特許異議申立
2021-701253
建具
- 審判番号
- 2021-701253
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-076789
- 登録番号
- 6894549
- 請求日
- 2021年12月28日
- 審決日
- 2022年06月27日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】YKK AP株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人樹之下知的財産事務所
- 【異議申立人】坂内 知英
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 前川 慎喜
- 分類
- P1651.537-YAA(E06B) / P1651.121-YAA(E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6894549号発明「建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6894549号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
特許第6894549号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6894549号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成29年2月24日に出願された特願2017-33661号の一部を、令和2年4月23日に新たな特許出願としたものであり、令和3年6月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年12月28日に、特許異議申立人 坂内 知英(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし3に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和4年2月25日付け: 取消理由通知書
同年4月26日: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年6月 7日: 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和4年4月26日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6894549号の特許請求の範囲及び明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項1ないし3について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置される屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」と記載されているのを、「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置される屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」と記載されているのを、「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない加熱発泡材が取り付けられ、」と記載されているのを、「前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い加熱発泡材が取り付けられ、」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0006】に「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置される屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」と記載されているのを、「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」に訂正する。
(2)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0008】に「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置される屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」と記載されているのを、「前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、」に訂正する。
(3)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0010】に「前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない加熱発泡材が取り付けられ、」と記載されているのを、「前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い加熱発泡材が取り付けられ、」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「屋内側加熱発泡材」について、「前記断熱部材よりも熱伝導率の高い」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「屋内側加熱発泡材」について、「熱伝導率」に関する限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
