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特許異議申立

2022-700423

鋼管用ねじ継手

審判番号
2022-700423
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-558178
登録番号
6968197
請求日
2022年05月16日
審決日
2022年12月23日
公報発行日
2023年03月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本製鉄株式会社
  • 【権利者代理人】アセンド弁理士法人
  • 【権利者】バローレック・オイル・アンド・ガス・フランス
  • 【権利者代理人】アセンド弁理士法人
  • 【異議申立人】吉田 敦子
審判長/審判官
  • 審判長 間中 耕治
  • 審判官 マキロイ 寛済
  • 審判官 平城 俊雅
分類
P1651.113-YAA(F16L) / P1651.121-YAA(F16L)
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特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6968197号発明「鋼管用ねじ継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6968197号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第6968197号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6968197号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月29日(優先権主張 平成29年12月5日)を国際出願日とする出願であって、令和3年10月28日にその特許権の設定登録がされ、同年11月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和4年5月16日に特許異議申立人吉田敦子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月22日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年9月29日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、同年11月16日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「 前記テーパ雄ねじ部が、管軸方向に沿って、前記ピンの先端側の第1領域、及び前記ピンの管本体側の第2領域に区分され、 前記テーパ雄ねじ部のテーパは、2段テーパであり、 前記第1領域のテーパ率が前記第2領域のテーパ率よりも大きく、前記第1領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部のテーパ率よりも大きく、前記第2領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部の前記テーパ率よりも大きい」 とあるのを、 「 前記テーパ雄ねじ部が、管軸方向に沿って、前記ピンの先端側の第1領域、及び前記ピンの管本体側の第2領域に区分され、 前記テーパ雄ねじ部のテーパは、2段テーパであり、 前記テーパ雌ねじ部のテーパは、1段テーパであり、 前記第1領域のテーパ率が前記第2領域のテーパ率よりも大きく、前記第1領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部のテーパ率よりも大きく、前記第2領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部の前記テーパ率よりも大きい」 に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に対して「前記テーパ雌ねじ部のテーパは、1段テーパであり、」との特定事項を付加し、請求項1に係る発明における「テーパ雌ねじ部」の構成を具体的に特定し、さらに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正前の請求項1における「前記テーパ雌ねじ部のテーパは、1段テーパであり、」との事項は、特許明細書等の段落【0021】に記載されている。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、「テーパ雌ねじ部」という発明特定事項を概念的により下位の「1段テーパ」という構成に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下「本件発明1ないし5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 管状のピンと管状のボックスとからなる鋼管用ねじ継手であって、 前記ピンはテーパ雄ねじ部を含み、前記ボックスは前記テーパ雄ねじ部と噛み合うテーパ雌ねじ部を含み、 前記テーパ雄ねじ部が、管軸方向に沿って、前記ピンの先端側の第1領域、及び前記ピンの管本体側の第2領域に区分され、 前記テーパ雄ねじ部のテーパは、2段テーパであり、 前記テーパ雌ねじ部のテーパは、1段テーパであり、 前記第1領域のテーパ率が前記第2領域のテーパ率よりも大きく、前記第1領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部のテーパ率よりも大きく、前記第2領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部の前記テーパ率よりも大きい、鋼管用ねじ継手。 