特許異議申立
2023-700901
2成分溶媒ベースの接着剤組成物
- 審判番号
- 2023-700901
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-535233
- 登録番号
- 7232912
- 請求日
- 2023年09月01日
- 審決日
- 2025年04月30日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】片山 英二
- 【権利者代理人】大森 規雄
- 【権利者代理人】井口 司
- 【権利者】ローム アンド ハース カンパニー
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】片山 英二
- 【権利者代理人】大森 規雄
- 【権利者代理人】井口 司
- 【異議申立人】齊藤 整
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 関根 裕
- 審判官 安藤 倫世
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7232912号発明「2成分溶媒ベースの接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7232912号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。
特許第7232912号の請求項7、8に係る特許を維持する。
特許第7232912号の請求項1~6、9に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7232912号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年12月21日を出願日とする国際出願であって、令和5年2月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月3日に特許掲載公報が発行された。その後の特許異議の申立ての手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年 9月 1日 特許異議申立人 齊藤 整(以下「申立人」
という。)による、全請求項に対する特許異
議の申立て
令和6年 5月 9日付け 取消理由通知書
同年 7月 9日 期間延長請求書(特許権者)
同年 7月16日付け 期間延長の通知書
同年10月15日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
令和7年 1月 8日付け 訂正請求があった旨の通知書
なお、令和7年1月8日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年10月15日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の訂正事項1~8からなるものである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「前記第1の基材が金属箔フィルムであり、前記第2の基材がポリエチレンフィルムであり、
ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、
化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである、請求項6に記載のラミネート。」と記載されているのを、
「 第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材と前記第2の基材との間の接着剤層であって、下記2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)~(5)のいずれか一つから形成された接着剤層と、を含むラミネートであって、
前記第1の基材が金属箔フィルムであり、前記第2の基材がポリエチレンフィルムであり、
前記ラミネートは、ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、
前記ラミネートは、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである、ラミネート。
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1):
(A)アロファネート基を含まないイソシアネート成分、
(B)アロファネート基を含まないダイマー酸ポリエステルポリオール成分であって、
(i)ダイマー酸と、
(ii)ジカルボン酸と、
(iii)ポリオールとを含む反応混合物の反応生成物を含み、前記ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含む、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分、及び、
(C)溶媒、の反応生成物を含み、
100:5から100:35の前記(B)のダイマー酸ポリエステルポリオール成分:前記(A)のイソシアネート成分の重量比を有する、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(2):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)において、前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、及びそれらの組合わせからなる群から選択される、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(2)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(3):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)又は(2)において、前記ポリオールが、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコール(NPG)、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(3)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(4):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記イソシアネート成分が多官能性イソシアネートである、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(4)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(5):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記イソシアネート成分が2.2から5.0の平均NCO官能価を有する、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(5)。」に訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~9において、請求項2~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、請求項9は独立形式で記載されたものである。
したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は一群の請求項であり、請求項9は一群の請求項を構成しない。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1~6、8
訂正事項1~6、8は、前記1(1)~(6)、(8)に記載したとおり、請求項を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合し、同様に、新たな技術事項を導入しないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項7
ア 訂正事項7のうち、訂正前の請求項6の「請求項1~5のいずれか一項に記載の下記2成分溶媒ベースの接着剤組成物から形成された接着剤層と、を含むラミネート」を引用する請求項7の「ラミネート」の記載を、請求項間の引用関係を解消し、独立請求項へ改めるための訂正事項は、具体的には、訂正前の請求項1~5の「2成分溶媒ベースの接着剤組成物」を「2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)」~「2成分溶媒ベースの接着剤組成物(5)」と表記し、それらのいずれか一つから形成された接着剤層を含む請求項7の「ラミネート」を独立形式で表記するとともに、それらの変更に対応して平仄を合わせる訂正事項を含むものであり、この訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、この訂正事項は、請求項間の引用関係を解消し、独立請求項へ改めるためのものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
