特許異議申立
2022-700577
熱可塑性エラストマー樹脂組成物
- 審判番号
- 2022-700577
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-236044
- 登録番号
- 6987626
- 請求日
- 2022年07月04日
- 審決日
- 2023年03月31日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
- 【異議申立人】萩原 真紀
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 小出 直也
- 審判官 井上 政志
- 分類
- P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6987626号発明「熱可塑性エラストマー樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6987626号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第6987626号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6987626号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年12月8日を出願日とする特許出願であって、令和3年12月3日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月4日に特許異議申立人 萩原 真紀(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和4年10月27日付け 取消理由通知
同年12月21日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者)
令和5年 1月 5日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛)
なお、当該通知書に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
令和4年12月21日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「フィラメント又はフィルム」と記載されているのを「フィラメント」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正前の請求項2~6は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。
3 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「フィラメント又はフィルム」を「フィラメント」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
上記のとおり、訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「フィラメント又はフィルム」を「フィラメント」に限定するものであるから、新規事項の追加に当たらないことは明らかであり、また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。
(2)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1による請求項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件発明
第2のとおり本件訂正は認められたので、特許第6987626号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1~6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメントと、基材シートとを含む複合シートであって、
前記熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、
ガラス転移温度(Tg)が25℃以上であるブロックA及びガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるブロックBを有するA-B-Aトリブロック共重合体と、
該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体Cと、
を含み、
前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満であり、前記単独重合体Cの重量平均分子量が前記A-B-Aトリブロック共重合体中のブロックAの重量平均分子量より大きく、
前記基材シートが伸長可能な不織布であり、前記フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている
複合シート。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、150%伸長後の戻り50%時応力が、0.1MPa以上である請求項1記載の複合シート。
【請求項3】
熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、前記A-B-Aトリブロック共重合体のうち、ブロックAがビニル芳香族重合体の含有量が90質量%以上のブロックであり、ブロックBがポリオレフィンの含有量が90質量%以上のブロックである請求項1又は2記載の複合シート。
【請求項4】
熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が15質量%以上40質量%未満である請求項1乃至3いずれか記載の複合シート。
【請求項5】
熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、
前記ブロックAがポリスチレンの含有量が90質量%以上のブロックであり、
前記単独重合体Cがポリスチレンである請求項3又は4記載の複合シート。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか記載の複合シートを用いた吸収性物品。」
第4 取消理由通知の理由及び特許異議申立書に記載された申立理由の概要並びに証拠方法
1 取消理由通知の理由の概要
当審が令和4年10月27日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
取消理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由2(甲第2,4,5号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2,4,5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由3(甲第3,4,5号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3,4,5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由の概略は以下のとおりである。
本件発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィルムについては、基材シートがどのように支持するのか特定されておらず、フィルムが伸長状態で不織布に接合されていたり、フィルムがたるんだ状態で不織布に接合されていたり、弾性を有しない層を介して不織布に接合するような形態も本件発明に含まれることになるが、そのようなものについては、本件発明の課題を解決できるとはいえず、本件発明は明細書の記載から発明の課題を解決できると認識することができる範囲を超えるものであるから、サポート要件に違反している。
2 特許異議申立書に記載された申立理由の概要
特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第2,4,5号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2,4,5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。(取消理由2と同じ)
(3)申立理由3(甲第3,4,5号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3,4,5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。(取消理由3と同じ)
(4)申立理由4(サポート要件違反) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は、上記1の取消理由4(サポート要件)と同旨である。
3 証拠方法
(1)申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:特許第3267975号公報
甲第2号証:特表2003-509564号公報
甲第3号証:国際公開第2007/119390号公報
甲第4号証:特許第3285359号公報
甲第5号証:特開2004-98356号公報
甲第6号証:再公表特許WO2014/7353号
甲第7号証:特表2009-530474号公報
甲第8号証:申立人が作成した意見書,令和4年6月30日
甲第9号証:Noushin Hasanabadi et al, Composites Science and Technology, Vol.149, 2017年, p192-206
甲第10号証:Lin Li et al, 日本レオロジー学会誌,Vol.16, 1988年, p117-124
甲第11号証:Myeong-Ho Hong and James L. White, Polymer Engineering and Science, Vol.44, No.11, 2004年, p2141-2147
以下、順に「甲1」ないし「甲11」という。
(2)当審が職権調査により発見した証拠方法
引用文献1:特開2015-892号公報(以下、「引1」という。)
