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特許異議申立

2022-700343

シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子、並びに、それらの製造方法

審判番号
2022-700343
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-123009
登録番号
6953114
請求日
2022年04月26日
審決日
2023年09月05日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】扶桑化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人】堀 久美子
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 立木 林
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6953114号発明「シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子、並びに、それらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6953114号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔4、9〕、〔5~7〕について訂正することを認める。 特許第6953114号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6953114号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成28年6月21日に出願され、令和3年10月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~9に係る特許について、令和4年4月26日に特許異議申立人 堀 久美子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月16日付けで取消理由が通知され、同年10月20日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)がされ、同年12月6日に申立人により意見書の提出がされ、令和5年1月17日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年3月23日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年5月15日に申立人により意見書の提出がされた。 なお、本件訂正請求がされたので、先の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正請求(以下、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1~3からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「アスペクト比が1.5以下の粒子が全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子であって、 平均粒子径が30~150nmであり、」 と記載されているのを 「アスペクト比が1.5以下の粒子が全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~26.1%であるシリカ系中空粒子であって、 平均粒子径が30~55.2nmであり、」 に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1又は2に記載のシリカ系中空粒子、又は、請求項3に記載のコアシェル粒子を製造するためのカチオン性ポリスチレン粒子」 と記載されているのを 「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子であって、平均粒子径が30~150nmであり、シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されているシリカ系中空粒子、又は、請求項3に記載のコアシェル粒子を製造するためのカチオン性ポリスチレン粒子」 に訂正する。請求項4の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に 「請求項1又は2に記載のシリカ系中空粒子の製造方法」 と記載されているのを 「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子であって、平均粒子径が30~150nmであり、シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されているシリカ系中空粒子の製造方法」 に訂正する。請求項5の記載を引用する請求項6及び7も同様に訂正する。 (4) 一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて 訂正前の請求項1、2、4~7、9は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1~3に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔1、2、4~7、9〕を訂正の単位として請求されたものである。 また、特許権者は、訂正後の請求項4~7及び9に係る訂正について、当該訂正が認められる場合には、同請求項1、2に係る訂正と別の訂正単位として扱われることを求めている。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、請求項1における粒子径の変動係数を「20~26.1%」に限定し、平均粒子径を「30~55.2nm」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 新規事項の有無 願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の【0020】には、「本発明のシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数は、20~60%である。20~50%が好ましく、20~40%がより好ましい。」と、【0024】には「シリカ系中空粒子の平均粒子径は、30~150nmが好ましく、35~120nmがより好ましく、35~100nmが更に好ましい。」と記載されている。また、【表1】の実施例3には、シリカ系中空粒子の粒子径の変動係数が26.1%、平均粒子径が55.2nmであることが記載されている。 そうすると、訂正事項1は、【0020】、【0024】、【表1】実施例3の前記記載に基づき、粒子径の変動係数を「20~26.1%」とし、平均粒子径を「30~55.2nm」とする訂正であって、新たな技術的事項を導入するものでないから、当該訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1の記載のみを引用する形式とした上で、請求項間の引用関係を解消する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでない。 イ 新規事項の有無 上記アのとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載のみを引用する形式とした上で、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項1の記載のみを引用する記載とした上で、請求項間の引用関係を解消する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでない。 イ 新規事項の有無 上記アのとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項1の記載のみを引用する形式とした上で、請求項間の引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 (4) 独立特許要件について 特許異議の申立ては、請求項1~9についてされているので、訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、特許権者から、上記1(4)のとおり、訂正後の請求項4~7、9については、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがあったことから、訂正後の請求項〔4、9〕、〔5~7〕についての訂正は、それぞれ、請求項〔1、2〕とは別の訂正単位として扱う。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔4、9〕、〔5~7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正がされた請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~26.1%であるシリカ系中空粒子であって、 平均粒子径が30~55.2nmであり、 シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、シリカ系中空粒子。 【請求項2】 反射防止フィルム材料、絶縁膜材料又は断熱材材料である、請求項1に記載のシリカ系中空粒子。 【請求項3】 分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子であって、 アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、 平均粒子径が30~150nmであり、 前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であり、 シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、コアシェル粒子。 【請求項4】 アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子であって、平均粒子径が30~150nmであり、シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されているシリカ系中空粒子、又は、請求項3に記載のコアシェル粒子を製造するためのカチオン性ポリスチレン粒子であって、 アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、 ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種の分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子。 【請求項5】 アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子であって、平均粒子径が30~150nmであり、シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されているシリカ系中空粒子の製造方法であって、 (1)スチレンモノマーと、分散剤と、カチオン性重合開始剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、前記スチレンモノマーの重合反応を行い、カチオン性ポリスチレン粒子を調製する工程であって、前記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒であり、前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種である工程1、 (2)溶媒に、(i)前記カチオン性ポリスチレン粒子と、(ii)トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランから選択される少なくとも1種と、(iii)塩基性触媒とを添加撹拌して溶液を調製することにより、前記溶液中で、前記カチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成する工程2、及び (3)前記コアシェル粒子のコアである、前記カチオン性ポリスチレン粒子を熱分解することにより、前記カチオン性ポリスチレン粒子を除去する工程3 を含む、製造方法。 【請求項6】 前記工程1で用いられる混合溶媒は、水とアセトンとの混合比が質量比で90:10~20:80である、請求項5に記載の製造方法。 【請求項7】 前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される少なくとも1種である、請求項5又は6に記載の製造方法。 【請求項8】 請求項3に記載のコアシェル粒子の製造方法であって、 (1)スチレンモノマーと、分散剤と、カチオン性重合開始剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、前記スチレンモノマーの重合反応を行い、カチオン性ポリスチレン粒子を調製する工程であって、前記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒であり、前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種である工程1、及び (2)溶媒に、(i)前記カチオン性ポリスチレン粒子と、(ii)トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランから選択される少なくとも1種と、(iii)塩基性触媒とを添加撹拌して溶液を調製することにより、前記溶液中で、前記カチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成する工程2 を含む、製造方法。 【請求項9】 請求項4に記載のカチオン性ポリスチレン粒子の製造方法であって、(1)スチレンモノマーと、分散剤と、カチオン性重合開始剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、前記スチレンモノマーの重合反応を行い、カチオン性ポリスチレン粒子を調製する工程であって、前記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒であり、前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種である工程1を含む、製造方法。」 第4 特許異議申立の理由、及び取消理由通知に記載した取消理由について 1 証拠について 申立人が提出した証拠は、下記(1)、(2)のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。 (1) 特許異議申立書に添付して提出された証拠 甲1:江上美紀、“機能性ナノ粒子を用いたナノコンポジット薄膜とその 応用”、粉砕、2012年12月15日、No.56、第42~4 7ページ 甲2:鈴木道隆、“粒子の付着性や充填性に及ぼす微粒子の影響”、化学 装置、2014年2月号、第17~20ページ(甲2の2からみて 、2014年1月28日に発行) 甲2の2:「化学装置2014年01月28日発売号」のウェブサイト 甲3:神谷秀博、他1名、“超微粒子凝集体の充填シミュレーションと Brownian dynamic methodによる凝集過程の解析”、化学工学論文 集、1991年、第17巻、第4号、第837~845ページ(甲 3の2からみて、1991年7月10日に発行) 甲3の2:「化学工学論文集」のウェブサイト 甲4:“2015年3月期決算説明会”,[online],2015年5月1 5日,扶桑化学工業株式会社,[令和4年8月4日検索],インタ ーネット<URL:https://fusokk.co.jp/wp-content/uploads/2019/ 06/file01c82Kkid7g_.pdf> 甲5:扶桑化学工業株式会社のウェブサイト「IRカレンダー」 甲6:2015年7月5日のインターネットアーカイブ 甲7:2015年7月5日のインターネットアーカイブ 甲8:甲4の電子ファイルのプロパティ画面 甲9:特許第4883383号公報 甲10:特許第4238147号公報 甲11:特開2011-225756号公報 甲12:特開2009-114010号公報 甲13:特開2009-234848号公報 甲14:特開2013-226539号公報 甲15:特開2010-189648号公報 甲16:M Fuji, et al.,“Synthesis and shell structure design of hollow silica nanoparticles using polyelectrolyte as templ ate”,Journal of Physics: Conference Series,2015年, 596,012007,p.1-6(甲16の2からみて、2015年4月8日 に公開) 甲16の2:Journal of Physics Conference Series, Vol. 596, 2015のウェブサイト 甲17:特開2014-94867号公報 甲18:Yi Du, et al.,“Hollow Silica Nanoparticles in UV-Visible Antireflection Coatings for Poly(methyl methacrylate) Substrates”,ACS NANO,2010年6月10日,Vol.4,No.7 ,p.4308-4316 甲19:特開2006-79068号公報 甲20:特開2001-233611号公報(甲19の明細書で示された 文献) 甲21:特開2012-30489号公報 甲22:特表2000-500113号公報(甲12の明細書で示された 文献) (2) 令和5年5月15日提出の意見書に添付して提出された証拠 甲23:特開2014-58683号公報 甲24:Yong Wan et al., “Polyelectrolyte Controlled Large-Scale Sysnthesis of Hollow Silica Spheres with Tunable Sizes and Wall Thicknesses”, Journal of Physics C, 2008年2 月21日, Vol.112, p.3641-3647(甲16の明細書で示された文 献) (3) 証拠の補足説明 甲1~3は、後記2(7)「申立理由7(サポート要件違反)」における技術常識の証拠として示されたものである。 甲2の2、甲3の2、甲5~8、甲16の2は、それぞれ甲2、甲3、甲4、甲16の公知日の証拠として示されたものである。 甲4、甲9、甲10、甲14~16及び甲18は、進歩性欠如に関する後記申立理由1~6(後記2(1)~(6)。主たる証拠は、甲4、甲12、甲16、甲18、甲19、甲21。)に関して、周知技術又は技術常識の証拠として示されたものである。 2 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 申立理由1(甲4を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~9に係る発明は、甲4に記載された発明並びに甲11~13に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲16を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲16に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~9に係る発明は、甲16に記載された発明並びに甲11~甲13、甲17に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 申立理由3(甲18を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲18に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~9に係る発明は、甲18に記載された発明並びに甲13、甲17に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4) 申立理由4(甲19を主たる証拠とした進歩性欠如) 請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲19に記載された発明並びに甲13、甲17に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5) 申立理由5(甲21を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲21に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~9に係る発明は、上記甲21に記載された発明並びに甲13、甲17に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (6) 申立理由6(甲12を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲12に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~9に係る発明は、上記甲12に記載された発明並びに甲13、甲17に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであって、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (7) 申立理由7(サポート要件違反) 請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記5(8)オ(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 令和5年1月17日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要 先の訂正請求の内容を踏まえて、令和5年1月17日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の内容は、概略、以下のとおりである。 (1) 取消理由1(実施可能要件違反) 請求項1、2に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記5(1)ア(ア)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2) 取消理由2(明確性要件違反) 請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記5(1)ア(イ)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3) 取消理由3(甲4を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、又は同文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであって、同特許は、同条第2項の規定に違反してされたものである。 また、請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4) 取消理由4(甲16を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲16に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、又は同文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、同特許は、同条第2項の規定に違反してされたものである。 