特許異議申立
2022-700479
樹脂管
- 審判番号
- 2022-700479
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-048263外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6978354
- 請求日
- 2022年06月02日
- 審決日
- 2023年08月02日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(F16L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6978354号発明「樹脂管」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6978354号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
特許第6978354号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6978354号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年3月15日の出願であって、令和3年11月15日にその特許権の設定登録がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 6月 2日 :特許異議申立人 竹松靖子(以下、「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 9月20日付け:取消理由通知
同年11月24日 :特許権者意見書、訂正請求書の提出
令和5年 1月 6日 :申立人意見書の提出
同年 2月16日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 4月24日 :特許権者意見書、訂正請求書の提出(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
同年 6月 7日 :申立人意見書の提出
なお、令和4年11月24日に特許権者がした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であり、
前記識別層は、下記条件を満たす樹脂管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2を独立形式に改め、
「【請求項2】
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であり、
前記識別層は、厚さが2.0mm以下で下記条件を満たし、前記本体の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下であり、前記識別層の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満である、樹脂管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3を独立形式に改め、
「【請求項3】
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であり、
前記識別層は、厚さが2.0mm以下で下記条件を満たし、前記本体の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満であり、前記識別層の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下である、樹脂管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」
に訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「<条件>」の「酸化誘導時間(OIT)」が「10分以上」であったものを「前記識別層の酸化誘導時間(OIT)」が「29.4分以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、段落【0054】に、「・・・暴露後の試験片の識別層から、15mg±0.5mgのサンプルを切り取った。・・・OITを求めた。結果を表1に示す。」と記載され、段落【0056】の【表1】の実施例1~6としてOIT[分]が「29.4」以上であることが記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
「【0056】
【表1】
[図:0001403625000001.jpg]
」
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「<条件>」における「酸化誘導時間(OIT)」の発明特定事項を直列的に付加し、「酸化誘導時間(OIT)」を「10分以上」から「29.4分以上」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を独立形式とするとともに、「識別層」について「前記識別層は、厚さが2.0mm以下で」との発明特定事項を直列的に付加し、「<条件>」の「酸化誘導時間(OIT)」が「10分以上」であったものを「前記識別層の酸化誘導時間(OIT)」が「29.4分以上」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、段落【0018】に「識別層20の厚さd2は、本体10の厚さd1に応じて適宜決定され、例えば、0.02mm以上2.0mm以下が好ましく・・・」と記載され、段落【0054】に、「・・・暴露後の試験片の識別層から、15mg±0.5mgのサンプルを切り取った。・・・OITを求めた。結果を表1に示す。」と記載され、段落【0056】の【表1】の実施例1~6としてOIT[分]が「29.4」以上であることが記載されているから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「識別層」の発明特定事項及び訂正前の請求項1の「<条件>」における「酸化誘導時間(OIT)」の発明特定事項を直列的に付加し、「酸化誘導時間(OIT)」を「10分以上」から「29.4分以上」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を独立形式とするとともに、「識別層」について「前記識別層は、厚さが2.0mm以下で」との発明特定事項を直列的に付加し、「<条件>」の「酸化誘導時間(OIT)」が「10分以上」であったものを「前記識別層の酸化誘導時間(OIT)」が「29.4分以上」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、段落【0018】に「識別層20の厚さd2は、本体10の厚さd1に応じて適宜決定され、例えば、0.02mm以上2.0mm以下が好ましく・・・」と記載され、段落【0054】に、「・・・暴露後の試験片の識別層から、15mg±0.5mgのサンプルを切り取った。・・・OITを求めた。結果を表1に示す。」と記載され、段落【0056】の【表1】の実施例1~6としてOIT[分]が「29.4」以上であることが記載されているから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、訂正前の請求項3の「識別層」の発明特定事項及び訂正前の請求項1の「<条件>」における「酸化誘導時間(OIT)」の発明特定事項を直列的に付加し、「酸化誘導時間(OIT)」を「10分以上」から「29.4分以上」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項について
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~3について、請求項2~3は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものであり、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項[1~3]は、一群の請求項である。
3.小括
したがって、本件訂正の訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合する。
また、本件訂正は、訂正後の請求項2、3についての訂正が認められる場合には、別の訂正単位として訂正することを求めるものである。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であり、
