特許異議申立
2022-700444
照明器具
- 審判番号
- 2022-700444
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-146427
- 登録番号
- 6969592
- 請求日
- 2022年05月23日
- 審決日
- 2024年03月05日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【異議申立人】六條 直樹
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 審判官 八木 誠
- 分類
- P1651.113-YAA(F21V) / P1651.121-YAA(F21V) / P1651.536-YAA(F21V) / P1651.537-YAA(F21V)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6969592号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6969592号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6969592号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6969592号の請求項1~2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成27年1月21日に出願された特願2015-9715号(以下「原出願」ともいう。)の一部を令和1年8月8日に新たな特許出願としたものであって、令和3年11月1日に特許権の設定登録がされ、同年11月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人六條直樹(以下「異議申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 5月23日 特許異議の申立て
同年 8月30日付け 取消理由通知書
同年10月27日差出 特許権者より意見書、訂正請求書の提出
令和5年 1月12日付け 訂正拒絶理由通知書
同年 2月16日差出 特許権者より意見書、手続補正書の提出
同年 3月28日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月24日差出 特許権者より意見書、訂正請求書の提出
同年 7月 7日 異議申立人より意見書
第2 本件訂正について
令和5年5月24日差出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。
なお、令和4年10月27日差出の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、その内容は以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。以下、この項において同様。)。
(1)訂正事項1
請求項1の「板」を「板金」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
請求項1の
「前記無線通信ユニットは、
信号を受信するアンテナと、前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有していることを特徴とする照明器具」
を
「前記無線通信ユニットは、樹脂製のケースに収納され、信号を受信するアンテナと、前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、
前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されていることを特徴とする照明器具」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0007】に
「本発明に係る照明器具は、光源と、調光指令値に応じて前記光源を点灯制御する点灯回路と、板と、前記板に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニットとを備え、前記無線通信ユニットは、信号を受信するアンテナと、前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有していることを特徴とする。」
と記載されているのを
「本発明に係る照明器具は、光源と、調光指令値に応じて前記光源を点灯制御する点灯回路と、板金と、前記板金に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニットとを備え、前記無線通信ユニットは、樹脂製のケースに収納され、信号を受信するアンテナと、前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されていることを特徴とする。」
に訂正する。
(4)一群の請求項