また、請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲16に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5) 取消理由5(甲18を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲18に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、又は同文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、同特許は、同条第2項の規定に違反してされたものである。 また、請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲18に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 4 各甲号証の記載 (1) 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 ア 「 機能を付与するためのナノ粒子をマトリックス成分と組み合わせてナノコンポジット化することで、簡易なプロセスで効果的な機能性薄膜を得ることができる。マトリックス成分は、有機樹脂と無機重合体に大別される。高温プロセスに耐えられないフィルム基材等の場合には、紫外線硬化型有機樹脂バインダーが有効である。溶剤や添加剤によっても性能が左右されるので、最適化が必要である。マトリックス成分に、組成、粒子径、分布などを最適化した機能性ナノ粒子を単分散させることで、まずは透明性に優れた機能性薄膜を得ることができた(第一世代)。」(42ページ右欄最下行~43ページ左欄10行) イ 「 得られた中空シリカ粒子をフィラーとして、有機樹脂マトリックスと配合したナノコンポジット塗料を設計し、およそ100nm膜厚の低屈折率層を形成した断面写真を図6に示す。空孔(Core部分)を有した比較的均一な粒子が、二列に制御された形で密にパッキング良く配列されていることが分かる。」(45ページ右欄10行~46ページ左欄1行) (2) 甲2の記載事項 甲2には、「2.粒子充填に及ぼす粒子径の影響」(17ページ)及び「3.充填性に及ぼす粒子径分布の影響」(19ページ)の章立てがされている。 (3) 甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 ア 「・中空シリカ 粒子径数十nmの内部が空洞のシリカ粒子。低屈折材料、絶縁材料、DDS材料等への利用が期待される。」(スライド番号36) イ 「 [図:0001404737000001.jpg] 」(スライド番号36)(以下、「画像」という。) ウ 「 [図:0001404737000002.jpg] 」(スライド番号36) (4) 甲11の記載事項 甲11には、以下の事項が記載されている。 「【0009】 〔低誘電樹脂組成物、及び低誘電膜〕 本発明の低誘電樹脂組成物は、平均粒子径が0.05~3μm、空孔率が30~90%、BET比表面積が30m2/g未満である中空シリカ粒子(C)が、マトリクス樹脂中に分散されてなることを特徴とし、本発明の低誘電膜は該低誘電樹脂組成物からなることを特徴とする。 本発明の低誘電樹脂組成物、及び低誘電膜では、前記特定の構造を有する中空シリカ粒子(C)を分散して含有していることにより、樹脂組成物中の空気の体積割合が好ましくは3~60%となるため、その誘電率、誘電正接の低下が図られる。・・・」 (5) 甲12の記載事項 甲12には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。 ア 「【0019】 [粒子径分布] 前記中空シリカ微粒子については、その粒子径分布が単分散状態にあるものが好ましい。具体的には、粒子径変動係数(CV値)が50%以下にあるものが好ましい。本発明に係る球状シリカ粒子は、このような粒子径分布の均一性の高い中空シリカ微粒子が集合し、決着してなる中空シリカ微粒子集合体、または中空シリカ微粒子集合体とその表面に形成された外層とからなるものであり、特に粒子径分布が単分散状態にあるため〔半導体用途〕に適用した場合に〔絶縁性または耐熱性〕の効果が優れるものとなる。粒子径変動係数(CV値)が50%を超える場合は、粒子径の均一性が低いためこのような効果は生じ難くなる。なお、中空シリカ微粒子の粒子径変動係数(CV値)については、10%以上50%以下であれば、〔絶縁性または耐熱性〕の効果が充分に得られるため、10%未満であることは必ずしも求められない。 ・・・ 【0021】 [形状] 前記中空シリカ微粒子の形状については、球状が好ましい。ここで球状については、目視により、棒状、勾玉状、細長い形状、数珠状、卵状などの異形粒子であると認められない程度であれば構わないが、より好適には、真球度が0.90~1.00の範囲にあるものが推奨される。ここで真球度とは、透過型電子顕微鏡により写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)の平均値を意味する。真球度が0.90未満の場合は、微粒子が球状であるとは云えず、前記の異形粒子に該当するものを含む場合が生じる。本発明に係る球状シリカ粒子は、前記の粒子径の均一性に加えて、真球度が0.90~1.00の範囲にあることにより、構造的に安定するため球状シリカ粒子の強度の点で好ましいものとなる。なお、真球度が0.90に満たない中空シリカ微粒子については、いわゆる水熱処理を行って、真球度を0.90~1.00の範囲に調整してから、本発明における中空シリカ微粒子として適用することができる。水熱処理の条件としては、温度100~200℃にて、1~24時間の処理を行う方法を挙げることができる。また、水熱処理には、オートクレーブを使用することも推奨される。 【0022】 [組成] 前記中空シリカ微粒子の組成については、シリカを含有するものであれば格別に制限されるものではなく、中空シリカ微粒子の製造原料に起因してシリカ以外の元素または化合物が残存していても構わない。このような残存する元素および化合物の例としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。 【0023】 [製造方法] 本発明における中空シリカ微粒子については、従来公知の製造方法により調製されたもので構わない。公知の製造方法の例としては、特表2000-500113号公報に記載されたような珪酸アルカリ金属水溶液から活性シリカをシリカ以外の材料からなるコア上に沈殿させ、該材料をシリカシェルを破壊させることなく除去することによって、稠密なシリカシェルからなる中空粒子を製造する方法、特開2001-233611号公報に記載されているようなシリカとシリカ以外の無機酸化物からなる複合酸化物の核粒子にシリカ被覆層を形成し、ついでシリカ以外の無機酸化物を除去し、必要に応じてシリカを被覆してなるナノメーターサイズの中空シリカ系微粒子の製造方法などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。」 イ 「[合成例1] 【0064】 特開2001-233611号実施例2に準じて、以下の方法にて中空シリカ微粒子を調製した。 平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a)) 【0065】 この核粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3,000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b)) 【0066】 限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228重量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の分散液を調製した。得られたシリカ系微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均粒子径が46nmで、外層の厚さが10nmの中空シリカ微粒子であることが分かった。 ・・・ 【実施例1】 【0068】 合成例1と同様な製造方法で得られたシリカ濃度20質量%の中空シリカゾル5Lを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、7000Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。 【0069】 この中空シリカゾルは、平均粒子径46nm、比表面積121m2/g、真球度0.93のシリカ微粒子が水に分散してなる中空シリカゾルであった。なお、この中空シリカゾルの粒子変動係数(CV値)は、30%であり中空シリカ微粒子が単分散しているものであることが分かった。 ・・・ 【0074】 得られたスラリーをヌッチェにて脱水し、得られたケーキに60℃の純水を1500g加えて洗浄し、脱水処理を行った。得られた該洗浄ケーキを110℃の温度で18時間乾燥したところ、球状の粉体を240g得た。更にこの粉体を温度800℃で6時間焼成することにより球状シリカ粒子を得た。この球状シリカ粒子の分析結果を表4に記す。また、使用した中空シリカ微粒子の物性値、および球状シリカ粒子の製造条件を表1~3に記す。 ・・・ 【0094】 【表1】 [図:0001404737000003.jpg] 」 ウ 「【0098】 本発明の球状シリカ粒子は、低比重で良好な粒子破壊強度を示すものであり、この球状シリカ粒子は断熱特性を有することから、断熱材、消音材、防音材等、軽量骨材として、好適である。また、化粧料に用いれば、非常に軽く、ソフトで伸びのよいファンデーションが得られる。 【0099】 このほか、インク用体質顔料、トナー、剥離性改良剤、潤滑剤、自動車用ワックス等の研磨材、樹脂・ゴム耐摩耗性改良用高硬度フィラー剤、流動性改良剤、艶消フィラー、無収縮フィラー、パテ用充填剤、吸着剤、クロマト用担体、香料包括ビーズ、殺菌剤・殺虫剤・防黴剤包括ビーズ、液晶包括ビーズ等の用途も例示することができる。」 (6) 甲13の記載事項 甲13には、以下の事項が記載されている。 ア 「【発明を実施するための最良の形態】 【0006】 以下に本発明の実施の形態に係る中空粒子の製造方法について説明する。 本発明の実施の形態に係るシリカ系中空粒子の製造方法は、重合体粒子にシリカ系被覆層を形成してコア・シェル粒子を得る工程と、前記工程により得られたコア・シェル粒子を加熱することにより重合体粒子を分解する工程を含むことを特徴とする。 【0007】 以下、本実施形態に係るシリカ系中空粒子分散体の製造方法の各工程について説明する。 1.工程(a) 工程(a)は、重合体粒子およびアニオン系界面活性剤を含有する水系の分散媒中で、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を加水分解縮合させることにより、シリカ系被覆層を有するコア・シェル粒子を形成する工程である。まず、該コア・シェル粒子のコア粒子となる重合体粒子について説明する。 【0008】 1.1.重合体粒子 重合体粒子としては、特に限定されるものではないが、重合体粒子を構成する重合体の重量平均分子量は、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~80,000であることがより好ましく、10,000~50,000であることが特に好ましい。なお、この重量平均分子量はGPC測定装置を用いて測定することができる。本発明の重合体の場合、通常、標準物質としてポリスチレンを用い、カラムは超高分子測定用カラムを使用し、溶出液としてはテトラヒドロフランを使用し、40℃において測定する。 また、この重合体粒子の大きさは特に限定されないが、10~5000nmとすることができ、30~1000nmとすることが好ましく、50~500nmとすることがより好ましい。尚、この平均粒子径は透過型電子顕微鏡により測定することができる。 また、重合体粒子の形状としては、特に限定されるものではないが、球状であることが好ましい。 【0009】 また、重合体粒子の組成としては、特に限定されるものではないが、カチオン性基を有する重合体粒子を用いることが好ましい。 カチオン性基を有する重合体粒子を構成する重合体として、例えばアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂が挙げられる。そして重合体粒子を構成する上記重合体の少なくとも一部はカチオン性基を有していることが必須である。本発明では、カチオン性基は、アミノ基等のプロトンと結合してカチオンを形成し得る基および該基が酸と反応して塩を生成し、塩のカチオン部を形成している基を包含する。カチオン性基の具体例として、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基;4級アミノ基、2級イミノ基、3級イミノ基、4級イミノ基;各級のアミジノ基、イミジノ基、ヒドラジノ基;さらにピリジル基等の窒素原子を含む環状基等を挙げることができる。 重合体粒子中のカチオン性基の濃度は、好ましくは0.05~300mmol/100g粒子、より好ましくは1~100mmol/100g粒子である。 ・・・ 【0014】 重合開始剤としては、油溶性の重合開始剤あるいは水溶性の重合開始剤のいずれも使用することができる。粒子径が1μm以下の重合体粒子を製造するための重合を行なう場合には、水溶性重合開始剤を用いることが好ましく、このことにより、重合体粒子に膨潤されない大粒径のモノマー液滴が重合することを防止することができる。また、粒子径が1μmを越える重合体粒子を製造するための重合を行なう場合には、不要の空孔を有しないポリマー粒子が生成することを防止するために、油溶性重合開始剤を使用することが好ましい。 上記水溶性重合開始剤としては、過硫酸塩類、あるいは過酸化水素-塩化第一鉄、クメンヒドロペルオキシド-アスコルビン酸ナトリウム等のレドックス系の開始剤が例示される。上記油溶性重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、アゾビスイソブチロニトリル等が例示される。 また、本発明においては、後述するカチオン基を有するラジカル重合開始剤も使用することができる。 また、本発明においては、必要に応じて界面活性剤、分散安定剤などを使用することもできる。」 イ 「【0016】 上記有機系の懸濁保護剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の親水性合成高分子物質、ゼラチン、水溶性澱粉等の天然親水性高分子物質、カルボキシメチルセルロース等の親水性半合成高分子物質等を挙げることができる。また、前記無機系の懸濁保護剤としては、例えばマグネシウム、バリウム、カルシウム等のリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、亜鉛華、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。」 ウ 「【0022】 1.2.コア・シェル粒子の形成 コア・シェル粒子は、例えば、上記重合体粒子とアニオン系界面活性剤を含有する水系の分散体中において、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物1」ともいう。)を加水分解縮合することでシリカ系被覆層を重合体粒子に対して形成することで得られる。 R1dSi(OR2)4-d・・・・・(1) (式中、R1、R2は独立して1価の有機基を示し、dは0~3の整数を示す。) 上記一般式(1)において、R1、R2で表される1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等を挙げることができる。なかでも、R1、R2で表される1価の有機基は、アルキル基またはフェニル基であることが好ましい。 ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等を挙げることができる。アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、3-ヘキセニル基を挙げることができる。 また、dは0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。 化合物1の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどを挙げることができ、特に好ましい化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。 ・・・ 【0025】 加水分解縮合における反応温度は0~100℃、好ましくは20~80℃、反応時間は30~1000分間、好ましくは30~300分間である。 また、上記一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合を行う際には、加水分解縮合を促進させるために塩基性化合物を触媒として使用するのが好ましい。 ・・・ 【0028】 ・・・ また、あらかじめ水系の分散媒中にアニオン系界面活性剤と上記化合物1を添加し混合撹拌することによりO/W型エマルジョンを調製しておいて、該O/W型エマルジョンを重合体粒子を含む水系の分散媒中に加えることによっても、上記と同様にコア・シェル粒子を作製することができる。」 エ 「【0030】 2.工程(b)コア・シェル粒子を加熱することにより重合体粒子を分解する工程 以下にコア・シェル粒子を加熱することにより重合体粒子を分解することで内部に空孔を有するシリカ系中空粒子を製造する方法について述べる。 シリカ系中空粒子の製造は、前記で得られるコア・シェル粒子を、コアの重合体の種類により異なるが好ましくは100℃以上、さらに好ましくは450℃以上に加熱して、コアを構成する重合体粒子を分解しガス化させてコア・シェル粒子内部から飛散させ粒子内部に空孔を形成することによりなされる。加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、空気、酸素存在下以外にも、真空中、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。」 (7) 甲16の記載事項 甲16には、以下の事項が記載されている。 ア 「Abstract. Hollow silica (Si02) nanoparticles with tunable shell microstructures were synthesized in ethanol solvent by using a polyelectrolyte as template. The polyelectrolyte template was composed of poly (acrylic acid) (PAA) with small amount of ammonia solution (NH40H) and prepared by dispersion of the PAA-NH4OH mixture in ethanol. Upon the addition of silica precursor, tetraethoxysilane (TEOS), into the PAA-NH4OH/ethanol suspension, a certain thickness of Si02 shell could be gradually formed outside the template through the sol-gel reaction of TEOS, which was supposed to be driven by the catalytic effect of NH4+ ions suspended on the surface of the template.・・・」 (当審訳:要約。テンプレートとして高分子電解質を用い、調節可能なシェルの微細構造を有する中空シリカ(SiO2)ナノ粒子をエタノール溶媒中で合成した。高分子電解質テンプレートは、ポリ(アクリル酸)(PAA)と少量のアンモニア溶液(NH4OH)からなり、PAA-NH4OH混合溶液をエタノールに分散させて調製した。シリカ前駆体であるテトラエトキシシラン(TEOS)をPAA-NH4OH/エタノール懸濁液に添加すると、テンプレートの表面に浮遊しているNH4+イオンの触媒作用によるものと推察される、TEOSのゾル-ゲル反応によって、テンプレートの外側に一定の厚さのSiO2シェルが徐々に形成された。・・・) イ 「1. Introduction Hollow silica (Si02) nanoparticles, with a unique structure of hollow interior and solid shell, can provide solid/liquid loading, thermal/electrical insulation, special optical properties, and so on [1,2]. Therefore, they have received increasing attention and have been applied in diverse fields including catalysis, drug delivery, security protection, biological detection, etc. The current approaches to the synthesis of hollow Si02 nanoparticles are generally divided into two categories: (1) sacrificial template method and (2) template-free method. Of the two methods, the first one is the most effective and commonly used strategy, because it is relatively easy to control the shape and size of the resulting hollow Si02 nanoparticles by a simple copy surrounding the template and a subsequent removement of the template [3].・・・」 (当審訳:1.緒言 中空内部及び固体シェルの独自の構造を持つ中空シリカ(SiO2)ナノ粒子は、固体/液体負荷、熱/電気絶縁、特殊光学特性などを提供することができる[1、2]。そのため、中空シリカ(SiO2)ナノ粒子は注目を集めており、触媒作用、ドラッグデリバリー、セキュリティー保護、生物学的検出など多様な分野に応用されている。 中空SiO2ナノ粒子合成への現在のアプローチは、一般に(I)犠牲テンプレート法と(2)テンプレートフリー法の2つのカテゴリーに分けられる。2つの方法のうち、最初の方法は最も効果的でよく使用されている方法である。なぜなら、テンプレート周囲の単純なコピーとその後のテンプレートの除去によって得られる中空SiO2ナノ粒子の形状とサイズの制御が比較的容易であるからである[3]。・・・) ウ 「2.1. Synthesis of hollow silica particle Synthesis of hollow silica nanoparticles without addition of water was conducted according to Yu's groups [13]. A 0.08g of poly(acrylic acid) (PAA, molecular weight 5,000) powder was dissolved in 1.5ml of ammonium hydroxide solution (NH40H, 25wt%) under stirring condition. The PAANH40H solution was dropped in 30ml of ethanol (EtOH) and stirred to form PAA-NH40H template suspension. Then, 0.15ml of tetraethoxysilane (TEOS) was separately added in the suspension per 2h during 10h stirring. After another 4h stirring, the suspension was separated and washed by ethanol and distilled water using centrifugation. The precipitates were dried and hollow silica particles were obtained.