前記識別層は、下記条件を満たす樹脂管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。
【請求項2】
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であり、
前記識別層は、厚さが2.0mm以下で下記条件を満たし、前記本体の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下であり、前記識別層の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満である、樹脂管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。
【請求項3】
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であり、
前記識別層は、厚さが2.0mm以下で下記条件を満たし、前記本体の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満であり、前記識別層の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下である、樹脂管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
当審が令和5年2月16日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
1.甲第1号証:特開2014-188757号公報
2.甲第2号証:ISO 4427-2:2007(E)、2007年8月1日初版発行、第i~v頁及び第1~18頁
3.甲第3号証:日本色彩学会編、「新編 色彩科学ハンドブック[第3版]」、東京大学出版会、2011年4月20日、第591~593頁
4.甲第6号証:日本水道協会規格JWWA K 144:2017及びJWWA K 145:2017、平成29年(2017年)8月21日改正、第1~6、43~45及び55頁
5.引用文献1:特開2012-7097号公報
6.引用文献2:特開2002-276864号公報
7.引用文献3:特開2001-324063号公報
8.引用文献4:特開2007-120686号公報
第5 当審の判断
1.各甲号証及び引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証に記載された事項
取消理由通知において引用した甲第1号証には、次の事項が記載されている(なお、下線及び枠線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
(ア)「【請求項1】
管状に成形された本体と、
前記本体の外面に前記本体と一体的に成形された発光材料及び金属材料を含むマーキング層と、
を備えている成形体。
【請求項2】
前記マーキング層は前記本体の外面の長手方向にライン状に設けられている請求項1に記載の成形体。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体・気体・粉体等の流体を輸送する際には前記流体に耐性を有する材質が管状に成形された配管や前記材質からなるホースが用いられる。例えば、水道の配水管としては、ポリエチレン管が知られている。
【0003】
上記配管及びホースは夜間に施工される、又は暗所で使用されることがあり、夜間作業の現場及び暗所では配管や継手の位置が確認しづらいため、施工時間や作業時間が長くなり、複数の配管やホースの接続時に不具合が生じてしまう。従って、暗所においても容易に視認可能な配管及びホースが要求されている。このようなホースとして、例えば特許文献1には、管状に形成されたホース本体の長手方向外面に多数のガラスビーズをバインダ中に分散させた反射層又は蛍光物質を含む発光層が設けられている消防用ホースが開示されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水道配水管のように地中や目の届かない場所に施工される配管は、地表や作業者側の壁面から直接視認することが難しい。そのため、このような配管では、夜間作業場所及び暗所において容易に視認可能であることに加えて、検知器により確実に検知可能であることが要求されている。配管の検知器としては金属検知機が広く用いられているが、ポリエチレン管等の非金属の配管は金属検知機では検知されない。」
(ウ)「【0013】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態である成形体1を示す斜視図である。
図1に示すように、成形体1は、本体2と、マーキング層3と、を備えている。
【0014】
本体2は、押出成形により、中空部4を有して一方向に延在するように管状に成形された配水管である。また、本体2は、中空部4を流れる流体(図示略)に耐性を有する材質から構成されている。本実施形態のように流体が水であれば、本体2の材質としては、押出成形が容易且つ安価である点でポリエチレンが好適である。」
(エ)「【0016】
また、マーキング層3は、発光材料及び金属材料を含有する樹脂等から構成されている。マーキング層3に含まれる発光材料は、暗所での発光性に優れている材料である。このような発光材料としては、例えば蛍光顔料とポリエチレン樹脂との混合物が挙げられる。本体2の性能を低下させずに蛍光性を付与することができ、且つ、蛍光顔料とポリエチレン樹脂の混合が容易である点から、前記混合物における蛍光顔料とポリエチレン樹脂との混合比率は重量比で10:100程度であることが好ましい。このようにマーキング層3に発光材料が含まれていることにより、暗所においてマーキング層3が発光し、成形体1が容易に視認される。」
(オ)「【図1】
[図:0001403625000002.jpg]
」
(カ)図1から、マーキング層3は、本体2aに対して1以上設けられていることが看取できる。
イ 甲第1号証に記載された発明について
上記アから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「管状の本体2と、前記本体2の外面2aに一体に形成され、前記本体2aの長手方向に延びる発光材料及び金属材料を含む1以上のマーキング層3とを備えたポリエチレンからなる水道用の成形体1。」
(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証に記載された事項について
取消理由通知において引用した甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「Plastics piping systems - Polyethylene (PE) pipes and fittings for water supply」(第1頁タイトル、上から1~2行目)
(当審訳)
「プラスチック配管システム-水供給のためのポリエチレン(PE)管及び継手-」
(イ)「Three types of pipe are specified:
- PE pipes (outside diameter dn), including any identification stripes;」(第1頁下から5~6行目)
(当審訳)
「3種類の配管が指定される:
-任意の識別ストライプを含むPE管(外径dn)」
(ウ)「IS0 11357‐6:2002, Plastics - Differential scanning calorimetry (DSC) - Part 6: Determination of oxidation induction time」(第2頁下から7~ 6行目)
(当審訳)
「ISO11357-6:2002、プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)-パート6:酸化誘導時間の決定」
(エ)「4.2 identification compound
Where applicable, the compound used for identification stripes and co-extruded layers (see 5.2) shall be manufactured from a PE polymer manufactured from the same type of base polymer as used in the compound for pipe production.
