特許異議申立
2022-700336
向上した光学特性を有する中間膜
- 審判番号
- 2022-700336
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-544142外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6960932
- 請求日
- 2022年04月25日
- 審決日
- 2023年01月13日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6960932号発明「向上した光学特性を有する中間膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6960932号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6960932号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)2月8日(優先日 2016年(平成28年)2月23日外国庁受理 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、令和3年10月14日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和4年4月25日に特許異議申立人 吉澤 悦子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月22日付で取消理由が通知されたところ、同年11月11日に特許権者 ソルティア・インコーポレーテッド(以下、「特許権者」という。)より意見書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明14」という。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明14」をまとめて、「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ポリ(ビニルアセタール)樹脂及び少なくとも1種類の可塑剤を含む少なくとも1つのポリマー層を含み、ポリマー層は少なくとも1.480の屈折率を有し、中間膜は0.50~0.85mradの全体的なくさび角度を有するテーパー状の区域を含むテーパー状中間膜。
【請求項2】
ポリマー層は少なくとも1.500の屈折率を有する、請求項1に記載の中間膜。
【請求項3】
中間膜はモノリス型中間膜である、請求項1又は2に記載の中間膜。
【請求項4】
中間膜は、ポリマー層、及びかかるポリマー層に隣接する他のポリマー層を含む多層中間膜であり、ポリマー層のガラス転移温度と他のポリマー層のガラス転移温度の間の差は少なくとも3℃である、請求項1又は2に記載の中間膜。
【請求項5】
他のポリマー層は第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂及び少なくとも1種類の可塑剤を含み、ポリマー層中のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量と他のポリマー層中の第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量の間の差は少なくとも2重量%である、請求項4に記載の中間膜。
【請求項6】
テーパー状の区域は、曲線状の厚さプロファイル及び連続的に変化するくさび角度を有する少なくとも1つの変動角度の区域を含む、請求項1から5のいずれかに記載の中間膜。
【請求項7】
テーパー状の区域は、線状の厚さプロファイル及び一定のくさび角度を有する少なくとも1つの一定角度の区域を含む、請求項1から6のいずれかに記載の中間膜。
【請求項8】
1対の硬質基材及び請求項1から7のいずれかに記載の中間膜を含み、中間膜は1対の硬質基材の間に配置されており、硬質基材は4.0mm未満の合計厚さを有する多層パネル。
【請求項9】
1対の硬質基材;及び
基材の間に配置されている請求項1から7のいずれかに記載の中間膜;
を含み;
多層パネルの等価屈折率は硬質基材のそれぞれの屈折率よりも少なくとも0.010高い多層パネル。
【請求項10】
基材のそれぞれの屈折率は中間膜の屈折率よりも少なくとも20%低い、請求項9に記載のパネル。
【請求項11】
中間膜の屈折率は少なくとも約1.600である、請求項9に記載のパネル。
【請求項12】
1対の硬質基材;及び
基材の間に配置されている請求項1から7のいずれかに記載のテーパー状中間膜;
を含み;
中間膜の屈折率は硬質基材のそれぞれの屈折率よりも少なくとも5%高い多層パネル。
【請求項13】
パネルは硬質基材のそれぞれの屈折率よりも高い等価屈折率を有する、請求項12に記載のパネル。
【請求項14】
中間膜は約0.25~約1.2mmの範囲の最小厚さ及び約0.38~約2.2mmの範囲の最大厚さを有し、中間膜の最小厚さと中間膜の最大厚さの間の差は少なくとも約0.13mmであり、硬質基材のそれぞれの合計厚さは約4.0mm未満である、請求項12に記載のパネル。」
第3 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし14に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨(下記1及び2)は、次のとおりである。
1 申立理由1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし14に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由2の理由の概略は次のとおりである。
本件特許の明細書の記載からすると、本件特許発明は、ヘッドアップデイスプレイ(HUD)用途において用いるのに好適なポリマー中間膜において、二重像分離を減少させ、より薄い基材の使用を可能にする一方で、望ましい光学特性、遮音特性、及び視覚特性を示すものを提供するものであり、そして、かかる課題の下、ポリ(ビニルアセタール)樹脂及び少なくとも1種類の可塑剤を含む少なくとも1つのポリマー層を含むテーパー状中間膜において、ポリマー層は少なくとも1.480の屈折率を有するものを使用することで、本件特許発明に到達したものである。なお、本件特許発明に係るくさび角度は、二重像分離との関係で適宜設定する設計上の事項に過ぎない。
ここで、本件特許発明のポリマー層は、特許請求の範囲の請求項1の記載から、ポリ(ビニルアセタール)樹脂と少なくとも1種類の可塑剤を含み、その屈折率は少なくとも1.480の屈折率を有するものであれば、どのようなポリマーでも本件特許発明の課題が解決できることとなる。
すなわち、可塑剤を含まないポリ(ビニルアセタール))樹脂の屈折率が約1.485~1.495である(甲4、段落0067)ことに鑑みれば、少量の可塑剤を含ませても、樹脂の屈折率は、1.480以上であるといえ、このような樹脂を用いても本件特許発明の課題が解決できることとなる。
そして、少量の可塑剤を含むポリ(ビニルアセタール)樹脂では、樹脂の柔軟性が大幅に不足させ、望ましい光学特性、遮音特性、及び視覚特性を示すものを提供することができないことは技術常識であるといえる。
