特許異議申立
2022-700342
建具
- 審判番号
- 2022-700342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-124370
- 登録番号
- 6960964
- 請求日
- 2022年04月26日
- 審決日
- 2023年01月16日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】及川 周
- 【権利者代理人】川渕 健一
- 【権利者代理人】松本 将尚
- 【権利者代理人】棚井 澄雄
- 【権利者代理人】清水 雄一郎
- 【異議申立人】奥住 雄一
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 佐藤 美紗子
- 分類
- P1651.121-YAA(E06B) / P1651.537-YAA(E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6960964号発明「建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6960964号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6960964号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6960964号は、平成27年1月30日に出願された特願2015-17747号の一部を、令和元年7月3日に新たな特許出願としたものであって、令和3年10月14日にその特許権の設定登録がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
その特許について、令和4年4月26日に、特許異議申立人 奥住 雄一(以下、「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし4に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 8月22日付け:取消理由通知
同年10月14日: 特許権者との面接(オンラインによる)
同年 同月21日: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月 8日: 申立人による意見書の提出
第2 訂正について
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和4年10月21日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6960964号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「枠体と該枠体内に納められた障子を備えた建具であって、
前記枠体は、屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え、
前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え、
前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され、
前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され、
樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されていることを特徴とする建具。」とあるのを、
「枠体と該枠体内に開閉可能に納められた障子を備えた建具であって、
前記枠体は、屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え、
前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え、
前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され、
前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され、
樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されており、前記複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されていることを特徴とする建具。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する訂正後の請求項2ないし4についても、同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記樹脂框には樹脂框中空部が形成され、
前記樹脂框中空部が、前記ガラスパネルの外周端面よりも見付け方向外側に形成されている請求項1に記載の建具。」とあるのを、
「前記樹脂框には樹脂框中空部が形成され、
前記樹脂框中空部が、前記ガラスパネルの外周端面よりも見付け方向外側に形成され、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置に形成された前記樹脂枠中空部の見付け方向内側の面は、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置に形成されている請求項1に記載の建具。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3及び4についても、同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、見込み方向に重なるように配されている請求項1または2に記載の建具。」とあるのを、
「前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、見込み方向に重なるように配されている請求項2に記載の建具。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する訂正後の請求項4についても、同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向外側であって、前記ガラスパネルの屋内側端面よりも屋内側に配されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の建具。」とあるのを、
「前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向外側であって、前記ガラスパネルの屋内側端面よりも屋内側に配されている請求項2または3に記載の建具。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、
(ア)「枠体内に納められた障子」について、「開閉可能に」納められたことを限定し、
(イ)「ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「樹脂上枠」における「樹脂枠中空部」について、当該「複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されて」いることを限定する、
という2つの点で限定を行う訂正事項であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項1のうち、上記ア(ア)に示した限定は、願書に添付した明細書の段落【0013】に、「そして、枠体6内に開閉可能に納めた障子7は、」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内である。
訂正事項1のうち、上記ア(イ)に示した限定は、願書に添付した明細書及び図面の、【図1】及び【図2】の図示からみて、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内である。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明において、訂正前の請求項1を引用することで特定される「樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置に形成」された「樹脂上枠」における「樹脂枠中空部」について、「見付け方向内側の面は、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置に形成されて」いることを限定する訂正事項であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項2における、上記アに示した限定は、願書に添付した明細書及び図面の、【図1】及び【図2】の図示からみて、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内である。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明において、訂正前の請求項1または2を引用する選択肢のうち、請求項1を引用する選択肢を削除する限定を行う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項3における上記アの限定は、訂正前の請求項3に記載された選択肢の一つを特定したものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内である。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明において、訂正前の請求項1から請求項3のいずれかを引用する選択肢のうち、請求項1を引用する選択肢を削除する限定を行う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項4における上記アの限定は、訂正前の請求項4に記載された選択肢の一部を特定したものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載された事項の範囲内である。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし4について、訂正前の請求項2ないし4は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1ないし4による訂正は、一群の請求項1ないし4についてするものである。