願書に添付された明細書の段落【0004】には、「ところで、膨張材の熱伝導率は、断熱材の熱伝導率よりも高い。」と記載され、段落【0052】には、「・・・第1加熱発泡材37および第2加熱発泡材38間に隙間を設けて、互いに接触しないように配置したので、第1加熱発泡材37および第2加熱発泡材38間での熱伝導を防止できる。したがって、断熱部材33、43よりも熱伝導率の高い加熱発泡材37、38を用いた場合でも、・・・、加熱発泡材が熱橋となっている場合に比べて、縦枠30、40の断熱性能を向上できる。」と記載されているから、「加熱発泡材」の「熱伝導率」を「断熱材」の「熱伝導率」よりも「高い」ものとすることは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2及び3について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明における「屋内側加熱発泡材」について、「前記断熱部材よりも熱伝導率の高い」ことを限定するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明における「加熱発泡材」について、「前記断熱部材よりも熱伝導率の高い」ことを限定するものであるから、訂正事項2及び3は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項2及び3は、訂正前の請求項2に係る「屋内側加熱発泡材」及び訂正前の請求項3に係る「加熱発泡材」について、それぞれ「熱伝導率」に関する限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、訂正事項2及び3は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
上記(1)ウにおいて、訂正事項1による訂正について示したと同様の理由から、訂正事項2及び3による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項4ないし6について
ア 訂正の目的について
訂正事項4ないし6は、明細書の段落【0006】、【0008】及び【0010】の記載を、訂正事項1ないし3により訂正された請求項1ないし3の記載と、それぞれ整合させるものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4ないし6は、上記(1)イ及び(2)イにおいて、訂正事項1ないし3について指摘したと同様に、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項4ないし6による訂正は、上記(1)ウ及び(2)ウにおいて、訂正事項1ないし3による訂正について示したと同様の理由から、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正の単位について
訂正前の請求項1ないし3は、いずれも独立請求項であるところ、訂正事項1及び4による訂正は、訂正前の請求項1に係る発明についてするものであり、訂正事項2及び5による訂正は、訂正前の請求項2に係る発明についてするものであり、訂正事項3及び6による訂正は、訂正前の請求項3に係る発明についてするものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第3項の規定に従い、二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合において、特許異議の申立てが請求項ごとにされた場合にあって、請求項ごとに訂正の請求をするものである。
(5)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし3により、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1ないし3に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は全て認めることができるから、本件訂正について、上記結論のとおり訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし3に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、令和4年4月26日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも縦枠を備える建具枠と、
前記建具枠に対して開閉可能に取り付けられた戸体とを備え、
前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され、
前記屋内部材には、前記戸体の屋内面に当接可能なタイト材が設けられ、
前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、
前記屋内側加熱発泡材は、前記屋外部材に接触しない位置であり、前記戸体の見込み面および前記タイト材の見込み面に対向する位置に設けられ、
