特許異議申立
2022-700617
ゴム変性スチレン系樹脂組成物及びその成形品
- 審判番号
- 2022-700617
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-204441
- 登録番号
- 7001424
- 請求日
- 2022年07月11日
- 審決日
- 2023年02月01日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】PSジャパン株式会社
- 【異議申立人】西郷 新
- 審判長/審判官
- 審判長 杉江 渉
- 審判官 藤代 亮
- 審判官 橋本 栄和
- 分類
- P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7001424号発明「ゴム変性スチレン系樹脂組成物及びその成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7001424号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7001424号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成29年10月23日を出願日とするものであって、令和3年12月28日に特許権の設定登録がされ、令和4年1月19日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その請求項1~7に係る特許に対し、令和4年7月11日に特許異議申立人西郷 新(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7001424号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~7に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~7に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて、「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】
ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフトされたスチレン系重合体(PS)と、低分子量成分とを含むゴム変性スチレン系樹脂組成物であり、(1)前記ゴム状重合体の含有量が6.0~10.0質量%であり、(2)前記ゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)が0.8~1.8μmであり、(3)前記ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmであり、(4)前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量が21.1万~26万であり、(5)前記低分子量成分の含有量が2.0質量%以下であり、ゲル分の含有量は20~26質量%であることを特徴とする、ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記低分子量成分がスチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィンである、請求項1に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム状重合体に結合しているPSの質量の、前記ゴム状重合体の質量に対する割合(PS/ゴム状重合体)が1.3~2.7である、請求項1又は2に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の膨潤指数が8~13である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
ISO 1133に準拠して測定したメルトマスフローレイトが1.0~5.0(g/10分)である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記スチレン系重合体(PS)は、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン及びインデンからなる群から選択される一種もしくは二種以上のスチレン系単量体から重合される、あるいは前記スチレン系単量体と、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとから重合される、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする、成形品。」
第3 申立人が申立てた特許異議申立理由
申立人が申立てた特許異議申立の理由の概要及び証拠方法は以下のとおりである。
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1~7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1~7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が本件発明1~7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
記
(a)本件発明1は、「(3)前記ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmであ」ることを規定しているが、本件明細書には、「ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差」を調整するための手段や指針が記載されていないため、どのような製造条件にすれば、ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmとなるのかが理解できない。(申立書36頁3~10行)
(b)本件明細書によれば、低分子成分には、スチレン2量体、スチレン3量体が含まれる(本件明細書:段落0021)ため、「低分子量成分の含有量が2,0質量%以下」を満たすためには、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるスチレン2量体、スチレン3量体の量を制御する必要があるが、本件明細書には、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中にスチレン2量体、スチレン3量体を特定の量を含有させるために、特殊な重合条件を滴用したことや、重合後に特別な処理を適用したことは記載されておらず、どのような製造条件にすれば、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるスチレン2量体 スチレン3量体の量を制御することができるのか、その手段や指針が示されていなし、さらに、本件特許の実施例・比較例に係るゴム変性スチレン系樹脂組成物は、全てスチレン2量体、スチレン3量体を同程度の量含み、実際にゴム変性スチレン系樹脂組成物中にスチレン2量体、スチレン3量体を制御することができた実験例は記載されていない。(申立書36頁11行~28行)
よって、本件発明1~7に係る特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件)
本件の特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
記
本件特許発明1は「(5)前記低分子量成分の含有量が2.0質量%以下であり、ゲル分の含有量は20~26質量%であること」を規定している。一方で、本件明細書の実施例をみると本件特許発明に係るゴム変性スチレン系樹脂組成物が、本件特許発明の効果として必要とされる成形性を有するためには、実際のところ、特定の種類の特定の粘度等を有する低分子成分の含有率が、特定の上下限を満たすことが必須であると解され、低分子量成分が、スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン以外のその他の物質を含む場合や、流動パラフィンが本件実施例で用いた流動パラフィンとは異なる種類である場合や、低分子量成分の含有量が1.1質量%未満または、1.7質量%超である場合に本件特許発明の課題を解決できることは示されておらず、またそのような場合にまで、発明の課題が解決できると当業者が認識することは困難である。したがって、本件特許発明は1~7に係る発明は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件発明1~7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(申立書36頁29行~38頁14行)
2 証拠方法
甲第1号証:特開2017-2237号公報
甲第2号証:特開平7-90158号公報
甲第3号証:国際公開第03/033560号
甲第4号証:特開2004-300383号公報
甲第5号証:特開2004-307525号公報
甲第6号証:特開平08-041139号公報
甲第7号証:特開2005-225960号公報
甲第8号証:ローヤル油機株式会社ホームページ 「パラフィン潤滑剤 [JIS 規格外](掲載日不明)
http://www.loyal-grease.jp/pdf/spe/praz.pdf
甲第9号証:日本工業規格 JIS K2231 1993 「流動パラフィン」
甲第10号証:松村石油株式会社「流動パラフィン」カタログ(2022年7月1日印刷)
https://www.matsumura-oil.co.jp/cms/wp-content/uploads/87d8086e5c645d50b63d04f5e23c9e8f.pdf
(以下、「甲1」~「甲10」という。)
第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性のバランスに優れたゴム変性スチレン系樹脂組成物及びこれを用いてなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム変性ポリスチレンである耐衝撃性ポリスチレン(通常HIPSと呼ばれる)は、耐衝撃性、成形性、寸法安定性に優れることから、家電製品、OA機器製品、家庭製品、食品包装容器等に幅広く用いられている。これらの内、製品の外観を重要視する用途や油類の付着する用途では耐衝撃性と光沢と耐油性のバランスに優れた樹脂が使用されている。例えば家電製品のエアコン等がある。近年これらの製品は大型化が進み、特に、今まで以上に耐油性に優れた樹脂が強く臨まれている。
【0003】
この様な要求に対し特許文献1は耐衝撃性、剛性、光沢、耐油性、成形性のバランスに優れたゴム変性スチレン系樹脂組成物の記載がなされているが、耐衝撃性、光沢、耐油性のバランスの点で不十分である。特許文献2~4には耐衝撃性、剛性、光沢のバランスに優れたゴム変性スチレン系樹脂組成物の記載がなされているが、耐油性については記載がない。また特許文献5~7には耐油性を改良する方法としてゴム変性スチレン系樹脂の分散粒子径を大きくする方法が開示されているが、剛性が著しく低下する他、光沢が悪化し、表面外観が良好な成形体が得られない問題があった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究し、実験を重ねた結果、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に分散するゴム状重合体の含有量、体積中位粒子径、及び粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差、マトリックス相の重量平均分子量、並びに低分子量成分の含有量を特定の範囲とすることによって上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物が得られる。」
(本b)
「【0012】
<<スチレン系重合体(PS)>>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン系重合体を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン、クロロスチレン、及びインデン等が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種もしくは二種以上使用することができる。また、これらのスチレン系単量体に共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等の単量体も本発明の効果を損なわない程度であれば共重合することができる。
【0013】
<<ゴム状重合体>>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるゴム状重合体は、内側にスチレン系重合体を内包し、かつ、外側にスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。ゴム状重合体は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中でマトリックス相に分散する。
【0014】
ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体は一種もしくは二種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0015】
〔ゴム状重合体の粒子径〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物中に分散するゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)は、0.8~1.8μmであり、好ましくは0.9~1.7μm、より好ましく1.0~1.6μmである。体積中位粒子径が0.8μm未満の場合は耐衝撃性と耐油性が低下する。一方1.8μmを超えると成形品の光沢が悪化し、表面外観が劣るものとなる。
【0016】
ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差は、0.3~1.2μmであり、好ましくは0.4~1.1μmであり、より好ましくは0.4~1.0μmである。積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3μm未満の場合は耐衝撃性と耐油性のバランスに劣る。一方1.2μmを超える場合は成形品の光沢を低下させ易い大きな粒子径が増加し、表面外観が劣るものとなる。
【0017】
ゴム状重合体の粒子径を調整する方法としては、重合工程においてゴム相のゴム粒子への相転域での攪拌速度を調整する方法や、原料液中の重合開始剤の量や連鎖移動開始剤の量を調整する方法等が挙げられる。ゴム状重合体の粒子径分布を狭くする方法としては、ゴム相のゴム粒子への相転時に攪拌がより均一に掛かるような装置を用いる。例えば、ゴム相が相転前の重合液とスチレンのみを重合した重合液とをせん断がより均一に掛かるミキサー等に導き、ゴム相を相転させる等の方法が挙げられる。
・・・
【0019】
〔ゴム状重合体の含有量〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量は、6.0~10.0質量%であり、好ましくは6.0~9.0質量%、より好ましく7.0~9.0質量%である。ゴム状重合体の含有量が6.0質量%未満の場合は所望の粒子径の範囲内で耐衝撃性が劣り好ましくない。一方10.0質量%を超える場合は剛性が低くなり、また成形品の光沢が悪化し、表面外観が劣るものとなる。
なお本開示で、ゴム状重合体の含有量は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。」
(本c)
「【0020】
<<マトリックス相>>
〔マトリックス相の重量平均分子量〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量は、18万~26万であり、好ましくは19万~25万、より好ましくは20万~24万である。重量平均分子量が18万未満の場合は耐衝撃性と耐油性が劣り好ましくない。一方、26万を超える場合は流動性が悪く、成形性が好ましくない。
なお本開示で、マトリックス相の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される値である。」
(本d)
「【0021】
<<低分子量成分>>
本実施形態の低分子量成分としては、重合時に生成するスチレン2量体、スチレン3量体の他、流動パラフィン、白色鉱油等の脂肪族炭化水素、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、酸化防止剤、熱安定剤、シリコンオイル等が挙げられる。
【0022】
〔低分子量成分の含有量〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物中のスチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィンの含有量の合計は、2.0質量%以下であり、好ましくは1.7質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィンの含有量の合計が2.0質量%超える場合は流動性が向上し、成形性は良好であるが、油分が染み込み易くなり耐油性に劣る。
スチレン2量体及びスチレン3量体の含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
なお本開示で、スチレン2量体及びスチレン3量体の含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定される値である。
流動性向上には流動パラフィンが最も好適に使用できる。その一方で、流動パラフィンの含有量が多いと射出成形、押出成形時に目やにの原因となる場合がある。そのため、流動パラフィンの含有量は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%未満である。
なお本開示で、流動パラフィンの含有量は、液体クロマトグラフィー(LC)を使用して測定される値である。」
(本e)
「【0023】
〔PS/ゴム状重合体〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、ゴム状重合体に結合しているPSの質量の、ゴム状重合体の質量に対する割合(PS/ゴム状重合体)は、1.3~2.7が好ましく、より好ましくは1.5~2.5、更に好ましくは1.6~2.3である。PS/ゴム状重合体が1.3未満であると、樹脂組成物中のゲル分の割合が低下し、耐衝撃強度が低下する傾向にある。一方、PS/ゴム状重合体が2.7を超えると、ゲル分中のPSの割合が増加してゴム状重合体に油分が染み込み易くなり、耐油性が低下する傾向にある。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゲル分の含有量は、16~26質量%が好ましく、より好ましくは18~24質量%、更に好ましくは20~23質量%である。
なお本開示で、ゲル分とは、主としてゴム状重合体及び当該ゴム状重合体に結合しているPSに対応し得る。このゴム状重合体に結合しているPSとは、ゴム状重合体にグラフトしたPS及びゴム状重合体内に内包されたPSに対応し得る。
【0024】
PS/ゴム状重合体は、使用するゴム状重合体の1,2-ビニル結合の含有量、重合開始剤の種類及び添加量、ゴム状重合体の粒子を形成させる反応器の形式等によって調整することができる。
PS/ゴム状重合体は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゲル分の含有量(質量%)とゴム状重合体の含有量(質量%)から次のように求めることができる。
PS/ゴム状重合体=(ゲル分の含有量-ゴム状重合体の含有量)/ゴム状重合体の含有量
なお本開示で、ゲル分の含有量は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。」
(本f)
「【0026】
〔トルエン不溶分の膨潤指数〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の膨潤指数は、8~13が好ましく、9~13がより好ましく、9~12が更に好ましい。膨潤指数が8未満であると、耐衝撃性が低下する傾向にある。一方、膨潤指数が13を超えると、樹脂の剛性が低下する傾向にある。
トルエン不溶分の膨潤指数を調整する方法としては、脱揮工程における温度条件を調整する方法がある。
なお本開示で、トルエン不溶分の膨潤指数は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。」
(本g)
「【0027】
〔メルトマスフローレイト〕
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトは、1.0~5.0g/10分が好ましく、より好ましくは1.2~4.0g/10分、更に好ましくは1.4~3.0g/10分である。1.0g/10分未満の場合は流動性が不足して成形に支障をきたす場合がある。一方5.0g/10分を超える場合は実用的な耐衝撃性が発揮できない場合があり、また耐油性が低下する傾向にある。
なお本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、200℃、49N荷重において測定される値である。」
(本h)
「【0033】