また、この訂正事項は、請求項間の引用関係を解消し、独立請求項へ改めるためのものであって、新たな技術事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
イ 訂正事項7のうち、訂正前の「ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである」を「前記ラミネートは、ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、前記ラミネートは、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである」とする訂正は、接着強度が何の接着強度であるかを明瞭にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とした訂正である。
そして、この訂正事項は、主語を追加し、接着強度が何の接着強度であるかを明瞭にするためものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
また、この訂正事項は、主語を追加し、接着強度が何の接着強度であるかを明瞭にするためものであって、新たな技術事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項7のうち、訂正前の「(A)イソシアネート成分、(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分であって」を「(A)アロファネート基を含まないイソシアネート成分、(B)アロファネート基を含まないダイマー酸ポリエステルポリオール成分であって」とする訂正は、「(A)イソシアネート成分」及び「(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分」が、いずれもアロファネート基を含まないことを限定するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。
そして、この訂正事項は、「(A)イソシアネート成分」及び「(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分」が、いずれもアロファネート基を含まないことを限定するためものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
また、この訂正事項は、「(A)イソシアネート成分」及び「(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分」の双方から、アロファネート基を含むものを除くことにより、後記第5の4(2)で検討するとおり、甲2に記載された発明が課題解決のために必須とする、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の少なくともいずれかがアロファネート変性体を含む構成との差別化を図るものであって、新たな技術事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 訂正事項7のうち、訂正前の「(i)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づく20重量%から60重量%のダイマー酸と、(ii)ジカルボン酸と、(iii)ポリオールとを含む反応混合物の反応生成物を含むダイマー酸ポリエステルポリオール成分」を「(i)ダイマー酸と、(ii)ジカルボン酸と、(iii)ポリオールとを含む反応混合物の反応生成物を含み、前記ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含む、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分」とする訂正は、訂正前の「20重量%から60重量%のダイマー酸」が、反応後のポリマー中の、ダイマー酸に由来する単位の重量%であることを明瞭にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とした訂正である。
そして、この訂正事項は、訂正前の「20重量%から60重量%のダイマー酸」が、反応後のポリマー中の、ダイマー酸に由来する単位の重量%であることを明瞭にするためのものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
また、この訂正事項は、本件特許の明細書の【0175】の【表2】の「反応生成物中のダイマー酸由来単位の重量%」との記載、同特許請求の範囲の【請求項9】の「ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含むダイマー酸ポリエステルポリオール成分」との記載等に基くものであって、新たな技術事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
オ 訂正事項7のうち、訂正前の「100:5から100:35のポリオール:イソシアネートの重量比を有する」を「100:5から100:35の前記(B)のダイマー酸ポリエステルポリオール成分:前記(A)のイソシアネート成分の重量比を有する」とする訂正は、訂正前の「ポリオール」及び「イソシアネート」が、それぞれ「前記(B)のダイマー酸ポリエステルポリオール成分」及び「前記(A)のイソシアネート成分」であることを明瞭にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とした訂正である。
そして、この訂正事項は、訂正前の「ポリオール」及び「イソシアネート」を明瞭にするためのものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
また、この訂正事項は、本件特許の明細書の【0115】の「2成分溶媒ベースの接着剤組成物は、(B)DAPP成分(=ダイマー酸ポリエステルポリオール成分)と、(A)イソシアネート成分とを、ポリオール:イソシアネート重量比100:5・・・又は100:35で含む」との記載等に基くものであって、新たな技術事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
カ 訂正事項7のうち、訂正前の「前記イソシアネートが多官能性イソシアネートである」を「前記イソシアネート成分が多官能性イソシアネートである」とする訂正は、訂正前の「イソシアネート」が、それぞれ「イソシアネート成分」であることを明瞭にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とした訂正である。
そして、この訂正事項は、訂正前の「イソシアネート」を明瞭にするためのものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
また、この訂正事項は、本件特許の明細書の【0117】の「(A)多官能性イソシアネートを含むイソシアネート成分」との記載等に基くものであって、新たな技術事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
4 独立特許要件についての判断
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明(それらのうち、請求項7に係る発明を「本件訂正発明7」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材と前記第2の基材との間の接着剤層であって、下記2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)~(5)のいずれか一つから形成された接着剤層と、を含むラミネートであって、
前記第1の基材が金属箔フィルムであり、前記第2の基材がポリエチレンフィルムであり、
前記ラミネートは、ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、
前記ラミネートは、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである、ラミネート。
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1):
(A)アロファロネート基を含まないイソシアネート成分、
(B)アロファロネート基を含まないダイマー酸ポリエステルポリオール成分であって、