前記戸体の屋内面の見込み方向の位置は、前記断熱部材の前記見込み面における屋外側端縁および屋内側端縁の間であり、
前記屋内側加熱発泡材の屋外側端縁の見込み方向の位置は、前記断熱部材の前記屋外側端縁および前記戸体の屋内面の間である
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
少なくとも縦枠を備える建具枠と、
前記建具枠に対して開閉可能に取り付けられた戸体とを備え、
前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され、
前記屋内部材には、前記戸体の屋内面に当接可能なタイト材が設けられ、
前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、
前記屋内側加熱発泡材は、前記屋外部材に接触しない位置であり、前記戸体の見込み面および前記タイト材の見込み面に対向する位置に設けられ、
前記戸体の屋内面の見込み方向の位置は、前記断熱部材よりも屋内側であり、
前記屋内側加熱発泡材の屋外側端縁の見込み方向の位置は、前記断熱部材の前記見込み面における屋外側端縁および屋内側端縁の間である
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
少なくとも縦枠を備える建具枠と、
前記建具枠に対して開閉可能に取り付けられた戸体とを備え、
前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され、
前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い加熱発泡材が取り付けられ、
前記断熱部材の前記見込み面は、前記加熱発泡材で覆われる部分と、前記加熱発泡材で覆われずに前記見込み面に露出する部分とがあり、前記加熱発泡材で覆われる部分の見込み方向の長さは、前記露出する部分の見込み方向の長さよりも大きい
ことを特徴とする建具。」
第4 証拠一覧、取消理由の概要、及び特許異議申立理由の概要
1 証拠一覧
申立書に添付して提出された証拠は、次のとおりである。
甲第1号証: 特開2015-178714号公報
(平成27年10月8日公開)
甲第2号証: 特開2017-20205号公報
(平成29年1月26日公開)
甲第3号証: 「非金属材料データブック」、第35頁、
改訂第2版第1刷、財団法人 日本規格協会
(1985年9月17日発行)
甲第4号証: 特開平11-36722号公報
(平成11年2月9日公開)
以下、甲第1号証などを、「甲1」などという。
2 取消理由の概要
令和4年2月25日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(請求項1ないし3に対するサポート要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
したがって、本件訂正前の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)特許異議申立理由1
(請求項3に対する進歩性欠如)
本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立理由2
(請求項1ないし3に対するサポート要件違反)
本件訂正前の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
したがって、本件訂正前の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 本件訂正後の明細書の記載、及び、主たる甲号証の記載
1 本件訂正後の明細書の記載
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められたところ、本件訂正後の明細書には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
「【背景技術】
【0002】
外枠と内枠との間に断熱材を配置して構成した枠体に、ドアパネルを収容した断熱ドアにおいて、耐火性の膨張材を枠体の側面に取り付けた断熱ドアが知られている・・・。
この断熱ドアでは、耐火性の膨張材を、外枠、断熱材、内枠に跨がって配置し、断熱材を膨張材で覆っていた。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、膨張材の熱伝導率は、断熱材の熱伝導率よりも高い。このため、外枠および内枠に跨がって配置される膨張材が熱橋となり、枠体の断熱性能が低下するという課題があった。特に、ドア等の建具においては、上枠、下枠に比べて縦枠の長さ寸法が大きいため、縦枠の断熱性能が低下すると、建具の断熱性能も低下しやすいという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、耐火性能を維持でき、断熱性能を向上できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、・・・前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され、・・・前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、前記屋内部材の前記見込み面および前記断熱部材の前記見込み面に跨がって配置され、かつ、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い屋内側加熱発泡材が取り付けられ、前記屋内側加熱発泡材は、前記屋外部材に接触しない位置であり、・・・。
