特許異議申立
2022-700452
ベッドサイドモニター及び表示方法
- 審判番号
- 2022-700452
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-135023外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7014537
- 請求日
- 2022年05月24日
- 審決日
- 2023年06月27日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】フクダ電子株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 【異議申立人】山田 芳男
- 分類
- P1651.121-YAA(A61B) / P1651.113-YAA(A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7014537号発明「ベッドサイドモニター及び表示方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7014537号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。
特許第7014537号の請求項2ないし6に係る特許を維持する。
特許第7014537号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7014537号の請求項1~6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成29年7月10日に出願され、令和4年1月24日にその特許権の設定登録がされ、同年2月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~6に係る特許に対して、同年5月24日に特許異議申立人 山田芳男(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審より同年10月3日付けで取消理由を通知したところ、特許権者より同年12月2日に意見書の提出がされ、その後、当審より令和5年3月6日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者よりその指定期間内である同年5月9日に意見書の提出及び訂正の請求がなされたものである。
なお、上記令和5年5月9日にされた訂正において、上記取消理由(決定の予告)において取消理由が通知された請求項5について特許請求の範囲を限縮する訂正がなされたが、上記取消理由(決定の予告)において取消理由がないと判断した請求項2に記載の発明特定事項と同様の事項を追加するものであるから、特許法120条の5第5項ただし書に規定する特別の事情に当たり、申立人に意見書を提出する機会を与えていない。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和5年5月9日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、この請求による訂正を「本件訂正」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲を次のように訂正するものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)一群の請求項1~4に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングする、請求項1に記載のベッドサイドモニター。」と記載されているのを、「ベッドサイドモニターと、前記ベッドサイドモニターに接続可能な可搬型のトランスポートモニターと、を有する生体情報モニタリングシステムに用いられる前記ベッドサイドモニターであって、前記トランスポートモニターが接続される接続部と、前記トランスポートモニターが前記接続部に接続された状態で取得された第1の生体情報と、前記トランスポートモニターが前記接続部に接続されていない状態で前記トランスポートモニターによって取得された第2の生体情報と、を表示する表示部と、を備え、前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを、同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示し、前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングする、ベッドサイドモニター。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3から4も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は請求項2に記載」と記載されているのを「請求項2に記載」と訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載」と記載されているのを「請求項2又は請求項3に記載」と訂正する。
オ 一群の請求項について
訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1の記載を引用するものであって、請求項2~4は、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1~4に係る訂正は、一群の請求項に対して請求するものである。