(i)ダイマー酸と、
(ii)ジカルボン酸と、
(iii)ポリオールとを含む反応混合物の反応生成物を含み、前記ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含む、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分、及び、
(C)溶媒、の反応生成物を含み、
100:5から100:35の前記(B)のダイマー酸ポリエステルポリオール成分:前記(A)のイソシアネート成分の重量比を有する、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(2):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)において、前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、及びそれらの組合わせからなる群から選択される、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(2)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(3):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)又は(2)において、前記ポリオールが、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコール(NPG)、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(3)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(4):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記ポリオー 前記イソシアネートが多官能性イソシアネートである、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(4)、
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(5):
2成分溶媒ベースの接着剤組成物(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記イソシアネート成分が2.2から5.0の平均NCO官能価を有する、2成分溶媒ベースの接着剤組成物(5)。
【請求項8】
ボイルインバッグ試験後のヒートシール強度が35N/15mmから75N/15mmであり、
化学的エージング後のヒートシール強度が35N/mmから75N/15mmである、請求項7に記載のラミネート。
【請求項9】(削除)」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要等
1 申立人は、後記2の特許異議の申立ての理由を主張し、その証拠方法として後記3の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」等という。)を提出した。
甲1~甲4は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された又は電気回線を通じて公衆に利用可能となったものである。
2 特許異議の申立ての理由の概要
(1)申立理由1(甲1を主引例とした新規性、進歩性)
本件発明1~6、9は、後記3の甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明及び甲4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項第3号、又は同条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲2を主引例とした新規性、進歩性)
本件発明1~6、9は、後記3の甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項第3号、又は同条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲1を主引例とした進歩性)
本件発明7、8は、後記3の甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(甲2を主引例とした進歩性)
本件発明7、8は、後記3の甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が次の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。
請求項1には「(A)イソシアネート成分、(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分・・・、及び、(C)溶媒、の反応生成物を含み」と記載されているが、明細書において「溶媒」が反応することが記載されていない。
3 証拠方法
甲1:特開2014-129463号公報
甲2:特開2011-102387号公報
甲3:特開2003-13032号公報
甲4:特許第3660713号公報
4 取消理由の概要
(1)取消理由1(明確性)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が次のア及びイの点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであるから、これらの発明に係る特許は同法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。
ア 請求項1の「20重量%から60重量%のダイマー酸」が反応前の仕込み量の重量%を意味するのか、反応後のポリマー中の「ダイマー酸由来単位の重量」の重量%を意味するのかが明確でない。
イ 請求項1の「ポリオール」や「イソシアネート」が「ダイマー酸ポリエステルポリオール成分」や「イソシアネート成分」と同じ意味なのか否かが明確でない。
(2)取消理由2(甲1を主引例とした進歩性)
本件発明1~6、9は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(甲2の実施例を主引例とした進歩性)
本件発明1~9は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)取消理由4(甲2の比較例を主引例とした新規性)
本件発明1~6、9は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号該当し、特許を受けることができない発明であるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
5 甲号証の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも、ダイマー酸を含有するカルボン酸成分と、少なくとも、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルグリコールを含有するジオール成分と、を重縮合して得られるポリエステル、及び、架橋剤を含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、
前記ポリエステルが、前記カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基1モルに対し、前記ジオール成分に含まれるヒドロキシル基を1.1~2.0モルの比率で重縮合して得られるものであり、
前記ポリエステルの重量平均分子量が、5000~50000であることを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物。
・・・
【請求項7】
表面保護用途に使用されることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の粘着シート。」
「【0001】
本発明は、ポリエステル系粘着剤組成物、及び、前記粘着剤組成物を用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンをはじめとするタッチパネル式の電子モバイル機器や、パソコンやテレビ等のディスプレイ画面の大型化に伴い、その表面を保護する粘着シートとして、被着体である大型画面のディスプレイ表面に対して、貼り合わせ時に気泡が噛み込み難い、優れた濡れ性(高濡れ性)や、軽剥離が可能な粘着シート(表面保護シート)が要求されている。
・・・
【0008】
そこで、本発明は、高価なシリコーン系の粘着剤などを用いることなく、被着体に対して高い濡れ性を示し、気泡の噛み込みがなく、軽剥離性、再剥離性、及び、作業性に優れた粘着シート(特に表面保護用途)の製造に使用できるポリエステル系粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。」
