特許異議申立
2021-700969
連窓
- 審判番号
- 2021-700969
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-085604
- 登録番号
- 6858627
- 請求日
- 2021年10月08日
- 審決日
- 2022年09月05日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】YKK AP株式会社
- 【権利者代理人】一色国際特許業務法人
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 真一
- 審判官 居島 一仁
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.113-YAA(E06B) / P1651.121-YAA(E06B) / P1651.537-YAA(E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5、特許法第120条の2第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6858627号発明「連窓」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6858627号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第6858627号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6858627号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年4月24日に出願され、令和3年3月26日にその特許権の設定登録がされ、令和3年4月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は3である。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年10月 8日 : 特許異議申立人 渡辺 陽子(以下「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 3月17日付け: 取消理由通知書
令和4年 5月16日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 5月30日付け: 訂正請求があった旨の通知
なお、令和4年5月30日付け訂正請求があった旨の通知に対し、申立人からの応答はなかった
第2 本件訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年5月16日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を訂正することを求めるものであり、次の(1)の本件訂正前の特許請求の範囲の記載を、後記(2)の本件訂正後の特許請求の範囲の記載のとおり訂正するものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、
を有し、
前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、
前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出していることを特徴とする連窓。
【請求項2】
請求項1に記載の連窓であって、
前記当接部と前記本体部との境界部分に脆弱部が設けられていることを特徴とする連窓。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の連窓であって、
前記当接部は、前記並設方向に間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする連窓。」
(2) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、
を有し、
前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、
前記本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有しており、
前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、
前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられており、
前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出していることを特徴とする連窓。
【請求項2】
請求項1に記載の連窓であって、
前記当接部と前記本体部との境界部分に脆弱部が設けられていることを特徴とする連窓。
【請求項3】
互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、
を有し、
前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、
前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出しており、
前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられていることを特徴とする連窓。」
(3) 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、次の訂正事項1及び訂正事項2である。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、を有し、前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出していることを特徴とする連窓。」とあるのを、「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、を有し、前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、前記本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有しており、
前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられており、前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出していることを特徴とする連窓。」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2に記載の連窓であって、前記当接部は、前記並設方向に間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする連窓。」と記載されているのを、
「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、を有し、前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出しており、前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられていることを特徴とする連窓。」に訂正する。
(4) 訂正の単位、別の訂正単位とする求めについて
本件訂正前の請求項1について、訂正前の請求項2及び3は請求項1の記載を直接又は間接的に引用しており、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3は、特許法120条の5の4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、一群の請求項〔1~3〕についてするものである。
また、訂正後の請求項3に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められる場合には請求項1、2とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 本件訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「本体部」を、
