特許異議申立
2022-700596
ポリプロピレンフィルム、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ
- 審判番号
- 2022-700596
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-511000
- 登録番号
- 6992929
- 請求日
- 2022年07月07日
- 審決日
- 2022年10月24日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】茂田 郁
- 【異議申立人】浅野 幸義
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 分類
- P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J) / P1651.536-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6992929号発明「ポリプロピレンフィルム、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6992929号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6992929号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)2月18日(優先権主張 令和2年2月21日)を国際出願日とする出願であって、令和3年12月13日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、令和4年1月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月7日に特許異議申立人 茂田 郁(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)がされ、同年同月8日に特許異議申立人 浅野 幸義(以下、「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が以下の関係を満たし、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルム。
(Ts-Tf)≦40℃
【請求項2】
熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向の応力が0.01MPaとなる際の温度(Tf)(℃)が100℃以上である、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
125℃で15分間熱処理後の、幅方向の熱収縮率が1.0%以下である、請求項1または2に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)と、昇温後260℃から30℃まで20℃/minで降温した際に得られる結晶化ピーク温度(Tc)(℃)が以下の関係を満たす、請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
(Tm-Tc)≦65℃
【請求項5】
フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られる融解ピーク温度(Tm)(℃)が170℃以上である請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
一方の表面を表面A、もう一方の表面を表面Bとした際に、表面Aの突出山部高さ(SpkA)(nm)と表面Bの突出山部高さ(SpkB)(nm)が以下の関係を満たす、請求項1~5のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
SpkA<SpkB
20nm≦SpkA≦100nm
80nm≦SpkB≦150nm
【請求項7】
少なくとも一方の表面において、0.561×0.561mm2の領域における深さ20nm以上の谷の体積を合計した総谷側体積が50~5,000μm3である、請求項1~6のいずれかに記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、金属膜を有する金属膜積層フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の金属膜積層フィルムを用いてなるフィルムコンデンサ。」
第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
令和4年7月7日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由A1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由A2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由A3(実施可能要件)
本件特許の請求項1に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・甲第1号証の比較例1ないし3のフィルムが本件特許発明1の構成要件を満足していないのであれば、甲第1号証と本願特許の製造方法の違いが当業者であっても理解できないので、本件特許発明1のフィルムを製造するのに過度の試行錯誤が必要である。
したがって、実施可能要件違反であると考えられる。
(4)申立理由A4(サポート要件)
本件特許の請求項1に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・甲第1号証の比較例1ないし3のフィルムは、本願特許発明1の構成要件を満足している蓋然性が極めて高い。しかし、甲第1号証によるとコンデンサにした時の信頼性が悪いとされている。とすると、本願特許発明1は、発明の効果を奏さない範囲を含んでいると考えられる。
したがって、本件特許発明1は、サポート要件を欠如していると考えられる。
(5)証拠方法
甲第1号証:特開2019-172921号公報
証拠の表記は、特許異議申立書Aの記載におおむね従った。以下、「甲A1」という。
2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
令和4年7月8日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由B1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし6、8及び9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由B2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6、8及び9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由B3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記アないしエの点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 本件特許発明1ないし9において、ポリプロピレン樹脂の「メソペンタッド分率(mmmm)」、「冷キシレン可溶分(CXS)」及び「融点」が規定されていないためサポート要件に違反している。
イ 本件特許発明1ないし9において、二軸配向ポリプロピレンフィルムの「両方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)」が規定されていないためサポート要件に違反している。
ウ 本件特許発明1ないし5及び7ないし9において、二軸配向ポリプロピレンフィルムの「一方の表面を表面A、もう一方の表面を表面Bとした際の、表面Aの突出山部高さ(SpkA)(nm)、表面Bの突出山部高さ(SpkB)(nm)、及びSpkAとSpkBの関係」が規定されていないためサポート要件に違反している。
エ 本件特許発明1ないし6、8及び9において、二軸配向ポリプロピレンフィルムの「少なくとも一方の表面において、0.561×0.561mm2の領域における深さ20nm以上の谷の体積を合計した総谷側体積」が規定されていないためサポート要件に違反している。
(4)申立理由B4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・上記(3)アないしエの点で、実施可能要件に違反している。
(5)証拠方法
甲第1号証:特開2018-34510号公報
甲第2号証:特開2017-2307号公報
甲第3号証:特開2019-172921号公報
甲第4号証:特開2003-64193号公報
甲第5号証:特開2000-143902号公報
証拠の表記は、特許異議申立書Bの記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。
第4 特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由について
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲A1に記載された事項等
ア 甲A1に記載された事項
甲A1には、「ポリプロピレンフィルム、金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「【0015】
