特許異議申立
2022-700319
セル、モジュールおよびモジュール収容装置
- 審判番号
- 2022-700319
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-528925
- 登録番号
- 6960561
- 請求日
- 2022年04月15日
- 審決日
- 2024年04月22日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】京セラ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】井上 敬也
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1651.537-YAA(H01M) / P1651.536-YAA(H01M) / P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6960561号発明「セル、モジュールおよびモジュール収容装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6960561号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第6960561号の請求項1~4、6、7、9、10に係る特許を維持する。
特許第6960561号の請求項5、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6960561号の請求項1~10に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2021年(令和3年)2月4日(優先権主張 令和2年4月9日)を国際出願日とする出願であって、令和3年10月13日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行された。
本件は、令和4年4月15日差出で特許異議申立人井上敬也(以下、「申立人」という。)より請求項1~10(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件であって、その後、同年8月15日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年10月18日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、同年12月6日差出で申立人より意見書が提出され、令和5年2月13日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、同年4月18日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、当該訂正請求に対して、同年5月31日付けで訂正拒絶理由が通知され、その後、同年9月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、同年12月4日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、令和6年2月8日差出で申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 請求の趣旨、及び、訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6960561号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、本件訂正請求がなされたため、令和4年10月18日になされた訂正請求、及び、令和5年4月18日になされた訂正請求はいずれも取り下げられたものとみなす。また、訂正箇所には、当審で下線を付した。
(1)訂正事項1
請求項1について、本件訂正前の
「前記固体電解質層または前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、
前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きい」を
「前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、
前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きく、
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでおり、
前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」と訂正する。
すなわち、訂正事項1は、次の訂正事項からなるものである。
ア 訂正事項1-1
本件訂正前の「前記固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」を「前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、」とする訂正事項。
イ 訂正事項1-2
「前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでおり、前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」を付加する訂正事項。
請求項1を直接または間接的に引用する請求項4、6、7、9、10も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項2について、本件訂正前の
「前記固体電解質層または前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、
前記空気極側からみた場合に、前記固体電解質層は、表面に前記中間層が位置しない第3部位を少なくとも2辺の近傍に有する」を
「前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2の部位と、を有し、
前記空気極側からみた場合に、前記固体電解質層は、表面に前記中間層が位置しない第3部位を少なくとも2辺の近傍に有し、
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでおり、
前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」と訂正する。
すなわち、訂正事項2は、次の訂正事項からなるものである。
ア 訂正事項2-1
本件訂正前の「前記固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」を「前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、」とする訂正事項。
イ 訂正事項2-2
「前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでおり、前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」を付加する訂正事項。
請求項2を直接または間接的に引用する請求項4、6、7、9、10も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項3について、本件訂正前の
「前記固体電解質層または前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、
前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」を
「前記固体電解質層は、
前記中間層との界面近傍に位置する第1部位と、
前記中間層との界面近傍かつ前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、
前記中間層との界面近傍において、前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」と訂正する。
すなわち、訂正事項3は、次の訂正事項からなるものである。
ア 訂正事項3-1
本件訂正前の「第1の部位」及び「第2の部位」について、「中間層との界面近傍」に位置することを特定するとともに、本件訂正前の「前記固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」を「前記固体電解質層は、」「第1部位と、」「前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」とする訂正事項。
イ 訂正事項3-2
本件訂正前の「素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」との事項を有する箇所を、「中間層との界面近傍」であることを特定する訂正事項。
請求項3を直接または間接的に引用する請求項4、6、7、9、10も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項5を削除する。
(5)訂正事項5
請求項6について、本件訂正前の「請求項1~5のいずれか一つに記載のセル。」を「請求項3または4に記載のセル。」と訂正する。
請求項6を引用する請求項7、9、10も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項8を削除する。
(7)訂正事項7
請求項9について、本件訂正前の「請求項1~8のいずれか1つに記載のセル」を「請求項1~4、6、7のいずれか1つに記載のセル」と訂正する。
請求項9を引用する請求項10も同様に訂正する。
2 当審の判断
2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無について
(1)訂正事項1について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1の「前記固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有」する事項において、「前記固体電解質層または前記中間層」との選択肢を「前記中間層」と特定するとともに、「前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する」との選択肢を「前記第1部位よりも小さい空隙率を有する」と特定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した範囲内の訂正である。
また、訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項6及び7を根拠として、本件訂正前の請求項1の発明特定事項である「中間層」について、「Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んで」いる事項、及び、「Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」事項を特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2-1、訂正事項2-2は、それぞれ訂正事項1-1、訂正事項1-2と同様の訂正であるから、上記(1)で検討した理由と同様に、いずれも「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
よって、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3-1は、願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0080】の「素子部3の外周部1aにおける固体電解質層6の第3領域6aの空隙率が、素子部3の中央部1bにおける固体電解質層6の第3領域6aの空隙率よりも大きい」との記載を根拠として、本件訂正前の請求項3の「前記固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有」する事項において、「前記固体電解質層または前記中間層」との選択肢を「前記固体電解質層」と特定し、「前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近く」との選択肢を「前記素子部の中央部の近く」と特定し、「前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性」との選択肢を「前記第1部位よりも低い緻密性」と特定するとともに、本件訂正前の請求項3の「固体電解質層または前記中間層」が「有し」ていた「第1の部位」及び「第2の部位」のうち、「固体電解質層」が有していた「第1の部位」及び「第2の部位」について、「中間層との界面近傍」にあることを特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
