特許異議申立
2022-700571
包餡型ナチュラルチーズおよびその製造方法
- 審判番号
- 2022-700571
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-548963
- 登録番号
- 6989261
- 請求日
- 2022年07月01日
- 審決日
- 2022年10月17日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社明治
- 【権利者代理人】葛和 清司
- 【異議申立人】河野 広明
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-Y (A23C) / P1651.537-Y (A23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6989261号発明「包餡型ナチュラルチーズおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6989261号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6989261号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)9月18日(優先権主張 2014年(平成26年)9月19日)を国際出願日とする特願2016-548963号に係るものであって、令和3年12月6日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月1日に特許異議申立人 河野 広明(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、これらを総称して「本件発明」という場合がある。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
弾力性があるナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズを、包餡機を使用して定量的かつ連続的に大量生産する方法であって、前記外層で内容物を包餡する工程を含み、該工程を35℃~60℃の温度範囲内で行い、外層となる弾力性があるナチュラルチーズを、内容物に対して定量的かつ連続的に供給して、包餡機で包餡し、外層となる弾力性があるナチュラルチーズが、85℃での加熱時に下記弾力性評価において弾力性が4以上であるパスタフィラータチーズである、前記方法。
<弾力性評価>
50gのチーズまたはチーズカードの中心付近を2つの把持手段で把持し、2つの把持手段を左右に5cm/secで引き伸ばし、チーズまたはチーズカードが切断された時点での2つの把持手段の間の距離を計測する。同様の計測を3回以上行い、平均距離から弾力性を評価する。
弾力性1: 10cm未満
弾力性2: 10cm以上20cm未満
弾力性3: 20cm以上50cm未満
弾力性4: 50cm以上100cm未満
弾力性5: 100cm以上。
【請求項2】
外層となる弾力性があるナチュラルチーズが、原料乳を凝乳酵素により凝固させたチーズカードから調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外層となる弾力性があるナチュラルチーズが、チーズカードを50~100℃の水中で混練させて調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
外層となる弾力性があるナチュラルチーズが、チーズカードのpHを4~7に調整して調製される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
パスタフィラータチーズが、モッツァレラチーズ、カチョカバロチーズ、スカモルツァチーズ、プロバローネチーズまたはストリングチーズである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パスタフィラータチーズが、フレッシュチーズである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
包餡された内容物が、食品または医薬品である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
包餡された内容物が、外層となる弾力性があるナチュラルチーズと異なるチーズである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年7月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第4号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・85℃における弾力性が4以上との性質が本件発明の課題を解決するためにどのような技術的意義を有しているか不明であるからサポート要件を満たさない。
4 証拠方法
甲第1号証:特開平5-227886号公報
甲第2号証:独立行政法人農畜産業振興機構 調査・報告 畜産の情報、
2019年12月号「国産ナチュラルチーズの現状と国産
チーズ 工 房 な ど の 動 向」
<https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000850.html#title5>
甲第3号証:日本化学会誌,1993,(1),第28~34頁「繊維構
造チーズのレオロジー的性質と繊維性におよぼす延伸操作の
影響」
甲第4号証:特開2001-231531号公報
甲第5号証:社団法人日本食品機械工業会、平成10年5月20日発行
「最新・日本の食品機械総覧<1999~2000>」、第
234~235頁
甲第6号証:株式会社化学工業社、昭和63年3月1日発行「食品製造装
置百科事典」第116~119頁