第5 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、申立書に記載した理由及び当審が通知した取消理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 証拠に記載された事項
(1)甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである(以下同様)。
甲1ア「【請求項1】第一の厚さを少なくとも有する連続のエラストマーコア層、及び、第一の厚さよりも薄い第二の厚さを有する、少なくとも1層の、配向したプラスティックの連続の非弾性の外側表皮層、を含む弾性フィルムラミネートであって、
前記弾性フィルムラミネートは少なくとも1つの弾性領域及び少なくとも1つの非弾性領域に分割されており、
非弾性領域におけるエラストマーコア層は少なくとも1層の外側表皮層と実質的に連続の平面の接触をしており、該エラストマーコア層は前記弾性フィルムラミネートが緩和された状態であるときに前記第一の厚さよりも薄い厚さを有し、
少なくとも1つの弾性領域におけるエラストマーコア層は、緩和された状態において、前記第一の厚さを有し、かつ、弾性領域におけるエラストマーコア層の平面の表面積よりも大きな外側の表面積を有する少なくとも1層の連続の外側表皮層を有することを特徴とする、弾性フィルムラミネート。」
甲1イ「背 景
エラストマーフィルムはしばらくの間使用されてきており、そして、使い捨ておむつ製品、例えば、乳幼児用おむつ及び成人の失禁用デバイスでのその用途に関して文献中で議論されている。これらのエラストマーウェブ又はフィルムは衣料品の本体に接触する部分に主として使用される。これらの弾性体の多くは制御された弾性回復性を付与するように温度処理される。おむつにおいて、例えば、弾性バンドは、通常、ウエストバンド部分に使用され、Reisingらに付与された米国特許第4,681,580号及びLashの米国特許第4,710,189号に議論されている。これらの両方の特許は熱安定及び熱不安定の形のエラストマー材料に使用を記載している。この熱不安定の形は、材料の結晶温度及び二次相転移温度に加熱されたときに材料を延伸し、次いで、熱不安定に延伸された形で急速にクエンチして凍結させることにより作られる。熱不安定なエラストマーフィルムは、その後、例えば、おむつに適用されて、その後、加熱されて熱安定なエラストマーの形になる。」(2頁右欄10~28行)
甲1ウ「図4は、表皮層13がエラストマーコア層14から選択的に脱離された態様を示す。局所的に熱処理された非弾性領域11において、配向した表皮層13はエラストマーコア層に強固に結合されたままであり、また、配向及び続く局所熱処理により強化される。領域11のエラストマーコア14は、弾性領域12のエラストマーコア層と比較して薄い(図3)。弾性領域12で脱離された表皮層13は上記に議論した問題となるエラストマー層14への基材の直接的な結合を避けながら弾性領域12で結合表面を提供する。
図4の弾性体20も空気チャンネル15を提供する。これらのチャンネル15は、袖口又はおむつバンド又は足部バンドのような衣料品等の弾性化された領域に呼吸性を提供する。」(7頁左欄26~38行)
甲1エ「図7のラミネートは、図4のラミネートを使用した、弾性化された使い捨て衣料品、スリップオンおむつ又はトレーニングパンツにおいて外側カバーシート又は弾性パネルとしての使用に適切な構造体の例である。図3のラミネートは図7(及び図8~16)に示した構造体にも使用されうる。弾性ラミネート構造体30の弾性部分21及び23は、着る人のヒップ回りに弾性化されたサイドパネルを形成するように結合されるであろう。非弾性部分22は非弾性領域11と同様に形成され、そして、末端で吸収性パッドに結合され、好ましくは、吸収性パッド用の液体不透過性の外側カバー層に結合される。別には、非弾性部分22は弾性化されたおむつ又はトレーニングパンツの吸収性パッド構造上に液体不透過性の外側層を提供することができる。好ましい態様において、弾性ラミネート30は、ラミネートの少なくとも1つの面に結合した不織布層24を更に含み、弾性材料を強化し、又は、柔軟性を付与する。」(7頁右欄39行~8頁左欄5行)
甲1オ「例
2層の外側の非弾性の表皮層及び1層のエラストマーのコア層をを有する3層フィルムラミネートを製造するために連続同時押出し法を用いた。1機の押出機はエラストマーのコア層の材料をフィードするために使用され、そして、もう1機の押出機は、非弾性の表皮層材料を3層Coeren(商標)フィードブロック中にフィードするために使用された。得られた層状のメルトは単一マニホールドフィルムダイから押出しされ、キャストロール上にキャストされた。フィードブロック及びダイの温度は約400~540゜F(204~282℃)であり、キャストロール温度は約70~180゜F(21~82℃)であった。線速度は平均で約30フィート(9.14m)/分であった。フィルムラミネートの総厚さは3~10ミル(0.076~0.254mm)であり、コア/表皮(C/S)比は4:1~10:1に変化した。フィルム組成物、フィードブロック及びダイ温度、キャストロール温度、C/S比及び総フィルム厚さ(ミルで)を表1に提供する。
局所熱処理を使用して非弾性領域又はゾーンを弾性ラミネート上に作った。3インチ(7.62cm)幅の試料のフィルムは、第一に横方向(TD)に約3:1~6:1の比で延伸され、その後、パターン化された熱ロール上を通過し、それにより、フィルムの機械方向(MD)に走る平行な長手方向の非弾性領域のバンドとなった。加熱温度は約150~180゜F(66~82℃)であった。
サイクル延伸/加熱過程を使用して、フィルムラミネートの弾性化領域において外側の非弾性表皮層をエラストマーコア層から離層を行った。1.0インチx3.0インチ(2.54cmx7.62cm)試料(MDXTD)のフィルムを破断寸前まで横方向に延伸し(95~150%)、それは局所的に熱処理していない領域を活性化した。その後、フィルムをヒートガンにより供給された熱風(140゜F即ち、60℃)のストリーム中に入れた。フィルムは、弾性化された領域が完全に収縮されるまで加熱され、そして温められた(<1分)。その後、フィルムを熱から取り出し、破断寸前まで横方向に手で延伸し、そして、その後、直ぐに回復させた。フィルムを再び加熱し(<1分)、その後、横方向に循環的に延伸し、直ぐに開放した。この加熱/延伸過程は離層の観測まで繰り返され、又は、離層は起こりえなかった。3~10サイクル後に起こる離層は優れていると考えられた。離層の程度は視覚的に評価され、そして、離層なし(0)、離層困難(1)、良好な離層(2)、容易に離層、即ち、優れている(3)、及び非常に容易に離層(4)と分類した。離層観測を表IIに与える。」(9頁左欄19行~右欄31行)
甲1カ「
[図:0001399361000001.jpg]
」(10頁)
甲1キ「
[図:0001399361000002.jpg]
」(13頁)
甲1ク「表Iにおいて次の略語を使用して、表皮及びコア層に使用した材料を示す。
PP 3085はExxon Corporationから入手可能な36MFIのポリプロピレン、Escorene(商標)3085である。
PP 3445はExxon Corporationから入手可能な35MFIのポリプロピレン、Escorene(商標)3445である。
PP 1024はExxon Corporationから入手可能な12MFIのポリプロピレン、Escorene(商標)1024である。
LDPE 4012はDow Chemical Companyから入手可能な低密度ポリエチレン#4012である。
HDPE 52053はDow Chemical Companyから入手可能な高密度ポリエチレン#52053である。
K-1657はShell Chemical Companyから入手可能なスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、Kraton(商標)G-1657である。
K-1107はShell Chemical Companyから入手可能なスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー、Kraton(商標)1107である。
PU 2102-75AはDow Chemical Companyから入手可能なポリウレタン、Pellanthane(商標)2102-75Aである。
PS-G3はAmoco Oil Companyから入手可能なポリスチレン#G3である。
PS-666はDow Chemical Companyから入手可能なポリスチレン#666である。
PS-615はDow Chemical Companyから入手可能なポリスチレン#615である。
EVA 260はE.I.duPont de Nemours and Companyから入手可能なエチレン-ビニルアセテートコポリマー、Elvax(商標)660である。
PAMS 18-290はAmoco Oil Companyから入手可能なポリ(α-メチルスチレン)#18-290である。
Irganox(商標)1076はCiba-Geigy Corporationから入手可能な酸化防止剤である。
Amoco(商標)White Mineral oil #31USPはAmoco Oil Companyから入手可能な鉱油である。」(14頁左欄21行~右欄25行)
甲1ケ「例1及び例2は2層のポリプロピレンの外側の非弾性層、2層及び、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーのエラストマーのコア層、1層を有するフィルムラミネートである。2種の異なるポリプロピレンを使用した。非弾性の表皮層は、非弾性の表皮層としてPP 3085を有するフィルムラミネートの弾性化された領域において、エラストマーのコア層から脱ラミネートしたが、離層は困難であった。非弾性の表皮層としてPP 1024を有する試料では離層は観測されなかった。例3~12は、エラストマーのコア層への剛化剤であるポリスチレンの添加は離層を促進することを示す。例4~6は、エラストマーのコアに加えられるポリスチレンの量を変化させることの効果の例である。フィルムラミネートの離層特性又は弾性特性に対する実質的な効果は、ポリスチレンの量を10~20重量%に変化させることによっては観測されなかった。例8~10において、キャストロール温度を80~180゜F(27~82℃)に変化させた。キャストロール温度を120゜F(49℃)より上げると、離層に影響を与えなかった。」(14頁右欄26~44行)