(2)一群の請求項5、6に係る訂正
ア 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示する表示ステップと、を含む表示方法。」と記載されているのを、「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示する表示ステップと、を含み、前記表示ステップは、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングするステップを含む、表示方法。」と訂正する(請求項5の記載を直接的に引用する請求項6も同様に訂正する)。
イ 一群の請求項について
訂正事項5に係る訂正前の請求項5、6について、請求項6は、請求項5の記載を引用するものであって、請求項6は、訂正事項5によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、一群の請求項に対してするものである。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項1~4に係る訂正
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2が請求項1の記載を引用して記載していたのを、請求項1の記載を引用せずに記載することで請求項間の引用関係を解消するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。
訂正事項2は、請求項1の記載を引用して記載していた請求項2を、請求項1の記載を引用せずに記載するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は請求項2に記載」と記載されていたのを、訂正事項1で請求項1を削除したこととの整合を図るために、請求項1の記載は引用せずに「請求項2に記載」とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び同ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項3は、請求項1を削除したこととの整合を図るためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載」と記載されていたのを、訂正事項1で請求項1を削除したこととの整合を図るために、請求項1の記載は引用せずに「請求項2又は請求項3に記載」とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び同ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項4は、請求項1を削除したこととの整合を図るためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないし、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(2)一群の請求項5、6に係る訂正
ア 訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5に記載の「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示する表示ステップ」について、「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングするステップを含む」ものであることをさらに特定するものであるから、訂正事項5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正前の請求項5の発明特定事項のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
訂正事項5により、請求項5に追加された事項は、訂正前の請求項2に記載されていた事項であり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
3 まとめ
以上検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5、6〕について本件訂正のとおり訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
ベッドサイドモニターと、前記ベッドサイドモニターに接続可能な可搬型のトランスポートモニターと、を有する生体情報モニタリングシステムに用いられる前記ベッドサイドモニターであって、
前記トランスポートモニターが接続される接続部と、
前記トランスポートモニターが前記接続部に接続された状態で取得された第1の生体情報と、前記トランスポートモニターが前記接続部に接続されていない状態で前記トランスポートモニターによって取得された第2の生体情報と、を表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを、同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示し、
前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングする、
