特許異議申立
2022-700375
重機の施工管理システム
- 審判番号
- 2022-700375
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-152953
- 登録番号
- 6964168
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2023年05月29日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】あおみ建設株式会社
- 【権利者代理人】清水 貴光
- 【異議申立人】エポコラム機工 株式会社
- 【異議申立人代理人】内野 美洋
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 太田 恒明
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1651.55 -YAA(E02D) / P1651.537-YAA(E02D) / P1651.121-YAA(E02D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6964168号発明「重機の施工管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6964168号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第6964168号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6964168号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和2年9月11日に出願され、令和3年10月20日にその特許権の設定登録がされ、同年11月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和4年4月28日に特許異議申立人エポコラム機工株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月29日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年9月27日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は同年12月9日に意見書を提出した。
その後、当審は、令和5年1月16日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年3月15日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は同年4月12日に意見書を提出した。
なお、令和5年3月15日に訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたことにより、令和4年9月27日にされた訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
請求項1の記載を訂正する訂正事項1は、以下のとおり、区分することができる。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「前記施工情報を表示する表示画面を生成する表示画面生成部」と記載されているのを、「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面を生成する表示画面生成部」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「前記重機に設けられ、前記表示画面が表示される第1の表示部」と記載されているのを、「前記重機に設けられ、前記第1の表示画面が表示される第1の表示部」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に「前記重機以外に設けられ、前記表示画面が表示される第2の表示部」と記載されているのを、「前記重機以外に設けられ、前記第2の表示画面が表示される第2の表示部」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に「前記施工情報には、施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標及び前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている」と記載されているのを、「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置座標及び施工開始から現在までの前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている」に訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
明細書の【0006】に「上記目的を達成するために、本発明に係る重機の施工管理システムは、重機の施工管理システムであって、前記重機に取り付けられ、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機と、前記GNSS受信機の測定データに基づいて、前記重機の施工部の2次元座標である現在位置座標を算出する演算部と、前記重機が施工する際の施工情報を取得可能なセンサと、前記施工情報が記憶される記憶部と、前記施工情報を表示する表示画面を生成する表示画面生成部と、前記重機に設けられ、前記表示画面が表示される第1の表示部と、前記重機以外に設けられ、前記表示画面が表示される第2の表示部と、を備え、前記施工情報には、施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標及び前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている。」