特許異議申立
2024-700924
鋼管杭とその製造方法
- 審判番号
- 2024-700924
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-091873
- 登録番号
- 7455314
- 請求日
- 2024年09月25日
- 審決日
- 2025年10月02日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】薦田 清豪
- 【権利者代理人】▲高▼橋 譲二
- 【異議申立人】株式会社 トラバース
- 【異議申立人代理人】山口 真二郎
- 【異議申立人代理人】大島 信之
- 【異議申立人代理人】松本 忠大
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 有家 秀郎
- 分類
- P1651.537-Z (E02D) / P1651.121-Z (E02D) / P1651.111-Z (E02D) / P1651.5 -Z (E02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第113条、特許法第123条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7455314号発明「鋼管杭とその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7455314号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7455314号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、令和5年6月2日に出願され、令和6年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許に対し、同年9月25日に、特許異議申立人 株式会社トラバース(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし6に係る特許について、特許異議の申立てがされた。
その後の経緯の概要は、以下のとおりである。
・令和6年12月20日付け 取消理由通知書
・令和7年 3月 5日差出 意見書(特許権者より)
・ 同年 4月 4日付け 審尋(申立人に対し)
・ 同月16日付け 回答書(申立人より)
・ 同年 5月15日付け 取消理由通知書(決定の予告)
・ 同年 7月17日差出 意見書(特許権者より)
・ 同月18日 上申書(特許権者より)
第2 本件発明、本件明細書等の記載と図示、及び本件明細書で言及する先行技術について
1 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである。なお、当審において、適宜に改行を加え、各構成に分説を付した。また、半角の「mm」については、全角の「mm」に改めた。
「【請求項1】
(1A)鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成したコンクリートに打設される鋼管杭であって、
(1B)杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成するとともに、
(1Ca)杭径を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6~1.9mm、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を2~3、縦溝の長手方向長さを30~60mm、縦溝の深さを3~6mm、縦溝の周方向幅を10~16mmに設定し、
(1Cb)杭径を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6~1.9mm、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を3~5、縦溝の長手方向長さを30~60mm、縦溝の深さを4~7mm、縦溝の周方向幅を13~18mmに設定し、
(1Cc)杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚を1.6~1.9mm、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を4~7、縦溝の長手方向長さを30~60mm、縦溝の深さを4~7mm、縦溝の周方向幅を16~21mmに設定することを特徴する
(1D)鋼管杭。
【請求項2】
(2A)各縦溝の両端部はそれぞれ、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の端部と同一円周上に合致させて配置されることを特徴とする
(2B)請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
(3A)各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の周方向中間に配置されることを特徴とする
(3B)請求項1または2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
(4A)各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝に対して周方向に所望の角度ずらせて配置されることを特徴とする
(4B)請求項1または2に記載の鋼管杭。
【請求項5】
(5A)縦溝の断面形状がV字状または台形状であることを特徴とする
(5B)請求項1または2に記載の鋼管杭。
【請求項6】
(6A)鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成する鋼管杭の製造方法であって、
(6B)予め杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する第1のステップと、
(6C)帯状鋼体素材の幅に応じてロール周面のロール軸方向所定位置に凹部が全周に亘って形成された第1のロールと、この第1のロールと接離可能に押圧され、前記凹部に対応する部位のロール周面に縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とに対応した凸部がロール軸の方向位置を異ならせて形成される第2のロールとを備え、これら第1のロールと第2のロールとの間に鋼体素材を導入して圧接し、第1のロールの凹部と第2のロールの凸部とにより帯状鋼体素材に縦溝を形成する溝付け押圧装置を備え、
(6D)押圧装置に帯状鋼体素材を導入して圧接し、帯状鋼体素材に縦溝を形成する第2のステップと、
(6E)上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材が押圧装置から送り込まれると、押し曲げ装置によりこの帯状鋼体素材を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し管状に成型する第3のステップと、
(6F)溶接装置により管状に形成された鋼体の衝合部を溶接する第4のステップと、
(6G)切断装置により、溶接された管状の鋼体を所望の長さにカットする第5のステップとを有することを特徴とする
(6H)鋼管杭の製造方法。」
2 本件明細書等の記載と図示
本件明細書及び図面(以下、本件明細書等という)には、次の記載及び図示がある。なお、本件発明の構成1B及び構成6Bに関し、「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する」事項に関する記載に、当審で下線を付した。
(1)技術分野、背景技術、及び発明が解決しようとする課題
「【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの基礎に打設する基礎杭として用いられる鋼管杭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭として用いられる鋼管杭は、コンクリートとの摩擦係数を高めて支持力を向上させるため、鋼管杭本体に窪みを形成するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許第4109698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の鋼管杭では、窪みの配置や窪みの形状が複雑で多様であるため、鋼管製造ラインを多様化せざるを得ず製造にコストがかかるという問題がある。さらに、窪みの配置や窪みの形状に基づいて杭径に応じた支持力を予め計算することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で杭径に応じて最適な支持力を得ることができる凹陥縦溝を有する鋼管杭を提供することを目的としている。」
(2)課題を解決するための手段
「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る鋼管杭は、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭であって、杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項1に係る鋼管杭では、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭であって、杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するようにしたことにより、予め杭径に応じた最適な支持力を導く、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定しているので、簡素な構成で最適な支持力が得られる鋼管杭を得ることができる。
【0008】
また、本発明に係る鋼管杭では、各縦溝の両端部はそれぞれ、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の端部と同一円周上に合致させて配置されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、鋼管杭の長手方向に沿って均一な支持力を得ることができる。さらに、本発明に係る鋼管杭では、各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝の周方向中間に配置されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、鋼管杭の周方向に沿って均一な支持力を得ることができる。また、本発明に係る鋼管杭では、各縦溝は、長手方向で隣り合う前記縦溝群の縦溝に対して周方向に所望の角度ずらせて配置されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、周方向の支持力をきめ細かく設定することができる。さらに、本発明に係る鋼管杭では、縦溝の断面形状がV字状または台形状であるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、縦溝を形成する装置の簡素化を図ることができ、コストダウンを図ることができる。また、本発明に係る鋼管杭では、杭径を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6~1.9mm、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を2~3、縦溝の長手方向長さを30~60mm、縦溝の深さを3~6mm、縦溝の周方向幅を10~16mmに設定し、杭径を70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚を1.6~1.9mm、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を3~5、縦溝の長手方向長さを30~60mm、縦溝の深さを4~7mm、縦溝の周方向幅を13~18mmに設定し、杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚を1.6~1.9mm、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数を4~7、縦溝の長手方向長さを30~60mm、縦溝の深さを4~7mm、縦溝の周方向幅を16~21mmに設定するようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、予め杭径に基づいて最適な支持力を得られる縦溝の数値を導いているので、汎用化してコストダウンを図ることができる。
【0009】
本発明の請求項7に係る鋼管杭の製造方法は、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成する鋼管杭の製造方法であって、予め杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する第1のステップと、帯状鋼体素材の幅に応じてロール周面のロール軸方向所定位置に凹部が全周に亘って形成された第1のロールと、この第1のロールと接離可能に押圧され、前記凹部に対応する部位のロール周面に縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とに対応した凸部がロール軸の方向位置を異ならせて形成される第2のロールとを備え、これら第1のロールと第2のロールとの間に鋼体素材を導入して圧接し、第1のロールの凹部と第2のロールの凸部とにより帯状鋼体素材に縦溝を形成する溝付け押圧装置を備え、押圧装置に帯状鋼体素材を導入して圧接し、帯状鋼体素材に縦溝を形成する第2のステップと、上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材が押圧装置から送り込まれると、押し曲げ装置によりこの帯状鋼体素材を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し管状に成型する第3のステップと、溶接装置により管状に形成された鋼体の衝合部を溶接する第4のステップと、切断装置により、溶接された管状の鋼体を所望の長さにカットする第5のステップとを有するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項7に係る鋼管杭の製造方法では、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成する鋼管杭の製造方法であって、予め杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する第1のステップと、帯状鋼体素材の幅に応じてロール周面のロール軸方向所定位置に凹部が全周に亘って形成された第1のロールと、この第1のロールと接離可能に押圧され、前記凹部に対応する部位のロール周面に縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とに対応した凸部がロール軸の方向位置を異ならせて形成される第2のロールとを備え、これら第1のロールと第2のロールとの間に鋼体素材を導入して圧接し、第1のロールの凹部と第2のロールの凸部とにより帯状鋼体素材に縦溝を形成する溝付け押圧装置を備え、押圧装置に帯状鋼体素材を導入して圧接し、帯状鋼体素材に縦溝を形成する第2のステップと、上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材が押圧装置から送り込まれると、押し曲げ装置によりこの帯状鋼体素材を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し管状に成型する第3のステップと、溶接装置により管状に形成された鋼体の衝合部を溶接する第4のステップと、切断装置により、溶接された管状の鋼体を所望の長さにカットする第5のステップとを有するようにしたことにより、製造された鋼管杭は、予め杭径に応じた最適な支持力を導く、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定しているので、簡素な構成で最適な支持力が得られる鋼管杭を得ることができる。また、製造ラインを簡素化することができるので、コストダウンを図ることができる。」
(3)発明の効果