【0007】
本発明によれば、屋内部材および断熱部材に跨がって配置される屋内側加熱発泡材を、屋外部材に接触しないように配置したので、屋内側加熱発泡材が屋外部材および屋内部材間での熱橋となることを防止できる。このため、加熱発泡材が熱橋となっている場合に比べて、縦枠の断熱性能を向上でき、これにより建具の断熱性能も向上できる。
・・・
【0010】
本発明の建具は、・・・前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され、前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い加熱発泡材が取り付けられ、・・・。
【0011】
本発明によれば、屋外部材または屋内部材の一方と断熱部材とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない加熱発泡材を配置したので、加熱発泡材が屋外部材および屋内部材間での熱橋となることを防止できる。このため、加熱発泡材が熱橋となっている場合に比べて、縦枠の断熱性能を向上でき、これにより建具の断熱性能も向上できる。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明の建具によれば、加熱発泡材が屋外部材および屋内部材間で熱橋とならないため、耐火性能を維持でき、断熱性能を向上できる。
・・・
【0014】
[第1実施形態]
・・・
【0022】
[縦枠の構成]
吊元側の縦枠30および戸先側の縦枠40は、図3に示すように、アルミ押出形材からなる屋外部材31、41と、屋内部材32、42とを、ウレタン樹脂等の断熱部材33、43で連結したアルミ断熱形材で構成されている。さらに、上枠10と同様に、屋外部材31、41と、屋内部材32,42とは、連結用ブラケット17を介して連結されている。
・・・
【0025】
縦枠30、40の側面部321、421には、図4にも示すように、第1加熱発泡材37と、第2加熱発泡材38とが取り付けられている。
第1加熱発泡材37は、屋外部材31、41と断熱部材33、43とに跨がって貼り付けられ、第2加熱発泡材38は、屋内部材32、42と断熱部材33、43とに跨がって貼り付けられている。
・・・
【0052】
[第1実施形態による効果]
(1)縦枠30、40において、第1加熱発泡材37を屋外部材31、41および断熱部材33、43に跨がって配置し、第2加熱発泡材38を屋内部材32,42および断熱部材33、43に跨がって配置し、第1加熱発泡材37および第2加熱発泡材38間に隙間を設けて、互いに接触しないように配置したので、第1加熱発泡材37および第2加熱発泡材38間での熱伝導を防止できる。したがって、断熱部材33、43よりも熱伝導率の高い加熱発泡材37、38を用いた場合でも、第1加熱発泡材37および第2加熱発泡材38が縦枠30、40の見込み方向に離れて配置されており、屋外部材31、41および屋内部材32、42間での熱橋となっていないため、加熱発泡材が熱橋となっている場合に比べて、縦枠30、40の断熱性能を向上できる。」
2 主たる甲号証の記載
(1)甲1の記載、図示、及び図より看取される事項
進歩性に係る特許異議申立理由1の主たる証拠である、甲1には、次の記載がある。
ア 発明の詳細な説明の記載
「【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明のドアの一実施の形態を室内側から見た図、図2、図3はそれぞれ図1のドアの縦断面図および横断面図である。図1ないし図3において、1はドア枠、2はドア枠1内に取付けられるドア本体である。ドア枠1は、アルミニウム合金等の金属製押出形材でなる吊元側縦枠3と戸先側縦枠4と上側の横枠(上枠)5と下側の横枠(下枠)6とをタッピングねじ(図示せず)により組み合わせて矩形に構成する。本実施の形態においては、縦枠3,4および上枠5は室外側部材3a,4a,5aと室内側部材3b,4b,5bとの間をゴム等の断熱性のブリッジ材3c,4c,5cとでそれぞれ結合し、下枠6も室内側の表面を合成樹脂材表面材6aで覆うことにより、断熱性を高めている。
・・・・
【0021】
・・・・。これにより、ドア本体2をドア枠1に開閉可能に取付ける。
・・・・
【0025】
・・・・。31は戸先側縦枠4の見込み面4dにリベット等の固定具32により固着した加熱発泡材であり、これらの加熱発泡材30,31は、加熱により発泡して戸先側縦枠4とドア本体2との間の隙間を閉塞するものである。」
イ 図示
図5には、次の図示がある。
「
[図:0001388405000001.jpg]
」
ウ 図より看取される事項
戸先側縦枠4の見込み面4dに固着される加熱発泡材31の配置に着目すると、上記図5より、加熱発泡材31は、室外側部材4aの見込み面、断熱性のブリッジ材4cの見込み面、及び室外側部材4bの見込み面に跨がって、ドア本体2に面する見込み面4dのほぼ全体を覆うように設けられることが、看取される。
(2)甲1に記載された発明
上記(1)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「ドア枠1と、ドア枠1内に取り付けられるドア本体2とを有する、ドアであり、
ドア本体2は、ドア枠1に開閉可能に取付けられ、
