特許異議申立
2022-700590
蓄電デバイス用外装材、及び蓄電デバイス用外装材の製造方法
- 審判番号
- 2022-700590
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-509355
- 登録番号
- 6988794
- 請求日
- 2022年07月05日
- 審決日
- 2022年10月14日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【権利者代理人】福山 尚志
- 【異議申立人】小島 早奈実
- 審判長/審判官
- 審判長 清水 稔
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1651.121-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6988794号発明「蓄電デバイス用外装材、及び蓄電デバイス用外装材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6988794号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6988794号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)3月29日(優先日 2016年4月1日 日本国、2017年2月23日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和3年12月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年7月5日に特許異議申立人小島 早奈実は、請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てを行った。
第2 本件特許発明
特許第6988794号の請求項1ないし12の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも基材保護層、基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及びシーラント層がこの順で積層された構造を備え、
前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であり、
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有し、
前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含み、
前記脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である、蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂の反応性基のモル数[A]に対する前記硬化剤の反応性基のモル数[B]の比([B]/[A])が5~60である、請求項1記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂の反応性基のモル数[A]に対する前記硬化剤の反応性基のモル数[B]の比([B]/[A])が5~20である、請求項2記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
最外部分に水が付着した状態で、前記基材保護層と金属箔層との間に100Vの定電圧を3分間印加したとき、その電気抵抗が2000MΩ以上となる、請求項1~3のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂の反応性基がいずれも水酸基であり、
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂の水酸基価が5~70KOHmg/gである、請求項1~4のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記脂環式イソシアネート以外のイソシアネートが、脂肪族イソシアネートのアダクト体又はビューレット体である、請求項1~5のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂の数平均分子量が2000~30000である、請求項1~6のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項8】
前記基材保護層のガラス転移温度(Tg)が60~150℃である、請求項1~7のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項9】
前記基材保護層がさらにフィラーを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項10】
前記基材保護層の厚さが1~5μmであり、前記基材層の厚さに対する前記基材保護層の厚さの割合が35%以下である、請求項1~9のいずれか一項記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項11】
金属箔層の一方の面に、接着層を介して基材層を貼り合わせる工程、
前記基材層の前記接着層とは反対側の面に基材保護層を形成する工程、及び
前記金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程、を備え、
前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であり、
前記ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有し、
前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含み、
前記脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である、
蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【請求項12】
基材層の一方の面に基材保護層を形成する工程、
前記基材層の基材保護層とは反対側の面に、接着層を介して金属箔層の一方の面を貼り合わせる工程、及び
前記金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程、を備え、
前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であり、
前記ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有し、
前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含み、
前記脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である、
蓄電デバイス用外装材の製造方法。」
第3 申立理由の概要
異議申立人の申立理由の概要は、次のとおりである。
(理由1) 特許法第29条第2項(進歩性)について
請求項1ないし3、6、9ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、
請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、
請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第6号証、甲第7号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、
請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、
請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第9号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし12に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(理由2) 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
請求項1ないし12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、請求項1ないし12に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(理由3) 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
請求項1ないし12に係る発明は、明確でない。
よって、請求項1ないし12に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
第4 提出された証拠
異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特開2015-176764号公報(以下、「引用文献1」という。)
甲第2号証:特開2014-7131号公報(以下、「引用文献2」という。)
甲第3号証:特開2009-181802号公報(以下、「引用文献3」という。)
甲第4号証:特開2011-222482号公報(以下、「引用文献4」という。)
甲第5号証:特開2015-72821号公報(以下、「引用文献5」という。)
甲第6号証:特開2014-185317号公報(以下、「引用文献6」という。)
甲第7号証:特開2004-255775号公報(以下、「引用文献7」という。)
甲第8号証:特開2015-24862号公報(以下、「引用文献8」という。)
甲第9号証:特開2015-56189号公報(以下、「引用文献9」という。)
甲第10号証:【技術資料】[基礎講座]高分子物性の世界 1~ガラス転移温度~、株式会社東ソー分析センター、技術レポートNo.T1704、2017.5.8、
第5 申立理由についての判断
1 (理由1)進歩性について
(1)引用文献の記載、引用発明
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【請求項1】
第1の接着層と接触する第1の面と、該第1の面の反対側に配置された第2の面と、を有し、前記第1の接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2の接着層、及びシーラント層が順次積層された基材層と、
前記基材層の前記第2の面に配置された易接着処理層と、
前記易接着処理層を介して、前記基材層と接着することで、該基材層を保護する基材保護層と、
を有することを蓄電デバイス用外装材。
・・・(省略)・・・。
【請求項3】
前記基材保護層は、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、
イソシアネート系硬化剤と、
を含むことを特徴とする請求項1または2記載の蓄電デバイス用外装材。
・・・(省略)・・・。
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用外装材に関する。
・・・(省略)・・・。
【0034】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電デバイス用外装材の概略構成を示す断面図である。
図1を参照するに、本実施の形態の蓄電デバイス用外装材10は、基材層11と、第1の接着層12と、金属箔層13と、腐食防止処理層14と、第2の接着層15と、シーラント層16と、易接着処理層18と、基材保護層19と、を有する。
・・・(省略)・・・。
【0038】
基材層11の厚さは、例えば、6~40μmの範囲内の厚さが好ましく、10~30μmの範囲内の厚さがより好ましい。基材層11の厚さが6μmよりも薄い場合には、蓄電デバイス用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性が低下してしまう。また、基材層11の厚さが40μmよりも厚い場合には、蓄電デバイス用外装材10の成型性が低下してしまう。