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現させるために、少なくとも一方の表面における表面突起形状の偏り度Ssk(スキューネス)が-10を超えて100未満である。ここでSskとは、表面の凹凸の偏り度を示したパラメータである。この偏り度Sskは二乗平均平方根高さSqの三乗によって無次元化した基準面において、Z(x,y)の三乗平均を表したもので、歪度(わいど)を意味し、平均面を中心とした山部と谷部の対称性を表す数値である。そのため、偏り度Ssk<0の場合は平均線に対して下側に偏っている、つまり凸の山部よりも凹の谷部が多く存在することを意味する。他方、Ssk>0の場合は平均線に対して上側に偏っている、つまり凹の谷部よりも凸の山部が多く存在することを意味する。そして偏り度Ssk=0の場合は、平均線に対して対称(正規分布)な状態を意味する。本発明者らは鋭意検討することにより、ポリプロピレンフィルムの表面の超平滑な部分に凸となる山部を適度に形成させ、耐電圧低下の原因と考える局所的に厚みが薄くなる凹みの谷部を減らした表面に制御することを着想した。山部を適度に形成することでフィルム同士あるいは搬送ロールとの滑り易さを発現し、さらに谷部を減らした表面とすることでフィルム薄膜箇所を排除するとともに低電圧破壊を抑制でき、コンデンサとしたときの耐電圧の底上げが可能となる。上記した表面制御を行うことで、コンデンサ素子作成時の加工性を向上し、フィルムを巻回もしくは積層したコンデンサとした場合に、フィルムとフィルムとの層間ギャップの均一性を発現でき、特に高電圧用コンデンサ用途において、高温環境下での耐電圧性と信頼性を得られることを見出したものである。」
・「【0079】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
(実施例1)
主要ポリプロピレン樹脂(a1)として、メソペンタッド分率が0.983、融点が168℃で、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が0.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂89.8質量部と、それよりMFRが低いポリプロピレン樹脂(a2)として、融点が162℃で、MFRが0.5g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂10.0質量部と、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、溶融混練を行い、ストランドをダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン樹脂組成物(a)を準備した。
次いで、上記樹脂組成物(a)を温度260℃に設定した単軸の押出機に供給し、樹脂温度260℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを25℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に81℃まで予熱し、引き続き121℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.2倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま170℃の温度(TD延伸温度+11℃)で予熱し、次いで159℃の温度で幅方向に12.8倍延伸し、面積延伸倍率を79倍とした。さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に9%の弛緩を与えながら154℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向を把持したまま145℃で熱処理を行った。最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.4μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。実施例1のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、コンデンサ素子加工性がとても優れ、またコンデンサとしての信頼性、耐電圧はともに優れたものであった。」
・「【0087】
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂(a2)として、融点が163℃で、MFRが8.0g/10分である住友化学(株)製ポリプロピレン樹脂を用い、二軸延伸時の延伸倍率、TD予熱、およびTD延伸温度を表1の条件とした以外は実施例1と同様にして、厚み2.5μmのポリプロピレンフィルムを得た。比較例3のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで、ポリプロピレンフィルムのコンデンサ素子加工性は素子の変形、シワ、端面ズレが生じ、コンデンサとしての耐電圧は不十分で、信頼性評価において貫通破壊され実使用で問題となるレベルのものであった。」
・「【0092】
【表1】
[図:0001392066000001.jpg]
」
イ 甲A1に記載された発明
甲A1に記載された事項を、特に比較例3に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、「甲A1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A1発明>
「主要ポリプロピレン樹脂(a1)として、メソペンタッド分率が0.983、融点が168℃で、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が0.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂89.8質量部と、それよりMFRが低いポリプロピレン樹脂(a2)として、融点が163℃で、MFRが8.0g/10分である住友化学(株)製ポリプロピレン樹脂10.0質量部と、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、溶融混練を行い、ストランドをダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン樹脂組成物(a)を準備し、次いで、上記樹脂組成物(a)を温度260℃に設定した単軸の押出機に供給し、樹脂温度260℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを25℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得、該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に81℃まで予熱し、引き続き121℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に6.1倍に延伸し、引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま172℃の温度で予熱し、次いで159℃の温度で幅方向に11.0倍延伸し、面積延伸倍率を67倍とし、さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に9%の弛緩を与えながら154℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向を把持したまま145℃で熱処理を行い、最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップ解放し、次いでフィルム表面に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、得たフィルム表面突起形状の偏り度Ssk(スキューネス)が-13である厚み2.5μmのフィルム。」
(2)甲B1に記載された事項等
ア 甲B1に記載された事項
甲B1には、「オレフィン系積層フィルムおよびフィルムコンデンサ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
【0077】
(実施例1)
メソペンタッド分率が0.98、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂にBasell社製ポリプロピレン樹脂(高溶融張力ポリプロピレンProfax(商標) PF-814)を1.0質量%ブレンドし温度260℃のA層用の単軸の溶融押出機Aに供給した。環状オレフィン系樹脂(B1)として、ポリプラスチックス製“TOPAS”(登録商標)6015S-04(エチレンとノルボルネンを共重合させた樹脂であり、ガラス転移温度が158℃、メルトフローレイト(MFR)が3.6g/10分))を74.7質量部、環状オレフィン系樹脂(B2)として、ポリプラスチックス製“TOPAS”(登録商標)8007F-04(エチレンとノルボルネンを共重合させた樹脂であり、ガラス転移温度が158℃、メルトフローレイト(MFR)が28.8g/10分))を25質量部さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を0.3質量部それぞれ混合させ温度260℃のB層用の単軸の溶融押出機Bに供給した。A層およびB層の押出機で溶融押出を行い、80μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロックを用いてA/B/Aの3層積層で積層厚み比が1/1/1(フィルム全厚みに対する両表面層A層の合計割合は66.7%)となるよう押出量を調節し、その溶融積層ポリマーをTダイより吐出させ、該溶融シートを70℃に保持されたキャスティングドラム上で、静電印加により密着させ冷却固化し未延伸シートを得た。次いで、該シートを複数のロール群にて徐々に146℃に予熱し、引き続き146℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に3.3倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、167℃の温度で幅方向に10.5倍延伸し、次いで熱処理および弛緩処理として幅方向に10%の弛緩を与えながら150℃で熱処理を行ない、さらにクリップで幅方向把持したまま100℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・min/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み3.5μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで素子加工性および耐電圧、信頼性ともに非常に優れるレベルのものであった。