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合して得られるものであり、重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法の一例としては、ゴム状重合体、スチレン系単量体、重合溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等を添加混合し、直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と未反応単量体等を除去する揮発分除去工程を備えた設備に連続的に単量体類を送入し、段階的に重合を進行させる所謂、連続塊状重合法が好適に用いられる。反応器の様式としては、完全混合型、層流型、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型の反応器等が例示される。これら反応器の配列の順序に特に制限は無いが、層流型反応器が好適に用いられる。脱揮工程は、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は、加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが挙げられるが、揮発分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は、加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。」
(本i)
「【0034】
<成形体>
本実施形態の成形体は、上記した本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする成形品であって、いかなる形状及び用途の成形品であっても良いが、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れるため、エアコンや複写機等の家電、OA製品以外では洗面化粧台等の成形品が好適である。
また、成形品を得る方法としては特に限定されないが、押出成形、射出成形、射出中空成形、発泡成形等の公知の成形法が適用でき、各種成形技術と組み合わせた成形法でも良い。更にTダイシート押出機、二軸延伸加工装置、インフレーション加工装置を用いて、シートやフィルムに成形する方法も適用できるが、成形品を得る方法として、射出成形が好適である。」
(本j)
「【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における樹脂、樹脂組成物、成形品等は、以下の分析方法及び測定方法で評価した。
【0036】
(1)ゴム状重合体の含有量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量(質量%)は、以下の方法により求めた。ゴム変性スチレン系樹脂組成物0.4gを100mLのメスフラスコに入れて精秤した(この質量をWとする)。クロロホルム75mLを加えてよく分散させた後、一塩化ヨウ素18gを1000mLの四塩化炭素に溶かした溶液20mLを加えて冷暗所に保存し、8時間後にクロロホルムで標線に合わせた。これを25mL採取し、ヨウ化カリウム10gを水800mL、エタノール200mLの混合液に溶かした溶液60mLを加え、チオ硫酸ナトリウム10gを1000mLの水に溶かした溶液(モル濃度x)で滴定した。本試験AmL、空試験BmLとし、ゴム系重合体粒子の含有率(質量%)は以下の式により求めた。
ゴム状重合体の含有量(%)=10.8×x×(B-A)/W
【0037】
(2)ゴム状重合体の体積中位粒子径、及び体積積算分布曲線の積算値の75%径と積算値の25%径との差の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールカウンター株式会社製、LS 13 320)により測定して、ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線を得た。
図1に示されるように、得られた体積積算分布曲線から、体積積算分布曲線の積算値の50%径である体積中位粒子径(μm)を得た。また、図1に示されるように、体積積算分布曲線の積算値の75%径と積算値の25%径との差(μm)を求めた。
【0038】
(3)マトリックス相の重量平均分子量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量は、以下の条件や手順で測定した。
(試料調製)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物をテトラヒドロフラン(THF)に約0.05質量%で溶解させた。
(測定条件)
機器:TOSOH HLC-8220GPC(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム:super HZM-H
温度:40℃
キャリア:THF 0.35mL/min
検出器:RI、UV:254nm
検量線:TOSOH製の標準PSを使用して作成。
【0039】
(4)低分子量成分の含有量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中の低分子量成分の含有量(質量%)は、スチレン2量体及びスチレン3量体の含有量(質量%)と流動パラフィンの含有量(質量%)とをそれぞれ後述の(4-1)、(4-2)に記載の方法で測定し、その合計として求めた。
【0040】
(4-1)スチレン2量体及びスチレン3量体の含有量の測定
スチレン2量体、スチレン3量体の含有量(質量%)は、以下の条件や手順で測定した。
(試料調製)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物2.0gをメチルエチルケトン20mLに溶解後、更に標準物質(トリフェニルメタン)入りのメタノール5mLを加えて溶解し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を析出・静置後、上澄み液を得た。
(測定条件)
機器:島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC-17Apf
カラム:DB-1(100%ジメチルポリシロキサン) 30m、膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度:100℃で2分保持→5℃/分で260℃まで昇温→260℃で5分保持
注入口温度:200℃
検出器温度:200℃
キャリアガス:窒素
【0041】
(4-2)流動パラフィンの含有量の測定
流動パラフィンの含有量(質量%)は、以下の条件や手順で測定した。
(試料調製)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物2gを精秤し、メチルエチルケトン40mLを加えて23℃で40分間振とうし、メタノール200mL中に滴下し、60℃で10分間加温した後、23℃に冷却し、穴径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。濾別した濾液を減圧蒸留濃縮し、80℃で30分間乾燥した後、23℃に冷却し、ノルマルヘキサンに溶解させ、10mLの試料を得た。
(測定条件)
機器:島津製作所製高速液体クロマトグラフィー LC-10A
カラム:平均粒子径5μmの全多孔性シリカゲル、内径4.6mm、長さ250mm
溶媒:ノルマルヘキサン
温度:23℃
溶媒流量:2g/min
注入量:200μm
【0042】
(5)ゲル分の含有量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゲル分の含有量(質量%)の測定は、沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂組成物1gを精秤し(この質量をWとする)、メチルエチルケトン20mLを加えて23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所製、SS-2050A)にて5℃以下、20000rpm(遠心加速度:4510G)で60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除き、得られた不溶分を、引き続き160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、メチルエチルケトン不溶分の質量を精秤し(この質量をGとする)、下記式により、ゲル分の含有量(質量%)を求めた。
ゲル分の含有量=(G/W)×100
【0043】
(6)PS/ゴム状重合体の測定
PS/ゴム状重合体は、上述の方法で測定したゲル分の含有量(質量%)及びゴム状重合体の含有量(質量%)から、下記式により求めた。
PS/ゴム状重合体=(ゲル分の含有量-ゴム状重合体の含有量)/ゴム状重合体の含有量
【0044】
(7)トルエン不溶分の膨潤指数の測定
膨潤指数の測定は、沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂組成物1gを精秤し、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所製、SS-2050A)にて10℃以下、20000rpm(遠心加速度:4510G)で60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(この質量をW1とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤し(この質量をW2とする)、下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数を求めた。
トルエン不溶分の膨潤指数=(W1/W2)
【0045】
(8)メルトマスフローレイトの測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械株式会社製、EC60N)により、シリンダー温度230℃、金型温度45℃で成形して、ISO金型タイプAの試験片を得た。
得られた試験片のランナー部を切断したものについて、メルトマスフローレイト(g/10分)を、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定した。
【0046】
(9)ビカット軟化温度の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)は、ISO 306に準拠して、49N荷重で測定した。
【0047】
(10)シャルピー衝撃強度の測定
上記(8)において得られた試験片について、ISO 179に準拠して、シャルピー衝撃強度(kJ/m2)をノッチありで測定した。
【0048】
(11)曲げ弾性率の測定
上記(8)において得られた試験片について、ISO 178に準拠して、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0049】
(12)光沢の測定
射出成形機(東芝機械株式会社製、IS-100G)を用いて150×150×2mmの試験片を作製し、その試験片の中心部でJIS Z-8741に基づき60度で光沢度(%)を測定した。
【0050】
(13)耐油性の評価
射出成形機(東芝機械株式会社製、IS-100G)を用いて150×150×2mmの平板を成形後、更に射出方向に平行に幅30mmに試験片を切り出し、試験片の中央部に日清サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を0.5mL塗布し、試験片が水平になるように片端を固定、もう一方の片端の端に500gの荷重を掛け、試験片が破断するまでの時間を測定した。
破断時間が10時間以上を◎(優れる)、10時間未満5時間以上を○(良好)、5時間未満を×(不良)とした。
【0051】
〔実施例及び比較例において使用した原料〕
実施例及び比較例においてゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に使用した原料は次の通りである。
スチレン系単量体:スチレン(旭化成株式会社製)
ゴム状重合体1(ゴム1):ポリブタジエン(日本エラストマー株式会社製、アサプレン730AX)
ゴム状重合体2(ゴム2):ポリブタジエン(旭化成株式会社製、ジエン35AE)
溶媒:エチルベンゼン(旭化成株式会社社製)
重合開始剤:1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製、パーヘキサC)
連鎖移動剤:α-メチルスチレンダイマー(日油株式会社製)
流動パラフィン(出光興産製、CP-68N)
【0052】
実施例及び比較例で使用したゴム変性スチレン系樹脂は、以下の様に製造した。
【0053】
<樹脂1の製造>
下記第1反応器と第2反応器を並列にそれぞれを第三反応器に接続し、第3反応器の出口に第4反応器、第5反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第1反応器:容積1.8Lの攪拌翼付3ゾーン重合温度制御のプラグフロー型反応器
第2反応器:容積6.2Lの攪拌翼付3ゾーン重合温度制御のプラグフロー型反応器
第3反応器:容積1.5Lの攪拌翼付1ゾーン重合温度制御のプラグフロー型反応器
第4反応器:容積6.2Lの攪拌翼付3ゾーン重合温度制御のプラグフロー型反応器
第5反応器:容積6.2Lの攪拌翼付3ゾーン重合温度制御のプラグフロー型反応器
【0054】
表1にある第1重合原料液(スチレン単量体92.1質量%、エチルベンゼン3.0質量%、ゴム1 4.9質量%のゴムを溶解させた液に、重合開始剤を460質量ppm添加した混合液)を2L/時の供給速度で第1反応器に連続的に供給し、第2重合原料液(スチレン単量体88.0質量%、エチルベンゼン12.0質量%の混合液)を1L/時の供給速度で第2反応機器に連続的に供給し、第1反応器の3ゾーンの重合温度を流れ方向に96~100℃と勾配を付け、撹拌数を100rpm、第2反応器の3ゾーンの重合温度を流れ方向に130~140℃と勾配を付け、撹拌数を80rpm、第3反応器の重合温度は125℃、撹拌数を180rpm、第4反応器の3ゾーンの重合温度を流れ方向に125~135℃と勾配を付け、撹拌数を50rpm、第5反応器の3ゾーンの重合温度を流れ方向に137~147℃と勾配を付け、撹拌数を20rpmで重合を行った。得られた重合液を真空脱揮ベントが3段ある押出機に導き、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出して冷却した後、切断してペレットとした。なお、押出機の樹脂温度は215℃に設定し、出口に近い最終の真空脱揮ベントの圧力0.5kPaとした。
【0055】
<樹脂2~11の製造>
樹脂1と同様に、表1にある重合原料液組成、各反応器重合条件、脱揮条件で樹脂を製造した。なお樹脂5、樹脂8及び樹脂10は連鎖移動剤をそれぞれ200ppm、100ppmm、650ppmを添加した。
【0056】
【表1】
[図:0001395229000001.jpg]
【0057】
(実施例1~5、比較例1~7)
ゴム変性スチレン系樹脂(樹脂1~樹脂11)に対して、流動パラフィンを表2の割合となるように加え、二軸押出機(谷藤機械工業株式会社製、AS-20-2押出機)を用いてブレンドし、ペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物の評価結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
[図:0001395229000002.jpg]
【0059】
実施例1~5のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、比較例に比べて耐衝撃性、光沢、耐油性のバランスに優れる。
【0060】
比較例1では、ゴム粒子の体積中位粒子径が小さすぎるため、耐衝撃性と耐油性が低下した。
【0061】
比較例2では、ゴム粒子の体積中位粒子径が大きすぎるため、光沢が低下した。
【0062】
比較例3では、積算値の75%径と積算値の25%径との差が小さく、耐油性が低下した。
【0063】
比較例4では、積算値の75%径と積算値の25%径との差が大きく、粒子径分布が広いため、光沢が低下した。
【0064】
比較例5では、マトリックスの重量平均分子量が小さすぎるため、耐衝撃性と耐油性が低下した。
【0065】
比較例6では、マトリックスの重量平均分子量が大きすぎるため、樹脂の流動性が低下し、光沢が低下した。
【0066】
比較例7では、低分子量成分の含有量が多すぎるため、耐油性が悪化した。
【0067】
以上の結果から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に分散するゴム状重合体の含有量、体積中位粒子径、及び体積積算分布曲線の積算値の75%径と積算値の25%径との差、マトリックス相の重量平均分子量、並びにスチレン2量体、3量体及び流動パラフィンからなる低分子量成分の含有量を特定の範囲にすることにより、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性が優れることが分かった。」
2 各甲号証に記載された事項
(1)甲1
甲1には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)
「【請求項1】
ポリブタジエンの存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が0.5~1.6μmであり、ゲル分が18~28質量%、膨潤比が8~16であり、流動パラフィンを1.0~3.0質量%含むこと特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
グラフト率が1.2~2.2であること特徴とする請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。」
(甲1b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は耐衝撃性、剛性、光沢、成形性に加え、耐油性に優れるゴム変性樹脂組成物に関し、薄肉の家電製品に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究を進めたところ、上記ゴム変性スチレン系樹脂中におけるゴム状分散粒子の体積中位粒子径、ゲル分、膨潤比、流動パラフィンの含有量を特定の範囲とすることによって上記課題が達成できることを見出した。・・・」
(甲1c)
「【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は耐衝撃性、剛性、光沢、成形性、耐油性に優れるため、家電製品のハウジング、特にテレビ、エアコン等の大型家電製品に好適に使用することができ、さらに薄肉軽量化が可能となる。」
(甲1d)
「【0015】 本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子の体積中位粒子径は0.5~1.6μmであり、好ましくは0.7~1.4μmである。体積中位粒子径が0.5μm未満では耐衝撃性と耐油性が低下し、1.6μmを超えると成形品の光沢が悪化し、表面外観が良好な成形体が得られない。粒子径を調整する方法としては、重合工程においてゴム粒子の相転域での攪拌速度を調整する方法や、原料液中の連鎖移動開始剤の量を調整する方法などが挙げられる。なお、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-920:相対屈折率120A000I)により測定して求めた体積基準の粒径分布曲線の50体積%粒子径をもって本発明の体積中位粒子径とする。
【0016】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゲル分は18~28質量%であり、好ましくは20~25質量%である。ゲル分はゴム変性スチレン系樹脂組成物の分散相を構成するゴム状分散粒子の含有量を表し、ゲル分が18質量%未満では得られる樹脂組成物の耐油性が低下し、28質量%を超えると得られる樹脂組成物の剛性が低下する。ゲル分は、原料として使用するゴム状重合体の濃度と後述するグラフト率によって調整することができる。
ゲル分は、1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し(質量W)、50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液35mLを加えて溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得て、セーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて125℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量Gを測定して、次のように求めることができる。
ゲル分(質量%)=(G/W)×100
【0017】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のグラフト率は1.2~2.2であり、好ましくは1.4~2.0である。グラフト率が1.2未満であると樹脂組成物の耐油性を保つために多くのゴム分が必要となり、グラフト率が2.2を超えると樹脂組成物の剛性が低下する。グラフト率はゴム状分散粒子中のポリスチレンとゴム分の比を表し、ゴム状分散粒子が単位ゴム分当たりにグラフトしたポリスチレン及び内包したポリスチレンの量を表す。グラフト率は、使用するゴム状重合体の1,2-ビニル結合の含有量、重合開始剤の種類及び添加量、ゴム粒子を形成させる反応器の形式などによって調整することができる。グラフト率はゲル分(質量%)とゴム分(質量%)から次のように求めることができる。
グラフト率=(ゲル分-ゴム分)/ゴム分
【0018】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。
【0019】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の膨潤比は8~16であり、好ましくは9~15である。膨潤比が8未満であると得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、膨潤比が16を超えると成形加工時にゴム状分散粒子が流動方向に対して大きく変形し、流動方向に沿って割れやすくなるため好ましくない。膨潤比を調整する方法としては、脱揮工程における温度条件を調整する方法がある。