・・・(省略)・・・。
【0098】
基材保護層19は、基材層11を保護する層であり、易接着処理層18を介して、基材層11の第2の面11bに接着されている。
基材保護層19は、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤(例えば、イソシアネートのビューレット体やイソシアヌレート体等)と、を含んだ構成とされている。
【0099】
水酸基を有する基(官能基)を側鎖に有するポリエステルポリオールは、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールである。
・・・(省略)・・・。
【0103】
水酸基を有する基を側鎖に有するアクリルポリオールは、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するアクリルポリオールである。
・・・(省略)・・・。
【0106】
硬化剤として用いるイソシアネートとしては、脂肪族イソシアネートでも芳香族イソシアネートでも構わないが、脂肪族イソシアネートが好ましい。
脂肪族系イソシアネート硬化剤は、芳香環を有していない2官能以上のイソシアネート化合物である。芳香環を有していないことにより、紫外線によるベンゼン環のキノイド化が起きず、黄変を抑制できることから、蓄電デバイス用外装材10の最外層に適している。
【0107】
脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、例えば、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート等を用いることができる。
【0108】
このようなイソシアネート化合物のビューレット体やイソシアヌレート体を用いることで、基材保護層19の架橋密度がより向上するため、アルコールでの拭き取り耐性(アルコール耐性)を向上させることができる。
その結果、基材保護層19により、基材層11が電解液によって劣化することが抑制されると共に、アルコールによる拭き取りによっても剥がれにくくなるため、アルコールでの拭き取り後において、好適に蓄電デバイス用外装材10を再利用することができる。
・・・(省略)・・・。
【0110】
電解液耐性の向上させる観点から、脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。
硬化剤の自己修復性能が向上することに加え、上記脂肪族系イソシアネート硬化剤と上記ポリオールの水酸基との反応性においては、イソホロンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性よりも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性の方が高いため、量産適性を考慮すると、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0111】
上述した主剤及び硬化剤の組み合わせとしては、アクリルポリオールと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体の組み合わせがより好ましい。
主剤のポリオールが有する水酸基(OH)と、硬化剤のイソシアネートが有するイソシアネート基(NCO)とのモル比(=NCO/OH)は、0.5~50が好ましく、1~20がより好ましい。
・・・(省略)・・・。
【0124】
マット処理を施すために、基材保護層19は、フィラーを含んでもよい。該フィラーとしては、例えば、シリカ、アクリル、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機材料の微粒子や、アクリルビーズや、ポリプロピレン、ポリエチレンのワックス等の樹脂材料の微粒子、を用いることができるが、これらに限定するものではない。
・・・(省略)・・・。
【0133】
次に、図1を参照して、本実施の形態の蓄電デバイス用外装材10の製造方法について説明する。但し、本実施の形態の蓄電デバイス用外装材10の製造方法は、下記に説明する製造方法に限定されない。
【0134】
始めに、基材11の第2の面11bに、易接着処理層18を形成する。ここでは、易接着処理層18の形成方法の一例として、インラインコート法について説明する。
・・・(省略)・・・。
【0136】
次いで、金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する。具体的には、金属箔層13の一方の面に、腐食防止処理剤(腐食防止処理層14の母材)を塗布し、その後、乾燥、硬化、焼付けを順次行うことで、腐食防止処理層14を形成する。
・・・(省略)・・・。
【0137】
次いで、金属箔層13の他方の面(腐食防止処理層14が形成された面の反対側に位置する面)に、第1の接着層12を介して、基材層11の第1の面11aを接着させる。
・・・(省略)・・・。
【0138】
次いで、金属箔層13と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層14の面に、第2の接着層15を介して、シーラント層16を接着させる。
・・・(省略)・・・。
【0143】
次いで、易接着処理層18を介して、外面19aが蓄電デバイス用外装材10の最外面となるように、基材層11と基材保護層19とを接着させることで、図1に示す蓄電デバイス用外装材10が製造される。
・・・(省略)・・・。
【0144】
なお、本実施の形態の蓄電デバイス用外装材10の製造方法は、上記説明した製造方法に限定されない。
例えば、金属箔層13の他方の面に、第1の接着層12を介して、基材層11の第1の面11aを接着させた後に、金属箔層13に腐食防止処理層14を形成してもよい。
また、易接着処理層18を介して、基材層11と基材保護層19とを接着させた後に、金属箔層13の他方の面に、第1の接着層12を介して、基材層11の第1の面11aを接着させたてもよい。
さらに、腐食防止処理層14を形成する工程と、押出ラミネーションにより、第2接着層15上にシーラント層16を積層させる工程と、をインラインで連続的に行ってもよい。
また、金属箔層13の両面に腐食防止処理層14を形成してもよい。
・・・(省略)・・・。
【0149】
(実施例1)
実施例1では、以下の手法により、蓄電デバイス用外装材S1を作製した。始めに、金属箔層13として、厚さ40μmとされた軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム株式会社製)を準備した。
次いで、金属箔層13の一方の面に、グラビアコートにより、溶媒として蒸留水を使用し、かつ固形分濃度10質量%に調整したポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル(腐食防止処理剤)を塗布した。・・・(省略)・・・。
【0150】
次いで、塗布されたポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルを乾燥させた後、焼付け処理を順次行うことで、腐食防止処理層14を形成した。
・・・(省略)・・・。
【0151】
次いで、基材層11の第2の面11bに易接着処理層18が形成され、かつ第1の面11aがコロナ処理された積層体(基材層11と易接着処理層18とが積層された積層体。以下、「積層体P1」という。)を準備した。
・・・(省略)・・・。
【0152】
次いで、金属箔層13の他方の面(腐食防止処理層14が形成された面の反対側に位置する面)に、第1の接着層12として、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン株式会社製、A525/A50(商品名))を塗布した。
次いで、ドライラミネート法により、第1の接着剤12を介して、金属箔層13と積層体P1を構成する基材層11の第1の面11aとを接着させた。
・・・(省略)・・・。
【0153】
次いで、金属箔層13と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層14の面に、第2の接着層15を形成した。・・・(省略)・・・。
次いで、サンドイッチラミネーション法により、第2の接着層15を介して、腐食防止処理層14に、シーラント層16となる厚さ40μmのポリオレフィンフィルム層を接着(加熱圧着)した。
【0154】
次いで、易接着処理層18を介して、基材11の第2の面11bに対して、基材保護層19を接着した。これにより、実施例1の蓄電デバイス用外装材S1を作製した。
基材保護層19としては、アクリルポリオールに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体及びイソシアヌレート体をモル比(=NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解させた塗布液を母材として形成されたものを用いた。
このとき、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体と1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との比率は、1:1とした。
また、基材保護層19の厚さは、約4μmとした。
・・・(省略)・・・。
【0161】
(実施例5)
実施例5では、実施例1の蓄電デバイス用外装材S1を作製する際に使用した基材保護層19の材料を変更したこと以外は、蓄電デバイス用外装材S1の製造方法と同様な手法により、実施例6の蓄電デバイス用外装材S5を作製した。
【0162】
実施例5では、アクリルポリオールに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体をモル比(=NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解させた塗布液を用いて、基材保護層19を形成した。
・・・(省略)・・・。
【0171】
[図:0001390600000001.jpg]
【0174】
また、実施例1~7の蓄電デバイス用外装材S1~S7のアルコールラビング耐性の評価結果から、アクリルポリオールに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体をモル比(=NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解させた塗布液を用いて形成された基材保護層19を有する実施例5~7の蓄電デバイス用外装材S5~S7の方が、アクリルポリオールに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体及びイソシアヌレート体をモル比(=NCO/OH)が2となるようにトルエンに溶解させた塗布液を用いて形成された基材保護層19を有する実施例1~4の蓄電デバイス用外装材S1~S4よりも良い結果が得られた。」
[図:0001390600000002.jpg]
(イ)引用文献1の上記記載事項及び図面によれば、次のことがいえる。
a 段落【0001】によれば、引用文献1には「蓄電デバイス用外装材」が記載されている。
そして、段落【0034】によれば、「蓄電デバイス用外装材10」は、「基材層11と、第1の接着層12と、金属箔層13と、腐食防止処理層14と、第2の接着層15と、シーラント層16と、易接着処理層18と、基材保護層19」とを有する。
さらに、図1によれば、「蓄電デバイス用外装材10」は、基材保護層19、易接着処理層18、基材層11、第1の接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2の接着層15、シーラント層16の順で積層されることが見て取れる。
したがって、引用文献1には、基材保護層、易接着処理層、基材層、第1の接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2の接着層、シーラント層の順で積層される蓄電デバイス用外装材が記載されているといえる。