【請求項2】 請求項1に記載の鋼管用ねじ継手であって、 前記第1領域の前記テーパ率をTp1とし、前記第2領域の前記テーパ率をTp2とし、前記テーパ雌ねじ部の前記テーパ率をTbとしたとき、Tp1、Tp2及びTbが下記式(1)、(2)及び(3)の条件を満足する、鋼管用ねじ継手。 1.00<Tp1/Tb<1.10…(1) 1.00<Tp2/Tb<1.10…(2) 0.94<Tp2/Tp1<1.00…(3) 【請求項3】 請求項1又は2に記載の鋼管用ねじ継手であって、 前記テーパ雄ねじ部の管軸方向の総長さをLとし、前記テーパ雄ねじ部の前記ピンの前記先端側の端から前記第1領域と前記第2領域との境界までの管軸方向の距離をxとしたとき、xがLの20%以上でLの80%以下の範囲内である、鋼管用ねじ継手。 【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載の鋼管用ねじ継手であって、 前記ピンは前記ピンの先端に配置されたショルダ面を含み、前記ボックスは前記ピンの前記ショルダ面に対応するショルダ面を含む、鋼管用ねじ継手。 【請求項5】 請求項4に記載の鋼管用ねじ継手であって、 前記ピンは前記ショルダ面と前記テーパ雄ねじ部との間に配置されたシール面を含み、前記ボックスは前記ピンの前記シール面に対応するシール面を含む、鋼管用ねじ継手。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して、当審が令和4年7月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 なお、当審が通知した取消理由は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を全て含むものである。 (1)請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 <刊行物一覧> 甲第1号証:特許第4635905号公報 2 甲号証の記載 (1)甲第1号証について ア 甲第1号証の記載 甲第1号証には、次の記載がある(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。 「【0002】 近年、開発の容易な油井、ガス井が減少するとともに、より高深度でかつ高温高圧の井戸が増加している。また、掘削技術の進歩に伴い、傾斜井戸、水平井戸など、より複雑な形状の井戸が増加している。これに伴い、油井管のねじ継手に対する要求、例えば、引張、圧縮、内外圧、曲げなどの複合荷重下における気密性などの要求もますます高度化している。(非特許文献1) 油井管用ねじ継手は、図1に示すように、ねじ結合される雄側のピン1と雌側のボックス(又はカップリング)2とからなり、これらの双方が互いに対応する箇所に、ねじ部3と、ねじ部3の先端側に順次連なるシール部4およびショルダー部5とを有する。ねじ部3にはテーパねじが切削加工されており、テーパねじのテーパは、通常、ねじ部3の長さ全域で一定の直線状テーパが採用されている。 【0003】 ピンテーパ(ピン1側のテーパねじのテーパ)とボックステーパ(ボックス2側のテーパねじのテーパ)は、ねじ継手の要求仕様により種々の組合わせがある。図1には、ピンテーパがボックステーパよりも大きくされたテーパ設定例を示している。切削加工の属性により、ピン1側のねじ部3には完全ねじ部31Aの他、ピン根元側にいくほどねじ山が次第に小さくなる不完全ねじ部31Bが形成される。ねじ径測定位置は通常、完全ねじ部31Aの長さ中央付近にとられ、この位置でのねじ径を代表値としたねじ干渉量(ボックスねじ径)が設計の基礎とされている。」 「【0013】 本発明の実施形態を、図3に示すテーパ設定例(表1の本発明例No.1に対応する)を用いて説明する。この例では、ピン1側のねじ部長さ域とボックス2側のねじ部長さ域とを、ピン1とボックス2の両側に共通する区分点で、L1区、L2区、L3区の3区に分け、各区に「小」、「標準」、「大」の3水準のテーパ(異なる水準の公差範囲は重複しない)を図示のように配分して、ピン1のねじ部3とボックス2のねじ部3とをねじ部長さ域の中央付近で優先接触させている。」 「【0017】 表1に示す種々のテーパ設定条件(ピンテーパとボックステーパの組合わせが異なる複数の条件)で油性管用ねじ継手を製作し、締付け試験を行なった。各条件について図2と同様の推移パターンになるトルク対ターン曲線を測定し、該測定結果から求めたショルダートルク対オプチマムトルク比を図4に示す。 図4より、従来例では、とくにNo.4(ピンテーパ「大」、ボックステーパ「小」の組合わせ)が他よりもショルダートルクが顕著に大きくなるという、大きなばらつき傾向があるのに対し、本発明例では、かかるばらつきが格段に小さくなり、しかも、いずれのテーパ組合わせ条件でも従来例に比べて低いショルダートルクが得られている。」 「【0019】 【表1】 [図:0001395222000001.jpg] 」 「【図1】 [図:0001395222000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001395222000003.jpg] 」 イ 上記アの記載事項からわかること (ア)段落【0002】の「油井管用ねじ継手は、・・・ねじ結合される雄側のピン1と雌側のボックス・・・2とからなり」(なお、「・・・」は省略を意味する。以下同様。)という記載から、油井管用ねじ継手は、ピン1とボックス2とからなることがわかる。また、ピン1とボックス2とは、油井管用ねじ継手を構成するものであるから、その形状は、管状であるといえる。 (イ)上記(ア)で摘記した記載及び段落【0002】の「これらの双方が互いに対応する箇所に、ねじ部3・・・を有する。ねじ部3にはテーパねじが切削加工されており」という記載から、雄側のピン1と雌側のボックス2とは、双方が互いに対応する箇所に、テーパねじが切削加工されたねじ部3を有することがわかる。 (ウ)段落【0003】の「ピンテーパ(ピン1側のテーパねじのテーパ)とボックステーパ(ボックス2側のテーパねじのテーパ)」という記載、段落【0013】の「ピン1側のねじ部長さ域とボックス2側のねじ部長さ域とを、ピン1とボックス2の両側に共通する区分点で、L1区、L2区、L3区の3区に分け、各区に「小」、「標準」、「大」の3水準のテーパ(異なる水準の公差範囲は重複しない)を図示のように配分し」という記載、【表1】のNo.4の欄における記載、及び、【図3】において、ねじ部3がピン先端側からピン根元側に向かってL3区、L2区、L1区の順に区分されることが示されており、特に【表1】のNo.4の本発明例に着目すると、ピン1側のねじ部長さ域とボックス2側のねじ部長さ域とは、ピン1の先端側から根元側に向かってL3区、L2区、L1区の順に区分され、ピン1側のテーパねじのテーパであるピンテーパは、L3区で大、L2区で大、L1区で標準であり、ボックス2側のテーパねじのテーパであるボックステーパは、L3区で標準、L2区で小、L1区で小であることがわかる。 ウ 上記ア、イから、甲第1号証には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「管状のピン1と管状のボックス2とからなる油井管用ねじ継手であって、 雄側のピン1と雌側のボックス2とは、双方が互いに対応する箇所に、テーパねじが切削加工されたねじ部3を有し、 ピン1側のねじ部長さ域とボックス2側のねじ部長さ域とは、ピン1の先端側から根元側に向かってL3区、L2区、L1区の順に区分され、ピン1側のテーパねじのテーパであるピンテーパは、L3区で大、L2区で大、L1区で標準であり、ボックス2側のテーパねじのテーパであるボックステーパは、L3区で標準、L2区で小、L1区で小である、油井管用ねじ継手。」 3 当審の判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 (ア)引用発明における「管状のピン1」は本件発明1における「管状のピン」に相当し、以下同様に、 「管状のボックス2」は「管状のボックス」に、 「雄側のピン1」が有する「テーパねじが切削加工されたねじ部3」は、「ピン」が含む「テーパ雄ねじ部」に、 「雌側のボックス2」が有する「テーパねじが切削加工されたねじ部3」は、「ボックス」が含む「テーパ雌ねじ部」に、 「L3区、L2区」は「第1領域」に、 「L1区」は「第2領域」に、 それぞれ相当する。 (イ)引用発明における「管状のピン1と管状のボックス2とからなる油井管用ねじ継手」と本件発明1における「管状のピンと管状のボックスとからなる鋼管用ねじ継手」とは、「管状のピンと管状のボックスとからなる管用ねじ継手」という限りにおいて一致する。 (ウ) 引用発明における「雄側のピン1と雌側のボックス2とは、双方が互いに対応する箇所に、テーパねじが切削加工されたねじ部3を有」する態様は、対応し合う雄側ねじと雌側ねじとは噛み合うものであるという技術常識に鑑みると、本件発明1における「ピンはテーパ雄ねじ部を含み、前記ボックスは前記テーパ雄ねじ部と噛み合うテーパ雌ねじ部を含」む態様に相当する。 (エ) 甲1の【表1】の欄外における「標準:X±2、大:(X+2)超、小:(X-2)未満、X=標準テーパ値(=1/16)×1000=62.5」という記載から「大>標準>小」という大小関係が把握できるため、引用発明における「ピン1側のねじ部長さ域・・・は、ピン1の先端側から根元側に向かってL3区、L2区、L1区の順に区分され、ピン1側のテーパねじのテーパであるピンテーパは、L3区で大、L2区で大、L1区で標準であ」る態様は、本件発明1における「テーパ雄ねじ部が、管軸方向に沿って、前記ピンの先端側の第1領域、及び前記ピンの管本体側の第2領域に区分され、前記テーパ雄ねじ部のテーパは、2段テーパであり、前記第1領域のテーパ率が前記第2領域のテーパ率よりも大き」い態様に相当する。 (オ) 引用発明における「ピン1側のテーパねじのテーパであるピンテーパは、L3区で大、L2区で大・・・であり、ボックス2側のテーパねじのテーパであるボックステーパは、L3区で標準、L2区で小・・・である」態様では、L3区においてピンテーパが大でボックステーパが標準、L2区においてピンテーパが大でボックステーパが小、となっており、本件発明1における「第1領域」に相当する「L3区」と「L2区」とのどちらの区分においてもピンテーパがボックステーパより大きいため、引用発明における当該態様は、本件発明1における「第1領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部のテーパ率よりも大き」い態様に相当する。 (カ) 引用発明における「ピンテーパは、・・・L1区で標準であり、・・・ボックステーパは、・・・L1区で小である」態様は、本件発明1における「第2領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部の前記テーパ率よりも大きい」態様に相当する。 (キ) 以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 管状のピンと管状のボックスとからなる管用ねじ継手であって、 前記ピンはテーパ雄ねじ部を含み、前記ボックスは前記テーパ雄ねじ部と噛み合うテーパ雌ねじ部を含み、 前記テーパ雄ねじ部が、管軸方向に沿って、前記ピンの先端側の第1領域、及び前記ピンの管本体側の第2領域に区分され、 前記テーパ雄ねじ部のテーパは、2段テーパであり、 前記第1領域のテーパ率が前記第2領域のテーパ率よりも大きく、前記第1領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部のテーパ率よりも大きく、前記第2領域の前記テーパ率が前記テーパ雌ねじ部の前記テーパ率よりも大きい、管用ねじ継手。 <相違点1> 本件発明1では、「テーパ雌ねじ部のテーパは、1段テーパ」であるのに対し、引用発明では、「ボックステーパ」が2段テーパとなっている点。 <相違点2> 「管状のピンと管状のボックスとからなる管用ねじ継手」が対象とする管が、本件発明1では「鋼管」であるのに対し、引用発明では「油井管」である点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲第1号証の段落【0009】には、「(b)上述のような、ピンテーパとボックステーパの組合わせによる、設計上のねじ干渉量に対する実ねじ干渉量のばらつきを抑えるには、ピン側及びボックス側の少なくともいずれか一方のねじ部長さ全域を複数の区に分け、各区に、相異なる複数のテーパを、ピンねじ部とボックスねじ部がねじ部長さ域の中央付近で優先的に接触するように、配分することが有効である。」と記載があり、段落【0015】には、「もっとも、テーパ変更点の個数をむやみに増やしても、ショルダートルクばらつきを抑制する効果が増すわけではなく、ねじ切削加工が複雑になる不利を招くだけであるから、テーパ変更点をピン、ボックスの両方に設ける場合、その個数は、設ける側ごとに1~2個とするのが好ましい。」との記載があることから、甲第1号証には、テーパ変更点をピン、ボックスのいずれか一方のみに設けても良いことが示唆されていると認められる。また、特許異議申立人が、令和4年11月16日に提出した意見書において提示した参考資料1(特開2007-232012号)にも同様の記載がある。 そうすると、当業者であれば、引用発明、すなわち甲第1号証の【表1】のNo.4の実施例において、ピン、ボックスのいずれか一方において、テーパ変更点を設けないこと、すなわち1段テーパとすることを想起し得ると考えられるが、そのような場合であっても、本件発明1に至るためには、ピン及びボックスのうち、ボックス側を1段テーパとすることを選択した上で、さらにボックステーパのテーパ率を「大」、「標準」、「小」のうち、「小」とすることを選択する必要があるため、当業者には、さらなる創意工夫が課される。 それにもかかわらず、甲第1号証にも上記参考資料1にも、テーパ変更点をピン、ボックスのいずれか一方のみに設けた場合において、ピン及びボックスのどちらをテーパ変更点がない形状にするのか、またその際のピンテーパとボックステーパの大小関係をどのように設定するかについて、一切の記載も示唆もない。 そうすると、当業者であっても、引用発明において雌ねじ部のテーパを1段テーパとするよう変更する動機付けがないから、引用発明から、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項について、当業者が容易に想到し得たとは、いえない。 (イ)してみると、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項について、当業者が容易に想到し得たとはいえないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、令和4年11月16日に提出した意見書において、主に、甲第1号証の段落【0009】、【0015】及び参考資料1(特開2007-232012号)の段落【0014】、【0015】において、テーパ変更点をピン、ボックスのいずれか一方のみに設けても良いことが示唆されている旨を主張する。 しかしながら、上記イ(ア)で説示したように、甲第1号証にも上記参考資料1にも、テーパ変更点をピン、ボックスのいずれか一方のみに設けた場合において、ピン及びボックスのどちらをテーパ変更点がない形状にするのか、またその際のピンテーパとボックステーパの大小関係をどのように設定するかについて、一切の記載も示唆もないため、仮に、当業者が、引用発明、すなわち甲第1号証の【表1】のNo.4の実施例において、ピン、ボックスのいずれか一方において、テーパ変更点を設けないこと、すなわち1段テーパとすることを想起し得たとしても、本件発明1に係る構成まで想到し得たとはいえない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 また、特許異議申立人は、上記意見書において、主に、甲第1号証の【表1】のNo.4の実施例において、ボックステーパを1段テーパにし、そのテーパ率を「小」にしたものであっても、ショルダートルクのばらつきがNo.4の従来例よりは低減されると容易に推測されるので、そのような場合に、引用発明の目的を達成することはできないとした、令和4年9月30日に提出された意見書における特許権者の主張は誤りである旨を主張する。 しかしながら、そもそも、上記イ(ア)で説示したように、甲第1号証の【表1】のNo.4の実施例において、ボックステーパを1段テーパにし、そのテーパ率を「小」とすることを当業者が想起するには、まず、ピン及びボックスのうち、ボックス側を1段テーパとすることを選択した上で、さらにボックステーパのテーパ率を「大」、「標準」、「小」のうち、「小」とすることを選択することが必要であるところ、特許異議申立人の上記主張は、ほかの可能性を論じることなく本件発明1と同様の構成に至った場合の効果だけを論じるものであり、本件発明1を知り得た者による後知恵であるといわざるを得ない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 エ まとめ したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることもできない。 (2)本件発明2ないし5について 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項2ないし5は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、本件発明2ないし5は、上記(1)の本件発明1の検討を踏まえると、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることもできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700423

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