さらに、本件特許発明の実施例におけるポリマー層のポリマーは、「n-ブチルアルデヒドと、ベンズアルデヒド(BzCHO;RI=1.545)、シンナムアルデヒド(CCHO;RI=1.620)、4-クロロベンズアルデヒド(4-ClBzCHO;RI=1.5850)、2-フェニルプロピオンアルデヒド(2-PHPrCHO;RI=1.517)、及びヒドロシンナムアルデヒド(HCCHO;RI=1.523)を含む種々の高屈折率アルデヒドの混合物を用いてポリビニルアルコールをアセタール化することによって形成した」(本件特許明細書、段落0139)もの、及び、「種々の量の2種類の異なる高屈折率の添加剤:Benzoflex (登録商標)2-45(ジェチレングリコールジベンゾエー卜;Eastman Chemical Company, Kingsport, Tennessee から商業的に入手できる)(添加剤A-1)(28℃の融点及び1.542の屈折率を有していた);及びBenzoflex (登録商標)352 (1,4-シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート;Eastman Chemical Companyから商業的に入手できる)(添加剤A-2)(118℃の融点及び1.554の屈折率を有していた)」(段落0159)を含有させたものしか記載がされておらず、上述したポリ(ビニルアセタール)樹脂に少量の可塑剤を加えたものとはその物性が大きく異なるものといえる。
したがって、ポリ(ビニルアセタール)樹脂と少なくとも1種類の可塑剤を含むポリマー層が、少なくとも1.480の屈折率を有するものであれば、本件特許発明の課題を解決することは、本件特許明細書の発明の詳細な説明における記載だけでは、本件特許の出願時の技術常識を参酌しても、当業者において認識できるとは到底いえない。
よって、本件特許の請求項1の記載が、明細書のサポート要件に適合するということはできない。また、本件特許発明2~14にかかる特許請求の範囲の請求項2~14の記載も同様に明細書のサポート要件に適合しないといえる。
以上のとおり、本件特許発明にかかる特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。
3 証拠方法
・甲第1号証:特開2013-1613号公報
・甲第2号証:国際公開第2014/200989号
・甲第3号証:特表2011-505330号公報
・甲第4号証:特表2016-537480号公報
なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。
第4 令和4年8月19日付で特許権者に通知した取消理由の概要
請求項1ないし14に係る特許に対して、当審が令和4年8月19日付で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由は、申立理由1と同旨である。
・取消理由(進歩性) 本件特許の請求項1ないし14に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるとおり、当審は、取消理由及び申立理由2のいずれについても、その理由がないものと判断する。
1 取消理由(進歩性)についての判断
(1) 主な証拠の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」について、次の記載がある。
「【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、
一端の厚みが、該一端とは反対側の他端の厚みよりも薄い、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
一端から他端に向かって、厚みが次第に厚くなる形状を有する、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
厚み方向の断面形状が楔状である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超える、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、水酸基の含有率が31.5モル%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、アセタール化度が68モル%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が31.5モル%未満、アセタール化度が68モル%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である場合には、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超え、20モル%未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である場合には、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超え、アセタール化度が52.5モル%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である場合には、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超え、水酸基の含有率が28モル%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度が1700を超え、3000以下であるポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂である、請求項1~10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が33モル%以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量より多い、請求項1~12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも20重量部以上多い、請求項13に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
前記第1の層の他方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第3の層をさらに備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超える、請求項16に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項18】
前記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が33モル%以下である、請求項16又は17に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項19】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2,第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の各含有量よりも多い、請求項16~18のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項20】
