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特許異議申立

2022-700522

高固形分溶剤型接着剤組成物およびその製造方法

審判番号
2022-700522
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-500620
登録番号
6980752
請求日
2022年06月15日
審決日
2023年10月17日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
  • 【権利者代理人】小林 浩
  • 【権利者代理人】杉山 共永
  • 【権利者代理人】星川 亮
  • 【権利者代理人】片山 英二
  • 【権利者代理人】大森 規雄
  • 【権利者代理人】鈴木 康仁
  • 【異議申立人】日向 ヨシ子
審判長/審判官
  • 審判長 亀ヶ谷 明久
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 門前 浩一
分類
P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6980752号発明「高固形分溶剤型接着剤組成物およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6980752号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。 特許第6980752号の請求項1、2、18、19に係る特許を維持する。 特許第6980752号の請求項3-17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6980752号の請求項1~19に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)5月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年7月11日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年11月19日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同年12月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~19に係る特許に対し、令和4年6月15日に特許異議申立人 日向ヨシ子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月13日付けで取消理由を通知し、同年12月7日に特許権者との面接を行った。特許権者は、取消理由通知の指定期間内である同年同月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月20日付けで特許異議申立人に通知し、これに対し、特許異議申立人は、その指定期間内である令和5年1月20日に意見書を提出し、当審は、同年3月7日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年6月6日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年7月6日付けで特許異議申立人に通知し、それに対して、特許異議申立人は、応答しなかった。 なお、本件訂正請求がされたことにより、令和4年9月12日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~17からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記接着剤組成物の平均官能価は2~2.5である、2成分接着剤組成物。」と記載されているのを、「前記接着剤組成物の平均官能価は2.21~2.5であり、溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含有量が4~6%であり、50%以上の固形分含有量を有する、2成分接着剤組成物(但し、ε-カプロラクタムを含む組成物を除く)。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、18、19も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項18に「請求項1~17のいずれかに記載の接着剤組成物を含むラミネート構造体を製造する方法…」とあるうち、請求項1または2を引用するものについて「請求項1または2に記載の接着剤組成物を含むラミネート構造体を製造する方法…」に訂正する(請求項18の記載を引用する請求項19も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 訂正事項1~17に係る訂正前の請求項1~19について、請求項2~19はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1は、以下の発明を規定している。 「2成分接着剤組成物であって、前記接着組成物が、 イソシアネート成分であって、 ポリイソシアネートと、 ポリエステルポリオールを含む1,000より大きい数平均分子量を有するイソシアネート反応性成分との反応生成物である、イソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、 1,500未満の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを含むポリオール成分と、 接着促進剤と、を含み、 前記接着剤組成物の平均官能価は2~2.5である、2成分接着剤組成物。」 一方、訂正後の請求項1は、以下の発明を規定している。 「2成分接着剤組成物であって、前記接着組成物が、 イソシアネート成分であって、 ポリイソシアネートと、 ポリエステルポリオールを含む1,000より大きい数平均分子量を有するイソシアネート反応性成分との反応生成物である、イソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、 1,500未満の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを含むポリオール成分と、 接着促進剤と、を含み、 前記接着剤組成物の平均官能価は2.21~2.5であり、 溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含有量が4~6%であり、 50%以上の固形分含有量を有する、2成分接着剤組成物(但し、ε-カプロラクタムを含む組成物を除く)。」 