・・・」 (当審訳:2.1.中空シリカ粒子の分成 Yuらに従って、水を添加することなく、中空シリカナノ粒子の合成を行った[13]。ポリ(アクリル酸)(PAA、分子量5000)粉末0.08gを、攪拌条件下で水酸化アンモニウム溶液(NH4OH、重量%)1.5mlに溶解した。PAA-NH4OH溶液をエタノール(EtOH)30mlに滴下し、撹拌して、PAA-NH4OH テンプレート懸濁液を形成した。次に、テトラエトキシシラン(TEOS)0.15mlを懸濁液に10時間撹拌しながら2時間ごとに別々に添加した。さらに4時間撹拌した後、遠心分離を用いて、懸濁液を分離し、エタノール及び蒸留水で洗浄した。沈殿物を乾燥し、中空シリカ粒子を得た。・・・) エ 「3. Results and discussion Figure 1 shows SEM and TEM micrographs of a) PAA-NH4OH template and b) hollow silica nanoparticles, which were prepared according to Yu's group [13]. The template shapes were totally spherical and have wide particle size distribution from several tens of nm to several hundreds of nm (Fig. 1a)). The shape and size distribution of the hollow silica nanoparticles (Fig. 1b)) were similar to that of the template. It can be said that the hollow silica nanoparticles formed as a replica of the PAANH40H template. ・・・ Figure 3 shows STEM images of obtained samples with NH40H additions of a) 1.5, b) 3.0, c) 6.0ml, respectively. In the 1.5ml NH40H addition, hollow particles were obtained (Fig. 3a)). They were spherical particles with wide particle size distribution.・・・」 (当審訳:3.結果及び考察 図1に、Yuら[13]に従って作製したa)PAA-NH4OHテンプレートとb)中空シリカナノ粒子のSEM及びTEM顕微鏡写真を示す。テンプレートの形状は完全に球形であり、数十nmから数百nmの広い粒子径分布を示した(図1a))。中空シリカナノ粒子(図1b))の形状及び粒子径分布はテンプレートと類似していた。中空シリカナノ粒子は、PAA-NH4OHテンプレートのレプリカとして形成されたといえる。 ・・・ NH4OHをそれぞれa)1.5ml、b)3.0ml、及びc)6.0ml添加して得られた試料のSTEM画像を図3に示す。NH4OH1.5mlの添加で、中空粒子が得られた(図3a))。それらは、粒子径分布の広い球状粒子であった。・・・) オ 「 [図:0001404737000004.jpg] 」 (Figure 1b))(当審訳:図1b)) カ 「 [図:0001404737000005.jpg] 」 (Figure 3a))(当審訳:図3a)) (8) 甲17の記載事項 甲17には、以下の事項が記載されている。 「【0058】 (中空シリカ粒子の製造) 100mLの二ツ口フラスコ、マグネティックスタラー、マントルヒーター、冷却装置を備える反応装置を用意した。上記で製造したポリスチレン粒子をイオン交換水で0.40wt%に希釈し、二ツ口フラスコに投入して60℃の温度に保ちながら、500rpmで30分間強撹拌して、溶媒としてのイオン交換水中にポリスチレン粒子を均一に分散させた。 【0059】 30分撹拌後、シリカ触媒として、塩基性アミノ酸であるリジン(アルドリッチ社製)と、シリカ源としてテトラエトキシシラン(TEOS98%、アルドリッチ社製)とを添加して6時間撹拌することにより溶液を調製し、室温まで冷却して、溶液中で、ポリスチレン粒子をコアとし、ポリスチレン粒子を被覆したシリカをシェルとするコアシェル粒子を形成した。 【0060】 得られた溶液を、遠心分離機を用いて15000rpm、30分間の条件で分離させた。コアシェル粒子を含む、沈降した部分の溶液を乾燥させ、500℃の温度で熱処理することにより、ポリスチレン粒子、リジン、及びその他の有機化合物を除去して、中空シリカ粒子を製造した。 ・・・ 【0067】 製造された中空シリカ粒子の構造を解析するために、FTIR解析を行った(図1(g))。ポリスチレン粒子と、ポリスチレン/シリカのコアシェル粒子と、中空シリカ粒子とで、異なるピークが観察された(図1(g))。アルキル基(CnH2n+1)のピーク(500~1000cm、1400~1700cm、2800~3200cm)は、ポリスチレン粒子、及びコアシェル粒子の解析ピークに見られた。しかしながら、これらのピークは、中空シリカ粒子では観察されず、Si-O-Si構造のピーク(1000~1200cm)が観察された。これらの結果から、ポリスチレン粒子、及びシリカは、コアシェル粒子を形成し、ポリスチレン粒子が熱分解により完全に除去され、シリカのみが最終生成物として残ったことが分かった(図1(g))。」 (9) 甲18の記載事項 甲18には、以下の事項が記載されている。 ア 「ABSTRACT We have demonstrated the utility of hollow silica nanoparticles in fabricating conformal thin film nanoporous antireflection(AR) coatings on both poly(methyl methacrylate) (PMMA) and glass substrates. Layer-by-layer (LbL) assembly was successfully used to produce ultrathin AR coatings on planar and textured surfaces. Hollow silica nanoparticles were synthesized to extend the range of apparent refractive indices possible in an AR coating, enabling the design of both single index and graded index AR coatings on PMMA substrates. The diameter and shell thickness of the silica nanoparticles are the two independent, controllable parameters that we manipulated to tune the refractive index of the coating. The AR coatings reduced the minimum reflection of PMMA from 7% to 0.5%, while the maximum transmission increased from 92% to 98% at the optimized wavelength region that could be adjusted from the near UV into the visible. Cross sectional SEM showed that conformal coatings can be achieved on grooved PMMA Fresnel lenses. AFM was used to study surface topography on flat substrates.」 (当審訳:要約 我々は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)及びガラス基板のコンフォーマルな薄膜のナノ多孔性反射防止(AR)コーティングの製造において、中空シリカナノ粒子が有用であることを実証した。layer-by-layer (LbL) assembly(交互積層法)を用いて、平面及びテクスチャー加工の表面に極薄のARコーティングを作製するのに成功した。 ARコーティングで可能な見かけの屈折率の範囲を拡大するために、中空シリカナノ粒子を合成し、PMMA基板のシングルインデックス及びグレーデッドインデックスARコーティングの設計を可能にした。シリカナノ粒子の径とシェル厚は、コーティングの屈折率を調整するために操作した2つの独立した制御可能なパラメータである。ARコーティングは、PMMAの最小反射率を7%から0.5%に低下させ、近紫外線(UV)から可視まで調節できる最適化された波長領域で、最大透過率を92%から98%に増加させた。断面走査型電子顕微鏡(SEM)像では、溝付きPMMAのフレネルレンズでコンフォーマルなコーティングが得られることが示された。原子間力顕微鏡を用いて、平面基板表面のトポグラフィーを検討した。) イ 「Reflections from lenses in an optical system are undesirable because they contribute to a significant loss of transmitted light, which decreases the quality of the final image.1-5 Any coating that is designed to reduce these reflections must also minimize extra scattering losses from the film, a requirement that is more difficult to achieve at lower wavelengths.6-8 Hence, scattering of light within the coating can play an important role in AR films designed to operate in the near UV region, and it remains a challenge to maximize transmission in this region of the spectrum. To overcome this difficulty, a relatively smooth coating with small feature sizes (less than 1/10th of the target wavelength) is required. One example of the need for a UV AR coating can be found in telescopes used in space to study cosmic ray showers in the atmosphere.9,10 Cosmic ray showers emit light in a very narrow band of the near UV region with wavelengths of 300-400nm. In particular NASA intended to launch a telescope on the International Space Station to observe this phenomenon. The lens used in this telescope is a 2.5m diameter PMMA Fresnel lens with micrometer-scale [~150μm] grooves etched into its surface. Achieving a satisfactory AR coating on a PMMA Fresnel lens requires a process which employs low temperatures (PMMA Tg~(当審注:「~」は「~」を上下に2つ重ねたもの)105℃),canbescaleduptocoatlargesubstrates,andyieldsanARfilmwhichisconformal,hasatunableandlowrefractiveindex,andexhibitsveryprecisecontrolofcompositiononthenanometerscale.Inthispaper,wewilladdress the above requirements and demonstrate feasible coatings for this application.・・・」 (当審訳:光学システムにおけるレンズからの反射は、透過光の著しい損失の一因となり最終画像の質を低下させるため好ましくない。1-5これらの反射を抑制するよう設計されたコーティングは、フィルムからの余分な散乱損失も最小限に抑える必要がある。これは、低波長で実現するのがより困難な要件である。6-8したがって、コーティング内の光の散乱は、近UV領域で機能するよう設計されたARフィルムにおいて重要な役割を果たし、スペクトルのこの領域での透過率を最大化することは依然として課題である。この問題を克服するには、小さな形状(ターゲット波長の1/10未満)の比較的滑らかなコーティングが必要である。UV ARコーティングの必要性の一例として、大気中の宇宙線シャワーを研究するために宇宙で使用するテレスコープが挙げられる。9、10宇宙線シャワーは、近UV領域(波長300-400nm)の非常に狭い帯域の光を放出する。特にアメリカ航空宇宙局(NASA)は、この現象を観察するために、国際宇宙ステーションにテレスコープの打ち上げを意図していた。このテレスコープに使用されるレンズは、直径2.5mのPMMAフレネルレンズで、マイクロメータースケール[約150μm]の溝が表面にエッチングされている。PMMAフレネルレンズで良好なARコーティングを得るには、低温(PMMA Tg~(当審注:「~」は「~」を上下に2つ重ねたもの)105℃)を使用し、大きな基板をコーティングするためにスケールアップすることができ、コンフォーマルで、調節可能な低屈折率を有し、極めて正確にナノメータースケールで組成を示すARフィルムを形成するプロセスが必要である。本稿では、上記の要件に取り組み、この用途のために実現可能なコーティングを示す。・・・) ウ 「RESULTS AND DISCUSSION Synthesis of Hollow Silica Nanoparticles. There are a number of synthetic methods41,42 that have been used to synthesize hollow silica nanoparticles. Wan and Yu reported a facile one-step solution-based synthetic route to produce high yields of hollow silica nanoparticles using controlled hydrolysis of TEOS via the Stober(当審注:「o」は「o」の上に「・・」) method.41 By implementing this method, we can control the nanoparticle's size and shell thickness independently, allowing us to design an AR coating which is optimized for a particular wavelength region. Changing the reactant ratios allows one to tune the diameter of the hollow silica nanoparticles from 50 to 400nm and the wall thickness from 1O to 33nm.41-43 Using a similar synthesis protocol, we created hollow silica nanoparticles with quite uniform wall thicknesses. Figure 1 panels a, b, and c show hollow silica spheres synthesized with 0.27g/2.25mL, 0.36g/1.5mL, and 0.60g/1.5mL of PAA to TEOS (g to mL), respectively, while the amounts of ethanol, and ammonia as well as the synthesis conditions were held constant as described in the Experimental Section. The mean diameter and shell thickness were measured to be around 76 and 22nm for sample H80 (Figure 1a), 97 and 11nm for sample H150 (Figure lb), and 228 and 22nm for H300 (Figure 1c). Table 1 shows the relationship between synthetic conditions and the resulting hollow silica nanoparticle structures. An attempt to produce thinner shells by further increasing the relative amount of PAA to TEOS to 0.36g/0.9mL resulted in ruptured particles as shown in Figure 1d. The minimum shell thickness achieved for stable hollow silica nanoparticles was 1Onm. From the data collected, we found that the amount of TEOS controls shell thickness, whereas the ratio of PAA to ethanol determines particle size. These findings are in agreement with the results of Wan and Yu.41 To further understand the mechanism of the Stober(当審注:「o」は「o」の上に「・・」) method, HRTEM was performed before rinsing the synthesized particles with DI water. We observed some ultrafine 5nm silica nanoparticles within the cavity of the larger, hollow silica nanoparticles. These ultrafine silica nanoparticles and the silica shell itself densified and the silica shell shrank until there was no longer void space in the shell when exposed to the electron beam during TEM imaging. This observation may be due to the presence of both PAA and TEOS in the hollow silica structure before the DI water rinsing step, resulting in further TEOS precipitation to form very small nanoparticles. A detailed discussion and representative HRTEM images (Figure S1) are shown in the Supporting Information. Synthesized hollow silica nanoparticles, in particular samples H80 and H150 showed uniform shell thickness and a highly reproducible core-shell structure. Consequently, H80 and H15O were employed as starting materials for LbL assembly of a single index and graded index AR coatings, respectively.・・・」 (当審訳:結果及び考察 中空シリカナノ粒子の合成。中空シリカナノ粒子の合成に用いられてきた多くの合成方法41、42がある。Wan及びYuは、Stober(当審注:「o」は「o」の上に「・・」)法によるテトラエトキシシラン(TEOS)の制御された加水分解を用いて、中空シリカナノ粒子を高収率で生産するための簡便な一段階溶液ベースの合成方法を報告した。41この方法を用いることで、ナノ粒子のサイズとシェル厚を別々に制御することができ、特定の波長領域に最適化されたARコーティングの設計が可能となる。反応剤の比率を変えることにより、中空シリカナノ粒子の径を50から400nmまでに、壁厚を10から33nmまで調節することができる。41-43我々は、同様の合成プロトコルを用いて、壁厚が非常に均一な中空シリカナノ粒子を作製した。図1のパネルa、b、cは、実験の項で述べたようにエタノール及びアンモニア量と合成条件は一定に保ちながら、PAA(g)/TEOS(mL)をそれぞれ0.27g/2.25mL、0.36g/1.5mL、0.60g/1.5mLで合成した中空シリカ球体を示している。平均径及びシェル厚は、サンプルH80(図1a)が約76nmと22nm、サンプルH150(図1b)が97nmと11nm、H300(図1c)が228nmと22nmと測定された。表1に合成条件と得られた中空シリカナノ粒子構造の関係を示す。TEOSに対するPAAの相対量を0.36g/0.9mLに増加させて、より薄いシェルの作製を試みたところ、図1dに示すように破裂粒子が生じた。安定した中空シリカナノ粒子で得られた最小シェル厚は10nmであった。収集したデータから、TEOS量はシェルの厚さを制御するのに対し、エタノールに対するPAAの比率が粒子径を決定することが明らかになった。これらの結果はWan及びYuの結果と一致している。41Stober(当審注:「o」は「o」の上に「・・」)法の機序をより詳細に理解するために、合成した粒子を脱イオン化(DI)水で洗浄する前に高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)を用いて観察した。大きな中空シリカナノ粒子の空洞内に超微細な5nmのシリカナノ粒子が認められた。