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特許異議申立

2022-700332

エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット及びそのフィルム

審判番号
2022-700332
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-130376
登録番号
6955064
請求日
2022年04月22日
審決日
2022年09月09日
公報発行日
2022年10月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】長春石油化學股▲分▼有限公司
  • 【権利者代理人】井関 勝守
  • 【異議申立人】後藤 麻衣子
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 奥田 雄介
分類
P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6955064号発明「エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット及びそのフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6955064号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6955064号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし16に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)7月31日を国際出願日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2019年12月30日 米国(US))とする出願であって、令和3年10月4日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年4月22日に特許異議申立人 後藤 麻衣子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 エチレン-ビニルアルコール共重合体と、 複数の含フッ素微粒子と、を含み、 第1融点温度及び第2融点温度の少なくとも2つの融点温度をさらに含み、 前記第1融点温度は約100℃~約140℃であり、 各前記含フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満であり、 前記含フッ素微粒子はフッ化ポリマーを含み、 前記フッ化ポリマーは、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとからなる共重合体、又は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとからなる共重合体を含む、エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項2】 前記第1融点温度は約105℃~約135℃である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項3】 前記第2融点温度は約150℃~約195℃である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項4】 前記第2融点温度は約158℃~約190℃である、請求項3に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項5】 前記複数の含フッ素微粒子は、約1.5~約48wt%のフッ素含有量を含み、前記フッ素含有量は炭素、酸素及びフッ素元素の総重量に基づいている、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項6】 前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の鹸化度は99.5mole%以上である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項7】 ポリアルキレンオキシドを含まない、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項8】 前記含フッ素微粒子の直径又は主軸長さは約1.0~約19μmである、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項9】 前記含フッ素微粒子の直径又は主軸長さは約1.2~約16μmである、請求項8に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項10】 前記エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は約20~約50mole%である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項11】 前記エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は約25~約45mole%である、請求項10に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項12】 請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含み、ISO 179-1に基づくシャルピー衝撃強度(Charpy impact strength)は、23℃下で少なくとも2.3KJ/m2であり、ISO 527-2に基づく破断点伸びは、23℃下で少なくとも17.8%である、フィルム。 【請求項13】 前記フィルムのISO 179-1に基づくシャルピー衝撃強度は、23℃下で少なくとも2.6KJ/m2である、請求項12に記載のフィルム。 【請求項14】 前記フィルムの破断点伸びは少なくとも20%である、請求項12に記載のフィルム。 【請求項15】 前記エチレン-ビニルアルコール共重合体において、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体がエチレン含有量及び鹸化度を含み、そのうち、前記エチレン含有量は約20~約50mole%であり、前記鹸化度は99.5mole%以上であり、前記含フッ素微粒子はフッ化ポリマーを含み、 さらに、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレットは、少なくとも2つの融点温度を含み、第1融点温度及び第2融点温度を含み、前記第1融点温度は約100℃~約140℃であり、前記第2融点温度は約150℃~195℃である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット。 【請求項16】 請求項15に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含み、ISO 179-1に基づくシャルピー衝撃強度は、23℃下で少なくとも2.3KJ/m2であり、ISO 527-2に基づく破断点伸びは、23℃下で少なくとも17.8%である、フィルム。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年4月22日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第11号証に記載の技術事項に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明1において、「各前記含フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満であ」ることが特定されているが、比較例EVOHペレット3及び5は、粒径が20μm未満の含フッ素微粒子を含むものであるから、本件特許発明1は、課題を解決することができない発明を含むものである。