訂正事項1は、訂正前請求項1に係る発明に、 (i)「前記接着剤組成物の平均官能価は2.21~2.5」であること、 (ii)「溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含有量が4~6%」であること、 (iii)「50%以上の固形分含有量を有する」こと、および (iv)「ε-カプロラクタムを含む組成物を除く」こと、というさらなる発明特定事項(i)~(iv)を加えるものである。 したがって、訂正事項1は、訂正前請求項1に係る発明を、上記の発明特定事項(i)~(iv)をさらに有するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 同様に、訂正後請求項2、18、19は、訂正後の請求項1を引用するものであり、訂正後の請求項1に記載の要件によってさらに限定されるものであるため、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断 訂正事項1は、訂正前請求項1に係る発明を、上記の発明特定事項(i)~(iv)をさらに有するものに限定するものである。よって、本訂正により、訂正前請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものとはならないといえる。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断 訂正事項1の上記発明特定事項(i)は、訂正前の請求項4、本件明細書の段落【0078】【表2】に記載の実施例7、実施例8の記載に基づくものである。具体的には、訂正前の請求項4に記載の平均官能価に係る数値範囲「2~2.5」を、本件明細書の段落【0078】【表2】に記載の実施例7、実施例8が有する理論的官能価「2.21」を下限として「前記接着剤組成物の平均官能価は2.21~2.5」のより狭い数値範囲とするものである。 上記発明特定事項(ii)は、訂正前の請求項4に記載のNCO含有量に基づくものである。具体的には、「溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含有骨が4~6%」であるという技術的特徴が記載されている。 上記発明特定事項(iii)は、本件明細書の段落【0010】等の記載に基づくものである。具体的には、同段落には、「本開示は、50%以上の固形分含有量で流動することが可能な新しいクラスの溶剤型接着剤に関する。…」との記載がなされている。 また、上記発明特定事項(iv)は、請求項1から「ε-カプロラクタム」を含む態様を除く訂正である。 すなわち、訂正事項1は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2~16 ア 訂正の目的について 訂正事項2~16は、それぞれ請求項3~17を削除するというものであるから、当該訂正事項2~16はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断 上記アに記載したとおり、訂正事項2~16は、それぞれ請求項3~17を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断 上記アの理由から明らかなように、訂正事項2~16は、それぞれ請求項3~17を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 (3)訂正事項17 ア 訂正の目的について 訂正事項17は、訂正前請求項18が請求項1~17の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2~16により請求項3~17が削除されてこれら請求項が引用できなくなったことに伴い、訂正前に引用していた請求項3~17を削除する訂正である。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。 同様に、訂正後請求項19は、訂正後の請求項18係る方法の発明を引用するものであり、訂正後の請求項18によってさらに限定されるものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断 訂正事項17は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないといえる。したがって、訂正事項17は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 また、訂正事項17は、訂正前の請求項18の記載以外に、訂正前の請求項19の記載について訂正するものではなく、請求項19のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断 訂正事項17は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 また、訂正事項17は、前記イのとおり、訂正前の請求項18の記載以外に、訂正前の請求項19の記載について訂正するものではない。 (4)独立特許要件 本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許第6980752号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1、2、18、19に係る発明は、令和5年6月6日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、18、19に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 2成分接着剤組成物であって、前記接着組成物が、 イソシアネート成分であって、 ポリイソシアネートと、 ポリエステルポリオールを含む1,000より大きい数平均分子量を有するイソシアネート反応性成分との反応生成物である、イソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、 1,500未満の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを含むポリオール成分と、 接着促進剤と、を含み、 前記接着剤組成物の平均官能価は2.21~2.5であり、 溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量が4~6%であり、 50%以上の固形分含有量を有する、2成分接着剤組成物(但し、ε-カプロラクタムを含む組成物を除く)。 