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特許異議申立

2022-700481

飛行装置

審判番号
2022-700481
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-165734
登録番号
6979251
請求日
2022年06月02日
審決日
2022年12月27日
公報発行日
2023年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社石川エナジーリサーチ
  • 【権利者代理人】岡田 義敬
  • 【権利者代理人】岡田 敬
  • 【権利者代理人】下茂 力
  • 【異議申立人】神田 紀子
審判長/審判官
  • 審判長 藤井 昇
  • 審判官 大谷 光司
  • 審判官 出口 昌哉
分類
P1651.113-YAA(B64C) / P1651.121-YAA(B64C) / P1651.537-YAA(B64C) / P1651.851-YAA(B64C) / P1651.853-YAA(B64C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6979251号発明「飛行装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6979251号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。 特許第6979251号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6979251号の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年10月7日に出願され、同年11月17日にその特許権の設定登録がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、令和4年6月2日付けで特許異議申立人神田紀子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月3日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年10月20日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内である同年11月11日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年10月3日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許号6979251号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3ついて訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 請求項1の「機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、前記エンジンは、クランクシャフトを有し、前記動力伝達軸は、前記クランクシャフトと接続し、前記エンジンは、前記動力伝達軸を経由して、前記メインロータを回転させ、前進する方向に沿う方向を第1方向、前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合、前記動力伝達軸は、前記第2方向に対して傾斜していることを特徴とする飛行装置。」を、「機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、前記エンジンは、クランクシャフトを有し、前記クランクシャフトは、第1クランクシャフトと、第2クランクシャフトと、を有し、前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、前記メインロータは、第1メインロータと、第2メインロータと、を有し、前記エンジンは、前記第1動力伝達軸を経由して、前記第1メインロータを回転させ、更に、前記第2動力伝達軸を経由して、前記第2メインロータを回転させ、前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜していることを特徴とする飛行装置。」と訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2の「前進する方向に沿う方向を第1方向、前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合」を、「前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合」と訂正する。(請求項2に従属する請求項3も、請求項2と同様に訂正する。) (3)訂正事項3 請求項2の「前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記第2方向に対して傾斜している」を、「前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」と訂正する。(請求項2に従属する請求項3も、請求項2と同様に訂正する。) (4)訂正事項4 請求項3の「前記第1動力伝達軸は、前記第2方向に対して一方方向に向かって傾斜し」を、「前記第1動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって前方に傾斜し」と訂正する。 (5)訂正事項5 請求項3の「前記第2動力伝達軸は、前記第2方向に対して他方方向に向かって傾斜する」を、「前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって後方に傾斜する」と訂正する。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1について 以下では、便宜的に、訂正事項1を以下のとおり分節して検討する。 訂正事項1A:訂正事項1のうち、「前記エンジンは、クランクシャフトを有し、前記クランクシャフトは、第1クランクシャフトと、第2クランクシャフトと、を有し、」と訂正する事項。 訂正事項1B:訂正事項1のうち、「前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、」と訂正する事項。 訂正事項1C:訂正事項1のうち、「前記メインロータは、第1メインロータと、第2メインロータと、を有し、」と訂正する事項。 訂正事項1D:訂正事項1のうち、「前記エンジンは、前記第1動力伝達軸を経由して、前記第1メインロータを回転させ、更に、前記第2動力伝達軸を経由して、前記第2メインロータを回転させ、」と訂正する事項。 訂正事項1E:訂正事項1のうち、「前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、」と訂正する事項。 訂正事項1F:訂正事項1のうち、「前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」と訂正する事項。 ア 訂正事項1Aについて (ア)訂正の目的 訂正事項1Aは、訂正前の請求項1の「クランクシャフト」に、「第1クランクシャフトと、第2クランクシャフトと、を有し、」という限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1Aは、願書に添付した明細書の「エンジン30のクランクシャフト」(段落【0060】)、「エンジン30は、第1エンジン部40と、第2エンジン部41と、を有する。」(段落【0047】)、「第1エンジン部40は、・・・第1ピストン43の往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフト42・・・を有する。」(段落【0048】)、「第2エンジン部41は、・・・第2ピストン46の往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフト45・・・を有する。」(段落【0049】)等の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1Aによる訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項1Bについて (ア)訂正の目的 訂正事項1Bは、訂正前の請求項1の「前記動力伝達軸は、前記クランクシャフトと接続し、」という事項を、「前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、」とするものであって、動力伝達軸の構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1Bは、願書に添付した明細書の「動力伝達軸25は、第1クランクシャフト42と接続する第1動力伝達軸26と、第2クランクシャフト45と接続する第2動力伝達軸27と、を有する。」