請求項1を引用して特定する本件特許発明2ないし16についても同様である。 3 申立理由3(明確性) 本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、下記(1)ないし(3)の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)本件特許発明1における「約100℃~約140℃」との記載、並びに、本件特許発明2ないし5、8ないし11及び15における「約」を含む数値範囲の記載は、範囲が確定されていないことから、不明確である。請求項1、3、8、10、15を引用して特定する本件特許発明2ないし16についても同様である。 (2)本件特許発明12における「請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体」及び本件特許発明16における「請求項15に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体」の特定は、引用する本件特許発明1及び15が「エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット」の発明であるため、何を示しているのかが不明である。請求項12を引用して特定する本件特許発明13及び14についても同様である。 (3)本件特許発明1における「各前記含フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満であり」、本件特許発明8における「前記含フッ素微粒子の直径又は主軸長さは約1.0~約19μmである」、及び本件特許発明9における「前記含フッ素微粒子の直径又は主軸長さは約1.2~約16μmである」との特定事項は、課題を解決できていない比較例も含まれる表現であり、不明確である。請求項1を引用して特定する本件特許発明2ないし16についても同様である。 4 証拠方法 ・甲第1号証:国際公開第2010/098762号 ・甲第2号証:「EVAL」のパンフレット、Kuraray、2016年10月19日、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20161019141541/http:/www.evalevoh.com:80/media/30551/eval_resins_2013.pdf> ・甲第3号証の1:「主要グレードと特性」、東京材料株式会社、2015年12月24日(掲載日)、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20151224025807/http://www.tokyozairyo.co.jp/content/200167948.pdf> ・甲第3号証の2:「カイナー KYNAR(登録商標)」、東京材料株式会社、2016年6月26日(掲載日)、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20160626064943/http://www.tokyozairyo.co.jp:80/products/plastics/kynar.html> ・甲第4号証:特表2012-530181号公報 ・甲第5号証の1:「Particle Size: The Revolution in Fluoropolymer Process Aids」、Steven R. Oriani et.al.、2006年9月17日、インターネット<URL: https://www.tappi.org/content/enewsletters/eplace/2007/06PLA02.pdf> ・甲第5号証の2:「Semantic Scholar」による「Particle Size: The Revolution in Fluoropolymer Process Aids」の検索結果、令和4年3月9日(出力日)、インターネット<URL: https://www.semanticscholar.org/paper/Particle-Size-%3A-The-Revolution-in-Fluoropolymer-Oriani-Elkton/8f4667a51d2e51ded49937c71405b6c297d5042f> ・甲第5号証の3:「Particle Size: The Revolution in Fluoropolymer Process Aids, 2006 PLACE Conference」、令和4年3月9日(出力日)、インターネット<URL: https://imisrise.tappi.org/TAPPI/Products/06/PLA/06PLA02.aspx> ・甲第6号証:「Kynar(登録商標) Polymer Processing Aids for Polyolefins and other Polymers」、ARKEMA、2017年2月22日(掲載日)、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20170222080215/https:/www.extremematerials-arkema.com/en/markets-and-applications/chemical-industry-and-general-industry/fluoropolymer-processing-aids/> ・甲第7号証:「Effects of macromolecular configuration of thermally sensitive binder in lithium-ion battery」、JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE、2017年、第134巻、APP.45078 ・甲第8号証:特開2016-153452号公報 ・甲第9号証:「Technical Data Sheet EVAL(登録商標) G156B」、Kuraray、2017年8月8日(掲載日)、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20170808121931/http:/www.evalevoh.com:80/media/1217/tds_eval__g156b.pdf> ・甲第10号証:科学技術情報プラットフォーム「AIベースの検索エンジンが拡大(記事紹介)」、科学技術振興機構、2016年11月22日、インターネット<URL: https://jipsti.jst.go.jp/sti_updates/2016/11/9160.html> ・甲第11号証:「Kynar(登録商標) Resin-Physical & Mechanical Properties」、ARKEMA、2017年11月24日(掲載日)、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20171124015829/http:/www.extremematerials-arkema.com/en/product-families/kynar-pvdf-family/physical-and-mechanical-properties> 証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。以下、「甲1」等という。 第4 当審の判断 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1にはおおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものであり、甲1は外国語の文献のため、該当箇所の訳文のみを摘記した。他の証拠についても同様。 ・「請求項 1.