ベッドサイドモニター。
【請求項3】
前記ベッドサイドモニターに設定された患者ID、及び、前記トランスポートモニターに設定された患者IDを識別するID識別部を、さらに備え、
前記表示部は、前記ID識別部によって同一の患者IDであると識別された前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを同一時間軸上に繋げる、
請求項2に記載のベッドサイドモニター。
【請求項4】
前記第1及び第2の生体情報は、心電波形である、
請求項2又は請求項3に記載のベッドサイドモニター。
【請求項5】
ベッドサイドモニターと、前記ベッドサイドモニターに接続可能な可搬型のトランスポートモニターと、を有する生体情報モニタリングシステムに用いられる表示方法であって、
前記ベッドサイドモニターに前記トランスポートモニターが接続された状態で、前記ベッドサイドモニター及び前記トランスポートモニターによって第1の生体情報を取得する第1の生体情報取得ステップと、
前記トランスポートモニターが接続されていない状態で、前記トランスポートモニターによって第2の生体情報を取得する第2の生体情報取得ステップと、
前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示する表示ステップと、
を含み、
前記表示ステップは、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングするステップを含む、
表示方法。
【請求項6】
前記ベッドサイドモニターに設定された患者ID、及び、前記トランスポートモニターに設定された患者IDを識別するステップを、さらに含み、
前記表示ステップでは、同一の患者IDの前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを同一時間軸上に繋げる、
請求項5に記載の表示方法。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和5年3月6日付けで請求項1、3~6について特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)訂正前の請求項1、3~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1、3~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:特開2016-77710号公報
甲第2号証:特許第6231076号公報
甲第3号証:特許第5677400号公報
甲第4号証:特開2004-194996号公報
甲第5号証:特開平11-216119号公報
甲第6号証:特開2000-23925号公報
(以下、「甲1」等という。)
2 各甲号証の記載
(1)甲1
ア「【0015】
<実施の形態1>
・・・図2は、生体情報測定システム1を構成する生体情報測定装置10の内部構成を示すブロック図である。
【0016】
はじめに図1を参照する。図示するように生体情報測定システム1は、生体情報測定装置10と生体情報測定装置20を含む。・・・
【0017】
生体情報測定装置20は、例えば除細動器であり、被験者(患者)の生体データを測定する装置である。ここで生体データとは、例えば心電図(ECG)、心拍数、血圧、体温、動脈血酸素飽和度、心拍出量、脈拍数等のデータである。なお生体情報測定装置20は、これらの生体データ(心電図等)の一部または全部を測定するものであれば良く、トランスポートモニタやベッドサイドモニタ等であってもよい。
・・・
【0019】
生体情報測定装置10は、生体情報測定装置20から被験者の生体データを受信して表示するとともに、被験者の生体データの測定及び表示を行う。
生体情報測定装置10は、例えばベッドサイドモニタであり、患者の各種生体データ(心電図(ECG)、心拍数、血圧、体温、動脈血酸素飽和度等)を測定する。本実施の形態では、被験者が生体情報測定装置20から生体情報測定装置10に付け替えられることを想定している。例えば救急車内では除細動器(生体情報測定装置20)により被験者の生体データを測定し、病院到着後に被験者を除細動器(生体情報測定装置20)から生体情報モニタ(生体情報測定装置10)に付け替えることを想定している。
【0020】
・・・生体情報測定装置10は、測定部110、送信部120、送信用アンテナ121、受信部130、受信用アンテナ131、記憶部140、制御部150、表示部160、スピーカ170、及び操作部180を有する。
【0021】
測定部110は、被験者に装着された電極やトランスデューサ、プローブ等(図示せず)を介して各種の生体データを測定する。ここで生体データ
とは、上述のように心電図(ECG)、心拍数、血圧、体温、動脈血酸素飽和度等に関するものである。・・・
・・・
【0026】
・・・表示部160は、表示画面上に生体データの波形や数値データを表示する。表示部160に表示される表示画面は、制御部150によって制御
(生成)される。・・・
・・・
【0029】