と記載されているのを、「上記目的を達成するために、本発明に係る重機の施工管理システムは、重機の施工管理システムであって、前記重機に取り付けられ、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機と、前記GNSS受信機の測定データに基づいて、前記重機の施工部の2次元座標である現在位置座標を算出する演算部と、前記重機が施工する際の施工情報を取得可能なセンサと、前記施工情報が記憶される記憶部と、互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面を生成する表示画面生成部と、前記重機に設けられ、前記第1の表示画面が表示される第1の表示部と、前記重機以外に設けられ、前記第2の表示画面が表示される第2の表示部と、を備え、前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置座標及び施工開始から現在までの前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている。」に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の【0007】に「この構成によれば、重機のオペレータが、重機に設けられた第1の表示部に表示される表示画面に基づいて、重機による施工を円滑に行うことができる。さらに、重機以外の場所に設けられた第2の表示部で表示画面が共有可能なため、管理事務所や遠隔地等にいる監督者等が簡便に重機による施工の進捗を確認することができる。」と記載されているのを、「この構成によれば、重機のオペレータが、重機に設けられた第1の表示部に表示される第1の表示画面に基づいて、重機による施工を円滑に行うことができる。さらに、重機以外の場所に設けられた第2の表示部で第2の表示画面が共有可能なため、管理事務所や遠隔地等にいる監督者等が簡便に重機による施工の進捗を確認することができる。」に訂正する。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1-1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記施工情報を表示する表示画面」が「第1の表示部」及び「第2の表示部」に「表示される」ものであったところ、当該「前記施工情報を表示する表示画面」について、「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」であることを限定するものである。
よって、訂正事項1-1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1-1は、上記(ア)のとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項1-1により限定された事項は、本件特許の明細書における【0059】~【0061】及び本件特許の図面における【図8】~【図9】に記載された事項であるから、訂正事項1-1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
イ 訂正事項1-2について
(ア)訂正の目的
訂正事項1-2は、訂正事項1-1により、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記施工情報を表示する表示画面」が「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」に限定されたことに伴い、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記表示画面」を「前記第1の表示画面」に限定するものである。
よって、訂正事項1-2は、訂正事項1-1と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1-2は、上記(ア)のとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項1-2により限定された事項は、訂正事項1-1により限定された事項と同様に、本件特許の明細書における【0059】~【0061】及び本件特許の図面における【図8】~【図9】に記載された事項であるから、訂正事項1-2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 訂正事項1-3について
(ア)訂正の目的
訂正事項1-3は、訂正事項1-1により、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記施工情報を表示する表示画面」が「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」に限定されたことに伴い、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記表示画面」を「前記第2の表示画面」に限定するものである。
よって、訂正事項1-3は、訂正事項1-1と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1-3は、上記(ア)のとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項1-3により限定された事項は、訂正事項1-1により限定された事項と同様に、本件特許の明細書における【0059】~【0061】及び本件特許の図面における【図8】~【図9】に記載された事項であるから、訂正事項1-3による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
エ 訂正事項1-4について
(ア)訂正の目的
訂正事項1-4は、訂正事項1-1により、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記施工情報を表示する表示画面」が「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」に限定されたことに伴い、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記施工情報には、」を「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、」に限定するものである。
また、訂正事項1-4は、「施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標及び前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフ」について、「前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置座標及び施工開始から現在までの前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフ」に限定するものである。