「【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋼管杭では、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭であって、杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するようにしたことにより、簡素な構成で杭径に応じて最適な支持力を得ることができる縦溝を有する鋼管杭を得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る鋼管杭の製造方法では、鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成する鋼管杭の製造方法であって、予め杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する第1のステップと、帯状鋼体素材の幅に応じてロール周面のロール軸方向所定位置に凹部が全周に亘って形成された第1のロールと、この第1のロールと接離可能に押圧され、前記凹部に対応する部位のロール周面に縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とに対応した凸部がロール軸の方向位置を異ならせて形成される第2のロールとを備え、これら第1のロールと第2のロールとの間に鋼体素材を導入して圧接し、第1のロールの凹部と第2のロールの凸部とにより帯状鋼体素材に縦溝を形成する溝付け押圧装置を備え、押圧装置に帯状鋼体素材を導入して圧接し、帯状鋼体素材に縦溝を形成する第2のステップと、上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材が押圧装置から送り込まれると、押し曲げ装置によりこの帯状鋼体素材を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し管状に成型する第3のステップと、溶接装置により管状に形成された鋼体の衝合部を溶接する第4のステップと、切断装置により、溶接された管状の鋼体を所望の長さにカットする第5のステップとを有するようにしたことにより、簡素な構成で杭径に応じて最適な支持力を得られる縦溝を有する鋼管杭を得ることができ、製造ラインの簡素化を図り、コストダウンを図ることができる。」
(4)第1の実施形態
「【0014】
以下、図面に示す各実施形態により本発明を説明する。本発明の第1の実施形態に係る鋼管杭2は、図1に示すように、溝付け押圧装置3と押し曲げ装置4と溶接装置5と切断装置6とを備えた製造ライン10により製造される。溝付け押圧装置3は、図2の(A)に示すように、上ロール(第1のロール)11と下ロール(第2のロール)12とを備え、上ロール11は、帯状鋼体素材SC1~SC3の鋼体幅に応じてロール周面のロール軸方向の所定位置に凹部13が全周に亘って形成される。下ロール12は、上ロール11と接離可能に上下方向に押圧され、凹部13に対応する部位のロール周面に、予め決められた縦溝R1~R3の長手方向長さL1~L3と縦溝R1~R3の深さD1~D3と縦溝R1~R3の周方向幅W1~W3とに対応した凸部14が下ロール12のロール軸方向の位置を異ならせて形成されるようになっている。凸部14は、下ロール12の周面に所定の寸法L1~L3、D1~D3、W1~W3で形成され、ロール軸方向の断面が三角形状に形成される。この下ロール12の凸部14の各端部は角錐状に切れ上がって形成され、後述する縦溝R1、R2、R3の両端部R1-E1、R1-E2、R2-E1、R2-E2、R3-E1、R3-E2、を形成するようになっている。すなわち、縦溝R1、R2、R3の両端部R1-E1、R1-E2、R2-E1、R2-E2、R3-E1、R3-E2の管軸方向端面は、凸部14の角錐状端部に対応して管軸方向に傾斜して形成されるようになっている。そして、これら上ロール11と下ロール12との間に肉厚T1~T3の帯状鋼体素材SC1~SC3を導入して圧接し、上ロール11の凹部13と下ロール12の凸部14とにより帯状鋼体素材SC1~SC3の上面に縦溝R1~R3に対応する突部を形成するようになっている(図2の(B)、図10の(A)ないし(C)参照)。このとき、凸部14のロール軸方向の数により成型された鋼管杭2の周方向の縦溝R1~R3の数N1~N3が決定される。
【0015】
製造ライン10の押し曲げ装置(フォーミング装置)4は、図2の(C)、(D)、(E)に示すように、溝付け押圧装置3から縦溝R1~R3が形成された帯状鋼体素材SC1~SC3が送り込まれると、この帯状鋼体素材SC1~SC3を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し丸管状に成型するようになっている。溶接装置5は、押し曲げ装置4から丸管状に成型された鋼体が送り込まれると、鋼体の両端衝合部を高周波溶接するようになっている。切断装置6は、溶接された丸管状の鋼体が溶接装置5から送り込まれると、丸管状の鋼体を所望の長さにカットするようになっている。
【0016】
ところで、このようにして外周面に縦溝Rが形成された鋼管杭2(22、32)は、予め求められた基礎杭としての性能試験から支持力が最も発揮できる最適の、杭径に応じた縦溝の具体的な寸法と形状が導かれている。すなわち、杭径(外径)DM1(DM2、DM3)に応じて、杭の肉厚T1(T2、T3)と周方向の縦溝R1(R2、R3)の数N1(N2、N3)と縦溝R1(R2、R3)の長手方向長さL1(L2、L3)と縦溝R1(R2、R3)の深さD1(D2、D3)と縦溝R1(R2、R3)の周方向幅W1(W2、W3)と縦溝R1(R2、R3)の断面形状が予め決められている。そして、縦溝R1(R2、R3)は周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成されるとともに、この周方向の縦溝群G1(G2、G3)を、鋼管杭2(22、32)本体の長手方向に連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成するようにしている。
【0017】
本発明の第1の実施形態に係る鋼管杭2は、各縦溝R1の両端部R1-E1、R1-E2が、図3および図4に示すように、長手方向で隣り合う縦溝群G1の縦溝R1の端部R1-E2、R1-E1と同一円周上に合致させて配置されるようになっている。すなわち、鋼管杭2の長手方向で隣り合う縦溝群G1(G1A、G1B)の各縦溝R1の両端部R1-E1、R1-E2はそれぞれ、周方向で近接した側の縦溝R1の端部R1-E2、R1-E1と同一円周上に合致させられるようになっている。つまり、縦溝群G1Aの縦溝R1の上側端部R1-E1と縦溝群G1Bの縦溝R1の下側端部R1-E2とが同一円周上に配置され、これらは円周上近接した位置にある。また、縦溝R1は、鋼管杭2の長手方向で隣り合う縦溝群G1A、G1Bの縦溝R1間の周方向中間に配置されるようになっている。なお、図3の(A)、(B)では、縦溝R1をを模式的に示している。
【0018】
上記第1の実施形態に係る鋼管杭2は、杭径DM1が比較的小さいSタイプの鋼管杭に適用されるもので、杭径DM1を40mmから70mm未満としたときに、杭の肉厚T1を1.6~1.9mm、周方向に連続する縦溝群G1に含まれる縦溝R1の数N1を2~3、縦溝R1の長手方向長さL1を30~60mm、縦溝R1の深さD1を3~6mm、縦溝R1の周方向幅W1を10~16mmに、そして縦溝R1の断面形状がV字状になるように設定している。
【0019】
図3および図4は、このSタイプの鋼管杭2の具体的な寸法の一例を示すもので、杭径DM1が48.6mmの場合を示す。この鋼管杭2は、杭径DM1を48.6mmとしたとき、肉厚T1を1.8mmに、周方向に連続する縦溝の数N1、すなわち、縦溝群G1(G1A、G1B)の縦溝R1の数N1を2に、縦溝R1の長手方向長さL1を55mmに、縦溝R1の深さD1(杭径DM1の仮想円頂部から断面V字状溝R1の最深部)を5.2mmに、縦溝R1の周方向幅W1を12mmになるよう設定している。隣り合う縦溝群G1のうち、縦溝R1の周方向位置が合致する縦溝群G1A、G1AまたはG1B、G1Bとの長手方向の間隔は、縦溝R1の両端部E1、E2が同一円周上にあるため、縦溝R1の長手方向長さL1(55mm)と同一となっている。
【0020】
次に、上記第1の実施形態に係る鋼管杭2の作用について説明する。上記第1の実施形態に係る鋼管杭2は、図5に示すように、叙上の如く構成されているので、杭径DM1(40mmから70mm未満)が比較的小さい鋼管杭2を、コンクリートが打設された構造物の基礎に基礎杭として用いた場合、鋼管杭2の内外でコンクリートに対する摩擦抵抗力を生じ、杭径に対して支持力が最も発揮できる性能を発揮することができる。また、縦溝R1の形状も比較的シンプルなV字状溝となっているため、上下のローラ11、12の構造も簡素化することができ、製造コストの低減化を図ることができる。」
(5)第2の実施形態
「【0021】
次に、本発明の第2の実施形態に係る鋼管杭22について説明する。この第2の実施形態に係る鋼管杭22は、杭径DM2が一般的な通常サイズのMタイプの鋼管杭に適用されるもので、杭径DM2を、70mmから100mm未満としたときに、杭の肉厚T2を1.6~1.9mm、周方向縦溝群G2に含まれる縦溝R2の数N2を3~5、縦溝R2の長手方向長さL2を30~60mm、縦溝R2の深さD2を4~7mm、縦溝R2の周方向幅W2を13~18mmに設定し、そして縦溝R2の断面形状がV字状になるように設定している。また、上記第1の実施形態に係る鋼管杭2と同様に、長手方向で隣り合う縦溝群G2の縦溝R2の端部R2-E2、R2-E1と同一円周上に合致させて配置され、縦溝R2は、鋼管杭22の長手方向で隣り合う縦溝群G2A、G2Bの縦溝R2間の周方向中間に配置される。
【0022】
図6の(A)ないし(F)および図7は、このMタイプの鋼管杭22の具体的な寸法の一例を示すもので、杭径DM2が76.3mmの場合を示す。この鋼管杭22は、杭径DM2を76.3mmとしたとき、肉厚T2を1.8mmに、周方向に連続する縦溝の数N2、すなわち、縦溝群G2(G2A、G2B)の縦溝R2の数N2を3に、縦溝R2の長手方向長さL2を55mmに、縦溝R2の深さD2(杭径DM2の仮想円頂部から断面V字状溝R2の最深部)を5.7mmに、縦溝R2の周方向幅W2を15mmになるよう設定している。なお、符号D2aは、縦溝R2の長手方向開口端部から溝R2の最深部までの寸法を示し、この例では、4.5mmに設定している。この第2の実施形態に係る鋼管杭22では、叙上の如く構成されているので、杭径DM2(70mmから100mm未満)が通常の一般的な鋼管杭22を、コンクリートが打設された構造物の基礎に基礎杭として用いた場合、上記第1の実施形態に係る鋼管杭2と同様に、杭径に対して支持力が最も発揮できる性能を発揮することができる。なお、図8は、Mタイプの鋼管杭22について、縦溝群G2の縦溝R2の数N2を4に設定したときの例を示す斜視図である。また、図6の(A)ないし(D)はそれぞれ縦溝R2を模式的に示している。」
(6)第3の実施形態
「【0023】
次に、本発明の第3の実施形態に係る鋼管杭32について説明する。この第3の実施形態に係る鋼管杭32は、杭径DM3が比較的大きいLタイプの鋼管杭に適用されるもので、杭径DM3を、杭径を100mmから130mmとしたときに、杭の肉厚T3を1.6~1.9mm、周方向縦溝群G3に含まれる縦溝R3の数N3を4~7、縦溝R3の長手方向長さL3を30~60mm、縦溝R3の深さD3を4~7mm、縦溝R3の周方向幅W3を16~21mmに設定し、縦溝R3の断面形状をV字状に設定している。また、上記第1、第2の実施形態に係る鋼管杭2、22と同様に、長手方向で隣り合う縦溝群G3の縦溝R3の端部R3-E2、R3-E1を同一円周上に合致させて配置し、縦溝R3は、鋼管杭32の長手方向で隣り合う縦溝群G3A、G3Bの縦溝R3間の周方向中間に配置するようになっている。
【0024】
図9の(A)ないし(F)は、このLタイプの鋼管杭32の具体的な寸法の一例を示すもので、杭径DM3が114.3mmの場合を示す。この鋼管杭32は、杭径DM3を114.3mmとしたとき、肉厚T3を1.8mmに、周方向に連続する縦溝R3の数N3、すなわち、縦溝群G3(G3A、G3B)の縦溝R3の数N3を5に、縦溝R3の長手方向長さL3を55mmに、縦溝R3の深さD3(杭径DM3の仮想円頂部から断面V字状溝R3の最深部)を6.2mmに、縦溝R3の周方向幅W3を18mmになるよう設定している。なお、符号D3aは、縦溝R3の長手方向開口端部から溝R3の最深部までの寸法を示し、この例では、4.5mmに設定している。この第3の実施形態に係る鋼管杭32では、叙上の如く構成されているので、杭径DM3(100mmから130mm)が比較的大きい鋼管杭32を、コンクリートが打設された構造物の基礎に基礎杭として用いた場合、上記第1、第2の実施形態に係る鋼管杭2、22と同様に、杭径に対して支持力が最も発揮できる性能を発揮することができる。なお、縦溝R1~R3は、長手方向長さL1~L3が短く、数が多いほどコンクリートに対する鋼管杭の付着力は増す。なお、図9の(A)ないし(D)はそれぞれ縦溝R2を模式的に示している。
【0025】
なお、上記各実施形態に係る鋼管杭2、22、32では、縦溝は、鋼管杭2、22、32の長手方向で隣り合う縦溝群G1、G2、G3の縦溝R1、R2、R3の周方向中間に配置するようにしているがこれに限られるもではなく、周方向に中間の位置から所望の角度で長手方向に順次ずらすようにしてもよい。また、上記各実施形態に係る鋼管杭2、22、32では、縦溝の形状を断面V字状としているがこれに限られるものではなく台形状としてもよい。また、本願発明では、500N(ニュートン)の鋼管を使用している。これに対し、従来、セメント内に挿入される基礎杭用鋼管は主に引張強度290N(ニュートン)または400Nである。このため、薄肉化、軽量化をしても座屈強度は従来の鋼管と同等以上を維持することが可能になる。従って、資源の低減に繋がることから、環境に配慮した製品ともなっている。」
(7)【図3】
「
[図:0001429997000001.jpg]
」
(8)【図5】
「
[図:0001429997000002.jpg]
」
(9)【図6】
「
[図:0001429997000003.jpg]
」
(10)【図9】
「
[図:0001429997000004.jpg]
」
3 本件明細書で言及する従来技術
上記2(1)で、本件明細書が言及する先行技術は、特許第4109698号公報であり、同公報の【図1-1】~【図1-3】には、次の図示がある。
「
[図:0001429997000005.jpg]
」
上記【図1-1】~【図1-3】の(a)~(g)には、上記2(8)の本件明細書等の【図5】に示される縦溝付き鋼管杭に比較して、多種多様なタイプの凹み部を形成した多種多様な鋼管杭が示されている。
第3 証拠等、特許異議申立理由の概要、先の取消理由(決定の予告)の概要、信義則違反に関する特許権者及び申立人の主張の概要
1 証拠等
(1)申立書に添付して提出
申立人が申立書に添付して提出した証拠は、以下のとおりである。
(以下、申立人の提出した甲第1号証を、甲1という。甲第2号証以下についても同様。)
・甲1: 令和5年3月6日付け、特許第6734686号判定請求事件に係る判定請求書の写し、株式会社トラバース
・甲2: 意匠登録第1522988号公報
(平成27年5月11日発行)
・甲3: 意匠登録第1522989号公報
(平成27年5月11日発行)
・甲4: 意匠登録第1527011号公報
(平成27年6月22日発行)
・甲5: 意匠登録第1527012号公報
(平成27年6月22日発行)
・甲6: 意匠登録第1527333号公報
(平成27年6月22日発行)
・甲7: 意匠登録第1527334号公報
(平成27年6月22日発行)
・甲8: 特開2007-85157号公報
(平成19年4月5日公開)
・甲9: 韓国登録特許第10-1443242号公報
(2014年9月22日発行)
・甲10:判定(判定2023-600009)
・甲11:進歩性の審査の進め方の要点と参考事例
(2)回答書に添付して提出
申立人は、令和7年4月16日付けの回答書に添付して、3通の電子メールの印刷物を、第1号証、第2号証及び第3号証として、提出している。
この3通の電子メールの印刷物は、参考資料と扱い、言及する際には、参考資料1等という。
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
特許異議申立理由(甲1を主たる証拠とした進歩性欠如)
甲1に係る判定請求書は、その副本が本件特許の出願前に判定被請求人に送達され、同判定被請求人は本件特許の特許権者及び発明者とは無関係であり守秘義務を負わない者であるから、同判定請求書の内容は、特許法29条1項1号に規定する、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明となった。
本件発明1ないし6は、本件特許の出願前に、甲1に係る判定請求書の副本送達により公然知られた発明、及び甲2~甲9に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要
当審が令和7年5月15日付けの取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件違反)
本件発明1ないし6は、明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(甲1を主たる証拠とした進歩性欠如)
上記2に示した特許異議申立理由の概要と、同様である。
4 信義則違反に関する特許権者及び申立人の主張の概要
特許権者は、上記2及び3に概要を示した特許異議申立理由、取消理由1及び取消理由2に対する反論のほか、申立人による本件特許異議申立は信義則に違反して違法である旨を主張している。