(a)ポリオレフィンを含むコア層と、EVOH及び1重量ppm以上のフッ化ポリマーを含むスキン層とを有するフィルム基材を形成する工程; (b)前記スキン層をプラズマ処理する工程;そして (c)前記プラズマ処理されたフィルム基材を金属で金属化する工程を備える、多層ポリマーフィルムの製造方法。」 ・「[0025] 本開示において有用なフッ化ポリマーは、EVOHのようなホストポリマーの押出温度で溶融するフッ化ポリマーである。」 ・「[0029] 特に有用なフッ化ポリマーには、2種以上の異なる式Iモノマーと任意に1種以上の式IIモノマーとの相互重合に由来するものが含まれる。このようなポリマーの例は、フッ化ビニリデン(VDF)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)から誘導される共重合単位から誘導されるものであり、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来するもの、およびTFE以外の少なくとも1種の共重合可能なコモノマーの少なくとも5重量%から誘導されるものである。この後者の種類のフッ化ポリマーは、TFE及びHFPから誘導される重合単位のポリマー;TFE、HFP及びVDFから誘導される重合単位のポリマー;TFE、HFP及び式IIモノマーから誘導される重合単位のポリマー;並びにTFE及び式IIモノマーから誘導される重合単位から誘導されるポリマーを含む。」 ・「[0030] ・・・ その他の有用な商業的に入手可能な材料には、solvayから市販されているKYNAR FLEX(登録商標) 2821のようなKYNAR(登録商標)フッ化ポリマー、及びアサヒガラスから入手可能なAFLAS(登録商標)フッ化ポリマーが含まれる。」 ・「[0031] ・・・ 本発明の高バリア層を調製するために使用することができる市販のEVOHには、EVALCAから得られるEVAL(登録商標)G156B、G176、F104又はL101が含まれる。」 ・「[0032] 本開示のスキン層は、EVOH及びフッ化ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、フッ化ポリマーの量は、1wtppm~10000wtppmの範囲であり、好ましくは10wtppm~1000wtppmの範囲であり、より好ましくは、100wtppm~500wtppmの範囲である。」 ・「[0044] 試験には多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用した。サンプルIAは、EVOH(EVAL(登録商標)G156B)スキン層を備え、アルミニウムの真空蒸着で金属化された多層二軸延伸ポリプロピレンフィルムであった。サンプルIBは、サンプルIAのEVOH層にフッ化ポリマー(Kynar FLEX(登録商標) 2821)を300重量ppm添加して作製された。」 イ 甲1に記載された発明 アの摘記事項、特にサンプルIBの実施例について整理すると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「EVOH(EVAL(登録商標)G156B)及び300重量ppmのフッ化ポリマー(Kynar FLEX(登録商標) 2821)を含むスキン層。」 (2)甲2に記載された事項 甲2には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「G156Bは、エチレン含有量48mol%、密度1.12(g/cm3)、MFR6.9(g/10分)、融点160℃、ガラス転移点50℃、OTR3.2cm3・20μm/m2・day・atmである。」(パンフレット7ページの表1c) (3)甲3の1に記載された事項 甲3の1には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「KYNAR FLEX(登録商標) 2821-00は、化学構造がPVDF-HFPであり、融点が140~145℃である。」 (4)甲4に記載された事項 甲4には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0030】 ・・・。可撓性がより高いPVDF:HFPコポリマー(すなわち、KYNAR2801、2821、および2851)を含む膜において特に、無機ナノ充填剤を組み入れることによって、引張性能も同様に向上したが、この場合はナノ粒子が低~中程度の担持量のときに、補強的な補剛効果が明らかであった。」 (5)甲5の1に記載された事項 甲5の1には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「粒子サイズ:フッ化ポリマー加工助剤革命」(1ページ1行) ・「サンプル準備 押出機とは異なり、Frus-TIR測定に使用されるピストン駆動の毛細管レオメーターには分散混合機能がない。安定した速度のフッ素エラストマがダイを通過することを保証するために、Frus-TIRテストの前にフッ素エラストマをLLDPEで最初に1000ppmに希釈した。」(3ページ14~17行) ・「表3 [図:0001389414000001.jpg] 」 (3ページ23~34のTableIII) ・「結論 フッ素エラストマ粒子を含むポリエチレンが押出ダイを流れると、粒子がダイ入口の壁に接触し、そこで付着、合体し、波状に下流に流れることにより、フッ素エラストマコーティングがダイの内面に発生します。コーティングがダイ出口に到達すると、溶融破壊が解消されます。フッ素エラストマ層の成長は、ダイに入る粒子サイズに大きく依存し、大きな粒子(約5~6μm)は小さな粒子(約2~3μm)よりもはるかに速いコーティング成長を生成します。」(9ページ下から16~11行) (6)甲6に記載された事項 甲6には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「マスターバッチの準備に関する推奨事項 マスターバッチには、分散不良を引き起こす可能性があるため、Kynar(登録商標)PPA添加剤の含有量が5%を超えないようにする必要がある。」(5枚目) (7)甲11に記載された事項 甲11には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「KYNAR(登録商標)PVDFグレードにおいて、2821-00の融点は140℃~145℃である。」(7~13枚目の表の12枚目) 2 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「EVOH(EVAL(登録商標)G156B)」は、本件特許発明1における「エチレン-ビニルアルコール共重合体」に相当する。 甲1発明における「フッ化ポリマー(Kynar FLEX(登録商標) 2821)」は、甲3の1及び甲4からフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとからなる共重合体であるから、本件特許発明1における「フッ化ポリマーは、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとからなる共重合体、又は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとからなる共重合体を含む」に相当する。 また、甲2から「EVOH(EVAL(登録商標)G156B)」の融点が160℃であり、甲3の1及び甲11から「フッ化ポリマー(Kynar FLEX(登録商標) 2821)」の融点は140℃~145℃であるから、本件特許発明1における「第1融点温度及び第2融点温度の少なくとも2つの融点温度をさらに含み、前記第1融点温度は約100℃~約140℃であ」るといえる。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン-ビニルアルコール共重合体と、 フッ化ポリマーと、を含み、 第1融点温度及び第2融点温度の少なくとも2つの融点温度をさらに含み、 前記第1融点温度は約100℃~約140℃であり、 前記フッ化ポリマーは、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとからなる共重合体、又は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとからなる共重合体を含むもの。