特許異議申立
2024-700026
空気入りタイヤ
- 審判番号
- 2024-700026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-559343
- 登録番号
- 7309754
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2024年03月28日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ブリヂストン
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者代理人】高橋 俊一
- 【権利者代理人】伊藤 正和
- 【権利者代理人】高松 俊雄
- 【異議申立人】家田 亘久
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 中村 和正
- 審判官 磯貝 香苗
- 分類
- P1651.121-Y (B60C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7309754号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7309754号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7309754号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)12月13日(優先権主張 平成30年12月13日)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月7日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年1月16日に特許異議申立人 家田 亘久(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
タイヤ骨格を形成する環状のカーカスを備え、車両に装着される空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの外径は、350mm以上、600mm以下であり、
前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイールのリム幅をRW、
前記空気入りタイヤのタイヤ幅をSWとした場合、
0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たし、
前記カーカスは、タイヤ幅方向に沿って配置されたカーカスコードを有し、
前記カーカスコードは、スチールのフィラメントによって形成され、
前記カーカスコードの外径は、0.7mm以下であり、
隣接する前記カーカスコードの間隔は、4.0mm以下である空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記空気入りタイヤの外径をOD、
前記空気入りタイヤのリム径をRDとした場合、
0.56≦RD/OD≦0.75
の関係を満たす請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記フィラメントの外径は、0.2mm以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記リムホイールに係止され、円環状のビードコアを有するビード部を備え、
前記カーカスは、前記ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返され、
前記カーカスの折り返し端部では、前記カーカスコードが前記ビードコアのタイヤ径方向外側端に巻き付けられている請求項1乃至3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和6年1月16日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
申立理由(甲第1ないし3号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:実願昭57-100546号(実開昭58-58903号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開平3-164305号公報
甲第3号証:JATAMA YEAR BOOK 2010
甲第4号証:特開2013-199218号公報
甲第5号証:特開昭63-265704号公報
甲第6号証:米国特許第5709760号明細書
甲第7号証:特開2015-140074号公報
甲第8号証:特開2000-343907号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
第4 申立理由(甲第1ないし3号証に基づく進歩性)についての当審の判断
1 甲第1号証に記載された事項等
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、「スペアタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「3.考案の詳細な説明
本考案は、スペアタイヤに関し、詳しくは、タイヤ断面高さの低い小型高圧スペアタイヤの改良に関するものである。
近年道路の舗装、整備が進み、またスチールベルト入りタイヤの普及によりタイヤのパンクの回数は非常に少なくなつており、それに伴いスペアタイヤの使用頻度も激減している。この使用頻度の少ないスペアタイヤの保管のために、車輌のトランクルーム内等の広いスペースを割き、また車輌重量を増すことは無駄であるという考えから、下記表に一例を示す通り通常装着タイヤ(グランドタイヤ)よりも外径が小さいあるいはタイヤ巾も狭い小型高圧スペアタイヤが使用されるようになつた。」(1頁15行~2頁9行)
・「
[図:0001409199000001.jpg]
」(3頁)
・「この小型高圧スペアタイヤは、その用途の性質上一般に使用されているタイヤと同等の耐負荷能力が要求されるため、通常装着タイヤと同等のタイヤ強度が必要であり、また操縦安定性能についてもタイヤパンク時の応急用として一定のレベルが要求され、さらに安価に得られることが必要である。これらの要求性能を満足するためには、タイヤのクラウン部,サイド部等の剛性を上げることが最も効果があり、従来はカーカスプライを4層にしてケーシング全体の剛性を上げたり、或いはカーカスプライを2層にしてクラウン部のみに更に補強プライを1ないし2層配置して、クラウン部のみの剛性を上げていた。また、コーナリングフオースを向上させるためサイド部のみに1ないし2層の補強プライを配置することもあつた。」(4頁1~16行)
・「以下、本考案のスペアタイヤを実施例により図面を参照しつつ説明する。
まず第1図に示す本考案の第1実施例について説明する。
図示した本考案第1実施例のスペアタイヤE1は、2層のカーカス層7,8と、2層の補強層9,10とから構成され、前記カーカス層7,8は、ビード芯体13,14の周囲で折り返えされ、また前記補強層9,10は、クラウン部3からタイヤ1の片側のシヨルダー部6´~サイドウオール部4´~ビード部5´にかけてのみ配置すると共に、補強層9,10の端部18,19が、前記クラウン部3の総巾l1の1/2~3/4を覆うように配設することにより構成されている。
さらに上述のスペアタイヤE1の構造を詳細に説明すると次の通りである。
前記スペアタイヤE1は、タイヤ断面高さH1が60mm~100mmに形成され、前述の通りタイヤ1はクラウン部3、サイドウオール部4,4´、ビード部5,5´、シヨルダー部6,6´から構成され、前記クラウン部3は、2層のカーカス層7,8と2層の補強層9,10および踏面部11から構成されている。」(6頁16行~7頁18行)
・「なお図中2はリム、12は保護層で比較的薄いゴム状弾性体により形成されている。15,16はそれぞれ前記カーカス層7,8の折り返し部で、前述のように各ビード芯体13,14をつつむよう折り返されており、そのビード芯体13側の折り返し部には、この折り返し部15,16とカーカス層7,8との間に、前記補強層9,10の下端部が介在してある。また、補強層下端部はリムフランジ高さよりも低い位置にあることが好ましい。」(9頁15行~10頁3行)