本件訂正の請求は、一群の請求項1、2について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、単に「板」と記載されていたのを「板金」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書の段落【0013】等に「板金6」との記載があることから、訂正事項1は、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1において、「無線通信ユニット」が何に収納されているのかの特定がなく、また、「無線通信モジュール基板」の具体的な配置の特定がなかったのを、「無線通信ユニット」は「樹脂製のケースに収納され」ることを特定し、また、「無線通信モジュール基板」は「前記板金から空間距離を確保して配置されている」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件明細書の段落【0013】に「無線通信モジュール基板8が無線通信ユニットケース5内に収納されている。無線通信ユニットケース5の材質は電波を遮閉しない樹脂が望ましい。」との記載があり、また、段落【0014】に「無線通信モジュール基板8は板金6から10mm以上の空間距離dを確保して配置される。」との記載があることから、訂正事項1は、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1、2による特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の段落【0007】の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおり、訂正事項1~3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項におけて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1、2」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
光源と、
調光指令値に応じて前記光源を点灯制御する点灯回路と、
板金と、
前記板金に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニットとを備え、
前記無線通信ユニットは、樹脂製のケースに収納され、信号を受信するアンテナと、前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、
前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されていることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記無線通信モジュール基板は、前記裏面側において前記点灯回路と離間していることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。」
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
当審が令和5年3月28日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由2(サポート要件):本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由4(新規性):本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由5(進歩性):本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2016-134347号公報(甲第7号証)
引用文献2:特開2006-108043号公報(甲第1号証)
引用文献3:米国特許出願公開第2013/0044444号明細書(甲第3号証)
引用文献4:国際公開第2014/073913号(甲第4号証)
引用文献5:特開平3-230411号公報(甲第5号証)
引用文献6:特開2014-241270号公報(甲第2号証)
上記( )内は、異議申立人が提出した各甲号証との対応関係である。
第5 当審の判断
1 取消理由2(サポート要件)について
本件訂正により、請求項1における「板」が「板金」ことが特定され、「無線通信ユニット」は「樹脂製のケースに収納され」ること、及び「無線通信モジュール基板」は「前記板金から空間距離を確保して配置されている」ことが特定されたため、本件発明1、2は、発明の詳細な説明に記載されたものとなり、取消理由2は解消された。
2 取消理由4(新規性)及び取消理由5(進歩性)について
2-1 引用文献1を主引例とする場合:取消理由4(新規性)及び取消理由5(進歩性)
本件訂正により、請求項1における「板」が「板金」ことが特定され、「無線通信ユニット」は「樹脂製のケースに収納され」ること、及び「無線通信モジュール基板」は「前記板金から空間距離を確保して配置されている」ことが特定されたため、本件特許の出願は、特願2015-9715号(原出願)に対する分割出願の要件を満たすものとなった。
そうすると、原出願の公開公報である引用文献1は、本件特許の出願前に公開されたものではないため、引用文献1を主引例とする取消理由4、5により、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