b 段落【0098】によれば、「基材保護層19」は、「水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤」とを含み、段落【0099】によれば、「ポリエステルポリオール」は「繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオール」であり、段落【0103】によれば、「アクリルポリオール」は「繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するアクリルポリオール」である。
してみると、引用文献1には、「基材保護層」が、「繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有する」「ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤」とを含むことが記載されているといえる。
c 段落【0110】の「上記脂肪族系イソシアネート硬化剤と上記ポリオールの水酸基との反応性」との記載から、引用文献1に記載された「ポリエステルポリオール」及び「アクリルポリオール」の水酸基がイソシアネート硬化剤と反応することは明らかである
したがって、引用文献1には、ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールの水酸基がイソシアネート硬化剤と反応することが記載されているといえる。
d 段落【0106】によれば、「硬化剤として用いるイソシアネート」は「脂肪族イソシアネート」である。
(ウ)よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「基材保護層、易接着処理層、基材層、第1の接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2の接着層、シーラント層の順で積層される蓄電デバイス用外装材において、
基材保護層は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤とを含み、
ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールの水酸基はイソシアネート硬化剤と反応し、
硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである、蓄電デバイス用外装材。」
(エ)また、引用文献1の上記「(ア)」の段落【0133】、【0134】、【0136】ないし【0138】、【0143】によれば、蓄電デバイス用外装材の製造方法について、次のことがいえる。(なお、段落【0133】に記載された「基材11」は「基材層11」の誤記と認められる。)
基材層の第2の面に、易接着処理層を形成し、
金属箔層上に、腐食防止処理層を形成し、
金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面に、第1の接着層を介して、基材層の第1の面を接着し、
金属箔層と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着し、
易接着処理層を介して、基材層と基材保護層とを接着する。
(オ)よって、上記「(イ)b」、「同c」、「同d」及び上記「(エ)」によれば、引用文献1の蓄電デバイス用外装材の製造方法について、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「基材層の第2の面に、易接着処理層を形成し、
金属箔層上に、腐食防止処理層を形成し、
金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面に、第1の接着層を介して、基材層の第1の面を接着し、
金属箔層と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着し、
易接着処理層を介して、基材層と基材保護層とを接着する、蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
基材保護層は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤とを含み、
ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールの水酸基はイソシアネート硬化剤と反応し、
硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである、蓄電デバイス用外装材の製造方法。」
(カ)また、上記「(エ)」で述べた点に加え、上記「(ア)」の段落【0144】の「また、易接着処理層18を介して、基材層11と基材保護層19とを接着させた後に、金属箔層13の他方の面に、第1の接着層12を介して、基材層11の第1の面11aを接着させたてもよい。」との記載によれば、蓄電デバイス用外装材の製造方法について、次のこともいえる。
基材層の第2の面に、易接着処理層を形成し、
金属箔層上に、腐食防止処理層を形成し、
易接着処理層を介して、基材層と基材保護層とを接着した後に、金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面に、第1の接着層を介して、基材層の第1の面を接着し、
金属箔層と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着する。
(キ)よって、上記「(イ)b」、「同c」、「同d」及び上記「(カ)」によれば、引用文献1の蓄電デバイス用外装材の製造方法について、次の発明(以下、「引用発明3」という。)も記載されている。
「基材の第2の面に、易接着処理層を形成し、
金属箔層上に、腐食防止処理層を形成し、
易接着処理層を介して、基材層と基材保護層とを接着した後に、金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面に、第1の接着層を介して、基材層の第1の面を接着し、
金属箔層と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着する、蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
基材保護層は、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤とを含み、
ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールの水酸基はイソシアネート硬化剤と反応し、
硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである、蓄電デバイス用外装材の製造方法。」
イ 引用文献2について
(ア)引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、電気化学セルを包装する電気化学セル用包装材料に関するものである。
・・・(省略)・・・。
【0022】
図3は収納部120aと蓋部120bを形成する包装材料110の層構成を示す概略断面図であり、包装材料110は保護層111と基材層112とバリア層114と熱接着層116とが順次積層して構成される。基材層112とバリア層114は接着層113を介して接着され、バリア層114と熱接着層116は酸変性ポリオレフィン層115を介して接着されている。バリア層114の両面には化成処理が施され、バリア層114と酸変性ポリオレフィン層115及びバリア層114と接着層113との層間接着強度が高められている。
・・・(省略)・・・。
【0028】
保護層111は最外層に配され電池用包装材料110の外面に電解液が付着して基材層112が腐食して白化するのを防止する。保護層111は主剤、硬化剤、架橋剤、マット剤を混合した樹脂により形成される。
【0029】
主剤は保護層111を構成する樹脂の主成分となる樹脂であり、ポリエステル、ポリエーテル等のウレタン、ポリエステルウレタン、エポキシ、アクリル、フェノール、セルロース、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドが使用される。また、これらの樹脂を複数混合してもよい。
【0030】
硬化剤は主剤と反応して保護層111を構成する樹脂の硬化を開始、促進又は調整する樹脂であり、イソシアネート樹脂が用いられる。イソシアネート樹脂としてトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を用いることができる。また、これらの樹脂を複数混合してもよい。
・・・(省略)・・・。
【実施例3】
【0090】
実施例3に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例3に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDI、HDI、IPDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤は添加せず、スリップ剤を添加した。スリップ剤にはステアリン酸カルシウムを用いた。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が85、架橋剤が15、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤を100としたときスリップ剤の重量配合比を0.5とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5、IPDIが0.5とした。
【実施例4】
【0091】
実施例4に係る電気化学セル用包装材料110は実施例1に係る電気化学セル用包装材料110と保護層111を除いて同一の層構成をとる。実施例4に係る電気化学セル用包装材料110は保護層111を構成する混合樹脂に主剤としてアクリルを用い、架橋剤としてメチル化したベンゾグアナミン、硬化剤としてイソシアネート樹脂を用いた。なお、イソシアネート樹脂はTDIとHDIとIPDIで構成した。また、保護層111を構成する混合樹脂にマット剤を添加し、スリップ剤は添加しなかった。なお、スリップ剤は保護層111の上面にコートしてスリップ膜を形成した。スリップ剤にはステアリン酸カルシウムを用いた。マット剤には粒径が0.1μmのシリカと粒径が1.0μmのシリカを用いた。このとき、粒径が0.1μmのシリカと粒径が1μmのシリカとの混合比は4:1とした。また、保護層111を構成する混合樹脂の重量配合比を主剤が90、架橋剤が10、硬化剤が3とした。また、主剤と架橋剤と硬化剤を100としたときマット剤の重量配合比を8とした。また、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5、IPDIが0.5とした。」
図3
[図:0001390600000003.jpg]
(イ)引用文献2の【0001】、【0022】、【0028】、【0030】、【0090】、【0091】の記載から、実施例3及び実施例4に着目すると、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「保護層と基材層とバリア層と熱接着層とが順次積層して構成される電気化学セル用包装材料において、保護層は主剤、硬化剤を混合した樹脂により形成され、主剤としてアクリルを用い、硬化剤をトリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)で構成し、硬化剤の重量配合比をTDIが2、HDIが0.5、IPDIが0.5としたこと。」
ウ 引用文献3について
(ア)引用文献3には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0009】
本発明の電池パックは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、上記電池の保護回路基板と、上記電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材を備え、上記外装材が形状維持ポリマーを含み、該形状維持ポリマーが、ポリオール及びポリイソシアネートを含む絶縁性の硬化性ポリウレタン樹脂を含有するものであることを特徴とする。