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1においては、「ペレット」であるのに対し、甲1発明においては、そのように特定されていない点。 <相違点2> 本件特許発明1においては、「複数の含フッ素微粒子」を含み、「各前記フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満」であるのに対し、甲1発明においては、そのように特定されていない点。 イ 判断 相違点1及び2について検討する。 甲1には、「エチレン-ビニルアルコール共重合体と、複数の含フッ素微粒子と、を含」むペレットに関する記載はなく、また、他の証拠にも、「エチレン-ビニルアルコール共重合体と、複数の含フッ素微粒子と、を含」むペレットに関する記載はない。 すなわち、甲1及び他の証拠のいずれにも、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はなく、ましてや、相違点2に係る「各前記フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満」とすることの動機付けとなる記載もない。 したがって、甲1発明において、相違点1及び2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「フッ素ポリマーを使用してEVOH樹脂及びそのペレットを調製すると、フッ素ポリマーの部分的な混和性がダイの材料析出を改善し、スクリューに粘着する問題を低減できる」(本件特許明細書の【0006】)という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、「輸送、保管、製造設備等の観点から樹脂組成物を一旦ペレット化し、フィルム等の押出成形時にペレット化されている樹脂組成物を用いることは技術常識である」から、甲1発明のEVOH層を押出成形により製造するにあたり、EVOHに対してフッ化ポリマーが300重量ppm添加された樹脂組成物からなるペレットを用いることは、当業者が適宜なし得る事項である旨主張する(特許異議申立書第24ページ第6行ないし第25ページ第1行)。 そこで、該主張について検討する。 フィルム等の押出成形時にペレット化されている樹脂組成物を用いることが技術常識であるとしても、エチレン-ビニルアルコール共重合体と複数の含フッ素微粒子の両者を含むペレットを用いることまで技術常識であるとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし16について 本件特許発明2ないし16は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし16は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので申立理由1によっては取り消すことはできない。 3 申立理由2(サポート要件)について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明は、おおむね次のとおりである。下線については当審において付与した。 ・「【0001】 本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene-vinyl alcohol,EVOH)樹脂及びそのペレットに関するものである。エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレットは微粒子を有しており、特に含フッ素微粒子を有している。本発明はさらに、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂及び/又はペレットにより形成されたフィルムを開示する。 ・・・(略)・・・ 【0003】 EVOHを使用した押出プロセスでは、ダイに蓄積してしまう事象が頻繁に生じる。また、EVOHを使用した押出プロセスにおいてよくある別の問題は、スクリューに粘着するという望ましくない事象が生じることである。こうした問題は、EVOHによって形成された膜の外観や機械的強度を低下させる場合がある。また、こうした問題は、従来技術ではまだ十分に処理又は解決されていない。 【0004】 そのため、より良好なフィルム性質を提供し、且つ費用対効果の高い製造プロセスの実現を可能とするEVOH樹脂が引き続き必要とされている。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ペレットに関するものであり、それは微粒子、特に含フッ素微粒子を有している。EVOH樹脂及び/又はペレットは、フィルム又は多層構造の調製に用いることができる。EVOHとフッ化ポリマーは不混和性を有するため、それらの組み合わせは避けるのが一般常識である。例えば、EVOHとフッ化ポリマーの不混和性により、形成されたフィルムの外観や機械的性質にマイナスの影響を及ぼすことが予測できる。 【課題を解決するための手段】 【0006】 不混和性によって生じる問題のため、従来ではEVOHとフッ化ポリマー(フッ素ポリマーとも呼ばれる)の組み合わせが避けられているが、本発明は、フッ素ポリマーを使用してEVOH樹脂及びそのペレットを調製すると、フッ素ポリマーの部分的な混和性がダイの材料析出を改善し、スクリューに粘着する問題を低減できることを発見した。また発明者は、本発明のEVOHペレットが、それによって形成されたフィルムや多層構造の可塑性を改善し、機械的性質を強化できることを発見した。具体的に述べれば、発明者は、含フッ素微粒子を有するEVOHペレットを使用することにより、改善された強度(例えばシャルピー衝撃試験による測定)及び改善された可塑性(例えば破断点伸びにより測定)を具備するEVOHフィルムが得られることを知った。例えば、発明者は、以下の特性を具備するEVOHフィルムを得ることができた。ISO 179-1に基づくシャルピー衝撃強度(Charpy impact strength)では、23℃下で少なくとも2.3KJ/m2であり、ISO 527-2に基づく破断点伸びは、23℃下で少なくとも17.8%であった。驚いたことに、本明細書に記載の含フッ素微粒子を有するEVOHペレットは、EVOHペレットにより形成されたフィルムの強度及び可塑性などを改善するといった優位性を提供することができる。」 ・「【0015】 本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂及びそのペレットに関するものである。EVOHペレットは、その中に分散した微粒子、特に含フッ素微粒子を有している。EVOHペレットは、フィルム又は多層構造の調製に用いることができる。 【0016】 1つの態様では、本発明はEVOHペレットを提供する。本明細書に記載のEVOHペレットとは、EVOH樹脂の造粒を経て形成された1つ以上のペレットの形態及び/又は形状を指す。本発明の全文では、造粒を経て形成された1つ以上のEVOHペレット形態のEVOH樹脂を記述しているが、EVOH樹脂はビーズ、立方体、チップ、削りくずなどの形態に加工されてもよい。本発明のEVOHペレットは、通常、エチレン-ビニルアルコール共重合体及び少なくとも1つの含フッ素微粒子を含み、含フッ素微粒子の粒径は20μm以下である。 【0017】 図1は本発明の例示的EVOHペレット100の断面図を描いたものである。EVOHペレット100は、EVOHにより形成され、EVOHはエチレン含有量を有している。例えば、EVOHのエチレン含有量は、約20~約50mole%、約25~約45mole%、約28~約42mole%又は約30~約40mole%でよい。