【0078】
(実施例2)
環状オレフィン系樹脂(B1)として、ポリプラスチックス製“TOPAS”(登録商標)6013F-04(エチレンとノルボルネンを共重合させた樹脂であり、ガラス転移温度が138℃、メルトフローレイト(MFR)が12.6g/10分))を89.7質量部、環状オレフィン系樹脂(B2)として、ポリプラスチックス製“TOPAS”(登録商標)9903D10(エチレンとノルボルネンを共重合させた樹脂であり、ガラス転移温度が33℃、メルトフローレイト(MFR)が7.2g/10分))を10質量部さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を0.3質量部それぞれ混合させ、表1に示した条件で製膜した以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで素子加工性および耐電圧、信頼性ともに非常に優れるレベルのものであった。
【0079】
(実施例3)
環状オレフィン系樹脂(B1)および(B2)の混合比率を59.7質量部および40質量部に変更し、未延伸シートを長手方向に延伸する複数のロール群および延伸時の温度を134℃、テンターでの幅方向の延伸温度を162℃に変更し、表1に示した条件で製膜した以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで素子加工性が非常に優れ、耐電圧、信頼性ともに実使用上問題のないレベルのものであった。
【0080】
(実施例4)
長手方向および幅方向の延伸倍率を低くし、表1に示した条件で製膜した以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りでコンデンサ素子加工性、耐電圧ともに実使用上問題なく、信頼性が非常に優れるレベルのものであった。
【0081】
(実施例5)
A層用のポリプロピレン樹脂としてメソペンタッド分率が0.98、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂98質量部、三井化学製“TPX”(登録商標)MX002(融点が224℃の、ポリメチルペンテン系樹脂)を2質量部の配合比でブレンドし、240℃に設定した押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化し、ポリプロピレン樹脂原料とし、A層用の単軸の溶融押出機に供給し、表1に示した条件で製膜した以外は実施例1と同様にして、オレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで素子加工性および耐電圧、信頼性ともに非常に優れるレベルのものであった。
【0082】
(実施例6)
環状オレフィン系樹脂として、ポリプラスチックス製“TOPAS”(登録商標)6013F-04(エチレンとノルボルネンを共重合させた樹脂であり、ガラス転移温度が138℃)を99.7質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を0.3質量部とし、表1に示した条件で製膜した以外は、実施例1と同様にしてオレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで素子加工性、耐電圧ともに非常に優れ、信頼性も優れるものであった。
【0083】
(実施例7)
B層用の環状オレフィン系樹脂として、ポリプラスチックス製“TOPAS”(登録商標)6013F-04(エチレンとノルボルネンを共重合させた樹脂であり、ガラス転移温度が138℃)を95.7質量部、スチレン系エラストマーとして(クレイトンポリマー社製、KratonMD1537:SEBS)を4質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010を0.3質量部の配合比でブレンドし、270℃に設定した押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化した。このチップ化した環状オレフィン系樹脂99.7質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を0.3質量部とし、B層用の単軸の溶融押出機に供給し、表1に示した条件で製膜した以外は実施例1と同様にして、オレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りで素子加工性および耐電圧、信頼性ともに非常に優れるレベルのものであった。
【0084】
(実施例8)
A層用のポリプロピレン樹脂としてメソペンタッド分率が0.98、融点が167℃で、メルトフローレイト(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、「電気化学工業社製 平均粒子径0.3μmシリカ粒子:SFP-20MHE(シランカップリング表面処理)」を0.2質量部、「株式会社トクヤマ製 平均粒子径0.1μmシリカ粒子:サンシールSSP-M01」を1.2質量部となるように240℃に設定した押出機で混練押出し、ストランドを水冷後チップ化し、ポリプロピレン樹脂原料とし、A層用の単軸の溶融押出機に供給し、表1に示した条件で製膜した以外は実施例1と同様にして、オレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りでコンデンサ素子の加工適性、耐電圧および信頼性が劣るが、実使用上問題にならないレベルのものであった。
【0085】
(実施例9)
二軸延伸後の熱処理および弛緩処理の温度および弛緩処理率を表1に示した条件で製膜した以外は実施例1と同様にして、オレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りでコンデンサ素子の加工適性は非常に優れ、耐電圧および信頼性が劣るが、実使用上問題にならないレベルのものであった。
【0086】
(実施例10)
A/B/Aの3層積層で積層厚み比、製膜条件(縦延伸倍率、横延伸倍率、熱処理温度)を表1に示した条件に変更した以外は実施例1と同様にして、オレフィン系積層フィルムを得た。本実施例のオレフィン系積層フィルムの特性およびコンデンサ特性は表1に示す通りでコンデンサ素子加工性、耐電圧、信頼性いずれも優れるレベルのものであった。」
・「【0093】
【表1】
[図:0001392066000002.jpg]
」
イ 甲B1に記載された発明
甲B1に記載された事項を、特に実施例に関して整理すると、甲B1には次の発明(以下、「甲B1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲B1発明>
「メソペンタッド分率が0.98、融点が167℃のポリプロピレン系樹脂からなるA層とガラス転移温度が126~138℃の環状オレフィン系樹脂からなるB層をA/B/Aの積層構成で積層したTMA測定の1%収縮開始温度が131~151℃の実施例1ないし10のオレフィン系積層フィルム。」(当審注:「実施例1ないし10」については、上記ア参照。)
2 申立理由A1及びA2(甲A1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A1発明を対比する。
甲A1発明における「フィルム」は「主要ポリプロピレン樹脂(a1)として、メソペンタッド分率が0.983、融点が168℃で、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10分、冷キシレン可溶部(CXS)が0.9質量%であるプライムポリマー(株)製ポリプロピレン樹脂89.8質量部と、それよりMFRが低いポリプロピレン樹脂(a2)として、融点が163℃で、MFRが8.0g/10分である住友化学(株)製ポリプロピレン樹脂10.0質量部と、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、溶融混練を行い、ストランドをダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして」準備した「ポリプロピレン樹脂組成物(a)」からなるものであるから、本件特許発明1における「ポリプロピレンフィルム」に相当する。
甲A1発明における「フィルム」は「フィルム表面突起形状の偏り度Ssk(スキューネス)」が「-13」であるから、本件特許発明1における「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満である」という条件を満足する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルム。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点A-1>
本件特許発明1においては、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が以下の関係(当審注:「以下の関係」とは「(Ts-Tf)≦40℃」という関係である。)を満たし」と特定されているのに対し、甲A1発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、相違点A-1について検討する。