2-2 引用文献2を主引例とする場合:取消理由5(進歩性)
(1)引用文献2の記載事項及び引用発明2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)記載事項
a 「【0025】
図1および図2において、照明器具1は、照明器具本体2、ランプソケット3、放電ランプとしての蛍光ランプ4,4、高周波点灯装置5および制御装置6を有して構成されている。
【0026】
照明器具本体2は、図2に示すように、略長方形のシャーシ7およびカバー8を有して構成されている。そして、シャーシ8の両端部にそれぞれソケット取付板9,9が配設されている。そして、各ソケット取付板9の両端側にランプソケット3,3が配設されている。また、シャーシ7の内面に高周波点灯装置5および制御装置6が配設されている。」
【0027】
カバー8は、断面略V字形に形成されたV字形反射板10およびV字形反射板10の側面に取り付けられた側板11を有して形成されている。V字形反射板10および側板11は、例えば溶接により一体化されている。そして、V字形反射板10には、ランプソケット3が挿通される4個の略長方形の挿通孔12およびねじ13が挿通される4個の挿通孔14が形成されている。
【0028】
カバー9は、挿通孔12にランプソケット3を挿通した後、挿通孔14にねじ13を挿通し、ねじ13をシャーシ7に形成されたねじ孔15に螺合することにより、シャーシ7に装着される。これにより、照明器具本体2の内部に高周波点灯装置5および制御装置6が収容される。そして、照明器具本体2の長手方向のランプソケット3,3間に蛍光ランプ4が装着されている。」
b 「【0032】
高周波点灯装置5は、回路基板に実装された電子部品等がケースに収納されている。そして、このケースがシャーシ7の内面に取り付けられている。高周波点灯装置5は、図3に示すように、直流電圧発生回路16、インバータ回路17および制御回路18を有して構成されている。」
c 「【0040】
制御回路18は、制御装置6から出力された制御信号に応じて、駆動回路20に電界効果トランジスタFET1,FET2を交互にオンオフ動作させる制御信号を送出するように構成されている。すなわち、電界効果トランジスタFET1,FET2を所定の周波数でオンオフ動作させることにより、蛍光ランプ4A,4Bを全光点灯または調光点灯させ、電界効果トランジスタFET1,FET2のオンオフ動作を停止させることにより、蛍光ランプ4A,4Bを消灯させる。このように、高周波点灯装置5は、制御装置6から出力された制御信号に応じて蛍光ランプ4(4A,4B)を付勢するように構成されている。
【0041】
制御装置6は、図4に示すように、アンテナ25、受信部26および制御部27を有して構成されている。アンテナ25は、送信装置から送信された無線信号を受信するものである。アンテナ25により受信された無線信号は、受信部26で復調されて制御部27に送出される。無線信号は、蛍光ランプ4の点灯状態を制御する信号であり、制御部27は、当該信号に応じた調光信号(制御信号)を演算して高周波点灯装置5の制御回路18に出力する。制御部27は、伝送線28により高周波点灯装置5に接続されている。なお、調光信号は、蛍光ランプ4を点消灯させる点滅信号を包含する。
【0042】
高周波点灯装置5および制御装置6は、図5に示すように、照明器具本体2の長手方向に沿うようにしてシャーシ7の内面に配設されている。そして、照明器具本体2の一端側2aの両側に高周波点灯装置5の電位変動側出力が供給されるランプソケット3A1,3A2が配設され、他端側2bの両側に電位安定側出力が供給されるランプソケット3B1,3B2が配設されている。そして、高周波点灯装置5は、ランプソケット3A1,3B1側の近くに配置され、制御装置6は、ランプソケット3B1,3B2の近くに配置されている。高周波点灯装置5および制御装置6は、可能な限り離間されている。」
(イ)図面
a 図1
「
[図:0001411229000001.jpg]
」
b 図2
「
[図:0001411229000002.jpg]
」
c 図3
「
[図:0001411229000003.jpg]
」
d 図4
「
[図:0001411229000004.jpg]
」
e 図5
「
[図:0001411229000005.jpg]
」
イ 引用文献2の認定事項
(ア)段落【0025】~【0028】の記載及び図1~2より、高周波点灯装置5および制御装置6は、カバー8のV字形反射板10の上方に配置され、蛍光ランプ4は、カバー8のV字形反射板10の上方に配置されるものと認められる。
(イ)段落【0026】の「略長方形のシャーシ7」の記載及び図2より、シャーシ7は板状と認められる。
(ウ)段落【0040】~【0041】より、送信装置から送信された無線信号は、蛍光ランプ4の点灯状態を制御する信号であり、制御装置6は、無線信号に応じた調光信号を演算して高周波点灯装置5に出力するものであり、高周波点灯装置5は、制御装置6から出力された制御信号に応じて蛍光ランプ4を付勢するものであるから、無線信号と制御信号との双方に、蛍光ランプ4の点灯状態を制御するための「調光指令値」が含まれているものと認められる。