For co-extruded layers used for identification purposes, Annex A applies.」(第3頁4.2)
(当審訳)
「4.2 識別コンパウンド
該当する場合、識別用のストライプや共押出層(5.2参照)に使用されるコンパウンドは、管製造用のコンパウンドに使用されるものと同種のベースポリマーから製造されるPEポリマーから製造されるものとする。
識別のために使用される共押出層については、附属書Aが適用される。」
(オ)「5.2 Colour
The pipes shall be either blue or black, or black with blue stripes. For coated pipes in accordance with Annex A, this applies to the coating.
Blue pipes or black pipes with blue stripes are intended for drinking water only.
For above-ground installations, all blue components and components with non-black layers should be protected from direct UV light.」(第3頁5.2)
(当審訳)
「5.2 色
管は、青もしくは黒、または黒地に青のストライプのいずれかとする。附属書Aに基づく被覆管については、被覆に適用される。
青色管または青色ストライプ付きの黒色管は、飲料水専用である。
地上設置の場合、すべての青色のコンポーネントと黒色以外の層を持つコンポーネントは、直接UV光から保護する必要がある。」
(カ)「
[図:0001403625000003.jpg]
」(第13頁表5)
(当審訳)※枠線部分のみ
「
[図:0001403625000004.jpg]
」
(キ)「A.2 Pipe with coloured identification layer」(第15頁 付属書A A.2)
(当審訳)
「A.2 有色の識別層を有する管」
(ク)「A.2.3 Physical characteristics
The physical characteristics shall be in accordance with Clause 8. The requirements for thermal stability (OIT) and for melt-flow rate shall apply to the individual layers respectively. Longitudinal heat reversion shall be applicable to the pipe inclusive of the coloured identification layer.」(第15頁 付属書A A.2.3)
(当審訳)
「A.2.3 物理的特性
熱安定性(OIT)及びフローレートに関する要件が個々の層に適用されるものとする。加熱伸縮性は、着色された識別層を含めて、管に適用されるものとする。」
イ 甲第2号証に記載された発明について
上記ア(ア)、(イ)、(キ)における「管」という記載から、甲第2号証に記載されたポリエチレン管は、管状であることが自明である。
また、上記ア(エ)の記載から、識別用のストライプは、共押出層に設けられるものであるので、管本体と一体に形成されたものであって、さらに「識別用」とあるので管本体の外面に形成されるものであると認められる。
また、上記ア(ク)の記載から、酸化誘導時間(OIT)が20分以上であるという条件は、識別用のストライプにも適用されることが分かる。
したがって、上記アから、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「管状の本体と、前記本体の外面に一体に形成された識別用のストライプとを備え、
前記識別用のストライプは、黒地の前記本体に対し青色であり、
前記識別用のストライプは、下記条件を満たす水供給のためのポリエチレン管。
<条件>
前記識別用のストライプを含む試験片をISO 11357-6:2002で示される試験方法により試験した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が20分以上である。」
(3)甲第3号証について
取消理由通知において引用した甲第3号証には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001403625000005.jpg]
」
(4)甲第6号証について
取消理由通知において引用した甲第6号証には、次の事項が記載されている。
ア「1 適用範囲
この規格は,水道施設に使用するポリエチレン製の直管及びEF(電気融着)受口付直管(以下,管という。)について規定する。
注記 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 4427-1:2007 Plastics piping systems - Polyethylene (PE) pipes and fittings for water supply - Part 1: General
ISO 4427-2:2007 Plastics piping systems- Polyethylene (PE) pipes and fittings for water supply - Part 2: Pipes」(第1頁1)
イ「
[図:0001403625000006.jpg]
」(第2頁4.2)
ウ 「9.10 耐侯性試験
管の耐侯性試験は,附属書Fによって暴露し,次の試験を行う。
EF受口付直管の場合は,受口部についても,同様に試験を行う。