よって、訂正事項1-4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1-4は、上記(ア)のとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項1-4により限定された事項は、訂正事項1-1により限定された事項と同様に、本件特許の明細書における【0029】、【0031】、【0038】、【0040】、【0059】~【0061】及び本件特許の図面における【図8】~【図9】に記載された事項であるから、訂正事項1-4による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(エ)申立人の主張について
申立人は、令和5年4月12日付けの意見書において、訂正後の発明特定事項I(当審注:訂正後の発明特定事項については、後記「第3」を参照。)における「前記施工情報」は、発明特定事項Dに「前記重機が施工する際の施工情報を取得可能なセンサ」と記載されていることから、センサで取得された施工情報であり、したがって、発明特定事項Iの「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報」には、GNSS受信機の測定データに基づいて演算部で算出される「前記施工部の現在位置座標」が含まれていないこと、本件明細書等の記載には、発明特定事項Iの「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報」に、GNSS受信機の測定データに基づいて演算部で算出される「前記施工部の現在位置座標」が含まれていないこと、発明特定事項Iの「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置・・・(中略)・・・が少なくとも含まれている」との訂正は、新規事項に該当することを主張する。
しかしながら、発明特定事項Dで特定される「前記重機が施工する際の施工情報」には様々な施工情報があり得るところ、発明特定事項Dは、「センサ」が「取得可能な」情報が「前記重機が施工する際の施工情報」に含まれるもののいずれかであることを特定するものであり、発明特定事項Iにおける「前記施工情報」という部分がセンサで取得されたもののみであることを特定するものではない。すなわち、発明特定事項Iにおける「前記施工情報」という部分は、「前記重機が施工する際の施工情報」のいずれかであれば良く、センサで取得された施工情報に限定されない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
(2)訂正事項2~3について
訂正事項2~3による訂正は、上記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1~2について、請求項2は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~2に対応する訂正後の請求項1~2は、一群の請求項である。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正請求による訂正後の請求項1~2に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1~2に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~2に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、符号A等は分説のため当審で付与した。分説された本件訂正発明の発明特定事項を、符号に基づき以下「発明特定事項A」等という。
「【請求項1】
A 重機の施工管理システムであって、
B 前記重機に取り付けられ、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機と、
C 前記GNSS受信機の測定データに基づいて、前記重機の施工部の2次元座標である現在位置座標を算出する演算部と、
D 前記重機が施工する際の施工情報を取得可能なセンサと、
E 前記施工情報が記憶される記憶部と、
F 互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面を生成する表示画面生成部と、
G 前記重機に設けられ、前記第1の表示画面が表示される第1の表示部と、
H 前記重機以外に設けられ、前記第2の表示画面が表示される第2の表示部と、
を備え、
I 前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置座標及び施工開始から現在までの前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている
J ことを特徴とする重機の施工管理システム。
【請求項2】
K 前記表示画面生成部は、前記施工情報に基づいて、前記第1の表示部に施工内容の適否を前記重機のオペレータに確認を促すメッセージを出力する
L ことを特徴とする請求項1記載の重機の施工管理システム。」
第4 特許異議申立理由、取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、証拠方法として甲第1号証~甲第5号証を提出し、本件特許に対し次の理由を申し立てている。
理由1.(進歩性)本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、本件特許の請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2.(新規事項)本件特許の請求項1についてした補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2018-66183号公報
甲第2号証:特開2003-253661号公報
甲第3号証:特開2017-157879号公報
甲第4号証:特開2003-239287号公報
甲第5号証:特開2019-183382号公報
2 令和4年7月29日付けの取消理由の概要