(段落【0021】)等の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1Bによる訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項1Cについて (ア)訂正の目的 訂正事項1Cは、訂正前の請求項1の「メインロータ」に、「第1メインロータと、第2メインロータと、を有し、」という限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1Cは、願書に添付した明細書の「メインロータ14は、後述する第1動力伝達軸26を経由して伝達される動力により回転される第1メインロータ141と、後述する第2動力伝達軸27を経由して伝達される動力により回転される第2メインロータ142と、を有する。」(段落【0019】)、という記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1Cによる訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項1Dについて (ア)訂正の目的 訂正事項1Dは、訂正前の請求項1の「前記動力伝達軸を経由して、前記メインロータを回転させ、」という事項を、「前記第1動力伝達軸を経由して、前記第1メインロータを回転させ、更に、前記第2動力伝達軸を経由して、前記第2メインロータを回転させ、」という事項とするものであり、訂正前の請求項1のエンジンの動力伝達の経路を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1Dは、願書に添付した明細書の「メインロータ14は、後述する第1動力伝達軸26を経由して伝達される動力により回転される第1メインロータ141と、後述する第2動力伝達軸27を経由して伝達される動力により回転される第2メインロータ142と、を有する。」(段落【0019】)、「エンジン30は、動力伝達軸25を経由して、メインロータ14を機械的に回転させる。」(段落【0020】)、「動力伝達軸25は、第1クランクシャフト42と接続する第1動力伝達軸26と、第2クランクシャフト45と接続する第2動力伝達軸27と、を有する。」(段落【0021】)等の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1Dによる訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項1Eについて (ア)訂正の目的 訂正事項1Eは、訂正前の請求項1において、「前進する方向に沿う方向を第1方向」としていたのを「前記機体の前後方向を第1方向」とし、「前記第1方向に直交する方向を第2方向」としていたのを「前記機体の左右方向を第2方向」とするものであって、第1方向及び第2方向の具体的な方向を特定して明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1Eは、願書に添付した明細書の「図1は、飛行装置10を示す模式図である。ここでは、第1方向D1は、飛行装置10が前進または後進する方向である。第2方向D2は、第1方向D1に直交する方向である。ここでは、第1方向D1は前後方向であり、第2方向D2は左右方向である。」(段落【0016】)等の記載及び図1に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1Eによる訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項1Fについて (ア)訂正の目的 訂正事項1Fは、訂正前の請求項1において、「前記動力伝達軸は、前記第2方向に対して傾斜している」としていたのを、「前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」とするものであって、動力伝達軸を限定するとともに、動力伝達軸の傾斜に係る前提の構成を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 願書に添付した明細書には、「本実施形態では、第1動力伝達軸26および第2動力伝達軸27は、第2方向D2に対して傾斜している。」(段落【0029】)と記載されている。 また、図1には、第1動力伝達軸26及び第2動力伝達軸27が、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、第2方向D2に対して傾斜することが示されている。 図1 [図:0001396282000001.jpg] よって、訂正事項1Fは新規事項を追加するものではない。 (ウ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項1Fによる訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2において、「前進する方向に沿う方向を第1方向」としていたのを「前記機体の前後方向を第1方向」とし、「前記第1方向に直交する方向を第2方向」としていたのを「前記機体の左右方向を第2方向」とするものであって、第1方向及び第2方向の具体的な方向を特定して明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項2は、願書に添付した明細書の「図1は、飛行装置10を示す模式図である。ここでは、第1方向D1は、飛行装置10が前進または後進する方向である。第2方向D2は、第1方向D1に直交する方向である。ここでは、第1方向D1は前後方向であり、第2方向D2は左右方向である。」(段落【0016】)等の記載及び図1に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項2による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項2において、「前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記第2方向に対して傾斜している」としていたのを、「前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」とするものであって、第1動力伝達軸及び第2動力伝達軸の傾斜に係る前提の構成を限定するとともに明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 願書に添付した明細書には、「本実施形態では、第1動力伝達軸26および第2動力伝達軸27は、第2方向D2に対して傾斜している。」(段落【0029】)と記載されている。また、図1には、第1動力伝達軸26及び第2動力伝達軸27が、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、第2方向D2に対して傾斜することが示されている。 よって、訂正事項3は新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項3において、「前記第1動力伝達軸は、前記第2方向に対して一方方向に向かって傾斜し」としていたのを、「前記第1動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって前方に傾斜し」とするものであって、第1動力伝達軸の傾斜に係る構成を限定するとともに明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 図1には、第1動力伝達軸26が、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、機体19から離れる方向に向かって前方に傾斜することが示されている。 よって、訂正事項4は新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の請求項3において、「前記第2動力伝達軸は、前記第2方向に対して他方方向に向かって傾斜する」としていたのを、「前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって後方に傾斜する」とするものであって、第1動力伝達軸の傾斜に係る構成を限定するとともに明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 図1には、第2動力伝達軸27、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、機体19から離れる方向に向かって後方に傾斜することが示されている。 