特許異議申立
2022-700491
液晶表示素子用シール剤組成物
- 審判番号
- 2022-700491
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-207970
- 登録番号
- 6986756
- 請求日
- 2022年06月08日
- 審決日
- 2023年01月30日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】協立化学産業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人 津国
- 【異議申立人】鳥巣 実
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 吉野 三寛
- 分類
- P1651.121-YAA(G02F) / P1651.537-YAA(G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6986756号発明「液晶表示素子用シール剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6986756号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第6986756号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6986756号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年11月5日に出願され、令和3年12月2日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 6月 8日 :特許異議申立人鳥巣実(以下「申立人」とい
う。)による請求項1~7に係る特許に対す
る特許異議の申立て
令和 4年 8月29日付け:取消理由通知書
令和 4年10月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年12月21日 :申立人による意見書
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「硬化性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び窒化ジルコニウム(C)を含む液晶表示素子用シール剤組成物。」と記載されているのを、「硬化性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び窒化ジルコニウム(C)を含み、
下記式(1)の化合物を含まない液晶表示素子用シール剤組成物であって、
光重合開始剤(B)が、340nm~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物である液晶表示素子用シール剤組成物。
【化6】
[図:0001397194000001.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)
なお、訂正前の請求項1ないし7は、請求項2ないし7が請求項1の記載を直接または間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1は、一群の請求項1ないし7について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1のうち、訂正前の請求項1中の「液晶表示素子用シール剤組成物」との記載を、「『下記式(1)の化合物を含まない液晶表示素子用シール剤組成物』『【化6】
[図:0001397194000002.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)』」とする訂正事項は、訂正前の請求項1の液晶表示素子用シール剤組成物の含有成分から特定の化合物を除くことにより、訂正後の請求項1に係る発明における液晶表示素子用シール剤組成物の組成をより特定し、限定するものである。
また、訂正事項1のうち、訂正前の請求項1中の「光重合開始剤(B)」との記載を、「光重合開始剤(B)が、340nm~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物である」とする訂正事項は、光重合開始剤(B)に限定を加えることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~7は、訂正後の請求項1の記載を引用することにより、訂正後の請求項2~7に係る発明をより特定し、限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1の液晶表示素子用シール剤組成物の含有成分から特定の化合物を除き限定し、さらに、訂正前の請求項1の光重合開始剤(B)を限定し、特許請求の範囲を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~7の記載について何ら訂正するものではなく、訂正前の請求項2~7についても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1のうち、「液晶表示素子用シール剤組成物」から、「『下記式(1)の化合物を含まない液晶表示素子用シール剤組成物』『
【化6】
[図:0001397194000003.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)』」とする訂正事項は、取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2016-89084号公報)に記載された「
[図:0001397194000004.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)」を除外することを明示した訂正であって、訂正前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではない。