「【0011】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤であり、前記ポリエステル100重量部に対して、前記架橋剤を5~25重量部含有することが好ましい。」
「【0018】
<ポリエステル>
本発明のポリエステル系粘着剤組成物に用いられるポリエステルは、少なくとも、ダイマー酸を含有するカルボン酸成分と、少なくとも、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルグリコールを含有するジオール成分とを重縮合して得られることを特徴とする。なお、ポリエステルの合成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができる。
【0019】
前記カルボン酸成分としては、少なくとも、ダイマー酸を含有するものであり、例えば、ヒマシ油由来のセバシン酸や、オレイン酸などから誘導されるダイマー酸等を使用することができる。前記ダイマー酸等は、揮発し難いため、ポリエステル合成の際の重縮合の際に、高温・高減圧条件で合成(反応)を行うことが可能となり、好ましい態様となる。また、前記カルボン酸成分中、前記ダイマー酸の含有率は、65重量%以上が好ましく、より好ましくは、70重量%以上、更に好ましくは、75重量%以上である。含有率が前記範囲内にあると、ガラス転移温度が低く、柔軟な粘着剤設計とすることが可能であり、濡れ特性を良好に発現でき、好ましい態様となる。
【0020】
また、前記カルボン酸成分中、前記ダイマー酸以外のカルボン酸成分として、本発明の特性を損なわないものであれば、特に制限されることなく使用でき、例えば、前記カルボン酸成分中に、トリマー酸であれば、その含有率は30重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下が、より好ましい。
【0021】
前記カルボン酸成分中、前記トリマー酸以外の成分として、2価のカルボキシル基を有するジカルボン酸を使用することが好ましく、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等や、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。これらの成分の含有率としては、5重量%以下である。前記ダイマー酸以外のカルボン酸成分としては、1種または2種以上を組み合わせても、使用できる。」
「【0024】
前記ヒドロキシル基を両末端に有するポリエーテルグリコール以外のジオール成分として、本発明の特性を損なわないものであれば、特に制限されることなく使用できるが、2価のヒドロキシル基を有するジオールが好ましく、例えば、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステルやオレイン酸などから誘導されるダイマージオール、グリセロールモノステアレートなどが挙げられ、その他としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコールや、前記脂肪族グリコール以外のものとして、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの成分の含有率としては、好ましくは、5重量%以下である。前記ジオール成分中、前記ヒドロキシル基を両末端に有するポリエーテルグリコール以外のジオール成分としては、1種または2種以上を組み合わせても、使用できる。」
「【0058】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。また、実施例中の「部」とは、「重量部」を示す。また、ポリエステルの物性や、ポリエステル系粘着剤組成物の配合内容、粘着シート(表面保護用途に使用する粘着シート)の評価結果については、表1及び2に示した。
【0059】
<実施例1>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計及び真空ポンプを付し、これにジカルボン酸であるダイマー酸と、ジオールであるMn650のポリエーテルグリコールのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1.00:1.30になるように、ダイマー酸(商品名「プリポール(PRIPOL)1009」、クローダ社製、重量平均分子量:567、トリマー酸含有率:1重量%)80g、Mn650のポリエーテルグリコール(商品名「PTMG650」、三菱化学社製、数平均分子量:650)120g、重合触媒としてジブチルスズオキシド(和光社製)0.2gを仕込み、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約5時間反応を続け、ポリエステルであるポリマーを得た。重量平均分子量(Mw)は、9,298であった。
得られたポリエステルポリマー100部に対して、架橋剤として、ポリヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)15部を配合して溶剤としてトルエンを加え塗工しやすい粘度に調整し、ポリエステル系粘着剤組成物とし、この組成物を、乾燥させ得られる粘着剤層(乾燥後)の厚みが10μmになるように、基材として、厚さが38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ルミラー38S10」、パナック社製)上に塗布し、120℃で3分間乾燥させ、組成物層を得た。その後、剥離処理した支持体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ダイアホイルMRE♯38」、三菱樹脂社製)の剥離処理面に前記組成物層を貼り合わせ、更に40℃で3日間放置し、粘着剤層を支持体上に形成した粘着シートを得た。」
「【0075】
(粘着力)
実施例、及び比較例により得られた粘着剤層10umの粘着シートを幅25mmにカットし、前記粘着シートの粘着面を、アルカリガラス(松浪硝子社製)非すず処理面に貼り合わせ、また粘着剤層30umの粘着シートをSUS304板(東洋精箔社製)に貼り合わせて、試験片とし、粘着力(N/25mm)を測定した。なお、貼り合せの際の圧着は、2kgのローラーを1往復して行い、引張圧縮試験機(装置名「TG-1kN」、ミネベア社製)にて、180°ピール粘着力(剥離力)の測定を以下の条件下で行った。
引張(剥離)速度:300mm/min
測定条件:温度:23±2℃、湿度:65±5%RH」
「【0080】
【表1】
[図:0001425706000001.jpg]
なお、表1中の「PRIPOL1025」のトリマー酸含有率は、正確には、19重量%であり、PRPOL1009のトリマー酸含有率は、1重量%である。
【0081】
【表2】
[図:0001425706000002.jpg]
」
(2)甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有するラミネート用接着剤であって、
前記ポリイソシアネート成分が、炭素数が4以上のモノオールとポリイソシアネートとから得られるアロファネート基含有ポリイソシアネートを含有し、および/または、前記ポリオール成分が、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートとポリオールとから得られるアロファネート基含有ポリウレタンポリオールを含有し、
前記ポリオール成分および/または前記ポリオールが、ナフタレン環を含有していることを特徴とする、ラミネート用接着剤。」
「【0001】
本発明は、ラミネート用接着剤、詳しくは、複合フィルムのラミネート加工に用いられるラミネート用接着剤に関する。」
「【0008】
本発明の目的は、高極性溶媒に対する耐性に優れ、接着強度の低下を有効に抑制することができ、優れたヒートシール強度、および、フィルムおよび接着剤層間における優れた接着強度を有するラミネート用接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のラミネート用接着剤は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有するラミネート用接着剤であって、前記ポリイソシアネート成分が、炭素数が4以上のモノオールとポリイソシアネートとから得られるアロファネート基含有ポリイソシアネートを含有し、および/または、前記ポリオール成分が、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートとポリオールとから得られるアロファネート基含有ポリウレタンポリオールを含有し、前記ポリオール成分および/または前記ポリオールが、ナフタレン環を含有していることを特徴としている。」
