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特許異議申立

2025-701034

酸化物半導体スパッタリング用ターゲット及びこれを利用した薄膜トランジスターの製造方法

審判番号
2025-701034
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-094923
登録番号
7705366
請求日
2025年10月30日
審決日
2026年03月02日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ケイブイマテリアルズ株式会社
  • 【権利者代理人】三好 秀和
  • 【権利者代理人】原 裕子
  • 【権利者代理人】大渕 一志
  • 【権利者代理人】加藤 澄恵
  • 【異議申立人】後藤 麻衣子
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 綿引 隆
  • 審判官 今井 聖和
分類
P1651.113-Y (H10P) / P1651.121-Y (H10P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7705366号発明「酸化物半導体スパッタリング用ターゲット及びこれを利用した薄膜トランジスターの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7705366号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許7705366号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年 6月13日の出願(パリ条約による優先権主張2021年6月23日(KR)韓国)であって、令和7年7月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、同年10月30日に特許異議申立人 後藤 麻衣子(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 薄膜トランジスターのアクティブ層を蒸着させるためのスパッタリング工程に使用されるスパッタリング用ターゲットであって、In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、 酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含み、(In+Sn+Ga+Zn)に対してInが60~80重量%、Snが0.5~8重量%、Gaが5~15重量%及びZnが10~30重量%である、酸化物半導体スパッタリング用ターゲット。 【請求項2】 (In+Sn+Ga+Zn)に対してInが65~75重量%、Snが1~5重量%、Gaが7~13重量%及びZnが10~20重量%である、請求項1に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲット。 【請求項3】 Inに対するSnの重量比が0.03~0.15である、請求項1に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲット。 【請求項4】 (In+Sn+Ga+Zn)に対してGaとZnの合計含量が20~40重量%である、請求項1に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲット。 【請求項5】 (Ga+Zn)に対するGaの重量比が0.6以下である、請求項1に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲット。 【請求項6】 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを利用してアクティブ層を蒸着することを含む、薄膜トランジスターの製造方法。 【請求項7】 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを利用してアクティブ層を蒸着すること、及び 前記アクティブ層を蒸着した後に、前記アクティブ層を200~400℃で熱処理することを含む、薄膜トランジスターの製造方法。 【請求項8】 液晶ディスプレイ装置、または有機発光ディスプレイ装置に備えられる薄膜トランジスターを製造する方法であって、 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを利用してアクティブ層を蒸着することを含む、薄膜トランジスターの製造方法。」 第3 申立理由の概要 1 異議申立人の提出した証拠 異議申立人は、次の甲第1号証(以下、「甲1」という。)を証拠として提出している。 甲第1号証(甲1):特開2020-205404号公報 2 特許異議の申立理由 異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、以下のとおりである。 (1) 申立理由1(新規性) 本件発明1、3~8は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(進歩性) 本件発明1~8は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第4 異議申立人の提出した証拠の記載 1 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、酸化物半導体薄膜及びそれを用いた薄膜トランジスタ、並びにそれらを形成するためのスパッタリングターゲットに関する。 【背景技術】 【0002】 アモルファス酸化物半導体は、汎用のアモルファスシリコンに比べて高いキャリア移動度を有する。更に、アモルファス酸化物半導体は、光学バンドギャップが大きく、また、低温で成膜することができる。