前記第1~第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含み、
前記第1~第3の層に含まれている前記可塑剤としてそれぞれ、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含む、請求項16~19のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項21】
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1~20のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ヘッドアップディスプレイに好適に用いられ、少なくとも2層の多層構造を有する合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、各層がそれぞれポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。」
「【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部以上の可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0004】
さらに、下記の特許文献1には、上記遮音層と他の層とが積層された多層中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部以下の可塑剤とを含む。
【0005】
また、自動車に用いられる上記合わせガラスとして、ヘッドアップディスプレイ(HUD)が知られている。HUDでは、自動車のフロントガラスに、自動車の走行データである速度などの計測情報等を表示させることができる。
【0006】
上記HUDでは、フロントガラスに表示される計測情報が、二重に見えるという問題がある。
【0007】
二重像を抑制するために、下記の特許文献2には、一対のガラス板の間に、所定の楔角を有する楔状の中間膜が挟み込まれた合わせガラスが開示されている。このような合わせガラスでは、中間膜の楔角の調整により、1つのガラス板で反射される計測情報の表示と、別のガラス板で反射される計測情報の表示とを、運転者の視野で1点に結ぶことができる。このため、計測情報の表示が二重に見え難く、運転者の視界を妨げない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-070200号公報
【特許文献2】特表平4-502525号公報」
「【0013】
本発明の目的は、発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【0014】
本発明の限定的な目的は、遮音性にも優れた合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。」
「【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低く、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、更に上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であるので、一端の厚みが、該一端とは反対側の他端の厚みよりも薄いにもかかわらず、中間膜を用いた合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる。さらに、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、一端の厚みが他端の厚みよりも薄いので、例えば中間膜を用いてヘッドアップディスプレイ(HUD)を作製した場合には、二重像を抑制することもできる。」
「【0046】
本実施形態のもう1つの主な特徴は、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、第2の層3中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層3中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(以下、含有率差(1-2)と記載することがある)が、9.2モル%以下であり、更に第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層3中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(含有率差(1-2))が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であることである。また、本実施形態は、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量が50重量部以上である。上記含有率差(1-2)は、8.5モル%を超えかつ9.2モル%以下であってもよく、更に8.5モル%以下であってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、第3の層4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第3の層4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(以下、含有率差(1-3)と記載することがある)が、9.2モル%以下であり、更に第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第3の層4中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差(含有率差(1-3))が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であることが好ましい。但し、含有率差(1-3)が、8.5モル%以下であっても、含有率差(1-2)が8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、第1の層2中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は8モル%以下である。上記含有率差(1-3)は、8.5モル%を超え、9.2モル%以下であってもよく、更に8.5モル%以下であってもよい。」
「【0059】
厚みが異なる一端と他端とを結ぶ方向において、中間膜の厚み方向の断面形状は、楔状であることが好ましい。中間膜は、一端から他端に向かって厚みが次第に厚くなる形状を有することが好ましく、一端から他端に向かって厚みが連続的に厚くなる形状を有することが好ましい。「厚みが次第に厚くなる」とは、厚みが連続的に厚くなる場合だけでなく、厚みが段階的に厚くなる場合も含む。中間膜の厚み方向の断面形状としては、台形又は三角形が挙げられる。
【0060】
