特許異議申立
2022-700618
インクジェットインク、印刷物の製造方法および印刷物
- 審判番号
- 2022-700618
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-193356
- 登録番号
- 7013033
- 請求日
- 2022年07月11日
- 審決日
- 2023年03月02日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ナトコ株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】中谷 美弥子
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 東 裕子
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7013033号発明「インクジェットインク、印刷物の製造方法および印刷物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7013033号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12、13、14、15について訂正することを認める。
特許第7013033号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7013033号の請求項1~15に係る特許についての出願は、令和1年10月24日を出願日とする特許出願(特願2019-193356号)であって、令和4年1月21日に特許権の設定登録がされ、同年1月31日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項(請求項1~11)に係る特許に対し、令和4年7月11日に特許異議申立人 中谷美弥子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は同年10月27日付けで取消理由を通知した。この取消理由通知に対して、特許権者は、その指定期間内である同年12月26日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和5年2月2日に意見書を提出した。
第2 本件訂正について
1 訂正事項
本件訂正は、次の訂正事項1~9からなるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(前略)・・・インクジェットインク。」
とあるのを、
「(前略)・・・インクジェットインク。
ただし、
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く。」
に訂正する。(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2、6、9~11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「(前略)・・・インクジェットインク。」
とあるのを、
「(前略)・・・インクジェットインク。
ただし、
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く。」
に訂正する。(請求項3の記載を直接または間接的に引用する請求項4、6、9~11も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「(前略)・・・インクジェットインク。」
とあるのを、
「(前略)・・・インクジェットインク。
ただし、
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く。」
に訂正する。(請求項5の記載を直接または間接的に引用する請求項6、9~11も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含み、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的または間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含み、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的または間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。」
とし、新たに請求項12とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。」
とし、新たに請求項13とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって」
とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、
「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
光硬化性であり、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。」
とし、新たに請求項14とする。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって」
とあるうち、請求項5を引用するものについて、独立形式に改め、
「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
光硬化性であり、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。」
とし、新たに請求項15とする。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1、2、6~11のうち、請求項2、6~11は、直接または間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1、2、6、9~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項3、4、6~11のうち、請求項4、6~11は、直接又は間接的に請求項3を引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項3、4、6、9~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項5~11のうち、請求項6~11は、直接又は間接的に請求項5を引用するものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項5、6、9~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項7、9~11のうち、請求項9~11は、直接又は間接的に請求項7を引用するものであって、訂正事項6によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項7、9~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項8~11のうち、請求項9~11は、直接又は間接的に請求項8を引用するものであって、訂正事項7によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項8~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。
そうすると、共通する請求項9~11を有するこれらの一群の請求項は組み合わせられて、請求項1~11が1つの一群の請求項となる。
したがって、本件訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項1~11に係る本件の訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
また、本件訂正後は、請求項1~11が一群の請求項となり、請求項12、13、14、15は、引用関係がない請求項となっている。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1~3について
ア 訂正の目的
訂正事項1~3は、それぞれ、訂正前の請求項1、3及び5に記載された「インクジェットインク」から、令和4年10月27日付けの取消理由通知で引用した特開2010-43153号公報の請求項1に記載された「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1層と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物」を除外することを明示して、その範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
訂正事項1~3は、それぞれ、訂正前の請求項1、3及び5の発明特定事項の全てをそのまま残したうえで、上記アに示した引用例に記載された発明との重なりを、上記請求項1の記載を全て引用して除くことにより無くそうとするものであって、いわゆる「除くクレーム」とするものに過ぎず、それによって新たな技術的事項を導入するものではないから、本願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項1~3は、それぞれ、訂正前の請求項1、3及び5の発明特定事項の全てをそのまま残したうえで、上記イに指摘した発明との重なりのみを除く、いわゆる「除くクレーム」とするものであって、それによって新たな技術的事項を導入するものでもないから、新規事項を追加する訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正事項1~3に係る訂正について、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項4~9について
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項4は、訂正前の請求項7の記載が請求項1~6を引用する記載であったものを、請求項2~6を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、訂正事項4とは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると同時に、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
(イ)訂正事項5は、訂正前の請求項8の記載が請求項1~7を引用する記載であったものを、請求項2~7を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正である。
訂正事項6は、訂正前の請求項7の記載が請求項1~6を引用する記載であったものを、請求項1~2、4~6を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための補正である。
訂正事項7は、訂正前の請求項8の記載が請求項1~7を引用する記載であったものを、請求項1~2、4~7を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正である。
訂正事項8は、訂正前の請求項7の記載が請求項1~6を引用する記載であったものを、請求項1~4、6を引用しないものとした上で、請求項5を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正である。
訂正事項9は、訂正前の請求項8の記載が請求項1~7を引用する記載であったものを、請求項1~4、6~7を引用しないものとした上で、請求項5を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正である。
そうすると、訂正事項4~9は、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると同時に、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 実質上拡張・変更の有無
訂正事項4~9は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項4~9は、上記アのとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、それによって新たな技術的事項を導入するものでもないから、新規事項を追加する訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正事項4~9に係る訂正について、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 小括
