4年3月4日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。 理由:(新規性)本件発明8及び9は、本件特許出願前に日本国内で電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証を参照すれば、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明8及び9に係る特許は、取り消すべきものである。 甲第1号証:特開2008-119627号公報 甲第2号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)、第2章 1 穀類、1/5 頁(URL:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/20/1365343_1-0201r11.pdf、アクセス日2021年9月15日)」 (甲第2号証は技術常識を示す文献であり、以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。) 2 当審の判断 当審は、本件発明8及び9に係る特許について、令和4年3月4日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、当該取消理由は妥当なものと認められるので、本件発明8及び9は、特許第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 異議申立ての理由について 1 申立人の異議申立ての理由について 申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 (1)申立理由1(特許法第36条第6項第1号) 本件発明1~9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。 (2)申立理由2(特許法第29条第1項第3号) 本件発明8は、甲1及び4~7それぞれに記載された発明であり、本件発明9は、甲4、5及び7それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第113条第2号に該当する。 (3)申立理由3(特許法第29条第2項) (3-1)申立理由3-1 本件発明8及び9は、甲1及び4~7それぞれに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 (3-2)申立理由3-2 本件発明8及び9は、甲7及び10~12に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。 2 証拠方法 (1)甲第1号証:特開2008-119627号公報 (2)甲第2号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)、第2章 1 穀類、1/5頁(URL:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiIes/afieldfile/2017/12/20/1365343_1-0201r11.pdf、アクセス日2021年9月15日) (3)甲第3号証:Cereal Chemistry、2011、88(4)、p.349-351 (4)甲第4号証:特開2005-229832号公報 (5)甲第5号証:特表2016-501556号公報 (6)甲第6号証:Cereal Chemistry、1988、65(6)、p.449-452 (7)甲第7号証:特開2015-181463号公報 (8)甲第8号証:国際公開第2015/107858号の再公表公報 (9)甲第9号証:日本食品科学工学会誌、第61巻第10号、486-496頁、2014年10月 (10)甲第10号証:特開平7-265000号公報 (11)甲第11号証:特開2014-200190号公報 (12)甲第12号証:Megazyme 損傷澱粉分析法、STARCH DAMAGE ASSAY PROCEDURE、K-SDAM 06/18、2019年、日本バイオコン株式会社、表紙、第1-5頁及び奥付、URL:http://www.biocon.co.jp/products/pdf/K-SDAM%20(0618).pdf、アクセス日2021年9月17日) 3 取消理由において採用しなかった申立理由について 上記第3のとおり、本件発明8及び9は取り消されることから、本件発明8又は9を対象とする申立理由2及び3については検討を要しない。 また、申立理由1についても本件発明8及び9についての検討を要しないため、以下、本件発明1~7に係る申立理由1(特許法第36条第6項第1号)について検討する。 (1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の考え方 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件特許明細書の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 ア「【0004】 外皮の除去率を高めて外皮含有量を低減させればエグミや臭みは抑えられるが、外皮に含まれる栄養素を十分に摂取することができない。 また、従来の小麦外皮含有素材は、エグミや臭みが強かったり、焙煎風味が付与されて自然な甘みが感じられない場合があった。 そこで、本発明は、外皮の除去を最小限に抑えつつ、外皮特有のエグミ及び臭みが少なく、甘みを有する小麦加工品を提供することを主目的とする。」 