特許異議申立
2025-700166
シリカ粒子、及び、シリカ粒子の製造方法
- 審判番号
- 2025-700166
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-529858
- 登録番号
- 7529941
- 請求日
- 2025年02月06日
- 審決日
- 2025年05月27日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】扶桑化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】平居 博美
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 塩谷 領大
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1652.113-Y (C01B) / P1652.121-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7529941号発明「シリカ粒子、及び、シリカ粒子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7529941号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7529941号に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和5年10月19日(優先権主張 令和4年10月21日)を国際出願日とするものであって、令和6年7月29日に特許権の設定登録がされ、同年8月6日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年2月6日に、請求項1、2に係る特許について、特許異議申立人 平居博美(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、これらをまとめて「本件発明」という場合がある。また、対応する特許を「本件特許1」、「本件特許2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)平均粒子径が0.2μm~1.0μmであり、
(3)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、
(4)吸水量が1.0質量%以下である、
シリカ粒子。
【請求項2】
前記シリカ粒子は、中空シリカ粒子である、請求項1に記載のシリカ粒子。」
第3 特許異議の申立てについて
申立理由(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
本件発明1、2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許1、2は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるし、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1、2は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証 特表2009-504632号公報
甲第2号証 特開2021-6513号公報
甲第3号証 特開2015-155373号公報
(以下、「甲第1号証」などを「甲1」などという。)
第4 申立理由に対する当審の判断
1 甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。
(ア)「【請求項1】
中空シリカ含有粒子を含む組成物であって、前記粒子を作製する方法は
テンプレート粒子を生成するステップと、
前記テンプレート粒子表面にカップリング剤を供給するステップと、
前記テンプレート粒子上にシリカ含有シェルを堆積させるためシリコン含有化合物を供給し、前記テンプレート上に実質的に均一なコーティングを生成するステップと、
最初に325℃~525℃、好ましくは375℃~475℃の第一温度で、第一時間の間、好ましくは2~6時間にわたって、前記テンプレート粒子を加熱し、次いで525℃~900℃、好ましくは550℃~700℃の第二温度で、第二時間の間、好ましくは2~6時間にわたって、前記テンプレート粒子を加熱することにより前記テンプレート粒子を除去し、中空シリカ粒子を作製するステップと、
を含み、および前記組成物は化粧品組成物である組成物。
・・・
【請求項9】
テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランおよびそれらの誘導体、ジアルコキシシランおよびそれらの誘導体、アルコキシシランおよびそれらの誘導体、シリコーンオリゴマー、オリゴマー性シルセスキシロキサンおよびシリコーンポリマーからなる群から選択されるシリコン含有化合物を含む組成物から作製される中空シリカ粒子を含む組成物であって、前記中空シリカ粒子は実質的に均一な粒子径を有し、前記中空シリカ粒子は白色であり、かつ、実質的にデカメチルシクロペンタシロキサン不透過性であり、前記組成物は化粧品組成物である、組成物。
【請求項10】