よって、訂正事項5は新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無 訂正事項5による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項3は、訂正前の請求項2を引用しているものであって、訂正事項2、3によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正後の請求項2、3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明3」ともいう。また、これらを総称して「本件発明」ともいう。)は、令和4年10月3日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、 前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、 前記エンジンは、クランクシャフトを有し、前記クランクシャフトは、第1クランクシャフトと、第2クランクシャフトと、を有し、 前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、 前記メインロータは、第1メインロータと、第2メインロータと、を有し、 前記エンジンは、前記第1動力伝達軸を経由して、前記第1メインロータを回転させ、更に、前記第2動力伝達軸を経由して、前記第2メインロータを回転させ、 前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、 前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜していることを特徴とする飛行装置。 【請求項2】 機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、 前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、 前記エンジンは、前記動力伝達軸を経由して、前記メインロータを回転させると共に、第1エンジン部と、第2エンジン部と、を有し、 前記第1エンジン部は、第1クランクシャフトを有し、 前記第2エンジン部は、第2クランクシャフトを有し、 前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、 前記メインロータは、前記第1動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第1メインロータと、前記第2動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第2メインロータと、を有し、 前記機体の前後方向に沿う方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、 前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜していることを特徴とする飛行装置。 【請求項3】 前記第1動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって前方に傾斜し、 前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって後方に傾斜することを特徴とする請求項2に記載の飛行装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由 1 取消理由の概要 取消理由1(サポート要件):本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由2(明確性要件):本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由3(新規性):本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 取消理由4(進歩性):本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 引用文献等一覧 引用文献1:Australian Transport Safety Bureau, Reliability of the Robinson R22 helicopter belt drive system, final, 2013年4月30日作成 引用文献2:特開2019-59362号公報 引用文献1は、申立人が提出した甲第1号証である。 3 取消理由、請求項及び引用文献の対応関係 ・取消理由1(サポート要件) ・請求項1~3 取消理由1-1 請求項1~3に係る発明が解決しようとする課題は、飛行装置の駆動系の構造を簡素化し、ギヤによる動力の損失を低減することと認められる(以下「課題A」という。)。しかしながら、請求項1~3には、課題Aを解決するための手段が反映されていない。 仮に、請求項1~3に係る発明が、第1メインロータの回転中心と第2メインロータの回転中心とを、第2方向D2に沿って配置することにより、重量配分を最適化できるという課題(以下「課題B」という。)を解決しようとするものであったとしても、請求項1~3には、課題Bを解決するための手段が反映されているとはいえない。 したがって、請求項1~3には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。 取消理由1-2 出願時の技術常識に照らしても、請求項1の「前進する方向に沿う方向を第1方向、前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合、前記動力伝達軸は、前記第2方向に対して傾斜している」という構成にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 請求項2~3の「前進する方向に沿う方向を第1方向、前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記第2方向に対して傾斜している」という構成についても同様である。 ・取消理由2(明確性要件) ・請求項1~3 取消理由2-1 請求項1~3において、第1方向及び第2方向が不明確である。 取消理由2-2 請求項3において、第1動力伝達軸及び第2動力伝達軸がどの方向に傾斜するものなのか不明である。 ・取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性) ・請求項1 ・引用文献1 ・取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性) ・請求項1~3 ・引用文献2 第5 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(サポート要件)について (1)取消理由1-1について ア 一般に、発明の詳細な説明の記載から複数の課題が把握できる場合、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が請求項に反映されているというためには、その複数の課題のうちのいずれかの課題を解決するための手段が請求項に反映されていれば足りると解される(参考:特許・実用新案審査基準II部第2章第2節「サポート要件」2.2(4)b)。 イ ここで、特許権者は、令和4年10月3日に提出された意見書の「理由1について」において、「先ず、本件発明1ないし本件発明3が解決しようとする課題は、段落〔0032〕等に記載されたように、「飛行装置の重量配分を最適化できる。」であると主張するところ、特許権者が主張する課題、すなわち上記課題Bに関し、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0029】 本実施形態では、第1動力伝達軸26および第2動力伝達軸27は、第2方向D2に対して傾斜している。また、第1動力伝達軸26と第2動力伝達軸27とは互いに略平行である。」 「【0032】 更に、第1メインロータ141の回転中心と、第2メインロータ142の回転中心とを、第2方向D2に沿って配置できる。よって、飛行装置10の構成を、第1方向D1に対して線対称に構成でき、重量配分を最適化できる。」 また、図1には、第1動力伝達軸26及び第2動力伝達軸27が、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、第2方向D2に対して傾斜する態様が示されている。 