当審が令和4年7月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1.(明確性)特許請求の範囲における請求項1~2の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1~2に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2.(サポート要件)特許請求の範囲における請求項1~2の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1~2に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
理由3.(新規事項)令和3年8月20日提出の手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許の請求項1~2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
3 令和5年1月16日付けの取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和5年1月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
理由1.(新規事項)令和3年8月20日提出の手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許の請求項1~2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 取消理由(決定の予告)の内容
令和3年8月20日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1には、「前記施工情報には、施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標及び前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている」ことが記載されていた。すなわち、上記記載により、「前記施工情報」には「施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標」及び「前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフ」が含まれることが特定されていた。
これに対し、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0060】には、「監督者等向け施工管理画面」に表示される「施工情報」に、「杭のX座標及びY座標」や「施工開始から現在までのオーガ先端のZ座標の経時的な変化を示すグラフ」が含まれることは記載されている。しかしながら、当初明細書等のその他の記載を見ても、「監督者等向け施工管理画面」に表示される「施工情報」に、「施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標」が含まれることが当初明細書等に記載されているとは認められず、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものとはいえない事項が記載されているものと判断した。
2 当審の判断
本件訂正請求の訂正事項1-4により、特許請求の範囲の請求項1に「前記施工情報には、施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標及び前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている」と記載されているのが、「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置座標及び施工開始から現在までの前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている」に訂正された。
そして、訂正事項1-4により限定された事項は、上記第2の2(1)エ(ウ)に示したとおり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものではない。
3 まとめ
以上のとおり、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものではないから、同法第113条第1号に該当せず、取り消されるべきものではない。
第6 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由
取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由は、上記第4の1で示した理由1(進歩性)である。
なお、当審で通知した、上記第4の2で示した理由1(明確性)、理由2(サポート要件)は、訂正事項1-1~訂正事項1-3による訂正により、解消している。
2 証拠の記載
(1)甲1
ア 記載事項
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、深層混合処理工法、高圧噴射撹拌工法、サンドコンパクションパイル工法などの地盤改良工法による地盤の改良に用いられる地盤改良装置に関し、特に、地盤中に貫入したときの地盤改良具の作業の様子を容易に把握することができる地盤改良装置に関する。」
(イ)「【0014】
本実施形態に関わる地盤改良装置については、地盤改良工法の一つである深層混合処理工法による地盤の改良に用いるものである。
【0015】
地盤改良装置は、図1に示すように、自走可能となる施工機械1と、施工機械1に取り付けて地盤中に貫入されて地盤の改良を行う地盤改良具2と、施工機械1と地盤改良具2の周辺に設置する周辺設備3とから構成される。
【0016】
施工機械1としては、図2に示すように、下部に走行体11を備えると共に、エンジン(図示していない)が搭載されて自走可能となる。また、運転室12を有し、その前部にマスト13を立設している。
【0017】
地盤改良具2としては、図2に示すように、施工機械1のマスト13に沿うように縦に向かう撹拌軸21を2本設ける2軸方式であって、2本の撹拌軸21の上部に回転装置22を有すると共に、撹拌軸21と施工機械1のマスト13の間に昇降装置23を有して、2本の撹拌軸21が回転自在かつ昇降動自在となるようにしている。……また、図3に示すように、2本の撹拌軸21の下端それぞれには複数段、例えば、3段の撹拌翼24を有するようにしている。撹拌翼24を有する2本の撹拌軸21の下端では、上下2本の連結アーム25を介して2本の撹拌軸21が連結されている。さらに、3段の撹拌翼24の最下段の撹拌翼24には固化材であるセメントミルクを噴出する噴出孔26を有している。また、最下段の撹拌翼24と2本の撹拌軸21の最下端それぞれには地盤を掘削するための掘削ビット27を複数有している。」