【請求項2】 前記ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸との反応生成物である、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9] (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 (削除) 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 請求項1または2のいずれかに記載の接着剤組成物を含むラミネート構造体を製造する方法であって、 前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分とを1~2.5の化学量論比(NCO/OH)で混合して硬化性接着剤混合物を形成することと、 前記硬化性接着剤混合物を溶剤に溶解して塗布可能な接着剤混合物を形成することと、 前記塗布可能な接着剤混合物を第1の基材の表面に塗布することと、 第2の基材の表面を前記第1の基材の前記表面と圧力下で接触させてラミネート構造体を形成することと、 前記ラミネート構造体を硬化させることと、を含む、方法。 【請求項19】 請求項18に記載の方法によって形成されるラミネート。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 本件特許登録時の請求項1~19に係る特許に対して、当審が令和4年9月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項10~19に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 本件特許発明10は、溶剤として「メチルエーテルケトン」を含むことが特定されている。 しかし、「メチルエーテルケトン」はいかなる化合物であるのか特定することができず、化合物として不明確である。 したがって、本件特許発明10は、その範囲が不明確である。 本件特許発明10を直接又は間接的に引用する本件特許発明11~19も不明確である。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~19に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証~甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第1号証:国際公開第2015/046453号 甲第2号証:特許第5812219号公報 甲第3号証:特許第5472525号公報 甲第4号証:特開2015-117328号公報 理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~19に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件特許発明の課題は、本願明細書の【0010】の記載からみて、「50%以上の固形分含有量で流動することが可能な、低粘度および長い可使時間、ならびに強化された温度および薬品耐性を含む改良された加工特性を示す新しいクラスの溶剤型接着剤を提供すること」であると認められる。 ここで、本件特許発明1~19は、請求項1~19の記載からみて、固形分含有量が特定されておらず、50%未満の固形分含有量の接着剤組成物を含む。 しかし、50%未満の固形分含有量の接着剤組成物は上記課題を解決できるものではないから、固形分含有量を50%以上であることを発明特定事項としない本件特許発明1~19は、明らかに本願発明の課題を解決できない態様を含むといえる。 したがって、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1~19まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 2 本件訂正前の請求項1、2、4~8、18、19に係る特許に対して、当審が令和5年3月7日付けで特許権者に通知した取消理由は、前記1 理由2である。 第5 記第4 1における理由1(明確性要件)についての判断 本件訂正により請求項10は削除されたので、本件特許発明10が不明確であるという取消理由は解消した。 第6 前記第4 1~2における理由2(進歩性)についての判断 1 甲号証について 甲第1号証:国際公開第2015/046453号 甲第2号証:特許第5812219号公報 甲第3号証:特許第5472525号公報 甲第4号証:特開2015-117328号公報 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「[請求項1] ポリイソシアネート(A)と脂肪族環状アミド化合物(B)とを必須成分とすることを特徴とするポリイソシアネート混合物。 [請求項2] 前記ポリイソシアネート(A)が、ポリオール(C)と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られるものである請求項1記載のポリイソシアネート混合物。 [請求項3] 前記ポリオール(C)が、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールである請求項2記載のポリイソシアネート混合物。 [請求項4] 前記環状アミド化合物(B)が、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-エナントールラクタム、η-カプリルラクタム、及びβ-プロピオラクタムからなる群から選ばれる1つ以上の化合物である請求項1記載のポリイソシアネート混合物。 ・・・ [請求項9] ポリイソシアネート(A)と脂肪族環状アミド化合物(B)と前記ポリオール(C)とを必須成分とすることを特徴とする接着剤。 [請求項10] 前記ポリイソシアネート(A)と前記脂肪族環状アミド化合物(B)とを予め混合したポリイソシアネート混合物(X)と、前記ポリオール(C)とを用いる請求項9記載の接着剤。 [請求項11] 前記ポリイソシアネート混合物(X)が請求項1~5の何れか1つに記載のポリイソシアネート混合物である請求項10記載の接着剤。 ・・・ [請求項16] 請求項9記載の接着剤を第一のプラスチックフィルムに塗布、次いで塗布面に第二のプラスチックフィルムを積層し、該接着剤層を硬化させてなる積層フィルム。」 1b「[0017] ここで用いるポリイソシアネート(A)は、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ポリイソシアネート;これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートと、後述するポリオール(C)との反応生成物であるポリイソシアネート、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートのビウレット体、または、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートをトリメチロールプロパン変性したアダクト体などが挙げられる。 ・・・ [0021] また、前記ポリイソシアネート(A)は、無溶剤型接着剤の軟包装用としては芳香族ポリイソシアネートとポリエーテルポリオール又はウレタン結合含有ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネートが硬化物に適度な柔軟性を付与できる点から好ましく、具体的には、滴定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が5~20質量%のものが適正な樹脂粘度となって塗工性に優れる点から好ましい。一方、無溶剤型接着剤の硬質基材用では芳香族ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネート;芳香族ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの混合物とを反応させて得られるポリイソシアネートが接着強度に優れる点から好ましく、具体的には、滴定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が5~20質量%のものが、やはり適正な樹脂粘度となって塗工性に優れる点から好ましい。 [0022] 他方、溶剤型接着剤の軟包装用としては芳香族ポリイソシアネートとポリエーテルポリオール又はウレタン結合含有ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリイソシアネートが硬化物に適度な柔軟性を付与できる点から好ましく、具体的には、滴定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が2~5質量%のものが適正な樹脂粘度となって塗工性に優れる点から好ましい。一方、無溶剤型接着剤の硬質基材用では芳香族ポリイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体であるアダクトであることが硬化性の点から好ましく、具体的には、滴定法(ジ-n-ブチルアミン使用)によるイソシアネート含有率が5~25質量%のものが、接着剤の硬化性が飛躍的に高まる点から好ましい。 ・・・ [0035] 従って、ポリイソシアネート混合物(X)とポリオール(C)との使用割合は、ポリオール混合物(X)中のイソシアネート基と、前記ポリオール(C)中の水酸基との当量比[イソシアネート基/水酸基]が1.0~5.0となる割合、特に1.5~3.5となる割合であることが好ましい。 ・・・ [0037] 本発明の接着剤は、溶剤型接着剤、或いは、無溶剤型接着剤として使用することができる。溶剤型接着剤として使用し得る溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも溶解性の点から酢酸エチルやメチルエチルケトン(MEK)が好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。有機溶剤の使用量は粘度の点から20~50質量%の範囲であることが好ましい。 [0038] 本発明の接着剤は、必要に応じて、顔料を併用してもよい。この場合使用可能な顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。これら着色剤の具体例としては種々のものが掲げられ、有機顔料としては、例えば、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の溶性アゾ顔料; ・・・ [0046] 本発明の接着剤組成物には、必要であれば、前記以外のその他の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、フィルムやコーティング膜などを形成する樹脂組成物に一般に使用されている添加剤などが挙げられる。添加剤としては、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;湿潤分散剤;シランカップリング剤;粘性調整剤;紫外線吸収剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;無機系熱線吸収剤;防炎剤;帯電防止剤;脱水剤などが挙げられる。 ・・・ [0048] 本発明のラミネート方法は、前記の接着剤を、グラビアコーター、ダイコーター若しくはリップコーターにて基材に塗布し、乾燥後他の基材を貼り合わせるものである。このダイコーターおよびリップコーターは、ダイまたはリップ部分の両端に付設されたディッケルによって塗工幅を自在に調整することができるものである。揮発性の酸性化合物を使用する場合、酸性化合物が揮発すると接着剤がゲル化するため、常にpHを1~8、好ましくは3~7に維持する必要がある。 ・・・ [0050] 本発明の接着剤組成物を用いた場合、ラミネートした後、常温または加温下で、6~24時間で接着剤が硬化し、実用物性を発現する。」 1c「[0051] 以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明する。尚、例中「部」とあるのは「質量部」を示す。また、各実施例及び比較例で原料として用いた原料ポリオールを以下に示す。 [0052] [原料ポリオール] ポリエステルポリオール(c1):エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸、アジピン酸の反応生成物(水酸基価50) ポリエーテルポリオール(c2):ポリプロピレングリコール(水酸基価112) ポリエーテルポリオール(c3):ポリプロピレングリコール(水酸基価280) ・・・ [0057] 実施例5[ポリオール混合物(Y-1)の調整] ポリエーテルポリオール(c2)49質量部と、ε-カプロラクタム1質量部とを混合し、ポリオール混合物(Y-1)を得た。実施例1と同様にして貯蔵安定性の評価を行った。結果を表2に示す。 ・・・ [0059] 製造例1[ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)の製造] ポリエステルポリオール(c1)61質量部に対し、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を10質量部添加し、温度を60℃に保ちながら反応させた後、酢酸エチル29質量部を投入した。 次いで、反応溶液を冷却し末端にイソシアネート基を有するポリエステルポリイソシアネート(A-5)の樹脂溶液(ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5))100質量部を得た。実施例1と同様にして貯蔵安定性の評価を行った。結果を表1に示す。 ・・・ [0066] 実施例9 ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)100質量部と、ポリオール混合物(Y-1)50質量部とを配合し、溶剤型の接着剤を得た。 次いで実施例7と同様にしてPAA溶出量とポットライフの評価を行った。結果を表3に示す。 ・・・ [0077] [表3] [図:0001405781000001.jpg] 」 (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。) 2a「【請求項1】 ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを含む接着剤組成物であって、 前記ポリイソシアネート成分(A)が、下記(i)~(iv)の全てを満たし、 (i)前記ポリイソシアネート成分(A)が、下記成分(A1)とクルードMDI(A2)とを含む。 (ii)成分(A1)が、ポリエーテルポリオール(a1)を必須とするポリオールとイソシアネート成分(a2)とを、ポリオール中の水酸基に対しイソシアネート基過剰の条件下で反応させてなる、ウレタンプレポリマーを必須とし、未反応のイソシアネート成分(a2)を含み得る。 (iii)前記イソシアネート成分(a2)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを必須として含み、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種のイソシアネートをさらに含み得る。 (iv)クルードMDI(A2)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種のMDIモノマーと、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネートとを含有し、イソシアネート基含有率が33質量%未満である。 前記ポリオール成分(B)が、数平均分子量500以上、3,000以下のポリエステルジオール(b1)を必須とし、 更に数平均分子量50以上、400未満のジオール(b2)、数平均分子量50以上、500未満のトリオール(b3)、および数平均分子量400以上、1000未満のポリエーテルジオール(b4)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、ポリオール組成物である、 接着剤組成物。」 (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「【請求項1】 ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを含む接着剤組成物であって、 前記ポリイソシアネート成分(A)が、 2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(a2)を必須とするイソシアネートと、 ポリエーテルポリオール(a3)を必須とするポリオールと、 をイソシアネート基過剰の条件下で反応させてなる反応性生成物であり、 前記ポリオール成分(B)が、数平均分子量500以上、3,000以下のポリエステルジオール(b1)を必須とし、更に数平均分子量50以上、500未満のジオール(b2)および数平均分子量50以上、500未満のトリオール(b3)の少なくともいずれか一方を含む、ポリオール組成物である、接着剤組成物。」 3b「【0033】 数平均分子量50以上、500未満のトリオール(b3)としては、ポリエーテルトリオール、ひまし油;トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子トリオール類;またはそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、低分子トリオール類やポリエーテルトリオールが好ましい。」 (4)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「【請求項1】 ポリオール、ポリイソシアネート、シランカップリング剤、酸無水物、及び、プロピレンカーボネートを含有することを特徴とする無溶剤2液硬化型ラミネート接着剤組成物。 ・・・ 【請求項4】 更に、リン酸誘導体を含有する請求項1~3の何れか1つに記載の無溶剤2液硬化型ラミネート接着剤組成物。」 