2022-700677
心電図分析装置、心電図分析方法及びプログラム
- 審判番号
- 2022-700677
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-544452外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7002168
- 請求日
- 2022年07月20日
- 審決日
- 2023年03月20日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社カルディオインテリジェンス
- 【権利者代理人】泉 通博
- 【異議申立人】家田 亘久
- 分類
- P1651.121-YAA(A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
特許第7002168号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)3月4日(優先権主張 令和2年4月8日。以下「優先日」という。)を国際出願日とするものであり、令和4年1月4日にその特許権の設定登録がされ、同年1月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~11に係る特許について、同年7月20日に特許異議申立人 家田 亘久(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたところ、その後の経緯は以下のとおりである
同 年11月17日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者)
同 年12月 5日付け:訂正請求があった旨の通知
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和4年11月17日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、この請求による訂正を「本件訂正」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲を次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)一群の請求項1~9に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていない非発作期間における教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部」と記載されているのを、「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間であって、前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記患者の前記教師用心電図データを用いて機械学習した前記機械学習モデル」と記載されているのを、「前記患者の前記第1教師用心電図データを用いて機械学習した前記機械学習モデル」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~9も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記患者の前記教師用心電図データを用いて機械学習した前記機械学習モデル」と記載されているのを、「前記患者の前記第1教師用心電図データを用いて機械学習した前記機械学習モデル」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~9も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記患者及び前記人間の前記教師用心電図データと同じサンプリングレートで測定された前記心電図データ」と記載されているのを、「前記患者の前記第1教師用心電図データ及び前記人間の前記第2教師用心電図データと同じサンプリングレートで測定された前記心電図データ」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~9も同様に訂正する)。
(2)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていない非発作期間における教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを取得するステップ」と記載されているのを、「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間であって、前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを取得するステップ」に訂正する。
(3)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていない非発作期間における教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部」と記載されているのを、「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間であって、前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部」に訂正する。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求がされたものである。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項1~9に係る訂正
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者」の「教師用心電図データ」における「非発作期間」について、「前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された」ものであり、かつ「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、「発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者」の「教師用心電図データ」と「不整脈を有さないと判断された人間」の「教師用心電図データ」に、それぞれ「第1」、「第2」を付すことで、両者が異なるものであることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1で追加された「不整脈を有していると判断された患者」の「教師用心電図データ」における「非発作期間」が、「前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された」ものであり、かつ「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された」ものであることは、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0033】の「非発作期間T0は、医師によって不整脈の発作が発生していると特定された発作期間T1の前及び後の少なくとも一方の所定期間であり、医師によって不整脈の発作が発生していると特定されなかった期間である。」との記載、及び段落【0035】の「教師用心電図データとして、分析対象の発作的に生じる不整脈とは異なる症状が発生していないと医師が特定した期間の心電図データを用いることが望ましい。これにより、心電図分析システムSは、ノイズとなり得るデータを除外し、機械学習の精度を向上できる。」との記載に基づくものといえる。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(ウ)小括
以上から、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載の「前記患者の前記教師用心電図データ」について、同請求項が引用する訂正前の請求項1に記載の「前記教師用心電図データ」が訂正事項1により訂正されたのに伴い、「前記患者の前記第1教師用心電図データ」と訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもなく、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことも明らかである。