膨潤比は、質量1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し、トルエン30mLを加え溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去してトルエンで膨潤した不溶分の質量Sを測定し、続いてトルエンで膨潤した不溶分をセーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥した後、更に真空乾燥機にて125℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、不溶分の乾燥
質量Dを測定して、次のように求めることができる。
膨潤 =S/D
【0020】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、流動パラフィンを1.0~3.0質量%含むことが好ましい。流動パラフィンが1.0質量%未満では得られる樹脂組成物の成形流動性、金型離型性が低下し、流動パラフィンが3.0質量%以上では、耐油性が悪化する。なお、流動パラフィンは、沸点的には潤滑油留分に属する、きわめて純度の高い液状飽和炭化水素の混合物であると定義される公知のもの(ホワイトオイルと称される)であれば差し支えない。
・・・」
(甲1e)
「【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
尚、実施例に使用したポリブタジエン、重合開始剤、連鎖移動剤は次の通り。
ポリブタジエン-1 :日本エラストマー株式会社製「アサプレン730AX」
ポリブタジエン-2 :宇部興産株式会社製「BR-15HB」
重合開始剤-1 :1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサC)
重合開始剤-2 :t-ブチルクミルパーオキサイド(日油株式会社製パーブチルC)
連鎖移動剤 :t-ドデシルメルカプタン
【0028】
また、実施例で使用したゴム変性スチレン系樹脂は以下の様に製造した。
【0029】
(1)HIPS-1の製造
下記第1~第4反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第1反応器:容積25Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積40Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第3反応器:容積50Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第4反応器:容積50Lの静止型混合器付プラグフロー反応器
【0030】
スチレン単量体79.4質量%、エチルベンゼン14.0質量%、ポリブタジエン-16.6質量%を溶解させた溶液に対して、連鎖移動剤0.010質量%添加した原料液を、20kg/h供給速度で反応器に連続的に供給し、第1反応器の温度を125℃、撹拌数を100rpm、第2反応器の温度を128~130℃、撹拌数を90rpmで重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤-2を0.016質量%添加し、第3反応器の温度を128℃、撹拌数を30rpm、第4反応器の温度を流れ方向に135~160℃の温度勾配がつくように調整し重合を行った。得られた重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとした。なお、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は190℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は60kPaとし、2段目の脱揮槽内の樹脂温度は230℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.6kPaとした。
【0031】
(2)HIPS-2の製造
スチレン単量体79.4質量%、エチルベンゼン14.0質量%、ポリブタジエン-26.6質量%を溶解させた溶液に対して、重合開始剤-1を0.008質量%添加した原料液を用い、第1反応器の温度を113℃、第2反応器の温度を121~123℃、撹拌数を60rpmで重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤-2を0.024質量%、連鎖移動剤0.020質量%添加し、第3反応器の温度を126℃、第4反応器の温度を流れ方向に130~145℃の温度勾配がつくように調整した以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-2を製造した。
【0032】
(3)HIPS-3の製造
第2反応器の撹拌数を130rpmとした以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-3を製造した。
【0033】
(4)HIPS-4の製造
第2反応器の撹拌数を200rpmとした以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-4を製造した。
【0034】
(5)HIPS-5の製造
スチレン単量体79.4質量%、エチルベンゼン14.0質量%、ポリブタジエン-26.6質量%を溶解させた溶液に対して、重合開始剤-1を0.008質量%、連鎖移動剤0.008質量%添加した原料液を用い、第1反応器の温度を113℃、第2反応器の温度を121~123℃、撹拌数を60rpmで重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤-2を0.024質量%添加し、第3反応器の温度を126℃、第4反応器の温度を流れ方向に130~145℃の温度勾配がつくように調整した以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-5を製造した。
【0035】
(6)HIPS-6の製造
第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤-2を0.032質量%添加し、第3反応器の温度を125℃、第4反応器の温度を流れ方向に128~140℃の温度勾配がつくように調整した以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-6を製造した。
【0036】
(7)HIPS-7の製造
スチレン単量体79.4質量%、エチルベンゼン14.0質量%、ポリブタジエン-26.6質量%を溶解させた溶液に対して、重合開始剤-1を0.008質量%添加した原料液を用い、第2反応器の撹拌数を75rpm、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤及び連鎖移動剤を無添加とし、第3反応器の温度を135℃、第4反応器の温度を流れ方向に150~165℃の温度勾配がつくように調整した以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-7を製造した。
【0037】
(8)HIPS-8の製造
2段目の脱揮槽内の樹脂温度を260℃に設定した以外は、HIPS-1の製造と同様にして、HIPS-8を製造した。
【0038】
(実施例1~5、比較例1~7)
ゴム変性スチレン系樹脂に対して、流動パラフィンを表1の割合で加え、二軸押出機を用いてブレンドしペレット化した。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物について、下記条件にて物性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0039】
(1)シャルピー衝撃強度(耐衝撃性)
射出成形機を用いて試験片を作成し、JIS K-7111により求めた。
(2)曲げ弾性率(剛性)
射出成形機を用いて試験片を作成し、JIS K-7171により求めた。
(3)光沢
射出成形機を用いて試験片を作成し、JIS K-7105に基づき60度鏡面光沢度を求めた。
(4)離型性(成形性)
エジェクターピンにロードセルを装着した離型抵抗金型(箱型成形品寸法:縦60mm、横130mm、深さ45mm、厚み2mm)を日本製鋼社製の射出成形機100t(J100E-P)に取り付け、各サンプルのセットアップ条件を探索、同条件で連続成型を
実施し、型開きの際に成形品が離型する時のエジェクターピンの突き出し力を測定した。離型性は最大離型抵抗値(N)で評価、数値が小さい方が離型性が優れている。
(5)耐油性
射出成形機を用いてダンベル状試験片(長さ215mm、平行部幅10mm、厚み4mm)を作成し、試験片の中央部にガーゼを巻き、日清サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を0.5mL塗布し、試験片を固定した後、方端より長手方向に60kgの荷重を掛け、試験片が破断するまでの時間を測定した。
【0040】
【表1】
[図:0001395229000003.jpg]
[図:0001395229000004.jpg]
【0041】
実施例のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、比較例に比べて耐衝撃性、剛性、光沢、成形性、耐油性のバランスに優れる。
【0042】
比較例1では、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が小さすぎた為に、耐衝撃性、耐油性が低下した。
【0043】
比較例2では、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が大きすぎた為に、光沢が低下した。
【0044】
比較例3では、ゲル分が高すぎた為に、剛性が低下した。
【0045】
比較例4では、ゲル分が低すぎた為に、耐油性が低下した。
【0046】
比較例5では、膨潤比が低すぎた為に、耐衝撃性が低下した。
【0047】
比較例6では、流動パラフィンを含有していない為、成形性が悪化した。
【0048】
比較例7では、流動パラフィンが多すぎた為、耐油性が低下した。
【0049】
以上の結果から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子の体積中位粒子径、ゲル分、膨潤比、流動パラフィンを特定の範囲としたときにおいてのみ、耐衝撃性、剛性、光沢、成形性、耐油性が優れることが分かった。」
(2)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)
「【請求項1】 (A)スチレン系樹脂の連続相に、(B)スチレン系樹脂が取り込まれたオクルード粒子を有するゴム状重合体粒子が分散してなるゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、(イ)スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が160,000~300,000であること、(ロ)ゴム状重合体粒子の平均粒子径が0.5~3.5μmで、かつオクルード粒子とゴム状重合体粒子の粒子径比が0.10~0.50であること、(ハ)オクルード粒子の粒子径分散度が1.2~2.5であること、(ニ)NMRで評価されるゴム状重合体の緩和時間(T2 )が800~3,000μsecであること、及び(ホ)NMRで評価されるゲル部のスチレン系樹脂/(スチレン系樹脂+ゴム状重合体)の信号比率が52~70%であることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】 ゲル量が5~50%、ゲル部のスウェルインデックス(SI)が8~20及びゴム状重合体粒子の粒子径分散度が1.1~2.5である請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。」
(甲2b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、高い剛性を維持し、耐衝撃性に優れると共に、光沢度に優れ、大型成形品の薄肉化による軽量化によってコスト削減ができるゴム変性スチレン系樹脂組成物に関するものである。
・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、高剛性を維持し、耐衝撃性に優れるとともに、光沢度に優れ、大型成形品の薄肉化による軽量化によってコスト削減ができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供することを目的としてなされたものである。」
(甲2c)
「【0007】本発明において、(A)成分のスチレン系樹脂(PS)の重量平均分子量(Mw)は、160,000~300,000、好ましくは180,000~250,000である。Mwが160,000未満では、耐衝撃性、例えばアイゾット衝撃強度の低下が著しい。また、300,000を超えると、流動性が低下し、通常の成形法で成形するには適しない。
・・・
【0013】本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、(A)成分のスチレン系樹脂の連続相に、(B)成分として、スチレン系樹脂が取り込まれたオクルード粒子を有するゴム状重合体粒子が分散してなるものである。図1は、該(B)成分のゴム状重合体粒子の模式図であって、図中、1はオクルード粒子を示す。このオクルード粒子1は、スチレン系樹脂が、ゴム状重合体2によって取り込まれ、粒状に形成されたものである。このように粒状に形成されたオクルード粒子1は、その2個以上が集合し、ゴム状重合体2によって囲繞されて、ゴム状重合体粒子3として形成される。このゴム状重合体粒子3は、(A)成分のスチレン系樹脂の連続相4中に分散し、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物が得られる。このゴム状重合体粒子の平均粒子径(dsRUB ) は、0.5~3.5μm、好ましくは0.7~1.6μmである。ゴム状重合体粒子の平均粒子径が0.5μm未満では、耐衝撃性の低下が著しい。また、3.5μmを超えると、成形品の外観特性(光沢の低下など)が劣り好ましくない。そして、オクルード粒子とゴム状重合体粒子の粒子径比(dsOCC / dsRUB ) は0.10~0.50、好ましくは0.15~0.35である。この粒子径比が0.10未満では、また0.50を超えると、耐衝撃性が不十分となり好ましくない。また、オクルード粒子の粒子径分散度(dsOCC / dnOCC ) は1.2~2.5、好ましくは1.2~1.5、特に好ましくは1.2~1.3である。このオクルード粒子の粒子径分散度は1.2未満にすることは困難で、また、2.5を超えると、耐衝撃性が不十分となる。なお、dsRUB ,dsOCC 及びdnOCC は、それぞれ後述の方法により求められるゴム状重合体粒子の面積平均径,オクルード粒子の面積平均粒径及びその数平均粒径のことである。」
(甲2d)
「【0017】
【実施例】更に、本発明を実施例及び比較例により、詳しく説明する。
実施例1
スチレンに10重量%のポリブタジエンゴム〔宇部興産(株)製,BR15HB〕、0.025重量%の重合開始剤(1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)及び0.02重量%の連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)を溶解し、34リットル/時間の速度で容積19リットルの第一重合器に供給し、115℃,120rpmで攪拌し重合した。次いで、この部分重合液を容積23リットルの第二重合器に供給し、125℃,200rpmで攪拌し重合した。更に、この部分重合液を連続的に容積37リットルの第三,第四,第五重合器に供給し、それぞれの温度133℃,143℃,161℃で45rpm,20rpm,5rpmで攪拌しながら重合を行った。各段における重合転化率は、それぞれ8%,25%,45%,65%,85%であった。得られた重合反応液を第一フラッシュドラム(温度200℃,圧力0.053MPa)、第二フラッシュドラム(温度240℃,圧力0.67kPa)の脱揮工程を経て、揮発分を除去し、ペレット化した。
・・・
【0022】実施例8
実施例1において、重合開始剤量を0.0275重量%、第一重合器の温度を113℃、第二重合器の温度を123℃,175rpm及び第二フラッシュドラムの温度を250℃とした以外は、実施例1と同様に実施した。
・・・
【0027】・・・ゴム変性ポリスチレン系樹脂組成物の各物性を測定した結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】
[図:0001395229000005.jpg]
【0029】
【表2】
[図:0001395229000006.jpg]
【0030】
【表3】
[図:0001395229000007.jpg]
【0031】
【表4】
[図:0001395229000008.jpg]
」
(3)甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)
「請求の範囲
1.ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを共重合して得られる、1種又は2種以上の混合物からなるゴム変 性共重合樹脂であって、 樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2・0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
・・・
7.ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを共重合して得られる、1種又は2種以上の混合物からなるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.5~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2.0μmである透明なゴム変性共重合体(A)の60~99.9質量%と、乳化グラフ卜共重合体(B)の 0.1~40質量%とを含むことを特徴とするゴム変性共重合樹脂組成物。
・・・」(第29頁第1行~第30頁第4行)
(甲3b)
「技術分野
本発明は、透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が 少ないゴム変性共重合樹脂、並びに上記の特性を有しさらに実用強度に優れたゴム変性共重合樹脂組成物に関する。
背景技術
従来より透明なゴム変性共重合樹脂は、家電製品、包装材料、光学用途を始め様々な用途に用いられている。しかしこれらは、透明性、耐衝撃性、剛性が充分なものではなく、また、透明性の成形条件依存性がみられ満足なものではなかった。さらに最近の市場の要求である実用強度が高いこと等に対し充分なものではなかった。
例えば特開平4-180907号公報には、トルエン不溶分や膨潤指数等を特定の範囲内にしたゴム変性共重合樹脂が開示されているが、該樹脂では特定のスチレン一ブタジエン共重合体や特定の反応器を使用する必要があり、かつ、透明性、耐衝撃性、剛性等のバランスが充分でない等の問題があった。
特開平8-269142号公報には、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体の共重合体を連続相、二峰性を有するゴム粒子を分散相としたゴム変性スチレン系樹脂組成物が開示されているが、ゴム粒子径分布やゲル分、膨潤指数の制御が充分でなく、透明性の成形条件依存性が大きく、また実用強度が低いこと等により使用に制限があった。
特開平11-147993号公報には、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体の共重合体を連続相に、二峰性を有するゴム粒子を分散相とし、かつ分子量分布を特定の範囲内としたゴム変性スチレン系樹脂組成物が開示されているが、耐衝撃性の低い小粒子径が多く、耐衝撃性と剛性のバランスが充分でない等の問題があった。
本発明は、透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が少ないゴム変性共重合樹脂の提供、並びに上記の特性を有しさらに実用強度に 優れたゴム変性共重合樹脂組成物を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のゴム粒子径分布を有するゴム変性共重合樹脂が透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が少ないことを見出し本発明に至った。また、該ゴム変性共重合樹脂にあって、特定のゲル分、膨潤指数、重量平均分子量を有するゴム変性共重合樹脂がさらに透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、透明性の成形条件依存性が少ないことを見出した。
また、該ゴム変性共重合樹脂と乳化グラフト共重合体よりなるゴム変性共重合樹脂組成物が透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、透明性の成形条件依存性が少なく、さらに実用強度の高いことを見出し本発明に至った。」(第1頁第3行~第2頁第9行)
(甲3c)
「本発明の体積平均粒子径(dv)とは、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中のゴム粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数1により得られる平均粒子径とする。
数1
[図:0001395229000009.jpg]
なお、ゴム粒子は、ゴム変性共重合樹脂が製造される際、重合の進行に伴い形成されるが、ゴム粒子の体積平均粒子径(dV)の制御は、重合時の撹拌数、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹 脂の混合等で行われる。