二重像を抑制するために、合わせガラスの取付角度に応じて、中間膜の楔角θを適宜設定することができる。二重像をより一層抑制する観点からは、中間膜の楔角θは好ましくは0.01mrad(0.0006度)以上、より好ましくは0.2mrad(0.0115度)以上、好ましくは2mrad(0.1146度)以下、より好ましくは0.7mrad(0.0401度)以下である。」
「【0126】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0127】
(実施例1)
(1)多層中間膜の作製
ポリビニルブチラール樹脂A(水酸基の含有率25.2モル%、アセチル化度12.3モル%、ブチラール化度62.5モル%)100重量部に、可塑剤としてのトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。さらに、ポリビニルブチラール樹脂B(水酸基の含有率31.2モル%、アセチル化度0.8モル%、ブチラール化度68.0モル%)100重量部に、可塑剤としてのトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)37.5重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、表面層用樹脂組成物を得た。
【0128】
得られた中間層用樹脂組成物及び表面層用樹脂組成物を用いて、共押出することにより、表面層と中間層と表面層とが順に積層された多層中間膜(縦1000mm×横350mm)を作製した。この多層中間膜では、縦方向における一端の厚みを、該一端とは反対側の他端の厚みよりも薄くし、横方向における厚みは均一にし、表面層(第2,第3の層)及び中間層(第1の層)の各最大厚み及び各最小厚み、及び中間膜の楔角θを下記の表1に示すようにした。
【0129】
(2)耐貫通性試験及び光学歪みの評価に用いる合わせガラスの作製
得られた多層中間膜を、縦方向及び横方向における中央部分を取り出すように、縦30cm×横30cmの大きさに切断した。次に、透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、耐貫通性試験及び光学歪みの評価に用いる合わせガラスを得た。
【0130】
(3)遮音性測定に用いる合わせガラスの作製
多層中間膜を縦方向及び横方向における中央部分を取り出すように、縦30cm×横2.5cmの大きさに切断し、透明なフロートガラス(縦30cm×横2.5cm×厚さ2.5mm)を用いたこと以外は耐貫通性試験に用いる合わせガラスと同様の方法で、遮音性測定に用いる合わせガラスを得た。
【0131】
(4)発泡試験A及びBに用いる合わせガラスの作製
得られた多層中間膜を、横方向における中央部分を取り出すようにかつ厚みが相対的に薄い縦方向の一端側の端部を含むように、縦30cm×横15cmの大きさに切断し、温度23℃の環境下にて、10時間保管した。また、得られた多層中間膜を、横方向における中央部分を取り出すようにかつ厚みが相対的に厚い縦方向の他端側の端部を含むように、縦30cm×横15cmの大きさに切断し、温度23℃の環境下にて、10時間保管した。なお、得られた多層中間膜の両面にはエンボスが形成されており、そのエンボスの十点平均粗さは30μmであった。切断された多層中間膜において、多層中間膜の端部から縦方向にそれぞれ内側に向かって8cmの位置と、多層中間膜の端部から横方向にそれぞれ内側に向かって5cmの位置との交点4箇所に、直径6mmの貫通孔を作製した。
【0132】
透明なフロートガラス(縦30cm×横15cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、貫通孔を有する多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。積層体の外周縁は、熱融着により端部から幅2cmを封止することにより、エンボスに残留した空気及び貫通孔に残留した空気を封じ込めた。この積層体を135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着することで、残留した空気を多層中間膜中に溶かし込み、発泡試験A及びBに用いる厚みが相対的に薄い中間膜を用いた合わせガラスXと、厚みが相対的に厚い中間膜を用いた合わせガラスYとを得た。
【0133】
(実施例2~20及び比較例1~2)
第1~第3の層の組成を下記の表1~4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0134】
なお、下記の表1~4に示すポリビニルアセタール樹脂C~Vの水酸基の含有率、アセチル化度、ブチラール化度、及び、第1の層のPVB樹脂の合成に用いたポリビニルアルコール(PVA)の重合度は、下記の表1~4に示す値である。なお、第1の層のPVB樹脂の合成に用いたポリビニルアルコール(PVA)の重合度は実施例5~20のみについて示した。
【0135】
(実施例21~23)
表面層(第2,第3の層)及び中間層(第1の層)の各最大厚み及び各最小厚み、及び中間膜の楔角θを下記の表4に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
・・・(略)・・・
【0146】
【表1】
[図:0001394013000001.jpg]
【0147】
【表2】
[図:0001394013000002.jpg]
【0148】
【表3】
[図:0001394013000003.jpg]
【0149】
【表4】
[図:0001394013000004.jpg]
」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に、請求項1、3及び段落【0060】の記載によると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、
一端の厚みが、該一端とは反対側の他端の厚みよりも薄く、
厚み方向の断面形状が楔状であって、その楔角θは0.01mrad(0.0006度)以上、2mrad(0.1146度)以下である、
合わせガラス用中間膜。」(以下、「甲1発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明のガラス用中間膜は、「厚み方向の断面形状が楔状」であるから、本件特許発明1の中間膜の「テーパー状の区域」を有するものに相当する。
すると、両者は、
「ポリ(ビニルアセタール)樹脂及び少なくとも1種類の可塑剤を含む少なくとも1つのポリマー層を含み、テーパー状の区域を含むテーパー状中間膜。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
中間膜の屈折率について、本件特許発明1は「少なくとも1.480」と特定するのに対し、甲1発明は不明である点。
(相違点2)
中間膜のくさび角度について、本件特許発明1は「0.50~0.85mrad」と特定されるのに対し、甲1発明は「0.01mrad以上、2mrad以下」と特定される点。
上記相違点について検討する。
・相違点1について