また、訂正事項1のうち、「光重合開始剤(B)が、340nm~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物である」との訂正事項は、明細書の段落【0020】「光の中でも、紫外線、具体的には、100~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物が好ましく、340~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物がより好ましい。」の記載を根拠とするものである。
以上より、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし7に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項のとおり、下記のものである。
「【請求項1】
硬化性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び窒化ジルコニウム(C)を含み、
下記式(1)の化合物を含まない液晶表示素子用シール剤組成物であって、
光重合開始剤(B)が、340nm~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物である液晶表示素子用シール剤組成物。
【化6】
[図:0001397194000005.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)
【請求項2】
前記成分(B)の配合量が、前記成分(A)100重量部に対して、0.1~10重量部である請求項1に記載の液晶表示素子用シール剤組成物。
【請求項3】
前記成分(B)が、ジアルキルアミノベンゾイル基を有するポリエーテル化合物を含む請求項1又は2に記載の液晶表示素子用シール剤組成物。
【請求項4】
前記成分(B)が、チオキサントン類を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶表示素子用シール剤組成物。
【請求項5】
前記成分(A)が、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶表示素子用シール剤組成物。
【請求項6】
さらに熱硬化剤(D)を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶表示素子用シール剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載された液晶表示素子用シール剤組成物の硬化物でシールされた液晶表示体。」
第4 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して通知した、令和4年8月29日付け取消理由の概要は以下のとおりである。
1.(サポート要件)本件特許に係る出願の下記の請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
理由1(サポート要件)について
・請求項 1、2、5~7
理由2(進歩性)について
・請求項 1~7
・引用文献等 甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証
引用文献等一覧
甲第1号証:特開2016-89084号公報
甲第2号証:特開2017-222559号公報
甲第3号証:特開2014-227344号公報
甲第4号証:特開2016-121347号公報
(以下、甲第1ないし4号証を順に「甲1」ないし「甲4」と略して記載する。)
第5 取消理由に対する当審の判断
当審は、本件特許の請求項1~7に係る特許については、取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。
以下、詳述する。
1 理由1(サポート要件)について
令和4年8月29日付けの取消理由通知書では、「請求項1、2、5~7に係る特許は、窒化ジルコニウムと、紫外線領域の光によって重合を開始しない光重合開始剤とを組み合わせたものも含んでおり、窒化ジルコニウムと、紫外線領域の光によって重合を開始しない光重合開始剤とを組み合わせたものは、本件特許の解決しようとする課題を解決できると、当業者が認識できるように記載されていないし、技術的な根拠をもって説明がされているわけでもない。」旨、説示した。
本件発明1、2、5~7は、訂正事項1により、「光重合開始剤(B)が、340nm~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物である」ことが限定された結果、紫外線領域の光によって重合を開始する光重合開始剤を使用することが特定されたため、本件発明1、2、5~7は、上記課題を解決し得る発明となり、発明の詳細な説明に記載のものになった。
2 理由2(進歩性)について
(1)引用文献の記載事項
ア 甲1には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ)。
「【請求項1】
硬化性化合物(成分A)、光増感剤(成分B)及び下記式(1):
【化1】
[図:0001397194000006.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)で示される化合物(成分C)を含む光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、黒色顔料(成分D)を含む請求項1記載の光硬化性樹脂組成物」
「【0010】
(1)成分A
本発明の光硬化性樹脂組成物(以下、光硬化性樹脂組成物ともいう)は、硬化性化合物(成分A)を含む。
【0011】
成分Aは、可視光、紫外線等の光によりラジカル重合することのできる化合物であり、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよい。
早硬性及び/又は硬化収縮低減の観点から、
エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、オキセタン樹脂及びスチレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましく、
エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂がより好ましく、
部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂が更に好ましい。