そのため、アモルファス酸化物半導体は、薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))を構成する酸化物半導体薄膜として、大型化、高解像度及び高速駆動が要求される次世代ディスプレイ、並びに耐熱性の低い樹脂基板等への適用が期待されている。」 「【発明の効果】 【0016】 本発明の実施形態により、高い電界効果移動度を有し、且つチャネルサイズの変化に対するドレイン電流の変化の線形性が高い薄膜トランジスタを作製することができると共に、耐エッチング性が高い酸化物半導体薄膜及びそれを用いた薄膜トランジスタ、並びにそれらを形成するためのスパッタリングターゲットを提供することができる。」 「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0042】 2.酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)及び薄膜トランジスタの製造方法 本発明の実施形態に係る酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)は、その製造方法は特に限定されず、従来と同様の方法及び条件で製造することができ、例えば、スパッタリング法等により製造することができる。 ・・・ 【0045】 酸化物半導体薄膜を、アモルファス構造、又は少なくとも一部が結晶化されたアモルファス構造とする場合、例えば、ガス圧を1~5mTorrの範囲に制御してスパッタリング法で酸化物半導体薄膜を形成すると共に、保護膜を形成した後、200℃以上の温度で熱処理してよい。 【0046】 3.スパッタリングターゲット 上述のように、本発明の実施形態に係る酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)は、その製造方法は特に限定されないが、スパッタリング法により製造する場合、酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)と同じ金属元素を同じ原子数比で含む、本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。これにより、スパッタリングターゲットと酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)との間の組成のズレが少なく、所望の成分組成の酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)を形成することができる。 【0047】 具体的には、本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットは、本発明の実施形態に係る酸化物半導体薄膜、又は本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタに含まれる酸化物半導体薄膜を形成するためのスパッタリングターゲットであり、 Inと、Gaと、Znと、Snとを含有し、 In、Ga、Zn及びSnの含有量の合計に対して、In含有量の割合が45~65原子%、Ga含有量の割合が5~16原子%、Zn含有量の割合が10~40原子%、Sn含有量の割合が3~10原子%である。 【0048】 本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、In、Ga、Zn及びSnの原子数比、並びにSn含有量に対するZn含有量の割合(Sn原子数比に対するZn原子数比の割合)は、所望の特性を有する酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)が得られるように、酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)について上述したものと同じ範囲で好ましく制御してよい。 【0049】 本発明の1つの実施形態において、スパッタリングターゲットは、Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなる。不可避的不純物は、原料、資材又は製造設備等の状況によって持ち込まれ得る。不可避的不純物としては、例えば、Al、Pb、Si、Fe、Ni、Ti、Mg、Cr及びZr等が挙げられる。不可避的不純物の含有量は、酸化物半導体薄膜の質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは500質量ppm以下である。」 「【実施例】 【0051】 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述及び後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。 ・・・ 【0053】 ガラス製の基板1(イーグル社製 商品名Eagle2000、直径4インチ、厚さ0.7mm)上に、ゲート電極2として厚さ100nmのMo膜を成膜し、その上にゲート絶縁膜3として、プラズマCVD法により、厚さ250nmの酸化シリコン(SiOx)膜を以下の条件で成膜した。 ・・・ 【0055】 次いで、スパッタリングターゲットを用いて、ゲート絶縁膜3上に、表1に記載の実施例1の酸化物半導体層4(In-Ga-Zn-Sn-O膜)を以下の条件で40nmの膜厚で成膜した。 【0056】 (酸化物半導体層の成膜条件) 成膜法:DCスパッタリング法 装置:株式会社アルバック製 CS200 成膜温度:室温 ガス圧:1mTorr キャリアガス:Ar 酸素分圧:100×O2/(Ar+O2)=4体積% 成膜パワー密度:2.55W/cm2 ・・・ 【0061】 更に、保護膜6として、厚さ100nmのSiOx膜と厚さ150nmのSiNx膜とを積層させた積層膜(合計の膜厚が250nm)をプラズマCVD法で形成した。SiOx膜の形成にはSiH4、N2及びN2Oの混合ガスを用い、SiNx膜の形成にはSiH4、N2及びNH3の混合ガスを用いた。SiOx膜及びSiNx膜の成膜条件は下記のとおりである。 ・・・ 【0063】 次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、保護膜6にトランジスタ特性評価用プロービングのためのコンタクトホールを形成した。