甲1コ「例35
次の特徴を有する弾性フィルムラミネートを例11と同様に製造した。
表皮組成物:PP 1024
コア組成物:K-1107
コア中の添加剤:20%PS G-181及び0.5%Irganox(商標)10102
C/S比:7.25
フィルム厚さ:2.5ミル(62.5ミクロン)
1Amoco Oil Companyから入手可能なAmocoポリスチレン#1-G18-C7。
2Ciba-Geigy Corporationから入手可能な酸化防止剤
このフィルムラミネートを約6:1の比で横方向に延伸し、その後、パターン化された熱ロール(88℃)上を通過させた。このことは、フィルムの機械方向に走る、非弾性領域及び弾性領域の交互の平行な長手方向のバンド(約1.5mm幅)をもたらした。蒸気に記載の繰り返しの延伸及び熱仮構を使用して、フィルムラミネートの弾性化された領域においてエラストマーのコア層からの外側の非弾性の表皮層の離層を行った。
その後、フィルムラミネートを横方向に100%延伸し、使い捨ておむつカバー材料に使用される典型的な不織布ウェブ(17g/m2基本重量のポイント結合されたスパンボンドのポリプロピレン)を、アクリレートベースの接着剤転写テープ(3M Companyから入手可能な#950)を使用して、フィルムラミネートの片面にラミネートした。
機械方向の引張強度データは、Instron(商標)1122引張試験機を使用して弾性フィルム/不織布ラミネートに関して得られた。試験はASTM D-882の変形であった。1インチx3インチ(2.54cmx7.62cm)の試料を2.0インチ(5.08cm)ゲージ長さで置き、そして、20インチ(50.8cm)/分の速度で延伸した。6試料が試験された。データは35~45%延伸で、5300~6000g/インチ(2.09~2.36kg/cm)幅の範囲であった。比較のために、引張強度データが典型的なおむつバックシート材料である1.5ミル(37.5ミクロン)厚さのポリエチレンフィルム(Clopayから入手可能)で得られた。値は、400%延伸で1188g/インチ(0.47kg/cm)幅~730%延伸で1960g/インチ(0.77kg/cm)の範囲であった。」(15頁左欄33行~右欄9行)
甲1サ「
[図:0001399361000003.jpg]
」
甲1シ「
[図:0001399361000004.jpg]
」
(2)甲2に記載された事項
甲2には、次の事項が記載されている。
甲2ア 「【請求項1】 改善された弾性性能を有するエラストマーフィルム用熱可塑性ポリマー組成物であって、
(a)少なくとも2つのポリスチレン末端ブロックと、ビニル含有量が45重量パーセント以下である水素化された重合ジエンの中央ブロックとを有する52重量パーセント~60重量パーセントのブロックコポリマー、
(b)13重量パーセント~22重量パーセントのポリスチレン、および
(c)19重量パーセント~28重量パーセントのオイル
(ここで、(a)+(b)+(c)は合計で100重量パーセントになる)
を含む組成物。」
甲2イ 「(発明の分野)
本発明は、エラストマーフィルム用熱可塑性ポリマー組成物に関し、より具体的には、成人用、幼児用および女性用の衛生製品などの使い捨て衛生製品において使用されるフィルムとして押出し成形されるそのような組成物に関する。
(発明の背景)
応力緩和が低く、ヒステリシスが低く、かつ回収可能なエネルギーが大きい弾性フィルムに容易にすることができる押出し成形可能なエラストマー組成物が、米国特許第4,663,220号、同第4,789,699号、同第4,970,259号または同第5,093,422号に記載されている。そのようなエラストマーフィルムは、おむつのウエストバンドおよび不織布などの様々な適用品を作製する際に有用である。」(3頁3~12行)
甲2ウ 「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー(SEBS)およびポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)のエラストマーブロックコポリマーが、改善された加工特性を有する弾性フィルムへのより容易な押出し成形を行うことができる押出し成形可能な組成物を形成させるために他の材料と混合されている。例えば、それらはポリオレフィン(ポリプロピレンおよびポリエチレンなど)およびオイルと混合されている。添加物は組成物の押出し成形特性および弾性フィルムの加工特性を改善する一方で、そのような添加物は、特に25℃を越える温度では、得られたフィルムの弾性特性に対して有害な影響を与えている。」(3頁13~21行)
甲2エ 「(発明の開示)
本発明は、優れた応力緩和および増大した保持張力または保持負荷を高温で有するフィルムを押出し成形するための改善されたブロックコポリマー組成物である。本発明の組成物は、(a)少なくとも2つのポリスチレン末端ブロックと、ビニル含有量が45重量パーセント以下である水素化された重合ジエンの中央ブロックとを有する52重量パーセント~60重量パーセントのブロックコポリマー、(b)13重量パーセント~22重量パーセントのポリスチレン、および(c)19重量パーセント~28重量パーセントのオイル(ここで、(a)+(b)+(c)は合計で100重量パーセントになる)から構成される。」(4頁7~15行)
甲2オ 「実施例1
ポリマーA(ブロックコポリマー)を、標準的な溶液アニオン技術、その後の水素化により作製した。このSEBSポリマーの各ブロックの分子量は9,200-72,300-9,400であった。そのビニル含有量は38パーセントであり、その総スチレン含有量は20.2パーセントであった。 コンパウンド1を、57.79パーセントのポリマーAを17.26パーセントのChevronEA3000ポリスチレン(1.8g/10分のメルトフローおよび約300,000の数平均分子量を有する)および24.08パーセントのDRAKEOL34と予備混合することによって作製した。その後、この予備混合物をBaker Perkins社のMPC/V-50MKIII配合ライン(これは、32mmの共回転二軸側方フィーダーおよび75mmのクロスヘッド押出し機からなる)で425°F(218℃)において押出し成形した。完成したコンパウンド1を、その後、10インチ(2.54cm)フィルムダイを有するKillion社の30:1KL100の1インチ(2.54mm)押出し機で、厚さが0.0025インチ~0.0035インチ(0.0635mm~0.0889mm)のフィルムに注型した。ダイ温度は420°F~450°F(216℃~232℃)であった。コンパウンド1に基づく注型フィルムサンプルの応力緩和および保持された張力または負荷を上記の手順によって測定した。
その結果を下記の表3に示す。」(8頁最下行~9頁18行)
甲2カ 「実施例2ならびに比較用実施例3および4
実施例2ならびに比較用実施例3および4を実施例1に記載されているように調製したが、比較用実施例3では、スチレン性樹脂のHERCULES PICCOLASTIC D125(HERCULES PICCOLASTICは商標である)をポリスチレンEA300の代わりに使用した。ポリマーAおよびポリマーBは、本発明の範囲に含まれるSEBSブロックコポリマーである。ポリマーCおよびポリマーDは、フィルムを作製するために使用された市販されているSEBSブロックコポリマーの比較例である。実施例1および2ならびに比較用実施例3および4のために使用されたポリマーおよび配合を表1および表2に示す。分子量は、ポリマーの種々のブロックの分子量に関して表されている。」(9頁19~28行)
甲2キ 「【表1】
[図:0001399361000005.jpg]
【表2】
[図:0001399361000006.jpg]
100°F(37.8℃)における応力緩和試験の結果を下記の表3に示す。本発明の範囲に含まれるコンパウンド(コンパウンド1および2)の保持された張力または負荷は125psi(8.6bar)よりも大きく、本発明の範囲に含まれない配合物(比較用コンパウンド3および4)よりも大きいことを認めることができる。コンパウンド2の応力緩和がそれ以外の配合物よりもかなり小さいこともまた認めることができる。
【表3】
[図:0001399361000007.jpg]
」(9頁最下行~10頁下から2行)
(3)甲3に記載された事項
甲3には、次の事項が記載されている。
「請求の範囲
[1] ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックAを少なくとも2個および共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物単位の含有量が35~45質量%であり、重合体ブロックBにおける共役ジエンに由来する炭素-炭素二重結合の50%以上が水素添加されており、かつ重量平均分子量が70000~120000である水添ブロック共重合体(a)35~50質量部、ゴム用軟化剤(b) 30~50質量部、重量平均分子量が100000~400000であるポリスチレン系樹脂(c)5~25質量部 [ただし、(a)、(b)および(c)の合計は100質量部である]からなる熱可塑性エラストマ一組成物。」
「[6] 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマ一組成物からなるフィルム。」
「[0033] 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の水添ブロック共重合体の重量平均分子量 はGPC法によるポリスチレン換算の分子量であり、スチレン含有量、水素添加率、ビニル結合量は1H-NMR法により測定した。
また、以下の実施例および比較例において、熱可塑性エラストマ一組成物の物性は次の方法により評価した。
[0034] (1)分散性評価
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマ一組成物を240℃でプレス成形することによって厚さ約1mmのシートを得た。シートの透明性を目視により確認し、 分散性の指標とした。
〇:透明性が高ぐ分散性が良好
△:透明性があり、分散性が比較的良好
×:透明性が劣り、分散性が不良
[0035] (2)サイクルヒステリシス試験