「本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有」するものに限定し、さらに、
「前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、
前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いるものに限定するものである。
同様に、訂正後の請求項2は、請求項1の記載を引用するものであるから、前記と同様の点を限定したものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
訂正事項1に係る「本体部」について段落【0020】及び【0030】に記載されている。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものを選択して請求項間の引用関係を解消して、独立形式に請求項を改めたものである。
そして、訂正前の請求項3に「前記当接部は、前記並設方向に間隔を空けて複数設けられていること」とあるのを「前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられていること」と限定するものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の2第2項ただし書き4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、同法120条の5第2項ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
訂正事項2に係る「当接部」について段落【0033】に記載されている。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(3) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項又は6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
第3 本件特許に係る発明
前記第2において説示したとおり、本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件特許発明1」等といい、全体の発明を「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲(前記第2の1(2)参照)の請求項1~3に記載されたとおりのものである。
第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審合議体が令和4年3月17日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである。
<引用文献等一覧>
甲第7号証 特開2015-1120号公報
甲第2号証 特開2011-99205号公報
以下、各甲号証を「甲1」等と略すことがある。
第5 当審の判断
1 甲号証について
(1) 甲7
甲7には次の記載がある。
ア 【0023】~【0030】
「【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による窓部連結構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、第1実施形態による窓部連結構造1Aでは、建物11の開口部12に左右方向に2つの窓部2,2が方立3を介して配列されていて、方立3の室内13側に耐火部材4が設けられている。
【0024】
図1および図3に示すように、窓部2は矩形状に枠組みされた枠体21と、枠体21内にはめ込まれた窓ガラス22と、を備えている。ここで、枠体21のうち、窓ガラス22の左右方向の両端部22aに沿って設けられた部材を縦枠23として以下説明する。
(中略)
【0026】
方立3は、室内13側に設けられた室内側方立部材31と、室外14側に設けられた室外側方立部材32と、を備えていて、これらの室内側方立部材31および室外側方立部材32は、ともに開口部12の高さ方向全長にわたって上下方向(図2の矢印Dの方向)に延在する部材に形成されている。
(中略)
【0028】
室外側方立部材32は、水平断面において、室外14側に位置し見付け方向Cに延びる第1見付け片33と、第1見付け片33と連続し第1見付け片33の見付け方向C中央部から室内13側に延びる第1見込み片34と、第1見込み片34と連続し見付け方向Cに延びる第2見付け片35と、第2見付け片35と連続し第2見付け片35の見付け方向Cの両端部から室内13側に延びる一対の第2見込み片36,36と、を備えている。
室外側方立部材32は、例えば、アルミ合金などで形成されている。
【0029】
室外側方立部材32の第1見付け片33は、見付け方向Cの両端部33a,33a近傍が縦枠23の室外側見付け片26,26と見込み方向Bに重なる位置に設置され、室外側見付け片26,26との間に上下方向D全長にわたってパッキンなどの止水材37が介在されている。
また、第2見付け片35の室内13側で、一対の第2見込み片36,36の間には、室内側方立部材31の室外14側が嵌合するように構成されている。そして、一対の第2見込み片36,36は、室内側方立部材31にねじ止めされ、室内側方立部材31と室外側方立部材32とが連結されている。
【0030】
一対の縦枠23,23と方立3との間には、縦枠23と方立3とを固定する鉄製のアンカー5がそれぞれ設けられている。」
イ 【0044】
「【0044】
また、一対の縦枠23,23と方立3との間(連結部)にはアンカー5がそれぞれ設けられていることにより、一対の縦枠23,23と方立3とを確実に固定させることができるため、縦枠23がねじれたり反ったりすることを防止することができる。
さらに、方立3およびアンカー5はスチール製であって、方立3とアンカー5とは溶接されていることにより、一対の縦枠23,23と方立3とを更に確実に固定させることができる。
また、窓部2を建物11の躯体15に固定する際にもアンカー5と躯体15の鉄筋16bとを溶接するとともに、方立3を躯体15に固定する際にも室内側方立部材31と躯体15の鉄筋16aとを溶接する。つまり、これらの溶接作業とともにアンカー5と方立3の溶接作業を行うことができるため、アンカー5と方立3との固定に特別な作業が必要なく作業性が良い。」
ウ 【図3】
「
[図:0001392015000001.jpg]
」
エ 図面から看取できる事項
上記ア及びイの記載を踏まえると、上記ウの図3からは次の点を看取することができる。
(ア)2つの窓部2は間隔を空けて隣接する点。
(イ)第1見付け片33は2つの窓部2にわたって設けられ、窓部2の間を覆う点。
(ウ)アンカー5により窓部2の縦枠23と方立3の室内側方立部材31とが固定される点。
オ 甲7発明
以上を総合すると、甲第7号証には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されている。
「2つの窓部が方立を介して配列されている窓部連結構造であって、
窓部は矩形状に枠組みされた枠体と、枠体内にはめ込まれた窓ガラスと、を備えており、
2つの窓部は間隔を空けて隣接し、
方立は、室内側に設けられた室内側方立部材と、室外側に設けられた室外側方立部材と、を備えていて、
窓部の縦枠と方立の室内側方立部材とが固定され、
室内側方立部材と室外側方立部材とが連結されており、
室外側方立部材は、室外側に位置し見付け方向に延びる第1見付け片を備えており、
第1見付け片は2つの窓部にわたって設けられ、窓部の間を覆い、
第1見付け片は、見付け方向の両端部近傍が縦枠の室外側見付け片と見込み方向に重なる位置に設置され、室外側見付け片との間に上下方向全長にわたってパッキンなどの止水材が介在されている、
窓部連結構造。」
(2) 甲2
甲2には次の記載がある。
ア 【0016】~【0021】
「【0016】
以下、本発明の実施形態に係る建具としての連窓1を図面に基づいて説明する。