また、訂正事項3-2は、本件明細書【0080】の「素子部3の外周部1aにおける固体電解質層6の第3領域6aが、素子部3の中央部1bにおける固体電解質層6の第3領域6aよりも緻密である」との記載を根拠として、本件訂正前の請求項3の「素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」との箇所を、「中間層との界面近傍」であると特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
よって、訂正事項3は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項5を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項6について、訂正事項4により請求項5が削除されたことに伴い、引用する請求項から請求項5を省き、また、引用する請求項から請求項1、2を省いたものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項8を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項9について、訂正事項4、6により請求項5、8が削除されたことに伴い、引用する請求項から請求項5、8を省いたものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
2-2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項4~7、9、10は、請求項1~3を引用するものであって、請求項1~3の訂正に連動して訂正されるものであるし、本件訂正前の請求項8は、請求項3を引用するものであって、請求項3の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~10は一群の請求項である。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~10〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
2-3 独立特許要件について
本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1~7について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の要件は課されない。
2-4 訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正請求に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、及び、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~10〕についての訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
令和5年12月4日に特許権者が行った請求項1~10についての訂正は、上記第2で検討したとおり認められるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された、次の事項から特定されるとおりのものである(以下、請求項1~10に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。また、請求項1~10に係る発明をまとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え、
前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、
前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きく、
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでおり、
前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる
セル。
【請求項2】
燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え、
前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2の部位と、を有し、
前記空気極側からみた場合に、前記固体電解質層は、表面に前記中間層が位置しない第3部位を少なくとも2辺の近傍に有し、
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでおり、
前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる
セル。
【請求項3】
燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え、
前記固体電解質層は、
前記中間層との界面近傍に位置する第1部位と、
前記中間層との界面近傍かつ前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、
前記中間層との界面近傍において、前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である
セル。
【請求項4】
前記固体電解質層との界面近傍における前記中間層の空隙率は、前記空気極との界面近傍における前記中間層の空隙率よりも大きい
請求項1~3のいずれか一つに記載のセル。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでいる
請求項3または4に記載のセル。
【請求項7】
前記中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる
請求項6に記載のセル。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
請求項1~4、6、7のいずれか1つに記載のセルを複数備えるセルスタック装置と、
前記セルスタック装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。」
2 特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として次の甲第1~5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の申立理由1~3により、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2013-77542号公報
甲第2号証:特開2017-103244号公報
甲第3号証:特開2004-119161号公報
甲第4号証:特開2004-362913号公報
甲第5号証:神谷倫代他2名、「酸化セリウム中の酸素拡散」、Journal of the Ceramic Society of Japan、社団法人日本セラミックス協会、1998年10月1日、第106巻、p.1023-1026
(1)申立理由1(明確性)
本件特許の請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記ア、イの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 請求項1~3の「第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する」との記載は、選択肢が互いに類似の性質又は機能を有していない。
イ 請求項2の「固体電解質層は、表面に前記中間層が位置しない第3部位を少なくとも2辺の近傍に有する」との記載において、「2辺の近傍」とは、2辺からどの程度離れた位置までの部位を意味しているかが不明確である。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記ア、イの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 請求項1~3に係る発明の「固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有」するとの発明特定事項は、課題を解決し得ない選択肢を含むものである。
イ 請求項2に係る発明は、中間層が固体電解質との界面に緻密な膜を有することを前提としているにもかかわらず、この前提が請求項2に係る発明に特定されていない。
(3)申立理由3(進歩性)
請求項1~10に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲5に記載された技術事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 令和4年8月15日付けで通知された取消理由の概要
令和4年8月15日付けで通知された取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)本件特許の請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記ア~ウの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 請求項1~3の「第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する」との記載は、選択肢が互いに類似の性質又は機能を有していない(申立理由1のア)。
イ 請求項1、3の記載は、選択肢の選択方法によっては、相反する技術事項を含むこととなる(職権で通知)。
ウ 請求項5の「中間層の空隙率は、5(%)~30(%)の範囲である」との記載は、「中間層の空隙率」が中間層のどの部位の空隙率を意味するかが不明である(職権で通知)。
(2)請求項1~3に係る発明の「固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」との発明特定事項は、技術的意義が不明である。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~3及びそれらを引用する請求項4~10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないため、請求項1~10に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではないから、本件請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである(申立理由2のアを職権で条文変更)。
(3)本件特許の請求項2、4~6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず、また、本件特許の請求項9~10に係る発明は、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないから、請求項2、4~6、9~10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立理由3の一部及び申立理由3の一部を職権で主引例変更)。
4 令和5年2月13日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要
令和5年2月13日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
なお、本取消理由(決定の予告)は、上記第2で検討したとおり取り下げられたものとみなされた令和4年10月18日になされた訂正請求による訂正後の特許請求の範囲に対して、通知されたものである。
(1)本件特許の請求項1~4、6~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 請求項1の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きい」との記載、請求項2の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、」との記載、及び、請求項3の「固体電解質層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」との記載は、明確であるとはいえない(職権で通知)。
