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特許異議申立

2021-700092

高速ドローン等航空機

審判番号
2021-700092
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-070484
登録番号
6731604
請求日
2021年01月27日
審決日
2023年01月24日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社ドクター中松創研
  • 【異議申立人】佐藤 奈緒美
審判長/審判官
  • 審判長 一ノ瀬 覚
  • 審判官 出口 昌哉
  • 審判官 大谷 光司
分類
P1651.121-ZAA(B64C) / P1651.113-ZAA(B64C) / P1651.851-ZAA(B64C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6731604号発明「高速ドローン等航空機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6731604号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6731604号の請求項1に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6731604号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年3月31日に出願され、令和2年7月9日に特許権の設定登録がされ、同年7月29日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、令和3年1月27日に特許異議申立人佐藤奈緒美(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年4月20日付けで取消理由が通知され、同年6月22日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年8月24日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年9月29日に手続補正書及び意見書が提出され、同年12月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和4年3月7日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年5月12日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内に特許異議申立人からの応答はなく、特許権者に対して同年7月28日付けで審尋がなされ、その指定期間内である8月18日に回答書が提出されたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年3月7日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許6731604号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ついて訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和3年6月22日にされた訂正請求は取り下げられたものとみなす。 [訂正事項] 特許請求の範囲の請求項1に 「胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し、水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け、前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し、上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支える構造とした事、を特徴とする航空機であって、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置することで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラのプロペラガードとして兼用した、航空機。」 と記載されているのを、 「胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し、水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け、前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し、上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支える構造とした事、を特徴とする航空機であって、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置し回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した、航空機。」 に訂正する。 2 訂正の適否の判断 以下訂正の適否等を判断するにあたり、願書に添付した図面には、【図1】及び【図2】のように、図番が異なる図面について、それぞれ、同一の図面(例えば、【図1】及び【図2】の図面は、いずれも、上側の図に図1が付され、下側の図に図2が付された、同一の図面である。)が記載され、図面が重複しているものが散見される。 これに該当する図面は全て、発明の詳細な説明を参酌して、便宜上、【 】で示した図番と一致する図番が付された図(【図1】については、図1が付された図、【図2】については図2が付された図)が、その図番の図面であると理解して判断することにする。 [訂正事項について] (1)訂正の目的の適否 訂正事項は、訂正前の請求項1の「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置すること」について「回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させる」という構成を付加して限定し、また、訂正前の請求項1の「前記上昇下降用プロペラのプロペラガード」の「プロペラガード」について、「回転をガードする」という構成を付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 ア 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ともいう。)の段落【0012】には、「図7は本発明第4の実施例でプロペラガード13を設けないで、2つの主翼36、37をプロペラガードを兼用した発明で、前翼36と後翼37を同じ大きさの串型にした串型航空機である。