信義則違反に関する特許権者の主張の概要は、下記(1)のとおりであり、この点に関する申立人の主張の概要は、下記(2)のとおりである。
(1)特許権者の主張
特許権者は、令和7年3月5日差出の意見書において、申立人は甲1に係る判定請求に関し、信義則上あるいは黙示の合意により、イ号製造方法の内容を公知としない義務を負っており、本件特許の有効性を維持する義務も負っていたから、申立人による本件特許異議申立は、信義則に違反して違法である旨を主張している。
また特許権者は、令和7年7月17日差出の意見書において、甲1に係る判定請求の経緯として、申立人、丸一鋼管株式会社及び丸一鋼販株式会社の3社は、甲1に係る判定請求におけるイ号製造方法について新規性・進歩性のある発明であることを確認し、この製造方法について特許権者が特許出願して権利を取得することで、上記3社が独占的な実施により共通の利益を確保しようとしていた旨を主張している。そして、特許権者が特許出願して権利を取得することで、申立人を含む3社が独占的な実施により共通の利益を確保しようとしていた証左として、甲1に係る判定請求の判定結果が出る前に特許権者が本件特許出願をしたのであるから、発明者側の特段の明示的な指示や要求がなくとも、申立人は特許権者に対して、甲1に係る判定請求に際しては秘密を保持する義務を、また本件特許については権利を維持すべき義務を、信義則上あるいは黙示の合意により負っていた旨を主張している。さらに特許権者は、申立人が法律上または契約上秘密保持の義務を課せられなくとも、社会通念上守秘義務を負うことの根拠として、東京高裁平成12年12月25日判決(平成11年(行ケ)第368号)に言及している(同意見書「5 意見の理由」「(2)特許法29条1項1号に関して信義則違反」、及び前記意見書の記載内容を訂正する旨の同月18日の上申書)。
(2)申立人の主張
申立人は令和7年4月16日付けの回答書において、特許権者による信義則違反の主張に関する審尋に対し、本件特許異議申立が信義則違反となるような事情はない旨を回答している。
第4 当審の判断
1 信義則違反について
事案に鑑み、まず、本件異議申立が信義則違反により違法となるか否かを判断する。
(1)特許法113条
特許法113条の規定より、特許異議の申立ては、何人もすることができる。
特許法123条2項の規定より、特許無効審判は利害関係人に限り請求することができるところ、特許法113条において、特許異議の申立てを何人もすることができると規定する趣旨は、申立ての期間を特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、かつ、申立ての理由を新規事項の追加、新規性・進歩性欠如及び記載不備等の公益的事由に限る特許異議の申立てについては、特許無効審判を請求することができる利害関係人を含め、より幅広い者について制限をすることなく、何人からも特許異議の申立てをすることを認めることにあると、理解される。
(2)信義則違反についての判断
ア 申立人がイ号製造方法の新規性・進歩性を確認していた旨の特許権者の主張について
特許権者は、上記第3の4(1)のとおり、申立人を含む3社は、甲1に係る判定請求におけるイ号製造方法について、新規性・進歩性のある発明であることを確認していた旨を主張している。
しかしながら、甲1に係る判定請求は、イ号製造方法について、別件特許第6734686号の特許発明の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものであって、本件特許異議申立における申立人及び特許権者の全ての主張を考慮しても、イ号製造方法について新規性・進歩性のある発明であることを、実際に申立人が確認していたと認めることはできない。
また、上記(1)のとおり、特許法113条より、特許異議の申立ては何人もすることができるから、仮に特許権者が主張するように、甲1に係る判定請求の時点で申立人がイ号製造方法について新規性・進歩性が否定されないと考えていたとしても、そのことを理由として、申立人による本件特許異議の申立てが、信義則違反により違法となるものではない。
イ 申立人を含む3社が特許権者による権利の取得により共通の利益を確保しようとしていた旨の特許権者の主張について
また特許権者は、上記第3の4(1)のとおり、申立人を含む3社は、イ号製造方法について特許権者が特許出願して権利を取得することで、独占的な実施により共通の利益を確保しようとしていた旨を主張している。そして特許権者は、イ号製造方法について特許権者が権利を取得することで、申立人を含む3社が共通の利益を確保しようとしていた証左として、甲1に係る判定請求の判定結果が出る前に特許権者が本件特許出願を行ったと主張している。
しかしながら、甲1に係る判定請求の判定結果が出る前に特許権者が本件特許出願を行ったことは、特許権者が本件特許出願をいつ行ったかを示すにとどまるから、特許権者による本件特許出願が甲1に係る判定請求の判定結果が出る前であったことが、本件特許出願を行った者ではない申立人について、特許権者が本件特許を出願して権利を取得することで共通の利益を確保することに合意していたことを示すとはいえない。
なおこの点に関し、特許権者が説明するように、申立人が甲1に係る判定請求の時点及び本件特許出願の時点において、共通の利益を確保するために特許権者が本件特許出願を行うことに同意しており、本件特許の有効性を維持する信義則上の義務を負っていたにもかかわらず、本件特許掲載公報が発行されると翻意して、特許異議申立期間中に本件特許異議の申立てを行ったことは、不自然であって、特許権者による主張の全体を考慮しても合理的な説明がされているとはいえない。これに対し、申立人が説明するように、本件特許掲載公報の発行により特許権者による本件特許出願を知った申立人が、異議申立期間中に速やかに本件特許異議の申立てを行ったと理解することは、むしろ自然である。
そして、上記(1)のとおり、特許法113条より、特許異議の申立ては何人もすることができるところ、申立人について、利害関係人も含めて何人もすることができる特許異議の申立てをすることが、信義則違反として許されないものとなるような、特別な義務を特許権者との関係において有していたとは、本件特許異議申立における申立人及び特許権者の全ての主張を考慮しても、認めることができない。
ウ 特許権者が意見書で言及する判決について
特許権者が意見書において、信義則上の守秘義務について言及する、東京高裁平成12年12月25日判決(平成11年(行ケ)第368号)は、新技術を含む商品について製造販売者から商談を受けた需要者が、新技術を含む商談の内容を第三者に開示しないと期待されることをもって、当該需要者に商談がされたからといって、特許法29条1項1号の公然知られた状態となったとはいえない旨を判示するものであって、甲1に係る判定請求書の副本が実際に競合他者である判定被請求人に送付された本件特許異議申立とは事案が異なるものであり、また申立人において、甲1に係る判定請求に際して、イ号製造方法の書の副本が判定被請求人に送付されないようにする守秘義務があったことを示すものではない。
そして、上記判決を考慮しても、本件特許異議申立において、特許法113条の規定にかかわらず、申立人が特許異議の申立てをすることができない信義則上の義務を負っていたとはいえない。
エ 信義則違反についての判断のまとめ
したがって、本件特許異議申立は、特許権者が主張する信義則違反により、違法となるものではない。
2 明確性(取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由1)について
(1)判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から、判断されるべきものである。
(2)本件発明1について
ア 物の発明の特定について
本件発明1は、「鋼管杭」という物の発明である。
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当であるところ、本件発明1の構成1Bにおける「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する」という記載は、鋼管杭という物を製造するのに先立つ、設計方法に関する記載であるから、出願時において本件発明1に係る鋼管杭をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するのでなければ、発明が明確であるという要件を満たさないと判断されるべきものである。
イ 構成1Bが鋼管杭を構造又は特性により直接特定する構成である場合
ここで、本件発明1の構成1Bには、上記の設計方法に関する記載に続けて、「・・・よう構成する」と記載されている。
そして、本件発明1の構成1Bが、設計方法に関する記載に続けて「・・・よう構成する」と記載していることにより、構成1Bの全体として、本件発明1に係る鋼管杭を構造又は特性により直接特定しているのであれば、直接の特定が不可能又は実際的でないという事情がなくとも、構成1Bにより本件発明1が不明確とならない場合があり得る。
しかしながら、本件発明1の構成1Bが、本件発明1に係る鋼管杭を構造又は特性により直接特定するものである場合、「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成する」という記載によって、鋼管杭のどのような構造又は特性を直接特定しているのか、特許請求の範囲の記載からは理解することができない。また、「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定するよう構成する」という記載は、「・・・よう構成する」以前の記載が鋼管杭を実際に製造する以前の設計段階の記載であるため、技術常識を考慮しても、設計段階の記載に「・・・よう構成する」という記載を加えたことによって、鋼管杭のどのような構造又は特性を直接特定しているのか、明確に理解することができない。
この点に関し、本件明細書等には、上記第2の2に示した記載及び図示がある。
しかしながら、本件明細書等の記載は、杭径に応じて構成1Bで言及するパラメータを決定することを述べているにとどまり、そのような設計に関する記載に「・・・よう構成する」という記載を付加することによって、鋼管杭という物の構造又は特性がどのように直接特定されることとなるかを示すものではない。
したがって、本件発明1の構成1Bは、鋼管杭という物の構造又は特性を直接特定する構成として、本件明細書等の記載や図示、及び技術常識を考慮しても、本件発明1に係る鋼管杭の構造又は特性をどのように特定しているのか、第三者にとって明確に理解することができない。
ウ 構成1Bが設計方法により鋼管杭を特定する構成である場合
構成1Bが設計方法により鋼管杭を特定する構成である場合、本件明細書等の記載及び技術常識を考慮しても、本件発明1に係る鋼管杭について、設計方法によることなくその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情は見いだせない。
また、設計方法に係る構成1Bにより、鋼管杭という物の発明がどのように特定されているのか、本件明細書等の記載及び技術常識を考慮しても、第三者にとって明確に理解することができない。
なお、構成1Bを設計方法に関する構成として、さらに検討すると、本件発明1の構成1Ca~1Cc、及び上記第2の2に示した本件明細書等の記載及び図示において、構成1Bで言及されるパラメータのうち、「杭の肉厚」及び「縦溝の長手方向長さ」については、杭径にかかわらず全て同じ範囲となっており、具体例においても肉厚は全て1.8mm、縦溝の長手方向長さは全て55mmとなっている。また、本件明細書等に記載がない、杭径が40mm未満や130mmを超える場合について、特許権者は実施可能な鋼管杭を製造することが困難である旨を主張していることを踏まえると(上記第3の4(2))、結局のところ本件明細書等において、「杭の肉厚」及び「縦溝の長手方向長さ」は、杭径にかかわらず全て同じ範囲または同じ値にしているというほかはない。
このように、本件明細書等の実施形態及び具体例において、杭径にかかわらず全て同じ範囲または同じ値とするパラメータについて、特許請求の範囲において「杭径に応じて・・・決定する」と記載することは、パラメータを決定する設計方法として、結局のところどのような手法をとることを構成1Bが特定しているのか、本件明細書等の記載及び技術常識を考慮しても、第三者にとって明確に理解することができない。
エ 特許権者の意見書における主張について
特許権者は、令和7年7月17日差出の意見書において、本件発明1の構成1Bは、物の発明として構成1Ca~構成1Ccの構造、数値が記載されていることをあらかじめ説明した一文に過ぎず、製造方法や設計方法に関する記載ではないから、本件発明1は明確である旨を主張している(同意見書第8頁~最終行)。
しかしながら、本件発明1において、構成1Bは、構成1Ca~構成1Ccとは別途に特定される構成であり、かつ、構成1B中に、「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する」という、鋼管杭という物を製造するのに先立つ設計方法に関する記載を有するのであるから、構成1Bについて、構成1Ca~構成1Ccの構造、数値が記載されていることを単に説明した一文であって、構成1B自体は無意味な構成である旨の特許権者の主張は、妥当なものとして採用することができない。
また、特許権者は令和7年3月5日差出の意見書において、構成1Bを公知発明との相違点とした相違点4に関し、本件明細書の段落【0004】~【0006】及び【0011】の記載に言及し、本件発明1は構成1Bにより課題を解決し格別の効果を奏するものであって、構成1Bは設計事項ではない旨を主張している(同意見書第4頁下から5行~第8頁第11行)。このように、本件発明1が有する構成であって、かつ、特許権者が当該構成により格別の効果を奏するから設計事項ではない旨を主張する構成である、構成1Bについて、明確性の観点では単なる説明文に過ぎないから本件発明1を不明確とするものではない旨をいう特許権者の主張は、失当である。
さらに、構成1Bについて、「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する」という、鋼管杭という物を製造するのに先立つ設計方法に関する記載に続けて、「・・・よう構成する」と記載されていることを考慮し、構成1Bの全体として、本件発明1に係る鋼管杭を構造又は特性により直接特定しているとして検討した場合についても、上記イに示したとおり、本件発明1は、構成1Bにより、鋼管杭の構造又は特性をどのように特定しているのか、第三者にとって明確に理解することができないものである。
また、構成1Bについて、設計方法により本件発明1に係る鋼管杭を特定する構成である場合には、上記ウに示したとおり、物の発明である本件発明1に係る鋼管杭について、設計方法によることなくその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情は見いだせないから、構成1Bは物の発明である本件発明1を不明確とするものである。さらに、上記ウになお書きで指摘したように、構成1Bは、構成1Ca~1Cc及び本件明細書等の記載及び図示において、杭径にかかわらず全て同じ範囲または同じ値に設定するパラメータについて、「杭径に応じて・・・決定する」という、誤解誘導的な記載をするものであるから、その点でも本件発明1を不明確とするものである。
したがって、明確性についての上記特許権者の主張は採用することができず、本件発明1の明確性について、上記イ及びウの判断を変更すべき事情はない。
オ 小括
上記イ~エのとおり、本件発明1の構成1Bは、本件明細書等の記載や図示、技術常識、及び特許権者の主張を考慮しても、鋼管杭という物をどのように特定しているのか、第三者にとって明確に理解することができない。
そうであるところ、本件発明1の構成1Bは、特許権者が杭径に応じて最適な支持力を得るための実証実験と試作を繰り返して鋼管杭のパラメータを数値限定して発明の完成に至ったとし、たとえ当業者であっても想到容易でなく、顕著な効果を奏する旨を主張する構成であるから、構成1Bについて上記イ及びウのとおり第三者にとって不明確であれば、第三者に不測の不利益を及ぼすことは明らかである。
したがって、本件発明1は、上記(1)の基準に照らして、特許法36条6項2号の規定を満たさない。
(3)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5が有する本件発明1の構成について、上記(1)で指摘したとおり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、本件発明2~5についても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
したがって、本件発明2ないし5は、上記(1)の基準に照らして、特許法36条6項2号の規定を満たさない。
(4)本件発明6について
本件発明6が有する構成6Bは、本件発明1が有する構成1Bと同様の内容である。
本件発明6は、鋼管杭の製造方法の発明であるから、物の発明である本件発明1の場合と異なり、鋼管杭のパラメータを決定する設計手法を製造段階の一部として含むことによって、直ちに発明が不明確となるものではない。