4b「【0019】 本発明のラミネート用接着剤には、更に、リン酸誘導体を添加してもよい。前記リン酸誘導体としては、正リン酸、ポリリン酸、酸性リン酸エステル等が挙げられる。その際の配合比率としては、それぞれ独立に、ポリオール100重量部あたり、リン酸誘導体0.1~1.0重量部添加することが好ましい。」 3 甲1に記載された発明 甲1には、実施例9として「ポリエステルポリオール(c1) :エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸、アジピン酸の反応生成物(水酸基価50)61質量部に対し、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を10質量部添加し、温度を60℃に保ちながら反応させた後、酢酸エチル29質量部を投入し、次いで、反応溶液を冷却し末端にイソシアネート基を有するポリエステルポリイソシアネート(A-5)の樹脂溶液であるポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)100質量部と、ポリエーテルポリオール(c2) :ポリプロピレングリコール(水酸基価112)49質量部と、ε-カプロラクタム1質量部とを混合し、得たポリオール混合物(Y-1)50質量部とを配合し、さらに、酢酸エチルを50質量部配合して得た溶剤型の接着剤。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる(摘記1c参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 引用発明との対比 引用発明の「ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)」は本件特許発明1の「ポリイソシアネート」に相当する。 引用発明の「ポリエステルポリオール(c1) :エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸、アジピン酸の反応生成物(水酸基価50)」は、引用発明の「ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)」と反応するものであるから、本件特許発明1の「ポリエステルポリオールを含む」及び「イソシアネート反応性成分」に相当する。 したがって、引用発明の「ポリエステルポリオール(c1) :エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸、アジピン酸の反応生成物(水酸基価50)61質量部に対し、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を10質量部添加し、温度を60℃に保ちながら反応させた後、酢酸エチル29質量部を投入し、次いで、反応溶液を冷却し末端にイソシアネート基を有するポリエステルポリイソシアネート(A-5)の樹脂溶液であるポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)」は、本件特許発明1の「イソシアネート成分であって、 ポリイソシアネートと、 ポリエステルポリオールを含む」及び「イソシアネート反応性成分との反応生成物である、イソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分」に相当する。 引用発明の「ポリエーテルポリオール(c2) :ポリプロピレングリコール(水酸基価112)49質量部と、ε-カプロラクタム1質量部とを混合し、得たポリオール混合物(Y-1)」は本件特許発明1の「ポリエーテルポリオールを含むポリオール成分」に相当する。 引用発明の「接着剤」は、ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)100質量部、ポリオール混合物(Y-1)50及び酢酸エチル50質量部を含み、ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)の固形分は溶剤29質量部を除いた71%であり、ポリオール混合物(Y-1)の固形分は100%であり、接着剤の固形分は60.5%((71+50)/100+50+50)であるから、本件特許発明1の「50%以上の固形分含有量を有する、2成分接着剤組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と引用発明は、「2成分接着剤組成物であって、前記接着組成物が、 イソシアネート成分であって、 ポリイソシアネートと、 ポリエステルポリオールを含むイソシアネート反応性成分との反応生成物である、イソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、 ポリエーテルポリオールを含むポリオール成分と、を含む、 50%以上の固形分含有量を有する、2成分接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> ポリエステルポリオールを含むイソシアネート反応性成分が、本件特許発明1では1,000より大きい数平均分子量を有するのに対し、引用発明では数平均分子量が不明である点。 <相違点2> ポリエーテルポリオールを含むポリオール成分が、本件特許発明1では1,500未満の数平均分子量を有するのに対し、引用発明では数平均分子量が不明である点。 <相違点3> 2成分接着剤組成物が、本件特許発明1では接着促進剤を含むのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。 <相違点4> 2成分接着剤組成物が、本件特許発明1では平均官能価は2.21~2.5であるのに対し、引用発明では平均官能価が不明である点。 <相違点5> 2成分接着剤組成物が、本件特許発明1では溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量が4~6%であるのに対し、引用発明では溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量が不明である点。 <相違点6> 2成分接着剤組成物が、本件特許発明1ではε-カプロラクタムを含む組成物を除くのに対し、引用発明ではε-カプロラクタムを含む点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点4>及び<相違点5>について検討する。 <相違点4>について 引用発明の接着剤組成物の平均官能価については、本件明細書段落0060に記載の数式に基づき次のように計算できる。すなわち、ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)中のポリイソシアネートは末端にイソシアネート基を有するポリエステルポリイソシアネートであるので2価であって、ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)100質量部中のポリイソシアネート分は71質量部(=61+10質量部;反応により得られたイソシアネートプレポリマーと未反応MDIの合計量)であり、ポリオール混合物(Y-1)50質量部中のポリエーテルポリオール分は49質量部(約50質量部とみなす。)であり、2価のポリイソシアネートの分子量をXとして、2価のポリエーテルポリオール(c2)の分子量は上記のとおり約1002であるので、 平均官能価=[((50/1002)×2)+((71/X)×2)]/(50/1002+71/X)=2[(50/1002)+((71/X)]/(50/1002+71/X)=2 であり、本件特許発明1における平均官能価2.21~2.5の範囲外である。 そして、甲1には引用発明の溶剤型の接着剤の平均官能価を2以外とすることについて記載も示唆もないし、甲2~甲4にも溶剤型の接着剤の平均官能価について記載も示唆もないから、引用発明の溶剤型の接着剤において平均官能価を2.21~2.5とする動機付けがあるとはいえない。 <相違点5>について 引用発明の接着剤組成物に含まれるポリイソシアネート溶液(X-5)の合成に使用されたポリエステルポリオール(c1)は、水酸基価が50であり、その合成原料(エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸、アジピン酸)は2価のアルコールと2塩基酸であるので、2価のポリオールである。したがって、ポリエステルポリオール(c1)の分子量ないし平均分子量は、以下の式に基づき計算できる。 ポリエステルポリオール(c1)の平均分子量=56.1(KOHの分子量)×1000×2(官能基数)/50(水酸基価)=約2244 そして、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の分子量は250であり、それらの反応生成物である、ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)中のポリイソシアネートは末端にイソシアネート基を有するポリエステルポリイソシアネートであるので2価であり、NCOのモル質量は42であり、ポリイソシアネート樹脂溶液(X-5)中のNCO含量は、3.1%(42×2×100/(2244+250×2))となるから、本件特許発明1における溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量4~6%の範囲外である。 そして、甲1には引用発明の溶剤型の接着剤の溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量を3.1%以外とすることについて記載も示唆もないし、甲2~甲4にも溶剤型の接着剤の溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量について記載も示唆もないから、引用発明の溶剤型の接着剤において溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量が4~6%とする動機付けがあるとはいえない。 ウ 本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の【0078】の【表2】からみて、本件特許発明1に含まれる、平均官能価は2.21~2.5であり、溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量が4~6%である実施例1~8のものが、平均官能価は2.21~2.5の範囲外であり、溶剤を含まない前記イソシアネート成分のNCO含量が4~6%の範囲外である比較例1及び2のものと比較して、50%の固形分で低粘度および十分な可使時間などの改善された加工特性と、ボイルインバッグ、化学的老化、およびレトルト試験における、良好なグリーンボンド、優れた接着強度、ならびに優れた温度および薬品耐性によって証明される性能の向上とを示しているから、本件特許発明1は、引用発明のものと比較して優れた効果を奏するといえる。 エ 小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点1>~<相違点3>及び<相違点6>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明2、18、19 本件特許発明2は本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、本件特許発明18は本件特許発明1の接着剤組成物を含むラミネート構造体を製造する方法であり、本件特許発明19は本件特許発明18を引用してさらに限定するものであり、前記本件特許発明1と引用発明との<相違点4>及び<相違点5>と同じの相違点を有するものであるから、本件特許発明2、18、19は、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第7 前記第4 1における理由3(サポート要件)について 本件特許発明の課題は、前記第4 1 理由3のとおりであるところ、本件訂正により本件特許発明1は「50%以上の固形分含有量を有する」と特定されたため、本件特許発明1は、50%未満の固形分含有量の接着剤組成物を含まないものとなったので、本件特許発明1の接着剤組成物は前記課題を解決できるといえるから、本件特許発明1は、明らかに本件特許発明の課題を解決できない態様を含まないといえる。 したがって、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1、並びに、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、18及び19まで拡張ないし一般化できないとはいえない。 