なお、証拠の表記は、おむね特許異議申立書の記載に従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
以下に記載するように、特許異議申立人の申立理由1ないし3はいずれも理由がない。
1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「チーズ被覆食品及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線については当審において付与した。以下同じ。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 単独では保形性を有しないペースト状の食品の外側をプロセスチーズ類で被覆して、保形性のあるものとしたことを特徴とするチーズ被覆食品
【請求項2】 二重ノズルの内側からペースト状食品を押し出し、二重ノズルの外側から60℃~25℃に予備冷却したプロセスチーズ類を押し出して、二重構造の棒状食品とし、この棒状食品を包餡機能をもったカッターで絞るようにカットすることにより、ペースト状食品をプロセスチーズ類で包み込み、ついで冷却固化することを特徴としたチーズ被覆食品の製造法
【請求項3】 包餡機能をもったカッターが2枚以上の合成樹脂の刃からなるシャッターであり、噛み合う形でプロセスチーズ類の外皮を切断面の中心に向かって引っ張りながら押し切ることを特徴とする請求項2記載のチーズ被覆食品の製造法
【請求項4】 冷却固化は15℃~-10℃とした請求項2記載のチーズ被覆食品の製造法」
・「【0004】
【課題を解決する為の手段】この発明では、保形性の無いペースト状食品を保形性を有するチーズ類で被覆して、スナックサイズの食品とすることにある。
【0005】本発明者等の研究によれば、プロセスチーズ類をある一定温度領域に冷却すると餅状の性質を有するため、ペースト状食品を包み込むことが可能である。さらにプロセスチーズ類は冷却固化すれば、通常の取り扱いではもはや容易には変形しないものである。
【0006】この発明の製造法は、二重ノズルの外側から予備冷却したプロセスチーズ類を押し出し、二重ノズルの内側からペースト状食品を押し出して、二重構造の棒状食品とし、この棒状食品を包餡機能をもったカッターで絞るようにカットすることにより、ペースト状食品をプロセスチーズ類で包み込み、これをさらに冷却して保形性を有するものとしたことを特徴とするチーズ被覆食品の製造法である。次に、包餡機能をもったカッターが2枚以上の合成樹脂の刃からなるシャッターであり、噛み合う形でプロセスチーズ類の外皮を切断面の中心に向かって引っ張りながら押し切ることを特徴としたものである。
【0007】この発明の方法によれば棒状食品の側面は勿論チーズ類に被覆されているし、切断面も外皮のチーズに覆われ、内相のペースト状食品が露出することはない。
【0008】前記チーズ類は加熱溶融後、包み込みに適した餅状の性質とするため60℃~25℃に冷却して、二重ノズルの外側に供給される。
【0009】この発明に使用されるペースト状食品としては、例えばクリームチーズ、クワルク、マスカルポーネなどのソフトチーズ類、トマトケチャップ、マヨネーズなどの調味料、各種ソース類、マーガリンなどの油脂加工食品、ジャム、カスタードクリーム、ピーナッツバターなどである。
【0010】
【実施例1】チェダーチーズ10kg、及びゴーダチーズ10kgを粉砕後、トリポリリン酸ナトリウム0.5kg、水1kgとともにチーズニーダーに投入し、常法により85℃まで加温する。ついで溶融したプロセスチーズをかきとり式熱交換機で50℃に冷却し、これを包餡機の二重ノズルの外側に供給した。一方、クリームチーズ20kgをチーズニーダーで80℃に加温して二重ノズルの内側に供給した。二重ノズルから押し出して得られる二重構造の棒状食品をプロセスチーズ対クリームチーズの重量比が1:1になるようにして、包餡機能をもったカッターで絞るようにカットすることで直径3cmのボール状のプロセスチーズの中にクリームチーズが包含されたスナックサイズチーズが成形出来た。これを直ちにクーリングベルトで15℃まで冷却して、保形性のある製品が得られた。製品はプロセスチーズとクリームチーズが二重になった、風味、食感ともに新規なおいしいものであった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、上記アから、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1発明>
「単独では保形性を有しないペースト状の食品の外側をプロセスチーズ類で被覆して、保形性のあるものとしたチーズ被覆食品の製造方法であって、二重ノズルの内側からペースト状食品を押し出し、二重ノズルの外側から60℃~25℃に予備冷却したプロセスチーズ類を押し出して、二重構造の棒状食品とし、この棒状食品を包餡機能をもったカッターで絞るようにカットすることにより、ペースト状食品をプロセスチーズ類で包み込み、ついで冷却固化するチーズ被覆食品の製造法。」
(2)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「単独では保形性を有しないペースト状の食品の外側をプロセスチーズ類で被覆して、保形性のあるものとしたチーズ被覆食品」は、本件発明1の「チーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型チーズ」に相当する。
甲1発明の「二重ノズルの内側からペースト状食品を押し出し、二重ノズルの外側から60℃~25℃に予備冷却したプロセスチーズ類を押し出して、二重構造の棒状食品とし、この棒状食品を包餡機能をもったカッターで絞るようにカットすることにより、ペースト状食品をプロセスチーズ類で包み込」む工程部分は、本件発明1の「外層で内容物を包餡する工程」に相当し、甲1発明においても「外層となるチーズを、内容物に対して定量的かつ連続的に供給して」いるといえる。