以上より、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合するものであるから、本件訂正による訂正後の請求項〔1~11〕、12、13、14、15について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~15に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明(以下「本件発明1」~「本件発明15」といい、まとめて「本件発明」という。)である。
「【請求項1】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク。
ただし、
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットインクであって、
前記ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む、インクジェットインク。
【請求項3】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含む、インクジェットインク。
ただし、
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットインクであって、
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基および/またはオキセタニル基を有する化合物を含む、インクジェットインク。
【請求項5】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
光硬化性である、インクジェットインク。
ただし、
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって、
前記金属顔料は、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムを含む、インクジェットインク。
【請求項7】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含み、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。
【請求項8】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含み、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインクであって、
不揮発成分全体中の前記金属顔料の比率が、1~8質量%である、インクジェットインク。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、基材表面に吐出して画像を形成する画像形成工程と、
吐出された前記インクジェットインクを硬化させる硬化工程と、
を含む、印刷物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のインクジェットインクの硬化物を備える印刷物。
【請求項12】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。
【請求項13】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
さらに、カチオン重合性化合物と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。
【請求項14】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
光硬化性であり、
前記金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである、インクジェットインク。
【請求項15】
金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料を含有する、インクジェットインクであって、
光硬化性であり、
前記金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている、インクジェットインク。」
第4 当審からの取消理由通知の理由について
1 取消理由の概要
令和4年10月27日付の取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1~2の取消理由からなるものである。
〔理由1〕本件特許の訂正前の請求項1~6、9~11に係る発明は、後記2の、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1~6、9~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。
〔理由2〕本件特許の訂正前の請求項9に係る発明は、後記2の、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法の一覧
(1)申立人が特許異議申立書に提示した証拠方法に係るもの。なお、甲第1号証を甲1などという。また、甲3については後記する。
甲1:特開2010-43153号公報(主たる証拠方法)
甲2:特開2007-30249号公報
(2)当審が調査した文献に係るもの。
引A:特開2016-65262号公報(本件出願の令和3年5月11日付け拒絶理由通知における引用文献1に同じ。)
3 証拠方法の記載事項
(1)甲1には次の記載がある。
「【請求項1】
金属顔料と、
重合性化合物と、
重合開始剤と、
を含有し、
前記金属顔料は、
金属または合金層と、
樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、
が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記金属顔料における、金属または合金層と、樹脂層または酸化ケイ素層と、の間に、さらに色材層を有する、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記平板状粒子は、該平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のXY平面の面積より求めた円相当径における50%平均粒子径R50が0.5~3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たす形状を有する、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。
・・・
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記重合性化合物がカチオン重合化合物である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記重合性化合物がラジカル重合化合物である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。」
「【背景技術】
【0002】
近年、印刷面に金属光沢面が形成された印刷物の需要が高まっている。金属光沢面を有する印刷物を得る方法としては、従来は、たとえば、平坦性の高い印刷面を有する記録媒体に対して、これに金属箔を用いて印刷する方法、印刷面が平滑なプラスチックフィルムに対して金属を真空蒸着する方法、および、記録媒体に金属顔料インキを用いて印刷し、さらにプレス加工を行う方法などが挙げられる。
【0003】
一方、インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この記録方法は、比較的小規模な装置構成で、高解像度、高品位な画像を高速で印刷することができるという特徴を有する。そのため、このようなインクジェット記録方法によって、金属光沢面を有する記録物を作製することが検討されている。たとえば、特開2002-179960号公報に、プラスチックの球形粒子の表面に金属の被膜を形成したものを顔料として含むインク組成物を、インクジェット記録装置にて記録媒体に塗布し、その後プレス加工を行い表面の平滑化を行う印刷技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また一方、近年、紫外線等の光によって硬化する光硬化型インクの開発が進められている。この光硬化型インクは、インクジェット記録方法によって、プラスチック等のインクを吸収しない非吸収メディアに対して、速乾性があり、かつインクの滲みの少ない記録を行うことができるという特徴がある。光硬化型インクは、重合性化合物、重合開始剤および顔料等から構成される。
【特許文献1】特開2002-179960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光硬化型インクに顔料として金属顔料を用いれば、プレス等の工程を経ることなく、インクジェット記録方法によって、金属光沢面を形成できる可能性がある。しかしながら、このような方法を実現するためには、以下のような課題があった。
【0006】
1つは、金属顔料の大きさが制限されることである。インクジェット記録方法においては、インクジェット記録装置のノズル径より径の小さい金属顔料を使用する必要があるため、十分な金属光沢を有する印刷面を得ることが難しかった。
【0007】
また1つは、インク印刷面の硬化が困難となることである。光硬化型インクの顔料として金属顔料を用いると、インク印刷面に光を照射しても該金属顔料によって光が吸収・反射され、光量が不足し印刷面の硬化が不十分となることがあった。さらに光硬化メカニズムが、カチオン重合反応系である場合、発生する酸と金属が反応してしまい、危険性が伴うこと、さらに、該金属顔料の劣化により、所望の金属光沢調の画像が得られなかった。
【0008】
また、金属顔料が配合された光硬化型インクの硬化を十分に行うために強力な光を照射すると、金属顔料に吸収された光によって熱が発生し記録媒体がダメージを受けること、反射によって光が周囲に散乱され安全性に問題を生じる可能性が有ることなどの不具合点があった。
【0009】
さらに、装置の大型化の問題があった。強力な光を照射するための光源が大規模化し、他の印刷方法に比較してコンパクトで安全な装置構成を採りうるインクジェット記録方法の利点が損なわれてしまっていた。
【0010】
本発明のいくつかの態様の目的の1つは、光沢度の良好な金属光沢面を容易に形成することができ、かつ、インクジェット記録方法に好適なインクジェット記録用光硬化型インク組成物を提供することである。」
「【0022】
1.1.金属顔料
本実施形態にかかるインクジェット記録用光硬化型インク組成物に含有される金属顔料は、インクジェット記録用光硬化型インク組成物が記録媒体等に付着されたときに、該付着物に金属光沢を付与する機能を有する。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録用光硬化型インク組成物に含有される金属顔料は、以下のように調製される複合化顔料である。
【0024】
第1形態の複合化顔料は、第1形態の複合化顔料の原体から顔料層を剥離して粉砕することにより得られる。第1形態の複合化顔料の原体は、シート状基材面の片面または両面に、顔料層が積層された構造からなる。第1形態の複合化顔料の原体の顔料層は、酸化ケイ素層/(金属または合金層)/酸化ケイ素層が順次積層されたものである。そしてこの顔料層を、シート状基材より剥離し粉砕したものが第1形態の複合化顔料である。
【0025】
第2形態の複合化顔料は、第2形態の複合化顔料の原体から顔料層を剥離して粉砕することにより得られる。第2形態の複合化顔料の原体は、上記第1形態と同様にシート状基材面に、顔料層が積層された構造からなる。第2形態の複合化顔料の原体の顔料層は、樹脂層/(金属または合金層)/樹脂層が積層されたものである。そしてこの顔料層を、シート状基材より剥離し粉砕したものが第2形態の複合化顔料である。
【0026】
また、上記第1形態において、酸化ケイ素層と、金属または合金層と、の間に色材層を設けた第3形態の複合化顔料、および、上記第2形態において、樹脂層と、金属または合金層と、の間に色材層を設けた第4形態の複合化顔料は、いずれも本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に含有される金属顔料として好適に用いることが可能である。
【0027】