・・・(省略)・・・。
【0028】
上記絶縁性の硬化性ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネート、及びこれらの混合物を使用することが好ましい。」
(イ)引用文献3の段落【0009】、【0028】によれば、引用文献3には、次の技術事項(以下、「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「電池及び保護回路基板を一体的に被覆する外装材において、前記外装材が絶縁性の硬化性ポリウレタン樹脂を含有し、前記絶縁性の硬化性ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネート、及びこれらの混合物を使用することが好ましいこと。」
エ 引用文献4について
(ア)引用文献4には、次の事項が記載されている(下線、当審で付与した。)。
「【0020】
図2Aおよび図2Bに示すように、電池全体は外装材40で覆われている。
・・・(省略)・・・。
【0047】
(外装材)
外装材40は、熱と反応して硬化する熱硬化性樹脂、紫外線と反応して硬化する紫外線硬化樹脂などの反応硬化樹脂で構成される。外装材40は、反応硬化樹脂が硬化されることにより形成された樹脂成形部材である。
【0048】
(反応硬化樹脂)
反応硬化樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0049】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとから製造されるものである。。
・・・(省略)・・・。
【0056】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが使用できる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリトリレンポリイソシアネート(粗TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。
・・・(省略)・・・。
【0059】
但し、ジフェニルメタジンイソシアネート(MDI)成分が多いほど強度や水分バリア性の面では優れた特性を示すが、80wt%を越えるとMDIによるハードセグメント構造が多すぎて耐衝撃性に劣る結果となる。耐候性が特に要求される場合には、MDIに無黄変性のポリイソシアネートであるXDI系、IPDI系、HDI系を混合して用いることが好ましい。また架橋密度を高めるために主剤に架橋剤として低分子のトリメチロールプロパンなどを加えることが好ましい。」
(イ)引用文献4の段落【0020】、【0047】ないし【0049】、【0056】、【0059】の記載によれば、引用文献4には、次の技術事項(以下、「引用文献4に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「ポリオールとポリイソシアネートとから製造されるウレタン樹脂で構成され、電池全体を覆う外装材において、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が、キシレンジイソシアネート(XDI)系、イソホロンジイソシアネート(IPDI)系、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系を混合して用いられること。」
オ 引用文献5について
(ア)引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、二次電池用外装材、より詳しくは、絶縁性に優れた二次電池用外装材、およびこの外装材を用いた二次電池に関する。
・・・(省略)・・・。
【0020】
図1に示すように、外装材1は、平面視において矩形(略矩形を含む。)である。金属箔層30は、外装材1の長手方向(第二の方向)にわたって配置されている。金属箔層30の長手方向と直交する幅方向(第一の方向)の寸法W2は、外装材1の幅方向の寸法W1よりも小さく、金属箔層は、幅方向の端部が外装材1の幅方向両側の端面に露出しないよう、幅方向中間部に配置されている。
【0021】
図2に示すように、金属箔層30の幅方向両側は、変形した接着性樹脂層50により被覆されており、変形した接着性樹脂層50は、基材層10に接着されている。これにより、金属箔層30の幅方向端部は露出しないようにかつ水密に封止され、絶縁性が付与されている。
・・・(省略)・・・。
【0035】
<評価方法>
前記方法で作製した各外装材を10サンプルずつ用意した。通電を確認するために、外装材の長手方向の端部に露出した金属箔層と、基材層と接着性樹脂層とが接合された外装材の幅方向端部とに導電性溶液である水をたらし、両者にテスターを接続して電圧25Vを5秒間かけ電気抵抗値の測定をおこなった。抵抗値が99.9GΩ以上である場合を合格とし、99.9GΩ未満を不合格とした。
また、外装材の外観を目視にて評価した。評価は、以下の2段階とした。
○:いずれのサンプルにも外観不良を認めない。
△:軽度の外観不良を認めるサンプルがあるが、製品として問題ない程度である。」
(イ)引用文献5の段落【0001】、【0020】、【0035】の記載によれば、引用文献5には、次の技術事項(以下、「引用文献5に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「金属箔層が外装材の長手方向にわたって配置され、金属箔層の長手方向と直交する幅方向の寸法は外装材の幅方向の寸法よりも小さく、金属箔層は幅方向の端部が外装材の幅方向両側の端面に露出しないよう幅方向中間部に配置されている二次電池用外装材において、通電を確認するために、外装材の長手方向の端部に露出した金属箔層と、基材層と接着性樹脂層とが接合された外装材の幅方向端部とに導電性溶液である水をたらし、両者にテスターを接続して電圧25Vを5秒間かけ電気抵抗値の測定をおこない、抵抗値が99.9GΩ以上である場合を合格とし、99.9GΩ未満を不合格とすること。」
図1
[図:0001390600000004.jpg]
カ 引用文献6について
(ア)引用文献6には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【請求項1】
主剤と硬化剤を含有する電池用包装材用ポリウレタン接着剤であって、
前記主剤が、数平均分子量が10,000~100,000であり、かつ、水酸基価が1~100mgKOH/gであるアクリルポリオール(A)を含み、
前記アクリルポリオール(A)由来のヒドロキシル基に対する、硬化剤中に含まれる芳香族ポリイソシアネート(B)由来のイソシアネート基の当量比[NCO]/[OH]が10~30であることを特徴とする電池用包装材用ポリウレタン接着剤。
・・・(省略)・・・。
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池などの二次電池用の電池用容器や電池パックを形成するための電池用包装材用のポリウレタン接着剤に関する。また、本発明は外層側樹脂フィルム層(11)と金属箔層(13)とをポリウレタン接着剤を用いて積層した電池用包装材に関する。さらに本発明は、外層側樹脂フィルム層(11)が外層に位置するように前記電池用包装材を成型してなる電池用容器、および前記電池用容器を用いてなる電池に関する。
・・・(省略)・・・。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、成されたものであり、ポリウレタンを形成するための主剤、即ちポリオール成分として、数平均分子量が10,000~100,000であり、かつ、水酸基価が1~100mgKOH/gであるアクリルポリオール(A)を含有し、前記アクリルポリオール(A)のヒドロキシル基に対し、相当過量な芳香族ポリイソシアネート(B)を硬化剤として含有する接着剤であって、
前記アクリルポリオール(A)由来のヒドロキシル基に対する硬化剤中に含まれる芳香族ポリイソシアネート(B)由来のイソシアネート基の当量比[NCO]/[OH]が10~30である電池用包装材用ポリウレタン接着剤に関する。
本発明の電池用包装材用ポリウレタン接着剤は、前記アクリルポリオール(A)のガラス転移温度(Tg)が-20℃~30℃であることが好ましい。」
(イ)引用文献6の【請求項1】、段落【0001】、【0008】によれば、引用文献6には、次の技術事項(以下、「引用文献6に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「主剤と硬化剤を含有する電池用包装材用ポリウレタン接着剤において、前記主剤が、数平均分子量が10,000~100,000であり、かつ、水酸基価が1~100mgKOH/gであるアクリルポリオール(A)を含み、前記アクリルポリオール(A)由来のヒドロキシル基に対する、硬化剤中に含まれる芳香族ポリイソシアネート(B)由来のイソシアネート基の当量比[NCO]/[OH]が10~30であること。」
キ 引用文献7について
(ア)引用文献7には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の耐ピンホール性を有するガスバリア性積層体の構成の一例を示す断面図である。また、図2は、本発明の耐ピンホール性を有するガスバリア性積層体の構成の他の例を示す断面図である。本発明の耐ピンホール性を有するガスバリア性積層体1は、図1の断面図に示すように、例えば、二軸延伸ポリアミド系フィルム2を最外層とし、無機酸化物からなる蒸着薄膜層5を形成した二軸延伸ポリアミド系フィルム4を基材とする透明ガスバリ性蒸着フィルム6との間に、該両基材に対して接着性を有する、密度が0.920g/cm3以下の接着性樹脂を溶融押出し、この接着樹脂層3を介して積層してなる積層体の最内層に、さらにシーラント層7を積層した構成のものである。
・・・(省略)・・・。
【0027】
上記フィルム基材4上に、無機酸化物からなる蒸着薄膜層5を設ける際の密着性を高めるために、必要に応じて透明アンカーコート層を設けることができる。これにより、内容物充填後の経時によるラミネート強度の劣化を防止することができる。
【0028】
上記目的を達成するために用いることができる透明アンカーコート樹脂としては、3官能オルガノシランあるいはその加水分解物と、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物等との複合物である。
・・・(省略)・・・。
【0030】
また、アクリルポリオールとは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もくしは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5~200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。」
(イ)引用文献7の段落【0018】、【0027】、【0028】、【0030】によれば、引用文献7には、次の技術事項(以下、「引用文献7に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「最外層である二軸延伸ポリアミド系フィルムと、蒸着薄膜層を形成した二軸延伸ポリアミド系フィルムを基材とする透明ガスバリ性蒸着フィルムとを接着樹脂層を介して積層してなる積層体の最内層に、さらにシーラント層を積層したガスバリア性積層体において、基材上に、蒸着薄膜層を設ける際の密着性を高めるために、3官能オルガノシランあるいはその加水分解物とアクリルポリオール及びイソシアネート化合物等との複合物である透明アンカーコート層を設け、アクリルポリオールは、末端にヒドロキシル基をもち、ヒドロキシル価が5~200(KOHmg/g)の間であること。」
図1
[図:0001390600000005.jpg]
ク 引用文献8について
(ア)引用文献8には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【請求項1】