(6)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし4について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし4において、特許請求の範囲の請求項1ないし4について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1ないし4に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1ないし4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1-4〕について、本件訂正を全て認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、特許第6960964号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、本件発明1ないし4をまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
枠体と該枠体内に開閉可能に納められた障子を備えた建具であって、
前記枠体は、屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え、
前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え、
前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され、
前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され、
樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されており、前記複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記樹脂框には樹脂框中空部が形成され、
前記樹脂框中空部が、前記ガラスパネルの外周端面よりも見付け方向外側に形成され、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置に形成された前記樹脂枠中空部の見付け方向内側の面は、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置に形成されている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、見込み方向に重なるように配されている請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向外側であって、前記ガラスパネルの屋内側端面よりも屋内側に配されている請求項2または3に記載の建具。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び取消理由の概要
1 証拠方法
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。
甲1: 特開2009-299442号公報
(平成21年12月24日公開)
甲2: 特開2013-83134号公報
(平成25年5月9日公開)
甲3: 特開2014-163085号公報
(平成26年9月8日公開)
甲4: 特開2008-280793号公報
(平成20年11月20日公開)
甲5: 特開2014-202000号公報
(平成26年10月27日公開)
甲6: 特開2010-190006号公報
(平成22年9月2日公開)
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明、及び甲2ないし甲4、甲6に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲2に記載された発明、並びに、甲1に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)甲6を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲6に記載された発明、及び甲1ないし甲5に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)周知技術の組み合わせとしての進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1ないし甲6に示される周知技術の組み合わせとして、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和4年8月22日付け取消理由通知において記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)明確性要件違反
本件特許の請求項3及び4に係る発明は、「樹脂框中空部」を発明の構成として特定していない請求項1を引用して、「前記樹脂框中空部」に関する事項を付加的に特定しており、発明が明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明、及び甲2に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲2に記載された発明、並びに、甲1又は甲5に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)甲6を主たる証拠とした進歩性の欠如
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲6に記載された発明、及び甲3ないし甲5に示される技術的事項又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 証拠の記載
(1)甲1
ア 記載事項
甲1には、次の記載及び図示がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
(ア)明細書
「【0012】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるサッシの正面図を示している。この図に示すように、本実施形態におけるサッシは、建物開口部に設けられる枠体1内に3枚の固定障子2を横方向に連設し納めて構成されている。3枚の固定障子2は、左右の枠側障子3と、中央の中央障子3とからなっている。なお、図1はサッシを室外側から見たものである。また、図7にはサッシの斜視図を示している。
【0013】
枠体1は、上枠10と下枠11及び左右の縦枠12、12を方形状に枠組みして構成される。枠側障子3は、上框20と下框21、枠側縦框22及び連結縦框23を方形状に框組みしてなる框体5内にガラス板からなるパネル体6を納めて構成される。また、中央障子4は、上框30と下框31、及び左右の連結縦框32、32を方形状に框組みしてなる框体5内にガラス板からなるパネル体6を納めて構成される。なお、図1ではサッシを室外側から見ていることに伴い、枠側障子3と中央障子4との間に設けられる框は、中央障子4の連結縦框32のみが露出している。その構成については後で詳述する。
【0014】
図2にはサッシの縦断面図を、図3にはサッシの横断面図を、それぞれ示している。図2は枠側障子3が配置される領域における縦断面図である。枠体1を構成する上枠10は、外周面側において建物躯体に対して固定され、内周面の室外側に対向するように枠側障子3が配置され、固定されている。また、上枠10は金属製の金属上枠10aが断面中空状に形成され、金属上枠10aの内周面における室内側露出部分は樹脂上枠13により覆われる。樹脂上枠13の室内端部には、室内側に面する室内側部10bが形成され、その内周端部は枠側障子3の框体5における内周面位置と略同じ面内に配置されるので、室内側から枠側障子3の框体5を見えにくくし、意匠性を向上させることができる。
・・・・
【0018】
框体5を構成する上框20は、金属上框20aの室内側に樹脂上框24を設けて構成されている。樹脂上框24の内周面は、樹脂上枠13の内周面と略面一状となるように形成されている。樹脂上框24の内周面は平坦面として形成されており、また樹脂上枠13の内周面は、室内側部10bの内周端部と同じ高さを有しているため、樹脂上枠13と樹脂上框24とが一体化した内観を有している。」
(イ)図2
「
[図:0001396273000001.jpg]
」
(ウ)図より看取される事項
上記(ア)の記載を踏まえると、上記(イ)の図2より、次の事項が看取される。
・樹脂上框24には、樹脂上框の中空部が形成されている。
・樹脂上框24に形成された中空部は、パネル体6の上端の見付け方向内側から外側に亘って配置されている。
・樹脂上枠13は、下方に開口した箇所に固定される部材を有しており、樹脂上枠13に固定される部材によって、樹脂上枠13の内周面が形成されており、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とには、中空部が形成されている。