前記中空シリカ粒子は200nm~700nm、好ましくは250nm~600nmの平均粒子径を有し、好ましくは前記中空シリカ粒子は実質的に球状であり、好ましくは前記中空シリカ粒子は少なくとも1種のコーティングから作製されるシェルを含み、前記シェルは10nm~30nmの実質的に一定の厚さを有し、好ましくは前記中空シリカ粒子はオルガノシリル基を含む材料で官能基化された外側表面を有し、好ましくは前記中空シリカ粒子は外側表面をヘキサメチルジシラザンと反応させることによって官能基化された前記外側表面を含み、好ましくは前記中空シリカ粒子はオレフィン、エステル、アミン、酸、エポキシド、アルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される化学官能基を更に含み、好ましくは顔料および染料からなる群から選択される着色剤を更に含み、好ましくは前記中空シリカ含有粒子は組成物中に0.01重量%~90重量%、好ましくは0.02重量%~50重量%の量で存在する、請求項9に記載の組成物。」
(イ)「【0004】
・・・しかし、そのような粒子は粒子表面における連続性を欠損していることが多く、従ってシェルの透過性で不適格であることが多い。更に、既知の、発表されている粒子は全て、所望される実質的に均一で狭い粒子径分布を有する狭い範囲の粒子の生成を可能にする方法よって作製されていないし、透過性も不適格である。あるいは、それらが解決されても、多数の合成工程を必要としそれらをパーソナルケア用途に使用するための生産を実施不能にする。」
(ウ)「【0013】
1.製造方法
本発明の中空粒子を作製する方法には、テンプレート粒子を調製するステップと、その粒子の上にシリカ含有シェルを堆積するステップと、次いでテンプレート材料を取り除き、液体に対して低い透過性を有し所定の実質的に相似した寸法の中空のシリカ含有シェルを残すステップとが含まれる。適格な透過性は、化粧品またはその他の組成物の調製したものがそれらの光学的特性を十分な時間の間保持できるということである。好ましくは、所定の実質的に狭い粒子径分布範囲を有した、特定な所定の粒子径を有するテンプレート粒子は、乳化重合、分散重合、または懸濁重合の下で作製される。テンプレート粒子は、シェル堆積の後に続く、加熱、溶解、または抽出を介して取り除くことができる。好ましくは、このテンプレート粒子は例えば、ポリスチレン、またはスチレン系ポリマーを含む物のような、ポリマーラテックス粒子である。
【0014】
図1に示されるように、本発明の1つの好ましい実施形態に従うと、テンプレートポリスチレン粒子は特定条件下でスチレン1を重合することによって調製される。そのような反応条件には、熱処理、および特定の反応物の添加が含まれる。適合する反応物、濃度、温度、および例えば、撹拌速度および撹拌機デザインなどののプロセス条件を選択することによって、約200nm~約700nmの間にある直径平均値である粒子径を有するテンプレート粒子3が形成される。テンプレート粒子が形成されてから、それらはカップリング剤で処理され、続いて特定pHおよび温度条件下でシリコン含有化合物または化合物の混合物で処理され、粒子テンプレートの上に実質的に均一なシリカ含有コーティング6を堆積させ、ポリスチレンのコア7およびコーティング6を有するコーティングされた粒子5が形成される。次いで、コーティングされた粒子5は、単離され、特定の条件下で加熱され、コア7が取り除かれ、結果として所望の目的製品、すなわち、実質的に均一な中空シリカ粒子9および副生物のスチレンおよびスチレンの酸化生成物(図示してない)、が得られる。」
(エ)「【0022】
・・・本発明に従って製造されたシェルは、一般的に約10~約30nmの厚さであり、より一般的には約15~約25nmの厚さである。シリコン含有化合物の添加が完了してから、任意選択で粒子を単離する前に反応の撹拌を継続できる。」
イ 甲1に記載された発明
上記ア(ア)によれば、甲1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。
「実質的に均一な粒子径を有し
平均粒子径が約200nm~約700nmである
中空シリカ粒子。」
(2)甲2に記載された事項
「【0048】
得られたシリカ粒子を有機溶媒から取り出して乾燥させた後、該シリカ粒子を焼成することにより、親水性基であるシラノール基(≡SiOH、=Si(OH)2、-Si(OH)3)を分解する(つまり、水酸基を分解する)と共に、細孔を塞ぐことにより、吸湿性が低く、かつ、粒度分布が狭く、粒子径が揃っており、粒子径が大きな凝集物が殆ど含まれない、非晶質の焼成シリカ粒子が得られる。
・・・
【0054】
焼成温度は、好ましくは1000℃~1200℃であり、より好ましくは1050℃~1100℃である。焼成温度が1000℃未満であると、シラノール基が残りやすいため、得られる化粧料用シリカ粒子Aの吸湿性が高くなる。焼成温度が1200℃を超えると、シリカ粒子同士の融着が起こるため、凝集物(二次凝集物)が生じる。すなわち、得られる化粧料用シリカ粒子Aが凝集物を含んでしまう。このような凝集物は、粉砕機(解砕機)を用いても粉砕(解砕)することが困難である。なお、焼成時間は1時間程度で十分であるものの、焼成温度やシリカ粒子の粒子径等に応じて適切に設定すればよい。また、焼成は、空気中で行えばよい。
・・・
【0056】
化粧料用シリカ粒子Aの30℃、90%RHの環境下で1日間放置した後における吸湿量は、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.07質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以下である。」
(3)甲3に記載された事項