「【0066】
ナフタレンジカルボン酸含有ポリエステルポリオールは、ナフタレンジカルボン酸(および/またはそのアルキルエステル)を含有する酸成分と、多価アルコールとのエステル化反応(あるいはエステル交換反応)より得ることができる。」
「【0069】
また、酸成分は、ナフタレンジカルボン酸および/またはそのアルキルエステルを必須成分として含有し、さらに、ダイマー酸や、それら以外の他の多塩基酸を併用することができる。」
「【0073】
他の多塩基酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(C11~C13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、これらのカルボン酸などから誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。」
「【0150】
次に、本発明を、合成例、調製例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、それらによって限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0151】
<ポリイソシアネートa~cの合成>
合成例1
(ポリイソシアネートaの合成)
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)860g、オクタデカノール139.5g、および、トリス(トリデシル)ホスファイト0.5gを仕込み、80℃で2時間、ウレタン化反応させた。次に、反応液にオクチル酸ビスマス(Bi含有量:18質量%)を0.05g添加し、100℃で10時間、アロファネート化反応させ、ウレタン結合のアロファネート結合への変換がほぼ完了したことを確認し、オルトトルエンスルホンアミド0.03gを添加してアロファネート化反応を停止させた。
【0152】
得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度:0.05kPa、温度150℃)を用いて未反応のオクタデカノールおよびヘキサメチレンジイソシアネートを除去し、アロファネート基含有ポリイソシアネート(HDI/C18OHアロファネート変性体)からなるポリイソシアネートaを得た。ポリイソシアネートaのイソシアネート基含有率(NCO%)は13.1%であった。
【0153】
なお、NCO%は、JIS K7301に記載のイソシアネート基含有率試験により測定した。
【0154】
合成例2
(ポリイソシアネートbの合成)
コスモネートT-80(2,4-異性体/2,6-異性体比=80/20のトリレンジイソシアネート、三井化学社製)596.0gを70℃に加熱し、トリメチロールプロパン153.1gを徐々に加えて、2時間反応させることにより、ポリイソシアネートのポリオール変性体(TDI/TMPポリオール変性体)からなるポリイソシアネートbを得た。」
「【0158】
合成例6
(ポリオールbの合成)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル124.5g、プロピレングリコール60.7g、ネオペンチルグリコール82.3g、および、チタンテトラブトキシド0.1gをそれぞれ添加し、窒素気流下180~220℃で、エステル交換反応させた。所定量のメタノールを留出後、ダイマー酸288.2gを加え、180~220℃で、エステル化反応させ、所定量の水を留出後、系内を徐々に減圧し、13.3Pa以下、220℃で、縮合反応させて、数平均分子量が約5000のナフタレンジカルボン酸含有ポリエステルポリオール(NDCM/DA//PG/NPG)からなるポリオールbを得た。」
「【0160】
合成例8
(ポリオールdの合成)
イソフタル酸141.2g、1,6-ヘキサンジオール218.7g、および、酢酸亜鉛0.1gをそれぞれ添加し、窒素気流下180~220℃で、エステル化反応させた。所定量の水を留出後、ダイマー酸243.0gを加え、180~220℃で、さらにエステル化反応させ、所定量の水を留出後、系内を徐々に減圧し、13.3Pa以下、220℃で縮合反応させて、数平均分子量が5000のポリエステルポリオール(IPA/DA//HD)からなるポリオールdを得た。」
「【0169】
<ポリイソシアネート成分の調製>
調製例1
(ポリイソシアネート成分Aの調製)
合成例2のポリイソシアネートb 750gに、トルエン250.0g加え、均一に混合することにより、固形分75%、イソシアネート基含有量14.2%のポリイソシアネート成分Aを調製した。」
「【0172】
調製例4
(ポリイソシアネート成分Dの調製)
合成例3のポリイソシアネートc 750.0gに、トルエン250.0gを加えて均一混合することにより、固形分75%、イソシアネート基含有量12.6%のポリイソシアネート成分Dを調製した。」
「【0174】
<ポリオール成分の調製>
調製例6~12
(ポリオール成分A~Gの調製)
合成例5~11のポリオールa~gを、それらと同質量のトルエンで希釈して、固形分50%にそれぞれ調整することにより、調製例6~12のポリオール成分A~Gをそれぞれ調製した。」
「【0179】
実施例および比較例
表1および表2に従って、各調製例のポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、当量比(NCO/OH)=1.3となるように混合して、ラミネート用接着剤を調製した。
【0180】
その直後に、ラミネート用接着剤を、常温下において厚さ40μmのアルミニウム箔(表面未処理)の上に、バーコーターを用いて、坪量4g/m2(固形分)となるように塗布し、有機溶剤(トルエン)を揮散させた。その後、アルミニウム箔におけるラミネート用接着剤の塗布面と、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、40℃で7日間養生することにより、ラミネート用接着剤を硬化させて、アルミニウム箔および未延伸ポリプロピレンフィルム間を接着させて、複合フィルムを得た。」
「【0192】
【表1】
[図:0001425706000003.jpg]
」
(3)甲3には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はレトルト耐性に優れる2液硬化型ラミネート用接着剤組成物に関する。更に詳しくは、各種プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等をラミネートして、主として食品の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いる2液硬化型ラミネート用接着剤組成物に関する。」
「【0046】接着剤の評価方法を以下に示した。
(1)接着強度
エージングを終了した検体の複合フィルムのアルミ箔とCPPとの間を、引張り試験機を用いて、雰囲気温度を25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、T型剥離方法で剥離した際の引張り強度を接着強度とし、表4および表5に示した。接着強度の単位は、N/15mmとした。
(2)レトルト耐性
エージングが終了した検体の複合フィルムを用いて、120mm×120mmの大きさのパウチを作成した。この際、ヒートシールは10mm幅のバーシールを用いて、200℃、98kPa、1秒のシール条件で行った。次いで、流れ方向(MD)および横方向(TD)に2本の折り目を入れ、内容物として、食酢、サラダ油、ミートソースを重量比で1:1:1に配合した疑似食品70gをパウチに充填した。このパウチを135℃で30分間の蒸気式のレトルト殺菌処理をした後に、パウチの外観を目視でデラミネーション(浮き)を評価した。
【0047】
【表4】
[図:0001425706000004.jpg]
【0048】
【表5】
[図:0001425706000005.jpg]
」
(4)甲4には、次の記載がある。
「【0044】
【比較例6】
HMDI系ポリイソシアネート「コロネートHX」(日本ポリウレタンの商品名、イソシアネート平均官能基数3.4、粘度2,000mPa・s/25℃)を用いた以外は実施例1と同様に行い、固形分80%のブロックポリイソシアネート溶液を得た。」
第5 当審における判断
1 申立理由と取消理由の整理
本件訂正により、訂正前の請求項1~6、9は削除されたため、前記第4の2の申立理由のうち、訂正前の請求項1~6、9を対象とする申立理由1、申立理由2、取消理由2及び取消理由4は、その対象が存在しないものとなった。
そこで、前記第4の取消理由1及び取消理由3(請求項7、8を対象とするもの)、並びに、取消理由で採用しなかった申立理由3、申立理由4及び申立理由5について、検討を行う。
2 取消理由1(明確性要件)