また、本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdV25の差(以下dV75-dV25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は、重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で行われる。
また、本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdV25の差 (以下dV75-dV25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は、重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共 重合樹脂の混合等で行われる。
なお、dv75、dv25は、前掲したように横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積積算分布曲線において、積算値がそれぞれ75%、25%に対応する粒子径である。なお、ゴム粒子径は、ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)と同様、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より粒子径を測定し求めるものとする。また、体積分率は、該粒子径で得られたゴム粒子を球体とみなしたときの体積分率で示したものである。
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、ゴム粒子径体積積算分布曲線において、粒子径0.8μm未満が95~30体積%で、粒子径0.8μm以上が5~70体積%を占めることが好ましい。さらに好ましくは、粒子径0.8μm未満が80~40体積%で、粒子径0.8μm以上が20~60体積%である。粒子径0.8μm未満が95~30体積%、粒子径0.8μm以上が5~70体積%であると、さらに透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、透明性の成形条件依存性の良好なものとなる。なお、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上の比率の制御は、重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で行われる。」(第6頁第下から7行~第7頁下から4行)
(甲3d)
「実施例
次に実施例をもって本発明をさら説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(1)透明なゴム変性共重合体樹脂の実施例
参考例1
撹拌機を付した容積約5Lの第1完全混合型反応器、撹拌機を付した容積約15Lの第2完全混合型反応器、容積約40Lの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。ゴム状重合体として旭化成社製アサプレン670A(スチレン-ブタジエンゴム、スチレン含量が40質量%、温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度33mPa・s、1,2一ビニル結合の割合13.9モル%)を8質量部、スチレン56質量部、メチ ルメタアクリレート(以下MMA)39質量部、n-ブチルアクリレー卜(以下n-BA)5質量部で構成する単量体溶液に対し、エチルベンゼン14質量部、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:118°C)0.0 5質量部、t一ドデシルメルカブタンを0.1質量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.1質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時7kgで温度110℃に制御した第1完全混合型反応器に導入した後連続的に温度130℃に制御した第2完全混合型反応器に供給した。次いで重合液を第2完全混合型反応器より連続的に抜き出しながら、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この重合液を予熱器で加温しながら、1.3kPaに減圧した脱揮槽に導入し、脱揮槽内温度230℃にて未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂を得た。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルA~Eを得た。表1に物性評価結果を示した。
参考例2
第1完全混合型反応器を用いず、かつt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを添加しない原料溶液を第2完全混合型反応器に直接供給した以外は参考例1と同様に行った。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルF~Gを得た。表1に物性評価結果を示した。
参考例3
t-ドデシルメルカプタンを0.02質量部とし、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートの代わりに4,6-ビス(オクチルチオメチル)-O-クレゾールを0.1質量部を混合し原料溶液とした以外は参考例1と同様に行い、サンプルHを得た。表1に物性評価結果を示した。
表1
[図:0001395229000010.jpg]
実施例1~6、比較例1~4
表2、3、4に示す配合で40mm単軸押出機を用い温度230℃でストランド状に押出し、ペレタイザ一にて切断することによりペレット形状のゴム変性共重合樹脂を得た。また、表2、3、4に物性評価結果を示した。
[図:0001395229000011.jpg]
[図:0001395229000012.jpg]
」(第12頁第12行~第16頁)
(4)甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4a)
「【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分を(A)/(B)=98/2~80/20質量比の割合で含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
(B)成分:(B1)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩、
(B2)次化式(1)~(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキリデン基、炭素数7~17のシクロアルキリデン基、炭素数7~17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1~4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
【化1】
[図:0001395229000013.jpg]
【化2】
[図:0001395229000014.jpg]
【化3】
[図:0001395229000015.jpg]
、及び(B3)炭素原子数4~20のジカルボン酸を共重合してなるポリエーテルエステルアミド」
(甲4b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、剛性に優れた樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にABS樹脂に代表されるスチレン系樹脂は電気、電子機器部品、OA機器、パチンコ部品等に幅広く使用されており、特に機能面、デザイン面で透明性を必要とされる用途には、透明ABSが使用される。一方スチレン系樹脂は、電気固有抵抗値が高いために、成形品にほこりが付着したり、電子機器においては、帯電した電気による誤作動等の静電気障害を生じる問題があり、帯電防止性能が要求されている。そこで、これらの帯電防止方法としては、樹脂に帯電防止剤、カーボンブラック、金属紛を練り込む方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
株式会社プラスチックス・エージ発行「プラスチックスエージ」、
1991年6月号、p.170~176
【0004】
樹脂に帯電防止剤を練り込む方法は、帯電防止性能を付与する方法として有効であるが、帯電防止効果に持続性がないという欠点がある。一方、カーボンブラックや金属紛を練り込む方法は、帯電防止効果の持続性はあるが、外観、成形加工性、衝撃強度を低下させる問題を有しており、特に透明ABSに対しては、その特長である透明性を失わせるため、使用することが出来ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性に優れる樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スチレン系樹脂において、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のゴム変性スチレン系樹脂組成物に特定の添加剤を配合することにより、透明性を損なうことなく衝撃強度に優れ、かつ帯電防止性能に優れた樹脂組成物を見出し、本発明に到達したのものである。」
(甲4c)
「【0025】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中にはゴム粒子が分散してなる。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)は0.4~2μm、好ましくは0.4~1.5μm、更に好ましくは0.5~1.2μmである。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4μm未満の場合は耐衝撃性が低いものとなり、2μmを越えた場合は透明性の劣るものとなる。
本発明の体積平均粒子径(dv)とは、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中のゴム粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数1により得られる平均粒子径とする。
【数1】
[図:0001395229000016.jpg]
尚、体積平均粒子径(dv)の制御は重合時の撹拌数、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
【0026】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdv25の差(以下dv75-dv25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、更に好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
尚、dv75、dv25は、前掲したように横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積積算分布曲線において、積算値がそれぞれ75%、25%に対応する粒子径である。尚、ゴム粒子径は、ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)と同様、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より粒子径を測定し求めるものとする。また、体積分率は、該粒子径で得られたゴム粒子を球体とみなしたときの体積分率で示したものである。
【0027】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、ゴム粒子径体積積算分布曲線において、粒子径0.8μm未満が95~30体積%で、粒子径0.8μm以上が5~70体積%を占めることが好ましい。更に好ましくは、粒子径0.8μm未満が80~40体積%で、粒子径0.8μm以上が20~60体積%である。粒子径0.8μm未満が95~30体積%、粒子径0.8μm以上が5~70体積%であると、更に透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、透明性の成形条件依存性の良好なものとなる。尚、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上の比率は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。」
(甲4d)
「【実施例】
次に実施例をもって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0046】
参考例1
撹拌機を付した容積約5リットルの第1完全混合型反応器、撹拌機を付した容積約15リットルの第2完全混合型反応器、容積約40リットルの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。ゴム状重合体として旭化成社製アサプレン670A(スチレン-ブタジエンゴム、スチレン含量が40質量%、温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度33mPa・s、1,2-ビニル結合の割合13.9モル%)を8質量部、スチレン56質量部、メチルメタアクリレート(以下MMA)39質量部、n-ブチルアクリレート(以下n-BA)5重量部で構成する単量体溶液に対し、エチルベンゼン14質量部、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:118℃)0.05質量部、t-ドデシルメルカプタンを0.1質量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.1質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時7kgで温度110℃に制御した第1完全混合型反応器に導入した後連続的に温度130℃に制御した第2完全混合型反応器に供給した。次いで重合液を第2完全混合型反応器より連続的に抜き出しながら、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この重合液を予熱器で加温しながら、1.3kPaに減圧した脱揮槽に導入し、脱揮槽内温度230℃にて未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂を得た。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルa~eを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0047】
参考例2
第1完全混合型反応器を用いず、かつt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを添加しない原料溶液を第2完全混合型反応器に直接供給した以外は参考例1と同様に行った。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルf~gを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0048】
参考例3
t-ドデシルメルカプタンを0.02質量部とし、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートの代わりに4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを0.1質量部を混合し原料溶液とした以外は参考例1と同様に行い、サンプルhを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0049】
【表1】
[図:0001395229000017.jpg]
【0050】
表2に示す配合で40mm単軸押出機を用い温度230℃でストランド状に押出し、ペレタイザーにて切断することによりペレット形状のゴム変性共重合樹脂(A-1~A-8)を得た。また、表2に物性評価結果を示した。
【0051】
【表2】
[図:0001395229000018.jpg]
【0050】
表2に示す配合で40mm単軸押出機を用い温度230℃でストランド状に押出し、ペレタイザーにて切断することによりペレット形状のゴム変性共重合樹脂(A-1~A-8)を得た。また、表2に物性評価結果を示した。
【0051】
【表2】
[図:0001395229000019.jpg]
【0052】
実施例1~6、比較例1~6
上記の方法で得られたA-1~A-8とポリエーテルエステルアミドBを表3に示す配合
割合にてヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械社製TEM35B、シリンダー温度220℃)を用いて溶融混練してペレットを作成し樹脂組成物を得た。
次いでこのペレットを2オンスインラインスクリュー射出成形機(新潟鉄工所社製SN-51B、シリンダー温度220℃)で射出成形し、得られた成形試片を用いて物性測定を行った。測定値を表3に示した。
【0053】
【表3】
[図:0001395229000020.jpg]
【0054】
尚、評価は下記の方法によった。
(1)透明性
東芝機械社製射出成形機(IS-50EPN)を用いて、シリンダー温度200℃及び230℃で厚さ1mm、2mm、3mmの3段プレートを成形した。
この3段プレートの2mm部を用い、ASTM D1003に準拠し、日本電色工業社製HAZEメーター(NDH-1001DP型)を用いて全光線透過率及び曇度を測定した(単位:%)。
(2)耐衝撃性
東芝機械社製射出成形機(IS-80CNV)を用いて、シリンダー温度200℃で12.7×64×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃強度を測定した(単位:J/m)。
(3)剛性
東芝機械社製射出成形機(IS-80CNV)を用いて、シリンダー温度200℃で12.7×127×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、ASTM D790に準拠して曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した(単位:MPa)。
(4)重量平均分子量(Mw)
下記記載のGPC測定条件で測定した。
装置名:SYSTEM-21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED-Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0055】
(5)ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)
オスミウム酸で染色した樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中の粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数4により得られる平均粒子径として求めた。粒子径の計測には、画像処理測定装置Carl Zeiss Vision社製KS400を使用した。
【数4】
[図:0001395229000021.jpg]
【0056】
尚、d75%径とd25%径も上記の測定で得られた粒子径を画像処理測定装置を使用して、整理し得た。
また、ゲル分、膨潤指数は前掲した方法で測定した。
【0057】
(6)帯電防止効果:帯電防止効果は、射出成形した厚さ2mmの角板を用い、次の2条件で測定した表面固有抵抗値で評価した。
(a)成形直後:成形直後の角板を純水中で1分間洗浄し、充分乾燥させた後、JIS K-6911に準拠して温度23℃、湿度50%RHで24時間調湿して表面固有抵抗値を測定した。
(b)300日放置直後:成形した角板を温度23℃、湿度50%RH中に300日間放置した後、純水中で1分間洗浄し、充分乾燥させた後、JIS K-6911に準拠して温度23℃、湿度50%RHで24時間調湿して表面固有抵抗値を測定した。
尚、表面固有抵抗(Ω)と帯電防止効果の相関は、表面固有抵抗値が1011以下あれば帯電防止効果は優れている。表面固有抵抗値が1011を超え1013以下では、帯電防止効果は良好であるが、表面固有抵抗値が1013を超え1014未満では、帯電防止効果が若干不足し、表面固有抵抗値が1014以上では帯電防止効果は不足する。
【0058】
本発明の樹脂組成物に係わる実施例は、何れも、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、及び剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が少ない。一方、本発明の条件に合わない比較例では、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、剛性、透明性の成形条件依存性のうちいずれかの物性において劣るものであった。」
(5)甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5a)
「【請求項1】
下記(A)成分82.8~94質量%、(B)成分4~17質量%、及び(C)成分0.2~3質量%を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
(B)成分:(B1)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩、
(B2)次化式(1)~(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキリデン基、炭素数7~17のシクロアルキリデン基、炭素数7~17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1~4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
【化1】
[図:0001395229000022.jpg]