しかしながら、本件発明6の構成6Bに関する本件明細書等の記載では、上記(2)ウに指摘したとおり、「杭の肉厚」及び「縦溝の長手方向長さ」は、杭径にかかわらず全て同じ範囲または同じ値にしているというほかはない。
そうであるところ、本件明細書等の実施形態及び具体例において、杭径にかかわらず全て同じ範囲または同じ値とするパラメータについて、特許請求の範囲において「杭径に応じて・・・決定する」と記載することは、パラメータを決定する手法として、結局のところどのような手法をとることを構成6Bが特定しているのか、本件明細書等の記載及び技術常識を考慮しても、第三者にとって明確に理解することができない。
しかも、本件発明6の構成6Bは、特許権者が杭径に応じて最適な支持力を得るための実証実験と試作を繰り返して鋼管杭のパラメータを数値限定して発明の完成に至ったとし、たとえ当業者であっても想到容易でなく、顕著な効果を奏する旨を主張する構成であるから、構成6Bについて上記のとおり第三者にとって不明確であれば、第三者に不測の不利益を及ぼすことは明らかである。
したがって、本件発明6は、上記(1)の基準に照らして、特許法36条6項2号の規定を満たさない。
(5)明確性についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 進歩性欠如(取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由2、及び特許異議申立理由)について
(1)甲1について
ア 公知性について
(ア)当審に顕著な事実
甲1に係る判定請求書による判定請求(以下、単に「判定請求」という。)は、判定2023-600009号(以下、単に「判定」という。)として、審理された。
上記判定請求の趣旨は、判定請求人が実施する予定の技術について、特許第6734686号の特許発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めたものである。
上記判定において、判定請求人から営業秘密の申出はされておらず、甲1に係る判定請求書に記載された内容は、第三者による閲覧について、判定請求人から閲覧の制限がされなかったものである。
上記判定請求書について、特許第6734686号の特許権者である判定被請求人に対し、請求書副本の送達通知が令和5年3月30日に発送され、同月31日に送達されたことが報告されている。
上記判定請求書副本の送達通知には、「判定請求人の提出した判定請求書副本を送達します。この判定請求に対して答弁がありましたら、答弁書の正本1通及びその副本2通を、この請求書副本発送の日から30日以内に提出して下さい。」と記載されていた。
上記判定被請求人は、本件特許の特許権者、及び発明者とは、別の者である。
以上は、当審に顕著な事実である。
(イ)特許法29条1項1号にいう「公然知られた」ものとなったか否か
上記(ア)のとおり、甲1に係る判定請求書について、請求書副本の送達通知が令和5年3月30日に発送され、同月31日に送達されたこと、及び、上記請求書副本の送達通知において、判定被請求人に対し、発送の日から30日以内が答弁書の提出期限とされたことから、甲1に係る判定請求書の副本に記載された内容は、いずれも本件特許の特許出願前である、送達がされた令和5年3月31日、または、遅くとも上記答弁書の提出期限までには、判定被請求人に知られていたということができ、これに反する証拠はない。
ここで、甲1で示されている判定請求の趣旨は対象特許に係る特許発明の技術的範囲への属否であり、判定請求書には判定請求人が実施する予定の技術の説明が含まれているところ、当該技術が営業秘密に該当することを示す記載はない。また、請求人が営業秘密の申出を行っていない限りは、判定請求人は、判定請求の時点で判定請求書の原本が第三者により閲覧されることを制限する予定がなく、その後も第三者による閲覧を制限しなかったということができる。
そして、判定請求手続においては、判定請求書の副本が判定被請求人に送達されるところ、判定被請求人が当該副本を第三者に開示することを明示的に制限することは行われていないことから、判定被請求人は秘密保持義務を負わされることなく答弁が求められたといえる。加えて、甲1の判定請求書の内容から判断できる限りでは、判定請求人と判定被請求人とは競合的な立場にあったと考えられ、当事者間で上記判定請求書に記載された内容を秘密とすべき特別な事情が存在したとも認められないから、上記判定請求書に記載された内容について、判定被請求人には明示的にも黙示的にも秘密保持義務はなかったと認められ、これに反する証拠はない。
したがって、甲1に係る判定請求書の内容は、秘密保持義務があったといえない判定被請求人に副本の送達がされ、判定被請求人がその内容を現実に知り得た時点で、特許法29条1項1号にいう、本件特許の特許出願前に公然知られたものになったと認められる。
イ 公然知られた内容、及び公然知られた発明
(ア)甲1に係る判定請求書の記載及び図示
甲1に係る判定請求書には、次の記載、写真及び図示がある(下線は当審において付した。以下、同様。)。
なお、下記c~eの写真及び図は、判定被請求人に送付された副本に近い状態のものとして、特許庁が有する判定請求書正本における写真及び図を示した。
a 第2頁下から6行~最終行
「請求人が将来施工する杭状地盤補強工法にて、請求人が使用する予定の鋼管杭が、イ号の説明に示す金属管の製造方法(以下「イ号製造方法」という)によって製造されるところ、当該鋼管杭が特許第6734686号(甲第1号証、甲第4号証)に係る溝付き金属管の製造方法の特許発明(以下「本件特許発明」という)を侵害するものでないことを確認するために判定を請求する。」
b 第6頁第5行~最終行
「イ号製造方法は以下の通りである。
「電縫管製造装置におけるブレークダウンロールの前の段階で金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成し、
ブレークダウンロールによる湾曲成形の後に溶接工程で両エッジを突き合わせ溶接して円管にし、
続く整形工程で整形して溝付き金属管を製造する円形の溝付き金属管の製造方法であって、
金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成する手段として、金属板を、ブレークダウンロールの前の段階で、平行に配置した2本の溝付けロールであって、周方向に沿って複数のV字状の突起を設けた溝付けロールと、周方向に沿って複数のV字状の窪みを設けた溝付けロールと、からなる2本の溝付けロール、を有する金属板加工装置において、
前記金属板加工装置における2本の溝付けロールの、前記複数のV字状の突起と前記複数のV字状の溝の間を、前記溝付けロールの軸方向と直交する方向に通過させる
円形の溝付き金属管の製造方法。」」
c 第7頁左上の写真
「
[図:0001429997000006.jpg]
」
d 第7頁右上の写真
「
[図:0001429997000007.jpg]
」
e 第7頁の図
「
[図:0001429997000008.jpg]
」
(イ)認定事項、及び看取される事項
a 上記(ア)aにおける「請求人が使用する予定の鋼管杭」が、上記(ア)bにおける「円形の溝付き金属管の製造方法」により製造されることから、甲1に係る判定請求書の副本より、「円形の溝付き金属管からなる鋼管杭」が、公然知られたものとなったと認められる。
b 上記(ア)bにおける「金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」は、上記(ア)eの図示より、金属管の長手方向に形成されることが明らかであるから、甲1に係る判定請求書の副本より、上記aの鋼管杭について、「金属管の長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を有」することが、公然知られたものとなったと認められる。
c 上記(ア)eの図示より、上記bに係る「V字状の溝」について、「金属管の外周面に凹んで形成」されることが看取され、当該看取される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
d 上記(ア)c及びdの写真より、上記bに係る「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」を形成する「溝付けロール」の上側ロールについて、ロール全周に形成された溝がロール幅方向(当審注;金属管の周方向)に略等間隔であると看取されること、及び、上記(ア)dの写真より、「溝付けロール」の下側ロールについて、ロール周方向(当審注;金属管の長手方向)に略同じ位置となる突起がロール幅方向(当審注;金属管の周方向)に一つ置きに形成されており、上記(ア)cの写真も踏まえると上記突起もロール幅方向(当審注;金属管の周方向)に略等間隔となると理解されることから、上記bに係る「V字状の溝」について、金属管の「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝は金属管の周方向に沿って略等間隔に配置され」ることが、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
e 上記(ア)eの図示より、上記bに係る「細長いV字状の溝」について、「一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部とは、略同一円周上に配置され」る様子が看取され、当該看取される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
f 上記(ア)cの写真における「溝付けロール」の上側ロールの溝の位置がロール幅方向(当審注;金属管の周方向)に略等間隔であること、及び同写真にうける「溝付けロール」の下側ロールの突起について、ロール周方向(当審注;金属管の長手方向)に略同じ位置である突起がロール幅方向(当審注;金属管の周方向)に一つ置きであり、ロール周方向(当審注;金属管の長手方向)に隣り合う突起はロール幅方向(当審注;金属管の周方向)で略中間位置になると理解されること、並びに、上記のとおり理解される、金属管の「一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝は、長手方向で隣り合う複数の細長い溝に対して、周方向で略中間位置に配置されて」いるという事項は、上記(ア)eの図示とも整合することから、上記の事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
g 上記a~fに認定する構成を有する「鋼管杭」について、上記(ア)bに示すイ号製造方法に係る「円形の溝付き金属管」の「製造方法」によって製造することが理解され、当該理解される「円形の溝付き金属管からなる鋼管杭の製造方法」の発明は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
h 上記gに係る「円形の溝付き金属管からなる鋼管杭の製造方法」について、上記(ア)bに示す「イ号製造方法」の前半部は、実施する順に各工程を区切って「ステップ」と表現すると、
「電縫管製造装置におけるブレークダウンロールの前の段階で金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成するステップ、
ブレークダウンロールによる湾曲成形の後に溶接工程で両エッジを突き合わせ溶接して円管にするステップ、
続く整形工程で整形して溝付き金属管を製造するステップ」を有することが理解される。
そして、上記の理解される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
i 上記gに係る「円形の溝付き金属管からなる鋼管杭の製造方法」について、上記(ア)bに示す「イ号製造方法」の後半部は、上記hにおける「細長いV字状の溝を形成するステップ」で用いられる装置、及び当該装置を用いて行う具体的工程を示すものであり、整理すると、
「細長いV字状の溝を形成するステップでは、金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成する手段として、金属板を、ブレークダウンロールの前の段階で、平行に配置した2本の溝付けロールであって、周方向に沿って複数のV字状の突起を設けた溝付けロールと、周方向に沿って複数のV字状の窪みを設けた溝付けロールと、からなる2本の溝付けロール、を有する金属板加工装置を用い、
前記金属板加工装置における2本の溝付けロールの、前記複数のV字状の突起と前記複数のV字状の溝の間を、前記溝付けロールの軸方向と直交する方向に通過させる」
ことが、理解される。
そして、上記の理解される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
j 上記(ア)c及びdの写真より、上記iに係る「2本の溝付けロール」のうち、上側の溝付けロールである「周方向に沿って複数のV字状の窪みを設けた溝付けロール」について、「複数のV字状の窪みが、上側の溝付けロールのロール周面のロール軸方向所定位置に、ロール全周に亘って形成」されていると理解され、当該理解される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
k 上記(ア)c及びdの写真より、上記iに係る「2本の溝付けロール」のうち、下側の溝付けロールである「周方向に沿って複数のV字状の突起を設けた溝付けロール」について、「複数のV字状の突起が、上側の溝付けロールの溝に対応する位置の下側の溝付けロールの周面に、所定の長さ、高さ及び幅をもって、下側の溝付けロールのロール軸方向の複数の位置に形成」されていると理解され、当該理解される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
l 上記(ア)cの写真において下側の溝付けロールが突起を有していること、上記(ア)c及びdの写真において上側の溝付けロールが溝を有していること、及び、上記(ア)dの写真において、溝付けロールから出た金属板の上面に凸部が形成されている様子が看取されることから、上記iに係る「金属板加工装置」を「通過」して上記hに係る「ブレークダウンロールによる湾曲形成」のために送り出される金属板は、「上面に凸部が形成された金属板」として「金属加工装置から送り込まれる」ことが、理解される。
そして、上記の理解される事項は、甲1に係る判定請求書の副本より、公然知られたものとなったと認められる。
(ウ)公然知られた発明
a 鋼管杭に着目して
上記(ア)及び(イ)より、鋼管杭に着目して、次の発明(以下、「公知発明」という。)が、本件特許の出願前に、公然知られたものとなったと認められる。
<公知発明>
円形の溝付き金属管からなる鋼管杭であって、
金属管の長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を有し、
上記V字状の溝は、金属管の外周面に凹んで形成されており、同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝は金属管の周方向に沿って略等間隔に配置され、一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部とは、略同一円周上に配置され、一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝は、長手方向で隣り合う複数の細長い溝に対して、周方向で略中間位置に配置されている、
鋼管杭。
b 鋼管杭の製造方法に着目して
また、上記(ア)及び(イ)より、鋼管杭の製造方法に着目して、次の発明(以下、「公知製法発明」という。)が、本件特許の出願前に、公然知られたものとなったと認められる。
<公知製法発明>
公知発明に係る鋼管杭の製造方法であって、
電縫管製造装置におけるブレークダウンロールの前の段階で金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成するステップ、
ブレークダウンロールによる湾曲成形の後に溶接工程で両エッジを突き合わせ溶接して円管にするステップ、
続く整形工程で整形して溝付き金属管を製造するステップを有し、
細長いV字状の溝を形成するステップでは、金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成する手段として、金属板を、ブレークダウンロールの前の段階で、平行に配置した2本の溝付けロールであって、周方向に沿って複数のV字状の突起を設けた溝付けロールと、周方向に沿って複数のV字状の窪みを設けた溝付けロールと、からなる2本の溝付けロール、を有する金属板加工装置を用い、
前記金属板加工装置における2本の溝付けロールの、前記複数のV字状の突起と前記複数のV字状の溝の間を、前記溝付けロールの軸方向と直交する方向に通過させ、
前記2本の溝付けロールのうち、周方向に沿って複数のV字状の窪みを設けた溝付けロールは、複数のV字状の窪みが、上側の溝付けロールのロール周面のロール軸方向所定位置に、ロール全周に亘って形成されたものであり、周方向に沿って複数のV字状の突起を設けた溝付けロールは、複数のV字状の突起が、上側の溝付けロールの溝に対応する位置の下側の溝付けロールの周面に、所定の長さ、高さ及び幅をもって、下側の溝付けロールのロール軸方向の複数の位置に形成されたものであり、