なお、(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。」
「【0027】
(2)成分B
光硬化性樹脂組成物は、後述する成分Cである塩基の発生の観点から、光増感剤(成分B)を含む。
成分Bは、光増感剤としてだけでなく、光重合開始剤として作用しても構わない。
【0028】
成分Bは、紫外線増感剤や可視光増感等が挙げられ、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、及びアセトフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、チオキサントン系、メタロセン系、及びキノン系等が挙げられる。」
「【0037】
(4)成分D
液晶表示素子等の遮光性が求められる製品の生産において使用される光硬化性樹脂組成物は、硬化後の樹脂硬化物自体が遮光性を有することを求められる場合がある。その場合、硬化前の光硬化性樹脂組成物には黒色顔料(成分D)を分散させておくことが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分Cを含有することで、成分Dを含み、光硬化性樹脂組成物自体に紫外線等の光が透過しにくい場合にも、光照射によって、所定時間内に、光硬化性樹脂組成物の表面近傍だけでなく、内部に至るまで、液晶シール剤全体に硬化が進行する(即ち、深部硬化性が改善される)。
【0038】
成分Dとしては、無機又は有機顔料が挙げられる。
無機顔料としては、炭素粉末、アイボリーブラック、マルスブラック、ピーチブラック、ランプブラック、銅、鉄、クロム、マンガン、コバルトなどを含有した無機系ブラック、チタンブラックなどが挙げられる。炭素粉末であることが好ましく、遮光性の観点から、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末等がより好ましく、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが更に好ましく、カーボンブラックが更に好ましい。」
「【0046】
(8)光硬化樹脂組成物
光硬化性樹脂組成物の好適な組成を説明する。
【0047】
遮光部分硬化性の観点から、成分A100質量部に対して、
成分Bは1~4質量部であることが好ましく、2~4質量部であることがより好ましく、2~3質量部であることが更に好ましく、
成分Cは0.5~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましく、1.5~5質量部であることが更に好ましい。」
「【0053】
(9)シール方法
光硬化性樹脂組成物をシール剤として用いて遮光部分が存在する対象部材をシールする方法を、液晶表示素子の製造工程を例にして説明する。
液晶表示素子中のブラックマトリックス基板等の遮光部材と厚さ方向に重なる位置にあり、遮光部分が存在する透明基板上に、光硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により長方形状のシールパターンを形成する。
次に、光硬化性樹脂組成物未硬化の状態で液晶の微小滴を基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方の透明基板を重ねあわせ、シール部に紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させて2つの透明基板のシールを完了する。」
したがって、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されると認められる。
「硬化性化合物(成分A)、光増感剤(成分B)及び下記式(1):
【化1】
[図:0001397194000007.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)で示される化合物(成分C)を含み、さらに、黒色顔料(成分D)を含み、
成分Aは、紫外線の光によりラジカル重合することのできる化合物であり、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよく、早硬性及び/又は硬化収縮低減の観点から、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂が好ましく、
成分Bは、光重合開始剤として作用し、紫外線増感剤等が挙げられ、チオキサントン系等が挙げられ、
黒色顔料(成分D)としては、銅、鉄、クロム、マンガン、コバルトなどを含有した無機系ブラックが挙げられ、
成分A100質量部に対して、成分Bは1~4質量部であることが好ましく、
液晶表示素子のシール剤として用いる光硬化性樹脂組成物。」
イ 甲2には、以下の記載がある。
「【請求項6】
請求項1又は2記載の窒化ジルコニウム粉末又は請求項3ないし5のいずれか1項に記載の方法により製造された窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として含む黒色感光性組成物。
【請求項7】
請求項6記載の黒色感光性組成物を用いて黒色パターニング膜を形成する方法。」
「【0016】
本発明の第1の観点の窒化ジルコニウム粉末は、比表面積が20m2/g以上であるため、レジストとした場合の沈降抑制の効果があり、また90m2/g以下であるため、十分な遮光性を有する効果がある。またX線回折プロファイルにおいて、窒化ジルコニウムのピークを有する一方、二酸化ジルコニウムのピーク、低次酸化ジルコニウムのピーク及び低次酸窒化ジルコニウムのピークを有しないため、粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、370nmの光透過率Xが少なくとも18%であり、550nmの光透過率Yが12%以下である特徴を有し、またX/Yが2.5以上である特徴を有する。X/Yが2.5以上であることにより、紫外線をより一層透過する特長がある。この結果、黒色顔料として黒色パターニング膜を形成するときに高解像度のパターニング膜を形成することができ、しかも形成したパターニング膜は高い遮光性能を有するようになる。」
「【0042】
〔窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として用いたパターニング膜の形成方法〕