ドア枠1の金属製の戸先側縦枠4は、室外側部材4aと室内側部材4bとの間をゴム等の断熱性のブリッジ材4cで結合し、断熱性を高めており、
戸先側縦枠4の見込み面4dには、加熱発泡材31が固着され、
加熱発泡材31は、室外側部材4aの見込み面、断熱性のブリッジ材4cの見込み面、及び室外側部材4bの見込み面に跨がって、ドア本体2に面する見込み面4dのほぼ全体を覆うように設けられる、
ドア。」
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由通知に記載した取消理由の具体的内容
令和4年2月25日付け取消理由通知に記載した取消理由は、上記第4の2に示したとおり、本件訂正前の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない、というものである。
そして、上記取消理由通知において、本件訂正前の請求項1ないし3に係る発明について、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件を満たさないと判断した具体的な理由は、次のとおりである。
なお、本件訂正前後の請求項1及び2に係る発明における「屋内側加熱発泡材」と、本件訂正前後の請求項3に係る発明における「加熱発泡材」とを、以下ではまとめて「(屋内側)加熱発泡材」と記すことがある。
ア 本件訂正前の明細書においては、金属製の屋内部材と屋外部材とを連結する「断熱部材」よりも「熱伝導率の高い」「(屋内側)加熱発泡材」を用いる場合を前提として、「(屋内側)加熱発泡材」の配置によっては、「(屋内側)加熱発泡材」が「断熱部材」を跨いだ熱橋となり得るという課題が記載されている。そして、当該課題を、発明が解決しようとする課題として、「(屋内側)加熱発泡材」を特定の配置とすることが、課題を解決するための手段として記載されている。
イ 他方で、本件訂正前の明細書においては、「(屋内側)加熱発泡材」として、「熱伝導率」が「断熱部材」と同等もしくは低いものを用いる場合についての記載はない。
ウ これに対し、本件訂正前の請求項1ないし3においては、「(屋内側)加熱発泡材」と「断熱部材」との熱伝導率の関係を特定することなく、「(屋内側)加熱発泡材」の配置のみを特定しているから、「断熱部材」よりも「熱伝導率の高い(屋内側)加熱発泡材」を用いる場合を前提とした本件訂正前の明細書の実質的な開示を離れて、発明を拡張している。
エ そして、本件訂正前の請求項1ないし3に含まれる、「断熱部材」よりも熱伝導率が高いものではない「(屋内側)加熱発泡材」を用いる場合については、当業者が技術常識を参酌しても、明細書に記載される発明が解決しようとする課題における前提を離れているから、当該解決しようとする課題を解決することができると、合理的に理解することができるものではない。
(2)本件訂正発明1ないし3についての判断
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められたから、以下では、本件訂正発明1ないし3について、上記(1)の理由で取り消されるべきか否かを判断する。
本件訂正後の明細書の記載は、上記第5の1に摘記したとおりであり、本件訂正前の明細書について上記(1)アに示したと同様に、金属製の屋内部材と屋外部材とを連結する「断熱部材」よりも「熱伝導率の高い」「(屋内側)加熱発泡材」を用いる場合を前提として、「(屋内側)加熱発泡材」の配置によっては「(屋内側)加熱発泡材」が「断熱部材」を跨ぐ熱橋となり得るという、発明が解決しようとする課題、及び、当該課題を解決するために「(屋内側)加熱発泡材」を特定の配置とするという課題解決手段が記載されているものと、理解される。
そして、本件訂正発明1ないし3においては、「(屋内側)加熱発泡材」について、「断熱部材よりも熱伝導率の高い」ことが特定されるとともに、明細書の記載に対応する「(屋内側)加熱発泡材」の配置が特定されているから、当業者であれば、本件訂正発明1ないし3に係る構成により、本件訂正後の明細書に記載される発明が解決しようとする課題が解決されると、合理的に理解することができる。
したがって、本件訂正発明1ないし3は、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件を満たしている。
よって、本件訂正発明1ないし3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によって、取り消されるべきものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立理由のうち、上記第4の3(2)に示した特許異議申立理由2は、上記第4の2に示した取消理由と同旨の理由である。
以下では、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由として、上記第4の3(1)に示した特許異議申立理由1について、判断する。
(2)本件訂正発明3と甲1発明との対比
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められたので、本件訂正発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「ドア枠1の金属製の戸先側縦枠4」は、本件訂正発明3において、「縦枠」に相当する。
甲1発明において、「戸先側縦枠4」を備える「ドア枠1」は、本件訂正発明3において、「少なくとも縦枠を備える建具枠」に相当する。
