特許異議申立
2023-700050
光学デバイスおよびその用途
- 審判番号
- 2023-700050
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-552233
- 登録番号
- 7102543
- 請求日
- 2023年01月18日
- 審決日
- 2023年08月07日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 廣田 かおり
- 審判官 金高 敏康
- 分類
- P1651.121-Y (G02F) / P1651.536-Y (G02F) / P1651.537-Y (G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7102543号発明「光学デバイスおよびその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7102543号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7102543号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年4月26日、韓国)を国際出願日とする出願であって、令和4年7月8日に特許権の設定登録がされ、令和4年7月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年1月18日 :特許異議申立人である加藤浩志(以下「申立
人」という。)による請求項1~15に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和 5年3月23日付け:取消理由通知書(以下、単に「取消理由通知
書」という。)
令和 5年6月28日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明15」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
第1基材層、液晶層および第2基材層を順に含み、 前記第1基材層および前記第2基材層のうち一つ以上は熱収縮性基材層であり、前記熱収縮性基材層は、前記一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する、光学デバイス。
【請求項2】
前記第1基材層および前記第2基材層のそれぞれが前記熱収縮性基材層である、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記熱収縮性基材層は下記の数式1の長さ変化率△Lが負数であり、[数式1]
【数3】
[図:0001401681000001.jpg]
前記数式1でL0は基材層の25℃での前記一方向の長さであり、Lは基材層の80℃~150℃のうちいずれか一つの温度で1分~180分のうちいずれか一つの時間で熱処理後の前記一方向の長さである、請求項1または2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記一方向はMD方向である、請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記熱収縮性基材層は長さ変化率の絶対値が0.001%以上である、請求項3または4に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記熱収縮性基材層は長さ変化率の絶対値が5%以下である、請求項3から5の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記熱収縮性基材層は550nm波長の光に対する面内位相差値が3000nm以上の位相差フィルムである、請求項1から6の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記熱収縮性基材層はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムである、請求項1から7の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
90℃~100℃の高温と-30℃~-40℃の低温の間の温度変化時に内部に大気圧より高い正圧を有する、請求項1から8の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記第1基材層および前記第2基材層上にそれぞれ形成される第1電極層および第2電極層をさらに含む、請求項1から9の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記第1電極層および前記第2電極層上にそれぞれ形成される第1配向膜および第2配向膜をさらに含む、請求項10に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記液晶層は電圧の印加により、透過率が40%以上である透過モードと透過率が40%未満である非透過モードの間をスイッチングする、請求項1から11の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項13】
前記液晶層はスメクチック(smectic)液晶化合物、ネマチック(nematic)液晶化合物またはコレステリック(cholesteric)液晶化合物を含む、請求項1から12の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項14】