これらのことを総合すると、第1動力伝達軸26及び第2動力伝達軸27が、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、第2方向D2に対して傾斜する態様が導かれ、これにより、第1メインロータ141の回転中心と、第2メインロータ142の回転中心とが、左右方向である第2方向D2に沿って、前後方向である第1方向D1に対して線対称に配置し得るものとなるから、第1メインロータ141及び第2メインロータ142に関して、飛行装置の重量配分を最適化できることが明らかであり、上記課題Bを解決し得ることが記載されているといえる。 ウ そして、本件訂正による訂正後の請求項1~3は、「前記機体の前後方向に沿う方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」ことを特定するものであるから、訂正後の請求項1~3には、上記課題Bを解決するための手段が反映されているものと認められる。 そうすると、訂正後の請求項1~3には、上記課題Bを解決するための手段が反映されており、上記アで説示したとおりであるから、上記課題Aについて検討するまでもなく、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されているといえる。 したがって、本件訂正により、取消理由1-1は解消したものと認められる。 (2)取消理由1-2について 上記(1)イで説示したとおり、発明の詳細な説明の段落【0029】、【0032】及び図1の記載を総合すると、第1動力伝達軸26及び第2動力伝達軸27が、機体19の前後方向である第1方向D1及び左右方向である第2方向D2を含む平面上において、第2方向D2に対して傾斜する態様が導かれる。 一方、本件訂正により、請求項1~3は、「前記機体の前後方向に沿う方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」ことが特定された。 そして、訂正後の請求項1~3によると、第2方向が機体の左右方向であり、第1動力伝達軸及び第2動力伝達軸が前後方向および左右方向を含む平面上において、第2方向、すなわち左右方向に対して傾斜するものであることが特定されたから、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。 したがって、本件訂正により、取消理由1-2は解消したものと認められる。 2 取消理由2(明確性要件)について (1)取消理由2-1について 本件訂正により、訂正後の請求項1~3は、「前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向」とする構成となり、第1方向及び第2方向の方向が特定されたから、明確になった。 したがって、本件訂正により、取消理由2-1は解消したものと認められる。 (2)取消理由2-2について 本件訂正により、訂正後の請求項3は、「前記第1動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって前方に傾斜し、前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記機体から離れる方向に向かって後方に傾斜する」構成となり、第1動力伝達軸及び第2動力伝達軸がどの方向に傾斜するものなのかが明確に特定できるものとなった。 したがって、本件訂正により、取消理由2-2は解消したものと認められる。 3 取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について (1)引用文献の記載及び引用発明 ア 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 本件特許の出願前に外国で頒布された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。なお、{ }内は、令和4年6月2日の特許異議申立書に添付された甲第1号証の翻訳文である。)。 第2ページ 「Context General description The Robinson R22 helicopter is a two-seat, light utility helicopter powered by a horizontally mounted, rearward facing Lycoming four-cylinder reciprocating piston engine. The helicopter has design features that are common to other helicopters; however the drive system from the engine to the rotors is unique (Figures 1 and 2). Power is transmitted from the engine to the main and tail rotors through vertically mounted sheaves (also commonly called drive pulleys) and a v-belt arrangement. The drive assembly carries two double banded v-belts. Each drive belt consists of two single v-belts that are bonded by a common rubber backing (tie-band). The lower drive sheave is bolted to the output flange of the engine crankshaft, while the upper sheave is located immediately above on the clutch shaft to the main rotor gearbox. Before the engine is started, the clutch actuator is placed in the disengaged position, which leaves the v-belts slack and allows the engine to start and run freely without the load of the main and tail rotors. A pilot-operated, electrically-driven actuator is used to progressively tension the drive belts and enable power transfer from the engine to the rotor system. The clutch actuator is vertically positioned between the upper and lower sheaves. When the actuator is engaged, the upper sheave and clutch shaft are moved upward, applying tension to the drive belts. A column spring arrangement within the clutch actuator senses the compressive load caused by increasing belt tension and stops the actuator motor when the tension reaches a pre-set value. Figure 1: The Robinson R22 rotor drive system [図:0001396282000002.jpg] 」 {コンテキスト 概要 ロビンソンR22ヘリコプターは、水平に取り付けられた後方向きのライカミング4気筒レシプロピストンエンジンを搭載した2人乗りの軽量多用途ヘリコプターである。当該ヘリコプターには、他のヘリコプターに共通する設計上の特徴を備えるが、エンジンからロータまでの駆動システムは独特である(図1および2)。 動力は、上下方向に備え付けられたシーブ(一般にドライブプーリとも呼ばれる)とVベルト構成を介して、エンジンからメインロータとテールロータに伝達される。ドライブアセンブリには、2つのダブルバンドVベルトが付いている。各ドライブベルトは、共通のゴム製バッキング(タイバンド)で接着された2つのシングルVベルトで構成されている。下ドライブシーブは、エンジンクランクシャフトの出力フランジにボルトで固定され、上シーブは、メインロータギアボックスに向かうクラッチシャフトの真上に配置されている。 エンジンを始動する前に、クラッチアクチュエータは、切り離し位置に配置される。これにより、Vベルトがたるみ、メインロータとテールロータに負荷がかからずにエンジンを自由に始動および運転できる。