甲A1には、甲A1発明が、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)」が「(Ts-Tf)≦40℃」という関係を満たすと認められるような記載はないし、他の証拠をみても、「(Ts-Tf)≦40℃」という関係を満たす蓋然性が高いともいえない。
したがって、相違点A-1は実質的な相違点である。
また、甲A1には、甲A1発明において、相違点A-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲A1発明において、相違点A-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
なお、特許異議申立人Aは、特許異議申立書Aにおいて、「しかし、甲第1号証の比較例3のフィルムと本件特許の比較例5の製造方法はほぼ同等であり、両方とも「縦延伸の予備延伸」は実施されていない。次頁の表2に製造条件の比較表を示した。本件特許の比較例5の(Ts-Tf)は24℃であるので、構成要件Aを満たしている。したがって、甲第1号証の比較例3のフィルムも構成要件を満たすと考えられる。」旨(特許異議申立書A第11ページ第16ないし21行)主張する。
そこで、検討する。
甲A1発明の認定の根拠である比較例3の「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)」は「-13」であるのに対し、本件特許の発明の詳細な説明に記載された比較例5の「表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)」は「26」及び「18」であり、両者は、正負の符号が異なる上に、その数値差が大きい。
したがって、甲A1発明の認定の根拠である比較例3と本件特許の発明の詳細な説明に記載された比較例5が、熱に対して同様の物性を有しているとは考えられず、甲A1発明が「(Ts-Tf)≦40℃」という関係を満たすとはいえないし、上記関係を満たす蓋然性が高いともいえない。
よって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲A1発明であるとはいえないし、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2ないし9について
本件特許発明2ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A1発明であるとはいえないし、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由A1及びA2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし9は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A1及びA2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由B1及びB2(甲B1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲B1発明を対比する。
甲B1発明における「メソペンタッド分率が0.98、融点が167℃のポリプロピレン系樹脂からなるA層とガラス転移温度が126~138℃の環状オレフィン系樹脂からなるB層をA/B/Aの積層構成で積層したTMA測定の1%収縮開始温度が131~151℃」の「オレフィン系積層フィルム」は本件特許発明1における「ポリプロピレンフィルム」と、「オレフィン系フィルム」という限りにおいて、一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「オレフィン系フィルム。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点B-1>
本件特許発明1においては、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が以下の関係(当審注:「以下の関係」とは「(Ts-Tf)≦40℃」という関係である。)を満たし」と特定されているのに対し、甲B1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点B-2>
本件特許発明1においては、「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満である」と特定されているのに対し、甲B1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点B-3>
「オレフィン系フィルム」に関して、本件特許発明1においては、「ポリプロピレンフィルム」と特定されているのに対し、甲B1発明においては、「メソペンタッド分率が0.98、融点が167℃のポリプロピレン系樹脂からなるA層とガラス転移温度が126~138℃の環状オレフィン系樹脂からなるB層をA/B/Aの積層構成で積層したTMA測定の1%収縮開始温度が131~151℃」の「オレフィン系積層フィルム」と特定されている点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点B-3について検討する。
甲B1発明における「オレフィン系積層フィルム」を構成する「B層」は「環状オレフィン系樹脂」からなるものであって、「ポリプロピレン系樹脂」ではないから、甲B1発明における「オレフィン系積層フィルム」は「ポリプロピレンフィルム」ではない。
したがって、相違点B-3は実質的な相違点である。
また、甲B1には、甲B1発明において、相違点B-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲B1発明において、相違点B-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B1発明であるとはいえないし、甲B1発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2ないし6、8及び9について
本件特許発明2ないし6、8及び9は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B1発明であるとはいえないし、甲B1発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由B1及びB2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6、8及び9は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし6、8及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B1及びB2によっては取り消すことはできない。
4 申立理由A4及びB3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
(3)本件特許の発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、おおむね次のとおり記載されている。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1~3に記載のポリプロピレンフィルムは、いずれも110℃を超える高温環境下での絶縁破壊電圧の向上が十分ではなく、さらにコンデンサ化した際の耐電圧や高温環境下の信頼性ついても、十分とは言い難いものであった。さらに特許文献4に記載のポリプロピレンフィルムはフィルムの突起高さが十分でなく、特に蒸着工程においてシワが発生したり、コンデンサ化した際に信頼性が悪化する場合があった。さらに特許文献5の記載のポリプロピレンフィルムについては、高温環境下での使用は想定されておらず、110℃を超える温度帯においてコンデンサ耐電圧や信頼性が損なわれる場合があった。
【0011】
そこで、本発明は、高温環境での耐電圧特性・信頼性に優れ、高温度・高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対する安定性に優れた構造を有し、さらに蒸着工程を含む搬送工程においてシワの発生が少ない、加工性に優れたポリプロピレンフィルムを提供することを目的とし、また、それを用いた金属膜積層フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することを目的とする。」
・「【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ね、以下の本発明に至った。本発明は、熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が以下の関係を満たし、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルムである。
(Ts-Tf)≦40℃。」
・「【0016】
以上の考察を踏まえて、本発明者らはさらに検討を重ね、熱機械分析(TMA)において長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)の差が一定の値以下であり、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度が一定の範囲内であるフィルムとすることにより上記課題を解決できることを見出した。」
・「【0017】