図1~図3において、連窓1は、鉄筋コンクリート造集合住宅等の外壁開口部Oに設けられ、左右に隣り合って設けられる一対の窓部2,2と、これらの窓部2,2を仕切って上下に延びる仕切材としての方立3とを備えて構成されている。各窓部2は、枠体としての窓枠4と、この窓枠4内部に支持される面材としての室内外一対の障子5,5とを備えた引き違い窓であって、窓枠4は、それぞれアルミ形材製の上枠6、下枠7および左右の縦枠8,9を四周枠組みして形成されている。窓枠4において、上枠6および下枠7は、それぞれ外壁開口部Oの建物躯体SにアンカーAおよび連結金物Fを介して連結され、図1、3中左側の窓部2における縦枠8および右側の窓部2における縦枠9は、建物躯体Sに連結金物Fを介して連結され、方立3側の縦枠8,9は、固着具であるビス30によって方立3に固定されている。
【0017】
方立3は、図4、図5に示すように、それぞれアルミ形材製の方立本体31、その室内側の押縁材32およびカバー材33を備えて構成されている。方立本体31は、見込み方向(室内外方向)に延びる見込み片311と、この見込み片311の室外側に連続して見付け方向(左右方向)に延びる見付け片312とを有して断面略T字形に形成されている。見込み片311の室内側端部には、見付け方向に交差する室内側見付け片313と、この室内側見付け片313から室内側に延びてL字形に折れ曲がった固定片314とが形成されている。また、見付け片312には、その室内側面から室内側に突出した2つの突出片315と、左右の先端部にて室内側に開口した2つの止水材保持部316とが形成され、止水材保持部316には、縦枠8,9に当接して止水可能な止水材(AT材)34が取り付けられている。押縁材32は、全体平板状に形成されるとともに、当該押縁材32の左右方向略中央を貫通するビス35を固定片314に螺合することで方立本体31に固定され、押縁材32の左右方向端部側を貫通するビス30で縦枠8,9と固定されるようになっている。また、押縁材32の左右両端部には、カバー材33を係合する係合部321が形成されている。
(中略)
【0019】
方立3の上下端部における室外側には、縦枠8,9を見付け方向および見込み方向に位置決め可能な位置決め部品10が取り付けられている。なお、ここでは、方立3の上端部に取り付けられる位置決め部品10について説明するが、方立3の下端部には、同一の位置決め部品10を上下反転して取り付ければよい。
位置決め部品10は、樹脂製の一体成形品であって、図6に示すように、ブロック状の本体11と、この本体11から室内側に延びる水平面部12と、この水平面部12から下方に延びる固定部13と、水平面部12の室内側端縁から上方に延びる突出部14と、水平面部12の両側に沿って本体11から室内側に延びる一対の当接部15とを備えて構成されている。
【0020】
位置決め部品10における本体11の見付け方向幅寸法は、方立3の止水材保持部316間に隙間なく挿入可能な寸法に設定されるとともに、本体11の室外側側面には、方立3の2つの突出片315と各々係合可能な係合溝16が形成され、これにより位置決め部品10が方立3に対して見付け方向に位置決めされている。さらに、固定部13がビス10Aによって見込み片311に固着されることで、位置決め部品10が方立3に固定されるようになっている。また、本体11の室内側側面17は、所定の押圧力で縦枠8,9の室外側見付け片82,92に当接した際の止水材34と略フラットになり、この室内側側面17に室外側見付け片82,92が当接することで、位置決め部品10を介して方立3によって縦枠8,9を見込み方向に位置決めできる。さらに、一対の当接部15が縦枠8,9の室外側折返し片84,94に当接することで、位置決め部品10を介して方立3によって縦枠8,9を見付け方向に位置決めできるようになっている(位置決め状態)。
【0021】
また、位置決め部品10の一対の当接部15は、図7、8に示すように、切り取り可能になっており、このように当接部15を切り取ることで、縦枠8,9を見付け方向に位置調節できるようになっている(位置調節状態)。具体的には、縦枠8,9の室外側折返し片84,94と位置決め部品10の水平面部12の側端縁との間には、図7に示すように寸法L1だけの隙間が形成されており、一方、室内側折返し片85,95と方立3の固定片314との間には、寸法L1よりも大きな寸法L2だけの隙間が形成されている。従って、窓部2は、縦枠8,9が方立3に接近する方向に向かって、最大寸法L1分だけの位置調節ができるようになっている。また、方立3から離れる方向に関しては、縦枠8の室外側見付け片82,92が位置決め部品10の室内側側面17から外れず、かつ室内側折返し片85,95がビス30に当接する位置まで位置調節可能に構成されている。なお、一対の当接部15のうちいずれか一方の当接部15を切り取ってもよく、これにより縦枠8,9の一方を見付け方向に位置調節可能に、他方の室外側折返し片84,94を当接部15に当接させて位置決めすることができる(半位置決め状態)。」
イ 【図4】
「
[図:0001392015000002.jpg]
」
ウ 【図6】
「
[図:0001392015000003.jpg]
」
エ 図面から看取できる事項
上記アの記載を踏まえると、上記ウの図6からは、位置決め部品10の室内側側面17と当接部15との境界部分に薄肉部が設けられている点を看取することができる。
オ 甲2発明
以上を総合すると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「左右に隣り合って設けられる一対の窓部と、これらの窓部を仕切って上下に延びる方立とを備えて構成されている連窓であって、
各窓部は枠体としての窓枠を備え、窓枠は上枠、下枠および左右の縦枠を四周枠組みして形成されており、
方立は、見付け方向(左右方向)に延びる見付け片を有し、
見付け片には、その室内側面から室内側に突出した2つの突出片と、左右の先端部にて室内側に開口した2つの止水材保持部とが形成され、止水材保持部には、縦枠に当接して止水可能な止水材が取り付けられており、
方立には、縦枠を見付け方向および見込み方向に位置決め可能な位置決め部品が取り付けられており、
位置決め部品における本体には、2つの突出片と各々係合可能な係合溝が形成され、これにより位置決め部品が方立に対して見付け方向に位置決めされ、
位置決め部品は、本体から室内側に延びる一対の当接部を備えており、
一対の当接部が縦枠の室外側折返し片に当接することで、方立によって縦枠を見付け方向に位置決めできるようになっており、
位置決め部品の室内側側面と当接部との境界部分に薄肉部が設けられており、
当接部は切り取り可能になっている連窓。」
2 判断
(1) 本件特許発明1
ア 対比
本件特許の請求項1に係る発明と甲7発明とを対比する。
(ア) 甲7発明の「室内側方立部材」は、本件特許発明1の「方立」に相当する。
(イ) 甲7発明の「窓部」は、「矩形状に枠組みされた枠体と、枠体内にはめ込まれた窓ガラスと、を備えて」いるものであるから窓サッシであるといえる。そして、甲7発明の当該「窓部」は、「2つの窓部は間隔を空けて隣接し」、「窓部の縦枠と方立の室内側方立部材とが固定され」ているから、本件特許発明1の「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシ」に相当する。
(ウ) 甲7発明の「室外側方立部材」は、「室内側方立部材と」「連結されており」、「室外側に位置し見付け方向に延びる第1見付け片を備えており、第1見付け片は2つの窓部にわたって設けられ、窓部の間を覆う」ものであるから、甲7発明の当該「室外側方立部材」と本件特許発明1の「前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材」は、「方立に固定されて2つの窓サッシ間に渡って設けられ、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である部材」の点で共通する。
(エ) 甲7発明の「第1見付け片」は「2つの窓部にわたって設けられ、窓部の間を覆う」から、本件特許発明1の「前記2つの窓サッシ間を覆う本体部」に相当する。
そして、甲7発明においては「室外側方立部材」が「第1見付け片を備え」ることを踏まえると、甲7発明の「第1見付け片は2つの窓部にわたって設けられ、窓部の間を覆う」と、本件特許発明1の「前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており」は、「前記部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有して」いる点で共通する。