前記液晶層は異方性染料をさらに含む、請求項1から13の何れか一項に記載の光学デバイス。
【請求項15】
前記液晶層は側面にシーラントをさらに含む、請求項1から14の何れか一項に記載の光学デバイス。
第3 取消理由通知書に係る取消理由及び当事者が提出した証拠について
1 取消理由通知書に係る取消理由の概要
取消理由通知書の要旨は、次のとおりである。以下、「甲第1号証」を「甲1」などのように表記する。
(1)(新規性欠如)本件発明1~15は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲2に記載された発明であるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)(進歩性欠如)本件発明1~15は、甲2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 当事者が提出した証拠について
(1)申立人が提出した証拠は、次のとおりである。
甲1:国際公開第2017/170767号
甲2:特開2018-45136号公報
甲3:特開2015-136922号公報
甲4:特開2017-30319号公報
甲5:特開2000-284298号公報
甲6:特開2002-258255号公報
甲7:特開2001-142055号公報
甲8:国際公開第2017/095176号
甲9:東洋紡株式会社、“コスモシャイン? 超複屈折タイプ(SRF)”[online]、2013年2月13日、[2023年1月17日検索]、インターネット<URL:https://toyobo.com.tw/upload/download_files/tw_download_list_18111_yxtbv855wv.pdf>
甲10:特開2018-2918号公報
甲11:特開2018-13774号公報
甲12:特開2002-40249号公報
第4 取消理由通知書に係る取消理由に対する当審の判断
1 新規性欠如及び進歩性欠如に係る取消理由について
(1)甲2(特開2018-45136号公報)の記載事項及び甲2に記載された発明の認定
甲2には、「調光フィルム」についての次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
「調光層と、前記調光層の両側の面に、透明電極と、透明性フィルム基材とをこの順に備え、前記透明電極を通して前記調光層に印加可能な電圧によってヘイズ(白濁度)を2種類以上に切り替えることができる調光フィルムであって、
前記透明性フィルム基材の膜厚が20μm以上100μm以下であり、
前記透明性フィルム基材へ波長586.4nmの光を0~50°の角度で入射させたときのリタデーションが4000nm以上20000nm以下であり、(【請求項1】)
透明性フィルム基材は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるものであって、(【0028】)
前記調光層と前記透明電極の層間にさらに配向膜を備え、(【請求項3】)
前記調光層は、3次元網目構造の高分子ネットワークの内部に形成された空隙内に配置される液晶分子か、または高分子マトリックス中に分散配置される液晶材料中に含まれる液晶分子を含む、(【請求項7】)
調光フィルム。」
(2)対比
甲2発明の「透明性フィルム基材」は、「調光層の両側の面」に備えられているところ、一方側及び他方側の面に設けられた「透明性フィルム基材」が、それぞれ、本件発明1の「第1基材層」、及び、「第2基材層」に相当する。
甲2発明の「調光層」は「3次元網目構造の高分子ネットワークの内部に形成された空隙内に配置される液晶分子か、または高分子マトリックス中に分散配置される液晶材料中に含まれる液晶分子を含む」から、当該「調光層」は、本件発明1でいう「液晶層」であるといえる。
甲2発明の「調光フィルム」は、本件発明1の「光学デバイス」に相当する。
(3)一致点及び相違点の認定
上記(2)によれば、本件発明1と甲2発明とは、「第1基材層、液晶層および第2基材層を順に含む、光学デバイス。」である点で一致し、下記の点で相違する。
<相違点1>「第1基材層」及び「第2基材層」のうち一つ以上が、本件発明1は、「熱収縮性基材層であり、前記熱収縮性基材層は、前記一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する」ものであるのに対し、甲2発明は、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるもの」であって、「膜厚が20μm以上100μm以下」であり、「波長586.4nmの光を0~50°の角度で入射させたときのリタデーションが4000nm以上20000nm以下」である点。
(4)判断
相違点1について検討する。
ア 甲2発明には、上記(3)で説示したように、相違点1に係る本件発明1の構成(以下「本件構成」という。)が明記されていない。この点、取消理由通知書は、甲2発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるもの」であって、「膜厚が20μm以上100μm以下」であり、「波長586.4nmの光を0~50°の角度で入射させたときのリタデーションが4000nm以上20000nm以下」である「透明性フィルム基材」(以下「甲2基材」という。)が、本件構成を有している旨説示したことから、そういえるかを以下検討する。