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載された事項を整理すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「以下表で示されるタイヤ呼称がT125/70Dであり、タイヤのクラウン部及びサイド部にカーカスプライを備える小型高圧スペアタイヤ。
[図:0001409199000002.jpg]
」
2 甲第2号証に記載された事項等
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、「乗用車用ラジアルタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「(実施例)
以下、図面にしたがって本発明の乗用車用ラジアルタイヤの実施例について、詳細に説明する。
図面は本発明の乗用車用ラジアルタイヤのトレッド部展開図である。
なお、図面においてはトレッド部以外の部分の図示は省略しているが、クラウン部、サイドウォール、ラジアルカーカス及び、ベルト層などの図示以外の部分は周知の構造である。
すなわち、円筒状クラウン部の両端から径方向内側へ延びる一対のサイドウォールがトロイダルに連なり、前記サイドウォール及びクラウン部はレーヨンやポリエステルなどで代表される有機繊維コードを赤道面に対し実質的に直交する方向に配列した層のカーカスで補強され、径方向外側を路面と係合するトレッド部が占めている。
また、カーカスがいわゆるラジアル構造の場合には、トレッド部とカーカスとの間にスチールコードなどの非伸長性コードコードを傾斜配列したベルト層が設けられる。」(2頁右下欄4行~3頁左上欄3行)
・「次に、試験例により本発明の乗用車用ラジアルタイヤの構或および効果についてさらに詳細に説明する。
(試験例)
タイヤサイズ:175/70R13 82T、使用リム:5-1/2J×13、使用空気圧:2.0kg/cm2、のラジアルタイヤのトレッド部に対し、上述した本発明のトレッド構造を形成し、このタイヤについての評価を行なった。
なお、タイヤのラジアルカーカスおよびベルト層などの他の構造および製造条件は従来タイヤに準じたため、詳細は省略する。
すなわち、第1図においてトレッド幅W:115mm、周方向主溝1、1´の溝幅:9mm、深さ:8.0mm,中央周方向溝2の溝幅:6mm、深さ:8.0mm、周方向補助溝3の溝幅:2mm、深さ:6.0mm、a/W:0.5、W/SW:0.65、矩形比:0.80、ショルダー横方向溝4の溝幅:5.5mm、深さ:8.0mm、θ1:70度、中央横方向溝5の溝幅:3.5mm、深さ:6.5mm、θ2:45度としてトレッド部を形成して本発明タイヤを得た。」(3頁右下欄12行~4頁左上欄13行)
(2)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証に記載された事項を整理すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「タイヤサイズ:175/70R13 82T、使用リム:5-1/2J×13であり、ラジアルカーカスを備えるラジアルタイヤ。」
3 甲第3号証に記載された事項等
(1)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、「乗用車用ラジアルプライタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001409199000003.jpg]
[図:0001409199000004.jpg]
」
(2)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証に記載された事項を整理すると、甲第3号証には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「以下表で示されるタイヤの呼び(サイズ)が205/40R17である乗用車用ラジアルプライタイヤ。
[図:0001409199000005.jpg]
」
4 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明は、「タイヤのクラウン部及びサイド部にカーカスプライを備える」ことから、本件特許発明1における「タイヤ骨格を形成する環状のカーカスを備え」との特定事項を満たす。
甲1発明は、タイヤの外径Dが565mmであるから、本件特許発明1における「前記空気入りタイヤの外径は、350mm以上、600mm以下であり」との特定事項を満たす。
甲1発明は、タイヤの幅Wが125mm、リムの幅が102mm(4インチ)であり、タイヤの幅W/リムの幅は(102/125=)0.82であるから、本件特許発明1における「前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイールのリム幅をRW、前記空気入りタイヤのタイヤ幅をSWとした場合、0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たす」との特定事項を満たす。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「タイヤ骨格を形成する環状のカーカスを備え、車両に装着される空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの外径は、350mm以上、600mm以下であり、
前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイールのリム幅をRW、
前記空気入りタイヤのタイヤ幅をSWとした場合、
0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たす空気入りタイヤ。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明1は、「前記カーカスは、タイヤ幅方向に沿って配置されたカーカスコードを有し、前記カーカスコードは、スチールのフィラメントによって形成され、前記カーカスコードの外径は、0.7mm以下であり、隣接する前記カーカスコードの間隔は、4.0mm以下である」のに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。
なお、本件特許発明1と甲2及び甲3発明との一致点及び相違点も同じである。
(2)判断
相違点について検討する。
甲第1ないし3号証及び他の証拠には、甲1ないし3発明において相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
してみると、甲1ないし3発明において、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「高い耐荷重能力と省スペース化とを達成しつつ、転がり抵抗の悪化及び製造不良の発生を回避し得る」(本件特許の発明の詳細な説明の【0088】)という効果は、甲1ないし3発明並びに甲第1ないし3号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
(3)まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1ないし3発明並びに甲第1ないし3号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1ないし3発明並びに甲第1ないし3号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 申立理由についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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