以上から、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載の「前記患者の前記教師用心電図データ」について、「前記患者の前記第1教師用心電図データ」と訂正するものであり、訂正事項2と同様の理由により、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び6項の規定に適合する。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載の「前記患者及び前記人間の前記教師用心電図データ」について、同請求項が引用する請求項1に訂正前に記載の「不整脈を有していると判断された患者」の「教師用心電図データ」と「不整脈を有さないと判断された人間」の「教師用心電図データ」に、それぞれ「第1」、「第2」を付すことで、両者が異なることを明確にしたのに整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでもなく、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことも明らかである。
以上から、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び6項の規定に適合する。
(2)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項10の記載について訂正事項1と同様の訂正をするものであるから、訂正事項5は、訂正事項1と同様の理由により、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び6項の規定に適合する。
(3)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項11の記載について訂正事項1と同様の訂正をするものであるから、訂正事項6は、訂正事項1と同様の理由により、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び6項の規定に適合する。
3 まとめ
以上検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、訂正後の請求項〔1~9〕、10、11について本件訂正のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正後の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間であって、前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部と、前記機械学習モデルに、分析対象である被分析者の心電図データを入力する入力処理部と、前記機械学習モデルから出力される前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報を情報端末に出力する出力制御部と、続きを表示(全42行)を有する、心電図分析装置。【請求項2】前記機械学習部は、前記発作的に生じる不整脈の発作が発生していると特定された発作期間の前及び後の少なくとも一方の所定期間である前記非発作期間における、前記患者の前記第1教師用心電図データを用いて機械学習した前記機械学習モデルを有する、請求項1に記載の心電図分析装置。【請求項3】前記機械学習部は、発作性心房細動と、心室頻拍と、上室頻拍と、心房粗動と、心室細動とのうち少なくとも1つを前記発作的に生じる不整脈として有していると判断された前記患者の前記第1教師用心電図データを用いて機械学習した前記機械学習モデルを有する、請求項1又は2に記載の心電図分析装置。【請求項4】前記入力処理部は、前記患者の前記第1教師用心電図データ及び前記人間の前記第2教師用心電図データと同じサンプリングレートで測定された前記心電図データを前記機械学習モデルに入力する、請求項1から3のいずれか一項に記載の心電図分析装置。【請求項5】前記出力制御部は、前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有している確率を示す前記異常情報を前記情報端末に出力する、請求項1から4のいずれか一項に記載の心電図分析装置。【請求項6】前記入力処理部は、複数の異なる期間に測定された複数の前記心電図データを前記機械学習モデルに入力し、前記出力制御部は、前記複数の異なる期間における前記確率の変化に関する前記異常情報を前記情報端末に出力する、請求項5に記載の心電図分析装置。【請求項7】前記入力処理部は、生活中の前記被分析者が装着している心電計が測定した前記心電図データを前記機械学習モデルに入力する、請求項1から6のいずれか一項に記載の心電図分析装置。【請求項8】前記出力制御部は、前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を発症している確率の値、程度又はスコアと、前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を発症していない確率の値、程度又はスコアと、前記被分析者における前記発作的に生じる不整脈の有無と、前記被分析者における前記発作的に生じる不整脈の兆候の有無と、のうち、少なくとも1つを表す前記異常情報を、前記情報端末に出力する、請求項1から7のいずれか一項に記載の心電図分析装置。【請求項9】前記機械学習部は、前記異常情報が出力された前記情報端末から、前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かを示す判定情報を受信し、前記判定情報と前記心電図データとを用いて機械学習することによって、前記機械学習モデルを再生成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の心電図分析装置。【請求項10】コンピュータが実行する、発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間であって、前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを取得するステップと、前記機械学習モデルに、分析対象である被分析者の心電図データを入力するステップと、前記機械学習モデルから出力される前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報を情報端末に出力するステップと、を有する心電図分析方法。【請求項11】コンピュータを、発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間であって、前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部、前記機械学習モデルに、分析対象である被分析者の心電図データを入力する入力処理部、及び前記機械学習モデルから出力される前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報を情報端末に出力する出力制御部、として機能させるためのプログラム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審における令和4年9月28日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)訂正前の請求項1~11に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
(1)甲第1号証(Zachi I Attia et.al.,“An artificial intelligence-enabled ECG algorithm for the identification of patients with atrial
fibrillation during sinus rhythm:a retrospective analysis of outcome
prediction”, Lancet 2019, Vol.394, p.861-867)
(2)甲第2号証(池田隆徳「特集 不整脈:診断と治療の進歩」日本内科学会雑誌 第95巻 第2号 p.196-202 平成18年2月10日)
(3)甲第3号証(特開2019-115618号公報)
(4)甲第4号証(梅田 弘之「技術解説 連載 [第8回]: ビジネスに活用するためのAIを学ぶ 機械学習の仕組みと学習データ」 2018年1月26日(URL: https://thinkit.co.jp/article/13201))
2 各甲号証の記載
(1)甲第1号証(以下「甲1」ということがある。)
ア 861頁 Methods 1-3行
“ We developed an artificial intelligence (AI)-enabled
electrocardiograph (ECG) using a convolutional neural network to
detect the electrocardiographic signature of atrial fibrillation
present during normal sinus rhythm using standard 10-second, 12-lead
ECGs.”