【化2】
[図:0001395229000023.jpg]
【化3】
[図:0001395229000024.jpg]
、及び(B3)炭素原子数4~20のジカルボン酸を共重合してなるポリエーテルエステルアミド
(C)アニオン系界面活性剤及び/又は非アミンノニオン系界面活性剤」
(甲5b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、剛性に優れた樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にABS樹脂に代表されるスチレン系樹脂は電気、電子機器部品、OA機器、パチンコ部品等に幅広く使用されており、特に機能面、デザイン面で透明性を必要とされる用途には、透明ABSが使用される。一方スチレン系樹脂は、電気固有抵抗値が高いために、成形品にほこりが付着したり、電子機器においては、帯電した電気による誤作動等の静電気障害を生じる問題があり、帯電防止性能が要求されている。そこで、これらの帯電防止方法としては、一般に樹脂に帯電防止剤、カーボンブラック、金属紛を練り込む方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
株式会社プラスチックス・エージ発行「プラスチックスエージ」、1991年6月号、p.170~176
【0004】
樹脂に帯電防止剤を練り込む方法は、帯電防止性能を付与する方法として有効であるが、帯電防止効果に持続性がないという欠点がある。一方、カーボンブラックや金属紛を練り込む方法は、帯電防止効果の持続性はあるが、外観、成形加工性、衝撃強度を低下させる問題を有しており、特に透明ABSに対しては、その特長である透明性を失わせるため、使用することが出来ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性に優れる樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スチレン系樹脂において、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のゴム変性スチレン系樹脂組成物に特定の添加剤を配合することにより、透明性を損なうことなく衝撃強度に優れ、かつ帯電防止性能に優れた樹脂組成物を見出し、本発明に到達したのものである。」
(甲5c)
「【0025】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中にはゴム粒子が分散してなる。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)は0.4~2μm、好ましくは0.4~1.5μm、さらに好ましくは0.5~1.2μmである。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4μm未満の場合は耐衝撃性が低いものとなり、2μmを越えた場合は透明性の劣るものとなる。
本発明の体積平均粒子径(dv)とは、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中のゴム粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数1により得られる平均粒子径とする。
【数1】
[図:0001395229000025.jpg]
なお、体積平均粒子径(dv)の制御は重合時の撹拌数、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
【0026】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdv25の差(以下dv75-dv25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
なお、dv75、dv25は、前掲したように横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積積算分布曲線において、積算値がそれぞれ75%、25%に対応する粒子径である。なお、ゴム粒子径は、ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)と同様、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より粒子径を測定し求めるものとする。また、体積分率は、該粒子径で得られたゴム粒子を球体とみなしたときの体積分率で示したものである。
【0027】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、ゴム粒子径体積積算分布曲線において、粒子径0.8μm未満が95~30体積%で、粒子径0.8μm以上が5~70体積%を占めることが好ましい。さらに好ましくは、粒子径0.8μm未満が80~40体積%で、粒子径0.8μm以上が20~60体積%である。粒子径0.8μm未満が95~30体積%、粒子径0.8μm以上が5~70体積%であると、さらに透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、透明性の成形条件依存性の良好なものとなる。なお、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上の比率は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。」
(甲5d)
「【実施例】
次に実施例をもって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0050】
参考例1
撹拌機を付した容積約5リットルの第1完全混合型反応器、撹拌機を付した容積約15リットルの第2完全混合型反応器、容積約40リットルの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。ゴム状重合体として旭化成社製アサプレン670A(スチレン-ブタジエンゴム、スチレン含量が40質量%、温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度33mPa・s、1,2-ビニル結合の割合13.9モル%)を8質量部、スチレン56質量部、メチルメタアクリレート(以下MMA)39質量部、n-ブチルアクリレート(以下n-BA)5重量部で構成する単量体溶液に対し、エチルベンゼン14質量部、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:118℃)0.05質量部、t-ドデシルメルカプタンを0.1質量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.1質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時7kgで温度110℃に制御した第1完全混合型反応器に導入した後連続的に温度130℃に制御した第2完全混合型反応器に供給した。次いで重合液を第2完全混合型反応器より連続的に抜き出しながら、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この重合液を予熱器で加温しながら、1.3kPaに減圧した脱揮槽に導入し、脱揮槽内温度230℃にて未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂を得た。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルa~eを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0051】
参考例2
第1完全混合型反応器を用いず、かつt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを添加しない原料溶液を第2完全混合型反応器に直接供給した以外は参考例1と同様に行った。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサン
プルf~gを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0052】
参考例3
t-ドデシルメルカプタンを0.02質量部とし、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートの代わりに4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを0.1質量部を混合し原料溶液とした以外は参考例1と同様に行い、サンプルhを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0053】
【表1】
[図:0001395229000026.jpg]
【0054】
表2に示す配合で40mm単軸押出機を用い温度230℃でストランド状に押出し、ペレタイザーにて切断することによりペレット形状のゴム変性共重合樹脂(A-1~A-8)を得た。また、表2に物性評価結果を示した。
【0055】
【表2】
[図:0001395229000027.jpg]
【0056】
実施例1~6、比較例1~8
上記の方法で得られたA-1~A-8とポリエーテルエステルアミドBと界面活性剤C-1,2を表3に示す配合割合にてヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械社製TEM35B、シリンダー温度220℃)を用いて溶融混練してペレットを作成し樹脂組成物を得た。
次いでこのペレットを2オンスインラインスクリュー射出成形機(新潟鉄工所社製SN-
51B、シリンダー温度220℃)で射出成形し、得られた成形試片を用いて物性測定を行った。測定値を表3に示した。
【0057】
【表3】
[図:0001395229000028.jpg]
【0058】
なお、評価は下記の方法によった。
(1)透明性
東芝機械社製射出成形機(IS-50EPN)を用いて、シリンダー温度200℃および230℃で厚さ1mm、2mm、3mmの3段プレートを成形した。この3段プレートの2mm部を用い、ASTM D1003に準拠し、日本電色工業社製HAZEメーター(NDH-1001DP型)を用いて全光線透過率および曇度を測定した(単位:%)。
(2)耐衝撃性
東芝機械社製射出成形機(IS-80CNV)を用いて、シリンダー温度200℃で12.7×64×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃強度を測定した(単位:J/m)。
(3)剛性
東芝機械社製射出成形機(IS-80CNV)を用いて、シリンダー温度200℃で12.7×127×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、ASTM D790に準拠して曲げ強度および曲げ弾性率を測定した(単位:MPa)。
(4)重量平均分子量(Mw)
下記記載のGPC測定条件で測定した。
装置名:SYSTEM-21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED-Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0059】
(5)ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)
オスミウム酸で染色した樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中の粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数4により得られる平均粒子径として求めた。粒子径の計測には、画像処理測定装置Carl Zeiss Vision社製KS400を使用した。
【数4】
[図:0001395229000029.jpg]
【0060】
なお、d75%径とd25%径も上記の測定で得られた粒子径を画像処理測定装置を使用して、整理し得た。
また、ゲル分、膨潤指数は前掲した方法で測定した。
【0061】
(6)帯電防止効果:帯電防止効果は、射出成形した厚さ2mmの角板を用い、次の2条件で測定した表面固有抵抗値で評価した。
(a)成形直後:成形直後の角板を純水中で1分間洗浄し、充分乾燥させた後、JIS K-6911に準拠して温度23℃、湿度50%RHで24時間調湿して表面固有抵抗値を測定した。
(b)300日放置直後:成形した角板を温度23℃、湿度50%RH中に300日間放置した後、純水中で1分間洗浄し、充分乾燥させた後、JIS K-6911に準拠して温度23℃、湿度50%RHで24時間調湿して表面固有抵抗値を測定した。
尚、本発明でいう表面固有抵抗(Ω)は、帯電防止効果が非常に優れるレベルであり、1010以下を目標とした。よって、本発明の樹脂組成物及びその成形体は、より厳しい帯電防止性能を要求される材料に好適に用いられる。
【0062】
本発明の樹脂組成物に係わる実施例は、何れも、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、及び剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が少なく、本発明の条件に合わない比較例では、帯電防止性能透明性、耐衝撃性、剛性、透明性の成形条件依存性のうちいずれかの物性において劣るものであった。」
(6)甲6
甲6には、以下の事項が記載されている。
(甲6a)
「【請求項1】 平均ゴム粒径が0.2~1.0μmであり、オクルージョン構造を有する分散ゴム粒子群と、スチレン系重合体成分95~85重量%と、ゴム状重合体におけるジエン系重合体成分5~15重量%と、多くとも0.6重量%のスチレン系2量体および/またはスチレン系3量体と、多くとも700ppmの残留揮発成分とを有することを特徴とする耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。」
(甲6b)
「【0037】この発明においては、スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体は、耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の外観に一層寄与する。この発明の目的を達成するには、耐衝撃性スチレン系樹脂組成物中のスチレン系2量体および/またはスチレン系3量体の含有量は、多くとも0.6重量%、好ましくは、多くとも0.5重量%、更に好ましくは、多くとも0.4重量%である。スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体の含有量が0.6重量%を越えると、耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の外観が不良になってこの発明の目的を達成することができない。
【0038】また、スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体の含有量についてその好ましい範囲は、ある場合には、0.6重量%、0.5重量%および0.4重量%のいずれかを上限値とし、この明細書に記載された実施例において示されるオリゴマー量のいずれかの値を下限値とする範囲を採用することができ、また、この明細書に記載された実施例において示されるオリゴマー量のいずれかの値を上限値および下限値とする範囲を採用することができる。
【0039】この発明に係る耐衝撃性スチレン系樹脂組成物中のスチレン系2量体および/またはスチレン系3量体の含有量は次のようにして定量することができる。
【0040】すなわち、試料である耐衝撃性スチレン系樹脂組成物2gを塩化メチレン80mlに溶解する。得られた溶液を160mlのメタノール中に再沈殿させる。沈殿を有する液を濾過した後に、濾液を約1mlに濃縮し、それにクロロホルムを加えて20mlの定容にする。定容のクロロホルム溶液をガスクロマトフラフ装置を使用し、絶対検量線法により測定する。スチレン系2量体についての標準物質はジベンジル、スチレン系3量体についての標準物質は1,3,5-トリフェニルベンゼンとする。」
(甲6c)
「【0081】
【実施例】以下に、この発明の耐衝撃性スチレン系樹脂組成物および耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の製造方法の実施例および比較例につき説明するが、この発明はこれらの実施例および比較例に何ら限定されるものではない。
【0082】(実施例1~12、比較例1~9)スチレンに、スチレン-ブタジエンブロック共重合体ゴム(以下においてSBと略称する。)(Bayer製、商品名;BL6533[登録商標])とポリブタジエン(以下においてPBと略称する。)(旭化成工業(株)製、商品名;NF35AS[登録商標])と、重合開始剤として1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンと、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタンとを溶解し、32リットル/時間の流速で19リットルの槽型の第1重合器に供給した。
【0083】ただし、SBとPBとの比率(SB/PB重量比)は4/6であり、第1重合器に供給する原料の全量に対してSBおよびPBの合計が12.5重量%になるようにSBおよびPBが供給され、重合開始剤の配合量は原料の全量に対して0.04重量%(400ppm)になるように、連鎖移動剤の配合量は原料の全量に対して0.02重量%になるように、調整された。
【0084】第1重合器内では、重合温度111℃、撹拌速度120rpmの条件でスチレンの転化率が10%になるまで重合を行った。次いでこの部分重合液を23リットルの第2重合器に移送し、重合温度116℃、撹拌速度200rpmでスチレンの転化率が20%になるまで重合を行った。さらにこの部分重合液を連続的に第3重合器、第4重合器および第5重合器に移送し、第3重合器では反応温度を140℃、撹拌速度を90rpmにし、スチレンの転化率が50%になるまで重合を行い、第4重合器では反応温度を145℃、撹拌速度を20rpmにし、スチレンの転化率が65%になるまで重合を行い、第5重合器では反応温度を162℃にし、撹拌速度を5rpmにし、スチレンの転化率が85%になるまで重合を行った。
【0085】第5重合反応器で得られた重合反応液を第1フラッシュドラム(温度200℃、圧力0.053MPa)および第2フラッシュドラム(温度240℃、圧力0.67KPa)にて脱気操作を行って揮発分を除去した。第2フラッシュドラムから取り出された固形分を押出装置でペレットにした。
・・・
【0093】<スチレン2量体および3量体の総量>試料2mgを塩化メチレン80mlに溶解する。その溶液を160mlのメタノール中に再沈させる。これを濾過した後、濾液を約1mlに濃縮し、それにクロロホルムを加えて20mlに定容する。
【0094】この溶液をガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、GC-14A;カラム=PEG20M、25%、3mm径×3m)にて、シクロペンタノールを内部標準物質として内部標準法により測定した。
・・・
【0107】
【表3】
[図:0001395229000030.jpg]
【0108】
【表4】
[図:0001395229000031.jpg]
」
(7)甲7
甲7には、以下の事項が記載されている。
(甲7a)
「【請求項1】
マトリックスであるポリスチレン系樹脂中に、分散粒子としてゴム状重合体を含有するゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が25万~30万、Z平均分子量(Mz)が50万以上であり、かつ、その重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が2.5以上3未満、Z平均分子量と重量平均分子量との比(Mz/Mw)が1.9以上であり、
前記分散粒子の平均粒子径が0.5μm~5μmであり、
該樹脂組成物中のゲル量が10重量%~24重量%であり、
該樹脂組成物中のメタノール可溶分が1.5重量%以下である
ことを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。」
(甲7b)
「【0050】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、メタノール可溶分が1.5重量%以下(0重量%も含む)である。樹脂組成物中のメタノール可溶分が1.5重量%を超えると、十分な耐ドローダウン性が得られず、特に大型ブロー成形において、得られる成形品の肉厚が不均一となる。
【0051】
本発明で言うメタノール可溶分は、以下の方法により測定する。
【0052】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物1gを秤量し、10gのメチルエチルケトンに溶解させる。次に、それを500gのメタノールに入れ、メタノール不溶分を沈殿させる。次に、ろ過によりメタノール不溶分(沈殿物)を分離し、その重量を測定する。そして、次の式によりメタノール可溶分を求める。
【0053】
メタノール可溶分=(1-W2)/1×100(重量%)
ここで、W2はメタノール不溶分の重量(g)を表す。
【0054】
メタノール可溶分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に存在する低分子量成分に依存している。ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のメタノール可溶分は、例えば、製造段階においてスチレン2量体やスチレン3量体の含有量を公知の方法で調整する方法によって調整することができる。また、可塑剤などの添加剤の添加量を調整する方法などによっても調整することができる。」
(甲7c)
「【0100】
【表1】
[図:0001395229000032.jpg]
」
(甲7d)
「【0104】
〔比較例4〕