(ウ)「【0020】
このような構成となる地盤改良装置には、地盤中に貫入したときの地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを検出する検出手段を有する。
検出手段としては、地盤中に貫入する撹拌軸21及び撹拌翼24の深度を検出する深度検出器41、撹拌軸21及び撹拌翼24の地盤中への貫入速度又は引抜速度を検出する速度検出器42、撹拌軸21及び撹拌翼24の回転数を検出する回転検出器43、2本の撹拌軸21に供給される固化材であるセメントミルクの量を検出する第1の流量検出器37aと第2の流量検出器37b、2本の撹拌軸21それぞれに供給される圧縮空気の量をそれぞれ検出するエアー流量検出器32、回転装置22及び昇降装置23それぞれの駆動部の電流値を検出して掘削する地盤の硬さを求める電流検出器44などである。これらの各検出器で検出したデータが、地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データとなる。
【0021】
また、施工機械1の運転室12内には、検出手段である各検出器で検出した地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを演算処理及び加工処理する処理装置部50を有する。処理装置部50としては、例えば、コンピューターであって、検出手段である各検出器で検出した作動状況データに基づいて、作動状況データを演算処理して前処理段階の画像用数値データGpを求め、この求めた画像用数値データGpを加工処理して地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを求める。
【0022】
地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGは、画面上に地盤改良具2の姿図を描いて、これを動かすように視覚的に表現することで、リアルタイムな作業の様子を直感的に理解することができ、要するに見てすぐにイメージを掴めるようにしたものである。具体的には、貫入時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24の深度である貫入状態及び回転状態が表されて地盤を掘削している様子が表されると共に、撹拌翼24の噴出孔26から噴出する固化材であるセメントミルクを噴出している様子も表され、掘削した地盤とセメントミルクが混合撹拌される様子も表される。また、引抜き時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24を引抜いている様子も表される。
【0023】
このような処理装置部50における地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGの具体的な求め方について説明する。
貫入時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24の深度である貫入状態及び回転状態が表されて地盤を掘削している様子、撹拌軸21及び撹拌翼24の貫入が終了している様子、引抜き時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24を引抜いている様子は、検出手段である深度検出器41と速度検出器42と回転検出器43とで検出した各データから求める。また、固化材であるセメントミルクを噴出している様子は、検出手段である2つの流量検出器37a、37bとエアー流量検出器32とで検出した各データから求める。また、掘削した地盤とセメントミルクが混合撹拌される様子は、検出手段である回転検出器43と電流検出器44とで検出した各データから求める。
このようにして、各検出器で検出したデータから地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを求めている。
【0024】
また、地盤改良装置には、処理装置部50にて演算処理及び加工処理して求めた地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを表示する表示手段を有する。
表示手段としては、例えば、施工機械1の運転室12内の運転席の前に設けるモニター60である。
【0025】
なお、表示手段であるモニター60の画面には、地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGが表示されると共に、表示されている画像データGの横に、各検出器で検出した作動状況データの数値Nも同時に表示される。」
(エ)「【0035】
図9は、地盤改良装置における通信手段及び外部表示手段を示す説明図である。
地盤改良装置には、図9に示すように、表示手段で表示された地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データG又は画像データGの前処理段階の画像用数値データGpを送信する通信手段を有する。また、通信手段を介して送信された画像データG又は画像用数値データGpに基づいて画像データGを表示する外部表示手段を有する。通信手段としては、施工機械1の運転室12内に設ける表示手段であるモニター60あるいは処理装置部50に接続して、これらから画像データG又は画像用数値データGpを受け取って無線で送信する送信機71と、送信機71から無線で送信されてきた画像データG又は画像用数値データGpを受信する受信機72と、からなる。なお、送信機71と受信機72では、無線で送信を行っているが、無線の代わりに、有線で行うようにしてもよい。
【0036】
外部表示手段としては、通信手段の受信機72と接続して、受信機72で受信した画像データG又は画像用数値データGpに基づいて画像データGを表示するモニター61である。これは、例えば、持ち運び可能なパソコンやタブレット、あるいは工事現場の事務所内に備えるコンピューター、工事を行う会社の本社や支社その他の関連部署などに備えるコンピューターなどであって、施工機械1の運転室12内以外の場所に配置することができる。
【0037】