(ア)まず、取消理由通知書は、甲2基材が、本件構成のうち、一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に膨張することを満たす旨説示し、その根拠として、甲2基材が「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」という「二軸延伸」されたものであることを挙げた。しかしながら、二軸延伸されたものであっても、延伸された両方の軸方向に収縮するものが存在する(例えば、国際公開第2017/014305号の【0023】参照。)ことから、直ちにこのようにいうことはできない。
(イ)次に、取消理由通知書は、甲2基材が本件構成のうち「熱収縮性基材層」であることを満たす旨説示し、その根拠として、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の記載に照らせば、延伸された高分子フィルムであって、厚さがそれほど大きくないとともに、面内位相差値が十分に大きいものであれば、そのようにいえることを挙げた。
しかしながら、強い延伸がなされると、結晶化が生じて熱収縮しづらいという現象も存在する(例えば、国際公開第2017/014305号の【0036】参照。)ことから、甲2基材のような延伸倍率が相当程度大きいと考えられるものが、必ずしも「熱収縮性基材層」に該当するとはいえない。
(ウ)そして、甲2の他の記載をみても、甲2基材が本件構成を満たしているとはいえないし、それを認めるに足りる技術常識が存在するともいえない。
よって、甲2発明は、本件構成を満たしていないし、甲2のその他の記載及び技術常識に照らしても、それを満たすようにすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
イ これに対し、申立人は、甲2基材として「東洋紡績株式会社製コスモシャイン(登録商標)のラインアップ製品」(甲2の【0044】)を選択した上で、当該ラインアップ製品として、同社製の「コスモシャイン SRF」(以下「SRF」といい、面内位相差は8400nmである(甲9)。)が周知であり、しかも、SRFは、本件明細書等の【0028】の記載のとおり、本件構成を満たしているから、当業者は、甲2基材としてSRFを採用することにより、本件構成に容易に至る旨主張する。
しかしながら、甲2には、上記のとおり、甲2基材として「東洋紡績株式会社製コスモシャイン(登録商標)のラインアップ製品」を用いる旨の記載はあるものの、SRFを用いることの明記はなく、むしろ、同文献の【0052】の表1には、リタデーション値からみて、SRFには該当しないフィルムが用いられている。つまり、甲2の上記「ラインアップ製品」という記載が、直ちにSRFを意味するわけではないし、当該記載に基づいて当業者がSRFをあえて選択する動機があることにもならない。
しかも、仮に、「SRF」が本件構成を満たしているとしても、本件発明1は、本件構成を備えることにより、「高温と低温の間を変化する環境で、基材の形態の変形により発生し得る負圧を解消し、正圧を生成して外部の気泡の流入を抑制できる光学デバイスを提供することができる」(【0009】)という格別の効果を奏するものである。
ウ そして、甲2のその他の記載及び甲1、3~12の記載をみても上記判断を左右するものはない。
したがって、本件発明は、甲2に記載された発明とはいえないし、甲2に記載された発明及び甲1、3~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)新規性欠如及び進歩性欠如についての小括
以上によれば、新規性欠如及び進歩性欠如に係る取消理由は、成り立たない。
2 取消理由通知書に係る取消理由に対する当審の判断の小括
よって、取消理由通知書に係る取消理由は、成り立たない。
第5 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断
1 サポート要件違反に係る申立理由について
(1)申立人は、本件発明1には「前記熱収縮性基材層は、前記一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する」と記載されているが、膨張率の全ての数値範囲において、当該熱収縮性基材層を採用した光学デバイスが適切な機能を有するとはいえない旨主張し、その根拠として、本件明細書等には、一方向に収縮する熱収縮性基材層に関する実施例は記載されているが、収縮する「一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する」実施例は記載されていないことを挙げている。
しかしながら、本件発明1が解決しようとする課題は、高温と低温の間を変化する環境で、基材の形態の変形により発生し得る負圧を解消し、正圧を生成して外部の気泡の流入を抑制することにある(【0006】)ところ、「熱収縮性基材層」が一方向に収縮さえすれば、当業者にとって上記課題を解決できると認識できるといえる。よって、本件発明1の記載はサポート要件を満たしており、申立人が主張する事情は上記判断を左右するものではない。
さらに、申立人は、従属請求項の記載についてもるる主張しているが、上記のとおり、本件発明1の記載がサポート要件を満たしている以上、これらの従属請求項に係る発明の記載にサポート要件違反の問題が生じることはない。
(2)以上によれば、サポート要件違反に係る申立理由は、成り立たない。
2 明確性要件違反に係る申立理由について