少なくとも、外側層としての耐熱性樹脂層と、金属箔層と、これら両層間に配設された第1接着剤層とを含む成形用包装材であって、
前記第1接着剤層は、主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤で構成され、
前記ポリエステル樹脂がジカルボン酸およびジアルコールを原料とし、前記ジカルボン酸は、メチレン鎖のメチレン数が偶数の脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸とを含み、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の合計量に対する芳香族カルボン酸の含有率が40~80モル%であり、
前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が8,000~25,000、重量平均分子量(Mw)が15,000~50,000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3~2.5である、ことを特徴とする成形用包装材。
・・・(省略)・・・。
【0024】
[成形用包装材の構造]
図1に、本発明の一実施形態である成形用包装材1を示す。この成形用包装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられるものである。即ち、前記成形用包装材1は、深絞り成形等の成形に供されて2次電池ケースとして用いられるものである。
【0025】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されるとともに、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。
・・・(省略)・・・。
【0033】
(第1接着剤層)
前記第1接着剤層5は、金属箔層4と外側層である耐熱性樹脂層2との接合を担う層であり、主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤で構成されている。
・・・(省略)・・・。
【0037】
前記ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量(Mn)を8,000~25,000、重量平均分子量(Mw)を15,000~50,000の範囲にそれぞれ規定し、さらにこれらの比率(Mw/Mn)を1.3~2.5とする。数平均分子量(Mn)が8,000以上であり、重量平均分子量(Mw)が15,000以上であることで適性な塗膜強度と耐熱性が得られ、数平均分子量(Mn)が25,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が50,000以下であることで硬くなり過ぎずに適性な塗膜伸びが得られる。」
(イ)引用文献8の【請求項1】、段落【0024】、【0025】、【0033】、【0037】によれば、引用文献8には、次の技術事項(以下、「引用文献8に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「金属箔層上面に第1接着剤層を介して耐熱性樹脂層(外側層)が積層一体化されるとともに、前記金属箔層の下面に第2接着剤層を介して熱可塑性樹脂層(内側層)が積層一体化された構成からなる2次電池ケース用成形用包装材において、前記第1接着剤層は、主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤で構成され、前記ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量(Mn)を8,000~25,000に規定されること。」
図1
[図:0001390600000006.jpg]
ケ 引用文献9について
(ア)引用文献9には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、磁気テープ、磁気カード、磁気ディスク等の磁気記録媒体の製造に用いられるバインダー及びそのバインダーを用いた磁気記録媒体に関する。
・・・(省略)・・・。
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(C)からなる磁気記録媒体用バインダーであって、数平均分子量が10,000~50,000でガラス転移温度が50~150℃であるポリエステルポリオール(a1)を前記活性水素成分(A)が含有し、前記ポリウレタン樹脂(C)のガラス転移温度が70~160℃であることを特徴とする磁気記録媒体用バインダー並びに前記バインダーを含有してなる磁気記録媒体である。
・・・(省略)・・・。
【0021】
本発明における活性水素成分(A)は、Mnが10,000~50,000でガラス転移温度が50~150℃であるポリエステルポリオール(a1)を必須成分として含有するが、その他の成分として、Mnが500以上の高分子量ポリオール(a2)、化学式量又はMnが500未満の低分子量ポリオール(a3)、ポリアミン(a4)及び水を含有することができる。」
(イ)引用文献9の段落【0001】、段落【0006】、【0021】によれば、引用文献9には、次の技術事項(以下、「引用文献9に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「磁気テープ、磁気カード、磁気ディスク等の磁気記録媒体の製造に用いられ、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂(C)からなる磁気記録媒体用バインダーにおいて、前記活性水素成分(A)は数平均分子量が10,000~50,000でガラス転移温度が50~150℃であるポリエステルポリオール(a1)を含有すること。」
(2)進歩性についての当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「基材保護層」、「基材層」、「第1の接着層」、「金属箔層」及び「シーラント層」は、本件発明1の「基材保護層」、「基材層」、「接着層」、「金属箔層」及び「シーラント層」に相当する。
また、引用発明1の「第2の接着層」は、「腐食防止処理層」と「シーラント層」との間に積層されるものであるから、「シーラント層」を接着するための層であるといえ、本件発明1の「シーラント接着層」に相当する。
したがって、引用発明1の「基材保護層、易接着処理層、基材層、第1の接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2の接着層、シーラント層の順で積層される」構成は、本件発明1の「少なくとも基材保護層、基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及びシーラント層がこの順で積層された構造」に相当する。
b 本件特許明細書段落【0034】の「ポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリオールが好ましい。」、同段落【0038】の「アクリル樹脂は、繰り返し単位の末端もしくは側鎖、又はその両方水酸基を有するアクリルポリオールである。」との記載によれば、本件発明1の「ポリエステル樹脂」は「ポリエステルポリオール」を、「アクリル樹脂」は「アクリルポリオール」をそれぞれ含み、引用発明1の「ポリエステルポリオール」も本件発明1の「ポリエステル樹脂」に、引用発明1の「アクリルポリオール」も本件発明1の「アクリル樹脂」にそれぞれ含まれる。
また、引用発明1の「イソシアネート系硬化剤」は本件発明1の「硬化剤」に相当する。
そして、引用発明1の「基材保護層」は、「主剤」と「イソシアネート系硬化剤」とを含むから、硬化物であることは明らかである。
したがって、引用発明1の「基材保護層」が「繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の主剤と、イソシアネート系硬化剤とを含」む硬化物であることは、本件発明1の「前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であ」ることに相当する。
c 引用発明1では「ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールの水酸基はイソシアネート硬化剤と反応」するから、引用発明1の「水酸基」は本件発明1の「硬化剤と反応する反応性基」に相当する。
したがって、引用発明1において「ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール」が「繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有」し、該「水酸基」は「イソシアネート硬化剤と反応」することは、本件発明1の「前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有」する構成を備えているといえる。
d 本件発明1は「硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むのに対し、引用発明1は「「硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである」点で相違する。
e 本件発明1は「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。
f 引用発明1の「蓄電デバイス用外装材」は、本件発明1の「蓄電デバイス用外装材」に相当する。
上記aないしfにより、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「少なくとも基材保護層、基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及びシーラント層がこの順で積層された構造を備え、
前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であり、
前記ポリエステル樹脂又は前記アクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有する、蓄電デバイス用外装材。」
(相違点1)
本件発明1は「前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むのに対し、引用発明1は「硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである」点。
(相違点2)
本件発明1は「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。
(イ)判断
a 相違点1について
(a)引用発明1は「硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートであ」るところ、引用文献1には「脂環式イソシアネート」について明記されておらず、さらに「硬化剤」として「脂肪族イソシアネート」と「脂環式イソシアネート」とを併用することは記載されていない。
(b)また、本件発明1の「前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むことに関し、本件特許明細書の段落【0046】、【0048】には、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートとして、脂肪族イソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が、脂環式イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)が例示され、同段落【0166】には、実施例を構成する硬化剤として、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートとしてのヘキサメチレンジイソシアネートと、脂環式イソシアネートとしてのイソホロンジイソシアネートの混合物を用いることが記載されている。