a) 外観 外観は,目視によって調べる。
b) 熱安定試験 熱安定試験は,附属書Bによる。この場合,15mg±0.5 mgの試験片は供試管の外面から切り取る。」(第6頁9.10)
エ 「B.1 原理
熱安定試験の原理は,酸素雰囲気中で200℃ に試験片が保持されている状態で,試験片中に含まれている酸化防止剤が酸化を抑制し続ける時間を測定する。酸化の進行は,熱分析装置内の試験片と基準物質との間の温度差又はエネルギーフロー差を測定し,これを時間に対して記録することによってモニタする。熱安定性は,この記録から導出する。
注記 ISO 11357-1:1997 Plastics - Differential scanning calorimetry (DSC) - Part 1: General principles
ISO 11357-6:2002 Plastics - Differential scanning calorimetry (DSC) - Part 6: Determination of oxidation induction time (isothermal OIT) and oxidation induction temperature (dynamic OIT)
が,この附属書の熱安定試験方法と同等である。
B.2 装置及び基準物質
B.2.1 示差熱分析装置(以下,DTAという。)又は示差走査熱量計(以下,DSCという。)セル
DTA又はDSCセルは,次の性能を備えたものでなければならない。」(第43頁 付属書B B.1及びB.2)
オ 「F.3 共通的な条件
試験片を,少なくとも3.5 GJ/m2以上照射する。」(第55頁 付属書F F.3)
カ 「F.5 B法(実験室光源による暴露試験方法)
B法は,JIS K 7350-1によって行い,JIS K 7350-2,JIS K 7350-3又はJIS K 7350-4のいずれかの実験室光源によって暴露する。」(第55頁 付属書F F.5)
そして、上記カの記載及び技術常識から、上記B法による暴露試験には、サンシャインウェザーメーターが用いられることが分かる。
したがって、上記ア~カの記載から、甲第6号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「下記条件を満たす水道施設に使用するポリエチレン製の直管。
<条件>
サンシャインウェザーメーターで試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における酸化誘導時間(OIT)が10分以上である。」(以下、「甲第6号証記載事項」という。)
(5)引用文献1について
取消理由通知において引用した引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
(A)ポリオレフィン系樹脂製押出成形品の廃材から得られたリサイクル樹脂とポリオレフィン系樹脂バージン材とを含み、前記リサイクル樹脂の混合比率が56質量%以下であるポリオレフィン系樹脂と、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、
(C)リン系熱安定剤とを含み、
前記リサイクル樹脂が、JIS K 6774に準拠して示差走査熱量計を用いて測定された酸化誘導時間が50分以上であることを特徴とするリサイクル樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物。」
イ 「【0014】
前記押出成形品の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン系樹脂の押出成形によって製造し得る各種の製品、例えば、フィルム、シート、板状物品、管状物品、積層体、被覆成形物品等が挙げられる。」
したがって、ア、イの記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる。
「下記条件を満たすリサイクル樹脂。
<条件>
JIS K 6774に準拠して示差走査熱量計を用いて測定された酸化誘導時間が50分以上である。」(以下、「引用文献1記載事項」という。)
(6)引用文献2~4に記載された事項と周知技術の認定
ア 引用文献2に記載された事項について
取消理由通知において引用した引用文献2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 ポリエチレンナチュラルレジンからなる管本体部の外周に、ポリエチレンナチュラルレジンに黄色顔料を混合した着色樹脂からなり、厚みが、0.1~4mmの範囲にある表面層を一体に設けたことを特徴とする二層ポリエチレン樹脂管。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二層ポリエチレン樹脂管に関し、詳しくは、ガス用ポリエチレン管として用いられている黄色の二層ポリエチレン樹脂管に関する。」
(ウ)「【0009】そして、表面層12は、厚みが0.1~4mmの範囲、好ましくは1~2mm程度の厚みに形成する。すなわち、前記耐候性剤等によって紫外線による劣化を防止するだけならば、10μm程度、通常は20μm程度の厚みがあれば十分だが、表面層12の厚みが0.1mm未満では、下地が白色のナチュラルレジンであるため、黄色顔料の色が目立たなくなって管外面の黄色の色別が困難になる。一方、表面層12を4mmを超える厚みで形成することもできるが、この場合は、厚みを厚くした分だけ、黄色顔料や耐候性剤、耐熱性剤の使用量が多くなるので、管の製造コストが上昇することになり、二層構造にした効果を十分に得ることができなくなる。」
イ 引用文献3に記載された事項について