これらの超微細なシリカナノ粒子とシリカシェル自体は、高密度化し、シリカシェルは、透過型電子顕微鏡(TEM)撮像時に電子ビームの照射を受けるとシェル内の空隙がなくなるまで収縮した。この観察は、PAAとTEOSの両方がDI水洗浄工程の前に中空シリカ構造内に存在し、その結果TEOSがさらに沈殿し、非常に小さなナノ粒子が形成されたためと考えられる。詳細な考察及び代表的なHRTEM画像(図S1)を補足情報に示す。合成された中空シリカナノ粒子、特にサンプルH80とH150は、均一なシェル厚と高い再現性のあるコアシェル構造を示した。それゆえ、H80とH150を、それぞれシングルインデックスとグレーデッドインデックスARコーティングのLbL法の出発物質として用いた。・・・) エ 「CONCLUSIONS We have successfully synthesized hollow silica nanoparticles with variable particle size and shell thickness to achieve UV AR coatings via single and graded index designs. When we deposited these nanoparticles onto substrates, specifically glass and PMMA, their internal voids allowed the assembly of coatings with porosities as high as 75% and an apparent refractive indices as low as 1.11. Single index AR coatings can be achieved with optimized AR performance at any wavelength between 300 and 650nm; reflection near the targeted wavelength was reduced from 7% to 0% and transmission was increased from 92% to 97%. In addition, a graded index AR design was also successfully achieved, yielding reflectance of below 2% over the whole UV-vis region (200-800nm).」 (当審訳:結論 粒子径とシェル厚さを変えることができる中空シリカナノ粒子の合成に成功し、シングルインデックス及びグレーデッドインデックス設計による、UV ARコーティングを実現した。これらのナノ粒子を基板、特にガラス及びPMMAに堆積させた場合、それらの内部空隙により、75%の高い空隙率、1.11の低い見かけの屈折率を有するコーティングの形成が可能となった。シングルインデックスARコーティングは、300から650nmの間の波長で最適化されたAR性能により達成できる。ターゲット波長付近の反射率は7%から0%に低下し、透過率は92%から97%に上昇した。また、UV-visの全領域(200-800nm)の反射率が2%未満となる、グレーデッドインデックスAR設計にも成功した。) オ 「EXPERIMENTAL SECTION Mateials. Silica nanoparticles Ludox SM-30 (30wt% Si02 suspension in water, average particle size 7nm) were purchased from Sigma-Aldrich (St. Louis, MO). Tetraethoxysilane (TEOS, 98% reagent grade), poly(acrylic acid) (PAA, Mw~(当審注:「~」は「~」を上下に2つ重ねたもの)5000; 50wt% in aqueous solution) was purchased from Polysciences, Inc. Poly(allylamine hydrochloride) (PAH, Mw~(当審注:「~」は「~」を上下に2つ重ねたもの)56000) and ammonium hydroxide (28% NH3 in water) were purchased from Sigma-Aldrich. Zirconium(IV) oxide (20wt% ZrO2 suspension in water, average particle size = 7nm) was purchased from Alfa Aesar. The information on average size of the nanoparticles was provided by the suppliers. Glass slides were purchased from VWR International, and UV transparent PMMA substrates were provided by Agiltron, lnc. Synthesis of Hollow Silica Nanoparticles. Uniform hollow silica spheres were prepared by a modified Stober(当審注:「o」は「o」の上に「・・」) method.41,42First, 0.27g of PAA dissolved in 4.5mL of ammonium hydroxide was mixed with 90mL of absolute ethanol, followed by injection of 5 TEOS aliquots totaling 2.25mL at 1h time intervals under vigorous magnetic stirring at room temperature.41,42 After 10h, a white colloid containing 80nm hollow silica nanoparticles formed. This colloid was centrifuged several times with deionized water (>18MΩ・cm, Millipore Milli-Q) and then dried at room temperature. Hollow silica spheres with different diameters and/or wall thicknesses were prepared by varying the concentrations of polyelectrolyte in ammonia and/or TEOS in ethanol (Table 1). During synthesis, vigorous continuous stirring is crucial for the formation of hollow silica nanoparticles.」 (当審訳:実験 材料。シリカナノ粒子Ludox SM-30(30wt% SiO2懸濁液、平均粒子径7nm)はシグマアルドリッチ(ミズーリ州セントルイス)から購入した。テトラエトキシシラン(TEOS 98%、試薬1級)、ポリ(アクリル酸)(PAA、分子量~(当審注:「~」は「~」を上下に2つ重ねたもの)5000、50wt%水溶液)はポリサイエンス社から購入した。ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH、分子量~(当審注:「~」は「~」を上下に2つ重ねたもの)56000)及び水酸化アンモニウム(28% NH3水溶液)はシグマアルドリッチから購入した。酸化ジルコニウム(IV)(20wt% ZrO2懸濁液、平均粒子径=7nm)はアルファエイサー社から購入した。ナノ粒子の平均サイズに関する情報は供給業者から提供された。ガラススライドはVWR Internationalより購入し、UV透過PMMA基板はAgiltron社より提供を受けた。 中空シリカナノ粒子の合成。均一な中空シリカ球は、改変Stober(当審注:「o」は「o」の上に「・・」)法により調製した。41、42最初にPAA 0.27gを水酸化アンモニウム4.5mLに溶解し、無水エタノール90mLと混合した後、合計2.25mLのTEOSの5分割のアリコートを室温で激しく磁気撹拌しながら1時間間隔で注入した。41、4210時間後、80nmの中空シリカナノ粒子を含有する白色コロイドが形成された。このコロイドは、脱イオン水(>18MΩ・cm、Millipore Milli-Q)で数回遠心分離した後、室温で乾燥させた。異なる粒子径及び/または壁厚の中空シリカ球は、アンモニア中の高分子電解質及び/またはエタノール中のTEOS濃度を変化させることにより調製した(表1)。中空シリカナノ粒子の形成には、合成中の激しい連続撹拌が不可欠である。) カ 「 [図:0001404737000006.jpg] 」(Figure 1a)(当審訳:図1a) キ 「 [図:0001404737000007.jpg] 」(Figure 1b)(当審訳:図1b) ク 「 [図:0001404737000008.jpg] 」(Figure 1c)(当審訳:図1c) (10) 甲19の記載事項 甲19には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項7】 中空の無機微粒子が中空シリカ微粒子であり、該中空シリカ微粒子の屈折率が1.40以下であることを特徴とする、請求項4~6のいずれかに記載の反射防止フィルム。 【請求項8】 中空シリカ微粒子が、粒子サイズが45~80nmであり、屈折率が1.30以下の中空シリカ微粒子であることを特徴とする、請求項7に記載の反射防止フィルム。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 中空シリカ粒子を低屈折率層に含有した反射防止膜では、確かに従来のものに対して耐擦傷性や指紋等の汚れの付着耐性は向上したが、偏光板作成時の鹸化により膜が破壊されたり、また新たに水滴が付着した場合にその跡が残るという問題が明らかになった。反射防止膜はディスプレイの最表面に使用されるため、日常の使用で水滴が付着する場合があり、実用的な耐久性を付与する観点で、改良が必要であった。 本発明の目的は、反射率が低くぎらつきが押さえられ、水滴付着跡・防汚性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。更には、そのような反射防止フィルムを用いた偏光板や画像表示装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は、鋭意検討の結果、以下の構成の反射防止フィルム、偏光板、及びそれを用いた画像表示装置により本発明の上記目標が達成できることを見出した。 ・・・ (7)中空の無機微粒子が中空シリカ微粒子であり、該中空シリカ微粒子の屈折率が1.40以下であることを特徴とする、上記(4)~(6)のいずれかに記載の反射防止フィルム。 (8)中空シリカ微粒子が、粒子サイズが45~80nmであり、屈折率が1.30以下の中空シリカ微粒子であることを特徴とする、上記(7)に記載の反射防止フィルム。 ・・・」 ウ 「【0012】 [空孔含有微粒子の調製方法] これらの空孔含有微粒子(多孔質又は中空の微粒子)を使用する際に、構造・種類に制限は無いが、好ましくは多孔質の無機酸化物微粒子、最も好ましくは中空の有機ポリマーラテックスか中空の無機酸化物微粒子である。無機酸化物微粒子の場合には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズを主成分とする微粒子が好ましい。 中空微粒子の好ましい製造方法は、以下の工程よりなる。第1段階として後処理で除去可能なコア粒子形成、第2段階としてシェル層形成、第3段階としてコア粒子の溶解、必要に応じて第4段階として追加シェル相の形成である。具体的には中空粒子の製造は、例えば特開2001-233611号公報に記載されている中空シリカ微粒子の製造方法に準じて行うことができる。 多孔質粒子の好ましい製造方法は、第1段階としてアルコキシドの加水分解や縮合の程度、共存物質の種類や量を制御し多孔質のコア粒子を製造し、第2段階としてその表面にシェル層を形成する方法である。具体的には多孔質粒子の製造は、例えば、特開2003-327424号、同2003-335515号、同2003-226516号、同2003-238140号等の各公報に記載された方法で行うことができる。 ・・・ 【0014】 [空孔含有微粒子の粒子サイズの測定] 本発明の空孔含有微粒子のサイズの測定は、粒子を透過型電子顕微鏡で観察し、円相当径を1000個の平均で算出した。直径は20~100nmが好ましく、更に好ましくは35~100nm、最も好ましくは45~80nmである。粒子径が小さ過ぎると屈折率の上昇や吸着水量の増大が認められ好ましくなく、粒子径が大きすぎると反射防止フィルムを構成した際の塗膜での散乱が大きくなり好ましくない。 本発明においては、空孔含有微粒子はサイズ分布を有していても良く、その変動係数は好ましくは60%~5%、更に好ましくは50%~10%である。また、平均粒子サイズの異なる2種又は3種以上の粒子を混合して用いることもできる。」 エ 「【0120】 調製例4[無機微粒子(P-4)の調製] 平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル90gとイオン交換水1710gとを混合して反応母液を調製し、95℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液24,900gと、Al2O3として0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液36,800gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を91℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3コア粒子の分散液(A)を調製した。(第1調製工程) 次いで、このコア粒子の分散液(A)500gを採取し、イオン交換水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)2,100gを添加してコア粒子表面にシリカ保護膜を形成した。得られたシリカ保護膜を有するコア粒子の分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%に調整したのち、コア粒子の分散液500gにイオン交換水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行ったのち、pH3の塩酸水溶液10Lとイオン交換水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、粒子前駆体分散液を調製した。(第2調製工程) 上記粒子前駆体分散液1500gと、イオン交換水500gおよびエタノール1,750gとの混合液を30℃に加温した後、テトラエトキシシラン(SiO228質量%)40gと28%アンモニア水626gを速度を制御しながら添加し、粒子前駆体表面にテトラエトキシシランの加水分解重縮合物でシリカ外殻層を形成することによって、外殻層内部に空洞を有する粒子を作製した。次いで、エバポレーターで固形分濃度5質量%まで濃縮した後、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10とし、オートクレーブで180℃、4時間加熱処理し、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ微粒子ゾル(空孔含有無機微粒子)(P-4)の分散液を調製した。(第3調製工程) ・・・ 【0139】 【表1】 [図:0001404737000009.jpg] 」 (11) 甲21の記載事項 甲21には、以下の事項が記載されている。 ア 「【背景技術】 【0002】 従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の反射を防止するため、その表面に反射防止膜を形成することが知られており、たとえば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率の物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成したり、シリカ微粒子等の低屈折率微粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止被膜を形成する方法が知られている(たとえば、特開平7-133105号公報など参照)。このとき、反射防止性能を高めるために反射防止被膜の下層に高屈折率の微粒子等を含む高屈折率膜を形成することも知られている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、低屈折率シリカ系中空微粒子を用いた透明被膜において、白化現象が起きる問題があった。また、さらに、反射防止性能を更に向上させることが求められていた。 ・・・ 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、平均粒子径が所定の範囲にあり、均一な粒子径分布を有する屈折率の低いシリカ系中空微粒子を含み、該シリカ系中空微粒子と大きさ、形状がかけ離れたシリカ系中空微粒子を含まないために白化が抑制された反射防止性能、強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜付基材および該透明被膜形成用塗料を提供することができる。」 イ 「【0016】 シリカ系中空微粒子 本発明に用いるシリカ系中空微粒子は、シリカを主成分として内部に空洞を有する粒子である。かかるシリカ系中空微粒子は、シリカ以外に、アルミナ、マグネシアなどの酸化物や、アルカリ金属の酸化物・水酸化物を含んでいてもよい。ただし、透明被膜の用途という点では、実質的にシリカからなることが好ましい。 【0017】 平均粒子径(Dn)が50~120nm、さらには70~80nmの範囲にあることが好ましい。 シリカ系中空微粒子の平均粒子径が小さすぎると、シリカ系中空微粒子の粒子径の割に殻が厚く、粒子内部の空洞の割合が小さいために屈折率が高く、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。 ・・・ 【0022】 このため、本発明では、シリカ系中空微粒子中の異形シリカ系中空微粒子の個数割合が1%以下とし、さらには0.5%以下であることが好ましい。 なお、異形シリカ系中空微粒子とは、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径であり、かつ球状シリカ系中空微粒子または球状シリカ系中空微粒子が2個以上結合したシリカ系中空微粒子を意味している。 【0023】 本発明で使用されるシリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が1~50%、さらには2~30%の範囲にあることが好ましい。 シリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が小さい粒子は得ることが困難である。 シリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が大きすぎると、シリカ系中空微粒子の粒子径の差が大きく密に充填できないために透明被膜の強度が低下したり、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。 【0024】 本発明に用いるシリカ系中空微粒子の平均粒子径(Dn)は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の1000個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として得られる。 また、本発明に用いるシリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)は下記式によって計算される。 CV(%)=〔粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn)〕×100 【0025】 [図:0001404737000010.jpg] Di:個々の粒子の粒子径、n=1000 本発明で使用されるシリカ系中空微粒子は内部が中空のため、単なるシリカ粒子に比べて屈折率が低く、通常、屈折率は1.10~1.30、さらには1.10~1.25の範囲にあることが好ましい。 ・・・ 【0028】 シリカ系中空微粒子の製法 本発明に用いるシリカ系中空微粒子としては、前記した異形シリカ系中空微粒子の数割合が1%以下で、平均粒子径、屈折率および粒子径変動係数が前記した範囲にあれば特に制限はないが、特開2001-23611号公報、特開2004-203683号公報、特開2006-21938号公報等に開示したシリカ系微粒子の製造方法に準拠して製造することができる。 【0029】 具体的には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を核とし、必要に応じてシリカ被覆層(1)を形成した後、シリカ以外の無機酸化物を除去し、さらに必要に応じてシリカ被覆層(2)を形成し、必要に応じて高温で水熱処理することによって得ることができるが、シリカ以外の無機酸化物を除去する前の段階の粒子を調製する工程での濃度、即ち、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を調製する工程、必要に応じてシリカ被覆層(1)を形成する工程での濃度を低濃度にすることによって異形シリカ系中空微粒子の少ないシリカ系中空微粒子を得ることができる。」 ウ 「【0090】 [実施例5] シリカ系中空微粒子(P-3)の調製 シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液10,500gとAl2O3としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10,500gを25時間で添加して、SiO2・Al2O3一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.8質量%であった。また、平均粒子径は51nmであった。 【0091】 ついで、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液33,560gとAl2O3としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液11,190gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(3)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.9質量%であった。 【0092】 分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(3)分散液を得た。このとき、平均粒子径は78nm、CV値=28.0%であった。 【0093】 この複合酸化物微粒子(3)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3-1)の水分散液を得た。 【0094】 つぎに、シリカ系微粒子(P-3-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3-2)の水分散液を得た。 【0095】 ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。 固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。 このシリカ系中空微粒子(P-3)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。 