イ「【0005】 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水分含有量が特定の範囲となるように吸水させた小麦を特定条件で加熱することにより、外皮を有しつつも外皮特有のエグミ及び臭みが抑えられ、且つ、小麦本来の甘みを有する小麦加工品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」 ウ「【0010】 <小麦加工品の製造方法> 本実施形態に係る小麦加工品の製造方法では、水分含有量を20~50質量%に調節した小麦を加熱し、小麦加工品に含まれる糊化した澱粉の含有量を5~50質量%、水分含有量を15質量%以下に調整する。以下、当該製造方法の詳細について説明する。 【0011】 上記製造方法では、まず、小麦の水分含有量を20~50質量%に調節する。水分含有量を調節するためには、小麦と水とを接触させればよい。例えば、小麦を水に浸漬してもよく、断続的なシャワーリングなどで小麦粒の表面を濡れた状態に保持してもよい。小麦の水分含有量が20質量%未満であると、次工程で加熱する際に小麦に含まれる澱粉の糊化が進みにくく、外皮のエグミ及び臭みが十分に低減されない場合がある。水分含有量が50質量%超であると、後述するように加熱手段として水蒸気を使用した時の乾燥負荷が増える、また、生地に加工した際にべたつきやすくなる場合がある。なお、小麦の水分含有量は、加熱乾燥法により測定することができる。」 エ「【0019】 次に、本実施形態に係る小麦加工品の製造方法では、水分含有量を20~50質量%に調節した小麦を加熱し、小麦加工品に含まれる糊化した澱粉の含有量を5~50質量%、水分含有量を15質量%以下に調整する。水分を含んだ小麦を加熱することで、小麦に含まれる澱粉の糊化が進み、小麦に含まれるタンパク質が大きく変性して可溶性タンパク質が減少する。また、加熱により酵素の失活と臭い成分の揮発が起こることで、エグミ及び臭みが低減すると考えられる。 【0020】 小麦の加熱手段は特に限定されず、例えば、水蒸気又は過熱水蒸気により直接加熱してもよく、ヒートジャケットを用いて間接的に加熱してもよい。加熱効率の観点からは、水蒸気又は過熱水蒸気を用いて加熱することが好ましい。 【0021】 加熱の温度及び時間は、加熱後に得られる小麦加工品の糊化した澱粉の含有量及び水分含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。水蒸気で加熱する場合は、水蒸気で5~60分加熱することが好ましく、10~30分加熱することがより好ましい。過熱水蒸気で加熱する場合は、120~250℃の過熱水蒸気で1~15分加熱することが好ましく、130~210℃で1~12分加熱することがより好ましい。 【0022】 加熱手段として水蒸気を用いる場合、小麦加工品の水分含有量を15質量%以下に調整するため、加熱後に乾燥工程が必要な場合がある。つまり、水蒸気を用いた加熱により小麦加工品の水分含有量が15質量%を超えた場合は、乾燥工程を行う必要がある。乾燥工程を設ける場合、小麦加工品の水分含有量を15質量%以下に調整できれば、乾燥の手段は特に限定されない。例えば、通気乾燥器、回転乾燥器、気流乾燥器、流動層乾燥器などにより乾燥することができる。 【0023】 過熱水蒸気で加熱する場合、加熱中に小麦に含まれる水分が蒸散するため、加熱温度や加熱時間を上記範囲内で調整することで、小麦加工品の水分含有量を15質量%以下とすることができる。過熱水蒸気は、糊化した澱粉の含有量と、水分含有量を同時に調整可能であり、すなわち、加熱・乾燥工程としてひとつに構成することができる好ましい手段である。 【0024】 本実施形態において最終的に得られる小麦加工品は、糊化した澱粉の含有量が5~50質量%である。糊化した澱粉の含有量が5質量%未満であるとエグミや臭みが強く、50質量%超であると食品加工適性に影響が出るおそれがある。食品加工適性の観点から、糊化した澱粉の含有量は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、小麦由来の自然な甘みがより強く感じられる小麦加工品を得るためには、糊化した澱粉の含有量は10質量%超が好ましく、12質量%以上がより好ましい。」 オ「【0040】 以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0041】 原料小麦として、北海道産中力系小麦「きたほなみ」を使用した。精麦機(グレイン・テスティング・ミルTM-05、株式会社サタケ製)を用いて原料小麦を精麦することにより、原料小麦の外皮に損傷を与えた小麦を得た。当該小麦の精麦率は93%又は86%であった。AACC法08-02に従って灰分を測定したところ、原料小麦に含まれる灰分100(乾物換算質量)に対して、精麦率93%の小麦の灰分は82、精麦率86%の小麦の灰分は70であった。 【0042】 下記表1及び表2に示す条件で、原料小麦又は精麦後の小麦を水に浸漬した後、加熱し、粉砕して、実施例1~16及び比較例1~4の小麦加工品を製造した。水蒸気を利用して加熱し、加熱後の水分含有量が15質量%を超えた小麦加工品は、水分含有量が15質量%以下となるよう加熱後粉砕前に乾燥を行った。 【0043】 水蒸気を利用した加熱工程では、コンベクションオーブン(OD-6.10P、FMI社製)を用いた。過熱水蒸気を利用した加熱あるいは加熱乾燥は、スチームオーブンQF-5100CB-R(L)(直本工業社製)を用いた。