パイロット操作される電動アクチュエータは、ドライブベルトに徐々に張力をかけるために使用され、エンジンからロータシステムへの動力伝達を可能にする。 クラッチアクチュエータは、上下のシーブの間に上下方向に配置されている。当該アクチュエータが噛み合うと、上シーブとクラッチシャフトが上に移動し、ドライブベルトに張力がかかる。クラッチアクチュエータ内のコラムスプリング構成は、ベルト張力の増加によって引き起こされる圧縮荷重を検知し、張力がプリセット値に達するとアクチュエータモータを停止させる。 図1:ロビンソンR22ロータドライブシステム [図:0001396282000003.jpg] } (イ)認定事項 a 図1より、ロビンソンR22ヘリコプターは機体を備えることは明らかである。 b 「ロビンソンR22ヘリコプターは、・・・エンジンからロータまでの駆動システムは独特である。」と記載されていることから、エンジンからロータまでの駆動システムを備えることは明らかである。 c 「メインロータギアボックスに向かうクラッチシャフト」という記載、図1及び上記aより、クラッチシャフトは機体の略前後方向に延在するものと認められる。 (ウ)引用発明1 上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明1> 「 機体と、エンジンからロータまでの駆動システムを備え、 動力は、上下方向に備え付けられたシーブとVベルト構成を介して、エンジンからメインロータに伝達され、下ドライブシーブは、エンジンクランクシャフトの出力フランジにボルトで固定され、上シーブは、メインロータギアボックスに向かうクラッチシャフトの真上に配置され、 クラッチシャフトは機体の略前後方向に延在する、 ロビンソンR22ヘリコプター。」 イ 引用文献2 (ア)引用文献2の記載 本件特許の出願前に日本国内で頒布された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a 記載事項 (a)「【0038】 図1(A)を参照して、自立型飛行装置10は、所謂ハイブリット型の自立型飛行装置である。即ち、メインロータ14A等は駆動的にエンジン30と接続される一方、サブロータ15A等は発電機16A等を介してエンジン30から電気エネルギが供給される。以下の説明では、メインロータ14A等を単にメインロータ14と称し、サブロータ15A等を単にサブロータ15と称する場合もある。ここで、紙面上に於ける左右方向が、エンジン30を構成する各エンジン部が整列する第1方向であり、紙面上に於ける前後方向が第2方向である。 【0039】 自立型飛行装置10は、フレーム11と、フレーム11の略中央部分に配設されたエンジン30と、エンジン30により駆動される発電機16A等と、発電機16A等から発生する電力より回転するサブロータ15と、エンジン30と駆動的に接続されることで回転するメインロータ14とを主要に有している。」 (b)「【0041】 エンジン30、各種配線および制御基板(ここでは不図示)等は、ケーシング17に収納されている。ケーシング17は、例えば、所定形状に成形された合成樹脂板材からなり、フレーム11の中心部に固定されている。ここで、ケーシング17およびそれに内蔵される部材を本体部19と称する。」 (c)「【0043】 メインフレーム12A、12Bは、本体部19から、左右方向に直線的に延びている。メインフレーム12A、12Bは、棒状に成型された金属または合成樹脂から成る。左方に向かって延びるメインフレーム12Aの左方側端部には、メインロータ14Aが回転可能な状態で配設されている。メインロータ14Aには図示しないプーリが接続しており、メインロータ14A側のプーリとエンジン30側の図示しないプーリとの間にベルト20Aが掛け渡されている。一方、右方に向かって延びるメインフレーム12Bの右方側端部には、メインロータ14Bが回転可能な状態で配設されている。メインロータ14Bには図示しないプーリが接続しており、メインロータ14B側のプーリとエンジン30側の図示しないプーリとの間にベルト20Bが掛け渡されている。かかる構成によりメインロータ14はエンジン30と駆動的に接続される。よって、エンジン30から発生した動力でメインロータ14は直接的に回転するので、シリーズ型のものよりも、エンジン30からメインロータ14にエネルギが伝達する際のエネルギ損失を小さくすることができる。 【0044】 メインロータ14は、自立型飛行装置10を空中に浮遊させるための上昇力を発生させる機能を有する。一方、サブロータ15は、主に、自立型飛行装置10の姿勢制御を担う。例えば、サブロータ15は、自立型飛行装置10がホバリングを行っている際に、自立型飛行装置10の位置姿勢を一定に保つべく適宜回転する。また、サブロータ15は、自立型飛行装置10が移動する際に、自立型飛行装置10を傾斜させるべく回転する。また、メインロータ14Aとメインロータ14Bとは逆方向に回転する。」 (d)「【0060】 そのようにすると、自立型飛行装置10を右方から見た場合、自立型飛行装置10は反時計回りに若干回転するように傾斜する。このように傾斜した状態で、メインロータ14A、14Bを回転させると、メインロータ14A、14Bが発生する揚力と自立型飛行装置10に作用する重力との合力が前方に向かって作用する。よって、自立型飛行装置10は前方に向かって移動するようになる。」 (e)「【0065】 図3(A)および図3(B)を参照して、エンジン30は、紙面上に於いて左方に配置された第1エンジン部40と、右方側に配置された第2エンジン部41とを有している。 【0066】 第1エンジン部40は、左右方向に往復運動する第1ピストン43と、第1ピストン43の往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフト42と、第1ピストン43と第1クランクシャフト42とを回転可能に連結する第1コネクティングロッド44と、を有している。 【0067】 第2エンジン部41は、左右方向に往復運動する第2ピストン46と、第2ピストン46の往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフト45と、第2ピストン46と第2クランクシャフト45とを回転可能に連結する第2コネクティングロッド47と、を有している。 【0068】 第1クランクシャフト42の上端側には、プーリ22および発電機16Aが接続されている。また、第2クランクシャフト45の上端側には、プーリ23および発電機16Bが接続されている。」 (f)「【0108】 この図を参照して、時間T1では、サブロータ15C、15Dを、サブロータ15A、15Bよりも高速に回転させることで、サブロータ15A等のパワーが最大値(約0.5kW)を示している。このようにすることで、上記したように、自立型飛行装置10の傾斜角度を10度とする。この状態で、サブロータ15C、15Dの回転速度を、サブロータ15A、15Bと同等程度とすることで、メインロータ14等の推力により、自立型飛行装置10は前方に向かって移動する。また、本実施形態では、図2に示したキャパシタモジュール34から供給される電力で、サブロータ15C、15Dの回転数を即座に高速化することができる。」 (g)「【0113】 図8を参照して、自立型飛行装置10を35度傾斜させた場合を説明する。図8(A)は35度傾斜した自立型飛行装置10を示す側面図であり、図8(B)はこの場合のパワーの経時変化を示すグラフである。ここで、自立型飛行装置10を移動させるべく傾斜させる制御方法は図7に示した場合と同様である。自立型飛行装置10の傾斜角θをこのように大きくすることで、より高速に自立型飛行装置10を移動させることができる。」 b 図面 (a)図1 「 [図:0001396282000004.jpg] 」 (b)図3 「 [図:0001396282000005.jpg] 」 (c)図7 「 [図:0001396282000006.jpg] 」 (d)図8 「 [図:0001396282000007.jpg] 」 (イ)認定事項 a 段落【0038】の「メインロータ14A等を単にメインロータ14と称し」という記載、及び段落【0043】の記載より、メインロータ14はメインロータ14Aと、メインロータ14Bとを有するものと認められる。 b 段落【0043】、【0066】~【0068】の記載及び図3より、ベルト20Aが掛け渡されるエンジン30側のプーリは、第1クランクシャフト42の上端側に接続されたプーリ22であり、ベルト20Bが掛け渡されるエンジン30側のプーリは、第2クランクシャフト45の上端側に接続されたプーリ23であるものと認められる。 そして、メインロータ14Aは、第1エンジン部40から、第1クランクシャフト42、プーリ22、ベルト20A及びメインロータ14A側のプーリを経由して伝達される動力により回転され、メインロータ14Bは、第2エンジン部41から、第2クランクシャフト45、プーリ23、ベルト20B及びメインロータ14B側のプーリを経由して伝達される動力により回転されるものであることが理解できる。 