このように、通信手段を利用して、地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを外部表示手段であるモニター61の画面に表示させることができ、これにより、地盤の改良の作業を行っている最中でも、施工機械1の運転室12内以外の場所において、オペレーター以外の人たちが外部表示手段であるモニター61の画面を見て、その作業の様子を確認することができる。」
(オ)「【図1】
[図:0001401617000001.jpg]
」
(カ)「【図4】
[図:0001401617000002.jpg]
」
イ 甲1発明
上記アからみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、本件訂正発明の発明特定事項A等に概ね対応させたa等を含む符号を付し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a1 地盤改良工法の一つである深層混合処理工法による地盤の改良に用いる地盤改良装置であって(【0014】)、
地盤改良装置は、自走可能となる施工機械1と、施工機械1に取り付けて地盤中に貫入されて地盤の改良を行う地盤改良具2と、施工機械1と地盤改良具2の周辺に設置する周辺設備3とから構成され(【0015】)、
施工機械1は、運転室12を有し(【0016】)、
地盤改良具2は、施工機械1のマスト13に沿うように縦に向かう撹拌軸21を2本設ける2軸方式であって、2本の撹拌軸21の上部に回転装置22を有すると共に、撹拌軸21と施工機械1のマスト13の間に昇降装置23を有して、2本の撹拌軸21が回転自在かつ昇降動自在となるようにしており、また、2本の撹拌軸21の下端それぞれには3段の撹拌翼24を有するようにしており、さらに、3段の撹拌翼24の最下段の撹拌翼24には固化材であるセメントミルクを噴出する噴出孔26を有しており、最下段の撹拌翼24と2本の撹拌軸21の最下端それぞれには地盤を掘削するための掘削ビット27を複数有しており(【0017】)、
a2,d,f,g 地盤中に貫入したときの地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを検出する検出手段を有し、検出手段は、地盤中に貫入する撹拌軸21及び撹拌翼24の深度を検出する深度検出器41、撹拌軸21及び撹拌翼24の地盤中への貫入速度又は引抜速度を検出する速度検出器42、撹拌軸21及び撹拌翼24の回転数を検出する回転検出器43、2本の撹拌軸21に供給される固化材であるセメントミルクの量を検出する第1の流量検出器37aと第2の流量検出器37b、2本の撹拌軸21それぞれに供給される圧縮空気の量をそれぞれ検出するエアー流量検出器32、回転装置22及び昇降装置23それぞれの駆動部の電流値を検出して掘削する地盤の硬さを求める電流検出器44などであり(【0020】)、
施工機械1の運転室12内には、検出手段である各検出器で検出した地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを演算処理及び加工処理する処理装置部50を有し、処理装置部50は、検出手段である各検出器で検出した作動状況データに基づいて、作動状況データを演算処理して前処理段階の画像用数値データGpを求め、この求めた画像用数値データGpを加工処理して地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを求め(【0021】)、
地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGは、貫入時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24の深度である貫入状態及び回転状態が表されて地盤を掘削している様子が表されると共に、撹拌翼24の噴出孔26から噴出する固化材であるセメントミルクを噴出している様子も表され、掘削した地盤とセメントミルクが混合撹拌される様子も表され、また、引抜き時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24を引抜いている様子も表され(【0022】)、
貫入時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24の深度である貫入状態及び回転状態が表されて地盤を掘削している様子、撹拌軸21及び撹拌翼24の貫入が終了している様子、引抜き時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24を引抜いている様子は、検出手段である深度検出器41と速度検出器42と回転検出器43とで検出した各データから求め、また、固化材であるセメントミルクを噴出している様子は、検出手段である2つの流量検出器37a、37bとエアー流量検出器32とで検出した各データから求め、また、掘削した地盤とセメントミルクが混合撹拌される様子は、検出手段である回転検出器43と電流検出器44とで検出した各データから求め、このようにして、各検出器で検出したデータから地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを求めており(【0023】)、
処理装置部50にて演算処理及び加工処理して求めた地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを表示する表示手段を有し、表示手段は、施工機械1の運転室12内の運転席の前に設けるモニター60であり(【0024】)、
なお、表示手段であるモニター60の画面には、地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGが表示されると共に、表示されている画像データGの横に、各検出器で検出した作動状況データの数値Nも同時に表示され(【0025】)、
h,i 表示手段で表示された地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データG又は画像データGの前処理段階の画像用数値データGpを送信する通信手段を有し、また、通信手段を介して送信された画像データG又は画像用数値データGpに基づいて画像データGを表示する外部表示手段を有し、通信手段としては、施工機械1の運転室12内に設ける表示手段であるモニター60あるいは処理装置部50に接続して、これらから画像データG又は画像用数値データGpを受け取って無線で送信する送信機71と、送信機71から無線で送信されてきた画像データG又は画像用数値データGpを受信する受信機72と、からなり(【0035】)、