(1)本件訂正前の請求項1の「(i)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づく20重量%から60重量%のダイマー酸」との記載は、ダイマー酸の重量%が、反応前の仕込み量の重量%であるのか、反応後のポリマー中の「ダイマー酸由来単位の重量」の重量%であるのかが明確でなかった。
しかしながら、本件訂正により「前記ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含む」と訂正されたことで、ダイマー酸の重量%が、反応後のポリマー中の「ダイマー酸由来単位の重量」の重量%を意味することが明確となった。
(2)本件訂正前の請求項1の「100:5から100:35のポリオール:イソシアネートの重量比を有する」との記載は、「ポリオール」が「ダイマー酸ポリエステルポリオール成分」を意味するのか、「(iii)ポリオールとを含む反応混合物」の「ポリオール」を意味するのかが明確でなかった。また、「イソシアネート」が「イソシアネート成分」と同じ意味なのか否かも明らかでなかった。
しかしながら、本件訂正により「100:5から100:35の前記(B)のダイマー酸ポリエステルポリオール成分:前記(A)のイソシアネート成分の重量比」と訂正されたことで、「(B)のダイマー酸ポリエステルポリオール成分」と「(A)のイソシアネート成分」の比であることが明確となった。
(3)前記(1)及び(2)の他に、特許請求の範囲が不明確となるような記載は見当たらないから、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。
3 取消理由3(甲2の実施例を主引例とした進歩性)について
(1)甲2の実施例に記載された発明
甲2(前記第4の5(2))の【0192】の【表1】に記載された実施例2に着目し、【0151】の「ポリイソシアネートaの合成」、【0154】の「ポリイソシアネートbの合成」、【0158】の「ポリオールbの合成」、【0171】の「ポリイソシアネート成分Cの調製」、【0174】の「ポリオール成分A~Gの調製」、【0179】の「ラミネート用接着剤を調製」の記載、【0180】の「複合フィルム」の記載を参酌すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2A発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2A発明)
「ラミネート用接着剤組成物を、アルミニウム箔(表面未処理)の上に塗布し、アルミニウム箔におけるラミネート用接着剤組成物の塗布面と、未延伸ポリプロピレンフィルム(片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、ラミネート用接着剤組成物を硬化させて得た、複合フィルムであって、
ラミネート用接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分Cおよびポリオール成分Bを、当量比(NCO/OH)=1.3となるように混合して調製したものであって、
ラミネート加工直後の接着強度が6.3N/15mm、ヒートシール後のヒートシール強度が48N/mmであり、メタノール浸漬後の接着強度が2.1N/15mmであり、混合溶剤浸漬後の接着強度が2.0N/15mmであり、
ポリイソシアネート成分Cは、合成例1のポリイソシアネートa 300gと、合成例2のポリイソシアネートbのトルエン溶液(合成例2のポリイソシアネートbを固形分75%となるようにトルエンで希釈したもの)400gと、トルエン300gとを攪拌することにより調製した、固形分60%、イソシアネート含有率9.6%のポリイソシアネート成分Cであり、
ポリオール成分Bは、合成例6のポリオールbを、それらと同質量のトルエンで希釈して、固形分50%に調整したものであり、
合成例1のポリイソシアネートaは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)860g、オクタデカノール139.5g、および、トリス(トリデシル)ホスファイト0.5gを仕込みウレタン化反応させ、反応液にオクチル酸ビスマス(Bi含有量:18質量%)を0.05g添加しアロファネート化反応させ、オルトトルエンスルホンアミド0.03gを添加してアロファネート化反応を停止させ、得られた反応液から未反応のオクタデカノールおよびヘキサメチレンジイソシアネートを除去して得られた、イソシアネート基含有率(NCO%)が13.1%のアロファネート基含有ポリイソシアネート(HDI/C18OHアロファネート変性体)からなるポリイソシアネートaであり、
合成例2のポリイソシアネートbは、コスモネートT-80(2,4-異性体/2,6-異性体比=80/20のトリレンジイソシアネート、三井化学社製)596.0gを加熱し、トリメチロールプロパン153.1gを徐々に加えて反応させることにより得られた、ポリイソシアネートのポリオール変性体(TDI/TMPポリオール変性体)からなるポリイソシアネートbであり、
合成例6のポリオールbは、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル124.5g、プロピレングリコール60.7g、ネオペンチルグリコール82.3g、および、チタンテトラブトキシド0.1gをそれぞれ添加してエステル交換反応させ、所定量のメタノールを留出後、ダイマー酸288.2gを加えてエステル化反応させ、所定量の水を留出後、縮合反応させて得られた、数平均分子量が約5000のナフタレンジカルボン酸含有ポリエステルポリオール(NDCM/DA//PG/NPG)からなるポリオールbである、
ラミネート用接着剤組成物を硬化させて得た、複合フィルム。」
(2)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲2A発明を対比する。
(ア)甲2A発明の「ポリオール成分B」は、「合成例6のポリオールb」を含むものであって、「合成例6のポリオールb」は、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、および、チタンテトラブトキシドをそれぞれ添加してエステル交換反応させ、所定量のメタノールを留出後、ダイマー酸を加えてエステル化反応させ、所定量の水を留出後、縮合反応させて得られた、数平均分子量が約5000のナフタレンジカルボン酸含有ポリエステルポリオール(NDCM/DA//PG/NPG)からなるものであるから、本件訂正発明7の「(B)アロファネート基を含まないダイマー酸ポリエステルポリオール成分」に相当する。
(イ)甲2A発明の「合成例6のポリオールb」における、ダイマー酸の重量%は、概略次のように計算できる。
ポリエステルポリオールのジオール部分について、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルは分子量244.24であるから、その124.5gは124.5/244.24≒0.51モルであり、プロピレングリコールは分子量76.09であるから、その60.7gは60.7/76.09≒0.80モルであり、ネオペンチルグリコールの分子量は104.15であるから、その82.3gは82.3/104.15≒0.79モルである。
ここで、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルの2つのメチル基部分が、プロピレングリコール又はネオペンチルグリコールでエステル置換されると、2つのメタノール(分子量32.04)が外れるから、平均すると、244.24+76.09+104.15-32.04×2≒360.4の分子量のジオールが0.51モルが生成し、0.29モルのプロピレングリコール及び0.28モルのネオペンチルグリコールが残ると考えられる。
これに対して、ポリエステルポリオールのジカルボン酸部分について、ジオール成分と反応し得る、ダイマー酸の分子量は560程度であるから、その288.2gは288.2/560≒0.51モルである。
ここで、ジカルボン酸成分0.51モルに対して、分子量360.4のジオール0.51モル、プロピレングリコール0.29モル及びネオペンチルグリコール0.28モルが均等な機会で反応して、ポリエステルポリオールが生成したとすると、生成するポリエステルポリオールに含まれるモノマー由来の単位の各種成分のモル比の合計を1とした場合、その合計における平均のモル質量は、前記ジオールとダイマー酸がエステル縮合する際に、2つの水分子が外れることを考慮して、{560+360.4×0.51/(0.51+0.29+0.28)+76.09×0.29/(0.51+0.29+0.28)+104.15×0.28/(0.51+0.29+0.28)-18×2}×0.51≒396.6である。また、甲2A発明の「合成例6のポリオールb」の「ダイマー酸」由来の重量は、ダイマー酸から2つのOHが外れた分であるから、(560-17×2)×0.51=268.3であるから、甲2A発明の「合成例6のポリオールb」における、ダイマー酸の重量%は、268.3/396.6×100≒67.7重量%となる。