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマ一組成物を240℃でプレス成形することによって厚さ約0.5mmのシートを得た。このシートより幅25mm、長さ75mmの短冊状試験片を作成し、インストロン引張り試験機を用い、つかみ具間距離25mm、試験温度25℃において試験速度250mm/分で 200%伸張させて30秒間保持し、その後試験速度250mm/分で0%まで縮ませ、そのときの100%伸張応力、200%伸張応力、200%伸張後30秒経過したときの保持応力、残留歪み(0%へ縮ませる際の伸張応力が0になる伸度)を測定した。
サイクルヒステリシス試験における 200%伸張時の応力緩和は、下記の式(1)を用いて計算した。
[0036] [数1]
[図:0001399361000008.jpg]
[0037] (3)長時間応力緩和試験
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマ一組成物を240℃でプレス成形することによって厚さ約1mmのシートを得た。このシートより幅25mm、長さ75mmの短冊状試験片を作成し、インストロン引張り試験機を用い、つかみ具間距離25mm、試験温度38℃において試験速度125mm/分で50%伸張させ、10時間保持し、そのときの初期応力、10時間後の保持応力を測定した。
長時間応力緩和試験における50%伸張時の応力緩和は、下記の式(2)を用いて計算した。
[0038] [数2]
[図:0001399361000009.jpg]
[0039] また、以下の実施例および比較例で使用した各成分の内容は以下のとおりである。
水添ブロック共重合体
水添ブロック共重合体(a-1)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロへキサン3000ml、開始剤として濃度10.5wt%sec-ブチルリチウム9.3mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを 130ml加えて1時間重合した。引き続いてイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を540ml加えて2時間重合を行い、その後さらにスチレン130mlを添加して1時間重合させた後、メタノール0.49mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。この反応混合液にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなるチーグラー系水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体 (以下、これを水添ブロック共重合体(a-1)と称する)を得た。水添ブロック共重合体(a-1)のスチレン含有量は40質量%、水添率は98%、ビニル結合含有量は9%、重量平均分子量は99000であった。
[0040] 水添ブロック共重合体(a-2)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロへキサン3000ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec-ブチルリチウム18.0mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを170ml加えて1時間重合した。引き続いてイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を720ml加えて2時間重合を行い、その後さらにスチレン170mlを添加して1時間重合させた後、メタノーノル0.95mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。この反応混合液にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなるチーグラー系水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体 (以下、これを水添ブロック 共重合体(a-2)と称する)を得た。水添ブロック共重合体(a-2)のスチレン含有量は40質量%、水添率は97%、ビニル結合含有量は8%、重量平均分子量は68000であった。
[0041]水添ブロック共重合体(a-3)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロへキサン3000ml、開始剤として濃度10.5wt%のsec-ブチルリチウム8.9mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを161ml加えて1時間重合した。引き続いてイソプレンとブタジエンの質量比=50/50の混合物を450ml加えて2時間重合を行い、その後さらにスチレン161mlを添加して1時間重合させた後、メタノール0.47mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。この反応混合液にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなるチーグラー系水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体 (以下、これを水添ブロック共重合体(a-3)と称する)を得た。水添ブロック共重合体 (a-3)のスチレン含有量 は50質量%、水添率は98%、ビニル結合含有量は9%、重量平均分子量は101000であった。
[0042] 水添ブロック共重合体(a-4)
セプトン4033 (商品名:(株)クラレ製;水添スチレン一イソプレン/ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン含有量30質量%、重量平均分子量95000)
[0043] 水添ブロック共重合体(a-5)
水添ブロック共重合体(a-1)と水添ブロック共重合体(a-4)を71/29の質量割合で混合し、水添ブロック共重合体(以下、これを水添ブロック共重合体(a-5)と称 する)を得た。水添ブロック共重合体(a-5)のスチレン含有量は37質量%、水添率は98%、ビニル結合含有量は9%、重量平均分子量は98000であった。
[0044] ゴム用軟化剤
(b-1):パラフィン系プロセスオイル(商品名:ダイアナプロセスオイルPW-90、出光興産 (株)製、40℃動粘度95.54mm2/s)
[0045] ポリスチレン系樹脂
(c-1):GPPS (商品名:679、PSジャパン(株)製、MFR=18g/10分、重量平均分子量199000)
[0046] エチレン系樹脂
低密度ポリエチレン(商品名:LC500、日本ポリケム(株)製、MFR=4.0g/10分)
[0047] 実施例1~6、比較例1~7
表1および2に示す組成で水添ブロック共重合体(a-1)~(a-5)、ゴム用軟化剤(b-1),スチレン系樹脂(c-1)、エチレン系樹脂を表1および2に示す質量割合で配合し、さらにフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010)を全ての成分の総質量に対し0.1%加え予め予備混合し、その後ブラベンダーミキサーを用いて240℃で5分間溶融混練した。得られた熱可塑性エラストマ一組成物を前述した(1)~(3) の方法に従って性能評価を行った。結果を表1および2に示す。
[0048] [表1]
[図:0001399361000010.jpg]
[0049] [表2]
[図:0001399361000011.jpg]
[0050] 表1および2の結果より、本発明の実施例から得られた熱可塑性エラストマ一組成物は応力緩和性、弾性回復性に優れている。」
「[0051] 本発明の熱可塑性エラストマ一組成物は、応力緩和性、柔軟性、耐候性、弾性回 復性に優れ、しかも環境汚染を起こす物質を含まないことから、紙おむつ、トイレットトレーニングパンツ、生理用品、下着等の衛生材料;湿布剤の基材、伸縮性テープ、包帯、手術着、サポーター、矯正着等の医療材料;ヘアーバンド、リストバンド、時計のバンド、眼鏡バンド等のバンド用途;輪ゴム、トレーニングチューブ等の雑貨などの幅広い用途に有効に使用することができ、特に紙おむつ、生理用品などの衛生材料用途に好適に用いることができる。」
(4)甲4に記載された事項
甲4には、次の事項が記載されている。
甲4ア 「【請求項1】不織繊維ウエブとエラストマーフイルムとの弾性積層シートにおいて、エラストマーフイルムと、前記積層シートを与えるように前記フイルムの表面に積層された不織繊維ウエブ、とからなり、然も、前記積層シートは、その積層シートを実質的に均一に横切る線に沿って、その厚み全体に亙って前記積層シートをインクレメント延伸することにより形成された、積層表面から外側に伸びる多数の繊維を有し、前記積層シートが伸縮性を有する、弾性積層シート。」
甲4イ 「〔発明の開示〕
本発明は、不織繊維ウエブとエラストマーフイルムとの弾性積層シートに関する。用語「弾性」とは、この明細書及び請求の範囲では、力を加えると伸びることができ、その力を除くとその元の状態又は実質的に元の状態へ戻ることができることを意味するものとして用いられている。この繊維ウエブは、積層シートを実質的に均一に横切る線に沿って、その厚み(depth)全体に渡って積層シートをインクレメント延伸することにより形成された、積層表面から外側へ伸びた多数の繊維を有する。この積層エラストマーフイルムは伸縮性(stretchable and recoverable)をもち、積層シートに弾性を与える。」(3頁左欄30~42行)
甲4ウ 「〔詳細な説明〕