ブレークダウンロールによる湾曲形成のため、上面に凸部が形成された金属板が、前記金属加工装置から送り込まれる、
円形の溝付き金属管からなる鋼管杭の製造方法。
(2)甲2~甲9について
ア 甲2について
本件特許の出願より前に発行された甲2には、次の記載及び図示がある。
(ア)「【意匠に係る物品の説明】本物品は、主に、鋼管等にディンプル加工等を施して製造されるものであり、例えば、看板等を支持するための化粧支柱として設けられたり、地盤等に鋼管杭等として打ち込まれるものである。本物品は、長手方向の長さを1m程度~5m程度等として、適宜の寸法で用いられる。本物品は、鋼管等を圧延したままの黒管の状態や、鋼管等の外表面を亜鉛めっきや合成樹脂等で被覆した状態で用いられる。本物品は、管本体の周方向で3列に形成されて長手方向に隣り合った2組の溝部が、管本体の周方向で位置をずらして設けられる。」
(イ)【正面図】
「
[図:0001429997000009.jpg]
」
(ウ)【A-A拡大断面図】
「
[図:0001429997000010.jpg]
」
イ 甲3について
本件特許の出願より前に発行された甲3には、上記ア(ア)に甲2について示したのと同様の「意匠に係る物品の説明」とともに、次の図示がある。
(ア)【正面図】
「
[図:0001429997000011.jpg]
」
(イ)【A-A拡大断面図】
「
[図:0001429997000012.jpg]
」
ウ 甲4について
本件特許の出願より前に発行された甲4には、上記ア(ア)に甲2について示したのと同様の「意匠に係る物品の説明」とともに、次の図示がある。
(ア)【正面図】
「
[図:0001429997000013.jpg]
」
(イ)【A-A拡大断面図】
「
[図:0001429997000014.jpg]
」
エ 甲5について
本件特許の出願より前に発行された甲5には、上記ア(ア)に甲2について示したのと同様の「意匠に係る物品の説明」とともに、次の図示がある。
(ア)【正面図】
「
[図:0001429997000015.jpg]
」
(イ)【A-A拡大断面図】
「
[図:0001429997000016.jpg]
」
オ 甲6について
本件特許の出願より前に発行された甲6には、上記ア(ア)に甲2について示したのと同様の「意匠に係る物品の説明」とともに、次の図示がある。
(ア)【正面図】
「
[図:0001429997000017.jpg]
」
(イ)【A-A拡大断面図】
「
[図:0001429997000018.jpg]
」
カ 甲7について
本件特許の出願より前に発行された甲7には、上記ア(ア)に甲2について示したのと同様の「意匠に係る物品の説明」とともに、次の図示がある。
(ア)【正面図】
「
[図:0001429997000019.jpg]
」
(イ)【A-A拡大断面図】
「
[図:0001429997000020.jpg]
」
キ 甲8について
本件特許の出願より前に公開された甲8には、次の記載がある。
なお、甲8は、本件明細書が言及する先行技術(特許第4109698号公報)に係る出願の公開公報であり、下記に摘記する記載のほか、上記第2の3に示した【図1-1】~【図1-3】も示されている。
(ア)「【0006】
本発明は、上記の問題点を有利に解消でき、地盤もしくはコンクリート、セメント、あるいはソイルセメント(以降、地盤あるいはコンクリート等と称す)に埋設された鋼管杭がその周面と地盤あるいはコンクリート等との摩擦力を増大させ、大きな支持力を発揮させることができ、しかもその鋼管杭を製造する際には、通常の鋼管製造時と同じ生産速度で製造できる窪み付き鋼管杭とその製造方法、並びに前記鋼管杭を使用した複合鋼管杭を提供するものである。」
(イ)「【0009】
本発明は、埋め込み杭工法により、鋼管杭を地盤中あるいはコンクリート等中に埋設施工する場合に適用される鋼管杭とその製造方法であり、鋼管杭は、複数の箇所にその周状に凹部を有し、その凹部が鋼管杭とコンクリート等あるいは地盤との摩擦力を高める。またその製造方法は、鋼管製造ラインにおいて造管後、熱間あるいは温間で、押圧手段により鋼管表面に凹部を付与するのみでオンラインでも製造可能であり、生産性は通常の造管工程とかわらないまま摩擦力の優れた鋼管杭を製造できるという優れた効果を奏する。」
(ウ)「【0011】
本発明の鋼管杭は、後述するように熱間あるいは温間で凹部を形成するので鋼管の肉厚が2mm以上でも容易に製造可能であり、厚肉なので鋼管杭として例えば地盤に回転させながら打ち込む際に、鋼管にねじれ力が作用し、屈曲したり、先端が潰れたりすることがない。また、鋼管杭として実用可能な外径50mm以上のものも容易に製造できる。
従って、本発明の鋼管杭においては、肉厚2mm以上、外径50mm以上の厚肉・大径の鋼管が素材となるが、その使用に際しては地盤中あるいはコンクリート等中に埋設施工されることから、十分な強度を保持する必要がある。特に、本発明の鋼管杭では、円周上に凹部を設けているため、その位置での強度低下を最小限に抑えることが要求される。
【0012】
鋼管杭の凹部については、図2(a)、(b)、(c)、(d)に示す如く、基本的には断面三角形状の場合と、断面四角形状の場合が考えられる。半円状、及び台形状の場合はほぼ三角形と等しいと考えてもよい。いずれの場合も、凹部の深さ(最も深い部分の深さを指す)(H)は、鋼管周面と地盤あるいはコンクリート等との摩擦力を得るために0.005D(但し、D:鋼管外径)以上は必要である。しかし、0.2D超で摩擦力向上の効果も飽和してしまうので、凹部深さは0.005D~0.2Dとする。さらに凹部の幅(B)は、上記摩擦力を得るためには0.015D以上必要であるが、2D超では、摩擦力向上効果が小さいため2D以下とする必要がある。
更に、上記の前提のもとで、更に、凹部形状の最適化を図る上で、下記の事項を規定することが重要である。すなわち、
(1)凹断面形状が三角形状の時、B/H=3~20
(2)凹断面形状が四角形状の時、B/H=4~20
(3)凹断面形状が半円状、台形状の時、B/H=3~20
である。」
(エ)「【0018】
図4は通常の鍛接管の製造ラインを示す図である。
所望の幅にスリットされた鋼帯を#1ロールで断面円形状に成形し、#2ロールでその両端部を高熱に加熱し、圧接し、衝合する。衝合された管をそれ以降のロールにより所定の寸法に縮径するために絞り込み、そして切断機により所定の長さに切断し、以降のロールで形状を整えて鍛接管が製造される。」
ク 甲9について
本件特許の出願より前に発行された甲9には、次の記載がある(申立人提出の訳文を元に、当審で訳を付した。)。
「
[図:0001429997000021.jpg]
」
(【0003】
図1に示すように、従来技術による角管(1)(四角の角管を例に示し説明する)は、4つの面と角を有する形態であり、図2に示すように、板状の原材料(2)を供給-板状の原材料(2)を円形にフォーミング-円形フォーミング管(3)の対向する継手を溶接-溶接部の整理(切削等)-円形管(4)を四角形にフォーミングして角管(1)を製造する。もちろん製造された角管(1)は切断の工程を経て使用される。)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と公知発明とを、対比する。
(ア)構成1Aについて
公知発明における「鋼管杭」は、本件発明1における「鋼管杭」に相当し、公知発明において「鋼管杭」をなす「金属管」は、本件発明1における「鋼管本体」に相当する。
公知発明において、「金属管の長手方向に」有する「複数の断続する細長いV字状の溝」であって、「金属管の外周面に凹んで形成」されている「上記V字状の溝」は、本件発明1において、「鋼管本体の外周面に」形成された「本体の長手方向に凹陥した縦溝」に、相当する。
公知発明において、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」が「金属管の周方向に沿って略等間隔に配置され」る構成と、本件発明1において、「縦溝」が「周方向に沿って複数箇所に等間隔で形成」される構成とは、「縦溝」が「周方向に沿って複数箇所に略等間隔で形成」される点で、共通する。
公知発明において、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」は、周方向に「等間隔で」形成されるか否かは措くとして、本件発明1における「周方向の縦溝群」に、相当する。
公知発明において、「一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部とは、略同一円周上に配置され」る構成は、「一つの長手方向の細長い溝」及び「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」の「端部」から「長手方向で隣り合う細長い溝の端部」まで、「長手方向」にはほぼ間隔が空かないことが明らかであることを踏まえると、本件発明1において「周方向の縦溝群」が「本体の長手方向に連続」する構成と、「周方向の縦溝群」が「本体の長手方向に略連続」する点で、共通する。
公知発明において、「一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝は、長手方向で隣り合う複数の細長い溝に対して、周方向で略中間位置に配置されている」構成は、「一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝」を含む「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」が、「長手方向で隣り合う複数の細長い溝」を含む「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」に対して、長手方向に順に周方向位置を異ならせていることが明らかであることを踏まえると、本件発明1において、「周方向の縦溝群」が、「本体の長手方向に」「順に周方向位置を異ならせて形成」されている構成に、相当する。
整理すると、本件発明1の構成1Aと、公知発明が有する上記に言及した構成とは、
「鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に略等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に略連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭」
という点で一致する。
そして、「縦溝」の「周方向」の間隔、及び「周方向の縦溝群」の「長手方向」の連続性に関し、本件発明1では「等間隔」及び「連続」と特定されているのに対し、公知発明ではそのようなものか不明である点で、両者は相違する。
また、「鋼管杭」の用途に関し、本件発明1では「コンクリートに打設される」と特定されているのに対し、公知発明ではそのようなものか不明である点で、両者は相違する。
(イ)構成1Bについて
本件発明1の構成1Bは、上記2(2)に指摘したとおり、物の発明である鋼管杭を構造又は特性により直接特定する構成である場合、及び、物の発明である鋼管杭を製造方法に先立つ設計方法により特定する構成である場合のいずれであっても、不明確である。
しかしながら、本件発明1は、構成1Bの特定を有するのに対し、公知発明はそのようなものか不明である点で、両者は相違する。
(ウ)構成1Ca~1Ccについて
本件発明1の構成1Ca~1Ccに関して、各々「杭径」の値が異なっているから、個々の「鋼管杭」という物についてみれば、一つの「鋼管杭」が構成1Ca~1Ccの全てを同時に満たすことが特定されているものではない。
また、本件発明1の構成1Ca~1Ccは、「杭径」が「40mmから70mm未満」であるときには構成1Caに記載されるパラメータ群を、「杭径」が「70mmから100mm未満」であるときには構成1Cbに記載されるパラメータ群を、「杭径」が「100mmから130mm」であるときには構成1Ccに記載されるパラメータ群を、満たすことを特定するが、請求項1におけるその他の記載を考慮しても、「杭径」が「40mm」未満であることや「130mm」を超えることを排除する記載はない。
そして、構成1Ca~1Cb、及び請求項1におけるその他の記載において、「杭径」が「40mm」未満または「130mm」を超える場合について、「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったその他のパラメータは、何ら特定されていない。
しかしながら、本件発明1は、構成1Ca~1Ccの特定を有するのに対し、公知発明はそのようなものか不明である点で、両者は相違する。
(エ)構成1Dについて
公知発明において、「鋼管杭」であることは、本件発明1において、「鋼管杭」である構成1Dに、相当する。
(オ)小括
上記(ア)~(エ)より、本件発明1と公知発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「(1A’、1D)鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に略等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に略連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭。」
そして両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
「縦溝」の「周方向」の間隔に関し、
本件発明1では、「縦溝を、周方向に沿って・・・等間隔」と特定されているのに対し、
公知発明では、そのようなものか不明である点。
<相違点2>
「周方向の縦溝群」の「長手方向」の連続性に関し、
本件発明1では、「周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続」と特定されているのに対し、
公知発明では、そのようなものか不明である点。
<相違点3>
「鋼管杭」の用途に関し、
本件発明1では、「コンクリートに打設される」と特定されているのに対し、
公知発明では、そのようなものか不明である点。
<相違点4>
「鋼管杭」の「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータについて、
本件発明1においては、「杭径に応じて」「決定するよう構成する」と特定されているのに対し、
公知発明においては、そのようなものか不明である点。
<相違点5>
「鋼管杭」の「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータについて、
本件発明1においては、「杭径を40mmから70mm未満としたとき」の各数値範囲が構成1Caに、「杭径を70mmから100mm未満としたとき」の各数値範囲が構成1Cbに、「杭径を100mmから130mmとしたとき」の各数値範囲が構成1Ccに特定されているのに対し、
公知発明においては、そのようなものか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点1について
上記相違点1について、判断する。
鋼管杭の外周に設けるディンプルについて、長手方向の同じ位置に設ける複数のディンプルを、周方向で略等間隔に配置することは、上記(2)ア~カに摘記した甲2~甲7の各【A-A拡大断面図】に示されるように、周知技術である。
そして、公知発明においても、上記周知技術と同様に、写真及び図面から看取される範囲で、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」は「金属管の周方向に沿って略等間隔」と理解されるところ、公知発明において、当該溝の周方向の間隔を積極的に異ならせるべき事情はないから、上記周方向の間隔を等間隔とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術に照らして、格別顕著なものとは認められない。
(イ)相違点2について
上記相違点2について、判断する。
鋼管杭の外周に設ける、長手方向に順に周方向位置を異ならせるディンプルについて、長手方向に隣り合うディンプルを、長手方向に間隔を空けて配置すること、長手方向の端部を略同一周上に配置すること、長手方向に重複を持たせて配置することは、上記(2)ア~カに摘記した甲2~甲7の各【正面図】に示されるように、いずれも周知技術である。
そうであるところ、「一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部と」を「略同一円周上に配置」している公知発明において、「略同一円周上」を「同一円周上」とし、もって長手方向に隣り合う「縦溝」について長手方向で見て途切れる箇所がない連続のものとすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術に照らして、格別顕著なものとは認められない。
(ウ)相違点3について
上記相違点3について、判断する。