ここで、引用文献1の段落【0110】には「電解液耐性の向上させる観点から、脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。」と記載されている。
しかし、引用文献1の段落【0106】に「硬化剤として用いるイソシアネートとしては、脂肪族イソシアネートでも芳香族イソシアネートでも構わないが、脂肪族イソシアネートが好ましい。」、同段落【0107】に「脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、例えば、・・・、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、・・・、イソホロンジイソシアネート、・・・等を用いることができる。」、同段落【0110】に「上記脂肪族系イソシアネート硬化剤と上記ポリオールの水酸基との反応性においては、イソホロンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性よりも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性の方が高いため、量産適性を考慮すると、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。」、同段落【0111】に「上述した主剤及び硬化剤の組み合わせとしては、アクリルポリオールと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体の組み合わせがより好ましい。」とそれぞれ記載され、引用文献1には「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」と「イソホロンジイソシアネート」とを硬化剤として併用する記載も示唆も見当たらない。
してみると、同段落【0110】の「脂肪族系イソシアネート硬化剤としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。」との記載は、「脂肪族系イソシアネート硬化剤」として列記された「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」又は「イソホロンジイソシアネート」のいずれか一方を使用すると解釈するのが自然であり、引用文献1に記載された実施例において硬化剤として「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」と「イソホロンジイソシアネート」を併用していないこともこれを裏付けているといえる。
よって、引用発明1は、「脂肪族系イソシアネート硬化剤」として「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」と「イソホロンジイソシアネート」
とを併用することを含むものとはいえない。
(c)そして、上記(b)で述べたように引用文献1には、「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」と「イソホロンジイソシアネート」を硬化剤として併用する記載や示唆は見当たらず、さらに、引用文献1の段落【0110】の「上記脂肪族系イソシアネート硬化剤と上記ポリオールの水酸基との反応性においては、イソホロンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性よりも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと上記ポリオールの水酸基との反応性の方が高いため、量産適性を考慮すると、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。」との記載からすれば、「1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート」と「イソホロンジイソシアネート」を硬化剤として併用することに動機付けがなく、むしろ阻害要因があるといえる。
(d)してみると、引用文献2に、保護層と基材層とバリア層と熱接着層とが順次積層して構成される電気化学セル用包装材料において、保護層は主剤、硬化剤を混合した樹脂により形成され、硬化剤をトリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)で構成する技術事項(上記「(1)イ(イ)」を参照)が記載されているとしても、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けは見出だせない。
また、引用文献3に記載された技術事項(上記「(1)ウ(イ)」を参照)は、電池を被覆する外装材に、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネート、及びこれらの混合物を使用することであり、引用文献4に記載された技術事項(上記「(1)エ(イ)」を参照)は、電池全体を覆う外装材に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が、キシレンジイソシアネート(XDI)系、イソホロンジイソシアネート(IPDI)系、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系を混合して用いることであって、引用文献3及び引用文献4に記載された技術事項には、基材保護層を形成するための硬化剤として脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと脂環式イソシアネートとを採用することは何等記載されていないから、引用発明1に引用文献3又は引用文献4に記載された技術事項を採用することは、当業者に動機付けられないことである。
(e)したがって、上記相違点1に係る構成は、引用発明1、引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
b 相違点2について
(a)仮に、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用することが動機付けられるとしても、以下の理由により、上記相違点2に係る構成は、引用発明1、引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(b)引用文献2に記載された技術事項における硬化剤の重量配合比は「TDIが2、HDIが0.5、IPDIが0.5」であるところ、脂環式以外のイソシアネートである「TDI」及び「HDI」と、脂環式イソシアネートである「IPDI」との重量配合比から、引用文献2に記載された技術事項における脂環式以外のイソシアネートの重量と脂環式イソシアネートの重量との比は、(2+0,5)/(2+0.5+0.5):0.5/(2+0.5+0.5)、即ち、83.3:16.7である。
また、引用文献2の段落【0030】には、硬化剤としてトリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を複数混合してもよいことが記載されているものの、複数混合した場合における重量配合比について、各イソシアネートをどのような範囲に規定すべきか何等記載されていない。
そして、引用文献3に記載された技術事項には、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量と脂環式イソシアネートの重量の比について記載されておらず、さらに、引用文献4に記載された技術事項には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)以外のイソシアネートの重量とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の重量の比をについて何等記載されていない。
(c)してみれば、引用発明1に引用文献2ないし引用文献4に記載された技術事項を適用したとしても、「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量と脂環式イソシアネートの重量との比が99/1~85/15である」との構成を導き出すことはできない。
(d)したがって、上記相違点2に係る構成は、引用発明1、引用文献2ないし4に記載された各技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された各技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2ないし本件発明10について
請求項2ないし本件発明10は、請求項1を直接的及び間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし本件発明10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
そして、引用文献5ないし引用文献9にも、基材保護層に含まれる硬化剤が、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと脂環式イソシアネートとを含むこと、及び、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量と脂環式イソシアネートの重量との比が99/1~85/15であることは記載されていないから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし本件発明10は、引用文献1に記載された発明および引用文献2ないし引用文献9に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明11について
(ア)対比
上記「ア(ア)」で検討した点を除き、本件発明11と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「金属箔層」、「第1の接着層」及び「基材層」は、本件発明11の「金属箔層」、「接着層」及び「基材層」に相当する。
してみれば、引用発明2の「金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面に、第1の接着層を介して、基材層の第1の面を接着」することは、本件発明11の「金属箔層の一方の面に、接着層を介して基材層を貼り合わせる工程」に相当する。
b 引用発明2の「基材保護層」は本件発明11の「基材保護層」に相当する。
そして、引用発明2において、「易接着処理層を介して、基材層と基材保護層とを接着する」ところ、「易接着処理層」は「基材層の第2の面」に形成され、「基材層の第1面」に「第1の接着層」を介して「金属箔層」が接着されるから、引用発明2では、「易接着処理層を介して」、「基材層」の「第1の接着層」とは反対側の面に「基材保護層」が接着されるといえる。
してみれば、引用発明2において「易接着処理層を介して」、「基材層」の「第1の接着層」とは反対側の面に「基材保護層」を接着することは、本件発明11の「基材層の前記接着層とは反対側の面に基材保護層を形成する工程」に相当する。
c 引用発明2の「シーラント層」は、本件発明11の「シーラント層」に相当する。
また、引用発明2の「第2の接着層」は、「腐食防止処理層の面に」「シーラント層を接着」するものであるから、本件発明2の「シーラント接着層」に相当する。
そして、引用発明2において、「金属箔層と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着」するところ、「金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面」に「第1の接着層」は位置するから、引用発明2では、「金属箔層」の「第1の接着層」とは反対側の面に形成された「腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着」するといえる。
してみれば、引用発明2において、「金属箔層」の「第1の接着層」とは反対側の面に形成された「腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着」することは、本件発明11の「金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程」に相当する。