取消理由通知において引用した引用文献3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】合成樹脂管の外周に、厚さが0.1~0.2mm程度の着色層を一体に設けたことを特徴とする合成樹脂管。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂管に関し、詳しくは、用途別の着色や遮光性を得るための着色が施された合成樹脂管に関する。」
(ウ)「【0007】このように、外層12として厚みの薄い着色層を形成することにより、着色合成樹脂管における着色用顔料の使用量を削減できるので、着色合成樹脂管の製造コストを低減できる。そして、ポリエチレン管と電気融着継手とを融着接合する場合のように、接合面の酸化膜によって接合強度が低下するものの場合は、接合前にあらかじめ接合面をスクレープして酸化膜を除去する必要があるが、内層11が露出する程度にスクレープすることにより、外層12の有無によってスクレープの完了を知ることができ、酸化膜を確実に除去することができる。
【0008】さらに、外層12の厚みを、0.1~0.2mm程度に設定しておくことにより、最小のスクレープ量で酸化膜を十分に除去することができ、過度のスクレープも防止することができる。したがって、スクレープにおける個人差をなくしてスクレープ量の標準化も図れる。」
ウ 引用文献4に記載された事項について
取消理由通知において引用した引用文献4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
フッ素樹脂からなる透明チューブ本体の外表面にマーキング部が固着されてなるマークチューブにおいて、該マーキング部は、該透明チューブ本体を構成するフッ素樹脂とは異なる色の樹脂で構成され且つ該透明チューブ本体からその長手方向に沿って剥離自在に固着されていることを特徴とするマークチューブ。」
(イ)「【0001】
本発明は、液体、特に薬液等の搬送用マークチューブに関する。」
(ウ)「【0009】
図1および図2において、(1)はマークチューブ、(2)は透明チューブ本体、(3)はマーキング部である。この例では、マーキング部(3)は、透明チューブ本体(2)の横断面方向で対峙する2箇所の外表面に固着され、且つ細幅状薄膜体として透明チューブ本体(2)の長手方向に延在している。マーキング部(3)の寸法については、透明チューブ本体(2)の寸法にもよるが、一般的には、巾が1.00mm以上、深さが0.05~0.50mmの間にあればよい。また、その本数については、識別機能の面から1~3本程度で十分である。」
エ 周知技術の認定
上記事項ア~ウに例示されるように、次の事項は、周知技術(以下、「引用文献2~4に記載された周知技術」という。)であると認められる。
<引用文献2~4に記載された周知技術>
「2層構造の樹脂管において、樹脂管の表面に設けた着色層の厚さを2.0mm以下もしくは0.2mm以下にすること。」
2.対比、判断
(1)甲1発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「管状の本体2」及び「ポリエチレンからなる水道用の成形体1」は、それぞれ本件発明1における「筒状の本体」及び「樹脂管」に相当する。
また、甲1発明の「発光材料及び金属材料を含む1以上のマーキング層3」は、発光材料や金属材料を含むものであったとしても、作業中の作業者に認識可能なものであるから、甲1発明における「前記本体2の外面2aに一体に形成され、前記本体2aの長手方向に延びる発光材料及び金属材料を含む1以上のマーキング層3」は、「前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点1で一致し、相違点1、2で相違する。
(一致点1)
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備えた樹脂管。
(相違点1)
本件発明1では、「前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であ」るのに対し、甲1発明では、「マーキング層3」と「本体2」との色差(ΔE)が特定されていない点。
(相違点2)
本件発明1では、「識別層」が、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」という「条件」を満たすのに対し、甲1発明では、「マーキング層3」について、そのような条件が特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
識別層の酸化誘導時間(OIT)を20分以上とすることは、甲第2号証に、国際標準規格ISO4427として記載されているように技術常識である。
また、サンシャインウェザーメーターによる暴露試験は、JIS K7350-1(プラスチック-実験室光源による暴露試験方法)、JIS K7350-2(キセノンアークランプ)、JIS K7350-3(紫外線蛍光ランプ)、JIS K7350-4(オープンフレームカーボンアークランプ)等で規格化されており、同様に、試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における酸化誘導時間(OIT)を測定する測定方法も、甲第6号証の付属書FやJIS K6774の付属書JC等で規格化された方法に過ぎない。
しかしながら、「識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上」とすることは、申立人が提出した各甲号証及び参考文献、当審が引用した引用文献1のいずれにも記載されていない。
当審が取消理由通知において引用した引用文献1には、「JIS K 6774に準拠して示差走査熱量計を用いて測定された酸化誘導時間が50分以上」の「リサイクル樹脂」を含有する「リサイクル樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物」を押出成形した際に「メヤニの発生や樹脂の架橋に起因するブツの発生を防ぐ」(引用文献1の段落【0011】)ものであって、成形された物品の耐候性を向上させるものではない。