即ち、両翼の間に上昇下降するプロペラ6とモータ7を設け、主翼36、37がプロペラ6の回転をガードする発明である。」と記載され、「2つの主翼36、37」は、「プロペラガードを兼用し」、「プロペラ6の回転をガードする」こと、及び、図7、図8の記載を総合すると、「プロペラガード」は、「プロペラ6の回転をガードする」ものであり、明細書等には、プロペラの「回転をガードする」「プロペラガード」が記載されている。 このことと、明細書等の段落【0013】には、「図8は本発明第5の実施例で、上下用プロペラ4つの回転軌跡39を全部内接させ、プロペラガードを設けずに4枚の主翼24と先尾翼28と尾翼29をプロペラガードに兼用させたものである。」と記載されていること、及び、図7、図8の記載を総合すると、明細書等には、「回転軌跡が前方又は後方の複数の翼に内接させる」ことが記載されている。 イ したがって、訂正事項による特許請求の範囲を減縮する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 3 小括 上記のとおり、本件訂正の訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたので、本件訂正請求により訂正された請求項1係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し、水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け、前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し、上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支える構造とした事、を特徴とする航空機であって、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置し回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した、航空機。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 令和3年12月23日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [理由1] 本件発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。 よって、本件発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 [理由2] 本件発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 上記の各理由と以下の刊行物等の対応関係は次のとおりである。 ・理由1:刊行物等1 ・理由2:刊行物等1 ・理由2:刊行物等2及び刊行物等3、4 [刊行物等一覧] 1:米国特許第6293491号明細書 2:特表2014-528382号公報 3:米国特許第8690096号明細書 4:特表2018-505818号公報 上記1~4の刊行物等(以下それぞれ「引用文献1」~「引用文献4」という。)は、それぞれ、順に、特許異議申立人が提出した、「甲第1号証」、「甲第2号証の訳文としての文献」、「甲第3号証」、「甲第4号証の訳文としての文献」である。 第5 引用文献 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(翻訳は当審が作成し、下線は当審が付与した。以下同様である。)。 (1a) 「the aircraft has two airfoils 12 and 14 of at least approximately equa l size which both contribute to generating lift. The two airfoils 12 and 14 are disposed one behind the other on a fuselage 16 in staggered relationship. In the illustrated arrangement therefore the front airfoil 12 is disposed in the proximity of the nose of the fuselage 16 while the rear airfoil 14 is disposed in the proximity of the tail of the fuselage 16.」(3欄51-58行) 「航空機は、略同じサイズであって揚力を発生させる2つの翼12,14を備える。2つの翼12,14は、互い違いの関係になるように、前後に並べて胴体16上に配置されている。従って、図に示される配置においては、前翼12は胴体16のノーズの近くに配置され、後翼14は胴体16の尾部の近くに配置される。」 (1b) 「In order to be able to take off and land vertically the aircraft 10 has a total of 16 rotors 26a-26p.」(4欄34-35行) 「航空機10は、垂直に離着陸できるようにするために、合計16個のロータ26a-26pを備える。」 (1c) 「The lift rotors 26 are supported on a total of four narrow longitudinal bearers 28a-28d and two cantilever bearers 30a and 30b. All the longitudinal bearers 28a-28d extend between the two aerofoils 12 and 14 parallel to the fuselage 16. In that arrangement the two outer longitudinal bearers 28a and 28d are each mounted completely at the outer ends on the airfoils 12 and 14」(4欄40-46行) 「リフトロータ26は、合計4つの細長い縦ベアラ28a-28dと2つの片持ちベアラ30a-30bに支持されている。全ての縦ベアラ28a-28dは、胴体16に平行な2つの翼12,14の間に延びている。その配置では、2つの外側の縦ベアラ28a,28dは、それぞれが完全に翼12,14の外側端部に取り付けられている。」 (1d) 「Overall the lift rotors 26 are distributed on the longitudinal bearers 28 and the cantilever bearers 30 in such a way that they are all approximately at the same spacing from each other and the downdraft produced thereby when taking off and landing is beside the airfoils 12 and 14.」(4欄64-68行) 「全体的に、リフトロータ26は、縦ベアラ28および片持ちベアラ30上に、それらが互いにほぼ同じ間隔で配置されており、離着陸時にそれらによって生成されるダウンドラフトは、翼12,14を外れる。」 (1e) 図1及び図2には、以下の内容が示されている。 [図:0001411219000001.jpg] [図:0001411219000002.jpg] (2)引用文献1に記載された発明 ア 摘記(1c)の「リフトロータ26」という記載から、摘記(1b)の「16個のロータ26a-26p」が、16個のリフトロータ26a-26pを意味することは明らかであり、図1における、当該16個のリフトロータ26a-26pと、胴体16、航空機10との関係に着目すると、図1から、胴体16の左右それぞれに、16個のリフトロータ26a-26pの8個を航空機10の前方後方に配置すると共に、各リフトロータ26a-26pは上面視で互いに重ならないように配置される構成が看取できる。 イ 摘記(1c)の「全ての縦ベアラ28a-28dは、胴体16に平行な2つの翼12,14の間に延びている」及び「リフトロータ26は、合計4つの細長い縦ベアラ28a-28d・・・に支持されている」という記載を参照し、図1における、4個のリフトロータ26f,g,j,kに着目すると、胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28bで支持する構造とし、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28cで支持する構造とした、ことが明らかである。 ウ 摘記(1d)の「離着陸時にそれらによって生成されるダウンドラフトは、翼12,14を外れる」という記載における「それら」は、「リフトロータ26」すなわち「16個のリフトロータ26a-26p」を意味していることが明らかである。 このことと、図1における、16個のリフトロータ26a-26pと、前翼12、後翼14、胴体16との位置関係に着目すると、前翼12、後翼14及び胴体16が、16個のリフトロータ26a-26pの後流を邪魔しないように16個のリフトロータ26a-26pを配置していることが明らかである。 エ 図1及び図2と上記アから、16個のリフトロータ26a-26pは、航空機10の高さ方向において、同じ高さに配置されていることが明らかである。 このことと、図1及び図2から、胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置し、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置したことが、明らかである。 オ 上記ア~エ及び摘記(1a)~(1d)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明1] 「胴体16の左右それぞれに、垂直に離着陸できるようにするために航空機10が備える16個のリフトロータ26a-26pのうちの8個を航空機10の前方後方に配置すると共に、各リフトロータ26a-26pは上面視で互いに重ならないように配置され、 胴体16のノーズ近くに配置される前翼12と胴体16の尾部の近くに配置される後翼14は、前後に並べての胴体16上に配置され、 前翼12、後翼14及び胴体16が、16個のリフトロータ26a-26pの後流を邪魔しないように16個のリフトロータ26a-26pを配置し、 胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28bで支持する構造とし、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28cで支持する構造とした、航空機10であって、 胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置し、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置した、航空機10。」 2 引用文献2について (1)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【0037】 第1の実施形態 図5に示した第1実施形態の固定翼および電動マルチローターを組み合わせた航空機は、1組の固定翼航空機コンポーネントを有する。前記のコンポーネントは、機体1と、主翼2と、尾翼3と、固定翼航空機コンポーネントに動力を供給する固定翼動力系統4(固定翼航空機動力系統としても知られている)とを含む。当業者は、前記の主翼と固定翼が同じ部品であり、ローターに対して固定翼と呼ばれ、航空機の構造によれば、尾翼に対して主翼と呼ばれることを理解するであろう。前記の固定翼航空機コンポーネントに基づいて、ローターヘリコプターの機能を有するコンポーネントに動力を供給する4組の電動マルチローター動力系統5がさらに増設される。だが、前記の電動マルチローター動力系統5の数量は、4組に限らず、ほかの数量でもよい。前記の電動マルチローター動力系統5の構成は従来のヘリコプターの構成を採用することができるので、ここでは詳しく説明しない。前記の電動マルチローター動力系統のローター回転面は水平面と平行であるが、この平行はほぼ平行を含み、例えば、機体と水平面のピッチ角が10度以内でもよい。当業者は、ここで、平行や垂直、水平などの術語は、幾何学の上での絶対な平行や垂直、水平に限らず、ほぼ平行や垂直、水平も含むことを理解するであろう。電動マルチローター動力系統5は、動力装置及びローターを有する。ローターは、機体の両側に、且つ、主翼の前側と後側に設けられ、機体に対して対称設置される。動力装置は機体に設けられる。または、電動マルチローター動力系統5の全組は、それぞれ、機体の両側に、且つ、主翼の前側と後側に設けられ、機体に対して対称設置される。この配置により、航空機の重心は機体の中心線に位置し、離陸、着陸、及び飛行の過程で航空機のバランスを維持できるとともに航空機の動作状態には影響を与えないことを保障できる。もちろん、前記の効果を実現することができるほかの位置の設定方式も採用できる。第1実施形態では、各電動マルチローター動力系統5の全体または各電動マルチローター動力系統5のローターが、サポートアーム6を通じて、主翼2に接続される。もちろん、他の実施形態において、電動マルチローター動力系統5又はローターのいくつかは、翼及び機体に接続するサポートアームを共有する。」 (2b) 「【0043】 1.ヘリコプターモードで離着陸する場合、固定翼動力系統は停止され、4組の電動マルチローター動力系統(又はより多くの電動マルチローター動力系統)が始動される。