(2)本件特許の請求項1、6、9、10に係る発明は、甲2に記載された発明であるため、特許法第29条第1項第3号に該当し、もしくは、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず、さらに、本件特許の請求項4に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないから、請求項1、4、6、9、10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立理由3の一部を職権で主引例を変更するとともに条文も変更)。
5 令和5年9月29日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要
令和5年9月29日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
なお、令和5年4月18日になされた訂正請求に係る訂正は認められないので、本取消理由(決定の予告)は、願書に添付された特許請求の範囲に対して、通知されたものである。
(1)本件特許の請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が下記ア~エの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 請求項1の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きい」との記載、請求項2の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、」との記載、及び、請求項3の「固体電解質層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」との記載は、明確であるとはいえない(職権で通知)。
イ 請求項1~3の「第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する」との記載は、選択肢が互いに類似の性質又は機能を有していない(申立理由1のア)。
ウ 請求項1、3の記載は、選択肢の選択方法によっては、相反する技術事項を含むこととなる(職権で通知)。
エ 請求項5の「中間層の空隙率は、5(%)~30(%)の範囲である」との記載は、「中間層の空隙率」が中間層のどの部位の空隙率を意味するかが不明である(職権で通知)。
(2)請求項1~3に係る発明の「固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」との発明特定事項は、技術的意義が不明である。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~3及びそれらを引用する請求項4~10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないため、請求項1~10に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではないから、本件請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである(申立理由2のアを職権で条文変更)。
(3)本件特許の請求項2、4~6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許の請求項9~10に係る発明は、甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないから、同請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1、5、6、9、10に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、さらに、本件特許の請求項1、5、6、9、10に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、また、本件特許の請求項4に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立理由3の一部を採用、及び、申立理由3の一部を職権で主引例を変更するとともに条文も変更)。
6 当審の判断
当審では、次に示すとおり、上記2の特許異議申立理由及び上記3~5の取消理由によっては、本件訂正後の請求項1~4、6、7、9、10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
6-1 特許法第36条第6項第2号について
(1)どの位置の関係であるかについて(職権で通知した取消理由)
ア 請求項1には、「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きく、」と記載されている。
イ また、請求項2には、「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2の部位と、を有し、」と記載されている。
ウ さらに、請求項3には、「固体電解質層は、前記中間層との界面近傍に位置する第1部位と、前記中間層との界面近傍かつ前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、前記中間層との界面近傍において、前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」と記載されている。
エ ここで、上記アの記載は、次の事項5、7、9を、上記イの記載は、次の事項5、7をそれぞれ含むものである。
(事項5)
中間層は、第1部位と、第1部位よりも空気極の近くに位置し、第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有する。
(事項7)
中間層は、第1部位と、第1部位よりも素子部の中央部の近くに位置し、第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有する。
(事項9)
素子部の外周部における中間層の空隙率は、中央部における中間層の空隙率よりも大きい。
オ また、上記ウの記載は、次の事項4、10を含むものである。
(事項4)
固体電解質層は、中間層との界面近傍に位置する第1部位と、中間層との界面近傍かつ第1部位よりも素子部の中央部の近くに位置し、第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有する。
(事項10)
中間層との界面近傍において、素子部の外周部に位置する固体電解質層は、中央部に位置する固体電解質層よりも緻密である。
カ 以下、上記エ、オの事項4、5、7、9、10が、具体的にどの箇所の関係を特定したものであるかを検討し、これらの記載が明確であるか否かを検討する。
キ まず、事項5について検討するに、特許権者は、令和5年12月4日付けの意見書において、事項5は、次の参考図3において、位置P1及びP3を含む層全体における空隙率の平均と位置P2及びP4含む層全体における空隙率の平均との関係を規定するものであると主張している。
(参考図3)
[図:0001412264000001.jpg]
(P2とP4は「第1部位」を表し、P1とP3は「空気極の近くに位置する第2部位」を表す。)
ク 上記主張は、本件明細書(【0069】、【0070】)に記載された事項5の技術的意義、及び、本件明細書(特に、【0088】~【0090】)の空隙率の算出方法の記載等からみて、何ら矛盾はなく妥当なものと認められる。
ケ 次に事項7、9について検討するに、令和5年12月4日付けの意見書において、事項7、9は、次の参考図2において、位置Q1と位置Q2との関係や位置Q3と位置Q4との関係のように、外周部1aと中央部1bとの境界を挟んでほぼ線対称の2つの位置における空隙率の関係に限定した規定であると主張している。
(参考図2)
[図:0001412264000002.jpg]
(Q1とQ3は「第1部位」を表し、Q2とQ4は「(素子部の)中央部の近くに位置する第2部位」を表す。)
コ 上記主張は、本件明細書(【0073】)に記載された事項7、9の技術的意義、及び、本件明細書(特に、【0088】~【0090】)の空隙率の算出方法の記載等からみて、何ら矛盾はなく妥当なものと認められる。
サ 次に事項4、10について検討するに、令和5年12月4日付けの意見書において、事項4、10は、上記ケの参考図2において、位置Q1と位置Q2との関係や位置Q3と位置Q4との関係のように、外周部1aと中央部1bとの境界を挟んでほぼ線対称の2つの位置における空隙率の関係に限定した規定であると主張している。
シ 上記主張は、本件明細書(【0081】)に記載された事項4、10の技術的意義、及び、本件明細書(特に、【0088】~【0090】)の空隙率の算出方法の記載等からみて、何ら矛盾はなく妥当なものと認められる。
ス よって、請求項1~3及びそれを引用する請求項4、6、7、9、10の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
(2)「第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する」事項について(申立理由1のア)
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3には、「第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する」と相反する事項が選択肢で記載されていた。
イ しかしながら、請求項1~3において、本件訂正により、上記アの選択肢は選択肢のいずれかが削除されて、相反する事項が記載された選択肢はなくなった。
ウ よって、請求項1~3及びそれを引用する請求項4、6、7、9、10の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
(3)請求項1~3の選択肢について(職権で通知)
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3には、「固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」と記載されていた。
イ そして、上記アの記載は、3つの選択肢を含んでおり、これらの選択肢の選択方法によっては、互いに相反する事項を含むものであった。
ウ しかしながら、請求項1~3において、本件訂正により、上記アの記載は互いに相反する事項を含まないものとなった。
エ よって、請求項1~3及びそれを引用する請求項4、6、7、9、10の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
(4)「中間層の空隙率」について(職権で通知)
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項5には、「中間層の空隙率は、5(%)~30(%)の範囲である」と記載されていた。
イ しかしながら、本件訂正により、請求項5は削除された。
ウ よって、本取消理由は理由がなくなった。
(5)「2辺の近傍」について(申立理由1のイ)
ア 請求項2には、「空気極側からみた場合に、前記固体電解質層は、表面に前記中間層が位置しない第3部位を少なくとも2辺の近傍に有し、」と記載されている。
イ ここで、「近傍」とは、「近辺。付近。」(デジタル大辞林)を意味する用語であるから、上記アの「2辺の近傍」とは、少なくとも2辺の近辺や2辺付近を意味する。
ウ そうすると、上記アの記載は、「第3部位」が少なくとも2辺の近辺や2辺付近に存在すればよいことを特定するものであるから、「2辺の近傍」の範囲や「第3部位」の範囲が特定できなくても明確な記載といえる。
エ よって、請求項2及びそれを引用する請求項4、6、7、9、10の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
(6)申立人の主張について
ア 申立人は、令和6年2月8日差出の意見書において、上記(1)に関し、次の(ア)~(オ)の主張((ア)、(イ)は、第2頁第8行~第8頁第11行、(ウ)、(エ)は、第9頁第1行~第11頁第6行、(オ)は、第8頁第12~19行)をしている。
(ア)事項7、9において、素子部のうち、どの部分が「中央部」に該当し、どの部分が「外周部」に該当するのかについて、不明確である。
(イ)事項5、7において、中間層のうち、どの部分が「第1部位」に該当し、どの部分が「第2部位」に該当するのかについて、不明確である。
(ウ)事項4、10において、素子部のうち、どの部分が「中央部」に該当し、どの部分が「外周部」に該当するのかについて、不明確である。