日本ポリスチレン(株)製、GPPSであるBX930(重量平均分子量Mw:33万)と、日本ポリスチレン(株)製、HIPSであるH758K(重量平均分子量Mw:25万、ゲル量:21重量%)と、流動パラフィン(エッソスタンダード社製、クリストールJ-352)とを、45/55/2(重量比)の割合で、ブレンドしたものをスクリュー径φ35mmの二軸押出機により220℃にて造粒し、均一なペレットを作製した。そして、このペレットを用いて、上記の測定・評価した。その結果を表2に示す。」
(甲7e)
「【0116】
樹脂組成物中のメタノール可溶分が1.5重量%を超える比較例4のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、実施例1~4の本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物と比較して、耐ドローダウン性に劣り、得られる成形品の偏肉性にも劣っていた。」
(8)甲8
甲8には、以下の事項が記載されている。
(甲8a)
「
[図:0001395229000033.jpg]
」(当審注:下線は当審にて付した。)
(9)甲9
甲9には、以下の事項が記載されている。
(甲9a)
「
[図:0001395229000034.jpg]
」(当審注:「動粘度」項目の枠線は当審にて付した。)
(10)甲10
甲10には、以下の事項が記載されている。
(甲10a)
「
[図:0001395229000035.jpg]
」
第5 当審の判断
1 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について
申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は、いずれも甲1を主引用例とする理由であるから、併せて検討する。
(1)甲1に記載された発明について
甲1には、第4の2(1)で摘記した事項が記載されているところ、摘記(甲1e)の段落【0027】~【0040】にある実施例4に着目すれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「下記第1~第4反応器を直列に接続して重合工程を構成し、
第1反応器:容積25Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積40Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第3反応器:容積50Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第4反応器:容積50Lの静止型混合器付プラグフロー反応器
スチレン単量体79.4質量%、エチルベンゼン14.0質量%、ポリブタジエン-1である日本エラストマー株式会社製「アサプレン730AX」6.6質量%を溶解させた溶液に対して、連鎖移動剤である-ドデシルメルカプタン0.010質量%添加した原料液を、20kg/h供給速度で反応器に連続的に供給し、第1反応器の温度を125℃、撹拌数を100rpm、第2反応器の温度を128~130℃、撹拌数を90rpmで重合を行った後、第2反応器の出口からの重合液に対し、重合開始剤-2であるt-ブチルクミルパーオキサイド(日油株式会社製パーブチルC)を0.016質量%添加し、第3反応器の温度を128℃、撹拌数を30rpm、第4反応器の温度を流れ方向に135~160℃の温度勾配がつくように調整し重合を行い、得られた重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は190℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は60kPaとし、2段目の脱揮槽内の樹脂温度は230℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.6kPaとして、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとしたゴム変性スチレン系樹脂であるHIPS-1に対して、
流動パラフィンを1.0質量%の割合で加え、二軸押出機を用いてブレンドしペレット化して得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、ゴム分が8.5質量%、ゲル分が23質量%、膨潤比10,ゴム粒子径1.1μmであるゴム変性スチレン系樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
A(ア)まず、本件発明1の「ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフとされたスチレン系重合体(PS)」について、本件明細書の段落【0013】の「本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるゴム状重合体は、内側にスチレン系重合体を内包し、かつ、外側にスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。ゴム状重合体は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中でマトリックス相に分散する。」なる記載からみて、「ポリブタジエン」等の「ゴム状重合体」に「スチレン」がグラフト重合された一体的なものでよいと解される。そして、本件明細書の段落【0053】~【0054】には、本件発明1の「ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフトされたスチレン系重合体(PS)」である「樹脂1」の具体的な製造方法が記載され、「ゴム」と「スチレン」を「第1反応器」で反応させ、さらに、「スチレン」を「第2反応器」に供給して反応させていることが記載されている。
(イ)一方、甲1発明の「HIPS-1」は上記摘記(甲1e)の【0029】~【0030】に記載された方法、すなわち、「ゴム」である「ポリブタジエン」に「スチレン単量体」を反応させるものである。
(ウ)そうすると、甲1発明の「HIPS-1」は、本件発明1の「ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフトされたスチレン系重合体(PS)」に相当するといえる。
B(ア)また、本件発明1の「マトリックス相」について、本件明細書の段落【0013】の「本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるゴム状重合体は、内側にスチレン系重合体を内包し、かつ、外側にスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。ゴム状重合体は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中でマトリックス相に分散する。」なる記載、及び、本件発明1の「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」である実施例1は、本件明細書の【0057】~【0058】を参照すると上記「樹脂1」に対して流動パラフィンを加えてブレンドして得られていることからみて、該樹脂1を流動パラフィンとブレンドしたものは組成物中においてゴム状重合体が分散するマトリックス相を有すると解される。
(イ)一方、甲1発明の「HIPS-1」を含む「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」である実施例4は、上記摘記(甲1e)の【0038】を参照するとHIPS-1に対して流動パラフィンを加えブレンドして得られており、また上記Aで検討したとおり該「HIPS-1」は本件発明1の「ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフトされたスチレン系重合体(PS)」である「樹脂1」に相当するものである。
(ウ)そうすると、甲1発明は本件発明1と同様に「マトリックス相」を含むものと解される。
C 甲1発明の「流動パラフィン」は、本件明細書の段落【0021】の記載「本実施形態の低分子量成分としては、重合時に生成するスチレン2量体、スチレン3量体の他、流動パラフィン、白色鉱油等の脂肪族炭化水素、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、酸化防止剤、熱安定剤、シリコンオイル等が挙げられる。」を参照すると、本件発明1の「低分子量成分」に相当する。
D(ア)本件発明1の「ゴム状重合体の含有量」について、本件明細書の段落【0036】には以下の記載がある。
「(1)ゴム状重合体の含有量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量(質量%)は、以下の方法により求めた。ゴム変性スチレン系樹脂組成物0.4gを100mLのメスフラスコに入れて精秤した(この質量をWとする)。クロロホルム75mLを加えてよく分散させた後、一塩化ヨウ素18gを1000mLの四塩化炭素に溶かした溶液20mLを加えて冷暗所に保存し、8時間後にクロロホルムで標線に合わせた。これを25mL採取し、ヨウ化カリウム10gを水800mL、エタノール200mLの混合液に溶かした溶液60mLを加え、チオ硫酸ナトリウム10gを1000mLの水に溶かした溶液(モル濃度x)で滴定した。本試験AmL、空試験BmLとし、ゴム系重合体粒子の含有率(質量%)は以下の式により求めた。
ゴム状重合体の含有量(%)=10.8×x×(B-A)/W」
(イ)一方、甲1発明の「ゴム分」は、甲1の段落【0018】に「ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。」と記載されている。
(ウ)したがって、本件発明1の「ゴム状重合体の含有量」と甲1発明の「ゴム分」とは、同様の方法で測定するものであると解される。
(エ)そうすると、甲1発明の「ゴム分」が「8.5質量%」であることは、本件発明1の「ゴム状重合体の含有量が6.0~10.0質量%」であることに相当するといえる。
E(ア)本件発明の「体積中位粒子径(メディアン径)」について、本件明細書の段落【0037】には「ゴム変性スチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールカウンター株式会社製、LS 13 320)により測定して、ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線を得た。」と記載されている。
(イ)一方、甲1発明の「ゴム粒子径」は、甲1の段落【0015】を参照すると「ゴム変性スチレン系樹脂組成物をジメチルホルムアミドに溶解させ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-920:相対屈折率120A000I)により測定して求める」ことができる「体積中位粒子径」である。
(ウ)したがって、本件発明1の「体積中位粒子径(メディアン径)」と甲1発明の「ゴム粒子径」とは、同様の方法で測定するものであると解される。
(エ)そうすると、甲1発明の「ゴム粒子径」が「1.1μm」であることは、本件発明1の「ゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)が0.8~1.8μm」に相当するといえる。
F(ア)本件発明の「ゲル分」について、本件明細書の段落【0042】には以下の記載がある。
「(5)ゲル分の含有量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゲル分の含有量(質量%)の測定は、沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂組成物1gを精秤し(この質量をWとする)、メチルエチルケトン20mLを加えて23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所製、SS-2050A)にて5℃以下、20000rpm(遠心加速度:4510G)で60分間遠心分離した。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除き、得られた不溶分を、引き続き160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、メチルエチルケトン不溶分の質量を精秤し(この質量をGとする)、下記式により、ゲル分の含有量(質量%)を求めた。
ゲル分の含有量=(G/W)×100」
(イ)一方、甲1発明の「ゲル分」は、甲1の段落【0016】を参照すると「ゲル分は、1gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し(質量W)、50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液35mLを加えて溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H-2000B(ローター:H))にて、14000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得て、セーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて125℃で1時間真空乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量Gを測定して、次のように求めることができる。
ゲル分(質量%)=(G/W)×100」と記載されている。
(ウ)したがって、本件発明1の「ゲル分」と甲1発明の「ゲル分」とは、同様の方法で測定するものであると解される。
(エ)そうすると、甲1発明の「ゲル分」が「23質量%」であることは、本件発明1の「ゲル分の含有量は20~26質量%である」に相当するといえる。
G 上記A~Fより、本件発明1と甲1発明とは、
「ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフトされたスチレン系重合体(PS)と、低分子量成分とを含むゴム変性スチレン系樹脂組成物であり、(1)前記ゴム状重合体の含有量が6.0~10.0質量%であり、(2)前記ゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)が0.8~1.8μmであり、(4)前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物がマトリックス相を有し、(5)前記低分子量成分を含有し、ゲル分の含有量は20~26質量%であることを特徴とする、ゴム変性スチレン系樹脂組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差(以下、「ゴム状重合体粒子径の75-25」という)について、本件発明1では0.3~1.2μmであるのに対して、甲1発明ではそのような特定がない点
<相違点2>
マトリックス相の重量平均分子量について、本件発明1では「21.1万~26万」であるのに対して、甲1発明ではそのような特定がない点
<相違点3>
低分子量成分の含有割合について、本件発明1では「2.0質量%以下」であるのに対し、甲1発明では「低分子量成分」の一つである流動パラフィンが1.0質量%含有されることは特定されるものの、それ以外の「低分子量成分」との合計で「2.0質量%」以下となっているかは不明である点
イ 判断
イ-1 新規性に関する判断1(相違点1について)
上記相違点のうち、相違点1について検討する。
(ア)本件発明の課題は(本a)の段落【0005】の記載からみて「耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供するもの」であるといえるところ、(本j)の実施例及び比較例をみると、相違点1である「ゴム状重合体粒子径の75-25」が0.4~1.1である実施例1~4は、該「ゴム状重合体粒子径の75-25」が0.2である比較例3に比べて耐油性に優れ、また該「ゴム状重合体粒子径の75-25」が1.6である比較例4に比べて光沢が優れることが確認できる((本j)の特に【0058】にある【表2】参照)。
このことから、本件発明1の相違点1に係る発明特定事項は、本件発明の上記課題の解決に必要な事項であるといえる。
(イ)一方、甲1は、上記第4の2(1)摘記(甲1b)の段落【0008】の記載からみて「耐衝撃性、剛性、光沢、成形性に加え、耐油性に優れるゴム変性樹脂組成物に関し、薄肉の家電製品に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する」ことを課題とし、請求項1において「ポリブタジエンの存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が0.5~1.6μmであり、ゲル分が18~28質量%、膨潤比が8~16であり、流動パラフィンを1.0~3.0質量%含むこと特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物」であることを発明特定事項とし、「ゴム状分散粒子」についてその「体積中位粒子径が0.5~1.6μm」としているが、これは相違点1の「ゴム状重合体粒子径の75-25」とは異なるものである。
加えて、甲1には該「ゴム状重合体粒子径の75-25」に関する記載が存在しない。
(ウ)次に、当該相違点1について、甲1発明と本件発明1とを製造方法の観点から比較し、実質的な相違点か否かを検討するに、甲1の【0027】~【0030】及び【0038】~【0040】に記載されている甲1発明の製造方法と本件明細書の【0053】~【0054】及び【0057】~【0058】の記載を比較してみると、両者はともに「ゴム」である「ポリブタジエン」に「スチレン単量体」を反応させて得られた樹脂に流動パラフィンを添加して得られるものであるものの、該樹脂を得るための「ポリブタジエン」に「スチレン単量体」を反応させる際の手順については、本件発明1では「ゴム」と「スチレン単量体」を「第1反応器」で反応させ、さらに、「第2反応器」において「スチレン単量体」を追加して反応させていることが理解できる。一方、甲1発明の「HIPS-1」の製造方法では、最初にポリブタジエン及びスチレン単量体を全て供給する点で上記本件明細書に記載の製造方法と異なることが理解でき、また、両者における各原料の比率、各反応容器における反応温度等についても違いがあることが理解できる。 更に、本件明細書の実施例及び比較例において用いられている、ゴム重合体の「メディアン径」及び「ゴム状重合体粒子径の75-25」がともに本件発明1の範囲に収まっている樹脂1~5と、「メディアン径」は本件発明1の範囲に収まっているものの「ゴム状重合体粒子径の75-25」がその範囲に収まっていない樹脂8、9とは、段落【0056】の【表1】にある原料液組成や反応条件を比較してもほとんど差異がない製造方法によって得られているものと理解できる。特に樹脂8は、樹脂1~5と比較しても、添加する連鎖移動剤の濃度や第3反応器における撹拌数以外にほとんど製造方法の差異はない。
ここで、反応に用いる各原料の配合割合や添加順序、反応温度等が全て同じであれば得られる反応物の組成及び物性も同じである蓋然性が高いと解されるが、甲1発明及び本件発明1では上述のとおりその製造方法における条件において違いが存在するところ、両者で得られる反応生成物が同じものである蓋然性が高いとはいえない。
また、上記のとおり、本件明細書の樹脂1~5と樹脂8、9の製造条件を比較すると、わずかな反応条件の違いによって「メディアン径」及び「ゴム状重合体粒子径の75-25」がともに本件発明1の範囲に収まっている樹脂1~5と、「メディアン径」は本件発明1の範囲に収まっているものの「ゴム状重合体粒子径の75-25」がその範囲に収まっていない樹脂が製造されてしまうものと解されるところ、反応条件が本件発明1と異なる甲1発明のゴム状重合体が本件発明1と同程度の「メディアン径」を有するからといって、当該「ゴム状重合体粒子径の75-25」も本件発明1と同じ範囲内である蓋然性が高いとは認められない。
そうすると、甲1発明の「HIPS-1」は、本件明細書の製造条件と対比しても、「ゴム状重合体粒子径の75-25」が「0.3~1.2μm」である蓋然性が高いと直ちに判断することはできない。
(エ)更に、相違点1である「粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差」について他の甲号証を確認する。
(エ-1)甲3には、請求の範囲に「1.ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを共重合して得られる、1種又は2種以上の混合物からなるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。」とあり、該「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」について「また、本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdv25の差(以下dv75-dv25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は、重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で行われる。」(第7頁第4~11行)とあるところ、甲3では重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等でdv75-dv25を「0.2~2.0μm」と制御することで、耐衝撃性と剛性のバランスや透明性と剛性のバランスを整え、さらに透明性の成形条件依存性を小さくしていることが理解できる。
そして、甲3の実施例1~6においては、甲3の第14頁及び第15~16頁の表1~3に記載されているとおり、表1にあるゴム粒子の平均粒子径が異なる複数種類のサンプルを配合することで「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」が0.6~1.2μmのゴム変性共重合樹脂を製造している。