本実施形態の金属顔料は、上述した複合化顔料であり、金属または合金層が、酸化ケイ素層または樹脂層に覆われた構造を有している。そのため、金属または合金層が、酸化ケイ素層または樹脂層により保護される。よって金属または合金層は、従来の金属顔料とは異なり、変色、消色等を起こしにくく、保存安定性が良好である。また、樹脂層を積層した複合化顔料(上記第2形態または第4形態)においては、樹脂層は保護コロイドの役割を果たすことが可能である。そのためこのような複合化顔料の分散体は、より安定な金属顔料分散体となることができる。
【0028】
また上記第3形態、および第4形態の複合化顔料のように、色材層を、層間に設けることで、所望の着色性を付与することができる。
【0029】
本実施形態の金属顔料は、上述のように積層体であって平板状の構造であるため、インクジェット記録用光硬化型インク組成物中において、優れた保存安定性および分散安定性を有し、インクジェット記録時にも良好な吐出性を付与することができる。さらに、本実施形態の金属顔料は、積層板状構造であるため、一般的な球形の形状を有する顔料と比較して、厚み方向に光を透過しやすいため、光の遮蔽性が抑制されるため、インクジェット記録用光硬化型インク組成物に極めて好適である。また、積層構造とすることで機械的強度が向上するため、金属顔料の変形による金属光沢低下を防止できる。
・・・
【0033】
本実施形態の第1形態の複合化顔料の原体の顔料層は、酸化ケイ素層/(金属または合金層)/酸化ケイ素層が順次積層された構造を有する。顔料層の全体の厚さは、100~500nmの範囲が好ましい。100nm未満では、機械的強度が不足することがあり、500nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散等の処理が困難になる場合がある。
【0034】
顔料層中の金属または合金層としては、金属光沢を呈する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン等が好適であり、これらの単体金属、金属化合物またはこれらの合金およびそれらの混合物の少なくとも一種を好適に用いることができる。
【0035】
金属または合金層は、特に限定されないが、たとえば、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法により形成することができる。これらの金属または合金層の厚さは、特に限定されないが、15~150nmの範囲がより好ましい。15nm未満では金属顔料としての反射性、光輝性等の性能が不足する場合があり、150nmを超えると見かけ比重が増加し、複合化顔料の分散安定性が低下する場合がある。金属または合金層の厚みの不必要な増大は、金属顔料粒子の重量の増加を招くだけであり、150nmより厚い膜厚であっても、反射性、光輝性はあまり変化しない。
・・・
【0052】
以上説明したような本実施形態の金属顔料(複合化顔料)は、さらに以下のような性質を有する。上記の積層構造を有する金属顔料は、平板状の粒子形状を有する平板状粒子である。「平板状粒子」は、略平坦な面(XY平面)を有し、かつ厚み(Z)が略均一であって、平らな板状の形状を有する粒子である。そして、該板の厚みZが、該板の板面の方向の大きさ(XY平面上の大きさ)よりも小さい粒子のことをいう。本明細書においては、平板状粒子の形状のパラメータとして、該平板状粒子の平面上(板面方向)の長径をX、短径をY、該平板状粒子の厚みをZと定義する。
【0053】
このような平板状の形状を有する金属顔料は、インクジェット記録用光硬化型インク組成物が記録媒体に付着されたときに、記録媒体の法線方向と金属顔料の厚み方向が揃うように配置されやすい。そのため、記録媒体に金属光沢面を形成するときに必要となる金属顔料の量を低減することができる。また、金属顔料が平板状であるため、印刷面に光を照射する際に透過光を生じやすく、光硬化型インク組成物の印刷面を硬化させ易い。
【0054】
金属顔料は、記録媒体に形成される印刷面の金属光沢を高め、かつ、該印刷面を硬化させるために必要な光量をさらに低減するために、粒子の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、XY平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5~3μmであり、かつR50/Z>5の条件を満たす形状とすることがより好ましい。
【0055】
ここで、「円相当径」とは、平板状粒子のXY平面を、Z方向に投影したときの面積と同じ面積を有する円の直径のことである。円相当径は、たとえば、粒子像分析装置(たとえば、シスメックス株式会社製FPIA?2100、FPIA?3000、FPIA3000S)や、顕微鏡観察結果の画像解析などによって測定することができる。
【0056】
平板状粒子の円相当径の50%平均粒子径R50とは、円相当径に対する粒子の個数(頻度)分布を描いたときに、測定した粒子の総個数の50%部分に相当する円相当径のことを指す。
【0057】
このようにすれば、記録媒体に形成される印刷面の表面の平坦性を向上させることができ、該印刷面の金属光沢度を高めることができる。さらに、金属顔料を透過する光の量を増大することができるため、印刷面の硬化に必要な光の照射量を低減することができる。
【0060】
金属顔料の平板状粒子のXY平面の面積より求めた円相当径の最大粒子径Rmaxは、インクジェット記録用光硬化型インク組成物をインクジェット記録装置を用いて塗布する際には、ノズルの目詰まりを防止するために、10μm以下であることが好ましい。」
「【0062】
1.2.重合性化合物
・・・」
「【0087】
1.3.重合開始剤
・・・」
「【0091】
1.4.その他の成分
・・・」」
「【0103】
2.インクジェット記録方法
・・・」
「【0113】
3.記録物
・・・」
「【0114】
4.インクセット
・・・」
「【0115】
5.インクカートリッジおよびインクジェット記録装置
・・・」
「【0117】
6.実施例
・・・
【0121】
6.1.1.2.顔料層の形成
<酸化ケイ素層の形成>
上記方法にて表面に剥離層を形成したPETフィルム上に、下記の塗工液をスピンコート法によって塗布・焼成し、酸化ケイ素層を形成した。
【0122】
(酸化ケイ素層塗工液)
酸化ケイ素層塗工液として、HAS-6(コルコート株式会社製)を10質量%、エタノールを42.5質量%、および2-エトキシエタノールを47.5質量%混合した混合液を用いた。
【0123】
(酸化ケイ素層塗工条件)
前述のPETフィルム上の剥離層の上に、スピンコート法によって酸化ケイ素層塗工液を塗工した。コート条件としては、ターンテーブル上で、PETフィルム上の剥離層の上に上記の酸化ケイ素層塗工液を滴下し、500rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで30秒間回転させて行った。その後、140℃、5分間の焼成処理を行った。この条件にて形成した酸化ケイ素層の厚さは70nmであった。
・・・
【0148】
6.1.3.インクジェット記録用光硬化型インク組成物の調製
上記のように得られた複合化顔料Aおよび複合化顔料Bの分散原液について、それぞれ、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行って粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いて過剰のエチレングリコールモノアリルエーテルを留去した。これにより、各分散原液が濃縮されるが、該各濃縮液について、熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製EXSTAR-6000TG/DTA)を用いて、それぞれ金属顔料の濃度を求めながら、金属顔料分散液中の金属顔料の含有量(濃度)調整を行い、5質量%の濃度の金属顔料分散液Aおよび金属顔料分散液Bを得た。
【0149】
そして、粒子径・粒度分布測定装置(シスメックス社製FPIA-3000S)を用いて金属顔料のX(長径)Y(短径)平面の円相当径における50%平均粒子径R50を測定し、さらに、得られたR50とZ(厚み)の測定値に基づき、R50/Zを算出した。
【0150】
その結果、本実施例の金属顔料は、R50=1.03μm、R50/Z=51.5の値を有していた。
・・・
【0153】
6.2.比較例
比較例は、金属顔料として、平板状の形状を有さない金属粒子を含有するインク組成物とした。比較例の金属顔料としては、市販のアルミニウムペースト(東洋アルミニウム株式会社製:WXM0650)に含まれるアルミニウム粒子を用いた。比較例の金属粒子は、球形の形状を有しており、平均粒子径6μmである。
【0154】
比較例のインク組成物は、金属顔料を、上記のような積層平板状の形状を有さないアルミニウム粒子とした以外は、配合量(金属顔料は固形分としての配合量)を実施例1と同様にして作製した。
・・・
【0159】
6.4.硬化物および記録物の評価
「6.3.1.インク組成物の硬化物」で作製した各実施例および比較例の硬化物について、指触試験を行った。その結果、各実施例の硬化物は、いずれもタック感が認められず、良好に硬化していることが判明した。これに対して、比較例の硬化物は、タック感が認められ、硬化が不十分であることが判明した。
【0160】
「6.3.2.インクジェット記録方法による記録物」で作製した各実施例および比較例の記録物のそれぞれを、目視にて観察して表面を評価したところ、各実施例の記録物は、いずれも良好な金属光沢が認められた。一方、比較例の記録物は、金属光沢感が実施例に比較して劣っていた。」
4 当審の判断
(1)甲1に記載された発明について
ア 甲1には、前記3(1)に摘記した請求項1及び請求項6より、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物であって、前記重合性化合物がラジカル重合化合物である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物」が記載されている。そして、ラジカル重合化合物のための重合開始剤は、ラジカル重合開始剤である。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物であって、前記重合性化合物がラジカル重合化合物であり、前記重合開始剤がラジカル重合開始剤である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。」(以下、「甲1発明1」という。)。
イ 甲1には、前記3(1)に摘記した請求項1及び請求項5より、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物であって、前記重合性化合物がカチオン重合化合物である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。」が記載されている。そして、カチオン重合化合物のための重合開始剤は、カチオン重合開始剤である。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物であって、前記重合性化合物がカチオン重合化合物であり、前記重合開始剤がカチオン重合開始剤である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。」(以下、「甲1発明2」という。)。
ウ 甲1には、前記3(1)に摘記した請求項1のとおりの、以下の発明が記載されているといえる。
「金属顔料と、重合化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が 積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物。」(以下、「甲1発明3」という。)。
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「金属または合金層」を有する「金属顔料」と本件発明1の「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料」とは、「金属顔料」である点では一致している。
甲1発明1の「ラジカル重合化合物」は、本件発明1の「ラジカル重合性化合物」に相当する。
甲1発明1の「ラジカル重合開始剤」は、本件発明1の「ラジカル重合開始剤」に相当する。
甲1発明1の「インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明1の「インクジェットインク」に相当する。
そうすると、甲1発明1と本件発明1とは、
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1a>
金属顔料について、本件発明1は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明1は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点1b>