(エ)事項4において、固体電解質層のうち、どの部分が「第1部位」に該当し、どの部分が「第2部位」に該当するのかについて、不明確である。
(オ)令和5年12月4日付けの意見書において、特許権者が主張している「本願技術の各種データの取得方法」は、本件明細書には何ら記載されておらず、当然に、本件の請求項にも反映されていないから、そのような後出しの説明を根拠として不備が解消した旨の主張は明らかに不当である。
イ まず、上記アの(ア)、(ウ)について検討する。
ウ 事項4、7は、いずれも、「第2部位」について、「第1部位よりも素子部の中央部の近くに位置」することを特定するものであって、第2部位が第1部位と比較して相対的に中央部近くに位置することを特定するものであるから、具体的に「中央部」の範囲を特定できなくても、事項4、7は明確である。
エ また、事項9、10について検討するに、本件明細書には、次の記載がある。
「【0056】
さらに、実施形態に係るセル1の素子部3は、外周部1aと中央部1bとを有する。外周部1aは、セル1を空気極8側からみた場合に、各辺の近傍に位置する領域であり、中央部1bは、セル1を空気極8側からみた場合に、外周部1aに囲まれる中央の領域である。
【0057】
外周部1aは、セル1を空気極8側からみた場合に、素子部3の輪郭の近傍、または空気極8の輪郭の近傍に位置する領域としてもよい。その場合、外周部1aは、素子部3または空気極8の輪郭を含む。外周部1aは、セル1における素子部3の輪郭の内側を含んでもよいし、素子部3の輪郭の外側を含んでもよい。
【0058】
図4に示すように、外周部1aは、素子部3において、長さ方向Lに沿った長辺からの距離が所定の距離X1以下であるとともに、幅方向Wに沿った短辺からの距離が所定の距離X2以下の領域である。図4は、実施形態に係る素子部3の外周部1aおよび中央部1bを説明するための図である。
【0059】
実施形態において、距離X1は、たとえば、素子部3の短辺の長さW1の25%である。また、距離X2は、たとえば、素子部3の長辺の長さL1の15%である。」
オ また、特許権者は、上記(1)のケの釈明をしている。
カ 上記ウより、外周部1aは、セル1を空気極8側からみた場合に、各辺の近傍に位置する領域であり、中央部1bは、セル1を空気極8側からみた場合に、外周部1aに囲まれる中央の領域であって、例えば、外周部は、長辺から15%以下、短辺から25%以下の領域である。
キ そして、上記(1)のケの釈明から、「外周部1aと中央部1bとの境界」が存在する、すなわち、外周部と中央部とは互いに接する領域であるといえる。
ク そうすると、上記オ、カより、外周部は、各辺の近傍に位置する領域であって、概ね長辺から15%以下、短辺から25%以下の領域であり、また、中央部は、外周部に囲まれた外周部に接する領域であることが理解できるから、事項4、7、9、10は明確である。
ケ 次に、上記アの(イ)、(エ)について検討する。
コ 事項4、7が明確であることは、上記ウで検討したとおりである。
サ また、事項5は、「第2部位」について、「第1部位よりも空気極の近くに位置」することを特定するものであって、第2部位が第1部位と比較して相対的に空気極の近くに位置することを特定するものであるから、具体的に「第1部位」及び「第2の部位」の範囲を特定できなくても、事項5は明確である。
シ 最後に、上記アの(オ)について検討する。
ス 上記(1)で検討したように、令和5年12月4日付けの意見書において、特許権者が主張している「本願技術の各種データの取得方法」は、本件発明の技術的意義、及び、本件明細書記載(【0088】~【0090】)の空隙率の算出方法に沿ったものである。
セ よって、申立人の主張は採用できない。
6-2 特許法第36条第4項第1号について
(1)請求項1~3の選択肢について(申立理由2のアを職権で条文変更)
ア 願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、「固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、」との発明特定事項を含むものであった。
イ そして、上記アの発明特定事項は、3つの選択肢を含んでおり、これらの選択肢の選択方法によっては、互いに相反する事項を含むものであった。
ウ しかしながら、請求項1~3において、本件訂正により、上記アの記載は互いに相反する事項を含まないものとなった。
エ そして、本件訂正後の請求項1、2の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有」する事項は、「中間層7における第1領域7aの空隙率を大きくすることにより、中間層7の第1領域7aを応力緩和層として機能させることができることから、固体電解質層6から中間層7が剥離し難くすることができる」(【0068】)、「中間層7における第2領域7bの空隙率を小さくすることにより、Srの拡散抑制層としての機能を維持することができる」(【0069】)、及び、「素子部3の外周部1aにおける中間層7の空隙率を大きくすることにより、中央部1bと比較して発電への寄与が小さい外周部1aの中間層7を、拡散抑制効果よりも応力緩和効果を重視して機能させることができる」(【0073】)という技術上の意義を有するものである。
オ また、本件訂正後の請求項3の「固体電解質層は、前記中間層との界面近傍に位置する第1部位と、前記中間層との界面近傍かつ前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有」する事項は、「固体電解質層6の剥離が生じやすい素子部3の外周部1aにおいて、第3領域6aを緻密にすることにより、固体電解質層6の強度を高めることができる。すなわち、実施形態では、外周部1aの固体電解質層6を緻密にすることにより、素子部3の外周部1aを起点として固体電解質層6が剥離し難くすることができる」(【0081】)という技術上の意義を有するものである。
カ よって、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1~3及びそれらを引用する請求項4、6、7、9、10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているから、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~4、6、7、9、10に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものである。
6-3 特許法第36条第6項第1号について
(1)課題を解決し得ない選択肢を含む点(申立理由2のア)
ア 本件発明の解決しようとする課題は、「燃料電池セルの耐久性を高めること」(【0012】)であると認められる。
イ 一方、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、「固体電解質層または前記中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率または前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有」するとの発明特定事項を含むものであり、当該発明特定事項は3つの選択肢を含むものであった。
ウ そして、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、その選択肢の組合せによっては、上記アの課題を解決し得ない発明を含むものであった。
エ しかしながら、本件訂正により、本件発明1、2は、上記イの発明特定事項が、「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有」するとの発明特定事項と訂正され、本件発明3は、上記イの発明特定事項が、「固体電解質層は、前記中間層との界面近傍に位置する第1部位と、前記中間層との界面近傍かつ前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有」するとの発明特定事項と訂正された。
オ そして、本件発明1、2は、本件明細書【0068】~【0070】に記載されているように、上記アの課題を解決し得るものとなり、また、本件発明3は、本件明細書【0081】~【0082】に記載されているように、上記アの課題を解決し得るものとなった。
カ よって、請求項1~3及びそれらを引用する請求項4、6、7、9、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(2)請求項2の中間層について(申立理由2のイ)
ア 本件発明の解決しようとする課題は、上記(1)のアのとおりである。
イ 一方、本件発明2は、「空気極側からみた場合に、前記固体電解質層は、表面に前記中間層が位置しない第3部位を少なくとも2辺の近傍に有」するとの発明特定事項を含むものである。
ウ そして、上記イの発明特定事項により、本件明細書【0092】~【0094】に記載されているように、本件発明2は、上記(1)のアの課題を解決し得るものである。
エ よって、請求項2及びそれを引用する請求項4、6、7、9、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(3)申立人の主張について
ア 上記(2)の特許異議申立理由について、申立人は、上記(2)のイの発明特定事項について、中間層が固体電解質との界面に緻密な膜を有している構成を前提とするものであるから、本件発明2は、課題を解決し得ない構成を含むものであると主張している(特許異議申立書第23頁第15行~第25頁第12行)。
イ しかしながら、本件発明2は、中間層が固体電解質との界面に緻密な膜を有する場合は、上記(2)で検討したとおり上記(1)のアの課題を解決するし、中間層が固体電解質との界面に緻密な膜を有さない場合は、本件明細書【0092】に記載されたクラックが生じにくくなることにより上記(1)のアの課題を解決するから、中間層が固体電解質との界面に緻密な膜を有しているか否かにかかわらず、上記(1)のアの課題を解決するものである。
ウ よって、申立人の主張は採用できない。
6-4 特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項について
6-4-1 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明
(1)甲1の記載事項
本件特許の優先日前に公開された甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極と、
空気極と、
ジルコニウムを含み、前記燃料層と前記空気極との間に設けられた電解質層と、
セリウムを含み、前記電解質層と前記空気極との間に設けられたバリア層と、
を備え、
前記バリア層は、ジルコニウム及びセリウムを含み、前記電解質層と接する中間層を有し、
前記中間層は、長径の短径に対するアスペクト比が2以上である棒状粒子を含んでいる、
燃料電池セル。」
「【請求項9】
前記バリア層は、前記空気極と接する緻密層を有し、
前記中間層の気孔率は、前記緻密層の気孔率よりも高い、
請求項1乃至8のいずれかに記載の燃料電池セル。」
「【0003】
ここで、電解質層と空気極との間に高抵抗層が形成されることを抑制するために、電解質層と空気極との間にバリア層を介挿させる手法が提案されている(特許文献1参照)。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電解質層とバリア層とは熱膨張係数及び/又は焼成収縮量が異なっているので、製造時及び/又は使用時における加熱によって電解質層とバリア層との間に熱応力が生じてしまう。その結果、電解質層とバリア層の界面付近に剥離が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、この問題点に鑑みてなされたものであり、電解質層とバリア層の界面付近における剥離の発生を抑制可能な燃料電池セルを提供することを目的とする。」
「【0011】
以下の実施形態では、燃料電池の一例として、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタック構造を有する固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)を挙げて説明する。具体的に、以下の実施形態では、いわゆる縦縞型燃料電池について説明するが、本発明は、いわゆる横縞型燃料電池にも適用可能である。
1.燃料電池10の概要
図1に示すように、燃料電池10は、燃料電池セル(単に「セル」と称される)1と、集電部材4とを備える。燃料電池10は、縦縞型燃料電池である。燃料電池10においては、複数のセル1が、集電部材4を介してy軸方向に重ねられる。つまり、燃料電池10は、スタックされた複数のセル1を備える。