c 段落【0066】~【0067】の記載及び図1(A)、図3より、第1クランクシャフト42及び第2クランクシャフト45は、自立型飛行装置10の上下方向を向くものであることが理解できる。 (ウ)引用発明2 上記(ア)及び(イ)より、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明2> 「 フレーム11と、フレーム11に固定されたケーシング17と、メインロータ14と、エンジン30と、を有し、 メインロータ14は、自立型飛行装置10を空中に浮遊させるための上昇力を発生させ、 エンジン30は、第1エンジン部40と、第2エンジン部41とを有し、 第1エンジン部40は、第1クランクシャフト42を有し、 第2エンジン部41は、第2クランクシャフト45を有し、 メインロータ14はメインロータ14Aと、メインロータ14Bとを有し、 メインロータ14Aは、第1エンジン部40から、第1クランクシャフト42、プーリ22、ベルト20A及びメインロータ14A側のプーリを経由して伝達される動力により回転され、メインロータ14Bは、第2エンジン部41から、第2クランクシャフト45、プーリ23、ベルト20B及びメインロータ14B側のプーリを経由して伝達される動力により回転され、 第1クランクシャフト42及び第2クランクシャフト45は、自立型飛行装置10の上下方向を向く、 自立型飛行装置10。」 (2)引用発明1を主引用発明とする場合 ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「機体」は、本件発明1の「機体」に相当し、以下同様に、「メインロータ」は「メインロータ」に、「エンジン」は「エンジン」に、「エンジンクランクシャフト」は「クランクシャフト」に、「ロビンソンR22ヘリコプター」は「飛行装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1の「クラッチシャフト」は、「メインロータギアボックスに向かう」ものであることと、「動力は、・・・エンジンからメインロータに伝達され」るものであることを踏まえると、メインロータに動力を伝達する軸であるから、本件発明1の「動力伝達軸」に相当する。 (イ)上記(ア)、及び、ヘリコプターのメインロータは、回転することにより機体が浮遊するための駆動力を発生させるものであることが技術常識であることを踏まえると、引用発明1の「機体と、エンジンからロータまでの駆動システムを備え、動力は、上下方向に備え付けられたシーブとVベルト構成を介して、エンジンからメインロータに伝達され、下ドライブシーブは、エンジンクランクシャフトの出力フランジにボルトで固定され、上シーブは、メインロータギアボックスに向かうクラッチシャフトの真上に配置され」る構成は、本件発明1の「機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、前記エンジンは、クランクシャフトを有し」という構成に相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)より、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点1> 「 機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、 前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、 前記エンジンは、クランクシャフトを有する、飛行装置。」 <相違点1-1> クランクシャフトが、本件発明1では、「第1クランクシャフトと、第2クランクシャフトと、を有」する構成であるのに対し、引用発明1ではそのような構成ではない点。 <相違点1-2> 動力伝達軸が、本件発明1では、「前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有」する構成であるのに対し、引用発明1ではそのような構成ではない点。 <相違点1-3> メインロータが、本件発明1では、「第1メインロータと、第2メインロータと、を有」する構成であるのに対し、引用発明1ではそのような構成ではない点。 <相違点1-4> エンジンが、本件発明1では、「前記第1動力伝達軸を経由して、前記第1メインロータを回転させ、更に、前記第2動力伝達軸を経由して、前記第2メインロータを回転させ」る構成であるのに対し、引用発明1では、「動力は、上下方向に備え付けられたシーブとVベルト構成を介して、エンジンからメインロータに伝達され」る構成である点。 <相違点1-5> 動力伝達軸の配置が、本件発明1では、「前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」構成であるのに対し、引用発明1では、「クラッチシャフトは機体の略前後方向に延在する」構成である点。 イ 判断 (ア)取消理由3(新規性)について 本件発明1と引用発明1とは、相違点1-1~相違点1-5において相違する。そして、これらの相違点は実質的な相違点である。 してみると、本件発明1は、引用発明1であるということはできない。 (イ)取消理由4(進歩性)について 上記相違点1-1~相違点1-3はいずれも、引用文献1がロビンソンR22ヘリコプターであることに起因するので、纏めて検討する。 引用発明1は、上記3(1)ア(ウ)で認定したように、エンジンからロータまでの駆動システムを備え、エンジンクランクシャフト(クランクシャフト)、クラッチシャフト(動力伝達軸)及びメインロータ(メインロータ)をそれぞれ1つずつ有するロビンソンR22ヘリコプター(飛行装置)であり、通常の駆動システムを複数組有する構成である、いわゆるマルチコプタとは、浮遊するための駆動系のメカニズムが異なるものである。そして、当審が通知した取消理由で示した引用文献や申立人が提出した各甲号証をみても、引用発明1に、本件発明1のようなマルチコプタの駆動システムを採用する動機付けや、当該採用が可能である具体的な駆動システムの構成に係る証拠は見出せない。よって、引用発明1に基づいて、相違点1-1~相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことではない。 したがって、相違点1-4、相違点1-5について判断するまでもなく、本件発明1は引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 ウ 小括 本件発明1は、引用発明1ではない。 また、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)引用発明2を主引用発明とする場合 ア 本件発明2について 事案に鑑み、本件発明2について先に検討する。 (ア)対比 本件発明2と引用発明2とを対比する。 a 引用発明2の「フレーム11」及び「ケーシング17」は、本件発明2の「機体」に相当し、以下同様に、「メインロータ14」は「メインロータ」に、「エンジン30」は「エンジン」に、「第1エンジン部40」は「第1エンジン部」に、「第2エンジン部41」は「第2エンジン部」に、「第1クランクシャフト42」は「第1クランクシャフト」に、「第2クランクシャフト45」は「第2クランクシャフト」に、「メインロータ14A」は「第1メインロータ」に、「メインロータ14B」は「第2メインロータ」に、「自立型飛行装置10」は「飛行装置」に、それぞれ相当する。 そして、上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 b 引用発明2の「フレーム11と、フレーム11に固定されたケーシング17と、メインロータ14と、エンジン30と、を有」する構成と、本件発明2の「機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備」する構成とは、「機体と、メインロータと、エンジンと、を具備」する構成において共通する。 c 引用発明2の「メインロータ14は、自立型飛行装置10を空中に浮遊させるための上昇力を発生させ」る構成は、本件発明2の「前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ」る構成に相当する。 