本件発明1は、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層及び酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く」ものであるのに対し、甲1発明1は、そのような特定のない点。
イ 相違点1bについて先に検討する。
甲1発明1における、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明1から除くものに該当するものであるから、相違点1bは実質的な相違点である。
ウ したがって、相違点1aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明1とは実質的な相違点を有するものである。よって、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(4)本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「金属または合金層」を有する「金属顔料」と本件発明3の「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料」とは、「金属顔料」である点では一致している。
甲1発明2の「カチオン重合化合物」は、本件発明3の「カチオン重合性化合物」に相当する。
甲1発明2の「カチオン重合開始剤」は、本件発明3の「カチオン重合開始剤」に相当する。
甲1発明2の「インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明3の「インクジェットインク」に相当する。
そうすると、甲1発明2と本件発明3とは、
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3a>
金属顔料について、本件発明3は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明2は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点3b>
本件発明3は、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層及び酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く」ものであるのに対し、甲1発明2は、そのような特定のない点。
イ 相違点3bについて先に検討する。
甲1発明2における、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明3から除くものに該当するものであるから、相違点3bは実質的な相違点である。
ウ したがって、相違点3aについて検討するまでもなく、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(5)本件発明4について
本件発明4は、本件発明3を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明3と同様に、甲1発明2とは実質的な相違点を有するものである。よって、本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(6)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明3とを対比する。
甲1発明3の「金属または合金層」を有する「金属顔料」と本件発明5の「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料」とは、「金属顔料」である点では一致している。
甲1発明3の「インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明5の「光硬化性である、インクジェットインク」に相当する。
そうすると、甲1発明3と本件発明5とは、
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、光硬化性である、インクジェットインク」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5a>
金属顔料について、本件発明5は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明3は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点5b>
本件発明5は、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層及び酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く」ものであるのに対し、甲1発明3は、そのような特定のない点。
イ 相違点5bについて先に検討する。
甲1発明3における、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明5から除くものに該当するものであるから、相違点5bは実質的な相違点である。
ウ したがって、相違点5aについて検討するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(7)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1~5を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1~5と同様に、甲1に記載された発明とは実質的な相違点を有するものである。よって、本件発明6は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(8)本件発明9について
ア 新規性について
本件発明9は、本件発明1~6を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1~6と同様に、甲1に記載された発明とは実質的な相違点を有するものである。よって、本件発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
イ 進歩性について
(ア)対比
本件発明9と、甲1発明1~3とを対比すると、上記(2)、(4)及び(6)で対比したとおりの点で一致し、相違点1a、1b、3a、3b、5a、5bで相違するほか、以下の点で相違する。
<相違点9c>
本件発明9は「不揮発成分全体中」の「金属顔料の比率が1~8質量%である」のに対し、甲1発明1は、金属顔料のそのような比率について示されていない点。
(イ)判断
本件発明9と甲1発明1~3とは、上記(2)、(4)及び(6)において示したとおり、少なくとも相違点1b、3b、5bにおいて実質的に相違する。
そこで、相違点1b、3b、5bについて検討する。
甲1には、「重合性化合物、重合開始剤および顔料等から構成される」「光硬化型インク」において(上記3(1)、段落0004)、「顔料として金属顔料を用いれば、プレス等の工程を経ることなく、インクジェット記録方法によって、金属光沢面を形成できる可能性があった」(上記3(1)、段落0005)ことを背景に、甲1の「実施形態の金属顔料は」「積層体であって平板状の構造であるため、インクジェット記録用光硬化型インク組成物中において、優れた保存安定性および分散安定性を有し、インクジェット記録時にも良好な吐出性を付与することができる。さらに、本実施形態の金属顔料は、積層板状構造であるため、一般的な球形の形状を有する顔料と比較して、厚み方向に光を透過しやすいため、光の遮蔽性が抑制されるため、インクジェット記録用光硬化型インク組成物に極めて好適である。また、積層構造とすることで、機械的強度が向上するため、金属顔料の変形による金属光沢低下を防止できる」ものである(上記3(1)、段落0029)ことが記載される。
そして、甲1での「比較例は、金属顔料として、平板状の形状を有さない金属粒子を有するインク組成物とした」ものであり(上記3(1)オ、段落0153)、「金属顔料を」「積層平板状の形状を有しないアルミニウム粒子とし」たもの(上記3(1)オ、段落0154)の硬化物は、「タック感が認められ、硬化が不十分」であり(上記3(1)カ、段落0159)、「金属光沢感が実施例に比較して劣っていた」ものであること(上記3(1)カ、段落0160)が記載される。
このような甲1の記載に接した当業者は、甲1発明1~3のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する」という組成、及び「金属顔料」が「積層された平板状粒子である」という層構成及び粒子形状の、いずれもが、甲1に記載の発明のインク組成物が所望の性能を発揮するために欠かせない構成であると認識するものといえる。
そして、本件発明9は、甲1発明1~3との重なりを除外するために、甲1発明1~3の「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層及び酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物」を除いたものであるところ、甲1発明1~3のインクジェット記録用光硬化型インク組成物において、その組成、金属顔料の層構成及び粒子形状のいずれかを、上記認識に反して変更し、甲1のインクジェット記録用光硬化型インク組成物を除いた本件発明9のインクジェットインクとしようとする動機付けを、見出すことはできない。
したがって、甲1発明1~3において、相違点1b、3b、5bに係る発明特定事項を備える本件発明9とすることを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
よって、本件発明9は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1~6、9を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1~6、9と同様に、甲1に記載された発明とは実質的な相違点を有するものである。よって、本件発明10は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(10)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1~6、9を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1~6、9と同様に、甲1に記載された発明とは実質的な相違点を有するものである。よって、本件発明11は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
5 まとめ
以上のとおりであるので、本件発明1~6、9~11についての、甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法として参照する、申立ての理由1(特許法第29条第1項第3号)は、成り立たない。
また、本件発明9についての、甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法として参照する、申立ての理由2(特許法第29条第2項)は、成り立たない。
第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立ての理由のうち、以下の(1)乃至(3)については、上記第4の取消理由において、取消理由を通知していない。
(1)本件発明7~15(訂正前の請求項7~8)についての、以下の甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法として参照する、申立ての理由1(特許法第29条第1項第3号)。
(2)本件発明7~15(訂正前の請求項7~8)についての、以下の甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法とし、甲3を周知事項を示す証拠方法(本件発明7、9~12、14のみ)として参照する、申立ての理由2(特許法第29条第2項)。
(3)本件発明1~6、9~11(訂正前の請求項1~8、10~11)についての、以下の甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法として参照する、申立ての理由2(特許法第29条第2項)。
2 証拠方法の一覧
ア 申立人が特許異議申立書に提示した証拠方法
甲1:特開2010-43153号公報(上記第4の2の甲1に同じ。)
甲2:特開2007-30249号公報(上記第4の2の甲2に同じ。)