・樹脂上枠13は、樹脂上框24の室内側において、樹脂上框24の見付け面の内側端部から外側端部を覆っている。
・樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、パネル体6の上端の見付け方向内側から外側に亘って配置されており、パネル体6の上端より下において、樹脂上枠13に固定される部材内の中空部と樹脂上枠13はの下方に開口した箇所とで、見付け方向の内外方向に区分されている。
・樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、樹脂上框24に形成された中空部と、見込み方向に重なるよう配置されている。
・樹脂上框24に形成された中空部、及び、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、パネル体6の室内側端面より室内側に配置されている。
イ 甲1に記載された発明
上記アより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「枠体1内に固定障子である障子3を納めたサッシであり、
障子3は、框体5内にガラス板からなるパネル体6を納めて構成され、
枠体1を構成する上枠10は、金属上枠10aの内周面における室内側露出部分が樹脂上枠13により覆われ、樹脂上枠13の室内端部には、室内側に面する室内側部10bが形成され、その内周端部は障子3の框体5における内周面位置と略同じ面内に配置されるので、室内側から障子3の框体5を見えにくくしており、
框体5を構成する上框20は、金属上框20aの室内側に樹脂上框24を設けて構成され、
樹脂上框24の内周面は、樹脂上枠13の内周面と略面一状となるように形成され、樹脂上框24の内周面は平坦面として形成されており、また樹脂上枠13の内周面は、室内側部10bの内周端部と同じ高さを有しているため、樹脂上枠13と樹脂上框24とが一体化した内観を有しており、
樹脂上框24には、樹脂上框の中空部が形成されており、
樹脂上框24に形成された中空部は、パネル体6の上端の見付け方向内側から外側に亘って配置されており、
樹脂上枠13は、下方に開口した箇所に固定される部材を有しており、樹脂上枠13に固定される部材によって、樹脂上枠13の内周面が形成されており、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とには、中空部が形成されており、
樹脂上枠13は、樹脂上框24の室内側において、樹脂上框24の見付け面の内側端部から外側端部を覆っており、
樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、パネル体6の上端の見付け方向内側から外側に亘って配置されており、パネル体6の上端より下において、樹脂上枠13に固定される部材内の中空部と樹脂上枠13はの下方に開口した箇所とで、見付け方向の内外方向に区分されており、
樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、樹脂上框24に形成された中空部と、見込み方向に重なるよう配置されており、
樹脂上框24に形成された中空部、及び、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、パネル体6の室内側端面より室内側に配置されている、
サッシ。」
(2)甲2
ア 記載事項
甲2には、次の記載及び図示がある。
(ア)明細書
「【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る建具1は、アルミ樹脂複合障子のすべり出しサッシであり、障子(閉鎖面体)3はアルミニウム製形材の上框5、下框7及び左右の竪框9、9をガラス4の四周に框組してあり、各框の室内側には樹脂製形材6が取付けてある。枠11はアルミニウム製の上枠13、下枠15及び左右の竪枠17、17を枠組してあり、室内側には樹脂製形材18が取付けてある。
・・・・
【0010】
・・・・
上框5に取付けてある樹脂製形材6には、中空部6aが形成してあり、この中空部6a内には、スチール製の反り防止金具33が設けてある。」
(イ)図1
「
[図:0001396273000002.jpg]
」
(ウ)図より看取される事項
上記(ア)の記載を踏まえると、上記(イ)の図1より、次の事項が看取される。
・枠11内に障子3が納められている。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18には、中空部が形成されている。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部は、ガラス4の上端より見付け方向外側に配置されている。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18は、上框5に取付けてある樹脂製形材6より室内側に配置され、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端を覆っており、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端より見付け方向外側まで配置されている。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18は、上框5に取付けてある樹脂製形材6の見付け面の下端まで覆っていない。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されている。
・上框5に取付けてある樹脂製形材6に形成された中空部6aは、ガラス4の上端より見付け方向外側に形成されている。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部と、上框5に取付けてある樹脂製形材6に形成された中空部6aとは、見込み方向に重なるように配されている。
・アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部と、上框5に取付けてある樹脂製形材6に形成された中空部6aとは、ガラス4の上端面より見付け方向外側であって、ガラス4の室内側端面より室内側に配されている。
イ 甲2に記載された発明
上記アより、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「枠11内に障子3が納められたすべり出しサッシの建具1であり、
障子3は、アルミニウム製形材の上框5、下框7及び左右の竪框9、9をガラス4の四周に框組してあり、各框の室内側には樹脂製形材6が取付けてあり、
枠11は、アルミニウム製の上枠13、下枠15及び左右の竪枠17、17を枠組してあり、室内側には樹脂製形材18が取付けてあり、
上框5に取付けてある樹脂製形材6には、中空部6aが形成されており、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18には、中空部が形成されており、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部は、ガラス4の上端より見付け方向外側に配置されており、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18は、上框5に取付けてある樹脂製形材6より室内側に配置され、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端を覆って、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端より見付け方向外側まで配置されており、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18は、上框5に取付けてある樹脂製形材6の見付け面の下端まで覆っておらず、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されており、
上框5に取付けてある樹脂製形材6に形成された中空部6aは、ガラス4の上端より見付け方向外側に形成されており、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部と、上框5に取付けてある樹脂製形材6に形成された中空部6aとは、見込み方向に重なるように配されており、
アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部と、上框5に取付けてある樹脂製形材6に形成された中空部6aとは、ガラス4の上端面より見付け方向外側であって、ガラス4の室内側端面より室内側に配されている、
建具1。」
(3)甲3
甲3には、次の記載及び図示がある。
ア 明細書
「【0026】
図1は、本実施形態に係る開口部装置としての縦辷り出し窓1を屋内側から見たときの図である。図1に示すように、縦辷り出し窓1は、建物の壁6に形成され且つ開口縁に額縁70が取り付けられた開口部7に納められる。縦辷り出し窓1は、窓枠10と、障子20と、上側アーム30と、下側アーム40と、を備える。
【0027】
窓枠10は、上枠11と、下枠12と、吊元側の縦枠13と、戸先側の縦枠14と、により矩形に枠組みされる。
【0028】
障子20は、上框21と、下框22と、吊元側の縦框23と、戸先側の縦框24と、により矩形に框組みされた框200と、框200内に嵌め込まれて固定されたガラス25と、を含んで構成される。
・・・(中略)・・・
【0041】
樹脂上枠112は、樹脂上枠本体112aを含んで構成される。