(ウ)そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2A>
接着剤組成物を構成するポリイソシアネート成分とポリオール成分が、本件訂正発明7は、(A)アロファネート基を含まないイソシアネート成分と(B)アロファネート基を含まないダイマー酸ポリエステルポリオール成分であるのに対し、
甲2A発明は、アロファネート基含有ポリイソシアネート(HDI/C18OHアロファネート変性体)からなる合成例1のポリイソシアネートaを含むポリイソシアネート成分Cと、合成例6のポリオールb(アロファネート基を含むものではない)を含むポリオール成分Bである点。
<相違点2B>
本件訂正発明7は、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含む、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分を含むのに対し、甲2A発明は、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を約67.7重量%含む、ダイマー酸ポリエステルポリオール成分を含むものである点。
事案に鑑み、相違点2Aについて検討すると、甲2発明は、甲2の【請求項1】、【0001】、【0008】及び【0009】に記載されるとおり、複合フィルムのラミネート加工に用いられるラミネート用接着剤において、高極性溶媒に対する耐性に優れ、接着強度の低下を有効に抑制することができ、優れたヒートシール強度、および、フィルムおよび接着剤層間における優れた接着強度を有するラミネート用接着剤を提供するために、接着剤のポリイソシアネート成分が、炭素数が4以上のモノオールとポリイソシアネートとから得られるアロファネート基含有ポリイソシアネートを含有し、および/または、接着剤のポリオール成分が、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートとポリオールとから得られるアロファネート基含有ポリウレタンポリオールを含有するというものである。
そして、同【0192】の【表1】及び【0193】の【表2】には、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の少なくともいずれかにアロファネート変性体を含む実施例1~8に対して、いずれにもアロファネート変性体を含まない比較例1~3、5~10は、耐性接着強度等の評価が劣ることが示されている。
そうすると、甲2発明において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の少なくともいずれかには、アロファネート変性体を含むことが必須の構成と認められるから、甲2発明において、接着剤組成物を構成するポリイソシアネート成分とポリオール成分のいずれについても、アロファネート基を含まないようにすることには阻害要因があるから、甲2~甲4に記載された事項によらず、前記相違点2Aを、当業者が容易になし得たこととすることはできない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、甲2A発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明8
本件訂正発明8は、本件訂正発明7に対して、さらに技術的事項を追加したものである。そうすると、前記(2)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明8は、甲2A発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由3(甲1を主引例とした進歩性)
(1)甲1に記載された発明
甲1(前記第4の5(1))参照。)の【0059】に記載された実施例1の「粘着シート」について、同【0075】のガラス板に対する粘着力を参照すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「ポリエステルポリマー100部に対して、架橋剤として、ポリヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)15部を配合して溶剤としてトルエンを加え塗工しやすい粘度に調整したポリエステル系粘着剤組成物を、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、120℃で3分間乾燥させて得た組成物層に、剥離処理した支持体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの剥離処理面を貼り合わせて得た、粘着シートであって、
前記ポリエステルポリマーは、ジカルボン酸であるダイマー酸と、ジオールであるMn650のポリエーテルグリコールのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1.00:1.30になるように、ダイマー酸(商品名「プリポール(PRIPOL)1009」、クローダ社製、重量平均分子量:567、トリマー酸含有率:1重量%)80g、Mn650のポリエーテルグリコール(商品名「PTMG650」、三菱化学社製、数平均分子量:650)120g、重合触媒としてジブチルスズオキシド(和光社製)0.2gを仕込み、反応させた、重量平均分子量(Mw)が9,298のポリエステルであり、
前記粘着シートを幅25mmにカットし、粘着シートの粘着面をアルカリガラスに貼り合わせた試験片の180°ピール粘着力が、0.06N/25mmである、粘着シート。」
(2)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲1発明を対比する。
甲1発明の「ポリヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)」は、本件訂正発明7の「(A)アロファネート基を含まないイソシアネート成分」に相当し、甲1発明の「ダイマー酸」、「ポリエーテルグリコール」及び「トルエン」は、本件訂正発明7の「ダイマー酸」、「ポリオール」及び「溶媒」に相当する。
甲1発明の「ポリエステルポリマー」は、ダイマー酸と、ジオールであるMn650のポリエーテルグリコールとを反応させたものであるから、本件訂正発明7の「(B)アロファネート基を含まないダイマー酸ポリエステルポリオール成分」に相当する。また、甲1発明の「ポリエステルポリマー」は、80/567≒0.14モルのダイマー酸と、120/650≒0.18モルのポリエーテルグリコールのうちの0.14モルが縮合して、0.14×2モルの水分子が外れたものと考えられるから、ポリエステルポリマーの中の1つのダイマー酸と1つのポリオールに由来する単位の重量は、567+650/1.3-18×2×0.14≒1058.7である。ダイマー酸は、縮合時に0.14モルのOHが外れるから、ポリマー中のダイマー酸由来の重量は、567-17×0.14≒564.6となる。甲1発明のダイマー酸は1重量%のトリマー酸を含むから、甲1発明の「ポリエステルポリマー」中の「ダイマー酸」の重量%は、564.6/1058.7×100≒53.3重量%からわずかに少なくなる程度のものであり、本件訂正発明7の「ダイマー酸ポリエステルポリオール成分の総重量に基づいて前記ダイマー酸に由来する単位を20重量%から60重量%含む」を充足すると認められる。
甲1発明の「ポリエステルポリマー100部に対して、架橋剤として、ポリヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)15部を配合して溶剤としてトルエンを加え塗工しやすい粘度に調整したポリエステル系粘着剤組成物」は、ポリエステルポリマー成分と架橋剤成分を溶媒で粘度調整したものであるから、本件訂正発明7の「2成分溶媒ベースの接着剤組成物」と、「2成分溶媒ベースの組成物」である点で共通する。
そうすると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明7は、「第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間の接着剤層と、を含むラミネートであって、前記第1の基材が金属箔フィルムであり、前記第2の基材がポリエチレンフィルムであり、前記ラミネートは、ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、前記ラミネートは、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである、ラミネート」であるのに対し、