甲3:特開2012-140692号公報
イ 当審が調査した証拠方法に係るもの
引A:特開2016-65262号公報(上記第4の2の引Aに同じ。)
3 証拠方法に記載された事項
(1) 甲1に記載された事項
甲1には、上記第4の3(1)に摘記したとおりの事項が記載されている。
(2) 甲2に記載された事項
「【0006】
ここで、インジウムはアルミニウムよりも展性に富むことが広く知られており、本発明者も、インジウムの金属蒸着膜を有する金属調加飾シートを用い、アルミニウムの金属蒸着膜に比して更なる深絞りに対応できる金属調加飾シートとして検討を行い、特開2002-370311号公報(特許文献1)あるいは、特開2004-001243号公報(特許文献2)に示すような金属調加飾シートを提案してきた。」
(3) 甲3に記載された事項
「【請求項1】
高分子樹脂基材の表面に、
水溶性樹脂よりなる第1層と、
金属よりなる第2層と、
をこの順に積層してなる積層体を得る積層工程と、
前記積層体から少なくとも前記第2層を剥離し、かつこれを微粉化する剥離微粉化工程と、
を経て得られてなる金属超微粉体であって、
前記金属超微粉体が略コイン状(略円盤状)の形状を有してなり、
前記金属超微粉体の最大直径部が10nm以上1μm以下であり、最大厚み部が10nm以上100nm以下であること、
を特徴とする、金属超微粉体。」
「【背景技術】
【0002】
自動車等の塗装として、重厚感や高級感を呈するために金属箔を用いることがある。例えば自動車のホイールキャップやフロントグリル等に金属光沢を付与するために、以下のような製法が用いられる。即ちこれらの部材を高分子樹脂で射出成型する際に、アルミニウム等の金属箔が予め積層されたインモールドフィルムを用いることにより、得られた樹脂成型品にはアルミニウムの金属光沢が備えられている、というものである。
【0003】
このような樹脂成型品の装飾方法を応用すれば、自動車に限らず、多様な樹脂成型品に対して金属光沢を付与できるし、また積層されているものが金属箔以外のもの、例えば何らかのデザインによる印刷層とすることも考えられる。
【0004】
しかしこの方法であれば、例えば樹脂成型品がいわゆる深絞りの鋳型を用いて製造される場合、深絞り部分のように急な曲面部分では金属箔などにクラックが生じてしまい、美麗な外観を得ることが出来ない場合もあった。
【0005】
そこで、金属箔を備えたインモールドフィルムを用いる代わりに鱗片状のメタルフレークを直接樹脂成型品の表面に積層することにより、金属光沢を付与することが行われることもある。しかし、この鱗片状メタルフレークを直接樹脂成型品の表面に積層しようとすると、その膜厚を均一なものとすることが困難であり、その結果なめらかな表面を得ようとする場合にこの鱗片状メタルフレークを用いることは必ずしも好ましいとは言えない。
【0006】
そこで、上述した金属箔のクラックによる欠損、メタルフレークによる厚みの不均一さ、という問題に対処しようとすると、粉体の、それも極微粉末状の金属を吹き付けなどにより樹脂成型品の表面に塗装することが有効であると考えられる。
【0007】
ここで言う極微粉末とは、特に粒径が100nm以下のものであり、いわゆるナノ粒子として知られているものである。
【0008】
このナノ粒子の製造方法については様々な手法が提案されており、ここでは詳述しないが、例えば物理的方法として、ガス中蒸着法、スパッタリング法、金属蒸気合成法、等によりナノ粒子を得るもの、また化学的方法として、コロイド法やアルコキシド法等の液相を利用したもの、金属塩化物還元法、水素中還元法等の気相を利用したもの、等が広く用いられている。そしてこのような手法により、例えば金や銀、アルミニウムなどのナノ粒子が得られるようになっている。
【0009】
さて、このように様々な手法で得られるようになった金属のナノ粒子であるが、昨今特に自動車業界や機能性薄膜を製造する業界においてインジウムによる金属光沢付与を行うことが熱望されるようになってきている。これは、インジウムには独特の深みのある光沢を備えているだけではなく、電磁波の透過性も好適であるからなのである。
【0010】
この点につきさらに説明すると、自動車業界では安全確保、交通事故防止の観点から市場要望の急激な高まりもあって、自動追突防止機構の開発が求められている。この機構は一般的には走行中の自動車から前方に向けて電磁波を発射し、前方の自動車から反射してきた電磁波を受信機で受信することにより、前方の自動車との車間距離を算出し、この車間距離が急激に短くなってきたら自動的に自動車の走行を停止する、というものであるが、この際、自動車のフロントグリルに与えられる金属光沢の材料として、例えばアルミニウムを用いると、反射してきた電磁波をアルミニウムが遮断してしまうので、このような電波を反射する物質をフロントグリルに用いることは出来ない。しかし一方で現在ではこの装置はいわゆる高級車から順次装備することが考えられているが、高級車のフロントグリルには高級感を演出するために金属光沢を与えることがほぼ必要不可欠な条件と言える状況である。そこで電磁波のような電波を反射することのない、金属光沢を付与できる物質としてインジウムが求められているのである。そして上述したように、製造時に表面にクラックが生じず、また塗布したときの膜厚が均一となるようにするためには、インジウムの超微粉体が必要とされているのである。」
「【0037】
このようにしてPETフィルムにアクリル酸エステル共重合樹脂による層を介して金を積層してなる積層体を得ると、これを超音波水槽浴に浸す。このようにすることで、まず水に浸されることで、水溶性樹脂が溶解し、PETフィルムと金による第2層とが美麗に剥離する。この際、PETフィルムは溶解することがないので使用後再び利用することが出来る。そして超音波により、剥離した金層が水中で超微粉体となるまで細かくなる。尚、本実施の形態では剥離微粉化工程を超音波水槽浴にて実行されてなるものであることとしたが必ずしもこれに限定されるものではないことを断っておく。
【0038】
このようにして水中に金粒子が存在する状態とすれば、最後にこれを濾過することにより金ナノ粒子を得る事が出来るのである。
【0039】
このように、本実施の形態では単純にPETフィルムに水溶性樹脂を介して金を積層して成る積層体を、超音波水槽浴中でこれを微粉化することにより金ナノ粒子を得る事が出来るので、従来の手法に比べて非常に簡潔にナノ粒子、即ち金属超微粉体を得られ、また作業自体も簡潔であり、製造コストの高騰も抑制することが出来るようになる。」
(4) 引Aに記載された事項
「【0036】
以上説明した本願発明の金属箔粉の製造方法を実際に行った一例を以下に述べる。
厚さ12μmの未延伸ポリプロピレンフィルムに、ポリジメチルシロキサンをバーコーター法で塗布し、乾燥して厚さ0.8μmの第1透明樹脂薄膜層を形成した。該第1透明樹脂薄膜層上に、0.01Paまで真空状態にした真空蒸着機で、金属薄膜層としてクロムを0.04μm蒸着形成した。得られたこのクロム金属薄膜層上に、ポリジメチルシロキサンを前記第1透明樹脂薄膜層と同様にして0.3μmの厚さに形成し第2透明樹脂薄膜層を得た。こうして得た第1透明樹脂薄膜層・クロム金属薄膜層・第2透明樹脂薄膜層からなる特殊光輝性の積層体のみをフィルムから剥離し、水中で粉砕して厚さ1.2μmの特殊光輝性の非定型偏平形状の金属箔粉を得た。」
3 甲1に記載された発明
甲1には、上記第4の4(1)に記載したとおりの甲1発明1、甲1発明2及び甲1発明3が記載されている。
4 取消理由通知において採用しなかった、本件特許7~15についての上記(1)の申立ての理由1及び上記(2)の申立ての理由2、並びに本件特許1~6、9~11についての上記(2)の申立ての理由2に対する当審の判断を、以下、順に示す。
5 本件発明7~15についての申立ての理由1に対する当審の判断
(1)本件発明7について
ア 本件発明7と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「金属または合金層」を有する「金属顔料」と本件発明7の「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料」とは、「金属顔料」である点では一致している。
甲1発明1の「ラジカル重合化合物」は、本件発明7の「ラジカル重合性化合物」に相当する。
甲1発明1の「ラジカル重合開始剤」は、本件発明7の「ラジカル重合開始剤」に相当する。
甲1発明1の「インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明7の「インクジェットインク」に相当する。
そうすると、甲1発明1と本件発明7とは、
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点7a>
金属顔料について、本件発明7は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明1は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点7c>
本件発明7は、「金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである」のに対し、甲1発明1は、そのような特定のない点。
イ 相違点7aについて検討する。
甲1発明1の「金属顔料」の「金属または合金層」について、甲1発明1は金属を特定していないので甲1の発明の詳細な説明を参照すると、「アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン等が好適であり、これらの単体金属、金属化合物またはこれらの合金およびそれら混合物の少なくとも一種を好適に用いることができる」ものであること(上記第4の3(1)、段落0034)及び「真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法により形成することができるものであること」(上記第4の3(1)、段落0035)が記載されている。
そうすると、「インジウム」及び「クロム」を含む、上の好適とされる金属のそれぞれが、引用発明1の金属顔料に含まれる金属たり得るものであることを甲1は開示しているといえる。
加えて、「インジウム」が金属蒸着膜を形成し得るものであることは例えば甲2(上記3(2)、段落0006)にあるように、また同様に「クロム」が蒸着金属薄膜を形成し得るものであることは例えば引A(上記3(4)段落0036、)にあるように、それぞれ当業者に知られた事項である。
そうすると、甲1発明1の「金属顔料」の「金属又は合金層」が「インジウム」又は「クロム」であるインクジェットインクは、甲1の記載に接した当業者が、甲2及び引Aに示されるような技術常識に基づき、甲1に記載されたものとして、認識し得るものであるといえる。
以上より、甲1発明1の「金属顔料」の「金属又は合金層」が「インジウム」又は「クロム」であることは、本件発明1のインクジェットインクが金属顔料として「金属インジウムを含む」「および/または、金属クロムの単体を含む」ことに相当するといえるから、相違点7aは、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点7cについて検討する。
(ア)本件明細書には、Z平均粒子径に関して、以下の記載がある。
「【0019】・・・Z平均粒子径は・・・好ましくは50~500nm・・・である。Z平均粒子径がある程度大きいことにより、最終的な画像の金属光沢を一層高めることができる。また、Z平均粒子径が大きすぎないことにより、ヘッドからのインクジェットインクの吐出がよりスムーズとなる傾向がある。また、ヘッドの詰まりが抑えられるとも考えられる。【0020】金属顔料のZ平均粒子径は、ISO 22142:2017の規定に基づき、光散乱法により測定することができる。より具体的には、キュムラント法に基づき、散乱光強度で重み付けされた調和平均粒子径をZ平均粒子径として採用することができる。光散乱法による測定が可能な測定装置としては、例えば、マルバーン社製のゼータサイザーナノZSを挙げることができる。測定は、通常、湿式で行われる。つまり、金属顔料を溶剤で分散させたものを測定サンプルとすることができる。」
(イ)これに対して、甲1には、金属顔料のZ平均粒子径は記載されていない。
(ウ)甲1の記載から、金属顔料のZ平均粒子径が算出できるかについて甲1の記載を検討してみても、甲1には、平板状粒子である金属顔料について、「平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のXY平面の面積より求めた円相当径における50%平均粒子径R50が0.5-3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たす形状を有する」との記載があり(請求項3等)、具体例における金属顔料は、R50=1.03μm、R50/Z=51.5のものである(上記第4の3(1)、段落0150)。また、甲1には、「金属顔料の平板状粒子のXY平面の面積より求めた円相当径の最大粒子径Rmaxは、インクジェット記録用光硬化型インク組成物をインクジェット記録装置を用いて塗布する際には、ノズルの目詰まりを防止するために、10μm以下であることが好ましい」との記載があるに止まる(上記第4の3(1)、段落0060)。