してみれば、上記工程を有する甲1発明は、「包餡機を使用して定量的かつ連続的に大量生産する方法」といえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「チーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型チーズを、包餡機を使用して定量的かつ連続的に大量生産する方法であって、前記外層で内容物を包餡する工程を含み、外層となるチーズを、内容物に対して定量的かつ連続的に供給して、包餡機で包餡する、前記方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
内容物を包餡する工程に関し、本件発明1は「35℃~60℃の温度範囲内で行い」と特定するのに対し、甲1発明は、60℃~25℃に予備冷却したプロセスチーズ類を押し出してカッターで絞るようにカットすることにより包み込むものであるものの、カット時点(包餡工程時点)での温度は不明である点
<相違点1-2>
「外層」となる「チーズ」に関し、本件発明1は「弾力性があるナチュラルチーズ」であって、「85℃での加熱時に弾力性評価において弾性力が4以上であるパスタフィラータチーズ」と特定するのに対し、甲1発明は、「プロセスチーズ」である点
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1発明は、外層を構成するチーズとして保形性のあるプロセスチーズの利用を前提とした製造方法であって(甲1の特許請求の範囲の請求項1を参照)、甲1及びその余の提出された証拠には、甲1発明の「プロセスチーズ」を、「弾力性があるナチュラルチーズ」であって、「85℃での加熱時に弾力性評価において弾性力が4以上であるパスタフィラータチーズ」とする動機となる記載はなく、むしろ、「プロセスチーズ」を変更するには阻害要因があるともいえる。
そうすると、甲1発明において、相違点1-2に係る発明特定事項とすることが当業者において想到容易であったと言うことはできない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明及びその余の提出された証拠に基づいても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものではない。
(4)まとめ
よって、申立理由1には理由がない。
2 申立理由2(甲4に基づく進歩性)について
(1)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「食料製品の複合押し出し成形方法と、該方法を実現するための複合押し出し成形装置、および、該方法による食料製品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1種類の充填物を包む固い包皮を有する食料製品(5)を、その製品の包皮となるベースの食料品(3)と、少なくとも1種類の充填用食品材料(4)とを基にして、これら包皮材料と充填材料が供給される押し出しダイス(6)を備える複合押し出し成形装置(1)の中で製造する方法であって、
押し出しダイスは、第1の区画の中を長手方向に少なくとも1つの充填材料移送用注入管(14)が貫通しており、その注入管の中を充填材料が通過し、この第1の区画は上記押し出しダイス(6)の第2の区画(S2)に通じており、この第2の区画が始まる部分は、最も短い(L1)注入管の出口の端部(22)によって規定されており、
押し出しダイスの第1の区画(S1)において、冷却によって固化する包皮を形成するステップと、
押し出しダイスの第2の区画(S2)において、その押し出しダイスの第1の区画で形成された固い包皮の中に、その第1の区画を貫通する注入管(14、27、28、29)から出てくる充填材料を充填するステップと、
充填材料が中に詰まった包皮を外側に有する製品を上記押し出しダイスの出口(21)から回収するステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】 上記包皮を、上記押し出しダイスの第1の区画において、典型的には水またはそれと同様の他の流体を循環させる冷却により形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】 上記包皮材料として、ナチュラル・チーズ、新鮮なカード、溶けていない特製チーズを用いる、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
・・・
【請求項5】 -充填材料と包皮材料を供給ホッパー(7、8)の中で約90℃の温度にて調製するステップと、
-上記供給ホッパー(7、8)と押し出しヘッド(11)の間の位置で、充填材料を約80℃に冷却し、包皮材料を約60℃に冷却するステップと、
-包皮材料が固化するよう、押し出しダイスの第1の区画を約50℃に冷却して包皮材料を押し出し成形するステップと、
-押し出しダイスの第2の区画(S2)を約30℃に冷却して、第1の区画で製造された包皮の中に詰め込まれる充填材料を押し出し成形するステップと、を含み、
上記押し出しダイスから出てくる製品の温度が約38℃になっている、
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】 TE:システムの供給ホッパーの中にある包皮材料の温度、
TFn:対応する供給ホッパーの中にある充填材料nの温度、
TFIL1:押し出しダイスの長さL1に対応する部分の壁面の平均温度、
TFILn:押し出しダイスの長さLn-L(n-1)に対応する部分の壁面の平均温度、
TP1:注入管1の出口における製品の平均温度、
TPn:注入管nの出口における製品の平均温度、
TFILFIN:押し出しダイスの長さL-Lnに対応する部分の壁面の平均温度、
TPFIN:押し出しダイスの出口における製品の平均温度、という定義において、