よって、引用文献1記載事項を勘案しても、甲1発明の「マーキング層3」の「酸化誘導時間(OIT)」を「29.4分以上」とすることを当業者が想起し得たとする理由にならない。
そして、本件発明1は、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である」とすることで、本件特許明細書の段落【0056】~【0057】に示すように、識別層の耐候性に優れることになり、樹脂管のクリープ性能及び暴露試験後においても識別層の物性(色調)を良好に保てるという格別の効果を奏するものである。
してみると、本件発明1は、当業者であっても、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識、引用文献1記載事項及び甲第6号証記載事項に基いて容易に発明をすることができないものである。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、次の一致点2で一致し、相違点3~6で相違する。
(一致点2)
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備えた樹脂管。
(相違点3)
本件発明2では、「前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であ」るのに対し、甲1発明では、「マーキング層3」と「本体2」との色差(ΔE)が特定されていない点。
(相違点4)
本件発明2では、「前記識別層は、厚さが2.0mm以下」であるのに対して、甲1発明では、「マーキング層」の厚さは特定されていない点。
(相違点5)
本件発明2では、「前記本体の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下であり、前記識別層の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満である」のに対して、甲1発明では、そのような特定がない点。
(相違点6)
本件発明2では、「識別層」が、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」という「条件」を満たすのに対し、甲1発明では、「マーキング層3」について、そのような条件が特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点6について検討する。
相違点6は、上記アの相違点2と同じものであるから、本件発明1と同様に理由により、本件発明2についても、当業者であっても、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識、引用文献1記載事項及び甲第6号証記載事項に基いて容易に発明をすることができないものである。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、次の一致点3で一致し、相違点7~10で相違する。
(一致点3)
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層とを備えた樹脂管。
(相違点7)
本件発明3では、「前記識別層は、前記本体との色差(ΔE)が1以上であ」るのに対し、甲1発明では、「マーキング層3」と「本体2」との色差(ΔE)が特定されていない点。
(相違点8)
本件発明3では、「前記識別層は、厚さが2.0mm以下」であるのに対して、甲1発明では、「マーキング層」の厚さは特定されていない点。
(相違点9)
本件発明3では、「前記本体の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満であり、前記識別層の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下である」のに対して、甲1発明では、そのような特定がない点。
(相違点10)
本件発明3では、「識別層」が、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」という「条件」を満たすのに対し、甲1発明では、「マーキング層3」について、そのような条件が特定されていない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点10について検討する。
相違点10は、上記アの相違点2と同じものであるから、本件発明1と同様に理由により、本件発明3についても、当業者であっても、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識、引用文献1記載事項及び甲第6号証記載事項に基いて容易に発明をすることができないものである。
(2)甲2発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「管状の本体」、「水供給のためのポリエチレン管」は、それぞれ本件発明1における「筒状の本体」、「樹脂管」に相当する。
甲2発明における「前記本体の外面に一体に形成された識別用のストライプ」は、管軸方向に延びるものであるか不明であるが、「前記本体の外面に一体に形成された1以上の識別層」である限りにおいて、本件発明1の「前記本体の外面に一体に形成され、前記本体の管軸方向に延びる1以上の識別層」と一致する。