電動マルチローター制御系統は全部のローターの回転速度及び/又はピッチを増減することによって航空機の垂直離着陸を制御する。垂直離着陸は、消費電力が大きいが、電動マルチローター動力系統の運転時間は短く、離着陸するときの消費電力は全飛行過程の消費電力の小さな割合しか占めない。かくして、このモードは航空機の主な離着陸モードであり、この時に航空機はヘリコプターのように離着陸する。図16に示すように、離着陸の間、4つのローター全ての運転速度が増加され又は減少される。」 (2c) 「【0055】 混合モードで飛行する時に、前記の2つの動力系統が協同運転している1つの状況では、ヘリコプターモードから固定翼航空機モードへの変換過程で、プロペラで発生した動力によって、航空機がホバリング状態から水平飛行の状態に変換される。次いで、対気速度の増加にしたがって固定翼は揚力を発生する。同時に、対気速度が固定翼の失速速度より大きくなるまで全体の揚力を一定に維持するように、マルチローターの回転速度を徐々に低減することによってローターの揚力を低減する。かくして、マルチローターヘリコプター飛行モードから固定翼航空機モードへの変換が完了する。」 (2d) 「【0058】 図7-13に示すように、本発明の固定翼航空機コンポーネントの尾翼構造は他の種類の構造を採用することができ、・・・」 (2e) 図13には、以下の内容が示されている。 [図:0001411219000003.jpg] (2)引用文献2に記載された発明 ア 図13には、図5に示した第1実施形態と同様に、「航空機」に関して「機体1」、「主翼2」、「尾翼3」及び「4組の電動マルチローター動力系統5」(摘記(2a)参照)が示されているところ、図13から、機体1の左右それぞれに、4つの電動マルチローター動力系統5のうちの2つを機体1の前方後方にそれぞれ配置すると共に、4つの電動マルチローター動力系統5が上面視で互いに重ならないように配置され、主翼2と尾翼3を設けた航空機の構成が看取できる。 イ 摘記(2b)の「ヘリコプターモードで離着陸する場合、固定翼動力系統は停止され、4組の電動マルチローター動力系統(又はより多くの電動マルチローター動力系統)が始動される。電動マルチローター制御系統は全部のローターの回転速度及び/又はピッチを増減することによって航空機の垂直離着陸を制御する」という記載の「電動マルチローター動力系統」は、「垂直離着陸を制御する」「電動マルチローター動力系統」であることが明らかである。 ウ 「航空機がホバリング状態」(摘記(2c))となることから、当該「ホバリング状態」では、「航空機」の4つの「電動マルチローター動力系統5」が、下方に向けた後流を発生していることが明らかである。 このことを踏まえると、図13から、主翼2、尾翼3及び機体1が、4つの電動マルチローター動力系統5の後流を邪魔しないように4つの電動マルチローター動力系統5を配置した構成が看取できる。 エ 摘記(2a)の「各電動マルチローター動力系統5の全体・・・が、サポートアーム6を通じて、主翼2に接続される」という記載と図13から、4つの電動マルチローター動力系統5は、サポートアーム6を通じて主翼2に接続されたことが明らかである。 オ 図13から、機体1の右に配置された1つの電動マルチローター動力系統5は、主翼2と尾翼3の間に配置され、機体1の左に配置された1つの電動マルチローター動力系統5は、主翼2と尾翼3の間に配置された構成が看取できる。 カ 上記ア~オ及び摘記(2a)~(2d)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明2] 「機体1の左右それぞれに、垂直離着陸を制御する4つの電動マルチローター動力系統5のうちの2つを機体1の前方後方にそれぞれ配置すると共に、4つの電動マルチローター動力系統5が上面視で互いに重ならないように配置され、電動マルチローター動力系統5は、ローターを有し、主翼2と尾翼3を設け、主翼2、尾翼3及び機体1が、4つの電動マルチローター動力系統5の後流を邪魔しないように4つの電動マルチローター動力系統5を配置し、4つの電動マルチローター動力系統5は、サポートアーム6を通じて主翼2に接続された、航空機であって、機体1の右に配置された1つの電動マルチローター動力系統5は、主翼2と尾翼3の間に配置され、機体1の左に配置された1つの電動マルチローター動力系統5は、主翼2と尾翼3の間に配置された、航空機。」 3 引用文献3について (1)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (3a) 「The present invention pertains to vertical takeoff and landing aircraft (VTOL),」(1欄13~14行) 「本発明は、垂直離着陸機(VTOL)に関する。」 (3b) 「Specifically, FIG.2 shows a central fuselage 25, front wing 26 swept forward, and swept back wing 27. In planform the shapes of the central portion of fuselage and the adjacent trailing portion of front of wing 26 combines to form a portion of a ring 28, surrounding part of the circumference of rotor 32. The central portion of fuselage 1 and the root of the leading edge of rear wing 27 combine to form another portion of a ring 29, surrounding part of the circumference of the rotor's circle. When combined, portions 28 and 29, combines to form a surface lip covering approximately 180 on the rotor's circumference providing protection against tip losses of the rotor,」(5欄15~26行) 「具体的に、図2は、胴体中央25と、前方を掃引した前翼26と、後方を掃引した後翼27とを示している。平面視における形状において、胴体の中央部と、隣接する前翼26のトレイル部と、の形状が結合して、ロータ32の外周の一部を取り囲む環状部の一部分28を形成している。機体1の中央部分と、後翼27の前縁の根元部分と、が結合して、ロータの外周の一部を取り囲む環状部の別部分29を形成している。組み合わせると、部分28と部分29は、ロータの外周の180度を覆う表面縁形状となり、ロータの先端の破損に対する保護を提供する。」 (3c) 「FIG. 3 is a modification of FIG. 2, comprising forward swept 31 in the outer portion of 27. This increases the total area protecting the tip losses of rotor 32 from approximately 180 to approximately 120,」(5欄31~34行) 「図3は、図2の変形例であり、27の外側部において前方に湾曲31を備えている。これは、略120~180度にかけてロータ32の先端損失を保護する総面積を増加させる。」 (3d) 図1A、図1B、図2、図3には、以下の内容が示されている。 [図:0001411219000004.jpg] [図:0001411219000005.jpg] [図:0001411219000006.jpg] [図:0001411219000007.jpg] (2)引用文献3に記載された技術事項 ア 図2は、垂直離着陸機(摘記(3a)参照)の右側の構造を示すところ、図2から、ロータ32を、右側の前翼26と右側の後翼27との間に配置した構成が、看取できる。 垂直離着陸機の左側も、図2と同様の構造となっていることが明らかであるから、同様に、ロータ32を、左側の前翼26と左側の後翼27との間に配置した構成となっていることが、明らかである。 イ 図1Bから、胴体1の高さ方向において、Blade5(ロータ32のブレード5であることが明らかである。)の高さが、前翼2及び後翼3の高さと同程度である、すなわちロータ32のブレード5と前翼2及び後翼3とが、ほぼ同一平面上に位置していることが看取できるところ、図2における、ロータ32(ブレード5を備えていることが明らかである。)、前翼26、後翼27に関しても、同様のことが想定できる。 ウ これらのことと、摘記(3b)の「図2は、胴体中央25と、前方を掃引した前翼26と、後方を掃引した後翼27とを示している。平面視における形状において、胴体の中央部と、隣接する前翼26のトレイル部と、の形状が結合して、ロータ32の外周の一部を取り囲む環状部の一部分28を形成している。機体1の中央部分と、後翼27の前縁の根元部分と、が結合して、ロータの外周の一部を取り囲む環状部の別部分29を形成している。組み合わせると、部分28と部分29は、ロータの外周の180度を覆う表面縁形状となり、ロータの先端の破損に対する保護を提供する。」という記載と図2、並びに、図3において、後翼27の外側部における「湾曲31」が、「ロータ32の先端損失を保護する総面積を増加させる」ためのものであること(摘記(3c)参照)を総合すると、右側の前翼26、右側の後翼27、左側の前翼26及び左側の後翼27を、ロータ32のブレード5の回転軌跡が内接する、ロータ32のブレード5の回転をガードするブレードガードとして兼用した構造となっていることが、明らかである。 エ したがって、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献3に記載された技術事項] 「左右のロータ32のブレード5を、右側の前翼26と右側の後翼27との間と、左側の前翼26と左側の後翼27との間に、それぞれ、これらがほぼ同一平面上に位置するように配置し、右側の前翼26、右側の後翼27、左側の前翼26及び左側の後翼27を、ロータ32のブレード5の回転軌跡が内接する、ロータ32のブレード5の回転をガードするブレードガードとして兼用した、垂直離着陸機。」 4 引用文献4について (1)引用文献4に記載された事項 引用文献4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (4a) 「【0014】 前方ウィング120の両端は、前方左側コーナ連結部131-1及び前方右側コーナ連結部131-2などのコーナ連結部131と結合し得る。いくつかの実施態様では、前方ウィングは、1つまたは複数のフラップ127またはエルロンを含み得る。この1つまたは複数のフラップ127またはエルロンは、単独で、または上昇モータ106、上昇プロペラ102、推進モータ110、推進プロペラ112及び/または以下に論じる後方ウィング上の他のフラップと組み合わせて、UAV100のピッチ、ヨー及び/またはロールを調整するのに使用され得る。いくつかの実施態様では、フラップ127は、UAV100の外部の対象による上昇プロペラ102へのアクセスをさらに防止するための保護シュラウドとしても使用され得る。たとえば、UAV100が垂直方向に移動しているまたはホバリングしている場合、図5に示すとともに、図5に関して以下に論じるように、フラップ127は、上昇プロペラ102の一部分の周りの保護バリアの高さを増大させるように、延長され得る。 ・・・ 【0016】 下方後方ウィング124の両端は、後方左側コーナ連結部131-3及び後方右側コーナ連結部131-4などのコーナ連結部131と結合され得る。いくつかの実施態様では、下方後方ウィングは、1つまたは複数のフラップ123またはエルロンを含み得る。この1つまたは複数のフラップ123またはエルロンは、単独で、または上昇モータ106、上昇プロペラ102、推進モータ110、推進プロペラ112及び/または前方ウィング上のフラップ127と組み合わせて、UAV100のピッチ、ヨー及び/またはロールを調整するのに使用され得る。いくつかの実施態様では、フラップ123は、UAV100の外部の対象による上昇プロペラ102へのアクセスをさらに防止するための保護シュラウドとしても使用され得る。たとえば、UAV100が垂直方向に移動しているまたはホバリングしている場合、フラップ123は、前方ウィング120の前方フラップ127の延長と同様に延長され得る。」 (4b) 図1には、以下の内容が示されている。 【図1】 [図:0001411219000008.jpg] (2)引用文献4に記載された技術事項 引用文献4の図1(摘記(4b)参照)から、上昇プロペラ102を、フラップ127とフラップ123との間に、これらがほぼ同一平面に位置するように配置した構造が、看取できる。 このことと、摘記(4a)から、引用文献4には、次の技術事項(以下「引用文献4に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献4に記載された技術事項] 「上昇プロペラ102を、前方ウィングが含む1つまたは複数のフラップ127と、下方後方ウィングが含む1つまたは複数のフラップ123との間に、これらがほぼ同一平面に位置するように配置し、フラップ127及びフラップ123を、上昇プロペラ102へのアクセスを防止するための保護シュラウドとしても使用する、UAV100。」 第6 当審の判断 1 引用発明1を主たる引用発明とした場合の理由1及び理由2について (1)対比 本件発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「胴体16」は、本件発明の「胴体」に相当する。 