その後、ポストアニールとして、窒素雰囲気で250℃、30分の熱処理を行うことで、薄膜トランジスタを得た。 ・・・ 【0067】 2.電界効果移動度、ドレイン電流IdとチャネルサイズW/Lとの線形性の評価 表1に示す組成を有する酸化物半導体層4を有する薄膜トランジスタを用いて、ドレイン電流(Id)-ゲート電圧(Vg)特性を測定した。具体的には、Id-Vg特性は、ゲート電圧、ソース・ドレイン電極の電圧を以下のように設定し、プローバー及び半導体パラメータアナライザ(Keithley 4200SCS)を用いて測定を行った。 ・・・ 【0073】 【表1】 [図:0001434190000001.jpg] 」 2 甲1発明 (1) 上記1の【0053】の「ゲート電極2として厚さ100nmのMo膜を成膜し、その上にゲート絶縁膜3として、プラズマCVD法により、厚さ250nmの酸化シリコン(SiOx)膜を以下の条件で成膜した。」、【0055】の「スパッタリングターゲットを用いて、ゲート絶縁膜3上に、表1に記載の実施例1の酸化物半導体層4(In-Ga-Zn-Sn-O膜)を以下の条件で40nmの膜厚で成膜した。」、【0056】の「(酸化物半導体層の成膜条件)」「成膜法:DCスパッタリング法」、及び、【0067】の「表1に示す組成を有する酸化物半導体層4を有する薄膜トランジスタ」との記載によれば、甲1には、薄膜トランジスタが有する、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁膜3上の酸化物半導体4を、DCスパッタリング法により成膜するためのスパッタリングターゲットが記載されているといえる。 (2) また、上記1の【0055】の「スパッタリングターゲットを用いて、ゲート絶縁膜3上に、表1に記載の実施例1の酸化物半導体層4(In-Ga-Zn-Sn-O膜)を以下の条件で40nmの膜厚で成膜した。」との記載、及び、【0073】の【表1】の記載によれば、スパッタリングターゲットを用いて成膜された、実施例1の酸化物半導体層4の組成は、Inが50.3(原子%)、Snが6.34(原子%)、Gaが10.1(原子%)、Znが33.2(原子%)であるといえる。 (3) また、上記(2)及び上記1の【0046】の「酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)と同じ金属元素を同じ原子数比で含む、本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。これにより、スパッタリングターゲットと酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)との間の組成のズレが少なく、所望の成分組成の酸化物半導体薄膜(酸化物半導体層)を形成することができる。」、及び、【0049】の「スパッタリングターゲットは、Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなる」との記載によれば、上記(1)のスパッタリングターゲットは、Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなるものであって、酸化物半導体層4と同じ金属元素を同じ原子数比で含み、スパッタリングターゲットと酸化物半導体層との間の組成のズレが少なく、所望の成分組成の酸化物半導体層を形成することができるものであるといえる。 (4) 上記(1)~(3)によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「薄膜トランジスタが有する、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁膜3上の酸化物半導体層4を、DCスパッタリング法により成膜するためのスパッタリングターゲットであって、 スパッタリングターゲットは、Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなるものであって、酸化物半導体層4と同じ金属元素を同じ原子数比で含み、スパッタリングターゲットと酸化物半導体層との間の組成のズレが少なく、所望の成分組成の酸化物半導体層を形成することができるものであり、 スパッタリングターゲットを用いて成膜された、酸化物半導体層4の組成は、Inが50.3(原子%)、Snが6.34(原子%)、Gaが10.1(原子%)、Znが33.2(原子%)である、 スパッタリングターゲット。」 第5 当審の判断 1 本件発明1 (1) 本件発明1と甲1発明との対比 ア 本件発明1の「薄膜トランジスターのアクティブ層」とは、ゲート絶縁膜を介してゲート電極と対向し、チャネルが形成される領域を有するものであるから、甲1発明の「薄膜トランジスタが有する、ゲート電極2上に形成されたゲート絶縁膜3上の酸化物半導体4」は、本件発明1の「薄膜トランジスターのアクティブ層」に相当する。 また、甲1発明の「酸化物半導体4を、DCスパッタリング法により成膜する」工程は、本件発明1の「アクティブ層を蒸着させるためのスパッタリング工程」に相当する。 そうすると、甲1発明の「薄膜トランジスタが有する、ゲート絶縁膜3上の酸化物半導体4を、DCスパッタリング法により成膜するためのスパッタリングターゲット」は、本件発明1の「薄膜トランジスターのアクティブ層を蒸着させるためのスパッタリング工程に使用されるスパッタリング用ターゲット」に相当する。 イ 本件発明1の「In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含」むスパッタリング用ターゲットと、甲1発明の「Inと、Gaと、Znと、Snとを含有」するスパッタリングターゲットとは、「In、Sn、Ga、Znの組成を基盤とする物質を含」むスパッタリング用ターゲットである点で共通する。 