(エ)図2、図5より、制御装置6は、ケースに収納されるものと認められる。
ウ 引用発明2
上記ア及びイから、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「 照明器具1は、照明器具本体2、ランプソケット3、放電ランプとしての蛍光ランプ4、高周波点灯装置5および制御装置6を有し、
照明器具本体2は、略長方形のシャーシ7およびカバー8を有し、
シャーシ7は板状であり、
シャーシ7の内面に高周波点灯装置5および制御装置6が配設され、
カバー8は、シャーシ7に装着され、これにより、照明器具本体2の内部に高周波点灯装置5および制御装置6が収容され、
カバー8は、断面略V字形に形成されたV字形反射板10を有し、高周波点灯装置5および制御装置6はV字形反射板10の上方に配置され、蛍光ランプ4はV字形反射板10の上方に配置され、
高周波点灯装置5は、直流電圧発生回路16、インバータ回路17および制御回路18を有して構成され、
制御回路18は、制御装置6から出力された制御信号に応じて、蛍光ランプ4を全光点灯または調光点灯させ、
高周波点灯装置5は、制御装置6から出力された制御信号に応じて蛍光ランプ4を付勢するように構成され、
制御装置6は、アンテナ25、受信部26および制御部27を有して構成され、アンテナ25は、送信装置から送信された無線信号を受信し、アンテナ25により受信された無線信号は、受信部26で復調されて制御部27に送出され、無線信号は、蛍光ランプ4の点灯状態を制御する信号であり、制御部27は、当該信号に応じた調光信号を演算して高周波点灯装置5の制御回路18に出力し、
無線信号及び調光信号は、調光指令値を含むものであり、
制御装置6は、ケースに収納され、
高周波点灯装置5および制御装置6は、可能な限り離間されている、
照明器具1。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明2の「蛍光ランプ4」は本件発明1の「光源」に相当し、以下同様に、「アンテナ25」は「アンテナ」に、「照明器具1」は「照明器具」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明2の「送信装置」は、アンテナ25に対し、調光指令値を含む無線信号を送信するものであるから、本件発明1の「照明制御機器」に相当する。
(ウ)引用発明2の「高周波点灯装置5」は、「直流電圧発生回路16、インバータ回路17および制御回路18を有」するものであり、「制御回路18は、制御装置6から出力された制御信号に応じて、蛍光ランプ4を全光点灯または調光点灯させ」るものであるから、本件発明1の「点灯回路」に相当する。
(エ)引用発明2の「制御装置6」は「アンテナ25、受信部26および制御部27を有して構成され」るものであり、「アンテナ25は、送信装置から送信された無線信号を受信」するものであり、「高周波点灯装置5は、制御装置6から出力された制御信号に応じて蛍光ランプ4を付勢するように構成され」るものであるから、本件発明1の「無線通信ユニット」に相当する。
(オ)引用発明2の「シャーシ7」は「板状」であり、「シャーシ7の内面に高周波点灯装置5および制御装置6が配設され」るものであるから、本件発明1の「板金」とは、「板」であることで共通する。
そして、上記(ア)~(オ)の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
(カ)引用発明2の「照明器具1は、照明器具本体2、・・・放電ランプとしての蛍光ランプ4,4・・・を有し、照明器具本体2は、略長方形のシャーシ7・・・を有し、シャーシ7は板状であ」る構成と、本件発明1の「光源と、」「板金と、」「を備え」る構成とは、「光源と、」「板と、」「を備え」る構成で共通する。
(キ)引用発明2の「照明器具1は、・・・高周波点灯装置5・・・を有し、」「高周波点灯装置5は、直流電圧発生回路16、インバータ回路17および制御回路18を有して構成され、制御回路18は、制御装置6から出力された制御信号に応じて、蛍光ランプ4を全光点灯または調光点灯させ、高周波点灯装置5は、制御装置6から出力された制御信号に応じて蛍光ランプ4を付勢する」構成は、本件発明1の「前記光源を点灯制御する点灯回路」「を備え」る構成に相当する。
(ク)引用発明2の「照明器具1は、・・・制御装置6を有し、」「シャーシ7の内面に高周波点灯装置5および制御装置6が配設され、照明器具本体2は、略長方形のシャーシ7およびカバー8を有し、シャーシ7は板状であり、シャーシ7の内面に高周波点灯装置5および制御装置6が配設され、カバー8は、シャーシ7に装着され、これにより、照明器具本体2の内部に高周波点灯装置5および制御装置6が収容され、カバー8は、断面略V字形に形成されたV字形反射板10を有し、高周波点灯装置5および制御装置6はV字形反射板10の上方に配置され、蛍光ランプ4はV字形反射板10の上方に配置され、」「制御装置6は、アンテナ25、受信部26および制御部27を有して構成され、アンテナ25は、送信装置から送信された無線信号を受信し、アンテナ25により受信された無線信号は、受信部26で復調されて制御部27に送出され、無線信号は、蛍光ランプ4の点灯状態を制御する信号であり、制御部27は、当該信号に応じた調光信号を演算して高周波点灯装置5の制御回路18に出力し、無線信号及び調光信号は、調光指令値を含むものであり、制御装置6は、ケースに収納され」る構成について、蛍光ランプ4(光源)が位置するV字形反射板10の下方を蛍光ランプ4の表面側とみなしたとき、高周波点灯装置5および制御装置6が位置するV字形反射板10の上方は、蛍光ランプ4の裏面側とみなすことができる。