「【0017】
[シリカ系粒子の製造方法]
以下に、まず、本発明に係るシリカ系粒子の製造方法について説明する。
本発明に係るシリカ系粒子の製造方法は、下記の工程(a)~(c)からなることを特徴としている。
(a)珪酸アルカリ水溶液を熱風気流中に噴霧乾燥してシリカ系粒子前駆体粒子を調製する工程
(b)シリカ系粒子前駆体粒子を酸水溶液に浸漬し、アルカリを除去する工程
(c)乾燥・加熱処理する工程
・・・
【0033】
工程(c)
ついで、乾燥・加熱処理する。
乾燥・加熱処理温度は30~1200℃の範囲にあることが好ましい。」
2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明の対比
ア 甲1発明の「平均粒子径が約200nm~約700nmである」は、本件発明1の「平均粒子径が0.2μm~1.0μm」に相当する。
そうすると、本件発明1と、甲1発明は、
「平均粒子径が0.2μm~1.0μmである、
シリカ粒子。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は、「真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3」であるのに対し、甲1発明は、真密度が不明な点。
(相違点2)
本件発明1は、「粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下」であるのに対し、甲1発明では「実質的に均一な粒径を有する」点。
(相違点3)
本件発明1は「吸水量が1.0質量%以下」であるのに対し、甲1発明は吸水量が不明な点。
(2)相違点の検討
実情に鑑み、相違点1、相違点3、相違点2の順で検討する。
ア 相違点1について検討する。
本件発明1の「真密度」に関し、本件明細書には、以下の記載がある。
「【0033】
(1)シリカ粒子の真密度
本発明のシリカ粒子は、真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3である。
【0034】
本発明のシリカ粒子は、密度が低い空気層を有する事に依り、真密度が一般的なシリカの真密度(2.2g/cm3)に比べて低くなる。
【0035】
シリカ粒子の真密度は、窒素ガスピクノメーター(Ultrapyc 5000 Micro、株式会社アントンパール・ジャパン製)を用いて、シリカ粒子(粉末0.2g)の真密度を測定した値である。
【0036】
真密度を測定するシリカ粒子は、その粉末を、120℃の温度で、2時間、減圧乾燥した後に、その乾燥したシリカ粒子の粉末の真密度を測定する事が良い。
【0037】
シリカ粒子の真密度は、0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、好ましくは、0.8g/cm3~1.3g/cm3であり、より好ましくは、0.9g/cm3~1.2g/cm3であり、更に好ましくは、0.9g/cm3~1.1g/cm3である。シリカ粒子は、真密度を前記範囲に調整する事に依り、良好に製造する事が出来、シェルが破損せず、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。」
上記記載によれば、本件発明1において、「真密度」とは、窒素ガスピクノメーター(Ultrapyc 5000 Micro、株式会社アントンパール・ジャパン製)によって測定されうる値であり、「本発明のシリカ粒子は、密度が低い空気層を有する事に依り、真密度が一般的なシリカの真密度(2.2g/cm3)に比べて低くなる」との記載から、空気層の存在によって真密度が低下していることが理解され、「シェルが破損せず、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る」との記載から、「シェルが破損」しないことで真密度が低くなっていることが理解される。
そうすると、本件発明1において、「真密度」とは、窒素ガスピクノメーター(Ultrapyc 5000 Micro、株式会社アントンパール・ジャパン製)によって測定されうる値であって、シェルが破壊しないことで保たれている中空部分の空気層も含めて測定される値であると解するのが相当である。
そして、甲1発明ではそのような真密度は特定されていないし、甲1には真密度を測定することも記載されていないから、相違点1は実質的な相違点である。
次に相違点1の容易想到性について検討する。
上記1(1)ア(イ)によれば、甲1には「所望される実質的に均一で狭い粒子径分布を有する狭い範囲の粒子の生成を可能にする方法よって作製されていないし、透過性も不適格である」との記載があり、甲1発明は、均一で狭い粒径分布を有し、透過性の優れた粒子を作成することを課題としているといえる。他方で、甲1には、粒子の「真密度」については記載も示唆もない。そうすると、そのような甲1発明において、粒子の真密度を調整して特定の値とする動機付けがあるとはいえない。また、甲2、3にも真密度についての記載はないため、甲2、3の記載内容を検討しても事情は変わらない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
イ 相違点3について検討する。
甲1発明において、吸水量は特定されていないし、甲1には、吸水量を測定することも記載されていないから、相違点3は実質的な相違点である。
次に、相違点3の容易想到性について検討する。