d 引用発明2の「エンジン30は、第1エンジン部40と、第2エンジン部41とを有し、第1エンジン部40は、第1クランクシャフト42を有し、第2エンジン部41は、第2クランクシャフト45を有し、メインロータ14はメインロータ14Aと、メインロータ14Bとを有し、メインロータ14Aは、第1エンジン部40から、第1クランクシャフト42、プーリ22、ベルト20A及びメインロータ14A側のプーリを経由して伝達される動力により回転され、メインロータ14Bは、第2エンジン部41から、第2クランクシャフト45、プーリ23、ベルト20B及びメインロータ14B側のプーリを経由して伝達される動力により回転され」る構成と、本件発明2の「前記エンジンは、前記動力伝達軸を経由して、前記メインロータを回転させると共に、第1エンジン部と、第2エンジン部と、を有し、前記第1エンジン部は、第1クランクシャフトを有し、前記第2エンジン部は、第2クランクシャフトを有し、前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、前記メインロータは、前記第1動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第1メインロータと、前記第2動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第2メインロータと、を有」する構成とは、「前記エンジンは、前記メインロータを回転させると共に、第1エンジン部と、第2エンジン部と、を有し、前記第1エンジン部は、第1クランクシャフトを有し、前記第2エンジン部は、第2クランクシャフトを有し、前記メインロータは、第1メインロータと、第2メインロータと、を有」する構成において共通する。 e 上記a~dより、本件発明2と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点2> 「 機体と、メインロータと、エンジンと、を具備し、 前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ、 前記エンジンは、前記メインロータを回転させると共に、第1エンジン部と、第2エンジン部と、を有し、 前記第1エンジン部は、第1クランクシャフトを有し、 前記第2エンジン部は、第2クランクシャフトを有し、 前記メインロータは、第1メインロータと、第2メインロータと、を有する、 飛行装置。」 <相違点2-1> 本件発明2では、「動力伝達軸」を具備し、エンジンは「前記動力伝達軸を経由して、」メインロータを回転させ、「前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、」第1メインロータが「前記第1動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転され」、第2メインロータが「前記第2動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転され」る構成であるのに対し、引用発明2では、動力伝達軸を具備するか否かが明らかでなく、「メインロータ14Aは、第1エンジン部40から、第1クランクシャフト42、プーリ22、ベルト20A及びメインロータ14A側のプーリを経由して伝達される動力により回転され、メインロータ14Bは、第2エンジン部41から、第2クランクシャフト45、プーリ23、ベルト20B及びメインロータ14B側のプーリを経由して伝達される動力により回転され」る構成である点。 <相違点2-2> 動力伝達軸の配置が、本件発明2では、「前記機体の前後方向に沿う方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」構成であるのに対し、引用発明2は、「第1クランクシャフト42及び第2クランクシャフト45は、自立型飛行装置10の上下方向を向く」構成である点。 (イ)判断 a 相違点2-1について (a)まず、本件発明2の「前記動力伝達軸は、前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有し、前記メインロータは、前記第1動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第1メインロータと、前記第2動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第2メインロータと、を有」する構成(以下「本件発明2の動力伝達構成」という。)について、本件特許の明細書に記載された実施形態を参照する。 本件特許の明細書には、以下の記載がある(下線は当審が付加した。)。 「【0054】 本実施形態では、第1エンジン部40の第1クランクシャフト42は、第1動力伝達軸26を兼ねている。即ち、第1クランクシャフト42は、図1に示した第1メインロータ141の中心まで伸び、ギア171に接続している。同様に、第2エンジン部41の第2クランクシャフト45は、第2動力伝達軸27を兼ねている。即ち、第2クランクシャフト45は、図1に示した第2メインロータ142の中心まで伸び、ギア172に接続している。」 「【0065】 図1を参照して、第1動力伝達軸26は、図3に示した第1クランクシャフト42の延長軸として形成されていたが、第1動力伝達軸26の途中に、相対回転不能な接手が形成されても良い。」 そして、上記記載を総合すると、本件発明2の動力伝達構成は、本件特許の明細書に記載された実施形態である、少なくとも以下の構成A~Cを含むものと認められる。 構成A:第1クランクシャフトが第1動力伝達軸を兼ねており、第1エンジンが第1クランクシャフトを経由して第1メインロータを回転させるとともに、第2クランクシャフトが第2動力伝達軸を兼ねており、第2エンジンが第2クランクシャフトを経由して第2メインロータを回転させる構成。 構成B:第1動力伝達軸が第1クランクシャフトの延長軸として形成され、第1エンジンが第1クランクシャフトの延長軸を経由して第1メインロータを回転させるとともに、第2動力伝達軸が第2クランクシャフトの延長軸として形成され、第2エンジンが第2クランクシャフトの延長軸を経由して第2メインロータを回転させる構成。 構成C:相対回転不能な接手により第1動力伝達軸が第1クランクシャフトに接続し、第1エンジンが第1動力伝達軸を経由して第1メインロータを回転させるとともに、相対回転不能な接手により第2動力伝達軸が第2クランクシャフトに接続し、第2エンジンが第2動力伝達軸を経由して第2メインロータを回転させる構成。 (b)引用発明2の「メインロータ14Aは、第1エンジン部40から、第1クランクシャフト42、プーリ22、ベルト20A及びメインロータ14A側のプーリを経由して伝達される動力により回転され、メインロータ14Bは、第2エンジン部41から、第2クランクシャフト45、プーリ23、ベルト20B及びメインロータ14B側のプーリを経由して伝達される動力により回転され」る構成は、第1クランクシャフト42がプーリ22を回転させるための第1動力伝達軸を兼ねており、第1エンジン部40が第1クランクシャフト42を経由してメインロータ14Aを回転させるとともに、第2クランクシャフト45がプーリ23を回転させるための第2動力伝達軸を兼ねており、第2エンジン部41が第2クランクシャフト45を経由してメインロータ14Bを回転させる構成、すなわち上記構成Aに相当するものといえるし、第1エンジン部40が、第1クランクシャフト42のうち、プーリ22が接続される部分(延長軸)を経由してメインロータ14Aを回転させるとともに、第2エンジン部41が、第2クランクシャフト45のうち、プーリ23が接続される部分(延長軸)を経由してメインロータ14Bを回転させる構成、すなわち上記構成Bに相当するものともいえる。 したがって、引用発明2は、本件特許の明細書に記載された実施形態の構成A又は構成Bを有するものであって、本件発明2の動力伝達構成を備えるものといえるから、上記相違点2-1は実質的な相違点ではない。 また、仮に、上記相違点2-1が実質的な相違点であったとしても、引用発明2において、第1クランクシャフト42を、第1クランクシャフトと、相対回転不能な接手によりクランクシャフトに接続される第1動力伝達軸とからなるものし、第2クランクシャフト45を、第2クランクシャフトと、相対回転不能な接手により第2クランクシャフトに接続される第2動力伝達軸とからなるものとして、上記構成Cとすることは、第1メインロータ及び第2メインロータを回転させるために必要な第1クランクシャフト及び第2クランクシャフトのねじり剛性等を考慮して、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。 b 相違点2-2について (a)引用発明2は、第1クランクシャフト42(第1動力伝達軸、上記a(b)を参照。)及び第2クランクシャフト45(第2動力伝達軸、上記a(b)を参照。)が、自立型飛行装置10の上下方向を向くもの、すなわち第1クランクシャフト42及び第2クランクシャフト45は、自立型飛行装置10の前後方向及び左右方向を含む平面に対して略直交する方向に延びるものであるところ、引用文献2には、第1クランクシャフト42及び第2クランクシャフト45の向きや配置を変えることについて、記載も示唆もない。