上記窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として用いた、ブラックマトリックスに代表されるパターニング膜の形成方法について述べる。先ず、上記窒化ジルコニウム粉末を感光性樹脂に分散して黒色感光性組成物に調製する。次いでこの黒色感光性組成物を基板上に塗布した後、プリベークを行って溶剤を蒸発させて、フォトレジスト膜を形成する。次にこのフォトレジスト膜にフォトマスクを介して所定のパターン形状に露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、フォトレジスト膜の未露光部を溶解除去し、その後好ましくはポストベークを行うことにより、所定の黒色パターニング膜が形成される。」
「【0044】
上記基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。また上記基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。黒色感光性組成物を基板に塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布法を採用することができる。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.1~10μm、好ましくは0.2~7.0μm、更に好ましくは0.5~6.0μmである。パターニング膜を形成する際に使用される放射線としては、本実施形態では、波長が250~370nmの範囲にある放射線が好ましい。放射線の照射エネルギー量は、好ましくは10~10,000J/m2である。また上記アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。上記アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができ、現像条件は、常温で5~300秒が好ましい。このようにして形成されたパターニング膜は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス材、イメージセンサー用遮光材。光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター等に好適に用いられる。」
したがって、甲2には、次の技術的事項が記載されると認められる。
「紫外線をより一層透過する特長があり、高い遮光性能を有するようになる、窒化ジルコニウム粉末を黒色顔料として用いた、黒色感光性組成物。」
(2)対比・判断
本件発明1~7は、訂正により、「『下記式(1)の化合物を含まない液晶表示素子用シール剤組成物』『
【化6】
[図:0001397194000008.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)』」ことが限定されたので、本件発明1~7は、甲1発明と相違する。
そして、甲1は、「
[図:0001397194000009.jpg]
(式中、Rは炭素原子数1~6の直鎖、分岐または環状の炭化水素基であり、Rは異なっていても同一でもよい)」で示される化合物によって、光硬化性樹脂組成物の硬化性を著しく向上させているものであること(甲1の【0030】~【0033】参照。)から、甲1発明において、当該限定を有するようにすることは、阻害要因がある。
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲3(特に、【0009】参照)には、液晶シール剤等に用いられている光重合開始剤として、「【化3】
[図:0001397194000010.jpg]
(式中、n1は、2~50である)
で示される化合物である、[1]又は[2]記載の化合物。」が記載され、甲4(特に、【0040】参照)には、液晶シール剤等に用いられている光硬化性樹脂組成物に、熱硬化剤を含ませる技術が記載されている。
以上から、本件発明1と同様に、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、4、5、7も、甲1に記載された発明及び甲2の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲3の技術的事項又は甲4の技術的事項を考慮したとしても、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明3も、甲1に記載された発明、甲2の技術的事項及び甲3の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明6も、甲1に記載された発明、甲2の技術的事項及び甲4の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由
1 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由の概要
取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件特許請求項1に係る発明は、硬化性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び窒化ジルコニウム(C)の各成分の含有量を何ら特定してない。したがって、本件特許請求項1に係る発明は、所期の課題を解決するための手段が反映されていない。よって、本件特許請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえずサポート要件は満たされていない。
(2)本件特許請求項2に係る発明の数値範囲の上限値、下限値およびそれらの臨界意義が実施例及び比較例で立証されていない。このため、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件特許請求項2に係る発明は、前記成分(B)の配合量が、前記成分(A)100重量部に対して、0.1~10重量部であるの範囲に」まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえずサポート要件は満たされていない。
2 当審の判断
(1)上記申立理由(1)について