引用発明1の「航空機10」は、本件発明の「航空機」に相当し、引用発明1の「航空機10」は、本件発明の「機体」に相当する構造を含んでいることが、技術常識である。 引用発明1の「リフトロータ」は、「ロータ」であり、「垂直に離着陸できるようにするために航空機10が備える」ものであることから、本件発明の「上昇下降用プロペラ」に相当する。 イ 上記アを踏まえると、引用発明1の「胴体16の左右それぞれに、垂直に離着陸できるようにするために航空機10が備える16個のリフトロータ26a-26pのうちの8個を航空機10の前方後方に配置すると共に、各リフトロータ26a-26pは上面視で互いに重ならないように配置され」た構成は、本件発明の「胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し」た構成に相当する。 ウ 前翼及び後翼が水平飛行時に揚力を得ることは技術常識であることを踏まえると、引用発明1の「胴体16のノーズ近くに配置される前翼12と胴体16の尾部の近くに配置される後翼14」は、本件発明の「水平飛行時に揚力を得る複数の翼」及び「水平飛行揚力翼」のいずれにも相当する。 また、引用発明1の「胴体16」の「前後」は、実質的に「航空機10」の「前後」であるといえる。 これらのことから、引用発明1の「胴体16のノーズ近くに配置される前翼12と胴体16の尾部の近くに配置される後翼14は、前後に並べての胴体16上に配置され」た構成は、本件発明の「水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け」た構成に相当する。 エ 上記ア、ウから、引用発明1の「前翼12、後翼14及び胴体16が、16個のリフトロータ26a-26pの後流を邪魔しないように16個のリフトロータ26a-26pを配置し」た構成は、本件発明の「前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し」た構成に相当する。 オ 引用発明1において、「細長い縦ベアラ28b」及び「細長い縦ベアラ28c」は、いずれも「前翼12と後翼14の間に延びている」ことから、「細長い縦ベアラ28bで支持する構造」又は「細長い縦ベアラ28cで支持する構造」は、実質的に「前翼12と後翼14」で支持する構造といえる。 このことと、上記ア、ウから、引用発明1の「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28bで支持する構造とし、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28cで支持する構造とした」構成は、本件発明の「上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支える構造とした」構成に相当する。 カ 引用発明1において、「細長い縦ベアラ28b」及び「細長い縦ベアラ28c」は、いずれも「前翼12と後翼14の間に延びている」ことから、引用発明1の「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28bで支持する構造とし、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを前翼12と後翼14の間に延びている細長い縦ベアラ28cで支持する構造とした」構成(以下「構成A」ともいう。)では、「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26g」及び「胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26k」を、「前翼12と後翼14の間」に配置していることが明らかである。 このことと、上記ア、ウを踏まえると、引用発明1の構成Aは、本件発明の「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置する」構成に相当する。 以上から、本件発明と引用発明1との一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。 <一致点1> 「胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し、水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け、前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し、上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支持する構造とした、航空機であって、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置する、航空機。」 <相違点1> 「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置」することについて、本件発明では、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置し「回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した」のに対して、引用発明1では、「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置し、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置した」点。 (2)判断 相違点1について、以下検討する。 ア 上記(1)カで説示したとおり、引用発明1の構成Aによると、「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26g」及び「胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26k」は、「前翼12と後翼14の間」に配置されるものである。 イ また、引用発明1の「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26gを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置し、胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26kを、航空機10の高さ方向において前翼12及び後翼14と同程度の高さ位置に配置した」構成(以下「構成B」ともいう。)によると、「前翼12及び後翼14」は、「胴体16の右の2個のリフトロータ26f及びリフトロータ26g」及び「胴体16の左の2個のリフトロータ26j及びリフトロータ26k」と、「航空機10の高さ方向において」「同程度の高さ位置」にある。 