(訳文:我々は、10秒間の標準的な12誘導心電図を用いて、正常な洞調律中に存在する心房細動の心電図的サインを検出する、畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)対応心電計を開発した。)
イ 861頁 Introduction 右欄4-7行
“ Many of these strokes are related to atrial fibrillation, which
can be underdetected due to its paroxysmal and often asymptomatic
nature.”
(訳文:これらの脳卒中の多くは心房細動に関連しており、心房細動は発作性で無症状であることが多いため、十分に発見されないことがある。)
ウ 862頁 Methods Data sources and study population 5-17行
“ All ECGs were acquired at a sampling rate of 500 Hz using a
GE-Marquette ECG machine (Marquette, WI, USA) and the raw data were
stored using the MUSE data management system. ECGs in our laboratory
are intially read by the GE-Marquette ECG system and then over-read
by a physician-supervised, trained technician, with corrections made
to the diagnostic labels as needed. For the purposes of the present
study, any ECG with a rhythm of atrial fibrillation or atrial
flutter was classified as having atrial fibrillation. We chose this
classification because guidelines recommend anticoagulation in the
presence of either atrial fibrillation or atrial flutter and both
rhythms often coexist.”
(訳文:すべての心電図は、GE-Marquette ECGマシン(Marquette、WI、USA)を使用して500Hzのサンプリングレートで取得され、生データはMUSEデータ管理システムを使用して保存された。当研究室の心電図は、最初にGE-Marquette ECGシステムによって読み取られ、次に医師の監督下にある訓練を受けた技術者によって読み直され、必要に応じて診断ラベルが修正された。本研究では、心房細動または心房粗動のリズムを持つ心電図はすべて心房細動と分類した。この分類を選んだのは、ガイドラインが心房細動または心房粗動のいずれかがある場合に抗凝固療法を推奨しており、両方のリズムが共依存していることが多いからである。)
エ 862-863頁 Identifying study groups 1-10行
“ The Mayo Clinic Digital Data Vault was used to extract the labels
and raw data from all ECGs acquired from our cohort of patients. We
used these data to classify patients into two groups: patients
positive for atrial fibrillation, who had at least one atrial
fibrillation rhythm recorded on a Mayo Clinic ECG, and patients
negative for atrial fibrillation, who had no ECGs with atrial
fibrillation recorded and additionally had no reference to atrial
fibrillation in the diagnostic codes in their electronic medical
record.”
(訳文:Mayo Clinic Digital Data Vaultから患者の心電図のラベルと生データを取得した。これらのデータからMayo Clinic ECGに少なくとも1回の心房細動が記録されている心房細動陽性患者と心房細動が記録されておらず、電子カルテの診断コードに心房細動の所見がない心房細動陰性患者の2つのグループに分類した。)
オ 863頁 ECG selection for patients with multiple ECGs 2-22行
“ We defined a window of interest for each patient for the purpose
of analysis (figure 1). For patients who had had at least one atrial
fibrillation rhythm recorded, we defined the first recorded atrial
fibrillation ECG as the index ECG and the first day of the window
of interest as 31 days before the date of the index ECG. We chose
this window of interest with the assumption that the structural
changes associated with atrial fibrillation would be present before
the first recorded atrial fibrillation episode; we chose a
relatively short time interval as a conservative measure to avoid
using ECGs before any structural changes developed. For patients
with no ECGs with atrial fibrillation recorded, the index ECG was
defined as the date of the first ECG available for that patient in
the Mayo Clinic Digital Data Vault. During training, all the ECGs in
the window of interest were used to allow the network to have more
samples; for the testing and validation sets, only the first normal
sinus rhythm ECG within the window of interest was used to avoid
repeated measurements and to mimic a real screening scenario.”