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0020】には「[光重合開始剤(B)]液晶表示素子用シール剤組成物は、光によって硬化する。したがって、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光によって、ラジカル又はカチオンを生じ、重合反応を開始させる化合物であれば、特に制限されない。光の中でも、紫外線、具体的には、100~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物が好ましく、340~400nmの波長の光によって、重合反応を開始させる化合物がより好ましい。」、段落【0025】には「光重合開始剤の配合量としては、特に限定されないが、硬化性化合物100重量部に対して、好ましくは0.1~10.0重量部、より好ましくは0.5~5.0重量部である。」、段落【0026】には「[窒化ジルコニウム(C)]窒化ジルコニウムは、光の波長が300~400nmにおいて、光の透過率が最大となるとともに、光の波長が400nmを超えると均一で高い遮光性能を示す。すなわち、紫外線領域とそれ以外の領域とで、光の透過率に著しい差がある。したがって、この窒化ジルコニウムと、紫外線領域の光によって重合を開始する上記光重合開始剤とを組み合わせることによって、本発明の液晶表示素子用シール剤組成物は、紫外線により硬化するとともに、紫外線以外の領域の光に対し、優れた遮光性を示す。」と記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0007】には「本発明は、可視光線に対する遮光性が高く、紫外線に対する光硬化性も高い液晶表示素子用シール剤組成物を提供することを目的とする。」と本件特許の解決しようとする課題が記載されている。
本件発明の解決しようとする課題は「可視光線に対する遮光性が高く、紫外線に対する光硬化性も高い液晶表示素子用シール剤組成物を提供すること」であり、段落【0020】、段落【0025】及び段落【0026】の記載から考えて、課題解決手段は窒化ジルコニウムと、紫外線領域の光によって重合を開始する光重合開始剤とを組み合わせることと認められる。また、可視光線に対する遮光性は、液晶表示素子用シール剤組成物を硬化させて得た硬化物の厚さによっても変わることは、自明である。
そうすると、当該課題を解決する範囲内で、光重合開始剤(B)や窒化ジルコニウム(C)、硬化性化合物(A)の配合量や種類は調節可能であるといえる。
したがって、本件発明1は、上記課題を解決し得る発明であり、発明の詳細な説明に記載したものである。
また、特許異議の申立理由に加えて、令和4年12月21日付けの意見書において、訂正後の請求項1は、(i)光重合開始剤の種類が特定されていない、(ii)硬化性化合物の種類が特定されていない、(iii)熱硬化剤が記載されていないので、本件発明1まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明1は、サポート要件違反である旨主張している。
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0010】等に、液晶表示素子用シール組成物は、光重合開始剤及び硬化性化合物を含む旨記載され、光重合開始剤については、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0021】~【0024】等に一般的な光重合開始剤を含め多数種類例示され、硬化性化合物については、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0011】~【0019】等に一般的な硬化性化合物を含め多数種類例示されており、液晶表示素子用シール組成物の技術分野で一般的に使用されている光重合開始剤や硬化性化合物が広く使用可能であることがうかがえる。そうすると、本件発明1は、光重合開始剤及び硬化性化合物の特定の具体例が発明特定事項として特定されていないからといってサポート要件違反とはいえない。
また、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0010】等に、液晶表示素子用シール組成物は、光重合開始剤、硬化性化合物及び窒化ジルコニウムを含む旨記載され、さらに、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0029】~【0031】に、熱硬化剤は、フィラーやカップリング剤とともに、更なる成分である旨、及び液晶表示素子用シール組成物として、更なる成分は任意で含有してもよい旨記載されている。そして、光重合開始剤、硬化性化合物及び窒化ジルコニウムが存在すれば、液晶表示素子用シール組成物として必要な硬化は達成され、熱硬化剤がなくても本件発明の課題を解決できるといえる。したがって、本件発明1は熱硬化剤が記載されていないからといって、本件発明1は、サポート要件違反とはいえない。
よって、申立理由(1)はその理由がなく、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たすものであるから、訂正後の請求項1に係る特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。
(2)上記申立理由(2)について
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0025】には「光重合開始剤の配合量としては、特に限定されないが、硬化性化合物100重量部に対して、好ましくは0.1~10.0重量部、より好ましくは0.5~5.0重量部である。」と記載されている。
また、硬化性化合物(A)と光重合開始剤(B)との比は、重合速度等を考慮し適宜選択するところ、本件発明2の数値範囲の上限値や下限値、またそれらの臨界的意義が実施例及び比較例で立証されていないからといって、本件発明2は、サポート要件違反とはいえない。
したがって、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、申立理由(2)はその理由がなく、本件発明2は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たすものであるから、請求項2に係る特許は、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700491