これら「R50」、「Z」、「R50/Z」、「Rmax」は、いずれも本件発明7の「Z平均粒子径」とは異なるものである。また、これら「R50」、「Z」、「R50/Z」、「Rmax」の値から、本件発明7のZ平均粒子径を計算で求めることもできない。
そのために、甲1の金属顔料が、本件発明7のZ平均粒子径を満足するものであると直ちにいうことはできない。
(エ)本件明細書には、以下の記載がある。
(オ)段落0021には、その「金属顔料は、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムを含むことが好ましい。「鱗片状」とは、平板状、湾曲板状等の形状を含む概念を意味する。具体的には、ある1つの方向から観察した際(平面視した際)の面積が、その方向と直交する方向から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいう。別観点として、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムにおいて、平均長径÷平均厚みの計算で求められるアスペクト比は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。アスペクト比の上限は特にないが、例えば100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは25以下である(平均長径と平均厚みの求め方については後述する)」ことが、また、段落0022には「金属顔料が、鱗片状の金属インジウムおよび/または金属クロムを含む場合、その平均長径は、好ましくは80~600nm、より好ましくは100~500nmである。また、平均厚みは、好ましくは10~50nm、より好ましくは20~40nmである。適切な平均長径/平均厚みの鱗片状の金属顔料を用いることで、インクジェット性能(例えば吐出性)などを維持しつつ、最終的な印刷物における金属光沢を一層高めることができる。上記において、「平均長径」とは、電子顕微鏡を用いて金属顔料を撮影し、撮影された画像中の任意の50個の金属顔料(鱗片状の粒子)の長径を平均した値である。「平均厚み」についても同様である」ことが記載される。
段落0104~0107には、実施例の鱗片状の金属インジウム顔料について、Z平均粒子径は118nm、平均長径は0.13μm、平均厚みは0.033μm、アスペクト比は3.9であったことが、実施例のクロム顔料のZ平均粒子径は359nm、平均長径は0.34μm、平均厚みは0.035μm、アスペクト比は9.7であったことが記載される。
また、本件明細書において、実施例として記載されたのは、これら実施例の鱗片状の金属顔料のみであり、「Z平均粒子径」について数値を伴って記載された具体的な金属顔料も、それら実施例の鱗片状の金属顔料のみである。
(カ)甲1発明1の金属顔料は「平板状粒子」であり、本件明細書には、上記(オ)のとおり、「平板状」を含んで意味する「鱗片状」の金属顔料のサイズに関する記載があるので、その記載を参考に、甲1発明1の金属顔料が、本件発明7のZ平均粒子径の範囲内のものである蓋然性が高いかどうかについて検討する。
(キ)厚みについて
上記(ウ)に示したように、甲1の具体例の金属顔料の「厚みZ」=1.03μm÷51.5=20nmであり、これに対して、上記(オ)より、本件明細書の鱗片状の金属顔料の「平均厚み」は、「好ましくは10~50nm、より好ましくは20~40nmである」であるので、甲1の具体例の金属顔料の厚みは、本件明細書の鱗片状の金属顔料の平均厚みの「より好まし」い範囲内にある。本件明細書の実施例の金属顔料の厚み0.033μm(33nm、金属インジウム。段落0107)、0.034μm(34nm、金属クロム。段落0107)もまた、この「より好まし」い範囲内にある。
(ク)粒子径について
上記(ウ)に示したように、甲1の、「平板状粒子のXY平面の面積より求めた円相当径における50%平均粒子径R50」は、甲1の請求項3では「0.5-3μm」すなわち500nm-3000nmの範囲とされ、甲1の実施例では、1.03μmすなわち1030nmである。数値だけで粒子径を比較すれば、甲1の粒子径は500nm-3000nmであるのに対し本件発明7の粒子径50~500nmとなり、その範囲が異なるといえる。また、甲1の実施例の粒子径1030nmは、本件発明7の粒子径の最大値500nm及び本件明細書の実施例の188nm(金属インジウム、段落0106)、359nm(金属クロム、段落0106)の2倍を超えるものであり、大きく異なっている。
(ケ)平均長径について
甲1の金属顔料のR50値の算出方法(上記(ウ)参照)からみて、甲1の金属顔料の平均長径はR50値よりも大きいと考えられる。そして、甲1のR50値は、上記(ク)に示したように500nm以上であるから、甲1の金属顔料の平均長径は、500nmを超えると一応解される。また甲1の実施例の金属顔料のR50=1.03μmであるから(上記(ウ)参照)、実施例の金属顔料の平均長径は1030nmを超えるものといえる。これに対して、本件明細書の金属顔料の「平均長径」は、上記(エ)に示したように「好ましくは80~600nm、より好ましくは100~500nm」であり、実施例では「0.13μm」(130nm、金属インジウム)または「0.34μm」(340nm、金属クロム)である。そうすると、甲1の金属顔料の平均長径は、本件明細書の金属顔料の平均長径の2倍を超えるものであり、大きく異なっている。
(コ)アスペクト比について
上記(ウ)に示したとおり、甲1の「平板状粒子のXY平面の面積より求めた円相当径における50%平均粒子径R50」と「厚みZ」の比 R50/Z>5であり、甲1の実施例の金属顔料の当該比は、51.5である。この比は、平板状の粒子のアスペクト比の1種である。また、上記(ケ)に立てば、甲1の金属顔料の平均長径はR50値よりも大きいから、「平均長径/厚みZ」で求められる値は、51.5よりも大きくなると考えられる。これに対して、上記(エ)より、本件明細書では、鱗片状の金属顔料の平均長径÷平均厚みの計算で求められるアスペクト比は、「好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上であり、アスペクト比の上限は特にないが、例えば100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは25以下」であるとされ(段落0021)、実施例では、3.9(金属インジウム)、9.7(金属クロム)である(段落0107)。そうすると、甲1の実施例の金属顔料のアスペクト比は、本件明細書の実施例のものの5倍以上となっており、本件明細書において「より好ましくは50以下」とされる範囲の外にあるものである。
(サ)以上より、甲1発明1の平板状粒子である金属顔料は、本件発明7のZ平均粒子径の範囲内のものである蓋然性が高いとはいえない。
エ 申立人の主張について
特許異議申立書の第29頁、(4-3-1)の(キ)には、本件特許7の「金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである」点について、甲1に「Z平均粒子径」という用語は明記されていないことを示しつつも、甲1の請求項3に「50%平均粒子径R50が0.5~3μm」であること、段落0033に「顔料層の厚さが100~500nmの範囲が好ましい」こと、及び段落0035に「金属または合金層の厚さは、15~150nmの範囲が好ましい」ことが開示されていることを、新規性がないことの根拠に挙げる。
しかしながら、これらの記載をもってしても、上記甲1発明1の平板状粒子である金属顔料は、本件発明7のZ平均粒子径の範囲内のものであるといえないことは、上記ウで検討したとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
オ 小括
以上のとおりであるので、本件発明7は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(2)本件発明8について
ア 本件発明8と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「金属または合金層」を有する「金属顔料」と本件発明8の「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む金属顔料」とは、「金属顔料」である点では一致している。
甲1発明1の「ラジカル重合化合物」は、本件発明8の「ラジカル重合性化合物」に相当する。
甲1発明1の「ラジカル重合開始剤」は、本件発明8の「ラジカル重合開始剤」に相当する。
甲1発明1の「インクジェット記録用光硬化型インク組成物」は、本件発明8の「インクジェットインク」に相当する。
そうすると、甲1発明1と本件発明8とは、
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点8a>
金属顔料について、本件発明8は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明1は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点8d>
本件発明8は、「金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている」のに対し、甲1発明1は、そのような特定のない点。
イ 相違点8aについて検討する。
相違点8aは相違点7aと同様であり、その検討も、相違点7aについて行った前記(1)イと同様であるから、相違点8aは、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点8dについて検討する。
(ア)本件発明9の「金属顔料の表面」が、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む「基」、ケイ素原子含有「基」またはフッ素原子含有「基」で「修飾されている」とは、どのようなことを意味するのかについて、本件明細書の記載を確認する。
(イ)本件明細書では、段落0024に、「直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基」をまとめて「特定官能基」とも記載するとし、これら特定官能基で金属顔料の表面を修飾されていることが好ましい態様として記載されている。
(ウ)特定官能基による金属顔料の表面の修飾の方法としては、本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0038】
・・・一般式(1)で表される基で表面を修飾する場合には、以下第一工程および第二工程のような方法を採用することができる。
【0039】
・第一工程
まず、原料の金属顔料(以下の化学式では「原料粒子」と表記)と、下記一般式(1a)で表されるシランカップリング剤とを反応させて、金属顔料の表面に-NH2構造を導入する。
・・・
【0040】【化3】
[図:0001397203000001.jpg]
・・・
【0046】
・第二工程
原料の金属顔料の表面に導入された-NH2に、特定官能基を有する化合物を結合させる。より具体的には、原料粒子の表面に導入された-NH2に、以下一般式(2a)で表される化合物をマイケル付加させる。これにより、一般式(2a)で表される化合物の炭素-炭素二重結合の部分と-NH2とが反応して結合する。
【0047】【化4】
[図:0001397203000002.jpg]
・・・
【0049】
第二工程においては、一般式(2a)で表される化合物の量を調整することで、一般式(1)のRの片方または両方が一般式(2)で表される基で表面が修飾された金属顔料を得ることができる。原理的には、1molの-NH2に対して、2mol以上の一般式(2a)で表される化合物を反応させることで、一般式(1)においてRの両方が一般式(2)で表される基であるフィラー粒子を得ることができる。
【0050】
上記では、第一工程で、原料の金属顔料と一般式(1a)で表されるシランカップリング剤とを反応させ、第二工程で、一般式(2a)で表される化合物をマイケル付加させている。
このような手順とは別に、(i)まず、一般式(1a)で表されるシランカップリング剤と、一般式(2a)で表される化合物とを反応させ、(ii)次に、(i)で得た反応物を原料の金属顔料と反応させることで、金属顔料を表面修飾してもよい。