(オ) 甲7発明の「第1見付け片」は、「見付け方向の両端部近傍が縦枠の室外側見付け片と見込み方向に重なる位置に設置され、室外側見付け片との間に上下方向全長にわたってパッキンなどの止水材が介在されている」から、本件特許発明1の「前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いることとは、「前記縦枠を前記当接部に当接したときに、本体部と縦枠の屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が設けられて」いる点で共通する。
(カ) 甲7発明の「窓部連結構造」は、「2つの窓部」を「方立を介して配列」するものであるから、本件特許発明1の「連窓」に相当する。
(キ) 以上を総合すると、本件特許発明1と甲7発明は、
「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記方立に固定されて前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である部材と、
を有し、
前記カバー材である部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有し、
前記縦枠を前記当接部に当接したときに、本体部と縦枠の屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が設けられている連窓。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1A>
カバー材である部材が、本件特許発明1においては「各々の窓サッシが、2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え」る「当接部材」であり、「当接部は、本体部から見込み方向に突出している」のに対して、甲7発明においては「当接部」を備えず「当接部材」とはいえない点。
<相違点2A>
本体部が、本件特許発明1においては「前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有し、前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いるのに対し、甲7発明の「第1見付け片」は「見付け方向の両端部近傍が縦枠の室外側見付け片と見込み方向に重なる位置に設置され、室外側見付け片との間に上下方向全長にわたってパッキンなどの止水材が介在されている」点。
イ 判断
上記相違点1A及び2Aについて検討する。
(ア) 相違点1Aについて
a 甲2発明は、「位置決め部品」が「本体から室内側に延びる一対の当接部を備えており、一対の当接部が縦枠に当接することで、方立によって縦枠を見付け方向に位置決めできるようになって」いるものであり、甲2発明の「縦枠の室外側折返し片に当接することで、方立によって縦枠を見付け方向に位置決めできるようになって」いる「一対の当接部」は、本件特許発明1の「2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部」に相当する。また、甲2発明の「一対の当接部」が「本体から室内側に延びる」ことは、本件特許発明1の「当接部は、本体部から見込み方向に突出している」に相当する。
b 建具を精度よく建て込むことは建具一般に共通する周知の課題であって、当該課題は甲7発明にも内在する。そして、甲2発明は「縦枠を見付け方向に位置決めできる」から、窓部を精度よく建て込むことができることは自明である。
そうすると、甲7発明において当該課題を解決するために、連窓という共通の技術分野に属する甲2発明の「一対の当接部」に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
c そして、甲2発明においては、「一対の当接部」は「位置決め部品」の「本体から室内側に延び」、「縦枠の室外側折返し片に当接する」のだから、甲7発明に甲2発明を適用するにあたっては、「一対の当接部」を室内側に延びて縦枠の室外側に当接することができる「室外側方立部材」の「第1見付け片」に設けるのが自然であって、「一対の当接部」をそのように設ければ、甲2発明の「室外側方立部材」は「各々の窓サッシが、2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え」るものとなって、「当接部材」と呼び得るものとなる。
d そうすると、甲7発明に甲2発明の「一対の当接部」に係る構成を適用して本件特許発明1の相違点1Aに係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
(イ) 相違点2Aについて
窓枠の当接部材の構造が、相違点2Aに係る本件特許発明1における本体部のように「2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部」、「前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部」、「前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部」とを有するものであって、「前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接」するものは、甲2発明には記載されておらず、示唆もされていない。そして、申立人により提出されたいずれの証拠にも記載されておらず、本件特許出願前において、周知であったと認めることはできない。
よって、甲7発明において、相違点2Aに係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
したがって、本件特許発明1は甲7発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲7発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件特許発明3
ア 対比
本件特許発明3と甲7発明とを対比すると、両者は上記相違点1Aに加えて次の相違点3Aで相違し、その余の点で一致する。
<相違点3A>
本件特許発明3においては「前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている」のに対して、甲7発明は「当接部」を備えない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
相違点1Aについては、上記(1)イで検討したとおりである。
相違点3Aについて、甲2発明は「本体から室内側に延びる一対の当接部を備えて」いるから、「当接部」は見付け方向に複数設けられているものであるし、「一対の当接部」の間に間隔があることは自明であって、甲2発明のこの点は本件特許発明3の「当接部は、並設方向に間隔を空けて複数設けられている」に相当する。
しかしながら、甲2発明の「一対の当接部」は、「縦枠8,9の室外側折返し片84,94に当接する」ものであるが、縦枠8,9の各々の側に対して、複数ずつ設けられているものではなく、甲2に、複数ずつ設けることを示唆する記載もない。そして、申立人により提出されたいずれの証拠にも記載されておらず、本件特許出願前において、周知であったと認めることはできない。
そして、相違点3Aに係る本件特許発明3の構成により「連窓1全体の幅を調節する場合には、複数設けられている薄肉片を切除する数を変更することにより、連窓1全体の幅を段階的に調節することが可能である。このため、より汎用性と施工性とに優れた連窓1を提供することが可能である。」(本件特許明細書の段落【0033】)旨の格別の効果を奏するものである。
よって、甲7発明において、相違点3Aに係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
したがって、本件特許発明3は甲7発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立書(以下「申立書」という。)の特許異議申立理由について
(1) 申立理由1(新規性欠如)
訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1、2又は8に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、その特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号の規定により取り消されるべきである。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