甲2発明における「前記識別用のストライプを含む試験片をISO 11357-6:2002で示される試験方法により試験した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が20分以上である。」という条件は、「前記識別層を含む試験片を試験した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が20分以上である」である限りにおいて、本件発明1の「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である。」という「<条件>」と一致する。
よって、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点4で一致し、次の相違点11~13で相違する。
(一致点4)
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成された1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、下記条件を満たす樹脂管。
<条件>
前記識別層を含む試験片を試験した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が20分以上である。
(相違点11)
「識別層」に関して、本件発明1では、「本体の管軸方向に延びる」のに対し、甲2発明では、本体の管軸方向に延びているか不明である点。
(相違点12)
本件発明1では、「識別層」の「前記本体との色差(ΔE)が1以上であ」るのに対し、甲2発明では、「識別用のストライプ」が「黒地の前記本体に対し青色であ」るものの、本体との色差(ΔE)が1以上であるか不明である点。
(相違点13)
「条件」に関して、本件発明1では、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である」のに対し、甲2発明では、「サンシャインウェザーメーター」で「試験片を3.5GJ/m2照射」する試験を実施するものであるか不明であり、かつ酸化誘導時間(OIT)の設定条件も29.4分以上ではない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点13について検討する。
識別層の酸化誘導時間(OIT)を20分以上とすることは、甲第2号証に、国際標準規格ISO4427として記載されているように技術常識である。
また、サンシャインウェザーメーターによる暴露試験は、JIS K7350-1(プラスチック-実験室光源による暴露試験方法)、JIS K7350-2(キセノンアークランプ)、JIS K7350-3(紫外線蛍光ランプ)、JIS K7350-4(オープンフレームカーボンアークランプ)等で規格化されており、同様に、試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における酸化誘導時間(OIT)を測定する測定方法も、甲第6号証の付属書FやJIS K6774の付属書JC等で規格化された方法に過ぎない。
しかしながら、「識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上」とすることは、申立人が提出した各甲号証及び参考文献、当審が引用した引用文献1のいずれにも記載されていない。
当審が取消理由通知において引用した引用文献1には、「JIS K 6774に準拠して示差走査熱量計を用いて測定された酸化誘導時間が50分以上」の「リサイクル樹脂」を含有する「リサイクル樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物」を押出成形した際に「メヤニの発生や樹脂の架橋に起因するブツの発生を防ぐ」(引用文献1の段落【0011】)ものであって、成形された物品の耐候性を向上させるものではない。
よって、引用文献1記載事項を勘案しても、甲2発明の「識別用のストライプを含む試験片」の「酸化誘導時間(OIT)」を「29.4分以上」とすることを当業者が想起し得たとする理由にならない。
そして、本件発明1は、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である」とすることで、本件特許明細書の段落【0056】~【0057】に示すように、識別層の耐候性に優れることになり、樹脂管のクリープ性能及び暴露試験後においても識別層の物性(色調)を良好に保てるという格別の効果を奏するものである。
してみると、本件発明1は、当業者であっても、甲2発明、甲第1号証に記載された周知慣用技術、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識、引用文献1記載事項及び甲第6号証記載事項に基いて容易に発明をすることができないものである。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明とを対比すると、次の一致点5で一致し、相違点14~18で相違する。
(一致点5)
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成された1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、下記条件を満たす樹脂管。
<条件>
前記識別層を含む試験片を試験した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が20分以上である。
(相違点14)
「識別層」に関して、本件発明2では、「本体の管軸方向に延びる」のに対し、甲2発明では、本体の管軸方向に延びているか不明である点。
(相違点15)
本件発明2では、「識別層」の「前記本体との色差(ΔE)が1以上であ」るのに対し、甲2発明では、「識別用のストライプ」が「黒地の前記本体に対し青色であ」るものの、本体との色差(ΔE)が1以上であるか不明である点。
(相違点16)