(訳文:解析のために、各患者の関心ウィンドウを定義した(図1)。少なくとも1回の心房細動が記録されている患者については、最初に記録された心房細動の心電図を指標ECGとし、指標心電図の日から31日前を関心ウィンドウの最初の日と定義した。心房細動に関連する構造的変化は、最初に記録された心房細動エピソードの前に存在するであろうという前提で、この関心ウィンドウを選んだ。構造的変化が生じる前の心電図を使用しないように、比較的短い時間間隔を選択した。心房細動の心電図が記録されていない患者については、Mayo Clinic Digital Data Vaultでその患者について利用できる最初の心電図を指標心電図と定義した。トレーニングでは、ネットワークがより多くのサンプルを持つことができるように、関心ウィンドウのすべての心電図を使用した。テストおよび検証セットでは、繰り返しの測定を避け、実際のスクリーニングシナリオを模倣するため、関心ウィンドウ内の最初の正常洞調律の心電図のみを使用した。)
カ 863頁 Outcomes 9-14行
“ We did a secondary analysis to determine whether use of more
than one sinus rhythm ECG per patient improved the AUC of the
AI-enabled ECG for the detection of a history of atrial
fibrillation. We also did a secondary analysis including only the
first normal sinus rhythm after the index atrial fibrillation ECG.”
(訳文:我々は、患者ごとに1つ以上の洞調律心電図を使用することで、心房細動の既往を検出するためのAI対応心電図のAUCが向上するかどうかを調べるために二次分析を行った。また、心房細動の指標となる心電図後の最初の正常な洞調律のみを含む二次分析も行った。)
キ 863頁 Overview of the AI model 右欄34-38行
“ Following the last convolutional layer, the data were fed to a
dropout layer and to the final output layer that was activated using
softmax function, which generated a probability of atrial
fibrillation.”
(訳文:最後の畳み込み層に続いて、データはドロップアウト層と、心房細動の確率を生成するソフトマックス関数を使用してアクティブ化された最終出力層に送られた。)
ク 864頁 Results 1-11行
“ We identified 210414 patients with 1000000 ECGs and, after
applying exclusion criteria, included 180922 patients with 649931
normal sinus rhythm ECGs for analysis (figure 2). We trained the
model using 454789 ECGs recorded from 126526 patients, with a mean
of 3-6 ECGs (SD 4-8) per patient. In patients with at least one
atrial fibrillation recorded in the testing dataset, 1698 (55.7%) of
the 3051 first normal sinus rhythm ECGs in the window of interest
were within 1 week of the index atrial fibrillation ECG (median
number of days between ECGs 0, IQR -4 to 24).”
(訳文:1000000の心電図を持つ210414人を特定し、除外基準を適用した後、649931の正常洞調律心電図を持つ患者180922人を解析対象に加えた(図2)。126526人の患者から記録された454789の心電図を使用してモデルを訓練し、患者あたりの平均心電図は3~6枚(SD 4~8)であった。テストデータに少なくとも1つの心房細動が記録されている患者では、対象ウィンドウ内の3051の最初の正常洞調律心電図のうち1698(55.7%)が、指標心房細動心電図から1週間以内にあった(心電図間の日数中央値0、IQR -4~24)。)
ケ 865頁 Discussion 1-4行
“ In this study, we found that the AI-enabled ECG recorded during
normal sinus rhythm performed well (AUC 0.87 for a single ECG and
0.90 for multiple) in identifying the presence of atrial
fibrillation.”
(訳文:本研究では、正常な洞調律中に記録されたAI対応心電計が、心房細動の存在を特定する際に良好に機能することを発見した(単一の心電図ではAUCが 0.87、複数では 0.90)。)
コ 867頁 Discussion 左欄14-19行
“ In conclusion, an AI-enabled ECG acquired during normal sinus
rhythm permits point-of-care identification of individuals with a
high likelihood of atrial fibrillation. This result could have
important implications for atrial fibrillation screening and for the
management of patients with unexplained stroke.”