d 引用発明2の「蓄電デバイス用外装材の製造方法」は、本件発明11の「蓄電デバイス用外装材の製造方法」に相当する。
上記aないしd、及び、上記「ア(ア)」で検討した点を踏まえれば、本件発明11と引用発明2とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「金属箔層の一方の面に、接着層を介して基材層を貼り合わせる工程、
前記基材層の前記接着層とは反対側の面に基材保護層を形成する工程、及び
前記金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程、を備え、
前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であり、
前記ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有する、蓄電デバイス用外装材の製造方法。」
(相違点3)
本件発明11は「前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むのに対し、引用発明2は「硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである」点。
(相違点4)
本件発明11は「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。
(イ)判断
相違点3及び相違点4は、上記相違点1及び相違点2と同じであるから、上記「ア(イ)」で述べたように、相違点3及び相違点4に係る構成は、引用発明2、引用文献2ないし4に記載された各技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明11は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された各技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
エ 本件発明12について
(ア)対比
上記「ア(ア)」で検討した点を除き、本件発明12と引用発明3とを対比する。
a 引用発明3の「基材層」及び「基材保護層」は、本件発明12の「基材層」及び「基材保護層」に相当する。
してみれば、引用発明3において「基材の第2の面」に形成された「易接着処理層を介して、基材層と基材保護層とを接着」することは、本件発明12の「基材層の一方の面に基材保護層を形成する工程」に相当する。
b 引用発明3の「金属箔層」及び「第1の接着層」、本件発明12の「金属箔層」及び「接着層」に相当する。
そして、引用発明3は「金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面に、第1の接着層を介して、基材層の第1の面を接着」するところ、「基材層の第2の面に、易接着処理層」が形成され、「易接着処理層を介して、基材層と基材保護層」が接着されるから、引用発明3では「基材層」の「基材保護層」とは反対側の「第1の面」を、「第1の接着層を介して」、「金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面」に「接着」するといえる。
してみれば、引用発明3において「基材層」の「基材保護層」とは反対側の「第1の面」を、「第1の接着層を介して」、「金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面」に「接着」することは、本件発明12の「基材層の基材保護層とは反対側の面に、接着層を介して金属箔層の一方の面を貼り合わせる工程」に相当する。
c 引用発明3の「シーラント層」は本件発明12の「シーラント層」に相当する。
また、引用発明3の「第2の接着層」は、「腐食防止処理層の面」に「シーラント層を接着する」ものであるから、本件発明12の「シーラント接着層」に相当する。
そして、引用発明3において「金属箔層と接触する面とは反対側に位置する腐食防止処理層の面に、第2の接着層を介して、シーラント層を接着する」ところ、「金属箔層の腐食防止処理層が形成された面の反対側に位置する面」に「第1の接着層」は位置するから、引用発明3では「金属箔層」の「第1の接着層」とは反対側の面に、「第2の接着層を介して、シーラント層を接着する」といえる。
よって、引用発明3において「金属箔層」の「第1の接着層」とは反対側の面に、「第2の接着層を介して、シーラント層を接着する」ことは、本件発明12の「金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程」に相当する。
d 引用発明3の「蓄電デバイス用外装材の製造方法」は、本件発明12の「蓄電デバイス用外装材の製造方法」に相当する。
上記aないしd、及び、上記「ア(ア)」で検討した点を踏まえれば、本件発明12と引用発明3とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「基材層の一方の面に基材保護層を形成する工程、
前記基材層の基材保護層とは反対側の面に、接着層を介して金属箔層の一方の面を貼り合わせる工程、及び
前記金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程、を備え、
前記基材保護層は、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂と、硬化剤とを含む原料の硬化物であり、
前記ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂は、前記硬化剤と反応する反応性基を末端もしくは側鎖、又はその両方に有する、蓄電デバイス用外装材の製造方法。」
(相違点5)
本件発明12は「前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むのに対し、引用発明3は「硬化剤として用いるイソシアネートは脂肪族イソシアネートである」点。
(相違点6)
本件発明12は「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15である」のに対し、引用発明3はその旨特定されていない点。
(イ)判断
相違点5及び相違点6は、上記相違点1及び相違点2と同じであるから、上記「ア(イ)で述べたように、相違点5及び相違点6に係る構成は、引用発明3、引用文献2ないし4に記載された各技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明12は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された各技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
オ 進歩性についての異議申立人の主張について
(ア)異議申立人の主張
異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張している。
a 甲第1号証の段落【0110】のように甲第1号証には、「前記硬化剤は、脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むことが記載されている。(26頁2ないし3行)
b また、本件特許明細書の表7,8を対比すると、[耐電解液評価][耐アルコール評価]において、IPDI-Nを15%とする実施例B20はSランク、10%の実施例B16と20%の出願当初の実施例B17はAランクで優れた効果を有していると判断できるが、出願当初の実施例B17は参考例B17と補正していることから、減縮後の「15%」という値に臨界的意義を認めるためには、当該参考例17と同じ評価の実施例B13ないしB16も参考例B17と同様に本件特許発明の権利範囲外とすべきところ、そのような補正はされていないことから、脂環式イソシアネートの上限比率である「15%」には臨界的意義は存在しないことは明らかである。(26頁26行ないし27頁3行)
c そして、甲第2号証の記載から算出された脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと脂環式イソシアネートとの比である「83.3/16.7」は本件特許発明1の所望の効果を奏すると考えられ、甲1発明において本件特許発明1における[a]/[b]の値を「99/1~83.3/16.7」の中間値に設定して「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~85/15」を満たすようにすることは当業者が容易になし得た設計事項である。(27頁2ないし7行)
(イ)当審の判断
a 上記「ア(イ)a(a)」及び「同(b)」で述べたように、引用発明1は、「硬化剤」が「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと、脂環式イソシアネートとを含」むものとはいえない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
b 本件特許についての出願は、令和3年3月25日付けで通知された拒絶理由に対し、令和3年5月25日の手続補正書による補正がなされたところ、当該補正は、拒絶理由で引用された引用文献(本件における「引用文献1(甲第2号証)」)に記載された実施例2ないし4が、出願当初の請求項1に記載された「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」である「99/1~80/20」の数値範囲に含まれるため、該数値範囲を「99/1~80/20」から「99/1~85/15」に変更し、それに伴い「99/1~85/15」から外れる当初明細書に記載された実施例B17を参考例17と補正したに過ぎない。
してみると、[耐電解液評価][耐アルコール評価]において参考例17と同じ評価の実施例B13ないしB16を、参考例B17と同様に本件特許発明の権利範囲外とすべき理由は見当たらない。また、本件特許明細書の段落【0192】、【0202】、及び、[表5]ないし[表8]に示された実施例B13ないしB16、実施例B20ないしB28によれば、「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比」が「99/1~85/15」の数値範囲において、「良好なPSA密着性」が得られるという引用発明が有する効果とは異質な効果を奏する。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
c 甲第2号証の記載から脂環式イソシアネート以外のイソシアネートと脂環式イソシアネートとの比である「83.3/16.7」が算出されたとしても、甲第2号証に記載された技術事項から本件発明1が奏する「良好なPSA密着性が得られる」という効果を得られる根拠は見当たらない。
そして、上記「ア(イ)b」で述べたように、引用発明1に引用文献2ないし引用文献4に記載された技術事項を適用したとしても、「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量と脂環式イソシアネートの重量との比が99/1~85/15である」との構成を導き出すことはできない。
さらに、甲第1号証に記載された発明において脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量と脂環式イソシアネートの重量との比を「99/1~83.3/16.7」の「中間値に設定」する理由も異議申立書には何等説明されていない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし12は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということができず、同法第113条第2号により取り消すことができない。
2 (理由2)サポート要件について
(1)異議申立人の主張(異議申立書第32頁第1行ないし第33頁第17行を参照)