EVOHペレット100は、異なるエチレン含有量を有する2種類以上のEVOHにより形成することができる。・・・(略)・・・ しかし、幾つかの好ましい実施例において、EVOHペレット100は、エチレン含有量が約20~約50mole%の単一のEVOHにより形成される。 【0018】 上述のEVOHペレット100のフッ素含有量は、添加する1種類以上のフッ化ポリマー(本明細書では「フッ素ポリマー」とも呼ぶ)と関係しており、フッ化ポリマーは、EVOHペレット100中に分散する含フッ素微粒子110を形成することができる。・・・(略)・・・ さらに/又は、フッ素ポリマーは、フッ化ビニリデン(vinylidene fluoride,VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene,HFP)及びテトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene,TFE)のうち、少なくとも1種類から誘導された共重合体を含むことができる。幾つかの実施例において、フッ素ポリマーは、VDF、HFP及びTFEのうち、2種類以上から誘導された共重合体を含むことができる。例えば、EVOHペレット100は、VDF及びHFPから誘導された共重合体、TFE及びHFPから誘導された共重合体、VDF及びTFEから誘導された共重合体並びに/又はVDF、HFP及びTFEから誘導された共重合体を含むことができる。如何なる特定の理論にも限定されないが、発明者は、ある種のフッ素ポリマーの結晶サイズを縮小することにより、EVOHペレット100の少なくとも1つの融点を低くさせることができると確信している。 【0019】 EVOHペレット100の炭素、酸素及びフッ素元素の総重量に基づき、含フッ素微粒子110は、約1.5~約48wt%のフッ素を有することができる。その他の実施例では、EVOHペレット100の炭素、酸素及びフッ素元素の総重量に基づき、含フッ素微粒子110は、約1.8~約44wt%のフッ素又は約2.1~約41wt%のフッ素を有することができる。 【0020】 EVOHペレット100の含フッ素微粒子110が有することのできる粒径は、直径又は断面積にわたる主軸長さが1.0~約19μmであり、又は1.2~約16μmであるのが好ましい。含フッ素微粒子のサイズは、フッ素ポリマーのタイプ又は種類、フッ素ポリマーの量及びEVOHのエチレン含有量を調節することによりコントロールすることができる。含フッ素微粒子が球形である場合、含フッ素微粒子が所望の粒径を有するか否かはその断面の直径により決定する。含フッ素微粒子が球形ではなく、及び/又は含フッ素微粒子の断面形状が円形ではない(例えば楕円形又は塊状を呈する)場合、含フッ素微粒子が所望の粒径を有するか否かは含フッ素微粒子の断面の主軸長さにより決定し、主軸の定義は、断面中で最長粒径を有する軸とする。幾つかの実施例において、EVOHペレット100の断面上で評価されるすべての含フッ素微粒子110の粒径はいずれも20μm以下であり、例えば19μm以下、18μm以下、16μm以下、14μm以下又は12μm以下である。言い換えると、幾つかの実施例において、含フッ素微粒子110の粒径は20μmを超えることがなく、例えば19μm、18μm、16μm、14μm又は12μmを超えない。含フッ素微粒子110の粒径は、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上又は0.7μm以上でよい。例えば、EVOHペレット100は、粒径が1.0~約19μm又は1.2~約16μmの含フッ素微粒子110を有することができる。幾つかの実施例において、EVOHペレット100の断面上で評価されるすべての含フッ素微粒子110は、いずれも本明細書に記載される所望の粒径範囲内にある。しかし、幾つかの実施例においては、EVOHペレット100の断面上で評価される含フッ素微粒子110の大多数が所望の粒径範囲内にある。粒径が所望の範囲内にあるか否かを左右する例示的な要素には、(a)フッ素ポリマーの量、(b)EVOHのエチレン含有量、(c)フッ素ポリマーのタイプ、(d)押出機中の温度、及び(e)スクリューの回転速度が含まれ得る。本発明では、EVOHペレットに所望の粒径範囲内の含フッ素微粒子が含有されてさえいれば、その加工性及び機械的性質を向上させることができる。 【0021】 図2に示す通り、EVOHペレット100は、少なくとも2つの融点温度を有することができる。幾つかの実施例において、EVOHペレット100における1つの融点温度(例えば、第1融点温度)は、約100℃~約140℃であり、例えば約105℃~約135℃、約110℃~約135℃又は約120℃~約130℃である。さらに/又は、そのうちの1つの融点温度(例えば、第2融点温度)は、約150℃~約195℃であり、例えば約158℃~約190℃又は約164℃~約187℃である。幾つかの実施例において、EVOHペレット100は少なくとも3つの異なる融点温度を有する。幾つかの実施例において、EVOHペレット100は少なくとも4つ、少なくとも5つ又は少なくとも6つの異なる融点温度を有する。さらに/又は、EVOHペレット100の鹸化度は90mole%以上でよく、好適には95mole%以上、好適には97mole%以上、好適には99.5mole%以上である。 【0022】 上述のEVOH樹脂又はEVOHペレット100は、ポリアルキレンオキシドを含まないか又は実質的に含まなくてよい。例えば、EVOHペレット100は、5wt%未満のポリアルキレンオキシドを有することができ、例えば4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満又は0.5wt%未満である。 【0023】 上述のEVOHペレット100は、それにより形成されるEVOHフィルムをより効率的に調製するのに役立つ。例えば、EVOHペレット100は、EVOHフィルムの製造過程において、ダイへの析出を改善し、スクリューに粘着する問題を低減することができる。EVOHフィルムを調製する相応しい方法及び設備には、当業者が容易に理解できる方法及び設備を含むことができる。発明者は、部分的に混和性(且つ部分的に不混和性)であるフッ素ポリマーを使用し、且つ含フッ素微粒子110を含有したEVOHペレット100を調製することにより、一部のフッ素ポリマーが押出機の内表面において分離し、コーティング層120が形成されると確信している。図3は、本発明におけるEVOHペレットのフッ素ポリマーの一部が押出機の内表面に形成したコーティング層120を描いたものである。また、押出機の内壁をコーティングしたフッ化ポリマー層が押出機を流れるEVOH樹脂を保護するため、EVOHペレットの押し出し工程を高温化で行ってもEVOHフィルムに変色が生じないようにさせるのに有利である。 【0024】 別の態様では、本発明はEVOH樹脂又はそのEVOHペレット100により形成されたEVOHフィルムを提供する。EVOHフィルムのISO 179-1に基づくシャルピー衝撃強度は、23℃下で少なくとも2.3KJ/m2であり、EVOHフィルムのISO 527-2に基づく破断点伸びは、23℃下で少なくとも17.8%であった。幾つかの実施例では、EVOHフィルムのISO 179-1に基づくシャルピー衝撃強度は、23℃下で少なくとも3KJ/m2、少なくとも4.5KJ/m2、少なくとも5.5KJ/m2又は少なくとも6.5KJ/m2であり得る。上述のシャルピー衝撃強度を得るには、ISO 179-1の方法を用いて測定を行う前に、試料を相対湿度50%±5%、温度23℃±2℃において16時間放置する必要がある。また、衝撃エネルギーを7.5Jに設定し、衝撃方向はエッジワイズ方向とし、試料タイプは1eAとし、試料の平均幅は10.06mmとし、試料の平均厚さは3.94mmとする必要がある。試験するノッチの深さは8.09mmとし、試験温度は23℃±2℃とし、破断タイプはCとする必要がある。EVOHフィルムのISO 527-2に基づく破断点伸びは、23℃下で少なくとも20%であり得る。