上記1(1)ア(イ)によれば、甲1には「所望される実質的に均一で狭い粒子径分布を有する狭い範囲の粒子の生成を可能にする方法よって作製されていないし、透過性も不適格である」との記載があり、甲1発明は、均一で狭い粒径分布を有し、透過性の優れた粒子を作成することを課題としているといえる。他方で、甲1には、粒子の「吸水量」については記載も示唆もない。そうすると、そのような甲1発明において、粒子の吸水量を調整して特定の値とする動機付けがあるとはいえないし、甲2、3の記載を参酌しても事情は変わらない。
したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
3 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記2で検討したのと同様の理由により、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。
4 申立人の主張
(1)申立人は、特許異議申立書において、甲1には中空粒子の製造ステップにおけるテンプレート粒子が「約200nm~約700nmのテンプレート粒子径」を有すること(【0014】)、テンプレートに堆積したシリカ含有シェルが「約10~30nmのシェル厚み」を有すること(【0022】)が記載されていることから、それらの値から計算すると、甲1に記載されるシリカ粒子の真密度は「1.20~0.19g/cm3」となるため、甲1発明は、本件発明1の、真密度が「0.8g/cm3~1.4g/cm3」との構成を満たす旨主張している。
しかし、シェルが堆積されたテンプレート粒子は、加熱によってテンプレートを除去することによって中空シリカ粒子となるものであるところ、甲1発明では、加熱後の中空シリカ粒子の平均粒子径は「約200nm~約700nm」となるとされている。そうすると、加熱後の中空シリカの空孔や粒子径は、加熱前のテンプレート粒子径や、テンプレート粒子径とシェルの厚みの合計と一致するとはいえないため、申立人の主張する方法によって、甲1発明のシリカ粒子の真密度を計算することができるとはいえない。また、加熱前のテンプレート粒子径や、テンプレート粒子径とシェルの厚みから加熱後の中空シリカの空孔や粒子径を計算する方法が技術常識であるともいえない。
しかも、申立人の主張する「1.20~0.19g/cm3」の範囲は「0.8g/cm3~1.4g/cm3」の範囲に包含されるものではないから、甲1発明が「0.8g/cm3~1.4g/cm3」との構成を満たすとはいえない。
してみれば、甲1に記載されたテンプレート粒子径およびシェル厚みから真密度が計算することができるという申立人の主張は採用することができない。
(2)申立人は、異議申立書において、本件発明1では、1時間~12時間の処理時間で、400℃~1,200℃の温度で行う炭化処理と、3時間~10時間の処理時間で350℃~1,500℃の温度範囲で行う焼成処理により中空シリカ粒子を得ているから、この条件に含まれる製造条件で中空粒子を製造する甲1発明は、本件発明1の吸水量を満たす旨、また、仮にそうでないとしても、化粧料用のシリカ粒子において吸湿性が低い粒子を得ることが望まれることは甲2の【0048】に記載されているとおり技術常識であるから、甲1発明において、甲2、3に記載された焼成条件を参照して焼成条件を調整すること、そのことによって吸湿性を低減させることは容易に想到しうることを主張している。
しかし、本件明細書中に、シリカ粒子の吸湿性が、その炭化処理条件、焼成処理条件のみによって決まるとの記載はないし、そのような技術常識を示す証拠もない。
そうすると、甲1発明が、本件明細書に記載され炭化処理時間、炭化処理温度、焼成処理時間、焼成処理温度によって炭化及び焼成されていることをもって、甲1発明のシリカ粒子が本件発明1の吸水量を満たすとはいえない。
また、甲1発明に、吸水量を調節する動機付けがない以上、甲2、3の記載事項にかかわらず、甲1発明において吸水量を調整することは当業者が容易に想到しうることではないが、一応、甲2、3の記載事項を確認すると、甲2、3はいずれも、中実シリカ粒子に関するものであって、本件発明1とは技術分野が異なる。そして、上記1(2)(【0054】)によれば、甲2にはシリカ粒子の吸湿性を高めるためには焼成温度を1000℃以上とすることが必要であることが記載されており、他方で、甲1発明は、上記1(1)(【請求項1】)によれば、325~525℃の第一温度での加熱及び525~900℃の第二温度での加熱をするものであるため、1000℃以上の焼成温度は採用し得ず、甲1発明に甲2に記載された事項を適用することはできない。また、甲3に記載されているのは、乾燥・加熱温度が30~120℃(当審注:【0033】には「乾燥・加熱処理温度は30~1200℃の範囲にあることが好ましい」と記載されているが、30~120℃の誤記と認められる。)であることであるため、甲2の記載事項を適用できないのと同様に、甲1発明に甲3に記載事項を適用することはできないし、仮に適用できたとしても、本件発明1の処理温度とはならない。
したがって、甲1発明が、本件発明1の吸水量を満たす、仮にそうでないとしても、甲1発明において、甲2、3に記載された焼成条件を参照して焼成条件を調整すること、そのことによって吸湿性を低減させることは、当業者が容易に想到しうる、との申立人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1、2に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700166