ここで、甲1発明と甲3の実施例とが同じ製造条件にて製造されていれば、甲1発明の「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」は甲3の実施例と同様である蓋然性が高いといえる余地もあるので検討すると、甲1発明は、甲1の【0027】~【0030】及び【0038】~【0040】を参照するにゴム粒子の平均粒子径が異なる複数種類の樹脂を配合することなく製造しているところ、甲3の実施例と異なる製造方法によって得られているものと理解できる。
そうすると、甲1発明が甲3の実施例と同じ「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」を有する蓋然性が高いとまではいえず、甲3の記載を参照しても、甲1発明が「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」について「0.6~1.2μm」程度の本件発明1の範囲内に収まるものである蓋然性が高いとはいえない。
(エ-2)甲4には請求項1に係る発明として下記のものが記載されている。
「下記(A)成分及び(B)成分を(A)/(B)=98/2~80/20質量比の割合で含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
(B)成分:(B1)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩、
(B2)次化式(1)~(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキリデン基、炭素数7~17のシクロアルキリデン基、炭素数7~17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1~4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
【化1】
[図:0001395229000036.jpg]
【化2】
[図:0001395229000037.jpg]
【化3】
[図:0001395229000038.jpg]
、及び(B3)炭素原子数4~20のジカルボン酸を共重合してなるポリエーテルエステルアミド」
また、段落【0026】には、下記の記載がある。
「本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdv25の差(以下dv75-dv25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、更に好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。」
以上より、甲4では重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等でdv75-dv25を「0.2~2.0μm」と制御することで、耐衝撃性と剛性のバランスや透明性と剛性のバランスを整え、さらに透明性の成形条件依存性を小さくしていることが理解できる。
そして、甲4の実施例においては、【0049】~【0053】を参照すると、組成物中の樹脂A-1~A-4としてゴム粒子の平均粒子径が異なるサンプルを配合して「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」が0.6又は0.7μmのゴム変性共重合樹脂を製造している。
ここで、甲1発明と甲4の実施例とが同じ製造条件にて製造されていれば、甲1発明の「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」は甲4の実施例と同様である蓋然性が高いといえる余地もあるので検討すると、甲4の実施例は先の(エ-1)で示した甲3の実施例と同様の方法で製造されているから、甲1発明とは異なる製造方法によって得られているものと理解できる。
そうすると、甲1発明が甲4の実施例と同じ「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」を有する蓋然性が高いとまではいえず、甲3の記載を参照しても、甲1発明が「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」について「0.6~0.7μm」程度の本件発明1の範囲内に収まるものである蓋然性が高いとはいえない。
(エ-3)甲5には請求項1に係る発明として下記のものが記載されている。
「下記(A)成分82.8~94質量%、(B)成分4~17質量%、及び(C)成分0.2~3質量%を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4~2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2~2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
(B)成分:(B1)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩、
(B2)次化式(1)~(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキリデン基、炭素数7~17のシクロアルキリデン基、炭素数7~17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1~4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
【化1】
[図:0001395229000039.jpg]
【化2】
[図:0001395229000040.jpg]
【化3】
[図:0001395229000041.jpg]
、及び(B3)炭素原子数4~20のジカルボン酸を共重合してなるポリエーテルエステルアミド
(C)アニオン系界面活性剤及び/又は非アミンノニオン系界面活性剤」
また、段落【0026】には、下記の記載がある。
「本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdv25の差(以下dv75-dv25とする)が0.2~2.0μm、好ましくは0.4~1.7μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmである。dv75-dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75-dv25の制御は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
なお、dv75、dv25は、前掲したように横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積積算分布曲線において、積算値がそれぞれ75%、25%に対応する粒子径である。なお、ゴム粒子径は、ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)と同様、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より粒子径を測定し求めるものとする。また、体積分率は、該粒子径で得られたゴム粒子を球体とみなしたときの体積分率で示したものである。」
以上より、甲5では重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等でdv75-dv25を「0.2~2.0μm」と制御することで、耐衝撃性と剛性のバランスや透明性と剛性のバランスを整え、さらに透明性の成形条件依存性を小さくしていることが理解できる。
一方で、甲5の実施例においては、【0053】~【0057】を参照すると、組成物中の樹脂A-1~A-4としてゴム粒子の平均粒子径が異なるサンプルを配合して「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」が0.6又は0.7μmのゴム変性共重合樹脂を製造している。
ここで、甲1発明と甲5の実施例とが同じ製造条件にて製造されていれば、甲1発明の「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」は甲5の実施例と同様である蓋然性が高いといえる余地もあるので検討すると、甲5の実施例は先の(エ-1)、(エ-2)で示した甲3及び4の実施例と同様の方法で製造されているから、甲1発明とは異なる製造方法によって得られているものと理解できる。
そうすると、甲1発明が甲5の実施例と同じ「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」を有する蓋然性が高いとまではいえず、甲5の記載を参照しても、甲1発明が「ゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差」について「0.6~0.7μm」程度の本件発明1の範囲内に収まるものである蓋然性が高いとはいえない。
(オ)以上(ア)~(エ)より、甲1発明の「HIPS-1」の製造条件と、本件明細書に記載の本件発明の製造条件や甲3~5の「ゴム変性共重合樹脂」の製造条件は異なるため、本件明細書の記載及び甲3~5の記載を参酌しても、甲1発明の「HIPS-1」は、本件発明の「ゴム状重合体粒子径の75-25」が「0.3~1.2μm」である蓋然性が高いと直ちに判断することはできない
イ-2 進歩性に関する判断1(相違点1について)
次に、上記イ-1にて実質的な相違点であるとした相違点1について、甲1~7の記載から容易に発明をすることができたか否かを検討する。
(ア)甲1には、「ゴム状重合体粒子径の75-25」については記載されていないから、甲1発明及び甲1に記載の技術的事項から、「ゴム状重合体粒子径の75-25」について「0.3~1.2μm」とすることを動機づけることはできない。
(イ)次に、甲1発明において甲3~5の「ゴム状重合体粒子径の75-25」の特定を動機づけることができるか検討する。
甲1には、「ポリブタジエンの存在下、スチレン系単量体をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂であって、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が0.5~1.6μmであり、ゲル分が18~28質量%、膨潤比が8~16であり、流動パラフィンを1.0~3.0質量%含むこと特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物」について「ゴム状重合体粒子径の75-25」を特定することは記載されていないから、甲3~5を参照しても、直ちに、甲1発明の「HIPS-1」について「ゴム状重合体粒子径の75-25」が「0.3~1.2μm」とすることを動機づけることはできない。
仮に、甲1発明において、耐衝撃性及び剛性の向上を目的として、「ゴム状重合体粒子径の75-25」が「0.3~1.2μm」と特定しようとしても、甲1発明の「HIPS-1」と甲3~5のゴム変性共重合樹脂の製造条件は異なっているため、甲1発明の「HIPS-1」について、甲1の請求項1に特定されるゴム状分散粒子の「体積中位粒子径が0.5~1.6μm」、「ゲル分が18~28質量%」及び「膨潤比が8~16」を維持しつつ、「ゴム状重合体粒子径の75-25」を「0.3~1.2μm」とすることを直ちに動機づけることもできない。
(ウ)更に、他の甲2、6及び7を参照しても該「ゴム状重合体粒子径の75-25」については記載がないため、甲1発明に接した当業者が甲2、6及び7の記載を参照しても該「ゴム状重合体粒子径の75-25」を「0.3~1.2μm」に調整することが導かれるとはいえない。
(エ)以上(ア)~(ウ)より、本件発明1は、甲1発明及び甲1~7に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
イ-3 新規性に関する判断2(相違点3について)
次に、事案に鑑み、上記相違点のうち、相違点3について検討する。
(ア)本件発明の課題は(本a)の段落【0005】の記載からみて「耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供するもの」であるといえるところ、(本j)の実施例及び比較例をみると、相違点3である「低分子量成分の含有量」が1.2~1.7質量%である実施例1~5は、該「低分子量成分の含有量」が2.6質量%であり、本件発明1の「2.0質量%以下」を満たさない比較例7に比べて、耐衝撃性、光沢及び成形性について同等以上の評価を得ており、更に耐油性については不良である比較例7よりも良好または優れる評価を得ていることが確認できる((本j)の特に【0058】にある【表2】参照)。
このことから、本件発明1の相違点3に係る発明特定事項は、本件発明の上記課題の解決に必要な事項であるといえる。
(イ)上記相違点3の低分子量成分の含有量について、甲1の上記第4の2(1)における摘記事項やその他の箇所の記載を参照しても、甲1発明において1.0質量%の流動パラフィン以外の「低分子量成分」をどの程度含みえるのかについて記載がないため、甲1発明における全「低分子量成分」の割合は不明であり、当該相違点3は実質的な相違点であるといえる。
(ウ)加えて、当該相違点3について、甲1発明と本件発明1とを製造方法の観点から実質的な相違点か否かを検討するに、上記イ-1の(ウ)にて検討したとおり、甲1発明の「HIPS-1」の製造条件と本件明細書の実施例の製造条件は異なるため、甲1発明及び本件発明1では両者で得られる反応生成物が同じものである蓋然性が高いとはいえず、したがって該反応生成物における「低分子量成分」の割合が同じになっている蓋然性が高いといえる合理的な根拠がないものである。
そうすると、甲1発明と本件発明1とは、その製造方法を検討しても、上記相違点3に関して実質的に相違し、同一のものとはいえないものといえる。
(エ)また、甲6には、請求項1に「平均ゴム粒径が0.2~1.0μmであり、オクルージョン構造を有する分散ゴム粒子群と、スチレン系重合体成分95~85重量%と、ゴム状重合体におけるジエン系重合体成分5~15重量%と、多くとも0.6重量%のスチレン系2量体および/またはスチレン系3量体と、多くとも700ppmの残留揮発成分とを有することを特徴とする耐衝撃性スチレン系樹脂組成物。」とあり、スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体と残留揮発成分の量については記載があるものの、流動パラフィンやその他「低分子量成分」の含有量に関する記載はなく、【0082】~【0089】の実施例の製造方法を参照しても甲1発明とはその原料や反応条件が異なるため、甲6の記載を参照しても甲1発明における「低分子量成分」の含有量が「2.0質量%以下」である蓋然性が高いとはいえない。
(オ)更に、甲1、6以外の甲2~5、7の記載を参照しても、上記相違点3が実質的な相違点ではないとする根拠となる記載や示唆はないと認められる。
(カ)以上(ア)~(オ)より、甲1発明は本件発明1と同一であるとはいえず、本件発明1は甲1に記載された発明とはいえない。
イ-4 進歩性に関する判断2(相違点3について)
次に、上記イ-3にて実質的な相違点であるとした相違点3について、甲1~7の記載から容易に発明をすることができたか否かを検討する。
(ア)上記イ-3の(イ)にて説示したとおり、甲1には1.0質量%の流動パラフィン以外の「低分子量成分」をどの程度含みえるのかについて記載も示唆もないため、甲1発明において、甲1の記載に基づき「低分子量成分」の含有割合を「2.0質量%以下」とすることが導かれるものとはいえない。
(イ)また、甲6には、上記第4の2(6)の摘記(甲6b)のとおり、「耐衝撃性スチレン系樹脂組成物中のスチレン系2量体および/またはスチレン系3量体の含有量は、多くとも0.6重量%、好ましくは、多くとも0.5重量%、更に好ましくは、多くとも0.4重量%である。スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体の含有量が0.6重量%を越えると、耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の外観が不良になってこの発明の目的を達成することができない。」(【0037】)なる記載はあるものの、「スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体」以外の流動パラフィンやその他「低分子量成分」の含有量に関する記載はないため、仮に甲1発明に接した当業者が、甲6の上記記載を参照して「スチレン系2量体および/またはスチレン系3量体」の割合を調整したとしても、それ以外の成分も包含する「低分子量成分」の含有割合を「2.0質量%以下」とすることが導かれるものとはいえない。
(ウ)甲7には、上記第4の2(7)の摘記(甲7b)のとおり、「本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、メタノール可溶分が1.5重量%以下(0重量%も含む)である。樹脂組成物中のメタノール可溶分が1.5重量%を超えると、十分な耐ドローダウン性が得られず、特に大型ブロー成形において、得られる成形品の肉厚が不均一となる。」(【0050】)、「メタノール可溶分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に存在する低分子量成分に依存している。ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のメタノール可溶分は、例えば、製造段階においてスチレン2量体やスチレン3量体の含有量を公知の方法で調整する方法によって調整することができる。また、可塑剤などの添加剤の添加量を調整する方法などによっても調整することができる。」(【0054】)なる記載がある。
しかしながら、上記第4の2(1)の甲1に関する摘記には、「本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、流動パラフィンを1.0~3.0質量%含むことが好ましい。流動パラフィンが1.0質量%未満では得られる樹脂組成物の成形流動性、金型離型性が低下し、流動パラフィンが3.0質量%以上では、耐油性が悪化する。なお、流動パラフィンは、沸点的には潤滑油留分に属する、きわめて純度の高い液状飽和炭化水素の混合物であると定義される公知のもの(ホワイトオイルと称される)であれば差し支えない。」(【0020】)とあるとおり、低分子量成分である流動パラフィンを「1.0~3.0質量%」含むことが好ましい旨開示されているところ、甲1発明及び甲1の上記記載に接した当業者は、仮に甲7の上記記載に接したとしても、流動パラフィンの含有量が「1.0~3.0質量%」よりも減少する可能性がある甲7の「メタノール可溶分が1.5重量%以下(0重量%も含む)」という構成を導入する強い動機はないものといえる。
(エ)その他、甲2~5の記載を参照しても、「低分子量成分」の含有割合を「2.0質量%以下」とすることについて記載も示唆もないため、仮に甲1発明に接した当業者が、甲2~5の記載を参照したとしても、「低分子量成分」の含有割合を「2.0質量%以下」とすることが導かれるものとはいえない。
(オ)以上(ア)~(エ)より、本件発明1は、甲1発明及び甲1~7に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、相違点2を検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明1が、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~7も同様に、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 申立理由1(新規性)、2(進歩性)に係るまとめ
以上より、本件発明1~7は、甲1に記載された発明ではなく、また甲1発明及び甲1~7の記載により当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1および2は、理由がない。
2 申立理由3(実施可能要件)について
(1)特許法第36条第4項第1号の判断基準について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明の、いわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
以下、上記観点に基づき検討する。
(2)本件発明の実施可能要件について
本件発明1は、「ゴム状重合体と、前記ゴム状重合体にグラフトされたスチレン系重合体(PS)と、低分子量成分とを含むゴム変性スチレン系樹脂組成物であり、(1)前記ゴム状重合体の含有量が6.0~10.0質量%であり、(2)前記ゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)が0.8~1.8μmであり、(3)前記ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmであり、(4)前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量が21.1万~26万であり、(5)前記低分子量成分の含有量が2.0質量%以下であり、ゲル分の含有量は20~26質量%であることを特徴とする、ゴム変性スチレン系樹脂組成物。」を発明特定事項としている。
本件発明2は、本件発明1について「前記低分子量成分がスチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン」であることを特定するものである。
本件発明3は、本件発明1または2について「ゴム状重合体に結合しているPSの質量の、前記ゴム状重合体の質量に対する割合(PS/ゴム状重合体)が1.3~2.7」であることを特定するものである
本件発明4は、本件発明1~3について「ゴム変性スチレン系樹脂組成物のトルエン不溶分の膨潤指数が8~13」であることを特定するものである。
本件発明5は、本件発明1~4について「ISO 1133に準拠して測定したメルトマスフローレイトが1.0~5.0(g/10分)」であることを特定するものである。