【0051】
金属顔料(特定官能基によって表面修飾されていないもの)は、例えば、尾池工業株式会社から入手することができる。・・・」
また、本件明細書の実施例としては、以下のように金属顔料の表面処理を行ったことが記載されている。
「【0108】
<金属顔料の表面処理>以下を混合し、70℃で1時間、加熱しながら攪拌した。これにより、イソステアリル基を含む基で表面修飾された金属顔料(表面処理金属顔料A)を得た。・上記インジウム顔料分散液 100質量部(固形分としては20質量部)・イソステアリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルS-1800A) 0.36質量部・3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-903) 0.10質量部
【0109】
また、表1に記載の原料配合にとした以外は、上記方法と同様にして金属顔料を表面処理し、表面処理金属顔料B、CおよびDを得た。
【0110】【表1】
[図:0001397203000003.jpg]
」
(エ)上記(ウ)の記載より、本件特許8の特定官能「基」により「修飾」されている金属顔料とは、本件明細書において、その表面に化学的に結合した特定官能基を有する、金属顔料をいうと解される。
(オ)この前提で、甲1の金属顔料についての記載を確認する。
(カ)甲1発明1の金属顔料は、「金属又は合金層」と「樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1層」とが「積層」されたものであるとされているが、「樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1層」が、「金属又は合金層」の表面に、化学的に結合したものであるとはされていない。
(キ)甲1の記載を参照すると、甲1には、「インクジェット記録用光硬化型インク組成物に含有される金属顔料」は「複合化顔料」であり(上記第4の3(1)、段落0023)、4つの形態の複合化材料が記載される。「第1形態の複合化顔料の原体の顔料層は、酸化ケイ素層/(金属または合金層)/酸化ケイ素層が順次積層されたもの」であり「この顔料層を、シート状基材より剥離し粉砕した」「第1形態の複合化顔料」(上記第4の3(1)、段落0024)、「第2形態の複合化顔料の原体の顔料層は、樹脂層/(金属または合金層)/樹脂層が積層されたもの」であり「この顔料層を、シート状基材より剥離し粉砕した」「第2形態の複合化顔料」(上記第4の3(1)、段落0025)、「上記第1形態において、酸化ケイ素層と、金属または合金層と、の間に色材層を設けた第3形態の複合化顔料」(上記第4の3(1)、段落0026)、及び「上記第2形態において、樹脂層と、金属または合金層と、の間に色材層を設けた第4形態の複合化顔料」(上記第4の3(1)、段落0026)である。
(ク)甲1には、その「酸化ケイ素層」を有するものの実施例として、「酸化ケイ素層塗工液を塗工」したのち「140℃、5分間の焼成処理」により「酸化ケイ素層」を形成したこと(上記第4の3(1)、段落0121~0123)、その後、顔料層、アルミニウム金属層の順に積層した、上記第3形態のものが記載される。該「酸化ケイ素層」は、ケイ素原子含有の層であり、金属顔料の表面に設けられる層である。しかしながら、この層は、焼成して、酸化ケイ素層とされたものであり、金属顔料表面に、ケイ素原子含有「基」として、化学的に結合したものであるとはいえない。
そうすると、甲1発明1の「酸化ケイ素層」は、金属顔料の表面を、「ケイ素原子含有基」として「修飾」しているものであるとはいえない。
エ 申立人の主張について
特許異議申立書の「(4-3-1)」の「(ク)」及び申立人が令和5年2月2日付で提出した意見書の「(3-1-5)」には、本件特許8の「金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている」点について、甲1の請求項1に「酸化ケイ素層」が選択肢として記載されていること、「第1形態」として「顔料層は、酸化ケイ素層/(金属または合金層)/酸化ケイ素層が順次積層されたものであること」が例示されていること(上記第4の3(1)、段落0024)を、新規性がないことの根拠に挙げる。
しかしながら、これらの記載をもってしても、上記甲1発明1の金属顔料は、本件発明8の、金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されているとはいえないことは、上記ウで検討したとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
オ 小括
以上のとおりであるので、本件発明8は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(3)請求項7を引用する本件発明9~11、12、14について
請求項7を引用する本件発明9~11と甲1発明1を、本件発明12と甲1発明2を、また、本件発明14と甲1発明3とを、それぞれ対比し判断した内容は、上記(1)と同様である。
よって、本件発明9~11、12、14は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(4)請求項8を引用する本件発明9~11、13、15について
請求項8を引用する本件発明9~11と甲1発明1を、本件発明13と甲1発明2とを、また、本件発明15と甲1発明3とを、それぞれ対比し判断した内容は、上記(2)と同様である。
よって、本件発明9~11、13、15は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおりであるので、本件発明7~15についての、甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法として参照する、申立ての理由1(特許法第29条第1項第3号)は、成り立たない。
6 本件発明7~15についての申立ての理由1に対する当審の判断
(1)本件発明7について
ア 本件発明7と甲1発明1とを対比すると、上記5(1)アのとおりの一致点及び相違点を有しており、再掲すると以下のとおりである。
<一致点>
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
<相違点7a>
金属顔料について、本件発明7は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明1は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点7c>
本件発明7は、「金属顔料のZ平均粒子径が50~500nmである」のに対し、甲1発明1は、そのような特定のない点。
イ 相違点7aについての検討は、上記5(1)イのとおりであり、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点7cについて検討する。
相違点7cに関して、本件明細書に記載された事項及び甲1に記載された事項との対比及び判断は、上記5(1)ウのとおりである。そして、甲1発明1の金属顔料について、甲1に記載された粒子径R50(0.5~3μm)及びZ(R50/Z>5)の値を離れ、それよりもはるかに小さい「Z平均粒子径が50~500nmである」ことを充足するものに変更することについては、甲1に記載も示唆もなく、当業者が容易に設定し得たものであるとはいえない。
エ 特許異議申立書での申立人の主張について
(ア)特許異議申立書の「(4-3-1)」の「(キ)」において、申立人は、「甲第3号証には、甲3発明として、高分子樹脂基材の表面に、水溶性樹脂よりなる第1層と、金属よりなる第2層とをこの順に積層してなる積層体を得て、次に、第2層を剥離し、微粉化することにより、金属超微粉体が得られ、そのような金属超微粉体が、略コイン状(略円盤状)の形状を有し、最大直径部が10nm以上1μm以下であり、最大厚み部が10nm以上100nm以下であることが開示されている(請求項1)。このように、積層構造を有する金属微粉体の最大直径部として、10~100nm程度を取り得ることは周知である。そうすると、甲1発明の積層構造を有する金属顔料について、厚みに関して周知技術を参照し、構成要件7Bを具備させることは、当業者の設計的事項である」と主張する。
(イ)上記主張において、申立人は、「積層構造を有する金属微粉体の最大直径部として10~100nm程度を取り得ることは周知である」とするが、記載箇所として挙げられた甲第3号証の請求項1において「10~100nm」を示すのは「最大厚み部」(「10nm以上100nm以下」)であり、「最大直径部」(「10nm以上1μm以下」)ではない。
そうすると、甲3の請求項1を根拠に、「積層構造を有する金属微粉体の最大直径部として10~100nm程度を取り得ることは周知である」とはいえない。
(ウ)また、上記主張において、申立人は「厚みに関して周知技術を参照し」と記載していることから、申立人は、特許異議申立書においては、本件発明7の「Z平均粒子径」とは、粒子の「厚み」を指すという前提に立って主張をしていると考えられる。
しかしながら、本件発明7の「Z平均粒子径」とは、本件明細書において、上記5(1)ウ(ア)に示したとおり、「キュムラント法に基づき、散乱光強度で重み付けされた調和平均粒子径」として定義されており、上記5(1)ウ(エ)に示した本件明細書の実施例の金属顔料においても、Z平均粒子径と、平均厚みとは、別のものとして記載されている。
そうすると、「厚みに関して」の「周知技術」は、甲1発明1の金属顔料について、本件発明7の「Z平均粒子径」を充足するものとすることが想到容易であると主張する根拠として参照し得るものであるとはいえない。
オ 令和5年2月2日付で提出された意見書での申立人の主張について
(ア)令和5年2月2日付で提出された意見書の「(3-1-4)」において、申立人は、甲3の段落0006、0007、0008、0010の記載を挙げ、「甲第3号証には、要するに、」「・極微粉末状の金属を吹き付けて樹脂成型品の表面を塗装すること」、「・微粉末状とは、粒径が100nm以下の、いわゆるナノ粒子であること」、「・インジウムのナノ粒子が使われること」、「が開示されており、インジウムは金属光沢塗装の金属顔料として使用されており、吹きつけ塗装としてはインクジェット方式等が考えられる。」「その結果、当業者は、甲第3号証の上記開示を参照することにより、インクジェットインクにおいて、Z平均粒子径が50~500nm程度である金属顔料を用いることについて、何ら困難でない。」と主張し、したがって、「本件訂正発明7は、進歩性が無く、取り消されるべきである。本件訂正発明12、14に関しても同様である」とする。
(イ)甲3の、申立人が挙げた段落には、「粉体の、それも極微粉末状の金属」を対象物の表面に「吹き付け」て「塗装」することが有効であると考えられること(上記3(3)、段落0006)、「極微粉末とは粒径が100nm以下であり、いわゆるナノ粒子として知られているものである」こと(上記3(3)、段落0007)、及び「インジウムの超微粉体が必要とされている」こと(上記3(3)、段落0010)の記載があることから、上記主張において3つの「・」で列記された内容は、甲3に記載されているといえる。
(ウ)しかし、甲3には、その全体の記載を参照しても、そのインジウムナノ粒子が、インクジェットインクに含有され得ることについては、記載されていない。
(エ)甲3の金属超微粉体は、上記(イ)のように粒径が100nm以下であるのに対し、甲1の請求項3にはその平板状粒子である金属顔料は「0.5~3μm」(500nm~3000nm)の範囲の平均粒子径R50及び「R50/Z>5」を有することが記載されている。甲3の金属超微粉体と甲1の金属顔料とは、扁平形状である点では共通するが、その粒径は、500nm以上である甲1と、100nm以下の甲3とで、大きく異なる。
(オ)また、甲3の略コイン状(略円盤状)の形状の金属超微粉体(請求項1)は、金属層だけを剥離させて超微粉体となるまで細かくして得るもの(段落0037)であって、甲1発明1のように、「樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる、少なくとも1種」との積層体ではない。
(カ)このように、上記(ウ)のとおりインクジェットインクに用いられることについて記載がなく、上記(エ)のとおり積層体でなく、上記(オ)のとおり粒径も大きく異なる、甲3に記載の金属超微粉体を、甲1発明1の、「金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子」である「金属顔料」に替えて用いることについては、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