そうすると、引用発明2の上記構成と、本件発明1の「前記板金に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され」る「他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニット」「を備え、」「前記無線通信ユニットは、樹脂製のケースに収納され、信号を受信するアンテナ」「を有している」構成とは、「前記板に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され、」「他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニット」「を備え、」「前記無線通信ユニットは、ケースに収納され、信号を受信するアンテナ」「を有している」構成で共通する。
(ケ)上記(ア)~(ク)より、本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点2>
「 光源と、
前記光源を点灯制御する点灯回路と、
板と、
前記板に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニットとを備え、
前記無線通信ユニットは、ケースに収納され、信号を受信するアンテナを有している照明器具。」
<相違点2-1>
本件発明1は、無線通信ユニットが「樹脂製の」ケースに収納される構成であるのに対し、引用発明2は、ケースの材質の特定がない点。
<相違点2-2>
本件発明1は、板が「板金」であり、無線通信ユニットが「前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されている」構成であるのに対し、引用発明2は、シャーシ7(板)の材質の特定がなく、制御装置6(無線通信ユニット)がかかる無線通信モジュール基板を有しているか否かが明らかでなく、当該無線通信モジュール基板とシャーシ7との関係も明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。
取消理由通知(決定の予告)で指摘したように、照明器具の通信ユニットを、アンテナと、アンテナが設けられた板状の基板とからなるものとすることは、例えば、引用文献3、引用文献4、引用文献6に記載されているように周知の技術(以下「周知技術1」という。)といえるものである。
しかしながら、当該周知技術1は、板金や、無線通信モジュール基板が板金から空間距離を確保して配置されていることを示すものではない。
また、上記相違点2-2に係る本件発明1の事項は、取消理由通知(決定の予告)で引用した他の引用文献(上記2-1のとおり引用文献1を除く。)や異議申立人が提出した他の証拠のいずれにも記載も示唆もない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 異議申立人の意見書の主張について
異議申立人は令和5年7月7日付けの意見書とともに参考文献1(特開平10-27509号公報)、参考文献2(特開平2-210704号公報)、及び、参考文献3(特開2012-174454号公報)を提出して、本件発明1、2が当業者にとって容易想到である旨主張するので、以下、検討する。
まず、そもそも、本件発明1は、「無線通信モジュールは照明器具の板金でシールドされるとアンテナの特性が著しく悪くなり、通信が不能となる。そのため、照明器具に無線通信モジュールを取り付ける場合、照明器具の外部に無線通信ユニットのアンテナ部を露出させなければならなかった。」(段落【0005】)という課題を解決するために発明されたものであり、「板金」という前提構成を有しているからこそ、「前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されている」という構成により課題を解決しているものであるから、両構成は一体として判断すべきものであって個別に判断すべきものではない。
以上を前提に、次に、各参考文献について検討する。
参考文献1、2は、異議申立人が、本件発明1の「板金」という構成に関連して示すものであるが、それぞれ、シャーシ1が板金製であること、シャーシ27が板金製であることが開示されるにとどまり、上記相違点2-2に係る「前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されている」構成を開示ないし示唆するものではない。