訂正前の請求項1~3に係る発明は、甲1、2又は8に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができた発明であり、特許法29条2項に違反して特許されたものであるから、同法113条2号の規定により取り消されるべきである。
(3) 申立理由3(明確性欠如、サポート要件欠如)
訂正前の請求項1~3に係る発明は次の点が明確でなく、発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号の規定により取り消されるべきものである。
ア 訂正前の請求項1に記載された「各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え」は、窓サッシが当接部を備えると規定しているが、当接部材との関係が不明であり、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
イ 訂正前の請求項1に記載された「当接部材」は「カバー材」であり、「本体部」も「2つの窓サッシ間を覆う」部材であり、両者の関係が不明確である。
ウ 訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2、3についても同様である。
甲1:実願昭61-119446号(実開昭63-27683号)のマイクロフィルム
甲2:特開2011-99205号公報
甲3:特開平9-100679号公報
甲4:実願平5-44681号(実開平7-10212号)のCD-ROM
甲5:実公昭62-393号公報
甲6:実願昭58-108010号(実開昭60-15588号)のマイクロフィルム
甲7:特開2015-1120号公報
甲8:実願昭53-112845号(実開昭55-29677号)のマイクロフィルム
2 新規性・進歩性について
(1) 甲号証について
ア 甲1
甲1には次の記載がある。
(ア) 実用新案登録請求の範囲
「2.実用新案登録請求の範囲
横壁4と突出壁5でT字状となつた脚部2の突出壁5に押え部3をビス18で連結して側方に開口した縦枠取付用の凹部19をそれぞれ形成すると共に、前記横壁4の両端側と押え部3の両端側に一対の突片7,7と12,12を相対向して一体形成し、各突片7,12の外面にクツシヨン材8,14をそれぞれ取着したことを特徴とする方立。」
(イ) 産業上の利用分野
「本考案は、サツシ連窓部などに用いられる方立に関するものである。」
(ウ) 3頁1~11行
「 方立1は脚部2と押え部3とより成り、脚部2は横壁4と突出壁5とで略T字状となつていると共に、横壁4の両端部には凹条溝6がそれぞれ形成され、かつ突出壁5と平行なる突片7がそれぞれ形成してあり、各突片7の外面にはスポンジ等のクツシヨン材8がそれぞれ貼着され、凹条溝6にはシール材9がそれぞれ装着してあると共に、前記突出壁5の突出端部5′の両側には突条10がそれぞれ長手方向に亘つて一体形成してありかつ中央部にはビス孔11が形成してある。」
(エ) 4頁下から6行~5頁3行
「 このようであるから、縦枠21を縦枠取付用の凹部19内に側方より挿入するとクツシヨン材8,14に当接して位置決めされるので、ビス18を締付けて押え部3を強固に締付けることで縦枠20を所定の位置に正確に取付けできる。
また、クツシヨン材8,14がシール効果を有するから、縦枠21と方立1との連結部のシール性が向上する。」
(オ) 第1図
「
[図:0001392015000004.jpg]
」
(カ) 図面から看取できる事項
上記(エ)の記載を踏まえると、上記(オ)の第1図からは、次の点を看取することができる。
・縦枠21の横壁4側にクツシヨン材を介して突片7に当接する突片部が設けられている点。
・横壁4の両端部に形成された凹条溝6と縦枠21の対向する部分にシール材9を設ける空間がある点。
・横壁4は、2つの縦枠21を覆う本体部を有している点。
・突片7は、横壁4の本体部から見込み方向に突出している点。
(キ) 甲1発明
以上を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「 脚部と押え部とより成る方立であって、
脚部は横壁と突出壁とで略T字状となっていると共に、横壁の両端部には凹条溝がそれぞれ形成され、かつ突出壁と平行なる突片がそれぞれ形成してあり、
横壁の両端側に一対の突片を相対向して一体形成し、
横壁は、2つの縦枠を覆う本体部を有し、
各突片の外面にはスポンジ等のクツシヨン材がそれぞれ貼着され、凹条溝にはシール材がそれぞれ装着してあると共に、
縦枠を縦枠取付用の凹部内に側方より挿入するとクツシヨン材に当接して位置決めされ、
縦枠の横壁側にはクツシヨン材を介して突片に当接する突片部が設けられ、
横壁の両端部に形成された凹条溝と縦枠の対向する部分にシール材を設ける空間があり、
突片は、横壁の本体部から見込み方向に突出している、サツシ連窓に用いられる方立」
イ 甲3
甲3には次の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲請求項2
「【請求項2】 左右のサッシのそれぞれは、左右の縦枠の外化粧フィンの先端部にさらにサッシを建物の開口部へ取り付けるための取付けフィンを一体に有し、外化粧フィンと取付けフィンとの間で係合フィンよりも外周側に係合フィンの基部側へ傾斜する切断面を生じる折取り可能部が設けられていることを特徴とした請求項1に記載の連窓構造。」
(イ) 【0003】~【0006】
「【0003】このように方立2を用いた連窓構造は種々のものが提案されているが(実開平3-35187号公報、実公昭62-33897号公報、特公平1-22434号公報)、図2のように方立2が主体9と固定用部材10の2部材に分割されると共に固定用部材10の室内側を隠蔽するための方立目板11を備えた第1のタイプと、図3のように、方立2が1部材とされ、また、屋内側の方立目板11を備えない第2タイプがある。
(中略)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、2個のサッシまたは複数個のサッシを一体に連結して構成される連窓の、2個のサッシを結合する部分の正面見付け寸法を小さくして連窓全体のイメージをスリムに、洗練されたものにすると共に、連結部の強度を向上させ、かつ、部品点数および組立手間を減じて連窓のコストを低減することを課題とする。また、連窓として組付けることができる2個または複数個のサッシの組み合わせを独立して使用できる多種多数のサッシから選択可能とし、居住者の多様なニーズに応えられるようにする。」
(ウ) 【0014】~【0021】
「【0014】さらに、外化粧フィン19の先端部にサッシ1を建物の開口部へ取り付けるための取付けフィン23を一体に有し、外化粧フィン19と取付けフィン23との間で係合フィン20よりも外周側に折取り可能部24が設けられている。取付けフィン23はサッシ1を連窓3に構成下場合でも必要で、連窓3の左右両側に位置する縦枠(4a,5b)は建物の開口部にサッシ(1a,1b)を固定するために用いられる。
【0015】折取り可能部24(図7)は、係合フィン20の外周側基部に位置して屋内側から屋外側へ形成された楔状の楔形溝25と屋外側から屋内側へ形成された断面コ字形のコ字形溝26とで構成され、コ字形溝26は楔形溝25のわずかに外周側に配置され、外面側の肩部の稜27には丸みが付けられている。したがって、折取り可能部24から取付けフィン23を折り取るとその切断面は、屋外側から係合フィン23の基部側へ傾斜する切断面28となる。
(中略)
【0018】左右のサッシ1(a,b)は次のように組立てられる方立2を準備し、係合部15の溝底にパッキング38(図4)を装填する。組付けるサッシ1(a,b)の方立側となる縦枠(5a,4b)の外周側における取付けフィン23を折り取る。
(中略)
【0021】また、左右の縦枠(5a,4b)において取付けフィン23を折り取った後の切断面28は、縦枠(5a,4b)の外周側端が方立2の屋外側突当て部30に当接されたとき屋内側に面することになるので、塗膜や陽極酸化被膜のない金属地肌の切断面が屋外側の正面から目隠しされ、外観を阻害することがない。」
(エ) 【図4】
「
[図:0001392015000005.jpg]
」
(オ) 【図6】
「