ア 本件特許の請求項1における[a]/[b]の有効数字は、1の位まで有効であり、[a]の値を基準に小数点1桁を四捨五入すると、本件特許の請求項1に規定の[a]/[b]の上限は「99.4/0.6~98.5/1.5」の範囲を含み、下限は「85.4/14.6~84.5/15.5」の範囲を含む。
一方、実施例及び比較例で得られた数値は、小数点1桁まで含むため(表1、2、5、6(実施例B20~B28を除く))、上述した本件特許の請求項1における規定と有効数字の最小桁が一致していない。
ここで、本件特許明細書の段落【0169】の【表1】に記載の比較例A10は、[a]/[b]が「99.2/0.8」であり、上述した本件特許の請求項1で規定した[a]/[b]の数値範囲に含まれる。
しかしながら、段落【0171】の【表3】に記載のように、比較例A10は、本件特許の請求項1に規定の[a]/[b]の要件を充足するにもかかわらずPSA密着の評価に劣り段落【0045】の記載に矛盾する。
以上より、本件特許の請求項1に規定の[a]/[b]には所望の効果を奏さない範囲を含むものであることは明らかである。したがって、本件特許の請求項1に係る発明に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは言えないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。(32頁5行ないし33頁8行)
イ 本件特許の請求項2ないし10に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明を引用するものであり、本件特許の請求項11、12に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明における[a]/[b]と同様の規定を含む。よって、本件特許の請求項1に係る発明と同様に、本件特許の請求項2ないし12に係る発明に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。(33頁9ないし17行)
(2)当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)本件特許明細書の段落【0012】、【0021】、【0022】、【0045】、【0179】、【0202】には「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])が99/1~80/20である」と記載されているに過ぎず、これらの記載から「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」に関する上記数値が「有効数字」を記載したものであるとの結論を導くことはできない。
(イ)そして、本件特許明細書の【表1】(段落【0169】を参照)及び【表5】(段落【0187】を参照)の「基材保護層組成」「硬化剤[B]」「(a)/(b)」の欄を参照すると、「実施例A1」及び「実施例B13」は、それぞれ「99.0/1.0」と表記されており、該「99.0/1.0」の数値は本件発明1の「99/1」に相当する。
(ウ)さらに、同【表1】及び【表5】の「基材保護層組成」「硬化剤[B]」「(a)/(b)」の欄では、実施例B20ないしB28は「85/15」と表記されており、本件特許明細書の段落【0012】、【0021】、【0022】、【0045】、【0179】、【0202】の記載でも「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」を「99/1~80/20」と表記されているから、本件特許明細書における「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」の数値について「有効数字」を意識してなされているといえない。
(エ)してみれば、本件発明1の「比[a]/[b]」の上限が「99.4/0.6~98.5/1.5」の範囲を含み、下限が「85.4/14.6~84.5/15.5」の範囲を含むとは解されず、本件特許明細書の段落【0169】の【表1】に記載された比較例A10の「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比」の数値「99.2/0.8」が、本件発明1の[a]/[b]の数値範囲に含まれるとはいえない。
(オ)以上から、異議申立人の主張は、上記「比[a]/[b]」の数値が「有効数字」を記載したものであるとする前提において誤っており、採用できない。
イ 本件発明2ないし12について
本件発明2ないし12についても、本件発明1に対する理由と同様の理由で、異議申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、特許法第36条第6項第号の規定に違反してされたものではない。
3 (理由3)明確性について
(1)異議申立人の主張(異議申立書第33頁第18行ないし第35頁13行)
ア 請求項1ないし12
(ア)本件特許明細書に記載の実施例及び比較例で実際に得られた[a]/[b]の数値は、有効数字の最少桁が小数点1桁であり(表1、2、5、6 (実施例B20ないしB28を除く))、上述した本件特許の請求項1における規定と有効数字の最少桁が一致していない。そのため、本件特許の請求項1に規定された[a]/[b]の範囲が実際にどのような範囲までを含むのか、本件特許明細書の内容を考慮しても明確でない。本件特許の請求項1における[a]/[b]の範囲の下限についても同様である。
の下限についても同様である。
更に、本件特許の請求項1における[a]/[b]の範囲は、[a]の値を基準に小数点1桁を四捨五入すると、上限は「99.4/0.6~98.5~/1.5」の範囲を含み、下限は「85.4/14.6~84.5/15.5」に範囲を含み、[b]の値を基準に小数点1桁を四捨五入すると、上限は「99.5/0.5~98.6/1.4」の範囲を含み、下限は「85.5/14.5~84.6/15.4」の範囲を含むこととなり、[a]/[b]の範囲が当業者が理解できるように記載されておらず不明確である。
更に、本件特許明細書の段落【0169】の【表1】に記載の比較例A10の値は「99.2/0.8」であり、[a]、[b]のいずれを基準とした場合であっても本件特許の請求項1における[a]/[b]の上限の範囲に含まれるため、本件特許の請求項1において、[a]/[b]の値が実際のどのような範囲まで含まれるのか、当業者が理解できるように記載されておらず不明確である。(33頁23行ないし34頁14行)
(イ)本件特許の請求項2ないし10に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明を引用するものであり、本件特許の請求項11、12に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明における[a]/[b]と同様の規定を含む。よって、本件特許の請求項1に係る発明と同様に、本件特許の請求項2ないし12は不明確である。(34頁18ないし21行)
イ 請求項8ないし10
甲第10号証に記載されているように、ガラス転移温度は様々な測定方法があり、同じ測定方法でも条件が異なれば値は変わるものであるところ、本件特許明細書には基材保護層のガラス転移温度の測定方法は何ら記載も示唆もされておらず、如何なる測定方法を採用することで、本件特許の請求項8に係る「前記基材保護層のガラス転移温度(Tg)が60~150℃である」を充足するのかが明確でない。
以上より、本件発明の請求項8に係る発明及びこれを引用する本件発明の請求項9、10に係る発明に関して、特許請求の範囲の記載は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても不明確である。(34頁23行ないし35頁13行)
(2)当審の判断
ア 本件発明1ないし本件発明12(「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」)について
(ア)本件発明1について
上記「2(2)ア(ア)」で述べたように、本件特許明細書をみても、「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」の数値が「有効数字」を記載したものであるとする記載は何等見当たらないし、また、上記「同ア(ウ)」で述べたように、本件特許明細書の【表1】及び【表5】に示された実施例B20ないしB28の「比([a]/[b])」の数値、及び、同段落【0012】、【0021】、【0022】、【0045】、【0179】、【0202】の記載からすれば、本件特許明細書における「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」の数値について「有効数字」を意識してなされているといえない。
そして、本件特許明細書の【表1】及び【表5】に示された「実施例A1」及び「実施例B13」の「比[a]/[b]」は、それぞれ「99.0/1.0」と表記され、該「99.0/1.0」の数値が本件発明1の「99/1」に相当し、同【表6】に示された「実施例B20」ないし「実施例B28」の「比[a]/[b]」は、それぞれ「85/15」と表記され、該「85/15」の数値が本件発明1の「85/15」に相当するから、本件発明1の「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比([a]/[b])」の範囲は明確である。
また、上記「同ア(エ)」で述べたように、本件発明の「比[a]/[b]」の範囲が、[a]の値を基準に小数点1桁を四捨五入すると、上限は「99.4/0.6~98.5~/1.5」の範囲を含み、下限は「85.4/14.6~84.5/15.5」に範囲を含み、[b]の値を基準に小数点1桁を四捨五入すると、上限は「99.5/0.5~98.6/1.4」の範囲を含み、下限は「85.5/14.5~84.6/15.4」の範囲を含むとは解されず、本件特許明細書の段落【0169】の【表1】に記載された比較例A10の「脂環式イソシアネート以外のイソシアネートの重量[a]と脂環式イソシアネートの重量[b]との比」の数値「99.2/0.8」が、本件発明1の[a]/[b]の数値範囲に含まれるとはいえない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
(イ)本件発明2ないし12について
本件発明2ないし12についても、本件発明1に対する理由と同様の理由で、異議申立人の主張は採用できない。
イ 本件発明8ないし本件発明10(「ガラス転移温度(Tg)」)について
(ア)請求項8に「前記基材保護層のガラス転移温度(Tg)が60~150℃である」と記載されていることから、本件発明8は「基材保護層のガラス転移温度(Tg)」が「60~150℃」であることを規定するものであり、不明な点は見当たらない。
そして、「ガラス転移温度」は周知の物理量であり、具体的な測定方法等を示さなくても、「ガラス転移温度」の意味するところは明確である。
(イ)また、本件特許明細書には、「基材保護層のガラス転移温度」の測定方法や測定装置について明記されていないことから、本件発明8に記載された「基材保護層のガラス転移温度」を測定するための測定方法や測定装置は任意であるといえる。
そして、甲第10号証に記載されているようにガラス転移温度が測定方法や評価条件により変化するとしても、基材保護層のガラス転移温度の真値60~150℃が得られるよう、誤差等を含めた測定方法、測定装置、測定条件等を適宜選択することは当業者であれば当然なし得ることである。
(ウ)以上から、本件発明8の「前記基材保護層のガラス転移温度(Tg)が60~150℃である」ことは明確でないとはいえない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
(エ)また、本件発明9、10についても、本件発明8に対する理由と同様の理由で、異議申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上から、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし請求項12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700590