ウ 本件発明1の「(In+Sn+Ga+Zn)に対してInが60~80重量%、Snが0.5~8重量%、Gaが5~15重量%及びZnが10~30重量%である、酸化物半導体スパッタリング用ターゲット」と、甲1発明の「薄膜トランジスタが有する、ゲート絶縁膜3上の酸化物半導体4を、DCスパッタリング法により成膜するためのスパッタリングターゲット」とは、「酸化物半導体スパッタリング用ターゲット」といえる点で共通する。 以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。 [一致点] 薄膜トランジスターのアクティブ層を蒸着させるためのスパッタリング工程に使用されるスパッタリング用ターゲットであって、In、Sn、Ga、Znの組成を基盤とする物質を含む、 酸化物半導体スパッタリング用ターゲット。 [相違点] [相違点1] 本件発明1は、「In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含」むのに対し、甲1発明は、「Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなるものであって、酸化物半導体層4と同じ金属元素を同じ原子数比で含み、スパッタリングターゲットと酸化物半導体層との間の組成のズレが少なく、所望の成分組成の酸化物半導体層を形成することができるものであ」る点。 [相違点2] 本件発明1は、「(In+Sn+Ga+Zn)に対してInが60~80重量%、Snが0.5~8重量%、Gaが5~15重量%及びZnが10~30重量%である」のに対し、甲1発明は、そのような構成となっているのか明らかでない点。 (2) 申立理由1(新規性)についての判断 甲1発明の「スパッタリングターゲット」は、「Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなるものであ」って、「O」を含むとはされていないから、「In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含」むものではない。 したがって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。 (3) 申立理由2(進歩性)についての判断 甲1には、「スパッタリングターゲット」を、「In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含」むものとすることは記載も示唆もされていない。 また、甲1発明は、「Inと、Gaと、Znと、Snと、不可避的不純物とからなるものであって、酸化物半導体層4と同じ金属元素を同じ原子数比で含み、スパッタリングターゲットと酸化物半導体層との間の組成のズレが少なく、所望の成分組成の酸化物半導体層を形成することができるものであ」り、In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含むものとする必要がないから、甲1発明を、「In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含」むものとする動機付けはない。 したがって、甲1発明において、相違点1の構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 (4) 異議申立人の主張について 異議申立人は、(i)所望の特性を有する酸化物半導体薄膜を得るには、スパッタリングターゲットにおいて酸素を含めて同じ範囲で制御する必要性があることは技術常識であること、(ii)甲1の【0056】に記載されている、酸化物半導体層の成膜条件としての4体積%との酸素分圧では、酸素が不足していることが明らかであるから、甲1のスパッタリングターゲットは酸素を含んでいる蓋然性が高いこと、(iii)In、Ga、Zn及びSnはいずれも低融点金属であるため、スパッタリングターゲットの形状維持や加工性に難が生じることが技術常識であるから、甲1のスパッタリングターゲットは、In、Ga、Zn及びSnを酸化物の形態で含んでいる蓋然性が高いことから、甲1発明では、スパッタリングターゲットがO、特に酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含んでいるに等しく、本件発明1は、新規性及び進歩性を有しない旨主張する。 しかしながら、異議申立人は、上述の技術常識や、酸素が不足していることが明らかであるということに関する証拠を何ら提示していないから、異議申立人の主張は採用の限りでない。 そして、甲1発明において、In、Sn、Ga、Zn及びOの組成を基盤とする物質を含み、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛及び酸化インジウムを含むものとする必要がないことは、上記(3)のとおりである。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 2 本件発明2~8 上記第2のとおり、本件発明2~8は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有している。 そうすると、本件発明3~8と甲1発明を対比すると、少なくとも、上記相違点1の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明3~8も、甲1発明であるとはいえない。 また、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~8も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 小括 以上によれば、本件発明1、3~8は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明1~8は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)はいずれも理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701034

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