(1)申立人は、本件発明1の「熱収縮性基材層は、前記一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する」の記載のうち、「一方向に収縮」については、本件明細書等(【0009】)に、それが果たす働きや役割が記載されている一方、「一方向に垂直な方向に・・・膨張」については、本件明細書等にそのような記載がないと主張する。
しかしながら、本件発明1に係る「熱収縮性基材層は、前記一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する」の記載自体に不明確なところはないから、本件発明1は明確である。申立人が主張する事情によって、明確性要件違反の問題が生じることはない。
(2)申立人は、本件発明9の「90℃~100℃の高温と-30℃~-40℃の低温の間」の記載が、90℃~100℃の高温と-30℃~-40℃の低温の間の温度範囲の「全て」を意味するのか、又は、上記温度範囲の「一部」を意味するのか不明であると主張する。
しかしながら、上記記載は「90℃~100℃の高温」と「-30℃~-40℃の低温」の「間」というものであることから、90℃~100℃のいずれか1点の温度と-30℃~-40℃のいずれか1点の温度との間と解するのが自然である。実際、本件明細書等の実施例(【0082】)にも「90℃の高温から-40℃の低温に10回サイクリングテスト(Cycling test)を遂行」という記載があるところ、本件発明9における「高温」及び「低温」がいずれか1点の温度に紐付いているという上記の理解に整合しているといえる。よって、上記記載は明確である。
(3)以上によれば、明確性要件違反に係る申立理由は、成り立たない。
3 実施可能要件違反に係る申立理由
(1)申立人は、本件発明1の「熱収縮性基材層は、前記一方向に収縮し、前記一方向に垂直な方向に前記一方向への収縮率の0.01倍~0.5倍の膨張率で膨張する」の記載について、「一方向に収縮」に対しては、長さ方向の変化率ΔLを算出する数式及び熱処理条件が本件明細書等に記載されているが、「一方向に垂直な方向に」「膨張」に対しては、これらの数式及び熱処理条件が本件明細書等に記載されていないから、本件明細書等の記載は、当業者が本件発明1を実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできないと主張している。
しかしながら、本件発明1の「一方向に垂直な方向に」「膨張」についての長さ方向の変化率ΔLの数式は、本件明細書等の【0012】に記載された「収縮」についての長さ方向の変化率ΔLの数式に倣って、当業者が困難なく導き出せるといえる。
そして、「収縮」についての熱処理条件は、次のとおり、当業者が過度の試行錯誤なく見いだすことができるといえる。すなわち、本件明細書等の【0016】には、「また、前記熱収縮性基材層はMD方向に収縮する場合、TD方向には膨張することができる。一つの例示において、前記熱収縮性基材層がMD方向に収縮する場合、TD方向にはMD方向収縮率の約0.01倍~0.5倍、0.05倍~0.2倍水準の膨脹率、具体的には、0.1倍水準の膨脹率で膨張することができる。」と記載されているところ、延伸されたフィルムが熱収縮するメカニズムは技術常識であるし、また、延伸されたフィルムであっても結晶化により収縮しづらくなることが技術常識(上記1(4)ア(イ))であることから、そのような場合は、熱膨張し得ることが当業者にとって理解できるといえる。このように、フィルムが熱収縮することも熱膨張することもそのメカニズムがわかっていることから、当業者であれば、これらを指針として、過度の試行錯誤をすることなく、その熱処理及び延伸条件を見いだすことができるといえる。
(2)以上によれば、実施可能要件違反に係る申立理由は、成り立たない。
4 甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如に係る申立理由について
(1)申立人は、本件発明1が甲1に記載された発明に基づいて進歩性を欠如する旨主張し、その根拠として、甲1に記載された発明の「透明基材」が、「熱収縮された光透過性導電フィルム」(甲1の【0115】)であることをもって、本件発明1の「熱収縮性基材層」に相当することを前提とした主張をする。
しかしながら、甲1における上記「熱収縮された」とは、基材を加熱処理した結果、基材が収縮したという意味をもつと解されるのであり、そのことは、それが記載された段落(【0115】)中の「光透過性導電フィルム9は、熱収縮された光透過性導電フィルム9であってもよく、非加熱、すなわち、未収縮の光透過性導電フィルム9であってもよい。」の記載において、「熱収縮」が、「非加熱、すなわち、未収縮」と同列に記載されていることから明らかである。よって、当該「透明基材」は、本件発明1の「熱収縮性基材層」には相当しない。
したがって、申立人の主張はその前提が失当である。そして、甲1の他の記載及び甲2~12の記載をみても、本件発明1は、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)以上によれば、甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如に係る申立理由は、成り立たない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書において説示した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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