また、引用発明2の第1動力伝達軸及び第2動力伝達軸を、機体の前後方向及び左右方向を含む平面上において、第2方向(左右方向)に対して傾斜して配置することを肯定する他の証拠もない。 したがって、引用発明2において、第1クランクシャフト42及び第2クランクシャフト45を自立型飛行装置10の前後方向及び左右方向を含む平面上の何らかの方向に延びるものとして、相違点2-2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 (b)申立人の主張について 申立人は、令和4年11月11日に提出された意見書の3(2)において、第1動力伝達軸及び第2動力伝達軸が、前後方向及び左右方向を含む平面上において、第2方向に対して傾斜している構成(以下「特定事項2」という。)は、甲第2号証(特開2020-128196号公報)に記載された周知技術である旨を主張する。 しかしながら、甲第2号証に記載されたマルチコプタ1は、段落【0038】に、「すなわち、エンジン41は、モータ22またはバッテリ31へ供給する電力をジェネレータ42で発電するために駆動する。」と記載され、段落【0043】に、「このような構成のマルチコプタ1は、モータ22に電力を供給し、複数のプロペラ21を回転させることにより飛行する。」と記載されているように、エンジン41で発電した電力によりモータ22(メインロータ)を回転させるものであって、エンジン41の動力によりモータ22を回転させる動力伝達軸自体が存在しないものであるから、上記特定事項2は甲第2号証に記載されていない。また、上記特定事項2が周知技術であるとする他の証拠もない。 よって、上記主張は採用できない。 (c)小括 本件発明2は、引用発明2ではない。 また、本件発明2は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明3について 本件発明3は、本件発明2の構成を全て含み、かつ、さらに限定を加えたものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同じ理由により、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明1について 本件発明1は、「前記機体の前後方向に沿う方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」構成を含むものであるところ、当該構成はア(ア)eで説示した相違点2-2に係る本件発明2の構成と同じである。そして、相違点2-2に対する判断は、上記ア(イ)bで説示したとおりである。 よって、本件発明1は、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 本件特許の請求項2~3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、その請求項2~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 甲第1号証:Australian Transport Safety Bureau, Reliability of the Robinson R22 helicopter belt drive system, final, 2013年4月30日作成(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2020-128196号公報(以下「甲2」という。) 2 当審の判断 (1)甲1について 甲1は、上記第4の2に記載した引用文献1であり、引用文献1に記載された発明は、上記第5の3(1)ア(ウ)において説示した引用発明1のとおりである。 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「機体」は、本件発明2の「機体」に相当し、以下同様に、「メインロータ」は「メインロータ」に、「エンジン」は「エンジン」に、「エンジンクランクシャフト」は「クランクシャフト」に、「ロビンソンR22ヘリコプター」は「飛行装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1の「クラッチシャフト」は、「メインロータギアボックスに向かう」ものであることと、「動力は、・・・エンジンからメインロータに伝達され」るものであることを踏まえると、メインロータに動力を伝達する軸であるから、本件発明2の「動力伝達軸」に相当する。 (イ)上記(ア)、及び、ヘリコプターのメインロータは、回転することにより機体が浮遊するための駆動力を発生させるものであることが技術常識であることを踏まえると、引用発明1の「機体と、エンジンからロータまでの駆動システムを備え、動力は、上下方向に備え付けられたシーブとVベルト構成を介して、エンジンからメインロータに伝達され、下ドライブシーブは、エンジンクランクシャフトの出力フランジにボルトで固定され、上シーブは、メインロータギアボックスに向かうクラッチシャフトの真上に配置され」る構成は、本件発明2の「機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させ」る構成に相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)より、本件発明2と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点3> 「 機体と、メインロータと、エンジンと、動力伝達軸と、を具備し、 前記メインロータは、回転することにより、前記機体が浮遊するための駆動力を発生させる、飛行装置。」 <相違点3-1> エンジンが、本件発明2では、「前記動力伝達軸を経由して、前記メインロータを回転させると共に、第1エンジン部と、第2エンジン部と、を有し、前記第1エンジン部は、第1クランクシャフトを有し、前記第2エンジン部は、第2クランクシャフトを有」する構成であるのに対し、引用発明1ではそのような構成ではない点。 <相違点3-2> 動力伝達軸が、本件発明2では、「前記第1クランクシャフトと接続する第1動力伝達軸と、前記第2クランクシャフトと接続する第2動力伝達軸と、を有」する構成であるのに対し、引用発明1ではそのような構成ではない点。 <相違点3-3> メインロータが、本件発明2では、「前記第1動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第1メインロータと、前記第2動力伝達軸を経由して伝達される動力により回転される第2メインロータと、を有」する構成であるのに対し、引用発明1ではそのような構成ではない点。 <相違点3-4> 動力伝達軸の配置が、本件発明2では、「前記機体の前後方向を第1方向、前記機体の左右方向を第2方向とした場合、前記第1動力伝達軸および前記第2動力伝達軸は、前記前後方向および前記左右方向を含む平面上において、前記第2方向に対して傾斜している」構成であるのに対し、引用発明1では、「クラッチシャフトは機体の略前後方向に延在する」構成である点。 イ 判断 上記相違点3-1~相違点3-3はいずれも、引用発明1がロビンソンR22ヘリコプターであることに起因するので、纏めて検討する。 上記第5の3(2)イ(イ)で説示したように、引用発明1は、エンジンからロータまでの駆動システムを備え、エンジンクランクシャフト(クランクシャフト)、クラッチシャフト(動力伝達軸)及びメインロータ(メインロータ)をそれぞれ1つずつ有するロビンソンR22ヘリコプター(飛行装置)であり、通常の駆動システムを複数組有する構成である、いわゆるマルチコプタとは、浮遊するための駆動系のメカニズムが異なるものである。そして、当審が通知した取消理由で示した引用文献や申立人が提出した各甲号証をみても、引用発明1に、本件発明2のようなマルチコプタの駆動システムを採用する動機付けや、当該採用が可能である具体的な駆動システムの構成に係る証拠は見出せない。よって、マルチコプタ自体が甲2に記載された周知技術であったとしても、引用発明1に基づいて、相違点3-1~相違点3-3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことではない。 したがって、相違点3-4について判断するまでもなく、本件発明2は引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明2の構成を全て含み、かつ、さらに限定を加えたものであるから、上記(2)イで説示したのと同じ理由により、引用発明1及び甲2に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700481

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