2.セル1の概要
セル1はセラミックスの薄板である。セル1の厚みは、例えば30μm~300μmであり、セル1の直径は、例えば5mm~50mmである。セル1は、図1に示すように、燃料極11、バリア層13、空気極14、電解質層15を備える。」
「【0016】
バリア層13は、セリウムを含む。バリア層は、セリウムをセリア(酸化セリウム)として含んでもよい。具体的には、バリア層13の材料として、セリア及びセリアに固溶した希土類金属酸化物を含むセリア系材料が挙げられる。バリア層13は、セリア系材料を主成分として含むことができる。セリア系材料として、具体的には、GDC((Ce, Gd)O2:ガドリニウムドープセリア)、SDC((Ce, Sm)O2:サマリウムドープセリア)等が挙げられる。なお、GDC材料としては、例えば、平均粒径0.3μm~1.2μm、比表面積3~30m2/gのAGCセイミケミカル株式会社製のものを用いることができる。また、セリア系材料において、希土類金属酸化物:セリアのmol組成比は、5:95~20:80であってもよい。バリア層13は、セリア系材料の他に、添加剤を含んでいてもよい。バリア層13の厚みは、例えば40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
【0017】
ここで、バリア層13は、図1に示すように、中間層131と緻密層132とを有している。中間層131は、図1に示すように、気孔Pを有している。中間層131は、緻密層132よりも高い気孔率を有しており、製造時及び/又は使用時における加熱によって電解質層15とバリア層13との間に生じる熱応力を緩和する機能を有する。一方、緻密層132は、中間層131よりも低い気孔率を有しており、空気極14から電解質層15へのカチオンの拡散を抑制することで、高抵抗層の形成を抑制する機能を有する。」
「【0024】
(3-1.中間層131の構成)
中間層131は、図2及び図3に示すように、電解質層15と緻密層132とに接している。」
「【0026】
(3-2.緻密層132の構成)
緻密層132は、図2及び図3に示すように、中間層131と空気極14とに接している。」
「【0028】
なお、緻密層132の気孔率は、後述する中間層131の気孔率よりも低いことが好ましい。具体的には、緻密層132の気孔率は、10%以下であることが好ましい。緻密層132の気孔率は、後述する中間層131の気孔率と同様に算出される。」
「【0040】
また、中間層131の気孔率bは好ましくはb≦15%を満たし、気孔率bは好ましくは1%≦bを満たす。気孔率bは、空間率と言い換えられてもよい。気孔率bは、中間層131の総体積V1に対する空隙(気孔Pを含む)の体積V2の比(V2/V1)で表されるが、断面における中間層131の単位面積当たりの気孔Pの面積として表されてもよい。」
「【0093】
(3)上記実施形態において、バリア層13は、中間層131と緻密層132とを有することとしたが、これに限られるものではない。バリア層13は、中間層131のみを有していてもよい。すなわち、バリア層13の全体が棒状粒子Qによって構成されていてもよい。また、バリア層13は、中間層131と緻密層132との間において、両者とは特性の異なる層を有していてもよい。
【実施例】
【0094】
A.セル試料の作製
酸化ニッケル(NiO)、ジルコニア系材料(8YSZ)、及び造孔剤(PMMA)からなるセラミックグリーンシート(厚み100μm)を、300μmとなるように積層し、熱圧着(60℃、3MPa)にて一体化した。
【0095】
次に、平均粒径0.7um、比表面積6m2/gの8YSZ材料と、平均粒径0.6um、比表面積8m2/gのGDC材料とを準備した。
【0096】
次に、8YSZからなるセラミックグリーンシートと、GDCからなるセラミックグリーンシートとを、成形体上に順次積層して熱圧着した。こうして、燃料極、ジルコニア系材料層、セリア系材料層がこの順に積層された積層体を得た。
【0097】
得られた積層体を、1400℃で2時間、共焼成した。これによって、ジルコニア系材料層から電解質層15が形成され、セリア系材料層から緻密層132が形成されるとともに、電解質層15と緻密層132との間に中間層131が形成された。
【0098】
その後、バリア層13上に、空気極14としてLSCF膜(30μm)を付与して、1000~1150℃で2時間、焼成した。
【0099】
以上の操作により、セル試料を作製した。」
「【0111】
また、20個の視野において中間層131に含まれる気孔の数を計測したところ、第1面131aに平行な方向における10μm長さ当たりの気孔の数の平均値は、4個であった。中間層131における気孔率の平均値は、10%であった。
【0112】
一方で、緻密層132及び電解質層15には、気孔はほとんど見られなかった。緻密層132の気孔率は2%であり、電解質層15の気孔率は0.2%であった。」
「【図1】
[図:0001412264000003.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
甲1の実施例のセル試料に注目すると、甲1(特に、上記(1)の【0017】、【0094】、【0096】~【0099】、【0111】、【0112】参照。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「酸化ニッケル(NiO)、ジルコニア系材料(8YSZ)、及び造孔剤(PMMA)からなるセラミックグリーンシートを積層し、熱圧着にて一体化し、
次に、8YSZからなるセラミックグリーンシートと、GDCからなるセラミックグリーンシートとを、成形体上に順次積層して熱圧着し、燃料極11、ジルコニア系材料層、セリア系材料層がこの順に積層された積層体を得た後、
得られた積層体を、1400℃で2時間、共焼成し、ジルコニア系材料層から電解質層15が形成され、セリア系材料層から緻密層132が形成されるとともに、電解質層15と緻密層132との間に中間層131が形成され、
バリア層13は、中間層131と緻密層132とを有しており、
その後、バリア層13上に、空気極14としてLSCF膜を付与して、1000~1150℃で2時間、焼成して作製したセル試料であって、
中間層131における気孔率の平均値は、10%であり、
緻密層132の気孔率は2%である、
セル試料。」
(3)甲2の記載事項
本件特許の優先日前に公開された甲2には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、セルスタック装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と酸素含有ガス(空気)とを用いて電力を得ることができるセルの1種である燃料電池セルが複数配列されてなる燃料電池セルスタック装置を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールや、燃料電池モジュールを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。」
「【発明の概要】
【0004】
本開示のセルスタック装置は、複数個のセルが配列されてなるセルスタックと、前記複数個のセルの一端部がシール材にて固定されているとともに、前記複数個のセルに反応ガスを供給するためのマニホールドと、を具備している。前記セルは、長さ方向を有する支持基板と、該支持基板上に積層された、燃料極、固体電解質層、および空気極から成る素子部と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置し、かつ、前記セルの一端部まで延びており、前記固体電解質層よりも高い気孔率を有する中間層と、を有している。前記セルの一端部において、前記中間層は前記空気極から露出する露出部を有しており、該露出部上に前記シール材が設けられている。
【0005】
また、本開示のモジュールは、収納容器内に、上記に記載のセルスタック装置を収納してなる。
【0006】
さらに、本開示のモジュール収容装置は、外装ケース内に、上記に記載のモジュールと、該モジュールの運転を行なうための補機とを収納してなる。」
「【0009】
(セル)
以下において、セルスタックを構成するセルとして固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。
【0010】
図1は、セルの実施形態の一例を示すもので、(a)は横断面図、(b)は側面図である。図2は、図1で示したセルの縦断面図である。なお、両図面において、セル1の各構成の一部を拡大して示している。」
「【0012】
図1に示すように、セル1は、一対の対向する平坦面n1、n2をもつ柱状(中空平板状等)の導電性支持基板2(以下、支持基板2と略す場合がある)の一方の平坦面n1上に、燃料極3、固体電解質層4及び空気極5を積層してなる素子部aを有している。」
「【0014】
図2に示すように、中間層21は、固体電解質層4と空気極5との間に位置し、かつ、セル1の一端部(下端部)まで延びている。このセル1の一端部において、中間層21は空気極5から露出している。」
「【0025】
中間層21としては、Ce以外の他の希土類元素酸化物を含有するCeO2系焼結体からなるもので、例えば、(CeO2)1-x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成を有していることがよい。中間層21は、固体電解質層4と空気極5との間において、固体電解質層4の成分と空気極5の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制するという、反応防止層としての役割がある。例えば、空気極5中のSrと固体電解質層4中のZrが反応することを抑制する役割がある。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることがよく、例えば10~20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2を用いることができる。なお、中間層9を2層構造とすることもできる。」
「【0028】
セルスタック装置10は、配列された複数個のセル1と、マニホールド7とを備える。」
「【0040】
本実施形態のセルスタック装置においては、図5に示すように、固体電解質層4よりも気孔率の高い中間層21が、セル1の一端部において、空気極5から露出する露出部を有しており、この露出部上にシール材8が設けられている。より具体的には、図5に示す例のように、複数個のセル1のうちセル1の配列方向の最も一端側のセル1の中間層21は、シール材8を介して端部導電部材9bに接合されている。また、この最も一端側のセル1以外のセル1の中間層21は、シール材8を介して隣りのセル1に接合されている。なお、最も一端側のセル1の中間層21は、シール材8を介してマニホールド7に接合されていてもよい。この場合、例えば端部導電部材9bはシール材8に接合されておらず、シール材8の表面から下端部が浮いた状態となる。
【0041】
この構成によれば、製造段階でシール材8を固化させる前に、シール材8が中間層21の気孔に入り込みやすくなるため、シール材8が中間層21によく馴染み、接合力を向上させることができる。従って、シール材8と中間層21との境界で隙間が生じることを抑制でき、ガスリークが生じにくくなり、長期信頼性を向上させることができる。」
「【0043】
また、中間層21の露出部の気孔率は10~30%としてもよい。10%以上である場合には、気孔率が十分高いので、シール材8が中間層21の気孔に入り込みやすくなり両部材間の接合力を高めることができる。30%以下である場合には、気孔率が高くなり過ぎないので、シール材8が固化する際や、長期間発電を繰り返した場合などにシール材8から加わる応力によって中間層21が損傷してガスがリークすることを抑制することができる。
【0044】
また、中間層21の露出部は、中間層21のうち固体電解質層4と空気極5との間に挟まれた部分よりも気孔率が高くてもよい。中間層21の露出部は、比較的気孔率が高いことから、シール材8との接合力を向上させることができる。また、中間層21のうち固体電解質層4と空気極5との間に挟まれた部分は、比較的気孔率が低いことから、反応防止層としての機能を向上させることができる。
【0045】
具体的には、中間層21のうち固体電解質層4と空気極5との間に挟まれた部分の気孔率は、5~25%とすることができる。5%以上である場合には、長期間発電を繰り返した際などに固体電解質層4と空気極5との熱膨張差により生じる応力を、気孔を有する中間層21で緩和することができる。従って、固体電解質層4が損傷してガスリークが生じることを抑制することができる。なお、固体電解質層4と空気極5との熱膨張差が大きくなる場合としては、例えば、固体電解質層4がY2O3の固溶したZrO2からなり、空気極5がLaxSr1-xCoyFe1-yO3からなるような場合である。25%以下である場合には、気孔率が高過ぎないことから、反応防止層としての機能を向上させることができる。」