甲1発明は、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にポリエステル系粘着剤組成物層を備える粘着シートの粘着面をアルカリガラスに貼り合わせた試験片の180°ピール粘着力が、0.06N/25mmである、粘着シートである点。
相違点1について検討すると、甲1発明は、甲1の【0001】、【0002】及び【0008】に記載されるとおり、ディスプレイ画面の表面を保護する粘着シートにおいて、高い濡れ性を示し、気泡の噛み込みがなく、軽剥離性、再剥離性、及び、作業性に優れた粘着シートとすることを目的としたものであり、その試験片の180°ピール粘着力は、0.06N/25mmとされている。
これに対し、本件訂正発明7の「ラミネート」は、ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmと特定されるように、熱や化学物質にさらされた後も良好な接着強度を保つものである。
そうすると、再剥離性も考慮して180°ピール粘着力が、0.06N/25mm程度に調整されている甲1発明を、本件訂正発明7のラミネートの接着剤として用いる動機付けはないから、甲2~甲4に記載された事項によらず、前記相違点1を、当業者が容易になし得たこととすることはできない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明8
本件訂正発明8は、本件訂正発明7に対して、さらに技術的事項を追加したものである。そうすると、前記(1)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明8は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由4(甲2の比較例を主引例とした進歩性)について
(1)甲2の比較例に記載された発明
甲2(前記第4の5(2))の【0192】の【表1】に記載された比較例2に着目し、【0154】の「ポリイソシアネートbの合成」、【0160】の「ポリオールdの合成」、【0169】の「ポリイソシアネート成分Aの調製」、【0174】の「ポリオール成分A~Gの調製」、【0179】の「ラミネート用接着剤を調製」の記載、【0180】の「複合フィルム」の記載を参酌すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2P発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2P発明)
「ラミネート用接着剤組成物を、アルミニウム箔(表面未処理)の上に塗布し、アルミニウム箔におけるラミネート用接着剤組成物の塗布面と、未延伸ポリプロピレンフィルム(片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、ラミネート用接着剤組成物を硬化させて得た、複合フィルムであって、
ラミネート用接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分Aおよびポリオール成分Dを、当量比(NCO/OH)=1.3となるように混合して調製したものであって、
ラミネート加工直後の接着強度が6.7N/15mm、ヒートシール後のヒートシール強度が48N/mmであり、メタノール浸漬後の接着強度が0.2N/15mmであり、混合溶剤浸漬後の接着強度が0N/15mmであり、
ポリイソシアネート成分Aは、合成例2のポリイソシアネートb 750gに、トルエン250.0g加えることにより調製した、固形分75%、イソシアネート基含有量14.2%のポリイソシアネート成分Aであり、
ポリオール成分Dは、合成例8のポリオールdを、それらと同質量のトルエンで希釈して、固形分50%に調整したものであり、
合成例2のポリイソシアネートbは、コスモネートT-80(2,4-異性体/2,6-異性体比=80/20のトリレンジイソシアネート、三井化学社製)596.0gを加熱し、トリメチロールプロパン153.1gを徐々に加えて反応させることにより得られた、ポリイソシアネートのポリオール変性体(TDI/TMPポリオール変性体)からなるポリイソシアネートbであり、
合成例8のポリオールdは、イソフタル酸141.2g、1,6-ヘキサンジオール218.7g、および、酢酸亜鉛0.1gをそれぞれ添加してエステル化反応させ、所定量の水を留出後、ダイマー酸243.0gを加えてさらにエステル化反応させ、所定量の水を留出後、縮合反応させて得られた、数平均分子量が5000のポリエステルポリオール(IPA/DA//HD)からなるポリオールdである、
ラミネート用接着剤組成物を硬化させて得た、複合フィルム。」
(2)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲2P発明を対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
<相違点2P>
本件訂正発明7は、「ラミネートは、ボイルインバッグ試験後の接着強度が4.0N/15mmから15N/15mmであり、前記ラミネートは、化学的エージング後の接着強度が2.0N/15mmから10N/15mmである、ラミネート」であるのに対し、
甲2P発明は、ラミネート加工直後の接着強度が6.7N/15mm、ヒートシール後のヒートシール強度が48N/mmであり、メタノール浸漬後の接着強度が0.2N/15mmであり、混合溶剤浸漬後の接着強度が0N/15mmである点。
相違点2Pについて検討すると、甲2P発明は、甲2の【0192】の【表1】及び【0193】の【表2】の記載から明らかなように、ポリイソシアネート成分とポリオール成分のいずれにもアロファネート変性体を含まない比較例2に基づくものであって、耐性接着強度等の評価が劣るものである。
そして、比較例相当の甲2P発明において、耐性接着強度を向上させる動機付けはないから、前記相違点2Pは、甲2P発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、仮に、甲2P発明において、甲2の記載に基づいて耐性接着強度を向上させようとすれば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の少なくとも一方をアロファネート変性体を含むものとする必要があるが、そのようにすれば、前記4(2)の相違点2Aと同様の相違が生じることになる。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、甲2P発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明8
本件訂正発明8は、本件訂正発明7に対して、さらに技術的事項を追加したものである。そうすると、前記(1)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明8は、甲2P発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 申立理由5(サポート要件)
申立人は、特許異議申立書の40頁11行~27行(なお、同頁11行の「(4-4)サポート要件違反および明確性違反」は、同18頁下9行の「(3-5)理由5:サポート要件違反」との記載から見て、「(4-4)サポート要件違反」の明らかな誤記と認める。)において、本件特許発明1では、(A)イソシアネート成分、(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分、及び(C)溶媒、の反応生成物を含むことを規定しているが、本件特許明細書の【0175】に記載の実施例及び比較例では、「(C)溶媒」に該当する酢酸エチルが反応した反応生成物が生成していることが全く記載されていないから、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1の範囲まで、本件特許明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない、との趣旨の主張をしている。
しかしながら、溶媒が反応しないことは技術常識であって、本件訂正発明7の、(A)イソシアネート成分、(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分、及び(C)溶媒、の反応生成物を含む、との特定は、(C)溶媒の中に分散した(A)イソシアネート成分及び(B)ダイマー酸ポリエステルポリオール成分が反応した反応生成物を含む、という趣旨であることが明らかである。
そうすると、本件訂正発明7は、明細書に記載された発明であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項7、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1~6、9は本件訂正により削除され、当該請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700901