周面に凹部を設けた鋼管杭について、たとえば上記(2)キに摘記した甲8の段落【0006】及び【0009】の記載に示されるように、地盤またはコンクリートは、代表的な埋設(打設)の対象であることが技術常識であるところ、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、公知発明に係る「鋼管杭」について、技術常識から想定される代表的な打設の対象を単に特定したに過ぎず、実質的な相違点ではない。
また、仮に実質的な相違点として扱ったとしても、公知発明に係る「鋼管杭」について、打設の対象をコンクリートとすることは、上記技術常識から当業者が適宜に選択し得た設計事項に過ぎず、そうしたことによる効果も格別顕著なものとは認められない。
(エ)相違点4について
上記相違点4について、判断する。
a 「鋼管杭」という物を構造又は特性により直接特定する構成として
上記相違点4に係る本件発明1の構成は、本件発明1の構成1Bであるところ、構成1Bは、上記2(2)イに示したとおり、「鋼管杭」という物を構造又は特性により直接特定する構成として、結局のところどのような構造又は特性を直接特定しているのか、不明確である。
しかしながら、構成1Bで言及される杭径に関し、1つの鋼管杭の杭径を同時に複数の値とすることは、本件明細書等の記載をみても前提とされておらず、そのようなことは技術常識でもないから、最終的に製造された個々の鋼管杭の杭径は、(a)40mm未満、(b)40mmから70mm未満、(c)70mmから100mm未満、(d)100mmから130mm、(e)130mmを超える、のいずれかである。
そして、構成1Bで「杭径に応じて・・・決定するよう構成する」と言及されるパラメータである「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」について、請求項1の記載において、上記(b)~(d)のいずれかの杭径の場合には構成1Ca、構成1Cbまたは構成1Ccに特定されるいずれかの数値範囲であることが特定され、上記(a)又は(e)の杭径の場合には数値範囲が特定されないことは理解されるものの、構成1Bで言及されるパラメータについて、構成1Bが特許請求の範囲に記載されていることによって、さらに具体的に数値等が特定されるとは理解されない。また、構成1Bが特許請求の範囲に記載されていることによって、構成1Bで言及されるパラメータ以外の点で、個々の鋼管杭の構造又は特性が直接特定されていると理解することもできない。
したがって、「鋼管杭」という物の発明として、上記相違点4に係る本件発明1の構成1Bは、公知発明との間で実質的な相違を生じる構成ではない。
b 構成1Bが設計方法により「鋼管杭」という物を特定する構成である場合
上記相違点4に係る本件発明1の構成1Bについて、「鋼管杭」という物を設計方法により特定する構成である場合について、判断する。
上記2(2)ア及びウに示したとおり、物の発明である鋼管杭を、製造方法に先立つ設計方法により特定することは、設計方法によることなく鋼管杭の構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情がなければ、発明を明確に特定するものではないところ、本件発明1に係る鋼管杭についてそのような事情は見いだせない。
しかしながら、以下では鋼管杭を設計する段階の思想として、「杭径」に応じて「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータを決定することについて、さらに判断する。
ただし、上記2(2)ウに指摘したとおり、本件発明1の構成1Bは、構成1Ca~構成1Cc、及び本件明細書等における記載を考慮しても、「杭径」の範囲が異なる場合に「杭の肉厚」や「縦溝の長手方向長さ」の数値範囲を異ならせることを要さないから、上記相違点4で言及されるパラメータを「杭径」に応じて決定する設計思想さえあれば、これらのパラメータの数値範囲を「杭径」に応じて異ならせる必要はないものとして、ここでは判断する。
公知発明に係る「鋼管杭」を製品として設計するにあたり、公知発明に係る「鋼管杭」が当然に有するパラメータである「杭径」、「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータを決定することは当然であるところ、「鋼管杭」の代表的なパラメータである「杭径」に応じて、その他のパラメータである「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」を適宜に決定することは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
c 上記bにおいて、さらに、少なくとも一部のパラメータについては「杭径」に応じて異ならせる場合について
上記相違点4に係る本件発明1の構成1Bは、上記b及び上記2(2)ウに指摘したとおり、「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータについて、「杭径」に応じて上記パラメータの数値範囲を変更することを要さないが、少なくとも一部のパラメータの数値範囲を「杭径」に応じて変更する場合について、さらに検討する。
上記(2)キに摘記した甲8の段落【0012】の記載に示されるように、鋼管杭の外周に設ける凹部の深さ及び幅を、鋼管の外径に応じて、適宜異なる値に設計することは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
d 相違点4の小括
上記a~cのとおり、上記相違点4は実質的な相違点でないか、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そして、鋼管杭が当然に有するパラメータであって、実際に鋼管杭を製造するうえでは当然に決定する必要があるパラメータについて、代表的なパラメータである杭径に応じて決定する、という設計思想自体は、当業者であれば適宜にそうするであろう設計事項というほかはなく、事前に予想される範囲を超える格別顕著な効果を奏するものとはいえない。
なお、本件発明1において具体的に特定されるパラメータの数値範囲については、後記相違点5において判断する。
(オ)相違点5について
上記相違点5について、判断する。
a 個々の「鋼管杭」について、「杭径」が40mm未満、または130mmを超える場合について
上記相違点5に係る本件発明1の構成1Ca~1Ccは、上記ア(ウ)に示したとおり、個々の「鋼管杭」が「杭径」が構成1Ca~1Ccの全てを同時に満たすことを特定するものではない。また、構成1Ca~1Cb、及び請求項1におけるその他の記載を考慮しても、「杭径」が「40mm」未満であることや「130mm」を超えることを排除する記載はなく、「杭径」が40mm未満、または130mm超の「鋼管杭」については、「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータの数値範囲を、何ら特定するものではない。
そして、公知発明に係る「鋼管杭」について、極めて小さい杭径として40mm未満とすること、または、比較的大きい杭径として130mm超とすることも適宜に想定され得るところ、かような想定される40mm未満、または130mm超の杭径とし、もって杭径が40mm未満または130mm超の場合にはその他のパラメータについて何ら特定がされていない、上記相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
b 個々の「鋼管杭」について、構成1Caを満たすものとする場合について
(a)「杭径」及び「杭の肉厚」について
上記(2)キに摘記した甲8の段落【0011】の記載に示されるように、「鋼管杭」としては「肉厚2mm以上、外径50mm以上の厚肉・大径」のものが、「地盤に回転させながら打ち込む際に、鋼管にねじれ力が作用し、屈曲したり、先端が潰れたりすることがない」という意味で「実用」的であるところ、上記(ウ)のとおり打設の対象をコンクリートとし、固化する前に打設する場合には必ずしも特段大径である必要がないことを考慮して、「杭径」として比較的小型の50mm程度とし、また「杭」の「肉厚」として上記甲8に記載される「2mm以上」の「厚肉」のものより若干薄めの1.6~1.9mm程度とし、もって本件発明1の構成1Caに係る「杭径」及び「杭の肉厚」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(b)「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」について
公知発明に関し、上記(1)イ(ア)eに示した図から看取される溝の数は、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」の数として、「複数」として最小の2つであるところ、上記(a)のとおり、「杭径」を「鋼管杭」として比較的小型の50mm程度とする際に、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」の数として、上記(1)イ(ア)eに示す図から看取される「複数」として最小の2つ程度とし、もって本件発明1の構成1Caに係る「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(c)「縦溝の長手方向長さ」について
本件発明1において、「杭径」やその他のパラメータに関わらず、構成1Ca~構成1Ccで特定される「縦溝の長手方向長さ」はいずれも「30~60mm」であり、当該数値範囲に特別顕著な技術的意義や効果などがあるとは認められないものである。
ここで、公知発明に関し、上記(a)及び(b)で述べたように、上記(1)イ(ア)eに示す図の例は、鋼管杭の径として比較的小型の50mm程度の場合と整合するところ、上記(1)イ(ア)eに示す図からは、「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」の長さは、鋼管杭の径と略同程度であることが看取される。
公知発明において、「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」について、それぞれの「溝」の長さを適宜に選択するうえで、比較的小型の鋼管杭の径と略同程度の50mm程度とし、もって本件発明1の構成1Caに係る「縦溝の長手方向長さ」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(d)「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」について
上記(2)キに摘記した甲8の段落【0012】には、鋼管杭の外径をDとして、杭の凹部の深さを0.005~0.2Dとし、凹部の幅を0.015倍以上とすることが、記載されている。
公知発明において、溝の深さと周方向幅とを適宜に決定する必要があるところ、上記(a)のとおり「杭径」を50mm程度とした場合について、溝の深さを杭径の0.005~0.2倍の範囲内で適宜好適に選択し、具体的には0.25mm~10mm程度の範囲内から数mm程度の溝の深さを選択し、もって本件発明1の構成1Caに係る「3~6mm」程度の「縦溝の深さ」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
また公知発明において、上記(a)のとおり「杭径」を50mm程度とした場合について、溝の幅を杭径の0.015倍以上であり、かつ「同じ長手方向位置」に「複数の細長い溝」を「金属管の周方向に沿って略等間隔に」配置するのに支障がない程度の範囲内で適宜好適に選択し、具体的には0.75mm以上かつ周方向に複数本略等間隔に配置するのに支障がなく「細長い」といえる幅の範囲内から10mm強程度の周方向の溝の幅を選択し、もって本件発明1の構成1Caに係る「10~16mm」程度の「縦溝の周方向幅」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
c 個々の「鋼管杭」について、構成1Cbを満たすものとする場合について
(a)「杭径」及び「杭の肉厚」について
「杭径」について、上記b(a)に検討した50mm程度より大きな値として、70mm~100mm程度とするとともに、「杭」の「肉厚」について、固化する前のコンクリートに打設することを考慮して、上記b(a)に検討したのと同様の1.6~1.9mm程度とし、もって本件発明1の構成1Cbに係る「杭径」及び「杭の肉厚」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(b)「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」について
上記aに検討したとおり、「杭径」を70mm~100mm程度とするに際し、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」の数について、杭の外周に設ける溝の間隔が空きすぎないよう、上記b(b)に検討した2より大きい、3~5程度とし、もって本件発明1の構成1Cbに係る「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(c)「縦溝の長手方向長さ」について
上記(a)に検討したとおり、「杭径」を70mm~100mm程度とするに際し、「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」の長さについて、上記b(c)に検討した50mm程度から特には変更せず、もって本件発明1の構成1Cbに係る「縦溝の長手方向長さ」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(d)「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」について
上記(a)に検討したとおり、「杭径」を70mm~100mm程度とするに際し、上記b(d)に検討したのと同様に、溝の深さを杭径の0.005~0.2倍の範囲内で適宜好適に選択し、また、溝の幅を杭径の0.015倍以上であり、かつ「同じ長手方向位置」に「複数の細長い溝」を「金属管の周方向に沿って略等間隔に」配置するのに支障がない程度の周方向の幅となるよう、適宜好適に選択して、もって本件発明1の構成1Cbに係る「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
d 個々の「鋼管杭」について、構成1Ccを満たすものとする場合について
(a)「杭径」及び「杭の肉厚」について
「杭径」について、上記b(a)及び上記c(a)に検討したより大きな値として、100mm~130mm程度とするとともに、「杭」の「肉厚」について、固化する前のコンクリートに打設することを考慮して、上記b(a)及び上記c(a)に検討したのと同様の1.6~1.9mm程度とし、もって本件発明1の構成1Ccに係る「杭径」及び「杭の肉厚」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(b)「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」について
上記(a)に検討したとおり、「杭径」を100mm~130mm程度とするに際し、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」の数について、杭の外周に設ける溝の間隔が空きすぎないよう、上記c(b)に検討したより多めの4~7程度とし、もって本件発明1の構成1Ccに係る「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(c)「縦溝の長手方向長さ」について
上記(a)に検討したとおり、「杭径」を100mm~130mm程度とするに際し、「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」の長さについて、上記b(c)及び上記c(c)に検討した50mm程度から特には変更せず、もって本件発明1の構成1Ccに係る「縦溝の長手方向長さ」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(d)「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」について
上記(a)に検討したとおり、「杭径」を100mm~130mm程度とするに際し、上記b(d)及び上記c(d)に検討したのと同様に、溝の深さを杭径の0.005~0.2倍の範囲内で適宜好適に選択し、また、溝の幅を杭径の0.015倍以上であり、かつ「同じ長手方向位置」に「複数の細長い溝」を「金属管の周方向に沿って略等間隔に」配置するのに支障がない程度の周方向の幅となるよう、適宜好適に選択して、もって本件発明1の構成1Ccに係る「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(カ)小括
上記(ア)~(オ)のとおりであるから、本件発明1は、構成1Bについて、物の発明ではあっても構成1Bで言及する少なくとも一部のパラメータの数値範囲を「杭径」に応じて異ならせる設計思想が背景にあることを考慮し、また、構成1Ca~1Ccについてあらゆる「杭径」の場合について検討しても、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術、並びに甲8に示される技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