「【0062】
図6に示すように、モジュール20は、収納容器14内に、セルスタック装置10を収納してなる。また、セルスタック装置10の上方には、セル1に供給する燃料ガスを生成するための改質器13が配置されている。」
「【0067】
(モジュール収容装置)
図7は、外装ケース内に図6で示したモジュール20と、モジュール20を動作させるための補機(図示せず)とを収納してなる本実施形態のモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図7においては一部構成を省略して示している。」
「【図1】
[図:0001412264000004.jpg]
【図2】
[図:0001412264000005.jpg]
【図3】
[図:0001412264000006.jpg]
」
「【図5】
[図:0001412264000007.jpg]
【図6】
[図:0001412264000008.jpg]
【図7】
[図:0001412264000009.jpg]
」
(4)甲2に記載された発明
ア 甲2(特に、上記(3)の【0012】、【0014】、【0025】、【0044】参照。)には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「支持基板2の一方の平坦面n1上に、燃料極3、固体電解質層4及び空気極5を積層してなる素子部aを有し、固体電解質層4と空気極5との間に位置し、かつ、セル1の一端部(下端部)まで延びている中間層21を有するセル1であって、
中間層21は、Ce以外の他の希土類元素酸化物を含有するCeO2系焼結体からなるものであって、例えば10~20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2を用いることができ、固体電解質層4の成分と空気極5の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制し、
セル1の一端部において、中間層21は空気極5から露出しており、
中間層21の露出部は、中間層21のうち固体電解質層4と空気極5との間に挟まれた部分よりも気孔率が高くてもよいセル1。」
(5)甲3の記載事項
本件特許の優先日前に公開された甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】
燃料極基板と、該燃料極基板の一面側に形成された固体電解質層と、該固体電解質層の該燃料極基板の対面側に形成された空気極層とを備え、且つ該固体電解質層と該空気極層との間に、CeO2の一部のCeが希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種により置換されたCeO2系酸化物からなる反応防止層を備える支持膜式固体電解質型燃料電池用単電池であって、
上記反応防止層は、上記固体電解質層より面積が小さいことを特徴とする固体電解質型燃料電池用単電池。」
「【0003】
この支持膜式の単電池では、空気極にはAサイトの一部をSrで置換したLaMnO3系酸化物、固体電解質層にはイットリア安定化ジルコニアが多用されている。しかし、LaMnO3系酸化物とイットリア安定化ジルコニアとは反応性が高く、製造時に空気極と固体電解質層との界面に高抵抗の反応相が生成し、電池の出力が低下するという問題がある。これに対して、酸化セリウムを主成分とした反応防止層を空気極と固体電解質層との間に形成することで問題を解決しようとする技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献2では、反応防止層の大きさや、セパレータとの関係については検討されていない。更に、より優れた発電性能を発揮できる単電池等が求められている。
本発明は上記に鑑みて成されたものであり、反応防止層の割れや剥がれを生じ難く、固体電解質型燃料電池とした場合にセパレータと単電池とのシール部における信頼性が高く、優れた発電性能を発揮できる固体電解質型燃料電池用単電池を提供する。また、この単電池を用い、信頼性が高く、より優れた電池性能を発揮できる固体電解質型燃料電池を提供する。更に、この単電池が安定して、より少ない工程で効率よく得ることができる固体電解質型燃料電池用単電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、反応防止層が形成された単電池等について検討した。その結果、固体電解質層(図3の12)と面積が同じであるか又はそれより大きい反応防止層(図3の13)を備える単電池(図3参照)や、燃料極層(図4の11)と固体電解質層(図4の12)との積層体の全面に反応防止層(図4の13)がコーティングされた単電池(図4参照)は、端面に反応防止層が露出しているため、取り扱いを慎重にしないと反応防止層の角部からクラックを生じたり、割れを生じたりすることがあった。
また、これらの単電池を使用したSOFCでは、発電性能が理論値を大きく下回り、性能が十分に発揮されない場合があることが分かった。
更に、これらの単電池を製造する場合、反応防止層が他部に比べて焼成収縮率が小さいため、燃料極基板及び固体電解質層と同時焼成すると、反りを生じ易く、また、反応防止層の角部からクラックや割れを生じる。このため、従来は燃料極基板及び固体電解質層を焼成した後に、別工程で反応防止層を形成しており、製造に手間を要した。
そして、これらの多くの課題の全ては、反応防止層を固体電解質層よりも小さく形成することにより極めて効果的に解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下に示す通りである。
本発明の単電池は、燃料極基板と、該燃料極基板の一面側に形成された固体電解質層と、該固体電解質層の該燃料極基板の対面側に形成された空気極層とを備え、且つ該固体電解質層と該空気極層との間に、CeO2の一部のCeが希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種により置換されたCeO2系酸化物からなる反応防止層を備える支持膜式固体電解質型燃料電池用単電池であって、上記反応防止層は、上記固体電解質層より面積が小さいことを特徴とする。
また、上記反応防止層の面積は、該固体電解質層の面積の25~90%であり、且つ、上記空気極層の面積は、該反応防止層と同じあるか又は該反応防止層よりも小さいものとすることができる。更に、上記固体電解質層は、Y、Sc及び希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニアとすることができる。また、上記燃料極基板となる未焼成シート又は上記燃料極基板となる仮焼体と、上記固体電解質層となる未焼成固体電解質層と、上記反応防止層となる未焼成反応防止層とをこの順に備える未焼成積層体を形成し、その後、該未焼成積層体を一体に焼成する工程を経て得ることができる。」
「【0020】
上記「反応防止層」は、固体電解質層と空気極層との間に形成された層であり、固体電解質層と空気極層との反応を防止する層である。この反応防止層は、CeO2の一部のCeが希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種により置換されたCeO2系酸化物からなる。このCeO2系酸化物は、希土類元素、Sc及びYに加えて、更にこれら以外の他の元素により置換されていてもよい。これらのCeO2系酸化物のうち、希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種のみにより置換された(希土類元素、Sc及びYを除く他の元素による置換がない)材料は、化学式Ce1-xLnxO2±δ(Lnは希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種の元素であり、δは酸素過剰量又は酸素欠損量である。)で表される。上記化学式におけるxは、通常、0.05≦x≦0.3である。更に、上記化学式におけるLn元素の中でもSm及びGdが好ましい。これらの条件を満たすCeO2系酸化物としては、例えば、Ce0.8Sm0.2O2±δ、Ce0.8Gd0.2O2±δ等を挙げることができる。
【0021】
また、上記の希土類元素、Sc及びYを除く他の元素としては、Ga、Al等を挙げることができる。これらの元素を含むCeO2系酸化物は、化学式Ce1-x(Ln1-yMby)xO2±δ(Lnは希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種の元素であり、Mbは上記の各元素であり、δは酸素過剰量又は酸素欠損量である。)で表される。上記化学式におけるx及びyは、通常、0.05≦x≦0.3、0.005≦y≦0.05である。更に、上記化学式におけるLn元素の中でもSm及びGdが好ましい。これらの条件を満たすCeO2系酸化物としては、例えば、Ce0.8Sm0.19Ga0.0102±δ、Ce0.8Gd0.19Ga0.01O2±δ等を挙げることができる。
【0022】
この反応防止層は、燃料極基板よりも薄く、通常、固体電解質層及び空気極層よりも薄い膜状である。また、この反応防止層の平面形状は特に限定されないが、通常、四角形であり、特に長方形又は正方形等である。
また、この反応防止層の大きさは、固体電解質層の面積よりも小さいものである。この「面積が小さい」とは、固体電解質層の反応防止層側平面の面積(反応防止層と接する面の面積だけでなく反応防止層が形成される側の全面積)が、反応防止層の固体電解質層側平面の面積よりも大きいことをいう。即ち、固体電解質層の一部が反応防止層下に露出する状態である。反応防止層の面積は、固体電解質層の面積よりも小さければよく、その割合等は特に限定されないが、固体電解質層の面積の25~90%(より好ましくは30~90%、特に好ましくは40~90%、とりわけ好ましくは50~90%)であることが好ましい。この面積の割合が25%未満であると、通常、この反応防止層上に、反応防止層と略同じ大きさは又は反応防止層よりも小さく形成される空気極層の面積が過度に小さくなるため発電効率(体積効率)が低下する傾向にあり好ましくない。一方、90%を超えると反応防止層を介さずにセパレータに接合できる領域が小さくなり、接合強度が十分に得られ難くなる傾向にある。
【0023】
更に、反応防止層の面積が固体電解質層の面積よりも小さいことで露出される固体電解質層の部位は特に限定されないが、通常、固体電解質層の外周部である。この外周部はその全周が露出されていてもよく、一部のみが露出されていてもよいが、全周が露出されていることが好ましい。全周が露出された単電池であることにより、SOFCにおいては、全周に渡って固体電解質層とセパレータとを接合できるため確実な気密を達成できる。尚、一部のみが露出された形状とは、例えば、固体電解質層の平面形状が長方形又は正方形である場合には、その1辺側のみが露出された形状や、2辺側が露出された形状や、3辺側が露出された形状を挙げることができる。これらの中でもより露出辺が多いものが好ましい。露出辺が多い方がより確実に気密を達成できるからである。」
「【0030】
上記製造方法(2)は、燃料極基板、固体電解質層及び反応防止層を一体に焼成する方法である。
従来のように反応防止層(図3の13)が、固体電解質層(図3の12)と同じ大きさ又はそれより大きく(図3参照)、又は、燃料極基板(図4の11)と固体電解質層(図4の12)との両方を包むように(図4参照)、形成されていては、製造方法(2)では、前記理由から焼成時に反応防止層が他部に巻き込まれるように収縮し、反りを生じたり、反応防止層の端部からクラックや割れを生じることがある。しかし、本発明の単電池では、固体電解質層よりも反応防止層が小さく形成されているため焼成収縮の影響をより受け難く、製造方法(2)を用いて製造することができる。特に反応防止層の端部にクラックや割れを生じる確率は極めて効果的に抑えられる。」
「【0039】
・・・(略)・・・
▲4▼ 1次焼成
上記▲1▼~▲3▼までに得られた未焼成積層体を1350℃で1時間保持して1次焼成し、燃料極基板(図1の11)、固体電解質層(図1の12)及び反応防止層(図1の13)が一体に形成された1次積層体を得た。
【0040】
▲5▼ 空気極層の形成
化学式La0.6Sr0.4CoO3で表される市販の粉末(平均粒径2μm)100質量部と、バインダとしてポリビニルアルコール13質量部及びブチルカルビトール35質量部とを混合して、空気極層用スラリーを得た。その後、上記▲1▼~▲4▼を経て得られた1次積層体の反応防止層の中心部上に得られた空気極層用スラリーをスクリーン印刷して、縦5mm、横5mm、厚さ30μmの未焼成空気極層を形成した。次いで、この未焼成空気極層が形成された1次積層体を1100℃で1時間保持し、空気極層(図1の14)が形成された実施例1の単電池(図1の1-1)を得た(図1参照)。」