乾燥は風乾でおこなった。送風温度を50℃とし、均一に乾くように適宜混合した。粉砕は、超遠心粉砕機ZM200(レッチェ社製)を用いた。 【0044】 加熱前後における小麦の水分含有量は、加熱乾燥法により測定した。具体的には、AACC44-15Aに記載の方法で粉砕した後、アルミ容器に試料10gを秤量し、送風乾燥機で130℃、1時間乾燥させた。乾燥後の試料の重量を測定し、乾燥前の試料から乾燥後の試料の重量を減じることで、試料に含まれる水分量を算出した。 【0045】 小麦加工品の糊化した澱粉の含有量は、Starch Damage Assay Kit(MegaZyme社製)を用いて、キットのプロトコールに従って測定した。 【0046】 粉末状の小麦加工品の平均粒径は、レーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3300EXII」(日機装株式会社製)を用いて乾式で測定した。 【0047】 上述の手順で得られた小麦加工品(粒状)を専門パネラー12名が試食し、エグミ及び臭みの低減効果と、小麦由来の自然な甘みについて評価を行った。エグミ及び臭みの低減効果について、効果があると感じた場合は○、効果が感じられにくかった場合は×と評価した。また、小麦由来の自然な甘みについて、甘みを強く感じた場合は◎、甘みを感じた場合は○、甘みをやや感じた場合は△、甘みが感じられにくかった場合は×と評価した。 【0048】 更に、250μm以下に粉砕した小麦加工品(粉末状)を10質量部、小麦粉90質量部に水70質量部を添加した後、10分間撹拌して、生地を作成した。得られた生地のべたつきを、専門パネラー5名が評価した。べたつかない場合は○、ややべたついた場合は△、べたついた場合は×と評価した。 【0049】 評価結果を下記表1及び表2に示す。 【0050】 【表1】 [図:0001392018000001.jpg] 【0051】 【表2】 [図:0001392018000002.jpg] 【0052】 実施例1~16の小麦ふすまは、エグミ及び臭みが低減されており、小麦由来の自然な甘みが感じられた。一方、加熱前に水分含有量を調節しなかった比較例1及び3、並びに、加熱前の水分含有量が20質量%未満であり小麦加工品の糊化した澱粉の含有量が5質量%未満の比較例2は、エグミ及び臭みの低減効果と甘みが感じられにくかった。これらの結果から、本発明の小麦加工品は、エグミ及び臭みが少なく、小麦由来の自然な甘みを有することが確認された。また、糊化した澱粉の含有量が50質量%超の小麦加工品を配合した比較例4の生地はべたついていた。この結果から、小麦加工品に含まれる糊化した澱粉の含有量は、食品加工適性を向上させる観点から50質量%以下が好ましいことが確認された。 【0053】 また、実施例の小麦加工品中の総タンパク質量に対する可溶性タンパク質量の割合を分析したところ3.5~10質量%であった。可溶性タンパクがある程度保持されることで食品加工適性が良好となること、小麦に比べて可溶性タンパク質量は減少するが、小麦加工品に含まれる様々な酵素が適度に低減し同様に食品加工適性の向上に寄与することが考えられる。なお、可溶性タンパクは、20倍量の0.05規定の酢酸で25℃1時間で抽出したもので、それぞれのタンパク質量はケルダール法(窒素蛋白質換算係数は5.70)にて測定したものである。」 (3)本件発明の解決課題について 上記(2)アによると、本件発明の解決すべき課題は、外皮の除去を最小限に抑えつつ、外皮特有のエグミ及び臭みが少なく、甘みを有する小麦加工品を提供することと認められる。 (4)本件発明1について 上記(2)エによると、「本実施形態において最終的に得られる小麦加工品は、糊化した澱粉の含有量が5~50質量%である。糊化した澱粉の含有量が5質量%未満であるとエグミや臭みが強く、50質量%超であると食品加工適性に影響が出るおそれがある。」(【0024】)と記載されており、エグミや臭みを抑制するためには、糊化した澱粉の含有量が5~50質量%であることが必要であることが理解される。 また、糊化した澱粉の含有量を5~50質量%とするためには、上記(2)エによると、「水分含有量を20~50質量%に調節した小麦を加熱し、小麦加工品に含まれる糊化した澱粉の含有量を5~50質量%、水分含有量を15質量%以下に調整する。水分を含んだ小麦を加熱することで、小麦に含まれる澱粉の糊化が進み、小麦に含まれるタンパク質が大きく変性して可溶性タンパク質が減少する。また、加熱により酵素の失活と臭い成分の揮発が起こることで、エグミ及び臭みが低減すると考えられる。」(【0019】)と記載されていることから、所定の水分を含んだ小麦を加熱することで、澱粉の糊化と小麦の水分を調整することが必要となることが理解される。ここで、「小麦の加熱手段は特に限定されず、例えば、水蒸気又は過熱水蒸気により直接加熱してもよく、ヒートジャケットを用いて間接的に加熱してもよい。・・・加熱の温度及び時間は、加熱後に得られる小麦加工品の糊化した澱粉の含有量及び水分含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。」(【0020】及び【0021】)と記載されているから、澱粉の糊化と小麦の水分を調整するための加熱手段及び加熱条件は、当業者が必要に応じて適宜決めうる要件であるといえる。 