本発明の主たる目的は、不織繊維ウエブとエラストマーフイルムとの弾性積層シートを高速製造機械で製造し、伸縮性積層体を与えることである。更に別の目的は、織物の外観及び軟らかい感触を維持しながら、充分な結合強度を有するそのような積層体を製造することである。上で述べたように、これら及び他の目的は、本発明の好ましい態様として、不織繊維ウエブとエラストマーフイルムとの積層シートを、その積層体を実質的に均一に横切る線に沿って、その厚み全体に亙って先ずインクレメント延伸することにより達成される。積層体をインクレメント延伸することにより、繊維ウエブがエラストマーフイルムに結合され、然も、伸びたり、本質的にその元の状態へ回復したりすることができる弾性シート物質が製造されることが見出された。更に、そのような積層複合体は、約500fpm程度の製造速度を達成するために、押出し及び延伸をインラインとして製造することができることが見出されている。一つの態様として、弾性積層体は、積層体の繊維ウエブ表面の柔らかい感触を維持しながら、エラストマーフイルムのために流体の通過に対し不透過性である特徴を有する、別法として、例えば、機械的微小機構を与えることにより、積層体又は複合体に種々の程度の蒸気又は空気透過性を与えることができる。好ましい態様として、本発明の弾性積層体は、オムツ、パンツ、手術服、シート、衣服、衛生用品等を含めた多くの用途で利用することができるソフトな感触の望ましい特徴を有する。」(3頁右欄41行~4頁左欄17行)
(5)甲5に記載された事項
甲5には、次の事項が記載されている。
「【請求項3】
エラストマーフィルムと不織布とを積層してなる伸縮性複合シートであって、
前記シートは、一方向に延びる高伸縮領域と低伸縮領域とを有し、両領域は交互に且つ多列に配列されており、前記シートはこれらの領域の列方向と直交する方向に伸縮可能となっており、
前記不織布は、前記高伸縮領域においては塑性変形可能となっていると共に前記低伸縮領域においては実質的に塑性変形せず、
前記低伸縮領域に、該低伸縮領域の長さ方向に沿って多数の開孔が所定間隔を置いて形成されている伸縮性複合シート。」
「【0016】
以上の構成を有する本実施形態の伸縮性シート1は、低伸縮領域6における不織布3,4が、その不織布構造を維持しているので、伸縮性シート1全体として不織布の布様の良好な風合いを呈する。また過度の毛羽立ちがない。一方、高伸縮領域5においては、エラストマーフィルム2は伸縮が可能になっており、不織布3,4の何れもが伸長可能になっているので、伸縮性シート1全体として十分な伸縮性が発現する。このように、本実施形態の伸縮性シート1においては、不織布の布様の良好な風合いと十分な伸縮性とがバランスしている。また、本実施形態の伸縮性シート1はその伸張状態において開孔7が大きく開口し、該開孔7を通じて空気の流通が可能になる。つまり伸縮性シート1は十分な通気性を発現する。更に、伸縮性シート1は非伸張状態においては実質的に開口していないので、伸縮性シート1の伸張の程度に応じて、その通気性の程度を調整できるという利点がある。従って、本実施形態の伸縮性シート1は、例えば使い捨ておむつのサイドパネル部材、マスク、包帯などの構成部材として好適に使用される。
【0017】
不織布の布様の良好な風合いや外観と、十分な伸縮性や伸長性とをバランスさせる観点から、非伸張状態における高伸縮領域5の面積は、伸縮性シート1全体の面積の5~50%、特に5~20%であることが好ましい。一方、低伸縮領域6の面積は、伸縮性シート1全体の面積の50~95%、特に80~95%であることが好ましい。また、伸縮性シート1の具体的な用途にもよるが、高伸縮領域5の幅は0.5~20mm、特に1~10mmであることが好ましい。一方、低伸縮領域6の幅は0.1~10mm、特に0.3~5mmであることが好ましい。」
「【0023】
不織布としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、又はこれらの複合不織布(例えばスパンボンド/メルトブローン/スパンボンド不織布)など、公知の不織布を用いることができる。不織布を構成する繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなるポリオレフィン系繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルからなるポリエステル系繊維;6ナイロン、6,6ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂からなるポリアミド系繊維、あるいは前記樹脂から成る芯鞘型やサイドバイサイド型の繊維等が用いられる。これらは単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。これらの繊維の繊度は1~10デニールとすることが好ましい。前述の不織布のうち、特に伸縮性が良く、毛羽立ちが少なく、加工性、特に塑性変形が容易である点から、スパンボンド不織布やスパンボンド/メルトブローン/スパンボンド不織布を用いることが好ましい。2枚の不織布3,4は、前述した通り同種でも異種でもよい。各不織布は、その坪量が5~100g/m2、特に10~50g/m2であることが、風合い、触感、しっかり感、強度の点から好ましい。」
「【0045】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の伸縮性複合シートの製造方法によれば、良好な風合い、高い伸縮性及び高い通気性を有する伸縮性不織布を、簡略な工程で、安価に製造することができる。本発明の製造方法によって得られる伸縮性複合シートは、不織布構造を維持しつつ大きな伸縮性を有する。従って、この伸縮性複合シートは、人の肌に直接触れる物品の構成材料、例えば使い捨ておむつのパネル部材、マスク、包帯などとして好適に使用される。」
(6)甲6に記載された事項
甲6には、次の事項が記載されている。
「【0096】
・シリル化ウレタン樹脂(1):ポリオキシプロピレンジオール/イソホロンジイソシアネート/N-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン/メチルアクリレート=93.7/2.3/2.2/1.8(質量比)、重量平均分子量:5万、溶剤:酢酸エチル、固形分濃度:70質量%。
・スチレン-block-(エチレン-co-ブテン)-block-スチレントリブロック共重合体(SEBS)樹脂(1):シェル化学社製、製品名「クレイトンG1657」、スチレン含量:13質量%、重量平均分子量:15万、溶剤:酢酸エチル、固形分濃度:30質量%。
・ポリイソブチレン系樹脂(1):OppanolB50(製品名、BASF社製、重量平均分子量34万のポリイソブチレン系樹脂)/OppanolB30(製品名、BASF社製、重量平均分子量20万のポリイソブチレン系樹脂)=100/10(質量比)のポリイソブチレン系樹脂混合物、溶剤:トルエン、固形分濃度:20質量%。
(7)甲9に記載された事項
甲9には、次の事項が記載されている。
甲9ア「
[図:0001399361000012.jpg]
」(193頁左下欄項目2.1)
甲9イ「
[図:0001399361000013.jpg]
」
(201頁図9の下の文章)
甲9ウ「
[図:0001399361000014.jpg]
」
(202頁図10)
(8)甲10に記載された事項
甲10には、次の事項が記載されている。
甲10ア「
[図:0001399361000015.jpg]
」
(118頁左欄下部)
(9)引1に記載された事項
引1には、次の事項が記載されている。
「【0065】
(実施例2)
廃家電製品から回収された耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)65部、汎用ポリスチレン(GPPS)のPSJ-ポリスチレンGPPS679(PSジャパン社製)17部、耐衝撃改質剤S-2001(三菱レイヨン社製)3部及びリン系難燃剤PX-200(大八化学社製)15部をドライブレンドした。次に、ホッパーを用いて、混合物を投入した後、2軸押出混練機KZW20TW(テクノベル社製)を用いて、210℃で溶融混練し、3mm角程度のペレットを得た。」
2 申立理由1(甲1に基づく新規性),取消理由1(甲1に基づく進歩性)について
申立理由1と当審が通知した取消理由1は証拠が同じであるため、まとめて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1には、「第一の厚さを少なくとも有する連続のエラストマーコア層、及び、第一の厚さよりも薄い第二の厚さを有する、少なくとも1層の、配向したプラスティックの連続の非弾性の外側表皮層、を含む弾性フィルムラミネートであって、
前記弾性フィルムラミネートは少なくとも1つの弾性領域及び少なくとも1つの非弾性領域に分割されており、
非弾性領域におけるエラストマーコア層は少なくとも1層の外側表皮層と実質的に連続の平面の接触をしており、該エラストマーコア層は前記弾性フィルムラミネートが緩和された状態であるときに前記第一の厚さよりも薄い厚さを有し、
少なくとも1つの弾性領域におけるエラストマーコア層は、緩和された状態において、前記第一の厚さを有し、かつ、弾性領域におけるエラストマーコア層の平面の表面積よりも大きな外側の表面積を有する少なくとも1層の連続の外側表皮層を有することを特徴とする、弾性フィルムラミネート」
についての記載があり(甲1ア)、例5において、(エラストマー)コア層として「K-1657」と15%の「PS-666」との組成物を用いたものが記載されている(甲1カ)。
そして、コア層を構成するK-1657は「Shell Chemical Companyから入手可能なスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、Kraton(商標)G-1657」であり、PS-666は「Dow Chemical Companyから入手可能なポリスチレン#666」である(甲1ク)。
そうすると、甲1には、以下の発明(「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「第一の厚さを少なくとも有する連続のエラストマーコア層、及び、第一の厚さよりも薄い第二の厚さを有する、少なくとも1層の、配向したプラスティックの連続の非弾性の外側表皮層、を含む弾性フィルムラミネートであって、
前記弾性フィルムラミネートは少なくとも1つの弾性領域及び少なくとも1つの非弾性領域に分割されており、
非弾性領域におけるエラストマーコア層は少なくとも1層の外側表皮層と実質的に連続の平面の接触をしており、該エラストマーコア層は前記弾性フィルムラミネートが緩和された状態であるときに前記第一の厚さよりも薄い厚さを有し、
少なくとも1つの弾性領域におけるエラストマーコア層は、緩和された状態において、前記第一の厚さを有し、かつ、弾性領域におけるエラストマーコア層の平面の表面積よりも大きな外側の表面積を有する少なくとも1層の連続の外側表皮層を有することを特徴とする、弾性フィルムラミネートにおいて、