甲第1号証の実施例によると、甲1発明の可塑剤として用いられているのは、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)である。「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0074】によると、「低RI可塑剤」とされるものであり、また、甲第4号証の【0067】の記載によると、その「屈折率は約1.442」であり、ポリ(ビニルブチラール)樹脂の屈折率は、約1.485~1.495とされる。
してみると、ポリ(ビニルアセタール)樹脂に屈折率が約1.442の「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」を所定量以上含むものである、甲1発明のポリマー層の屈折率は、「少なくとも1.480」であるとは直ちに推認できない。
トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)を用いた例についても同様に判断される。
また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1発明において、可塑剤として屈折率が高いものに変更し、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとする動機があるともいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、二重像分離を減少させ、より薄い基材の使用を可能にする一方で、望ましい光学特性、遮音特性、及び視覚特性を示す(【0008】)という格別の効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、甲第2号証において「ポリマー中間層の屈折率が少なくとも1.480である」(【請求項12】)ことを根拠に、甲1発明において相違点1に係る特定事項を満たすものとすることは容易である旨主張する。
しかしながら、上記検討のとおり、甲1発明において、可塑剤を高屈折率の可塑剤へ変更する動機がないから、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2ないし14について
本件特許発明2ないし14はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものである。
そして、上記アで検討のとおり、本件特許発明1は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1の全ての特定事項を含む本件特許発明2ないし14についても同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 取消理由についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、取消理由は、その理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、申立理由2(サポート要件)に関する点である。
以下、検討する。
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】の記載からみて、「二重像分離を減少させ、より薄い基材の使用を可能にする一方で、望ましい光学特性、遮音特性、及び視覚特性を示す、HUD用途において用いるのに好適なポリマー中間膜を提供すること」であると認める。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の種々の態様による樹脂組成物、層、及び中間膜には、1種類以上の熱可塑性ポリマー、及び屈折率(RI)調整剤(balancing agent)を含ませることができる」(【0014】)ものであって、「本明細書に記載する樹脂組成物、層、及び中間膜には、1種類以上の熱可塑性ポリマーを含ませることができる」(【0016】)こと、「本発明の種々の態様においては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む組成物、層、及び中間膜に更に、組成物、層、又は中間膜の屈折率を調節するために少なくとも1種類の屈折率(RI)調整剤を含ませることができる」(【0045】)こと、「第1及び第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の少なくとも一方に、第1又は第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂のアルデヒド残基の全重量を基準として約0.5~約99.5重量%、約10~約90重量%、約25~約75重量%、又は約40~約60重量%の範囲の量の少なくとも1種類の高RIアルデヒドの残基を含ませることができる」(【0050】)こと、「中間膜が多層中間膜である場合には、中間膜の複数の層の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つに、少なくとも1つのテーパー状の区域を含ませることができる。中間膜がモノリス型中間膜である場合には、ポリマーシートは平坦にすることができ、或いはこれに少なくとも1つのテーパー状の区域を含ませることができる。テーパー状中間膜は、例えば自動車及び航空機用途におけるヘッドアップディスプレイ(HUD)パネルにおいて有用である可能性がある」(【0102】)ことが記載され、また、これらの特定事項を満たす実施例についての記載もある。
以上の記載をふまえると、ポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む中間膜を高屈折率とするとともに、少なくとも1つのテーパー状の区域を含ませるとの特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決するものと当業者は認識できる。
そして、本件特許発明は、上記発明の課題を解決するものと当業者が認識できる全ての特定事項を満たし、さらに屈折率、テーパー状区域のくさび角度を限定するものであるから、当然、発明の課題を解決するものである。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、概略、本件特許の明細書の実施例には、限られた組成の例が記載されているにすぎず、ポリ(ビニルアセタール)樹脂と少なくとも1種類の可塑剤を含もポリマー層が、少なくとも1.480の屈折率を有するものであれば、本件特許の発明の課題を解決することは、本件特許明細書の発明の詳細な説明における記載だけでは、本件出願時の技術常識を参酌しても、当業者において認識できるとは到底いえない旨主張する。
しかしながら、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に、中間膜を高屈折率とすること、中間膜の一部にテーパー状区域を設けること、その条件と効果についての記載があることは、上記(2)で判断したとおりである。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用しない。
(4) 申立理由2についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。
第6 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700336