また、参考文献3は、異議申立人が、本件発明1の「前記アンテナが設けられた板状の無線通信モジュール基板とを有し、前記無線通信モジュール基板は前記板金から空間距離を確保して配置されている」という関連して示すものであるが、その段落【0008】に「この安定器はHIDランプとケーブルを介して接続されることから、無線通信装置および安定器はHIDランプの近傍に設置される。HIDランプは例えば天井、側壁、建物の鉄骨等に設置されることから、安定器と無線通信装置は天井、側壁内のH鋼やL型アングル、あるいは、建物の鉄骨等に設置されることになる。このため、無線通信装置のアンテナが設置場所における金属の影響を受け、通信性能が著しく低下することがあった。また、無線通信装置は、設置されるH鋼及びL型アングル等の鉄骨によって設置位置や取付方法が異なるようになるので作業効率が悪く、取付工数が増加しコスト高になっていた。このように、従来の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置は、設置場所により通信性能が低下する恐れがあると共に取り付けのコストが高いという問題点があった。そこで、本発明は、設置場所により通信性能が低下することがないと共に取り付けのコストを安価にすることのできる遠隔点灯制御システム用の無線通信装置を提供することを目的としている。」と記載されるように、参考文献3に記載される技術は、放電灯とは別途設置される安定器に取り付けられる無線通信装置を前提とするものであって、引用発明2(ないし本件発明1)のような、光源と無線通信ユニットが一体的に構成される照明器具とは、技術分野も異なるものであり、引用発明2に適用する動機付けがあるとはいえない。仮に、参考文献3の技術を引用発明2に適用したとしても、引用発明2の(インバータ回路17(安定器)を含む)「高周波回路点灯装置5」のケース上に所定の間隔を持って「制御装置6」のケースが取り付けられることになるから(参考文献3の請求項1参照。)、上記相違点2-2に係る本件発明1の事項には至らない。
以上のことを総合すると、参考文献1、2に、それぞれ、シャーシ1が板金製であること、シャーシ27が板金製であることが開示され、参考文献3に金属製の底板22から基板23及びアンテナ基板25aが空間距離を有して配置されている技術が開示されているとしても、引用発明2において、シャーシ7(板)及び制御装置6(無線通信ユニット)を、上記相違点2-2に係る本件発明1の事項とすることは、当業者であっても容易に想到し得たものではない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-3 引用文献3~5を主引例とする場合:取消理由2
本件発明1、2と引用文献3~5に記載された各発明とは、少なくとも上記相違点2-2と同様の相違点を有しているところ、上記2-2、2-3に示したのと同様の理由により、本件発明1、2は、上記各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 甲第1号証(引用文献2)、甲第3号証(引用文献3)、甲第4号証(引用文献4)、甲第5号証(引用文献5)を主引例とする新規性について
本件発明1、2と上記各甲号証に記載された発明とは、少なくとも上記相違点2-2ないしそれと同様の相違点を有するものであるから、新規性を有する。
2 甲第2号証(引用文献6)を主引例とする新規性、進歩性について
本件発明1、2と甲第2号証に記載された発明とは、少なくとも上記相違点2-2と同様の相違点を有するものであるから、新規性を有するし、また、上記第5の2-2、2-3に示したのと同様の理由により、進歩性を有する。
3 実施可能要件について
異議申立人は、「板金6」が「照明器具1」のどの部分に該当するのか不明であるから、本件の発明の詳細な説明は実施可能要件を満たしていない旨主張する(特許異議申立書49~50ページ)。
しかしながら、発明の詳細な説明(特に段落【0013】)、及び各図面をみれば、「板金6」は「LEDモジュール2」の裏面側において「無線通信ユニット6」が取り付けられる部材であることは明らかである。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1、2を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
4 サポート要件について
異議申立人は、「板」はあらゆる板を含むものであり、様々な素材、形状、サイズ及び機能を有する板を含み得るものであるから、本件の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない旨主張する(特許異議申立書53~54ページ)。
しかしながら、上記第3で示したように、訂正後の請求項1では、「板」の性状が「板金」であることが特定され、その機能についても「前記板金に取り付けられ、前記光源の裏面側に配置され、前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御機器と前記調光指令値の無線通信を行う無線通信ユニットとを備え」ることが特定されている。
したがって、本件発明1、2は、発明の詳細な説明に記載したものである。
5 小括
以上のとおり、異議申立人が主張する上記1~4の特許異議申立理由はいずれも理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700444