さらに、上記(2)オによると、水分含有量を20~50質量%に調節した種々の加熱前水分である小麦を、種々の加熱条件及び加熱時間によって、糊化した澱粉の含有量を5~50質量%、及び水分含有量を15質量%以下に調整している実施例が記載されており、更に本件発明1に該当しない比較例の要件も加味すると、どのような調整によれば、所定の糊化した澱粉の含有量及び所定の水分含有量となるのかは、当業者が十分に理解できる事項といえ、その結果、小麦加工品のエグミや臭みを抑制できるという本件発明の課題が解決されることが確認されている。 よって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものである。 (5)本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用したものであるところ、上記(4)と同様の理由により、本件発明2~7は発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。 (6)申立人がサポート要件違反とする主張について 特許異議申立書には、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)の申立理由について、本件発明1~9と記載されているところもあるが、申立書7頁1~18行及び12頁下から4行~16頁8行において具体的な理由を示して記載されているのは、本件発明1~4、6、8及び9についてのみである。 したがって、本件発明1~4及び6に関して以下に検討する。 申立人は、申立書7頁10~18行及び15頁8行~16頁8行において、本件発明1~4及び6がサポート要件に違反するものとし、概ね次のように主張している。 本件特許明細書の段落0011及び0019の記載からは、小麦の加熱に際して水分量が不充分な場合には、澱粉の糊化及びエグミ及び臭みの低減が進まないと解される。よって、前記実施例での水蒸気加熱又は過熱水蒸気加熱の条件以外の加熱条件で加熱処理した小麦加工品が、エグミ及び臭みの低減や甘みといった本件発明の課題を解決できるものであるとは認められない。 したがって、小麦の加熱の手段及び加熱の条件について特定されていない本件発明1に係る小麦加工品の製造方法は、本件発明の課題を解決できない範囲を含むものである。同じく、小麦の加熱の手段又は加熱の条件について特定していない本件発明2~4及び6についても同様である。 よって、本件発明1~4及び6は、本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 しかしながら、上記(2)イ及びウによると、「水分含有量が特定の範囲となるように吸水させた小麦を特定条件で加熱することにより、外皮を有しつつも外皮特有のエグミ及び臭みが抑えられ」ること、「小麦の水分含有量が20質量%未満であると、次工程で加熱する際に小麦に含まれる澱粉の糊化が進みにくく、外皮のエグミ及び臭みが十分に低減されない場合がある」ことが記載されている。そして、上記(2)エによると、「小麦の加熱手段は特に限定されず、例えば、水蒸気又は過熱水蒸気により直接加熱してもよく、ヒートジャケットを用いて間接的に加熱してもよい。加熱効率の観点からは、水蒸気又は過熱水蒸気を用いて加熱することが好ましい」及び「加熱の温度及び時間は、加熱後に得られる小麦加工品の糊化した澱粉の含有量及び水分含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。・・・乾燥工程を設ける場合、小麦加工品の水分含有量を15質量%以下に調整できれば、乾燥の手段は特に限定されない」と記載されている。 そうすると、当該発明の詳細な説明の記載によれば、加熱手段及び加熱条件は特に限定されないものであるところ、所定の水分量に調節した小麦を加熱し、小麦加工品に含まれる所定の糊化した澱粉及び水分含有量に調整した場合であっても、加熱手段及び加熱条件の違いによって、外皮特有のエグミ及び臭みが少なく、甘みを有する小麦を得ることができないとする客観的な理由はない。 したがって、加熱手段及び加熱条件に関係なく、当業者であれば、本件発明の課題を解決できると認識できるものといえるから、本件発明1~4及び6がサポート要件に違背するという申立人の主張は採用できない。 (7)小括 よって、本件発明の特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものであると判断されるから、特許異議申立人が主張する申立理由1によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 上記第3のとおり、本件発明の請求項8及び9に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、上記第4のとおり、本件発明の請求項1~7に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 さらに、ほかに本件発明の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701000

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    共通の審決分類: 113・A23L、121・A23L、537・A23L
  • 2022-701125異議申立 / 2026-03-23 / 訂正認容果皮エキスおよびその製造方法
    共通の審決分類: 113・A23L、121・A23L、537・A23L

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