つまり本発明は、熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が、(Ts-Tf)≦40℃を満たし、かつフィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満であるポリプロピレンフィルム、である。」
・「【0021】
ここで、熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)が、(Ts-Tf)≦40℃の関係を満たすということは、フィルムが加熱されても構造変化が小さいことを示唆し、特に高温環境において非常に安定な構造を有したフィルムであることを意味する。(Ts-Tf)の値は、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、最も好ましくは10℃以下である。この値が低いものであるほど、高温でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境で優れた信頼性を発現できる。
【0022】
(Ts-Tf)≦40℃を満たすには、後述するように、例えばポリプロピレン原料(A)(ポリプロピレン樹脂(A)ということもある。後述するポリプロピレン原料(B)、ポリプロピレン原料(C)についても同様とする。)として高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01~1.10倍の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより得ることが可能である。
【0023】
他方、(Ts-Tf)が40℃より大きくなる場合には、高電圧がかかる高温環境下にてコンデンサとして用いられた場合、特に長時間の高温状態に置かれた際に、フィルムの分子鎖緩和が進行して耐電圧を低下させ、コンデンサ容量減少やショート破壊などを生じ、信頼性の劣ったコンデンサとなる。また上記の関係式(Ts-Tf)の下限については0℃とすることが好ましい。
【0024】
ここで本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向(以降、「MD」という場合がある)であり、・・・(略)・・・
【0025】
本発明のポリプロピレンフィルムは、高温環境下でも高い絶縁破壊電圧を示し、コンデンサとしたときに高温環境下でも耐電圧性および信頼性を発現させるために、少なくとも一方の表面における表面突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)が-30を超えて5未満である。ここでSskとは、表面の凹凸の偏り度を示したパラメータである。この偏り度Sskは二乗平均平方根高さSqの三乗によって無次元化した基準面において、Z(x,y)の三乗平均を表したもので、歪度(わいど)を意味し、平均面を中心とした山部と谷部の対称性を表す数値である。そのため、偏り度Ssk<0の場合は平均線に対して下側に偏っている、つまり凸の山部よりも凹の谷部が多く存在することを意味する。他方、Ssk>0の場合は平均線に対して上側に偏っている、つまり凹の谷部よりも凸の山部が多く存在することを意味する。そして偏り度Ssk=0の場合は、平均線に対して対称(正規分布)な状態を意味する。本発明者らは鋭意検討することにより、ポリプロピレンフィルムの表面の耐電圧低下の原因と考える局所的に厚みが薄くなる凹みの谷部を適度に減らしつつ、凸の山部によってフィルムに易滑性を持たせる表面に制御することができることを見出した。
【0026】
山部を適度に形成することでフィルム同士あるいは搬送ロールとの滑り易さが発現し、さらに谷部を適度な割合に制御することで低電圧破壊を抑制でき、耐電圧の底上げが可能となるとともに、さらにコンデンサ素子のセルフヒーリング性が良好となる。上記した表面制御を行うことで、コンデンサ素子作成時の加工性が向上し、フィルムを捲回もしくは積層したコンデンサとした場合に、フィルムとフィルムとの層間ギャップの均一性が発現でき、特に高電圧用コンデンサ用途において、高温環境下での耐電圧性と信頼性が得られる。
【0027】
・・・(略)・・・
【0028】
上記偏り度(Ssk)が-30以下の場合は、フィルム表面に凹みを有する形状が多く偏っていることになり、特に高電圧用コンデンサ用途において、高温環境下での耐電圧性が損なわれる場合や、フィルムの易滑性が損なわれ加工性が悪化する場合がある。他方、偏り度(Ssk)が5以上の場合においても、フィルム表面に凸部の形状が過剰に存在することになり、コンデンサとしたときにフィルムとフィルムとの層間ギャップが生じて高温環境において容量低下を引き起こし、信頼性が損なわれる場合や、フィルムの易滑性が損なわれて耐電圧性が悪化する場合がある。
【0029】
本発明のポリプロピレンフィルムの表面突起形状の偏り度(Ssk)を上記した範囲内に制御することは、例えば後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料(B)を使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)と結晶化ピーク温度(Tc)(℃)を好ましい範囲に制御することにより可能である。」
・「【0033】
本発明のポリプロピレンフィルムは、TMAの昇温過程において、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる際の温度(Tf)(℃)が100℃以上であることが好ましい。より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上である。
【0034】
・・・(略)・・・
【0035】
(Tf)(℃)を100℃以上又は上記の好ましい範囲とする方法としては、例えばポリプロピレン原料(A)として高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を用い、ポリプロピレンフィルムとして相対的に融点の高い成分の占める比率を高めること、キャスティングドラム温度を60~110℃とした上で、長手方向の延伸前に1.01~1.10倍の予備延伸を施し、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施す方法が挙げられる。」
・「【0036】
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルム幅方向の125℃15分加熱処理後における熱収縮率が1.0%以下であることが好ましい。幅方向の熱収縮率は、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下、特に好ましくは0.4%以下である。下限は特に限定されないが、コンデンサ製造工程や使用工程の熱により素子の巻き状態が緩む場合があるので、-0.2%とすることが好ましい。上記熱収縮率が1%を超える場合は、コンデンサ製造工程および使用工程の熱によりフィルム自体の収縮が生じ、素子端部メタリコンとの接触不良により耐電圧性が低下したり、素子が巻き締まることで容量低下やショート破壊を引き起こし信頼性が悪化する場合がある。
【0037】
フィルム幅方向の125℃15分加熱処理における熱収縮率を上記した好ましい範囲内に制御するには、例えば後述するように、ポリプロピレン原料(A)として高メソペンタッド分率、かつ冷キシレン可溶部(CXS)が3.0質量%未満の原料を使用し、長手方向の延伸前に1.01~1.10倍の予備延伸を施し、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、二軸延伸後の熱固定処理および弛緩処理工程において、まず、幅方向の延伸温度より低温での熱処理(1段目)をしながら弛緩処理を行い、次いでフィルムを幅方向に緊張を保ったまま前記1段目の熱処理温度より低温で135℃以上の熱処理(2段目)、さらに80℃以上で前記2段目の熱処理温度未満の条件で熱処理(3段目)を施す多段方式の熱固定処理および弛緩処理をフィルムに適宜施すことにより達成可能である。」
・「【0038】
本発明のポリプロピレンフィルムは、示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)と、昇温後260℃から30℃まで20℃/minで降温した際に得られる結晶化ピーク温度(Tc)(℃)とした場合、(Tm-Tc)≦65℃であることが好ましい。・・・(略)・・・
【0039】
(Tm-Tc)を上記した好ましい範囲に制御するには、例えば、後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料(A)および/またはポリプロピレン原料(B)の使用、分岐鎖状のポリプロピレン原料(C)を含有すること、これらの原料組成を後述する好ましい範囲とすることで達成できる。」
・「【0040】
本発明のポリプロピレンフィルムは、フィルムを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温した際に得られる融解ピーク温度(Tm)(℃)が170℃以上であることが好ましい。より好ましくは171℃以上、さらに好ましくは172℃以上、一層好ましくは173℃、最も好ましくは174℃以上である。上限は特に限定されないが200℃とすることが好ましい。(Tm)(℃)が高いほどフィルムの結晶化度が高いことを意味し、高温環境下での絶縁破壊電圧向上の観点から好ましい。(Tm)(℃)が170℃を下回る場合には、高温環境下における耐電圧特性・信頼性に劣る場合がある。ここで本発明のポリプロピレンフィルムがポリプロピレンとポリプロピレンとは非相溶の熱可塑性樹脂とを含むフィルムである場合には、非相溶樹脂の融解ピーク温度がポリプロピレンの融解ピーク温度とは別の温度に観測されることがあるが、本発明においては170℃以上200℃以下に観測されるピークを示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで20℃/minで昇温して得られるフィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)とする。このとき、融解ピーク温度が前記温度範囲の中で2つ以上観測される場合や、ショルダーと言われる多段型のDSCチャートに観測できるピーク温度(2つ以上のピークが重なり合ったチャートの場合に観測される)の場合があるが、本発明においてはDSCチャートの縦軸熱流(単位:mW)の絶対値が最も大きいピークの温度を(Tm)(℃)とする。