続いて図3を参照して、生体情報測定システム1の動作の流れを説明する。図3では生体情報測定装置10が生体情報モニタ(ベッドサイドモニタ)であり、生体情報測定装置20が除細動器であるものとする。はじめに除細動器(生体情報測定装置20)が被験者と電極を介して接続する。除細動器(生体情報測定装置20)は、被験者の生体データを測定し、測定した生体データを記憶する(S1)。その後に除細動器(生体情報測定装置20)は、ユーザの操作(例えばボタン等の操作)に応じて測定処理を停止する(S2)。なお除細動器(生体情報測定装置20)は、電極外れ等を自動的に検出して測定処理を停止してもよい(S2)。
【0030】
除細動器(生体情報測定装置20)は、測定した生体データを生体情報モニタ(生体情報測定装置10)に転送する(S3)。生体情報モニタ(生体情報測定装置10)は、除細動器(生体情報測定装置20)からの生体データを受信する(S3)。なお生体データの送受信の前に認証処理を行ってもよい。またユーザは、被験者から除細動器(生体情報測定装置20)の電極等を取り外し、被験者と生体情報モニタ(生体情報測定装置10)を接続した状態にする。その後に生体情報モニタ(生体情報測定装置10)は、被験者の生体データの測定を開始する(S4)。これに加えて生体情報モニタ(生体情報測定装置10)は、生体データの表示処理を行う(S4)。
【0031】
この表示の具体例を図4を参照して説明する。上述のように生体情報モニタ(生体情報測定装置10)には、除細動器(生体情報測定装置20)から生体データが供給される。生体情報測定装置10内の制御部150は、生体データが受信部130から受信したことが分かるように記憶部140に格納する(例えばフラグを設定して生体データを格納する)。また制御部150は、測定部110が測定した生体データを記憶部140に格納する。
【0032】
制御部150は、記憶部140から生体データを適宜読み出し、表示部160に表示する表示画面を生成する。この際に制御部150は、受信部130が受信した生体データであるか否かに基づいて、表示画面における生体データの表示効果を変化させて表示する。例えば図4に示すように、制御部150は、除細動器(生体情報測定装置20)から受信した生体データを示す波形40と、測定部110が測定した生体データを示す波形41の背景色を異なるものにした表示画面を生成する。また制御部150は、各波形(40、41)に対応する生体データの測定値(数値)の背景色を変化させて表示してもよい。
【0033】
ユーザは、この表示画面を見ることにより、生体データの測定値だけではなく、どのような測定条件で生体データを取得したかを容易に認識することができる。・・・」
イ「【0038】
(変形例)
実施の形態1の変形例について図5を参照して説明する。この生体情報測定装置10は、測定部110を含むデータ取得ユニット30と着脱可能に構成されている。データ取得ユニット30は、図示しないCPUやメモリ等を有し、図示しない電極やセンサ等を介して被験者の生体データを取得する。またデータ取得ユニット30は、生体情報測定装置10への装着時には制御部150に対して取得した生体データを供給する。
【0039】
・・・例えば制御部150は、以下のように表示効果を定めてもよい。
・データ取得ユニット30が取り外された状態で取得した生体データ:(背景色=グレー)
・データ取得ユニット30が接続した状態で取得した生体データ:(背景色=黒)
・受信部130を介して取得した生体データ:(背景色=グレー)
・・・
【0042】
・・・勿論、背景色の設定ではなく、他の表示効果(波形の線種を変える、波形の太さを変える、各波形を異なる色の枠線で囲む、等。)を用いてもよい。」
ウ 図1
「
[図:0001401625000001.jpg]
」
エ 図2
「
[図:0001401625000002.jpg]
」
オ 図4
「
[図:0001401625000003.jpg]
」
カ 図5
「
[図:0001401625000004.jpg]
」
キ 上記オの図4からは、生体情報測定装置20から受信した生体データを示す波形40と、測定部110が測定した生体データを示す波形41とを経過時間を横軸として高さを揃えて表示していることが看取できる。
以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
生体情報測定装置10は、ベッドサイドモニタであり、被験者(患者)の各種生体データ(心電図(ECG)、心拍数、血圧、体温、動脈血酸素飽和度等)を測定し、
生体情報測定装置10は、測定部110、制御部150、表示部160を有し、
生体情報測定装置10は、測定部110を含むデータ取得ユニット30と着脱可能に構成されており、
データ取得ユニット30は、被験者の生体データを取得し、生体情報測定装置10への装着時には制御部150に対して取得した生体データを供給し、
生体情報測定装置20は、被験者の生体データを測定、記憶し、生体情報測定装置10に転送し、被験者から生体情報測定装置20の電極等を取り外し、被験者と生体情報測定装置10を接続した状態にした後に生体情報測定装置10は、被験者の生体データの測定を開始し、
制御部150は、生体情報測定装置20から受信した生体データを示す波形40と、測定部110が測定した生体データを示す波形41を生成し、生体情報測定装置20から受信した生体データを示す波形40と、測定部110が測定した生体データを示す波形41とを経過時間を横軸として高さを揃えて表示し、
制御部150は、データ取得ユニット30が取り外された状態で取得した生体データをグレーの背景色で、データ取得ユニット30が接続した状態で取得した生体データを黒の背景色で表示する、
生体情報測定装置10。」