外部表示手段としては、通信手段の受信機72と接続して、受信機72で受信した画像データG又は画像用数値データGpに基づいて画像データGを表示するモニター61であり、これは、持ち運び可能なパソコンやタブレット、あるいは工事現場の事務所内に備えるコンピューター、工事を行う会社の本社や支社その他の関連部署などに備えるコンピューターなどであって、施工機械1の運転室12内以外の場所に配置することができ(【0036】)、
通信手段を利用して、地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを外部表示手段であるモニター61の画面に表示させることができ、これにより、地盤の改良の作業を行っている最中でも、施工機械1の運転室12内以外の場所において、オペレーター以外の人たちが外部表示手段であるモニター61の画面を見て、その作業の様子を確認することができる(【0037】)
j 地盤改良装置(【0014】)。」
(2)甲2
申立人は、甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載(甲2の請求項1、請求項2、【0026】、【0036】、【0042】を参照。)されている旨を主張する。なお、本件訂正発明の発明特定事項B等に概ね対応させたb等の符号を付した。
b 重機に取り付けられ、GPS衛星が送信するGPS信号を受信するGPS受信機と、
c GPS受信機の測定データに基づいて、前記重機の施工部の2次元座標である現在位置座標を算出する演算部と、
を備え、
i2 施工情報には、施工開始から現在までの前記施工部の現在位置座標及び前記施工部の積載量の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている
こと。
(3)甲3
申立人は、甲第3号証(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載(甲3の【0026】、【0027】、【0124】、【0125】、図15を参照。)されている旨を主張する。なお、本件訂正発明の発明特定事項Iに概ね対応させた符号i3を付した。
i3 施工情報には、施工開始から現在までの前記施工部の現在位置及び前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている
こと。
(4)甲4
申立人は、甲第4号証(以下「甲4」という。)には、次の事項が記載(甲4の請求項1を参照。)されている旨を主張する。なお、本件訂正発明の発明特定事項B等に概ね対応させたb等の符号を付した。
b 重機に取り付けられ、GPS衛星が送信するGPS信号を受信するGPS受信機と、
c GPS受信機の測定データに基づいて、前記重機の施工部の2次元座標である現在位置座標を演出する演算部と、
を備えていること。
(5)甲5
申立人は、甲第5号証(以下「甲5」という。)には、次の事項が記載(甲5の【0144】、図9を参照。)されている旨を主張する。なお、本件訂正発明の発明特定事項Kに概ね対応させた符号kを付した。
k 前記表示画面生成部は、前記施工情報に基づいて、前記第1の表示部に施工内容の適否を前記重機のオペレータに確認を促すメッセージを出力する
こと。
3 当審の判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)発明特定事項A
甲1発明の「自走可能となる施工機械1」及び「施工機械1に取り付けて地盤中に貫入されて地盤の改良を行う地盤改良具2」は、本件訂正発明1の「重機」に相当する。
また、甲1発明の「地盤改良装置」は、「地盤中に貫入したときの地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを検出する検出手段を有し」、「検出手段である各検出器で検出した地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを演算処理及び加工処理する処理装置部50を有し」、「処理装置部50にて演算処理及び加工処理して求めた地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを表示する表示手段を有」するから、本件訂正発明1の「重機の施工管理システム」であるといえる。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の発明特定事項Aに相当する構成を含む。
(イ)発明特定事項D
甲1発明の「地盤中に貫入する撹拌軸21及び撹拌翼24の深度」、「撹拌軸21及び撹拌翼24の地盤中への貫入速度又は引抜速度」、「撹拌軸21及び撹拌翼24の回転数」、「2本の撹拌軸21に供給される固化材であるセメントミルクの量」、「2本の撹拌軸21それぞれに供給される圧縮空気の量」、「回転装置22及び昇降装置23それぞれの駆動部の電流値」は、いずれも、本件訂正発明1の「前記重機が施工する際の施工情報」に相当する。
また、甲1発明の「地盤中に貫入する撹拌軸21及び撹拌翼24の深度を検出する深度検出器41、撹拌軸21及び撹拌翼24の地盤中への貫入速度又は引抜速度を検出する速度検出器42、撹拌軸21及び撹拌翼24の回転数を検出する回転検出器43、2本の撹拌軸21に供給される固化材であるセメントミルクの量を検出する第1の流量検出器37aと第2の流量検出器37b、2本の撹拌軸21それぞれに供給される圧縮空気の量をそれぞれ検出するエアー流量検出器32、回転装置22及び昇降装置23それぞれの駆動部の電流値を検出して掘削する地盤の硬さを求める電流検出器44などであ」る「地盤中に貫入したときの地盤改良具2の作動状況を示す作動状況データを検出する検出手段」は、本件訂正発明1の「前記重機が施工する際の施工情報を取得可能なセンサ」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の発明特定事項Dに相当する構成を含む。
(ウ)発明特定事項F