エラストマーコア層が15%のPS-666(Dow Chemical Companyから入手可能なポリスチレン#666)を含むKraton G-1657(Shell Chemical Companyから入手可能なスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー)から構成される、弾性フィルムラミネート」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「エラストマーコア層」を構成する「Kraton G-1657」は、「スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー」であり、本件明細書において、ブロックAを構成する材料の好ましいものとして「スチレン」が例示され([0015])、ブロックBを構成する材料の好ましいものとして「1,3-ブタジエン」やその水素添加物が例示され([0019])、A-B-Aトリブロック共重合体の好ましいものとして「スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)」が例示されている([0020])ことからみて、「Kraton G-1657」の「スチレン」ブロックが本件発明1の「ガラス転移温度が25℃以上であるブロックA」に相当し、「エチレン-ブチレン」ブロックが本件発明1の「ガラス転移温度が25℃未満であるブロックB」に相当し、「Kraton G-1657」全体が本件発明1の「A-B-Aトリブロック共重合体」に相当する。
なお、甲9の202頁、図10aには、「SEBS1657」のtanδには、-30℃付近と80℃付近にピークがみられることが示されており(甲9ウ)、そのことについて201頁右欄2~5行には、それぞれのピークがエチレン-ブチレンドメイン及びPSドメインのガラス転移温度に相当することが示され(甲9イ)、さらに図10aの「SEBS1657」は、193頁左欄の項目2.1(甲9ア)に記載された、「Kraton」の「SEBS G1657」のことであると認められる。このことからみても、甲1発明の「Kraton G-1657」は、本件発明1の「ガラス転移温度(Tg)が25℃以上であるブロックA及びガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるブロックBを有するA-B-Aトリブロック共重合体」に相当するといえる。(甲9は英語で記載されているが、上記は当審の仮訳である。)
また、甲1発明の「エラストマーコア層」を構成する「PS-666」はポリスチレンであり、「Kraton G-1657」のスチレンブロックの単独重合体(すなわちポリスチレン)と同じ材料であるから、両者の相溶性はきわめて高く、本件明細書の[0025]に「本実施形態においては、単独重合体A及び単独重合体Cを上記条件で混合した状態でガラス転移点温度(Tg)をDSC測定した場合において、得られたピーク(増加と減少が変わる場所)が1つしか存在しない状態を「相溶性が高い」とすることができる。」と記載されていることや、本件明細書の[0026]に単独重合体Cの例として「ポリスチレン」が挙げられていることを考慮すると、甲1発明の「PS-666」は本件発明1の「該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体C」に相当する。
甲1発明において、「Kraton G-1657」と「PS-666」との合計質量に対する「PS-666」の質量は15質量%であり、このことは本件発明1の「前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満であり」に相当する。
甲1発明の「弾性フィルムラミネート」は、「エラストマーコア層」と他の層から構成されるシート状のものであるから、本件発明1の「複合シート」に相当する。また、甲1発明の「エラストマーコア層」は、「弾性フィルムラミネート」を構成するフィルム状の層であり、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する層」である限りにおいて、本件発明1の「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント」と一致する。
そうすると、両者は、
「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する層を含む複合シートであって、
前記熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、
ガラス転移温度(Tg)が25℃以上であるブロックA及びガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるブロックBを有するA-B-Aトリブロック共重合体と、
該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体Cと、
を含み、
前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満である、
複合シート」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する層を含む複合シート」が、本件発明1では「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメントと、基材シートをと含む複合シート」であって、かつ「全前記基材シートが伸長可能な不織布であり、前記フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」ものであるのに対し、甲1発明では「第一の厚さを少なくとも有する連続のエラストマーコア層、及び、第一の厚さよりも薄い第二の厚さを有する、少なくとも1層の、配向したプラスティックの連続の非弾性の外側表皮層、を含む弾性フィルムラミネート」である点
<相違点1-2>
単独重合体Cの重量平均分子量が、本件発明1では「A-B-Aトリブロック共重合体中のブロックAの重量平均分子量より大き」いものであるのに対し、甲1発明ではそのことの特定がない点
イ 相違点についての判断
相違点1-1について検討する。
甲1発明は「弾性フィルムラミネート」についての発明であり、それを構成する「エラストマーコア層」もフィルム状のものであるところ、甲1には、エラストマーコア層を「フィラメント」とすることについて記載がないし、ましてやエラストマーコア層を「フィラメント」とした上で、「フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」という構成とすることについては記載も示唆もない。
よって、甲1発明において、相違点1-1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することではない。
そして、相違点1-1が当業者が容易に想到することでない以上、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明であるとも、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、フィルム状の「エラストマーコア層」を開示する甲1によって、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント又はフィルム」を含む訂正前の本件発明1のうち、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィルム」の部分について、甲1により新規性がない旨を主張している。
しかし、訂正により、本件発明1は「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント」を含むものとされ、その構成が甲1に記載がなく、また甲1の記載から当業者が容易に想到するものでもないことは、上記イで示したとおりである。
よって、申立人の主張は採用することができない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1が甲1に記載された発明であるとも、また甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明2~6についても、甲1に記載された発明であるとも、また甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
よって、本件発明1~6は、甲1に記載された発明であるとも、また甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではなく、申立理由1及び当審が通知した取消理由1によっては取り消すことができない。
3 申立理由2(甲2,4,5に基づく進歩性),取消理由2(甲2,4,5に基づく進歩性)について
申立理由2と当審が通知した取消理由2をまとめて検討する。
(1)甲2に記載された発明
甲2には、
「改善された弾性性能を有するエラストマーフィルム用熱可塑性ポリマー組成物であって、
(a)少なくとも2つのポリスチレン末端ブロックと、ビニル含有量が45重量パーセント以下である水素化された重合ジエンの中央ブロックとを有する52重量パーセント~60重量パーセントのブロックコポリマー、
(b)13重量パーセント~22重量パーセントのポリスチレン、および
(c)19重量パーセント~28重量パーセントのオイル
(ここで、(a)+(b)+(c)は合計で100重量パーセントになる)
を含む組成物」
が記載されており(甲2ア)、その具体例として、実施例2では、ポリマーBを57.90質量%、DRAKEOL34オイルを23.45質量%、1.8MFIポリスチレンを17.78質量%、抗酸化剤を0.87質量%含む組成物からフィルムが製造されている(甲2オ~キ)。
そして、「ポリマー B」は重量平均分子量が10000-76400-10000、ビニル含有量が38重量%、スチレン含有量が21.6重量%のSEBSブロックコポリマーであり(甲2カ、キ)、「SEBSブロックコポリマー」は「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」のことであり(甲2ウ)、「1.8MFIポリスチレン」は、同じ成分を含む実施例1において「ポリスチレン(1.8g/10分のメルトフローおよび約300,000の数平均分子量を有する)」と記載されていることから、1.8g/10分のメルトフローおよび約300,000の数平均分子量を有するポリスチレンである(甲2キの表2及び甲2オ)。