「【図1】
[図:0001412264000010.jpg]
」
(6)甲4の記載事項
本件特許の優先日前に公開された甲4には、次の記載がある。
「【0005】
一般に固体酸化物電解質材料においては、酸素イオン伝導度と機械的強度は相反する関係にある。これは酸素イオンの伝導が、基材酸化物に対してドーピングを施すことによる結晶欠陥の発生や、結晶格子の歪によって発現することに起因しており、イオン伝導度を向上させるということは、このような欠陥や歪を増やすことであって、当然のことながら基材の強度低下に直結することになる。
このような問題の解決策の一つとして、電解質層に対して上面および下面の一方、又は両方に電解質層を支持する支持部材を設けることによって電解質層の強度を高めることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000-133284号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法においては、電解質層の表面に支持部材を追加して設けるため、支持部材を別途作製すると共に、さらにその支持部材を電解質層と一体化する必要がある。従って、支持部材の材料、製造工程および電解質層と支持部材の接合工程等が新たに発生し、製造工程が複雑で長くなり、またコスト高となるといった問題点があった。
なお、前述の電極支持型構造の燃料電池においては、電極基板には、ガス供給のためにかなり多孔質な構造が必要である一方、支持基板としての機械的強度も要求されることから、相当な厚さとなるばかりでなく、このような多孔質の電極基板上に薄い電解質を形成することは極めて高度な技術を要する。
【0008】
本発明は、従来の固体酸化物形燃料電池における上記課題に着目してなされたものであって、基板としての電解質、あるいは他の基板上に形成される電解質層のイオン伝導度を損なうことなく、機械的強度を向上させることができ、高性能、かつ信頼性の高い燃料電池を得ることができる固体酸化物形燃料電池用電解質、及びこのような電解質の製造方法、さらにはこのような電解質を用いた固体酸化物形燃料電池用セル板を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質は、ジルコニアと第1の添加物から成る板状又は膜状の電解質において、平面方向の所望部位に添加物の濃度や組成が異なる変性領域を備えたことを特徴としており、固体酸化物形燃料電池用電解質におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。」
「【0014】
本発明の固体酸化物形燃料電池用電解質においては、電解質母材として、ジルコニアを主成分とし、ジルコニアの安定化に寄与する成分である第1の添加物、例えばY2O3、Sc2O3、CaO、MgOなどの酸化物を単独で、あるいは任意の組み合わせで添加したものが使用される。
【0015】
これら第1の添加物は、当該電解質のイオン伝導性を向上させる機能を有していることから、所望部位についてその濃度を高めることによって、あるいは、上記グループのうちから第1の添加物として使用したもの以外の酸化物を第2の添加物として添加することによって、その領域のイオン伝導性が向上し、セルを形成した場合の発電性能が改善されることになる。
また、上記添加物の以外にも、4A族、5A族、7A族、4B族の酸化物、例えばTiO2、Nb2O5、Ta2O5、MnO2などにもイオン伝導性を向上させる機能があることから、これらを第2の添加物として所望部位に添加することによっても同様の効果が得られることになる。なお、これら添加物についても、単独添加のみならず、複合添加してもよい。
【0016】
一方、例えばAl2O3やMgAl2O4には、電解質母材の機械的強度を高める機能があるので、これらを第3の添加物として、所望の領域、例えば外周部などに添加することによって、当該部位を強化することができる。
【0017】
すなわち、従来の固体酸化物形燃料電池用電解質は、面内方向において均一な材料であったため面内で求められる機能が異なっていても、その一つの材料にて全てを担う必要があった。言い換えると、高いイオン伝導度が求められるセル部分も、イオン伝導度は要求されず強度が求められる外周部やマニホールド部分などもおなじ材質で形成せざるをえなかった。
【0018】
これに対し、本発明の電解質によれば、機械的強度に優れた電解質母材を使用して、強度が要求される部位、すなわちスタッキングに際して、ガスシール性の確保や接触抵抗の低減等の理由により、強い応力のかかる外周部やガスマニホールド周辺、あるいは中央部のセル形成部分を強化するための梁状部分などを残して、これ以外の部分における第1の添加物濃度を高めたり、さらに第2の添加物を含有させたりすることによって、あるいは第1の添加物濃度を高めたうえで、さらに第2の添加物を含有させることによって、セル相当部分のイオン伝度性を高めることができ、発電特性に優れ、かつ強度にも優れた電解質が得られる。」
(7)甲5の記載事項
本件特許の優先日前に公開された甲5には、次の記載がある。
「
[図:0001412264000011.jpg]
」(第1023頁左欄第10~13行)
「
[図:0001412264000012.jpg]
」(第1024頁左欄第3~26行)
「
[図:0001412264000013.jpg]
」(第1024頁右欄最後から11~6行)
「
[図:0001412264000014.jpg]
」(第1025頁左欄最上部)
6-4-2 甲1を主たる引用例とした場合(申立理由3)
(1)本件発明1について
(1)-1 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明は、「燃料極11、ジルコニア系材料層、セリア系材料層がこの順に積層された積層体を得た後、得られた積層体」において、「ジルコニア系材料層から電解質層15が形成され、セリア系材料層から緻密層132が形成されるとともに、電解質層15と緻密層132との間に中間層131が形成され、バリア層13は、中間層131と緻密層132とを有しており、その後、バリア層13上に、空気極14としてLSCF膜を付与」するものであるから、「燃料極11」、「電解質層15」、「中間層131」、「緻密層132」、「空気極14」が順に積層されたものである。
そうすると、甲1発明の「電解質層15」、「中間層131と緻密層132とを有」する「バリア層13」、「セル試料」は、本件発明1の「固体電解質層」、「中間層」、「セル」に相当する。
イ 甲1発明は、「バリア層13は、中間層131と緻密層132とを有」するものであるところ、上記アより、甲1発明は、「燃料極11」、「電解質層15」、「中間層131」、「緻密層132」、「空気極14」が順に積層されたものであるから、本件発明1の「燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え」る事項を含むものである。
ウ 甲1発明は、「中間層131における気孔率の平均値は、10%であり、緻密層132の気孔率は2%である」から、「緻密層132」は「中間層131」よりも小さい空隙率を有するといえる。
そして、甲1発明は、「電解質層15と緻密層132との間に中間層131が形成され、バリア層13は、中間層131と緻密層132とを有しており、その後、バリア層13上に、空気極14としてLSCF膜を付与」されるものであって、「中間層131」及び「緻密層132」のうち、空気極の近くにあるものは、「緻密層132」であるから、甲1発明の「中間層131」及び「緻密層132」は、それぞれ、本件発明1の「第1部位」及び「第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位」に相当する。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有」する事項を含むものである。
エ ガドリニウムは希土類元素であり、甲1発明は、「GDC」からなる「セリア系材料層から緻密層132が形成される」ものであるから、甲1発明は、本件発明1の「中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んで」いる事項を含むものである。
オ 上記ア~エより、本件発明1と甲1発明とは、
「燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え、
前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでいる、
セル。」の点で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1-1)
本件発明1は、「素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大き」いのに対し、甲1発明は、「バリア層13」における外周部及び中央部の空隙率の大小が不明である点。
(相違点1-2)
本件発明1では、「中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」のに対し、甲1発明では、「バリア層13」にそのような不純物を含むか否かが不明である点。
(1)-2 相違点についての検討
ア 事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。
イ 甲1には、「中間層131と緻密層132とを有」する「バリア層13」にFe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる旨の記載はない。
ウ 一方、甲3には、次の事項が記載されている(【0020】、【0021】)。
「反応防止層(本件発明1の「中間層」に相当。)は、CeO2の一部のCeが希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種により置換されたCeO2系酸化物からなり、このCeO2系酸化物はAlを含んでもよい事項。」
エ しかしながら、甲3に記載されたAlは不純物であるか否かが不明であるから、仮に、甲1発明において、上記ウの事項が適用できたとしても、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることができない。
オ また、甲5には、次の事項が記載されている(表題、第1024頁右欄最後から11~8行)。
「酸化セリウム中の酸素の拡散実験に用いる試料は、不純物のないものが好ましいが、実際には、微量の不純物が混入することがあり、当該実験に使用した試料には、不純物としてSi、Al、Fe、Mgが検出された事項。」
カ しかしながら、甲1発明の「中間層」の材料として、甲5に記載された「酸化セリウム中の酸素の拡散実験に用いる」材料を採用する動機がない。
キ 仮に、その動機があったとしても、甲1発明、及び甲5の記載事項からは、本件明細書に記載された「中間層7を形成する際に、中間層7内の結晶粒の成長を抑制することができることから、中間層7にクラックが生じ難くすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の耐久性を高めることができる」(【0099】)との効果を予測することができない。
ク また、甲5には、「拡散実験に用いる試料は、不純物のないものが好ましいが、実際には微量の不純物が混入することがある。本実験に使用した試料の不純物量を発光分光定性分析で調べた。定性分析で検出された不純物として、Si、Al、Fe、Mgがあった」(第1024頁右欄最後から11~8行)と記載されているものの、酸化セリウムに含有する金属不純物はその製造過程により異なると考えられることから、甲1発明における「GDC」を含む「緻密層132」に、不純物として、Si、Al、Fe、Mgが必ず含まれるとまではいいきれない。
ケ したがって、甲1発明において、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
コ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 本件発明2は、「中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」との発明特定事項を含むものであるから、甲1発明と少なくとも上記相違点1-2と同様の相違点で相違する。