ウ 特許権者の意見書における主張について
(ア)特許法29条1項1号にいう「公然知られた」ことについて
特許権者は、令和7年3月5日差出の意見書、及び同年7月17日差出の意見書において、甲1に係る判定請求書の内容が特許法29条1項1号の公然知られたものとなったかについて意見を述べるとともに、本件異議申立て自体が信義則違反により違法である旨を主張している。
しかしながら、甲1に係る判定請求書の副本は、本件出願前に、守秘義務のない第三者である判定被請求人に実際に送付されているから、甲1に関し特許法29条1項1号についていう特許権者の主張は、採用することができない。
なお、本件特許異議申立てについて信義則違反をいう特許権者の主張も、上記1に示したとおり、採用することができない。
(イ)意匠公報の参酌について
特許権者は令和7年3月5日差出の意見書、及び同年7月17日差出の意見書において、意匠は美観と看者に対する印象に関するものであるから、甲2~甲7の意匠公報を進歩性否定の理由とすることは不当である旨を主張している。また特許権者は、本件発明1等に係る溝部の位置等は、最適な支持力を得ることができる等の作用効果を奏する縦溝であるために必要な要素であるところ、意匠公報の図面を見ただけでは、そうした作用効果を奏することを想到することは到底不可能である旨を主張している。
しかしながら、公知発明に係る鋼管杭が有する「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」に類似する「ディンプル」について、上記イ(ア)で言及したように、周方向で略等間隔に配置すること、及び、上記イ(イ)で言及したように、長手方向に隣り合うディンプルについて、長手方向に間隔を空けて配置するか、長手方向の端部を略同一周上に配置するか、長手方向に重複を持たせて配置することは、いずれも文章による特段の説明がなくとも、甲2~甲7の図面から看取されるものである。また、甲2~甲7の意匠公報の図面は、いずれも公知発明に係る鋼管杭が有する「長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝」に類似する「ディンプル」の配置や概略の形状を開示するところ、甲2~甲7に開示される「ディンプル」の配置や概略の形状が、鋼管杭の「デインプル」の本来の機能である杭の支持力を得るうえで、格別不都合がない好適なものであることは、当業者であれば図面を見ただけで十分に理解できるものである。
そして、上記イ(ア)で判断したとおり、公知発明において「金属管の周方向に沿って略等間隔」である「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」について、甲2~甲7に示される周知技術においても「ディンプル」が「周方向で略等間隔に配置」されていること、及び溝の周方向の間隔を積極的に異ならせるべき事情はないことを考慮して、溝の周方向の間隔を等間隔とすることは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。この点に関し、略等間隔である溝の間隔を等間隔とすることについて、意匠公報の図面から作用効果の相違を読み取れなければ当業者にとって容易に想到できないものとなるような事情はない。また本件明細書等を考慮しても、溝の周方向の間隔について、略等間隔であるか等間隔であるかによって、当業者が予測できない格別顕著な効果の相違を生じることは、開示されていない。
したがって、進歩性の検討において意匠公報を参酌することが不当である旨をいい、また意匠公報の図示から効果が読み取れるか否かの観点から相違点1の容易想到性について意匠公報を参酌できない旨をいう特許権者の主張は、採用することができない。
上記イ(イ)で判断した、「一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部と」を「略同一円周上に配置」している公知発明において、「略同一円周上」を「同一円周上」とし、もって長手方向に隣り合う「縦溝」について長手方向で見て途切れる箇所がない連続のものとする、相違点2の容易想到性についても、同様である。
よって、進歩性の検討において意匠公報を参酌することができず、甲2~甲7を考慮して本件発明1が容易想到となることはない旨をいう特許権者の主張は、採用することができない。
(ウ)構成1Bによる効果について
a 物の構造または特性を特定する構成として
特許権者は令和7年3月5日差出の意見書において、本件発明1は構成1Bに係る設計思想により、「上記特許文献1に記載の鋼管杭では、窪みの配置や窪みの形状が複雑で多様であるため、鋼管製造ラインを多様化せざるを得ず製造にコストがかかるという問題がある。さらに、窪みの配置や窪みの形状に基づいて杭径に応じた支持力を予め計算することが難しいという問題がある。」(段落【0004】)という課題を解決し、「簡素な構成で杭径に応じて最適な支持力を得ることができる」(段落【0005】)及び「製造ラインを簡素化することができるので、コストダウンを図ることができる。」(段落【0011】)という効果を得られる旨を主張している。
しかしながら、構成1Bは、鋼管杭という物の発明である本件発明1を特定するうえで、上記2(2)アに指摘したとおり、「杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する」という、鋼管杭という物を製造するのに先立つ、設計方法に関する記載を含むから、記載不備を有する構成である。
そして、構成1Bについて、鋼管杭を構造又は特性により直接特定する構成として検討しても、上記2(2)イに指摘したとおり、本件発明1に係る個々の鋼管杭という物の構造又は特性を、どのように直接特定しているのか不明であるから、本件発明1に係る鋼管杭が、構成1Bによって、個々の物の構造又は特性として、特許権者が主張するような効果を奏するものではない。
なお、特許権者は令和7年7月17日差出の意見書において、構成1Bについて、鋼管杭という物を製造するのに先立つ設計方法に関する記載ではなく、構成1Ca~構成1Ccに物の発明の構造、数値が記載されていることをあらかじめ説明した一文に過ぎないから、構成1Bは本件発明1を不明確とするものではない旨を主張している。
しかしながら、上記2(2)イ及びエに説示したとおり、構成1Bを単なる説明文であって無意味な構成であると解することは妥当ではないし、仮に構成1Bを単なる説明文であって無意味な構成と整理すると、構成1Bにより、個々の鋼管杭としての本件発明1が、特許権者が主張するような効果を奏するものではない。
そして、構成1Bについて、無意味な説明文、及び設計方法に関する構成のいずれでもなく、鋼管杭という物を構造又は特性により直接特定する構成として検討した場合について、記載不備を有する構成であって、個々の物の構造又は特性として、特許権者が主張するような効果を奏する構成とはいえないことは、先に述べたとおりである。
b 設計方法により物を特定する構成として
構成1Bが設計方法により鋼管杭を特定する構成である場合、上記2(2)ウに指摘したとおり、構成1Bは不明確な構成であって、本件発明1に係る鋼管杭が、構成1Bによって、物として、特許権者が主張するような効果を奏するとはいえない。
また、構成1Bに関し、特許権者が言及する設計方法についてさらに検討しても、上記段落【0004】、【0005】及び【0011】等に記載される課題の解決や効果は、本件明細書が先行技術とする特許第4109698号公報において、【図1-1】~【図1-3】の(a)~(g)(上記第2の3参照)に示す多種多様な鋼管杭を製造するラインを全て構築し、かつ、一つの鋼管杭のパラメータを選択する際にも同図の(a)~(g)に示す全ての対応の鋼管杭についてパラメータ計算を全て行う場合に比較すれば、製造ラインやパラメータの計算が若干簡素となる趣旨と解することはできるとしても、上記(1)イ(ア)eの図に示される公知発明と比較した場合の、有利な効果や技術的意義を示すものとはいえない。
そして、公知発明を出発点として、実際の杭を製造するうえで当然に設定する必要があるパラメータである、杭径や杭の肉厚、周方向縦溝群に含まれる縦溝の数、縦溝の長手方向長さ、縦溝の深さ及び縦溝の周方向幅といったパラメータについて、代表的なパラメータである杭径に応じて決定することは、上記イ(エ)bに指摘したとおり、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度であって、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない
これに対し、特許権者が上記に主張する、段落【0004】、【0005】及び【0011】等の効果は、公知発明とは異なる多種多様なタイプの鋼管杭を必ず製造し、また多種多様なタイプの鋼管杭について全てのパラメータ計算を全て行う場合に比較した効果であって、公知発明との対比において構成1Bに係る構成が奏する効果ではない。
なお、特許権者は令和7年7月17日差出の意見書において、仮に段落【0004】、【0005】及び【0011】等の効果が、公知発明とは異なる多種多様なタイプの鋼管杭を必ず製造し、また多種多様なタイプの鋼管杭について全てのパラメータ計算を全て行う場合に比較した効果であれば、本件発明1は他の鋼管杭と異なる作用効果を奏する旨を主張している。
上記特許権者の主張における「他の鋼管杭」が、どのような鋼管杭を意図しているのかは定かでないが、特許異議申立理由及び先の取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由2は、甲1を主たる証拠として、公知発明との対比における進歩性欠如に係るから、構成1Bに依拠した効果については、特許権者が主張するところの「他の鋼管杭」との対比においてではなく、公知発明との対比において検討されるべきである。
そして、本節の冒頭に述べたとおり、構成1Bは、設計方法により鋼管杭を特定する構成として不明確な構成であるから、本件発明1に係る鋼管杭が、構成1Bによって、物として、特許権者が主張するような効果を奏するとはいえない。また、構成1Bに係る設計方法についてさらに検討しても、公知発明において、甲1の第7頁の写真に掲載される溝付きロールに対応し、同第7頁の図に図示される溝付き金属管を離れて、多種多様なタイプの鋼管杭を必ず製造し、また多種多様なタイプの鋼管杭について全てのパラメータ計算を全て行う必然性があるとはいえない。そして、上記イ(エ)bに指摘したとおり、公知発明に係る「鋼管杭」を製品として設計するにあたり、公知発明に係る「鋼管杭」が当然に有するパラメータである「杭径」、「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータを決定することは当然であるところ、「鋼管杭」の代表的なパラメータである「杭径」に応じて、その他のパラメータである「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」を適宜に決定することは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。また、そうしたことにより、多種多様なタイプの鋼管杭を必ず製造し、また多種多様なタイプの鋼管杭について全てのパラメータ計算を全て行う場合に比較して、製造すべき杭のパラメータ設定が若干簡略化されるという効果は、杭の設計に従事する当業者であれば十分に予測し得た効果に過ぎず、何ら格別のものとは認められない。
したがって、上記の特許権者の主張は、採用することができない。
(エ)杭径が40mm未満または130mm超の場合について
特許権者は令和7年3月5日差出の意見書、及び同年7月17日差出の意見書において、本件発明1の進歩性を検討するうえで、杭径が40mm未満または130mm超の場合について判断することは不当である旨を主張している。
しかしながら、本件発明1を特定する請求項1において、「杭径を40mmから70mm未満としたときに、・・・」、「杭径を70mmから100mm未満としたときに、・・・」、及び「杭径を100mmから130mmとしたときに、」という記載は、杭径が40mm未満または130mm超とはならないことを特定しているものではなく、その余の請求項1の記載を考慮しても、杭径が40mm未満または130mm超とはならないことは特定されていない。
したがって、上記イ(オ)aにおいて杭径が40mm未満または130mm超の場合について判断したことが不当である旨をいう特許権者の主張は、本件発明1を特定する特許請求の範囲の請求項1の記載に基づかないものであり、失当である。
(オ)構成1Ca~構成1Ccの数値範囲を選択する効果について
特許権者は令和7年3月5日差出の意見書、及び同年7月17日差出の意見書において、杭径を40mmから70mm未満としたときの構成1Caに特定する数値範囲、杭径を70mmから100mm未満としたときの構成1Cbに特定する数値範囲、及び杭径を100mmから130mmとしたときの構成1Ccに特定する数値範囲は、特許権者が実証試験や試作品製造を繰り返すことでようやく到達した数値範囲であって、顕著な効果を奏するものであるから、公知発明を出発点として想到容易ではない旨を主張している。
しかしながら、上記イ(オ)b~dの各(a)及び各(c)に示したとおり、構成1Ca~構成1Ccに特定される「杭径」、「杭の肉厚」及び「縦溝の長手方向長さ」の数値範囲は、公知発明を出発点として、当業者が適宜に選択し得たであろう値と特段相違するものではない。
また、上記イ(オ)b~dの各(b)に示したとおり、構成1Ca~構成1Ccに特定される「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」の数値範囲は、公知発明を出発点として、杭の径が大きくなっても杭の外周に設ける溝の間隔が空きすぎないような数とする、という観点から、当業者が適宜に選択し得たであろう値と特段相違するものではない。
また、上記イ(オ)b~dの各(d)に示したとおり、構成1Ca~構成1Ccに特定される「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」の数値範囲は、公知発明を出発点として、甲8に示される杭の外径に対する凹部の深さと幅の数値範囲の指標を参酌して、当業者が適宜に選択し得たであろう値と特段相違するものではない。
そして、本件明細書等の記載を考慮しても、構成1Ca~1Ccに示される各パラメータの数値範囲について、当該数値範囲の内と外とで格別顕著な効果の相違が生じることは示されていない。また、特許権者が主張する、自身が実証試験や試作品製造を繰り返すことでようやく到達した数値範囲である旨の主張も、実証実験や試作品製造を繰り返すこと自体に労力を要することは認められるとしても、構成1Ca~1Ccに示される数値範囲自体が公知発明を出発点として当業者が適宜に選択するであろう数値範囲と乖離していることや、当該数値範囲の内と外とで事前に予測し得ないような異質または顕著な効果の相違を生じることを示すものとはいえない。
したがって、上記の特許権者の主張は、採用することができない。
(カ)小括
上記(ア)~(オ)のとおりであるから、令和7年3月5日差出の意見書、及び同年7月17日差出の意見書における特許権者の主張について考慮しても、本件発明1の進歩性について、上記ア及びイの対比・判断を変更すべき事情は見いだせない。
(4)本件発明2~5について
ア 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を有し(構成2B)、さらに、構成2Aを付加したものである。
(ア)本件発明2において付加された構成について
本件発明2において付加された、構成2Aについて、対比・判断する。
上記(3)イ(イ)において、本件発明1と公知発明との相違点2について示したとおり、「一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部と」を「略同一円周上に配置」している公知発明において、「略同一円周上」を「同一円周上」とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そうであるところ、公知発明において、上述のとおり、「一つの長手方向の細長い溝の両端部と、長手方向で隣り合う細長い溝の端部と」を「同一円周上」に配置すると、本件発明2において付加された構成2Aに相当することとなる。
したがって、公知発明において、本件発明2において付加された構成2Aに係る構成とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
(イ)本件発明2が有する、本件発明1の構成について
本件発明2が有する、本件発明1の構成については、上記(3)に対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
よって、本件発明2は、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術、並びに甲8に示される技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1または本件発明2の構成を有し(構成3B)、さらに、構成3Aを付加したものである。