本件発明2では、「前記識別層は、厚さが2.0mm以下で」あるのに対し、甲2発明では「識別用のストライプ」の厚さは特定されていない点。
(相違点17)
本件発明2では、「前記本体の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下であり、前記識別層の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満である」に対し、甲2発明では、そのような特定がない点。
(相違点18)
「条件」に関して、本件発明2では、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である」のに対し、甲2発明では、「サンシャインウェザーメーター」で「試験片を3.5GJ/m2照射」する試験を実施するものであるか不明であり、かつ酸化誘導時間(OIT)の設定条件も29.4分以上ではない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点18について検討する。
相違点18は、上記アの相違点13と同じものであるから、本件発明1と同様に理由により、本件発明2についても、当業者であっても、甲1発明、甲第1号証に記載された周知慣用技術、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識、引用文献1記載事項及び甲第6号証記載事項に基いて容易に発明をすることができないものである。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲2発明とを対比すると、次の一致点6で一致し、相違点19~23で相違する。
(一致点5)
筒状の本体と、前記本体の外面に一体に形成された1以上の識別層とを備え、
前記識別層は、下記条件を満たす樹脂管。
<条件>
前記識別層を含む試験片を試験した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が20分以上である。
(相違点19)
「識別層」に関して、本件発明3では、「本体の管軸方向に延びる」のに対し、甲2発明では、本体の管軸方向に延びているか不明である点。
(相違点20)
本件発明3では、「識別層」の「前記本体との色差(ΔE)が1以上であ」るのに対し、甲2発明では、「識別用のストライプ」が「黒地の前記本体に対し青色であ」るものの、本体との色差(ΔE)が1以上であるか不明である点。
(相違点21)
本件発明3では、「前記識別層は、厚さが2.0mm以下で」あるのに対し、甲2発明では「識別用のストライプ」の厚さは特定されていない点。
(相違点22)
本件発明3では、「前記本体の光の吸収波長が、400nm以上600nm未満であり、前記識別層の光の吸収波長が、600nm以上800nm以下である」に対し、甲2発明では、そのような特定がない点。
(相違点23)
「条件」に関して、本件発明3では、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である」のに対し、甲2発明では、「サンシャインウェザーメーター」で「試験片を3.5GJ/m2照射」する試験を実施するものであるか不明であり、かつ酸化誘導時間(OIT)の設定条件も29.4分以上ではない点。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点23について検討する。
相違点23は、上記アの相違点13と同じものであるから、本件発明1と同様に理由により、本件発明3についても、当業者であっても、甲1発明、甲第1号証に記載された周知慣用技術、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識、引用文献1記載事項及び甲第6号証記載事項に基いて容易に発明をすることができないものである。
(3)申立人の主張について
申立人は、令和5年6月7日に提出した意見書の3.2.1(2)(2-1)において、以下のように主張する。
「・・・引用文献1に開示されるポリオレフィン系樹脂製の管状物品が酸化誘導時間50分以上のリサイクル樹脂を含有することには何ら変わりはない。してみれば、管状物品に酸化誘導時間50分以上の樹脂を含有させるという従来技術(引用文献1)が存在している以上、甲1発明又は甲2発明に基づく当業者が引用文献1に開示される管状物品における酸化誘導時間50分以上の樹脂の含有を参照して、それよりも格段に低い下限値を含む識別層のOITが29.4以上という耐候性を実現することは極めて容易に成し得たことといかいいようがなく、特許権者の主張には理由がないといえる。」
しかしながら、上記(1)ア(イ)及び(2)ア(イ)で論じたとおり、引用文献1には、「JIS K 6774に準拠して示差走査熱量計を用いて測定された酸化誘導時間が50分以上」の「リサイクル樹脂」を含有する「リサイクル樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物」を押出成形した際に「メヤニの発生や樹脂の架橋に起因するブツの発生を防ぐ」(引用文献1の段落【0011】)ものであって、成形された物品の耐候性を向上させるものではない。
そして、引用文献1に記載された「JIS K 6774に準拠して示差走査熱量計を用いて測定された酸化誘導時間が50分以上」の「リサイクル樹脂」を含有する「リサイクル樹脂含有ポリオレフィン系樹脂組成物」を押出成形により「管」を製造したとしても、当該「管」の耐候性が、「サンシャインウェザーメーターで前記識別層を含む試験片を3.5GJ/m2照射した後の示差走査熱量測定(DSC)における、前記識別層の酸化誘導時間(OIT)が29.4分以上である」ということができない以上、申立人の主張を採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700479