幾つかの実施例では、EVOHフィルムのISO 527-2に基づく破断点伸びは、23℃下で少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%又は少なくとも24%である。上述の破断点伸び値を得るには、2012エディションの試験方法を使用し、試験速度は50mm/minとし、試料タイプは1Aとし、試料の平均厚さは3.99mmとする必要がある。」 ・「【実施例】 【0025】 ・・・(略)・・・ 【実施例1】 【0026】 本発明に基づき、4種類のフッ素ポリマーを調製する(実施例のフッ素ポリマーA~D)。その後、実施例フッ素ポリマーA~Dを使用して、本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と呼ぶ)ペレットを調製する。以下に開示する具体的な方法に基づいて実施例フッ素ポリマーA~Dを調製するが、その他のタイプのフッ素ポリマーを使用してEVOHに添加することもできる。 【0027】 実施例フッ素ポリマーA オートクレーブを回分反応器として使用し、実施例フッ素ポリマーAを調製した。オートクレーブの内容積は約20Lであり、電磁誘導撹拌装置が設置されている。オートクレーブに窒素ガス(N2)を十分に充填し、その後に減圧した窒素ガスを5回充填した。 【0028】 オートクレーブ内を減圧させると同時に、6,960gの脱酸素純水、3,204gの1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン及び3.5gのメチルセルロースをオートクレーブに加えた。メチルセルロースの粘度は50cpであり、懸濁安定剤としてオートクレーブ内の組成物中に450rpmで撹拌混入した。オートクレーブ内の組成物は52℃下に置いた。 【0029】 25.3wt%のフッ化ビニリデン(VDF)、68.6wt%のヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び6.1wt%のテトラフルオロエチレン(TFE)で組成されたモノマーを充填ガスとしてバッチ中に混入して、10kg/cm2まで充填した。その後、約90wt%の1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン及び10wt%のジイソプロピルパーオキシジカーボネートを含有する溶液45.6gを触媒として添加し、重合反応を開始させた。ジイソプロピルパーオキシジカーボネートは、重合反応を開始させるための開始剤として用いた。重合反応過程では圧力が低下するため、44.7wt%のVDF、32.5wt%のHFP及び22.8wt%のTFEを有する混合モノマーを添加して、圧力を10kg/cm2まで上げた。重合反応完了後、残りの混合モノマーを除去し、且つ得られた懸濁液を遠心分離機で脱水し、脱イオン水で洗浄してから100℃で真空乾燥させて、7.5kgの実施例フッ素ポリマーAを得た。 ・・・(略)・・・ 【実施例2】 【0038】 以下、EVOHペレットを調製する非限定的な方法を提供する。以下に開示する方法と同様の方法に基づき、フッ素微粒子を有する非限定的実施例EVOHペレットを27種類(実施例EVOHペレット1~27)、及び比較例EVOHペレットを5種類(比較例EVOHペレット1~5)調製した。但し、実施例EVOHペレット1~27及び比較例EVOHペレット1~5を調製する具体的な方法は、通常、1つ以上の面で以下に開示する方法と異なっている。 【0039】 エチレン含有量が29mole%のエチレン酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate copolymer、以下では「EVAC」と呼ぶ)の鹸化を行い、鹸化度99.5%でEVOHポリマーを調製した。次に、EVOHをメタノールと水(比率は70:30)を含有した溶液中に溶解した。その後、溶液におけるEVOHの固体含有量は41wt%となり、溶液を60℃下に置いた。 【0040】 水中ペレット製造(underwater pelletization)により、上述のメタノール、水及びEVOHの溶液の造粒を行った。具体的には、ポンプを使用して、上述のメタノール、水及びEVOHの溶液を流速120L/minで供給管に送り、次に直径2.8mmの吸込管へ送り、回転ナイフを用いて1500rpmでカットした。5℃の水を添加して、EVOHペレットを冷却した。次に、EVOHペレットを遠心分離して、EVOH粒子を分離した。分離後のEVOH粒子を水で洗浄した後、乾燥させてEVOHペレットを得た。 【0041】 EVOHペレットと実施例1などのフッ素ポリマーを一定の比率で混合した後、二軸スクリュー押出機に送った。表1に示す通り、二軸スクリュー押出機の13の区域(1区~13区)は温度が異なっている。混合後、25℃下でストランドカット(strand cutting)を行い、フッ素元素を有する微粒子(本明細書では「フッ素微粒子」とも呼ぶ)が含まれたEVOHペレットを調製した。表1中、「EV27」とは、エチレン含有量が27mole%のEVOHを指し、「EV29」とは、エチレン含有量が29mole%のEVOHを指し、「EV32」とは、エチレン含有量が32mole%のEVOHを指し、「EV38」とは、エチレン含有量が38mole%のEVOHを指し、「EV44」とは、エチレン含有量が44mole%のEVOHを指す。 【0042】 【表1】 [図:0001389414000002.jpg] 【実施例3】 【0043】 下記の方法に基づき、実施例EVOHペレット1~27を用いてそれぞれフィルムを形成した。実施例EVOHペレット1~27及び比較例EVOHペレット1~5を単層Tダイキャストフィルム押出機(光学制御システムMEV4)へ送り、フィルムを調製した。実施例EVOHペレット1~27及び比較例EVOHペレット1~5により形成された各フィルムの厚さは20μmであった。押出機の温度は220℃に設定し、金型(即ちTダイ)の温度は230℃に設定した。スクリューの回転数は7rpm(rotations/minutes)とした。 【実施例4】 【0044】 実施例EVOHペレット1~27及び比較例EVOHペレット1~5の評価を行い、これらのEVOHペレット及びそれらにより形成されたフィルムの性質を判断した。上述の通り、実施例2に記載の方法と類似の方法に基づき、実施例EVOHペレット1~27を調製した。但し、EVOHペレット1~27の調製方法は、調製するEVOHペレットについて、異なるエチレン含有量、異なるフッ素ポリマー及び異なるフッ素ポリマー含有量を有するという面で異なっている。比較例EVOHペレット1~5についても、実施例2に記載したのと類似の方法に基づいて調製した。 【0045】 下記の表2は、実施例EVOHペレット1~27及び比較例EVOHペレット1~5の幾つかの属性、即ちEVACのエチレン含有量、EVOHペレット中に含まれる特定のフッ素ポリマー及びフッ素ポリマー含有量に関する概要である。 【0046】 【表2】 [図:0001389414000003.jpg] 【0047】 特定の実施例EVOHペレットと、実施例EVOHペレットと同じ特徴を少なくとも1つ有する比較例EVOHペレットとを比較して、実施例EVOHペレット1~27の性能を評価した。例えば、表3では実施例EVOHペレット1~5と比較例EVOHペレット1~3の比較が提供されており、これらのEVOHペレットの調製にはいずれもエチレン含有量29mole%のEVACが使用されている。また、表3には実施例EVOH6~10と比較例EVOHペレット4及び5の比較が提供されており、これらのEVOHペレットの調製にはいずれもエチレン含有量44mole%のEVACが使用されている。 【0048】 【表3】 [図:0001389414000004.jpg] 【0049】 実施例EVOHペレット1~10中の微粒子と比較例EVOHペレット1~5中の微粒子(あれば)の分散度を評価するために、実施例EVOHペレット1~10及び比較例EVOHペレット1~5から種類毎に1つのEVOHペレットを取り、厚さ0.5mmの試料にカットした。