甲1発明において、「ドア枠1に開閉可能に取付けられ」た「ドア本体2」は、本件訂正発明3において、「前記建具枠に対して開閉可能に取り付けられた戸体」に相当する。
甲1発明において、「ドア枠1と、ドア枠1内に取り付けられるドア本体2とを有する、ドア」は、本件訂正発明3において、「建具枠」と「戸体」とを備える「建具」に相当する。
甲1発明において、「金属製の戸先側縦枠4は、室外側部材4aと室内側部材4bとの間をゴム等の断熱性のブリッジ材4cで結合し、断熱性を高めて」いる構成に関し、「ゴム等の断熱性のブリッジ材4c」で「結合」された「室外側部材4aと室内側部材4b」とが「金属製」であることが明らかであることをふまえると、「金属製」である「室外側部材4a」及び「室内側部材4b」は、本件訂正発明3において、「金属製の屋外部材」及び「金属製の屋内部材」に相当する。
甲1発明において、「戸先側縦枠4」が、「室外側部材4aと室内側部材4bとの間をゴム等の断熱性のブリッジ材4cで結合し」たものである構成は、本件訂正発明3において、「前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され」る構成に相当する。
甲1発明において、「戸先側縦枠4の見込み面4dには、加熱発泡材31が固着され、加熱発泡材31は、室外側部材4aの見込み面、断熱性のブリッジ材4cの見込み面、及び室外側部材4bの見込み面に跨がって、ドア本体2に面する見込み面4dのほぼ全体を覆うように設けられる」構成と、本件訂正発明3において、「前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い加熱発泡材が取り付けられ」る構成とは、「前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、加熱発泡材が取り付けられ」る点で、共通する。
以上を整理すると、本件訂正発明3と甲1発明とは、次の点で一致する。
「少なくとも縦枠を備える建具枠と、
前記建具枠に対して開閉可能に取り付けられた戸体とを備え、
前記建具枠の少なくとも前記縦枠は、金属製の屋外部材と、金属製の屋内部材とを断熱部材で連結して構成され、
前記縦枠において、前記戸体に面する見込み面には、加熱発泡材が取り付けられた、
建具。」
そして、本件訂正発明3と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「加熱発泡材」に関し、
本件訂正発明3においては、
1a 「熱伝導率」について、「断熱部材よりも熱伝導率の高い」と特定されるとともに、
1b 「配置」について、「前記屋外部材または前記屋内部材の一方の前記見込み面と前記断熱部材の前記見込み面とに跨がって配置され、かつ、前記屋外部材または前記屋内部材の他方に接触しない」ように取り付けられること、及び、「前記断熱部材の前記見込み面」には、「前記加熱発泡材で覆われる部分」と、「前記加熱発泡材で覆われずに露出する部分」との、両方があることが特定されているのに対し、
甲1発明においては、
1a’ 「熱伝導率」について、「加熱発泡材31」と「断熱性のブリッジ材4c」との関係は特定されていないとともに、
1b’ 「配置」について、「加熱発泡材31は、室外側部材4aの見込み面、断熱性のブリッジ材4cの見込み面、及び室外側部材4bの見込み面に跨がって、ドア本体2に面する見込み面4dのほぼ全体を覆うように設けられ」るため、「加熱発泡材31」が「室内側部材4a」と「室外側部材4b」の両方に接触するとともに、「断熱性のブリッジ材4cの見込み面」は、全面が「加熱発泡材31」に覆われ、「加熱発泡材31」で覆われずに「露出」する部分がない点。
<相違点2>
上記相違点1に係る構成1bにおける、「前記加熱発泡材で覆われる部分」と、「前記加熱発泡材で覆われずに露出する部分」とに関し、
本件訂正発明3においては、「前記加熱発泡材で覆われる部分」の「見込み方向の長さ」について、「前記加熱発泡材で覆われずに露出する部分」の「見込み方向の長さよりも大きい」ことが、さらに特定されるのに対し、
甲1発明においては、上記相違点1に関して上記1b’に指摘したとおり、「断熱性のブリッジ材4cの見込み面」は、全面が「加熱発泡材31」に覆われ、「加熱発泡材31」で覆われずに「露出」する部分がない点。
(3)相違点についての判断
ア 上記相違点1について
上記相違点1について、判断する。
上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成は、「加熱発泡材の熱伝導率」と「断熱部材の熱伝導率」との関係、及び、当該「加熱発泡剤の熱伝導率」と「断熱部材の熱伝導率」との関係を前提として、「加熱発泡材」が「断熱部材」を跨いだ熱橋となることを防止するための配置に関する構成であるから、上記1(1)ア及び1(2)に指摘した、本件訂正前後の明細書において発明が解決しようとする課題、及び、当該課題を解決するために本件訂正発明3において採用した課題解決手段に関する、構成である。
これに対し、上記相違点1に関する甲1発明の構成は、本件訂正後の明細書の段落【0002】において、「耐火性の膨張材を、外枠、断熱材、内枠に跨がって配置し、断熱材を膨張材で覆っていた。」と記載される、本件訂正発明3に対する従来技術の構成と、同様のものである。