(2)甲2
ア「【0103】
図9に、モバイル機器のディスプレイ上にECGを図表で表すECG表示の例900を示す。いくつかの例では、ECG画面は、アイコンメニューの中からのECGアイコンのユーザ選択に応答して表示される。本明細書において論じるECGの例は、12誘導ECGに対応するものである。・・・
【0104】
ECG画面900は、表示領域902および表示領域904を含む。図示の例では、表示領域902は、ECGトレースウィンドウ910a~910lのグリッドを提供する(例えば、4列×3行で、第1列は誘導I、II、およびIIIを含み、第2列は誘導VR、VL、およびVFを含み、最後2列は誘導V1~V6を含む)。各トレースウィンドウ910a~910lは、ある期間にわたるそれぞれの誘導に対応するそれぞれの電圧トレース905a~905lを含む。いくつかの例では、トレースウィンドウ910a~910lは、それぞれの電圧トレース905a~905lのセグメントにズームインし、各セグメントからズームアウトし、各セグメントに沿ってスクロールするのに使用されうる。
【0105】
表示領域904は拡張トレースウィンドウを含み、各拡張トレースウィンドウは、表示領域902で提供されたトレースウィンドウに対応する。図9の例では、拡張トレースウィンドウ912a、912bが表示されており、これらはそれぞれ、表示領域902のトレースウィンドウ910a、910bに対応する。・・・
【0106】
表示領域904は、それぞれの電圧トレース913a~913lを有する拡張トレースウィンドウ912a~912lを表示することができ、各電圧トレース913a~913lは電圧トレース905a~905lに対応する。電圧トレース913a~913lは、各々、特定の期間にわたって収集されたECGデータを図表で表す、その特定の期間にわたる全トレースとして提供される。・・・したがって、トレース表示ウィンドウ910a~910lは、それぞれ、電圧トレース905a~905lのセグメントを表示し、各セグメントは、拡張トレースウィンドウ912a~912lに表示された電圧トレース913a~913lのそれぞれのセグメントに対応する。・・・各トレースウィンドウ910a~910lは同じ期間にわたるそれぞれの電圧トレース905a~905lを表示する。
【0107】
引き続き図9を参照して、各トレースウィンドウ912a~912lには、ベベルスクラバーバー920を設けることができる。ベベルスクラバーバー920は、幅wを有する視野領域922を提供する。視野領域922は、トレース表示ウィンドウ910a~910lに表示された電圧トレース905a~905lの部分に対応する電圧トレース913a~913lの部分を表示する。・・・ベベルスクラバーバー920は、ユーザが、電圧トレース913a~913lのどの部分が電圧トレース905a~905lに対応するか迅速に見分けることを可能にするグラフィカルインジケータを提供する。」
イ 図9
「
[図:0001401625000005.jpg]
」
(3)甲3
ア「【0048】
図6(a)は、制御部10が、心電図のST部分に異常が生じたことを検出し、心電図波形に関連する生体情報として血圧情報(循環)を選択し、これらの生体情報を異常表示画面22に表示させた状態を示している。
【0049】
表示部20は、表示制御手段13からの表示制御信号に基づいて、異常表示画面22に、警報図形51と、異常内容を示すメッセージ91と、異常発生日時53と、異常が検出された波形(ここでは心電図波形)92と、心電図波形92に関連する観血血圧波形93と、異常が検出された心電図波形92の一部を切り出した波形94と、異常が検出された時点の心拍数95および血圧値96を表示している。」
イ 図6(a)
「
[図:0001401625000006.jpg]
」
(4)甲4
ア 図4
「
[図:0001401625000007.jpg]
」
(5)甲5
ア「【0041】図3を参照して、第2表示画面は第1表示画面の心拍波形表示エリア12に表示されているデータを一覧表示したものである。
【0042】即ち、図2の心拍波形表示エリア12には5種類(D1~D5,T1~T5)のデータが表示されているがこれは全体の一部であり、その全部(10種類、D10~D10,T10~T10)を表示するものである。この表示の切替えは表示切替えボタン19をマウスでクリックすることにより行う。
【0043】即ち、1回クリックすると部分表示、もう1回クリックすると全体表示となり、1回クリックするたびに表示が切替わるのである。」
イ 図3
「
[図:0001401625000008.jpg]
」
(6)甲6
ア「【0029】患者の識別には、患者ID(identification data)等の患者毎に設けられた番号を用いる。患者ID番号は、操作部37からの入力により基本モニタ装置31に記憶される。
【0030】集中モニタリング装置12へのデータ転送は、生体情報と音声情報で異なり、生体情報は一量をメモリ34に蓄えた後に圧縮して一括転送し、音声情報は逐次転送する。また、患者の生体情報を入力する場合、NIC(networkinterface card)を用いて、情報転送経路を無線/院内LAN/公衆回線等に切り替えることにより、1台のモニタ装置で生体情報のモニタリングを追従的に行うことができる。
【0031】集中モニタリング装置12に転送された生体情報は、情報記憶部27において患者毎に保存され、保存されたデータは、修正及び整理が行われてデータベース化される。