ウ これらのことから(引用文献1の図1及び2も参酌すると)、引用発明1の「リフトロータ26f、26j」や「リフトロータ26g、26k」のプロペラの回転軌跡はそれぞれ、ほぼ同一面上で、「前翼12」の左右の翼(複数の翼)や「後翼14」の左右の翼(複数の翼)近くあるといえるから、これらの複数の翼に内接するものである。 なお、この内接に係る理解は、審尋に対する特許権者の令和4年8月18日付けの回答書の内容(1)ないし(3)とも合致している。 エ そして、この内接に係る構成を踏まえると、引用発明1の「前翼12」の左右の翼(複数の翼)と「後翼14」の左右の翼(複数の翼)は当然に、リフトロータのプロペラの回転をガードするプロペラガードとしても機能するものと認められる。 オ 以上から、引用発明1の構成A及び構成Bは、本件発明の「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置し回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した」構成に相当するから、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。 よって、本件発明は、引用発明1である。 カ また、仮に、上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、リフトロータにガードを備えることは周知の課題であり、翼をこのガードに用いることも普通に行われることであるから(後記の引用文献3、4に記載された技術事項も参照。)、「リフトロータ26f、26g」及び「リフトロータ26j、26k」のプロペラの回転軌跡をそれぞれ、「前翼12」の左右の翼(複数の翼)又は「後翼14」の左右の翼(複数の翼)に内接させて、プロペラの回転をガードするプロペラガードを兼用することで、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本件発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)特許権者の主張について 特許権者は、令和4年8月18日付けの回答書の3ページ10~11行において、「引用文献1には、翼Aを設ける示唆も無く、リフトロータをガードするという思想は全くありません。」と主張する(以下「主張A」という。)。 しかしながら、上記(2)ウで説示したとおりであって、引用文献1のものは、近接により実質的にリフトロータをガードするという機能を有していることが明らかであるし、前方又は後方の複数の翼について、本件発明は、少なくとも一部のリフトロータのプロペラの回転軌跡が複数の翼に内接していればよく、ロータの前後両方で翼を近接させることが必須のものではないため、引用文献1(引用発明1)において翼Aを設ける必要はなく、主張Aは採用できない。 2 引用発明2を主たる引用発明とした場合の理由2について (1)対比 本件発明と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「機体1」は、本件発明の「胴体」又は「機体」に相当する。 引用発明2の「航空機」は、本件発明の「航空機」に相当する。 引用発明2の「電動マルチローター動力系統5」は、「垂直離着陸を制御する」ものであることから、引用発明2の「電動マルチローター動力系統5」が「有」する「ローター」(実質的に「プロペラ」の構造となっていることは明らかである。)は、本件発明の「上昇下降用プロペラ」に相当する。 イ 上記アを踏まえると、引用発明2の「機体1の左右それぞれに、垂直離着陸を制御する4つの電動マルチローター動力系統5のうちの2つを機体1の前方後方にそれぞれ配置すると共に、4つの電動マルチローター動力系統5が上面視で互いに重ならないように配置され」た構成は、本件発明の「胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し」た構成に相当する。 ウ 主翼及び尾翼が水平飛行時に揚力を得ることは技術常識であることを踏まえると、引用発明2の「主翼2と尾翼3」は、本件発明の「水平飛行時に揚力を得る複数の翼」又は「水平飛行揚力翼」に相当する。 また、引用発明2の「主翼2と尾翼3」が、航空機の前後に設けられていることは技術常識である。 これらのことから、引用発明2の「主翼2と尾翼3を設け」た構成は、本件発明の「水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け」た構成に相当する。 エ 上記ア、ウから、引用発明2の「主翼2、尾翼3及び機体1が、4つの電動マルチローター動力系統5の後流を邪魔しないように4つの電動マルチローター動力系統5を配置し」た構成は、本件発明の「前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し」た構成に相当する。 オ 引用発明2の「サポートアーム6を通じて主翼2に接続された」ことは、実質的に「主翼2」で支えることであるといえる。 このことと、上記ア、ウから、引用発明2の「4つの電動マルチローター動力系統5は、サポートアーム6を通じて主翼2に接続された」た構成は、本件発明の「上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支える構造とした」構成に相当する。 カ 上記ア、ウを踏まえると、引用発明2の「機体1の右に配置された1つの電動マルチローター動力系統5は、主翼2と尾翼3の間に配置され、機体1の左に配置された1つの電動マルチローター動力系統5は、主翼2と尾翼3の間に配置された」構成(以下「構成C」ともいう。)は、本件発明の「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置」する構成に相当する。 以上から、本件発明と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点2> 「胴体の左右に、複数個の上昇下降用プロペラを機体の前方後方に配置すると共に、前方のプロペラの中心位置と後方のプロペラの中心位置が平面上重ならないように配置し、水平飛行時に揚力を得る複数の翼を機体の前方後方に設け、前記胴体と前記水平飛行揚力翼が、前記上昇下降用プロペラの後流を邪魔しないように上昇下降用プロペラを配置し、上昇用下降用プロペラを前記水平飛行揚力翼で支持する構造とした、航空機であって、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置する、航空機。」 <相違点2> 「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置」することについて、本件発明では、少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間に配置し「回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した」(実質的には、少なくとも一部の上昇下降用プロペラと前方又は後方の複数の翼とが、ほぼ同一平面上に位置していることである。)