上記複合押し出し成形装置の内部における温度が、
TE=TFn=TFIL1=TFILn=TFILFIN=TP1=TPn=TPFIN=2~10℃
となるようにされている、ことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】 上記複合押し出し成形装置の内部における温度が、
TE=TFn=30~80℃、
80℃>TFIL1>TFILn>TFILFIN=30℃、
TP1=TPn=TPFIN=70~35℃、
となるようにされている、ことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。」
・「【0062】製品は、押し出しダイスから出ると、さまざまな長さにスライスされると同時に、それ以外の機械的処理もなされ、極めて多彩な形状の製品となる。例えば、図8(a)は、一口分に切った状態を表わしており、図8(b)と図9は、薪の形をした製品を表わしている。図8(c)と図8(d)は、両端をつまんで閉じた製品を表わしており、図8(e)は、球形の製品を表わしている。」
・「【0065】以下に、包皮材料と充填材料の成分について詳しく説明する。本発明の一つの実施態様によれば、複合押し出し成形された製品の成分は、EPA 260 194に記載された特製チーズの成分と同様である。包皮材料は、乾燥成分を少なくとも50%含む熟成チーズF1をもとにして得られる。さらに詳細には、このチーズは中身が圧搾されたチーズで、加熱はされていてもいないくてもよいが、溶けたチーズは除外される。乾燥成分に対する脂肪分の割合は、例えば約25%以上である。このようなチーズはシネレシスを起こすことはない。よい結果をもたらすチーズは、特にオランダのチーズ(ゴーダ、エダム、ミモレット、レーダームール)か、または中身が圧搾されたチーズ(サン-ポーラン、エメンタール、コンテ、チェダー)である。」
・「【図8】
[図:0001390597000001.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
甲4には、上記アから、図8の(c)ないし(e)の製品の製造方法として、以下の発明が記載されているといえる。
<甲4発明>
「少なくとも1種類の充填物を包む固い包皮を有する食料製品(5)を、その製品の包皮となるベースの食料品(3)と、少なくとも1種類の充填用食品材料(4)とを基にして、これら包皮材料と充填材料が供給される押し出しダイス(6)を備える複合押し出し成形装置(1)の中で製造する方法であって、
押し出しダイスは、第1の区画の中を長手方向に少なくとも1つの充填材料移送用注入管(14)が貫通しており、その注入管の中を充填材料が通過し、この第1の区画は上記押し出しダイス(6)の第2の区画(S2)に通じており、この第2の区画が始まる部分は、最も短い(L1)注入管の出口の端部(22)によって規定されており、
押し出しダイスの第1の区画(S1)において、冷却によって固化する包皮を形成するステップと、
押し出しダイスの第2の区画(S2)において、その押し出しダイスの第1の区画で形成された固い包皮の中に、その第1の区画を貫通する注入管(14、27、28、29)から出てくる充填材料を充填するステップと、
充填材料が中に詰まった包皮を外側に有する製品を上記押し出しダイスの出口(21)から回収するステップとを含んでおり、
包皮材料として、ナチュラル・チーズを用い、
食料製品は、押し出しダイスから出ると、さまざまな長さにスライスされると同時に、それ以外の機械的処理もなされ、両端をつまんで閉じた製品とされる、
方法。」
(2)本件発明1について
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「包皮材料として、ナチュラルチーズを用い」た「両端をつまんで閉じた製品」は、本件発明1の「ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型チーズ」に相当する。
甲4発明の「押し出しダイスから出ると、さまざまな長さにスライスされると同時に、それ以外の機械的処理もなされ、両端をつまんで閉じた製品とされる」工程部分は、本件発明1の「外層で内容物を包餡する工程」に相当するから、甲4発明においても具体的な装置の構造は不明であるものの、機械で「包餡する」ものといえる。
甲4発明の「少なくとも1種類の充填物を包む固い包皮を有する食料製品(5)を、その製品の包皮となるベースの食料品(3)と、少なくとも1種類の充填用食品材料(4)とを基にして、これら包皮材料と充填材料が供給される押し出しダイス(6)を備える複合押し出し成形装置(1)の中で製造する」ことから、甲4発明においても「外層となるナチュラルチーズを、内容物に対して定量的かつ連続的に供給して」いるといえ、また、上記工程を有する甲4発明は、「機械を使用して定量的かつ連続的に大量生産する方法」ともいえる。
そうすると、本件発明1と甲4発明は、
「ナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型チーズを、機械を使用して定量的かつ連続的に大量生産する方法であって、前記外層で内容物を包餡する工程を含み、外層となるナチュラルチーズを、内容物に対して定量的かつ連続的に供給して、機械で包餡する、前記方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
包餡してなる包餡型ナチュラルチーズの製造装置に関し、本件発明1は「包餡機を使用し」と特定するのに対し、甲4発明は、押出成形により形成された固い包皮に充填物が包まれたものを、機械で包餡するものであるものの、具体的な機械は不明である点
<相違点4-2>
外層を形成するナチュラルチーズに関し、本件発明1は、「弾力性がある」ものであり「85℃での加熱時に下記弾力性評価において弾力性が4以上であるパスタフィラータチーズである」
「<弾力性評価>