[図:0001392015000006.jpg]
」
ウ 甲4
甲4には次の記載がある。
(ア) 【0001】
「【0001】【産業上の利用分野】
この考案は、フロアリングボードやカーペット仕上げの床に使用される床見切に関する。」
(イ) 【0011】
「【0011】
図1(C)は両側の床がフロアリングボード10による仕上げの箇所に使用した例である。この場合は、見切材3は側板6を折り取って使用する。このように、床仕上材の種類の違いに対処でき、したがって床見切の品種が減らせる。」
(ウ) 【図1】
「
[図:0001392015000007.jpg]
」
(エ) 【図2】
「
[図:0001392015000008.jpg]
」
エ 甲5
甲5には次の記載がある。
(ア) 1欄16~21行
「 この考案は、開口部の中間部に方立を介在してその左右に窓を設けた連窓に使用する窓枠に関するもので、その目的は、双方の窓枠を方立に正常に組立てられ、且つ建造物の外壁と窓枠間に確実なコーキングを施すことの出来る連窓用窓枠を提供することにある。」
(イ) 3欄27~32行
「 更に第2図と第3図は方立2に設ける凹溝18の設け方の類例であつて、前壁16より直接突壁31を室内側に向けて突設し、且つ前壁16のシール材取付部より同じく突壁32を設け、両突壁31と32間に凹溝18を形成したものである。尚第3図に示す33は補強板である。」
(ウ) 第2図
「
[図:0001392015000009.jpg]
」
オ 甲6
甲6には次の記載がある。
(ア) 1頁下から7行
「 本考案は連窓用方立材に関する。」
(イ) 3頁3~7行
「 5は、窓枠1の長手方向中央部位にて上下枠2,3間に橋絡状に取付けられた連窓用方立材であって、左右に窓部6,7が区画形成される。図例では窓部6,7には、夫々引違窓8,9が装着され矢印のように開閉自在に取付けられる。」
(ウ) 第1図
「
[図:0001392015000010.jpg]
」
カ 甲8
甲8には次の記載がある。
(ア) 1頁下から9行~3頁12行
「 この考案はビル用サツシ等の複数の窓枠を連ねて配設する場合に実施される連窓構造に関し、その目的とするところは、連窓用方立の上下端に夫々連窓端部材を取付けて、方立および縦枠間に形成される空隙を被うようにすることにより、窓枠を取付けるコンクリート壁のコンクリートが空隙内に侵入することを防止できるとともに、窓枠に沿つて設けられるコーキングの空隙内への侵入を防止できるようにした連窓構造を提供することにある。
以下この考案の一実施例を第1図~第3図を参照して説明する。
図中1,1は隣接してビルデイングのコンクリート壁に配設される金属製窓枠で、これらは周知のようにアルミニウムの押出型材製の上枠(図示しない)、下枠2および左右の縦枠3とから形成してある。そして、窓枠1,1の縦枠3,3は次に述べる連窓構造によりつなげてある。
すなわち、4は室外に臨む前壁5と、この裏面略中央から突設した中央壁6とから横断面形状が略T状となるように成形したアルミニウムの押出型材製の連窓用方立である。前壁5の裏面および中央壁6の室内側端部には相対向する突壁7および8を中央壁の両側において夫々一体に突設してあり、これら突壁7,8と中央壁6とにより嵌合部9を形成している。そして前壁5の裏面において各突壁7,7よりも外側に形成した溝状には、夫々ゴムパツキン等のシール材10を上下方向全長にわたつて取付けてある。さら中央壁6の室内側端部には、突壁8よりも室内側に溝条11aを上下方向全長にわたつて設けた連結部11を形成してある。また、この方立4の連結部11にはその溝条11にねじ込まれるねじ12を介して室内側に配される略コ字形の取付板13が複数取付けてある。取付板13は前壁5に対向するものであり、そのねじ12による締付けで前壁5と取付板13との間に前記縦枠3,3の方立4側端部を夫々挟着して、窓枠1,1を連窓状態に配設するようになっている。」
(イ) 6頁5~15行
「 なお、この考案は前記一実施例に限定されず、第4図に示すように連窓用方立4の中央壁6が中空構造である場合には、その内空部を嵌合部9として使用すればよく、これに対応する連窓端部材15は断面T形のものを使用するか、又は前記一実施例のL形のものを背合わせにしてT形となるようにして使用すればよい。また方立は要すれば嵌合部を有した構造であればよく、同様に端部材も嵌合部に差込まれる差込部の一端にカバ一部を連設してあればいかなる構造でもよいことは言うまでもない。」
(ウ) 第1図
「
[図:0001392015000011.jpg]
」
(エ) 図面から看取できる事項
上記(ア)の記載を踏まえると、上記(ウ)の第1図からは、次の点を看取することができる。
・突壁7,7は、縦枠が並ぶ並設方向で縦枠3,3と当接している点。
・前壁4は、2つの縦枠3,3を覆う本体部を有している点。
・突壁7,7は、前壁4の本体部から見込み方向に突出している点。
(オ) 甲8発明
以上を総合すると、甲8には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。
「 窓枠の縦枠を連窓構造によりつなげてある連窓であって、
連窓用方立は、室外に臨む前壁と、この裏面略中央から突設した中央壁とから横断面形状が略T状となるように成形したアルミニウムの押出型材製の連窓用方立であり、
前壁の裏面および中央壁の室内側端部には相対向する突壁を中央壁の両側において夫々一体に突設してあり、これら突壁と中央壁とにより嵌合部を形成し、
突壁は、縦枠が並ぶ並設方向で縦枠と当接し、
前壁は、2つの縦枠を覆う本体部を有し、
前壁の裏面において各突壁よりも外側に形成した溝状には、夫々ゴムパツキン等のシール材を上下方向全長にわたつて取付けてあり、
突壁は、前壁の本体部から見込み方向に突出している連窓」
(2) 甲1発明に基づく新規性・進歩性についての判断
ア 本件特許発明1
(ア) 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「縦枠」はサツシ連窓に用いられる方立に「位置決めされる」から、本件特許発明1の「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシ」に相当する。
b 甲1発明の「突片」は、「横壁の両端側に一対の突片を相対向して一体形成」され、「縦枠の横壁側」の「突片部」と「当接する」から、本願特許発明1の「2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部」であって、「前記本体部から見込み方向に突出している」「当接部」に相当する。
c 甲1発明の「横壁」は、「横壁の両端側に一対の突片を相対向して一体形成し」、「2つの縦枠21を覆う本体部を有」するから、本件特許発明1の「当接部」との間で、「前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材」であって、「当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有」する点で共通する。
d 甲1発明の「横壁の両端部に形成された凹条溝と縦枠の対向する部分にシール材を設ける空間がある」ことと、本件特許発明1の「前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いることは、「前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いる点で共通する。
e 甲1発明は「サッシ連窓に用いられる方立」であるが、サツシ窓の「縦枠」とともに「サツシ連窓」を形成することは自明であるから、本件特許発明1の「連窓」に相当する構成を備えている。
f 以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、
「 互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、
を有し、
前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、
前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられており、
前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出している連窓。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1B>