樹脂上枠本体112aは、金属上枠水平部111bと金属上枠垂直部111cに取り付けられる。」
イ 図2
「
[図:0001396273000003.jpg]
」
ウ 図より看取される事項
上記イの図2より、樹脂上枠112内に複数の中空部が適宜に設けられる様子が、看取される。
(4)甲4
甲4には、次の記載及び図示がある。
ア 明細書
「【0014】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。まずカムラッチ仕様を採用した開閉窓について説明する。図1にはカムラッチ仕様における開閉窓の縦断面図を、図2にはカムラッチ仕様における開閉窓の横断面図を、それぞれ示している。・・・(中略)・・・。
【0015】
枠体1は、上枠10と下枠20及び左右の縦枠30、30を方形状に枠組みしてなるものである。これら枠材は、金属材に対しその室内側露出部分を覆う樹脂材が配設されてなる複合材によって構成されている。上枠10は、金属材として設けられる金属上枠11と、樹脂材として設けられる樹脂上枠12とから構成されている。また同様に下枠20は金属下枠21と樹脂下枠22とから、縦枠30は金属縦枠31と樹脂縦枠32とから、それぞれ構成されている。
【0016】
障子2は、上框40と下框41及び左右の縦框42、42を方形状に框組みしてなる框体7内にガラス体8を納めてなるものである。框体7を構成する框材は、枠材と同様に金属材に対しその室内側露出部分を覆う樹脂材が配設されてなる複合材によって構成されている。上框40は金属上框40aと樹脂上框40bとから、下框41は金属下框41aと樹脂下框41bとから、縦框42は金属縦框42aと樹脂縦框42bとから、それぞれ構成されている。」
イ 図1
「
[図:0001396273000004.jpg]
」
ウ 図より看取される事項
上記イの図1より、樹脂上枠12内に複数の中空部が適宜に設けられる様子が、看取される。
(5)甲5
甲5には、次の記載及び図示がある。
ア 明細書
「【0032】
内方障子ユニット20は、図1~図3に示すように、外方框10の内部に配置されるもので、ユニット枠210と、ユニット枠210の内部に配設したユニット障子220とを備えている。ユニット障子220は、矩形状を成す面材225の四周に内方框材221,222,223,224を設けて構成したものである。本実施の形態では、ユニット枠210の室外側に上下動可能に配設した外ユニット障子220と、ユニット枠210の室内側に上下動可能に配設した内ユニット障子220とを備えた、いわゆる上げ下げ窓と称される内方障子ユニット20を例示している。また、本実施の形態では、ユニット障子を構成する内方框材221,222,223,224の一部に合成樹脂製の枠カバー226が設けてある。具体的には、内ユニット障子220の上方に位置する内方框材223に対しては、室内側に位置する見付け面と上方側の見込み面にそれぞれ枠カバー226が設けてある。外ユニット障子220の左右に位置する内方框材221,222に対しては、それぞれ室内側に位置する見付け面に枠カバー226が設けてある。
【0033】
外ユニット障子220及び内ユニット障子220を支持するユニット枠210は、左右一対の内枠材211,212及び上下一対の内枠材213,214によって矩形状に構成したもので、個々の内枠材211,212,213,214の外周部を外方框材11,12,13,14の内周部に連結することによって外方框10に取り付けてある。内枠材211,212,213,214は、外方框材11,12,13,14よりも大きな見込み寸法を有しており、外方框材11,12,13,14の室内側に位置する見付け面及び室外側に位置する見付け面からそれぞれ突出した状態で外方框材11,12,13,14に連結してある。本実施の形態で例示する内枠材211,212,213,214は、上述した外方框材11,12,13,14と同様、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって成形した金属部分211M,212M,213M,214Mと、合成樹脂材によって成形した樹脂部分211P,212P,213P,214Pとを組み合わせて成る複合部材であり、ユニット枠210の室内側に位置する見付け面がそれぞれ樹脂部分211P,212P,213P,214Pによって覆われるように構成してある。さらに、内枠材211,212,213,214の樹脂部分211P,212P,213P,214Pは、見付け面を超えて外周側及び内周側にそれぞれ突出しており、外方框材11,12,13,14の内周側に位置する室内側の見付け面を覆うとともに、ユニット障子220の室内側に位置する見付け面を覆っている。」
イ 図6
「
[図:0001396273000005.jpg]
」
ウ 図より看取される事項
上記イの図6より、障子を支持するユニット枠の上の内枠材213が有する樹脂部分213Pが、障子の上方に位置する内方框材223の下端より下まで延在し、樹脂部分213P内には複数の中空部が適宜に設けられる様子が、看取される。
(6)甲6
ア 記載事項
甲6には、次の記載及び図示がある。
(ア)明細書
「【0011】
本発明の窓の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。なお、以下において上下左右とは、窓を室内側から正面視したときの上下左右(すなわち、図3における上下左右)を示すものとする。この窓は、図1~図3に示すように、上窓枠31a、下窓枠31b、左縦窓枠31c及び右縦窓枠31dを四周枠組みして躯体40の開口部に設けた窓枠3と、窓枠3に納めた障子1及び網戸2からなる、縦すべり出し窓である。
障子1は、四周枠組みした障子枠10と、障子枠10に納めたパネル11とを備える。障子1は上下のステーアーム41によって窓枠3に取り付けられており、上面視して反時計回りに回転して室外側に90度まで開くことができる。障子1の開閉は、窓枠3の室内側下部に設けたハンドル50により行う。ハンドル50はフリクションアーム42と連結され、さらにフリクションアーム42は障子1と連結されており、ハンドル50を回転させることで障子1を自在に開閉できる。
網戸2は、上網戸枠22a、下網戸枠22b、左縦網戸枠22c及び右縦網戸枠22dを四周枠組みした網戸枠20と、網戸枠20に納めた網材21とを備え、障子1の室内側に納めるものである。窓枠3の左縦窓枠31c及び右縦窓枠31dの障子1より室内側には、それぞれ内周側に向かって開口する嵌合溝32(左嵌合溝32c及び右嵌合溝32d)が設けてあり、網戸2の左縦網戸枠22cを左嵌合溝32cに、右縦網戸枠22dを右嵌合溝32dに嵌め込んである。
そして、窓枠3の網戸2より室内側には、内周側に延出する立設部30が四周にわたって設けてある。このうち、上窓枠31aに設ける立設部30は、断面略ロ字形の部材からなり、下窓枠31bに設ける立設部30は、J字形部材30aとL字形部材30bの二部材からなるもので、どちらも室内外方向に厚い形状であり、左縦窓枠31c及び右縦窓枠31dに設ける立設部30は、板状で室内外方向に薄い形状であるが、何れの立設部30においても、その内周面が閉鎖状態の障子1の障子枠10の内周面及び所定位置に取り付けた状態の網戸2の網戸枠20の内周面と略面一になるように形成されている。このように構成したことで、この窓を室内側から見た場合には、網戸枠20が立設部30に隠れて視認できず、室外側から見た場合には、網戸枠20が障子枠10に隠れて視認できない。よって、意匠性が良好であり、開口部が広く感じられる。なお、障子枠10、網戸枠20及び窓枠3は、何れもアルミニウムの押出型材であるが、障子枠10の室内側面には樹脂からなる被覆部材12を取り付けてある。また、嵌合溝32及び立設部30も、樹脂からなる(図1及び図2において、樹脂からなる部材にはハッチングを施して示してある)。このように、網戸枠20を囲う各部材が樹脂材料からなるので、サーマルブレイク構造となっており、断熱性が高い。」
(イ)図2
「
[図:0001396273000006.jpg]
」
(ウ)図より看取される事項
上記(ア)の記載を踏まえ、また樹脂からなる部材にはハッチングが施されていることを踏まえると、上記(イ)の図2より、次の事項が看取される。
・上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30の上には、樹脂からなる部材が設けられ、断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材には、複数の中空部が形成されている。
・上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部は、パネル11の上端の見付け方向内側から外側に亘っており、見付け方向の内外方向に複数積層形成されたものである。
・上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材は、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の室内側に、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の見付け面の見付け面の内側端部から外側端部を覆って配置されている。
・上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部は、パネル11の上端より見付け方向内側の位置に対向した位置に配置されているとともに、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の上端面より見付け方向外側の位置に対向する位置にも配置されている。
・障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12には、中空部が形成されている。