(訳文:結論として、正常な洞調律中に取得されたAI対応心電計は、心房細動である可能性が高い個人をポイントオブケアで識別することができる。この結果は、心房細動のスクリーニングと原因不明の脳卒中患者の管理に重要な意味を持つ。)
サ 863頁 Fig.1
「[図:0001398272000001.jpg]」
(訳文)
[図:0001398272000002.jpg]
シ 864頁 Fig.2
「[図:0001398272000003.jpg]」
(訳文)
[図:0001398272000004.jpg]
以上によれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
10秒間の標準的な12誘導心電図を用いて、正常な洞調律中に存在する心房細動の心電図的サインを検出する、畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)対応心電計であり、
すべての心電図は、500Hzのサンプリングレートで取得され、
心房細動または心房粗動のリズムを持つ心電図はすべて心房細動と分類し、
少なくとも1回の心房細動が記録されている心房細動陽性患者については、最初に記録された心房細動の心電図を指標心電図とし、指標心電図の日から31日前を関心ウィンドウの最初の日と定義し、
心房細動の心電図が記録されていない心房細動陰性患者については、その患者について利用できる最初の心電図を指標心電図と定義し、
トレーニングでは、ネットワークがより多くのサンプルを持つことができるように、関心ウィンドウのすべての心電図を使用し、非洞調律心電図は除かれており、
心房細動の確率を生成する、
AI対応心電計。
(2)甲第2号証(以下「甲2」ということがある。)
197頁左上の表には、不整脈疾患の分類に関し、以下の記載がある。
[図:0001398272000005.jpg]
(3)甲第3号証(以下「甲3」ということがある。)
ア「【0028】
図1に示すように、情報処理システムは、ユーザ端末UTと、情報処理装置IPEと、を含む。
【0029】
ユーザ端末UTは、ユーザ(被計測者)の血圧値(データ)、脈拍数(データ)及び心電波形を計測し、その血圧値、脈拍数及び心電波形を情報処理装置IPEに供給する。ユーザ端末UTは、例えば腕時計型のウェアラブル端末である。ただし、ユーザ端末UTは、腕時計型のウェアラブル端末に限定される訳ではなく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。」
イ 図1
「[図:0001398272000006.jpg]」
(4)甲第4号証(以下「甲4」ということがある。)
(8枚目)アクティブラーニング
「機械学習の基本スタイルは、図4のように最初に学習させて学習モデル(分類器)を作成し、それを使って未知のデータの判断・推定を行うものです。この判断結果をそのまま100%信頼する場合もありますが、人間が確認を行って最終的な判断を行うことも多いです。そして、AIが判断したものが誤っていた場合に、人間が正しく修正したデータを追加の学習データとして学ばせるのが機械学習におけるアクティブラーニングです。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「少なくとも1回の心房細動が記録されている心房細動陽性患者」についての「最初に記録された心房細動の心電図」「の日から31日前を関心ウィンドウの最初の日と定義し」た関心ウィンドウにおける「非洞調律信号」が「除かれ」た心電図は、心房細動が生じていないと特定されたといえ、「畳み込みニューラルネットワーク」の「トレーニング」における「サンプル」として用いられるから、本件発明1における『発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間』『における第1教師用心電図データ』に相当する。
同様に、甲1発明の「心房細動の心電図が記録されていない心房細動陰性患者について」の「その患者について利用できる最初の心電図を指標心電図と定義し」た関心ウィンドウにおける心電図は、本件発明1における『前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データ』に相当する。
そうすると、甲1発明における「畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)対応心電計」は、本件発明1における『発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間』『における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部』という共通の構成を有している。
(イ)甲1発明は、「10秒間の標準的な12誘導心電図を用いて、正常な洞調律中に存在する心房細動の心電図的サインを検出」するためのものであるから、本件発明1における『前記機械学習モデルに、分析対象である被分析者の心電図データを入力する入力処理部』に相当する構成を有している。
(ウ)甲1発明は、「心房細動の確率を生成する」ところ、「心房細動の確率」は、本件発明1における『前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報』に相当し、甲1発明の「心房細動の確率」が何らかの表示手段を用いて表示されることは明らかであるから、甲1発明は、本件発明1における『前記機械学習モデルから出力される前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報を出力する出力制御部』という共通する構成を有している。
(エ)甲1発明における「AI対応心電計」は、本件発明1における『心電図分析装置』に相当する。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