(ア)本件発明3において付加された構成について
本件発明3において付加された、構成3Aについて、対比・判断する。
公知発明において、「一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝は、長手方向で隣り合う複数の細長い溝に対して、周方向で略中間位置に配置されている」ところ、「周方向」での「略中間位置」を「中間位置」とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そうであるところ、公知発明において、上述のとおり、「一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝」を、「長手方向で隣り合う複数の細長い溝」に対して、「周方向」で「中間位置」に配置すると、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」が「長手方向で隣り合う」「複数の細長い溝」に対して「周方向」で「中間位置」に配置されることとなるから、本件発明3において付加された構成3Aに相当することとなる。
したがって、公知発明において、本件発明3において付加された構成3Aに係る構成とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
(イ)本件発明3が有する、本件発明1または本件発明2の構成について
本件発明3が有する、本件発明1または本件発明2の構成については、上記(3)及び上記アに対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
よって、本件発明3は、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術、並びに甲8に示される技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1または本件発明2の構成を有し(構成4B)、さらに、構成4Aを付加したものである。
(ア)本件発明4において付加された構成について
本件発明4において付加された、構成4Aについて、対比・判断する。
公知発明において、「一つの長手方向位置に配置される複数の細長い溝は、長手方向で隣り合う複数の細長い溝に対して、周方向で略中間位置に配置されている」ところ、「同じ長手方向位置に配置される複数の細長い溝」が「長手方向で隣り合う」「複数の細長い溝」に対して、「周方向」で「略中間位置」となり、角度がずれた配置となっていることが、明らかである。
したがって、本件発明4において付加された構成4Aは、公知発明との対比において、検討すべき新たな相違点を生じる構成ではない。
(イ)本件発明4が有する、本件発明1または本件発明2の構成について
本件発明4が有する、本件発明1または本件発明2の構成については、上記(3)及び上記アに対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
よって、本件発明4は、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術、並びに甲8に示される技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1または本件発明2の構成を有し(構成5B)、さらに、構成5Aを付加したものである。
(ア)本件発明5において付加された構成について
本件発明5において付加された、構成5Aについて、対比・判断する。
公知発明において、「細長い溝」が「V字状」である構成は、本件発明5において付加された構成5Aのうち、「縦溝の断面形状」が「V字状」である選択肢に、相当する。
また、上記(2)キに摘記した甲8の段落【0012】の記載に示されるように、鋼管杭に設ける溝の形状を「台形状」とする選択肢も、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
したがって、本件発明5において付加された構成5Aは、公知発明との対比において、検討すべき新たな相違点を生じる構成ではないか、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度である。
(イ)本件発明5が有する、本件発明1または本件発明2の構成について
本件発明5が有する、本件発明1または本件発明2の構成については、上記(3)及び上記アに対比・判断したとおりである。
(ウ)小括
よって、本件発明5は、公知発明、及び甲2~甲7に示される周知技術、並びに甲8に示される技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と公知製法発明とを、対比する。
(ア)構成6Aについて
上記(3)ア(ア)に示した、本件発明1の構成1Aと公知発明との対比を踏まえると、本件発明6の構成6Aと、公知製法発明の「公知発明に係る鋼管杭の製造方法」である構成とは、「鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に略等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に略連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭の製造方法」である点で、共通する。
(イ)構成6Cについて
a 公知製法発明において、「ブレークダウンロールの前の段階」の「長手方向」を有する「金属板」は、「ブレークダウンロールによる湾曲成形」の前には帯状であることが明らかであること、「鋼管杭」とするから金属板の材質として鋼体であることが明らかであること、及び、加工がなされる前には素材と言い得ることを踏まえると、本件発明6における「帯状鋼体素材」に、相当する。
b 公知製法発明において、「細長いV字状の溝を形成するステップ」で用いる「金属板加工装置」が有する、「2本の溝付けロール」のうち、「複数のV字状の窪みが、上側の溝付けロールのロール周面のロール軸方向所定位置に、ロール全周に亘って形成されたもの」である「周方向に沿って複数のV字状の窪みを設けた溝付けロール」は、ロール周面の「複数のV字状の窪み」が、溝を形成するために通過させる「金属板」の幅に応じた位置に設けられていることが明らかであることを踏まえると、本件発明6において、「帯状鋼体素材の幅に応じてロール周面のロール軸方向所定位置に凹部が全周に亘って形成された第1のロール」に、相当する。
c 公知製法発明において、上記「2本の溝付けロール」のうち、「複数のV字状の突起が、上側の溝付けロールの溝に対応する位置の下側の溝付けロールの周面に、所定の長さ、高さ及び幅をもって、下側の溝付けロールのロール軸方向の複数の位置に形成されたもの」である、「周方向に沿って複数のV字状の突起を設けた溝付けロール」は、「V字状の突起」の「所定の長さ、高さ及び幅」が、「金属板」の「長手方向」に形成される「溝」の長手方向長さ、深さ、及びロールからみて周方向の幅に対応することが明らかであることを踏まえると、本件発明6において、「前記凹部に対応する部位のロール周面に縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とに対応した凸部がロール軸の方向位置を異ならせて形成される第2のロール」に、相当する。
d 公知製法発明において、上記「2本の溝付けロール」を有する「金属板加工装置」は、「2本の溝付けロールの、前記複数のV字状の突起と前記複数のV字状の溝の間を、前記溝付けロールの軸方向と直交する方向に通過させ」ること、及び、「金属板」に「溝」を付ける際に「2本の溝付けロール」間を押圧して圧接していることが明らかであることを踏まえると、本件発明6において、「これら第1のロールと第2のロールとの間に鋼体素材を導入して圧接し、第1のロールの凹部と第2のロールの凸部とにより帯状鋼体素材に縦溝を形成する溝付け押圧装置」に、相当する。また、公知製法発明において、「2本の溝付けロール」が、溝付けを行う際には押圧のためにロール間を接近させ、溝付けを行わない際には押圧の解除のためにロール間を離間させることが明らかであることは、本件発明6において、「第1のロール」と「第2のロール」とが「接離可能に押圧」される構成に、相当する。
e 上記a~dより、公知製法発明は、本件発明6の構成6Cに相当する構成を有する。
(ウ)構成6Dについて
上記(イ)の対比を踏まえると、公知製法発明において、「前記金属板加工装置における2本の溝付けロールの、前記複数のV字状の突起と前記複数のV字状の溝の間を、前記溝付けロールの軸方向と直交する方向に通過させ」ることで、「電縫管製造装置におけるブレークダウンロールの前の段階で金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成するステップ」は、ステップに付す番号は措くとして、本件発明6において、「押圧装置に帯状鋼体素材を導入して圧接し、帯状鋼体素材に縦溝を形成する第2のステップ」である構成6Dに、相当する。
(エ)構成6Eについて
公知製法発明において、「電縫管製造装置におけるブレークダウンロールの前の段階で金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成するステップ」を経た「金属板」が、「ブレークダウンロールによる湾曲形成のため、上面に凸部が形成された金属板」として「前記金属加工装置から送り込まれる」構成は、本件発明6において、「上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材が押圧装置から送り込まれる」構成に、相当する。
公知製法発明において、「ブレークダウンロールによる湾曲成形の後に溶接工程で両エッジを突き合わせ溶接して円管にするステップ」のうち、「溶接」を行う前までの工程は、「湾曲形成」による押し曲げのために押し曲げ装置を用いていることが明らかであること、及び、「溶接」の前に「両エッジを突き合わせ」られ、溶接の有無は別として「円管」形状となっていることが明らかであることを踏まえると、本件発明6において、「押し曲げ装置によりこの帯状鋼体素材を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し管状に成型する第3のステップ」に、相当する。
したがって、公知製法発明は、本件発明6の構成6Eに相当する構成を有する。
(オ)構成6Fについて
公知製法発明において、「ブレークダウンロールによる湾曲成形の後に溶接工程で両エッジを突き合わせ溶接して円管にするステップ」のうち、「溶接」を行う工程は、「両エッジを突き合わせ」て「円管」状にされた「鋼」の部材について、「突き合わせ」た箇所を、溶接装置を用いて溶接することが明らかであることを踏まえると、本件発明6において、「溶接装置により管状に形成された鋼体の衝合部を溶接する第4のステップ」に、相当する。
(カ)構成6Hについて
公知製法発明において、「鋼管杭の製造方法」である構成は、本件発明6において、「鋼管杭の製造方法」である構成に、相当する。
(キ)小括
上記(ア)~(カ)より、本件発明6と公知製法発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「(6A’)鋼管本体の外周面に、本体の長手方向に凹陥した縦溝を、周方向に沿って複数箇所に略等間隔で形成するとともに、この周方向の縦溝群を、本体の長手方向に略連続しかつ順に周方向位置を異ならせて形成した鋼管杭の製造方法であって、
(6C)帯状鋼体素材の幅に応じてロール周面のロール軸方向所定位置に凹部が全周に亘って形成された第1のロールと、この第1のロールと接離可能に押圧され、前記凹部に対応する部位のロール周面に縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とに対応した凸部がロール軸の方向位置を異ならせて形成される第2のロールとを備え、これら第1のロールと第2のロールとの間に鋼体素材を導入して圧接し、第1のロールの凹部と第2のロールの凸部とにより帯状鋼体素材に縦溝を形成する溝付け押圧装置を備え、
(6D)押圧装置に帯状鋼体素材を導入して圧接し、帯状鋼体素材に縦溝を形成する第2のステップと、
(6E)上面に縦溝に対応する突部が形成された帯状鋼体素材が押圧装置から送り込まれると、押し曲げ装置によりこの帯状鋼体素材を押し曲げ両端を付き合わせて衝合し管状に成型する第3のステップと、
(6F)溶接装置により管状に形成された鋼体の衝合部を溶接する第4のステップとを有する、
(6H)鋼管杭の製造方法。」
そして両者は、次の点で相違する。
<相違点A>
鋼管杭に形成される「縦溝」の「周方向」の間隔に関し、
本件発明6では、「縦溝を、周方向に沿って・・・等間隔」と特定されているのに対し、
公知製法発明では、そのようなものか不明である点。
<相違点B>
鋼管杭に形成される「周方向の縦溝群」の「長手方向」の連続性に関し、
本件発明6では、「周方向の縦溝群を、本体の長手方向に連続」と特定されているのに対し、
公知製法発明では、そのようなものか不明である点。
<相違点C>
本件発明6では、「予め杭径に応じて、杭の肉厚と周方向縦溝群に含まれる縦溝の数と縦溝の長手方向長さと縦溝の深さと縦溝の周方向幅とを決定する第1のステップ」を有するのに対し、
公知製法発明では、そのようなものか不明である点。
<相違点D>
本件発明6では、「切断装置により、溶接された管状の鋼体を所望の長さにカットする第5のステップ」を有するのに対し、
公知製法発明では、そのようなものか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点A、及び相違点Bについて
相違点Aは、上記(3)イ(ア)において判断した本件発明1と公知発明との相違点1と同じ相違点であるところ、上記相違点1について判断したのと同様に、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
相違点Bは、上記(3)イ(イ)において判断した本件発明1と公知発明との相違点2と同じ相違点であるところ、上記相違点2について判断したのと同様に、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、いずれも、公知製法発明、及び甲2~甲7に示される周知技術に照らして、格別顕著なものとは認められない。
(イ)相違点Cについて
上記(3)イ(エ)bにおいて、本件発明1と公知発明との相違点4について、設計段階における思想を考慮して判断したのと同様に、公知製法発明に係る「鋼管杭の製造方法」を実際に実施するにあたり、製造される「鋼管杭」が当然に有するパラメータである「杭径」、「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」といったパラメータを決定することは当然であるところ、「鋼管杭」の代表的なパラメータである「杭径」に応じて、その他のパラメータである「杭の肉厚」、「周方向縦溝群に含まれる縦溝の数」、「縦溝の長手方向長さ」、「縦溝の深さ」及び「縦溝の周方向幅」を適宜に決定することは、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、格別顕著なものとは認められない。
(ウ)相違点Dについて
公知製法発明は、「金属板の板長手方向に複数の断続する細長いV字状の溝を形成するステップ」及び「ブレークダウンロールによる湾曲成形の後に溶接工程で両エッジを突き合わせ溶接して円管にするステップ」の後に、「続く整形工程で整形して溝付き金属管を製造するステップ」を有している。
公知発明において、上記3つのステップのうち、先行する2つのステップにより、「溝」の形成及び「円管」とすることまで終わっていることから、続く「整形工程」における整形として、例えば上記(2)キに摘記した甲8の段落【0018】、及び上記(2)クに摘記した甲9の段落【0003】に示されるように、切断装置を用いて先行するステップを経た管を所定の長さで切断する工程を含むものとし、もって上記相違点Dに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、公知製法発明、及び甲8、甲9に示される周知技術に照らして、格別顕著なものとは認められない。
(エ)小括
よって、本件発明6は、公知製法発明、及び甲2~甲9に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 特許権者の意見書における主張について
特許権者は、令和7年3月5日差出の意見書、及び同年7月7日差出の意見書において、本件発明6の構成6Bについて、本件発明1の構成1Bと同様の理由で、当業者が容易に想到できたものではない旨を主張している。
しかしながら、上記(3)イ(ウ)bにおいて、本件発明1の構成1Bについて特許権者が主張する設計方法を考慮して検討したのと同様の理由により、上記特許権者の主張は採用することができない。
第5 結び
以上のとおり、本件発明1~6に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700924