・障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12に形成された中空部は、パネル11の上端面より見付け方向外側に配置されている。
・障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12に形成された中空部と、上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部とは、見込み方向に重なるように配置されている。
・障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12に形成された中空部と、上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部とは、パネル11の上端面より見付け方向外側であって、パネル11の室内側端面より室内側に配置されている。
イ 甲6に記載された発明
上記アより、甲6には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
「窓枠3と、窓枠3に納めた障子1とを有する、窓であり、
窓枠3は、アルミニウムであり、窓枠3の室内側には、内周側に延出する、樹脂からなる立設部30が設けられ、
上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30の上には、樹脂からなる部材が設けられ、断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材より、複数の中空部が形成されており、
障子1は、四周枠組みした障子枠10と、障子枠10に納めたパネル11とを備え、室外側に開くことができ、
アルミニウムの障子枠10の室内側面には樹脂からなる被覆部材12を取り付けてあり、
上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部は、パネル11の上端の見付け方向内側から外側に亘っており、見付け方向の内外方向に複数積層形成されたものであり、
上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材は、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の室内側に、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の見付け面の内側端部から外側端部を覆って配置されており、
上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部は、パネル11の上端より見付け方向内側の位置に対向した位置に配置されているとともに、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の上端面より見付け方向外側の位置に対向する位置にも配置されており、
障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12には、中空部が形成されており、
障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12に形成された中空部は、パネル11の上端面より見付け方向外側に配置されており、
障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12に形成された中空部と、上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部とは、見込み方向に重なるように配置されており、
障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12に形成された中空部と、上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部とは、パネル11の上端面より見付け方向外側であって、パネル11の室内側端面より室内側に配置されている、
窓を室内側から見たときの意匠性がよく、断熱性が高い、窓。」
2 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1)明確性要件違反について
本件訂正前の請求項3は、「前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、見込み方向に重なるように配されている」と付加的に特定したうえで、「請求項1または2」を引用していたところ、本件訂正前の請求項1は「樹脂框中空部」を発明の構成として特定していなかったため、請求項1を引用する請求項3は、発明が不明確となっていた。
本件訂正前の請求項4は、「前記樹脂枠中空部と前記樹脂框中空部は、・・・」と付加的に特定したうえで、「請求項1から請求項3のいずれか一項」を引用していたところ、「樹脂框中空部」を発明の構成として特定していない請求項1を引用する請求項4は、請求項3と同様に、発明が不明確となっていた。
しかしながら、上記第2のとおり、本件訂正は全て認められ、本件訂正後の請求項3は請求項2を引用するものへと訂正され、本件訂正後の請求項4は請求項2または3を引用するものへと訂正されたから、本件訂正後の請求項3及び4は、本件訂正前の請求項3及び4について、取消理由通知において指摘した上記の点で、不明確なものではない。
したがって、本件訂正後の請求項3及び4に係る特許は、取消理由に指摘した点で、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
(2)甲1を主たる証拠とした進歩性の欠如について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「枠体1」、「障子3」及び「サッシ」は、本件発明1における「枠体」、「障子」及び「建具」にそれぞれ相当し、甲1発明が「枠体1内に固定障子である障子3を納めたサッシ」である構成は、本件発明1が「枠体と該枠体内に」「納められた障子を備えた建具」である構成に相当する。
甲1発明において、「枠体1を構成する上枠10」が、「金属上枠10a」と、「金属上枠10aの内周面における室内側露出部分」を覆う「樹脂上枠13」とを有する構成は、本件発明1において、「前記枠体」が、「屋外側に設けた金属枠」と「屋内側に設けた樹脂枠」とを備える構成に相当する。
甲1発明において、「障子3」が「框体5内にガラス板からなるパネル体6を納めて」おり、「框体5を構成する上框20」が「金属上框20aの室内側に樹脂上框24を設けて」いる構成は、本件発明1において、「前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え」る構成に相当する。
甲1発明において、「樹脂上枠13は、下方に開口した箇所に固定される部材を有しており、樹脂上枠13に固定される部材によって、樹脂上枠13の内周面が形成されており、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とには、中空部が形成されて」いる構成は、本件発明1において、「前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され」ている構成に相当する。
甲1発明において、「樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部は、パネル体6の上端の見付け方向内側から外側に亘って配置されて」いる構成は、本件発明1において、「前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され」ている構成に相当する。
甲1発明における、「樹脂上框24」は、本件発明1における、「樹脂上框」に相当する。
甲1発明において、「樹脂上枠13は、樹脂上框24の室内側において、樹脂上框24の見付け面の内側端部から外側端部を覆って」いる構成は、本件発明1において、「樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されて」いる構成に相当する。
甲1発明において、「樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部」が、「パネル体6の上端より下側において、樹脂上枠13に固定される部材内の中空部と樹脂上枠13はの下方に開口した箇所とで、見付け方向の内外方向に区分されて」いる構成は、本件発明1において、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成され」ている構成に相当する。
以上を整理すると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
「枠体と該枠体内に納められた障子を備えた建具であって、
前記枠体は、屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え、
前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え、
前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され、
前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され、
樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されている、
建具。」
そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「障子」に関し、