のに対して、引用発明2では、「主翼2と尾翼3の間に配置され」た「機体1の右に配置された1つの電動マルチローター動力系統5」及び「主翼2と尾翼3の間に配置さ」た「機体1の左に配置された1つの電動マルチローター動力系統5」と、「主翼2と尾翼3」とが、ほぼ同一平面上に位置しているのか否か不明な点。 (2)判断 相違点2について、以下検討する。 ア 引用文献3について、以下のことがいえる。 (ア) 引用文献3に記載された技術事項の「右側の前翼26、右側の後翼27、左側の前翼26及び左側の後翼27」は、本件発明の「前方又は後方の複数の翼」及び「前方及び後方の複数の翼」のいずれにも相当する。 引用文献3に記載された技術事項の「ロータ32のブレード5」が、上昇下降用であることは、明らかであるから、引用文献3に記載された技術事項の「左右のロータ32のブレード5」は、本件発明の「少なくとも一部の上昇下降用プロペラ」に相当する。 引用文献3に記載された技術事項の「ブレードガード」は、本件発明の「プロペラガード」に相当する。 これらのことを踏まえると、引用文献3に記載された技術事項の「左右のロータ32のブレード5を、右側の前翼26と右側の後翼27との間と、左側の前翼26と左側の後翼27との間に、それぞれ、これらがほぼ同一平面上に位置するように配置し、右側の前翼26、右側の後翼27、左側の前翼26及び左側の後翼27を、ロータ32のブレード5の回転軌跡が内接する、ロータ32のブレード5の回転をガードするブレードガードとして兼用した」ことは、本件発明の少なくとも一部の上昇下降用プロペラを複数の翼の間にこれらがほぼ同一平面に位置するように配置し「回転軌跡が前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した」ことに相当する。 引用文献3に記載された技術事項の「垂直離着陸機」は、本件発明の「航空機」に相当する。 (イ) 以上より、引用文献3に記載された技術事項は、本件発明の文言を用いると、「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間にこれらがほぼ同一平面に位置するように配置し回転軌跡が前記前方又は後方の複数の翼に内接させることで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した、航空機。」である。 イ 引用文献4について、以下のことがいえる。 (ア) 引用文献4に記載された技術事項の「前方ウィングが含む1つまたは複数のフラップ127」及び「下方後方ウィングが含む1つまたは複数のフラップ123」は、いずれもウィングの一部を構成し翼といえるから、引用文献4に記載された技術事項の「前方ウィング」ないし「前方ウィングが含む1つまたは複数のフラップ127」、及び、「下方後方ウィング」ないし「下方後方ウィングが含む1つまたは複数のフラップ123」は、本件発明の「前方及び後方の複数の翼」に相当する。 引用文献4に記載された技術事項の「上昇プロペラ102」は、技術的に「上昇下降用」でもあることが明らかであり、引用文献4に記載された技術事項の「上昇プロペラ102」及び「フラップ127及びフラップ123を、上昇プロペラ102へのアクセスを防止するための保護シュラウドとしても使用する」ことは、それぞれ、本件発明の「上昇下降用プロペラ」及び「前方及び後方の複数の翼を上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した」ことに相当する。 引用文献4に記載された技術事項の「UAV100」は、本件発明の「航空機」に相当する。 (イ) 以上より、引用文献4に記載された技術事項は、本件発明の文言を用いると、「少なくとも一部の前記上昇下降用プロペラを前記複数の翼の間にこれらがほぼ同一平面に位置するように配置することで、前記前方及び後方の複数の翼を前記上昇下降用プロペラの回転をガードするプロペラガードとして兼用した、航空機」である。 ウ ここで、引用発明2と引用文献3ないし4に記載された技術事項とは、「上昇下降用プロペラ」を備えた「航空機」という同一の技術分野に属するものであり、「上昇下降用プロペラを複数の翼の間に配置」するというプロペラに係る配置構成も共通している。 そうすると、引用文献2の図13等の記載からは、引用発明2の「機体1の左に配置された1つの電動マルチローター動力系統5」と、「主翼2と尾翼3」とが、ほぼ同一平面上に位置していることまでは特定できないものの、引用発明2にもプロペラをガードするという課題は当然内在しているといえるから、引用文献3ないし4に記載された技術的事項に鑑みて、引用発明2の構成Cにおいて、「主翼2と尾翼3の間に配置され」た「機体1の右に配置された1つの電動マルチローター動力系統5」及び「機体1の左Eに配置された1つの電動マルチローター動力系統5」と、「主翼2と尾翼3」とが、ほぼ同一平面上に位置するようにサポートアーム6を調整し(引用文献3のFIG.1A、FIG.1B、引用文献4の図1など参照)、「主翼2と尾翼3」が、それらの「電動マルチローター動力系統5」が備えるロータ(すなわちプロペラ、上記(1)ア参照)の回転軌跡が内接するように(要するに、回転軌跡が近くになるように)、ロータ(プロペラ)ガードとして機能する位置に配置することで、「主翼2と尾翼3」を「電動マルチローター動力系統5」のロータ(プロペラ)の回転をガードするプロペラガードとして兼用し、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。 エ したがって、本件発明は、引用発明2及び引用文献3ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)特許権者の主張について 特許権者は、上記回答書の3ページ23~25行において、「引用文献2にもプロペラをガードするという思想は全く無いので、他の引用文献を組み合わせても容易に本件発明に想到いたしません。」と主張する(以下「主張B」という。)。 しかしながら、上記(2)で説示したとおりであって、プロペラをガードするという思想は引用文献3及び引用文献4のいずれにも記載ないし示唆されており、本件発明は、引用発明2及び引用文献3ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、主張Bは採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件発明は、引用発明1に基いて、あるいは、引用発明2及び引用文献3ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700092

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