上記(イ)で述べたように、甲1発明の「地盤中に貫入する撹拌軸21及び撹拌翼24の深度」、「撹拌軸21及び撹拌翼24の地盤中への貫入速度又は引抜速度」、「撹拌軸21及び撹拌翼24の回転数」、「2本の撹拌軸21に供給される固化材であるセメントミルクの量」、「2本の撹拌軸21それぞれに供給される圧縮空気の量」、「回転装置22及び昇降装置23それぞれの駆動部の電流値」は、いずれも、本件訂正発明1の「前記重機が施工する際の施工情報」に相当するところ、甲1発明の「地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データG」は、「貫入時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24の深度である貫入状態及び回転状態が表されて地盤を掘削している様子が表されると共に、撹拌翼24の噴出孔26から噴出する固化材であるセメントミルクを噴出している様子も表され、掘削した地盤とセメントミルクが混合撹拌される様子も表され、また、引抜き時の地盤改良具2の撹拌軸21及び撹拌翼24を引抜いている様子も表され」るから、甲1発明の「地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データG」で表示されるものは、本件訂正発明1の「前記施工情報を」「表示」する「表示画面」に相当する。
また、甲1発明の「処理装置部50」は、「検出手段である各検出器で検出した作動状況データに基づいて、作動状況データを演算処理して前処理段階の画像用数値データGpを求め、この求めた画像用数値データGpを加工処理して地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGを求め」るから、本件訂正発明1の「前記施工情報を」「表示」する「表示画面を生成する表示画面生成部」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の発明特定事項Fと、「前記施工情報を」「表示」する「表示画面を生成する表示画面生成部」を備える点で共通する。
(エ)発明特定事項G
甲1発明の「モニター60」は、「施工機械1の運転室12内の運転席の前に設ける」ものであり、「地盤改良具の姿図が描かれてリアルタイムな作業の様子を模式的に表した画像データGが表示される」ものであるから、本件訂正発明1の「前記重機に設けられ、」「表示画面が表示される第1の表示部」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の発明特定事項Gと、「前記重機に設けられ、」「表示画面が表示される第1の表示部」を備える点で共通する。
(オ)発明特定事項H
甲1発明の「モニター61」は、「持ち運び可能なパソコンやタブレット、あるいは工事現場の事務所内に備えるコンピューター、工事を行う会社の本社や支社その他の関連部署などに備えるコンピューターなどであって、施工機械1の運転室12内以外の場所に配置することができ」るものであり、「画像データGを表示する」ものであるから、本件訂正発明1の「前記重機以外に設けられ、」「表示画面が表示される第2の表示部」に相当する。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の発明特定事項Hと、「前記重機以外に設けられ、」「表示画面が表示される第2の表示部」を備える点で共通する。
(カ)発明特定事項J
上記(ア)で述べたように、甲1発明の「地盤改良装置」は、本件訂正発明1の「重機の施工管理システム」であるといえる。
よって、甲1発明は、本件訂正発明1の発明特定事項Jに相当する構成を含む。
(キ)相違点
以上のことから、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1(発明特定事項B、C)>
本件訂正発明1は、「前記重機に取り付けられ、GNSS衛星が送信するGNSS信号を受信するGNSS受信機」と「前記GNSS受信機の測定データに基づいて、前記重機の施工部の2次元座標である現在位置座標を算出する演算部」を備えるのに対し、
甲1発明は、そのように構成されていない点。
<相違点2(発明特定事項E)>
本件訂正発明1は、「前記施工情報が記憶される記憶部」を備えるのに対し、
甲1発明は、そのように構成されているか否かが明らかでない点。
<相違点3(発明特定事項F、G、H)>
本件訂正発明1と甲1発明とは、「前記施工情報を」「表示」する「表示画面を生成する表示画面生成部」、「前記重機に設けられ、」「表示画面が表示される第1の表示部」、及び、「前記重機以外に設けられ、」「表示画面が表示される第2の表示部」を備える点で共通するものの、
本件訂正発明1では、「表示画面生成部」が「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面を生成する」ものであり、「第1の表示部」が「前記第1の表示画面が表示される」ものであり、「第2の表示部」が「前記第2の表示画面が表示される」ものであるのに対し、
甲1発明は、そのように構成されていない点。
<相違点4(発明特定事項I)>
本件訂正発明1では、「前記第2の表示画面に表示される前記施工情報には、前記第2の表示画面が生成されたときの前記施工部の現在位置座標及び施工開始から現在までの前記施工部の深度の経時的な変化を示すグラフが少なくとも含まれている」のに対し、
甲1発明は、そのように構成されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
甲1発明の「モニター60」(本件訂正発明1の「第1の表示画面」に相当する。)及び「モニター61」(本件訂正発明1の「第2の表示画面」に相当する。)はいずれも同じ「画像データG」を表示するものであって、甲1発明には、「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」を生成することや、「第1の表示画面」を「第1の表示部」に表示させ、「第2の表示画面」を「第2の表示部」に表示させることが行われないところ、「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」を生成することや、「第1の表示画面」を「第1の表示部」に表示させ、「第2の表示画面」を「第2の表示部」に表示させることは、甲2~5に開示されていない。
したがって、甲1発明において「互いに異なる前記施工情報をそれぞれ表示可能な第1、第2の表示画面」を生成することや、「第1の表示画面」を「第1の表示部」に表示させ、「第2の表示画面」を「第2の表示部」に表示させるようになすことは、当業者が容易に想到できたことであるとは認められない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し更に限定したものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~2に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700375