本件発明1においては、「開閉可能」であるのに対し、
甲1発明においては、「固定障子」である点。
<相違点2>
「樹脂上枠」における「樹脂枠中空部」の存在範囲に関し、
本件発明1においては、「樹脂枠中空部」が「前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されている」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、そうなっていない点。
<相違点3>
「樹脂上枠」における「中空部」の周辺構造に関し、
本件発明1においては、「前記複数積層形成された中空部」(当審注;「ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「樹脂枠中空部」を指す。)に「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」のに対し、
甲1発明においては、そうなっていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3について判断する。
樹脂上枠について、樹脂上枠中に設けられる中空部も含め、存在範囲を、樹脂上框の上方まで拡張することは、甲2発明において採用されているように、周知技術である。
また、甲3ないし甲6においても、樹脂上枠内に適宜複数に分割された中空部を設ける例が示されているように、樹脂部材に設ける中空部をどの程度分割されたものとするかは、分割壁及び中空部の数を増やすことに伴うコスト、強度及び断熱性の変化を考慮しつつ、当業者が適宜に選択できる事項である。
そして、本件明細書においても、【図2】における上框及び上枠の断面図に対応して、本件発明1ないし4と同様の記載が段落【0007】ないし【0009】になされているものの、樹脂枠の中空部やその周辺部を特定の形状とすることにより、従来は認識されていなかった新たな課題を解決することや、通常予測される範囲を超える格別顕著な効果が得られることが説明されているわけではないから、本件明細書の記載を考慮しても、本件発明1において、樹脂上枠における中空部の配置及び周辺構造について、上記相違点3に係る構成を採用したことにより、事前に予測される範囲を超える格別顕著な効果が得られるということはできない。
しかしながら、甲1発明において、「樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材とに形成された中空部」の存在範囲及び分割数を適宜に調整することは、上記周知技術に基いて想到容易であるとしても、「樹脂上枠13に固定される部材内の中空部と樹脂上枠13の下方に開口した箇所とで、見付け方向の内外方向に区分されて」いる中空部について、「隣接した屋内側」に「四方を囲われた隙間部」を形成する変更を加えることは、複数の部材の形状及び部材相互の当接態様を同時に調整することを要するから、あえてそのような変更を行う動機付けがあったということはできない。
そして、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用することについて、甲2ないし甲6に示される事項を考慮しても、動機付けがないから、相違点3に係る本件発明1の構成は、想到容易ということができない。
したがって、その余の相違点1及び2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び、甲2ないし甲6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1の構成は、甲1発明、及び、甲2ないし甲6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明2ないし4における付加的構成について判断するまでもなく、本件発明2ないし4は、甲1発明、及び、甲2ないし甲6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明において、「枠11」、「障子3」及び「建具1」は、本件発明1における「枠体」、「障子」及び「建具」にそれぞれ相当し、甲2発明が「枠11内に障子3が納められたすべり出しサッシの建具1」であることは、本件発明1が「枠体と該枠体内に開閉可能に納められた障子を備えた建具」であることに相当する。
甲2発明において、「枠11」が「アルミニウム製の上枠13、下枠15及び左右の竪枠17、17を枠組してあり、室内側には樹脂製形材18が取付け」たものである構成は、本件発明1において、「前記枠体」が「屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え」る構成に相当する。
甲2発明において、「障子3」が「アルミニウム製形材の上框5、下框7及び左右の竪框9、9をガラス4の四周に框組してあり、各框の室内側には樹脂製形材6が取付け」たものである構成は、本件発明1において、「前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え」る構成に相当する。
甲2発明において、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18には、中空部が形成されて」いる構成は、本件発明1において、「前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され」ている構成に相当する。
甲2発明において、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部は、ガラス4の上端より見付け方向外側に配置されて」いる構成と、本件発明1において、「前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され」ている構成とは、「前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向外側に形成され」ている構成という点で、共通する。
甲2発明において、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18は、上框5に取付けてある樹脂製形材6より室内側に配置され、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端を覆って、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端より見付け方向外側まで配置されて」いる構成と、本件発明1において、「樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されて」いる構成とは、「樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の外側端部を覆う樹脂上枠が配されて」いる構成という点で、共通する。
甲2発明において、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、上框5に取付けてある樹脂製形材6の上端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されて」いる構成と、本件発明1において、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されて」いる構成とは、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されて」いる構成という点で、共通する。
以上を整理すると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致する。
「枠体と該枠体内に開閉可能に納められた障子を備えた建具であって、
前記枠体は、屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え、
前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え、
前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され、
前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向外側に形成され、
樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の外側端部を覆う樹脂上枠が配されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されている、
建具。」
そして、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A>
「樹脂上枠」及び「樹脂枠中空部」の配置範囲及び細部構造に関し、
本件発明1においては、「樹脂上枠」について、「樹脂上框の見付け面の内側端部から」覆うように配置されており、「樹脂枠中空部」について、「ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から」配置されており、「樹脂上枠における前記樹脂枠中空部」について、「前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において」、見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、「前記複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」ことが特定されているのに対し、