【0096】 反射防止用透明被膜形成用塗料(5)の製造 実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(5)を調製した。 【0097】 反射防止用透明被膜付基材(5)の製造 実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(5)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(5)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。 この反射防止用透明被膜付基材(5)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。 ・・・ 【0146】 【表1】 [図:0001404737000011.jpg] 」 (12) 甲22の記載事項 甲22には以下の事項が記載されている。 ア 「 本発明の方法を実施する際に支持体として使用できる材料としては、活性シリカ(ヒドロキシル化シリカ)に関して不活性であり、スラリー形成操作のpH及び温度条件下で水に不溶性であり、任意の形状(球形状、針状など)を有し且つその化学的及び物理的性質に依存する処理によってそれを含有する粒子から除去できる任意の無機又は有機固体又は液体状の化合物が挙げられる。該支持体は好ましくは固体状である。 用語“シリカに関して不活性である化合物”とは、シリカの沈殿のための条件下で安定のままである任意の化合物を意味するものと理解されたい。 “水に不溶性である化合物”とは、25℃でほぼ0.5重量%未満の水溶解度を示す任意の化合物を意味するものと理解されたい。 支持体(コア)構成材料の除去操作に関しては、これは、該材料の性状に従がって、固体については溶解(酸又は非極性溶媒を使用して)、次いで分離操作による処理;材料の如何を問わず熱処理;或いはそれが液体であるときは単純な分離操作であってよい。材料の性状(固体、液体、無機又は有機)の如何を問わず、後者は、該材料の蒸発又は分解温度に少なくとも等しいがシリカシェルを損なわない温度での熱処理によって除去することができる。使用できる固体材料には、無機又は有機酸を8以下、好ましくは2~7のpHで使用して或いは非極性溶媒を使用して溶解させることによって除去できるものが挙げられるが、この溶解操作に続いて分離、例えば遠心分離、ろ過、蒸留、蒸発、透析、浸透などが行われる。酸、好ましくは水溶液状の酸を使用して溶解させることにより除去することができる固体材料のうちでは、例えば炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどのような無機塩類、例えば銅などのような金属、例えばアミン含有重合体(例えば、ビニルピリジンから誘導されるもの)、架橋多糖類などのような酸に可溶性の有機重合体が挙げられる。もちろん、使用すべき酸の性状は、該材料の化学的性質の関数である。非極性溶媒により溶解することができる固体材料のうちでは、アルカリに可溶性でない有機重合体、特にポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。もちろん、使用すべき非極性溶媒の性状は、該材料の化学的性質の関数である。塩素化溶媒(ジクロルメタンなど)、テトラヒドロフランなどが一般に十分に好適である。」(8ページ下から2行~9ページ下から2行) イ 「例1 炭酸カルシウムコアとシリカシェルとからなる粒子の製造 初期容器底部装入物を、15リットルの反応器に、5リットルの水、塩化ナトリウムとして0.68モル(容器底部装入物1リットル当たり)のナトリウム、4μmの粒度及び16m2/gのBET比表面積を示す1150gの沈降炭酸カルシウム及び容器底部装入物1リットル当たり3gのSiO2の濃度に相当する量の珪酸ナトリウム(これは130g/lのSiO2を含有する水溶液であり、3.5のSiO2/Na2O比を有する)を導入することによって製造する。9のpHの容器底部装入物を90℃にもたらし、攪拌し続ける。 続いて、下記の物質: ・濃度が130g/lのSiO2であって、3.5のSiO2/Na2O比を有する珪酸ナトリウム水溶液、及び ・80g/lの酸を含有する硫酸水溶液 を30分間で230gのシリカを形成させるように同時に導入する。 30分間熟成した後、得られたスラリーをろ過し、ろ過ケーキを水洗し、次いで80℃のオーブンで乾燥する。 生成物を電子顕微鏡(TEM)により分析すると、付着したシリカ層の厚みが5nm程度であることが示された。 粒子のBET比表面積は、21m2/gであった。 珪酸ナトリウムの添加速度は0.4g(SiO2)/h/g(CaCO3)であったが、これに対して従来技術(米国特許第2,885,366号)に従う場合は0.08g(SiO2)/h/g(CaCO3)である。 コアの除去 上で得た300gの乾燥粒子を2.7リットルの水に再分散させる。濃塩酸(8.5M)を2以下のpHをもたらすように添加する。酸の添加をこのpHが安定化するまで30分間続ける。 次いで、得られた生成物をろ過し、十分に洗浄し、オーブンで80℃で乾燥する。 得られた中空粒子は下記の特性: ・207m2/gのBET比表面積、 ・シリカ100g当たり612mlのDOP吸油量、 ・5nm程度のシェル厚 を示した。」(14ページ下から2行~16ページ2行) (13) 甲23の記載事項 甲23には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0007】 このため、平均粒子径が小さいシリカ系微粒子を用いた透明被膜は屈折率が十分に低くならず反射防止性能が不十分となることがあった。 他方、平均粒子径が大きいシリカ系微粒子を用いた透明被膜は屈折率が低く、反射防止性能は優れているものの、表面の平滑性が低下し、透明被膜の強度、耐擦傷性が十分でないことがあった。 ・・・ 【課題を解決するための手段】 【0009】 このような情況のもと、上記問題点を解消すべく、鋭意検討した結果、シリカ系中空微粒子として、平均粒子径が特定の範囲にあるだけではなく、粒子径変動係数(CV値)の小さいものであれば、上記課題をいずれも解消し、反射防止性能に優れ、かつ膜表面が平滑で、耐擦傷性にすぐれた透明被膜付基材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」 イ 「【0015】 シリカ系中空微粒子 本発明に用いるシリカ系中空微粒子は平均粒子径(Dn)が20~80nm、好ましくは30~75nmの範囲にあるものが望ましい。該中空微粒子は殻層と中芯部からなり、殻層がシリカからなり、中芯部は液体(溶媒や珪酸水溶液など)、気体で充満されている。 【0016】 殻は一定の厚さよりも薄くできないので、平均粒子径が小さければ、粒子内部の空洞の割合が小さくなり、粒子の屈折率が高くなってしまう。このため、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。平均粒子径が大きすぎると、粒子が大きいために透明被膜の強度が不充分で、しかも透明被膜表面の平滑性が低下するために耐擦傷性も不充分となる場合がある。 【0017】 また、シリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が1~50%、さらには2~30%の範囲にあることが好ましい。 粒子径変動係数(CV値)が小さいものは、得ること自体困難であり、粒子径によっても異なるが、得られたとしてもシリカ系中空微粒子の粒子径が均一すぎて密に充填できないために透明被膜の強度が低下したり、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。粒子径変動係数(CV値)が大きすぎても、シリカ系中空微粒子の粒子径の差が大きく密に充填できないために透明被膜の強度が低下したり、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。」 ウ 「【0083】 [実施例3] シリカ系中空微粒子(P-3)の調製 ・・・ 【0090】 ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM-503)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系中空微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。 このシリカ系微粒子(P-3)の平均粒子径、CV値および屈折率を表1に示す。 ・・・ 【0152】 【表1】 [図:0001404737000012.jpg] 」 5 当審の判断 事案に鑑み、(1)取消理由1と取消理由2、(2)取消理由3と申立理由1、(3)取消理由4と申立理由2、(4)取消理由5と申立理由3は、それぞれ纏めて検討する。 (1) 取消理由1(実施可能要件違反)、取消理由2(明確性要件違反)について ア 上記取消理由1及び上記取消理由2は、先の訂正請求における訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の【請求項1】の「・・・会合していない、シリカ系中空粒子。」に着目したものであって、各取消理由の概要は、以下(ア)、(イ)のとおりである。 (ア) 本件明細書には、会合していないシリカ系中空粒子を生産できるように記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明は、当業者が先の訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 (イ) 先の訂正請求により訂正された請求項1に記載された「シリカ系中空粒子」が「会合していない」ことをどのように判断すればよいのか不明であるため、当該請求項1の記載、及びこれを引用する請求項2は不明確である。 イ しかしながら、上記第1のとおり、先の訂正請求は取り下げられたものとみなされ、上記第3のとおり、本件訂正後の本件発明に「会合していない」との特定事項はないから、上記取消理由1、2に理由はない。 (2) 取消理由3、申立理由1(甲4を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如)について ア 甲4に記載された発明 甲4には、上記4(3)ア及びウによれば、内部が空洞のシリカ粒子を構成するシリカ層がシリカのみで構成されていることが記載されている。 以上を踏まえつつ、上記4(3)に記載された事項を、内部が空洞のシリカ粒子に注目して整理すると、甲4には、 「画像で示される内部が空洞のシリカ粒子であって、 粒子径が数十nmであり、 内部が空洞のシリカ粒子を構成するシリカ層がシリカのみで構成されている、内部が空洞のシリカ粒子。」 の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲4発明を対比すると、甲4発明の「内部が空洞のシリカ粒子」、「構成」及び「シリカ層がシリカのみで構成」は、それぞれ、本件発明1の「シリカ系中空粒子」、「形成」及び「シリカ系化合物がシリカのみで形成」に相当する。 すると、両者は、 「シリカ系中空粒子であって、 シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、 シリカ系中空粒子」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1-1) 本件発明1では、シリカ系中空粒子に関して「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~26.1%であ」って、「平均粒子径が30~55.2nm」であるのに対して、甲4発明では、シリカ系中空粒子が「画像で示される」ものであって、「粒子径が数十nm」であることが特定されている点。 (イ) 相違点1-1について 甲4の上記画像(上記4(3)イ)から見て取れる45個の内部が空洞のシリカ粒子について、本件明細書の【0021】及び【0023】に記載された手順に準じて、粒子径の変動係数及びアスペクト比が1.5以下の粒子の割合を解析すると、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の100%を占め、粒子径の変動係数が27.3%となる(異議申立書の74ページの表も参考にした。)。 また、「数個」とは「二~三個から五~六個ほどの個数をいう語。」(広辞苑第四版、株式会社岩波書店、1991年11月15日、第1363頁)であることを踏まえると、甲4発明の「数十nm」は20~60nm程度といえる。 そうすると、甲4発明の粒子径の変動係数は、本件発明1の数値範囲に含まれず、また、甲4発明の粒子径は、本件発明1の平均粒子径に係る数値範囲と異なるから、上記相違点1-1は、実質的な相違点である。 そして、上記4(3)のとおり、甲4には、シリカ系中空粒子に関して、「粒子径の変動係数」を「20~26.1%」としつつ、「平均粒子径が30~55.2nm」とすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲11~13に記載されておらず(上記4(6)~(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲4発明において、当該相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明でなく、また甲4に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張について a 令和5年5月15日提出の意見書における申立人の主張は、概略、以下(a)、(b)のとおりと理解できる。 (a) 甲1、甲2及び甲23の記載(上記4(1)、(2)、(13)参照)によれば、ナノ粒子の技術分野において、充填性が関心の対象であること並びに充填性が粒子径及び粒子径分布による影響を受けることは技術常識であるから、甲4発明に接した当業者は、所望の設計に応じ、シリカ系中空粒子の充填性を適宜調整するため、通常の創作能力の発揮として粒子径及び粒子径分布を変更する動機付けがあり、その結果、相違点1-1に係る本件発明1の構成に容易に想到することができたものである。 (b) 甲23の実施例3には、シリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)を23%、平均粒子径を52nmとした例が記載されている(上記4(13)ウ参照)から、当業者には甲4発明に対し、シリカ系中空微粒子の低屈折材料等に用いる同一の技術分野における文献である甲23に記載された技術的事項を適用し、粒子径変動係数を23%、平均粒子径を52nmとすることに動機付けがあり、当業者が容易に想到し得たものである。 b 上記aの各主張について検討する。 上記a(a)についていうと、仮に充填性が粒子径及び粒子径分布による影響を受けることが技術常識だったとしても、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成である「粒子径の変動係数が20~26.1%であ」って、「平均粒子径が30~55.2nm」とすることまで出願時の技術常識であったということはできない。また、上記a(b)についてみても、確かに甲23の実施例3にはシリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)を23%、平均粒子径を52nmとしたことは記載されているものの、甲4発明において、甲23の実施例3における粒子径変動係数(CV値)及び平均粒子径という、特定の文献中の特定のパラーメータのみを採用する動機付けまでは見出せない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 本件発明2について 本件発明1を引用する本件発明2についても、上記イと事情は同じであるから、本件発明2は、甲4に記載された発明でなく、また甲4に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 エ 本件発明3について (ア) 対比 本件発明3と甲4発明を対比すると、甲4発明の「内部が空洞のシリカ粒子」、「構成」は、それぞれ、本件発明3の「シリカ系シェルを有する」「粒子」、「形成」に相当する。 甲4発明の「シリカ層がシリカのみで構成」は、本件発明3の「シリカ系化合物がシリカのみで形成」に相当する。 そうすると、両者は、 「シリカ系シェルを有する粒子であって、 シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1-2) 本件発明3が「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子」であって、「前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であ」るのに対し、甲4発明は「内部が空洞のシリカ粒子」である点。 (相違点1-3) 本件発明3の粒子が「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、平均粒子径が30~150nmであ」るのに対し、甲4発明の粒子は「画像で示される」ものであって、「粒子径が数十nm」である点。 (イ) 相違点について 事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。 甲4の記載をみても(上記4(3)参照)、甲4発明のシリカ系中空粒子により、所定のカチオン性ポリスチレン粒子を被覆してコアシェル粒子とすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲11~13に記載されておらず(上記4(6)~(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲4発明において、当該相違点に係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、上記相違点1-3について検討するまでもなく、本件発明3は、甲4発明に基いて当業者が容易に想到し得たものといえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人は、概略、甲4発明に対し、技術常識又は中空のシリカ粒子として技術分野を同じくする甲13に記載された方法(上記4(6)参照)を採用することにより、本件発明3を容易に想到することができる旨を主張する(異議申立書の82頁下から3行~89頁下から2行)。 しかしながら、甲4発明のシリカ系中空粒子により、所定のカチオン性ポリスチレン粒子を被覆してコアシェル粒子とすることは技術常識とは認められず、また甲13をみても、甲4発明に係るシリカ粒子のコアを所定のスチレン粒子とすることについて記載も示唆もないから、申立人の上記主張は採用できない。 オ 本件発明4~9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」に係る発明であり、本件発明5~8は、「カチオン性ポリスチレン粒子」を製造する工程を含むシリカ系中空粒子又はコアシェル粒子の製造方法に係る発明であり、また、本件発明9は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」の製造方法に係る発明であるから、上記エで検討した相違点1-2と同様な理由により、本件発明4~9は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 カ 取消理由3及び申立理由1のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る取消理由3及び申立理由1に理由はない。 (3) 取消理由4、申立理由2(甲16を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如)について ア 甲16に記載された発明 甲16には、上記4(7)アによれば、中空シリカナノ粒子を構成するシェルがSiO2(シリカ)シェルであることが記載されていること、また、上記4(7)ア及びウによれば、中空シリカナノ粒子が、ポリ(アクリル酸)(PAA)と少量のアンモニア溶液(NH4OH)からなる高分子電解質テンプレートをエタノールに分散させた懸濁液に、シリカ前駆体であるテトラエトキシシラン(TEOS)を添加し、撹拌、分離、洗浄、乾燥するという製造方法で得られることを踏まえると、中空シリカナノ粒子を構成するシェルはシリカのみで構成されていると認められる。 さらに、甲16には、上記4(7)イによれば、中空シリカナノ粒子は、固体/液体負荷、熱/電気絶縁、特殊光学特性などを提供し、多様な分野に応用されていることが記載されている。 以上を踏まえつつ、上記4(7)に記載された事項を、中空シリカナノ粒子に注目して整理すると、甲16には、 「図1b)又は図3a)で示される中空シリカナノ粒子であって、 中空シリカナノ粒子を構成するシェルがシリカのみで構成されていて、 固体/液体負荷、熱/電気絶縁、特殊光学特性などを提供する、中空シリカナノ粒子。」 の発明(以下、「甲16発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲16発明を対比すると、甲16発明の「中空シリカナノ粒子」、「構成」及び「シェルがシリカのみで構成」は、それぞれ、本件発明1の「シリカ系中空粒子」、「形成」及び「シリカ系化合物がシリカのみで形成」に相当する。 すると、両者は、 「シリカ系中空粒子であって、 シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、シリカ系中空粒子」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2-1) 本件発明1では、シリカ系中空粒子に関して「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~26.1%であ」り、「平均粒子径が30~55.2nmであ」るのに対して、甲16発明では、「図1b)又は図3a)で示される」ことが特定されている点。 (イ) 相違点について 甲16の上記図1b)(上記4(7)オ参照)から見て取れる10個の中空シリカナノ粒子について、本件明細書の【0021】及び【0023】に記載された手順に準じて、粒子径の変動係数及びアスペクト比が1.5以下の粒子の割合を解析すると、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の100%を占め、粒子径の変動係数が50.5%となり、平均粒子径が144.9nmとなる(異議申立書の107ページの表も参照されたい。)。 また、甲16の上記図3a)(上記4(7)カ参照)から見て取れる13個の中空シリカナノ粒子について、粒子径及びアスペクト比を解析すると、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の100%を占め、粒子径の変動係数が46.2%となり、平均粒子径が64.6nmとなる(異議申立書の109ページの表も参考にした。)。 そうすると、甲16発明の粒子径の変動係数と平均粒子径は、本件発明1の数値範囲に含まれず、上記相違点2-1は、実質的な相違点である。 そして、上記4(7)のとおり、シリカ系中空粒子に関して、「粒子径の変動係数」を「20~26.1%」としつつ、「平均粒子径が30~55.2nm」とすることは、甲16には記載も示唆もないし、このような事項は甲11~13、甲17に記載されておらず(上記4(4)~(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲16発明において、当該相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明1は、甲16に記載された発明でなく、また、甲16に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人の主張は、上記(2)イ(ウ)aと同様であるから、上記(2)イ(ウ)bと同様の理由により、当該主張は採用できない。 