本件発明6は、本件発明1~5について「前記スチレン系重合体(PS)は、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン及びインデンからなる群から選択される一種もしくは二種以上のスチレン系単量体から重合される、あるいは前記スチレン系単量体と、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとから重合される」ことを特定するものである。
本件発明7は、本件発明1~6の「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」からなる「成形品」を特定するものである。
ここで、上記「第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項」の「1 本件明細書に記載された事項」にて示したとおり、本願明細書には(本a)~(本j)が記載されており、(本b)の段落【0012】には、「スチレン系重合体」を構成するスチレン系単量体の原料として具体的な化合物の例示があり、段落【0014】には「ゴム状重合体」として用いられるものについて具体的な例示があり、段落【0015】~【0019】には該「ゴム状重合体」の「含有量」、「体積中位粒子径(メディアン径)」及び「粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差」について記載があり、またゴム状重合体の粒子径を調整する方法が具体的に記載され、(本c)の段落【0020】には、マトリックス相の重量平均分子量について記載され、(本d)の段落【0021】~【0022】には、低分子量成分として、重合時に生成するスチレン2量体、スチレン3量体の他、流動パラフィン等およびそれらの含有量が具体的に記載され、(本h)の段落【0033】には、本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物が、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合して得られるものであり、重合方法としては塊状重合法等の公知の方法で得られることが連続塊状重合法の具体的な反応工程と共に記載されている。
また、本件明細書の(本e)の段落【0023】~【0024】には、本件発明3のゴム状重合体の質量に対する割合(PS/ゴム状重合体)に関し、使用するゴム状重合体の1,2-ビニル結合の含有量、重合開始剤の種類及び添加量、ゴム状重合体の粒子を形成させる反応器の形式等によって調整することができる旨記載されており、本件明細書の(本f)の段落【0026】には、本件発明4のトルエン不溶分の膨潤指数は、8~13が好ましく、9~13がより好ましく、9~12が更に好ましい旨及びトルエン不溶分の膨潤指数を調整する方法としては、脱揮工程における温度条件を調整する方法が具体的に記載されており、本件明細書の(本g)の段落【0027】には、本件発明5のメルトマスフローレイト測定の具体的な温度、荷重条件が記載されており、本件明細書(本b)の段落【0012】には、本件発明6における発明特定事項と同じ単量体が本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン系重合体を構成できる旨記載され、本件明細書の(本i)の段落【0034】には、本件発明7に関し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物から成形品を得る方法として公知の成形法を含む具体的な方法が記載されている。
そして、(本j)においては、実施例1~5として本件発明1~6の発明特定事項を満たす「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」が記載され、また、段落【0051】~【0056】には、実施例1~5、比較例1~7で用いられた樹脂1~11の製造について、具体的かつ詳細な反応条件も含めた製造方法・条件が記載されている。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1~6の「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」及び本件発明7の「成形品」を得るための具体的な調整方法について、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立理由3の概要
上記「第3」に記載した申立理由3の概要について、以下に再掲する(以下、下記(a)~(b)を「申立理由3(a)」~「申立理由3(b)」という)。
(a)本件発明1は、「(3)前記ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmであ」ることを規定しているが、本件明細書には、「ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差」を調整するための手段や指針が記載されていないため、どのような製造条件にすれば、ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmとなるのかが理解できない。(申立書36頁3行~10頁29行)
(b)本件明細書によれば、低分子成分には、スチレン2量体、スチレン3量体が含まれる(本件明細書:段落0021)ため、「低分子量成分の含有量が2,0質量%以下」を満たすためには、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるスチレン2量体、スチレン3量体の量を制御する必要があるが、本件明細書には、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中にスチレン2量体、スチレン3量体を特定の量を含有させるために、特殊な重合条件を滴用したことや、重合後に特別な処理を適用したことは記載されておらず、どのような製造条件にすれば、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるスチレン2量体 スチレン3量体の量を制御することができるのか、その手段や指針が示されていなし、さらに、本件特許の実施例・比較例に係るゴム変性スチレン系樹脂組成物は、全てスチレン2量体、スチレン3量体を同程度の量含み、実際にゴム変性スチレン系樹脂組成物中にスチレン2量体、スチレン3量体を制御することができた実験例は記載されていない。(申立書36頁30行~45行)
イ 判断
(ア)申立理由3(a)について
申立理由3(a)では、本件発明1の「(3)前記ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3~1.2μmであり」のみに言及しているが、本件発明1は、「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」について、上記(3)だけでなく、「(1)前記ゴム状重合体の含有量が6.0~10.0質量%であり」、「(2)前記ゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)が0.8~1.8μmであり」、「(4)前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量が21.1万~26万であり」及び「ゲル分の含有量は20~26質量%である」という発明特定事項を満たす「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」である。
そして、本件発明1のこれらの発明特定事項を満たす「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」は、上記「(2)本件発明の実施可能要件について」で記載したとおり、当業者が過度な試行錯誤なく、製造できるように記載されていると認められる。特に、実施例に記載した製造条件、反応条件を参酌し、樹脂1~5の反応条件を元に、段落【0017】の記載や樹脂6~11の樹脂の反応条件を参酌すれば、(3)の発明特定事項を有する「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」を当業者は過度な試行錯誤なく製造できるといえる。
加えて、上記1のイ-1(エ-1)~(エ-3)にて説示したとおり、甲3~5にはゴム状重合体の粒子径の「体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差」を制御する手段が開示されているところ、本件発明1の「(3)前記ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差」を調整する方法は、本件発明に係る出願前から知られていたといえ、そのような調整方法も参照すれば、やはり当業者は過度な試行錯誤なく(3)の発明特定事項を有する「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」を製造できるといえる。
よって、申立理由3(a)は理由がない。
(イ)申立理由3(b)について
申立理由3(b)では、本件発明1の「低分子量成分」のうち「スチレン2量体」及び「スチレン3量体」の量のみに言及しているが、本件発明1、2は、「スチレン2量体」及び「スチレン3量体」の量のみではなく、「低分子量成分」又は「スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン」の含有量を「2.0質量%以下」とすることを発明特定事項とする「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」である。
そして、本件発明1,2のこれらの発明特定事項を満たす「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」は、上記「(2)本件発明の実施可能要件について」で記載したとおり、当業者が過度な試行錯誤なく、製造できるように記載されていると認められる。特に、実施例の特に段落【0051】~【0058】に記載した樹脂の製造条件、反応条件を参酌し、得られる樹脂1~5や樹脂6~11の反応条件を元に添加する流動パラフィンの量を調整すれば、実施例1~5として示されているような、「低分子量成分」又は「スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン」の含有量が「2.0質量%以下」である「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」を当業者は過度な試行錯誤なく製造できるといえる。
加えて、第4の2(6)の甲6に関する摘記(甲6c)の実施例には、甲6の請求項1にある発明特定事項である「多くとも0.6質量%のスチレン系2量体および/またはスチレン系3量体」を満たす耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の製造条件が記載されているところ、当該製造条件もあわせて参照すれば、やはり当業者は過度な試行錯誤なく「スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン」の含有量を「2.0質量%以下」である「ゴム変性スチレン系樹脂組成物」を製造できるといえる。
よって、申立理由3(b)は理由がない。
(4)申立理由3(実施可能要件)に係るまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は、理由がない。
3 申立理由4(サポート要件)について
(1)特許法第36条第6項第1号の判断基準について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(2)本件特許のサポート要件について
ア 本件発明の課題
本件発明の課題は、上記第4の1の(本a)段落【0005】を参照すると、「耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する」ことと認められる。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、上記第4の1の(本a)~(本j)のとおりの記載がある。
ウ 判断
(ア)上記(本a)~(本j)によれば、本件明細書には、本件発明で用いるゴム状重合体に関し、「体積中位粒子径(メディアン径)は、0.8~1.8μmであり、好ましくは0.9~1.7μm、より好ましく1.0~1.6μmである。体積中位粒子径が0.8μm未満の場合は耐衝撃性と耐油性が低下する。一方1.8μmを超えると成形品の光沢が悪化し、表面外観が劣るものとなる。」(上記(本b)【0015】)、「粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差は、0.3~1.2μmであり、好ましくは0.4~1.1μmであり、より好ましくは0.4~1.0μmである。積算値の75%径と積算値の25%径との差が0.3μm未満の場合は耐衝撃性と耐油性のバランスに劣る。一方1.2μmを超える場合は成形品の光沢を低下させ易い大きな粒子径が増加し、表面外観が劣るものとなる。」(上記(本b)【0016】)、「本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量は、6.0~10.0質量%であり、好ましくは6.0~9.0質量%、より好ましく7.0~9.0質量%である。ゴム状重合体の含有量が6.0質量%未満の場合は所望の粒子径の範囲内で耐衝撃性が劣り好ましくない。一方10.0質量%を超える場合は剛性が低くなり、また成形品の光沢が悪化し、表面外観が劣るものとなる。」(上記(本b)【0019】)なる記載があり、マトリックス相に関し「重量平均分子量は、18万~26万であり、好ましくは19万~25万、より好ましくは20万~24万である。重量平均分子量が18万未満の場合は耐衝撃性と耐油性が劣り好ましくない。一方、26万を超える場合は流動性が悪く、成形性が好ましくない。」(上記(本c)【0020】)なる記載があり、低分子量成分に関し「スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィンの含有量の合計は、2.0質量%以下であり、好ましくは1.7質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィンの含有量の合計が2.0質量%超える場合は流動性が向上し、成形性は良好であるが、油分が染み込み易くなり耐油性に劣る。」なる記載がある(上記(本d)【0022】)。
(イ)上記(ア)の記載に接した当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物に関し、(i)ゴム状重合体の体積中位粒子径(メディアン径)が「0.8~1.8μm」であること(段落【0015】)、(ii)ゴム状重合体の粒子径の体積積算分布曲線における積算値の75%径と積算値の25%径との差が「0.3~1.2μm」であること(段落【0016】)、(iii)ゴム状重合体の含有量が「6.0~10.0質量%」であること(段落【0019】)、(iv)マトリックス相の重量平均分子量が「18万~26万」であること(段落【0020】)及び(v)低分子量成分に関し「スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィンの含有量の合計は、2.0質量%以下」であること(段落【0022】)で、上記アで示した本件発明の課題である、「耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する」ことができると理解する。
(ウ)実際に、実施例をみると、上記(i)~(v)を全て満たす実施例1~5のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性のいずれにも優れ、上記アの本件発明の課題を解決できることが読み取れる一方、上記(i)~(v)のいずれかを満たさない比較例1~7のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性のいずれか1つまたはそれ以上の点で劣っていることが理解できる(【0058】の【表2】、【0059】~【0067】参照)。
(エ)そして、本件発明1は、上記(i)~(iii)を発明特定事項とし、マトリックス相の重量平均分子量に関する上記(iv)の範囲(「18万~26万」)よりもより狭い範囲のマトリックス相の重量平均分子量(「21.1万~26万」)を発明特定事項とし、かつ上記(v)に関し、「スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン」のみならず、それら以外の低分子量成分も含めた「低分子量成分」全体の含有量を「2.0質量%以下」としていることから、(v)よりもより狭い範囲を発明特定事項としているものといえるため、本件発明1は、当業者が、上記アの本件発明の課題を解決すると理解できる範囲内のものであるといえる。
(オ)本件発明1を引用する本件発明2~7についても、同様に、本件発明の上記課題を解決できるものといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立理由4の概要
上記「第3」に記載した申立理由4の概要について、以下に再掲する。
本件特許発明に係るゴム変性スチレン系樹脂組成物が、本件特許発明の効果として必要とされる成形性を有するためには、実際のところ、特定の種類の特定の粘度等を有する低分子成分の含有率が、特定の上下限を満たすことが必須であると解され、低分子量成分が、スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン以外のその他の物質を含む場合や、流動パラフィンが本件実施例で用いた流動パラフィンとは異なる種類である場合や、低分子量成分の含有量が1.1質量%未満または、1.7質量%超である場合に本件特許発明の課題を解決できることは示されておらず、またそのような場合にまで、発明の課題が解決できると当業者が認識することは困難である。したがって、本件特許発明は1~7に係る発明は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 判断
本件明細書の記載をみると、本件発明1の課題の1つである「成形性」については、本件発明で用いるマトリックス相の重量平均分子量を「18万~26万」と特定することで解決し得ると理解できる(上記(本c)の段落【0020】)
また、「低分子量成分」については、上記(本d)【0022】の記載から、本件発明の「耐油性」の課題に係るものであり、その点について実施例・比較例の結果からも理解できる。
そうすると、本件発明1の(1)~(4)の物性を満たすゴム変性スチレン系樹脂組成物であれば、含有する「低分子量成分」の種類に関わらず、また、「2.0質量%以下」という範囲内でさえあればその「低分子量成分」の含有量に関わらず、本件発明1の(1)~(4)の物性を満たさないゴム変性スチレン系樹脂組成物と比較した場合「耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性」に優れるものとなり、上記(2)アの本件発明の課題である「耐衝撃性、光沢、耐油性、成形性に優れ、特に光沢と耐油性のバランスを必要とする用途に好適に使用することができるゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する」ことを解決することができるものと当業者は理解できるといえる。
申立人は、「本件特許発明の効果として必要とされる成形性を有するためには、実際のところ、特定の種類の特定の粘度等を有する低分子成分の含有率が、特定の上下限を満たすことが必須であると解され」ることの根拠として、本件明細書の比較例5(当審注:低分子量成分の含有量が1.0質量部であること及び段落【0065】を引用していることから、比較例5ではなく「比較例6」の誤記であると認める。)を挙げるが、該比較例は、段落【0065】の記載にもあるとおり、マトリックスの重量平均分子量が「26.8万」と大きく、その点で本件発明1の発明特定事項の「(4)前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物のマトリックス相の重量平均分子量が21.1万~26万であり」を満たしていないため本件発明の課題を解決できないものであると解され、該比較例の評価結果をもって「本件特許発明の効果として必要とされる成形性を有するためには、特定の低分子成分の含有率が、特定の上下限を満たすことが必須であると解され、低分子量成分の含有量の上下限、特に下限を設けることが必須であると考えられる」とは認められない。また、該「本件特許発明の効果として必要とされる成形性を有するためには、特定の低分子成分の含有率が、特定の上下限を満たすことが必須であると解され、低分子量成分の含有量の上下限、特に下限を設けることが必須であると考えられる」ことに関して、申立人は上記本件明細書に開示された当該比較例以外の実験例等の具体的な根拠を示していない。
更に、申立人は低分子量成分として、スチレン2量体、スチレン3量体、及び流動パラフィン以外のその他の特定の物質を含む場合(例えば、低分子量成分が、シリコンオイルのみからなる場合)や、特定の粘度を有する低分子量成分を含む場合には本件発明の課題を解決できないこと、該低分子量成分の含有量「2.0質量%以下」の範囲内で本件発明の課題を解決できない範囲が存在することに関し、実験例等の具体的な根拠とともに示していない。
以上より、申立理由4に関する申立人の主張は採用できない。
(4)申立理由4(サポート要件)に係るまとめ
以上のとおりであるから、申立理由4は、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許に係る異議申立において申立人が主張する申立理由はいずれも理由がないから、本件発明1~7についての特許は、取り消すことができない。
ほかに、本件発明1~7についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700617