50gのチーズまたはチーズカードの中心付近を2つの把持手段で把持し、2つの把持手段を左右に5cm/secで引き伸ばし、チーズまたはチーズカードが切断された時点での2つの把持手段の間の距離を計測する。同様の計測を3回以上行い、平均距離から弾力性を評価する。
弾力性1: 10cm未満
弾力性2: 10cm以上20cm未満
弾力性3: 20cm以上50cm未満
弾力性4: 50cm以上100cm未満
弾力性5: 100cm以上。」
と特定するのに対し、甲4発明は、この点を特定しない点
<相違点4-3>
包餡する工程の温度条件に関し、本件発明1は、「該工程を35℃~60℃の温度範囲内で行い」と特定するのに対し、甲4発明は、包餡工程での温度条件は不明である点
事案に鑑み、相違点4-2について検討する。
甲4及びその余の提出された証拠には、甲4発明のナチュラルチーズとして、「弾力性がある」ものであって、「85℃での加熱時に弾力性評価において弾性力が4以上であるパスタフィラータチーズ」とする動機となる記載はない。
そして、甲4のような冷却した包皮の中に充填物を押し出して成形する食品の包皮として、「弾力性がある」ナチュラルチーズであって、「85℃での加熱時に弾力性評価において弾性力が4以上であるパスタフィラータチーズ」が周知であったとも認められない。
そうすると、甲4発明において、相違点4-2に係る発明特定事項とすることが当業者において想到容易であったと言うことはできない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明、すなわち、甲4に記載された発明及びその余の提出された証拠に基づいても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲4発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものではない。
(4)まとめ
よって、申立理由2には理由がない。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「詳細な説明」という。)の【0002】ないし【0009】によると、本件発明1ないし8の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「弾力性があるナチュラルチーズを外層に用いて包餡した、包餡型ナチュラルチーズの製造方法を提供すること」である。
他方、詳細な説明の【0010】、【0011】、【0027】には、「本発明者らは、前記の課題を解決すべくさらに研究を重ねる中で、弾力性があるナチュラルチーズを加温された状態で包餡させることにより、弾力性があるナチュラルチーズを外層に用いながら、包餡型ナチュラルチーズを製造できることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果、本発明を完成させた。」、「また、本発明の包餡型ナチュラルチーズおよびその製造方法において、弾力性があるナチュラルチーズを外層に用いることができたため、これまでに実現が困難であった、外層に噛み応えがある、包餡型ナチュラルチーズを汎用の包餡機などを使用して、定量的かつ連続的に大量生産することができることを見出した。」、「本発明において、弾力性があるナチュラルチーズを外層として包餡する温度では、実際に包餡できる状態であれば、特に限定されないが、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃および57℃のいずれか1つを下限値とし、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃および60℃のいずれか1つを上限値とする温度範囲であればよく、例えば、20~100℃、20~90℃、20~80℃、20~70℃、20~60℃、25~100℃、25~90℃、25~80℃、25~70℃、25~60℃、30~100℃、30~90℃、30~80℃、30~70℃、30~60℃、35~100℃、35~90℃、35~80℃、35~70℃、35~60℃、40~100℃、40~90℃、40~80℃、40~70℃、40~60℃、45~100℃、45~90℃、45~80℃、45~70℃、45~60℃、50~100℃、50~90℃、50~80℃、50~70℃、50~60℃の温度下である。このとき、好ましくは、45~65℃、より好ましくは、50~65℃、さらに好ましくは、55~65℃、さらに好ましくは、57℃~63℃、さらに好ましくは、57℃~60℃である。」との記載がある。
そして、詳細な説明の【0035】~【0039】において、外層で内容物を包餡する工程を含み、57℃又は60℃に加温されたナチュラルチーズを利用した実施例1~3では、ナチュラルチーズを外層に用いて包餡した包餡型ナチュラルチーズが製造できているのに対し、加温されていないナチュラルチーズを利用した比較例ではうまく製造できなかったことが確認されている。
そうすると、当業者は、「外層で内容物を包餡する工程を含み、該工程を20℃~100℃の温度範囲内で行」う条件を満たすことで発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件発明1は、前記条件を満足しているものである。
したがって、本件発明1は、詳細な説明に記載された発明で、詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、本件発明2ないし8についても、本件発明1と同様である。
特許異議申立人は、85℃における弾力性が4以上との性質が本件発明の課題を解決するためにどのような技術的意義を有しているか不明であるからサポート要件を満たさない旨主張するが、当該事項はサポート要件の判断とは関係がないから失当である。
よって、申立理由3は理由がない。
第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700571