【0032】図6は、集中モニタリング装置に転送された生体情報に基づく出力データ例を示す説明図である。図6に示すように、集中モニタリング装置12から出力された記録表には、患者の名前と共に、モニタリング対象になった原因や患者の履歴、心電波形や呼吸波形、及びHR(heart rate:心拍数)やRR(respiratory rate:呼吸商)等の各種情報が出力データとして記録されている。
【0033】院内モニタ13、車載用モニタ14及び屋内用モニタ15等のモニタ装置から集中モニタリング装置12に転送された患者の生体情報は、集中モニタリング装置12により様々な解析等の処理が行われ、その処理結果が出力データとしてプリンタ30により記録表に印刷され出力される。
【0034】このように、本発明に係るモニタシステム10によれば、病院11内の患者は勿論、公衆回線WAN18を使用することにより救急車で搬送中の患者や自宅にいる患者についても、生体情報の一元的な集中モニタリングを可能とし、且つ、病院11内での患者の搬送経路24に無線LANを用いることにより、直接実時間で途切れなく患者の生体情報をモニタリングすることができる。また、患者の生体情報の入力を、NICを用いて1台のモニタ装置により追従的に行うことができる。」
イ 図1
「
[図:0001401625000009.jpg]
」
ウ 図6
「
[図:0001401625000010.jpg]
」
3 当審の判断
(1)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「生体情報測定装置10」は「ベッドサイドモニタであ」るから、本件訂正発明2における「ベッドサイドモニター」に相当する。 甲1発明における「生体情報測定装置10」と「測定部110を含むデータ取得ユニット30」とは「着脱可能に構成されて」いるから、両者は「生体情報モニタリングシステム」を構成する。
そうすると、甲1発明と本件訂正発明2における「ベッドサイドモニターと、前記ベッドサイドモニターに接続可能な可搬型のトランスポートモニターと、を有する生体情報モニタリングシステムに用いられる前記ベッドサイドモニターであって、」とは、「ベッドサイドモニターと、前記ベッドサイドモニターに接続可能な生体情報測定装置と、を有する生体情報モニタリングシステムに用いられる前記ベッドサイドモニターであって、」の点で共通する。
甲1発明における「生体情報測定装置10」は、「測定部110を含むデータ取得ユニット30」と「着脱可能に構成されて」いる。
そうすると、甲1発明と本件訂正発明2における「前記トランスポートモニターが接続される接続部」とは、「前記生体情報測定装置が接続される接続部」である点で共通する。
甲1発明における「データ取得ユニット30が接続した状態で取得した生体データ」は、本件訂正発明2における「前記トランスポートモニターが前記接続部に接続された状態で取得された第1の生体情報」とは、「前記生体情報測定装置が前記接続部に接続された状態で取得された第1の生体情報」である点で共通する。
甲1発明における「データ取得ユニット30が取り外された状態で取得した生体データ」は、本件訂正発明2における「前記トランスポートモニターが前記接続部に接続されていない状態で前記トランスポートモニターによって取得された第2の生体情報」とは、「前記生体情報測定装置が前記接続部に接続されていない状態で前記生体情報測定装置によって取得された第2の生体情報」である点で共通する。
甲1発明が本件訂正発明2における「表示部」に相当する構成を備えていることは明らかであるところ、甲1発明は、「生体情報測定装置20から受信した生体データを示す波形40(「第2の生体情報」に相当)と、測定部110が測定した生体データを示す波形41(「第1の生体情報」に相当)とを経過時間を横軸として高さを揃えて表示」するものであるから、本件訂正発明2における「前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを、同一時間軸上に繋げて表示する」とは、「前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを、経過時間を横軸として高さを揃えて表示する」点で共通する。
甲1発明が本件訂正発明2における「表示部」に相当する構成を備えていることは明らかであるところ、甲1発明は、「データ取得ユニット30が取り外された状態で取得した生体データ(「第2の生体情報」に相当)をグレーの背景色で、データ取得ユニット30が接続した状態で取得した生体データ(「第1の生体情報」に相当)を黒の背景色で表示する」ものであるから、本件訂正発明2における「前記表示部は、」「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを」「示す目印を表示する、」点で共通する。
以上によれば、本件訂正発明2と甲1発明とは、以下の点で一致するとともに、以下の点で一応相違する。
(一致点)
ベッドサイドモニターと、前記ベッドサイドモニターに接続可能な生体情報測定装置と、を有する生体情報モニタリングシステムに用いられる前記ベッドサイドモニターであって、
前記生体情報測定装置が接続される接続部と、