イ そして、上記(1)の(1)-2で検討したように、甲1発明において、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ そうすると、本件発明2も、同様の理由により、甲1発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3について
(3)-1 本件発明3と甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
ア 上記(1)の(1)-1と同様に対比すると、甲1発明の「電解質層15」、「緻密層132」及び「電解質層15と緻密層132との間」の「中間層131」を有する「バリア層13」、「セル試料」は、本件発明3の「固体電解質層」、「固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層」、「セル」に相当し、また、甲1発明は、本件発明3の「燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え」る事項を含むものである。
イ 上記アより、本件発明3と甲1発明とは、
「燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備える、
セル。」の点で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1-3)
本件発明3は、「固体電解質層は、前記中間層との界面近傍に位置する第1部位と、前記中間層との界面近傍かつ前記第1部位よりも前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも低い緻密性を有する第2部位と、を有し、前記中間層との界面近傍において、前記素子部の外周部に位置する前記固体電解質層は、中央部に位置する前記固体電解質層よりも緻密である」のに対し、甲1発明は、「電解質層15」における外周部及び中央部の緻密性の大小が不明である点。
(3)-2 相違点についての検討
ア 甲1には、電解質層15における外周部及び中央部の緻密性の大小については記載されていない。
イ 一方、甲4には、次の事項が記載されている(【0014】、【0015】、【0018】)。
「強度が要求される部位、すなわち、強い応力のかかる外周部やガスマニホールド周辺、あるいは中央部の梁状部分などを残して、これ以外の部分における電解質母材である第1の添加物濃度を高めたり、さらにイオン電導性を向上させる第2の添加物を含有させたりすることによって、セル相当部分のイオン伝度性を高めることができ、発電特性に優れ、かつ強度にも優れた電解質が得られる事項。」
ウ しかしながら、甲4には、電解質における外周部や中央部の梁状部分とセル相当部分とのイオン電導性や強度の大小について記載されているものの、当該部分の緻密性の大小が不明である。
エ そうすると、仮に、甲1発明において、上記イの事項を適用できたとしても、上記相違点1-3に係る本件発明3の発明特定事項を得ることができないし、また、甲1発明、及び甲4の記載事項からは、本件明細書【0081】、【0082】に記載された効果を予測することもできない。
オ したがって、甲1発明において、上記相違点1-3に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
カ よって、本件発明3は、甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明4、6、7、9、10について
ア 本件発明4、6、7、9、10は、請求項1~3を引用するものであり、本件発明1~3の少なくともいずれか1つの発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明と少なくとも上記相違点1-2または上記相違点1-3で相違する。
イ そして、上記(1)の(1)-2で検討したように、甲1発明において、上記相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえないし、上記(3)の(3)-2で検討したように、甲1発明において、上記相違点1-3に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ そうすると、本件発明4、6、7、9、10も、同様の理由により、甲1発明及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
6-4-3 甲2を主たる引用例とした場合(申立理由3を職権で主引例及び条文変更)
(1)本件発明1について
(1)-1 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「支持基板2の一方の平坦面n1上に、燃料極3、固体電解質層4及び空気極5を積層してなる素子部aを有し、固体電解質層4と空気極5との間に位置し、かつ、セル1の一端部(下端部)まで延びている中間層21を有する」事項は、本件発明1の「燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え」る事項に相当する。
イ 上記6-4-1の(3)の図1、図2によれば、甲2発明の「中間層21の露出部」は、「セル1」の外周部を含むことが看取できる。
そうすると、甲2発明の「セル1の一端部において、中間層21は空気極5から露出しており、中間層21の露出部は、中間層21のうち固体電解質層4と空気極5との間に挟まれた部分よりも気孔率が高」い事項は、本件発明1の「中間層は、第1部位と、前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大き」い事項に相当する。
ウ 甲2発明の「中間層21は、Ce以外の他の希土類元素酸化物を含有するCeO2系焼結体からなるものであって、例えば10~20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2を用いることができ」る事項は、本件発明1の「中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んで」いる事項に相当する。
エ 上記ア~ウからすると、本件発明1と甲2発明とは、
「燃料極と、固体電解質層と、空気極と、前記固体電解質層と前記空気極との間に位置する中間層と、を有する素子部を備え、
前記中間層は、
第1部位と、
前記第1部位よりも前記空気極の近くまたは前記素子部の中央部の近くに位置し、前記第1部位よりも小さい空隙率を有する第2部位と、を有し、
前記素子部の外周部における前記中間層の空隙率は、中央部における前記中間層の空隙率よりも大きく、
前記中間層は、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウムを含んでいる
セル。」の点で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点2-1)
本件発明1は、「中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」のに対し、甲2発明は、「中間層21」がFe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいるか否かが不明である点。
(1)-2 相違点についての検討
ア 甲2には、「中間層131と緻密層132とを有」する「バリア層13」にFe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる旨の記載はない。
イ 一方、甲3には、次の事項が記載されている(【0020】、【0021】)。
「反応防止層は、CeO2の一部のCeが希土類元素、Sc及びYのうちの少なくとも1種により置換されたCeO2系酸化物からなり、このCeO2系酸化物はAlを含んでもよい事項。」
ウ しかしながら、甲3に記載されたAlは不純物であるか否かが不明であるから、仮に、甲2発明において、上記イの事項が適用できたとしても、上記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることができない。
エ また、甲5には、次の事項が記載されている(表題、第1024頁右欄最後から11~8行)。
「酸化セリウム中の酸素の拡散実験に用いる試料は、不純物のないものが好ましいが、実際には、微量の不純物が混入することがあり、当該実験に使用した試料には、不純物としてSi、Al、Fe、Mgが検出された事項。」
オ しかしながら、甲2発明の「中間層」の材料として、甲5に記載された「酸化セリウム中の酸素の拡散実験に用いる」材料を採用する動機がない。
カ 仮に、その動機があったとしても、甲2発明、及び甲5の記載事項からは、本件明細書に記載された「中間層7を形成する際に、中間層7内の結晶粒の成長を抑制することができることから、中間層7にクラックが生じ難くすることができる。したがって、実施形態によれば、セル1の耐久性を高めることができる」(【0099】)との効果を予測することができない。
キ また、甲5には、「拡散実験に用いる試料は、不純物のないものが好ましいが、実際には微量の不純物が混入することがある。本実験に使用した試料の不純物量を発光分光定性分析で調べた。定性分析で検出された不純物として、Si、Al、Fe、Mgがあった」(第1024頁右欄最後から11~8行)と記載されているものの、酸化セリウムに含有する金属不純物はその製造過程により異なると考えられることから、甲2発明における「Ce以外の他の希土類元素酸化物を含有するCeO2系焼結体からなる」「中間層21」に、不純物として、Si、Al、Fe、Mgが必ず含まれるとまではいいきれない。
ク したがって、甲2発明において、上記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ケ よって、本件発明1は、甲2発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明4、6、9、10について
ア 本件発明4、6、9、10は、請求項1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、甲2発明と少なくとも上記相違点2-1で相違する。
イ そして、上記(1)の(1)-2で検討したように、甲2発明において、上記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ そうすると、本件発明4、6、9、10も、同様の理由により、甲2発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
6-4-4 申立人の主張について
(1)申立人は、令和4年12月6日差出の意見書において、参考資料1(特開2007-84413号公報)を証拠方法として、願書に添付された特許請求の範囲の請求項7の「中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」事項は、本件特許出願時の技術常識であるから、本件発明2は、甲1発明、甲3記載の事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に想到することができたものであると主張している。
(2)しかしながら、参考資料1には、固体酸化物型燃料電池のインターレイヤー材料として用いるCe-Fd系酸化物に、Fe2O3、Co3O4、CuOを添加して焼成することが記載されているものの、これらの添加物はいずれも「高純度化学社製」(【0033】、【0036】、【0039】)の酸化物であり、不純物といえるものではない。
(3)そうすると、願書に添付された特許請求の範囲の請求項7の「中間層は、Fe、Si、Na、Cl、Cu、TiおよびAlのうち少なくとも1つの元素を不純物として含んでいる」事項は、本件特許出願時の技術常識であるとはいえないし、仮に、甲1発明において、参考資料1に記載された事項を適用しても、本件発明2とはならない。
(4)よって、申立人の主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~4、6、7、9、10に係る特許は、令和4年8月15日付けで通知された取消理由に記載した取消理由、令和5年2月13日付けで通知された取消理由に記載した取消理由(決定の予告)、令和5年9月29日付けで通知された取消理由に記載した取消理由(決定の予告)、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件特許の請求項1~4、6、7、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項5、8は、本件訂正により削除されたから、本件特許の請求項5、8に係る特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700319