ウ 本件発明2について 本件発明1を引用する本件発明2についても、上記イと事情は同じであるから、本件発明2は、甲16に記載された発明でなく、また、甲16に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 エ 本件発明3について (ア) 対比 本件発明3と甲16発明とを対比すると、甲16発明の「中空シリカナノ粒子」、「構成」及び「シェルがシリカのみで構成」は、それぞれ本件発明3の「シリカ系シェルを有する」「粒子」、「形成」及び「シリカ系化合物がシリカのみで形成」に相当する。 すると両者は、 「シリカ系シェルを有する粒子であって、 シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2-2) 本件発明3が「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子」であって、「前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であ」るのに対し、甲16発明は「中空シリカナノ粒子」である点。 (相違点2-3) 本件発明3の粒子が「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、平均粒子径が30~150nmであ」るのに対し、甲16発明の粒子は「図1b)又は図3a)で示される」ものである点。 (イ) 相違点について 上記相違点2-2について検討する。 甲16の記載をみても(上記4(7))、甲16発明の中空シリカナノ粒子により、所定のカチオン性ポリスチレン粒子を被覆してコアシェル粒子とすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲11~13、甲17に記載されておらず(上記4(4)~(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲16に記載された発明において、当該相違点に係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、上記相違点2-3について検討するまでもなく、本件発明3は、甲16発明に基いて当業者が容易に想到し得たものといえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人の主張は、上記(2)エ(ウ)に示した主張と同様であるから(異議申立書の121ページ下から5行~126ページ10行)、上記(2)エ(ウ)での検討と同様の理由により、当該主張は採用できない。 オ 本件発明4~9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」に係る発明であり、本件発明5~8は、「カチオン性ポリスチレン粒子」を製造する工程を含むシリカ系中空粒子又はコアシェル粒子の製造方法に係る発明であり、また、本件発明9は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」の製造方法に係る発明であるから、上記エで検討した相違点2-2と同様な理由により、本件発明4~9は、甲16に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 カ 取消理由4及び申立理由2のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る取消理由4及び申立理由2に理由はない。 (4) 取消理由5、申立理由3(甲18を主たる証拠とする新規性、進歩性欠如)について ア 甲18に記載された発明 甲18には、上記4(9)ウによれば、中空シリカナノ粒子を構成するシェルがシリカシェルであることが記載されていること、また、上記4(9)ウ及びオによれば、中空シリカナノ粒子が、ポリ(アクリル酸)(PAA)を水酸化アンモニウムに溶解し、無水エタノールと混合した後、テトラエトキシシラン(TEOS)を注入し、撹拌、脱イオン水で分離、乾燥するという製造方法で得られることを踏まえると、中空シリカナノ粒子を構成するシェルはシリカのみで構成されていると認められる。 さらに、甲18には、上記4(9)ア及びイによれば、中空シリカナノ粒子は、反射防止(AR)コーティングに使用されることが記載されている。 以上を踏まえつつ、上記4(9)に記載された事項を、中空シリカナノ粒子に注目して整理すると、甲18には、 「図1a、図1b又は図1cで示される中空シリカナノ粒子であって、 中空シリカナノ粒子を構成するシェルがシリカのみで構成されていて、 反射防止(AR)コーティングに使用される、中空シリカナノ粒子。」 の発明(以下、「甲18発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲18発明を対比すると、甲18発明の「中空シリカナノ粒子」、「構成」及び「シェルがシリカのみで構成」は、それぞれ、本件発明1の「シリカ系中空粒子」、「形成」及び「シリカ系化合物がシリカのみで形成」に相当する。 すると、両者は、 「シリカ系中空粒子であって、 シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、 シリカ系中空粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3-1) 本件発明1では、シリカ系中空粒子に関して「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~26.1%であ」り、「平均粒子径が30~55.2nmであ」るのに対して、甲18発明では、「図1a、図1b又は図1cで示される」ことが特定されている点。 (イ) 相違点3-1について 甲18の上記図1a(上記4(9)カ参照)から見て取れる27個の中空シリカナノ粒子について、本件明細書の【0021】及び【0023】に記載された手順に準じて、粒子径の変動係数及びアスペクト比が1.5以下の粒子の割合を解析すると、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の100%を占め、粒子径の変動係数が28.2%となり、平均粒子径が59.8nmとなる(異議申立書第142頁の表も参考にした。)。 また、甲18の上記図1b(上記4(9)キ参照)から見て取れる214個の中空シリカナノ粒子について、粒子径及びアスペクト比を解析すると、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の100%を占め、粒子径の変動係数が38.6%となり、平均粒子径が60.0nmとなる(異議申立書第145~146頁の表も参考にした。)。 さらに、甲18の上記図1c上記(4(9)ク参照)から見て取れる170個の中空シリカナノ粒子について、粒子径及びアスペクト比を解析すると、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の100%を占め、粒子径の変動係数が49.9%となり、平均粒子径が83.7nmとなる(異議申立書第149頁の表も参考にした。)。 そうすると、甲18発明の粒子径の変動係数と平均粒子径は、本件発明1の数値範囲に含まれず、上記相違点3-1は、実質的な相違点である。 そして、上記4(9)のとおり、シリカ系中空粒子に関して、「粒子径の変動係数」を「20~26.1%」としつつ、「平均粒子径が30~55.2nm」とすることは、甲18には記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲18発明において、当該相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明1は、甲18に記載された発明でなく、また、甲18に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人の主張は、上記(2)イ(ウ)aと同様であるから、上記(2)イ(ウ)bと同様の理由により、当該主張は採用できない。 したがって、本件発明1は、甲18に記載された発明並びに甲13、17に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。 ウ 本件発明2について 本件発明1を引用する本件発明2についても、上記イと事情は同じであるから、本件発明2は、甲18に記載された発明でなく、また、甲18に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 エ 本件発明3について (ア) 対比 本件発明3と甲18発明を対比すると、甲18発明の「中空シリカナノ粒子」、「構成」及び「シェルがシリカのみで構成」は、それぞれ、本件発明1の「シリカ系シェルを有する」「粒子」、「形成」及び「シリカ系化合物がシリカのみで形成」に相当する。 すると、両者は、 「シリカ系シェルを有する粒子であって、 シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている、粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3-2) 本件発明3が「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子」であって、「前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であ」るのに対し、甲18発明は「中空シリカナノ粒子」である点。 (相違点3-3) 本件発明3の粒子が「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、平均粒子径が30~150nmであ」るのに対し、甲18発明の粒子は「図1a、図1b又は図1cで示される」ものである点。 (イ) 相違点について 上記相違点3-2について検討する。 甲18の記載をみても(上記4(9))、甲18発明の中空シリカナノ粒子により、所定のカチオン性ポリスチレン粒子を被覆してコアシェル粒子とすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲18発明において、当該相違点に係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、上記相違点3-3について検討するまでもなく、本件発明3は、甲18発明に基いて当業者が容易に想到し得たものといえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人の主張は、上記(2)エ(ウ)に示した主張と同様であるから(異議申立書の160ページ8行~164ページ7行)、上記(2)エ(ウ)での検討と同様の理由により、当該主張は採用できない。 オ 本件発明4~9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」に係る発明であり、本件発明5~8は、「カチオン性ポリスチレン粒子」を製造する工程を含むシリカ系中空粒子又はコアシェル粒子の製造方法に係る発明であり、また、本件発明9は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」の製造方法に係る発明であるから、上記エで検討した相違点3-2と同様な理由により、本件発明4~9は、甲18に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 カ 取消理由5及び申立理由3のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る取消理由5及び申立理由3に理由はない。 (5) 申立理由4(甲19を主たる証拠とした進歩性欠如)について ア 甲19に記載された発明 上記4(10)ウ(【0012】)によれば、甲19における中空微粒子の好ましい製造方法が、「第1段階として後処理で除去可能なコア粒子形成、第2段階としてシェル層形成、第3段階としてコア粒子の溶解、必要に応じて第4段階として追加シェル相の形成」という工程よりなることが理解できる。 上記4(10)ウ(【0014】)によれば、甲19に記載された「空孔含有微粒子はサイズ分布を有していても良く、その変動係数は好ましくは60%~5%、更に好ましくは50%~10%である」ことが理解できる。 以上を踏まえつつ、上記4(10)に記載された事項を、上記4(10)エの「無機微粒子P-4」に着目して整理すると、甲19には以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲19発明1」という。また、以下、甲19発明1に係る[調整工程]を「甲19調整工程1」ともいう)。 <甲19発明1> 「 下記[調整工程]により得られる中空シリカ微粒子であって、 当該中空シリカ微粒子の粒子サイズが50nmであり、 当該中空シリカ微粒子のサイズの変動係数が、好ましくは50~10%である、中空シリカ系微粒子。 [調整工程] 平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル90gとイオン交換水1710gとを混合して反応母液を調製し、95℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液24,900gと、Al2O3として0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液36,800gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を91℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3コア粒子の分散液(A)を調製した。(第1調製工程) 次いで、このコア粒子の分散液(A)500gを採取し、イオン交換水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)2,100gを添加してコア粒子表面にシリカ保護膜を形成した。得られたシリカ保護膜を有するコア粒子の分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%に調整したのち、コア粒子の分散液500gにイオン交換水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行ったのち、pH3の塩酸水溶液10Lとイオン交換水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、粒子前駆体分散液を調製した。(第2調製工程) 上記粒子前駆体分散液1500gと、イオン交換水500gおよびエタノール1,750gとの混合液を30℃に加温した後、テトラエトキシシラン(SiO228質量%)40gと28%アンモニア水626gを速度を制御しながら添加し、粒子前駆体表面にテトラエトキシシランの加水分解重縮合物でシリカ外殻層を形成することによって、外殻層内部に空洞を有する粒子を作製した。次いで、エバポレーターで固形分濃度5質量%まで濃縮した後、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10とし、オートクレーブで180℃、4時間加熱処理し、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ微粒子ゾル(空孔含有無機微粒子)(P-4)の分散液を調製した。(第3調製工程)」 また、上記4(10)に記載された事項を、上記4(10)エの「シリカ保護膜を有するコア粒子」に着目して整理すると、甲19には以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲19発明2」という。また、以下、甲19発明2に係る[調整工程]を「甲19調整工程2」ともいう)。 <甲19発明2> 「 下記[調整工程]によって得られるシリカ保護膜を有するコア粒子。 [調整工程] 平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル90gとイオン交換水1710gとを混合して反応母液を調製し、95℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液24,900gと、Al2O3として0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液36,800gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を91℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3コア粒子の分散液(A)を調製した。(第1調製工程) 次いで、このコア粒子の分散液(A)500gを採取し、イオン交換水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)2,100gを添加してコア粒子表面にシリカ保護膜を形成した。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲19発明1とを対比すると、甲19発明1の「中空シリカ系微粒子」は、本件発明1の「シリカ系中空粒子」に相当する。 甲19発明1に係る中空シリカ系微粒子は「粒子サイズが50nm」であるから、本件発明1の「平均粒子径が30~55.2nm」を満足する。 そうすると、両者は、 「シリカ系中空粒子であって、 平均粒子径が30~55.2nmである、 シリカ系中空粒子」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点4-1) 本件発明1が、シリカ系中空粒子に関して「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~26.1%」であって、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」ことを特定するのに対し、甲19発明1は「変動係数が、好ましくは50~10%であり」、「甲19調整工程1」により得られることが特定されている点。 (イ) 相違点4-1の検討 甲19調整工程1を子細にみても、甲19発明1に係る中空シリカ微粒子における「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体」に占める割合は不明であるし、粒子径の変動係数も不明である。また、甲19調整工程1では「SiO2・Al2O3コア粒子」を用いているところ、コア粒子の溶解がどの程度完全に行われているか不明であって、中空シリカ微粒子中にAl2O3成分が残存している可能性もあるから、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」か否かは不明である。 そして、甲19には、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」るようにし、「粒子径の変動係数」を「20~26.1%」とし、加えて「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」ようにすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲19発明1において、当該相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明1は、甲19に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人は、甲19内に記載された特開2001-233611号公報(異議申立書の甲20)によれば、甲19に係る中空シリカ微粒子は「球状」であり、「シリカ単一層」であるから、本件発明1の「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」点と相違せず、仮に相違するとしても「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」ることは周知技術であるし、甲17を適用すれば「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」こととするのは、当業者が容易に想到し得ることと主張する(異議申立書第176頁6行~185頁2行)。 しかしながら、上記アのとおり、甲19発明1に係る中空シリカ微粒子の製造方法は「甲19調整工程1」であって、特開2001-233611号公報のものでなく、仮にこれを採用するとしても「球状」であることをもって、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」るものということはできない。また上記(イ)のとおりAl2O3成分の残存量が不明であるから、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」ともいえない。さらに、周知技術及び甲17に記載された技術的事項を適用する動機付けも見出すことはできない。 よって、上記主張は採用できない。 ウ 本件発明2について 本件発明1を引用する本件発明2についても、上記イと事情は同じであるから、本件発明2は、甲19に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 エ 本件発明3について (ア) 対比 本件発明3と甲19発明2とを対比すると、甲19発明2の「シリカ保護膜を有するコア粒子」は、本件発明1の「シリカ系シェルを有する」「コアシェル粒子」に相当する。 そうすると、両者は、 「シリカ系シェルを有するコアシェル粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点4-2) 本件発明3が、「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコア」とするコアシェル粒子であって、シリカ系シェルは「前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆する」ものであり、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、平均粒子径が30~150nmであり」、「前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であり、シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」ことを特定するのに対し、甲19発明2は「甲19調整工程2」により得られることが特定されている点。 (イ) 相違点4-2について 甲19調整工程2を子細にみても、甲19発明2に係るコアシェル粒子における「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体」に占める割合は不明であるし、粒子径の変動係数も不明である。また、甲19調整工程2では「SiO2・Al2O3コア粒子」を用いているから、本件発明3においてコアが「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子」である点も、実質的な相違点である。 そして、甲19には、コアシェル粒子の「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」るようにし、「粒子径の変動係数」を「20~60%」とし、加えてコアを所定の「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子」にすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲19発明2において、当該相違点に係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明3は、甲19に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張 申立人の主張は、上記イ(ウ)に示した主張と同様であるから(異議申立書の185ページ下から2行~189ページ下から2行)、上記イ(ウ)での検討と同様の理由により、当該主張は採用できない。 