そうすると、実施例2で製造されたフィルムに着目すると、甲2には以下の発明(「甲2発明」という。)が記載されている。
「重量平均分子量が10000-76400-10000、ビニル含有量が38重量%、スチレン含有量が21.6重量%のポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマーを57.90質量%、1.8g/10分のメルトフローおよび約300,000の数平均分子量を有するポリスチレンを17.78質量%、DRAKEOL34オイルを23.45質量%、抗酸化剤を0.87質量%含む組成物から形成されたフィルム」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
本件明細書において、ブロックAを構成する材料の好ましいものとして「スチレン」が例示され([0015])、ブロックBを構成する材料の好ましいものとして「1,3-ブタジエン」やその水素添加物が例示され([0019])、A-B-Aトリブロック共重合体の好ましいものとして「スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)」が例示されていることからみて、甲2発明の「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」の「ポリスチレン」ブロックが本件発明1の「ガラス転移温度が25℃以上であるブロックA」に相当し、「ポリ(エチレン-ブチレン)」ブロックが本件発明1の「ガラス転移温度が25℃未満であるブロックB」に相当し、「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」全体が本件発明1の「A-B-Aトリブロック共重合体」に相当する。
また、甲2発明の「ポリスチレン」は、「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」のポリスチレンブロックの単独重合体(すなわちポリスチレン)と同じ材料であるから、上記1(2)アと同様の理由により、本件発明1の「該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体C」に相当する。
そして、甲2発明の「ポリスチレン」は、数平均分子量が約300,000であるから、重量平均分子量はそれよりも大きな値となることは明らかであり、「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」のポリスチレンブロックの重量平均分子量(10000)よりも大きいから、このことは本件発明1の「前記単独重合体Cの重量平均分子量が前記A-B-Aトリブロック共重合体中のブロックAの重量平均分子量より大き」いことに相当する。
また、甲2発明において、「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」と「ポリスチレン」との合計質量に対する「ポリスチレン」の質量は17.78/(57.90+17.78)×100=23.5質量%であり、このことは本件発明1の「前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満であり」に相当する。
そして、甲2発明のフィルムは、「ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンのエラストマーブロックコポリマー」を含む樹脂組成物から形成されるものであり、「フィルム」と「フィラメント」はいずれも「成形体」の一種であるから、甲2発明のフィルムは、本件発明1の「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント」と「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する成形体」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、
「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する成形体を含む材料であって、
前記熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、
ガラス転移温度(Tg)が25℃以上であるブロックA及びガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるブロックBを有するA-B-Aトリブロック共重合体と、
該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体Cと、
を含み、
前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満であり、前記単独重合体Cの重量平均分子量が前記A-B-Aトリブロック共重合体中のブロックAの重量平均分子量より大きい、
材料。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
「成形体を含む材料」が、本件発明1では「フィラメントと、基材シートとを含む複合シート」であって、「前記基材シートが伸長可能な不織布であり、前記フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」ものであるのに対し、甲2発明では「フィルム」である点
イ 相違点2についての判断
甲2発明は「フィルム」についての発明であるし、それを構成する材料は甲2の請求項1に記載されるように「エラストマーフィルム用」であるから、甲2には、「フィルム」を「フィラメント」とすることについて記載がないし、ましてや「フィルム」を「フィラメント」とした上で、「フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」という構成とすることについては記載も示唆もない。
また、甲4には、「不織繊維ウエブとエラストマーフイルムとの弾性積層シート」についての記載があり(甲4ア)、甲5には、「エラストマーフィルムと不織布とを積層してなる伸縮性複合シート」について記載があるものの(請求項3)、甲4,甲5にもエラストマーフィルムを「フィラメント」とすることについて記載がないし、ましてや「エラストマーフィルム」を「フィラメント」とした上で、「フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」という構成とすることについては記載も示唆もない。
よって、甲2発明において、相違点2に係る構成とすることは、甲4,甲5の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。
したがって、本件発明1は甲2,甲4,甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、フィルムを開示する甲2と、甲4,甲5の記載により、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント又はフィルム」を含む訂正前の本件発明1のうち、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィルム」の部分について、進歩性がない旨を主張している。
しかし、訂正により、本件発明1は「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント」を含むものとされ、その構成が甲2,甲4,甲5の記載から当業者が容易に想到するものでないことは、上記イで示したとおりである。
よって、申立人の主張は採用することができない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1が甲2,甲4,甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明2~6についても、甲2,甲4,甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
よって、本件発明1~6は、甲2,甲4,甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではなく、申立理由2及び当審が通知した取消理由2によっては取り消すことはできない。
4 申立理由3(甲3,4,5に基づく進歩性),取消理由3(甲3,4,5に基づく進歩性)について
申立理由3と当審が通知した取消理由3をまとめて検討する。
(1)甲3に記載された発明
甲3には、「ビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロックAを少なくとも2個および共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックBを少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物単位の含有量が35~45質量%であり、重合体ブロックBにおける共役ジエンに由来する炭素-炭素二重結合の50%以上が水素添加されており、かつ重量平均分子量が70000~120000である水添ブロック共重合体(a)35~50質量部、ゴム用軟化剤(b) 30~50質量部、重量平均分子量が100000~400000であるポリスチレン系樹脂(c)5~25質量部 [ただし、(a)、(b)および(c)の合計は100質量部である]からなる熱可塑性エラストマ一組成物」についての記載があり(請求の範囲第1項)、その組成物は特に紙おむつ、生理用品などの衛生材料用途に好適に用いることができること([0051])、その組成物をフィルムとすること(請求の範囲第6項)も記載されている。
そして、その発明を具体化した実施例1では、水添ブロック共重合体(a-1)を48質量%、ゴム用軟化剤(b-1)を37質量%、ポリスチレン系樹脂(c-1)を15質量%含む組成物から厚さ約0.5mmのシート(フィルム)が形成されたことが記載されている([0035],[0048])。