【0041】
(Tm)(℃)を上記した好ましい範囲に制御するには、例えば、ポリプロピレン原料の組成を調整する方法を用いることができる。より具体的には、ポリプロピレン原料として融点が高い成分を使用すること、若しくは相対的に融点の高い成分の占める比率を高めることで達成できる。」
・「【0042】
本発明のポリプロピレンフィルムは、一方の表面を表面A、もう一方の表面を表面Bとした際に、表面Aの突出山部高さ(SpkA)(nm)と表面Bの突出山部高さ(SpkB)(nm)が以下の関係を満たす事が好ましい。
SpkA<SpkB
20nm≦SpkA≦100nm
80nm≦SpkB≦150nm。
【0043】
(Spk)はISO25178で定義される機能パラメータの一種で、高さデータのベアリングカーブ(ある高さにおける頻度を高い側から累積し、全高さデータの総数を100%として百分率で表したもの。ある高さCにおける負荷面積率はSmr(C)で与えられる)の等価直線(負荷面積率(Smr)の差が40%になる直線のうち最も傾きが小さくなる直線)と負荷面積率=0%の交点よりも高い部分(突出山部)の平均高さを示す。
【0044】
・・・(略)・・・
【0046】
SpkA(nm)およびSpkB(nm)が上記した好ましい範囲を満たさない場合には、フィルムの表面突起高さが小さいため十分な易滑性が得られず、コンデンサ素子作成時の加工性が不十分となる場合や、逆にフィルム表面に過剰に高い突起が存在し、コンデンサの耐電圧低下を招く場合がある。
【0047】
SpkA(nm)およびSpkB(nm)を上記した範囲内に制御することは、例えば後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料(B)を使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)と結晶化ピーク温度(Tc)(℃)を好ましい範囲に制御することにより可能である。」
・「【0048】
本発明のポリプロピレンフィルムは、表面の凹みが少なく、適度な易滑性を持つことで素子加工性の向上と耐電圧性の向上をはかる観点から、フィルムの少なくとも一方の表面において、0.561×0.561mm2の領域における深さ20nm以上の谷の体積を合計した総谷側体積が50~5,000μm3であることが好ましい。この総谷側体積は、下限の観点からは100μm3以上とすることが更に好ましく、また、500μm3以上とすることが一層好ましい。また総谷側体積は、上限の観点からは4,000μm3以下とすることが更に好ましく、3,000μm3以下とすることが特に好ましい。総谷側体積が50μm3未満では、表面の凹凸がなく平坦となり易く、その場合、フィルムの滑りが極端に低下してハンドリング性が低下したり、シワが発生しやすくなって素子加工性に影響が出ることがある。また、コンデンサとして長時間使用したときにシワ等の影響で容量変化が大きくなったり、フィルムを積層したコンデンサとした場合にフィルムとフィルムとの間に適度な隙間がないことから自己回復機能(セルフヒーリング)が動作し難くコンデンサの信頼性が低下する可能性がある。他方、5,000μm3を超える場合、局所的に厚みが薄い部分が多くなって当該部分からの絶縁破壊が生じるおそれがあり、フィルムの耐電圧性が低下し、特に高電圧用コンデンサ用途に用いたとき、高温環境下での耐電圧性と信頼性が損なわれる可能性がある。総谷側体積を上記した好ましい範囲(総谷側体積を50μm3以上5,000μm3以下)にすることで、表面の凹みが少なく、低電圧で絶縁破壊が生じる恐れが減り、フィルムの耐電圧性が向上し、特に高電圧用コンデンサ用途に用いたとき、高温環境下での耐電圧性と信頼性が向上し、コンデンサとして長時間使用したときの容量変化が抑制できる。また、フィルムを積層したコンデンサとした場合に、フィルムとフィルムとの間に適度な隙間を形成できることで、自己回復機能(セルフヒーリング)が動作でき、コンデンサの信頼性が向上できる。
【0049】
フィルム表面の総谷側体積を上述した好ましい範囲とするには、例えば後述する好ましい特性を有するポリプロピレン原料(B)を使用すること、二軸延伸時に面積延伸倍率を65倍以上で、かつ幅方向の延伸倍率は11.0倍以上とし、キャスティングドラム温度、フィルムの融解ピーク温度(Tm)(℃)と結晶化ピーク温度(Tc)(℃)を好ましい範囲に制御することにより可能である。」
・「【0054】
続いて、本発明のポリプロピレンに用いると好ましい原料について説明する。
【0055】
本発明のポリプロピレンフィルムに用いる原料は直鎖状のポリプロピレン樹脂(A)を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、ポリプロピレンフィルムを構成する成分のうち最も質量%の高いもの(含有量の多いもの)をいう。
【0056】
・・・(略)・・・
【0063】
本発明のポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレン原料(A)の他に、ポリプロピレン原料(B)を含むことができる。
【0064】
・・・(略)・・・
【0074】
本発明のポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレン原料(A)、ポリプロピレン原料(B)の他に、分岐鎖状のポリプロピレン原料(C)を含んでもよい。・・・(略)・・・
【0080】
本発明のポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば有機粒子、無機粒子、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤を含有してもよい。
【0081】
・・・(略)・・・
【0082】
本発明のポリプロピレンフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲でポリプロピレン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。」
・「【0085】
本発明のポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプは限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では金属箔とフィルムとの合わせ巻きコンデンサ、金属蒸着フィルムコンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。しかしながら本発明のフィルムの特性から、特に金属蒸着フィルムコンデンサとして好ましく使用される。形状の観点では、捲回式であっても積層式であっても構わない。」
・「【0087】
本発明のポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、二軸延伸、熱処理および弛緩処理されることによって得ることが可能である。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、フィルムの製膜安定性、結晶・非晶構造、表面特性、特に本発明の幅方向に延伸倍率を高めながら機械特性および熱寸法安定性を制御する点においてテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0088】
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法を例に挙げて説明する。まず、ポリプロピレン樹脂を支持体上に溶融押出して未延伸ポリプロピレンフィルムとする。この未延伸ポリプロピレンフィルムを長手方向に延伸し、次いで幅方向に延伸して、逐次二軸延伸せしめる。その後、熱処理および弛緩処理を施して二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造する。以下、より具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0089】
・・・(略)・・・
【0099】
なお、本発明のポリプロピレンフィルムを得るため、着眼される製造条件を具体的に挙げてみると、例としては以下のとおりである。
・溶融押出温度は、フィルター前、フィルター後、口金と多段式に低温化すること。
・ポリプロピレン樹脂(A)のメソペンダット分率が0.970以上であること
・ポリプロピレン樹脂(A)のCXSが1.5質量%未満であること。
・縦延伸前に1.01~1.10倍の予備延伸を行うこと。
・延伸の面積延伸倍率が65倍以上であること。
・幅方向の延伸倍率が11.0倍以上であること。
・幅方向の延伸前の予熱温度が幅方向の延伸温度+5~+15℃であること。
・1段目の熱処理温度が、145℃以上165℃以下であり、かつ幅方向の延伸温度未満の温度であること。
・2段目の熱処理温度が、135℃以上1段目の熱処理温度未満であること。
・3段目の熱処理温度が、80℃以上2段目の熱処理温度未満であること。
・1段目の熱処理工程において、幅方向に2~20%の弛緩処理が施されていること。」
・「【0101】
本発明の金属膜積層フィルムは、本発明のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を有する。この金属膜積層フィルムは、上記の本発明に係るポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を設けることで得ることができる。」