オ 本件発明4~9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」に係る発明であり、本件発明5~8は、「カチオン性ポリスチレン粒子」を製造する工程を含むシリカ系中空粒子又はコアシェル粒子の製造方法に係る発明であり、また、本件発明9は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」の製造方法に係る発明であるから、上記エで検討した相違点4-2と同様な理由により、本件発明4~9は、甲19に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 カ 申立理由4のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第29条第2項に係る申立理由4に理由はない。 (6) 申立理由5(甲21を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如)について ア 甲21に記載された発明 甲21に記載された事項(上記4(11)ウ参照)を、甲21に記載された実施例5のシリカ系中空微粒子(P-3)に着目して整理すると、甲21には以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲21発明1」という。また、甲21発明1に係る調整工程を「甲21調整工程1」ともいう。) <甲21発明1> 「 下記[調整工程]により得られるシリカ系中空微粒子であって、 異形シリカ系中空微粒子の数割合が0.8%であり、 平均粒子径が73nm、CV値が29%である、シリカ系中空微粒子。 [調整工程] シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液10,500gとAl2O3としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10,500gを25時間で添加して、SiO2・Al2O3一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.8質量%であった。また、平均粒子径は51nmであった。 ついで、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液33,560gとAl2O3としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液11,190gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(3)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.9質量%であった。 分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(3)分散液を得た。このとき、平均粒子径は78nm、CV値=28.0%であった。 この複合酸化物微粒子(3)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3-1)の水分散液を得た。 つぎに、シリカ系微粒子(P-3-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3-2)の水分散液を得た。 ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。 固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。」 また、甲21に記載された事項を、実施例5における「複合酸化物微粒子(3)」(上記4(11)ウ)に着目して整理すると、甲21には以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲21発明2」という。また、甲21発明2に係る調整工程を「甲21調整工程2」ともいう。) <甲21発明2> 「 下記[調整工程]により得られる複合酸化物微粒子であって、 平均粒子径が78nm、CV値が28.0%である、複合酸化物微粒子。 [調整工程] シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液10,500gとAl2O3としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10,500gを25時間で添加して、SiO2・Al2O3一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.8質量%であった。また、平均粒子径は51nmであった。 ついで、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液33,560gとAl2O3としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液11,190gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(3)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.9質量%であった。 分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(3)分散液を得た。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲21発明1とを対比すると、甲21発明1の「シリカ系中空微粒子」は、本件発明1の「シリカ系中空粒子」に相当する。 そうすると、両者は「シリカ系中空粒子」の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点5-1) 本件発明1におけるシリカ系中空粒子が、「粒子径の変動係数が20~26.1%」であるのに対し、甲21発明1は「CV値が29%」である点。 (相違点5-2) 本件発明1におけるシリカ系中空粒子が、「平均粒子径が30~55.2nm」であるのに対し、甲21発明1は「平均粒子径が73nm」である点。 (相違点5-3) 本件発明1におけるシリカ系中空粒子が、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」のに対し、甲21発明1は「甲21調整工程1」で得られたものである点。 (イ) 相違点について 事案に鑑み、相違点5-2について検討する。 上記4(11)イ(【0017】)によれば、甲21に係るシリカ系中空微粒子は「平均粒子径(Dn)が50~120nm、さらには70~80nmの範囲にあることが好ましい」のであって、平均粒子径を「30~55.2nm」とすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲21発明1において、相違点5-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、相違点5-1及び相違点5-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲21に記載された発明でなく、また、甲21に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 本件発明2について 本件発明1を引用する本件発明2についても、上記イと事情は同じであるから、本件発明2は、甲21に記載された発明でなく、また、甲21に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 エ 本件発明3について (ア) 対比 本件発明3と甲21発明2とを対比すると、甲21発明2の「複合酸化物微粒子」は、本件発明3の「粒子」に相当する。 甲21発明2に係る複合酸化物微粒子は「平均粒子径が78nm」、「CV値が28.0%」であるから、本件発明3の「平均粒子径が30~150nm」、「粒子径の変動係数が20~60%」を満足する。 そうすると、両者は 「粒子であって、 粒子径の変動係数が20~60%であり、 平均粒子径が30~150nmである粒子。」 で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-4> 本件発明3が「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコアとし、前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル」粒子であって、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」、「前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であり、シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」のに対し、甲21発明2は「甲21調整工程2」で得られたものである点。 (イ) 相違点について 甲21調整工程2を子細にみても、甲21発明2に係る複合酸化物微粒子における「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体」に占める割合は不明である。また、甲19調整工程2から、甲21発明2に係る複合酸化物微粒子が「SiO2・Al2O3一次粒子」をコアとし、その表面をケイ素、ナトリウム、アルミニウムを含む酸化物が被覆していることが理解できるから、本件発明3においてコアが「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子」であり、「前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有」し、「シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」点も、実質的な相違点である。 そして、甲21には、コアシェル粒子の「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」るようにし、コアを所定の「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子」とし、「前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有」し、「シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成」することは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲21発明2において、当該相違点に係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明3は、甲21に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人の主張は、上記(5)イ(ウ)に示した主張と同様であるから(異議申立書の212ページ7行~216ページ3行)、上記(5)イ(ウ)での検討と同様の理由により、当該主張は採用できない。 オ 本件発明4~9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」に係る発明であり、本件発明5~8は、「カチオン性ポリスチレン粒子」を製造する工程を含むシリカ系中空粒子又はコアシェル粒子の製造方法に係る発明であり、また、本件発明9は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」の製造方法に係る発明であるから、上記エで検討した相違点5-4と同様な理由により、本件発明4~9は、甲21に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 カ 申立理由5のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る申立理由5に理由はない。 (7) 申立理由6(甲12を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如)について ア 甲12に記載された発明 上記4(5)に記載された事項を、甲12に記載された実施例1の「中空シリカゾル」(特に【0064】~【0069】)に着目して整理すると、甲12には以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲12発明1」という。また、甲12発明1に係る[製造方法]を「甲12製造方法1」ともいう。) <甲12発明1> 「 真球度0.93であり、粒子変動係数(CV値)が30%である、中空シリカゾルであって、 平均粒子径が46nmであって、下記[製造方法]により製造された中空シリカゾル。 [製造方法] 平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a)) この核粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3,000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b)) 限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228重量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の分散液を調製した。 得られたシリカ濃度20質量%の中空シリカゾル5Lを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、7000Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。」 また、上記4(5)に記載された事項を、甲12の合成例1における「第1シリカ被覆層を形成した核粒子」(【0064】~【0065】)に着目して整理すると、甲12には以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲12発明2」という。また、甲12発明2に係る[製造方法]を、「甲12製造方法2」ともいう。) <甲12発明2> 「 下記[製造方法]により製造された、第1シリカ被覆層を形成した核粒子。 [製造方法] 平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。 この核粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3,000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲12発明1とを対比する。 甲12発明1の「中空シリカゾル」は、本件発明1の「シリカ系中空粒子」に相当する。 甲12発明1の「平均粒子径が46nm」は、本件発明1の「平均粒子径が30~55.2nm」を満足する。 そうすると、両者は、 「平均粒子径が30~55.2nmである シリカ系中空粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点6-1) 本件発明1が「アスペクト比が1.5以上の粒子が粒子全体の95%以上を占め」ることを特定するのに対し、甲12発明1は「真球度が0.93」である点。 (相違点6-2) 本件発明1が「粒子径の変動係数が20~26.1%であ」るのに対し、甲12発明1は「粒子変動係数(CV値)が30%」である点。 (相違点6-3) 本件発明1が「シリカ系中空粒子を形成するシリカ化合物がシリカのみで形成されている」のに対し、甲12発明1は、「甲12製造方法1」で製造されたものである点。 (イ) 相違点について 事案に鑑み、上記(相違点6-3)について検討する。 甲12製造方法1では「SiO2・Al2O3核粒子」に第1シリカ層を形成し、その後脱アルミニウム処理を行っているところ、脱アルミニウム処理がどの程度完全に行われているか不明であって、中空シリカゾル中にAl2O3成分が残存している可能性もあるから、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」か否かは不明である。 そして、甲12には、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」ようにすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4(6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲12発明1において、当該相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない。 したがって、本件発明1は、甲12に記載された発明でなく、また、甲12に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張 申立人は、本件明細書の段落【0022】をみると、中空シリカ微粒子の「シリカ以外の元素または化合物が残存してい」る場合を許容可能な組成としているから、甲12に記載された発明に係る中空シリカ微粒子は、「シリカ以外の元素または化合物が残存していない」ものであると主張する(異議申立書の231ページ7~20行)。 しかしながら、上記(イ)で検討のとおり、Al2O3成分の残存量が不明であるから、「シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」とはいえず、上記主張は採用できない。 ウ 本件発明2について 本件発明1を引用する本件発明2についても、上記イと事情は同じであるから、本件発明2は、甲12に記載された発明でなく、また、甲12に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 エ 本件発明3について (ア) 対比 本件発明3と甲12発明2とを対比すると、甲12発明2における「第1シリカ被覆層を形成した核粒子」は、本件発明1の「シリカ系シェルを有する」「コアシェル粒子」に相当する。 そうすると、両者は、 「シリカ系シェルを有するコアシェル粒子。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点6-4) 本件発明3が、「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコア」とするコアシェル粒子であって、シリカ系シェルは「前記カチオン性ポリスチレン粒子を被覆する」ものであり、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、平均粒子径が30~150nmであり」、「前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、及び多糖類から選択される少なくとも1種であり、シリカ系シェルを形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されている」ことを特定するのに対し、甲12発明2は「甲12製造方法2」により得られることが特定されている点。 (イ) 相違点について 甲12製造方法2を子細にみても、甲12発明2に係る「第1シリコン被覆層を形成した核粒子」における「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体」に占める割合は不明である。また、甲12製造方法2では「SiO2・Al2O3核粒子」を用いているから、本件発明3においてコアが「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子」である点は、実質的な相違点である。 そして、甲12には、第1シリコン被覆層を形成した核粒子の「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」るようにし、「粒子径の変動係数」を「20~60%」とし、加えて核粒子を所定の「分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子」にすることは記載も示唆もないし、このような事項は甲13、甲17に記載されておらず(上記4 (6)、(8)参照)、また周知技術ともいえないから、甲12発明2において、当該相違点に係る本件発明3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであったということはできない したがって、本件発明3は、甲12に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ) 申立人の主張 申立人は、甲12の明細書の段落【0023】において、甲22(特表2000-500113号公報)を引用しているから、甲12における中空シリカ微粒子の製造方法として、ポリスチレンを支持体とし、溶媒を撹拌し続け、pHを8~10に保ちながら珪酸塩溶液を添加して支持体にシリカを形成するシリカスラリーの形成方法、及びシリカスラリーをオーブン又はキルンを用いて乾燥し、支持体を除去する方法が記載されており、「ポリスチレン粒子をコア」とするコアシェル粒子であって、シリカ系シェルは「ポリスチレン粒子を被覆する」ものである点で相違せず、さらに甲13に記載された事項を適用し、「分散剤を含むカチオン性」のスチレン粒子とすることも当業者が容易になし得たものと主張する(異議申立書の232ページ1行~233ページ末行、同239ページ13行~243ページ17行)。 当該主張を検討するに、上記(イ)で検討のとおり、甲12発明2に係る「第1シリコン被覆層を形成した核粒子」において、コアに相当するものは「SiO2・Al2O3核粒子」であるから、上記主張は採用できない。さらに、甲12発明2に係る「甲12製造方法2」に代えて、甲22に記載された方法を採用する動機付けも見出せない。 オ 本件発明4~9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」に係る発明であり、本件発明5~8は、「カチオン性ポリスチレン粒子」を製造する工程を含むシリカ系中空粒子又はコアシェル粒子の製造方法に係る発明であり、また、本件発明9は、シリカ系中空粒子又はコアシェル粒子を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」の製造方法に係る発明であるから、上記エで検討した相違点6-4と同様な理由により、本件発明4~9は、甲12に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 カ 申立理由6のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る申立理由6に理由はない。 (8) 申立理由7(サポート要件違反)について ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるので、以下、この観点に立って検討する。 イ 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下の記載がある。 (ア) 「【0001】 本発明は、シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子、並びに、それらの製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、無機酸化物微粒子に関する研究が行われている。無機酸化物はナノサイズになると、物質の性質が変化して、電気的、光学的、熱的性質等の特性も大きく変わる。そのため、新しい高機能性材料として応用の可能性がある。 【0003】 無機酸化物微粒子の構造として、緻密型、多孔質型、中空型がある。中でも中空型の中空粒子は、密度が低い、比表面積が大きいなどの特徴があることから、新しい高機能性材料として注目されている。 【0004】 中空の無機酸化物微粒子の製造方法として、ポリスチレン粒子をコアとして用いる中空シリカ粒子の製造方法、及び当該製造方法で製造された中空ポリスチレン粒子が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。 【0005】 しかしながら、非特許文献1に記載の中空シリカ粒子及びその製造方法では、中空シリカ粒子の粒度分布については十分に検討されていない。