本件特許発明1の「当接部材」が「方立に固定されて」いるのに対し、甲1発明の「横壁」は「方立」に設けられた「脚部」を構成するものである点。
<相違点2B>
当接部材が、本件特許発明1においては「本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有し、前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いるのに対し、甲1発明の「横壁」が、「横壁の両端部に形成された凹条溝と縦枠21の対向する部分にシール材を設ける空間がある」点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点2Bについて検討するに、前記第5の2(1)イ(イ)で「相違点2A」について検討したのと同様に、相違点2Bに係る本件特許発明1における本体部のような構造は、甲2~8に記載も示唆もされておらず、本件特許出願前において周知であったとも認めることはできない。
よって、甲1発明において、相違点2Bに係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ) 小括
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、相違点1B及び2Bを有するから、甲1発明は本件特許発明1でなく、相違点1Bについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲1発明は本件特許発明2でなく、本件特許発明2は甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3
(ア) 対比
本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1Bに加えて次の相違点3Bで相違し、その余の点で一致する。
<相違点3B>
本件特許発明3においては「前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている」のに対して、甲1発明の「突片」は「縦枠」に対して1つである点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点3Bについて検討するに、前記第5の2(3)イで「相違点3A」について検討したのと同様に、甲2発明の「一対の当接部」は、「縦枠8,9の室外側折返し片84,94に当接する」ものであるが、縦枠8,9の各々の側に対して、複数ずつ設けられているものではなく、甲2に、複数ずつ設けることを示唆する記載もない。そして、この点について甲3~8にも記載も示唆もされておらず、本件特許出願前において、周知であったと認めることもできない。
よって、甲1発明において、相違点3Bに係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ) 小括
したがって、本件特許発明3と甲1発明は、相違点1B及び3Bを有するから、甲1発明は本件特許発明3でなく、相違点1Bについて検討するまでもなく、本件特許発明3は甲1発明及び甲2~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 甲2発明に基づく新規性・進歩性についての判断
ア 本件特許発明1
(ア) 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「窓部」は、「枠体としての窓枠を備え、窓枠は上枠、下枠および左右の縦枠を四周枠組みして形成され」、「方立」に対して「左右に隣り合って設けられる」から、本件特許発明1の「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシ」に相当する。
b 甲2発明の「位置決め部品」の「当接部」は、「一対の当接部が縦枠の室外側折返し片に当接することで、方立によって縦枠を見付け方向に位置決めでき」、「本体から室内側に延びる」から、本願特許発明1の「2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部」であって、「前記本体部から見込み方向に突出している」「当接部」に相当する。
c 甲2発明の「見付け片」は、「室内側面から室内側に突出した2つの突出片」が「形成され」、「当接部」を有する「位置決め部品」の「2つの突出片と各々係合可能な係合溝」と係合しており、また、「見付け方向(左右方向)に延びる」から、本件特許発明1の「当接部」との間で、「前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材」であって、「当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有」する点で共通する。
d 甲2発明の「見付け片には、その室内側面から室内側に突出した2つの突出片と、左右の先端部にて室内側に開口した2つの止水材保持部とが形成され、止水材保持部には、縦枠に当接して止水可能な止水材が取り付けられて」いることと、本件特許発明1の「前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いることは、「前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いる点で共通する。
e 甲2発明の「連窓」は、本件特許発明1の「連窓」に相当する。
f 以上を総合すると、本件特許発明1と甲2発明は、
「 互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、
を有し、
前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有しており、
前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられており、
前記当接部は、前記本体部から見込み方向に突出している連窓。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1C>
本件特許発明1の「当接部材」が「方立に固定されて」いるのに対し、甲2発明の「見付け片」は「方立」と一体のものである点。
<相違点2C>
当接部材が、本件特許発明1においては「本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有し、前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いるのに対し、甲2発明の「見付け片」がその室内側面から室内側に突出した2つの突出片と、左右の先端部にて室内側に開口した2つの止水材保持部とが形成され、止水材保持部には、縦枠に当接して止水可能な止水材が取り付けられ」ている点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点2Cについて検討するに、前記第5の2(1)イ(イ)で「相違点2A」について検討したのと同様に、相違点2Cに係る本件特許発明1における本体部のような構造は、甲1、3~8に記載も示唆もされておらず、本件特許出願前において周知であったとも認めることはできない。
よって、甲2発明において、相違点2Cに係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ) 小括
したがって、本件特許発明1と甲2発明は、相違点1C及び2Cを有するから、甲2発明は本件特許発明1でなく、相違点1Cについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明及び甲1、3~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲2発明は本件特許発明2でなく、本件特許発明2は甲2発明及び甲1、3~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3
(ア) 対比
本件特許発明3と甲2発明とを対比すると、両者は上記相違点1Cに加えて次の相違点3Cで相違し、その余の点で一致する。
<相違点3C>