発作的に生じる不整脈を有していると判断された患者の、前記発作的に生じる不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間における第1教師用心電図データと、前記発作的に生じる不整脈を有さないと判断された人間の第2教師用心電図データと、を用いて機械学習した機械学習モデルを有する機械学習部と、
前記機械学習モデルに、分析対象である被分析者の心電図データを入力する入力処理部と、
前記機械学習モデルから出力される前記被分析者が前記発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報を出力する出力制御部と、
を有する、心電図分析装置。
【相違点1】
不整脈を有していると判断された患者の第1教師用心電図データにおける、不整脈による異常状態が生じていないと特定された非発作期間が、本件発明1では、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された」ものであるのに対し、甲1発明は、かかるものではない点。
【相違点2】
機械学習モデルから出力される被分析者が発作的に生じる不整脈を有しているか否かに関する異常情報を、本件発明1では、「情報端末」に出力するのに対し、甲1発明では、かかる特定がない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、畳み込みニューラルネットワークがより多くのサンプルを持つことができるように、関心ウィンドウのすべての心電図を使用するものであるところ、非洞調律心電図を教師用学習データから除くことに加えて、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生し」たことが「特定された」心電図をさらに教師用学習データから除くようにすることは記載も示唆もされておらず、後者の心電図を教師用学習データから除くことは、教師用学習データのサンプル数を減らすことになるから、かかる構成を採用することは自明なことでもない。
また、上記取消理由通知で引用した甲2~甲4にも相違点1に係る構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生し」たことが「特定された」心電図をさらに教師用学習データから除くようにすることで、本件明細書の段落【0035】に記載されるように「ノイズとなり得るデータを除外し、機械学習の精度を向上できる」という効果を奏する。
この点、申立人は、令和5年1月6日に提出した意見書において、参考資料1を添付し、甲1では、モデルの訓練及びテストに正常洞調律の心電図を用いることが開示されているところ、正常洞調律の心電図には、心拍数が不整であったり規則正しくないものや心拍数が60~100回/分の範囲外にあるものが含まれないことは技術常識であることから、相違点1に係る構成は、甲1に開示されている正常洞調律の心電図そのものであるという旨主張する(1頁~2頁16行)。
しかし、相違点1に係る構成における「非発作期間」は、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された」ものであるから、正常洞調律の心電図であっても、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された」ものでなければ教師用学習データとして採用しないものであるから、申立人の上記主張は採用することができない。
また、申立人は、上記意見書において、参考資料2~4を添付し、「発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状」には、特許権者から提出された意見書によれば、「胸痛、腹痛、頭痛、心不全、狭心症、洞性頻脈、洞性徐脈」等が含まれるところ、胸痛が発生する疾患の例として挙げられる心筋梗塞や狭心症では心電図の異常が検査所見として見られ、腹痛が発生する疾患の例として挙げられる心筋虚血や梗塞でも心電図の異常が検査所見として見られること等を踏まえれば、甲1に開示された正常洞調律の心電図を得るために、胸痛や腹痛が発生した患者の心電図を除外することは、当業者が適宜になし得る設計的事項であるという旨主張する(2頁17行~3頁)。
しかし、相違点1に係る構成によれば、正常洞調律の心電図であっても、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生していないと特定された」場合には教師用学習データとして採用しないものであるところ、申立人の上記主張を踏まえても、正常洞調律の心電図であるにもかかわらず、「前記発作的に生じる不整脈とは異なる所定の症状が前記患者に発生し」たことが「特定された」からといって教師用学習データとして採用しないものとすることは、教師用学習用データのための有用なサンプルデータが失われるとの見方もできるから、甲1発明において当然に採用する構成であるとは認められない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2)本件発明2~11について
本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであり、上記相違点1に係る構成を含んでいるから、本件発明1で検討したのと同じ理由により、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また、本件発明10及び11は、本件発明1と発明のカテゴリが異なるのみであり、実質的に上記相違点1に係る構成を含んでいるから、本件発明1で検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由は上記取消理由と同じものであり、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-700677