(キ)申立人は、また、本件明細書の段落0051の記載に基づき、「金属顔料を含むインクジェットインクにおいて、金属顔料の粒子径がナノサイズであり、しかもしれらの金属顔料がすでに上市されていることが読み取れる。」「すなわち、本特許権者らは、Z平均粒子径が50~500nm程度である金属顔料を用いることがすでに周知慣用技術であったことを自認しているに等しいことを付言」している。
(ク)しかし、この本件明細書の段落0051の記載は、本件発明を実施するに際しての原料入手可能性及び原料製法を指摘したものに止まるものであり、本件発明7が想到容易ではないとの判断を左右するものではない。
オ 小括
以上のとおりであるので、本件発明7は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明8について
ア 本件発明8と甲1発明1とを対比すると、上記5(2)アのとおりの一致点及び相違点を有しており、再掲すると以下のとおりである。
<一致点>
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
<相違点8a>
金属顔料について、本件発明8は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明1は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点8d>
本件発明8は、「金属顔料の表面は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基で修飾されている」のに対し、甲1発明1は、そのような特定のない点。
イ 相違点8aについての検討は、上記5(2)イのとおりであり、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点8dが想到容易であったかについて検討する。
相違点8dに関して、本件明細書に記載された事項及び甲1に記載された事項との対比及び判断は、上記5(2)ウのとおりである。そして、甲1発明1の金属顔料の表面を、特定官能基により修飾されているものとすることについて、甲1に記載も示唆もなく、当業者が容易に設定し得たものであるとはいえない。
エ 以上のとおりであるので、本件発明8は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)請求項7を引用する本件発明9~11、12、14について
請求項7を引用する本件発明9~11と甲1発明1を、本件発明12と甲1発明2を、また、本件発明14と甲1発明3とを、それぞれ対比し、判断した内容は、上記(1)と同様である。
よって、本件発明9~11、12、14は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)請求項8を引用する本件発明9~11、13、15について
請求項8を引用する本件発明9~11と甲1発明1を、本件発明13と甲1発明2とを、また、本件発明15と甲1発明3とを、それぞれ対比し、判断した内容は、上記(2)と同様である。
よって、本件発明9~11、13、15は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)まとめ
以上のとおりであるので、本件発明7~15についての、甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法とし、甲3を周知技術を示す証拠方法(本件発明7、9~12、14)として参照する、申立ての理由2(特許法第29条第2項)は、成り立たない。
7 本件発明1~6、9~11についての申立ての理由2についての当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比した結果の一致点及び相違点は上記第4の4(2)に指摘したとおりであり、一致点及び相違点を再掲すると、以下のとおりである。
<一致点>
「金属顔料を含有するインクジェットインクであって、さらに、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含む、インクジェットインク」
<相違点1a>
金属顔料について、本件発明1は「金属インジウムを含む金属顔料、および/または、金属クロムの単体を含む」金属顔料であるのに対し、甲1発明1は「金属または合金層」を有する金属顔料である点。
<相違点1b>
本件発明1は、「金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層及び酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である、インクジェット記録用光硬化型インク組成物、を除く」ものであるのに対し、甲1発明1は、そのような特定のない点。
イ 判断
相違点1aについて検討するに、相違点1aは、上記5(1)アの相違点7aと同じであり、相違点7aについて上記5(1)イで検討したとおり、相違点1aは、実質的な相違点ではない。
相違点1bについて検討するに、相違点1bについては上記第4の4(8)イ(イ)で既に検討したとおりであり、甲1発明1において、相違点1bに係る発明特定事項を備える本件発明1とすることを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人が令和5年2月2日付で提出した意見書の「(3-1-1)」には、本件発明1について、甲1の段落0021の「インクジェット記録用光硬化型インク組成物は、金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有する」との記載及び段落0034の「顔料層中の金属または合金層としては、金属光沢を呈する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが・・・クロム、・・・インジウム、・・・等が好適であり、これらの単体金属、金属化合物またはこれらの合金およびそれら混合物の少なくとも一種を好適にもちいることができる」との記載を挙げ、「文献1には、文献1に記載の光硬化型インクジェットインクでは、金属顔料として、請求項1で規定されているような平板状粒子しか用いることができない、とは書かれておらず、その他の金属顔料を用いる態様も包含する。そのため、文献1における請求項1に記載の発明を除いたとしても、他の形状の金属顔料を使用することの阻害要因とはならない。」と主張する。
(イ)そこで、「文献1」である甲1の記載を確認する。
(ウ)甲1には、「背景技術」として段落0004(上記第4の3(1))に「重合性化合物、重合開始剤および顔料等から構成される」「インクジェット記録方法」のための「光硬化型インク」が示され、続く段落0005(上記第4の3(1))には、「光硬化型インクに顔料として金属顔料を用いれば、プレス等の加工を経ることなく、インクジェット記録方法によって、金属光沢面を形成できる可能性がある。しかしながら、このような方法を実現するためには、以下のような課題があった」として、段落0006~0010(上記第4の3(1))には課題が示され、特に段落0010には「光沢度の良好な金属光沢面を容易に形成することができ、かつ、インクジェット記録方法に好適なインクジェット記録用光硬化型インク組成物を提供すること」が目的として示される。これに対応する形で、段落0011~0012(上記第4の3(1))には、課題を解決するための手段として、「本発明にかかるインクジェット記録用光硬化型インク組成物は、金属顔料と、重合性化合物と、重合開始剤と、を含有し、前記金属顔料は、金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である。」ことが示されるとともに、「このようなインクジェット記録用光硬化型インク組成物は、光沢度の良好な金属光沢面を容易に形成することができ、かつ、インクジェット記録方法に好適に用いることができる。」ことが記載される。
段落0022~0061に記載の「1.1.金属顔料」の項には、甲1の「金属顔料」が「複合化顔料」(上記第4の3(1)、段落0023)であり、「積層体であって平板状の構造」である(上記第4の3(1)、段落0029)ものについての事項しか記載されていない。
段落0062~0086に記載の「1.2,重合性化合物」の項、段落0087~0089に記載の「1.3.重合開始剤」の項、0091~0102に記載の「1.4.その他の成分」の項、段落0103~0112に記載の「2.インクジェット記録方法」の項、段落0113に記載の「3.記録物」の項、段落0114~0115に記載の「4.インクセット」の項、段落0116に記載の「5.インクカートリッジおよびインクジェット記録装置」の項のいずれにおいても(上記第4の3(1))、そのような金属顔料と関係する事項しか記載されていない。
段落0117~0162(上記第4の3(1))に記載の「6.実施例および比較例」の項には、比較例として、「市販のアルミニウムペースト」を「金属顔料として、平板状の形状を有さない金属粒子を含有するインク組成物」としたもの(上記第4の3(1)、段落0153)が記載されるが、その比較例のインク組成物の「硬化物は、タック感が認められ、硬化が不十分」であり(上記第4の3(1)、段落0159)、またその比較例のインク組成物をインクジェット記録方法に用いて作成した記録物は「金属光沢感が実施例に比較して劣っていた」(上記第4の3(1)、段落0160)と評価されている。
これらの記載から、甲1には、その特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の全てを通じて、重合性化合物、重合開始剤及び顔料等から構成される光硬化型インクジェットインクにおいて、その顔料を、金属顔料とするにあたり、各種課題を解決するために、「金属顔料」を「金属または合金層と、樹脂層および酸化ケイ素層から選ばれる少なくとも1種と、が積層された平板状粒子である」ものとすることが記載されているものであり、「平板状の形状を有さない金属粒子を含有するインク組成物」ではその課題は解決できなかったことが記載されているといえる。
そして、甲1には、その光硬化型インクジェットインクにおける「金属顔料」について、請求人が主張するような「その他の金属顔料を用いる態様を包含する」ことや、「他の形状の金属顔料を使用すること」を阻害しないと解される余地のある記載は見当たらない。
(エ)そうすると、「訂正事項1によって、文献1に記載の発明の特徴部分である平板状粒子を用いる態様のみを除いたとしても、文献1に接した当業者は、文献1の明細書全体から、金属顔料に関する教示を得て、本件訂正発明の金属インジウムを含む金属顔料および/または金属クロムの単体を含む金属顔料を用いることについて、何ら困難なく想到し得る」とはいえないから、「本件訂正発明1は」「依然として進歩性がなく、取り消されるべきである」とする申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおりであるので、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~6、9~11について
本件発明2~6、9~11と、甲1発明1~3とを、対比すると、いずれも、共通する相違点1b、3b、5bを有する。しかしながら、この相違点については、上記(1)イで検討したとおりであって、当該相違点に係る発明特定事項を備える本件発明とすることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。また、申立人の主張についても、上記(1)ウに示したとおりであって、採用することはできない。
よって、本件発明2~6、9~11は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
以上のとおりであるので、本件発明1~6、9~11についての、甲1を主たる証拠方法とし、甲2を技術常識を示す証拠方法として参照する、申立ての理由2(特許法第29条第2項)は、成り立たない。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、
1 特許第7013033号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12、13、14、15について訂正することを認める。
2 本件請求項1~15に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すべきものとすることはできない。
また、他に本件請求項1~15に係る特許を取り消すべきものとすべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700618