本件特許発明3においては「前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている」のに対して、甲2発明の「当接部」は「縦枠」に対して1つである点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点3Cについて検討するに、前記第5の2(3)イで「相違点3A」について検討したのと同様に、甲2発明の「当接部」は、「縦枠の室外側折返し片に当接する」ものであるが、縦枠の各々の側に対して、複数ずつ設けられているものではなく、示唆する記載もない。そして、この点について甲1、3~8にも記載も示唆もされておらず、本件特許出願前において、周知であったと認めることもできない。
よって、甲2発明において、相違点3Cに係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ) 小括
したがって、本件特許発明3と甲2発明は、相違点1C及び3Cを有するから、甲2発明は本件特許発明3でなく、相違点1Cを検討するまでもなく、本件特許発明3は甲2発明及び甲1、3~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 甲8発明に基づく新規性・進歩性についての判断
ア 本件特許発明1
(ア) 対比
本件特許発明1と甲8発明とを対比する。
a 甲8発明の「窓枠」は、窓サッシを構成することが自明であり、「連窓用方立の上下端に夫々連窓端部材を取付けて、方立および縦枠間に形成される空隙を被う連窓」であるから、本件特許発明1の「互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシ」に相当する。
b 甲8発明の「突壁」は、「窓枠」の「縦枠」と「縦枠が並ぶ並設方向で」「当接」し、「前壁の本体部から見込み方向に突出している」するから、本件特許発明1の「2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部」であって、「前記本体部から見込み方向に突出している」「当接部」に相当する。
c 甲8発明の「前壁」は、「前壁の裏面」に「相対向する突壁」を「一体に突設してあり」、「2つの縦枠を覆う本体部を有」するから、本件特許発明1の「当接部」との間で、「前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材」であって、「当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有」する点で共通する。
d 甲8発明の「連窓」は、本件特許発明1の「連窓」に相当する。
e 以上を総合すると、本件特許発明1と甲8発明は、
「 互いに間隔を空けて隣り合い方立を介して連結される2つの窓サッシと、
前記2つの窓サッシ間に渡って設けられ、各々の前記窓サッシが、前記2つの窓サッシが並ぶ並設方向から当接される当接部を各々備え、前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材と、
を有し、
前記当接部材は、前記2つの窓サッシ間を覆う本体部を有している連窓。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1D>
本件特許発明1の「当接部材」が「方立に固定されて」いるのに対し、甲8発明の「前壁」は「方立」と一体のものである点。
<相違点2D>
当接部材が、本件特許発明1においては「本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有し、前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられて」いるのに対し、甲8発明の「前壁」はそのような構成ではなく、「シール材」が「壁の裏面において各突壁よりも外側に形成した溝状には、夫々ゴムパツキン等のシール材を上下方向全長にわたって取付けて」ある点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点2Dについて検討するに、前記第5の2(1)イ(イ)で「相違点2A」について検討したのと同様に、相違点2Dに係る本件特許発明1における本体部のような構造は、甲1~7に記載も示唆もされておらず、本件特許出願前において周知であったとも認めることはできない。
よって、甲8発明において、相違点2Dに係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ) 小括
したがって、本件特許発明1と甲8発明は、相違点1D及び2Dを有するから、甲8発明は本件特許発明1でなく、相違点1Dについて検討するまでもなく、本件特許発明1は甲8発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲8発明は本件特許発明2でなく、本件特許発明2は甲8発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ではない。
ウ 本件特許発明3
(ア) 対比
本件特許発明3と甲8発明とを対比すると、両者は上記相違点1Dに加えて次の相違点3Dで相違し、その余の点で一致する。
<相違点3D>
本件特許発明3においては「前記当接部は、前記2つの窓サッシに対し、前記並設方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている」のに対して、甲8発明の「突壁」は「縦枠」に対して1つである点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点3Dについて検討するに、前記第5の2(3)イで「相違点3A」について検討したのと同様に、甲8発明の「突壁」は、「前壁の裏面および中央壁の室内側端部には相対向する突壁を中央壁の両側において夫々一体に突設して」いるが、「2つの縦枠」の各々の側に対して、複数ずつ設けられているものではなく、甲8に、複数ずつ設けることを示唆する記載もない。そして、この点について甲1~7にも記載も示唆もされておらず、本件特許出願前において、周知であったと認めることもできない。
よって、甲8発明において、相違点3Dに係る本件特許発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ) 小括
したがって、本件特許発明3と甲8発明は、相違点1D及び3Dを有するから、甲8発明は本件特許発明3でなく、相違点1Dについて検討するまでもなく、本件特許発明3は甲8発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 明確性・サポート要件について
(1) 本件訂正により、窓サッシと当接部材との関係について、請求項1に当接部材の本体部について「前記本体部は、前記2つの窓サッシのそれぞれの縦枠の屋外壁部に当接されて前記並設方向に沿う壁部でなる縦枠間壁部と、前記縦枠間壁部の屋外側に間隔を空けて対面するカバー壁部と、前記縦粋間壁部の前記並設方向の両端部と前記カバー壁部とを連結する連結部と、を有しており、
前記カバー壁部は、前記縦枠間壁部より前記並設方向の幅が広く形成されることによって、前記連結部より前記並設方向に突出する側方突出部を有しており、
前記縦枠の前記屋外壁部を前記縦枠間壁部に当接し、前記縦枠を前記当接部に当接したときに、前記側方突出部と前記屋外壁部とが見込み方向間隔を空けて対向することによって、シーリング材によってシーリングするための空間が前記連結部の前記並設方向の外側に上下方向に沿って設けられており」とあり、「当接部材」の「縦枠間壁部」及び「当接部」の各々が「窓サッシ」の「縦枠」の「屋外壁部」及び「縦枠」と当接すると理解できるから、意味が明確である。
そして、上記構成は発明の詳細な説明(段落【0020】、【0030】等)に記載されたものである。
(2) 請求項1の「前記2つの窓サッシの間を覆うカバー材である当接部材」は、「当接部材」が本体部の「カバー材」としての機能を有し、「本体部」が「2つの窓サッシ間を覆う」ものと理解することができ、記載が不明確とまではいえない。
(3) 請求項2、3に記載された事項との関係において、上記(1)及び(2)の点が不明確となる点はなく、発明の詳細な説明に記載された範囲のものである。
4 小括
以上のとおりであるから、申立書のいずれの主張も採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1~3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700969