・「【0104】
本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムを用いてなる。つまり本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属膜積層フィルムを有する。」
・「【0109】
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0110】
(1)フィルム厚み
・・・(略)・・・
【0111】
(2)熱機械分析:長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)
ポリプロピレンフィルムを、フィルムの測定方向(長手方向)を長辺として幅4mm、長さ50mmの長方形の試料に切り出し、試長20mmとなるよう金属製チャックにフィルムを挟み込んだ。前記チャックに挟んだサンプルを下記装置にセットし、下記温度プログラムにて荷重を一定保持したフィルムにおける長手方向の膨張・収縮曲線を求めた。得られた膨張・収縮曲線から、長手方向に0.1%収縮する際の温度を読み取り、n=3の測定を行った平均値を(Ts)(単位:℃)とした。
【0112】
装置 :熱機械分析装置 TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
試験モード :F制御モード
試長 :20mm
温度範囲 :23~200℃
昇温速度 :10℃/分
スタート荷重 :3.0mN
SSプログラム:0.1mN/分
測定雰囲気 :窒素中
測定厚み :上記(1)のフィルム厚みを用いた。
【0113】
(3)熱機械分析:長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)
ポリプロピレンフィルムを、フィルムの測定方向(長手方向)を長辺として幅4mm、長さ50mmの長方形の試料に切り出し、試長20mmとなるよう金属製チャックにフィルムを挟み込んだ。前記チャックに挟んだサンプルを下記装置にセットし、下記温度プログラムにて試長を一定保持したフィルムにおける長手方向の応力曲線を求めた。得られた応力曲線から、収縮応力が0.01MPaとなる温度を読み取り、n=3の測定を行った平均値を(Tf)(単位:℃)とした。
【0114】
装置 :熱機械分析装置 TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
試験モード :L制御モード
試長 :20mm
温度範囲 :23~200℃
昇温速度 :10℃/分
スタート変位 :0μm
SSプログラム:0.1μm/分
測定雰囲気 :窒素中
測定厚み :上記(1)のフィルム厚みを用いた。
【0115】
(4)表面の突起形状の偏り度スキューネス(Ssk)
測定は(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。一方の面内の任意の5箇所で測定を行った平均値を算出した。測定はフィルムの両面について行った。
【0116】
測定条件は下記のとおり。
製造元:株式会社菱化システム
販売元:株式会社日立ハイテクサイエンス
装置名:走査型白色干渉顕微鏡VS1540
測定条件:対物レンズ 10×
鏡筒 1×
ズームレンズ 1×
波長フィルタ 530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS-Measure Version10.0.4.0
解析ソフトフェア:VS-Viewer Version10.0.3.0
測定面積:0.561×0.561mm2。
【0117】
・・・(略)・・・
【0122】
(8)ポリプロピレン樹脂およびフィルムの融解ピーク温度(Tm)と結晶化ピーク温度(Tc)
示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgのポリプロピレンフィルムを30℃から260℃まで20℃/分の条件で昇温し、次いで、260℃で5分間保持した後、20℃/分の条件で30℃まで降温する。昇温過程で得られる吸熱ピーク温度をポリプロピレンフィルムの融解ピーク温度とし、降温過程で得られる発熱ピーク温度をポリプロピレンフィルムの結晶化ピーク温度とした。本明細書中ではn=3の測定を行った平均値から(Tm)、(Tc)を算出した。ピーク温度が前記温度範囲の中で2つ以上観測される場合や、ショルダーと言われる多段型のDSCチャートに観測できるピーク温度(2つ以上のピークが重なり合ったチャートの場合に観測される)がでる場合があるが、本発明においてはDSCチャートの縦軸熱流(単位:mW)の絶対値が最も大きいピークの温度をそれぞれ(Tm)、(Tc)(いずれも単位:℃)とする。なお、ポリプロピレン樹脂の(Tm)、(Tc)についても同様に測定した。
【0123】
(9)フィルム表面における深さ20nm以上の谷の体積の合計(総谷側体積)
測定は(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。次いで解析ソフトの解析ツールであるベアリング機能を用いて解析した。深さ20nm以上の谷側空隙を指定するため、高さ領域指定において、谷側高さ閾値を-20nmに設定した。次いで解析された谷側空隙体積の値を読み取った。一方の面内の任意の5箇所で測定を行い、平均値をフィルム表面における深さ20nm以上の谷の体積の合計とした。
・・・(略)・・・
【0125】
(10)フィルム表面における突出山部高さ(SpkA)、(SpkB)
測定は(株)日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VS1540を使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルターにて処理後、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行った。一方の面内の任意の5箇所で測定を行い、その平均値を算出した。フィルムの両面を測定し、値が低い面の値をSpkA、反対側の面をSpkB(いずれも単位:nm)とした。測定条件は(4)表面突起の偏り度と同様とした。」
・「【0128】
(13)フィルムコンデンサ特性の評価(120℃での耐電圧、信頼性、加工性)
・・・(略)・・・
【0131】
<耐電圧評価>
ステップアップ試験においてこの際の静電容量変化を測定しグラフ上にプロットして、該容量が初期値の80%になった電圧をフィルムの厚み(上記(1))で除割り返して耐電圧評価とし、以下の通り評価した。
S:400V/μm以上
A:390V/μm以上400V/μm未満
B:380V/μm以上390V/μm未満
C:380V/μm未満
S、A、Bは使用可能である。Cでは実用上の性能に劣る。
【0132】
<信頼性評価>
静電容量が初期値に対して15%以下に減少するまで電圧を上昇させた後に、コンデンサ素子を解体し破壊の状態を調べて、信頼性を以下の通り評価した。
S:素子形状の変化は無く、貫通状の破壊は観察されない。
A:素子形状の変化は無く、フィルム1層以上5層以内の貫通状の破壊が観察される。
B:素子形状の変化は無く、フィルム6層以上10層以内の貫通状の破壊が観察される。
C:素子形状に変化が認められる、若しくは10層を超える貫通状の破壊が観察される。
D:素子形状が大きく変化し破壊する。
【0133】
Sは問題なく使用でき、A、Bでは条件次第で使用可能である。C、Dでは実用上の性能に劣る。
【0134】
<加工性評価>
下記基準で判断した。上記と同様にしてコンデンサ素子を作成し、目視により素子の形状を確認した。
S:コンデンサ素子の端面フィルムのズレ、シワ、変形がなく、後の工程に全く支障がないレベル
A:コンデンサ素子の変形はなく、シワがわずかにあるが問題なく使用が可能なレベル
B:コンデンサ素子の変形、シワが僅かにあるが使用可能なレベル
C:コンデンサ素子の変形、シワの程度がひどく、後の工程に支障を来すレベル
S、Aは問題なく使用可能であり、Bは条件次第で使用可能、Cでは実用が困難である。」
・「【実施例】
【0135】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0136】
(ポリプロピレン原料)
実施例、比較例のポリプロピレンフィルムの製造に、下記の表1に示す原料を使用した。なお、これらの値は、原料樹脂ペレットの形態で評価した値である。ポリプロピレン原料Aとして3種類(A1、A2、A3、A4)、ポリプロピレン原料Bとして2種類(B1、B2、B3)、ポリプロピレン原料Cとして2種類(C1:チーグラー・ナッタ触媒系、C2:メタロセン触媒系)の原料を使用した。
【0137】
(実施例1)