また、上記「水添ブロック共重合体(a-1)」は、スチレンを重合し、その後イソプレンとブタジエンの混合物を加えて重合し、その後スチレンを加えて重合し、その後水素添加を行うことで得られた、スチレン含有量40質量%、水添率98%、ビニル結合含有量9%、重量平均分子量99000の共重合体である([0039])。この共重合体は、その重合工程からみて、スチレン-(イソプレン-ブタジエン)-スチレンブロック共重合体の水素添加物、すなわちスチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体であると認められる。
そして、上記「ポリスチレン系樹脂(c-1)」は、GPPS (商品名:679、PSジャパン(株)製)であり、重量平均分子量が199000のものである([0045])。
また、引1の[0065]の記載によれば、PSジャパン製のGPPS679は汎用ポリスチレン(すなわち、ポリスチレン)である。
そうすると、実施例1に着目すると、甲3には、以下の発明(「甲3発明」という)が記載されているといえる。
「熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムであって、
前記熱可塑性エラストマー組成物は、
スチレン含有量40質量%、水添率98%、ビニル結合含有量9%、重量平均分子量99000のスチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体を48質量%、
重量平均分子量199000のポリスチレンを15質量%、
ゴム用軟化剤を37質量%含む、
フィルム」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3発明との対比
本件明細書において、ブロックAを構成する材料の好ましいものとして「スチレン」が例示され([0015])、ブロックBを構成する材料の好ましいものとして「1,3-ブタジエン」、「イソプレン」やその水素添加物が例示され([0019])、A-B-Aトリブロック共重合体の好ましいものとして「スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)」が例示されていることからみて、甲3発明の「スチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体」の「スチレン」ブロックが本件発明1の「ガラス転移温度が25℃以上であるブロックA」に相当し、「エチレン-エチレン-プロピレン」ブロックが本件発明1の「ガラス転移温度が25℃未満であるブロックB」に相当し、「スチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体」全体が本件発明1の「A-B-Aトリブロック共重合体」に相当する。
また、甲3発明の「ポリスチレン」は、「スチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体」のスチレンブロックの単独重合体(すなわちポリスチレン)と同じ材料であるから、上記1(2)アと同様の理由により、本件発明1の「該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体C」に相当する。
そして、甲3発明の「スチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体」は、スチレン含有量が40質量%、重量平均分子量が99000であるから、スチレン部分の重量平均分子量は99000×40/100=39600であり、スチレンブロックは2つあるので、1つあたりの重量平均分子量は19800となる。
甲3発明の「ポリスチレン」の重量平均分子量は199000であり、上記19800よりも大きいから、このことは本件発明1の「前記単独重合体Cの重量平均分子量が前記A-B-Aトリブロック共重合体中のブロックAの重量平均分子量より大き」いことに相当する。
また、甲3発明において、「スチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体」と「ポリスチレン」との合計質量に対する「ポリスチレン」の質量は15/(48+15)×100=23.8質量%であり、このことは、本件発明1の「前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満であり」に相当する。
そして、甲3発明のフィルムは、「スチレン-(エチレン-エチレン-プロピレン)-スチレンブロック共重合体」を含む熱可塑性エラストマー組成物から形成されるものであり、「フィルム」と「フィラメント」はいずれも「成形体」の一種であるから、甲3発明のフィルムは、本件発明1の「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント」と「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する成形体」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、
「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有する成形体を含む材料であって、
前記熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、
ガラス転移温度(Tg)が25℃以上であるブロックA及びガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるブロックBを有するA-B-Aトリブロック共重合体と、
該ブロックAの単独重合体と混合した状態でガラス転移点温度(Tg)を測定した場合において、得られるピークが1つしか存在しない単独重合体Cと、
を含み、
前記A-B-Aトリブロック共重合体と前記単独重合体Cとの合計質量に対する前記単独重合体Cの質量が50質量%未満であり、前記単独重合体Cの重量平均分子量が前記A-B-Aトリブロック共重合体中のブロックAの重量平均分子量より大きい、
材料。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
「成形体を含む材料」が、本件発明1では「フィラメントと、基材シートとを含む複合シート」であって、「前記基材シートが伸長可能な不織布であり、前記フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」ものであるのに対し、甲3発明では「フィルム」である点
イ 相違点3についての判断
甲3には、甲3発明における「フィルム」を「フィラメント」とすることについて記載がなく、ましてや「フィルム」を「フィラメント」とした上で、「フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」という構成とすることについては記載も示唆もない。
また、上記3(2)イで指摘したように、甲4,甲5にもエラストマーフィルムを「フィラメント」とすることについて記載がないし、ましてや「エラストマーフィルム」を「フィラメント」とした上で、「フィラメントが互いに交差せずに一方向に延びるように多数配列し、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、前記伸長可能な不織布に接合されている」という構成とすることについては記載も示唆もない。
よって、甲3発明において、相違点3に係る構成とすることは、甲4,甲5の記載を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。
したがって、本件発明1は甲3~甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、フィルムを開示する甲3と、甲4,甲5の記載により、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント又はフィルム」を含む訂正前の本件発明1のうち、「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィルム」の部分について、進歩性がない旨を主張している。
しかし、訂正により、本件発明1は「熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含有するフィラメント」を含むものとされ、その構成が甲3~甲5の記載から当業者が容易に想到するものでないことは、上記イで示したとおりである。
よって、申立人の主張は採用することができない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1が甲3~甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明2~6についても、甲3~甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)まとめ
よって、本件発明1~6は、甲3~甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではなく、申立理由3及び当審が通知した取消理由3によっては取り消すことはできない。
5 申立理由4(サポート要件),取消理由4(サポート要件)について
申立理由4と当審が通知した取消理由4をまとめて検討する。
申立理由4は、「フィラメント又はフィルム」を含む訂正前の本件発明1~6のうち、「フィルム」の部分について、サポート要件を満たさないことを主張するものである。
しかし、訂正により「フィラメント又はフィルム」からサポート要件を満たさないとされた「フィルム」の部分は削除された。
よって、本件発明1~6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当するものではなく、申立理由4及び当審が通知した取消理由4によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許に対する令和4年12月21日付け訂正請求による訂正は、適法であるから、これを認める。
そして、申立書に記載した理由及び当審が通知した取消理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700577