そして、甲1においては、「ゴム等の断熱性のブリッジ材」を用いることで、「室外側部材」と「室内側部材」との間の「断熱性」は「高めている」ものとされており(段落【0018】参照)、その余の甲1中の記載を考慮しても、「加熱発泡材」の熱伝導率と「断熱性のブリッジ材」の熱伝導率との相違について、「室内側部材」と「室外側部材」との間の「断熱性」に影響を及ぼすことは、記載も示唆もされていないから、甲1には、本件訂正発明3において解決しようとする課題自体が記載も示唆もされておらず、甲1発明において上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成に至る動機付けがあるということができない。
この点に関し、甲2には、加熱発泡材として市販されている一部の製品について、熱伝導率が例示されており、甲3には、ゴムの一種であるポリウレタン樹脂の熱伝導率が例示されているが、これらの例示を考慮しても、加熱発泡材の熱伝導率について、屋外側の部材と屋内側の部材とを断熱部材を介して分離する必要がある金属部材と同様に、断熱部材の熱伝導率よりも顕著に高いことが技術常識であるということはできず、甲1発明において甲2及び甲3に記載される事項を考慮したとしても、上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成に至る動機付けがあったということはできない。
甲4には、引き戸の下枠において、室外材21と室外材22との間でレール4及び落下止め5が熱橋となることを防止するため、室外材21と室内材22とを連結する断熱材23の位置で、レール4及び落下止め5を見込み方向に分離することが、記載されている。しかしながら、甲4におけるレール4及び落下止め5は、いずれも「ステンレス」であるところ、金属である「ステンレス」の部材の熱伝導率と、加熱発泡材の熱伝導率とを、一般的に同一観するような技術常識があるものではないから、甲1発明において甲4に記載される事項を考慮したとしても、上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成に至る動機付けがあったということはできない。
したがって、甲1発明において、甲2ないし甲4に記載される事項を考慮したとしても、上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成に至ることは、当業者にとって容易に想到できたものではない。
イ 上記相違点2について
上記相違点2について、判断する。
上記相違点2に係る本件訂正発明3の構成は、上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成について、「前記加熱発泡材で覆われる部分」と、「前記加熱発泡材で覆われずに露出する部分」との長さの関係を、さらに特定するものであるところ、上記アに示したとおり、上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成が、当業者にとって容易に想到できたものではないから、上記相違点2に係る本件訂正発明3の構成も、当業者にとって容易に想到できたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明3に係る特許は、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
3 申立人による意見書における主張について
(1)申立人の主張
申立人は令和4年6月7日提出の意見書において、上記1の取消理由通知に記載した取消理由に関して、概略次の旨を主張している。
本件訂正発明1ないし3において、加熱発泡材の熱伝導率が断熱部材の熱伝導率よりも、具体的にどの程度高いのかは特定されていない。このため、本件訂正発明1ないし3は、加熱発泡材の熱伝導率が断熱部材の熱伝導率よりもわずかに高いだけの組み合わせを含んでいるところ、このような組み合わせにおいては、加熱発泡材を外枠および内枠に跨がって配置した場合にも、加熱発泡材が、熱橋といえるほど、断熱部材に比べて外枠と内枠との間で熱を伝えるとは考えられないから、本件訂正発明1ないし3は、依然として、発明が解決しようとする課題を解決できると、当業者が認識できる範囲を超えるものである。
(2)上記主張についての判断
申立人の上記主張について、判断する。
本件訂正発明1ないし3においては、上記1(2)に指摘したとおり、「(屋内側)加熱発泡材」について、「断熱部材よりも熱伝導率の高い」ことが特定されるとともに、「断熱部材よりも熱伝導率の高い前記(屋内側)加熱発泡材」の配置についても、「(屋内側)加熱発泡材」を介した屋内外部材間の熱伝導を、防止することができると、合理的に理解することができる構成が、特定されている。
そして、「(屋内側)加熱発泡材」の「熱伝導率」が、「断熱部材」の「熱伝導率」よりもどの程度「高い」かに依拠して、本件訂正発明1ないし3に係る「(屋内側)加熱発泡材」の配置をとらない場合に、「(屋内側)加熱発泡材」を介して屋内外部材間で生じる熱伝導の程度が変わり得るからといって、本件訂正発明1ないし3に係る構成により、発明が解決しようとする課題が解決されると、合理的に理解することができる点に、変わりはない。
したがって、申立人による上記主張について検討しても、上記1の判断を変更すべき事情はない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件訂正発明1ないし3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701253