非特許文献1に記載の中空シリカ粒子のように、製造される中空シリカ粒子の粒度分布が小さいと、高機能性材料として様々な物品に充填された際に、充填率が低くなり、高機能性材料として期待される特性を十分に発揮できないという問題がある。 【0006】 また、非特許文献1に記載の中空シリカ粒子は、分散性について十分に検討されておらず、凝集するという問題がある。中空シリカ粒子が凝集すると高機能性材料として様々な物品に充填された場合、均一に充填され難いという問題がある。 【0007】 本発明者は、更に、鋭意検討の結果、アスペクト比が大きいシリカ径中空粒子は、高機能性材料として様々な物品に充填された際に充填率が低くなることに着目した。このようなシリカ系中空粒子は、高機能性材料として期待される特性を十分に発揮できないという問題がある。 【0008】 従って、凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さいシリカ系中空粒子、当該シリカ径中空粒子を製造することができるコアシェル粒子及びポリスチレン粒子の開発が求められており、また、当該シリカ径中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子を製造することができる製造方法の開発が求められている。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、凝集が抑制されており、アスペクト比が小さい粒子が特定範囲の割合を占め、粒子径の変動係数が特定の範囲であることにより、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易いシリカ系中空粒子、当該シリカ系中空粒子を製造することができるコアシェル粒子、及び、これらの製造に好適に用いることができるポリスチレン粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、当該シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。」 (イ) 「【0017】 1.シリカ系中空粒子 本発明のシリカ系中空粒子は、粒子径のアスペクト比1.5以下の粒子が全体の95%以上を占め、変動係数が20~60%である。 【0018】 シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物としてはシリカを含有していれば特に限定されず、シリカのみで形成されていてもよい。 【0019】 上記シリカ系化合物がシリカ以外の化合物を含有する場合は、シリカ系中空粒子はシリカ及び金属酸化物を含んでいることが好ましい。金属酸化物としては、金属アルコキシドを形成することができる金属の酸化物が挙げられ、具体的には、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の酸化物が挙げられる。アルミニウムの酸化物を用いると、シリカ系シェルの表面電荷(ゼータ電位等)を調整することができる。また、チタン、ジルコニウムの酸化物を用いると、シリカ系シェルの屈折率を調整することができる。 【0020】 本発明のシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数は、20~60%である。20~50%が好ましく、20~40%がより好ましい。シリカ系中空粒子の粒子径の変動係数が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集が抑制でき、且つ、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなる。 【0021】 本明細書において、上記シリカ系中空粒子及び後述するコアシェル粒子の変動係数は、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM-2010、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を求め、下記式に基いて算出した値である。 (変動係数)=[(粒子短径の標準偏差)÷(粒子短径の平均値)]×100 【0022】 本発明のシリカ系中空粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%を占める。アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%未満であると、シリカ系中空粒子の凝集が抑制できず、様々な物品に充填された場合、均一に充填され難い。アスペクト比が1.5以下の粒子は、97%以上が好ましく、99%がより好ましい。 【0023】 本明細書において、上記シリカ系中空粒子のうちアスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合、及び、後述するコアシェル粒子のうちアスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合は、以下の方法により測定される。すなわち、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM-2010、日本電子株式会社製)を用いて、倍率20万倍、加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個のそれぞれの粒子の粒子長径及び粒子短径を測長して、下記式に基いてそれぞれの粒子のアスペクト比を求める。次いで、粒子100個中アスペクト比が1.5以下の粒子の数を数え、当該数を、アスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合(%)とする。 (アスペクト比)=(粒子長径)÷(粒子短径) 【0024】 シリカ系中空粒子の平均粒子径は、30~150nmが好ましく、35~120nmがより好ましく、35~100nmが更に好ましい。平均粒子径が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集をより抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、より均一に充填され易くなる。 【0025】 本明細書において、上記平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM-2010、日本電子株式会社製)を用いて加速電圧200kVの条件で測定される値である。 【0026】 シリカ系中空粒子を形成する膜(シェル)の膜厚は、2~40nmが好ましく、2~20nmがより好ましい。膜の厚みが上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の空孔率を高くしつつ、シェル強度を維持することができる。なお、本明細書において、上記膜の厚みは、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM-2010、日本電子社製)により200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子のシェル厚みを測長した平均値である。 【0027】 本発明のシリカ系中空粒子は、実質的に会合していないことが好ましい。シリカ系中空粒子が会合していない状態であると、様々な物品に充填された場合、より均一に充填され易くなる。なお、本明細書において、シリカ系中空粒子が会合している状態とは、複数のシリカ系中空粒子の中空部同士が接合して、一つの中空部を形成している状態を示しており、シリカ系中空粒子が実質的に会合していないとは、シリカ系中空粒子の中空部が接合していない状態をいう。また、本発明のシリカ系中空粒子が会合していないことは、上記TEMを用いて撮影されたシリカ系中空粒子の写真を観察することにより確認することができる。 【0028】 本発明のシリカ系中空粒子は、上述のように凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さいため、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなっている。このため、高機能材料として適しており、特に、反射防止フィルム材料、絶縁膜材料又は断熱材材料として好適に用いることができる。」 (ウ) 「【0029】 2.コアシェル粒子 本発明のコアシェル粒子は、分散剤を含むポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有しており、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%である。上記コアシェル粒子は凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さくなっており、ポリスチレン粒子を熱分解することにより、上記本発明の中空シリカ粒子を容易に製造することができる。 【0030】 上記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルは、上述のシリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物と同一である。また、シリカ系シェルの厚みは、上述のシリカ系中空粒子を形成する膜(シェル)の膜厚と同一である。 【0031】 ポリスチレン粒子の平均粒子径は20~150nmが好ましく、25~120nmがより好ましく、25~100nmが更に好ましい。ポリスチレン粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、シリカ系中空粒子の平均粒子径を適切な範囲とすることができる。 【0032】 上記ポリスチレン粒子は分散剤を含む。ポリスチレン粒子が分散剤を含むことにより、ポリスチレン粒子の表面に分散剤が存在することとなり、ポリスチレン粒子の凝集をより抑制することができる。分散剤としては、ポリスチレン粒子を製造することができれば特に限定されず、公知の分散剤を用いることができる。上記分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、多糖類(アラビアガム)等が挙げられ、中でも、ポリスチレン粒子の凝集を抑制し、後述する工程2で形成されるコアシェル粒子の凝集を抑制することができる点で、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。上記分散剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。 【0033】 ポリスチレン粒子中の分散剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリスチレン粒子100質量%に対して0.01~100質量%が好ましく、0.05~100質量%がより好ましい。分散剤の含有量が上記範囲であることにより、ポリスチレン粒子の凝集をより抑制することができる。 【0034】 本発明のコアシェル粒子の粒子径の変動係数は、20~60%である。20~50%が好ましく、20~40%がより好ましい。コアシェル粒子の粒子径の変動係数が上記範囲であることにより、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数を、上述の範囲とすることができ、当該シリカ系中空粒子の凝集が抑制され、且つ、シリカ系中空粒子が様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなる。 【0035】 本発明のコアシェル粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%を占める。アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%未満であると、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子の凝集が抑制できず、様々な物品に充填された場合、均一に充填され難い。アスペクト比が1.5以下の粒子は、97%以上が好ましく、99%がより好ましい。 【0036】 コアシェル粒子の平均粒子径は、30~150nmが好ましく、35~120nmがより好ましく、35~100nmが更に好ましい。平均粒子径が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集をより抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、より均一に充填され易くなる。 【0037】 コアシェル粒子を形成する膜(シェル)の膜厚は、2~40nmが好ましく、2~20nmがより好ましい。膜の厚みが上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の空孔率を高くしつつ、シェル強度を維持することができる。 【0038】 本発明のコアシェル粒子は、実質的に会合していないことが好ましい。コアシェル粒子が会合していない状態であると、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子が様々な物品に充填された場合、より均一に充填され易くなる。なお、本明細書において、コアシェル粒子が会合している状態とは、複数のコアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子が接合して、一つの二次粒子を形成している状態を示しており、コアシェル粒子が実質的に会合していないとは、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子が接合していない状態をいう。また、本発明のコアシェル粒子が会合していないことは、上記TEMを用いて撮影されたコアシェル粒子の写真を観察することにより確認することができる。」 (エ) 「【0100】 実施例1 表1の製造条件により、表2の配合でポリスチレン粒子及びコアシェル粒子を調整し、シリカ系中空粒子を製造した。具体的には以下の通りである。 ・・・ 【0108】 実施例2、3、比較例1~4 製造条件を表1及び2の製造条件とし、表2の配合でポリスチレン粒子及びコアシェル粒子を調整した以外は実施例1と同様にして、シリカ系中空粒子を製造した。 ・・・ 【0113】 【表1】 [図:0001404737000013.jpg] 【0114】 比較例1~3では、TEM写真において明確に計上を判別できる粒子の数が少ないため、粒子径の変動係数、アスペクト比が1.5以下の粒子の割合、平均粒子径を測定できなかった。」 ウ 本件発明が解決しようとする課題(以下、「本件課題」という。) 上記イ(ア)の記載によれば、本件発明は、「シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子、並びに、それらの製造方法」に関するものであって、従来、中空の無機酸化物微粒子の製造方法として、ポリスチレン粒子をコアとして用いる中空シリカ粒子の製造方法が提案されていたが、当該中空シリカ粒子は粒度分布が小さく、また凝集するので、高機能性材料として様々な物品に充填された際に、充填率が低くなり、高機能性材料として期待される特性を十分に発揮できず、また、アスペクト比が大きいシリカ系中空粒子は、充填率が低くなる、という問題があったことに鑑み、「凝集が抑制されており、アスペクト比が小さい粒子が特定範囲の割合を占め、粒子径の変動係数が特定の範囲である」「シリカ系中空粒子、当該シリカ系中空粒子を製造することができるコアシェル粒子、及び、これらの製造に好適に用いることができるポリスチレン粒子を提供すること、また、当該シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子を製造することができる製造方法を提供すること」を目的とするものということができる。 そして、上記イ(イ)(【0020】、【0022】)をみるに、具体的には、「アスペクト比が小さい粒子が特定範囲の割合を占め」とは、「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め」ることを意味し、「粒子径の変動係数が特定の範囲」とは、「粒子径の変動係数が20~60%」であることを意味すると解される。 よって、本件課題は、「凝集が抑制されており、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子、当該シリカ系中空粒子を製造することができるコアシェル粒子、及び、これらの製造に好適に用いることができるポリスチレン粒子を提供すること、また、当該シリカ系中空粒子、コアシェル粒子及びポリスチレン粒子を製造することができる製造方法を提供すること」、と認められる。 エ 判断 (ア) 本件発明1、2について 本件特許明細書の実施例3(上記イ(エ)参照)には、本件発明1、2のシリカ系中空粒子が記載されている。 そして、上記第3のとおり、本件発明1、2は、本件課題に係る「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%である」ことを満足するものであって、上記イ(イ)の発明の詳細な説明の記載から把握されるような、上述した粒度分布及びアスペクト比に関する従来の問題に対する解決手段をすでに具備するものである。また、「凝集が抑制されて」いる点について、本件発明1、2に係る請求項1、2には明示的に記載されていないものの、本件発明1、2が粒子径変動係数、アスペクト比が1.5以下の粒子割合、及び平均粒子径を評価できることからして、本件発明1、2は、実質的に「凝集が抑制されて」いることが特定されていると認められる。 よって、本件発明1、2は、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (イ) 本件発明3、8について 本件特許明細書の実施例1~3(上記イ(エ)参照)には、本件発明3のコアシェル粒子が記載されている。 そして、発明の詳細な説明(特に実施例1~3。上記イ(エ)参照)をみると、シリカ系中空粒子の粒子径変動係数、アスペクト比が1.5以下の粒子割合、及び平均粒子径は、コアシェル粒子と同等の値となることが理解できるし、当該コアシェル粒子のコアに所定の分散剤を有することで、コアシェル粒子及びシリカ系中空粒子の凝集が抑制されることも理解できる。 そうすると、「アスペクト比1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であり、平均粒子径が30~150nmであり」、所定の分散剤を含むカチオン性ポリスチレン粒子をコアとする、本件発明3のコアシェル粒子は、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 本件発明3を引用する本件発明8についても、同様に本件課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 (ウ) 本件発明4、9について 上記第3に示したとおり、本件発明4は、下記(i)又は(ii)を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」である。 (i)「アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20~60%であるシリカ系中空粒子であって、平均粒子径が30~150nmであり、シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物がシリカのみで形成されているシリカ系中空粒子」 (ii)「請求項3に記載のコアシェル粒子」 そして、上記(i)のシリカ系中空粒子は、上記(ア)と同様の理由により、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるし、上記(ii)のコアシェル粒子は、上記(イ)と同様の理由により、本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。そうすると、上記(i)又は(ii)を製造するための「カチオン性ポリスチレン粒子」も本件課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 本件発明4を引用する本件発明9についても、同様に本件課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 (エ) 本件発明5~7 本件発明5は、上記(i)(上記(ウ)参照)を製造するための「シリカ系中空粒子の製造方法」であって、上記(ア)と同様の理由により、上記(i)のシリカ系中空粒子は、本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件発明5は、本件課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 本件発明5を引用する本件発明6、7についても、同様に本件課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 オ 申立人の主張について (ア) サポート要件違反に関し、申立人は、異議申立書において、概略、以下a~cの点を主張する。 a 本件発明が解決しようする課題は、「凝集が抑制されており、アスペクト比が小さい粒子が特定範囲の割合を占め、粒子径の変動係数が特定の範囲であることにより、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易いシリカ系中空粒子、当該シリカ系中空粒子を製造することができるコアシェル粒子、及び、これらの製造に好適に用いることができるポリスチレン粒子を提供すること」であり、甲1~甲3をみるに、シリカ系中空粒子が充填されやすいかどうかは、実験によらなければ判断することができないのであるから、物品に充填する試験を行っていない本件発明は、本件課題を解決できることを認識できたとはいえない(異議申立書の59ページ下から3行~65ページ10行)。 b 実施例1~3及び比較例3は、いずれもコアシェル粒子とシリカ系中空粒子との間で、「粒子変動係数」、「アスペクト比が1.5以下の粒子の割合」、「平均粒子径」の各数値が完全に一致しており、これは統計的にも極めて確率の低い事象であって不自然であり、実施例1~3、比較例3で測定された数値が実際に何を測定したものか不明である。よって、実施例1~3、比較例3が何を裏付けるものか把握することができず、本件発明が課題を解決できると認識することができない(異議申立書の65ページ11行~67ページ14行)。 c 本件発明における「粒子径変動係数」、「アスペクト比が1.5以下の粒子の割合」、「平均粒子径」の範囲が、実施例に対して広すぎるため、拡張ないし一般化できない(異議申立書の67ページ15行~68ページ16行)。 (イ) 上記(ア)の各主張について検討する。 上記(ア)aの主張について、本件発明の課題は上記ウのとおりであるから、物品へ充填する試験を行っていないことを理由として、サポート要件違反ということはできず、当該主張は採用できない。 上記(ア)bの主張について、本件特許明細書の表1に示された実施例1~3、比較例3の結果が起こり難いことをもって、直ちに当該結果が誤りということはできないから、当該主張は採用できない。 上記(ア)cの主張について、実施例が示されている範囲に対して、本件発明の数値範囲が広いことのみをもって、サポート要件違反ということはできず、当該主張は採用できない。 カ 申立理由7のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第36条第6項第1号に係る申立理由7に理由はない。 第5 むすび 以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠、並びに取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない よって、結論のとおり決定する。

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2022-700343

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