甲2発明においては、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18」について、上框5に取付けてある樹脂製形材6の見付け面の下端まで覆っておらず、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18に形成された中空部」について、ガラス4の上端より見付け方向内側には配置されておらず、「見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「中空部」に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部は形成されていない点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点Aについて判断する。
樹脂上枠の配置範囲を、ガラスパネルの上端より見付け方向内側まで延ばし、樹脂框の見付け面の内側端部まで至るものとすることは、甲1発明において採用され、甲5の【図6】にも示され、一般的にいわゆる「隠し框」構造としても広く知られるとおり、周知技術である。
また、甲1及び甲3ないし甲6においても、樹脂上枠内に適宜複数に分割された中空部を設ける例が示されているように、樹脂部材に設ける中空部をどの程度分割されたものとするかは、分割壁及び中空部の数を増やすことに伴うコスト、強度及び断熱性の変化を考慮しつつ、当業者が適宜に選択できる事項である。
しかしながら、甲2発明において、いわゆる周知の「隠し框」構造とするために、「アルミニウム製の上枠13の室内側に取付けた樹脂成形材18」の存在範囲、及び「樹脂成形材18」の内部に「見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「中空部」の存在範囲を、ガラス4の上端より見付け方向内側まで延ばすことが容易であるとしても、「樹脂成形材18」の下方に延在する部分には屋内側に他の部材が存在しないから、「前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置」まで延在した「樹脂成形材18」の内部に「見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「中空部」に対して、さらに「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部」を「形成」することについては、動機付けがあるとはいえない。
そして、甲1及び甲3ないし甲6を参酌しても、また、樹脂部材に設ける中空部をどの程度分割されたものとするかは当業者が適宜に選択できる事項であることを勘案しても、甲2発明において、「樹脂成形材18」をガラス4の上端より見付け方向内側まで延ばしたうえで、下方に延在した「樹脂成形材18」の内部に「見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「中空部」に対して、さらに「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部」を「形成」することが、示唆されていたとはいえない。
したがって、甲2発明において、上記相違点Aに係る本件発明1の構成に至ることは、甲1及び甲3ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。
よって、本件発明1は、甲2発明、及び、甲1並びに甲3ないし甲6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1の構成は、甲2発明、及び、甲1並びに甲3ないし甲6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明2ないし4における付加的構成について判断するまでもなく、本件発明2ないし4は、甲2発明、及び、甲1並びに甲3ないし甲6に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲6を主たる証拠とした進歩性の欠如について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明において、「アルミニウム」である「窓枠3」、「窓枠3」の「室内側」に設けられて「内周側に延出」する「樹脂からなる立設部30」、及び「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30の上」に設けられる「樹脂からなる部材」の組み合わせは、本件発明1における「枠体」に相当する。
甲6発明において、「窓枠3と、窓枠3に納めた障子1とを有する、窓」であり、「障子1」が「室外側に開くことができ」るものである構成、は、本件発明1において、「枠体と該枠体内に開閉可能に納められた障子を備えた建具」である構成に相当する。
窓のパネルが通常はガラスからなることを踏まえると、甲6発明における「パネル11」は、本件発明1における「ガラスパネル」に相当する。
甲6発明において、「障子1は、四周枠組みした障子枠10と、障子枠10に納めたパネル11とを備え、アルミニウムの障子枠10の室内側面には樹脂からなる被覆部材12を取り付けて」ある構成は、本件発明1において、「前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え」る構成に相当する。
甲6発明において、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30の上には、樹脂からなる部材が設けられ、断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材より、複数の中空部が形成され」る構成は、本件発明1において、「前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され」る構成に相当する。
甲6発明において、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部は、パネル11の上端の見付け方向内側から外側に亘って」いる構成は、本件発明1において、「前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され」る構成に相当する。
甲6発明において、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材は、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の室内側に、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の見付け面の内側端部から外側端部を覆って配置されて」いる構成は、本件発明1において、「樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されて」いる構成に相当する。
甲6発明において、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部」が、「見付け方向の内外方向に複数積層形成され」たものである構成と、本件発明1において、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成される」構成とは、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成され」る点で、共通する。
甲6発明において、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部は、パネル11の上端より見付け方向内側の位置に対向した位置に配置されているとともに、障子枠10の上枠に取り付けた被覆部材12の上端面より見付け方向外側の位置に対向する位置にも配置されて」いる構成と、本件発明1において、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されて」いる構成とは、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において形成されるとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されている」という点で、共通する。
以上を整理すると、本件発明1と甲6発明とは、次の点で一致する。
「枠体と該枠体内に開閉可能に納められた障子を備えた建具であって、
前記枠体は、屋外側に設けた金属枠と、屋内側に設けた樹脂枠と、を備え、
前記障子は、ガラスパネルと、該ガラスパネルの周縁部に設けられた金属框および樹脂框と、を備え、
前記樹脂枠には樹脂枠中空部が形成され、
前記樹脂枠中空部が、前記ガラスパネルの外周端面の見付け方向内側から外側に亘って形成され、
樹脂上框の屋内側に、該樹脂上框の見付け面の内側端部から外側端部を覆う樹脂上枠が配されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、見付け方向の内外方向に複数積層形成されており、
前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において形成されているとともに、前記樹脂上框の外周端面より見付け方向外側の位置に対向した位置にも形成されている、
建具。」
そして、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で相違する。
<相違点a>
「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部」について、
本件発明1においては、「前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成される」とともに、「前記複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成」されていると特定されているのに対し、