前記生体情報測定装置が前記接続部に接続された状態で取得された第1の生体情報と、前記生体情報測定装置が前記接続部に接続されていない状態で前記生体情報測定装置によって取得された第2の生体情報と、を表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを、経過時間を横軸として高さを揃えて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを示す目印を表示する、
ベッドサイドモニター。
【相違点1】
「生体情報測定装置」が、本件訂正発明2では「可搬型のトランスポートモニター」であるのに対し、甲1発明は「測定部110を含むデータ取得ユニット30」である点。
【相違点2】
「ベッドサイドモニターにおける表示部」が、本件訂正発明2では「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを、同一時間軸上に繋げて表示するとともに、前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置を示す目印を表示」するのに対し、甲1発明はかかる特定を有しない点。
【相違点3】
「ベッドサイドモニターにおける表示部」が、本件訂正発明2では「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングする」のに対し、甲1発明はかかる特定を有しない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
相違点3に係る「マスキング」とは、一般に「覆い隠す」ことを意味するところ(乙1)、本願明細書の【0046】にも「単に図6Aの心電波形と図6Bの心電波形を繋げるのではなく、繋ぎ目にマスク区間401、402を設けて図6Aの心電波形と図6Bの心電波形を繋げる。」と記載されるように、時間的に連続している図6Aの心電波形と図6Bの心電波形を繋げるのではなく、繋ぎ目を401、402の区間により「マスキング」することが示されている。
この点、甲1発明は、「生体情報測定装置20から受信した生体データを示す波形40(「第2の生体情報」に相当)と、測定部110が測定した生体データを示す波形41(「第1の生体情報」に相当)とを経過時間を横軸として高さを揃えて表示」するものであるとしても、波形40や波形41を覆い隠すことの動機付けは見当たらない。
また、申立人が、特許異議申立書に添付して提出した甲2~甲5には、波形と波形との間に隙間が認められるが、波形が覆い隠された結果、隙間があるものとは認められず、「前記第1の生体情報と前記第2の生体情報とを繋げた位置近傍の、前記第1及び又は前記第2の生体情報をマスキングする」ことについて記載ないし示唆するものとは認められない。また、申立人が、特許異議申立書に添付して提出した甲6は、波形と波形との間に隙間を有するものではない。
そして、本願明細書の【0047】に「マスク区間401、402を設けずに2つの心電波形を繋げると、繋ぎ目位置で機械時間の差に起因して波形が変動しているように表示されることとなってしまう。この波形変動は実際の心電波形の乱れではないが、医師は心電波形の乱れと勘違いして不整脈などの異常であると診断してしまうおそれがある。本実施の形態のようにマスク区間401、402を設けることにより、このような誤診断を未然に防ぐことができる。」と記載されるように、本件訂正発明2は、「マスキング」することによる誤診断の未然防止という効果が得られるものと認められる。
以上検討したところによれば、甲1発明において、相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは、甲1発明及び甲2~甲6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲2~甲6に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明3、4について
本件訂正発明3、4は、本件訂正発明2を引用するものであり、上記相違点3に係る構成を含んでいるから、本件訂正発明2で検討したのと同じ理由により、甲1発明及び甲2~甲6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5、6について
本件訂正発明5、6は、本件訂正発明2と発明のカテゴリが異なるのみで、実質的に上記相違点3に係る構成を含んでいるから、本件訂正発明2で検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1、4、5に係る発明について、甲1を根拠に特許法29条1項3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであると主張する。
しかし、本件訂正により、請求項1は削除され、請求項4、5は、訂正前に申立ての対象とされていない請求項2の記載を引用するものとなっており、本件訂正発明4、5は、上記「第4」の「3(2)(3)」で検討したとおり、甲1発明及び甲2~甲6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、特許法29条1項3号に該当するものではない。
したがって、当該特許異議申立理由には理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により請求項1が削除されたことにより、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700452