次に、LEICA DM2700M光学顕微鏡(Leica Microsystems)、CCDカメラ(例えばLeica Microsystems製のもの)を使用して、各EVOHペレット試料のカット面を評価し、ソフトウェア(例えばLAS V4.11のソフトウェア)を使用して分析し、各含フッ素微粒子の断面積を測定した。EVOHペレット中に粒径が20μmより大きい微粒子が1つ以上ある場合、又は微粒子が形成されていない場合は「X」で表し、EVOHペレットの微粒子が凝集しておらず、優れた分散性が示されている場合は「O」で表した。 【0050】 JSM-6390走査電子顕微鏡(JEOL USA,INC.製)を使用してフッ素含有量を測定した。電圧は15KVに設定し、作動距離は15mmとした。オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instrument)社のINCA 7582型を使用して、エネルギー分散分光分析を行った。走査電子顕微鏡のスポットサイズを調節して、エネルギー分散分光の不感時間を35%未満にした。エネルギー分散分光分析の取得率は1Kcpsに設定した。走査電子顕微鏡とエネルギー分散分光から得られた測定結果を使用し、炭素のkα0.2774keV、酸素のkα0.5249keV及びフッ素のkα0.6768keVの元素信号ピーク値に従い、フッ素含有量を炭素、酸素及びフッ素の総含有量に基づき重量パーセント濃度(wt%)で計算した。また、エネルギー分散分光分析過程では、走査電子顕微鏡のターゲットを微粒子にして、測定されるフッ素含有量が主に微粒子中のフッ素を反映するようにさせた。 【0051】 実施例EVOHペレット1~10は、いずれも優れた含フッ素微粒子の分散性及び本明細書に記載の所望範囲の微粒子サイズを示していたが、比較例1~5は分散性がやや劣り、且つ微粒子(存在する場合)のサイズは所望範囲を超えていた。表3は、本明細書に記載の量に従ってフッ素ポリマーを添加した場合に、優れた微粒子分散性及び所望する微粒子サイズを有するEVOHペレットの生成がある程度促進されることを示している。例えば、比較例EVOHペレット3は、本明細書に記載の所望範囲に適合する2つの融点温度を有しており、且つ実施例EVOHペレット1~5と同じエチレン含有量を有するEVACにより調製されているが、比較例EVOHペレット3は微粒子分散性に優れず、ひどく凝集しており、微粒子のサイズは約40μmにまで達していた。また、例えば比較例EVOH5は、実施例EVOHペレット6~10と同じエチレン含有量及びフッ素ポリマーを有するEVACにより調製されているが、比較例EVOHペレット5のフッ素ポリマー含有量は本明細書に記載の所望範囲を超えており、含フッ素微粒子の分散性に優れず、微粒子サイズが本明細書に記載の所望範囲を超えていた。また、比較例EVOHペレット1及び4はフッ素ポリマーを使用せずに調製されているため、微粒子は示されなかった。 【0052】 実施例3に記載したのと同じ方法に従って、実施例EVOHペレット1~10及び比較例EVOHペレット1~5それぞれによりフィルムを形成した。フィルムを評価して、フィルムの外観、ダイへの析出の状態、フィルムのくシャルピー衝撃強度及びフィルムの破断点伸びを判断した。表4は、実施例EVOHペレット1~10及び比較例EVOHペレット1~5により形成されたフィルムの特性の概要を示している。 【0053】 【表4】 [図:0001389414000005.jpg] 【0054】 実施例EVOHペレット1~10及び比較例EVOHペレット1~5により形成されたフィルムの外観については、1m2内において200μmより大きなサイズのフィッシュアイの数が3個未満であった場合は「O」で表し、1m2内において200μmより大きなサイズのフィッシュアイの数が3~10個であった場合は「△」で表し、1m2内において200μmより大きなサイズのフィッシュアイの数が10個より多い場合は「X」で表した。また、ダイ上に析出がない場合は「O」で表し、ダイ上に析出がある場合は「X」で表した。 【0055】 シャルピー衝撃強度については、ISO 179-1の方法を用いて測定を行う前に、試料を相対湿度50%±5%、温度23℃±2℃において16時間放置した。加えた衝撃エネルギーは7.5Jであり、衝撃方向はエッジワイズであり、試料の平均幅は10.06mmとし、試料の平均厚さは3.94mmとした。試験するノッチの深さは8.09mmとし、試験温度は23℃±2℃とし、破断タイプはCとした。 【0056】 破断点伸びについては、2012エディションの試験方法を使用し、試験速度は50mm/minとし、試料タイプは1Aとし、試料の平均厚さは3.99mmとした。 【0057】 実施例EVOHペレット1~10のフィルムは、ダイ上に析出が生じず、1m2内における200μmより大きなフィッシュアイは3個以下であった。実施例EVOHペレット1~10のフィルムのシャルピー衝撃強度は2.45~6.9KJ/m2であった。実施例EVOHペレット1~10により形成されたフィルムの破断点伸びは17.8%~24.3%であった。 【0058】 比較例EVOHペレット1、2及び4のフィルムは、ダイ上に析出が生じ、1m2内における200μmより大きなフィッシュアイは3~10個あった。実施例EVOHペレット1により形成されたフィルムと比較例EVOHペレット1により形成されたフィルムの比較からは、実施例フッ素ポリマーAの添加により機械的性質が改善されることが示された。また、比較例EVOHペレット1及び2のフィルムと実施例EVOHペレット1~4のフィルムの比較からは、本明細書に記載の所望のフッ素ポリマー含有量が含まれることにより、シャルピー衝撃強度と破断点伸びが大幅に改善されることが示された。比較例EVOHペレット3及び5のフィルムは、ダイ上に析出が生じなかったが、これらのフィルム中、1m2内における200μmより大きなサイズのフィッシュアイは10個より多かった。 【0059】 如何なる理論にも限定されないが、発明者は、比較例EVOHペレット3及び5中には大量のフッ素ポリマーが含まれているために過度の凝集現象が生じ、1m2内における200μmより大きなサイズのフィッシュアイの数に悪影響を与えていると確信している。しかし、微粒子のサイズが所望範囲内にコントロールされた場合、実施例EVOHペレットのフィルムは、シャルピー衝撃強度や破断点伸びなどのより優れた機械的性質を示すだけでなく、より優れた加工性やフィルム性質も示すようになる。」 ・「【0076】 操作の実施例中又は他の指示する場所を除き、成分及び/又は反応条件の量を示す全ての数字は、全ての場合においていずれも「約」という用語を用いて修飾することができ、示した数字の±5%以内であるという意味である。本明細書で使用する「基本的に含まない」又は「実質的に含まない」という用語は、特定の特性が約2%未満であることを意味する。本明細書中に明確に記載されている全ての要素又は特性は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。」 (4)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0006】によると、本件特許発明1ないし16が解決しようとする課題は、「ダイの材料析出を改善し、スクリューに粘着する問題を低減でき、それによって形成されたフィルムの強度及び可塑性などを改善するといった優位性を提供すること」(以下、「発明の課題」という。)である。 他方、上記(3)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の【0017】ないし【0024】には、本件特許発明1ないし16の各発明特定事項について具体的に記載されている。