第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 特許異議申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。 理由1(新規性)本件特許の請求項1~19に係る発明は、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証(前記第4 1 理由2)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項1~19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1~19に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件特許発明1の課題は、本件特許明細書【0002】、【0003】、【0009】及び【0010】の記載からみて、「50重量%以上という高固形分含有量であって流動性を有し、加工特性の改善された溶剤型2成分接着剤組成物を提供することであり、本件特許発明1は、溶剤型2成分接着剤組成物にかかる発明である。そして、実施例としては、固形分が50重量%の接着剤組成物を用いてその流動性及び加工特性を検討したことが記載されているのみであり(【表2】)、50重量%超の高固形分の接着剤組成物の実施例は記載されていない。 これに対し、本件特許発明1においては溶剤が含まれることの特定はなく、接着剤組成物の固形分についても特定されていない。 そうすると、当業者において固形分が50重量%を超える場合、さらには無溶剤の場合に、低粘度であってラミネート可能な流動性を有し本件特許発明の課題を達成できる接着剤組成物を生産することには、過度の試行錯誤が必要であるから、本件特許発明1は実施可能要件を満たさない発明である。 同様に、溶剤を含有すること、及び/又は接着剤組成物の固形分が特定されていない本件特許発明2~19も、実施可能要件を満たさないものである。 以上のとおり、本件特許発明1~19について本件明細書は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度に記載されたものではないから、本件特許発明1~16は実施可能要件を満たしていない。 理由5(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~9、11~17に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 本件明細書には、本件発明が溶剤型接着剤であることが明記されている。しかし、本件発明10以外の2成分接着剤組成物にかかる本件発明は、溶剤を含むことが特定されておらず、したがって無溶剤型接着剤も含みうるものであるから、本件明細書の記載と著しく矛盾しており、その範囲は不明確である。 したがって、本件発明1~9及び11~17は、その範囲が不明確である。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 (1)理由1(新規性)について 1 甲号証について 前記第6 1のとおり。 2 甲1の記載について 前記第6 2(1)のとおり。 3 甲1に記載された発明 前記第6 3のとおり。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 前記第6 4(1)のとおり、本件特許発明1と引用発明は<相違点1>~<相違点6>で相違し、<相違点4>及び<相違点5>は実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当しない。 (2)本件特許発明2、18、19 本件特許発明2は本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、本件特許発明18は本件特許発明1の接着剤組成物を含むラミネート構造体を製造する方法であり、本件特許発明19は本件特許発明18を引用してさらに限定するものであり、前記本件特許発明1と引用発明との<相違点4>及び<相違点5>と同じの相違点を有するものであるから、本件特許発明2、18、19は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 (2)理油3(実施可能要件)について 本件訂正により、本件特許発明1において接着剤組成物の50%以上の固形分含有量を有すると特定され、本件特許明細書の【0078】の【表2】において50%の固形分含有量を有する接着剤組成物を製造及び使用できることが記載されており、そのような記載から、50%以上の固形分含有量を有するものも固形分含有量を増やすことにより同様に製造でき、かつ、同様に使用できるといえるから、本件特許発明1を実施するにあたり、過度の試行錯誤が必要であるとはいえず、本件特許発明1は実施可能要件を満たさない発明であるとはいえない。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2、18及び19についても同様である。 (3)理由5(明確性要件)について 本件特許発明1は、本件特許明細書に記載の溶剤型接着剤であることが特定されていないとしても、2成分接着剤組成物として何ら不明確な点はない。 したがって、本件発明1及び2は、その範囲が明確である。 第9 むすび 以上のとおりであるから、令和4年9月13日付けの取消理由通知書に記載した取消理由、令和5年3月7日付けの取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、18、19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、2、18、19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 訂正前の請求項3~17は本件訂正により削除されたため、請求項3~17についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700522

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