本実施例に使用した原料および製膜の条件は表1、2に示した通りである。まずポリプロピレン原料(A1)を92質量部、ポリプロピレン原料(B1)を5質量部、ポリプロピレン原料(C1)を3質量部ドライブレンドして温度260℃の単軸の一軸押出機に供給し溶融させ、濾過フィルターを通過後の255℃に設定した配管を通過し、250℃に設定したT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを95℃に保持されたキャスティングドラム上で、エアーナイフにより密着させ冷却固化し未延伸ポリプロピレンフィルムを得た。該未延伸ポリプロピレンフィルムを複数のロール群にて段階的に142℃まで予熱し、そのまま周速差を設けたロール間に通し、130℃にて1.08倍の予備延伸を行った後、142℃にて長手方向に6.2倍に延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、フィルム幅手の両端部をクリップで把持したまま170℃の温度(TD延伸温度+8℃)で予熱し、次いで162℃の温度で幅方向に12.5倍延伸した。さらに1段目の熱処理および弛緩処理として幅方向に15%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、さらに2段目の熱処理としてクリップで幅方向把持したまま150℃で熱処理を行った。最後に3段目の熱処理として110℃の熱処理を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、次いでフィルム表面(キャスティングドラム接触面側)に25W・分/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行い、フィルム厚み2.1μmのフィルムをフィルムロールとして巻き取った。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表4に示す通りで、フィルムの(Ts-Tf)、および(Ssk)の関係が極めて良好であり、コンデンサとしての耐電圧・信頼性・加工性も優れたものであった。
・・・(略)・・・
【0146】
(比較例1)
原料としてポリプロピレン原料(A3)を40質量部、ポリプロピレン原料(B2)を60質量部用い、各条件を表3に記載のとおりとした以外は実施例1と同様にして厚み2.2μmのポリプロピレンフィルムを得た。本実施例のポリプロピレンフィルムの特性およびコンデンサ特性は表5に示す通りで、フィルムの(Ts-Tf)が請求項1の好ましい範囲外であり、コンデンサとしての耐電圧・加工性評価は実使用上問題ないレベルであるが、信頼性評価は素子の形状変化、10層を超える貫通状の破壊が観察され、実使用が困難なレベルであった。
・・・(略)・・・
【0155】
【表4】
[図:0001392066000003.jpg]
【0156】
【表5】
[図:0001392066000004.jpg]
」
(4)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0010】及び【0011】によると、本件特許発明1ないし7の解決しようとする課題は「高温環境での耐電圧特性・信頼性に優れ、高温度・高電圧下で用いられるコンデンサ用途等に好適な、熱に対する安定性に優れた構造を有し、さらに蒸着工程を含む搬送工程においてシワの発生が少ない、加工性に優れたポリプロピレンフィルム」を提供することであり、本件特許発明8の解決しようとする課題は該「ポリプロピレンフィルム」を有する「金属膜積層フィルム」を提供することであり、本件特許発明9の解決しようとする課題は該「金属膜積層フィルム」を用いてなる「フィルムコンデンサ」を提供すること(以下、これらを総称して「発明の課題」という。)である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0017】、【0033】、【0036】、【0038】、【0040】、【0042】、【0048】及び【0085】には、本件特許発明1ないし9に対応する記載がある。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0021】ないし【0024】には、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)」が「(Ts-Tf)≦40℃以下」という条件を満たすことの技術的意味が具体的に記載され、同じく【0025】ないし【0029】には「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)」が「-30を超えて5未満」という条件を満たすことの技術的意味が具体的に記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0135】ないし【0156】には、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)」が「(Ts-Tf)≦40℃以下」という条件及び「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)」が「-30を超えて5未満」という条件を満たす「ポリプロピレンフィルム」である実施例1ないし9が該2つの条件の少なくとも一つを満たさない比較例1ないし6と比べ、耐電圧性評価、信頼性評価及び加工性評価というフィルムコンデンサ素子評価で優れていることを確認する記載もある。
そうすると、当業者は、「熱機械分析(TMA)の昇温過程において、長手方向に0.1%収縮する際の温度(Ts)(℃)と、長手方向の収縮応力が0.01MPaとなる温度(Tf)(℃)」が「(Ts-Tf)≦40℃以下」という条件及び「フィルムの少なくとも一方の表面における突起形状の偏り度を意味するスキューネス(Ssk)」が「-30を超えて5未満」という条件を満たす「ポリプロピレンフィルム」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1は、上記2つの条件を満たす「ポリプロピレンフィルム」であり、本件特許発明2ないし7は、上記2つの条件を満たす「ポリプロピレンフィルム」をさらに限定したものであり、本件特許発明8は上記2つの条件を満たす「ポリプロピレンフィルム」を有する「金属膜積層フィルム」であり、本件特許発明9は上記「金属膜積層フィルム」を用いてなる「フィルムコンデンサ」である。
したがって、本件特許発明1ないし9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし9に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(5)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aの上記第3 1(4)の主張について検討する。
特許異議申立人Aの主張は、甲A1発明が本件特許発明1の構成要件を満足していることを前提とする主張であるが、上記第4 2(1)のとおり、本件特許発明1は甲A1発明であるとはいえないので、該主張は前提からして理由がない。
なお、上記(4)のとおり、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
したがって、特許異議申立人Aの上記第3 1(4)の主張は採用できない。
イ 特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bの上記第3 2(3)の主張について検討する。
本件特許発明1の発明特定事項を有しているだけでは、発明の課題を解決できないとする証拠はないし、合理的な説明もされていない。
したがって、本件特許発明1において、特許異議申立人Bの上記第3 2(3)のアないしエで指摘された事項が規定されていないと、発明の課題が解決できないとはいえない。
なお、上記(4)のとおり、本件特許発明1ないし9に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
したがって、特許異議申立人Bの上記第3 2(3)の主張は採用できない。
(6)申立理由A4及びB3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないので、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A4及びB3によっては取り消すことはできない。
5 申立理由A3及びB4(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件特許発明1ないし9は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記4(3)のとおりであり、本件特許発明1ないし9の各発明特定事項について、その実現方法を含め具体的に記載されており、実施例についても具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし9を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし9に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人Aの主張について
上記第3 1(3)の主張について検討する。
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記4(3)のとおりであり、本件特許発明1ないし9と甲B1発明の製造方法の違いは当業者であれば明確に理解できる。
なお、上記(2)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
したがって、特許異議申立人Aの上記第3 1(3)の主張は採用できない。
イ 特許異議申立人Bの主張について
上記第3 2(4)の主張について検討する。
特許異議申立人Bの上記第3 2(3)のアないしエで指摘された事項が、本件特許発明1ないし9において規定されていないことと、本件特許発明1ないし9が実施できないこととは何ら関係がない。
なお、上記(2)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし9を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
したがって、特許異議申立人Bの上記第3 2(4)の主張は採用できない。
(4)申立理由A3及びB4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないので、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A3及びB4によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700596