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0020】には、「EVOHペレット100の断面上で評価されるすべての含フッ素微粒子110の粒径はいずれも20μm以下」であること、「粒径が所望の範囲内にあるか否かを左右する例示的な要素には、(a)フッ素ポリマーの量、(b)EVOHのエチレン含有量、(c)フッ素ポリマーのタイプ、(d)押出機中の温度、及び(e)スクリューの回転速度が含まれ得る」こと、及び「EVOHペレットに所望の粒径範囲内の含フッ素微粒子が含有されてさえいれば、その加工性及び機械的性質を向上させることができる」ことが記載されている。 特に、本件特許の発明の詳細な説明の【0023】には、「部分的に混和性(且つ部分的に不混和性)であるフッ素ポリマーを使用し、且つ含フッ素微粒子110を含有したEVOHペレット100を調製することにより、一部のフッ素ポリマーが押出機の内表面において分離し、コーティング層120が形成される」こと、及び「押出機の内壁をコーティングしたフッ化ポリマー層が押出機を流れるEVOH樹脂を保護するため、EVOHペレットの押し出し工程を高温化で行ってもEVOHフィルムに変色が生じないようにさせるのに有利である」ことが記載されている。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0025】ないし【0059】において、本件特許発明1に係る実施例EVOHペレット1ないし10は、ダイ上に析出が生じず、1m2内における200μmより大きなフィッシュアイは3個以下であり、実施例EVOHペレット1ないし10のフィルムのシャルピー衝撃強度は2.45~6.9KJ/m2であり、フィルムの破断点伸びは17.8%~24.3%であったのに対し、含フッ素微粒子が示されていない比較例EVOHペレット1、2及び4は、ダイ上に析出が生じ、1m2内における200μmより大きなフィッシュアイは3~10個あったこと、並びに、粒径が20μmより大きい微粒子が1つ以上ある比較例EVOHペレット3及び5は、ダイ上に析出が生じなかったが、1m2内における200μmより大きなサイズのフィッシュアイは10個より多かったことを確認している。 そうすると、上記記載から、当業者は、「エチレン-ビニルアルコール共重合体と、複数の含フッ素微粒子と、を含み、第1融点温度及び第2融点温度の少なくとも2つの融点温度をさらに含み、前記第1融点温度は約100℃~約140℃であり、各前記含フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満であり、前記含フッ素微粒子はフッ化ポリマーを含」む「エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット」とすることで、発明の課題が解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1は上記発明の課題を解決できると認識できる「ペレット」であり、本件特許発明2ないし11及び15は上記発明の課題を解決できると認識できる「ペレット」をさらに限定したものであり、本件特許発明12ないし14及び16は上記発明の課題を解決できると認識できる「ペレット」から形成される「フィルム」に関するものである。 よって、本件特許発明1ないし16に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、上記第3 2における特許異議申立人の主張について検討する。 本件特許発明1における「各前記含フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満」の特定事項は、本件特許の発明の詳細な説明の【0020】には、「EVOHペレット100の断面上で評価されるすべての含フッ素微粒子110の粒径はいずれも20μm以下であ」ることが記載され、同【0049】には、「EVOHペレット中に粒径が20μmより大きい微粒子が1つ以上ある場合、又は微粒子が形成されていない場合は「X」で表」すことが記載されていることを勘案すれば、粒径20μm以上の粒径の含フッ素微粒子の粒径を全く含まないことは明らかであり、よって、比較例EVOHペレット3及び5は、粒径範囲が0.6~40μmであることから、本件特許発明1に含まれないことは明らかである。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (5)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。 2 申立理由3(明確性)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 本件特許の請求項1ないし16の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件特許の明細書の記載及び図面とも整合する。 したがって、本件特許発明1ないし16に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)特許異議申立人の上記第3 3の主張について ア 第3 3(1)について 特許異議申立人は、本件特許発明1ないし5、8ないし11及び15における「約」という記載は、発明の範囲を不明確にするものである旨主張するが、本件特許の発明の詳細な説明の【0076】には、「操作の実施例中又は他の指示する場所を除き、成分及び/又は反応条件の量を示す全ての数字は、全ての場合においていずれも「約」という用語を用いて修飾することができ、示した数字の±5%以内であるという意味である。」と記載されていることから、「約」という語が付されたことによって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。 イ 第3 3(2)について 本件特許発明12における「請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体」及び本件特許発明16における「請求項15に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体」の特定事項は、本件特許の発明の詳細な説明の【0011】における「上述のEVOHペレットにより形成されたフィルムは、」の記載、同【0024】における「別の態様では、本発明はEVOH樹脂又はそのEVOHペレット100により形成されたEVOHフィルムを提供する。」の記載、含フッ素微粒子を含有していない比較例EVOHペレット1、2及び4が、本件特許に包含されない比較例態様であることを勘案すれば、それぞれ、「請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体」ペレットにより形成されたもの、及び「請求項15に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体」ペレットにより形成されたものであることは明らかであるから、上記特定事項により、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 ウ 第3 3(3)について 上記(4)で述べたとおり、本件特許発明1における「各前記含フッ素微粒子の粒径は直径又は主軸長さが20μm未満」の特定事項は、粒径20μm以上の粒径の含フッ素微粒子の粒径を全く含まないことは明らかであり、本件特許発明8における「前記含フッ素微粒子の直径又は主軸長さは約1.0~約19μmである」、及び本件特許発明9における「前記含フッ素微粒子の直径又は主軸長さは約1.2~約16μmである」との特定事項についても、当該粒径範囲外の含フッ素微粒子を全く含まないことは明らかであるから、上記特定事項により、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記各主張は採用できない。 (4)申立理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3によっては、取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700332

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