甲6発明においては、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部」が、「見付け方向の内外方向に複数積層形成」されたものであり、また「パネル11の上端より見付け方向内側の位置に対向した位置に配置されて」いるものの、「パネル11の上端より見付け方向内側の位置に対向した位置」において「見付け方向の内外方向に複数積層形成」されておらず、「複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成」されていない点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点aについて判断する。
甲1及び甲5においても、樹脂上枠内に適宜複数に分割された中空部を設ける例が示されているように、樹脂部材に設ける中空部をどの程度分割されたものとするかは、分割壁及び中空部の数を増やすことに伴うコスト、強度及び断熱性の変化を考慮しつつ、当業者が適宜に選択できる事項である。
しかしながら、甲6発明において、「上窓枠31aに設けられる断面略ロ字形の立設部30及び樹脂からなる部材に形成される、複数の中空部」の屋内側には他の部材が存在しないから、当該「複数の中空部」に「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部」を「形成」することについては、動機付けがあるとはいえない。
そして、甲1ないし甲5を参酌しても、また、樹脂部材に設ける中空部をどの程度分割されたものとするかは当業者が適宜に選択できる事項であることを勘案しても、甲6発明において、上記「複数の中空部」に「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部」を「形成」することが、示唆されていたとはいえない。
したがって、甲6発明において、上記相違点aに係る本件発明1の構成に至ることは、甲1ないし甲5に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易ではない。
よって、本件発明1は、甲6発明、及び、甲1ないし甲5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1の構成は、甲6発明、及び、甲1ないし甲5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明2ないし4における付加的構成について判断するまでもなく、本件発明2ないし4は、甲6発明、及び、甲1ないし甲5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1)取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由
申立人は申立書において、本件発明1ないし4は、甲1ないし甲6に示される周知技術の組み合わせとして、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべき旨を主張している(申立書第46頁「ソ 単なる寄せ集め」参照。上記第4の2(4)。)。
そして、当該特許異議申立理由は、先の取消理由通知において採用していない。
(2)上記(1)の特許異議申立理由についての判断
本件発明1ないし4は、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部」のうち、「前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「中空部」について、「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」構成を有する。
そして、本件発明1ないし4が有する上記の構成は、上記2(2)ないし(4)において示した、甲1発明、甲2発明及び甲6発明をそれぞれ主たる引用発明とした判断に照らして、甲1ないし甲6に記載された事項を周知技術として組み合わせても、容易に想到される構成とはいえない。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は、上記(1)の特許異議申立理由により、取り消されるべきものではない。
4 申立人の意見書における主張について
(1)「隙間部」の明確性について
ア 申立人の主張
申立人は、令和4年12月8日に提出した意見書において、本件訂正により特許請求の範囲の請求項1に記載された「隙間部」に関し、普通「隙間」とは「物と物との間のわずかにあいている所」を意味するところ、請求項1においては、樹脂上枠が複数の部材から形成されていることは特定されていないから、「隙間部」が樹脂上枠におけるどのような物と物との間のわずかにあいている部分を指すのかわからず、請求項1及びそれを引用する請求項2ないし4の記載は不明瞭である旨を主張している(同意見書第3頁「(2)明確性」参照)。
イ 上記アの主張についての判断
上記アの申立人の主張について、判断する。
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、上記観点から判断する。
本件発明1ないし4を特定する請求項1ないし4の記載は、上記第3に示したとおりであり、「隙間部」の前後における請求項1の記載は、「前記樹脂上枠における前記樹脂枠中空部は、前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成されるとともに、・・・(中略)・・・前記複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」というものである。
上記請求項1の記載より、「樹脂上枠」における「樹脂枠中空部」のうちには、「前記ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成され」たものがあること、及び、当該「複数積層形成された中空部」に「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」ことが理解される。また、「複数積層形成された中空部」に「隣接した屋内側」に「四方を囲われた隙間部が形成」されるからには、「複数積層された中空部」の屋内側壁に対して、「屋内側」に「隙間部」を形成すると言うことができる程度に独立性を有する部材が配置されていることが、技術常識から理解され、当該理解は【図1】における図示とも整合する。
そして、請求項1における上記「隙間部」に関し、第三者の利益が不当に害されるほど不明確な点はない。
したがって、上記アの申立人の主張について検討しても、本件発明1ないし4について、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものではない。
(2)甲1発明との相違点3について
ア 申立人の主張
申立人は、令和4年12月8日に提出した意見書において、上記2(2)ア(ア)に認定し、同(イ)に判断した、甲1発明との相違点3に関し、甲1の【図2】に丸印を付した以下の参考図を示すとともに、申立人が付した丸印のうち、図番13及び10bに対応する赤の丸印の箇所は、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材との間の結合部であり、当該結合部には隙間が形成されていることが明らかである旨を主張している。
申立人が示す参考図(同意見書第5頁)
「
[図:0001396273000007.jpg]
」
そして申立人は、甲1における上記結合部の隙間部は、見付け方向の内外方向(当審注;図の上下方向)に区分されている中空部に隣接した屋内側にあるから、上記相違点3に係る本件発明1の構成である、「前記複数積層形成された中空部」(当審注;「ガラスパネルの外周端面より見付け方向内側の位置に対向した位置において見付け方向の内外方向に複数積層形成」された「樹脂枠中空部」を指す。)に「隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」構成と、実質的に相違せず、仮に相違するとしても設計事項の範疇を出ない旨を主張している(同意見書第3頁下から2行-第7頁第16行参照)。
イ 上記アの主張についての判断
上記アの申立人の主張について、判断する。
甲1の【図2】において、申立人が参考図に赤の丸印を付した図番13及び10bに対応する箇所に、樹脂上枠13と樹脂上枠13に固定される部材との間の結合部は看取されるものの、当該結合部において、屋内側の部材と屋外側の部材との間が離れて隙間を形成している様子は看取されないから、甲1発明は本件発明1における「前記複数積層形成された中空部に隣接した屋内側に四方を囲われた隙間部が形成されている」構成に相当する構成を有するものではなく、相違点3は実質的な相違点である。
そして、甲1発明において、「樹脂上枠13に固定される部材内の中空部と樹脂上枠13の下方に開口した箇所とで、見付け方向の内外方向に区分されて」いる中空部について、「隣接した屋内側」に「四方を囲われた隙間部」を形成する変更を加えることは、複数の部材の形状及び部材相互の当接態様を同時に調整することを要する一方、そのような変更を行う動機付けがあったとはいえない。
したがって、申立人が上記アに主張する点を考慮しても、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成をとることの容易性について、上記2(2)ア(イ)の判断を変更すべき事情は見いだせない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700342